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特許7469879経口送達と生物学的に同等である薬物動態を有する経皮送達システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】経口送達と生物学的に同等である薬物動態を有する経皮送達システム
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/70 20060101AFI20240410BHJP
   A61K 31/13 20060101ALI20240410BHJP
   A61K 31/445 20060101ALI20240410BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240410BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240410BHJP
   A61K 47/30 20060101ALI20240410BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240410BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240410BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
A61K9/70 401
A61K31/13
A61K31/445
A61K47/02
A61K47/14
A61K47/30
A61K47/32
A61P25/00
A61P25/28
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019503999
(86)(22)【出願日】2017-07-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-08
(86)【国際出願番号】 US2017044047
(87)【国際公開番号】W WO2018022814
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-07-20
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】62/367,542
(32)【優先日】2016-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/367,502
(32)【優先日】2016-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/423,133
(32)【優先日】2016-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/457,794
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/504,408
(32)【優先日】2017-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/504,391
(32)【優先日】2017-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503360296
【氏名又は名称】コリウム, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】シン, パーミンダー
(72)【発明者】
【氏名】リ, ウン ス
(72)【発明者】
【氏名】ジェイン, アミット ケー.
【合議体】
【審判長】原田 隆興
【審判官】前田 佳与子
【審判官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/74636(WO,A1)
【文献】特表2010-500992(JP,A)
【文献】特表2013-75900(JP,A)
【文献】特表2011-513447(JP,A)
【文献】国際公開第2015/53878(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K9/70
A61K31/00-31/80
A61K47/00-47/69
A61K45/00
A61P25/00-25/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経皮送達システムであって、
ドネペジル塩、アルカリ塩、グリセロール、および粘着剤マトリックスを含む薬物リザーバであって、それにより前記ドネペジル塩と前記アルカリ塩との反応により、前記薬物リザーバ中でドネペジル塩基が生成される、薬物リザーバ;および
グリセロールを含まない接触用粘着剤層
を含
ここで、前記ドネペジル塩が、ドネペジル塩酸塩であり、そして前記アルカリ塩が、炭酸水素ナトリウムである、
システム。
【請求項2】
前記経皮送達システムが、1~25mg/24時間のドネペジル塩基の用量を提供する量のドネペジル塩を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記薬物リザーバおよび/または前記接触用粘着剤層が、クエン酸トリエチルまたはポリビニルピロリドンを含む、請求項1または請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記接触用粘着剤層が、乳酸ラウリルまたはクエン酸トリエチルを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記薬物リザーバが、乳酸ラウリルまたはクエン酸トリエチルを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記薬物リザーバが、10~30重量%のドネペジル塩酸塩を含む、請求項に記載のシステム。
【請求項7】
前記薬物リザーバが、0.5~10重量%の炭酸水素ナトリウムを含む、請求項に記載のシステム。
【請求項8】
前記薬物リザーバが、10~30重量%のドネペジル塩酸塩および0.5~10重量%の炭酸水素ナトリウムを含む、請求項に記載のシステム。
【請求項9】
前記薬物リザーバが、ソルビタンモノラウレートおよび乳酸ラウリルのうちの一方または両方を追加的に含む、求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記接触用粘着剤層が、高級アルコールおよび生体適合性ポリマーを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記高級アルコールが、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、およびオレイルアルコールからなる群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記生体適合性ポリマーが、ポリイソブチレン(PIB)、シリコーンポリマー、アクリレートコポリマー、ブチルゴム、ポリブチレン、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、それらの混合物、またはそれらのコポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記生体適合性ポリマーが、アクリレートコポリマーである、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記薬物リザーバが、25~65重量%のアクリレートコポリマーを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
アルツハイマー病の処置における使用のための、求項1から14のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引用
本願は、米国仮出願第62/367,502号(2016年7月27日出願);米国仮出願第62/367,542号(2016年7月27日出願);米国仮出願第62/423,133号(2016年11月16日出願);米国仮出願第62/457,794号(2017年2月10日出願);米国仮出願第62/504,391号(2017年5月10日出願);および米国仮出願第62/504,408号(2017年5月10日出願)の利益を主張する。各々は、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【0002】
技術分野
本明細書に記載される主題は、同程度の用量の治療剤の経口送達と生物学的に同等である薬物動態をもたらすように設計された、システムからの治療剤の経皮送達に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
皮膚を通じた治療活性剤の経皮送達は、その薬剤の血漿中レベルを持続的に一定に保つための手段を提供する。これは、経皮システムが皮膚上にある期間全体を通じて、血中レベルが一定であり続け、経口送達において見られる薬物濃度のピークおよびトラフを伴わない薬物の血中濃度がもたらされるという点で、経口投与を介した従来の療法とは異なる。経皮送達は、半減期が短い薬物に関して、かつ/または薬物を長半減期薬物(long half drugs)よりも早々に代謝してしまう可能性がある有意な肝臓の初回通過効果が存在する場合に利用される。
【0004】
長い消失半減期を有する薬物の経口投与は、長半減期薬物の定常状態で、治療域内における最小限のピークおよび谷しか伴わない、比較的一定の薬物の血中レベルを達成することができる。長半減期薬物(48時間以上)の経口投与は、その薬物が治療域において定常状態血中レベルに到達するまで、血液中での経時的な薬物の蓄積をもたらす。
【0005】
曲線下面積(AUC)および最高血中濃度(Cmax)の薬物動態パラメーターに関して、経口投薬経路と治療的に同等である経皮送達システムを設計する際に、薬物の長い半減期を利用することが望ましい。生物学的同等性を達成することによって、非臨床および臨床の膨大な試験費用を低減することができる。
【0006】
前述の関連技術の例およびそれと関連する制約は、例証的であることを意図したものであり、排他的であることを意図したものではない。関連分野の他の制約については、本明細書を読み、図面を検討することで、当業者には明らかとなるであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
簡単な要旨
下に記載され例証される、以下の態様およびその実施形態は、例示的かつ例証的であることを意図したものであり、範囲に関して限定的なものではない。
【0008】
一態様では、対象に対して治療剤を送達するための方法が提供される。方法は、治療剤および治療剤を含むリザーバから構成される経皮送達システムを準備することであって、治療剤が、(i)経口的に送達された場合、約48時間を超える血中半減期を有し、(ii)慢性状態を処置するためのものである、準備すること、ならびに対象の皮膚に対して経皮送達システムを投与することまたはそれを投与するように指示することを含む。投与することは、治療剤の経口投与と生物学的に同等である、治療剤の経皮送達を達成し、ここで、生物学的同等性は、(a)0.70から1.43の間もしくは0.80から1.25の間にある、経皮送達システムから、および経口送達を介して投与される治療剤の、相対的な平均CmaxおよびAUCの90%信頼区間、または(b)0.70から1.43の間もしくは0.80から1.25の間にある、経皮送達システムから、および経口送達を介して投与される治療剤の、AUCおよびCmaxの幾何平均比の90%信頼区間によって確立される。
【0009】
一実施形態では、治療剤は、難水溶性の薬剤である。
【0010】
一実施形態では、生物学的同等性は、健常対象において確立される。
【0011】
一実施形態では、生物学的同等性は、絶食状態において確立される。一実施形態では、生物学的同等性は、摂食または非絶食状態において確立される。一実施形態では、生物学的同等性は、経皮投与および経口投与の一方または両方が定常状態である場合に評価される。
【0012】
別の実施形態では、生物学的同等性は、同じ用量の、経口的および経皮的に与えられる治療剤を使用して確立される。別の実施形態では、経皮的に与えられる治療剤の用量は、経口的に与えられる用量の約5%、10%、または15%以内である。
【0013】
別の実施形態では、治療剤は、ドネペジル塩基、ドネペジル塩、メマンチン塩基、またはメマンチン塩である。特定の一実施形態では、治療剤は、ドネペジル塩基またはドネペジル塩である。別の特定の実施形態では、治療剤は、メマンチン塩基またはメマンチン塩である。別の実施形態では、治療剤は、フィンゴリモド塩基またはフィンゴリモド塩である。
【0014】
さらに別の実施形態では、慢性状態は、アルツハイマー病である。さらに別の実施形態では、慢性状態は、再発型の多発性硬化症を含めた、多発性硬化症である。
【0015】
なおも別の実施形態では、投与することまたは投与するように指示することは、週1回投与することまたは投与するように指示することを含む。なおも別の実施形態では、投与することまたは投与するように指示することは、1日に1回、週2回、または週3回投与することまたは投与するように指示することを含む。
【0016】
一実施形態では、治療剤は、ドネペジル塩基またはドネペジル塩であり、経皮送達システムは、5~10mg/24時間を提供する用量のドネペジル塩基またはドネペジル塩を含む。一実施形態では、治療剤は、ドネペジル塩基またはドネペジル塩であり、経皮送達システムは、1~25mg/24時間を提供する用量のドネペジル塩基またはドネペジル塩を含む。
【0017】
別の実施形態では、経皮送達システムは、薬物リザーバおよび接触用粘着剤(contact adhesive)を含み、薬物リザーバは、親水性溶媒を含み、薬物リザーバおよび/または接触用粘着剤は、(i)透過促進剤、(ii)クエン酸トリエチル、および(iii)ポリビニルピロリドンのうちの1つを含む。
【0018】
さらに別の実施形態では、経皮送達システムは、薬物リザーバおよび接触用粘着剤を含み、薬物リザーバは、グリセロールを含み、薬物リザーバおよび/または接触用粘着剤は、(i)乳酸ラウリル、(ii)クエン酸トリエチル、および(iii)オクチルドデカノールのうちの1つを含む。一実施形態では、接触用粘着剤は、薬物リザーバ内に存在する親水性溶媒を除外する。一実施形態では、接触用粘着剤は、グリセロールを除外する。
【0019】
なおも別の実施形態では、経皮送達システムは、(i)乳酸ラウリル、(ii)クエン酸トリエチル、および(iii)グリセロールのうちの2つを含む薬物リザーバを含む。なおも別の実施形態では、経皮送達システムは、(i)乳酸ラウリル、(ii)クエン酸トリエチル、(iii)グリセロール、および(iv)ソルビタンモノラウレートのうちの2つを含む薬物リザーバを含む。
【0020】
一実施形態では、薬物リザーバは、ドネペジル塩酸塩および炭酸水素ナトリウムを含む。一実施形態では、薬物リザーバは、ドネペジル塩酸塩および炭酸水素ナトリウムを含む配合物から製造される。別の実施形態では、薬物リザーバは、ドネペジル塩酸塩と炭酸水素ナトリウムとの反応によってin situで生成されるドネペジル塩基を含む。
【0021】
