IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クロケット,ラッセル・ジェイの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】歯科用デバイスおよび使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/38 20060101AFI20240410BHJP
   A61C 13/00 20060101ALI20240410BHJP
   A61C 19/04 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
A61C13/38
A61C13/00 Z
A61C19/04 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023540769
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 US2021057387
(87)【国際公開番号】W WO2022094301
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】63/107,205
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523249135
【氏名又は名称】クロケット,ラッセル・ジェイ
【氏名又は名称原語表記】CROCKETT, RUSSELL J.
【住所又は居所原語表記】380 E. WHITE WING COURT, CASA GRANDE, ARIZONA 85122, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】クロケット,ラッセル・ジェイ
【審査官】黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-058677(JP,A)
【文献】特開2019-217138(JP,A)
【文献】特表2015-516856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/38
A61C 13/00
A61C 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用デバイスであって、
長手方向軸と、前記長手方向軸から半径方向外側に延在するウイング領域とをそれぞれ有する1つ以上のスキャンボディであって、前記1つ以上のスキャンボディの端部が、締結具と嵌合するように構成されている、スキャンボディと、
上面と底面とを有するフレーム部材であって、前記底面が、前記1つ以上のスキャンボディのウイング領域上に配置された取り付け領域に接触するように構成されている1つ以上の取り付け領域、を含む、フレーム部材と、を備え、
前記1つ以上のスキャンボディの各々が、歯科用CADソフトウェアにおいて利用可能な関連する三次元デジタル画像ファイル内の形状データに対応する形状を有する、歯科用デバイス。
【請求項2】
前記フレーム部材が、歯列弓にフィットするサイズおよび寸法を有する、請求項1に記載の歯科用デバイス。
【請求項3】
前記フレーム部材の前記1つ以上の取り付け領域の各々が、1つ以上の、突起、くぼみ、穴、アンダーカット、溝、または格子構造を有する、請求項1に記載の歯科用デバイス。
【請求項4】
前記1つ以上のスキャンボディの前記ウイング領域上に配置された前記取り付け領域が、1つ以上の、突起、くぼみ、穴、アンダーカット、溝、または格子構造を有する、請求項1に記載の歯科用デバイス。
【請求項5】
スキャンボディまたは前記フレーム部材が、口腔内スキャナーからのデジタル寸法データで物理的寸法を較正するために使用され得る既知の寸法、を有する1つ以上の三次元特徴を有する、請求項1に記載の歯科用デバイス。
【請求項6】
前記1つ以上のスキャンボディが、第1スキャンボディ、第2スキャンボディ、第3スキャンボディ、第4スキャンボディ、第5スキャンボディ、第6スキャンボディ、第7スキャンボディ、および第8スキャンボディを含む、請求項1に記載の歯科用デバイス。
【請求項7】
前記フレーム部材および前記ウイング領域が、放射線不透過性材料で形成されている、請求項1に記載の歯科用デバイス。
【請求項8】
前記1つ以上のスキャンボディを、1つ以上の歯科用締結具に結合するステップと、
前記歯科用締結具の周りで前記スキャンボディを回転させることにより、前記1つ以上のスキャンボディの前記ウイング領域を位置決めするステップと、
口腔内スキャナーで前記スキャンボディをスキャンするステップと、
歯科用CADソフトウェアを使用して、スキャンされた三次元画像を前記三次元デジタル画像ファイルに位置合わせするステップと、
接着剤または硬化材を、前記ウイング領域の前記取り付け領域、および前記フレーム部材の底部に塗布し、前記フレーム部材が前記ウイング領域の全てと直接接触するように前記フレーム部材を前記1つ以上のウイング領域上に載せることによって、前記フレーム部材を前記1つ以上のスキャンボディに接着または合着させるステップと、を含む、請求項1に記載の歯科用デバイスを使用する方法。
【請求項9】
前記歯科用デバイスおよび歯列弓をCBCTスキャンするステップと、口腔内スキャンを前記CBCTスキャンと位置合わせするステップと、を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記フレーム部材と1つ以上のスキャンボディとを単一ユニットとして前記締結具から取り外すステップと、相対的な締結位置の物理的確認用ジグとして、前記単一ユニットを使用するステップとをさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項11】
異なるサイズを有する複数のスキャンボディから前記1つ以上のスキャンボディを選択するステップと、
選択されるフレーム部材が歯列弓にフィットし且つ1つ以上のウイング部材の各々に載るように、異なるサイズを有する複数のフレーム部材から前記フレーム部材を選択するステップと、を更に含む、請求項8記載の方法。
【請求項12】
歯列弓をスキャンするための歯科用デバイスであって、
長手方向軸を有するボディ領域と、前記長手方向軸から半径方向外側に延在するウイング領域と、をそれぞれ有する複数のスキャンボディを備え、
前記ボディ領域の各々が、前記歯列弓における締結具と嵌合するように構成されている底端を有し、
前記複数のスキャンボディの各々が、歯科用CADソフトウェアで利用可能な関連する三次元デジタル画像ファイル内の形状データに対応する形状を有し、
前記複数のスキャンボディの各々が、スキャンすることおよび前記関連する三次元デジタル画像ファイルに対してスキャンデータを位置合わせすることを容易にする形状、を有し、
前記複数のスキャンボディの各々のウイング領域が、歯列弓の中央領域内の位置で収束しかつ前記スキャンボディを一緒に合着させるのを容易にするために近接するようなサイズおよび寸法を有する、歯科用デバイス。
【請求項13】
前記ウイング領域が、前記スキャンボディのねじ穴から遠位端で長手方向に先細りになっている、請求項12に記載の歯科用デバイス。
【請求項14】
互いに結合するように構成されている1つ以上の取り付け領域にアンダーカットをそれぞれ有する、複数のスキャンボディと、1つのフレーム部材とを更に備える、請求項12に記載の歯科用デバイス。
【請求項15】
前記複数のスキャンボディを前記歯列弓における前記締結具に結合させるステップと、
前記複数のスキャンボディの前記ウイング領域を、前記歯列弓の中央領域内に収束するように位置決めするステップと、
口腔内スキャナーを用いて前記スキャンボディをスキャンするステップと、
歯科用CADソフトウェアを使用して、スキャンされた三次元画像を前記三次元デジタル画像ファイルに位置合わせするステップと、
前記複数のスキャンボディを接着または合着させるステップと、を含む、請求項12に記載の歯科用デバイスを使用する方法。
【請求項16】
前記複数のスキャンボディが、スキャンを容易にするためにサンドブラスト加工またはコーティングされている、請求項12に記載の歯科用デバイス。
【請求項17】
