(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】乗用車用空気入りラジアルタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 5/00 20060101AFI20240410BHJP
B60C 3/04 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
B60C5/00 F
B60C3/04
(21)【出願番号】P 2018233174
(22)【出願日】2018-12-13
【審査請求日】2021-07-12
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】桑山 勲
【合議体】
【審判長】磯貝 香苗
【審判官】中村 和正
【審判官】加藤 友也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-8694(JP,A)
【文献】国際公開第2018/025853(WO,A1)
【文献】特開2013-112062(JP,A)
【文献】特開2009-45747(JP,A)
【文献】特開2004-82947(JP,A)
【文献】特表2018-532637(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1856095(KR,B1)
【文献】独国特許出願公開第102015115774(DE,A1)
【文献】特開2005-205937(JP,A)
【文献】特開2016-210250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部間でトロイダル状に跨る、ラジアル配列コードのプライからなるカーカスを備えた、乗用車用空気入りラジアルタイヤであって、
前記タイヤの断面幅SWが165(mm)未満であり、前記タイヤの断面幅SWと外径ODとの比SW/ODは、0.26以下であり、
前記タイヤの内面に、1つ以上の制音体を設け、
前記タイヤをリムに組み込み、規定内圧を充填し、無負荷状態とした際の、タイヤ幅方向断面において、接地端間のタイヤ幅方向中央50%のタイヤ幅方向領域をセンター領域とし、該センター領域よりタイヤ幅方向両外側の25%ずつのタイヤ幅方向領域をショルダー領域とするとき、
前記制音体は、
前記センター領域においては設けられていないことを特徴とする、乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項2】
一対のビード部間でトロイダル状に跨る、ラジアル配列コードのプライからなるカーカスを備えた、乗用車用空気入りラジアルタイヤであって、
前記タイヤの断面幅SWが165(mm)以上であり、前記タイヤの断面幅SW(mm)及び外径OD(mm)は、関係式、
OD(mm)≧2.135×SW(mm)+282.3
を満たし、
前記タイヤの内面に、1つ以上の制音体を設け、
前記タイヤをリムに組み込み、規定内圧を充填し、無負荷状態とした際の、タイヤ幅方向断面において、接地端間のタイヤ幅方向中央50%のタイヤ幅方向領域をセンター領域とし、該センター領域よりタイヤ幅方向両外側の25%ずつのタイヤ幅方向領域をショルダー領域とするとき、
前記制音体は、
前記センター領域においては設けられていないことを特徴とする、乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項3】
一対のビード部間でトロイダル状に跨る、ラジアル配列コードのプライからなるカーカスを備えた、乗用車用空気入りラジアルタイヤであって、
前記タイヤの断面幅SW(mm)及び外径OD(mm)は、関係式、
OD(mm)≧-0.0187×SW(mm)
2+9.15×SW(mm)-380
を満たし、
前記タイヤの内面に、1つ以上の制音体を設け、
前記タイヤをリムに組み込み、規定内圧を充填し、無負荷状態とした際の、タイヤ幅方向断面において、接地端間のタイヤ幅方向中央50%のタイヤ幅方向領域をセンター領域とし、該センター領域よりタイヤ幅方向両外側の25%ずつのタイヤ幅方向領域をショルダー領域とするとき、
前記制音体は、
前記センター領域においては設けられていないことを特徴とする、乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項4】
前記制音体は、タイヤ赤道面を境界とするタイヤ幅方向各半部の前記ショルダー領域における前記タイヤの内面のそれぞれに設けられている、請求項1~3のいずれか一項に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項5】
前記制音体は、タイヤ赤道面を境界とするタイヤ幅方向各半部の前記ショルダー領域における前記タイヤの内面のそれぞれの全域にわたって設けられている、請求項1~4のいずれか一項に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項6】
前記制音体は、スポンジ材である、請求項1~5のいずれか一項に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項7】
2層以上のベルト層からなるベルトを備え、
タイヤ幅方向の幅が最も広い前記ベルト層のベルトコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度θ1と、タイヤ幅方向の幅が最も狭い前記ベルト層のベルトコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度θ2とが、
35°≦θ1≦85°、10°≦θ2≦30°、及び、θ1>θ2
を満たす、請求項1~6のいずれか一項に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項8】
1本以上のタイヤ周方向に延びる周方向主溝を備え、
各前記周方向主溝の断面積は、24mm
2
以上96mm
2
以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項9】
タイヤ幅方向断面における、1つ以上の前記制音体の断面積の総和は、20~30000(mm
2
)である、請求項1~8のいずれか一項に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項10】
前記制音体のタイヤ幅方向に直交する方向に計測した最大厚さをT1(mm)とし、各前記制音体の断面積をS1(mm
2
)とするとき、比S1(mm
2
)/T1(mm)は、20~70である、請求項1~9のいずれか一項に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項11】
前記制音体の体積は、タイヤ内腔の全体積の0.1%~80%である、請求項1~10のいずれか一項に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項12】
前記スポンジ材の比重が、0.001~0.090 である、請求項6に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項13】
前記スポンジ材の引張り強さは、20kPa~500kPaである、請求項6に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項14】
前記スポンジ材の破断時の伸びは、110%以上800%以下である、請求項6に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項15】
前記スポンジ材の引裂強さは、1~130N/cmである、請求項6に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車用空気入りラジアルタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、タイヤの断面幅SWとタイヤの外径ODとを所定の関係とした、狭幅・大径の乗用車用空気入りラジアルタイヤを種々提案している(例えば、特許文献1)。
【0003】
ここで、乗用車用空気入りラジアルタイヤ(特に、電気自動車用の空気入りラジアルタイヤ)では、タイヤ騒音の低減が求められている。そして、タイヤ騒音の一つとして、路面を走行した際に50~400Hzの周波数範囲での音が生じる、いわゆるロードノイズが知られている。その主な原因としては、タイヤ内腔内で生じる空気やガスの共鳴振動(空洞共鳴)がある。これに対し、タイヤの内面に、スポンジ材等からなる制音体を設けることが知られている(例えば、特許文献2)。制音体は、タイヤ内腔内での空気やガスの振動エネルギーを熱エネルギーへと変換し、タイヤ内腔内での空洞共鳴を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2012/176476号パンフレット
【文献】特開2005-254924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、タイヤの内面に上記のような制音体を設けた際に、制音体に熱がこもり、例えば長時間走行後に、制音体とタイヤの内面とを接着する接着層が溶けて、制音体がタイヤ内面から剥離したり、あるいは、タイヤ部材に故障が生じやすくなったりする等、タイヤ耐久性が低下してしまう場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、タイヤ耐久性を向上させた、乗用車用空気入りラジアルタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
第1の態様において、本発明の乗用車用空気入りラジアルタイヤは、
一対のビード部間でトロイダル状に跨る、ラジアル配列コードのプライからなるカーカスを備え、
前記タイヤの断面幅SWが165(mm)未満であり、前記タイヤの断面幅SWと外径ODとの比SW/ODは、0.26以下であり、
前記タイヤの内面に、1つ以上の制音体を設け、
前記タイヤをリムに組み込み、規定内圧を充填し、無負荷状態とした際の、タイヤ幅方向断面において、接地端間のタイヤ幅方向中央50%のタイヤ幅方向領域をセンター領域とし、該センター領域よりタイヤ幅方向両外側の25%ずつのタイヤ幅方向領域をショルダー領域とするとき、
前記制音体は、前記センター領域における前記タイヤの内面に接していない又は接着されていないことを特徴とする。
本態様の乗用車用空気入りラジアルタイヤによれば、タイヤ耐久性を向上させることができる。
【0008】
ここで、「リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association,Inc.)のYEAR BOOK等に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指す(即ち、上記の「リム」には、現行サイズに加えて将来的に上記産業規格に含まれ得るサイズも含む。「将来的に記載されるサイズ」の例としては、ETRTO 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズを挙げることができる。)が、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。
