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特許7469814心臓補助システムのポンプユニット用の供給ライン、心臓補助システム、および心臓補助システムのポンプユニット用の供給ラインを製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】心臓補助システムのポンプユニット用の供給ライン、心臓補助システム、および心臓補助システムのポンプユニット用の供給ラインを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/857 20210101AFI20240410BHJP
   A61M 60/174 20210101ALI20240410BHJP
   A61M 60/126 20210101ALI20240410BHJP
   A61M 60/237 20210101ALI20240410BHJP
【FI】
A61M60/857
A61M60/174
A61M60/126
A61M60/237
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021525377
(86)(22)【出願日】2019-07-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 EP2019069571
(87)【国際公開番号】W WO2020016438
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-07-19
(31)【優先権主張番号】102018212153.2
(32)【優先日】2018-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520469457
【氏名又は名称】カルディオン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】KARDION GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】ストッツ, インゴ
(72)【発明者】
【氏名】アイベルガー, ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】ワッサーマン, ペーター
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-239617(JP,A)
【文献】米国特許第06007478(US,A)
【文献】国際公開第2017/159849(WO,A1)
【文献】特表2005-507039(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0087288(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 60/00-60/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓補助システムのポンプユニットに流体流を導くように構成されている供給ラインであって、
前記流体流を前記供給ラインに受け入れるための少なくとも一つの導入開口部を含む供給ヘッド部分と、
前記供給ヘッド部分に隣接して配置され、内面輪郭を含む輪郭付けられた部分と、を含み、前記内面輪郭は、第一の位置における第一の内直径と、第二の位置における第二の内直径と、第三の位置における第三の内直径とを含み、前記第一の内直径は、前記第二の内直径よりも大きく、前記第三の内直径は、前記第二の内直径よりも大きく、前記第一の内直径は、前記輪郭付けられた部分の最大内直径を含み、前記第二の内直径は、前記輪郭付けられた部分の最小内直径を含み、前記内面輪郭は、前記第二の位置に丸みを帯びた部分を含み、前記輪郭付けられた部分は、前記第一の位置における第一の内径と、前記第二の位置における第二の内径とを含み、前記第二の内径は、前記第一の内径よりも最大五分の一小さく、前記第二の位置は、前記第三の位置と前記第一の位置との間に位置し
前記内面輪郭は、前記供給ラインの内に挿入可能な挿入要素を含み、
前記挿入要素の長さは、前記輪郭付けられた部分の内直径の二倍まで前記供給ラインの半径より大きいことを特徴とする、供給ライン。
【請求項2】
前記第一の位置は、前記供給ヘッド部分と前記第二の位置との間の前記輪郭付けられた部分に位置している、請求項1に記載の供給ライン。
