(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】洗浄装置
(51)【国際特許分類】
B08B 3/02 20060101AFI20240410BHJP
【FI】
B08B3/02 F
(21)【出願番号】P 2021083196
(22)【出願日】2021-05-17
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】517062713
【氏名又は名称】有限会社コネクト電機
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】小林 和俊
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-081241(JP,A)
【文献】特開昭62-066695(JP,A)
【文献】実開昭59-143506(JP,U)
【文献】特開2018-142647(JP,A)
【文献】特開2010-221176(JP,A)
【文献】特開平07-171447(JP,A)
【文献】国際公開第2020/039612(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/02
H01L 21/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端から洗浄液を噴射可能に形成され、レーザー加工機に固定されたレンズ又はレンズ保護ガラスの洗浄領域に前記洗浄液を噴射するノズルを備える洗浄装置において、
前記ノズルと、前記ノズルの先端と反対側の基端側が接続されるベース部材と、前記ノズルの周囲を覆う筒状に形成されると共に、基端側が前記ベース部材に覆われるカバー手段とを
有した洗浄部ユニットを備え、
前記カバー手段は、その先端が前記レンズ又はレンズ保護ガラスに当接された状態において前記レンズ又はレンズ保護ガラスの洗浄領域を取り囲
み、
前記洗浄装置は、前記洗浄液を貯留可能な第1容器と、その第1容器に圧縮気体を供給可能な供給手段と、その供給手段から供給される圧縮気体により前記第1容器に貯留された前記洗浄液を前記ノズルに供給する供給パイプと、前記ノズルから噴射された前記洗浄液を前記洗浄部ユニットの外部に排出する排出パイプとを備え、
前記ノズルから前記洗浄液が噴射された後、前記ノズルから圧縮気体のみが噴射され、
前記供給パイプ及び前記排出パイプを弾性変形させて前記洗浄部ユニットの向き変更することにより、前記ノズルから噴射される前記洗浄液の噴射方向が変更可能であることを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記カバー手段、又は、前記ベース部材の少なくとも一方には、前記カバー手段およびベース部材により囲まれる空間を
前記排出パイプに連通する排出口が形成され、
前記排出口は、前記ノズルの先端よりも基端側に形成されることを特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記カバー手段は、先端側から基端側に向かうにつれて内径が大きく形成され、
前記排出口は、前記ベース部材に形成されると共に、前記カバー手段の基端側の内周面に沿う位置に形成されることを特徴とする請求項2記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記カバー手段は、前記ベース部材に対して着脱可能に配設され
、
前記ノズルが固定された状態の前記ベース部材から前記カバー手段を取り外し可能であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記カバー手段は、前記ベース部材側に配設される基端部材と、その基端部材の先端側に着脱可能に配設される先端部材と、から構成され、
前記先端部材は、その先端が前記レンズ又はレンズ保護ガラスに当接された状態において前記レンズ又はレンズ保護ガラスの洗浄領域を取り囲むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記先端部材は、弾性変形可能な弾性体から形成されることを特徴とする請求項5記載の洗浄装置。
【請求項7】
前記先端部材は、先端側に向かうにつれて内径が大きく形成され、先端側に向かって厚みが薄くされることを特徴とする請求項6記載の洗浄装置。
【請求項8】
前記先端部材の基端には、前記基端部材の筒状の先端部分が挿入される凹部が形成され、
前記基端部材に取り付けられる前記先端部材を、先端の内径が異なる前記先端部材に交換可能であることを特徴とする請求項6記載の洗浄装置。
【請求項9】
前記カバー手段、又は、前記ベース部材の少なくとも一方には、前記カバー手段およびベース部材により囲まれる空間を
前記排出パイプに連通する排出口が形成され、
前記洗浄装置は、前記排出
パイプと連通され、前記排出口から排出される
前記洗浄液を貯留可能な第2容器を備えることを特徴とする請求項
1から8
のいずれかに記載の洗浄装置。
【請求項10】
前記第1容器は、少なくとも一部が内部を透視可能な透過性の材料から形成されることを特徴とする請求項
1から9
のいずれかに記載の洗浄装置。
【請求項11】
前記カバー手段は、前記レーザー加工機に保持される保持部を備えることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄装置に関し、特に、レンズ又はレンズ保護ガラスの洗浄領域以外に洗浄液が飛散することを抑制できる洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、洗浄液の噴射位置をレンズに対して適正な位置に調整したノズルから洗浄液を噴射してレンズを洗浄する洗浄装置がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-112495号公報(段落0011~0020及び