一実施形態では、経皮送達システムは、薬物(治療剤)リザーバを含み、薬物リザーバは、塩形態の治療剤およびアルカリ塩を含む配合物から製造され、薬物リザーバは、塩形態の治療剤、アルカリ塩、および塩基形態の治療剤を平衡状態で含む。別の実施形態では、経皮送達システムは、塩形態の治療剤、アルカリ塩、および塩基形態の治療剤を含む薬物(治療剤)リザーバを含む。一実施形態では、治療剤はドネペジルであり;別の実施形態では、治療剤はメマンチンであり;別の実施形態では、治療剤はフィンゴリモドである。
【0022】
一実施形態では、経皮送達システムは、(a)約5~30重量%、もしくは5~25重量%、もしくは10~30重量%のドネペジル塩と約0.5~10重量%のアルカリ塩との反応によってin situで生成されるドネペジル塩基、ならびに約25~60重量%、25~65重量%、もしくは30~65重量%のアクリレートコポリマーを含むか、またはそれらから本質的になる、薬物リザーバを含む。一実施形態では、ドネペジル塩は、ドネペジル塩酸塩(ドネペジルHCl)であり;アルカリ塩は、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウムである。
【0023】
別の実施形態では、経皮送達システムは、薬物リザーバおよび接触用粘着剤を含み、薬物リザーバは、(i)アクリレートポリマー、(ii)溶解剤、(iii)担体、(iv)任意選択の崩壊剤、および(v)メマンチンの塩とアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基を含む。複数の実施形態では、アクリレートポリマーは、酢酸ビニルと、2-エチルヘキシル-アクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、およびグリシジルアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のアクリレートとを含む。追加的にまたは代わりに、複数の実施形態では、溶解剤は、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、およびオレイルアルコールからなる群から選択される高級アルコールである。追加的にまたは代わりに、複数の実施形態では、担体は親水性溶媒であり、これは、一部の実施形態では、グリセロール(グリセリン)、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール、アセトニトリル、1-プロパノール、N,N-ジメチルホルムアミド、およびジメチルスルホキシドからなる群から選択され得る。追加的にまたは代わりに、複数の実施形態では、崩壊剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)もしくはポリビニルアルコール(PVA)、またはそれらの架橋誘導体からなる群から選択される。一実施形態では、崩壊剤は、架橋ポリビニルピロリドン(PVP-CLM)である。追加的にまたは代わりに、複数の実施形態では、メマンチン塩は、メマンチンのハロゲン化物塩である。複数の実施形態では、メマンチン塩は、メマンチン塩酸塩(メマンチンHCl)である。追加的にまたは代わりに、複数の実施形態の下では、アルカリ塩は、酢酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸カリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、オキシル酸ナトリウム(sodium oxylate)、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、およびサリチル酸ナトリウムからなる群から選択される。一実施形態では、アルカリ塩は、炭酸水素カリウムまたは炭酸水素ナトリウムである。薬物リザーバは、任意選択で、ソルビタンモノラウレートおよび乳酸ラウリルから選択される追加的な薬剤を含有してもよい。
【0024】
さらに別の実施形態では、経皮送達システムは、薬物リザーバおよび接触用粘着剤を含み、接触用粘着剤は、(1)溶解剤および(2)生体適合性ポリマーを、任意選択で(3)マトリックス改質剤、およびさらに任意選択で(4)分散性シリカとともに含む。複数の実施形態では、溶解剤は、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、およびオレイルアルコールからなる群から選択される高級アルコールである。一実施形態では、高級アルコールは、オクチルドデカノールである。代わりにまたは追加的に、生体適合性ポリマーは、ポリイソブチレン(PIB)、シリコーンポリマー、アクリレートコポリマー、ブチルゴム、ポリブチレン、スチレン-イソプレン(iosprene)-スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、それらの混合物、またはそれらのコポリマーからなる群から選択される。一実施形態では、生体適合性ポリマーは、ポリイソブチレンを含む。代わりにまたは追加的に、マトリックス改質剤は、架橋ポリビニルピロリドン(PVP)、可溶性PVP、セルロース誘導体、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、およびクレイからなる群から選択される。一実施形態では、マトリックス改質剤は、架橋ポリビニルピロリドン(PVP-CLM)である。なおも代わりにまたは追加的に、送達システムにおいて使用される分散性シリカは、医薬品グレードの非晶質無水コロイド状二酸化ケイ素である。一実施形態では、接触用粘着剤は、活性成分を含まない。一実施形態では、接触用粘着剤は、薬物リザーバ内に存在する親水性溶媒を含まない。一実施形態では、接触用粘着剤は、グリセロールを含まない。
【0025】
一実施形態では、システムは、(a)約10~30重量%のメマンチン塩と約5~15重量%のアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基;(b)約5~15重量%の溶解剤;(c)約5~15重量%の担体;(d)約10~30重量%の崩壊剤;ならびに(e)約20~50重量%のアクリレートポリマーを含むか、またはそれらから本質的になる、薬物リザーバを含む。一実施形態では、メマンチン塩は、メマンチン塩酸塩(メマンチンHCl)であり;アルカリ塩は、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウムであり;溶解剤は、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、およびオレイルアルコールからなる群から選択される高級アルコールであり;担体は、グリセロールであり;崩壊剤は、架橋ポリビニルピロリドン(PVP-CLM)であり;アクリレートポリマーは、酢酸ビニルと、2-エチルヘキシル-アクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、およびグリシジルアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のアクリレートとを含む。
【0026】
別の実施形態では、システムは、(a)約22~27重量%のメマンチン塩と約7~12重量%のアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基;(b)約8~12重量%の溶解剤;(c)約8~12重量%の担体;(d)約13~17重量%の崩壊剤;ならびに(e)約28~35重量%のアクリレートポリマーを含むか、またはそれらから本質的になる薬物リザーバを含む。複数の実施形態では、メマンチン塩は、メマンチン塩酸塩(メマンチンHCl)であり;アルカリ塩は、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウムであり;溶解剤は、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、およびオレイルアルコールからなる群から選択される高級アルコールであり;担体は、グリセロールであり;崩壊剤は、架橋ポリビニルピロリドン(PVP-CLM)であり;アクリレートポリマーは、酢酸ビニルと、2-エチルヘキシル-アクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、およびグリシジルアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のアクリレートとを含む。
【0027】
別の実施形態では、システムは、(a)フィンゴリモド塩、アルカリ塩の反応によってin situで生成されるフィンゴリモド塩基;(b)溶解剤または透過促進剤;(c)担体(親水性溶媒);(d)任意選択の崩壊剤;および(e)アクリレートコポリマーを含むか、またはそれらから本質的になる薬物リザーバを含む。複数の実施形態では、フィンゴリモド塩は、フィンゴリモド塩酸塩(フィンゴリモドHCl)であり;アルカリ塩は、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウムであり;溶解剤は、乳酸ラウリル、またはラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、およびオレイルアルコールからなる群から選択される高級アルコールであり;担体は、グリセロールであり;親水性溶媒担体は、グリセロールであり;崩壊剤は、架橋ポリビニルピロリドン(PVP-CLM)であり;アクリレートコポリマーは、酢酸ビニルと、2-エチルヘキシル-アクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、およびグリシジルアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のアクリレートとを含む。
【0028】
別の実施形態では、(a)前述の薬物リザーバのうちの1つまたは複数;(b)速度制御膜または不織層;および(c)接触用粘着剤;ならびに(d)任意選択で、薬物リザーバおよび/または接触用粘着剤の一方または両方に含まれる透過促進剤を含むシステムが記載される。複数の実施形態では、速度制御膜は、微多孔質ポリプロピレン膜である。
【0029】
別の実施形態では、(a)前述の薬物リザーバのうちの1つまたは複数;(b)速度制御膜または不織層;ならびに(c)高級アルコールおよび生体適合性ポリマーを、任意選択でマトリックス改質剤、およびさらに任意選択で分散性シリカとともに含む接触用粘着剤を含むシステムが提供される。複数の実施形態では、接触用粘着剤は、高級アルコール、生体適合性ポリマー、およびマトリックス改質剤を含む。他の実施形態では、接触用粘着剤は、高級アルコール、生体適合性ポリマー、および分散性シリカを含む。
【0030】
関連する実施形態では、(a)前述の薬物リザーバのうちの1つまたは複数;(b)速度制御膜または不織層;ならびに(c)ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、およびオレイルアルコールからなる群から選択される高級アルコール、ならびにポリイソブチレン(PIB)、シリコーンポリマー、アクリレートコポリマー、ブチルゴム、ポリブチレン、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、またはそれらの混合物もしくはそれらのコポリマーから選択される生体適合性ポリマーを、任意選択で、架橋ポリビニルピロリドン(PVP)、可溶性PVP、セルロース誘導体、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、およびクレイからなる群から選択されるマトリックス改質剤、ならびにさらに任意選択で高純度の非晶質無水コロイド状二酸化ケイ素とともに含む接触用粘着剤を含むシステムが提供される。
【0031】
特定の一実施形態では、(a)前述の薬物リザーバのうちの1つまたは複数;(b)速度制御膜または不織層;ならびに(c)約5~15重量%の高級アルコールおよび約50~95重量%の生体適合性ポリマーを、任意選択で約10~30重量%のマトリックス改質剤、およびさらに任意選択で約4~12重量%の分散性シリカとともに含む接触用粘着剤を含むシステムが提供される。複数の実施形態では、接触用粘着剤は、オクチルドデカノールである高級アルコール、ポリイソブチレンを含む生体適合性ポリマー、および任意選択で架橋ポリビニルピロリドン(PVP)を含むマトリックス改質剤、ならびにさらに任意選択で高純度の非晶質無水コロイド状二酸化ケイ素を含む分散性シリカを含む。
【0032】
別の特定の実施形態では、(a)前述の薬物リザーバのうちの1つまたは複数;(b)速度制御膜または不織層;ならびに(c)約8~12重量%の高級アルコールおよび約65~90重量%の生体適合性ポリマーを、任意選択で約15~25重量%のマトリックス改質剤、およびさらに任意選択で約5~10重量%の分散性シリカとともに含む接触用粘着剤を含むシステムが提供される。複数の実施形態では、粘着性マトリックスは、オクチルドデカノールである高級アルコール、ポリイソブチレンを含む生体適合性ポリマー、および任意選択で架橋ポリビニルピロリドン(PVP)を含むマトリックス改質剤、ならびにさらに任意選択で高純度の非晶質無水コロイド状二酸化ケイ素を含む分散性シリカを含む。
【0033】
複数の実施形態では、1つまたは複数のパッケージに、(a)前述の薬物リザーバのうちの1つまたは複数;(b)速度制御膜または不織層;および(c)接触用粘着剤を、任意選択で、構成要素(a)~(c)を送達システムへと組み立てるための説明書とともに、および追加的にまたは任意選択で、それを必要とする対象に対して送達システムを投与するための説明書とともに含むキットが提供される。
【0034】
別の実施形態では、治療剤は、メマンチン塩基またはメマンチン塩であり、経皮送達システムは、7~28mg/24時間を提供する用量のメマンチン塩基またはメマンチン塩を含む。
【0035】
さらに別の実施形態では、経皮送達システムは、酢酸エチルおよびレブリン酸のうちの1つを含む薬物リザーバを含む。
【0036】
なおも別の実施形態では、治療剤は、メマンチン塩基である。
【0037】
また、アルツハイマー病を処置するための方法であって、対象の皮膚に対して、本明細書に記載されているような経皮送達システムを適用することを含む、方法も企図される。
【0038】
また、再発寛解型多発性硬化症を処置するための方法であって、対象の皮膚に対して、本明細書に記載されているような、フィンゴリモド(塩基または塩)を含む経皮送達システムを適用することを含む、方法も企図される。
【0039】
別の実施形態では、治療剤は、フィンゴリモド塩基またはフィンゴリモド塩であり、経皮送達システムは、0.05~2mg/24時間を提供する用量のフィンゴリモド塩基またはフィンゴリモド塩を含む。
【0040】
別の態様では、経皮システムを評価するための方法であって、対象に対して、治療剤および治療剤を含むリザーバから構成される経皮送達システムを投与することまたはそれを投与するように指示することであって、治療剤が、(i)経口的に送達された場合、約48時間を超える血中半減期を有し、(ii)慢性状態を処置するためのものである、投与することまたは投与するように指示すること、ならびに対象に対して、経口投与を介して治療剤を投与することまたはそれを投与するように指示することを含む、方法が提供される。投与することは、治療剤の経口投与と生物学的に同等である、治療剤の経皮送達を達成し、ここで、生物学的同等性は、(a)経皮送達システムから、および経口送達を介して投与される治療剤の、相対的な平均CmaxおよびAUCの90%信頼区間が、0.70から1.43の間もしくは0.80から1.25の間にあること、または(b)経皮送達システムから、および経口送達を介して投与される治療剤の、AUCおよびCmaxの幾何平均比の90%信頼区間が、0.70から1.43の間もしくは0.80から1.25の間にあることによって確立される。
