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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240410BHJP
   C09J 7/26 20180101ALI20240410BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20240410BHJP
   C09J 133/02 20060101ALI20240410BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20240410BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/26
C09J133/06
C09J133/02
C09J11/08
B32B27/00 M
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019127459
(22)【出願日】2019-07-09
(65)【公開番号】P2020012108
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2018131120
(32)【優先日】2018-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517045598
【氏名又は名称】日東電工(上海松江)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 征史
(72)【発明者】
【氏名】伊神 俊輝
(72)【発明者】
【氏名】樋口 真覚
(72)【発明者】
【氏名】定司 健太
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-023236(JP,A)
【文献】特開2016-183210(JP,A)
【文献】国際公開第2019/024459(WO,A1)
【文献】特開2015-120877(JP,A)
【文献】国際公開第2014/156642(WO,A1)
【文献】特開2018-028051(JP,A)
【文献】特開2015-021083(JP,A)
【文献】国際公開第2017/110839(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0044555(US,A1)
【文献】特開2018-100322(JP,A)
【文献】特開2014-101430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/38
C09J 7/26
C09J 133/06
C09J 133/02
C09J 11/08
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体基材と、該発泡体基材の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層と、を備える粘着シートであって、
前記粘着剤層は、ベースポリマーとしてのアクリル系ポリマーと、粘着付与樹脂と、を含み(ただし、粘着剤層が液状キシレン系樹脂を含むものを除く。)
前記粘着付与樹脂は、水酸基価が70mgKOH/g以上の粘着付与樹脂を含み、
前記水酸基価が70mgKOH/g以上の粘着付与樹脂は、水酸基価が120mgKOH/g以上の粘着付与樹脂を含み、
前記粘着剤層に含まれる前記粘着付与樹脂全体に占める前記水酸基価が70mgKOH/g以上の粘着付与樹脂の割合は80重量%以上であり
前記粘着剤層は、tanδのピーク温度から求められるガラス転移温度が-25℃以上25℃以下の範囲にある、粘着シート。
【請求項2】
前記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、エステル末端に炭素原子数1~6のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを50重量%よりも多く含む、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、カルボキシ基含有モノマーを含む、請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記モノマー成分における前記カルボキシ基含有モノマーの量は1~10重量%である、請求項3に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記粘着剤層を形成するための粘着剤組成物はイソシアネート系架橋剤を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記粘着付与樹脂はフェノール系粘着付与樹脂を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項7】
前記粘着剤層における前記粘着付与樹脂の含有量は、前記ベースポリマー100重量部に対して10重量部以上60重量部以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項8】
前記発泡体基材はポリオレフィン系発泡体基材である、請求項1~のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項9】
携帯電子機器の部品を接合するために用いられる、請求項1~のいずれか一項に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに関する。詳しくは、携帯機器を構成する部材の固定に好適な粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、粘着剤(感圧接着剤ともいう。以下同じ。)は室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する。このような性質を活かして、粘着剤は、典型的には粘着シートの形態で、携帯電話その他の携帯機器における部材の接合や固定、保護等の目的で広く利用されている。携帯電子機器に用いられる粘着テープに関する技術文献として特許文献1~5が挙げられる。特許文献5は、発泡体基材付き粘着シートに関する技術文献である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-215355号公報
【文献】特開2013-100485号公報
【文献】特許第6153635号公報
【文献】特許第6113889号公報
【文献】特開2017-002292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
携帯機器は、携帯して使用されるものであるため、皮脂や手垢等の分泌物、化粧品や整髪料、保湿クリーム、日焼け止め等の化学品、あるいは食品等に含まれる油脂が付着しやすい。特に、近年普及が著しいタッチパネル方式の携帯機器は、表示部が入力部としても機能する表示部/入力部を備え、その表示部/入力部の表面を使用者が指先で直接触れることによって操作されるため、指先を介して皮脂等の油脂が付着する機会が多い。また、いわゆるウェアラブル機器のなかには肌に触れる状態で装着して使用されるものがあり、そのような使用形態では皮脂や皮膚に塗られた化学品等の油脂成分に曝される機会が多い。例えばこのような用途において、粘着シートの粘着剤層に上記のような油脂成分(皮脂や化粧品等)が接触すると、粘着剤が油脂成分を吸収して軟化し、膨張、変形、凝集力の低下等の不都合が生じることがあり得る。この点に関し、本発明者らは、特許文献3において、油分が浸透しても粘着力が低下しにくく、粘着剤がはみ出さない粘着シートについて検討を行っている。また、部材を固定した状態に保つ性能(保持性能)と耐油性とを両立した粘着シートを特許文献4にて提案している。
【0005】
しかし、例えば特許文献4では、その性能(保持性能および耐油性)をエポキシ系架橋剤使用による層形状で確保している部分があり、接着力や耐落下衝撃性など、粘着剤の柔軟性に基づく粘着特性の維持または向上には限界がある。本発明は、上記の事情に鑑みて創出されたものであり、その目的は、接着力や耐落下衝撃性等の粘着特性を損なわず、あるいはその向上が可能であり、かつ良好な耐油脂性を発揮し得る粘着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書によると、発泡体基材と、該発泡体基材の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層と、を備える粘着シートが提供される。前記粘着剤層は、ベースポリマーとしてのアクリル系ポリマーと、粘着付与樹脂と、を含む。前記粘着付与樹脂は、水酸基価が70mgKOH/g以上の粘着付与樹脂を含む。
【0007】
上記構成によると、高水酸基価の粘着付与樹脂を用いることで良好な耐油脂性が得られる。また、上記高水酸基価樹脂の使用により、これまで耐油性確保のために制限されていた粘着剤の設計自由度が増し、他の粘着剤構成成分(例えば架橋剤)に基づき、耐油性以外の粘着特性(例えば接着力や耐落下衝撃性)の維持または向上を図ることができる。また、発泡体基材を用いることで、耐落下衝撃性向上は勿論のこと、基材レスや樹脂フィルム基材を用いる構成と比べて優れた耐油脂性が得られる。要するに、上記構成の粘着シートによると、接着力や耐落下衝撃性等の粘着特性を損なわず、あるいはその向上が可能であり、かつ良好な耐油脂性を発揮することができる。
なお、本明細書において「油脂」とは、皮脂や、化粧品等の化学品、食品等に含まれる油分および脂肪分を包含する意味で用いられる。
【0008】
ここに開示される粘着シートの好ましい一態様では、前記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、エステル末端に炭素原子数1~6のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを50重量%よりも多く含む。上記粘着剤層を構成する粘着剤は、C1-6アルキル(メタ)アクリレートを主構成モノマー成分とするアクリル系ポリマーをベースポリマーとして含むことから油脂成分を吸収しにくい。
【0009】
ここに開示される粘着シートの好ましい一態様では、前記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、カルボキシ基含有モノマーを含む。これにより、粘着剤層の凝集力が向上する。モノマー成分がカルボキシ基含有モノマーを含むことは、粘着剤層と被着体との密着性向上にも有利に寄与し得る。モノマー成分におけるカルボキシ基含有モノマーの含有量は、他の成分との相溶性等の観点から、通常、1重量%~10重量%程度とすることが適当である。
【0010】
ここに開示される粘着シートの好ましい一態様では、前記粘着剤層を形成するための粘着剤組成物はイソシアネート系架橋剤を含む。イソシアネート系架橋剤の使用により、粘着剤層の凝集力を得つつ、被着体との密着性に基づき耐油脂性も向上する傾向がある。また、イソシアネート系架橋剤を含む粘着剤によると、他の架橋系よりも優れた耐落下衝撃性が得られる傾向がある。
【0011】
ここに開示される粘着シートの好ましい一態様では、前記粘着付与樹脂はフェノール系粘着付与樹脂を含む。フェノール系粘着付与樹脂はアクリル系ポリマーとの相溶性に優れる。粘着付与樹脂としてフェノール系粘着付与樹脂を用いることで、被着体に対する密着性向上効果が好ましく実現される。
【0012】
ここに開示される粘着シートの好ましい一態様では、前記粘着剤層における前記粘着付与樹脂の含有量は、該粘着剤層のベースポリマー100重量部に対して10重量部以上60重量部以下である。粘着付与樹脂の使用量をベースポリマー100重量部に対して10重量部以上とすることで、良好な接着力が得られやすい。また、粘着付与樹脂の使用量を60重量部以下とすることで、ベースポリマーとよく相溶し、良好な粘着特性が得られやすい。
【0013】
ここに開示される粘着シートを構成する前記粘着剤層は、tanδのピーク温度から求められるガラス転移温度が-25℃以上25℃以下の範囲にある。Tgが上記範囲の粘着剤を用いることにより、ここに開示される技術による効果が好ましく実現される。耐落下衝撃性も向上する傾向がある。
【0014】
ここに開示される粘着シートの好ましい一態様では、前記発泡体基材はポリオレフィン系発泡体基材である。ポリオレフィン系発泡体基材は、油脂成分を良好に保持し得るので、接着界面への油脂成分の浸入を効果的に低減し得る。
【0015】
ここに開示される粘着シートは、例えば、携帯電子機器の部品を接合するために好ましく用いられ得る。上述のように携帯電子機器は油脂成分と接触する機会が多いため、ここに開示される技術を適用して耐油性を向上することが殊に有意義である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】粘着シートの一構成例を模式的に示す断面図である。
図2】押圧接着力を測定する際に用いる評価用サンプルを示す概略図であって、(a)は上面図であり、(b)は図2(a)のA-A’線断面図である。
図3】押圧接着力の測定方法を示す説明図である。
図4】人工皮脂付与後の押圧接着力評価における人工皮脂付与方法を説明するための断面図である。
図5】耐落下衝撃性評価試験に用いる評価用サンプルを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、製品として実際に提供される本発明の粘着シートのサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
【0018】
本明細書において「粘着剤」とは、前述のように、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する材料をいう。ここでいう粘着剤は、「C. A. Dahlquist, “Adhesion : Fundamental and Practice”, McLaren & Sons, (1966) P. 143」に定義されているとおり、一般的に、複素引張弾性率E(1Hz)<10dyne/cmを満たす性質を有する材料(典型的には、25℃において上記性質を有する材料)であり得る。
【0019】
<粘着シートの構成>
ここに開示される粘着シート(テープ状等の長尺状の形態であり得る。)は、発泡体基材と、該発泡体基材の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層と、を備える。かかる粘着シートは、発泡体基材の一方の面にのみ粘着剤層を有し、該一方の面のみが粘着性表面(粘着面)となっている片面粘着シートの形態であってもよい。このような片面粘着シートは、例えば、粘着剤層を有しない側の面を粘着以外の手法(例えば、接着剤を用いる方法、熱融着させる方法等)で被着体に固定することにより、部品の接合や固定に用いられ得る。ここに開示される粘着シートは、典型的には、発泡体基材の両面に粘着剤層を有する両面粘着シート(発泡体基材付き両面粘着シート)の形態で好ましく実施される。このような両面粘着シートは、例えば、部品の接合操作の簡便性や接合品質の安定性等の観点から有利である。なお、ここでいう粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称されるものが包含され得る。また、ここに開示される粘着シートは、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。あるいは、さらに種々の形状に加工された形態の粘着シートであってもよい。
【0020】
ここに開示される粘着シートは、例えば、図1に模式的に示される断面構造を有するものであり得る。この粘着シート1は、発泡体基材10と、その発泡体基材10の第1面10Aおよび第2面10Bにそれぞれ支持された第1粘着剤層21および第2粘着剤層22とを備える。第1面10Aおよび第2面10Bは、いずれも非剥離性の表面(非剥離面)である。粘着シート1は、第1粘着剤層21の表面(第1粘着面)21Aおよび第2粘着剤層22の表面(第2粘着面)22Aをそれぞれ被着体に貼り付けて使用される。使用前の粘着シート1は、第1粘着面21Aおよび第2粘着面22Aが、少なくとも該粘着剤面側が剥離性を有する表面(剥離面)となっている剥離ライナー31,32によってそれぞれ保護された構成を有している。あるいは、剥離ライナー32を省略し、剥離ライナー31として両面が剥離面となっているものを使用して、粘着シート1を巻回して第2粘着面22Aを剥離ライナー31の裏面に当接させることにより、第2粘着面22Aもまた剥離ライナー31によって保護された構成としてもよい。