各ウイング領域が、合着を容易にするために1つ以上のウェルを有する、請求項12に記載の歯科用デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年10月29日に出願された米国仮特許出願第63/107205号の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明の分野は、歯科用デバイスであり、特に、口腔内スキャン、組織圧排(retraction)、および物理的確認用ジグのための、歯科用デバイスである。
【背景技術】
【0003】
背景技術の説明には、本発明を理解する上で有用と思われる情報が含まれている。この説明は、本明細書に記載されるいずれかの情報が先行技術であること、または現在特許請求されている発明に関連していること、あるいは具体的または黙示的に参照されている出版物が先行技術であることを認めるものではない。
【0004】
口腔内スキャナーは、もう何十年も前から歯科医に利用されているが、世界中の歯科医院でより一般的になったのは、つい最近のことである。口腔内スキャナーは、カメラと投光器とを有する小さなハンドピースを備えた機器である。ハンドピースを患者の顎に装着してレーザー光を照射し、三次元形状を正確に測定する。同時に、前記ハンドピースは、スキャンされている歯科解剖学的構造および/または歯科インプラントコンポーネントの三次元画像をつなぎ合わせるためのマルチアングル画像も撮影する。口腔内スキャナーは、一般的に、歯科技工所によるほとんどの歯科修復を可能にするような患者の顎の従来の物理的印象に取って代わるのに、十分な精度を備えている。しかし、フルアーチ歯科インプラントの固定リハビリテーションの場合、口腔内スキャナーの精度は多くの要因によって制限される。
【0005】
口腔内のスペースが限られているため、5mm~10mmの短い固定距離から画像を撮像するには、口腔内カメラのデジタル光投影技術が必要である。この短い固定距離により、口腔内スキャナーによって取得される各画像の視野が制限される。患者の口腔全体の解剖学的構造の正確なデジタル三次元記録を作成するために、口腔内スキャナーによって歯列弓にわたる複数の角度から一連の画像と測定値が取得される。これらの画像は、重なり合い、明確な三次元の幾何学的形状と輪郭を認識する高度なソフトウェアを使用して位置合わせされる(aligned)。この重なり合った三次元データを使用して、ソフトウェアにより個々の画像を正確につなぎ合わせることで、患者の口腔全体の解剖学的構造の正確な三次元記録をデジタルで再作成できる。
【0006】
歯科用コンピュータ支援設計(CAD)ソフトウェアは、口腔内スキャン技術の他のコンポーネントである。例として、3Shape Dental StudioおよびExoCADが挙げられる。これらの各ソフトウェアは、口腔内でスキャンされたスキャンボディの形状に直接対応するデジタルライブラリを備えており、デンタルCADソフトウェアの解剖学的記録に対して位置合わせ、識別、および位置決めを行うことができる。これらのライブラリは、スキャンボディに固定された対応するインプラントコンポーネントの三次元位置のデジタル記録を取得するためのスキャンプロセス中に必要とされるスキャンボディの関連スキャンデータを、規定する。歯科用CADソフトウェアのライブラリファイルとそのデータとを位置合わせするために、スキャンから十分なスキャンデータが利用可能である必要がある。口腔内スキャンから歯科インプラントコンポーネントの三次元位置を決定するために、対象となる歯科インプラントコンポーネントに取り付けられたスキャンボディと、隣接する硬い顎の解剖学的構造とが、口腔内スキャナーでスキャンされる。スキャンボディの口腔内スキャンによる三次元デジタルファイルは、歯科用CADソフトウェアでスキャンボディの三次元デジタル表現に、デジタル的に位置合わせされる。この2つのデジタルファイルが位置合わせされると、歯科用CADソフトウェアにおけるそのスキャンボディのライブラリから、対応する歯科インプラントコンポーネントを任意の数だけ取り込むことができる。これらのライブラリは、通常、インプラントコンポーネントのメーカーにより、歯科用CADソフトウェア用に作成される。
【0007】
口腔内スキャナーは、位置合わせ用のマーカーとして機能する、硬く、独特で、整った歯がたくさんある場合に、非常にうまく機能する。しかし、歯科インプラント固定式またはインプラント保持式のフルアーチリハビリテーションでは、1つのアーチ上のすべての歯が除去される。残されるのは、多くの歯周組織と3本以上のインプラントだけである。歯がないと、前記口腔内スキャナーは歯周組織のスキャンに混乱をきたし、スキャンを停止する可能性がある。もしスキャナーが混乱し続け、停止したり、実際には完全に一致しない2つの画像をつなぎ合わせたりすると、歯列弓における相対的なインプラントの位置を正確に決定することは不可能になる。
【0008】
すべてのインプラントが一度に受動的に固定される補綴物を作製するためには、個々のインプラントと他のインプラントとの相対的な三次元位置を正確にキャプチャする必要がある。これは従来、確認用ジグ(verification jig)と呼ばれる特注の物理デバイスを用いて行われてきた。確認用ジグは、従来から、硬質合着材料、デンタルフロス、および歯科インプラント印象用コーピングを使用して歯科技工所によって作成されている。まず、診療室で患者の口の物理的印象が作成される。次いで、その印象から、おおよそのインプラント位置を備えた歯科用模型が、注入される。印象用コーピングは、各インプラント部位で歯科模型に固定される。次いで、印象用コーピングの間にデンタルフロスを張り、硬化したアクリル材料の格子構造として機能させる。次いで、流動性のあるアクリル材を使用して、印象用コーピングの間や各印象用コーピングの周囲にあるデンタルフロスに流し込んで、すべての印象用コーピングを一緒に合着する。アクリル素材は、固まると収縮する性質がある。この誤差の影響を最小限に抑えるため、確認用ジグは各歯科インプラント位置の間で切断され、患者の顎の中で再び一緒に合着され得る。患者の顎で確認用ジグを合着させる際に使用する合着材料の量を最小限にすることで、収縮によって生じる誤差は無視できる程度になる。
【0009】
無歯顎のインプラントの三次元的な相対位置を口腔内スキャナーで正確に記録することは非常に困難である。なぜなら、2つのインプラントが相互に離れすぎていて、相対的な位置を正確に把握することができないことが多いからである。相互間にかなりの距離がある歯科インプラントが4本以上ある場合、それはさらに困難になる。さらに、血液、唾液、歯肉の軟組織により口腔内スキャナーが混乱し、スキャンの完了が妨げられることがよくある。
【0010】
口腔内スキャナーは、他の歯がたくさんある場合の単一の歯の修復に高い精度を発揮することが証明されている。しかし、インプラントを固定または保持したフルアーチのリハビリテーションの際に歯科インプラントの口全体をスキャンすることには、口腔内スキャン装置の限界と刻々と変化する口腔の状態との両方によって複雑になる独特の課題であることが、判明している。当然のことながら、ほとんどの臨床医は、インプラントの正確な相対的な三次元位置を一度にキャプチャするために、物理的な確認用ジグを用いた物理的な印象に頼っている。
【0011】
インプラントの位置などの歯科記録をデジタルでキャプチャするための研究開発が盛んに行われてきたのは、デジタル歯科医療がアナログ歯科医療よりも非常に効率的であるからである。デジタルでその場で変更が可能なため、患者と直接会う必要が少なくなる。デジタルワークフローは、プロセスにおけるステップを省くことで、アナログワークフローの複雑さを軽減することができる。臨床医が行う作業を分析および測定するためのより良い方法を導入することで、デジタルワークフローは、変動要因を減らすことができる。最終的に、デジタルワークフローは、臨床医と患者の双方にとって、時間、労力、コストの節約になる。歯科治療で最も複雑な処置の一つであるフルアーチの歯科インプラントリハビリテーションに関しては、デジタルワークフローによって効率が大幅に向上する可能性が大きい。
【0012】
過去3~4年にわたって、複数のカメラと広い視野を備えた口腔外スキャナーが、歯科におけるこの特有の問題を解決するために他の産業分野から採用されてきた。重なる画像を同時にキャプチャする複数のカメラの固定距離がわかっていれば、レーザーと単純な形状とによって行われる測定で、個々の歯科インプラントの正確な相対的三次元位置を推定することが非常に簡単になる。しかし、このフォトグラメトリーと呼ばれる技術は非常に高価であり、歯科では他の目的では有用ではない。そのため、その技術はあまり使用されていない。さらに、フォトグラメトリーの精度は、臨床研究や学術論文で十分に証明されているわけではない。未知の部分が多すぎ、また考慮されていない変動要因が多すぎる。この要因には、このデバイスに使用されるカメラ、キャリブレーションデバイス、およびスキャンボディの製造公差が含まれる。