また、「規定内圧」とは、上記JATMA等に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)を指し、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、「規定内圧」は、タイヤを装着する車両毎に規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。さらに、後述の「最大負荷荷重」とは、上記最大負荷能力に対応する荷重をいうものとする。
【0009】
また、「接地端」とは、上記タイヤをリムに組み込み、規定内圧を充填し、最大負荷荷重を負荷した際に、路面と接する接地面のタイヤ幅方向両端を意味する。
【0010】
第2の態様において、本発明の乗用車用空気入りラジアルタイヤは、
一対のビード部間でトロイダル状に跨る、ラジアル配列コードのプライからなるカーカスを備え、
前記タイヤの断面幅SWが165(mm)以上であり、前記タイヤの断面幅SW(mm)及び外径OD(mm)は、関係式、
OD(mm)≧2.135×SW(mm)+282.3
を満たし、
前記タイヤの内面に、1つ以上の制音体を設け、
前記タイヤをリムに組み込み、規定内圧を充填し、無負荷状態とした際の、タイヤ幅方向断面において、接地端間のタイヤ幅方向中央50%のタイヤ幅方向領域をセンター領域とし、該センター領域よりタイヤ幅方向両外側の25%ずつのタイヤ幅方向領域をショルダー領域とするとき、
前記制音体は、前記センター領域における前記タイヤの内面に接していない又は接着されていないことを特徴とする。
この態様の乗用車用空気入りラジアルタイヤによっても、タイヤ耐久性を向上させることができる。
【0011】
第3の態様において、本発明の乗用車用空気入りラジアルタイヤは、
一対のビード部間でトロイダル状に跨る、ラジアル配列コードのプライからなるカーカスを備え、
前記タイヤの断面幅SW(mm)及び外径OD(mm)は、関係式、
OD(mm)≧-0.0187×SW(mm)2+9.15×SW(mm)-380
を満たし、
前記タイヤの内面に、1つ以上の制音体を設け、
前記タイヤをリムに組み込み、規定内圧を充填し、無負荷状態とした際の、タイヤ幅方向断面において、接地端間のタイヤ幅方向中央50%のタイヤ幅方向領域をセンター領域とし、該センター領域よりタイヤ幅方向両外側の25%ずつのタイヤ幅方向領域をショルダー領域とするとき、
前記制音体は、前記センター領域における前記タイヤの内面に接していない又は接着されていないことを特徴とする。
この態様の乗用車用空気入りラジアルタイヤによっても、タイヤ耐久性を向上させることができる。
【0012】
本発明の乗用車用空気入りラジアルタイヤでは、前記制音体は、タイヤ赤道面を境界とするタイヤ幅方向各半部の前記ショルダー領域における前記タイヤの内面のそれぞれに設けられていることが好ましい。
この構成によれば、制音性をより一層向上させることができる。
【0013】
本発明の乗用車用空気入りラジアルタイヤでは、前記制音体は、タイヤ赤道面を境界とするタイヤ幅方向各半部の前記ショルダー領域における前記タイヤの内面のそれぞれの全域にわたって設けられていることが好ましい。
この構成によれば、制音性をさらに向上させることができる。
【0014】
本発明の乗用車用空気入りラジアルタイヤでは、前記制音体は、スポンジ材であることが好ましい。
この構成によれば、過度の重量増とならないようにしつつ、制音性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、タイヤ耐久性を向上させた、乗用車用空気入りラジアルタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】タイヤの断面幅SW及び外径ODを示す、概略図である。
【
図2】本発明の第1~第3の態様の一実施形態にかかる乗用車用空気入りラジアルタイヤを示す、タイヤ幅方向断面図である。
【
図3】通常のタイヤサイズのタイヤの接地圧分布を模式的に示す図である。
【
図4】狭幅・大径タイヤの接地圧分布を模式的に示す図である。
【
図5】本発明の第1~第3の態様の他の実施形態にかかる乗用車用空気入りラジアルタイヤを示す、タイヤ幅方向断面図である。
【
図6】本発明の第1~第3の態様の別の実施形態にかかる乗用車用空気入りラジアルタイヤを示す、タイヤ幅方向断面図である。
【
図7】本発明の第1~第3の態様のさらに別の実施形態にかかる乗用車用空気入りラジアルタイヤを示す、タイヤ幅方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
【0018】
<乗用車用空気入りラジアルタイヤ>
図1は、タイヤの断面幅SW及び外径ODを示す概略図である。
本発明の第1の態様における一実施形態の乗用車用空気入りラジアルタイヤ(以下、単にタイヤとも称する)は、タイヤの断面幅SWが165(mm)未満であり、タイヤの断面幅SWと外径ODとの比SW/ODは、0.26以下であり、狭幅・大径の形状をなしている。タイヤの断面幅SWをタイヤの外径ODに比して狭くすることにより、空気抵抗を低減することができ、且つ、タイヤの外径ODをタイヤの断面幅SWに比して大きくすることにより、タイヤの接地面付近でのトレッドゴムの変形を抑制して、転がり抵抗を低減することができ、これらにより、タイヤの燃費性を向上させることができる。上記SW/ODは、0.25以下とすることが好ましく、0.24以下とすることがより好ましい。
上記比は、タイヤの内圧が200kPa以上である場合に満たされるものであることが好ましく、220kPa以上である場合に満たされるものであることがより好ましく、280kPa以上である場合に満たされるものであることがさらに好ましい。転がり抵抗を低減することができるからである。一方で、上記比は、タイヤの内圧が350kPa以下である場合に満たされるものであることが好ましい。乗り心地性を向上させることができるからである。
ここで、タイヤの断面幅SWは、接地面積を確保する観点からは、上記比を満たす範囲において、105mm以上とすることが好ましく、125mm以上とすることがより好ましく、135mm以上とすることがさらに好ましく、145mm以上とすることが特に好ましい。一方で、タイヤの断面幅SWは、空気抵抗を低減する観点からは、上記比を満たす範囲において、155mm以下とすることが好ましい。また、タイヤの外径ODは、転がり抵抗を低減する観点からは、上記比を満たす範囲において、500mm以上とすることが好ましく、550mm以上とすることがより好ましく、580mm以上とすることがさらに好ましい。一方で、タイヤの外径ODは、空気抵抗を低減する観点からは、上記比を満たす範囲において、800mm以下とすることが好ましく、720mm以下とすることがより好ましく、650mm以下とすることがさらに好ましく、630mm以下とすることが特に好ましい。また、リム径は、転がり抵抗を低減する観点からは、タイヤの断面幅SW及び外径ODが上記比を満たすとき、16インチ以上とすることが好ましく、17インチ以上とすることがより好ましく、18インチ以上とすることがさらに好ましい。一方で、リム径は、空気抵抗を低減する観点からは、タイヤの断面幅SW及び外径ODが上記比を満たすとき、22インチ以下とすることが好ましく、21インチ以下とすることがより好ましく、20インチ以下とすることがさらに好ましく、19インチ以下とすることが特に好ましい。また、タイヤの扁平率は、タイヤの断面幅SW及び外径ODが上記比を満たすとき、45~70とすることがより好ましく、45~65とすることがより好ましい。
具体的なタイヤサイズは、特に限定されるものではないが、一例として、105/50R16、115/50R17、125/55R20、125/60R18、125/65R19、135/45R21、135/55R20、135/60R17、135/60R18、135/60R19、135/65R19、145/45R21、145/55R20、145/60R16、145/60R17、145/60R18、145/60R19、145/65R19、155/45R18、155/45R21、155/55R18、155/55R19、155/55R21、155/60R17、155/65R18、155/70R17、155/70R19のいずれかとすることができる。
【0019】
本発明の第2の態様における一実施形態のタイヤは、タイヤの断面幅SWが165(mm)以上であり、タイヤの断面幅SW(mm)及び外径OD(mm)は、関係式、
OD(mm)≧2.135×SW(mm)+282.3
を満たしており、狭幅・大径の形状をなしている。
上記の関係式を満たすことにより、空気抵抗を低減することができ、且つ、転がり抵抗を低減することができ、これらにより、タイヤの燃費性を向上させることができる。
なお、第2の態様において、タイヤの断面幅SW及び外径ODは、上記の関係式を満たした上で、比SW/ODが0.26以下であることが好ましく、0.25以下であることがより好ましく、0.24以下であることがさらに好ましい。タイヤの燃費性をさらに向上させることができるからである。
上記関係式及び/又は比は、タイヤの内圧が200kPa以上である場合に満たされるものであることが好ましく、220kPa以上である場合に満たされるものであることがより好ましく、280kPa以上である場合に満たされるものであることがさらに好ましい。転がり抵抗を低減することができるからである。一方で、上記関係式及び/又は比は、タイヤの内圧が350kPa以下である場合に満たされるものであることが好ましい。乗り心地性を向上させることができるからである。
ここで、タイヤの断面幅SWは、接地面積を確保する観点からは、上記関係式を満たす範囲において、175mm以上とすることが好ましく、185mm以上とすることがより好ましい。一方で、タイヤの断面幅SWは、空気抵抗を低減する観点からは、上記関係式を満たす範囲において、230mm以下とすることが好ましく、215mm以下とすることがより好ましく、205mm以下とすることがさらに好ましく、195mm以下とすることが特に好ましい。また、タイヤの外径ODは、転がり抵抗を低減する観点からは、上記関係式を満たす範囲において、630mm以上とすることが好ましく、650mm以上とすることがより好ましい。一方で、タイヤの外径ODは、空気抵抗を低減する観点からは、上記関係式を満たす範囲において、800mm以下とすることが好ましく、750mm以下とすることがより好ましく、720mm以下とすることがさらに好ましい。また、リム径は、転がり抵抗を低減する観点からは、タイヤの断面幅SW及び外径ODが上記関係式を満たすとき、18インチ以上とすることが好ましく、19インチ以上とすることがより好ましい。一方で、リム径は、空気抵抗を低減する観点からは、タイヤの断面幅SW及び外径ODが上記関係式を満たすとき、22インチ以下とすることが好ましく、21インチ以下とすることがより好ましい。また、タイヤの扁平率は、タイヤの断面幅SW及び外径ODが上記関係式を満たすとき、45~70とすることが好ましく、45~65とすることがより好ましい。