【0021】
<粘着剤層>
(ベースポリマー)
ここに開示される粘着剤層を構成する粘着剤は、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含むアクリル系粘着剤である。
なお、ベースポリマーとは、粘着剤層に含まれるゴム状ポリマー(室温付近の温度域においてゴム弾性を示すポリマー)の主成分をいう。また、この明細書において「主成分」とは、特記しない場合、50重量%を超えて含まれる成分を指す。また、本明細書において「アクリル系粘着剤」とは、アクリル系ポリマーをベースポリマー(ポリマー成分のなかの主成分、すなわち50重量%以上を占める成分)とする粘着剤を指す。また、「アクリル系ポリマー」とは、該ポリマーを構成するモノマー単位として、1分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来するモノマー単位を含む重合物をいう。以下、1分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを「アクリル系モノマー」ともいう。したがって、この明細書におけるアクリル系ポリマーは、アクリル系モノマーに由来するモノマー単位を含むポリマーとして定義される。なお、この明細書において「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよびメタクリロイルを包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートおよびメタクリレートを、「(メタ)アクリル」とはアクリルおよびメタクリルを、それぞれ包括的に指す意味である。
【0022】
(アクリル系ポリマー)
上記アクリル系ポリマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含み、該主モノマーと共重合性を有する副モノマーをさらに含み得るモノマー原料の重合物が好ましい。ここで主モノマーとは、上記モノマー原料におけるモノマー組成の50重量%超を占める成分をいう。
【0023】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば下記式(1)で表される化合物を好適に用いることができる。
CH=C(R)COOR (1)
ここで、上記式(1)中のRは水素原子またはメチル基である。また、Rは炭素原子数1~20の鎖状アルキル基である。以下、このような炭素原子数の範囲を「C1-20」と表すことがある。粘着剤の貯蔵弾性率等の観点から、RがC1-14(例えばC2-10、あるいはC4-8)の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとすることが適当である。粘着特性の観点から、Rが水素原子であってRがC4-8の鎖状アルキル基であるアルキルアクリレート(以下、単にC4-8アルキルアクリレートともいう。)を主モノマーとすることが好ましい。
【0024】
がC1-20の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらアルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましいアルキル(メタ)アクリレートとして、n-ブチルアクリレート(BA)および2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が挙げられる。
【0025】
アクリル系ポリマーの合成に用いられる全モノマー成分に占めるアルキル(メタ)アクリレートの割合は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは85重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。アルキル(メタ)アクリレートの割合の上限は特に限定されないが、通常は99.5重量%以下(例えば99重量%以下)とすることが適当であり、カルボキシ基含有モノマー等の副モノマーの作用を好適に発現させる観点から、98重量%以下程度(例えば97重量%以下)とすることが好ましい。
【0026】
好ましい一態様に係るアクリル系ポリマーは、C1-6アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含み、該主モノマーと共重合性を有する副モノマーをさらに含み得るモノマー成分の重合物である。C1-6アルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
1-6アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとするアクリル系ポリマーは、より炭素原子数の多いアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとするアクリル系ポリマーに比べて、概して油脂成分に対する親和性が低い。したがって、かかるアクリル系ポリマーをベースポリマーとして含む上記粘着剤層は、該粘着剤層内に油脂成分を吸収しにくい傾向にある。
【0028】
粘着剤層の油脂成分親和性をより低くする観点から、上記アクリル系ポリマーは、主モノマーがC1-5アルキル(メタ)アクリレートであることが好ましく、C1-4アルキル(メタ)アクリレートであることがより好ましい。好ましい一態様に係るアクリル系ポリマーは、被着体に対する密着性等の観点から、主モノマーがC2-6アルキル(メタ)アクリレートであり、より好ましくはC4-6アルキル(メタ)アクリレートである。好ましい他の一態様に係るアクリル系ポリマーは、上記密着性向上の観点から、主モノマーがC1-6アルキルアクリレートであり、より好ましくはC1-4アルキルアクリレート(例えばC2-4アルキルアクリレート)である。
【0029】
上記C1-6アルキル(メタ)アクリレートとしては、粘着剤層の油脂成分親和性低減および被着体や基材に対する密着性向上の観点から、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が概ね20℃以下(典型的には概ね10℃以下、好ましくは概ね0℃以下、より好ましくは概ね-10℃以下、さらに好ましくは概ね-15℃以下)であるC1-6アルキル(メタ)アクリレートを好ましく採用し得る。ここに開示される技術は、例えば、上記アクリル系ポリマーの主モノマーがBAである態様で好ましく実施され得る。
【0030】
また、粘着剤層の油脂成分親和性を低くする観点から、上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分のうちC1-6アルキル(メタ)アクリレート(典型的にはC1-6アルキルアクリレート、例えばBA)の占める割合は、好ましくは凡そ60重量%以上、より好ましくは凡そ75重量%以上、より好ましくは凡そ85重量%以上である。ここに開示される技術は、例えば、上記モノマー成分の凡そ70重量%以上(より好ましくは凡そ80重量%以上、さらに好ましくは凡そ85重量%以上であり、凡そ90重量%以上または凡そ95重量%以上であってもよい。)がBAである態様で好ましく実施され得る。
【0031】
ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマーには、本発明の効果を顕著に損なわない範囲で、必要に応じて上記以外のモノマー(その他モノマー)が共重合されていてもよい。上記その他のモノマーは、例えば、アクリル系ポリマーのTgの調整、凝集力の向上、初期接着性の調整等の目的で使用することができる。例えば、粘着剤の凝集力や耐熱性を向上させ得るモノマーとして、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ビニルエステル類、芳香族ビニル化合物等が挙げられる。これらのうちの好適例としてビニルエステル類が挙げられる。ビニルエステル類の具体例としては、酢酸ビニル(VAc)、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等が挙げられる。なかでもVAcが好ましい。
【0032】
また、アクリル系ポリマーに架橋基点となり得る官能基を導入し、あるいは剥離強度の向上に寄与し得るその他モノマーとして、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、イミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、(メタ)アクリロイルモルホリン、ビニルエーテル類等が挙げられる。
【0033】
ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマーの一好適例として、上記その他モノマーとしてカルボキシ基含有モノマーが共重合されたアクリル系ポリマーが挙げられる。これにより、凝集力の高い粘着剤層が得られやすくなる傾向にある。モノマー成分がカルボキシ基含有モノマーを含むことは、粘着剤層と被着体や基材との密着性向上にも有利に寄与し得る。カルボキシ基含有モノマーとしては、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等が例示される。なかでも好ましいカルボキシ基含有モノマーとして、AAおよびMAAが挙げられる。AAが特に好ましい。
【0034】
ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマーの他の好適例として、上記その他モノマーとして水酸基含有モノマーが共重合されたアクリル系ポリマーが挙げられる。水酸基含有モノマーは、カルボキシ基含有モノマーとともに共重合されていてもよい。水酸基含有モノマーの例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート;N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。なかでも好ましい水酸基含有モノマーとして、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)や4-ヒドロキシブチルアクリレート等のような、炭素原子数2~4程度の直鎖アルキル基の末端に水酸基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0035】
上記「その他モノマー」は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。その他モノマーの合計含有量は、例えば、全モノマー成分の凡そ50重量%未満(典型的には、0.001~40重量%程度)とすることができ、通常は凡そ25重量%以下(典型的には0.01~25重量%程度、例えば0.1~20重量%程度)とすることが適当である。
【0036】
上記その他モノマーとしてカルボキシ基含有モノマーを用いる場合、その含有量は、通常、全モノマー成分の凡そ0.1重量%以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ0.2重量%以上、より好ましくは凡そ0.5重量%以上、さらに好ましくは凡そ1重量%以上、特に好ましくは凡そ2重量%以上(例えば凡そ3重量%以上)である。カルボキシ基含有モノマーの含有量が多くなると、粘着剤層の凝集力は概して向上する傾向にある。また、カルボキシ基含有モノマーの量は、全モノマー成分の凡そ20重量%以下とすることが適当であり、好ましくは凡そ15重量%以下、より好ましくは凡そ12重量%以下、さらに好ましくは凡そ10重量%以下、特に好ましくは凡そ8重量%以下(例えば凡そ7重量%以下)である。カルボキシ基含有モノマーの使用量を上記範囲とすることにより、例えば後述する粘着付与樹脂を配合する場合に、その配合効果が適切に発揮されるなど、被着体や基材に対して良好な密着性を示す粘着剤層が好適に実現され得る。
【0037】
また、上記その他モノマーとして水酸基含有モノマーを用いる場合、その含有量は、通常、全モノマー成分の凡そ0.001重量%以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ0.01重量%以上(典型的には凡そ0.02重量%以上)である。また、水酸基含有モノマーの含有量は、全モノマー成分中、凡そ10重量%以下とすることが適当であり、好ましくは凡そ5重量%以下、より好ましくは凡そ2重量%以下である。
【0038】
アクリル系ポリマーの共重合組成は、該ポリマーのTgが凡そ-15℃以下(典型的には凡そ-70℃以上-15℃以下)となるように設計されていることが適当である。ここで、アクリル系ポリマーのTgとは、該ポリマーの合成に用いられるモノマー成分の組成に基づいて、Foxの式により求められるTgをいう。Foxの式とは、以下に示すように、共重合体のTgと、該共重合体を構成するモノマーのそれぞれを単独重合したホモポリマーのガラス転移温度Tgiとの関係式である。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
なお、上記Foxの式において、Tgは共重合体のガラス転移温度(単位:K)、Wiは該共重合体におけるモノマーiの重量分率(重量基準の共重合割合)、Tgiはモノマーiのホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)を表す。
【0039】
Tgの算出に使用するホモポリマーのガラス転移温度としては、公知資料に記載の値を用いるものとする。例えば、以下に挙げるモノマーについては、該モノマーのホモポリマーのガラス転移温度として、以下の値を使用する。
2-エチルヘキシルアクリレート -70℃
n-ブチルアクリレート -55℃
エチルアクリレート -22℃
メチルアクリレート 8℃
メチルメタクリレート 105℃
2-ヒドロキシエチルアクリレート -15℃
4-ヒドロキシブチルアクリレート -40℃
酢酸ビニル 32℃
スチレン 100℃
アクリル酸 106℃
メタクリル酸 228℃
【0040】
上記で例示した以外のモノマーのホモポリマーのガラス転移温度については、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1989)に記載の数値を用いるものとする。本文献に複数種類の値が記載されているモノマーについては、最も高い値を採用する。
【0041】
上記文献にもホモポリマーのガラス転移温度が記載されていないモノマーについては、以下の測定方法により得られる値を用いるものとする。
具体的には、温度計、攪拌機、窒素導入管および還流冷却管を備えた反応器に、モノマー100重量部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部および重合溶媒として酢酸エチル200重量部を投入し、窒素ガスを流通させながら1時間攪拌する。このようにして重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温し10時間反応させる。次いで、室温まで冷却し、固形分濃度33重量%のホモポリマー溶液を得る。次いで、このホモポリマー溶液を剥離ライナー上に流延塗布し、乾燥して厚さ約2mmの試験サンプル(シート状のホモポリマー)を作製する。この試験サンプルを直径7.9mmの円盤状に打ち抜き、パラレルプレートで挟み込み、粘弾性試験機(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、機種名「ARES」)を用いて周波数1Hzのせん断歪みを与えながら、温度領域-70℃~150℃、5℃/分の昇温速度でせん断モードにより粘弾性を測定し、tanδ(損失正接)のピークトップ温度をホモポリマーのTgとする。
【0042】
特に限定するものではないが、被着体や基材に対する密着性の観点から、アクリル系ポリマーのTgは、凡そ-25℃以下であることが有利であり、好ましくは凡そ-35℃以下、より好ましくは凡そ-40℃以下である。また、粘着剤層の凝集力の観点から、アクリル系ポリマーのTgは、凡そ-65℃以上であることが有利であり、好ましくは凡そ-60℃以上、より好ましくは凡そ-55℃以上である。ここに開示される技術は、上記アクリル系ポリマーのTgが凡そ-65℃以上-35℃以下(例えば、凡そ-55℃以上-40℃以下)である態様で好ましく実施され得る。アクリル系ポリマーのTgは、モノマー組成(すなわち、該ポリマーの合成に使用するモノマーの種類や使用量比)を適宜変えることにより調整することができる。
