(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】濾過装置
(51)【国際特許分類】
B01D 24/16 20060101AFI20240410BHJP
B01D 24/26 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
B01D23/10 C
(21)【出願番号】P 2020212649
(22)【出願日】2020-12-22
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】519281354
【氏名又は名称】株式会社中島工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100129207
【氏名又は名称】中越 貴宣
(72)【発明者】
【氏名】増本 正人
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 佳和
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-262717(JP,A)
【文献】実開昭59-048712(JP,U)
【文献】特開2000-084309(JP,A)
【文献】実開昭63-077606(JP,U)
【文献】特開平09-047604(JP,A)
【文献】特開平10-156112(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1555257(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D24/00-37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱状の濾過装置本体内が垂直方向に立設された隔壁及び越流壁
で横方向に三分されることによって、該濾過装置本体内に着水槽と、上向流式の濾過槽と、浄水槽とが
形成され、該隔壁を介して該着水槽と該濾過槽が隣接し、該越流壁を介して該濾過槽と該浄水槽が隣接し、
前記着水槽には、該着水槽の上方に着水槽流入管、下方に着水槽流出管、底部に着水槽排泥管が配設され、
前記濾過槽の下方にメッシュ状の受板が配設され、該受板の上側に、下方から上方に向かって粒径が小さくなる濾材を積層した濾材層が配設されるとともに、前記受板の下側に流入室が形成されて濾過槽流入管が配設され、前記濾材層の上面に濾材層面排泥管、前記濾過槽の底部に濾過槽排泥管が配設され、
前記浄水槽には、該浄水槽の下方に流出管、底部に浄水槽排泥管が配設され、
前記着水槽流出管と前記濾過槽流入管とが導通管で連結され、
前記流入室に、球状浮遊濾材が配設されていることを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
前記球状浮遊濾材が中空であることを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。
【請求項3】
前記濾材層内に洗浄管が配設されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の濾過装置。
【請求項4】
前記越流壁の上端縁にVノッチが形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の濾過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中山間地域における谷川などで取水された原水を濾過する濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の濾過装置として、緩速濾過装置や上向流式濾過装置が一般的である。また、これらの濾過方式を組み合わせた濾過装置も種々開示されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。特許文献1に開示された濾過装置は、U字型などの槽体内に粒状濾材を充填して該濾材層内を原水が順次下向流、水平流、上向流で通水されるごとく構成し、濾材の洗浄機構として下向流部、上向流部を上向流で洗浄するための洗浄用ノズルをそれぞれ別個に水平流部内に配備したことを特徴とする。この特許文献1に開示された濾過装置によると、濾過効率の向上が図られると共に、濾過装置の維持管理も容易である旨、記載されている。
【0003】