【0041】
一実施形態では、経皮送達システムは、対象に対して、x mg/日の用量を投与し、経口投与を介して治療剤を投与される対象は、x mg/日の20%以内の用量を受容する。一実施形態では、xは、1~50、1~30、0.5~25、1~25、2~30、2~25、および1~25である。
【0042】
別の実施形態では、経皮送達システムは、対象に対して、x mg/日の用量を投与し、経口投与を介して治療剤を投与される対象は、x mg/日を受容する。一実施形態では、xは、1~50、1~30、0.5~25、1~25、2~30、2~25、および1~25である。
【0043】
なおも別の実施形態では、経皮送達システムを投与される対象および経口投与を介して治療剤を投与される対象は、同じ対象である。
【0044】
さらに別の実施形態では、経皮送達システムを投与される対象および経口投与を介して治療剤を投与される対象は、異なる対象である。
【0045】
本方法および組成物、ならびに同類のものの追加的な実施形態が、以下の発明を実施するための形態、図面、実施例、および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。前述の記載および以下の記載から理解することができるように、本明細書に記載されるありとあらゆる特色、およびそのような特色のうちの2つまたはそれよりも多くのありとあらゆる組合せが、そのような組合せに含まれる特色が相互に矛盾しない限り、本開示の範囲内に含まれる。加えて、任意の特色または特色の組合せが、本発明の任意の実施形態から特に除外される場合もある。特に添付の実施例および図面と併せて考察した場合、本発明の追加的な態様および利点が、以下の発明を実施するための形態および特許請求の範囲において示される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1A~1Cは、いくつかの実施形態による経皮送達システムの例証である。
【0047】
図2A図2Aは、ドネペジル経皮送達システムで1週間処置されたヒト対象(丸)、または1日目および7日目に経口投与される5mgのドネペジルで処置されたヒト対象(三角)における、時間(日数単位)の関数としてのドネペジルの平均血漿中濃度(ng/mL単位)のグラフである。
【0048】
図2B図2Bは、5mgのドネペジル錠剤を経口投与した後(三角)およびドネペジル経皮送達システムを取り外した後(丸)の24時間の、ドネペジルの平均血漿中濃度(ng/mL単位)を示すグラフである。
【0049】
図3図3は、1週間に1回新しいパッチを適用しながら、28日間(4週間)の処置期間にわたって、10mg/日を1週間投与するように設計された経皮送達システムを用いた場合(実線)、および28日間にわたって、毎日10mgのドネペジルの経口錠剤を用いた場合(破線)の、ドネペジルの予測される(projected)平均血漿中濃度(ng/mL単位)を示すグラフである。
【0050】
図4図4は、ドネペジル経皮送達システムを用いて1週間処置された群における対象の数およびパッチを取り外した後に観察された皮膚刺激の棒グラフであり、ここでは、白い棒は皮膚刺激がないことを示しており、塗りつぶされた棒は軽度の皮膚刺激を示している。
【0051】
図5A図5Aは、メマンチン経皮送達システムで1週間(丸)もしくは3日間(四角)処置されたヒト対象、または1日目および7日目に経口投与される28mgのメマンチンで処置されたヒト対象(三角)における、メマンチンの平均血漿中濃度(ng/mL単位)を示している。
【0052】
図5B図5Bは、研究の7日目に28mgのメマンチン錠剤を経口投与した後(三角)および1週間着用したメマンチン経皮送達システムを取り外した後(丸)の24時間の、メマンチンの平均血漿中濃度(ng/mL単位)を示すグラフである。
【0053】
図6A図6Aは、(1)1日目~24日目まで3日毎に新しいパッチを適用しながら、28mg/日を3日間投与するように設計された経皮送達システムを用いた処置(実線)、(2)毎日28mgのメマンチンの経口錠剤を用いた処置(破線)の後の、24日目~28日目における、メマンチンの予測される平均血漿中濃度(ng/mL単位)を示すグラフである。
【0054】
図6B図6Bは、(1)4週間にわたって7日毎に新しいパッチを適用しながら、28mg/日を7日間投与するように設計された経皮送達システムを用いた処置(実線)、(2)毎日28mgのメマンチンの経口錠剤を用いた処置(破線)の後の、21日目~28日目における、メマンチンの予測される平均血漿中濃度(ng/mL単位)を示すグラフである。
【0055】
図7A図7Aは、臨床ヒト研究の第4週(5週目)の日毎のドネペジルの平均血漿中濃度(ng/mL単位)を示している。この研究では、対象は、第1の表面積を有する経皮パッチ(実線)および第2のより大きい表面積を有する経皮パッチ(破線)から経皮的に投与されるドネペジル、ならびに経口投与されるドネペジルで処置された。この場合、経口的に処置された患者のドネペジル血漿中濃度は、6日目~7日目において濃い太線で示されており、点線は、経口処置の場合の予測される日毎の血漿中濃度を示している。
【0056】
図7B図7Bは、対象が図7Aに記載されたように処置された臨床研究において対象によって報告された、胃腸関連有害事象(吐き気、嘔吐、および下痢)の数を示す棒グラフである。破線で塗りつぶされた棒は、小さい方のサイズの経皮パッチで毎週処置された対象に対応し、縦線で塗りつぶされた棒は、大きい方のサイズの経皮パッチで毎週処置された対象に対応し、横線で塗りつぶされた棒は、経口ドネペジルで処置された対象に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0057】
詳細な説明
I.定義
これより、以下において、様々な態様についてより完全に説明する。しかしながら、そのような態様は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に示される実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない;むしろ、これらの実施形態は、本開示が網羅的かつ完全であり、当業者にその範囲を完全に伝えることができるように提供されるものである。
【0058】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間のそれぞれの介在値、および明言された範囲内の任意の他の明言された値または介在値が、本開示内に包括されることが意図される。例えば、1μmから8μmの範囲が明言された場合、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、および7μm、ならびに1μmよりも大きいまたはそれに等しい値の範囲および8μm未満またはそれに等しい値の範囲もまた明示的に開示されていることが意図される。
【0059】
文脈が別途明確に規定しない限り、「ある1つの(a)」、「ある1つの(an)」、および「その(the)」という単数形は、複数の指示対象を包含する。したがって、例えば、「ポリマー」に対する言及は、単一のポリマー、および2つまたはそれよりも多くの同じまたは異なるポリマーを包含し、「賦形剤」に対する言及は、単一の賦形剤、および2つまたはそれよりも多くの同じまたは異なる賦形剤、ならびに同類のものを包含する。
【0060】
「約」という語は、数値の直前にある場合は、その値のプラスまたはマイナス10%の範囲を意味し、本開示の文脈により別途示されない限りまたは本開示の文脈がそのような解釈と矛盾しない限り、例えば、「約50」は45から55を意味し、「約25,000」は22,500から27,500などを意味する。例えば、数値のリスト、例えば「約49、約50、約55」などにおいては、「約50」は、前述の値と後続の値との間の間隔の半分未満まで拡張する範囲、例えば49.5超から52.5未満を意味する。さらに、「約(ある値)未満」または「約(ある値)超」という語句は、本明細書において提供される「約」という用語の定義の見地から理解されるべきである。
【0061】
「薬物」または「活性剤」または「治療活性剤」という用語は、交換可能に使用される。
【0062】
「半減期」は、生物学的プロセス、例えば代謝、排泄などを通じて、投与された薬物の2分の1が排出される時間を意味する。
【0063】
本明細書において使用される場合、「治療有効量」という語句は、そのような処置を必要とする有意な数の対象において、薬物が投与される目的である特定の薬理学的応答をもたらす、薬物の投薬量を意味するものとする。特定の事例において特定の対象に対して投与される薬物の治療有効量は、そのような投薬量が当業者によって治療有効量であるとみなされるとしても、本明細書に記載される状態/疾患の処置において常に有効であるとは限らないことを強調しておく。
【0064】
本明細書において使用される場合、「処置」、「療法」、「治療的」、および同類の用語は、病理学的状態に向けた、あらゆる一連の医学的介入を包括し、疾患の根治だけでなく、疾患の予防、制御、または疾患もしくは病徴を軽減するために採用されるステップすら包含する。
【0065】
本開示の組成物は、開示される構成成分を含んでもよく、それらから本質的になってもよく、またはそれらからなってもよい。
【0066】
別途指定されない限り、すべての百分率、部、および比は、局所用組成物の総重量に基づき、すべての測定は、約25℃において行われる。
【0067】
「薬学的に許容される」という語句は、本明細書において、理にかなった医学的判断の範囲内にあり、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を伴わずに人間および/または他の哺乳動物の組織と接触させて使用するのに好適であり、妥当な損益比と釣り合うような、化合物、塩、組成物、剤形などを指すために用いられる。一部の態様では、「薬学的に許容される」は、連邦政府もしくは州政府の規制当局によって認可されていること、または哺乳動物(例えば、動物)、より具体的にはヒトにおける使用について、米国薬局方もしくは他の一般に認知されている薬局方に列挙されていることを意味する。
【0068】
「処置する」という用語は、本明細書において、例えばアルツハイマー病などの障害を処置する方法に関して使用され、一般に、化合物または組成物を受容しない対象と比較して、対象における医学的状態(例えば、アルツハイマー病)の頻度を低減するか、またはその発症、症状を遅延させる化合物または組成物の投与を包含する。これには、対象の状態(例えば、精神的機能の退行)を改善または安定化するような様式で、状態の症状、臨床徴候、および根底にある病理を逆転させること、低減すること、または阻止することが含まれ得る。
【0069】
ある範囲に従ってまたは任意の類似する様式で特許請求することができる任意のそのような群の任意の個別のメンバー(群内の任意の部分範囲または部分範囲の組合せを含む)を、排除または除外する権利を留保することによって、本開示の全体の記載よりも少ないものを任意の理由で特許請求することができる。さらに、任意の個別の置換基、類似体、化合物、リガンド、構造、もしくはそれらの群、または特許請求される群の任意のメンバーを、排除または除外する権利を留保することによって、本開示の全体の記載よりも少ないものを任意の理由で特許請求することができる。
【0070】
本開示全体を通じて、様々な特許、特許出願、および刊行物が参照される。これらの特許、特許出願、および刊行物の開示は、本開示の日付時点で当該技術分野の当業者に公知の最新技術をより完全に説明するために、それら全体が参照により本開示に援用される。引用される特許、特許出願、および刊行物と、本開示との間において任意の矛盾が存在する場合、本開示が優先される。
【0071】
便宜上、本明細書、実施例、および特許請求の範囲において用いられるある特定の用語について、ここに集めてある。別途定義されない限り、本開示において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。
【0072】
II.処置の方法
対象に対して治療剤を経皮的に送達するための方法が提供される。複数の実施形態では、方法は、本明細書に記載される送達システムを使用する、1つまたは複数の中枢神経系(CNS)障害の処置を含む。本明細書に記載されるシステムおよび方法を使用して処置することができるCNS障害の例としては、限定されるものではないが、認知症(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ピック病、前頭側頭型認知症、血管性認知症、正常圧水頭症、ハンチントン病(HD)、および軽度認知障害(MCI))、神経関連状態、認知症関連状態、例えばてんかん、発作性障害、急性疼痛、慢性疼痛、慢性神経障害性疼痛が挙げられる。てんかん性の状態としては、複雑部分てんかん、単純部分てんかん、続発性全般てんかんを伴う部分てんかん、全般てんかん(欠神、大発作(強直間代性)、強直性、無緊張性、ミオクローヌス性、新生児、および点頭てんかんを含む)が挙げられる。追加的な特定のてんかん症候群は、若年性ミオクローヌスてんかん、レノックス・ガストー、内側側頭葉てんかん、夜間前頭葉てんかん、精神遅滞を伴う進行性てんかん、および進行性ミオクローヌスてんかんである。本明細書に記載されるシステムおよび方法はまた、脳血管性疾患、運動ニューロン疾患(例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄運動萎縮症、テイ・サックス病、サンドホフ病(Sandoff disease)、家族性痙性対麻痺)、神経変性疾患(例えば、家族性アルツハイマー病、プリオン関連疾患、小脳性運動失調症、フリードライヒ運動失調症、SCA、ウィルソン病、網膜色素変性症(RP)、ALS、副腎白質ジストロフィー、メンケス症候群(Menke's Sx)、皮質下梗塞を伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL);脊髄性筋萎縮症、家族性ALS、筋ジストロフィー、シャルコー・マリー・トゥース病、神経線維腫症、フォン・ヒッペル-リンダウ、脆弱X、痙性対麻痺(spastic paraplesia)、精神障害(例えば、パニック症候群、全般性不安障害、すべての型の恐怖症候群、躁病、躁うつ病、軽躁、単極性うつ病、うつ病、ストレス障害、外傷後ストレス障害(PTSD)、身体表現性障害、人格障害、精神病、および統合失調症)、および薬物依存(例えば、アルコール、精神刺激薬(例えば、クラック、コカイン、スピード、メタンフェタミン)、オピオイド、およびニコチン)、結節性硬化症、ならびにワールデンブルグ症候群(Wardenburg syndrome))、脳卒中(例えば、血栓性、塞栓症、血栓塞栓性、出血性(hemmorhagic)、静脈収縮性、および静脈性)、運動障害(例えば、パーキンソン病(PD)、ジストニア、良性本態性振戦、遅発性ジストニア、遅発性ジスキネジア、およびトゥーレット症候群)、失調性症候群、交感神経系の障害(例えば、シャイ・ドレーガー、オリーブ橋小脳変性症、線条体黒質変性、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、ギラン・バレー、カウザルギー、複合性局所性疼痛症候群I型およびII型、糖尿病性ニューロパチー、ならびにアルコール性ニューロパチー)、脳神経障害(例えば、三叉神経障害、三叉神経痛、メニエール症候群、舌咽神経痛(glossopharangela neuralgia)、嚥下障害、発声障害、および脳神経麻痺)、ミエロパチー(myelopethies)、外傷性脳および脊髄損傷、放射線脳損傷、多発性硬化症、髄膜炎後症候群、プリオン病、脊髄炎(myelities)、神経根炎、ニューロパチー(例えば、ギラン・バレー、タンパク異常血症と関連する糖尿病、トランスサイレチン誘発性ニューロパチー、HIVと関連するニューロパチー、ライム病と関連するニューロパチー、帯状疱疹と関連するニューロパチー、手根管症候群、足根管症候群、アミロイド誘発性ニューロパチー、らい性ニューロパチー、ベル麻痺、圧迫性ニューロパチー、サルコイドーシス誘発性ニューロパチー、多発性脳神経炎、重金属誘発性ニューロパチー、遷移金属誘発性ニューロパチー、薬物誘発性ニューロパチー)、軸索性脳傷害、脳症、ならびに慢性疲労症候群を含む障害によって引き起こされる疼痛の処置および予防にとっても有用である。本明細書に記載されるシステムおよび方法はまた、多発性硬化症、特に再発寛解型多発性硬化症の処置、ならびに多発性硬化症および/または再発寛解型多発性硬化症の再発の予防にとっても有用である。本明細書に記載されるシステムおよび方法によって、上の障害のすべてを処置することができる。