【0043】
アクリル系ポリマーを得る方法は特に限定されず、溶液重合法、エマルション重合法、バルク重合法、懸濁重合法、光重合法等の、アクリル系ポリマーの合成手法として知られている各種の重合方法を適宜採用することができる。例えば、溶液重合法を好ましく採用し得る。溶液重合を行う際のモノマー供給方法としては、全モノマー原料を一度に供給する一括仕込み方式、連続供給(滴下)方式、分割供給(滴下)方式等を適宜採用することができる。重合温度は、使用するモノマーおよび溶媒の種類、重合開始剤の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば20℃~170℃程度(典型的には40℃~140℃程度)とすることができる。好ましい一態様において、重合温度を凡そ75℃以下(より好ましく凡そ65℃以下、例えば凡そ45℃~65℃程度)とすることができる。
【0044】
溶液重合に用いる溶媒(重合溶媒)は、従来公知の有機溶媒から適宜選択することができる。例えば、トルエン等の芳香族化合物類(典型的には芳香族炭化水素類);酢酸エチル等の酢酸エステル類;ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素類;1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化アルカン類;イソプロピルアルコール等の低級アルコール類(例えば、炭素原子数1~4の一価アルコール類);tert-ブチルメチルエーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン等のケトン類;等から選択されるいずれか1種の溶媒、または2種以上の混合溶媒を用いることができる。
【0045】
重合に用いる開始剤は、重合方法の種類に応じて、従来公知の重合開始剤から適宜選択することができる。例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のアゾ系重合開始剤の1種または2種以上を好ましく使用し得る。重合開始剤の他の例としては、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、過酸化水素等の過酸化物系開始剤;フェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;芳香族カルボニル化合物;等が挙げられる。重合開始剤のさらに他の例として、過酸化物と還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤が挙げられる。このような重合開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、通常の使用量であればよく、例えば、全モノマー成分100重量部に対して凡そ0.005~1重量部程度(典型的には凡そ0.01~1重量部程度)の範囲から選択することができる。
【0046】
上記溶液重合によると、アクリル系ポリマーが有機溶媒に溶解した形態の重合反応液が得られる。ここに開示される技術における粘着剤層は、上記重合反応液または該反応液に適当な後処理を施して得られたアクリル系ポリマー溶液を含む粘着剤組成物から形成されたものであり得る。上記アクリル系ポリマー溶液としては、上記重合反応液を必要に応じて適当な粘度(濃度)に調製したものを使用し得る。あるいは、溶液重合以外の重合方法(例えば、エマルション重合、光重合、バルク重合等)でアクリル系ポリマーを合成し、該アクリル系ポリマーを有機溶媒に溶解させて調製したアクリル系ポリマー溶液を用いてもよい。
【0047】
ここに開示される技術におけるベースポリマー(好適にはアクリル系ポリマー)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されず、例えば凡そ10×10~500×10の範囲であり得る。粘着性能の観点から、ベースポリマーのMwは、好ましくは凡そ30×10以上、より好ましくは凡そ45×10以上(典型的には凡そ65×10以上)であり、好ましくは凡そ200×10以下、より好ましくは凡そ150×10以下、さらに好ましくは凡そ130×10以下)である。ここでMwとは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により得られた標準ポリスチレン換算の値をいう。GPC装置としては、例えば機種名「HLC-8320GPC」(カラム:TSKgelGMH-H(S)、東ソー社製)を用いることができる。
【0048】
(粘着付与樹脂)
ここに開示される粘着剤層は、上記ベースポリマーに加えて粘着付与樹脂を含むことが好ましい。粘着付与樹脂としては、ロジン系樹脂、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、フェノール系樹脂、スチレン系樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂、ケトン系樹脂等の、公知の各種粘着付与樹脂から選択される1種または2種以上を用いることができる。なかでも、フェノール系粘着付与樹脂が好ましい。
【0049】
フェノール系粘着付与樹脂の例には、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂およびロジンフェノール樹脂が含まれる。
テルペンフェノール樹脂とは、テルペン残基およびフェノール残基を含むポリマーを指し、テルペン類とフェノール化合物との共重合体(テルペン-フェノール共重合体樹脂)と、テルペン類の単独重合体または共重合体をフェノール変性したもの(フェノール変性テルペン樹脂)との双方を包含する概念である。このようなテルペンフェノール樹脂を構成するテルペン類の好適例としては、α-ピネン、β-ピネン、リモネン(d体、l体およびd/l体(ジペンテン)を包含する。)等のモノテルペン類が挙げられる。水素添加テルペンフェノール樹脂とは、このようなテルペンフェノール樹脂を水素化した構造を有する水素添加テルペンフェノール樹脂をいう。水添テルペンフェノール樹脂と称されることもある。
アルキルフェノール樹脂は、アルキルフェノールとホルムアルデヒドから得られる樹脂(油性フェノール樹脂)である。アルキルフェノール樹脂の例としては、ノボラックタイプおよびレゾールタイプのものが挙げられる。
ロジンフェノール樹脂は、典型的には、ロジン類または上記の各種ロジン誘導体(ロジンエステル類、不飽和脂肪酸変性ロジン類および不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類を包含する。)のフェノール変性物である。ロジンフェノール樹脂の例には、ロジン類または上記の各種ロジン誘導体にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合する方法等により得られるロジンフェノール樹脂が含まれる。
【0050】
ここでいうロジン系樹脂(ロジン系粘着付与樹脂)の概念には、ロジン類およびロジン誘導体樹脂の双方が包含される。ただし、後述するロジンフェノール樹脂に該当するものは、ロジン系樹脂ではなくフェノール系樹脂に属するものとして扱う。
ロジン類の例には、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の未変性ロジン(生ロジン);これらの未変性ロジンを水素添加、不均化、重合等により変性した変性ロジン(水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、その他の化学的に修飾されたロジン等);が含まれる。
【0051】
ロジン誘導体樹脂は、典型的には上記のようなロジン類の誘導体である。ここでいうロジン系樹脂の概念には、未変性ロジンの誘導体および変性ロジン(水素添加ロジン、不均化ロジンおよび重合ロジンを包含する。)の誘導体が包含される。
ロジン誘導体樹脂としては、例えば、未変性ロジンとアルコール類とのエステルである未変性ロジンエステル、変性ロジンとアルコール類とのエステルである変性ロジンエステル等のロジンエステル類;例えば、ロジン類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;例えば、ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;例えば、ロジン類または上記の各種ロジン誘導体(ロジンエステル類、不飽和脂肪酸変性ロジン類および不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類を包含する。)のカルボキシ基を還元処理したロジンアルコール類;例えば、ロジン類または上記の各種ロジン誘導体の金属塩;等が挙げられる。
【0052】
特に限定するものではないが、ロジンエステル類の具体例としては、未変性ロジンまたは変性ロジン(水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)のメチルエステル、トリエチレングリコールエステル、グリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル等が挙げられる。
【0053】
テルペン樹脂(テルペン系粘着付与樹脂)の例には、α-ピネン、β-ピネン、d-リモネン、l-リモネン、ジペンテン等のテルペン類(典型的にはモノテルペン類)の重合体が含まれる。1種のテルペン類の単独重合体であってもよく、2種以上のテルペン類の共重合体であってもよい。1種のテルペン類の単独重合体としては、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、ジペンテン重合体等が挙げられる。
変性テルペン樹脂の例としては、上記テルペン樹脂を変性したものが挙げられる。具体的には、スチレン変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂等が例示される。ただし、後述するテルペンフェノール樹脂または水素添加テルペンフェノール樹脂に該当するものは、変性テルペン樹脂ではなくフェノール系樹脂に属するものとして扱う。
【0054】
炭化水素系粘着付与樹脂の例としては、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂(スチレン-オレフィン系共重合体等)、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂等の各種の炭化水素系の樹脂が挙げられる。
【0055】
好ましい一態様として、上記粘着付与樹脂が1種または2種以上のフェノール系粘着付与樹脂(典型的にはテルペンフェノール樹脂)を含む態様が挙げられる。フェノール系粘着付与樹脂の使用により、被着体に対する粘着剤層の密着性を改善し、被着体との界面からの油脂成分の浸入を効果的に抑制することができる。また、フェノール粘着付与樹脂は、例えばロジン系粘着付与樹脂に比べて油脂成分に対する親和性が低い傾向にある。したがって、フェノール粘着付与樹脂を含有させることは、粘着剤層内への油脂成分の浸入(吸油)の抑制にも役立ち得る。また、フェノール系粘着付与樹脂は、ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを用いる態様において相溶性に優れる傾向があり、所望の粘着特性を発揮しやすいという利点を有する。
【0056】
ここに開示される技術は、例えば、粘着付与樹脂の総量の凡そ25重量%以上(より好ましくは凡そ30重量%以上)がテルペンフェノール樹脂である態様で好ましく実施され得る。粘着付与樹脂の総量の凡そ50重量%以上がテルペンフェノール樹脂であってもよく、凡そ80重量%以上(例えば凡そ90重量%以上)がテルペンフェノール樹脂であってもよい。粘着付与樹脂の実質的に全部(例えば凡そ95~100重量%、さらには凡そ99~100重量%)がテルペンフェノール樹脂であってもよい。
【0057】
フェノール系粘着付与樹脂(例えばテルペンフェノール樹脂)の含有量は、特に限定されず、ベースポリマー100重量部に対して凡そ5重量部以上であることが適当であり、接着性および耐油脂性の観点から、好ましくは凡そ10重量部以上、より好ましくは凡そ15重量部以上、さらに好ましくは凡そ20重量部以上(例えば凡そ25重量部以上)である。また、フェノール系粘着付与樹脂(例えばテルペンフェノール樹脂)の含有量は、凡そ80重量部以下が適当であり、ベースポリマーとの相溶性や、接着力、耐落下衝撃性等の粘着特性等の観点から、好ましくは70重量部未満、より好ましくは凡そ60重量部以下、さらに好ましくは凡そ55重量部以下、特に好ましくは凡そ45重量部以下(例えば凡そ40重量部以下)である。
【0058】
ここに開示される粘着剤層は、水酸基価が70mgKOH/g以上の粘着付与樹脂を含むことによって特徴づけられる。このような高水酸基価樹脂を用いることによって、接着力等の粘着剤特性を損なわず、良好な耐油脂性が得られる。高水酸基価樹脂の水酸基価は、凡そ80mgKOH/g以上(例えば凡そ100mgKOH/g以上)とすることが適当である。好ましい一態様に係る粘着剤層は、水酸基価が凡そ120mgKOH/g以上(例えば凡そ130mgKOH/g以上)の粘着付与樹脂を含む。このような高水酸基価樹脂を用いることによって、接着力を確保しつつ耐油脂性をさらに改善することができる。高水酸基価樹脂の水酸基価は、好ましくは凡そ140mgKOH/g以上、より好ましくは凡そ150mgKOH/g以上、さらに好ましくは凡そ170mgKOH/g以上、特に好ましくは凡そ190mgKOH/g以上(例えば凡そ200mgKOH/g以上)である。高水酸基価樹脂の水酸基価の上限は特に限定されない。ベースポリマーとの相溶性等の観点から、高水酸基価樹脂の水酸基価は、通常、凡そ350mgKOH/g以下が適当であり、好ましくは凡そ300mgKOH/g以下(例えば凡そ250mgKOH/g以下)である。
【0059】
ここで、上記水酸基価の値としては、JIS K0070:1992に規定する電位差滴定法により測定される値を採用することができる。具体的な測定方法は以下に示すとおりである。
[水酸基価の測定方法]
1.試薬
(1)アセチル化試薬としては、無水酢酸約12.5g(約11.8mL)を取り、これにピリジンを加えて全量を50mLにし、充分に攪拌したものを使用する。または、無水酢酸約25g(約23.5mL)を取り、これにピリジンを加えて全量を100mLにし、充分に攪拌したものを使用する。
(2)測定試薬としては、0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液を使用する。
(3)その他、トルエン、ピリジン、エタノールおよび蒸留水を準備する。
2.操作
(1)平底フラスコに試料約2gを精秤採取し、アセチル化試薬5mLおよびピリジン10mLを加え、空気冷却管を装着する。
(2)上記フラスコを100℃の浴中で70分間加熱した後、放冷し、冷却管の上部から溶剤としてトルエン35mLを加えて攪拌した後、蒸留水1mLを加えて攪拌することにより無水酢酸を分解する。分解を完全にするため再度浴中で10分間加熱し、放冷する。
(3)エタノール5mLで冷却管を洗い、取り外す。次いで、溶剤としてピリジン50mLを加えて攪拌する。
(4)0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液を、ホールピペットを用いて25mL加える。
(5)0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で電位差滴定を行う。得られた滴定曲線の変曲点を終点とする。
(6)空試験は、試料を入れないで上記(1)~(5)を行う。
3.計算
以下の式により水酸基価を算出する。
水酸基価(mgKOH/g)=[(B-C)×f×28.05]/S+D
ここで、
B: 空試験に用いた0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)、
C: 試料に用いた0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)、
f: 0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクター、
S: 試料の重量(g)、
D: 酸価、
28.05: 水酸化カリウムの分子量56.11の1/2、