図1など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の洗浄装置では、レンズの洗浄領域以外に洗浄液が飛散するという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記した問題点を解決するためになされたものであり、レンズ又はレンズ保護ガラスの洗浄領域以外に洗浄液が飛散することを抑制できる洗浄装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の洗浄装置は、先端から洗浄液を噴射可能に形成され、レーザー加工機に固定されたレンズ又はレンズ保護ガラスの洗浄領域に前記洗浄液を噴射するノズルを備えるものであり、前記ノズルと、前記ノズルの先端と反対側の基端側が接続されるベース部材と、前記ノズルの周囲を覆う筒状に形成されると共に、基端側が前記ベース部材に覆われるカバー手段とを有した洗浄部ユニットを備え、前記カバー手段は、その先端が前記レンズ又はレンズ保護ガラスに当接された状態において前記レンズ又はレンズ保護ガラスの洗浄領域を取り囲み、前記洗浄装置は、前記洗浄液を貯留可能な第1容器と、その第1容器に圧縮気体を供給可能な供給手段と、その供給手段から供給される圧縮気体により前記第1容器に貯留された前記洗浄液を前記ノズルに供給する供給パイプと、前記ノズルから噴射された前記洗浄液を前記洗浄部ユニットの外部に排出する排出パイプとを備え、前記ノズルから前記洗浄液が噴射された後、前記ノズルから圧縮気体のみが噴射され、前記供給パイプ及び前記排出パイプを弾性変形させて前記洗浄部ユニットの向き変更することにより、前記ノズルから噴射される前記洗浄液の噴射方向が変更可能である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の洗浄装置によれば、ノズルの先端と反対側の基端側が接続されるベース部材と、ノズルの周囲を覆う筒状に形成されると共に、基端側がベース部材に覆われるカバー手段とを備え、カバー手段は、その先端がレンズ又はレンズ保護ガラスに当接された状態においてレンズ又はレンズ保護ガラスの洗浄領域を取り囲むので、ノズルから噴射された洗浄液がレンズ又はレンズ保護ガラスの洗浄領域以外に飛散することを抑制できる。
また、請求項1記載の洗浄装置によれば、洗浄液を貯留可能な第1容器と、その第1容器に圧縮気体を供給可能な供給手段と、その供給手段から供給される圧縮気体により第1容器に貯留された洗浄液をノズルに供給する供給パイプと、ノズルから噴射された洗浄液を洗浄部ユニットの外部に排出する排出パイプとを備え、ノズルから洗浄液が噴射された後、ノズルから圧縮気体のみが噴射される。これにより、レンズ又はレンズ保護ガラスに付着した洗浄液と、カバー手段の内側に付着した洗浄液と、ノズル及びベース部材に付着した洗浄液とを圧縮気体により流動させて排出パイプから排出できる。
また、請求項1記載の洗浄装置によれば、供給パイプ及び排出パイプを弾性変形させて洗浄部ユニットの向き変更することにより、ノズルから噴射される洗浄液の噴射方向が変更可能であるので、重力方向や水平方向に向けて洗浄液を噴射できる。
【0008】
請求項2記載の洗浄装置によれば、請求項1記載の洗浄装置の奏する効果に加え、カバー手段、又は、ベース部材の少なくとも一方には、カバー手段およびベース部材により囲まれる空間を排出パイプに連通する排出口が形成され、排出口は、ノズルの先端よりも基端側に形成されるので、ノズルから洗浄液を上向きに噴射して使用する場合に、レンズ又はレンズ保護ガラスを洗浄した後の洗浄済みの洗浄液を、ノズルの基端側に流下させて排出口から排出できる。従って、洗浄済みの洗浄液が、ノズルから噴射される洗浄前の洗浄液と共にレンズ又はレンズ保護ガラスに噴射されることを抑制できる。その結果、レンズ又はレンズ保護ガラスの洗浄効果が低下することを抑制できる。
【0009】
また、ノズルの先端よりも基端側に排出口が形成されるので、ノズルから噴射される洗浄液が排出口から直接排出されることを抑制できる。
【0010】
請求項3記載の洗浄装置によれば、請求項2記載の洗浄装置の奏する効果に加え、カバー手段は、先端側から基端側に向かうにつれて内径が大きく形成され、排出口は、ベース部材に形成されると共に、カバー手段の基端側の内周面に沿う位置に形成されるので、ノズルから洗浄液を水平方向に噴射して使用する場合に、洗浄済みの洗浄液をカバー手段の内周面に沿って排出口に向かって流下させやすくでき、カバー手段の内側に洗浄済みの洗浄液が溜まることを抑制できる。よって、洗浄済みの洗浄液が、ノズルから噴射される洗浄前の洗浄液と共にレンズ又はレンズ保護ガラスに噴射されることを抑制できる。その結果、レンズ又はレンズ保護ガラスの洗浄効果が低下することを抑制できる。
【0011】
請求項4記載の洗浄装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載の洗浄装置の奏する効果に加え、カバー手段は、ベース部材に対して着脱可能に配設され、ノズルが固定された状態のベース部材からカバー手段を取り外し可能であるので、先端の内径が異なるカバー手段に交換することでレンズ又はレンズ保護ガラスの洗浄領域を変更できる。よって、洗浄領域の大きさが異なるレンズ又はレンズ保護ガラスを洗浄する際に、ベース部材およびノズルを交換する必要がなくなる。即ち、ベース部材およびノズルを共用化できる。その結果、洗浄装置の部品の種類が多くなることを抑制できる。
【0012】
また、ベース部材からカバー手段を取り外すことができるので、カバー手段の内部、ノズル及びベース部材を清掃しやすくできる。
【0013】
請求項5記載の洗浄装置によれば、請求項1から4のいずれかに記載の洗浄装置の奏する効果に加え、カバー手段は、ベース部材側に配設される基端部材と、その基端部材の先端側に着脱可能に配設される先端部材と、から構成され、先端部材は、その先端がレンズ又はレンズ保護ガラスに当接された状態においてレンズ又はレンズ保護ガラスの洗浄領域を取り囲むので、先端部材のみを交換できる。
【0014】
請求項6記載の洗浄装置によれば、請求項5記載の洗浄装置の奏する効果に加え、先端部材は、弾性変形可能な弾性体から形成されるので、先端部材の先端をレンズ又はレンズ保護ガラスに当接させた際に、先端部材とレンズ又はレンズ保護ガラスとの密着性を高めることができる。そのため、先端部材とレンズ又はレンズ保護ガラスとの間からレンズ又はレンズ保護ガラスの洗浄領域以外に洗浄液が飛散することを抑制できる。
【0015】
請求項7記載の洗浄装置によれば、請求項6記載の洗浄装置の奏する効果に加え、先端部材は、先端側に向かうにつれて内径が大きく形成され、先端側に向かって厚みが薄くされるので、先端部材の先端をレンズ又はレンズ保護ガラスに当接させた際の先端部材とレンズ又はレンズ保護ガラスとの当接圧を高めやすくできる。そのため、先端部材とレンズ又はレンズ保護ガラスとの間からレンズ又はレンズ保護ガラスの洗浄領域以外に洗浄液が飛散することを抑制できる。
【0016】
請求項8記載の洗浄装置によれば、請求項6記載の洗浄装置の奏する効果に加え、先端部材の基端には、基端部材の筒状の先端部分が挿入される凹部が形成され、基端部材に取り付けられる先端部材を、先端の内径が異なる先端部材に交換することでレンズ又はレンズ保護ガラスの洗浄領域を変更できる。よって、洗浄領域の大きさが異なるレンズ又はレンズ保護ガラスを洗浄する際にカバー手段の全体を交換する必要がなくなる。従って、カバー手段の全体を交換する場合に比べて、洗浄領域の大きさが異なるレンズ又はレンズ保護ガラスを洗浄する際に必要な交換部品(先端部材)を小型化できる。その結果、交換部品の保管に必要なスペースを小さくできる。
【0017】