【請求項3】
前記輪郭付けられた部分の内部は、前記輪郭付けられた部分の中心軸の周りに回転対称である、請求項1に記載の供給ライン。
【請求項4】
前記輪郭付けられた部分は、前記第一の位置における第一の壁厚と、前記第二の位置における第二の壁厚とを含み、前記第一の壁厚は前記第二の壁厚よりも小さい、請求項1に記載の供給ライン。
【請求項5】
前記供給ヘッド部分の前記導入開口部の少なくとも一つの入口縁は丸みを帯びている、請求項1に記載の供給ライン。
【請求項6】
前記輪郭付けられた部分は一定の外径を有している、請求項1に記載の供給ライン。
【請求項7】
請求項1に記載の供給ラインとポンプユニットとを含む、心臓補助システム。
【請求項8】
心臓補助システムのポンプユニット用の供給ラインを製造する方法であって、
流体流を前記ポンプユニットに導くように構成されている前記供給ラインに前記流体流を受け入れるための少なくとも一つの導入開口部を有する供給ヘッド部を形成する工程と、
前記供給ヘッド部分に隣接し、内面輪郭を含む輪郭付けられた部分を形成する工程と、を含み、前記内面輪郭は第一の位置における第一の内直径と、第二の位置における第二の内直径と、第三の位置における第三の内直径とを含み、前記第一の内直径は、前記第二の内直径よりも大きく、前記第三の内直径は、前記第二の内直径よりも大きく、前記第一の内直径は、前記輪郭付けられた部分の最大内直径を含み、前記第二の内直径は、前記輪郭付けられた部分の最小内直径を含み、前記内面輪郭は、前記第二の位置に丸みを帯びた部分を含み、前記輪郭付けられた部分は、前記第一の位置における第一の内径と、前記第二の位置における第二の内径とを含み、前記第二の内径は、前記第一の内径よりも最大五分の一小さく、前記第二の位置は、前記第三の位置と前記第一の位置との間に位置し
前記内面輪郭は、前記供給ラインの内に挿入可能な挿入要素を含み、
前記挿入要素の長さは、前記輪郭付けられた部分の内直径の二倍まで前記供給ラインの半径より大きいことを特徴とする、心臓補助システムのポンプユニット用の供給ラインを製造する方法。
【請求項9】
前記第一の位置は、前記供給ヘッド部分と前記第二の位置との間の前記輪郭付けられた部分に位置している、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記輪郭付けられた部分の内部は、前記輪郭付けられた部分の中心軸の周りに回転対称である、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記輪郭付けられた部分は、前記第一の位置における第一の壁厚と、前記第二の位置における第二の壁厚とを含み、前記第一の壁厚は前記第二の壁厚よりも小さい、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記供給ヘッド部分の前記導入開口部の少なくとも一つの入口縁は丸みを帯びている、請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記輪郭付けられた部分は一定の外径を有している、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立特許請求項に記載のタイプの心臓補助システムのポンプユニット用の供給ライン、心臓補助システム、および心臓補助システムのポンプユニット用の供給ラインを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓ポンプは、ポンプユニットと、ポンプユニットに血流を供給するための入口ホースとを含み得る。心臓ポンプは、ポンプユニットの領域における血液損傷(溶血)を防止または低減する構造をさらに含み得る。米国特許出願公開2017/087288号明細書は、溶血を低減し、および/または圧力損失を最小化するために、ポンプユニットの長さのトランペット形状の拡張を有するポンプユニットを記述する。
【0003】
これに基づいて、本発明の根底にある目的は、コンパクトな設計で可能な限り高いポンプ効率を確保しつつ、当技術分野で公知のシステムおよび方法をさらに改善することである。
【0004】
これを念頭に置いて、本明細書に提示したアプローチは、主要特許請求項に記載の心臓補助システムのポンプユニット用の供給ライン、心臓補助システム、および心臓補助システムのポンプユニット用の供給ラインを製造するための方法を導入する。独立特許請求項に特定されたデバイスの有利なさらなる開発および改善は、従属請求項に列挙された手段を使用して可能である。