である。
【0060】
高水酸基価樹脂としては、上述した各種の粘着付与樹脂のうち所定値以上の水酸基価を有するものを用いることができる。高水酸基価樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、高水酸基価樹脂として、水酸基価が70mgKOH/g以上のフェノール系粘着付与樹脂を好ましく採用し得る。好ましい一態様では、粘着付与樹脂として、水酸基価が70mgKOH/g以上のテルペンフェノール樹脂を使用する。テルペンフェノール樹脂は、フェノールの共重合割合によって水酸基価を任意にコントロールすることができるので好都合である。
【0061】
特に限定するものではないが、粘着剤層に含まれる粘着付与樹脂全体に占める高水酸基価樹脂(例えばテルペンフェノール樹脂)の割合は、例えば凡そ25重量%以上とすることができ、凡そ30重量%以上が好ましく、凡そ50重量%以上(例えば凡そ80重量%以上、典型的には凡そ90重量%以上)がより好ましい。粘着付与樹脂の実質的に全部(例えば凡そ95~100重量%、さらには凡そ99~100重量%)が高水酸基価樹脂であってもよい。したがって、ここに開示される粘着剤層は、発明の効果を損なわない範囲で、高水酸基価樹脂に該当しない粘着付与樹脂(具体的には、水酸基価が70mgKOH/g未満の粘着付与樹脂)を含み得る。
【0062】
上記高水酸基価樹脂の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して凡そ5重量部以上(例えば10重量部以上)とすることが適当である。これによって、被着体に対する密着性と優れた耐油脂性とを示す粘着シートが好ましく実現され得る。より優れた効果を得る観点から、ベースポリマー100重量部に対する高水酸基価樹脂の含有量は、好ましくは凡そ15重量部以上、より好ましくは凡そ20重量部以上、さらに好ましくは凡そ25重量部以上、特に好ましくは凡そ30重量部以上(例えば凡そ35重量部以上)である。高水酸基価樹脂の含有量の上限は特に限定されず、ベースポリマーとの相溶性や初期接着性の観点から、一態様において、通常、ベースポリマー100重量部に対して凡そ80重量部以下とすることが適当であり、接着力や耐落下衝撃性等の粘着特性の観点から、好ましくは70重量部未満、より好ましくは凡そ60重量部以下、さらに好ましくは凡そ55重量部以下、特に好ましくは凡そ50重量部以下(例えば凡そ45重量部以下)である。
【0063】
粘着付与樹脂の軟化点は特に限定されない。凝集力向上の観点から、一態様において、軟化点(軟化温度)が凡そ80℃以上(好ましくは凡そ100℃以上)である粘着付与樹脂を好ましく採用し得る。上記軟化点は、より好ましくは凡そ110℃以上(例えば凡そ120℃以上)である。ここに開示される技術は、上記軟化点を有する粘着付与樹脂が、粘着剤層に含まれる粘着付与樹脂全体のうち50重量%超(より好ましくは70重量%超、例えば90重量%超)である態様で好ましく実施され得る。例えば、このような軟化点を有するフェノール系粘着付与樹脂(テルペンフェノール樹脂等)を好ましく用いることができる。粘着付与樹脂の軟化点の上限は特に制限されない。被着体や基材に対する密着性の観点から、一態様において、軟化点が凡そ200℃以下(より好ましくは凡そ180℃以下)の粘着付与樹脂を好ましく使用し得る。上記軟化点は、例えば凡そ150℃以下であってもよく、凡そ140℃以下であってもよい。なお、粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K2207に規定する軟化点試験方法(環球法)に基づいて測定することができる。
【0064】
上記粘着付与樹脂の含有量は、特に限定されず、ベースポリマー100重量部に対して凡そ5重量部以上(例えば10重量部以上)とすることが適当である。これによって、被着体に対する密着性を向上させる効果が好適に発揮される。より高い密着性を得る観点から、ベースポリマー100重量部に対する粘着付与樹脂の含有量は、好ましくは凡そ15重量部以上、より好ましくは凡そ20重量部以上、さらに好ましくは凡そ25重量部以上、特に好ましくは凡そ30重量部以上(例えば凡そ35重量部以上)である。粘着付与樹脂の含有量の上限は特に限定されない。ベースポリマーとの相溶性や初期接着性の観点から、一態様において、通常、ベースポリマー100重量部に対して凡そ80重量部以下とすることが適当であり、好ましくは凡そ60重量部以下、より好ましくは凡そ55重量部以下、さらに好ましくは凡そ50重量部以下(例えば凡そ45重量部以下)である。
【0065】
(架橋剤)
粘着剤を形成するために用いられる粘着剤組成物は、架橋剤を含むことが好ましい。粘着剤組成物に架橋剤を含ませることによって、粘着剤に架橋構造が導入される。架橋剤の種類は特に制限されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アミン系架橋剤等から適宜選択して用いることができる。架橋剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。被着体との密着性や耐落下衝撃性の観点からは、イソシアネート系架橋剤が好ましく、接着状態の保持性能(層形状保持を含む。)等の観点からはエポキシ系架橋剤が好ましい。ここに開示される技術によると、エポキシ系架橋剤を用いることなく、あるいはその使用量を低減しつつ、より高性能な粘着シートを提供することができる。例えば、イソシアネート系架橋剤を主架橋剤成分として用いて、接着界面からの油脂成分浸入防止性を高めたり、耐油脂性と耐落下衝撃性とを高レベルに両立することができる。
【0066】
エポキシ系架橋剤としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物を特に制限なく用いることができる。1分子中に3~5個のエポキシ基を有するエポキシ系架橋剤が好ましい。エポキシ系架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
特に限定するものではないが、エポキシ系架橋剤の具体例として、例えばN,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。エポキシ系架橋剤の市販品としては、三菱ガス化学社製の商品名「TETRAD-C」および商品名「TETRAD-X」、DIC社製の商品名「エピクロンCR-5L」、ナガセケムテックス社製の商品名「デナコールEX-512」、日産化学工業社製の商品名「TEPIC-G」等が挙げられる。
【0068】
エポキシ系架橋剤を用いる場合、その使用量は特に限定されず、例えばベースポリマー100重量部に対して3重量部以下とすることができる。被着体や基材に対する接着力、投錨力向上の観点から、ベースポリマー100重量部に対するエポキシ系架橋剤の量を1重量部以下とすることが好ましく、0.5重量部以下(典型的には0.2重量部以下、例えば0.1重量部以下、さらには0.05重量部以下)とすることがより好ましい。エポキシ系架橋剤の使用量を減らすことにより、耐落下衝撃性も向上する傾向がある。また、凝集力の向上効果を好適に発揮する観点から、ベースポリマー100重量部に対するエポキシ系架橋剤の量を0.001重量部以上(例えば0.005重量部以上)とすることができる。
【0069】
イソシアネート系架橋剤としては、多官能イソシアネート(1分子当たり平均2個以上のイソシアネート基を有する化合物をいい、イソシアヌレート構造を有するものを包含する。)が好ましく使用され得る。イソシアネート系架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
多官能イソシアネートの例として、脂肪族ポリイソシアネート類、脂環族ポリイソシアネート類、芳香族ポリイソシアネート類等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネート類の具体例としては、1,2-エチレンジイソシアネート;1,2-テトラメチレンジイソシアネート、1,3-テトラメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート等のテトラメチレンジイソシアネート;1,2-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,5-ヘキサメチレンジイソシアネート等のヘキサメチレンジイソシアネート;2-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、等が挙げられる。
【0071】
脂環族ポリイソシアネート類の具体例としては、イソホロンジイソシアネート;1,2-シクロヘキシルジイソシアネート、1,3-シクロヘキシルジイソシアネート、1,4-シクロヘキシルジイソシアネート等のシクロヘキシルジイソシアネート;1,2-シクロペンチルジイソシアネート、1,3-シクロペンチルジイソシアネート等のシクロペンチルジイソシアネート;水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、等が挙げられる。
【0072】
芳香族ポリイソシアネート類の具体例としては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、キシリレン-1,4-ジイソシアネート、キシリレン-1,3-ジイソシアネート等が挙げられる。
【0073】
好ましい多官能イソシアネートとして、1分子当たり平均して3個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートが例示される。かかる3官能以上のイソシアネートは、2官能または3官能以上のイソシアネートの多量体(典型的には2量体または3量体)、誘導体(例えば、多価アルコールと2分子以上の多官能イソシアネートとの付加反応生成物)、重合物等であり得る。例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの2量体や3量体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(イソシアヌレート構造の3量体付加物)、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、等の多官能イソシアネートが挙げられる。かかる多官能イソシアネートの市販品としては、旭化成ケミカルズ社製の商品名「デュラネートTPA-100」、日本ポリウレタン工業社製の商品名「コロネートL」、同「コロネートHL」、同「コロネートHK」、同「コロネートHX」、同「コロネート2096」等が挙げられる。
【0074】
イソシアネート系架橋剤を用いる場合、その使用量は特に限定されず、例えばベースポリマー100重量部に対して0重量部を超えて凡そ10重量部以下(典型的には0.01~10重量部)とすることができる。凝集力と密着性との両立や、凝集力と油脂成分浸入防止との両立、耐落下衝撃性等の観点から、ベースポリマー100重量部に対するイソシアネート系架橋剤の量は、好ましくは凡そ0.5重量部以上、より好ましくは凡そ1重量部以上、さらに好ましくは凡そ1.5重量部以上(例えば凡そ2.5重量部以上、さらには凡そ3.5重量部以上)である。また、同様の観点から、ベースポリマー100重量部に対するイソシアネート系架橋剤の量を凡そ8重量部以下とすることが好ましく、凡そ6重量部以下とすることがより好ましく、凡そ5重量部以下がさらに好ましく、凡そ4重量部以下が特に好ましい。
【0075】
ここに開示される技術は、エポキシ系架橋剤とイソシアネート系架橋剤とを併用する態様で好ましく実施される。かかる態様において、エポキシ系架橋剤の含有量とイソシアネート系架橋剤の含有量との関係は特に限定されない。エポキシ系架橋剤の含有量は、例えば、イソシアネート系架橋剤の含有量の凡そ1/50以下とすることができる。被着体や基材に対する密着性と凝集力とをより好適に両立する観点から、エポキシ系架橋剤の含有量は、イソシアネート系架橋剤の含有量の凡そ1/75以下とすることが適当であり、凡そ1/100以下(例えば1/150以下)とすることが好ましい。また、エポキシ系架橋剤とイソシアネート系架橋剤とを組み合わせて用いることによる効果を好適に発揮する観点から、通常、エポキシ系架橋剤の含有量は、イソシアネート系架橋剤の含有量の凡そ1/1000以上、例えば凡そ1/500以上とすることが適当である。
【0076】
架橋剤の総使用量は特に制限されず、例えば、ベースポリマー100重量部に対して凡そ0.005重量部以上(例えば0.01重量部以上、典型的には0.1重量部以上)程度、凡そ10重量部以下(例えば凡そ8重量部以下、好ましくは凡そ5重量部以下)程度の範囲から選択することができる。
【0077】
(その他の添加剤)
粘着剤組成物には、上述した各成分以外に、必要に応じてレベリング剤、架橋助剤、可塑剤、軟化剤、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の、粘着剤の分野において一般的な各種の添加剤が含まれていてもよい。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
【0078】
ここに開示される粘着剤層(粘着剤からなる層)は、水系粘着剤組成物、溶剤型粘着剤組成物、ホットメルト型粘着剤組成物、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物から形成された粘着剤層であり得る。水系粘着剤組成物とは、水を主成分とする溶媒(水系溶媒)中に粘着剤(粘着剤層形成成分)を含む形態の粘着剤組成物のことをいい、典型的には、水分散型粘着剤組成物(粘着剤の少なくとも一部が水に分散した形態の組成物)等と称されるものが含まれる。また、溶剤型粘着剤組成物とは、有機溶媒中に粘着剤を含む形態の粘着剤組成物のことをいう。ここに開示される技術は、粘着特性等の観点から、溶剤型粘着剤組成物から形成された粘着剤層を備える態様で好ましく実施され得る。
【0079】
ここに開示される粘着剤層は、従来公知の方法によって形成することができる。例えば、剥離性を有する表面(剥離面)または非剥離性の表面に粘着剤組成物を付与して乾燥させることにより粘着剤層を形成する方法を採用することができる。基材を有する構成の粘着シートでは、例えば、該基材に粘着剤組成物を直接付与(典型的には塗布)して乾燥させることにより粘着剤層を形成する方法(直接法)を採用することができる。また、剥離性を有する表面(剥離面)に粘着剤組成物を付与して乾燥させることにより該表面上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層を基材に転写する方法(転写法)を採用してもよい。生産性の観点から、転写法が好ましい。上記剥離面としては、剥離ライナーの表面や、剥離処理された基材背面等を利用し得る。なお、ここに開示される粘着剤層は典型的には連続的に形成されるが、このような形態に限定されるものではなく、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。
【0080】
粘着剤組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、ダイコーター、バーコーター等の、従来公知のコーターを用いて行うことができる。あるいは、含浸やカーテンコート法等により粘着剤組成物を塗布してもよい。
架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、粘着剤組成物の乾燥は加熱下で行うことが好ましい。乾燥温度は、例えば40~150℃程度とすることができ、通常は60~130℃程度とすることが好ましい。粘着剤組成物を乾燥させた後、さらに、粘着剤層内における成分移行の調整、架橋反応の進行、粘着剤層内に存在し得る歪の緩和等を目的としてエージングを行ってもよい。
【0081】
