(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】モーター
(51)【国際特許分類】
H02K 5/167 20060101AFI20240410BHJP
【FI】
H02K5/167 A
(21)【出願番号】P 2023186858
(22)【出願日】2023-10-31
【審査請求日】2023-11-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523365550
【氏名又は名称】株式会社ゲットクリーンエナジー
(74)【代理人】
【識別番号】100100918
【氏名又は名称】大橋 公治
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 豊道
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-152702(JP,A)
【文献】特開平09-032856(JP,A)
【文献】特表2021-532321(JP,A)
【文献】国際公開第2012/119719(WO,A1)
【文献】特許第7345746(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/00- 5/26
H02K 7/00- 7/20
F16C 17/00-17/26
F16C 33/00-33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気エネルギーから機械的エネルギーを生成するモーターであって、
回転軸を中心に回転する回転子と、
前記回転子を回転可能に収容する容器と、
を備え、
前記回転軸には、前記回転子を間にして、二つの円盤が固定され、
前記容器の内壁には、前記円盤の周縁部と係合する係合部が配置され、
前記円盤の周縁部、又は、前記容器の前記係合部の内周部、には、三角形の断面を有し、一つの頂点は突出し、他の二つの頂点は前記周縁部、又は、前記内周部、に接続している環状体が一体化されており、
前記容器に配置された前記係合部、又は、前記回転軸に固定された前記円盤の周縁部、は前記環状体の突出した前記頂点を受け入れる凹部を有し
、
前記回転軸は、前記環状体の前記頂点のみが前記凹部に接触する状態で回転する、モーター。
【請求項2】
請求項1に記載のモーターであって、
前記回転軸が鉛直方向に配置されている、モーター。
【請求項3】
請求項1に記載のモーターであって、
前記回転軸が水平方向に配置されている、モーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーで駆動するモーターに関し、効率の向上を可能にしたものである。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、先に、容器内で回転体が回転する発電機の回転効率を高めるため、発電機の回転軸の先端を円錐形又は角錐形に成形し、回転軸の下端を支える容器の底部と回転軸との接触抵抗を小さくすることを提案している(下記特許文献1)。
【0003】
発電機は、導線を巻いて形成したコイルと磁石とを近接配置し、コイルに対して磁石を回転し、又は、磁石に対してコイルを回転することで、コイルに誘導電流を生じさせ、発電を行っている。
【0004】
電気エネルギーで駆動するモーターは、発電機とは逆の原理で回転する。即ち、回転子のコイルに電流を供給して、固定された磁石に対してコイルを回転させ、或いは、固定したコイルに電流を供給して、回転子の磁石を回転させている。そして、回転子と一体に回転する回転軸に、扇風機のファアンや電動工具等、種々のものを結合し、それらの駆動を実現している。
【0005】
モーターには、直流で作動するDCモーター、交流で作動するACモーター、鉄心を持たないコアレスモーター、間欠的に回転するステッピングモーター等、各種のものが開発されている。
DCモーターでは、回転子がコイルの場合、整流子及びブラシを通じてコイルへの電流供給が行われる。
ACモーターでは、固定子のコイルに供給する電流を制御して回転磁界を形成し、それにより回転子の磁石を回転する。
【0006】
コアレスモーターは、回転子が、鉄心を持たず、樹脂で固めたコイルのみで構成されている。そのため、回転子の磁力は弱くなるが、慣性モーメントが小さく、即応性に優れ、鉄損によるエネルギー損失も無い。
ステッピングモーターは、駆動回路から入力されるパルス信号に応じて、一定角度ずつ断続的に回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
モーターの効率は、モーターに与えられた電気エネルギーに対する、モーターから出力された機械ネルルギーの割合によって表される。この電気エネルギーと機械エネルギーとの差分が損失である。
モーターの損失には、(1)コイル内の電気抵抗による発熱、(2)整流子とブラシとの接触抵抗による発熱、(2)回転子の鉄心内の損失、(4)回転軸とその支持体との機械的摩擦、等が含まれる。
【0009】
本発明は、“回転軸とその支持体との機械的摩擦”の低減を図り、モーターの効率を高めることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、電気エネルギーから機械的エネルギーを生成するモーターであって、回転軸を中心に回転する回転子と、前記回転子を回転可能に収容する容器と、を備える。前記回転軸には、前記回転子を間にして、二つの円盤を固定し、前記容器の内壁には、前記円盤の周縁部と係合する係合部を配置している。
そして、前記円盤の周縁部には、三角形の断面を有し、一つの頂点が突出し、他の二つの頂点が前記周縁部に接続している環状体を一体的に設けており、前記容器に配置した前記係合部には前記環状体の突出した前記頂点を受け入れる凹部を設けている。
或いは、前記容器の前記係合部の内周部に、三角形の断面を有し、一つの頂点が突出し、他の二つの頂点が前記内周部に接続している環状体を一体的に設けており、前記回転軸に固定した前記円盤の周縁部には前記環状体の突出した前記頂点を受け入れる凹部を設けている。
そして、前記回転軸は、前記環状体の前記頂点のみが前記凹部に接触する状態で回転する。