【0005】
このアプローチは、供給ラインの入口近くのセクションにおける内面輪郭によって供給ラインに導入される流体流の流れ挙動を設定する、心臓補助システムのポンプユニット用の供給ラインのための設計を提示する。流体流の流れ分離は有利なことに、内面輪郭の丸みを帯びた部分、例えば、部分的凹面、および追加的または代替的に凸面構成の助けを借りて低減、または完全に回避され得る。流体流を供給ラインに導くときの圧力損失は、流れ分離の低減または回避と共に減少し、このことは、心臓補助システムのポンプユニットの電力消費、したがってポンプ効率の点で有利である。内面輪郭の助けを借りた流れ分離の低減または回避は有利なことに、供給ラインのコンパクトな設計を可能にするが、このことは特に、低侵襲性移植、例えば、経大動脈移植または経大腿移植のための心臓補助システムに有利である。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、心臓補助システムのポンプユニット用の供給ラインを提示する。供給ラインは、流体流を心臓補助システムのポンプユニットに導くように構成される。供給ラインは、少なくとも一つの供給ヘッド部分および輪郭付けられた部分を備える。供給ヘッド部分は、流体流を供給ラインに導入するための少なくとも一つの導入開口部を備える。輪郭付けられた部分は、内面輪郭を有する。輪郭付けられた部分は、供給ヘッド部分に隣接して配置される。第一の位置における輪郭付けられた部分の内径は、第二の位置における内径よりも大きい。内面輪郭は、第二の位置に内径を低減するための丸みを帯びた部分を有する。
【0007】
心臓補助システムは、例えば、左心室補助システム、右心室補助システム、または両室補助システムなどの心臓ポンプであってもよい。心臓補助システムは、例えば、低侵襲性移植のために設計され得る。供給ラインは、流体流を導くための流路として構成され得る。供給ラインはまた、ホースとして構成されてもよい。埋め込まれた状態にある心臓補助システムでは、供給ラインは、流体流として血流を心室から心臓補助システムのポンプユニットに導くように構成され得る。ポンプユニットは、例えば、マイクロ軸ポンプであってもよい。供給ヘッド部分は、心臓補助システムのヘッド部分、例えば、センサアセンブリと、ポンプユニットに隣接して配置された供給ラインのさらなるサブセクションとの間に配置された供給ラインのサブセクションであると理解され得る。導入開口部は、例えば、供給ラインから切り出されてもよい。導入開口部は、例えば、供給ラインに切り込まれたポンプユニットの方向に丸みを帯びた三つの窓によって、複数部品による窓開口部として構成され得る。輪郭付けられた部分は、供給ヘッド部分と供給ラインのさらなるサブセクションとの間に配置された供給ラインのセクションであると理解され得る。内面輪郭は、例えば、切開または塗布された構造、または部分的に異なる壁厚などの所定の材料構成、または特定の形状もしくは構造を有する挿入要素であってもよい。第一の位置は、流体流の流れ方向に対して第二の位置の上流であり得る。内面輪郭の丸みを帯びた部分は、凸状突出部であり得る。内面輪郭はまた、例えば、凹状の凹部の形態で、第一の位置にさらなる丸みを帯びた部分を有してもよい。
【0008】
一実施形態によれば、第三の位置における輪郭付けられた部分の内径は、第二の位置における内径よりも大きくてもよい。第二の位置は、例えば、第三の位置と第一の位置との間に位置してもよい。したがって、第三の位置は、流体流の流れ方向に対して第二の位置の下流であり得る。内面輪郭はまた、例えば、さらなる凹状の凹部の形態で、第三の位置に丸みを帯びた部分を有してもよい。これは有利には、流体流の流れ挙動を変化させうるが、これにより、流体流の流れ分離が低減する。これは、流体流の圧力損失または摩擦を低減するのに有利であり、これにより、心臓補助システムのポンプ効率が増大し得る。
【0009】
一実施形態によれば、第一の位置は、供給ヘッド部分と第二の位置との間の輪郭付けられた部分に配置され得る。第一の位置および第二の位置は、例えば、輪郭付けられた部分の長手方向軸に沿ったセクションであり得る。この配置は、有利には、構成を最適化することによって流れ挙動およびそれによる流体流の流れ分離を設定するために、輪郭付けられた部分の内径を輪郭付けられた部分の長手方向軸に沿って変更することを可能にする。
【0010】
一実施形態によれば、第一の位置および第二の位置は、追加的または代替的に、輪郭付けられた部分の外周に沿って配置されてもよい。したがって、輪郭付けられた部分の断面もまた、少なくとも一つの丸みを帯びた部分を有してもよく、その結果、流体流の流れ挙動も有利に設定され得る。