【0013】
最近では、口腔内スキャナーで歯科インプラントの位置を正確にキャプチャするための橋渡しとして機能させるために、口腔内の歯科インプラント間にランダムな三次元形状を使用することが、歯科臨床雑誌に掲載されるようになった。これらの記事では、このような三次元形状を用いることで、精度が向上する傾向があることが示されている。ほとんどの雑誌記事には、患者に合わせて製作され、歯周組織に装着されるカスタムメイドのスキャニング器具(appliance)が記載されている。これらの記事には、これらのカスタム器具のいくつかの有効性が記載されているが、市場の存続可能性を考慮すると、コストと規模が問題になる。さらに、歯周組織、唾液や血液の存在は、全く動かずにスキャンする必要があるあらゆる種類の器具にとって、最良の条件ではない。興味深いことに、あらゆる種類の測定パラメータで補綴物の適合性を客観的に定義する単一の論文は発表されていない。発表されているのは、よくトレーニングされた臨床医による極めて主観的な臨床観察のみである。パッシブフィットする補綴物についての彼らの意見は、これらの研究が成功を測ることができた唯一の基準である。
【0014】
特表2018-504970号公報は、インプラント部位に螺合し、口腔内スキャンの精度および正確さを改善するためのスキャナブル構造を提供するジグである、カスタム設計および製造された「試適部品」を教示する。試適部品は、スキャン可能な構造体として機能する4つのポストを有する。試適部品は、スキャン前に受動的に一体として各インプラントにフィットするために、分離して再び結合することができる2つのインプラント間に延在する二次元および三次元構造体を有し得る。特表2018-504970号公報は、異なるサイズのアーチに普遍的にフィットするように異なる構成で組み立てることができる歯科用デバイスを教示していない。
【0015】
米国特許第10136969号明細書は、総義歯修復物の基準点を提供するために口腔内スキャンおよびX線スキャン中に装着される方向付け(orientation)器具を教示する。この器具は、最終修復物の咬合の垂直寸法、遠心関係、遠心咬合、審美的パラメータ、音声、および機能を収集するために使用される。また、本器具には放射線不透過性マーカーが含まれる。前記方向付け器具は、単一の部品から作製することも、別個の部品から組み立てることもできる。米国特許第10136969号は、異なるサイズのアーチに普遍的に適合する歯科用デバイスを教示していない。米国特許第10136969号明細書もまた、方向付け器具の咬合面、または口腔内スキャンを容易にするための三次元幾何学的形状の使用に関する詳細を提供していない。
【0016】
米国特許第10363115号明細書は、基準マーカー/スキャン器具として使用することができるカスタム設計および製作されたベースフレーム400を教示している。それは、連続するスキャンを一緒に結合するための基準点を提供するスキャンボディ1102および他の上部構造1304aを有する。他の構成では、ベースフレーム200は、外科用ガイド上部構造400から取り外し可能である。米国特許第10363115号明細書は、事前のスキャンまたは測定なしに普遍的にサイズ調整され、アーチにフィットし得る歯科用デバイスを教示していない。
【0017】
米国特許第10350036号明細書は、アーチ横断基準を提供するためにアーチ内に配置される基準フレーム(「連結幾何学ツール300」)を教示している。フレームは、直接またはヒーリングアバットメントを介して間接的に、インプラントに結合され得る。米国特許第10350036号は、ヒーリングアバットメント500に取り付けるスキャンプレート502も教示しており、スキャンプレートおよびアバットメント上の特異な特徴が基準点として使用される。米国特許第10350036号は、CTスキャンからのデータを取り込むことも教示している。しかし、米国特許第10350036号明細書は、完全な剛性フレームをスキャンプレートに接着または合着してフレームを剛性的に固定することを教示していない。また、米国特許第10350036号明細書は、補綴物を製作する目的で、物理的に確認されたジグとして、剛性的に接着または合着されたフレームおよびスキャンボディ装置を使用することを教示していない。
【0018】
米国特許出願公開第2018/0206951号明細書は、複数のスキャンのための位置合わせ装置として使用される、顎に直接係合するスキャン可能なヘッドを有するねじ付きポストを教示している。米国特許出願公開第2018/0206951号明細書はまた、「確認用ジグ」および「スキャン用経路」を提供するために、インプラント支持スキャンボディ72上に伸縮され得る剛性支持バー78の使用を教示している。しかし、米国特許出願公開第20180206951号明細書は、1つ以上のウイングと、異なるサイズのアーチにおいて歯科用デバイスをユニバーサルフィットさせるためにウイングに結合され得る別個のベースフレームと、を備える歯科用デバイスを、教示していない。
【0019】
国際公開第2016/110855号は、口腔内スキャンの精度を向上させるために、口腔内に装着されるフレーム(基準要素(fiducial element)100)を教示している。国際公開第2016/110855号はまた、フレームが、「咬合スキャンデータおよび基準マークスキャンデータの同時取得を可能にする」ために、口腔内にフレームをフィットさせるように伸長または変形可能なフィット要素を有し得ることを教示している。米国特許第10111714号明細書は、口腔内スキャンの精度を向上させるためにアーチ上に接着剤を塗布することを教示している。国際公開第2016/178212号は、口腔内スキャンの精度を向上させるための磁気センサ720とマーク730とを有するマーカー固定デバイス710を教示している。しかし、これらの文献のいずれも、歯科用締結具をアーチ内に結合し、フレームを取り付けるためのプラットフォームを提供するウイング部材を有する歯科用デバイス、を教示していない。
【0020】
オーストラリアにあるOsteon社(www.nexusios.com)のNexus iOSシステムは、最近、口腔内スキャンシステムをリリースした。このシステムでは、スキャンボディの形状を縦長に設計し、口腔内スキャンの際にアーチをまたぐように設計することで、スキャンの際の精度を高めている。各キットはカスタムメイドされ、レーザー測定され、シリアル番号が付けられているため、高い精度が保証されている。これにより、スキャンの位置合わせの際に、誤差を修正するための調整を行うことができる。しかし、本製品は、アーチ内の歯科用締結具を結合し、フレームを取り付けるためのプラットフォームを提供するウイング部材を有する歯科用デバイスの使用については記載されていない。
【0021】
米国カリフォルニア州クローヴィスのinstarisa(www.instarisa.com)も、口腔内スキャンのための独自のゴルフスキャンボディ(Golf scan body)を発表している。彼らは、Nexus iOSと同様に、より正確なスキャンを行うために、無歯顎のアーチにインプラントを一緒にブリッジするのに役立つ口腔内スキャナーと共に使用することを意図したスキャンボディを設計している。また、ScanDarと呼ばれるやや硬めの流動性のある素材を使用し、スキャンボディの周囲に適用することで、スキャンボディを固定し、スキャンするための硬い面を均一にすることができる。しかし、この製品には、アーチ状に歯科用締結具を結合し、フレームを取り付けるためのプラットフォームを提供するウイング部材を有する歯科用デバイスの使用については記載されていない。ScanDar素材を使用して、すべてのスキャンボディを一体的な部品として固定し、物理的に確認されたジグを作成することができるとしているが、物理的なジグの精度を損なうような、合着プロセス中の素材の収縮の可能性については考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【文献】特表2018-504970号公報
【文献】米国特許第10136969号明細書
【文献】米国特許第10363115号明細書
【文献】米国特許第10350036号明細書
【文献】米国特許出願公開第2018/0206951号明細書
【文献】国際公開第2016/110855号
【文献】米国特許第10111714号明細書