【0073】
本明細書において使用される場合、「処置」、「療法」、「治療的」、および同類の用語は、病理学的状態に向けた、あらゆる一連の医学的介入を包括し、疾患の根治だけでなく、疾患の予防、制御、または疾患もしくは病徴を軽減するために採用されるステップすら包含する。例えば、アルツハイマー病などの障害を処置する方法に関連する場合、実施形態は、一般に、活性剤を受容しない対象と比較して、対象における医学的状態の頻度を低減するか、またはその発症、症状を遅延させる活性剤の投与を包含する。これには、対象の状態(例えば、精神的機能の退行)を改善または安定化するような様式で、状態の症状、臨床徴候、および根底にある病理を逆転させること、低減すること、または阻止することが含まれ得る。
【0074】
一実施形態では、治療的実施形態は、対象の組織、例えば皮膚組織を、本明細書において提供される経皮送達システムと接触させることによって実行される。
【0075】
別の実施形態では、治療的実施形態は、対象、例えばアルツハイマー病および/または認知症などのCNS障害を患っている患者に対して活性剤を経皮投与することによって実行される。「投与する」という用語は、例えば、そのような薬物が例えば経皮的に受容され、その意図した目的を実行するのに有効であるような様式で活性剤を配置することによって、治療法として適用することを意味する。
【0076】
治療剤の投与が疾患または障害にとって有効な治療レジメンである「対象」または「患者」は、好ましくはヒトであるが、治験、またはスクリーニング、または活性実験の文脈における実験動物を含む、任意の動物であってもよい。したがって、当業者であれば容易に理解することができるように、本明細書において提供されるような方法およびシステムは、任意の動物、特に哺乳動物であって、決して限定されるものではないが、ヒト、飼育動物、例えばネコ科またはイヌ科対象など、家畜、例えば限定されるものではないがウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、およびブタ対象など、野生動物(野生であるかまたは動物園にいるかにかかわらず)、例えば獣医学的な医学的使用のための研究動物、例えばマウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコなど、鳥類の種、例えばニワトリ、シチメンチョウ、鳴禽類などを含む動物への投与に特に適している。
【0077】
システムによる対象の処置は、当該技術分野において公知の方法を使用して監視することができる。例えば、Forchettiら、「Treating Patients with Moderate to Severe Alzheimer's Disease: Implications of Recent Pharmacologic Studies」、Prim Care Companion J Clin Psychiatry、7巻(4号):155~161頁、2005年(PMID:16163398)を参照されたい。システムを使用する処置の有効性は、好ましくは、対象の症状を定量的方法で調査することによって、例えば、有害な症状、挙動、もしくは攻撃の頻度における低下、または症状の持続的悪化に要する時間の増加に注目することによって評価される。処置が成功した場合、対象の状態は改善している(すなわち、再発の頻度が低下しているか、または持続的な進行までの時間が増加している)。
【0078】
本明細書に記載される例示的経皮送達システム(経皮デバイスまたはデバイスとも呼ばれる)に基づき、活性剤で好適な状態を処置するための方法が提供される。複数の実施形態では、認知障害または疾患、および多発性硬化症の症状を処置し、その進行を遅延させ、その発症を遅延させ、その進行を遅らせ、それを予防し、その寛解および改善をもたらすのに有用である、活性剤を含むデバイスが、本明細書において提供される。複数の実施形態では、限定されるものではないが、思考、記憶、話すスキルを維持すること、および認知障害または疾患の1つまたは複数の行動症状を管理または緩和することのうちの少なくとも1つを含む、精神機能を維持するための、活性剤を含むデバイスが、提供される。複数の実施形態では、認知障害は、アルツハイマー病である。特定の実施形態では、認知障害は、アルツハイマー型認知症である。複数の実施形態では、軽度、中度、または重度アルツハイマー病の処置などにおいて使用するための、メマンチンを含むデバイスが、提供される。他の実施形態では、多発性硬化症の処置、多発性硬化症、特に再発寛解型多発性硬化症の再発の予防および/またはその頻度の低減において使用するための、フィンゴリモドを含むデバイスが、提供される。
【0079】
一実施形態では、方法は、対象の組織を1つまたは複数の経皮送達システムと接触させることによる、それを必要とする対象におけるCNS障害または自己免疫障害の療法に関する。「経皮」および「局所」という用語は、本明細書において、薬物が体表面、例えば皮膚を通過して個体の血流中に入るように、ヒトを含む動物の皮膚表面または粘膜に対して、活性剤、例えばメマンチン、またはドネペジル、またはフィンゴリモドを投与することを指すために、その最も広い意味で使用される。「経皮」という用語は、経粘膜投与、すなわち、薬剤が粘膜組織を通過して個体の血流中に入るように、個体の粘膜(例えば、舌下、口腔、膣、直腸)表面に対して薬物を投与することを包含することが意図される。
【0080】
皮膚組織を介した薬物の送達経路を指す、「局所送達システム」、「経皮送達システム」、および「TDS」という用語は、本明細書では交換可能に使用される。
【0081】
本明細書において使用される場合、「皮膚」組織または「皮膚性」組織という用語は、角質層、または淡明層、および/または他の粘膜によって覆われた組織を包含するものとして定義される。この用語にはさらに、粘膜内壁を有する体腔、例えば頬、鼻、直腸、膣などの内面を含む、粘膜組織も包含される。「皮膚」という用語は、「粘膜組織」を包含するものとして解釈されるべきであり、逆もまた同様である。
【0082】
本明細書において使用される場合、「システム」という用語は、皮膚、皮膚の下の局部組織、循環系、もしくは他の部位に対して投与するための、または皮膚透過部位を介して人体を標的とする、活性剤またはその組成物を含有する、物品、装置、またはデバイスとして定義される。
【0083】
一部の事例では、経皮デバイスは、活性剤を含む単一層として構成される。「単一層」とは、経皮送達デバイスが、マトリックスを含有する活性剤層を1つしか含まず、感圧性接着剤、経皮活性剤層などの分離した別個の層を含まないことを意味する。単一層デバイスは、活性剤を含まない1つまたは複数の追加的な層を含んでもよいことが理解されるであろう。一部の実施形態では、経皮送達デバイスは、少なくともバッキングおよび活性剤含有層を含む。組成物は、剥離ライナーをさらに含んでもよい。
【0084】
一実施形態では、送達システムは多層状である。本明細書において使用される場合、「多層」という用語は、活性剤を含む少なくとも2つまたはそれよりも多くの層を含む経皮送達デバイスを指す。代表例として、多層状デバイスは、粘着剤中薬物(drug-in-adhesive)の2つまたはそれよりも多くの層を含有してもよい。これらの層は、膜によって他の層から分離されていてもよい。この様式では、1つの活性剤層によって、活性物質の即時放出をもたらすことができ、他の層によって、リザーバからの活性物質の制御放出をもたらすことができる。複数の実施形態では、多層状デバイスは、任意選択で、剥離ライナー層およびバッキングを含有してもよい。様々な層からの薬物放出速度は、薬物分子の膜透過性および拡散作用に左右される。多層状パッチの非限定的な一例が、図1Aに提供される。
【0085】
複数の実施形態では、経皮送達システムは、1つまたは複数の薬物リザーバを含む。「薬物リザーバ」という用語は、経皮送達のために薬物を保持し、放出するように作製された組成物を意味し、この組成物は、薬物およびマトリックス材料を組み合わせることによって製造される。薬物リザーバは、薬物リザーバ組成物、固体薬物リザーバ層、固体薬物リザーバ粘着剤層、または液体薬物リザーバ層であってもよい。一部の実施形態では、薬物リザーバは、多層積層型経皮薬物送達医療デバイスにおける、固体薬物リザーバ層であってもよい。粘着剤と組み合わされた場合、薬物リザーバは、固体薬物リザーバ粘着剤層であってもよく、これは例えば、モノリス型経皮薬物送達医療デバイスにおいて使用することができる。薬物リザーバはまた、別途注記されない限り、透過促進剤、可塑剤、および任意の他の好適な添加剤を含んでもよい。
【0086】
一実施形態では、薬物リザーバは、(a)メマンチン化合物、(b)アルカリ/塩基性塩、(c)1種または複数種のポリマー、(d)担体、(e)溶解剤を、任意選択で、透過促進剤および下に列挙される他の薬剤、例えばゲル化剤、エモリエント、界面活性剤、保湿剤、粘度向上剤、乳化剤などとともに含有する。薬物リザーバはまた、1種または複数種の(f)崩壊剤を含有してもよい。複数の実施形態では、1種または複数種のポリマーのうちの少なくとも1種は、アクリレートコポリマーである。
【0087】
一部の実施形態では、薬物リザーバは、活性成分として、メマンチン化合物またはその誘導体を含む。メマンチン(NAMENDA)は、アダマンタン(admantane)クラスの活性剤に属する化合物である。一部の実施形態では、この化合物は、式Iに示される構造を含む。別の実施形態では、メマンチン化合物は、3,5-ジメチルアダマンタン-1-アミン;1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン;1,3-ジメチル-5-アダマンタンアミン;3,5-ジメチル-1-アダマンタンアミン;3,5-ジメチル-1-アミノアダマンタン;および3,5-ジメチルトリシクロ(3.3.1.1(3,7))デカン-1-アミンとしても公知である:
【化1】
【0088】
本明細書において使用される場合、「化合物(単数)」および「化合物(複数)」という用語は、本明細書に開示される一般式、それらの一般式の任意の亜属によって包括される化合物、ならびに一般式および亜属の式内の任意の特定の化合物を指す。特に、本明細書において使用される場合、「メマンチン」は、3,5-ジメチルアダマンタン-1-アミンの塩酸塩を指す。
【0089】
一実施形態では、本発明による経皮送達システムは、遊離塩基の形態のメマンチン、例えば、その遊離塩基としての実験式がC1221Nである化合物(約10.7のpKaを有する)を含む。「遊離塩基」または「自由塩基」という用語は、アミンの共役酸(プロトン化)形態に対する、アミンの共役塩基(脱プロトン化)形態を指す。アミンは、第一級アミン(例えば、RNH[式中、Rはアルキル基である])であってもよく、第二級アミン(例えば、RNH[式中、RおよびRはそれぞれ個別に、同じまたは異なるアルキル基である])であってもよく、または第三級アミン(例えば、RN[式中、R、R、およびRはそれぞれ個別に、同じまたは異なるアルキル基である])であってもよい。
【0090】
ある特定の実施形態では、アミン塩は、分解反応を介してin situで塩基形態へと変換される。本明細書において使用される場合、「in situ」という用語は、周囲の環境、例えばデバイスが接触している生物的物質を含む、システムまたはデバイスの文脈内に存在するかまたはそこで生じる、プロセス、事象、物体、または構成成分を指す。一例として、in situ反応は、ヒトの皮膚組織によって提供される構成成分(例えば、水[これにより、メマンチン塩および炭酸水素塩を溶解させることによって、構成成分が水性形態で反応することが可能になる])を含む、デバイス中に存在する様々な構成成分(例えば、メマンチン塩および炭酸水素塩)の反応を指し得る。この用語は、環境の外側を指すex situと対比される。
【0091】
一実施形態では、分解反応は、メマンチンの塩とアルカリ塩との反応を含む。本明細書において使用される場合、「アルカリ塩」または「塩基性塩」は、水中に溶解された場合、7.0を超えるpHを有する溶液を生み出す塩を指す。一部の実施形態では、塩基性塩またはアルカリ塩は、弱酸の無機塩、例えば酢酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸カリウム、酢酸カリウム、およびリン酸カリウムからなる群から選択される、弱酸のアルカリ金属塩である。特定の実施形態では、アルカリ塩は、弱酸に由来するその共役塩基が加水分解して塩基性溶液を形成するものである。例えば、炭酸水素ナトリウム(NaCO)では、炭酸(弱酸)に由来する炭酸塩(共役塩基)が、水または他の極性媒体中で加水分解して、塩基性溶液が形成される。そのようなアルカリ塩の代表例としては、Li、Na、K、Rb、Mg2+、Ca2+、Sr2+、またはBa2+、好ましくはNa、K、Mg2+、Ca2+の塩が挙げられ、共役塩基は、例えば硫酸塩(SO )、硝酸塩(NO )、リン酸二水素塩(HPO )、酢酸塩(CHCOO)、シュウ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、炭酸水素塩(HCO )、炭酸塩(CO 2-)、リン酸塩(PO 3-)、リン酸水素塩(HPO 2-)、および硫化水素塩(HS)である。
【0092】
特に、塩は、Na、K、Mg2+、またはCa2+の、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、炭酸水素塩、または硫化水素塩、例えばNaHCO 、KHCO 、Mg2+(HCO 、またはNaCHCOOなどから選択される。
【0093】
ひとえに代表例として、塩が炭酸水素塩である場合、この塩は、メマンチンHCl塩とのin situ反応を経て、水、CO、および遊離アミンを以下の様式で放出する:
【0094】
Me(HCO+x*(R-NH Cl)→MeCl+xHO+xCO+xR-NH[式中、Meは金属(例えば、Li、Na、K、Rb、Mg2+、Ca2+、Sr2+、またはBa2+)であり、xは金属の原子価(例えば、1から3)であり、Rはメマンチンのアダマンタン環であり、-NHはメマンチンのアミン基である]。