具体的なタイヤサイズは、特に限定されるものではないが、一例として、165/45R22、165/55R18、165/55R19、165/55R20、165/55R21、165/60R19、165/65R19、165/70R18、175/45R23、175/55R19、175/55R20、175/55R22、175/60R18、185/45R22、185/50R20、185/55R19、185/55R20、185/60R19、185/60R20、195/50R20、195/55R20、195/60R19、205/50R21、205/55R20、215/50R21のいずれかとすることができる。
【0020】
本発明の第3の態様における一実施形態のタイヤは、タイヤの断面幅SW(mm)及び外径OD(mm)は、関係式、
OD(mm)≧-0.0187×SW(mm)2+9.15×SW(mm)-380
を満たしており、狭幅・大径の形状をなしている。
上記の関係式を満たすことにより、空気抵抗を低減することができ、且つ、転がり抵抗を低減することができ、これらにより、タイヤの燃費性を向上させることができる。
なお、第3の態様において、タイヤの断面幅SW及び外径ODは、上記の関係式を満たした上で、比SW/ODが0.26以下であることが好ましく、0.25以下であることがより好ましく、0.24以下であることがさらに好ましい。タイヤの燃費性をさらに向上させることができるからである。
上記関係式及び/又は比は、タイヤの内圧が200kPa以上である場合に満たされるものであることが好ましく、220kPa以上である場合に満たされるものであることがより好ましく、280kPa以上である場合に満たされるものであることがさらに好ましい。転がり抵抗を低減することができるからである。一方で、上記関係式及び/又は比は、タイヤの内圧が350kPa以下である場合に満たされるものであることが好ましい。乗り心地性を向上させることができるからである。
ここで、タイヤの断面幅SWは、接地面積を確保する観点からは、上記関係式を満たす範囲において、105mm以上とすることが好ましく、125mm以上とすることがより好ましく、135mm以上とすることがさらに好ましく、145mm以上とすることが特に好ましい。一方で、タイヤの断面幅SWは、空気抵抗を低減する観点からは、上記関係式を満たす範囲において、230mm以下とすることが好ましく、215mm以下とすることがより好ましく、205mm以下とすることがさらに好ましく、195mm以下とすることが特に好ましい。また、タイヤの外径ODは、転がり抵抗を低減する観点からは、上記関係式を満たす範囲において、500mm以上とすることが好ましく、550mm以上とすることがより好ましく、580mm以上とすることがさらに好ましい。一方で、タイヤの外径ODは、空気抵抗を低減する観点からは、上記関係式を満たす範囲において、800mm以下とすることが好ましく、750mm以下とすることがより好ましく、720mm以下とすることがさらに好ましい。また、リム径は、転がり抵抗を低減する観点からは、タイヤの断面幅SW及び外径ODが上記関係式を満たすとき、16インチ以上とすることが好ましく、17インチ以上とすることがより好ましく、18インチ以上とすることがさらに好ましい。一方で、リム径は、空気抵抗を低減する観点からは、タイヤの断面幅SW及び外径ODが上記関係式を満たすとき、22インチ以下とすることが好ましく、21インチ以下とすることがより好ましく、20インチ以下とすることがさらに好ましい。また、タイヤの扁平率は、タイヤの断面幅SW及び外径ODが上記関係式を満たすとき、45~70とすることがより好ましく、45~65とすることがより好ましい。
具体的なタイヤサイズは、特に限定されるものではないが、一例として、105/50R16、115/50R17、125/55R20、125/60R18、125/65R19、135/45R21、135/55R20、135/60R17、135/60R18、135/60R19、135/65R19、145/45R21、145/55R20、145/60R16、145/60R17、145/60R18、145/60R19、145/65R19、155/45R18、155/45R21、155/55R18、155/55R19、155/55R21、155/60R17、155/65R18、155/70R17、155/70R19、165/45R22、165/55R18、165/55R19、165/55R20、165/55R21、165/60R19、165/65R19、165/70R18、175/45R23、175/55R18、175/55R19、175/55R20、175/55R22、175/60R18、185/45R22、185/50R20、185/55R19、185/55R20、185/60R19、185/60R20、195/50R20、195/55R20、195/60R19、205/50R21、205/55R20、215/50R21のいずれかとすることができる。
【0021】
図2は、本発明の第1~第3の態様の一実施形態にかかる乗用車用空気入りラジアルタイヤを示す、タイヤ幅方向断面図である。
図2は、タイヤをリムに組み込み、規定内圧を充填し、無負荷とした際のタイヤの幅方向断面を示している。
図2に示すように、このタイヤ1は、一対のビード部2間でトロイダル状に跨る、ラジアル配列コードのプライからなるカーカス3を備えている。また、このタイヤ1は、カーカス3のタイヤ径方向外側に、図示例で2層のベルト層4a、4bからなるベルト4及びトレッド5を順に備えている。
【0022】
この例では、一対のビード部2には、ビードコア2aがそれぞれ埋設されている。本発明では、ビードコア2aの断面形状や材質は特に限定されず、乗用車用空気入りラジアルタイヤにおいて通常用いられる構成とすることができる。本発明では、ビードコア2aは、複数の小ビードコアに分割されたものとすることもできる。あるいは、本発明では、ビードコア2aを有しない構成とすることもできる。
【0023】
図示例のタイヤ1は、ビードコア2aのタイヤ径方向外側に、断面略三角形状のビードフィラ2bを有している。ビードフィラ2bの断面形状は、この例に限定されるものではなく、材質も特に限定されない。あるいは、ビードフィラ2bを有しない構成としてタイヤを軽量化することもできる。
【0024】
本実施形態において、ビードフィラ2bのタイヤ幅方向断面積S1は、ビードコア2aのタイヤ幅方向断面積S2の1倍以上4倍以下とすることが好ましい。上記断面積S1を上記断面積S2の1倍以上とすることにより、ビード部2の剛性を確保することができ、上記断面積S1を上記断面積S2の4倍以下とすることにより、タイヤを軽量化して燃費性をさらに向上させることができるからである。また、本実施形態において、タイヤ最大幅位置(タイヤ幅方向の幅が最大となるタイヤ径方向位置であって、それがタイヤ径方向領域となる場合は、その領域のタイヤ径方向中心位置)におけるサイドウォール部のゲージTsと、ビードコア2aのタイヤ径方向中心位置におけるビード幅(ビード部2のタイヤ幅方向の幅)Tbとの比Ts/Tbを、15%以上40%以下とすることが好ましい。上記比Ts/Tbを15%以上とすることにより、サイドウォール部の剛性を確保することができ、一方で、上記比Ts/Tbを40%以下とすることにより、タイヤを軽量化して燃費性をさらに向上させることができるからである。なお、ゲージTsはゴム、補強部材、インナーライナーなど全ての部材の厚みの合計となる(ただし、サイドウォール部の内面に制音体が配置されている場合であっても、制音体の厚さは含まない)。ここで、「サイドウォール部」とは、接地端Eのタイヤ幅方向外側であって、接地端Eからビード部のタイヤ径方向外側端までにかけてのタイヤ径方向領域をいう。また、ビードコア2aがカーカス3によって複数の小ビードコアに分割されている構造の場合には、全小ビードコアのうちタイヤ幅方向最内側端部と最外側端部の距離をTbとする。また、本実施形態では、タイヤ最大幅位置におけるサイドウォール部のゲージTsと、カーカスコードの径Tcとの比Ts/Tcを5以上10以下とすることが好ましい。上記比Ts/Tcを5以上とすることにより、サイドウォール部の剛性を確保することができ、一方で、上記比Ts/Tcを10以下とすることにより、タイヤを軽量化して燃費性をさらに向上させることができるからである。本実施形態では、タイヤ最大幅位置は、例えば、ビードベースライン(ビードベースを通りタイヤ幅方向に平行な仮想線)からタイヤ径方向外側に、タイヤ断面高さ対比で50%~90%の範囲に設けることができる。
ここで、「ビード部」とは、ビードフィラを有する場合には、リムベースラインからビードフィラのタイヤ径方向最外側端までのタイヤ径方向領域にある部分をいい、ビードフィラを有しない場合には、リムベースラインからビードコアのタイヤ径方向最外側端までのタイヤ径方向領域にある部分をいう。
【0025】
本実施形態では、タイヤ1は、リムガードを有する構造とすることもできる。また、本実施形態では、ビード部2には補強等を目的としてゴム層やコード層等の追加部材をさらに設けることもできる。このような追加部材はカーカス3やビードフィラ2bに対して様々な位置に設けることができる。
【0026】
図2に示す例では、カーカス3は、1枚のカーカスプライからなる。一方で、本発明では、カーカスプライの枚数は特に限定されず、2枚以上とすることもできる。また、
図2に示す例では、カーカス3は、一対のビード部2間をトロイダル状に跨るカーカス本体部3aと、該カーカス本体部3aからビードコア2a周りに折り返されてなる折り返し部3bと、を有している。一方で、本発明では、カーカス折り返し部3bは、ビードコア2aに巻き付けることもでき、あるいは、分割された複数の小ビードコアで挟みこむ構造とすることもできる。図示例では、カーカス折り返し部3bの端3cは、ビードフィラ2bのタイヤ径方向外側端よりタイヤ径方向外側、且つ、タイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向内側に位置している。これにより、サイドウォール部の剛性を確保しつつも、タイヤを軽量化することができる。一方で、本発明においては、カーカス折り返し部3bの端3cは、ビードフィラ2bのタイヤ径方向外側端よりタイヤ径方向内側に位置していても良く、あるいは、タイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向外側に位置していても良い。あるいは、カーカス折り返し部3bの端3cは、カーカス本体部2aとベルト4とのタイヤ径方向の間に位置するように、ベルト4の端(例えばベルト層4bの端)よりタイヤ幅方向内側に位置する、エンベロープ構造とすることもできる。さらに、カーカス3が複数枚のカーカスプライで構成される場合には、カーカスプライ間で、カーカス折り返し部3bの端3cの位置(例えばタイヤ径方向位置)を同じとすることも異ならせることもできる。カーカス3のコードの打ち込み数としては、特に限定されるものではないが、例えば、20~60本/50mmの範囲とすることができる。また、カーカスラインには様々な構造を採用することができる。例えば、タイヤ径方向において、カーカス最大幅位置をビード部2側に近づけることも、トレッド5側に近づけることもできる。例えば、カーカス最大幅位置は、ビードベースラインからタイヤ径方向外側に、タイヤ断面高さ対比で50%~90%の範囲に設けることができる。上記「ラジアル配列」は、タイヤ周方向に対して85°以上、好ましくはタイヤ周方向に対して90°である。