請求項9の洗浄装置によれば、請求項1から8のいずれかに記載の洗浄装置の奏する効果に加え、カバー手段、又は、ベース部材の少なくとも一方には、カバー手段およびベース部材により囲まれる空間を排出パイプに連通する排出口が形成され、洗浄装置は、排出パイプと連通され、排出口から排出される洗浄液を貯留可能な第2容器を備えるので、洗浄済みの洗浄液を第2容器に回収することができる。そのため、引火性の洗浄液が洗浄装置の外部に排出され、その外部に排出された洗浄液に引火することを抑制できる。その結果、レンズ又はレンズ保護ガラスの洗浄作業の安全性を向上できる。
【0018】
また、レンズ又はレンズ保護ガラスの洗浄後に圧縮気体のみをレンズ又はレンズ保護ガラスに噴射して、レンズ又はレンズ保護ガラスに付着した洗浄液と、カバー手段の内側に付着した洗浄液と、ノズル及びベース部材に付着した洗浄液とを圧縮気体により流動させて排出口から排出できる。その結果、レンズ又はレンズ保護ガラスの洗浄作業の作業効率を向上できる。
【0019】
請求項10記載の洗浄装置によれば、請求項1から9のいずれかに記載の洗浄装置の奏する効果に加え、第1容器は、少なくとも一部が内部を透視可能な透過性の材料から形成されるので、第1容器内の洗浄液の残量を確認できる。そのため、レンズ又はレンズ保護ガラスを直接視認しなくてもレンズ又はレンズ保護ガラスの洗浄が終わったか否かを確認できる。その結果、レンズ又はレンズ保護ガラスの洗浄作業の作業効率を向上できる。
【0020】
請求項11記載の洗浄装置によれば、請求項1から10のいずれかに記載の洗浄装置の奏する効果に加え、カバー手段は、レーザー加工機に保持される保持部を備えるので、レンズ又はレンズ保護ガラスの洗浄作業中にカバー手段またはベース部材を手で保持する必要がなくなる。その結果、レンズ又はレンズ保護ガラスの洗浄作業の作業効率を向上できる。
【0021】
また、レンズ又はレンズ保護ガラスの洗浄作業中にカバー手段をレンズ又はレンズ保護ガラスに押し当てる力が弱まることを抑制できる。そのため、レンズ又はレンズ保護ガラスの洗浄作業中にカバー手段とレンズ又はレンズ保護ガラスとの間に隙間が空いて、カバー手段とレンズ又はレンズ保護ガラスとの間からレンズ又はレンズ保護ガラスの洗浄領域以外に洗浄液が飛散することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態における洗浄装置の正面図である。
【
図2】(a)は、洗浄部ユニットの正面図であり、(b)は、基端部材および先端部材の正面図であり、(c)は、ベース部材および噴射ノズルの正面図である。
【
図3】(a)は、レーザー加工機および洗浄部ユニットの模式断面図であり、(b)は、第2実施形態におけるレーザー加工機および洗浄部ユニットの模式断面図である。
【
図4】(a)及び(b)は、第3実施形態におけるレーザー加工機および洗浄部ユニットの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、
図1から
図3(a)を参照して、本発明の第1実施形態における洗浄装置1について説明する。
【0024】
初めに、
図1を参照して、洗浄装置1の全体構成について説明する。
図1は、第1実施形態における洗浄装置1の正面図である。なお、
図1では、噴射ノズル62、第4パイプ74の一部および土台51の凹部51a1が鎖線で図示されると共に、レーザー加工機5の断面が模式的に図示される。
【0025】
図1に示すように、第1実施形態における洗浄装置1は、レーザー加工機5のレンズ2を洗浄するための装置である。洗浄装置1により洗浄されるレンズ2は、レーザー加工機5のレーザー光(CO2レーザー)を集光する、又は、レーザー光の収差を抑えるためのレンズであり、レーザー加工機5のレーザー装置本体3に配設される。また、レンズ2は、全体がセレン化亜鉛で構成されると共に、レーザー光の透過率を向上させる(レンズ2の表面での光の反射を減少させる)ためにセレン化亜鉛の表面にセレン化亜鉛と異なる屈折率の透明な被膜(ARコーテイング)が形成される。
【0026】
ここで、ARコーティングは、セレン化亜鉛に対して薄く形成されるため、損傷しやすい。そのため、レンズ2に直接触れてレンズ2の洗浄領域を洗浄した場合にセレン化亜鉛の表面からARコーティングが剥離したり、ARコーティングが損傷する可能性が高い。また、セレン化亜鉛は、人体にとって有毒である。従って、ARコーティングが剥離したり、損傷したりすると危険であった。そのため、洗浄装置1では、ARコーティングが剥離したり、損傷しないように、洗浄液をレンズ2に噴射して洗浄する構成とされる。
【0027】
洗浄装置1は、圧縮気体を受け入れ可能に構成されると共にその受け入れた圧縮気体を所定の圧力に調整する調整装置30と、その調整装置30により所定の圧力に調整した圧縮気体の供給を許容する許容状態、又は、規制する規制状態に切り替え可能なボタン装置40と、レンズ2を洗浄前の洗浄液を貯留可能とされ、ボタン装置40が許容状態とされることで貯留された洗浄液を圧縮気体と共に供給可能に構成される第1容器10と、その第1容器10から供給される洗浄液および圧縮気体をレンズ2に向けて噴射可能な洗浄部ユニット60と、洗浄部ユニット60からレンズ2に向けて噴射された後のレンズ洗浄後の洗浄液が貯留される第2容器20と、それら第1容器10、第2容器20、調整装置30、及び、ボタン装置40が載置される載置台50と、を主に備えて構成される。なお、圧縮気体には、空気、又は、非可燃性の窒素や炭酸ガスを圧縮した気体が用いられる。
【0028】
また、洗浄装置1には、第1容器10、第2容器20、調整装置30、ボタン装置40、及び、洗浄部ユニット60を繋ぐ中空状の第1~第6パイプ71~76が配設され、第1~第6パイプ71~76により、圧縮気体または洗浄液が第1容器10から洗浄部ユニット60を介して第2容器20まで供給される。
【0029】
載置台50は、土台51と、その土台51の上面側の2箇所に設けられる把持部52と、第5パイプ75に第3パイプ73を連通するための第1カプラ53と、第6パイプ76に第4パイプを連通するための第2カプラ54と、それら第1カプラ53及び第2カプラ54を土台51に設けるためのブラケット55と、を主に備える。
【0030】
土台51の上面には、第1容器10、第2容器20、調整装置30、及び、ボタン装置40が固定され、土台51の上面に凹設される凹部51a1に第2容器20が収容される。
【0031】
把持部52は、洗浄装置1を持ち運ぶ際の持ち手となる部分であり、水平方向に離れた位置に一対配設される。これにより、洗浄装置1の持ち運びを簡易にできる。
【0032】
第1カプラ53及び第2カプラ54は、後述する洗浄部ユニット60の第3カプラ64及び第4カプラ65に一端が接続される第5パイプ75及び第6パイプ76の他端が着脱可能に接続される。
【0033】
調整装置30は、土台51に配設されるブラケット55の側面に固定される。また、調整装置30は、コンプレッサー(図示しない)から供給される圧縮気体を受け入れ可能な受入口31と、その受入口31から受け入れた圧縮気体を所定の圧力に調整可能な圧力調整器32と、圧力調整器32により所定の圧力に調整された圧縮気体を所定の流量で供給するための流量調整器33と、を主に備え、圧力調整器32により所定の圧力に調整した圧縮気体を流量調整器33を介して第1パイプ71に供給可能とされる。