【0095】
一実施形態では、反応は、極性媒体中で起こる。別の実施形態では、反応は、両親媒性媒体中で起こる。
【0096】
別の実施形態では、遊離塩基は、当該技術分野において公知の他の技法を使用することで生成できる。例えば、一実施形態では、遊離塩基はイオン交換体を使用して塩から生成される。好ましいアニオン交換樹脂は、第四級アンモニウム基、第三級スルホニウム基、第四級ホスホニウム基、またはアルキルピリジニウム基などの塩基性(カチオン性)基を含有する、市販の樹脂である。特に好ましいアニオン交換樹脂は、REXYN(商標)201(Fisher Scientific Co.)、AMBERLITE(商標)IR A-400(Mallinckrodt Chemical Works)、IONAC(商標)A-540(Matheson,Coleman and Bell)、DOWEX(商標)Iおよび21K(Dow Chemical Co.)、ならびにDUOLITE(商標)A-101DおよびES-109(Diamond Shamrock Chemical Co.)などの第四級アミンを含有するようなものである。
【0097】
別の実施形態では、本明細書に記載されるデバイスは、活性剤の誘導体を含む。本明細書において使用される場合、「誘導体」という用語は、活性剤の塩、アミド、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、アセタール、ケタール、オルトエステル、ヘミアセタール、ヘミケタール、酸、塩基、溶媒和物、水和物、またはプロドラッグを包含する。そのような誘導体は、当業者であれば、そのような誘導体化に関して公知の方法を使用して容易に調製することができる。ある特定の実施形態では、誘導体は、実質的な毒性効果を伴わずに動物またはヒトに対して投与することができ、薬学的に活性であるか、またはプロドラッグであるかのいずれかである。メマンチン誘導体の代表的な形式については、米国特許第3,391,142号;同第4,122,193号;同第4,273,774号;および同第5,061,703号;米国特許出願公開第2004-0087658号;同第2005-0113458号;同第2006-0205822号;同第2009-0081259号;同第2009-0124659号;および同第2010-0227852号;欧州特許出願公開第EP2260839A2号;同第EP1682109B1号;ならびに国際特許出願公開第WO2005079779号に記載されている。例えば、抗酸化剤である、N-アセチル-Cys-OHおよびN-アセチル-Cys(アリル)-OHを含有するメマンチン誘導体については、Cacciatoreら、Cent Nerv Syst Agents Med Chem.、2016年(PMID:27356627)に記載されている。
【0098】
別の実施形態では、デバイスは、活性剤の塩を含む。「塩」という用語には、当該技術分野において周知の様々な有機および無機対イオンに由来する塩が包含され、例として、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、メタリン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、ヘキサン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、グリコール酸塩、ピルビン酸塩、乳酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、L-リンゴ酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、L-酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸塩、ケイ皮酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、1,2-エタンジスルホン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、4-メチルビシクロ-[2.2.2]オクタ-2-エン-1-カルボン酸塩、グルコヘプトン酸塩、4,4’-メチレンビス-(3-ヒドロキシ-2-エン-1-カルボン酸)塩、3-フェニルプロピオン酸塩、トリメチル酢酸塩、第三級ブチル酢酸塩、ラウリル硫酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、ムコン酸塩、酪酸塩、フェニル酢酸塩、フェニル酪酸塩、またはバルプロ酸塩が挙げられる。一部の実施形態では、化合物の塩は、塩酸塩である。一部の実施形態では、化合物の塩は、化合物を、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、またはメタリン酸と反応させることによって形成される。一部の実施形態では、化合物の塩は、化合物を有機酸と反応させることによって形成される。一部の実施形態では、化合物の塩は、化合物を、有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、L-リンゴ酸、マレイン酸、シュウ酸、フマル酸、トリフルオロ酢酸、酒石酸、L-酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-メチルビシクロ-[2.2.2]オクタ-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、4,4’-メチレンビス-(3-ヒドロキシ-2-エン-1-カルボン酸)、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸、酪酸、フェニル酢酸、フェニル酪酸、またはバルプロ酸と反応させることによって形成される。
【0099】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるのは、式(I)の構造を有する化合物の塩酸塩である。特定の実施形態では、メマンチン塩は、メマンチン塩酸塩を包含する。
【0100】
別の実施形態では、デバイスは、活性剤の溶媒付加形態、例えば溶媒和物およびアルコラートを含む。溶媒和物は、化学量論的または非化学量論的量の溶媒を含有し、水、エタノール、および同類のものなどの許容可能な溶媒によって、結晶化のプロセス中に形成され得る。水和物は、溶媒が水である場合に形成され;アルコラートは、溶媒がアルコールである場合に形成される。本明細書に記載される化合物の溶媒和物は、簡便に、常用の技法を使用して調製または形成することができる。一実施形態では、溶媒和物は、メマンチン化合物と1個もしくは複数の溶媒(例えば、水またはアルコール)分子、またはメマンチン化合物1分子当たり1から約100、もしくは1から約10、もしくは1から約2、3、もしくは4個の溶媒分子との複合体を含む。他の実施形態では、本明細書において提供される化合物は、非溶媒和形態で存在してもよく、溶媒和形態で存在してもよい。
【0101】
別の実施形態では、デバイスは、活性剤のアミドまたはエステルを含む。「アミド」という用語は、-N(R)-C(=O)-または-C(=O)-N(R)-のいずれかを指す(式中、Rは本明細書において定義されており、水素および他の基が含まれる)。「置換アミド」という用語が、R1が水素ではない状況を指す一方で、「非置換アミド」という用語は、R1が水素である状況を指す。一実施形態では、アミド基は、非置換であるか、または窒素原子を介して、アルキル(C~C)基、アリール(C~C)基、フェニル、炭素環式(C~C)基、複素環式(C~C)基、アシル、アルキル(C~C)ハロゲン化物、もしくはアルケニル(C~C)基によって置換されている。「エステル」という用語は、少なくとも1個のヒドロキシル基がアルコキシ基によって置き換えられている、酸(有機または無機)に由来する化学物質を指す。「エステル」の代表的な形式としては、限定されるものではないがカルボン酸、リン酸、ホスフィン酸、スルホン酸、スルフィン酸、およびボロン酸を含む酸性基の、限定されるものではないがアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、シクロアルキル、およびヘテロシクリルエステルが挙げられる。
【0102】
別の実施形態では、デバイスは、活性剤の異性体を含む。「異性体」という用語は、同じ式を有するが、分子内における原子の配置が異なる化合物を包含する。複数の実施形態では、メマンチン化合物の異性体は、式Iの化合物の「互変異性体」または「立体異性体」である。「立体異性体」という用語は、1つまたは複数の立体中心のキラリティーにおいて異なる化合物を指す。立体異性体には、エナンチオマーおよびジアステレオマーが包含される。「互変異性体」という用語は、プロトンの位置において異なる化合物の交互に繰り返される形態、例えばエノール-ケト互変異性体およびイミン-エナミン互変異性体、またはピラゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、およびテトラゾールなどの、環の-NH-部分および環の=N-部分の両方に結合する環原子を含有するヘテロアリール基の互変異性形態などを指す。好ましくは、式Iの化合物の互変異性体および立体異性体は、例えばNMDA受容体拮抗作用に関して、親化合物のメマンチンと類似するかまたはそれと同じ生物学的特性を有する。
【0103】
一部の実施形態では、デバイスは、活性剤のプロドラッグを含む。「プロドラッグ」という用語は、対象に対して投与された場合に、実施形態の化合物、またはその活性代謝物もしくは残基を直接的または間接的に提供することが可能である、実施形態の化合物の任意の誘導体を指す。特に好ましい誘導体およびプロドラッグは、そのような化合物が対象に対して投与された場合に、実施形態の化合物のバイオアベイラビリティを増加させる(例えば、経皮投与される化合物が皮膚組織内へとより容易に吸収されるようにすることによって)か、または親種と比較して、生物学的区画(例えば、脳)に対する親化合物の送達を促進するようなものである。プロドラッグには、本発明の化合物のアミドおよびエステル形態が包含される。エステルプロドラッグの例としては、ギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、アクリル酸エステル、およびエチルコハク酸エステル誘導体が挙げられる。プロドラッグの一般的概要については、Higuchiら、Pro drugs as Novel Delivery Systems、American Chemical Society Symposium Seriesの第14巻およびEdward B. Roche編、Bioreversible Carriers in Drug Design、American Pharmaceutical Association and Pergamon Press、1987年に提供されており、これらは両方とも、参照により本明細書に援用される。
【0104】
一部の実施形態では、デバイスは、活性剤の混合物を含む。「混合物」という用語は、2種またはそれよりも多くの物質が、それらがそれら個別の特性を失ってしまう反応を発生させずに一緒に混ぜられていることを指す。複数の実施形態では、混合物は、約2、3、4、5種、またはそれよりも多くの前述のメマンチン化合物を含有してもよい。
【0105】
一実施形態では、活性成分は、微粒子化形態である。「微粒子化」という用語は、直径が数ミクロンである極度に細かい粒子を指す。化合物を微粒子化するための方法、例えばWO2011/070361号に開示されているジェットミル粉砕技法が、当該技術分野において公知である。一実施形態では、活性成分はメマンチンHClであり、微粒子化メマンチンHClの平均粒径は、約20μm未満であり、特定すると約5μm未満であり、特に約1μm未満、例えば約0.5μmまたは約0.1μmですらある。
【0106】
一部の実施形態では、活性成分は、炭酸水素塩である。代表的な炭酸水素塩としては、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、またはそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、炭酸水素塩は、炭酸水素ナトリウムである。
【0107】
一実施形態では、活性成分は、アンモニウムイオンの形態である。イオン形態は水(および血液)に対してより溶解性であるものの、膜を通るその通過はややゆっくりとなる。遊離塩基形態(遊離アミン)のメマンチン、ドネペジル、およびフィンゴリモドは親油性であり、皮膚細胞を通ってより容易に吸収され、これらの薬物の塩形態(親水性)よりも速く皮膚バリアに浸透する。本明細書に記載されるデバイスおよびシステムでは、塩形態の薬物の遊離塩基形態への変換は、構成成分、例えば炭酸水素塩およびメマンチンHClを一緒に、または互いに対して近接させて提供することによって、in situで達成される。任意選択で、親油性溶媒が、より疎水性の遊離塩基形態の薬物を溶解させるために含まれてもよい。水性反応を実行するための、in situ合成プロセスの他の構成成分、例えば極性または両親媒性媒体が、組成物中に含有されてもよく、または外部から提供されてもよい。
【0108】
ある特定の実施形態では、活性化合物および炭酸水素塩は、任意選択で任意の他の成分またはアジュバントとともに、一緒に共微粒子化されて、配合物にされてもよい。成分を共微粒子化するための方法については、当該技術分野において公知である。例えば、エアジェットミル製法によって、ソルビトール、グリセロール、および炭酸水素カリウムを共微粒子化(0.05~0.5μmの粒径範囲)する方法について開示している、米国特許第5,424,077号を参照されたい。
【0109】
前述の実施形態では、薬物リザーバは、担体を追加的に含んでもよい。本明細書において使用される場合、「担体」という用語は、前述の薬物を送達するために設計された、エマルション、懸濁液、ゲル、ゾル、コロイド、および固体を包含する。
【0110】
一部の実施形態では、担体および/または賦形剤としては、限定されるものではないが、アルコール、特にポリヒドロキシアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、ならびに植物油および鉱油が挙げられる。担体および/または賦形剤は、溶液、懸濁液、水中油型エマルション、または油中水型エマルションを形成するために、様々な濃度および組合せで添加することができる。ある特定の実施形態では、担体および/または賦形剤は、C~Cジオール、C~Cトリオール、およびそれらの混合物からなる群から選択される極性溶媒材料、ならびに/または脂肪アルコールエステル、脂肪酸エステルからなる群から選択される極性脂質材料である。また、例えば溶媒材料の脂質材料に対する重量比が約60:40から約99:1である、極性溶媒材料および脂質材料の混合物を使用することもできる。他の好適な担体については、米国特許第5,026,556号に提供されている。
【0111】