【文献】国際公開第2016/178212号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
無歯顎アーチ上の歯科インプラント位置の口腔内スキャンを容易にするための様々な歯科用デバイスが知られているが、大量に予め製造することができ、カスタムメイドの器具のみがこれまで解決することができなかった多くの変動要因に普遍的に適合することができる歯科用デバイスに対する必要性が、依然として存在する。これらの変動要因には、配置されるインプラントの数、治療される口の大きさ、および歯科インプラントのコンポーネントの固有の接続が含まれるが、これらに限定されない。これらの変動要因に普遍的に適応することで、フルアーチリハビリテーションを担当する歯科医師の数の増加に応えるためのコストと規模を大幅に改善することができる。
【0024】
さらに、歯科インプラント固定フルアーチリハビリテーション手順の様々なステップを簡略化することが非常に必要とされている。記録取得は、CBCTスキャン間の位置合わせツールとして機能する放射線不透過性デバイスを用いて簡略化することができる。また、無歯顎アーチのインプラント位置をスキャンするために水平面を作成するデバイスがあれば、口腔内スキャンもより効率的になる。また、手術中にスキャンすることができ、同時にスキャン中に組織のフラップを保持する圧排デバイスとして機能する装置があれば、口腔内スキャンも簡素化され、スキャンはより効率的になる。
【0025】
最後に、デジタルスキャンされたデータの精度を確認し、インプラント締結具を歯科補綴物に固着させるためには、確認された物理的ジグが理想的である。歯科インプラント位置の口腔内スキャンを容易にした後、物理的なジグとして機能できるデバイスにより、患者のための最終補綴物を作製する際の時間と労力を大幅に節約することができる。臨床医は、デジタルワークフローの効率性を享受しながら、試行錯誤を重ねた物理的確認用ジグの精度に自信を持つことができるようになる。
【0026】
したがって、改良された歯科用デバイスおよびその使用方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の主題は、歯科用デバイスが、1つ以上のスキャンボディと、1つのフレーム部材とを備える装置、システム、および方法を提供する。各スキャンボディは、長手方向軸を有するボディ領域と、長手方向軸から半径方向外側に延在するウイング領域とを有する。前記ボディ領域の底端は、歯科インプラントコンポーネントなどの歯列弓における歯科用締結具と嵌合するように構成されている。いくつかの実施形態では、貫通孔が前記スキャンボディのボディ部分を貫通している。開口部は、前記スキャンボディを歯科用締結具に取り付けるためのねじを受け入れるようなサイズおよび寸法を、有する。
【0028】
前記スキャンボディが歯列弓の歯科インプラントコンポーネントに取り付けられると、前記スキャンボディおよび歯列弓は、口腔内スキャナーでスキャンされる。キャプチャされた画像は、歯科用CADソフトウェアライブラリ内の対応する三次元デジタル画像ファイルと位置合わせされ、歯科弓のデジタル記録を作成するために一緒につなぎ合わされる。
【0029】
前記フレーム部材は、接合材料または合着材料を用いてスキャンボディのウイング領域に固定される。いくつかの実施形態では、前記フレーム部材は、接着強度を向上させるために、合着材料を受け入れて保持するように設計された格子構造を備える。フレーム部材がスキャンボディに合着された後、歯科用デバイスは、歯列弓から取り外され、物理的確認用ジグとして使用され得る。このように、前記歯科用デバイスは、患者の口内の歯科インプラントの三次元位置の高精度の物理モデルを提供する。
【0030】
さらに他の実施形態では、前記フレーム部材は、口腔内スキャンの鮮明度を提供し、精度を向上させるための1つ以上の三次元特徴を有する。この実施形態では、前記フレーム部材は、歯列弓をスキャンする前に前記スキャンボディに取り付けられる。スキャン可能な特徴には、半球、立方体、円錐、角錐、円柱、直方体、ハニカム、およびプリズムなどの幾何学的形状が含まれ得る。1つ以上の三次元特徴が、口腔内スキャナーからのデジタル寸法データを用いて物理的寸法を較正するために使用され得る既知の寸法を有することも、企図される。
【0031】
いくつかの実施形態では、前記スキャンボディは、ウイング部材の向き(例えば、ウイング部材の長さが向かって延在する方向)を調整できるように、歯科インプラントコンポーネントと回転可能に結合するように構成される。このような実施形態では、前記ウイング領域は、歯列弓の中央領域内の位置に収束するように回転させて配置され得る。前記スキャンボディは、異なるサイズの歯列弓および/または異なるタイプの既存の歯科インプラントコンポーネントにフィットするために、異なる形状、サイズ、および構成の選択肢から選択され得る。同様に、フレーム部材のサイズは、異なる形状、サイズ、および構成を有する複数のフレーム部材から選択することによって選択され得ることも企図される。
【0032】
本発明の主題は、歯科用デバイスが少なくとも2つのスキャンボディを備え、フレーム部材を備えない装置、システム、および方法も提供する。そのような実施形態では、スキャンボディは、互いに5mm以内、より好ましくは3mm、最も好ましくは1mm以内の歯列弓の中央領域の同じ位置内に収束するようなサイズおよび寸法を有する。いくつかの実施形態では、前記ウイング領域の先端は、口腔内スキャナーで全ての先端を1つの画像にキャプチャし得るように、より近接できるように先細になっている。前記スキャンボディは、好ましくは、歯科インプラントコンポーネントと回転可能に結合するように構成される。
【0033】
本発明の主題は、インプラント手術中に組織フラップを圧排するために歯科用デバイスが使用される装置、システム、および方法も、提供する。この方法は、歯列弓の軟組織を切断して1つ以上の外科的フラップを作成するステップと、前記歯列弓の骨内に1つ以上のインプラントを配置するステップと、前記1つ以上のスキャンボディを1つ以上の歯科用締結具に結合するステップと、圧排位置で前記1つ以上の手術用フラップを保持する位置において、前記フレーム部材を前記1つ以上のウイング部材に接着または合着させるステップと、前記フレーム部材が前記1つ以上のスキャンボディに取り付けられた後に、かつ前記1つ以上の外科的フラップが圧排されている間に、前記歯列弓および前記フレーム部材をスキャンするステップと、を含む。本方法は、術前スキャン、歯科用デバイスが歯列弓と結合している間の口腔内スキャン、を得るステップと、前記口腔内スキャンをCBCTスキャンと位置合わせするステップとをさらに含み得る。本方法はまた、フレーム部材および1つ以上のウイング部材を、単一ユニットとして、前記1つ以上のインプラントから取り外すステップと、前記1つ以上の外科的フラップを縫合するステップとを含み得る。本方法は、前記単一ユニットを物理的確認用ジグとして使用するステップを、さらに含み得る。
【0034】
さらに他の態様では、本方法は、1つ以上の外科的フラップが歯科用デバイスによって圧排されている間に、歯列弓およびフレーム部材のスキャンを用いて修復物を作製するステップと、1つ以上の外科的フラップが縫合された後8時間以内に修復物を歯列弓にフィットさせるおよび取り付けるステップと、を含み得る。
【0035】
本発明主題の様々な目的、特徴、側面および利点は、同様の番号が同様のコンポーネントを表す添付の図面とともに、好ましい実施形態の以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】歯科用デバイスおよび歯列弓の第1の実施形態の分解斜視図である。
図2図1の歯科用デバイスおよび歯列弓の分解正面図である。
図3図1の歯科用デバイスおよび歯列弓の分解側面図である。
図4】ウイング領域を示す図1におけるスキャンボディの平面図、側面図、および斜視図である。
図5図1のインプラント、アバットメント、ねじ、およびスキャンボディの分解側面図である。
図6図1のインプラント、ねじ、およびスキャンボディの分解側面図である。
図7】歯科用デバイスおよび歯列弓の第2の実施形態の分解斜視図である。
図8図7における歯科用デバイスおよび歯列弓の分解正面図である。
図9図7における歯科用デバイスおよび歯列弓の斜視図である。
図10図7における歯科用デバイスおよび歯列弓の正面図である。
図11図7における歯科用デバイスおよび歯列弓の立面図である。