【0034】
ボタン装置40は、レンズ2を洗浄する作業者が押し込み操作可能な押し釦41と、その押し釦41が配設されると共に、第1パイプ71及び第2パイプ72が連通される切替部42と、を主に備え、第1パイプ71と第2パイプ72との連通状態を切替部42により切り替え可能に構成される。また、切替部42による連通状態の切り替えは、押し釦41の押し込み操作に連動されており、押し釦41の押し込み操作に伴って第1パイプ71と第2パイプ72とが連通する状態とされ、第2パイプ72を通過する圧縮気体が第1容器10に上方側から供給される。
【0035】
第1容器10は、内部に洗浄液を貯留可能な空間を有する貯留部11と、その貯留部11の上端側に連通され貯留部11に洗浄液を投入可能とする投入部12と、それら貯留部11と投入部12との連通部分に配設され、貯留部11と投入部12との連通を遮断するための遮断コック13と、貯留部11に配設され貯留部11内の圧力が所定よりも高くなる場合に貯留部11内の圧力を逃がす圧力逃がし弁(図示しない)と、を主に備える。
【0036】
貯留部11は、その貯留部11の側面側を構成する筒状部材11aと、その筒状部材11aの両端を覆う一対の板部材11bとから構成される。また、貯留部11は、筒状部材11aが光透過性の材料から形成されており、貯留部11に貯留された洗浄液の残量を筒状部材11aを介して視認可能とされる。
【0037】
また、貯留部11の内部上方側には、貯留部11の内側面に沿う外形に形成される分散板(図示しない)が、貯留部11の内側面と所定の隙間を空けて配置される。よって、第2パイプ72を介して貯留部11の上方側から貯留部11の内部に圧縮気体が供給されると、その圧縮気体が分散板にぶつかり貯留部11の内側面に沿って下方に流れる。この貯留部11の内側面に沿って下方に流れる圧縮気体により、貯留部11の内側面に付着する洗浄液の水滴が下方に流される。その結果、貯留部11に貯留された洗浄液の残量を筒状部材11aを介して視認しやすくできる。
【0038】
投入部12は、下方側の内径に比べて上方側の内径が大きくされる筒状に形成される。これにより、投入部12の上方から洗浄液を投入しやすくされる。また、投入部12に投入される洗浄液は、遮断コック13の遮断が解除された際に投入部12から貯留部11への流入が可能とされる。
【0039】
また、遮断コック13の下流側(貯留部11側)に第2パイプ72が連通されており、洗浄液を貯留部11に投入する位置と、圧縮気体を貯留部11に供給する位置とが同一の位置とされる。これにより、洗浄液と圧縮気体との流下経路(上述した分散板にぶつかり貯留部11の内側面に沿って下方に流れる経路)を同一とできるので、貯留部11の内側面に付着する洗浄液の水滴を圧縮気体で下方に流しやすくできる。その結果、貯留部11に貯留された洗浄液の残量を筒状部材11aを介して視認しやすくできる。
【0040】
なお、第1容器10には、下方側に第3パイプ73が連通されており、第2パイプ72から第1容器10の上方側に圧縮気体が供給されることで、第3パイプ73及びその第3パイプ73が連通される第5パイプ75を介して洗浄部ユニット60に洗浄液および圧縮気体を供給できる。
【0041】
よって、洗浄装置1では、第1容器10に貯留される洗浄液が圧縮気体により洗浄部ユニット60に供給されるので、第1容器10と洗浄部ユニット60との間(即ち、第3パイプ73の供給路上)に電気で稼働する電動ポンプを配設して、第1容器10に貯留される洗浄液を洗浄部ユニット60に供給するものに比べて、アセトンや無水アルコールといった引火性の洗浄液に引火することを抑制できる。その結果、レンズの洗浄作業の安全性を向上できる。
【0042】
さらに、洗浄装置1では、第1容器10に貯留される洗浄液が圧縮気体により洗浄部ユニット60に供給されるので、レンズ洗浄後に圧縮気体のみをレンズ2に噴射して、レンズ2に付着した洗浄液と、洗浄部ユニット60の内部(後述するカバー手段63の内側、噴射ノズル62及びベース部材61)に付着した洗浄液とを圧縮気体により流動させて洗浄部ユニット60(後述する第2開口部61b)から排出できる。その結果、レンズ2の洗浄作業の作業効率を向上できる。
【0043】
また、洗浄装置1では、第1容器10の洗浄液の最大貯留量がレンズ2を1回洗浄する分量に設定される。これにより、レンズ2を必要以上に洗浄することを抑制できる。また、第1容器10は、筒状部材11aが光透過性の材料から形成され、内部に貯留される洗浄液の量を視認可能とされるので、レンズ2を直接視認したり、第1容器10を空けたりすることなく、レンズ2の洗浄が終わったか否かを確認できる。その結果、レンズ2の洗浄作業の作業効率を向上できる。
【0044】
洗浄部ユニット60は、第5パイプ75から供給される洗浄液および圧縮気体を噴射ノズル62からレンズ2に向かって噴射可能に構成されると共に、レンズ2に噴射された後の洗浄液を第6パイプ76から排出して、第6パイプ76に連通される第4パイプ74を介して第2容器20に供給可能に構成される。なお、洗浄部ユニット60についての詳しい説明は後述する。
【0045】
また、第5パイプ75及び第6パイプ76は、弾性変形可能なナイロン又はテフロン(登録商標)系のホースから形成される。これにより、洗浄部ユニット60は、第5パイプ75及び第6パイプ76を弾性変形させて移動可能とされる。そのため、レンズ2がレーザー装置本体3に配設された状態で洗浄部ユニット60をレンズ2に近づけてレンズ2を洗浄することができる。
【0046】
また、レンズ2に対して洗浄部ユニット60を移動可能とされるので、レーザー光が重力方向、又は、水平方向のどちらに向けて照射されるレーザー加工機5であっても、洗浄部ユニット60の姿勢を変更して洗浄液をレンズ2に向けて噴射することが可能となる。
【0047】
第2容器20は、内部に洗浄液を貯留可能な空間を有する貯留部21と、貯留部21の上方に設けられ、貯留部21内の空気を抜く空気抜き22と、を主に備える。また、第2容器20には、弾性変形可能なナイロン又はテフロン(登録商標)系のホースから形成される第4パイプ74が上方から挿入される。
【0048】
従って、洗浄装置1では、洗浄部ユニット60に形成される第2開口部61b(
図2(a)参照)を介して排出される洗浄液を第2容器20に貯留することができるので、アセトンや無水アルコールといった引火性の洗浄液が洗浄装置1の外部に排出されて引火することを抑制できる。その結果、レンズ2の洗浄作業の安全性を向上できる。
【0049】
なお、第4パイプ74は、貯留部21の上蓋の脱落防止器(図示せず)により貯留部21から抜け出る方向の変位が規制される。これにより、第4パイプ74を介して貯留部21に洗浄液や圧縮気体が供給された際の圧力上昇で、貯留部21から第4パイプ74が抜け出ることを抑制できる。
【0050】