一実施形態では、担体は、2種またはそれよりも多くのアルコールを含む組成物である。この実施形態の下では、担体は、例えばオクチルドデカノール(octydodecanol)とグリセロールとの重量比が約2:1から1:2の間、約3:2から2:3の間、約10:7から7:10の間、または約1:1である、オクチルドデカノールおよびグリセロールの混合物を含んでもよい。本明細書全体を通じて、文脈が別途要求しない限り、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」という語は、明言されたステップもしくは要素、またはステップもしくは要素の群は包含されるが、任意の他のステップもしくは要素、またはステップもしくは要素の群も除外されないことを暗示するものとして理解される。したがって、担体がオクチルドデカノールおよびグリセロールを含む場合、その組成物は、他の要素、例えば緩衝液、界面活性剤、エモリエント、および同類のものを含んでもよい。一実施形態では、担体は、親水性溶媒である。一実施形態では、親水性溶媒は、グリセロールである。一実施形態では、親水性溶媒は、1~30重量%、2~30重量%、2~20重量%、5~25重量%、5~20重量%、5~15重量%、7~15重量%、7~12重量%、および8~12重量%の間の量で、薬物リザーバ内に存在する。
【0112】
別の実施形態では、担体は、2種またはそれよりも多くのアルコールから本質的になる。さらに別の実施形態では、担体は、2種のアルコールからなる。「からなる」は、「からなる」という語句の前に来るものが何にせよ、それを含み、それに限定されることを意味する。したがって、「からなる」という語句は、列挙された要素が必要とされるまたは必須であることを示す。「から本質的になる」は、この語句の前に列挙されるあらゆる要素を含み、列挙された要素に関する、本開示において特定された活性または作用に対して、干渉しないかまたはそれに寄与しない他の要素に限定されることを意味する。したがって、「から本質的になる」という語句は、列挙された要素が必要とされるまたは必須であるものの、他の要素は任意選択ではなく、それらが列挙された要素の活性または作用に影響を及ぼすか否かに応じて、存在してもよく、または存在しなくてもよいことを示す。
【0113】
ある特定の実施形態では、担体は緩衝されていてもよい。一実施形態では、担体は、アルカリ性緩衝液、例えばアンモニウム緩衝液で緩衝されている。別の実施形態では、担体は、酸性緩衝液、例えばエタン酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酢酸塩などで緩衝されている。別の実施形態では、緩衝担体は、双性イオン緩衝液、例えばグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、およびフェニルアラニン、TRIS、MES、ADA、ACES、PIPES、MOPSO、コラミンクロリド、MOPS、BES、TES、HEPES、DIPSO、MOBS、TAPSO、アセトアミドグリシン、TEA、POPSO、HEPPSO、EPS、HEPPS、トリシン、TRIZMA、グリシンアミド、グリシルグリシン、HEPBS、ビシン、TAPS、AMPB、CHES、AMP、AMPSO、CAPSO、CAPS、ならびにCABSなどを含有する。例えば、適正に較正されたpHプローブの使用を介して、緩衝組成物を配合する方法が、当該技術分野において公知である。
【0114】
ある特定の実施形態では、薬物リザーバおよび/または接触用粘着剤は、任意選択で、1種または複数種の界面活性剤をさらに含有してもよい。好適な、追加的な界面活性剤の例としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、およびそれらの組合せが挙げられる。好適な界面活性剤の具体例が当該技術分野において公知であり、送達デバイスへの組み込みにとって好適なものが含まれる。薬物リザーバおよび/または接触用粘着剤は、好適には、層またはデバイスの約0.01重量%から約2重量%の量で、1種または複数種の界面活性剤を含んでもよい。1種または複数種の界面活性剤が用いられる場合、存在する量は、選択された特定の界面活性剤、特定の投与様式(例えば、経皮または粘膜)、および所望される効果に応じて変動することになる。
【0115】
薬物リザーバおよび/または接触用粘着剤はまた、1種または複数種の乳化剤をさらに含有してもよい。好適な乳化剤としては、限定されるものではないが、天然の脂肪酸、エステル、およびアルコール、ならびにそれらの誘導体、ならびにそれらの組合せが挙げられる。好適な乳化剤の他の例としては、ポリソルベート20、ポリソルベート80などの非イオン性物質、リン酸DEAなどのアニオン性物質、ベヘントリモニウムメトサルフェートなどのカチオン性物質、および同類のものが挙げられる。1種または複数種の乳化剤が、約0.01重量%から約2重量%の量で、層またはデバイス内に含まれてもよい。
【0116】
薬物リザーバおよび/または接触用粘着剤は、好ましくは皮膚を刺激しない量で選択された、粘度を増加させ、保持時間を増加させる1種または複数種の薬剤を含んでもよい。好適な薬剤としては、限定されるものではないが、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、カラゲナン、カーボポール、および/またはそれらの組合せが挙げられる。複数の実施形態では、粘度を増加させる薬剤は、約0.1重量%から約10重量%の量で、層またはデバイス内に含まれる。
【0117】
デバイスまたはシステムはまた、許容可能な界面活性剤、共溶媒、粘着剤、ならびにpHおよびモル浸透圧濃度を調整する薬剤などの追加的な成分を含んでもよい。
【0118】
デバイスまたはシステムは、医薬組成物において従来見出される補助的な構成成分を、それらの技術分野において確立された様式で、かつそれらの技術分野において確立されたレベルで、追加的に含んでもよい。例えば、組成物は、併用療法のための追加的な適合性の薬学的に活性である材料、例えば、アムロジピン、フェロジピン、イスラジピン、ラシジピン、レルカニジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、ニトレンジピン、ニソルジピン、もしくは(+)イソプロピル2-メトキシエチル4-(2-クロロ-3-シアノ-フェニル)-1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチルピリジン-3,5-ジカルボキシレートから選択されるL型カルシウムチャネル遮断薬を含めた、ドネペジル(ARICEPT(登録商標))、メマンチン、リバスチグミン(EXCELON(登録商標))、ガランタミン(RAZADYNE(登録商標))、イコペジル、ピリドスチグミン、エドロホニウム、ネオスチグミン、フィゾスチグミン、フペルジンA、フェンセリン、タクリン、またはそれらの組合せを含有してもよい。米国特許出願公開第2009/0156639号を参照されたい。
【0119】
複数の実施形態では、少なくとも薬物リザーバおよび/または接触用粘着剤の1つまたは複数の成分は、医薬品グレードであり、例えば、臨床試験および/または医学的使用のために予期される純度および稠度で配合されている。
【0120】
特定の一実施形態では、CNS障害を処置するための方法は、それを必要とする対象に対して、(i)ドネペジルまたはメマンチンの塩をアルカリ塩と反応させることによってin situで生成される、ドネペジル塩基またはメマンチン塩基;(ii)担体、および(iii)アクリレートポリマーを含む粘着剤マトリックスを含む経皮送達システムを投与することを含む。特定の一実施形態では、担体は、グリセロールである。複数の実施形態では、塩は、活性剤のハロゲン化物塩(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、特に塩酸塩である。複数の実施形態では、アルカリ/塩基性塩は、NaまたはKなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸水素塩である。複数の実施形態では、担体は、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールから選択されるグリコールなどのグリコールである。複数の実施形態では、溶解剤は、高級アルコール、例えばヒドロカルビル基部分が直鎖または分岐状である、一価飽和または不飽和脂肪族アルコールなどのC10~30アルコールである。一部の実施形態では、高級アルコールは、少なくとも40℃の融点を有する。本発明において使用されるC10~30高級アルコールとしては、例えばラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ヘキシルドデカノール、オクチルドデカノール、セトステアリルアルコール、2-デシルテトラデシノール、コレステロール、シトステロール、フィトステロール、ラノステロール、ラノリンアルコール、水素化ラノリンアルコール、およびその他が挙げられる。複数の実施形態では、高級アルコールは、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、およびオレイルアルコールから選択される。崩壊剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)またはポリビニルアルコール(PVA)(それらの架橋誘導体、例えばポリビニルポリピロリドンなどを含む)から選択することができる。アクリレートポリマーは、ヒドロキシル基含有ポリアクリレートから選択される、アクリル酸/酢酸ビニルのコポリマーであってもよい。一実施形態では、アクリレートコポリマーは、酢酸ビニル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、およびアクリル酸グリシジルのモノマー組成物(DUROTAK(登録商標)2287)から製造される。他の構成成分、例えば可塑剤、透過促進剤、界面活性剤などもまた含まれてもよく、一部の実施形態では、これらの構成成分としては、クエン酸トリエチル、グリセロール、ソルビタンモノラウレート、α-ヒドロキシ酸促進剤(例えば、乳酸またはグリコール酸のエステル、すなわち乳酸ラウリル)が挙げられる。
【0121】
複数の実施形態では、薬物リザーバは、リザーバ全体の重量に対して、少なくとも0.5重量%、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも16重量%、少なくとも17重量%、少なくとも18重量%、少なくとも19重量%、少なくとも20重量%、少なくとも21重量%、少なくとも22重量%、少なくとも23重量%、少なくとも24重量%、少なくとも25重量%、少なくとも26重量%、少なくとも27重量%、少なくとも28重量%、少なくとも29重量%、少なくとも30重量%、少なくとも31重量%、少なくとも32重量%、少なくとも33重量%、少なくとも34重量%、少なくとも35重量%、少なくとも36重量%、少なくとも37重量%、少なくとも38重量%、少なくとも39重量%、少なくとも40重量%、またはそれよりも多い重量%(すべてが薬物リザーバ全体の重量に対する値である)を含めた、少なくとも約0.1重量%の活性剤を含む。複数の実施形態では、薬物リザーバ内の活性剤の重量%は、リザーバ全体の重量の約10~50重量%、10~30重量%、15~30重量%、または15~25重量%の間である。
【0122】
一部の実施形態では、薬物リザーバは、リザーバ全体の重量に対して、少なくとも0.5重量%、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも3重量%、少なくとも4重量%、少なくとも5重量%、少なくとも6重量%、少なくとも7重量%、少なくとも8重量%、少なくとも9重量%、少なくとも10重量%、少なくとも11重量%、少なくとも12重量%、少なくとも13重量%、少なくとも14重量%、少なくとも15重量%、少なくとも16重量%、少なくとも17重量%、少なくとも18重量%、少なくとも19重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、またはそれよりも多い重量%(すべてがリザーバ全体の重量に対する値である)を含めた、少なくとも約0.1重量%の量で、塩基性/アルカリ塩、例えば炭酸水素塩を含む。複数の実施形態では、薬物リザーバ内のアルカリ塩の重量%は、リザーバ全体の重量に基づいて、約0.1~20重量%、0.1~15重量%、0.1~12重量%、0.5~15重量%、0.5~12重量%、0.5~5重量%、1~5重量%、または6%~12重量%の間である。
【0123】
一部の実施形態では、薬物リザーバは、リザーバ全体の重量に対して、少なくとも0.5重量%、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも3重量%、少なくとも4重量%、少なくとも5重量%、少なくとも6重量%、少なくとも7重量%、少なくとも8重量%、少なくとも9重量%、少なくとも10重量%、少なくとも11重量%、少なくとも12重量%、少なくとも13重量%、少なくとも14重量%、少なくとも15重量%、少なくとも16重量%、少なくとも17重量%、少なくとも18重量%、少なくとも19重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、またはそれよりも多い重量%(すべてがリザーバ全体の重量に対する値である)を含めた、少なくとも約0.1重量%の量で、担体、例えばグリセロールなどのグリコールアルコールを含む。複数の実施形態では、薬物リザーバ内の担体の重量%は、リザーバ全体の重量の約5%~15%の間である。
【0124】
複数の実施形態では、薬物リザーバは、リザーバ全体の重量に対して、少なくとも0.5重量%、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも3重量%、少なくとも4重量%、少なくとも5重量%、少なくとも6重量%、少なくとも7重量%、少なくとも8重量%、少なくとも9重量%、少なくとも10重量%、少なくとも11重量%、少なくとも12重量%、少なくとも13重量%、少なくとも14重量%、少なくとも15重量%、少なくとも16重量%、少なくとも17重量%、少なくとも18重量%、少なくとも19重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、またはそれよりも多い重量%(すべてがリザーバ全体の重量に対する値である)を含めた、少なくとも約0.1重量%の量で、溶解剤、例えばオクチルドデカノールなどの高級アルコールを含む。複数の実施形態では、薬物リザーバは、リザーバ全体の重量の約5%~15%、特に約8%~12%の間の量で溶解剤を含む。別の実施形態では、薬物リザーバ内の溶解剤の重量%は、リザーバ全体の重量の約2%~10%、特に約7%~8%の間である。
【0125】
複数の実施形態では、薬物リザーバ内の崩壊剤、例えばポリビニルピロリドン(PVP)またはポリビニルアルコール(PVA)(それらの架橋誘導体を含む)の量は、リザーバ全体の重量に対して、少なくとも約4重量%、例えば約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約25重量%、約26重量%、約27重量%、約28重量%、約29重量%、約30重量%、またはそれよりも多い重量%(すべてがリザーバ全体の重量に対する値である)を含めた、少なくとも約1重量%である。複数の実施形態では、薬物リザーバ内の崩壊剤の重量%は、リザーバ全体の重量の約10%~20%、特に約12%~18%の間である。
【0126】