図12】合着材料を有する図7の歯科用デバイスおよび歯列弓の斜視図である。
図13図12における歯科用デバイスおよび歯列弓の正面図である。
図14図12の歯科用デバイスおよび歯列弓の立面図である。
図15】フレームが取り外された、図7における歯科用デバイスおよび歯列弓の斜視図である。
図16図15における歯科用デバイスおよび歯列弓の正面図である。
図17図15における歯科用デバイスおよび歯列弓の立面図である。
図18】合着材料を有する図15の歯科用デバイスおよび歯列弓の斜視図である。
図19図18における歯科用デバイスおよび歯列弓の正面図である。
図20図18における歯科用デバイスおよび歯列弓の立面図である。
図21図7におけるインプラント、ねじ、およびスキャンボディの分解斜視図である。
図22図7におけるインプラント、ねじ、およびスキャンボディの分解側面図である。
図23図21のスキャンボディの斜視図、側面図、および平面図である。
図24】インプラント、ねじ、およびスキャンボディの別の実施形態の分解斜視図である。
図25図24におけるインプラント、ねじ、およびスキャンボディの分解側面図である。
図26図24におけるスキャンボディの斜視図、側面図、および平面図である。
図27】歯科用デバイスおよび歯列弓の第3の実施形態の分解斜視図である。
図28図27における歯科用デバイスおよび歯列弓の分解正面図である。
図29図27における歯科用デバイスおよび歯列弓の立面図である。
図30図27におけるインプラント、アバットメント、スキャンボディ、およびねじの分解側面図である。
図31図27におけるインプラント、アバットメント、スキャンボディ、およびねじの分解斜視図である。
図32図27におけるインプラント、アバットメント、スキャンボディ、およびねじの分解側面図である。
図33】インプラント、スキャンボディ、およびねじの別の実施形態の分解斜視図である。
図34図33におけるインプラント、スキャンボディ、およびねじの分解側面図である。
図35図33におけるスキャンボディの斜視図、側面図、および平面図である。
図36】スキャンボディの別の実施形態の斜視図、側面図、および平面図である。
図37】歯科用デバイスの第4の実施形態の斜視図である。
図38図37における歯科用デバイスの立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下の説明では、本発明の主題の多くの例示的な実施形態を提供する。各実施形態は、発明的要素の単一の組み合わせを表しているが、発明的主題は、開示された要素のすべての可能な組み合わせを含むと見なされる。したがって、1つの実施形態が要素A、B、およびCを含み、第2の実施形態が要素Bおよび要素Dを含む場合、本発明の主題は、明示的に開示されていなくても、A、B、C、またはDの他の残りの組み合わせも含むと見なされる。
【0038】
図1は、歯科用デバイス100の斜視分解図である。図2は、歯科用デバイス100の分解正面図を示す。図3は、歯科用デバイス100の分解側面図を示す。歯科用デバイス100は、フレーム部材11を含む。フレーム部材11は、任意の剛性および強度を有する金属またはプラスチック材料から、フライス盤でフライス加工され得る。これらの材料は、チタン、ステンレス鋼、アルミニウム、PEEK、またはPMMAを含み得る。フレーム部材は、剛性および強度を有する樹脂において3Dプリントすることも可能である。理想的な3Dプリント材料のゴールドスタンダードは、3Dプリント用に設計された歯科グレードの仮歯冠材料である。
【0039】
フレーム部材11は、2つのスキャンボディ12および2つのスキャンボディ13と結合されている。これらのスキャンボディは、上記のフレームと同様に、フライス加工または3Dプリントのいずれかで製造される。スキャンボディの製造公差は一般に非常に厳密であり、現在、フライス加工の精度は最高品質の3Dプリント手法よりもわずかに優れている。 チタン、アルミニウム、ステンレスなどの金属は、すべてスキャンボディのフライス加工に使用され得る。また、PEEKまたはPMMAなどのプラスチック材料からスキャンボディをフライス加工することも可能である。一方、3Dプリンタでは、フライス加工では再現できない、より複雑な形状やアンダーカットが実現可能になる。このような複雑な形状やアンダーカットにより、フレーム部材11とスキャンボディ12、13との合着が容易になる。現在入手可能な最も正確な3Dプリンタは、Stratasys社製のポリジェットプリンタである。このプリンタは、14ミクロンという小さな解像度で印刷できるため、正確である。Stratasys社は、ポリジェットプリンタ用の材料も製造している。標準的な素材である「Vero」は、強度が高く、寸法精度が高いため、すでにこの用途には最適である。しかし、VeroDentPlus Med690のように、さらに強度の高い歯科専用の材料も製造している。これらの材料が改良され続け、3Dプリント技術がより正確になるにつれて、3Dプリントはこれらのスキャンボディの製造方法として選択されるようになる可能性がある。
【0040】
スキャンボディ12は、ねじ2を介してアバットメント14に取り付けられる。アバットメント14は、歯列弓18におけるインプラント15に取り付けられる。スキャンボディ13は、アバットメント部と、インプラント15に直接取り付けるねじ2’と、を有する。
【0041】
世界中の市場には、数百の歯科インプラント会社が存在する。それぞれが独自のねじ、アバットメントおよびインプラントを製造している。最もよく知られた歯科インプラント会社としては、Nobel Biocare、Straumann、Dentsply Implants、およびBiohorizonsが挙げられる。これらの会社の歯科インプラントは、それぞれ独自の微妙な差異を有しているが、基本的にはすべて同じように作動し、同じように機能するように作製された部品を有している。これは、フルアーチ歯科インプラントの固定リハビリテーションではさらに当てはまる。この処置に一般的に使用されるアバットメントは、マルチユニットアバットメントである。会社によって名称は異なるが、Nobel Biocareがこの処置を先駆けて開発したため、そのマルチユニットアバットメントは他の歯科インプラント会社によって模倣された。つまり、これらのさまざまな会社のマルチユニットアバットメントはほとんど類似しており、これらのマルチユニットアバットメントと嵌合するように作られた部品は、多くの場合、互換可能である。
【0042】
歯科用デバイス100は、歯列弓18上で一緒に合着された後、口腔内スキャナーによってスキャンされるように設計されている。歯科における合着は、流動性のある材料が2つの歯科コンポーネントの間に注入され、硬化してそれら2つのコンポーネントを一緒に取り付けるプロセスである。これらのコンポーネントの例は、予備処理された歯、歯科インプラントアバットメント、クラウン、ブリッジ、補綴物、テンプシリンダー(temp cylinder)、Tiベース、または本明細書に記載されていない他の同様のコンポーネントのうちの任意の2つであり得る。流動性材料は、典型的には、2つの部分において供給される。それらの2つの部分は、液体、粉末、ゲルまたはペーストの任意の組み合わせであり得る。これらの2つの部分を混合すると、その混合物は硬化し始める。硬化した材料が歯科用コンポーネントと化学的に類似している場合、硬化する際にそれらのコンポーネントと化学的に結合することもある。材料の硬化は、特定の波長の光に反応するように調整された化学的光活性剤を使用して材料が製造されている場合、青色の可視光線または紫外線によって促進することができる。合着に使用される材料の例としては、PMMA、ビスアクリル(bisacryl)、またはコンポジットレジンが挙げられる。具体的な製品例としては、GC社のUnifast、Zest Anchors社のChairside、GC社のTemp、DMG社のLuxaTempなどがある。デバイスが一緒に合着されると、歯列弓18から一体物として取り外して、物理的な確認用ジグとして使用され得る。
【0043】
歯列弓18は、任意の年齢および/またはサイズの任意の人の上顎顎弓または下顎顎弓を含み得る。歯列弓18は、人の上顎弓または下顎弓の人工的な物理的モデルも含み得る。前記モデルは、様々な石膏材料または樹脂材料で作製され得る。
【0044】