また、第2容器20の洗浄液を排出する際には、貯留部21の上蓋に配設された第4パイプ74と共に貯留部21の上蓋を取り外し、凹部51aから第2容器20を上方に引き抜くことで、第2容器20を載置台50から取り外して、第2容器20のみを所定の排出場所に持ち運ぶことが可能とされる。なお、第2容器20の運搬中は、上蓋とは異なる蓋で洗浄液が第2容器20から漏れ出ないようにすれば良い。
【0051】
次に、
図2及び
図3(a)を参照して、洗浄部ユニット60の詳細構成について説明する。
図2(a)は、洗浄部ユニット60の正面図であり、
図2(b)は、筒状部材68及びパッキン69の正面図であり、
図2(c)は、ベース部材61及び噴射ノズル62の正面図である。
図3(a)は、レーザー加工機5及び洗浄部ユニット60の模式断面図である。
【0052】
また、
図2(a)及び
図2(b)では、カバー手段63の内側の一部が鎖線で図示され、
図2(c)では、第3カプラ64、第4カプラ65及びノズル部材67の一部が鎖線で図示される。さらに、
図2(a)では、噴射ノズル62の先端から噴射される洗浄液および圧縮気体の噴射方向と、レンズ2を洗浄後の洗浄液の流下方向とが矢印で図示され、
図2(a)~(c)では、ベース部材61の中心を通過する軸Oが1点鎖線で図示され、
図3(a)では、軸Oを通る平面で切断した際の断面が模式的に図示される。
【0053】
図2及び
図3(a)に示すように、洗浄部ユニット60は、円盤状のベース部材61と、そのベース部材61の一面側に配設される噴射ノズル62と、噴射ノズル62を取り囲む筒状に形成され基端側がベース部材61に覆われるカバー手段63と、ベース部材61の一面側と反対側の他面側に配設される第3カプラ64及び第4カプラ65と、を主に備え、第3カプラ64を介して噴射ノズル62に供給される洗浄液および圧縮気体を噴射ノズル62の先端から噴射可能とされ、噴射ノズル62の先端から噴射された洗浄液を第4カプラ65を介して排出可能とされる。
【0054】
ベース部材61は、円盤状の中心部に開口され第3カプラ64の一端側が挿入される第1開口部61aと、その第1開口部61aよりもベース部材61の径方向外側に開口される第2開口部61bと、を主に備える。
【0055】
第2開口部61bは、カバー手段63及びベース部材61により囲まれる空間を外部に連通するための開口であり、内周面がカバー手段63の内周面に沿う位置に形成される。また、ベース部材61の他面側には、第2開口部61bを取り囲む筒状の筒部61cが配設され、その筒部61cの内周面に螺設される雌ねじに第4カプラ65が締結固定される。
【0056】
噴射ノズル62は、軸O方向に長い柱状に形成される延長部材66と、その延長部材66の先端側に締結固定されるノズル部材67と、を主に備え、軸Oに沿って延長部材66及びノズル部材67に貫通形成される貫通孔(
図2(a)参照)を通して、第3カプラ64から供給される洗浄液および圧縮気体をノズル部材67の先端から噴射可能に構成される。
【0057】
延長部材66は、軸O方向における両端部にノズル部材67及び第3カプラ64を締結固定するための雌ねじが設けられる。ここで上記したように第3カプラ64は、一端側がベース部材61の第1開口部61aに挿入される。そのため、第3カプラ64の一端側に延長部材66を締結固定することで、第3カプラ64と共に延長部材66(噴射ノズル62)をベース部材61に配設することができる。よって、第3カプラ64と延長部材66(噴射ノズル62)との2部材を締結固定するためのそれぞれの雌ねじをベース部材61に設ける場合に比べて、ベース部材61の軸O方向における厚みを薄くできる。
【0058】
なお、洗浄装置1は、軸O方向の長さが異なる延長部材66に交換することで、噴射ノズル62の基端から先端までの長さを変更することが可能となっている。
【0059】
ノズル部材67は、洗浄液および圧縮気体をレンズ2の洗浄領域に噴射するためのノズルであり、軸Oに沿って貫通形成される貫通孔(
図2(a)参照)が先端側で縮径される。これにより、ノズル部材67の先端から噴射される洗浄液および圧縮気体の勢いを高めることができる。
【0060】
カバー手段63は、ノズル部材67から噴射される洗浄液が周囲に飛散することを抑制するものであり、軸O方向において基端から先端までの長さが、噴射ノズル62の基端から先端までの長さよりも長く形成される。
【0061】
なお、カバー手段63及びベース部材61により囲まれる空間を外部に連通する第2開口部61bは、噴射ノズル62の先端よりも基端側に形成される。そのため、噴射ノズル62の先端から洗浄液および圧縮気体を上向きに噴射して使用する場合(即ち、軸O方向を重力方向に向けて使用する場合)に、レンズ2を洗浄した後のレンズ洗浄済みの洗浄液を、噴射ノズル62の基端側に流下させて、第2開口部61bから排出できる。従って、レンズ洗浄済みの洗浄液が、噴射ノズル62から噴射されるレンズ洗浄前の洗浄液と共にレンズに噴射されることを抑制できる。その結果、レンズ2の洗浄効果が低下することを抑制できる。
【0062】
さらに、洗浄部ユニット60は、第2開口部61bが、噴射ノズル62の先端よりも基端側に形成されるので、噴射ノズル62から噴射される洗浄液が第2開口部61bから直接排出されることを抑制できる。
【0063】
また、レンズ2の洗浄中は、カバー手段63の先端がレンズ2により覆われる。よって、噴射ノズル62から洗浄液および圧縮気体を噴射すると、カバー手段63及びベース部材61により囲まれる空間の内圧が高まるので、その内圧の高まりにより、レンズ2を洗浄した後のレンズ洗浄済みの洗浄液を第2開口部61bから排出しやすくできる。
【0064】
また、カバー手段63は、基端側に配設される筒状部材68と、その筒状部材68の先端側に配設されるパッキン69との2部材から形成される。これにより、パッキン69が劣化した場合には、パッキン69のみを交換可能とされる。
【0065】
筒状部材68は、略一定の厚みの円筒状に形成されるカバー部68aと、そのカバー部68aの基端から径方向外側に広がる板状に形成される保持部68bと、を主に備え、図示しないクランプ(例えば、サニタリークランプ)により、ベース部材61の一面側に保持部68b(カバー手段63)が着脱可能に配設される。カバー手段63がベース部材61に着脱可能に配設されるので、ベース部材61からカバー手段63を取り外して、カバー手段63の内部、噴射ノズル62及びベース部材61をレンズ洗浄後に清掃しやすくできる。なお、保持部68bとベース部材61との間には、洗浄液に対し耐溶剤性を有する材料から形成されるパッキン(図示しない)が介設される。これにより、筒状部材68とベース部材61との間から洗浄液が洗浄部ユニット60の外部に漏れ出ることが抑制される。
【0066】
また、筒状部材68のカバー部68aには、先端側から基端側に向かうにつれて内径が大きく形成される拡径部68a1が形成され、軸Oと直交する方向において拡径部68a1がノズル部材67の先端と重なる位置に配置される。これにより、レンズ2に向かって噴射された後、レンズ2によりベース部材61側に跳ね返る洗浄液(レンズ洗浄済みの洗浄液)及び圧縮気体をベース部材61側に回り込みやすくできる(