複数の実施形態では、薬物リザーバは、アクリレートポリマー、例えばヒドロキシル基含有ポリアクリレートなどから選択されるアクリル酸/酢酸ビニルのコポリマー(それらの架橋誘導体を含む)を、リザーバ全体の重量に対して、少なくとも約8重量%、約10重量%、約12重量%、約14重量%、約16重量%、約18重量%、約20重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、約25重量%、約26重量%、約27重量%、約28重量%、約29重量%、約30重量%、約31重量%、約32重量%、約33重量%、約34重量%、約35重量%、約36重量%、約37重量%、約38重量%、約39重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、またはそれよりも多い重量%(すべてがリザーバ全体の重量に対する値である)を含めた、少なくとも約5重量%含む。複数の実施形態では、薬物リザーバ内のアクリレートポリマーの重量%は、リザーバ全体の重量の約20%~45%、特に約30%~40%の間である。
【0127】
任意選択の成分、例えば透過促進剤、ゲル化剤、エモリエント、界面活性剤、保湿剤、粘度向上剤、乳化剤のそれぞれの量は、個別に、リザーバ全体の約0.2重量%、約0.4重量%、約0.6重量%、約0.8重量%、約1.0重量%、約1.5重量%、約2.0重量%、約2.5重量%、約3.0重量%、約3.5重量%、約4.0重量%、約4.5重量%、約5.0重量%、約6.0重量%、約6.5重量%、約7.0重量%、約7.5重量%、約8.0重量%、約9.0重量%、約10重量%、またはそれよりも多い重量%(すべてがリザーバ全体の重量に対する値である)を含めた、約0.1重量%から約10重量%の範囲であってもよい。
【0128】
本明細書および上文に記載されているような組成物を含む薬物リザーバは、皮膚接触用粘着剤を追加的に含む経皮送達システムにおける使用が企図される。皮膚接触用粘着剤層は、本明細書に列挙される粘着剤材料のいずれかから製作することができる。一実施形態では、皮膚接触用粘着剤は、高級アルコールおよび生体適合性ポリマーを含む。
【0129】
一実施形態では、皮膚接触用粘着剤層は、C10~30高級アルコールを含む。複数の実施形態では、高級アルコールは、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、およびオレイルアルコールからなる群から選択される。一実施形態では、皮膚接触用粘着剤は、薬物リザーバ内に存在する親水性溶媒を含まない。
【0130】
一実施形態では、皮膚接触用粘着剤層内の高級アルコール、例えばオクチルドデカノールの量は、粘着剤層の重量に対して、少なくとも約4重量%、例えば約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、またはそれよりも多い重量%(すべてが粘着剤層の重量に対する値である)を含めた、少なくとも約1重量%である。複数の実施形態では、粘着剤層内の高級アルコールの重量%は、粘着剤層全体の約5%~15%、特に約8%~12%の間である。
【0131】
一実施形態では、皮膚接触用粘着剤層は、ポリイソブチレン(PIB)、シリコーンポリマー、アクリレートコポリマー、ブチルゴム、ポリブチレン、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、それらの混合物およびコポリマーである、生体適合性ポリマーを含む。特に、生体適合性ポリマーは、ポリイソブチレンである。
【0132】
一実施形態では、生体適合性ポリマーは、PIB Oppanol B100(BASF、MW=1,100,000)、PIB Oppanol B12(BASF、MW=51,000、MW/MN=3.2)、およびポリブテン(PB)Indopol H1900(INEOS oligomers、MW=4500、MW/MN=1.8)を含む、PIB系マトリックスである。PIBマトリックスの構成成分間における重量比は、以下の通りである:PIB Oppanol B100:PIB Oppanol B12:Indopol H1900=10:50:40。Brantsevaら、European Polymer Journal、第76巻、228~244頁、2016年を参照されたい。
【0133】
一実施形態では、皮膚接触用粘着剤層は、約40重量%、約41重量%、約42重量%、約43重量%、約44重量%、約45重量%、約46重量%、約47重量%、約48重量%、約49重量%、約50重量%、約51重量%、約52重量%、約53重量%、約54重量%、約55重量%、約56重量%、約57重量%、約58重量%、約59重量%、約60重量%、約61重量%、約62重量%、約63重量%、約64重量%、約65重量%、約66重量%、約67重量%、約68重量%、約69重量%、約70重量%、約71重量%、約72重量%、約73重量%、約74重量%、約75重量%、約76重量%、約77重量%、約78重量%、約79重量%、約80重量%、約81重量%、約82重量%、約83重量%、約84重量%、約85重量%、約86重量%、約87重量%、約88重量%、約89重量%、約90重量%、約91重量%、約92重量%、約93重量%、約94重量%、約95重量%、約96重量%、約97重量%、約98重量%、約99重量%、約99.9、またはそれよりも多い重量%(すべてが粘着剤層の重量に対する値である)の、1種または複数種の生体適合性ポリマーを含む。特に、粘着剤層内のポリマーの重量%は、粘着剤層全体の約50%~90%、特に約60%~80%の間である。
【0134】
一部の実施形態では、皮膚接触用粘着剤層は、任意選択で、高度に分散性のシリカ、例えば疎水性の薬物および他の疎水性成分を効果的に吸着することができる疎水性コロイド状シリカを含む。疎水性コロイド状シリカをある特定の百分率で賦形剤として使用することによって(配合物中約3%から約20%、好ましくは約5%から約10%)、マトリックスを通じた活性成分の拡散作用を、保管中に制御することができる。組成物において使用するための分散性シリカの例としては、限定されるものではないが、AEROSIL(登録商標)の名称で販売されている、医薬製品において使用するための高純度の非晶質無水コロイド状二酸化ケイ素、例えばAEROSIL(登録商標)90、AEROSIL(登録商標)130、AEROSIL(登録商標)150、AEROSIL(登録商標)200、AEROSIL(登録商標)300、AEROSIL(登録商標)380、AEROSIL(登録商標)OX50、AEROSIL(登録商標)TT600、AEROSIL(登録商標)MOX80、AEROSIL(登録商標)COK84、AEROSIL(登録商標)R202、AEROSIL(登録商標)R805、AEROSIL(登録商標)R812、AEROSIL(登録商標)812S、AEROSIL(登録商標)R972、および/もしくはAEROSIL(登録商標)R974、または任意の他の高度に分散性のシリカが挙げられ、特に、AEROSIL(登録商標)200および/またはAEROSIL(登録商標)R972を、高度に分散性のシリカとして、本発明に従って使用することができる。
【0135】
一実施形態では、皮膚接触用粘着剤層は、少なくとも約3重量%、例えば約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、またはそれよりも多い重量%(すべてが粘着剤層全体の重量に対する値である)を含めた、粘着剤層の重量に対して少なくとも約1重量%を含めた、粘着剤層全体の重量に対して少なくとも約40重量%の高度に分散性のシリカを含む。
【0136】
一部の実施形態では、皮膚接触用粘着剤層は、任意選択で、マトリックス改質剤を含む。理論によって束縛されることを意図するものではないが、マトリックス改質剤は、粘着剤マトリックスの均質化を助長すると考えられる。親水性部分の吸着が、このプロセスに関して可能性のあるメカニズムである。したがって、ある程度水吸着剤である公知のマトリックス改質剤を使用することができる。例えば、可能性のあるマトリックス改質剤としては、コロイド状二酸化ケイ素、ヒュームドシリカ、架橋ポリビニルピロリドン(PVP)、可溶性PVP、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC))、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、またはカオリンもしくはベントナイトなどのクレイが挙げられる。例示的な市販のヒュームドシリカ製品は、Cab-O-Sil(Cabot Corporation、Boston、Mass.)である。また、米国特許出願公開第2003/0170308号に記載されている親水性混合物、例えば、PVPとPEGの混合物、またはPVP、PEG、および水膨潤性ポリマー、例えばEUDRAGITの商品名で販売されているポリメタクリレート系コポリマー、具体的にはEUDRAGIT(登録商標)L100-55などの混合物を用いることもできる。
【0137】
複数の実施形態では、マトリックス改質剤は、少なくとも約3重量%、例えば約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、またはそれよりも多い重量%(すべてが粘着剤層全体の重量に対する値である)を含めた、粘着剤マトリックスの重量に対して約1~40%、約10~30%、約15~25%、約5~7%、約7~20%、または約7~25%の間の量(部分範囲を包含する)で、接触用粘着剤層内に個別に含まれる。一部の実施形態では、マトリックス改質剤は、エチルセルロースを含まない。
【0138】
一部の実施形態では、疎水性薬物(例えば、メマンチン)および他の疎水性成分が、当該技術分野において公知の技法を使用して、シリカ粒子の疎水性表面に吸着されてもよい。そのような実施形態では、疎水性コロイド状シリカは、薬物堆積のために大きい比表面積を有するとともに、疎水性薬物の強力な吸着を呈する。
【0139】
一実施形態では、製造されたばかりの皮膚接触用粘着剤層は、全身的送達を意図した薬学的活性剤を含まない。しかしながら、皮膚接触用粘着剤層は、経皮送達システムへと製作され、ある期間保管された場合、および/または使用中に、薬物リザーバ粘着剤マトリックスから皮膚接触用粘着剤層への薬剤の拡散作用に起因して、薬学的活性剤を含有し得る。
【0140】
皮膚接触用粘着剤層および薬物リザーバ粘着剤マトリックスの一方または両方における浸透または透過促進剤は、当該技術分野において公知の多種多様なそのような化合物から選択することができる。一部の実施形態では、粘着剤マトリックスにおいて使用するための透過促進剤としては、限定されるものではないが、ラウリン酸メチル、プロピレングリコールモノラウレート、グリセロールモノラウレート、グリセロールモノオレエート、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、および酢酸ドデシルが挙げられる。追加的な透過促進剤については、米国特許第8,874,879号に記載されており、これは参照により本明細書に援用される。本発明の組成物は、1種もしくは複数種、または少なくとも1種の透過促進剤を含んでもよいことが理解されるであろう。複数の実施形態では、浸透または透過促進剤は、粘着剤マトリックスの重量に対して約1~10%、約2~5%、約2~10%の間の量で含まれる。
【0141】
皮膚接触用粘着剤層および薬物リザーバ粘着剤マトリックスの一方または両方は、当該技術分野において公知であるような、他の従来の添加剤、例えば接着薬剤、抗酸化剤、架橋剤または硬化剤、pH調節剤、顔料、染料、屈折粒子、伝導性種、抗菌剤、乳白剤、ゲル化剤、粘度調整剤または増粘剤、安定化剤、および同類のものなどをさらに含んでもよい。また、接着性を低減するまたは除く必要があるような実施形態では、従来の減粘剤を使用することもできる。また、保管中の変質を防止するため、すなわち、酵母菌およびカビなどの微生物の増殖を阻害するために、他の薬剤、例えば抗菌剤などを添加することもできる。好適な抗菌剤は、典型的には、p-ヒドロキシ安息香酸のメチルエステルおよびプロピルエステル(すなわち、メチルパラベンおよびプロピルパラベン)、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、イミド尿素、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される。これらの添加剤およびそれらの量については、それらが粘着剤および/または活性剤の所望される化学的特性および物理的特性に対して有意に干渉しないようなやり方で選択される。
【0142】
また、皮膚接触用粘着剤層および薬物リザーバ粘着剤マトリックスの一方または両方は、薬物、促進剤、または組成物の他の構成成分に起因する皮膚刺激および/または皮膚損傷の可能性を最小化または排除するために、刺激軽減添加剤をさらに含有してもよい。好適な刺激軽減添加剤としては、例えば:α-トコフェロール;モノアミンオキシダーゼ阻害剤、特に2-フェニル-1-エタノールなどのフェニルアルコール;グリセロール;サリチル酸およびサリチレート;アスコルビン酸およびアスコルベート;モネンシンなどのイオノフォア;両親媒性アミン;塩化アンモニウム;N-アセチルシステイン;シス-ウロカニン酸;カプサイシン;クロロキン;ならびにコルチコステロイドが挙げられる。
【0143】
方法では、治療剤および治療剤を含むリザーバから構成される経皮送達システムが提供される。治療剤は、(i)経口的に送達された場合、約48時間を超える血中半減期を有し、(ii)慢性状態を処置するためのものである。対象の皮膚に対して経皮送達システムを適用すると、治療剤の経皮送達が起こって、定常状態において治療剤の経口投与と生物学的に同等である、薬剤(または代謝物)の全身的血中濃度がもたらされる。下で考察されるように、生物学的同等性は、(a)0.70から1.43の間もしくは0.80から1.25の間にある、経皮送達システムから、および経口送達を介して投与される治療剤の、相対的な平均CmaxおよびAUCの90%信頼区間、または(b)0.70から1.43の間もしくは0.80から1.25の間にある、経皮送達システムから、および経口送達を介して投与される治療剤の、AUCおよびCmaxの幾何平均比の90%信頼区間によって確立される。
【0144】
複数の実施形態では、生物学的同等性は、(a)経皮送達システムから、および経口送達を介して投与される治療剤の、相対的な平均CmaxおよびAUCの90%信頼区間が、約0.60から1.30の間、約0.7から1.43の間、もしくは0.8から1.25の間にあること、または(b)経皮送達システムから、および経口送達を介して投与される治療剤の、AUCおよびCmaxの幾何平均比の90%信頼区間が、0.60から1.30の間、約0.7から1.43の間、もしくは0.8から1.25の間にあることによって確立される。一部の実施形態では、生物学的同等性を確立するための90%信頼区間の比は、約0.60から1.25の間、約0.6から1.0の間、約0.70から1.30の間、約0.70から1.25の間、約0.70から1.0の間、約0.80から1.30の間、約0.80から1.25の間、約0.80から1.0の間、約0.90から1.30の間、約0.90から1.25の間、約0.90から1.0の間、約1.0から1.30の間、または約1.0から1.25の間である。
【0145】
当業者であれば、約48時間を超える半減期を有する治療剤は、様々な参考図書および刊行物から容易に特定する(例えば、Schulzら、Critical Care、第16巻:R136号、2012年を参照されたい)。例としては、カルバマゼピン、アニデュラファンギン、アンホテリシン、クロナゼパム、クロザピン、ジゴキシン、エトスクシミド、マプロチリン、メホバルビタール、ノルトリプチリン、オランザピン、フェノバルビタール、シロリムス、ゾニサミド、メマンチン、ドネペジル、フィンゴリモド、および他のものが挙げられる。