【0027】
本実施形態のタイヤは、タイヤ周方向に対して傾斜して延びるコードのゴム引き層からなる1層以上の傾斜ベルト層を有することが好ましく、軽量化と接地面形状の歪みの抑制との兼ね合いから2層とすることが最も好ましい。なお、軽量化の観点からはベルト層を1層とすることもでき、接地面形状の歪みを抑制する観点からは3層以上とすることもできる。
図2に示す例では、2層のベルト層4a、4bのうち、タイヤ径方向外側のベルト層4bのタイヤ幅方向の幅は、タイヤ径方向内側のベルト層4aのタイヤ幅方向の幅より小さい。一方で、タイヤ径方向外側のベルト層4bのタイヤ幅方向の幅は、タイヤ径方向内側のベルト層4aのタイヤ幅方向の幅より大きくすることもでき、同じとすることもできる。タイヤ幅方向の幅が最も大きいベルト層(図示例ではベルト層4a)のタイヤ幅方向の幅は、接地幅の90~115%であることが好ましく、接地幅の100~105%であることが特に好ましい。なお、「接地幅」とは、上記接地面における上記接地端E間のタイヤ幅方向の距離をいう。
本実施形態において、ベルト層4a、4bのベルトコードとしては、金属コード、特にスチールコードを用いるのが最も好ましいが、有機繊維コードを用いることもできる。スチールコードはスチールを主成分とし、炭素、マンガン、ケイ素、リン、硫黄、銅、クロムなど種々の微量含有物を含むことができる。本実施形態において、ベルト層4a、4bのベルトコードはモノフィラメントコードや、複数のフィラメントを引き揃えたコード、複数のフィラメントを撚り合せたコードを用いることができる。撚り構造も種々のものを採用することができ、断面構造、撚りピッチ、撚り方向、隣接するフィラメント同士の距離も様々なものとすることができる。さらには異なる材質のフィラメントを撚り合せたコードを用いることもでき、断面構造としても特に限定されず、単撚り、層撚り、複撚りなど様々な撚り構造を取ることができる。
本実施形態では、ベルト層4a、4bのベルトコードの傾斜角度は、タイヤ周方向に対して10°以上とすることが好ましい。本実施形態では、ベルト層4a、4bのベルトコードの傾斜角度を高角度、具体的にはタイヤ周方向に対して20°以上、好ましくは35°以上、特にタイヤ周方向に対して55°~85°の範囲とすることが好ましい。傾斜角度を20°以上(好ましくは35°以上)とすることにより、タイヤ幅方向に対する剛性を高め、特にコーナリング時の操縦安定性能を向上させることができるからである。また、層間ゴムのせん断変形を減少させて、転がり抵抗を低減することができるからである。
【0028】
本実施形態のタイヤは、ベルト4のタイヤ径方向外側に、タイヤ周方向にほぼ沿って延びるコードからなる1層以上の周方向ベルト層を有しない構成としている。一方で、本発明においては、ベルト4のタイヤ径方向外側に、1層以上の周方向ベルト層からなる周方向ベルトを有する構成とすることもできる。特に、ベルト4を構成するベルト層4a、4bのベルトコードの傾斜角度θ1、θ2が35°以上の場合には、周方向ベルトを設けることが好ましく、該周方向ベルトは、センター領域Cの単位幅あたりのタイヤ周方向剛性が、ショルダー領域Sの単位幅あたりのタイヤ周方向剛性より高いことが好ましい。
なお、タイヤをリムに組み込み、規定内圧を充填し、無負荷状態とした際の、タイヤ幅方向断面において、接地端E間のタイヤ幅方向中央50%のタイヤ幅方向領域をセンター領域Cとし、該センター領域よりタイヤ幅方向両外側の25%ずつのタイヤ幅方向領域をショルダー領域Sとしている。
例えば、センター領域Cにおける周方向ベルト層の層数をショルダー領域Sより多くすることにより、センター領域Cの単位幅あたりのタイヤ周方向剛性を、ショルダー領域Sの単位幅あたりのタイヤ周方向剛性より高くすることができる。ここで、ベルト層4a、4bのベルトコードがタイヤ周方向に対して35°以上で傾斜するタイヤの多くは、400Hz~2kHzの高周波域において、断面方向の1次、2次および3次等の振動モードにて、トレッド踏面が一律に大きく振動する形状となるため、大きな放射音が生じる。そこで、トレッド5のセンター領域Cのタイヤ周方向剛性を局所的に増加させると、トレッド5のセンター領域Cがタイヤ周方向に広がり難くなり、トレッド踏面のタイヤ周方向への広がりが抑制される結果、放射音を減少させることができる。
本実施形態では、タイヤ幅方向の幅が最も広いベルト層(図示例ではベルト層4a)のベルトコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度θ1と、タイヤ幅方向の幅が最も狭いベルト層(図示例ではベルト層4b)のベルトコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度θ2とが、35°≦θ1≦85°、10°≦θ2≦30°、及び、θ1>θ2を満たすことも好ましい。タイヤ周方向に対して35°以上で傾斜するベルトコードを有するベルト層を備えたタイヤの多くは、400Hz~2kHzの高周波域において、断面方向の1次、2次および3次等の振動モードにて、トレッド踏面が一律に大きく振動する形状となるため、大きな放射音が生じる。そこで、トレッド5のセンター領域Cのタイヤ周方向剛性を局所的に増加させると、トレッド5のセンター領域Cがタイヤ周方向に広がり難くなり、トレッド踏面のタイヤ周方向への広がりが抑制される結果、放射音を減少させることができる。
ここで、本実施形態では、周方向ベルトを設ける場合は、周方向ベルト層は高剛性であることが好ましく、より具体的にはタイヤ周方向に延びるコードのゴム引き層からなり、コードのヤング率をY(GPa)、打ち込み数をn(本/50mm)とし、周方向ベルト層をm層とし、コード径をd(mm)として、X=Y×n×m×dと定義するとき、1500≧X≧225であることが好ましい。狭幅・大径サイズの乗用車用空気入りラジアルタイヤにおいては、路面からの旋回時における入力に対しタイヤ周方向において局所的な変形を起こし、接地面は略三角形状、すなわち、タイヤ幅方向の位置によって周方向の接地長が大きく変化する形状となりやすい。これに対し、高剛性の周方向ベルト層とすることにより、タイヤのリング剛性が向上して、タイヤ周方向の変形が抑制されることとなるため、ゴムの非圧縮性により、タイヤ幅方向の変形も抑制され、接地形状が変化しにくくなる。さらには、リング剛性が向上することにより偏心変形が促進され、転がり抵抗も同時に向上する。さらに、上記のように高剛性の周方向ベルト層を用いた場合には、ベルト層4a、4bのベルトコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度を高角度、具体的には35°以上とすることが好ましい。高剛性の周方向ベルト層を用いた場合には、タイヤ周方向の剛性が高くなることにより、タイヤによっては、接地長が減少してしまうことがある。そこで、高角度のベルト層を用いることにより、タイヤ周方向の面外曲げ剛性を低下させて、踏面変形時のゴムのタイヤ周方向の伸びを増大させ、接地長の減少を抑制することができる。また、本実施形態では、周方向ベルト層には、破断強度を高めるために波状のコードを用いてもよい。同様に破断強度を高めるために、ハイエロンゲーションコード(例えば破断時の伸びが4.5~5.5%)を用いてもよい。さらに、本実施形態では、周方向ベルト層には、種々の材質が採用可能であり、代表的な例としては、レーヨン、ナイロン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アラミド、ガラス繊維、カーボン繊維、スチール等が採用できる。軽量化の点から、有機繊維コードが特に好ましい。ここで、本実施形態では、周方向ベルトを設ける場合は、周方向ベルト層のコードは、モノフィラメントコードや、複数のフィラメントを引き揃えたコード、複数のフィラメントを撚り合せたコード、さらには異なる材質のフィラメントを撚り合せたハイブリッドコードを用いることもできる。また、本実施形態では、周方向ベルト層の打ち込み数は、20~60本/50mmの範囲とすることができるが、この範囲に限定されるのもではない。さらに、本実施形態では、タイヤ幅方向に剛性・材質・層数・打ち込み密度等の分布を持たせることもでき、例えばショルダー部Sのみにおいて、周方向ベルト層の層数を増やすこともでき、一方でセンター領域Cのみにおいて、周方向ベルト層の層数を増やすこともできる。また、本実施形態では、周方向ベルト層は、ベルト層4a、4bよりもタイヤ幅方向の幅を大きくすることも小さくすることも同じとすることもできる。例えば、周方向ベルト層のタイヤ幅方向の幅は、ベルト層4a、4bのうちタイヤ幅方向の幅が最も広いベルト層(図示例ではベルト層4a)のタイヤ幅方向の幅の90%~110%とすることができる。ここで、周方向ベルト層は、スパイラル層として構成することが製造の観点から特に有利である。
【0029】
図示例では、トレッド5を構成するトレッドゴムは、1層からなる。一方で、本実施形態では、トレッド5を構成するトレッドゴムは、異なる複数のゴム層がタイヤ径方向に積層されて形成されていても良い。上記の複数のゴム層としては正接損失、モジュラス、硬度、ガラス転移温度、材質等が異なっているものを用いることができる。また、複数のゴム層のタイヤ径方向の厚さの比率は、タイヤ幅方向に変化していてもよく、また周方向主溝底のみ等をその周辺と異なるゴム層とすることもできる。また、トレッド5を構成するトレッドゴムは、タイヤ幅方向に異なる複数のゴム層で形成されていても良い。上記の複数のゴム層としては正接損失、モジュラス、硬度、ガラス転移温度、材質等が異なっているものを使用することができる。また、複数のゴム層のタイヤ幅方向の幅の比率は、タイヤ径方向に変化していてもよく、また周方向主溝近傍のみ、接地端近傍のみ、ショルダー陸部のみ、センター陸部のみといった限定された一部の領域のみをその周囲とは異なるゴム層とすることもできる。
また、本実施形態では、タイヤ幅方向断面において、タイヤ赤道面CLにおけるトレッド表面上の点Pを通りタイヤ幅方向に平行な直線をm1とし、接地端Eを通りタイヤ幅方向に平行な直線をm2として、直線m1と直線m2とのタイヤ径方向の距離を落ち高LCRとし、タイヤの接地幅をWとするとき、比LCR/Wを0.045以下とすることが好ましい。比LCR/Wを上記の範囲とすることにより、タイヤのクラウン部がフラット化(平坦化)し、接地面積が増大して、路面からの入力(圧力)を緩和して、タイヤ径方向の撓み率を低減し、タイヤの耐久性及び耐摩耗性を向上させることができる。