【0011】
一実施形態によれば、輪郭付けられた部分の長さは、輪郭付けられた部分の内径の最大二倍に対応してもよい。輪郭付けられた部分の長さは、特に、公差範囲内の供給ラインの半径に対応し得る。供給ラインは、一定の半径を有してもよい。公差範囲は、例えば、供給ラインの半径から20%以下の偏差であると理解され得る。したがって、流れ挙動の局所的に限定された設定が可能である。有利なことに、供給ラインのさらなる下流、すなわち、輪郭付けられた部分とポンプユニットとの間の供給ラインのサブセクションにおける圧力損失もまた、分離の抑制の結果、下流の流体流の乱流が少なくなるために少ない。
【0012】
一実施形態によれば、第二の位置における輪郭付けられた部分の内径は、第一の位置における内径よりも最大五分の一小さくてもよい。これにより、有利には、設置空間を増大させることなく、流れ挙動を設定し、流体流が輪郭付けられた部分を通して搬送されるよう導くことが可能となる。
【0013】
さらに、内面輪郭は回転対称に形成されてもよい。例えば、供給ライン内に回転対称に流入する場合、これは、流れ分離を最小化し、したがって圧力損失を低減するのに有利である。
【0014】
一実施形態によれば、第一の位置における輪郭付けられた部分の壁厚は、第二の位置における壁厚よりも小さくてもよい。代替的または追加的に、内面輪郭は、輪郭付けられた部分の挿入要素として構成されてもよい。どちらの実施形態も、有利なことに、輪郭付けられた部分の単純かつ費用効果の高い実現を可能にする。
【0015】
さらに、一実施形態によれば、供給ヘッド部分の導入開口部の少なくとも一つの入口縁は丸みを帯びていてもよい。これは有利には、導入開口部における圧力損失を低減する。
【0016】
一実施形態によれば、輪郭付けられた部分は、一定の外径を有してもよい。これは有利には、コンパクトな設計を可能にするが、これは特に、低侵襲性移植のための心臓補助システムと併せて供給ラインを使用する場合に有利である。
【0017】
本発明はさらに、前述の供給ラインの実施形態を有する心臓補助システムを提示する。
【0018】
心臓補助システム用の供給ラインを製造するための方法も提示される。供給ラインは、流体流を心臓補助システムのポンプユニットに導くように構成される。方法は、形成工程を含む。形成工程では、流体流を供給ラインに導入するための少なくとも一つの導入開口部を有する供給ヘッド部分が形成される。さらに、形成工程では、内面輪郭を有する輪郭付けられた部分が形成され、輪郭付けられた部分は、供給ヘッド部分に隣接して配置され、第一の位置における輪郭付けられた部分の内径は、第二の位置における内径よりも大きく、内面輪郭は、第二の位置に内径を低減するための丸みを帯びた部分を有する。
【0019】
供給ラインは、例えば、管から切り出されてもよく、または、供給ラインは、ホースとして構成されて、輪郭付けられた部分および内面輪郭を構成するための挿入要素を備えてもよい。前述の滑り軸受デバイスの実施形態は有利なことに、本方法を実行することによって製造することができる。
【0020】
本明細書に提案されるアプローチの設計例は、図面に示されており、以下の記述においてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、供給ラインを有する心臓補助システムの概略図である。
図2図2は、一設計例による供給ラインの輪郭付けられた部分の一部の概略図である。
図3図3は、一設計例による供給ラインの一部の概略図である。
図4図4は、一設計例による供給ラインの一部の概略図である。
図5図5は、一定の内径を有するホースと比較して、丸みを帯びた部分の実装の効果を可視化したものである。
図6図6は、一定の内径を有するホースと比較して、丸みを帯びた部分の実装の効果を可視化したものである。
図7図7は、一設計例による供給ラインの輪郭付けられた部分の一部の概略図である。
図8図8は、一設計例による供給ラインの輪郭付けられた部分の内面輪郭の一部の概略図である。
図9図9は、一設計例による心臓補助システム用の供給ラインを製造するための方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の好ましい設計例の以下の説明では、同様のまたは類似の参照符号が、様々な図に示される要素に使用されるが、これは類似の効果を有しており、これらの要素の繰り返しの記載は省略される。