また、特許文献2に開示された濾過材洗浄装置付き上向濾過装置は、上方に行くに従って次第に粒度が小さくなる濾過材を積層してなる濾過材層の下方より原水を通過させるようにした上向濾過装置において、上方へ向かって洗浄水を噴出する洗浄管を濾過材層の下面に設けるとともに、濾過材層の上面中央部に、水平をなし、かつ両側辺の上縁に、多数の鋸歯状突起を有する排泥樋を設け、かつ排泥樋の一端を、砂捕集箱に接続してなることを特徴とする。この特許文献2に開示された濾過材洗浄装置付き上向濾過装置によると、濾過槽を安価に製造することができるとともに、洗浄水とともに流出しようとする濾過砂は、排泥樋の鋸刃状突起で効果的に食い止められる旨、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭63-291609号公報
【文献】実開昭63-77606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された濾過装置や特許文献2に開示された濾過材洗浄装置付き上向濾過装置によると、濾過効率の向上及び維持管理がある程度、容易に行えるものと思料する。
【0006】
しかし、中山間地域において設置される濾過装置は、設置コストや設置場所等の観点から、コンパクトでありながら濾過効率が高く、何より維持管理が容易な濾過装置が求められる。特に、濾過装置内に堆積した土砂や泥の排出作業や濾過材の洗浄作業は非常に煩雑であるため、これらの作業性を大幅に向上した濾過装置が求められていた。
【0007】
そこで本願発明者らは、上記の問題点に鑑み、谷川などで取水される原水の濾過に好適であるとともに、維持管理が容易である濾過装置を提供するべく鋭意検討を重ねた結果、本発明に至ったのである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明の濾過装置は、箱状の濾過装置本体内が、垂直方向に立設された隔壁及び越流壁によって、着水槽と、上向流式の濾過槽と、浄水槽とに三分され、着水槽には、該着水槽の上方に着水槽流入管、下方に着水槽流出管、底部に着水槽排泥管が配設され、前記濾過槽の下方にメッシュ状の受板が配設され、該受板の上側に、下方から上方に向かって粒径が小さくなる濾材を積層した濾材層が配設されるとともに、前記受板の下側に流入室が形成されて濾過槽流入管が配設され、前記濾材層の上面に濾材層面排泥管、前記濾過槽の底部に濾過槽排泥管が配設され、前記浄水槽には、該浄水槽の下方に流出管、底部に浄水槽排泥管が配設され、前記着水槽流出管と前記濾過槽流入管とが導通管で連結され、前記流入室に、球状浮遊濾材が配設されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の濾過装置において、前記球状浮遊濾材が中空であることを特徴とする。
【0010】
更に、本発明の濾過装置において、前記濾材層内に洗浄管が配設されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の濾過装置において、前記越流壁の上端縁にVノッチが形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の濾過装置によると、コンパクトでありながら、谷川などで取水される原水に含まれる枯れ葉等の浮遊ゴミや土砂、泥、細砂等を段階的に除去することができ、濾過効率の非常に高い濾過装置を提供することができる。
【0013】
また、本発明の濾過装置によると、簡単なバルブ操作のみで濾過装置内に堆積した土砂や泥等の排出作業、濾過材の洗浄作業を行うことができ、維持管理が非常に容易である。
【0014】
更に、本発明の濾過装置において、濾過槽内の受板の下側に形成される流入室に球状浮遊濾材を配設することによって、濾過効率の更なる向上を図ることができる。
【0015】
また、本発明に係る球状浮遊濾材の浮力によって受板が押し上げられることとなるため、受板に作用する濾材層の荷重軽減を図ることができ、受板の強度軽減、更には濾過装置本体に掛かる荷重の軽減を図ることができる。
【0016】
また更に、本発明に係る球状浮遊濾材を中空とすることによって、受板の強度軽減効果及び濾過装置本体の荷重軽減効果の向上を図ることができるとともに、中空の球状浮遊濾材による保温効果によって、中山間地域の冬期における濾過装置内の凍結防止効果が期待できる。
【0017】
また、本発明の濾過装置において、濾材層内に洗浄管が配設されていることによって、濾材層の洗浄作業を容易に実施できる。
【0018】
更に、本発明の濾過装置において、越流壁の上端縁にVノッチが形成されていることによって、濾過速度の調整を容易に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る濾過装置の正面視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る濾過装置10を示す正面視断面図、
図2は
図1に示した濾過装置10の平面図、
図3は
図1に示した濾過装置10におけるA-A断面図である。なお、本来であれば、本実施形態の濾過装置10の正面視断面図を示す
図1中には、濾過装置10の正面側に配設される着水槽流出管24、濾過槽流入管34、濾材層面排泥管36、濾過槽排泥管38は表れないが、本実施形態を説明するため、便宜的に図示したものである。