図2(a)の矢印を参照)。よって、レンズ2の洗浄後の洗浄液が、ノズル部材67から噴射される洗浄液と共にレンズ2に向かって噴射されることを抑制できる。その結果、レンズ2の洗浄効果を向上できる。
【0067】
さらに、拡径部68a1を備えた上で、カバー手段63の内周面に沿う位置に第2開口部61bが形成されるので、ノズルから洗浄液を水平方向に噴射して使用する場合(即ち、軸O方向を水平方向に向けて使用する場合)には、第2開口部61bを第1開口部61aの下方側に配置した状態とすることで、レンズ洗浄済みの洗浄液をカバー手段63の内周面に沿って第2開口部61bに向かって流下させやすくでき、カバー手段63の内側にレンズ洗浄済みの洗浄液が留まることを抑制できる。よって、レンズ洗浄済みの洗浄液が、噴射ノズル62から噴射されるレンズ洗浄前の洗浄液と共に、レンズ2に噴射されることを抑制できる。その結果、レンズ2の洗浄効果が低下することを抑制できる。
【0068】
また、レンズ洗浄済みの洗浄液がカバー手段63の内側に留まることを抑制できるので、レンズ洗浄後にカバー手段63の内側に留まる洗浄液を排出する作業を不要とできる。その結果、レンズの洗浄作業の作業効率を向上できる。
【0069】
パッキン69は、先端をレンズ2に当接させる部材であり、弾性変形可能なシリコーン系の弾性部材から形成される。これにより、パッキン69を先端をレンズ2に当接させた際に、レンズ2の被膜が取れたり、レンズ2の表面に傷ができることを抑制できる。
【0070】
また、洗浄部ユニット60のパッキン69の先端をレンズ2に当接させた場合には、パッキン69の先端がレンズ2の洗浄領域を取り囲んだ状態とされる(
図3(a)参照)。この状態(洗浄部ユニット60を手で保持し、パッキン69の先端をレンズ2に当接した状態)で、ボタン装置40の押し釦41(
図1参照)を押し込むことで、噴射ノズル62の先端から洗浄液および圧縮気体を噴射してレンズ2の洗浄領域を洗浄することができる。
【0071】
ここで、レーザー加工機5のレーザー照射によってレーザー加工した際には、レーザー加工する対象物の一部が蒸発、燃焼、気化し細かい粉となってレンズ2に付着する。それらレンズ2に付着した粉をレンズ2から除去(レンズ2を洗浄)するためには、レンズ2のARコーティングを損傷しないアセトンや無水アルコールでの洗浄が必要となる。しかしながら、アセトンや無水アルコールは、一般的な樹脂を溶かす可能性が有る。そのため、レンズ2が配設されるレーザー装置本体3にアセトンや無水アルコールの洗浄液を付着させると、レンズ2を固定するためにレンズ2の周囲に配設される金属製の固定部材の表面塗装やレーザー装置本体3の樹脂製の筐体(レーザー加工機5を構成する部材)が洗浄液により溶解される恐れがあった。
【0072】
これに対し、第1実施形態における洗浄装置1では、パッキン69の先端がレンズ2の洗浄領域を取り囲んだ状態とされるので、洗浄液がレンズ2の洗浄領域の外に漏れ出ることを抑制できる。その結果、レンズ2が配設されるレーザー装置本体3に洗浄液が付着することを抑制できる。
【0073】
また、パッキン69は、その基端に筒状部材68の先端側の形状に凹設される凹部69aを備え、その凹部69aに筒状部材68の先端側が挿入されることで筒状部材68に取着される。なお、凹部69aの凹設方向は、パッキン69の先端をレンズ2に当接させた際に、パッキン69に対して筒状部材68が押し込まれる方向(
図3(a)上方向)と一致する。そのため、レンズ2の洗浄中に筒状部材68からパッキン69が外れることを抑制できる。
【0074】
さらに、パッキン69は、円環状に形成され、先端から軸O方向に突出する当接部69bを備える。当接部69bは、レンズ2を固定するレーザー装置本体3の固定部材の内径と略同一又は若干小さい外径に形成されると共に、軸O方向における突出距離が、レーザー装置本体3の固定部材の端部からレンズ2の端部までの距離よりも大きくされる。これにより、レンズ2を洗浄する際に、当接部69bの先端をレーザー装置本体3の固定部材の内側に挿入してレンズ2に当接させることができる。
【0075】
この場合、パッキン69をレンズ2に当接させる際の押圧力により、パッキン69の当接部69bの先端を弾性変形させた状態にできる(
図3(a)の拡大部分参照)。これにより、レンズ2とパッキン69との密着性を高めることができる。そのため、パッキン69とレンズ2との間からレンズ2の洗浄領域の外に洗浄液が漏れ出ることを抑制できる。その結果、レンズ2が配設されるレーザー装置本体3に洗浄液が付着することを抑制できる。
【0076】
また、パッキン69の当接部69bは、先端側に向かうにつれて内径が大きく形成され、先端側に向かって軸Oと直交する方向における厚みが薄く形成されるので、パッキン69の先端をレンズ2に当接させた際のパッキン69とレンズ2との当接圧を高めやすくできる。そのため、パッキン69とレンズ2との間からレンズの洗浄領域の外に洗浄液が漏れ出ることを抑制できる。その結果、レンズ2が配設されるレーザー装置本体3に洗浄液が付着することを抑制できる。
【0077】
また、パッキン69の当接部69bは、先端側に向かうにつれて内径が大きく形成されるので、先端側に向かうにつれて外径が小さく形成される場合に比べて、レンズ2の洗浄領域を確保しやすくできる。
【0078】
次いで、
図3(b)を参照して、第2実施形態における洗浄部ユニット260について説明する。上記第1実施形態では、レンズ2の直径が寸法A(
図3(a)参照)に設定される場合について説明したが、第2実施形態では、レンズ202の直径が寸法Aよりも大きい寸法B(
図3(b)参照)に設定される場合について説明する。なお、上記した第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付してその説明は省略する。
【0079】
図3(b)は、第2実施形態におけるレーザー加工機205及び洗浄部ユニット260の模式断面図である。なお、
図3(b)では、
図3(a)に示す第1実施形態のレーザー加工機5及び洗浄部ユニット60の断面と対応する位置の断面が模式的に図示される。
【0080】
図3(b)に示すように、第2実施形態におけるレーザー加工機205は、直径の寸法Bに形成されるレンズ201と、そのレンズ201が配設されるレーザー装置本体203と、から主に構成される。
【0081】
第2実施形態における洗浄部ユニット260は、カバー手段263のパッキン269の内径が異なる点を除き第1実施形態における洗浄部ユニット60と同一であるので、パッキン269以外の説明は省略する。
【0082】