【0030】
図示例では、このタイヤ1は、タイヤ周方向に延びる周方向主溝6を3本有している。具体的には、タイヤ赤道面CL上に1本の周方向主溝6を有し、そのタイヤ幅方向両側のショルダー領域Sに1本ずつの周方向主溝6を有している。周方向主溝6の溝幅(開口幅)は、特に限定しないが、例えば2mm~5mmとすることができる。
本実施形態では、トレッド5を占める溝量を少なくすることがウェット性能とその他の性能との両立の観点から好ましい。具体的には、溝体積率(溝体積V2/トレッドゴム体積V1)を30%以下とすることが好ましく、また、ネガティブ率(トレッド踏面の面積に対する、溝面積の割合)を30%以下とすることが好ましい。
後述するように、狭幅・大径の乗用車用空気入りラジアルタイヤでは、センター領域Cでの接地圧がショルダー領域S対比で高くなるため、センター領域Cでの発熱が相対的に大きくなりやすい。そこで、本実施形態のように、センター領域C(図示例ではタイヤ赤道面CL上)に1本の周方向主溝6を有することにより、効率的に放熱を行うことができる。さらに、後述するように、本実施形態では、タイヤ赤道面CLを境界とするタイヤ幅方向各半部のショルダー領域Sのタイヤの内面7に制音体9(スポンジ材)を設けているため、各ショルダー領域Sに1本以上(この例で1本)の周方向主溝6を有することにより、効率的に放熱を行うことができる。
一方で、ベルト構造等により、センター領域Cのタイヤ周方向の剛性を高めたタイヤでは、トレッド5はトレッド踏面の少なくともタイヤ赤道面CLを含む領域に、タイヤ周方向に連続する陸部を有することも、接地長を確保してコーナリング性能を向上させるからは好ましい。
本発明においては、周方向主溝6の本数や配置は、特に上記の例には限定されない。また、タイヤ幅方向に延びる幅方向溝や、接地時に閉塞するサイプ等も適宜設けることができる。
さらに、ノイズ性能とウェット性能とを両立させる観点からは、各周方向主溝の断面積は、24mm2以上96mm2以下とすることが好ましく、このとき周方向主溝の本数は、2本以上5本以下とすることが好ましく、従って、トレッド踏面全体での周方向主溝の断面積の総和は、48mm2以上480mm2以下とすることが好ましい。
【0031】
本実施形態のタイヤ1は、タイヤの内面7(単に、タイヤ内面7ともいう)にインナーライナー8を有している。インナーライナー8の厚さは、1.5mm~2.8mm程度とすることが好ましい。80~100Hzの車内騒音を効果的に低減することができるからである。インナーライナー8を構成するゴム組成物の空気透過係数は、1.0×10-14cc・cm/(cm2・s・cmHg)以上、6.5×10-10cc・cm/(cm2・s・cmHg)以下とすることが好ましい。またタイヤ内面の100μm2の領域当たりに、最大径1.0μm以上のフッ素を含む粒子を1つ以上有することが好ましく、タイヤ内面の周上に、タイヤ幅方向に延びる複数本のブラダーリッヂが形成され、ブラダーリッヂは、タイヤ内面のタイヤ幅方向のいずれかの位置で、タイヤ周方向1インチ当たり5本以上形成されていることが好ましい。本実施形態では、インナーライナー8は、ブチルゴムを主体としたゴム層のほか、樹脂を主成分とするフィルム層によって形成することもできる。本実施形態では、タイヤ内面7のうち、制音体9が配置されていない箇所には、パンク時の空気の漏れを防ぐためのシーラント部材を備えることもできる。
【0032】
図2に示すように、本実施形態のタイヤ1は、タイヤ内面7(この例では、インナーライナー8の内面)に、1つ以上の(図示例で2つの)制音体9を設けている。この例では、制音体9は、スポンジ材である。
本実施形態では、制音体9は、タイヤ赤道面CLを境界とするタイヤ幅方向各半部のショルダー領域Sのタイヤ内面7のそれぞれに(図示例ではその全域にわたって)設けられている。本実施形態では、制音体9は、タイヤ赤道面CLを境界とするタイヤ幅方向各半部のショルダー領域Sにおけるタイヤ内面7のそれぞれに(図示例ではその全域にわたって)接着剤を含む(図示しない)接着層を介して接着されている。接着層は、任意の既知のものを用いることができる。あるいは、融着等で接着することもできる。また、例えば、ショルダー領域Sの一部のみにおいて、制音体9とタイヤ内面7とを接着させることもできるが、接着力を確保するためには、本例のように、ショルダー領域Sにおけるタイヤ内面7の全域にわたって接着させることが好ましい。なお、タイヤ内面7にインナーライナー8を有しない場合においては、制音体9は、タイヤ内面7に直接接着等して設けることができる。
また、制音体9は、連続した延在領域(この例では、タイヤ幅方向各半部でのショルダー領域S)においては、1つの制音体9で構成することが好ましいが、2つ以上の制音体9を接着層等により接着して構成することもできる。
なお、本発明では、制音体9は、タイヤ幅方向各半部におけるショルダー領域Sのタイヤ内面7のそれぞれの一部の領域のみに設けることもできる。
【0033】
本実施形態では、制音体9は、センター領域Cにおけるタイヤ内面7には接していないし、接着されてもいない(この例では、センター領域Cには、制音体9が設けられていない)。なお、この例では、制音体9は、ショルダー領域Sよりタイヤ幅方向外側のタイヤ幅方向領域におけるタイヤ内面7にも接していないし、接着されてもいない(この例では、当該領域には、制音体9が設けられていない)。
【0034】
本実施形態において、タイヤ幅方向各半部のショルダー領域Sのタイヤ内面7に設けられた制音体9は、それぞれ、タイヤ周方向に連続して延在している。なお、図示例では、制音体9は、タイヤ周方向に分割されていないが、タイヤ周方向に分割された2つ以上の制音体9を接着層等によりタイヤ周方向に接着して構成することもできる。あるいは、制音体9は、タイヤ周方向に不連続に延在していてもよい。この場合、制音性を向上させる観点から、合計で、タイヤ周方向全域の80%以上のタイヤ周方向領域に延在するように構成することが好ましい。また、制音体9が、タイヤ周方向に不連続に延在する場合には、タイヤの周方向のユニフォーミティを向上させる観点から、同じ周方向長さの制音体9を等間隔の周方向ピッチで配置することが好ましい。
【0035】
本実施形態においては、制音体9の断面形状は、略四角形状(ただし、タイヤ内面7に接着している辺は、タイヤ内面形状に沿っている)をなしているが、本発明においては、制音体9の断面形状は、三角形状等の他の多角形状、台形状、円形状、楕円形状等、任意の形状とすることができる。制音体9とタイヤ内面7との接着面積を確保しつつ、該接着面積に比して、制音体9の体積を大きくする観点からは、制音体9の断面形状は、略四角形状とすることが好ましい。例えば、制音体9の断面形状を、制音体9とタイヤ内面7とが接着する上辺に比して、タイヤ径方向内側に位置する下辺が長い、台形状とすることも好ましい。これによれば、例えば、制音体9を、センター領域C内にも(タイヤ内面7とは離間させて)位置させて、制音体9の体積を大きく確保することができる。
なお、本実施形態では、任意のタイヤ幅方向断面において、制音体9の断面形状及びサイズは同一であるが、タイヤ周方向に変化していても良い。
制音体9の体積は、タイヤ内腔の全体積の0.1%~80%とすることが好ましい。タイヤ内腔の全体積に対して制音体9の体積を0.1%以上とすることにより、空洞共鳴音の低減効果を有効に得ることができ、一方で、タイヤ内腔の全体積に対して制音体9の体積を80%以下とすることで、制音体9による重量増を抑制することができる。また、制音体9に熱がこもるのを抑制することができる。同様の理由により、制音体9の体積は、タイヤ内腔の全体積の5~70%とすることが好ましく、15~50%とすることがさらに好ましい。
便宜上、タイヤをリムに組み込み、規定内圧を充填した状態を示す図において、寸法等を示しているが、制音体の体積及び後述の幅、厚さ、扁平率、断面積、ペリフェリ長さ等は、常温、常圧下での、タイヤをリムから取り外した状態でのものとする。
【0036】
ここで、
図2において、制音体9のタイヤ幅方向の幅(最大幅)をW1(mm)とし、タイヤ幅方向に直交する方向に計測した厚さ(最大厚さ)をT1(mm)とする。
図2に示すように、本実施形態では、各制音体9は、制音体9のタイヤ幅方向の幅W1が制音体9の厚さT1より大きい、扁平形状である。図示例では、制音体9の厚さは、タイヤ幅方向内側に向かうにつれて漸増しており、タイヤ幅方向内側端位置で最大厚さT1を有している。
本実施形態では、制音体9の扁平率T1/W1は、0.5以上2.5以下とすることが好ましい。扁平率を0.5以上とすることにより、幅W1に比して厚さT1を大きくし、制音体9の体積を確保して、制音性をより向上させることができ、一方で、扁平率を2.5以下とすることにより、幅W1に比して厚さT1を小さくし、制音体9に熱がこもるのを抑制して、タイヤ耐久性をより向上させることができるからである。同様の理由により、扁平率は、0.7以上2.0以下とすることがより好ましく、1.0以上1.9以下とすることがより好ましく、1.1以上1.6以下とすることがさらに好ましい。
例えば、制音体9の厚さT1は、上記の扁平率の範囲において、5~40mmとすることができる。
また、タイヤ幅方向断面における、制音体9の断面積の総和は、20~30000(mm
2)とすることが好ましい。断面積の総和を20(mm
2)以上とすることにより制音性をより向上させることができ、一方で、断面積の総和を30000(mm
2)以下とすることにより制音体9に熱がこもるのを抑制して、タイヤ耐久性をより向上させることができるからである。同様の理由により、断面積の総和は、100(mm
2)~20000(mm
2)とすることがより好ましく、1000(mm
2)~18000(mm
2)がより好ましく、3000(mm
2)~15000(mm
2)がより好ましい。
また、各制音体9の断面積をS1(mm
2)とするとき、比S1(mm
2)/T1(mm)は、20~70とすることが好ましい。比S1(mm
2)/T1(mm)を20以上とすることにより、厚さT1に比して断面積S1を大きくして制音性をより向上させることができ、一方で、比S1(mm
2)/T1(mm)を70以下とすることにより、厚さT1に比して断面積S1を小さくし、制音体9に熱がこもるのを抑制して、タイヤ耐久性をより向上させることができるからである。同様の理由により、比S1(mm
2)/T1(mm)は、30~60とすることがより好ましい。
【0037】
なお、制音体9を構成する材料は、空洞共鳴エネルギーの緩和、吸収、別のエネルギー(例えば、熱エネルギー)への変換、等によって、空洞共鳴エネルギーを低減するように制御できるものであればよく、上述したスポンジ材に限られるものではなく、例えば、有機繊維や無機繊維からなる不織布等を用いることもできる。
【0038】