【0011】
このモーターでは、回転軸に固定した円盤と、容器側に配した係合部とを係合させて回転子を容器内で支持しているが、その係合箇所に三角形の断面を持つ環状体を介在させて、円盤と係合部との接触抵抗を小さくしているため、モーターの損失の低減を図ることができる。
【0012】
本発明のモーターでは、回転軸を鉛直方向、又は、水平方向のいずれの方向に配置しても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明のモーターは、回転時の接触抵抗が小さく、効率的な回転が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)本発明の実施例である回転軸が鉛直方向を向くモーターの全体形状を示す図、(b)その容器側の構成を示す図、(c)その回転子側の構成を示す図。
【
図2】
図1の場合の回転軸に装着した円盤と、容器側の係合部との接続関係を示す拡大図。
【
図3】
図1の場合の回転軸に装着した円盤と、容器側の係合部との他の接続関係を示す拡大図。
【
図4】(a)本発明の実施例である回転軸が水平方向を向くモーターの全体形状を示す図、(b)その容器側の構成を示す図、(c)その回転子側の構成を示す図。
【
図5】(a)
図4の場合の回転軸に装着した円盤と、容器側の係合部との接続関係を示す拡大図、(b)
図4の場合の回転軸に装着した円盤と、容器側の係合部との他の接続関係を示す拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施例に基づいて本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
図1(a)は、実施例におけるモーターの全体構造を示している。また、
図1(b)は、その容器側の構造、
図1(c)は、その回転子側の構造を示している。
【0017】
このモーターの回転子11は、上側がS極、下側がN極の半円筒形状の永久磁石11(a)と、上側がN極、下側がS極の半円筒形状の永久磁石11(b)とを組み合わせて円筒形状に成形されている。
この回転子11の中心には回転軸12が固着され、回転軸12の回転子11より上側、及び、回転子11より下側には、円盤状の部品(以下、円盤と言う)20が装着されている。
なお、この回転軸12は、鉛直方向に沿って配置されるため、その下端には円錐形状部分12(1)が設けられ、円錐形状部分12(1)の先端が容器30の底面に接触して支持されている。
【0018】
一方、容器30には、その内部に、各円盤20と係合する二つの係合部40が配置され、また、回転子11と対向する容器30の内面位置に複数のコイル50が配置されている。
なお、このモーターは、コイル50への供給電流を制御して回転子11を回転させる形態を想定しているため、ブラシ及び整流子を持たない(ブラシレスモーター)。
【0019】
図2は、回転軸12に装着された円盤20と、容器30に配置された係合部40との接続状態を示している。
中心に回転軸12が固定されている円盤20は、その周縁が、三角形の断面を持つ環状体21に取り囲まれている。この環状体21は、三角形状を成す断面の一つの頂点が突出し、他の二つの頂点が円盤20の周縁部に接続するように円盤20と一体化されている。
【0020】
一方、容器30に配置された係合部40には、環状体21の突出した頂点を受け入れる凹部41が形成されている。
そのため、回転軸12は、環状体21の頂点が係合部40の凹部41に接触した状態で回転する。
【0021】
図1では、回転軸12を鉛直方向に配置する場合に、回転軸12の下端に設けた円錐形状部分12(1)を容器30の底面で支えている(
図1a)が、これは必須の構成では無い。
【0022】
なお、円盤20の環状体21と容器30側の係合部40とを
図2の状態に組合せるには、例えば、円環状の係合部40を半円環状の二つの部品に分割し、分割した二つの部品で
図2の状態を形成し、その後、分割した部品を再結合すれば
図2の状態が得られる。
【0023】
図3は、
図2の変形例を示している。この場合は、係合部40側に三角形の断面を持つ環状体42を配置し、環状体42の頂点の先端を、回転軸12に装着された円盤20の凹部22に当接させている。その他の構成は、
図2と同様である。
この変形例の場合、回転軸12は、環状体42の頂点が円盤20の凹部22に接触した状態で回転する。
【0024】
このように、本発明のモーターでは、回転軸12に固定された円盤20と、容器30側に配置された係合部40との間で、三角形の断面を持つ環状体21、42の頂点が接触した状態で回転軸12の回転が行われるため、回転軸12の回転時における接触抵抗が小さい。
そのため、モーターの損失が低減できる。
【0025】
図4及び
図5は、回転軸12が水平方向に維持されて回転するモーターについて示している。この場合は、
図1-
図3のモーターを、そのまま横にして使用することができる。
なお、横向きの場合は、回転軸12の端部に円錐形状部分12(1)(
図1c)を設ける必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のモーターは、各種産業分野で利用することができ、EVやドローン等にも使用することができる。特に、パソコンやプリンター、携帯電話機等の小型機器に組み込むには適している。また、学習用教材等としても利用することもできる。
【符号の説明】
【0027】
11 回転子
11(a) 永久磁石
11(b) 永久磁石
12 回転軸
12(1) 円錐形状部分
20 円盤
21 環状体
22 凹部
30 容器
40 係合部
41 凹部
42 環状体
50 コイル
【要約】
【課題】 損失を少なくしたモーターを提供する。
【解決手段】 モーターの回転軸12の側に、断面が三角形の環状体を周面に一体的に取付けた円盤20を配置し、コイル50を内面に配置した容器30の側に、円盤20の周面から突出する三角形の頂点を受け入れる係合部40を設置する。回転軸12に固定した円盤20と、容器30側に配した係合部40とを係合させて回転軸12を容器30内で回転させるとき、円盤20と係合部40との接触抵抗が少ないため、モーターの損失が減少する。
【選択図】
図1