特に限定されるものではないが、ここに開示される粘着シートを構成する粘着剤層のTgは、凡そ25℃以下に制御されていることが、被着体との密着性および当該密着性に基づく油脂成分浸入防止性の観点から適当である。上記Tgを有する粘着剤層は耐落下衝撃性にも優れる傾向がある。粘着剤層のTgは、好ましくは凡そ20℃以下(典型的には凡そ15℃以下、例えば凡そ10℃以下)である。また、粘着剤層のTgは、加工性等の観点から、凡そ-25℃以上であることが適当であり、好ましくは凡そ-15℃以上、より好ましくは凡そ-10℃以上(例えば凡そ-5℃以上)であり、凡そ0℃以上(例えば凡そ5℃以上)であってもよい。ここに開示される技術によると、上記Tgを有して所望の粘着特性(例えば接着力や耐落下衝撃性)を発揮し得る粘着剤において、改善された耐油脂性(典型的には耐油脂接着信頼性)を実現することができる。粘着付与樹脂種(典型的には高水酸基価樹脂)の選択で耐油脂性を向上させる態様においては、上記範囲のTgとすることで、粘着剤の粘弾性特性および粘着付与樹脂の化学特性に基づく耐油脂性向上作用が好ましく発揮され得る。なお、本明細書における粘着剤層のTgとは、動的粘弾性測定におけるtanδのピーク温度から求められるガラス転移温度をいう。粘着剤層のTgは、粘着剤組成(例えばベースポリマーのTg、粘着付与樹脂の軟化点、架橋剤種、それら成分の含有割合)や製造方法(ポリマーの重合条件等)によって調節することができる。
【0082】
粘着剤層のtanδのピークにおける値(ピーク強度)は、典型的には1.0以上であり、好ましくは凡そ1.5以上、より好ましくは凡そ1.8以上、さらに好ましくは凡そ2.0以上である。比較的低温域(典型的には-25℃~25℃の範囲)にtanδのピークを有する粘着剤において、所定値以上のピーク強度を有するものは、耐落下衝撃性に優れたものとなり得る。また、上記tanδのピーク強度は、通常、凡そ3.0以下が適当であり、好ましくは凡そ2.5以下であり、凡そ2.2未満(例えば2.0未満)であってもよい。ここに開示される技術は、上記tanδのピーク強度を有して所望の粘着特性(例えば耐落下衝撃性)を発揮し得る粘着剤において、改善された耐油脂性(典型的には耐油脂接着信頼性)を実現することができる。粘着剤層のtanδのピーク強度は、粘着剤組成(例えばベースポリマーのTg、粘着付与樹脂の軟化点、架橋剤種、それら成分の含有割合)や製造方法(ポリマーの重合条件等)によって調節することができる。
【0083】
ここに開示される粘着剤層の25℃貯蔵弾性率は特に限定されず、例えば凡そ1MPa以下であり得る。粘着剤層の25℃貯蔵弾性率は凡そ0.5MPa以下であってよく、好ましくは凡そ0.3MPa以下(例えば凡そ0.25MPa以下)である。粘着剤層の25℃貯蔵弾性率が低くなると、常温域において粘着剤層の柔軟性が高くなることから、被着体表面に粘着面を密接させやすい。このことは、被着体との界面への油脂成分浸入を防止するうえで有意義である。貯蔵弾性率が所定値以下に制限された粘着剤によると、良好な耐落下衝撃性が得られやすい。また、上記25℃貯蔵弾性率は凡そ0.01MPa以上であり得る。所定値以上の25℃貯蔵弾性率を示す粘着剤によると、常温域において適度な凝集性を有するので接着強度を高めやすい。粘着シートを細幅に加工する際の加工性向上等の観点からも有利となり得る。そのような観点から、上記25℃貯蔵弾性率は、凡そ0.02MPa以上であることが適当であり、好ましくは0.05MPa以上、より好ましくは凡そ0.1MPa以上、さらに好ましくは凡そ0.14MPa以上、特に好ましくは凡そ0.18MPa以上(例えば凡そ0.2MPa以上)である。ここに開示される技術によると、上記25℃貯蔵弾性率を有して所望の粘着特性(例えば接着力や耐落下衝撃性)を発揮し得る粘着剤において、改善された耐油脂性(典型的には耐油脂接着信頼性)を実現することができる。粘着剤層の25℃貯蔵弾性率は、粘着剤層の組成や製造方法等により調節することができる。
【0084】
ここに開示される粘着剤層の25℃損失弾性率は特に限定されず、例えば凡そ0.01MPa以上であり得る。粘着剤層の25℃損失弾性率は凡そ0.02MPa以上であることが適当であり、好ましくは0.05MPa以上、より好ましくは凡そ0.1MPa以上、さらに好ましくは凡そ0.15MPa以上、特に好ましくは凡そ0.17MPa以上(例えば凡そ0.2MPa以上)である。所定値以上の25℃損失弾性率を示す粘着剤によると、その粘性項(損失弾性率)に基づき被着体への密着性が向上する。粘着剤層の25℃損失弾性率が高くなると耐落下衝撃性も向上する傾向がある。また、粘着剤層の25℃損失弾性率は、例えば凡そ1MPa以下であり得る。凝集性や加工性等の観点から、粘着剤層の25℃損失弾性率は凡そ0.5MPa以下であってよく、好ましくは凡そ0.3MPa以下(例えば凡そ0.25MPa以下)である。ここに開示される技術によると、上記25℃損失弾性率を有して所望の粘着特性(例えば接着力や耐落下衝撃性)を発揮し得る粘着剤において、改善された耐油脂性(典型的には耐油脂接着信頼性)を実現することができる。粘着剤層の25℃損失弾性率は、粘着剤層の組成や製造方法等により調節することができる。
【0085】
なお、粘着剤層のTg(tanδのピーク温度)や、tanδ(G”/G’)ピークにおけるピーク強度、25℃貯蔵弾性率(G’(25℃))および25℃損失弾性率(G”(25℃))は動的粘弾性測定により得られる。具体的な測定装置としては、ティー・エー・インスツルメント社製の機種名「ARES」またはその相当品を使用することができる。具体的な測定操作および測定条件は、後述する実施例に記載の測定条件に従って、または該測定条件に従う場合と同等もしくは対応する結果が得られるように設定することができる。
【0086】
粘着剤層の厚さは特に制限されない。粘着シートが過度に厚くなることを避ける観点から、粘着剤層の厚さは、通常、凡そ100μm以下が適当であり、好ましくは凡そ70μm以下、より好ましくは凡そ60μm以下、さらに好ましくは凡そ50μm以下である。一般に、粘着剤層の厚さが小さくなると、被着体に対する密着性は低下し、該被着体との界面からの油脂成分浸入が起こりやすくなる傾向にある。したがって、ここに開示される技術を適用して耐油脂性を向上することが特に有意義である。粘着剤層の厚さの下限は特に制限されないが、被着体に対する密着性の観点からは、凡そ3μm以上とすることが有利であり、好ましくは凡そ10μm以上、より好ましくは凡そ20μm以上(例えば凡そ30μm以上)である。ここに開示される粘着シートは、両面粘着シートとして構成する場合には、上記厚さの粘着剤層を基材の両面に有する粘着シートであり得る。また、基材の各面に第1粘着剤層と第2粘着剤層とをそれぞれ有する基材付き両面粘着シートにおいては、第1粘着剤層と第2粘着剤層とは同一の厚さであってもよく、相互に異なる厚さであってもよい。
【0087】
<発泡体基材>
ここに開示される粘着シートは発泡体基材を備える。具体的には、上記粘着シートは、発泡体基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を有する粘着シートとして構成されている。ここに開示される技術において、発泡体基材とは、気泡(気泡構造)を有する部分を備えた基材であって、典型的には、層状の発泡体(発泡体層)を少なくとも1層含む基材をいう。上記発泡体基材は、1層または2層以上の発泡体層により構成された基材であり得る。上記発泡体基材は、例えば、1層または2層以上の発泡体層のみにより実質的に構成された基材であり得る。特に限定するものではないが、ここに開示される技術における発泡体基材の一好適例として、単層(1層)の発泡体層からなる発泡体基材が挙げられる。発泡体基材を用いることで、基材レスや樹脂フィルム基材を用いた構成と比べて優れた耐油脂性が得られる。その理由としては、特に限定的に解釈されるものではないが、発泡体基材使用による被着体界面との密着性向上や、発泡体基材自身のシール性、バルクとしての接着界面への油脂成分浸入低減等が考えられる。
【0088】
発泡体基材の密度D(見掛け密度をいう。以下、特記しない場合において同じ。)は特に限定されず、例えば凡そ0.1~0.9g/cmであり得る。油脂成分を吸収して接着界面への油脂成分浸入量を低減する観点から、発泡体基材の密度Dは、凡そ0.8g/cm以下が適当であり、凡そ0.7g/cm以下(例えば凡そ0.6g/cm以下)が好ましい。一態様において、発泡体基材の密度Dは、0.5g/cm未満であってよく、0.4g/cm未満であってもよい。また、発泡体基材自身のシール性に基づき耐油脂性を高める観点から、発泡体基材の密度Dは、凡そ0.12g/cm以上が好ましく、凡そ0.15g/cm以上がより好ましく、凡そ0.2g/cm以上(例えば凡そ0.3g/cm以上)がさらに好ましい。一態様において、発泡体基材の密度Dは、凡そ0.4g/cm以上であってよく、凡そ0.5g/cm以上(例えば0.5g/cm超)であってもよく、さらには0.55g/cm以上であってもよい。上記範囲の密度を有する発泡体基材は、耐落下衝撃性にも優れる傾向がある。なお、発泡体基材の密度D(見掛け密度)はJIS K 6767に準拠して測定することができる。
【0089】
発泡体基材の平均気泡径は特に限定されないが、細幅化による性能低下を抑制する観点からは、凡そ300μm以下が好ましく、凡そ200μm以下がより好ましく、凡そ150μm以下がさらに好ましい。より高性能な防油脂性や防水性、防塵性を発揮する観点からは、発泡体基材の平均気泡径は、凡そ120μm以下であることが好ましく、凡そ100μm以下(典型的には凡そ90μm以下、例えば凡そ80μm以下、さらには凡そ70μm以下)がより好ましい。平均気泡径の下限は特に限定されないが、油脂成分を吸収して接着界面への油脂成分浸入量を低減する観点から、通常は凡そ10μm以上が適当であり、凡そ20μm以上が好ましく、凡そ30μm以上がより好ましく、凡そ40μm以上(例えば凡そ50μm以上)がさらに好ましい。一態様において、平均気泡径は、55μm以上であってよく、60μm以上であってもよい。平均気泡径を大きくすることにより、耐落下衝撃性も向上する傾向がある。なお、ここでいう平均気泡径は、発泡体基材の断面を電子顕微鏡で観察して得られる、真球換算の平均気泡径をいう。
【0090】
発泡体基材に含まれる気泡は、該発泡体基材の平面視において比較的円に近い形状であることが好ましい。すなわち、発泡体基材の流れ方向(以下「MD」ともいう。)の平均気泡径と幅方向(以下「CD」ともいう。)の平均気泡径とが異なりすぎないことが好ましい。上記気泡の形状の円形状からの隔たりの程度は、該発泡体基材のCDについての平均気泡径(CD平均気泡径)に対するMDについての平均気泡径(MD平均気泡径)の比、すなわち下記式で表される「アスペクト比(MD/CD)」を指標として把握され得る。このアスペクト比(MD/CD)がより1に近ければ、発泡体基材に含まれる気泡の平面視における形状がより円に近いといえる。
アスペクト比(MD/CD)=MD平均気泡径/CD平均気泡径
【0091】
ここに開示される技術の一態様において、発泡体基材に含まれる気泡のアスペクト比(MD/CD)は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.75以上、さらに好ましくは0.8以上であり、例えば0.85以上であり得る。一態様において、アスペクト比は、0.9以上であってよく、0.95以上(例えば凡そ1.0以上)であってもよい。また、上記アスペクト比(MD/CD)は、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.25以下、さらに好ましくは1.2以下であり、例えば1.15以下であり得る。上記アスペクト比(MD/CD)が1より小さすぎないことにより、上記発泡体基材を用いた粘着シートの取扱性が向上し得る。また、上記アスペクト比(MD/CD)が1より大きすぎないことにより、上記発泡体基材を用いた粘着シートの防油脂性や防水性、防塵性が向上し得る。後述するように細幅部を有する形態(特に、細幅部を有する環状部材の形態)で利用され得る粘着シートを構成する発泡体基材では、上記アスペクト比(MD/CD)が1に近いことが特に有意義である。
【0092】
ここで、発泡体基材のMDとは、該発泡体基材の製造工程における押出方向を指す。特に限定するものではないが、テープ状等の長尺状の発泡体基材におけるMDは、通常、その長尺方向に一致する。また、発泡体基材のCDとは、該発泡体基材のMDに直交し、かつ該発泡体基材の表面に沿う方向を指す。この発泡体基材の厚さ方向(以下「VD」ともいう。)は、上記MDと上記CDのいずれとも直交する方向となる。
【0093】
発泡体基材のMD平均気泡径は、以下のようにして測定される。すなわち、上記発泡体基材を、そのCDにおけるほぼ中央部において、MDおよびVDに平行する平面(すなわち垂線の向きがCDと一致するような平面)に沿って切断し、その切断面の中央部を走査型電子顕微鏡(SEM)にて撮影する。撮影した画像をA4サイズの用紙に印刷し、画像上にMDに平行する長さ60mmの直線を一本、描く。このとき、60mmの直線上に気泡が10~20個程度存在するようにSEMの拡大倍率を調整する。上記直線上に存在する気泡数を目視により数え、下記の式によりMD平均気泡径を算出する。
MD平均気泡径(μm)=60(mm)×10/(気泡数(個)×拡大倍率)
【0094】
発泡体基材のCD平均気泡径は、以下のようにして測定される。すなわち、上記発泡体基材を、そのCDおよびVDに平行する平面(すなわち垂線の向きがMDと一致するような平面)に沿って切断し、その切断面の中央部をSEMにて撮影する。撮影した画像をA4サイズの用紙に印刷し、画像上にCDに平行する長さ60mmの直線を一本、描く。このとき、60mmの直線上に気泡が10~20個程度存在するようにSEMの拡大倍率を調整する。上記直線上に存在する気泡数を目視により数え、下記の式によりCD平均気泡径を算出する。
CD平均気泡径(μm)=60(mm)×10/(気泡数(個)×拡大倍率)
【0095】
なお、直線を描くにあたっては、できるだけ直線が気泡に点接触することなく貫通した状態となるようにする。一部の気泡が直線に点接触してしまう場合には、この気泡を1個として数える。さらに、直線の両端部が気泡を貫通することなく、気泡内に位置した状態となる場合には、この気泡を0.5個として数える。
【0096】
発泡体基材の各方向の平均気泡径は、例えば、該発泡体基材の組成(発泡剤の使用量等)や製造条件(発泡工程、延伸工程等における条件)を調整することにより制御することができる。
【0097】
ここに開示される技術における発泡体基材としては、10%圧縮強度C10[kPa]と30%圧縮強度C30[kPa]との関係が次式:(C30/C10)≦5.0;を満たすものを好ましく採用することができる。ここで、発泡体基材の10%圧縮強度は、該発泡体基材を30mm角の正方形状にカットしたものを積み重ねて約2mmの厚さとした測定試料を一対の平板で挟み、それを当初の厚さの10%に相当する厚さ分だけ圧縮したときの荷重(圧縮率10%における荷重)をいう。すなわち、上記測定試料を当初の厚さの90%に相当する厚さまで圧縮したときの荷重をいう。30%圧縮強度C30[kPa]および後述する25%圧縮強度C25[kPa]についても同様に、測定試料を当初の厚さの30%または25%に相当する厚さ分だけ圧縮したときの荷重をいう。
発泡体基材の任意の圧縮率における圧縮強度は、JIS K 6767に準拠して測定される。具体的な測定手順としては、上記一対の平板の中央部に上記測定試料をセットし、上記平板の間隔を狭めることで連続的に任意の圧縮率まで圧縮し、そこで平板を停止させて10秒経過後の荷重を測定する。発泡体基材の圧縮強度は、例えば、発泡体基材を構成する材料の架橋度や密度、気泡のサイズや形状等により制御することができる。
【0098】
圧縮強度比(C30/C10)が小さいということは、圧縮の程度の違いが圧縮強度に及ぼす影響が小さいことを意味する。例えば、粘着シートによる接合面に段差やキズ等の凹凸がある場合や、粘着シートの幅が部分的に異なっている場合、あるいは粘着シートによる接合部の一部が他部よりも大きな応力を受けた場合等において、粘着シートの一部が他部よりも大きく圧縮されることがあり得る。粘着シートを細幅化すると、上記段差や部分的な幅の違い等による圧縮の程度の違いはより顕著になる傾向にある。圧縮の程度の違いによる圧縮強度の違いが大きすぎると、圧縮の程度が変化する部分に歪が集中し、当該部分が粘着シートの剥がれや発泡体基材の損傷の起点となることがあり得る。(C30/C10)が小さい発泡体基材を用いた粘着シートは、上記圧縮の程度の違いに起因する圧縮強度の違いが小さいことから、上記剥がれや発泡体基材の損傷が生じにくい。このことは耐落下衝撃性向上の観点から有利となり得る。より良好な効果を得る観点から、(C30/C10)は、4.5以下であることがより好ましく、4.0以下であることがさらに好ましい。(C30/C10)は3.5以下であってもよい。(C30/C10)の下限は特に限定されないが、例えば2.5以上が適当であり、3.0以上であってもよい。
【0099】