本実施形態のように、制音体9がスポンジ材である場合は、スポンジ材は、海綿状の多孔構造体とすることができ、例えば、ゴムや合成樹脂を発泡させた連続気泡を有する、いわゆるスポンジを含む。また、スポンジ材は、上述のスポンジの他に、動物繊維、植物繊維又は合成繊維等を絡み合わせて一体に連結したウエブ状のものを含む。なお、上述の「多孔構造体」は、連続気泡を有する構造体に限らず、独立気泡を有する構造体も含む意味である。上述のようなスポンジ材は、表面や内部に形成される空隙が振動する空気の振動エネルギーを熱エネルギーに変換する。これにより、タイヤ内腔での空洞共鳴が抑制され、その結果、ロードノイズを低減することができる。
スポンジ材の材料としては、例えば、エーテル系ポリウレタンスポンジ、エステル系ポリウレタンスポンジ、ポリエチレンスポンジなどの合成樹脂スポンジ、クロロプレンゴムスポンジ(CRスポンジ)、エチレンプロピレンゴムスポンジ(EPDMスポンジ)、ニトリルゴムスポンジ(NBRスポンジ)などのゴムスポンジが挙げられる。制音性、軽量性、発泡の調節可能性、耐久性などの観点を考慮すれば、エーテル系ポリウレタンスポンジを含むポリウレタン系又はポリエチレン系等のスポンジを用いることが好ましい。
【0039】
本実施形態のように、制音体9がスポンジ材である場合は、スポンジ材の硬度は、特には限定されないが、5N~450Nの範囲とすることが好ましい。硬度を5N以上とすることにより、制音性を向上させることができ、一方で、硬度を450N以下とすることにより、制音体の接着力を増大させることができる。同様に、制音体の硬度は、8~300Nの範囲とすることがより好ましい。ここで、「硬度」とは、JIS K6400の第6項の測定法のうち、6.3項のA法に準拠して測定された値とする。
また、スポンジ材の比重は、0.001~0.090とすることが好ましい。スポンジ材の比重を0.001以上とすることにより、制音性を向上させることができ、一方で、スポンジ材の比重を0.090以下とすることにより、スポンジ材による重量増を抑制することができるからである。同様に、スポンジ材の比重は、0.003~0.080とすることがより好ましい。ここで、「比重」とは、JIS K6400の第5項の測定法に準拠し、見かけ密度を比重に換算した値とする。
また、スポンジ材の引張り強さは、20kPa~500kPaとすることが好ましい。引張り強さを20kPa以上とすることにより、接着力を向上させることができ、一方で、引張り強さを500kPa以下とすることにより、スポンジ材の生産性を向上させることができるからである。同様に、スポンジ材の引張り強さは、40~400kPaとすることがより好ましい。ここで、「引張り強さ」とは、JIS K6400の第10項の測定法に準拠し、1号形のダンベル状試験片で測定した値とする。
また、スポンジ材の破断時の伸びは、110%以上800%以下とすることが好ましい。破断時の伸びを110%以上とすることにより、スポンジ材にクラックが発生するのを抑制することができ、一方で、破断時の伸びを800%以下とすることにより、スポンジ材の生産性を向上させることができるからである。同様に、スポンジ材の破断時の伸びは、130%以上750%以下とすることがより好ましい。ここで、「破断時の伸び」とは、JIS K6400の第10項の測定法に準拠し、1号形のダンベル状試験片で測定した値とする。
また、スポンジ材の引裂強さは、1~130N/cmとすることが好ましい。引裂強さを1N/cm以上とすることにより、スポンジ材にクラックが発生するのを抑制することができ、一方で、引裂強さを130N/cm以下とすることにより、スポンジ材の製造性を向上させることができるからである。同様に、スポンジ材の引裂強さは、3~115N/cmとすることがより好ましい。ここで、「引裂強さ」とは、JIS K6400の第11項の測定法に準拠し、1号形の試験片で測定した値とする。
また、スポンジ材の発泡率は、1%以上40%以下とすることが好ましい。発泡率を1%以上とすることにより、制音性を向上させることができ、一方で、発泡率を40%以下とすることにより、スポンジ材の生産性を向上させることができるからである。同様に、スポンジ材の発泡率は、2~25%とすることがより好ましい。ここで、「発泡率」とは、スポンジ材の固相部の比重Aの、スポンジ材の比重Bに対する比A/Bから1を引いて、その値に100を乗じた値をいう。
また、スポンジ材の質量は、5~800gとすることが好ましい。質量を5g以上とすることにより、制音性を低減することができ、一方で、質量を800g以下とすることにより、スポンジ材による重量増を抑制することができるからである。同様に、スポンジ材の質量は、20~600gとすることが好ましい。
【0040】
以下、本発明の第1~第3の態様にかかる本実施形態の乗用車用空気入りラジアルタイヤの作用効果について説明する。
【0041】
本実施形態の乗用車用空気入りラジアルタイヤでは、タイヤの断面幅SWとタイヤの外径ODとが、所定の上記関係を満たしている(すなわち、第1の態様においては、タイヤの断面幅SWが165(mm)未満であり、タイヤの断面幅SWと外径ODとの比SW/ODは、0.26以下である。また、第2の態様においては、タイヤの断面幅SWが165(mm)以上であり、タイヤの断面幅SW(mm)及び外径OD(mm)は、関係式、OD(mm)≧2.135×SW(mm)+282.3、を満たしている。また、第3の態様においては、関係式、OD(mm)≧-0.0187×SW(mm)
2+9.15×SW(mm)-380、を満たしている)。これにより、上述したように、燃費性を向上させることができる。
ところで、
図3は、通常のタイヤサイズのタイヤの接地圧分布を模式的に示す図であり、
図4は、狭幅・大径タイヤの接地圧分布を模式的に示す図である。
図3及び
図4に模式的に示すように、通常のタイヤサイズの乗用車用空気入りラジアルタイヤでは、接地圧が、センター領域C対比で、ショルダー領域Sにおいて高くなる傾向にあるのに対して、タイヤの断面幅SW及び外径ODが上記所定の関係を満たす、狭幅・大径の乗用車用空気入りラジアルタイヤでは、接地圧が、ショルダー領域S対比で、センター領域Cにおいて同等以上に高くなる傾向にある。このことから、タイヤの断面幅SW及び外径ODが上記所定の関係を満たす、狭幅・大径の乗用車用空気入りラジアルタイヤでは、センター領域Cでの発熱が相対的に大きくなり、センター領域Cにおいて、タイヤ内面7と制音体9とを接着する接着層が溶けて、制音体9がタイヤ内面7から剥離する原因となることや、センター領域Cにおいて、タイヤ内面7に設けた制音体9に熱が伝わり、制音体9に熱がこもる原因となることが判明した。
【0042】
これに対し、本実施形態の乗用車用空気入りラジアルタイヤでは、タイヤ内面7に、1つ以上の制音体9を設けつつも、制音体9は、センター領域Cにおけるタイヤ内面7には接していない又は接着されていない(この例では、制音体9は、センター領域Cには配置されてもおらず、センター領域Cにおけるタイヤ内面7には、接してもいないし、接着されてもいない)。このため、相対的に発熱の大きいセンター領域Cにおいて、トレッド5から制音体9に熱が伝わらないようにすることができる。また、センター領域Cのタイヤ内面7と制音体9とが接着層等により接着されている場合と比べると、接着層等が溶けることによって制音体9がタイヤ内面7から剥離することもなくなる。
これにより、制音体9による制音性向上の効果を得つつも、制音体9のタイヤ内面7からの剥離や、制音体9に熱がこもってタイヤ内部が高温になることによる他の部材の故障等を抑制することができ、タイヤの耐久性を向上させることができる。
ここで、タイヤの内圧が高内圧であるほど、接地圧は、ショルダー領域S対比で、センター領域Cが高くなるため、上記タイヤの断面幅SW及びタイヤ外径ODの所定の関係は、内圧が200kPa以上である場合に満たされることが好ましく、220kPa以上である場合に満たされることがより好ましく、280kPa以上である場合に満たされることがさらに好ましい。上記の効果をより有効に得ることができるからであり、また、上述したように高内圧とすることによって転がり抵抗をより低減することができるからである。一方で、上述したように、上記タイヤの断面幅SW及びタイヤ外径ODの所定の関係は、内圧が350kPa以下である場合に満たされることが好ましい。乗り心地性を向上させることができるからである。
【0043】
さらに、本実施形態では、制音体9は、タイヤ赤道面CLを境界とするタイヤ幅方向各半部のショルダー領域Sにおけるタイヤ内面7のそれぞれの全域にわたって設けられているため、制音体9の体積を確保して、制音性をさらに向上させることができる。また、ショルダー領域Sよりタイヤ幅方向外側のタイヤ幅方向領域にも制音体9を設ける場合に比して、制音体9に熱がこもるのを抑制してタイヤ耐久性を向上させることができ、また、制音体9によるタイヤ重量増をより抑えることができる。
また、本実施形態では、制音体9として、スポンジ材を用いており、スポンジ材は比重が小さい割に高い制音性を発揮することができるため、過度の重量増とならないようにしつつ、制音性をより向上させることができる。
以上のように、本発明の第1~第3の態様の本実施形態にかかる乗用車用空気入りラジアルタイヤによれば、タイヤ耐久性を向上させることができる。
【0044】
図5は、本発明の第1~第3の態様の他の実施形態にかかる乗用車用空気入りラジアルタイヤを示す、タイヤ幅方向断面図である。
図5は、タイヤをリムに組み込み、規定内圧を充填し、無負荷とした際のタイヤの幅方向断面を示している。
図5に示す他の実施形態のタイヤは、制音体9の配置態様及びサイズのみが、
図2に示す先の一実施形態のタイヤと異なっているので、当該構成について以下説明し、その他の共通する構成の説明は省略する。
すなわち、
図5に示す実施形態のタイヤでは、タイヤ幅方向一方の半部のショルダー領域Sから他方の半部のショルダー領域Sにかけて、連続して延在する1つの制音体9が設けられている。制音体9は、タイヤ赤道面CLを境界とするタイヤ幅方向各半部のショルダー領域Sにおけるタイヤ内面7に接しており、図示例では、タイヤ幅方向各半部のショルダー領域Sにおけるタイヤ内面7のそれぞれの全域にわたって接着層により接着されている。一方で、制音体9は、センター領域Cにおけるタイヤ内面7には接しておらず、接着されてもおらず、タイヤ内面7と離間して、該センター領域Cのタイヤ幅方向領域全域にわたって位置している。これにより、タイヤ内面7と制音体9との間に、略矩形の空隙が形成されている。
図5に示す実施形態のタイヤによっても、タイヤ内面7に、1つ以上の制音体9を設けつつも、制音体9は、センター領域Cにおけるタイヤ内面7には接していない又は接触していない(この例では接していないし、接着してもいない)ため、相対的に発熱の大きいセンター領域Cにおいて、トレッド5から制音体9に熱が伝わらないようにすることができる。また、センター領域Cのタイヤ内面7と制音体9とが接着層等により接着されている場合と比べると、接着層等が溶けることによって制音体9がタイヤ内面7から剥離することもなくなる。
これにより、制音体9による制音性向上の効果を得つつも、制音体9のタイヤ内面7からの剥離や、制音体9に熱がこもってタイヤ内部が高温になることによる他の部材の故障等を抑制することができ、タイヤの耐久性を向上させることができる。
特に、
図5に示す実施形態のタイヤでは、センター領域Cにおいても、タイヤ内面7と離間させて、制音体9を設けているため、