【0023】
図1は、一設計例による供給ライン105を有する心臓補助システム100の概略図を示す。図は、大動脈弁位置に対する左心室心臓補助システム、左心室補助装置(LVAD)として例示される、心臓補助システム100の斜視図を示す。本明細書に示す実質的に一定の外径を有する心臓補助システム100の細長い軸設計は、カテーテルによって血管、大動脈内に単純に配置するための、心臓補助システム100の経大腿移植または経大動脈移植を可能にする。
【0024】
大動脈弁位置の構成に対応して、供給ライン105は、例えば、長手方向軸の傾斜または湾曲を有し、したがってわずかに湾曲した形状を有する。供給ライン105に加えて、心臓補助システムはポンプユニット110を備える。ヘッドユニット115、ならびにハウジングセクション120および固定フレーム125も一例として示されている。供給ライン105は、ヘッドユニット115とポンプユニット110との間に配置される。ポンプユニット110は、供給ライン105から離れた端部において、固定フレーム125が取り付けられるハウジングセクション120に接続される。
【0025】
一設計例によれば、供給ライン105は、流体流を心臓補助システム100のポンプユニット110に導くように構成される。供給ラインは、供給ヘッド部分130および輪郭付けられた部分135を備える。供給ヘッド部分130は、流体流を供給ライン105に導入するための少なくとも一つの導入開口部140を備える。輪郭付けられた部分135は、内面輪郭を有する。輪郭付けられた部分135は、供給ヘッド部分130に隣接して配置される。流れ方向に見ると、第一の位置における輪郭付けられた部分135の内径は、第二の位置における内径よりも大きい。内面輪郭は、第二の位置に内径を低減するための丸みを帯びた部分を有する。輪郭付けられた部分135の構成の設計例を、以下の図2~9を参照して説明する。
【0026】
供給ヘッド部分130および輪郭付けられた部分135は、例として本明細書に示す設計例に概説されている。特に、輪郭付けられた部分135は、本明細書に示す供給ライン105のより小さい部分またはより大きい部分を任意選択的に覆う。埋め込まれた状態の心臓補助システム100では、供給ヘッド部分130および輪郭付けられた部分135は左心室に配置される。供給ライン105のさらなるセクションは、大動脈弁を通して導かれ、ポンプユニット110を有する心臓補助システム100のセクションは、大動脈のセクション内に配置される。ポンプユニット110の領域内のポンプ出口145は、供給ライン105を通して搬送される流体流を大動脈に導く。例として、ラベル150は、心臓補助システム100を位置付けるために供給ライン105が通過する、心臓弁、例えば大動脈弁の位置を示している。
【0027】
本明細書に示す設計例によれば、供給ヘッド部分130の導入開口部140の少なくとも一つの入口縁は丸みを帯びている。例として、本明細書の導入開口部140は、供給ヘッド部分130に切り込まれた窓形状の入口として構成される。
【0028】
本明細書に示す設計例によれば、輪郭付けられた部分135の長さは、公差範囲内の供給ライン105の半径に対応する。公差範囲は、供給ラインの半径から20%以下の偏差であると理解される。
【0029】
例として本明細書に示す心臓補助システム100などの、設置空間の点で限定され、かつ低侵襲性移植が可能である心臓補助システムは、所定のポンプ効率で比較的低い電力消費量を有する。効率は、ポンプユニット110のポンプの摩擦によって制限される。流体流が心室内の供給ヘッド部分130の導入開口部140からポンプユニット110に導かれるのに伴う供給ライン105の圧力損失または摩擦は、供給ライン105の構成を介して調節され得る。この目的のために、入口開口部140の入口縁は、圧力損失を低減するために丸みを帯びている。これだけでは流れ分離を防止することはできない。本明細書に提示されるアプローチに従って構成される輪郭付けられた部分135の形態の入口内面輪郭を有することにより、流れ分離が抑制され、結果として圧力損失が低減される。対応して構成される入口内面輪郭の設計例について、以下に説明する。
【0030】