発泡体基材の25%圧縮強度C25は特に限定されず、例えば20kPa以上(典型的には40kPa以上)であり得る。C25は、通常、250kPa以上が適当であり、300kPa以上(例えば400kPa以上)が好ましい。このような発泡体基材を備える粘着シートは、細幅であっても、落下等の衝撃に対して良好な耐久性を発揮するものとなり得る。例えば、衝撃による粘着シートの千切れがよりよく防止されたものとなり得る。C25の上限は特に制限されないが、通常は1300kPa以下(例えば1200kPa以下)が適当である。一態様において、C25は、1000kPa以下であってもよく、800kPa以下であってもよく、さらには600kPa以下(例えば500kPa以下)であってもよい。C25[kPa]と見掛け密度D[g/cm]との関係が次式:150≦C25×D≦400(例えば200≦C25×D≦350、好ましくは240≦C25×D≦300);を満たす発泡体基材を備える粘着シートによると、より良好な結果が実現され得る。
【0100】
好ましい他の一態様において、発泡体基材のC25は、20kPa~200kPa(典型的には30kPa~150kPa、例えば40kPa~120kPa)とすることができる。このような発泡体基材を備える粘着シートは、密度の割に圧縮強度が低いことから、細幅であってもクッション性に優れたものとなり得る。例えば、落下衝撃を発泡体基材が吸収することにより、粘着シートの剥がれがよりよく防止され得る。C25[kPa]と見掛け密度D[g/cm]との関係が次式:100≦C25/D≦400(例えば150≦C25/D≦350、好ましくは200≦C25/D≦300);を満たす発泡体基材を備える粘着シートによると、より良好な結果が実現され得る。
【0101】
発泡体基材の引張伸度は特に限定されない。例えば、流れ方向(MD)の引張伸度が200%~800%(より好ましくは400%~600%)である発泡体基材を好適に採用し得る。また、幅方向(TD)の引張伸度が50%~800%(より好ましくは200%~500%)である発泡体基材が好ましい。発泡体基材の伸びは、JIS K 6767に準拠して測定される。発泡体基材の伸びは、例えば、架橋度や見掛け密度(発泡倍率)等により制御することができる。
【0102】
発泡体基材の引張強さ(引張強度)は特に限定されない。例えば、流れ方向(MD)の引張強さが5MPa~35MPa(好ましくは10MPa~30MPa)である発泡体基材を好適に採用し得る。また、幅方向(TD)の引張強さが1MPa~25MPa(より好ましくは5MPa~20MPa)である発泡体基材が好ましい。発泡体基材の引張強さは、JIS K 6767に準拠して測定される。発泡体基材の引張強さは、例えば、架橋度や見掛け密度(発泡倍率)等により制御することができる。
【0103】
発泡体基材の材質は特に制限されない。通常は、プラスチック材料の発泡体(プラスチック発泡体)により形成された発泡体層を含む発泡体基材が好ましい。プラスチック発泡体を形成するためのプラスチック材料(ゴム材料を包含する意味である。)は、特に制限されず、公知のプラスチック材料のなかから適宜選択することができる。プラスチック材料は、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0104】
プラスチック発泡体の具体例としては、ポリエチレン製発泡体、ポリプロピレン製発泡体等のポリオレフィン系樹脂製発泡体;ポリエチレンテレフタレート製発泡体、ポリエチレンナフタレート製発泡体、ポリブチレンテレフタレート製発泡体等のポリエステル系樹脂製発泡体;ポリ塩化ビニル製発泡体等のポリ塩化ビニル系樹脂製発泡体;酢酸ビニル系樹脂製発泡体;ポリフェニレンスルフィド樹脂製発泡体;脂肪族ポリアミド(ナイロン)樹脂製発泡体、全芳香族ポリアミド(アラミド)樹脂製発泡体等のアミド系樹脂製発泡体;ポリイミド系樹脂製発泡体;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)製発泡体;ポリスチレン製発泡体等のスチレン系樹脂製発泡体;ポリウレタン樹脂製発泡体等のウレタン系樹脂製発泡体;等が挙げられる。また、プラスチック発泡体として、ポリクロロプレンゴム製発泡体等のゴム系樹脂製発泡体を用いてもよい。
【0105】
好ましい発泡体として、ポリオレフィン系樹脂製発泡体(以下「ポリオレフィン系発泡体」ともいう。)が例示される。ポリオレフィン系発泡体基材は、油脂成分との親和性が高く、油脂成分を良好に保持し得るので、接着界面への油脂成分の浸入を効果的に低減し得る。ポリオレフィン系発泡体を構成するプラスチック材料(すなわちポリオレフィン系樹脂)としては、公知または慣用の各種ポリオレフィン系樹脂を特に限定なく用いることができる。例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。LLDPEの例としては、チーグラー・ナッタ触媒系直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒系直鎖状低密度ポリエチレン等が挙げられる。このようなポリオレフィン系樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0106】
ここに開示される技術における発泡体基材の好適例としては、油脂成分吸収性や防水性、防塵性、耐落下衝撃性等の観点から、ポリエチレン系樹脂の発泡体から実質的に構成されるポリエチレン系発泡体基材、ポリプロピレン系樹脂の発泡体から実質的に構成されるポリプロピレン系発泡体基材等のポリオレフィン系発泡体基材が挙げられる。ここでポリエチレン系樹脂とは、エチレンを主モノマー(すなわち、モノマーのなかの主成分)とする樹脂を指し、HDPE、LDPE、LLDPE等の他、エチレンの共重合割合が50重量%を超えるエチレン-プロピレン共重合体やエチレン-酢酸ビニル共重合体等を包含し得る。同様に、ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンを主モノマーとする樹脂を指す。ここに開示される技術における発泡体基材としては、ポリエチレン系発泡体基材を好ましく採用し得る。
【0107】
上記プラスチック発泡体(典型的にはポリオレフィン系発泡体)の製造方法は特に限定されず、公知の各種方法を適宜採用し得る。例えば、上記プラスチック材料、もしくは上記プラスチック発泡体の成形工程、架橋工程および発泡工程を含む方法により製造し得る。また、必要に応じて延伸工程を含み得る。
上記プラスチック発泡体を架橋させる方法としては、例えば、有機過酸化物などを用いる化学架橋法、または電離性放射線を照射する電離性放射線架橋法などが挙げられ、これらの方法は併用され得る。上記電離性放射線としては、電子線、α線、β線、γ線などが例示される。電離性放射線の線量は特に限定されず、発泡体基材の目標物性(例えば架橋度)等を考慮して適切な照射線量に設定することができる。
【0108】
上記発泡体基材には、必要に応じて、充填剤(無機充填剤、有機充填剤等)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、難燃剤、界面活性剤等の各種添加剤が配合されていてもよい。
【0109】
ここに開示される技術における発泡体基材は、該発泡体基材を備える粘着シートにおいて所望の意匠性や光学特性(例えば、遮光性、光反射性等)を発現させるために、着色されていてもよい。この着色には、公知の有機または無機の着色剤を、1種を単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0110】
例えば、ここに開示される粘着シートを遮光用途に用いる場合、発泡体基材の可視光透過率は、特に限定されないが、後述の粘着シートの可視光透過率と同様に、0%~15%であることが好ましく、より好ましくは0%~10%である。また、ここに開示される粘着シートを光反射用途に用いる場合、発泡体基材の可視光反射率は、粘着シートの可視光反射率と同様に、20%~100%が好ましく、より好ましくは25%~100%である。
【0111】
発泡体基材の可視光透過率は、分光光度計(例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計、型式「U-4100」)を用いて、波長550nmにおいて、発泡体基材の一方の面側から照射して他方の面側に透過した光の強度を測定することにより求めることができる。発泡体基材の可視光反射率は、上記分光光度計を用いて、波長550nmにおいて、発泡体基材の一方の面に照射して反射した光の強度を測定することにより求めることができる。なお、粘着シートの可視光透過率や可視光反射率も、同様の方法により求めることができる。
【0112】
ここに開示される粘着シートを遮光用途に用いる場合、上記発泡体基材は黒色に着色されていることが好ましい。黒色としては、L*a*b*表色系で規定されるL*(明度)で、35以下(例えば、0~35)が好ましく、より好ましくは30以下(例えば、0~30)である。なお、L*a*b*表色系で規定されるa*やb*は、それぞれ、L*の値に応じて適宜選択することができる。a*やb*としては、特に限定されないが、両方とも-10~10(より好ましくは-5~5、さらに好ましくは-2.5~2.5)の範囲であることが好ましい。例えば、a*およびb*がいずれも0または略0であることが好ましい。
【0113】
なお、本明細書において、L*a*b*表色系で規定されるL*、a*、b*は、色彩色差計(例えば、ミノルタ社製の色彩色差計、商品名「CR-200」)を用いて測定することにより求められる。なお、L*a*b*表色系は、国際照明委員会(CIE)が1976年に推奨した色空間であり、CIE1976(L*a*b*)表色系と称される色空間のことを意味している。また、L*a*b*表色系は、日本工業規格では、JIS Z 8729に規定されている。
【0114】
発泡体基材を黒色に着色する際に用いられる黒色着色剤としては、例えば、カーボンブラック(ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等)、グラファイト、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、ペリレンブラック、チタンブラック、シアニンブラック、活性炭、フェライト(非磁性フェライト、磁性フェライト等)、マグネタイト、酸化クロム、酸化鉄、二硫化モリブデン、クロム錯体、複合酸化物系黒色色素、アントラキノン系有機黒色色素等を用いることができる。コストや入手性の観点から好ましい黒色着色剤として、カーボンブラックが例示される。黒色着色剤の使用量は特に限定されず、所望の光学特性を付与できるように適宜調整した量とすることができる。
【0115】
ここに開示される粘着シートを光反射用途に用いる場合、上記発泡体基材は白色に着色されていることが好ましい。白色としては、L*a*b*表色系で規定されるL*(明度)で、87以上(例えば、87~100)が好ましく、より好ましくは90以上(例えば、90~100)である。L*a*b*表色系で規定されるa*やb*は、それぞれ、L*の値に応じて適宜選択することができる。a*やb*としては、例えば、両方とも-10~10(より好ましくは-5~5、さらに好ましくは-2.5~2.5)の範囲であることが好ましい。例えば、a*およびb*がいずれも0または略0であることが好ましい。
【0116】
発泡体基材を白色に着色する際に用いられる白色着色剤としては、例えば、酸化チタン(ルチル型二酸化チタン、アナターゼ型二酸化チタン等の二酸化チタン)、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化スズ、酸化バリウム、酸化セシウム、酸化イットリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム等)、炭酸バリウム、炭酸亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、亜鉛華、硫化亜鉛、タルク、シリカ、アルミナ、クレー、カオリン、燐酸チタン、マイカ、石膏、ホワイトカーボン、珪藻土、ベントナイト、リトポン、ゼオライト、セリサイト、加水ハロイサイト等の無機系白色着色剤や、アクリル系樹脂粒子、ポリスチレン系樹脂粒子、ポリウレタン系樹脂粒子、アミド系樹脂粒子、ポリカーボネート系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子、尿素-ホルマリン系樹脂粒子、メラミン系樹脂粒子等の有機系白色着色剤等が挙げられる。白色着色剤の使用量は特に限定されず、所望の光学特性を付与できるように適宜調整した量とすることができる。
【0117】
発泡体基材の表面には、必要に応じて、適宜の表面処理が施されていてもよい。この表面処理は、例えば、隣接する材料(例えば粘着剤層)に対する密着性を高めるための化学的または物理的な処理であり得る。かかる表面処理の例としては、コロナ放電処理、クロム酸処理、オゾン曝露、火炎曝露、紫外線照射処理、プラズマ処理、下塗り剤(プライマー)の塗布等が挙げられる。
【0118】
発泡体基材の厚さは、特に限定されず、粘着シートの強度や柔軟性、使用目的等に応じて適宜設定することができる。接合部を薄型化する観点から、発泡体基材の厚さとしては、通常、凡そ0.70mm以下が適当であり、凡そ0.40mm以下が好ましく、凡そ0.30mm以下がより好ましい。ここに開示される技術は、粘着シートを細幅に加工する際の加工性等の観点から、発泡体基材の厚さが凡そ0.20mm以下(典型的には0.18mm以下、例えば0.16mm以下)である態様で好ましく実施され得る。また接着界面への油脂成分浸入量低減等の観点から、発泡体基材の厚さとしては、凡そ0.05mm以上が適当であり、凡そ0.06mm以上が好ましく、凡そ0.07mm以上(例えば凡そ0.08mm以上)がより好ましい。ここに開示される技術は、発泡体基材の厚さが凡そ0.10mm以上(典型的には0.10mm超、好ましくは0.12mm以上、例えば0.13mm以上)である態様で好ましく実施され得る。発泡体基材の厚さが大きくなると、耐落下衝撃性も改善し、より細幅の構成においても所望の耐落下衝撃性が発揮される傾向にある。
【0119】
<剥離ライナー>
ここに開示される技術において、粘着剤層の形成、粘着シートの作製、使用前の粘着シートの保存、流通、形状加工等の際に、剥離ライナーを用いることができる。剥離ライナーとしては、特に限定されず、例えば、樹脂フィルムや紙等のライナー基材の表面に剥離処理層を有する剥離ライナーや、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)の低接着性材料からなる剥離ライナー等を用いることができる。上記剥離処理層は、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により上記ライナー基材を表面処理して形成されたものであり得る。
【0120】
<粘着シートの総厚>
ここに開示される粘着シート(粘着剤層を含み、基材層をさらに含み得るが、剥離ライナーは含まない。)の総厚さは特に限定されない。粘着シートの総厚さは、例えば凡そ800μm以下とすることができ、携帯機器の薄型化の観点から、通常は凡そ500μm以下が適当であり、凡そ350μm以下(例えば凡そ300μm以下)が好ましい。ここに開示される技術は、総厚さが凡そ150μm以下(より好ましくは凡そ100μm以下、さらに好ましくは凡そ60μm未満、例えば凡そ50μm以下)の粘着シート(典型的には両面粘着シート)の形態でも実施され得る。粘着シートの厚さの下限は特に限定されないが、通常は凡そ60μm以上が適当であり、好ましくは凡そ100μm以上、より好ましくは凡そ150μm以上、さらに好ましくは凡そ180μm以上、特に好ましくは凡そ200μm以上(例えば凡そ220μm以上)である。
【0121】
<粘着シートの特性>
ここに開示される粘着シート(典型的には両面粘着シート)は、特に限定されるものではないが、0.5MPa以上の初期押圧接着力を示すことが適当である。このように初期押圧接着力の高い粘着シートは接着信頼性に優れる。例えば、部材の固定や接合において十分な接着力を発揮し得る。細幅化した該粘着シートと被着体とを貼り合わせる態様であっても、内部応力による剥がれが生じにくい。上記初期押圧接着力は、好ましくは凡そ0.7MPa以上、より好ましくは凡そ0.9MPa以上、さらに好ましくは凡そ1.0MPa以上、特に好ましくは凡そ1.2MPa以上(例えば1.3MPa以上)である。上記初期押圧接着力は後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0122】