【0021】
図1~
図3に示すように、本発明の一実施形態に係る濾過装置10は、中山間地域における谷川などで取水した原水を濾過するのに好適であって、まず箱状の濾過装置本体12内が、垂直方向に立設された隔壁14と越流壁16とによって、着水槽20と、上向流式の濾過槽30と、浄水槽40とに三分されている。
【0022】
本実施形態の濾過装置10に係る着水槽20には、この着水槽20の上方に着水槽流入管22が配設され、下方には着水槽流出管24が配設され、底部には着水槽排泥管26が配設されている。谷川などで取水された原水は、着水槽20の上方に配設された着水槽流入管22から、着水槽20内に流入する。この着水槽20では、原水に含まれる枯れ葉等の浮遊ゴミや、粒径が比較的大きめの土砂が除去され、ある程度濾過された原水が、着水槽20の下方に配設された着水槽流出管24から、後述する濾過槽30へ送られる。
【0023】
本実施形態に係る濾過槽30は上向流式であって、この濾過槽30の下方にメッシュ状の受板39が配設され、この受板39の上側には、下方から上方に向かって粒径が小さくなる濾材を積層した濾材層32が配設されており、受板39の下側には、流入室31が形成されている。本実施形態に係る濾材層32は、下方から上方に向かって順に、粒径20~30mmの濾過砂利で形成された濾材層32a、12~20mmの濾過砂利で形成された濾材層32b、2~4mmの濾過砂利で形成された濾材層32c、0.6mmの濾過砂で形成された濾材層32d、そして0.3~0.45mmの濾過砂で形成された濾材層32eが積層されることによって構成されている。なお、本発明に係る濾材層は当該構成に限定されるものではなく、濾材の種類や積層数等は任意に設定することができる。
【0024】
また、本実施形態に係る濾材層32には、洗浄管50が予め配設されている。洗浄管50を配設することによって、濾材層32を含む濾過槽30の洗浄作業を容易に行うことができる。具体的な洗浄方法については後述する。
【0025】
本実施形態に係る濾過槽30における受板39の下側に形成された流入室31には、濾過槽流入管34が配設され、受板39の上側に配設された濾材層32の最上面位置に濾材層面排泥管36、濾過槽30の底部(=流入室31の底部)に濾過槽排泥管38が配設されている。
【0026】
ここで、上記した本実施形態に係る着水槽20の下方に配設された着水槽流出管24と、本実施形態に係る流入室31に配設された濾過槽流入管34とは、導通管28によって連結されている。従って、着水槽20においてある程度濾過された原水は着水槽流出管24から流出し、導通管28を介して濾過槽流入管34から濾過槽30に係る流入室31に流入することとなる。
【0027】
そして、本実施形態に係る流入室31には、複数の球状浮遊濾材33が配設されていることを特徴とする。球状浮遊濾材33はポリプロピレン製の濾材であって、流入室31に流入する原水によって浮遊する。球状浮遊濾材33の素材は、原水によって浮遊するものであれば特に限定されないが、ポリプロピレンは汎用樹脂の中でも比重が最も小さく、耐熱性に優れ、強度が高く、吸湿性が無い、といった特徴を有するため、球状浮遊濾材33の素材として好適である。
【0028】
なお、球状浮遊濾材33の外径サイズも特に限定されず、濾過装置本体12や流入室31の大きさ等に応じて適宜選択されるが、概ね外径10mm~50mmであることが好ましい。
【0029】
また、球状浮遊濾材33の投入量も特に限定されず、球状浮遊濾材33が流入室31内で浮遊した状態で、少なくとも受板39の下面側の全面を覆って配列される程度であればよく、特に、
図1及び
図3で示すように、受板39の下面側の全面を覆って上下2段に配列される程度であることが好ましい。このように、球状浮遊濾材33が受板39の下面側の全面を覆って上下2段に配列されることによって、濾過槽流入管34から流入した原水が、原水の流れによって遊動する球状浮遊濾材33同士の隙間を通過することで濾過に有利な層流となって濾材層32に送られることとなり、濾過効率の更なる向上が図られる。
【0030】
なお、流入室31に球状浮遊濾材33が配設されておらず、原水が流入室31から濾材層32に直接流入する場合は、原水の水流や濾材層32への汚れの固着等によって、原水が通過しやすい部分と通過しにくい部分とが生じる流れムラが発生しやすい。しかし、流入室31に球状浮遊濾材33を配設することによって原水の流れが拡散され、流れムラが生じにくくなるため、濾材層32に係る水平方向の濾過面積を有効に活用することができ、濾過効率の一層の向上を図ることができる。
【0031】