図2は、一設計例による供給ラインの輪郭付けられた部分135の一部の概略図を示す。図は、輪郭付けられた部分135と内面輪郭205の寸法関係の例を示している。図は、輪郭付けられた部分135の半分の軸方向セクションを示す。第一の位置215における輪郭付けられた部分135の内径210は、第二の位置220における内径210よりも大きい。内径210を低減するために、内面輪郭205は、軸方向に円弧状の内壁プロファイルの形態の丸みを帯びた部分225を第二の位置220に有する。本明細書に示す設計例によれば、第一の位置215は、輪郭付けられた部分135の長手方向軸に沿った輪郭付けられた部分135上の位置を示し、第二の位置215は、長手方向軸に沿った輪郭付けられた部分135上のさらなる位置を示す。本明細書に示す設計例では、長手方向軸は、輪郭付けられた部分135の回転軸230に対応する。
【0031】
本明細書に示す設計例によれば、第一の位置215は、供給ヘッド部分と第二の位置220との間の輪郭付けられた部分135に配置される。供給ヘッド部分を通して導入され、供給ラインを通して、したがって輪郭付けられた部分135を通してポンプユニットの方向に導かれる流体流の流れ方向に対して、第一の位置215は第二の位置220の上流に配置される。
【0032】
さらに、本明細書に示す設計例によれば、第三の位置235における輪郭付けられた部分235の内径は、第二の位置220における内径よりも大きい。
【0033】
本明細書に示す設計例によれば、第二の位置220における輪郭付けられた部分135の内径は、第一の位置215における内径よりも最大1/5小さい。図2では、このことは内径の五分の一を示すラベル240によって示されている。内面輪郭205の丸みを帯びた部分225は、内径の最大五分の一の範囲の凸状突出部として対応して構成され、このことは、ラベル240によってさらに可視化されている。
【0034】
一設計例によれば、内面輪郭205は、回転対称となるように構成される。回転軸230に対して本明細書に示す内面輪郭205の一部の反対側である輪郭付けられた部分135の一部は、回転対称に構成された内面輪郭205を対応して有する。
【0035】
本明細書に示す輪郭付けられた部分135および内面輪郭205の構成は、そうでなければ入口縁の下流に展開され得る、供給ラインにおける流体流の流れ分離を低減または抑制することを可能にする。輪郭付けられた部分135の外径245は一定であり、供給ラインの設置空間の拡張が有利に回避される。本明細書に示す輪郭付けられた部分135および内面輪郭205の設計例を使用することにより、搬送される流体流の圧力損失が低減される。流体流の入口流れ、したがって流れ挙動は、輪郭付けられた部分135によって局所的にのみ配向される。輪郭付けられた部分135は、この設計例では、供給ラインの内径の最大二倍に対応する長さを任意選択的に有する。輪郭付けられた部分135の構成のために、さらなる下流の流体流の圧力損失は、内面輪郭を有さない一定の内径を有する供給ラインにおけるよりも少ないが、これは、分離の抑制または低減の結果、下流の乱流が少なくなるからである。内面輪郭205は、流れ分離が供給ラインの半径の最大四倍の長さにわたって大きく抑制されるように構成される。供給ラインの局所外径245は、所定の壁厚によって制限される。供給ヘッド部分の導入開口部に隣接して、入口縁は凸状に丸みを帯びて流れ分離を低減する。本明細書に示す構成などの内面輪郭205の構成最適化は、図8を参照して示されるように、回転対称である、または代替的に回転角に依存しなくてもよい。本明細書に示す設計例によれば、記載の入口縁の丸みを帯びた部分に依存せず、内面輪郭205の輪郭プロファイルは、第一の位置215、第二の位置220、第三の位置235および丸みを帯びた部分225の助けを借りて本明細書に示すように、一定の壁厚と共に、二つの凹面および一つの凸面の構成最適化を有する。この目的のために、壁内部輪郭は、壁内径に対して最大五分の四の局所的な壁内径が輪郭付けられた部分135の一定の壁厚において達成されるように任意選択的に構成される。
【0036】
図3は、一設計例による供給ライン105の一部の概略図を示す。図は、供給ライン105を通して搬送される流体流の流速に基づいて入口領域310の入口縁における流れ分離305を可視化したものを示している。本明細書に示す入口領域310は、導入開口部に隣接した供給ラインの一部分のセクションに対応する。スケール315は、流体流の流速を示す。流れ分離305はまた、流速がゼロに等しいラベル320によって示されるラインによっても示されている。したがって、ラベル320によって示される入口領域310のセクションは、「ゼロ速度ライン」とも称され得る。本明細書に示す流体流の流れ分離305は、前述の図および以下の図を参照して記載する内面輪郭および輪郭付けられた部分の設計例を使用して低減することができる。