また、ここに開示される粘着シート(典型的には両面粘着シート)は、特に限定されるものではないが、人工皮脂付与前の押圧接着力S1に対する人工皮脂付与から24時間後の押圧接着力S2の比で示される接着力維持率が25%以上であることが適当である。この特性を満足する粘着シートは、人工皮脂付与後も所定以上の接着力を有するので、油脂成分と接触しても良好な接着信頼性を示す。上記人工皮脂付与後の接着力維持率は、好ましくは凡そ40%以上、より好ましくは凡そ50%以上、さらに好ましくは凡そ60%以上、特に好ましくは凡そ70%以上(例えば凡そ75%以上、さらには凡そ80%以上)である。上記人工皮脂付与後の接着力維持率[%]は、式:S2/S1×100;から求められる。人工皮脂付与前の押圧接着力S1は、前述の初期押圧接着力[MPa]であり、上記人工皮脂付与から24時間後の押圧接着力S2は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0123】
ここに開示される粘着シートは、人工皮脂付与から24時間後の押圧接着力(人工皮脂付与後接着力)S2が凡そ0.3MPa以上(例えば凡そ0.4MPa以上)であることが適当である。この特性を満足する粘着シートは、人工皮脂付与後も所定以上の接着力を有するので、油脂成分に曝される環境で使用された場合においても良好な接着力を発揮し得る。上記人工皮脂付与後接着力は、好ましくは凡そ0.5MPa以上(例えば凡そ0.6MPa以上)、より好ましくは凡そ0.7MPa以上、さらに好ましくは凡そ0.8MPa以上、特に好ましくは凡そ1MPa以上(例えば凡そ1.1MPa以上)である。
【0124】
好ましい一態様に係る粘着シートは、180度剥離強度が凡そ10N/20mm以上である。このような粘着力を示す粘着シートは、被着体に対する密着性が高く、したがって粘着剤層と被着体との界面からの油脂成分の浸透を防止する性能に優れたものとなり得る。180度剥離強度は、より好ましくは凡そ15N/20mm以上、さらに好ましくは凡そ17N/20mm以上(例えば凡そ18N/25mm以上)である。被着体に対する密着性は高ければ高いほど良いという観点から、180度剥離強度の上限は特に制限されないが、通常は凡そ65N/20mm以下(典型的には凡そ55N/20mm以下、例えば凡そ40N/20mm以下)が適当である。上記180度剥離強度は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0125】
<用途>
ここに開示される粘着シートは、接着力や耐落下衝撃性等の粘着特性を損なわず、あるいはその向上が可能であり、かつ良好な耐油脂性を発揮し得る。このような特徴を活かして、上記粘着シートは、各種の携帯機器(ポータブル機器)において部材の固定に好ましく利用され得る。例えば、携帯電子機器における部材(各種配線を包含する。)の固定用途に好適である。上記携帯電子機器の非限定的な例には、携帯電話、スマートフォン、タブレット型パソコン、ノート型パソコン、各種ウェアラブル機器(例えば、腕時計のように手首に装着するリストウェア型、クリップやストラップ等で体の一部に装着するモジュラー型、メガネ型(単眼型や両眼型。ヘッドマウント型も含む。)を包含するアイウェア型、シャツや靴下、帽子等に例えばアクセサリの形態で取り付ける衣服型、イヤホンのように耳に取り付けるイヤウェア型等)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、音響機器(携帯音楽プレーヤー、ICレコーダー等)、計算機(電卓等)、携帯ゲーム機器、電子辞書、電子手帳、電子書籍、車載用情報機器、携帯ラジオ、携帯テレビ、携帯プリンター、携帯スキャナ、携帯モデム等が含まれる。携帯電子機器以外の携帯機器の非限定的な例には、機械式の腕時計や懐中時計、懐中電灯、手鏡、定期入れ等が含まれる。なお、この明細書において「携帯」とは、単に携帯することが可能であるだけでは充分ではなく、個人(標準的な成人)が相対的に容易に持ち運び可能なレベルの携帯性を有することを意味するものとする。
【0126】
特に好ましい一態様に係る粘着シートは、タッチパネル付き携帯電子機器の部材の接合や固定に用いられる。上記携帯電子機器は、表示部が入力部としても機能する表示部/入力部(典型的にはタッチパネル)を備え、その表示部/入力部の表面を使用者が指先で直接触れることによって操作されるため、皮脂や手垢等の分泌物、化粧品や整髪料、保湿クリーム、日焼け止め等の化学品、あるいは食品等に含まれる油脂成分が付着しやすい。そのような油脂成分との接触機会の多い携帯電子機器に対して、ここに開示される粘着シートによる耐油脂性は好ましく発揮され得る。
【0127】
ここに開示される粘着シート(典型的には両面粘着シート)は、種々の外形に加工された接合材の形態で、携帯機器を構成する部材の固定に利用され得る。特に好ましい用途として、携帯電子機器を構成する部材を固定する用途が挙げられる。なかでも液晶表示装置を有する携帯電子機器に好ましく使用され得る。例えば、このような携帯電子機器において、表示部(液晶表示装置の表示部であり得る。)または表示部保護部材と筐体とを接合する用途等に好適である。
【0128】
このような接合材の好ましい形態として、幅4.0mm以下(例えば2.0mm以下、典型的には2.0mm未満)の細幅部を有する形態が挙げられる。ここに開示される粘着シートは、このような細幅部を含む形状(例えば枠状)の接合材として用いられても、部材を良好に固定することができる。一態様において、上記細幅部の幅は、1.5mm以下であってもよく、1.0mm以下であってもよく、0.5mm程度またはそれ以下であってもよい。細幅部の幅の下限は特に制限されないが、粘着シートの取扱い性の観点から、通常は0.1mm以上(典型的には0.2mm以上)が適当である。
【0129】
上記細幅部は、典型的には線状である。ここで線状とは、直線状、曲線状、折線状(例えばL字型)等の他、枠状や円状等の環状や、これらの複合的または中間的な形状を包含する概念である。上記環状とは、曲線により構成されるものに限定されず、例えば四角形の外周に沿う形状(枠状)や扇型の外周に沿う形状のように、一部または全部が直線状に形成された環状を包含する概念である。上記細幅部の長さは特に限定されない。例えば、上記細幅部の長さが10mm以上(典型的には20mm以上、例えば30mm以上)である形態において、ここに開示される技術を適用することの効果が好適に発揮され得る。
【0130】
この明細書により開示される事項には以下のものが含まれる。
(1) 携帯電子機器であって、
表示部が入力部としても機能するタッチパネルを備え、
前記タッチパネルは、指先で直接触れることによって操作することが可能であり、
前記携帯電子機器を構成する部材(複数形)は、粘着シートを介して接合されており、
前記粘着シートは、発泡体基材と、該発泡体基材の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層と、を備えており、
前記粘着剤層は、ベースポリマーとしてのアクリル系ポリマーと、粘着付与樹脂と、を含み、
前記粘着付与樹脂は、水酸基価が70mgKOH/g以上の粘着付与樹脂を含む、携帯電子機器。
(2) 携帯電話である、上記(1)に記載の携帯電子機器。
(3) スマートフォンである、上記(1)に記載の携帯電子機器。
(4) タブレット型パソコンである、上記(1)に記載の携帯電子機器。
(5) ウェアラブル機器である、上記(1)に記載の携帯電子機器。
(6) デジタルカメラである、上記(1)に記載の携帯電子機器。
(7) 携帯音楽プレーヤーである、上記(1)に記載の携帯電子機器。
(8) 携帯ゲーム機器である、上記(1)に記載の携帯電子機器。
(9) 電子辞書である、上記(1)に記載の携帯電子機器。
(10) 電子書籍である、上記(1)に記載の携帯電子機器。
【0131】
(11) 発泡体基材と、該発泡体基材の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層と、を備える粘着シートであって、
前記粘着剤層は、ベースポリマーとしてのアクリル系ポリマーと、粘着付与樹脂と、を含み、
前記粘着付与樹脂は、水酸基価が70mgKOH/g以上の粘着付与樹脂を含む、粘着シート。
(12) 前記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、エステル末端に炭素原子数1~6のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを50重量%よりも多く含む、上記(11)に記載の粘着シート。
(13) 前記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、カルボキシ基含有モノマーを含む、上記(11)または(12)に記載の粘着シート。
(14) 前記モノマー成分における前記カルボキシ基含有モノマーの量は1~10重量%である、上記(13)に記載の粘着シート。
(15) 前記粘着剤層を形成するための粘着剤組成物はイソシアネート系架橋剤を含む、上記(11)~(14)のいずれかに記載の粘着シート。
(16) 前記粘着付与樹脂はフェノール系粘着付与樹脂を含む、上記(11)~(15)のいずれかに記載の粘着シート。
(17) 前記粘着剤層における前記粘着付与樹脂の含有量は、前記ベースポリマー100重量部に対して10重量部以上60重量部以下である、上記(11)~(16)のいずれかに記載の粘着シート。
(18) 前記粘着剤層は、tanδのピーク温度から求められるガラス転移温度が-25℃以上25℃以下の範囲にある、上記(11)~(17)のいずれかに記載の粘着シート。
(19) 前記発泡体基材はポリオレフィン系発泡体基材である、上記(11)~(18)のいずれかに記載の粘着シート。
【0132】
(20) 初期押圧接着力が0.5MPa以上である、上記(11)~(19)のいずれかに記載の粘着シート。
(21) 人工皮脂付与前の押圧接着力に対する人工皮脂付与から24時間後の押圧接着力の比で示される接着力維持率が25%以上である、上記(11)~(20)のいずれかに記載の粘着シート。
(22) 初期押圧接着力が1MPa以上であり、人工皮脂付与前の押圧接着力に対する人工皮脂付与から24時間後の押圧接着力の比で示される接着力維持率が50%以上である、上記(11)~(21)のいずれかに記載の粘着シート。
(23) 前記粘着剤層は、水酸基価が120mgKOH/g以上の粘着付与樹脂を含む、上記(11)~(22)のいずれかに記載の粘着シート。
(24) 180度剥離強度が15N/20mm以上である、上記(11)~(23)のいずれかに記載の粘着シート。
【0133】
(25) 前記発泡体基材の密度は0.1~0.9g/cmである、上記(11)~(24)のいずれかに記載の粘着シート。
(26) 前記発泡体基材の平均気泡径は10~200μmである、上記(11)~(25)のいずれかに記載の粘着シート。
(27) 前記発泡体基材の厚さは0.05~0.70mmである、上記(11)~(26)のいずれかに記載の粘着シート。
【0134】
(28) 携帯電子機器の部品を接合するために用いられる、上記(11)~(27)のいずれかに記載の粘着シート。
(29) 上記(11)~(27)のいずれかに記載の粘着シートと、該粘着シートによって接合された部品と、を備える携帯機器。
【実施例
【0135】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
【0136】
≪評価方法≫
[初期押圧接着力]
(1)評価用サンプルの作製
両面粘着シートを、図2に示すような横20mm、縦20mm、幅2mmの窓枠状(額縁状)にカットして、窓枠状両面粘着シート102を得る。この窓枠状両面粘着シート102を用いて、横40mm、縦50mm、厚さ2mmのアクリル板(PMMA板)103と、中央部に直径12mmの貫通孔104を有するアルミニウム板(横50mm、縦60mm、厚さ2mm)101とを、所定の荷重(5kg×10秒)で圧着することにより貼り合わせて、評価用サンプル100を得る。
(2)押圧接着力の測定
上記で得た評価用サンプルにつき、下記の方法で押圧接着力を測定する。すなわち、図3に示すように、アルミニウム板101と窓枠状両面粘着シート102とアクリル板103とが貼りあわされた積層体である評価用サンプル100を支持体125に固定し、それを万能引張圧縮試験機(装置名「引張圧縮試験機、TG-1kN」、ミネベア社製)にセットする。そして、評価用サンプル100のアルミニウム板101の貫通孔104に丸棒120(接触面直径10mm)を通過させ、この丸棒120を10mm/分の速度で下降させることにより、アクリル板103をアルミニウム板101から離れる方向に押圧する。そして、アルミニウム板101とアクリル板103とが分離するまでの間に観測された最大応力[N]を測定し、単位接着面積[mm]当たりの押圧接着力[N/mm]を求める。これを初期押圧接着力[MPa]とする。なお、測定は23℃、50%RHの環境下で行うものとする。
【0137】
[人工皮脂付与後の押圧接着力]
(1)評価用サンプルの作製
上記初期押圧接着力の測定と同様にして評価用サンプルを作製する。
(2)人工皮脂付与
図4に示すように、評価用サンプル100をアルミニウム板101側が上面となるように載置し、インジェクター130を用いて、アルミニウム板101の貫通孔104から、0.01~0.03mLの人工皮脂140を窓枠状両面粘着シート102の接着領域に対して滴下する。このようにして人工皮脂140が付与された評価用サンプル100を、55℃、95%RHの環境下に24時間放置する。人工皮脂としては、トリオレイン33.3%、オレイン酸20.0%、スクワレン13.3%、ミリスチルオクタデシレート33.4%からなる組成物を用いる。
(3)押圧接着力の測定
上記人工皮脂付与から24時間後、人工皮脂140が付与された評価用サンプル100につき、上記初期押圧接着力と同様の方法で人工皮脂付与後の押圧接着力[MPa]を測定する。
【0138】
[180度剥離強度]
23℃、50%RHの測定環境下において、両面粘着シートの一方の粘着面に厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを貼り付けて裏打ちし、幅20mm、長さ100mmのサイズにカットして測定サンプルを作製する。23℃、50%RHの環境下にて、上記測定サンプルの他方の粘着面をステンレス鋼板(SUS304BA板)の表面に、2kgのローラを1往復させて圧着する。これを同環境下に30分間放置した後、万能引張圧縮試験機を使用して、JIS Z 0237:2000に準じて、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で、剥離強度[N/20mm]を測定する。万能引張圧縮試験機としては、ミネベア社製の「引張圧縮試験機、TG-1kN」またはその相当品が用いられる。なお、片面粘着シートの場合、上記PETフィルムの裏打ちは不要である。
【0139】
[耐落下衝撃性評価試験]
両面粘着シートを、図5(a),(b)に示すような横59mm、縦113mm、幅1.0mmの窓枠状(額縁状)にカットして、窓枠状両面粘着シートを得る。この窓枠状両面粘着シートを用いて、ポリカーボネート板(横70mm、縦130mm、厚さ2mm)とガラス板(横59mm、縦113mm、厚さ0.5mm)とを50Nの荷重で10秒間圧着することにより貼り合わせて、評価用サンプルを得る。
図5(a),(b)は、上記評価用サンプルの概略図であって、(a)は上面図、(b)はそのB-B’断面図である。図5において、符号203は窓枠状の両面粘着シート、符号231はポリカーボネート板、符号232はガラス板を示している。
上記評価用サンプルのポリカーボネート板の背面(ガラス板と貼り合わされた面とは反対側の面)に、160gの錘を取り付ける。上記錘付きの評価用サンプルにつき、常温(23℃程度)において、1.2mの高さからコンクリート板に6回自由落下させる落下試験を行う。このとき、上記評価用サンプルの6面が順次下方となるように、落下の向きを調節する。すなわち、6面につきそれぞれ1回の落下パターンを1サイクル行う。
そして、1回落下させる毎にポリカーボネート板とガラス板との接合が維持されているか否かを目視で確認し、6回落下させるまでにポリカーボネート板とガラス板とが剥がれた場合は「×」と評価し、6回落下させた後にも剥がれが認められなかった場合には「○」と評価する。