図2に示した実施形態に比して、制音体9の体積を大きく確保することができ、タイヤ耐久性を損なうことなく、制音性をより向上させることができる。
なお、
図5に示す実施形態において、センター領域Cにおけるタイヤ内面7と制音体9とのタイヤ径方向の最短距離tは、0.5mm以上とすることが、トレッド5から制音体9に熱を伝わらないようにする観点から好ましく、一方で、10mm以下とすることが、センター領域C内での制音体9の体積を大きく確保する観点から好ましい。
【0045】
ここで、
図5において、制音体9のタイヤ幅方向の幅(最大幅)をW1(mm)とし、タイヤ幅方向に直交する方向に計測した厚さ(最大厚さ)をT1(mm)とする。
図5に示すように、本実施形態では、制音体9は、制音体9のタイヤ幅方向の幅W1が制音体9の厚さT1より大きい、扁平形状である。図示例では、制音体9の厚さは、ショルダー領域Sでは、タイヤ幅方向内側に向かうにつれて漸増しており、ショルダー領域Sのタイヤ幅方向内側端位置で最大厚さT1を有している。また、図示例では、制音体9の厚さは、センター領域Cでは略一定であり、ショルダー領域Sでの最小厚さよりも薄く、ショルダー領域Sでの最大厚さT1よりおよそ最短距離tの分だけ薄い。
図5に示す実施形態では、制音体9の扁平率T1/W1は、0.2~0.8とすることが好ましい。扁平率を0.2以上とすることにより、幅W1に比して厚さT1を大きくし、制音体9の体積を確保して、制音性をより向上させることができ、一方で、扁平率を0.8以下とすることにより、幅W1に比して厚さT1を小さくし、制音体9に熱がこもるのを抑制して、タイヤ耐久性をより向上させることができるからである。同様の理由により、扁平率は、0.3~0.6とすることがより好ましい。
例えば、制音体9の厚さT1は、上記の扁平率の範囲において、5~40mmとすることができる。
また、制音体9の断面積をS1(mm
2)とするとき、比S1(mm
2)/T1(mm)は、80~230とすることが好ましい。比S1(mm
2)/T1(mm)を80以上とすることにより、厚さT1に比して断面積S1を大きくして制音性をより向上させることができ、一方で、比S1(mm
2)/T1(mm)を230以下とすることにより、厚さT1に比して断面積S1を小さくし、制音体9に熱がこもるのを抑制して、タイヤ耐久性をより向上させることができるからである。同様の理由により、比S1(mm
2)/T1(mm)は、100~200とすることがより好ましい。
【0046】
図6は、本発明の第1~第3の態様の別の実施形態にかかる乗用車用空気入りラジアルタイヤを示す、タイヤ幅方向断面図である。
図6は、タイヤをリムに組み込み、規定内圧を充填し、無負荷とした際のタイヤの幅方向断面を示している。
図6の示す別の実施形態のタイヤは、制音体9の配置態様及びサイズのみが、
図2、
図5に示す先の実施形態のタイヤと異なっているので、当該構成について以下説明し、その他の共通する構成の説明は省略する。
図6に示す実施形態のタイヤでは、各タイヤ幅方向半部の、ショルダー領域Sの少なくとも一部の領域(図示例では全域)からサイドウォール部の少なくとも一部の領域(図示例では略全域)までのタイヤ内面7のそれぞれに、制音体9が設けられている点で、
図2、
図5に示す実施形態のタイヤと異なっている。図示例では、制音体9は、各タイヤ幅方向半部の、ショルダー領域Sの少なくとも一部の領域(図示例では全域)からサイドウォール部の少なくとも一部の領域(図示例では略全域)のそれぞれにわたって、タイヤ内面7に接着層により接着されている。一方で、制音体9は、センター領域Cにおけるタイヤ内面7には接しておらず、接着されてもおらず、この例では、制音体9は、該センター領域C内に設けられていない。
図6に示す実施形態のタイヤによっても、タイヤ内面7に、1つ以上の制音体9を設けつつも、制音体9は、センター領域Cにおけるタイヤ内面7には接していない又は接着されていない(この例では、接しておらず、接着されてもいない)ため、相対的に発熱の大きいセンター領域Cにおいて、トレッド5から制音体9に熱が伝わらないようにすることができる。また、センター領域Cにおけるタイヤ内面7と制音体9とが接着層等により接着されている場合と比べると、接着層等が溶けることによって制音体9がタイヤ内面7から剥離することもなくなる。
これにより、制音体9による制音性向上の効果を得つつも、制音体9のタイヤ内面7からの剥離や、制音体9に熱がこもってタイヤ内部が高温になることによる他の部材の故障等を抑制することができ、タイヤの耐久性を向上させることができる。
特に、
図6に示す実施形態のタイヤでは、タイヤ幅方向各半部のサイドウォール部の少なくとも一部の領域(図示例では全域)におけるタイヤ内面7のそれぞれにも制音体9を設けているため、
図2に示した実施形態に比して、制音体9の体積を大きく確保することができ、タイヤ耐久性を損なうことなく、制音性をより向上させることができる。
図6に示す実施形態では、制音体9のタイヤ径方向最内側端は、ビードフィラ2bのタイヤ径方向最外側端より、タイヤ径方向外側に位置している。これによれば、発熱の大きい部材であるビードフィラ2bから制音体9に熱が伝わるのを抑制して、タイヤ耐久性を向上させることができる。
一方で、制音体9は、ビード部2におけるタイヤ内面7まで設けることもでき、例えば、制音体9のタイヤ径方向最内側端は、ビードフィラ2bのタイヤ径方向最外側端より、タイヤ径方向内側に位置していてもよい。この場合、制音体9の体積をより大きく確保して制音性を向上させることができる。
【0047】
ここで、
図6において、タイヤ赤道面CLを境界とするタイヤ幅方向各半部で、制音体9のタイヤ内面7に沿ったペリフェリ長さをL1(mm)とし、タイヤ内面7に直交する方向に計測した際の最大厚さをT1(mm)とする。
図6に示すように、本実施形態では、制音体9は、タイヤ内面7に沿ったペリフェリ長さL1が制音体9の厚さT1より大きい、扁平形状である。図示例では、制音体9の厚さは、略一定である。
本実施形態では、制音体9の扁平率(最大厚さT1/ペリフェリ長さL1)は、0.2~0.8とすることが好ましい。扁平率を0.2以上とすることにより、ペリフェリ長さL1に比して厚さT1を大きくし、制音体9の体積を確保して、制音性をより向上させることができ、一方で、扁平率を0.8以下とすることにより、ペリフェリ長さL1に比して厚さT1を小さくし、制音体9に熱がこもるのを抑制して、タイヤ耐久性をより向上させることができるからである。同様の理由により、扁平率は、0.3~0.6とすることがより好ましい。
例えば、制音体9の厚さT1は、上記の扁平率の範囲において、5~40mmとすることができる。
また、制音体9の断面積をS1(mm
2)とするとき、比S1(mm
2)/T1(mm)は、40~200とすることが好ましい。比S1(mm
2)/T1(mm)を40以上とすることにより、厚さT1に比して断面積S1を大きくして制音性をより向上させることができ、一方で、比S1(mm
2)/T1(mm)を200以下とすることにより、厚さT1に比して断面積S1を小さくし、制音体9に熱がこもるのを抑制して、タイヤ耐久性をより向上させることができるからである。同様の理由により、比S1(mm
2)/T1(mm)は、50~150とすることがより好ましい。
【0048】
図7は、本発明の第1~第3の態様のさらに別の実施形態にかかる乗用車用空気入りラジアルタイヤを示す、タイヤ幅方向断面図である。
図7は、タイヤをリムに組み込み、規定内圧を充填し、無負荷とした際のタイヤの幅方向断面を示している。
図7の示すさらに別の実施形態のタイヤは、制音体9の配置態様及びサイズのみが、
図2、
図5、
図6に示す先の実施形態のタイヤと異なっているので、当該構成について以下説明し、その他の共通する構成の説明は省略する。
すなわち、
図7に示す実施形態のタイヤでは、制音体9が、タイヤ内面7に沿った方向に離散して設けられている点で、
図2、
図5、
図6に示す実施形態のタイヤと異なっている。
図7に示す実施形態では、制音体9は、タイヤ赤道面CLを境界とするタイヤ幅方向各半部において、ショルダー領域Sの少なくとも一部の領域(図示例では全域)及びサイドウォール部の少なくとも一部の領域(図示例ではバットレス部を除いた略全域)におけるタイヤ内面7のそれぞれに設けられており、接着層により接着されている。
ここで、「バットレス部」とは、タイヤをリムに組み込み、規定内圧を充填し、無負荷とした、タイヤ幅方向断面視において、接地端Eを通りタイヤ径方向に延びる仮想線と、接地端Eからタイヤの最大幅となるタイヤ表面位置までのペリフェリ長さの半分の長さとなるタイヤ表面位置を通りタイヤ内面7に垂直な仮想線と、で挟まれるタイヤ部分を意味する。
ここで、制音体9は、センター領域Cにおけるタイヤ内面7には接しておらず、接着されてもおらず、この例では、制音体9は、センター領域Cに設けられていない。また、制音体9は、バットレス部におけるタイヤ内面7には接しておらず、接着されてもおらず、この例では、制音体9は、バットレス部におけるタイヤ内面7に設けられていない。
図7に示す実施形態のタイヤによっても、タイヤ内面7に、1つ以上の制音体9を備えつつも、制音体9は、センター領域Cにおけるタイヤ内面7には接していない又は接着されていない(この例では接しておらず、接着されてもいない)ため、相対的に発熱の大きいセンター領域Cにおいて、トレッド5から制音体9に熱が伝わらないようにすることができる。また、センター領域Cにおけるタイヤ内面7と制音体9とが接着層等により接着されている場合と比べると、接着層等が溶けることによって制音体9がタイヤ内面7から剥離することもなくなる。
これにより、制音体9による制音性向上の効果を得つつも、制音体9のタイヤ内面7からの剥離や、制音体9に熱がこもってタイヤ内部が高温になることによる他の部材の故障等を抑制することができ、タイヤの耐久性を向上させることができる。
特に、
図7に示す実施形態のタイヤでは、制音体9は、サイドウォール部のうち、狭幅・大径タイヤにおいて相対的に変形が大きくなるバットレス部におけるタイヤ内面7には接していないため、
図6に示した実施形態に比して、制音体9が変形による力を受けたり、バットレス部から制音体9に熱が伝わるのを抑制したりすることができ、また、
図2に示した実施形態に比しては、制音体9の体積を大きく確保することができる。これにより、制音性とタイヤ耐久性とをより良く両立させることができる。
なお、
図7に示す実施形態では、制音体9がタイヤ内面7に接しない(設けない)領域を、バットレス部のタイヤ内面7としたが、サイドウォール部内の他の領域とすることもできる。
【0049】
ここで、
図7において、タイヤ赤道面CLを境界とするタイヤ幅方向各半部の、ショルダー領域Sにおけるタイヤ内面7に設けられた制音体9のタイヤ幅方向の幅(最大幅)をW1(mm)とし、タイヤ幅方向に直交する方向に計測した厚さ(最大厚さ)をT1(mm)とする。また、
図7において、タイヤ赤道面CLを境界とするタイヤ幅方向各半部の、サイドウォール部におけるタイヤ内面7に設けられた制音体9のタイヤ内面7に沿ったペリフェリ長さをL2(mm)とし、タイヤ内面7に直交する方向に計測した際の最大厚さをT2(mm)とする。