図4は、スキャンボディ12の側面図、平面図、および斜視図である。スキャンボディ12は、円筒体領域12aとウイング領域12bとを備える。前記円筒体領域12aには、円筒体領域12aの長手方向に貫通する貫通孔が設けられている。また、前記円筒体領域の上部には、傾斜したノッチ(notch)がある。この傾斜したノッチは、前記スキャンボディの上部の表面積を増加させることにより、スキャンを容易にする。これにより、精度が向上し、スキャン速度が速くなる。また、スキャンデータを歯科用CADソフトウェアにおける三次元デジタル画像ファイルに位置合わせすることを容易にするために、スキャンボディにより固有の特徴を付与する。ウイング領域12bは、スキャンボディ領域12aの長手方向寸法から半径方向外側に延在する長さを有する。ウイング領域12bは、合着材料および/または接着材料を保持し把持するための複数のペグまたは突起16を含む取り付け領域を有する。合着材料が前記ペグの周りを流れ、合着材料がそれらのペグの周りで硬化すると、前記合着材料はペグのアンダーカットの下で前記ウイング領域12aに不可逆的に取り付けられるようになる。これにより、前記ウイング領域12aと前記フレーム部材11との間の安定した接続が可能になる。
【0045】
図5は、ねじ2を介してアバットメント14に固定されたスキャンボディ12の側面分解図を示す。アバットメント14は、ねじ19を介してインプラント15に取り付けられる。スキャンボディ12は、アバットメント14の上に配置されると、ウイング領域12bが延在する方向を調整するために、回転させることができる。スキャンボディ12の向きが選択された後、スキャンボディ12をその回転位置に固定するためにねじ2が使用され得る。
【0046】
図6は、スキャンボディ13の側面分解図である。スキャンボディ13の底端が、アバットメント14を介さずにねじ2’を介してインプラント15と直接嵌合するように構成されていることを除いて、スキャンボディ13は、スキャンボディ12と同様である。スキャンボディ13は、インプラント15の内部回転防止機構に係合する六角部を有する実施形態を示しているが、スキャンボディ13がインプラント15の内部回転防止機構に係合する六角部を有していなくてもよいことも企図されている。この企図された実施形態では、スキャンボディをインプラントの周りで自由に回転させて、歯列弓のウイング領域13bの軌道を調整することができる。スキャンボディ13の向きが選択された後、スキャンボディ13をその回転位置に固定するためにねじ2’が使用される。
【0047】
図7は、歯科用デバイス200および歯列弓250の分解斜視図である。図8は、歯科用デバイス200および歯列弓250の分解正面図を示す。前記歯科用デバイス200は、フレーム201と、2つのスキャンボディ203と、2つのスキャンボディ205と、歯列弓250のインプラント210と締結する4つのアバットメント207とを含む。スキャンボディ203およびスキャンボディ205は、異なるサイズを有する。スキャンボディ203およびスキャンボディ205の両方は、同じ大きさの円錐体203aと円錐体205aとを有するが、そのウイング領域203bと205bでサイズが異なる。前記ウイング領域203bはより大きく、長さ19mm×幅10mm×高さ5mmである。スキャンボディ203は、一般に口の後部などの大きなスパンにおいて使用される。ウイング領域205bはより小さく、長さ13mm×幅6.5mm×高さ5mmである。スキャンボディ205は、一般に、口の前方のような小さな領域で、または互いに近接する隣接インプラントで、使用される。前記スキャンボディ203および前記スキャンボディ205の実際の寸法は、それらが支障なくアバットメント207に固定され得るという点においてのみ関連する。また、ウイング領域203bおよびウイング領域205bが収束し、歯列弓の中心でお互い重なるかまたは接触し得ることが重要である。この場合、これらの目標を達成するために、2つの異なるサイズのウイング領域が企図された。また、これらの目標を達成するために、1つのサイズで十分であることも企図されている。また、これらの目標を達成するために、2より大きい任意の数のサイズが必要とされ得ることも企図される。スキャンボディ203およびスキャンボディ205の円錐体は、同じ大きさである。これにより、必要に応じて、時間をかけてデジタルスキャンデータを階層化することができる。
【0048】
前記歯科用デバイス200は、フレーム201がスキャンボディ203およびスキャンボディ205と合着または接着される前に、口腔内スキャナーによってスキャンされるように設計されている。スキャンボディ203およびスキャンボディ205がスキャンされた後、フレーム201が使用され、スキャンボディ203とスキャンボディ205とを一緒に合着するので、前記デバイスは、物理的確認用ジグとして機能するために1つの単一部品として取り外され得る。しかし、前記歯科用デバイス200は、フレーム201がスキャンボディ203およびスキャンボディ205と一緒に取り付けられた後にスキャンされ得ることも、企図される。フレーム201は、上側部と、下側部と、前記上側部から前記下側部にかけてハニカム状の貫通孔を有する中格子部と、を有する。フレーム201は、台形のような形状をしており、約5~10mmの厚さを有する。フレーム201は、三角形、正方形、平行四辺形、または患者の顎にフィットし、スキャンボディを一緒に合着することを容易にするような他の幾何学的形状のような形状を有し得ることが企図されている。また、フレームの中格子部において2つのハニカム格子に挟まれた、フレームの中央を通る負の空間の長手方向のスライスが存在することが、企図される。フレーム201の厚さの中央のこのスライスの負の空間は、歯科用デバイス200がなる物理的確認用ジグに剛性および安定性を加えるために、合着材料が周囲で硬化することができるアンダーカット、として機能する。また、合着材料を保持するための多数のアンダーカットを有する足場として機能し得る任意の格子または幾何学的形状が、歯科用デバイス200のための適切なフレーム201を作ることが企図される。フレームのサイズおよび形状は、患者の顎およびスキャンボディのウイング領域の位置にフィットするように容易に調整され得ることも企図される。臨床医は、はさみ、ペンチ、粗面化された回転バーを有する電子ハンドピース、さらには自分の手などの任意の標準的な歯科的手段を用いて、フレームをスキャンボディに効果的に合着することを妨げているかもしれないフレームの一部を、破壊することができる。
【0049】
図9は、スキャンボディ203およびスキャンボディ205のウイング領域上に配置されたフレーム201、を有する歯科用デバイス200の斜視図である。図10は、スキャンボディ203およびスキャンボディ205のウイング領域上に配置されたフレーム201を有する歯科用デバイス200の正面図を示す。図11は、スキャンボディ203およびスキャンボディ205のウイング領域上に配置されたフレーム201、を有する歯科用デバイス200の立面図である。
【0050】
図12は、フレーム201と、スキャンボディ203およびスキャンボディ205との間に合着材料211を有する歯科用デバイス200の斜視図を示す。図13は、フレーム201と、スキャンボディ203とスキャンボディ205との間に合着材料211を有する歯科用デバイス200の正面図である。図14は、フレーム201と、スキャンボディ203およびスキャンボディ205との間に合着材料211を有する歯科用デバイス200の立面図を示す。
【0051】
図15は、フレーム201のない歯科用デバイス200の斜視図を示す。図16は、フレーム201のない歯科用デバイス200の正面図を示す。図17は、フレーム201のない歯科用デバイス200の立面図を示す。前記スキャンボディ203および前記スキャンボディ25は、合流点に収束するように配置される。前記円錐体203aおよび円錐体205aからのウイング領域203bおよびウイング領域205bの最遠位領域は、任意の数のスキャンボディ203およびスキャンボディ205ができるだけ最小の点まで互いに一緒にぴったり重なり(nest together)得るように、最遠位点に向かって先細になっている。口腔内スキャナーが、1つの写真フレームに存在するスキャンボディの端部の全てをキャプチャできる場合、インプラントの三次元位置のデジタル記録は、1つのフレームにウイング部の全てがキャプチャされていない場合よりも正確であると予想することができる。ウイング領域203bおよびウイング領域205bの端部の先細りにより、臨床医がより多くのウイングをより小さな領域にフィットせることが可能になる。各スキャンボディの高さおよび各スキャンボディの回転位置は、他のスキャンボディと近接するように位置決めおよび調整される。この位置で、スキャンボディ203およびスキャンボディ205は、スキャンされて次いで一緒に合着される準備が、整う。いくつかの実施形態では、前記先端は互いに接触するまで5mm以内、より好ましくは3mm、最も好ましくは1mmである。ウイング領域が近接することにより、口腔内スキャナーの1フレームでスキャンされる重なったデータが作成され、より正確なスキャンデータが容易になる。さらに、スキャンボディが互いに近接することにより、スキャンボディを互いに合着させることが容易になる。スキャンボディが十分に近接している場合、スキャンボディを互いに合着させるためにフレームが必要である場合もあれば、必要でない場合もある。