パッキン269は、第1実施形態におけるパッキン69とその内径が異なる大きさに形成されており、先端の内径が、レンズ202の洗浄領域に対応する大きさに設定される。よって、直径の寸法が異なるレンズ202を洗浄する際には、先端の内径が異なるパッキン269に交換することでレンズ202の洗浄領域を変更できる。そのため、洗浄領域の大きさが異なるレンズ202を洗浄する際に、カバー手段263の全体を交換する必要がなくなる。従って、カバー手段263の全体を交換する場合に比べて、洗浄領域の異なるレンズ202を洗浄する際に必要な交換部品(パッキン269)を小型化できる。その結果、交換部品の保管に必要なスペースを小さくできる。
【0083】
また、先端の内径が異なるパッキン269に交換することでレンズ202の洗浄領域を変更できるので、洗浄領域の大きさが異なるレンズ202を洗浄する際に、筒状部材68、ベース部材61及び噴射ノズル62を交換する必要がなくなる。即ち、筒状部材68、ベース部材61及び噴射ノズル62を共用化できる。その結果、洗浄装置1の部品の種類が多くなることを抑制できる。
【0084】
次いで、
図4を参照して第3実施形態における洗浄部ユニット360について説明する。第1実施形態では、洗浄部ユニット60を手で保持する場合について説明したが、第3実施形態では、洗浄部ユニット360を保持部368dにより保持する場合について説明する。なお、上記各実施形態と同一の部分については、同一の符号を付してその説明は省略する。
【0085】
図4(a)及び(b)は、第3実施形態におけるレーザー加工機5及び洗浄部ユニット360の模式断面図である。なお、
図4(a)及び(b)では、
図3(a)に示す第1実施形態のレーザー加工機5及び洗浄部ユニット60の断面と対応する位置の断面が模式的に図示される。また、
図4(a)では、パッキン69をレンズ2に当接する前の状態が図示され、
図4(b)では、パッキン69をレンズ2に当接させた後の状態が図示される。
【0086】
図4(a)及び(b)に示すように、第3実施形態における洗浄部ユニット360は、カバー手段362の筒状部材368がブラケット368c及び保持部368dを備える点を除き第1実施形態における洗浄部ユニット60と同一であるので、ブラケット368c及び保持部368d以外の説明は省略する。
【0087】
ブラケット368cは、後述する保持部368dを筒状部材368に配設するための部材であり、拡径部68c1の外周面に配設される。ブラケット368cは、拡径部68c1の外周面に沿う内径の円筒状に形成される取付部368c1と、その取付部368c1の先端から径方向外側に広がるフランジ部368c2とを備え、取付部368c1が拡径部68c1に固定され、フランジ部368c2に保持部368dが固定される。
【0088】
保持部368dは、磁石を備えるマグネットクランプであり、ブラケット368cのフランジ部368c2に締結固定される。また、保持部368dは、軸O方向(
図2(a)参照)において、レーザー装置本体3が配設される設置プレートPの一部と重なる位置に配設される。設置プレートPは、レーザー装置本体3を所定位置に配設するための金属製の板部材であり、レーザー装置本体3の下面(レーザー加工機5のレーザー光の照射方向と直交する方向)に沿って配設される。これにより、パッキン69の先端をレンズ2に当接させた際に、保持部368dをレーザー加工機5の設置プレートPに吸着させることができる。そのため、レンズ2の洗浄作業中に洗浄部ユニット360を手で保持する必要がなくなる。その結果、レンズ2の洗浄作業の作業効率を向上できる。
【0089】
また、保持部368dを設置プレートPに吸着させるので、レンズ2の洗浄作業中にカバー手段363の先端をレンズ2に当接させる力が弱まることを抑制できる。そのため、レンズ2の洗浄作業中にカバー手段363とレンズ2との間に隙間が空いて、カバー手段363とレンズ2との間からレンズ2の洗浄領域の外に洗浄液が漏れ出ることを抑制できる。その結果、レンズ2が配設されるレーザー装置本体3に洗浄液が付着することを抑制できる。
【0090】
さらに、第3実施形態では、保持部368dが磁性体のマグネットクランプから構成されるので、保持部368dを保持するための被保持部(例えば、突起などの係合部材を係合させるための凹部)をレーザー装置本体3や設置プレートPに形成する必要がない。
【0091】
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0092】
上記第1から第3実施形態では、レーザー加工機5,205のレーザー光がCO2レーザとされる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他のレーザー光(例えば、ファイバーレーザーやYAGレーザー)のレーザー加工機であっても良い。
【0093】
上記第1から第3実施形態では、洗浄装置1によりレーザー加工機5,205のレンズ2,202を洗浄する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、レンズ2,202よりもレーザー光の照射側にレンズ保護ガラス(図示せず)をレーザー加工機5,205が備える場合には、レンズ保護ガラスを洗浄装置1により洗浄するようにしても良い。なお、この場合には、上記第1から第3実施形態における洗浄装置1の洗浄対象がレンズ2,202からレンズ保護ガラスに変わるだけであるので、その洗浄についての詳しい説明は省略する。
【0094】
上記第1から第3実施形態では、レンズ2,202にARコーティングの被膜が形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ARコーティングの被膜が形成されないセレン化亜鉛のレンズ2,202であっても良い。また、上記第1から第3実施形態では、セレン化亜鉛のレンズ2,202を洗浄する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の材料から形成されるレンズを洗浄するものであっても良い。
【0095】
上記第1から第3実施形態では、ボタン装置40に押し込み式の押し釦41が配設される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、ボタン装置40の押し釦41を開閉切替式のレバーやセレクタスイッチに置き換えても良い。なお、この場合には、レバーを開放側に傾けることで噴射ノズル62からの洗浄液および圧縮気体の噴射が許容され、レバーを閉鎖側に傾けることで、噴射ノズル62からの洗浄液および圧縮気体の噴射が規制される。
【0096】
上記第1から第3実施形態では、カバー手段63,263,363及びベース部材61により囲まれる空間を外部に連通するための第2開口部61bを備える場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第2開口部61bを備えないものであっても良い。なお、この場合には、カバー手段63,263,363及びベース部材61により囲まれる空間に噴射ノズル62から噴射される洗浄液を貯留可能とすることが好ましい。
【0097】