図7に示すように、本実施形態では、タイヤ赤道面CLを境界とするタイヤ幅方向各半部のショルダー領域Sのタイヤ内面7に設けられた制音体9は、制音体9のタイヤ幅方向の幅W1が制音体9の厚さT1より大きい、扁平形状である。図示例では、ショルダー領域Sのタイヤ内面7に設けられた制音体9の厚さは、タイヤ幅方向内側に向かうにつれて漸増しており、ショルダー領域Sのタイヤ幅方向内側端位置で最大厚さT1を有している。また、サイドウォール部におけるタイヤ内面7に設けられた制音体9も、制音体9のタイヤ内面7に沿ったペリフェリ長さL2が制音体9の厚さT2より大きい、扁平形状である。図示例では、サイドウォール部におけるタイヤ内面7に設けられた制音体9の厚さは、略一定である。
本実施形態では、タイヤ赤道面CLを境界とするタイヤ幅方向各半部のショルダー領域Sのタイヤ内面7に設けられた制音体9の扁平率(最大厚さT1/最大幅W1)は、0.2~0.8とすることが好ましい。扁平率を0.2以上とすることにより、幅W1に比して厚さT1を大きくし、制音体9の体積を確保して、制音性をより向上させることができ、一方で、扁平率を0.8以下とすることにより、幅W1に比して厚さT1を小さくし、制音体9に熱がこもるのを抑制して、タイヤ耐久性をより向上させることができるからである。同様の理由により、扁平率は、0.3~0.6とすることがより好ましい。
例えば、制音体9の厚さT1は、上記の扁平率の範囲において、5~40mmとすることができる。
また、タイヤ赤道面CLを境界とするタイヤ幅方向各半部のショルダー領域Sのタイヤ内面7に設けられた制音体9の断面積をS1(mm
2)とするとき、比S1(mm
2)/T1(mm)は、40~120とすることが好ましい。比S1(mm
2)/T1(mm)を40以上とすることにより、厚さT1に比して断面積S1を大きくして制音性をより向上させることができ、一方で、比S1(mm
2)/T1(mm)を120以下とすることにより、厚さT1に比して断面積S1を小さくし、制音体9に熱がこもるのを抑制して、タイヤ耐久性をより向上させることができるからである。同様の理由により、比S1(mm
2)/T1(mm)は、50~100とすることがより好ましい。
本実施形態では、タイヤ赤道面CLを境界とするタイヤ幅方向各半部のサイドウォール部におけるタイヤ内面7に設けられた制音体9の扁平率(最大厚さT2/ペリフェリ長さL2)は、0.2~0.8とすることが好ましい。扁平率を0.2以上とすることにより、ペリフェリ長さL2に比して厚さT2を大きくし、制音体9の体積を確保して、制音性をより向上させることができ、一方で、扁平率を0.8以下とすることにより、ペリフェリ長さL2に比して厚さT2を小さくし、制音体9に熱がこもるのを抑制して、タイヤ耐久性をより向上させることができるからである。同様の理由により、扁平率は、0.3~0.6とすることがより好ましい。
例えば、制音体9の厚さT2は、上記の扁平率の範囲において、5~40mmとすることができる。
また、タイヤ赤道面CLを境界とするタイヤ幅方向各半部のサイドウォール部におけるタイヤ内面7に設けられた制音体9の断面積をS2(mm
2)とするとき、比S2(mm
2)/T2(mm)は、50~200とすることが好ましい。比S2(mm
2)/T2(mm)を50以上とすることにより、厚さT2に比して断面積S2を大きくして制音性をより向上させることができ、一方で、比S2(mm
2)/T2(mm)を200以下とすることにより、厚さT2に比して断面積S2を小さくし、制音体9に熱がこもるのを抑制して、タイヤ耐久性をより向上させることができるからである。同様の理由により、比S2(mm
2)/T2(mm)は、50~150とすることがより好ましい。
【0050】
ここで、
図6に示す実施形態の変形例として、
図5に示す実施形態のように、センター領域Cにおいても、制音体9をタイヤ内面7と離間させて設けることもできる。これによれば、タイヤ耐久性を低下させることなく、制音体9の体積を確保して制音性をより向上させることができる。
【0051】
また、
図7に示す実施形態の変形例として、センター領域C、及び/又は、バットレス部においても、制音体9をタイヤ内面7と離間させて設けることもできる。これによれば、タイヤ耐久性を低下させることなく、制音体9の体積を確保して制音性をより向上させることができる。
【0052】
本発明では、上記各実施形態のように、制音体9は、タイヤ赤道面CLを境界とするタイヤ幅方向各半部のショルダー領域Sにおけるタイヤ内面7のそれぞれに設けられていることが好ましい。
一方のショルダー領域Sにおけるタイヤ内面7のみに制音体9を設ける場合に比して、制音体9の体積を大きくし得るため、制音性をより一層向上させ得るからである。
また、本発明では、制音体9は、タイヤ赤道面を境界とするタイヤ幅方向各半部のショルダー領域のタイヤ内面7のそれぞれの全域に設けられていることが好ましい。制音体9の体積を大きく確保して、制音性をさらに向上させることができるからである。
また、本発明では、制音体9は、スポンジ材であることが好ましい。スポンジ材は、比重が小さいため、過度の重量増とならないようにしつつ、制音性を向上させることができるからである。
【0053】
<タイヤ・リム組立体>
ここでのタイヤ・リム組立体は、上記第1~第3の態様の各実施形態にかかる乗用車用空気入りラジアルタイヤをリムに組み込んでなるものである。当該タイヤ・リム組立体によれば、上記第1~第3の態様の各実施形態にかかる乗用車用空気入りラジアルタイヤについて説明したのと同様の作用効果を得ることができる。このとき、タイヤ・リム組立体の内圧は、200kPa以上であることが好ましく、220kPa以上であることがより好ましく、280kPa以上であることがさらに好ましい。上述したように、タイヤの内圧が高内圧であるほど、接地圧は、ショルダー領域S対比で、センター領域Cが高くなるため、上記の作用効果を有効に得ることができ、また、高内圧とすることで転がり抵抗をより低減することができるからである。一方で、タイヤ・リム組立体の内圧は、350kPa以下であることが好ましい。乗り心地性を向上させることができるからである。
【0054】
<乗用車用空気入りラジアルタイヤの使用方法>
ここでの乗用車用空気入りラジアルタイヤの使用方法は、上記第1~第3の態様の各実施形態にかかる乗用車用空気入りラジアルタイヤを使用する。当該乗用車用空気入りラジアルタイヤの使用方法によれば、上記第1~第3の態様の各実施形態にかかる乗用車用空気入りラジアルタイヤについて説明したのと同様の作用効果を得ることができる。このとき、内圧を200kPa以上として使用することが好ましく、220kPa以上として使用することがより好ましく、280kPa以上として使用することがさらに好ましい。上述したように、タイヤの内圧が高内圧であるほど、接地圧は、ショルダー領域S対比で、センター領域Cが高くなるため、上記の作用効果を有効に得ることができ、また、高内圧とすることで転がり抵抗をより低減することができるからである。一方で、内圧を350kPa以下として使用することが好ましい。乗り心地性を向上させることができるからである。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、
図2、
図5~
図7に示した実施形態では、タイヤ赤道面CLを境界として、制音体9を対称な構成としているが、非対称な構成としても良い。例えば、タイヤ幅方向一方の半部における制音体9の位置、延在領域、形状、材質、最大幅、最大厚さ等のいずれか1つ以上を、タイヤ幅方向他方の半部における制音体9と異ならせることもできる。一例としては、上記各実施形態及びその変形例の異なる組み合わせにより、タイヤ幅方向一方の半部における制音体9の位置、延在領域等を、タイヤ幅方向他方の半部における制音体9の位置、延在領域等と異ならせることができる。あるいは、タイヤ幅方向一方の半部のみに、例えば上記各実施形態及びその変形例の制音体9を設け、タイヤ幅方向他方の半部には、制音体9を設けないようにすることもできる。
また、制音体9がタイヤ周方向に分断されている場合には、その一部が、センター領域におけるタイヤの内面に接していない又は接着されていないことにより、上記の作用効果を奏することができる。
【0056】
ここで、タイヤ・リム組立体は、SWが165mm未満であり、比SW/ODは、0.26以下であり、且つ、内圧が200kPa以上であり、且つ、扁平率が70以下であり、且つ、リム径18インチ以上であって、制音体(例えばスポンジ材)の周長が1800mm以上であることが好ましい。
ここでいう「制音体の周長」は、制音体の周長をタイヤ周方向に計測した際に最小となるような位置での周長をいい、制音体が複数個に分割されている場合は、複数個の制音体のうち、周長が最小となる制音体の周長をいう。また、制音体がタイヤ周方向に分断されている場合は、合計の周長をいうものとする。
燃費性を向上させるためには、内圧を高くして転がり抵抗を低減することが好ましく、また、扁平率を低くして軽量化することやタイヤ変形を抑制することも好ましく、また、タイヤの断面幅を狭くして、空気抵抗を低減することも好ましい。
一方で、内圧を高く設定すると、トレッド踏面における接地圧が高くなるため、空洞共鳴音は悪化する傾向となる。また、扁平率を低くすると、ベルト張力が増大して、トレッド踏面における接地圧が高くなるため空洞共鳴音は悪化する傾向となる。また、タイヤの断面幅を狭くするとトレッド幅もそれに伴い狭くなるため、一般的には制音体の断面積も減少し、空洞共鳴が悪化する傾向となる。
そこで、タイヤの外径を大きくして、制音体の周方向長さを長くすることで制音体の断面積を大きくすることなく、制音体の総体積を増大させて、空洞共鳴を抑制することができる。さらに、制音体の断面積が小さいため、制音体の発熱量を抑えることもできる。
このように、上記の構成によれば、空洞共鳴の低減と、転がり抵抗の低減と、発熱耐久性能とを、高次元で両立することができる。
同様に、タイヤ・リム組立体は、SWが165mm以上であり、OD(mm)≧2.135×SW(mm)+282.3、を満たし、且つ、内圧が200kPa以上であり、且つ、扁平率が70以下であり、且つ、リム径18インチ以上であって、制音体(例えばスポンジ材)の周長が1800mm以上であることが好ましい。
また、同様に、タイヤ・リム組立体は、OD(mm)≧-0.0187×SW(mm)2+9.15×SW(mm)-380、を満たし、且つ、内圧が200kPa以上であり、且つ、扁平率が70以下であり、且つ、リム径18インチ以上であって、制音体(例えばスポンジ材)の周長が1800mm以上であることが好ましい。
【符号の説明】
【0057】
1:乗用車用空気入りラジアルタイヤ(タイヤ)、
2:ビード部、 2a:ビードコア、 2b:ビードフィラ、 3:カーカス、
4:ベルト、 4a、4b:ベルト層、 5:トレッド、
6:周方向主溝、 7:タイヤ内面、 8:インナーライナー、
9:制音体、
CL:タイヤ赤道面、 E:接地端、
C:センター領域、 S:ショルダー領域