ここで、本実施形態に係る球状浮遊濾材33はポリプロピレン製であるため、中実であっても流入室31内において原水によって浮遊し、濾過効率の向上を図ることができるが、球状浮遊濾材33は中空であることが特に好ましい。本実施形態に係る流入室31に球状浮遊濾材33を配設することによって濾過効率の向上が図られるとともに、球状浮遊濾材33の浮力によって受板39が押し上げられることとなるため、受板39に作用する濾材層32の荷重軽減を図ることができ、受板39の強度軽減、更には濾過装置本体12に掛かる荷重の軽減を図ることができる。そして、この球状浮遊濾材33を中空とすることによって、原水の流れによる遊動も大きくなるため、流れの拡散効果が更に期待できるとともに、球状浮遊濾材33の浮力も大きくなるため、受板39の強度軽減効果及び濾過装置本体12の荷重軽減効果の向上を図ることができる。
【0032】
また更に、本実施形態に係る球状浮遊濾材33を中空とすることによって、球状浮遊濾材33による保温効果が得られるため、中山間地域の冬期における濾過装置本体12内の凍結防止効果が期待できる。
【0033】
本実施形態に係る浄水槽40には、浄水槽40の下方に流出管42が配設され、底部に浄水槽排泥管44が配設されている。濾過装置本体12内において、濾過槽30に係る流入室31に流入した原水は濾材層32を通過し、越流壁16を越流して浄水槽40へ流入した濾過水は、浄水槽40に配設された流出管42から給水設備等(不図示)へ送られることとなる。
【0034】
なお、本実施形態に係る濾過槽30と浄水槽40との間に配設される越流壁16の上端縁にはVノッチ52が形成されていることが好ましい。このVノッチ52を形成することによって、Vノッチ52を通過する濾過水の高さを確認することによって濾過速度の把握が容易となるため、濾過速度の調整を容易に実施することができる。なお、
図3において、Vノッチ52における高さ方向の中間位置に配設された符号53で示す部材は濾過速度目盛棒である。例えば、濾過槽30から浄化槽40へ流出する濾過水が濾過速度目盛棒53を超えている場合は、着水槽20への原水の流入量を調整したり、着水槽20から濾過槽30に係る流入室31への原水の流入量を調整したりして、濾過速度を容易に調整することができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、次に本発明の実施形態に係る濾過装置10の洗浄方法について説明する。本実施形態の濾過装置10においては、濾過槽30に係る流入室31が、最も汚れが沈下して溜まりやすい場所となるが、最も簡易的な洗浄方法は、濾材層面排泥管36、流出管42及び浄水槽排泥管44にそれぞれ配設されたバルブ(不図示)を閉栓するとともに濾過槽排泥管38に配設されたバルブ(不図示)を開栓した状態で、濾過槽流入管34から原水を流入室31に導水することによって、流入室31に堆積した泥や砂等を容易に排出することができる。或いは、導通管28に配設されたバルブ(不図示)を閉栓し、着水槽流入管22に導水される原水を分岐させて洗浄管50に導水することによって、流入室31の洗浄とともに濾材層32の洗浄も行うことができる。
【0036】
流入室31の洗浄、更には濾材層32の洗浄が完了すると、濾過槽排泥管38に係るバルブの閉栓及び洗浄管50への原水の導水を停止する。導通管28に係るバルブを閉栓していた場合はこのバルブを開栓し、濾材層面排泥管36に配設されたバルブ(不図示)を開栓することによって、濾材層32内の汚れや濾材層32の上面に堆積した汚れを排出することができる。
【0037】
濾材層32の上面に堆積した汚れが排出できたら濾材層面排泥管36に係るバルブを閉栓し、流出管42に係るバルブを開栓することによって、濾過水が流出管42から送水されることとなる。なお、浄水槽40に貯留される濾過水に濁質がある場合は、流出管42に係るバルブを閉栓した上で浄水槽排泥管44に係るバルブを開栓し、濾過水に濁質が確認できなくなるまで排水する。
【0038】
以上のように、本実施形態の濾過装置10は、それぞれの管部材に配設されたバルブの開閉操作によって容易に濾過装置本体12内の洗浄作業を行うことができ、維持管理が非常に容易となる。なお、着水槽20内に堆積した汚れは、導通管28に係るバルブを閉栓し、着水槽排泥管26を開栓することによって容易に排出することができる。
【0039】
以上、本発明の濾過装置の実施形態について詳述したが、本発明の技術的思想を実質的に限定するものと解してはならない。本発明はその要旨を逸脱しない範囲で、当業者の創意と工夫により、適宜に改良、変更又は追加をしながら実施できる。
【符号の説明】
【0040】
10:濾過装置
12:濾過装置本体
14:隔壁
16:越流壁
20:着水槽
22:着水槽流入管
24:着水槽流出管
26:着水槽排泥管
28:導通管
30:濾過槽
31:流入室
32:濾材層
33:球状浮遊濾材
34:濾過槽流入管
36:濾材層面排泥管
38:濾過槽排泥管
39:受板
40:浄水槽
42:流出管
44:浄水槽排泥管
50:洗浄管
52:Vノッチ
53:濾過速度目盛棒