【0037】
図4は、一設計例による供給ライン105の一部の概略図を示す。図は、前述の図を参照して説明される供給ラインと類似または同一である供給ライン105の断面を示す。図4は、供給ライン105の入口領域の構成最適化を示している。本明細書に示す供給ライン105のセクションは、供給ヘッド部分の導入開口部に隣接した輪郭付けられた部分の入口領域405を示す。したがって、入口縁に隣接した領域410は、丸みを帯びている。図はまた、内面輪郭205を示す。流れ分離の低減の点で、領域410の丸みを帯びた部分および内面輪郭205の構成は、入口領域の局所的なトポロジー適合とも称され得る。
【0038】
図5は、一設計例による供給ライン105の一部の概略図を示す。図は、流速を介して検出可能な供給ライン105の流れ分離に基づく流体流の流れ挙動の二つのシナリオを示している。スケール315は、流体流の流速を示す。上の供給ライン105は、入口領域に流れ分離を伴う供給ライン105の流体流の流速の例を示しており、これは、図3を参照して説明したように、「ゼロ速度ライン」の助けを借りて検出され得る。下の供給ライン105のシナリオは、ラベル505で示されるように入口領域の流れ分離が防止される流体流の流速の例を示している。下のシナリオは、図2を参照して説明した供給ライン105の輪郭付けられた部分および内面輪郭の構成に類似しているか、または対応する。
【0039】
図6は、一設計例による供給ライン105の一部の概略図を示す。図は、スケール605によって可視化される、乱流の見かけ粘度、渦粘度に基づく流体流の流れ挙動の二つのシナリオを示す。乱流の粘度の図はまた、供給ライン105の入口領域における流体流の摩擦も示す。上の供給ライン105は、入口領域における流れ分離を伴う供給ライン105の流体流の渦粘度の例を示す。下の供給ライン105のシナリオは、同じく供給ライン105の入口領域の下流の領域における摩擦の低減の例を示す。下のシナリオは、図2を参照して説明した供給ライン105の輪郭付けられた部分および内面輪郭の構成に類似しているか、または対応する。
【0040】
図7は、一設計例による供給ラインの輪郭付けられた部分135の一部の概略図を示す。図は、輪郭付けられた部分135の断面を示している。本明細書に示す輪郭付けられた部分135は、図2を参照して説明した輪郭付けられた部分と類似または同一である。図7はまた、丸みを帯びた部分が回転対称ではない例も示す。
【0041】
図8は、一設計例による供給ラインの輪郭付けられた部分の内面輪郭205の一部の概略図を示す。本明細書に示す設計例によれば、内面輪郭205は、輪郭付けられた部分の挿入要素として構成される。一例として、本明細書の内面輪郭205は、一緒に輪郭付けられた部分の内面輪郭205を形成する、二つの非回転対称の内面輪郭部品805、810を有する二部品挿入要素として構成される。二部品挿入要素は、入口開口部140が二つの開放窓と一つの閉鎖窓を有する場合の例とすることができる。本明細書の図は、挿入要素としての内面輪郭205の異なる図を示している。上図は、内面輪郭部品805を通る断面を示している。中央図は、二つの表面輪郭部品805および810を側面図で示しており、下図は、内面輪郭部品810を通る断面を示している。本明細書に示す内面輪郭部品805および810は、個別にまたは一緒に、供給ラインの輪郭付けられた部分の内面輪郭205を形成する。したがって、それらは、流れ分離を低減するための、供給ラインの非回転対称最適化と称され得る。
【0042】
図9は、一設計例による心臓補助システムのポンプユニット用の供給ラインを製造するための方法900のフロー図を示す。供給ラインは、流体流を心臓補助システムのポンプユニットに導くように構成される。方法900は、形成ステップ901を含む。形成ステップ901では、流体流を供給ラインに導入するための少なくとも一つの導入開口部を有する供給ヘッド部分が形成される。内面輪郭を有する、供給ヘッド部分に隣接して配置される輪郭付けられた部分もまた形成される。第一の位置における輪郭付けられた部分の内径は、第二の位置における内径よりも大きい。内面輪郭は、第二の位置に内径を低減するための丸みを帯びた部分を有する。
【0043】
形成ステップ901では、供給ヘッド部分および輪郭付けられた部分が管から切り出される。追加的または代替的に、輪郭付けられた部分の内面輪郭は、供給ラインの挿入要素として構成される。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9