上記第1から第3実施形態では、カバー手段63,263,363及びベース部材61により囲まれる空間を外部に連通するための第2開口部61bがベース部材61に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。
【0098】
例えば、カバー手段63,263,363及びベース部材61により囲まれる空間を外部に連通するための開口をカバー手段63,263,363の側面に形成して、ノズルから洗浄液を水平方向に噴射して使用する場合(即ち、軸O方向を水平方向に向けて使用する場合)に、カバー手段63,263,363の側面から洗浄液を排出するようにしても良い。
【0099】
また、上記第1から第3実施形態では、カバー手段63,263,363及びベース部材61により囲まれる空間を外部に連通するための第2開口部61bがカバー手段63,263,363の内周面に沿う位置に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、カバー手段63,263,363の内周面よりも内側に第2開口部61bが形成されるものであっても良い。
【0100】
上記第1から第3実施形態では、パッキン69,269が弾性部材から形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、パッキン69,269を金属材料から形成すると共に、パッキン69,269の先端に布を配設してレンズ2,202にパッキン69,269の先端を当接させた際にレンズ2,202に傷がつかないようにするものであっても良い。なお、この場合には、カバー手段63,263,363を2部材から形成する必要はなく1部材で形成しても良い。
【0101】
上記第1から第3実施形態では、アセトン又は無水アルコールの洗浄液を使用する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、水、メタノール、フッ素系洗浄剤などレンズを洗浄可能な洗浄液であれば他の種類の洗浄液を使用しても良い。
【0102】
上記第1から第3実施形態では、カバー手段63,263,363の内径が先端側から基端側に向かうにつれて大きくされる場合について説明したが必ずしもこれに限られるものではなく、同径に形成されるものであっても、階段状に内径が大きくされるものであっても良い。
【0103】
上記第1から第3実施形態では、第1容器10に貯留された洗浄液を圧縮気体により洗浄部ユニット60,260,360に供給する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第1容器10と洗浄部ユニット60,260,360との間に配設した電動ポンプにより第1容器10に貯留された洗浄液を洗浄部ユニット60,260,360に供給するものであっても良い。
【0104】
上記第1から第3実施形態では、カバー手段63,263,363がベース部材61に着脱可能に配設される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、カバー手段63,263,363をベース部材61に固定する、又は、カバー手段63,263,363とベース部材61とを一体の部材から形成するものであっても良い。
【0105】
上記第1から第3実施形態では、パッキン69,269の内周面が円形に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものでなく、レンズ2,202の洗浄領域に合わせてパッキン69,269の内縁の形状を四角や五角などの多角形状に形成しても良い。
【0106】
上記第1から第3実施形態では、パッキン69の当接部69bの内径が先端側に向かうにつれて大きく形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、パッキン69の当接部69bの外径が先端側に向かうにつれて小さく形成されるものであっても良い。
【0107】
上記第1から第3実施形態では、第1容器10の筒状部材11aが光透過性の材料から形成されて貯留部11の内部が視認可能とされる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、貯留部11の全体が非透過性の材料から形成され貯留部11の内部が不可視とされるものであっても良い。
【0108】
上記第1から第3実施形態では、第1容器10の貯留部11に洗浄液と圧縮気体とが同じ位置から供給される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、洗浄液と圧縮気体とを異なる位置から貯留部11に供給しても良い。なお、この場合には、洗浄液と圧縮気体との供給口は共に貯留部11の上方側に形成されることが好ましい。洗浄液と圧縮気体との経路を近づけて、貯留部11に供給された洗浄液を圧縮気体により下流側に流しやすくできるからである。
【0109】
上記第2実施形態では、大きさの異なるレンズ202を洗浄する際に、内径の異なるパッキン269に交換する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、先端の内径の異なるカバー手段263に交換することでレンズ202の洗浄領域を変更するものであっても良い。即ち、ベース部材61に対してカバー手段263の全体を交換するものであっても良い。この場合も、ベース部材61及び噴射ノズル62を共用化できるので、洗浄装置1の部品の種類が多くなることを抑制できる。
【0110】
上記第3実施形態では、保持部368dがマグネットクランプから形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、レーザー装置本体3又は設置プレートPに被保持部を形成して、その被保持部に係合する係合部材をカバー手段363に配設することで、レーザー装置本体3(レーザー加工機5)に洗浄部ユニット360が保持されるものであっても良い。また、例えば、カバー手段363とレーザー装置本体3又は設置プレートPとの間に配設したバネの復元力によりレーザー装置本体3(レーザー加工機5)に洗浄部ユニット360が保持されるものであっても良い。
【0111】
なお、これら係合部材やバネによりレーザー装置本体3(レーザー加工機5)に洗浄部ユニット360が保持される場合には、保持部368dがマグネットクランプから形成される場合(上記第3実施形態)に比べて、レーザー加工機5が磁力の影響を受けることを抑制できる。
【符号の説明】
【0112】
1 洗浄装置
2,202 レンズ
5,205 レーザー加工機
10 第1容器
20 第2容器
30 調整装置(供給手段)
61 ベース部材
61b 第2開口部(排出口)
62 噴射ノズル(ノズル)
63,263,363 カバー手段
68,368 筒状部材(基端部材)
69,269 パッキン(先端部材)
75 第5パイプ(供給パイプ)
76 第6パイプ(排出パイプ)
368d 保持部