【0140】
[動的粘弾性測定]
片面がシリコーン系剥離処理剤で剥離処理された厚さ38μmのPETフィルムの剥離面に粘着剤組成物を塗布し、100℃で2分間乾燥させることにより、上記剥離面上に厚さ50μmの粘着剤層を形成する。この厚さ50μmの粘着剤層を重ね合わせることにより、厚さ約2mmの積層粘着剤サンプルを作製する。上記積層粘着剤サンプルを直径7.9mmの円盤状に打ち抜いた試料をパラレルプレートで挟み込んで固定し、粘弾性試験機(ティー・エー・インスツルメント社製、機種名「ARES」)により以下の条件で動的粘弾性測定を行い、粘着剤層のTg(tanδのピークトップ温度)[℃]、tanδのピークにおけるピーク強度、25℃貯蔵弾性率[MPa]および25℃損失弾性率[MPa]を求める。
[測定条件]
・測定モード:せん断モード
・温度範囲 :-70℃~150℃
・昇温速度 :5℃/min
・測定周波数:1Hz
【0141】
≪アクリル系ポリマーの調製≫
<調製例1>
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器および滴下ロートを備えた反応容器に、モノマー成分としてのBA95部およびAA5部と、重合溶媒としての酢酸エチル233部とを仕込み、窒素ガスを導入しながら2時間撹拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、重合開始剤として0.2部のAIBNを加え、60℃で8時間溶液重合してアクリル系ポリマーA1の溶液を得た。このアクリル系ポリマーA1のMwは約70×10であった。
【0142】
<調製例2>
モノマー組成をBA100部およびAA5部に変更し、重合開始剤としてBPOを使用し、重合溶媒としてトルエンを使用した他は基本的に調製例1と同様にしてアクリル系ポリマーA2の溶液を得た。このアクリル系ポリマーA2のMwは約50×10~60×10の範囲内であった。
【0143】
<調製例3>
モノマー組成をBA100部、VAc5部、AA3部およびHEA0.1部に変更し、重合溶媒としてトルエンを使用した他は基本的に調製例1と同様にしてアクリル系ポリマーA3の溶液を得た。このアクリル系ポリマーA3のMwは約50×10であった。
【0144】
<調製例4>
モノマー組成を2EHA90部およびAA10部に変更し、重合開始剤としてBPOを使用した他は基本的に調製例1と同様にしてアクリル系ポリマーA4の溶液を得た。このアクリル系ポリマーA4のMwは約120×10であった。
【0145】
≪実験1≫
<例1-1>
アクリル系ポリマーA1を100部、粘着付与樹脂B1(製品名「ハリタック SE10」、ハリマ化成社製、水添ロジングリセリンエステル、軟化点75~85℃、水酸基価25~40mgKOH/g)を15部、イソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物の75%酢酸エチル溶液、日本ポリウレタン工業社製)を2部撹拌混合して、本例に係る粘着剤組成物を調製した。
得られた粘着剤組成物を、厚さ38μmのポリエステル製剥離フィルム(商品名「ダイアホイルMRF」、三菱ポリエステル社製)の剥離面に塗布し、100℃で2分間乾燥させて、厚さ40μmの粘着剤層を形成した。この粘着剤層に、厚さ25μmのポリエステル製剥離フィルム(商品名「ダイアホイルMRF」、厚さ25μm、三菱ポリエステル社製)の剥離面を貼り合わせた。このようにして、両面が上記2枚のポリエステル製剥離フィルムで保護された厚さ40μmの基材レス両面粘着シートを得た。
【0146】
<例1-2>
粘着付与樹脂B1を粘着付与樹脂B2(製品名「スミライトレジン PR-12603N」、住友ベークライト社製、テルペン変性フェノール系樹脂、軟化点130~140℃、水酸基価1~20mgKOH/g)に変更した他は例1-1と同様にして本例に係る粘着剤組成物を調製し、基材レス両面粘着シートを得た。
【0147】
<例1-3>
粘着付与樹脂B1を粘着付与樹脂B3(製品名「マイティエース G125」、ヤスハラケミカル社製、テルペンフェノール樹脂、軟化点125℃、水酸基価140mgKOH/g)に変更した他は例1-1と同様にして本例に係る粘着剤組成物を調製し、基材レス両面粘着シートを得た。
【0148】
<例1-4>
粘着付与樹脂B1を粘着付与樹脂B4(製品名「YSポリスター S145」、ヤスハラケミカル社製、テルペンフェノール樹脂、軟化点145℃、水酸基価70~110mgKOH/g)に変更した他は例1-1と同様にして本例に係る粘着剤組成物を調製し、基材レス両面粘着シートを得た。
【0149】
<例1-5>
粘着付与樹脂B3の配合量を30部に変更した他は例1-3と同様にして本例に係る粘着剤組成物を調製し、基材レス両面粘着シートを得た。
【0150】
<例1-6>
粘着付与樹脂B4の配合量を30部に変更した他は例1-4と同様にして本例に係る粘着剤組成物を調製し、基材レス両面粘着シートを得た。
【0151】
<例1-7>
アクリル系ポリマーA1をアクリル系ポリマーA2に変更した他は例1-1と同様にして本例に係る粘着剤組成物を調製し、基材レス両面粘着シートを得た。
【0152】
<例1-8>
粘着付与樹脂B1を粘着付与樹脂B2に変更した他は例1-7と同様にして本例に係る粘着剤組成物を調製し、基材レス両面粘着シートを得た。
【0153】
<例1-9>
粘着付与樹脂B1を粘着付与樹脂B3に変更した他は例1-7と同様にして本例に係る粘着剤組成物を調製し、基材レス両面粘着シートを得た。
【0154】
<例1-10>
粘着付与樹脂B1を粘着付与樹脂B4に変更した他は例1-7と同様にして本例に係る粘着剤組成物を調製し、基材レス両面粘着シートを得た。
【0155】
<例1-11>
粘着付与樹脂B1を粘着付与樹脂B5(製品名「タマノル803L」、荒川化学工業社製、テルペンフェノール樹脂、軟化点145~160℃、水酸基価1~20mgKOH/g)に変更した他は例1-7と同様にして本例に係る粘着剤組成物を調製し、基材レス両面粘着シートを得た。
【0156】
<例1-12>
粘着付与樹脂B2の配合量を30部に変更した他は例1-8と同様にして本例に係る粘着剤組成物を調製し、基材レス両面粘着シートを得た。
【0157】
<例1-13>
粘着付与樹脂B3の配合量を30部に変更した他は例1-9と同様にして本例に係る粘着剤組成物を調製し、基材レス両面粘着シートを得た。
【0158】
<例1-14>
アクリル系ポリマーA2を100部、粘着付与樹脂B3を30部撹拌混合して、例1-1と同様に本例に係る粘着剤組成物を調製した。
市販の剥離ライナー(商品名「SLB-80W3D」、住化加工紙株式会社製)を2枚用意し、それらの剥離ライナーのそれぞれ一方の面(剥離面)に粘着剤組成物を、乾燥後の厚さが40μmとなるように塗布し、100℃で2分間乾燥させることにより、上記2枚の剥離ライナーの剥離面上にそれぞれ粘着剤層を形成した。これらの粘着剤層を、両面にコロナ放電処理が施されたポリエチレン系発泡体シート(厚さ0.15mm、密度0.56g/cm、10%圧縮強度(C10)167kPa、25%圧縮強度(C25)468kPa、30%圧縮強度(C30)627kPa、平均気泡径55μm)の両面にそれぞれ貼り合わせた。上記剥離ライナーは、そのまま粘着剤層上に残し、該粘着剤層の表面(粘着面)の保護に使用した。得られた構造体を80℃のラミネータ(0.3MPa、速度0.5m/分)に1回通過させた後、50℃のオーブン中で1日間養生した。このようにして本例に係る粘着シート(発泡体基材付き両面粘着シート)を得た。
【0159】
<例1-15>
アクリル系ポリマーA2をアクリル系ポリマーA1に変更した他は例1-14と同様にして本例に係る粘着剤組成物を調製し、発泡体基材付き両面粘着シートを得た。
【0160】
<例1-16>
アクリル系ポリマーA2をアクリル系ポリマーA3に変更した他は例1-14と同様にして本例に係る粘着剤組成物を調製し、発泡体基材付き両面粘着シートを得た。
【0161】
各例の粘着シートにつき、初期押圧接着力(S1)[MPa]および人工皮脂付与から24時間後の押圧接着力(S2)[MPa]を測定し、人工皮脂付与後接着力維持率(S2/S1)[%]を求めた。得られた結果を、粘着剤組成やシート構成の概略とともに表1および2に示す。
【0162】
【表1】
【0163】
【表2】
【0164】
表1に示すように、実験1において、アクリル系ポリマー種、粘着付与樹脂種を変えて評価を行ったところ、粘着付与樹脂B1~B5のなかで粘着付与樹脂B3を用いた例1-3、1-5、1-9、1-13がアクリル系ポリマーA1,A2をベースポリマーとして含む組成において、比較的高い耐油脂接着信頼性を示した。また表2に示すように、粘着付与樹脂B3を使用して、発泡体基材付き両面粘着シートとした場合には、基材レス粘着シートと比べて、初期および人工皮脂付与後接着力がともに向上し、人工皮脂付与後接着力維持率も同等以上の結果となった。なかでも、アクリル系ポリマーA1と粘着付与樹脂B3とを用いた例1-15では、初期および人工皮脂付与後ともに0.7MPa以上の強い接着力を発揮した。
【0165】
≪実験2≫
<例2-1>
実験1の例1-3と同様に、アクリル系ポリマーA1を100部、粘着付与樹脂B3を15部用いて本例に係る粘着剤組成物を調製した。得られた粘着剤組成物を用いた他は実験1の例1-14と同様にして、ポリエチレン系発泡体シート(厚さ0.15mm)の両面に粘着剤層(厚さ40μm)が設けられた粘着シート(発泡体基材付き両面粘着シート)を得た。
【0166】
<例2-2>
粘着付与樹脂B3の配合量を30部に変更した他は例2-1と同様にして本例に係る粘着剤組成物を調製し、発泡体基材付き両面粘着シートを得た。
【0167】
<例2-3>
粘着付与樹脂B3を粘着付与樹脂B6(製品名「YSポリスター N125」、ヤスハラケミカル社製、テルペンフェノール樹脂、軟化点125℃、水酸基価170mgKOH/g)に変更した他は例2-1と同様にして本例に係る粘着剤組成物を調製し、発泡体基材付き両面粘着シートを得た。
【0168】
<例2-4>
粘着付与樹脂B6の配合量を30部に変更した他は例2-3と同様にして本例に係る粘着剤組成物を調製し、発泡体基材付き両面粘着シートを得た。
【0169】
<例2-5>
粘着付与樹脂B3を粘着付与樹脂B7(製品名「マイティエース K125」、ヤスハラケミカル社製、テルペンフェノール樹脂、軟化点125℃、水酸基価200mgKOH/g)に変更した他は例2-1と同様にして本例に係る粘着剤組成物を調製し、発泡体基材付き両面粘着シートを得た。
【0170】
<例2-6>
粘着付与樹脂B7の配合量を30部に変更した他は例2-5と同様にして本例に係る粘着剤組成物を調製し、発泡体基材付き両面粘着シートを得た。
【0171】
各例の粘着シートにつき、初期押圧接着力(S1)[MPa]および人工皮脂付与から24時間後の押圧接着力(S2)[MPa]を測定し、人工皮脂付与後接着力維持率(S2/S1)[%]を求めた。また、例2-1、2-2および2-6の粘着剤層については、粘着剤層のTg[℃]、tanδ(G”/G’)のピーク強度、25℃貯蔵弾性率(G’(25℃))[MPa]および25℃損失弾性率(G”(25℃))[MPa]を測定した。得られた結果を、粘着剤組成やシート構成の概略とともに表3に示す。
【0172】
【表3】
【0173】
≪実験3≫
<例3-1>
アクリル系ポリマーA4を100部、粘着付与樹脂B5を20部、エポキシ系架橋剤(商品名「TETRAD-C」、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロへキサン、三菱瓦斯化学社製)を0.05部撹拌混合して、本例に係る粘着剤組成物を調製した。
得られた粘着剤組成物を用いた他は実験1の例1-14と同様にして、ポリエチレン系発泡体シート(厚さ0.15mm)の両面に粘着剤層(厚さ40μm)が設けられた粘着シート(発泡体基材付き両面粘着シート)を得た。
【0174】
<例3-2>
アクリル系ポリマーA1を100部、粘着付与樹脂B7を30部、イソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物の75%酢酸エチル溶液、日本ポリウレタン工業社製)を2部撹拌混合して、本例に係る粘着剤組成物を調製した。得られた粘着剤組成物を用いた他は例3-1と同様にして、発泡体基材付き両面粘着シートを得た。
【0175】
<例3-3>
アクリル系ポリマーA1を100部、粘着付与樹脂B4を30部用いた他は例3-2と同様にして、発泡体基材付き両面粘着シートを得た。
【0176】
各例の粘着シートにつき、初期押圧接着力(S1)[MPa]および人工皮脂付与から24時間後の押圧接着力(S2)[MPa]を測定し、人工皮脂付与後接着力維持率(S2/S1)[%]を求めた。得られた結果を、粘着剤組成やシート構成の概略とともに表4に示す。
【0177】
【表4】
【0178】
実験2において高水酸基価の粘着付与樹脂を用いて評価を行ったところ、表3に示すように、水酸基価が高くなるにつれて、人工皮脂付与後の接着力維持率が向上する傾向が認められた。また、高水酸基価樹脂を用いる態様では、その含有量が増加するほど、初期押圧接着力だけでなく、人工皮脂付与後の接着力維持率も向上した。さらに実験3において、粘着付与樹脂B4、B5またはB7を用いた発泡体基材付き粘着シートにつき評価を行ったところ、表4に示すように、粘着付与樹脂B7(水酸基価200mgKOH/g)を使用した例3-2において最も高い人工皮脂付与後接着力維持率が得られた。そして、粘着付与樹脂B4(水酸基価70~110mgKOH/g)を用いた例3-3がそれに続いた。これらの結果から、粘着付与樹脂の水酸基価およびその含有量が耐油脂性向上に寄与していることがわかる。
なお、実験1,2、3および後述の実験4は、それぞれ異なるタイミングで実施されており、試料作製や評価の条件(操作者や実験環境等など)の完全な一致は困難であるため、各実験内の対比と実験間の対比とを同列に論じるべきではない。
【0179】
≪実験4≫
<例4-1>
アクリル系ポリマーA1を100部、粘着付与樹脂B7を30部、イソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物の75%酢酸エチル溶液、日本ポリウレタン工業社製)を2部撹拌混合して、本例に係る粘着剤組成物を調製した。得られた粘着剤組成物を用いた他は実験1の例1-14と同様にして、ポリエチレン系発泡体シート(厚さ0.15mm)の両面に粘着剤層(厚さ40μm)が設けられた粘着シート(発泡体基材付き両面粘着シート)を得た。
【0180】
<例4-2>
粘着付与樹脂B7の配合量を40部に変更した他は例4-1と同様にして本例に係る粘着剤組成物を調製し、発泡体基材付き両面粘着シートを得た。
【0181】
<例4-3>
基材として、ポリエチレン系発泡体シートに代えて厚さ12μmのPETフィルム(製品名「ルミラー」、東レ社製)を用いた他は例4-1と同様にして本例に係る粘着剤組成物を調製し、発泡体基材付き両面粘着シートを得た。
【0182】
各例の粘着シートにつき、180°剥離強度[N/20mm]、初期押圧接着力(S1)[MPa]および人工皮脂付与から24時間後の押圧接着力(S2)[MPa]を測定し、人工皮脂付与後接着力維持率(S2/S1)[%]を求めた。また、耐落下衝撃性の評価も行った。得られた結果を、粘着剤組成やシート構成の概略とともに表5に示す。
【0183】
【表5】
【0184】
高水酸基価の粘着付与樹脂B7をアクリル系ポリマーA1と混合した粘着剤組成で、発泡体基材を用いて検討を行った結果、表5に示すように、例4-1および例4-2では、初期押圧接着力と人工皮脂付与後接着力維持率とを改善することができた。また、これらの例では、耐落下衝撃性評価試験の結果も良好であった。一方、基材としてPETフィルムを用いた例4-3では、発泡体基材使用例と比べて、初期押圧接着力および人工皮脂付与後接着力が低くなる傾向があり、耐落下衝撃性に劣る結果となった。
【0185】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を
限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々
に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0186】
1 粘着シート
10 発泡体基材
10A 第1面
10B 第2面
21 第1粘着剤層
22 第2粘着剤層
21A 第1粘着面
22A 第2粘着面
31,32 剥離ライナー
図1
図2
図3
図4
図5