【0052】
スキャンボディ203およびスキャンボディ205はまた、ウェル213を有する。これらのウェル213は、乱雑にならず患者の口内に滴下しない強力な固体基盤を設けるための負のスペースを、合着材料に付与する。ウェルの内側は、フレームへのウイング領域の取り付けを容易にするために合着材料が下に流れることができるアンダーカット、を有する。前記合着材料がウェル213の内部を満たして硬化すると、アンダーカットによって、硬化した合着材料がスキャンボディから係合解除されるのが防止される。アンダーカットは、製造時に作成することもできるし、ねじタップでウェル213をタップするかバー(bur)でウェル213の内側をカットすることによって後から追加することもできる。ウェル213に加えて、合着材料を保持するために使用され得る任意の三次元支持構造もまた、企図され得る。この構造は、内部格子、外部突出部、クロスバー、ペグ、または、さらには合着材料に接着し得る平坦な表面を、含み得る。また、円錐体領域のねじ穴に合着材料が入るのを防止する障壁を設けるために、垂直構造がウイングの頂部から突出し得ることも、企図される。
【0053】
企図される前記垂直構造の別の機能は、角度のない(off-angle)歯科インプラントまたは異なる高さに配置された歯科インプラントに固定されるウイング、の表面を同じレベルにすることにより、前記フレームを前記スキャンボディに合着することを容易にすることであり得る。前記垂直構造は、より高い位置にある隣接するウイングと同じレベルに調整され得る。前記ウイング領域203bの構造が水平であると、物理的確認用ジグを構成する剛性および耐久性のある構造を確保するために、ウイング領域のすべてにわたって前記フレーム201を配置することが、より容易となる。そして、垂直構造のさらに別の機能は、前記合着材料を取り付けるためのより多くの足場(scafolding)を作成する追加の格子または三次元形状を有することである。しばしば、インプラントが異なる高さおよび異なる角度で配置される場合、全てのウイング領域203bおよび205bにわたって均一な水平面を維持することは困難である。隣接するウイング領域の高さに関係なくフレームに取り付けることもできる垂直構造により、複数のスキャンボディ203およびスキャンボディ205をフレーム201に合着する際の多用途性が、実現可能になる。さらに、前記フレーム201内に作られたより大きな穴が、前記ウイング領域203bまたは前記ウイング領域205bから突出する垂直構造体の上および周囲にフィットして、前記歯科用デバイス200を、一緒に合着する際にさらに安定させることができるように、任意の共通の歯科用器具を用いてフレーム201が調整され得ることが、企図される。
【0054】
前記アンダーカットは、前記合着材料がいったん硬化するとスキャンボディ203およびスキャンボディ205と共にフレーム201を保持することを、確実にする。
【0055】
図18は、フレーム201なしで前記スキャンボディ203および前記スキャンボディ205を一緒に単一部品として保持する合着材料211を有する、歯科用デバイス200の斜視図を示す。図19は、フレーム201を有さず、かつ、合着材料211を有する歯科用デバイス200の正面図である。図20は、フレーム201を有さず、かつ、合着材料211を有する歯科用デバイス200の立面図である。スキャンボディを一緒に合着させるこの方法は、スキャンボディが互いに1mm以内にある場合にのみ可能である。ウイング領域203bおよびウイング領域205bは、特に、歯列弓の中心でできるだけ一緒に近くにぴったり重なるように設計されている。
【0056】
図21は、インプラント210、ねじ202、スキャンボディ203、およびアバットメント207の分解斜視図である。図22は、インプラント210、ねじ202、スキャンボディ203、およびアバットメント207の分解側面図である。図23は、スキャンボディ203の斜視図、側面図、および平面図である。スキャンボディ203は、円錐体203aと、前記円錐体203aから外側にかつ円錐体203aに対して垂直に伸びるウイング領域203bと、を有する。スキャンボディ203aの円錐体領域は、スキャンボディ領域を長手方向に貫通する貫通孔を有する。この貫通孔により、ねじで前記スキャンボディをマルチユニットアバットメントに固定できるようになる。スキャンボディ203の独特の形状および角度により、スキャンデータのスキャン、および歯科用CADソフトウェアにおける対応するデジタル三次元ライブラリへの、スキャンされたデータの位置合わせの両方が、容易になる。前記円錐体203aは、口腔内スキャンを容易にする。口腔内スキャナーは、スキャンボディが円錐形に形成されている場合、スキャンボディの上部を移動する際に、スキャンボディのより多くの表面積をキャプチャできる。各フレームで分析する表面積が増えると、より高いスキャン速度および精度が達成可能になる。
【0057】
さらに、ウイングのないスキャンボディなどの他の部品も、同じ手順中に使用され得、円錐体203aの正確な形状および寸法を有し得る。異なる部品間で同じ形状および寸法を有することにより、患者の処置中にこれらの類似の部品がスキャンされるたびに、デジタルデータの重なり(overlapping)が可能になる。これは、手術直後の縫合歯肉組織の高さなど、外科処置のさまざまな時点またはマイルストーンでの新しい情報または変化する情報を、キャプチャするのに有用であり得る。あるいは、患者が治癒して最終的な補綴物を受け入れる準備が整うまでの治療の残りの期間を通して、新しい情報をキャプチャし、位置合わせさせるために使用され得る。スキャンボディ203のウイング領域203bは、上面、2つの側面、および底面を有する。ウイング領域の断面は、底面よりも狭い上面を有する台形のような形状を有する。上面に向かって先細になる傾斜したサイドパネルは、スキャンボディの円錐形と同様に機能する。この先細りによって、口腔内スキャナーは、ウイング領域の上部にわたって移動する際に、各写真フレームにおいてより多くの表面領域をキャプチャすることができる。
【0058】
図24は、インプラント210、ねじ202’、およびスキャンボディ203’の分解斜視図である。スキャンボディ203’は、インプラント210の内部にフィットするサイズおよび寸法のアバットメント端部203c’を除いて、スキャンボディ203と同様である。ねじ202’は、ねじ202よりも長く、歯科インプラントの内部にねじ山を有する歯科インプラント210に、直接取り付けられるように設計されている。前記歯科インプラントは、六角部または他のいくつかの回転防止機能を有し得るが、アバットメント端部203c’は、前記歯科インプラント内部の六角部に係合する六角部を有さない。これにより、スキャンボディが動かなくなるほど十分なトルクでねじが締め付けられるまで、スキャンボディ203’が歯科インプラントの周りを回転することが可能になる。しかし、アバットメント端部203c’が、インプラント210の内部回転防止機能と係合する六角部を有し得ることが企図されている。前記スキャンボディ203が、歯科インプラントプラットフォームの上の異なる組織高さに対応するために、異なる高さに製造されるアバットメント端部203cを有することも企図されている。図25は、インプラント210、ねじ202’、およびスキャンボディ203’の分解側面図を示す。図26は、スキャンボディ203’の斜視図、側面図、および平面図である。
【0059】
図27は、歯科用デバイス300および歯列弓350の分解斜視図である。図28は、歯科用デバイス300および歯列弓350の分解正面図である。図29は、歯科用デバイス300および歯列弓350の立面図である。歯科用デバイス300は、ねじ302を介してアバットメント307に取り付けられるスキャンボディ303およびスキャンボディ305を、備える。アバットメント307は、歯列弓350におけるインプラント310に取り付けられる。スキャンボディ303およびスキャンボディ305は、合着材料を受け入れるためのウェル、開口部、穴、チャネル、アンダーカット、または溝を有しないことを除いて、スキャンボディ203およびスキャンボディ205と同様である。
【0060】
スキャンボディ303およびスキャンボディ305は、スキャンのみ行われて、一緒に合着されないように設計されている。また、それらは、滅菌された後、その後の事例で再利用できるような材料で製造されている。いくつかの実施形態では、スキャンボディ303およびスキャンボディ305は、口腔内スキャンを容易にするマットな(matte)材料でサンドブラスト加工またはコーティングされたミルド(milled)チタン、を含む。この実施形態は、歯科用CADソフトウェアにおいて利用可能な独自の対応するデジタルライブラリを有し、これらのアバットメントからのスキャンは、フルアーチ歯科インプラント固定リハビリテーション手順用の補綴物の設計に、使用され得る。これらのスキャンボディ303およびスキャンボディ305は、合理的なコストで現在利用可能な最高の製造公差で製造されることが企図される。好ましくは、前記スキャンボディ303および前記スキャンボディ305は、元の設計仕様に対する10ミクロン以内のばらつきの公差で製造される。前記デジタルライブラリは、ウイング領域303b全体の上面パネルおよび側面パネルの、ならびに円錐体303aの上面および円錐上部の、三次元デジタル画像ファイルからなることが企図されている。スキャンして位置合わせする表面積が増え、製造時の公差が厳しくなるため、これらのスキャンの精度は、物理的な確認を必要とせずに、フルアーチ歯科インプラント固定リハビリテーション手順用の補綴物を設計および製造するのに、十分良好であろうと企図される。さらに、スキャンボディ303およびスキャンボディ305は、すべてのスキャンボディ303およびスキャンボディ305が、歯列弓の中央領域においてできるだけ小さな点に一度に収束するように配置されるべきである。各ウイング領域の先端の5mm以内の距離であれば十分であるが、5mmよりも3mmの方が良く、1mm以内の距離であれば、口腔内スキャナーによってスキャンされる相対的な三次元データの精度を確保するために、最も理想的である。しかし、1mm以内の距離の場合あっても、スキャン時の誤差をいかなる場合も回避することは、不可能である。もし誤差が推定または想定される場合は、スキャン後に臨床医が物理的な確認用ジグを作成し、補綴物の製作後に設計の正確性を確認することが推奨される。これにより、患者の顎に補綴物を差し向ける前に、臨床医が調整または修正を行うことができるようになる。
【0061】
図30は、インプラント310、アバットメント307、スキャンボディ303および305、ならびにねじ302の分解側面図を示す。
【0062】
図31は、インプラント310、アバットメント307、スキャンボディ303、およびねじ302の分解斜視図である。図32は、インプラント310、アバットメント307、スキャンボディ303、およびねじ302の分解側面図である。スキャンボディ303は、円錐体部303aと、前記円錐体部303aから外側にかつ前記円錐体部303aに対して垂直に延在するウイング領域303bと、を有する。
【0063】
図33は、インプラント310、ねじ302’、およびスキャンボディ303’の別の実施形態の分解斜視図を示す。図34は、インプラント310、ねじ302’、およびスキャンボディ303’の分解側面図を示す。スキャンボディ303’は、インプラント310の内部にフィットするサイズおよび寸法のアバットメント端部303c’を除いて、スキャンボディ303と同様である。ねじ302’は、ねじ302よりも長く、歯科インプラントの内部にねじ山を有する歯科インプラント310に、直接取り付けられるように設計されている。前記歯科インプラントは、六角部または他の回転防止機能を有し得るが、アバットメント端部303c’は、歯科インプラント内部の六角部に係合する六角部を有さない。これにより、スキャンボディが動かない程度のトルクでねじが締め付けられるまで、スキャンボディ303’が歯科インプラントの周りを回転することが可能になる。スキャンボディ303が、歯科インプラントプラットフォームの上の異なる組織の高さに対応するために、異なる高さに製造されるアバットメント端部303cを有することも、企図される。
【0064】
図35は、スキャンボディ303の斜視図、側面図、および平面図を示す。
【0065】
図36は、スキャンボディ305の斜視図、側面図、および平面図を示す。
【0066】
図37は、4つのスキャンボディ401、スキャンボディ403、スキャンボディ405、およびスキャンボディ407を備える歯科用デバイス400の斜視図を示す。各スキャンボディ401、スキャンボディ403、スキャンボディ405、およびスキャンボディ407は、それぞれ固有の幾何学的インジケーター(geometric indicator)402、幾何学的インジケーター404、幾何学的インジケーター406、および幾何学的インジケーター408を有する。前記インジケーターは、そのサイズ、寸法、および他の企図された固有の特性を示すことができる固有の識別子である。任意の固有の三次元幾何学形状が、1つのスキャンボディを別のものと区別するために使用され得る。企図された幾何学的形状には、半球、円錐、円柱、直方体、またはここで言及されていない他の任意の多角形幾何学的形状が含まれるが、これらに限定されない。これらの幾何学的形状は、スキャンボディの位置決め、固定、スキャンまたは合着を妨げない限り、任意の大きさで、スキャンボディの表面の任意の位置に位置し得ることが企図される。さらに、これらのインジケーターにより、患者の顎に現在ある各スキャンボディを口腔内スキャナーのソフトウェアが区別することが、可能になる。これにより、口腔内スキャナーのAIが混乱することが防止され、スキャン中に間違ったまたは不正確な(incorrect or inacurate)スキャンデータが人為的に導入されないようにすることができる。これらのインジケーターは、歯科用CADソフトウェアにおけるこれらのスキャンボディ用の対応するデジタルライブラリに含まれるスキャンボディ401、スキャンボディ403、スキャンボディ405およびスキャンボディ407の幾何学的形状の下に意図的に配置される。このタイプの任意の企図されたインジケーターは、口腔内スキャンをスキャンボディ形状の三次元デジタル画像ファイルに位置合わせするために、使用されない。2つのスキャンを位置合わせするために、円錐体401aの円錐の表面、ウイング領域401bの上面および側面などの幾何学的形状のみが、使用される。これにより、スキャンボディ401およびスキャンボディ407に対して同じ三次元デジタル画像ファイルを使用し、スキャンボディ403およびスキャンボディ405に対して同じ三次元デジタル画像ファイルを使用するという利便性が、得られる。
【0067】
図38は、図37における歯科用デバイス400の、立面平面図を示す。
【0068】
本明細書で使用されるように、そして文脈が別段の指示をしない限り、用語「に結合される(coupled to)」は、直接結合(互いに結合される2つの要素が互いに接触する)および間接結合(少なくとも1つの追加の要素が2つの要素の間に位置する)の両方を含むことを意図する。したがって、用語「に結合される」および「と結合される(coupled with)」は、同義に使用される。
【0069】
本明細書の発明概念から逸脱することなく、既に説明したもの以外の多くの変更が可能であることは、当業者にとって明らかであろう。したがって、発明的な主題は、補正された請求項の趣旨以外では制限されない。さらに、本明細書および請求項の両方を解釈する際に、すべての用語は、文脈と一致する可能な限り広範な方法で解釈されるべきである。特に、用語「含む(comprises)」および「含む(comprising)」は、非排他的な方法で要素、コンポーネント、またはステップを指すものとして解釈されるべきであり、参照される要素、コンポーネント、またはステップが、明示的に参照されていない他の要素、コンポーネント、またはステップと存在するか、利用されるか、組み合わせられ得ることを示す。本明細書において、A、B、C…およびNからなる群から選択されるものの少なくとも1つに言及する場合、本文は、A+N、B+Nなどではなく、群から1つの要素のみを要するものとして解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38