【0146】
一実施形態では、治療剤は、難水溶性の薬剤またはやや水に溶けにくい薬剤である。「やや水に溶けにくい」という用語は、例えば「低溶解性」、「溶けにくい」、「極めて溶けにくい」から「ほとんど溶けない」に至る、薬物の水溶性に関して薬局方に記載されている用語を含むものとして理解される。例として、メマンチンの遊離塩基は、0.9mg/mLの水溶性を有する。ドネペジルの遊離塩基は、2.9mg/Lの水溶性を有する。両方とも、難水溶性とみなされる。
【0147】
方法は、長い血中消失半減期を有する薬物のための経皮送達システムを、ほぼ同じ用量で、同じ薬物の経口投与と生物学的に同等である薬物動態(PK)プロファイルを提供するように設計することができるという知見に基づく。in vivoにおける(換言すれば、動物またはヒト対象に対して投与された場合の)ある剤形の挙動を評価するために日常的に使用される標準的PKパラメーターとしては、Cmax(血漿中の薬物のピーク濃度)、Tmax(ピーク薬物濃度が達成された時間)、およびAUC(血漿中濃度対時間曲線の下の面積)が挙げられる。これらのパラメーターを決定および評価するための方法については、当該技術分野において周知である。本明細書に記載される経皮送達システムの望ましい薬物動態プロファイルには、限定されるものではないが、(1)同じ投薬量で投与された、経口送達もしくは静脈内送達形態の薬物に関するCmaxと生物学的に同等である、投与後に哺乳動物対象の血漿中でアッセイした場合の経皮送達形態の薬物に関するCmax;および/または(2)同じ投薬量で投与された、経口送達もしくは静脈内送達形態の薬物に関するAUCと好ましくは生物学的に同等である、投与後に哺乳動物対象の血漿中でアッセイした場合の経皮送達形態の薬物に関するAUC;および/または(3)同じ投薬量で投与された、経口送達もしくは静脈内送達形態の薬物に関するTmaxの約80~125%以内である、投与後に哺乳動物対象の血漿中でアッセイした場合の経皮送達形態の薬物に関するTmaxが含まれる。好ましくは、経皮送達システムは、前述の文章中の特色(1)、(2)、および(3)のうちの2つまたはそれよりも多くの組合せを有するPKプロファイルを呈する。あるいは、経皮送達システムは、特色(1)および(2)のうちの一方または両方を有するPKプロファイルを呈する。
【0148】
医薬品開発の分野では、「生物学的同等性」という用語は、当業者であれば容易に理解および認識するであろう。様々な規制当局が、2種の薬物製品が生物学的に同等であるか否かを評価するための厳格な判定基準および試験を有している。これらの判定基準および試験は、医薬品業界全体で一般に使用されており、生物学的同等性の評価は、1つの製品の特徴および性能を別の製品のものと比較する薬物開発プログラムにおいては、標準形式の活動として認識されている。実際、特定の種類の製品(例えば、FDAの「略式新薬承認申請」手順の下で評価されたもの)を販売する認可を得ようとする場合、次の開発段階にある製品が基準製品と生物学的に同等であることを示すことは、必要条件である。
【0149】
本発明の一実施形態では、方法は、特に米国食品医薬品局および対応する欧州規制機関(EMEA)が提供するCmaxおよびAUCのガイドラインによって定義されているように、絶食状態の対象に対して経皮投与された場合、同様に絶食状態の対象に対する薬剤の経口または静脈内投与と生物学的に同等である、長い血中循環半減期を有する治療剤を含む経皮送達システムを準備することおよび/またはそれを投与することを包括する。米国FDAおよび欧州のEMEAガイドラインの下では、2種の製品または方法は、AUCおよびCmaxに関する90%信頼区間(CI)が、0.80から1.25の間にある場合に、生物学的に同等である(Tmaxの測定値は、規制目的に関して、生物学的同等性とは関連性がない)。欧州のEMEAは、以前は異なる標準を使用しており、そこでは0.80から1.25の間にある、AUCに関する90% CI、および0.70から1.43の間にある、Cmaxに関する90% CIが必要とされていた。CmaxおよびAUCを決定するための方法については、当該技術分野において周知である。
【0150】
企図される経皮送達システムは様々な構成を有することができ、いくつかの非限定的な例が、図1A~1Cに描写されている。図1Aは、速度制御膜または非速度制御材料、例えば不織ポリエステルまたはポリプロピレンで構成されるタイ層16などによって分離された、薬物リザーバ12および接触用粘着剤14から構成される、経皮送達システム10を例証している。また、バッキング層18および剥離ライナー20も存在している。図1Bは、第1の薬物リザーバ24および第2の薬物リザーバ26から構成される、第2の実施形態の経皮送達システム22であって、第1の薬物リザーバおよび第2の薬物リザーバが、非速度制御材料、例えば不織ポリエステルまたはポリプロピレンで構成されるタイ層28などによって分離されている、経皮送達システムを例証している。接触用粘着剤層30が、使用者の皮膚に対するシステムの付着をもたらし、速度制御膜32が、第2の薬物リザーバから接触用粘着剤への、そして最終的には使用者の皮膚への治療剤の放出を制御する。また、剥離ライナー34およびバッキング層36も存在している。図1Cは、薬物リザーバ42、および使用者の皮膚に対するシステムの付着をもたらす接触用粘着剤層44から構成される、別の実施形態の経皮送達システム40を示している。また、バッキング層46および剥離ライナー48も存在している。
【0151】
特許請求される本発明を支持するために行われた研究では、ドネペジルを含む経皮送達システムを調製し、試験した。実施例1に記載されているように、経皮送達システムは、図1Aに描写されているように、薬物リザーバおよび接触用粘着剤を含み、速度制御膜を、薬物リザーバと接触用粘着剤との間に配置した。固体モノリス型粘着剤リザーバの形態である薬物リザーバを、アクリル酸/酢酸ビニルコポリマー粘着剤を、親水性溶媒(グリセロール)および透過促進剤を含む溶媒混合物とともに使用して調製した。一実施形態では、溶媒混合物は、グリセロールおよび乳酸ラウリルから構成され、任意選択で、クエン酸トリエチルおよびソルビタンモノラウレートをさらに含む。薬物リザーバは、in situでドネペジル塩基を生成するために、およそ5重量%のドネペジル塩酸塩および炭酸水素ナトリウムを含有した。クエン酸トリエチル、乳酸ラウリル、および酢酸エチルと併せて、同じアクリル酸/酢酸ビニルコポリマー粘着剤から構成される、接触用粘着剤層を調製した。薬物リザーバからのドネペジル塩基の拡散放出を制御するための速度制御膜が、薬物リザーバおよび接触用粘着剤を分離した。
【0152】
一実施形態では、微多孔質膜は、複数の細孔を含む。微多孔質膜における複数の細孔は、溶媒または溶媒組成物を含有する。一実施形態では、微多孔質膜の細孔内の溶媒組成物は、薬物リザーバおよび接触用粘着剤の一方または両方に存在する溶媒のうちの1種または複数種から構成される。例えば、微多孔質膜の細孔内に含有される例示的溶媒組成物は、クエン酸トリエチル、界面活性剤、および透過促進剤のうちの1つまたは複数である。別の例示的実施形態は、クエン酸トリエチル、ソルビタンモノラウレート、および乳酸ラウリルのうちの1つまたは複数から構成される溶媒組成物である。一実施形態では、溶媒組成物は、40~80重量%の間のクエン酸トリエチル、5~40重量%の間の乳酸ラウリル、および5~25重量%の間のソルビタンラウレートを含む。別の実施形態では、溶媒組成物は、50~75重量%または55~70重量%の間のクエン酸トリエチル、10~35重量%または15~30重量%の間の乳酸ラウリル、および8~20重量%または10~15重量%の間のソルビタンラウレートを含む。別の実施形態では、微多孔質膜の細孔内の溶媒は、オクチルドデカノールである。一実施形態では、微多孔質膜の細孔内に含有される溶媒組成物または溶媒は、薬物リザーバ内に存在する親水性溶媒を除外する。一実施形態では、微多孔質膜の細孔内に含有される溶媒組成物は、グリセリンを除外する。
【0153】
微多孔質膜は、その細孔に溶媒または溶媒組成物を染み込ませるか、それを充填するか、またはそれを部分的に充填するように、溶媒組成物で前処理してもよい。微多孔質膜は、一実施形態ではポリプロピレン微多孔質膜であり、約0.001μmから約100μm、約1μmから約10μm、約0.010μmから約0.100μm、または約0.040μmから約0.050μmの範囲の平均孔径を有し得る。例えば、平均孔径は、約0.035μm、0.036μm、0.037μm、0.038μm、0.039μm、0.040μm、0.041μm、0.042μm、0.043μm、0.044μm、0.045μm、0.046μm、0.047μm、0.048μm、0.049μm、または0.050μmであってもよい。一部の実施形態では、微多孔質膜は、約0.043μmの平均孔径を有する。微多孔質膜は、一実施形態ではポリプロピレン微多孔質膜であり、約30%から約50%、約35%から約45%、または約40%から約42%の範囲の多孔度を有する。例えば、微多孔質膜は、約30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、または50%の多孔度を有してもよい。
【0154】
したがって、一実施形態では、ドネペジルを全身的に送達するための経皮送達システムが提供され、全身的取り込みのために皮膚を介して送達される塩基形態のドネペジルをin situで生成するように、塩形態のドネペジルおよび弱塩基を薬物リザーバ内に含む、経皮送達システムが提供される。別の実施形態では、経皮送達システムはまた、クエン酸トリエチル、乳酸ラウリル、グリセロール、およびソルビタンラウレートのうちの1つまたは複数を薬物リザーバ内に含み、クエン酸トリエチル、乳酸ラウリル、およびソルビタンラウレートのうちの1つまたは複数を接触用粘着剤内に含む。一実施形態では、薬物リザーバおよび接触用粘着剤はそれぞれ、クエン酸トリエチル、乳酸ラウリル、およびソルビタンラウレートのうちの1つまたは複数を含む。クエン酸トリエチルは、薬物リザーバおよび接触用粘着剤の一方または両方において、約1~20重量%、2~25重量%、5~15重量%、5~12重量%、7~15重量%、7~12重量%、8~12重量%、9~12重量%、1~8重量%、1~6重量%、1~5重量%、1.5~5重量%、2~5重量%、2.5~5重量%、2.5~4.5重量%の間の量で存在し得る。酢酸エチルは、薬物リザーバおよび接触用粘着剤の一方または両方において、約25~60重量%の間の量で存在し得るが、一実施形態では、接触用粘着剤よりも薬物リザーバ内により多くの量の酢酸エチルが存在し、薬物リザーバは、接触用粘着剤層よりも1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、または1.8倍多くの酢酸エチルを含む。ソルビタンラウレートは、薬物リザーバおよび接触用粘着剤の一方または両方において、約0.01~5重量%または0.1~5重量%の間の量で存在し得るが、一実施形態では、ソルビタンラウレートは、薬物リザーバ内および接触用粘着剤内に同じ量で存在する(それぞれの層における個別の総量のw/w基準で、例えば、重量パーセント単位の薬物リザーバ層内の量が、重量パーセント単位の接触用粘着剤層内の量と同じである)。別の実施形態では、薬物リザーバおよび接触用粘着剤の一方または両方が、乳酸ラウリルを、約0.1~10重量%、0.5~8重量%もしくは0.5~7重量%、1~10重量%、1~7重量%、1~5重量%、1.5~5重量%、2~5重量%、2.5~5重量%、0.25~5重量%、0.5~5重量%、または0.5~4重量%、0.5~4.5重量%の間の量で含む。一実施形態では、薬物リザーバは、接触用粘着剤層内に存在する乳酸ラウリルの量の約0.5%、1%、5重量%、10重量%、15重量%、または20重量%に等しいかまたはそれ以内である量の乳酸ラウリルを含む。
【0155】
実施例1に従って調製した経皮送達システムは、実施例2に記載されているように、ドネペジルの全身的送達に関して、in vivoで試験した。このin vivo研究では、6名のヒト対象が、経皮送達システムによる処置を受容した。この経皮送達システムは、彼らの皮膚に対して適用され、1週間着用された後、取り外された。別の群の6名のヒト対象は、研究の1日目および7日目に5mgの用量で服用されるドネペジル(ARICPET(登録商標))の経口投与によって処置した。血液試料を対象から採取し、ドネペジルの血漿中濃度を決定した。結果を図2A~2Bに示す。
【0156】
図2Aは、ドネペジル経皮送達システムで1週間処置されたヒト対象(丸)、または1日目および7日目に経口投与される5mgのドネペジルで処置されたヒト対象(三角)における、ドネペジルの平均血漿中濃度(ng/mL単位)を示している。ドネペジル経皮送達システムは、同程度の用量のドネペジルの経口送達によってもたらされる血漿中濃度と生物学的に同等である血漿中濃度をもたらした。したがって、一実施形態では、ドネペジルの経口投与によって得られる薬物動態プロファイルと生物学的に同等である薬物動態プロファイルを提供する経皮送達システムを投与することによって、ドネペジルを経皮投与する方法が提供される。
【0157】
図2Bは、5mgのドネペジル錠剤を経口投与した後(三角)およびドネペジル経皮送達システムを取り外した後(丸)の24時間の、図2Aのデータ点のクローズアップを示すグラフである。経皮送達システムは、それを取り外した後の24時間で、経口投与後24時間で観察されるものと同様の、持続的で一定なドネペジル血漿中濃度をもたらす。
【0158】
図3は、28日間(4週間)の処置期間にわたって、10mg/日を1週間投与するように設計された経皮送達システムを用いた場合(実線)、および28日間にわたって、毎日10mgのドネペジルの経口錠剤を用いた場合(破線)の、ドネペジルの予測される平均血漿中濃度(ng/mL単位)を示すグラフである。経口投与に起因する血漿の周期的変動は、新鮮なパッチが週毎に適用され、処置期間にわたって一定の血漿中濃度が維持される経皮システムによって排除されている。経皮送達システムは、持続的期間(例えば3日間、5日間、7日間、14日間)にわたってドネペジルの一定な血漿中濃度をもたらし、この血漿中濃度は、同程度の日用量のドネペジルを毎日経口投与することによって達成される血漿中濃度と本質的に同じであるか、またはその約10%、15%、20%、または30%以内である。
【0159】
実施例2の研究を再度参照すると、ドネペジル経皮送達システムで1週間処置された6名の対象を、彼らの皮膚から送達システムを取り外した後数日間、皮膚刺激の徴候に関して監視した。図4は、群の6名のうちの対象の数および送達システムを取り外した後の期間中に観察された皮膚刺激を示す棒グラフであり、ここでは、白い棒は皮膚刺激がないことを示しており、塗りつぶされた棒は軽度の皮膚刺激を示している。送達システムを取り外した後数時間でもたらされた皮膚刺激はなかったか、または軽度であり、あらゆる軽度の刺激も、1日または2日で解消された。
【0160】
別の研究では、ヒト対象を、1日1回、10mgで経口投与されるドネペジルと生物学的に同等である量のドネペジルを全身的に送達するように設計された経皮送達システムで処置した。2つの送達経路に関して予測される薬物動態パラメーター、Cmax、AUC、およびCminを表1で比較する。
【表1】
【0161】
したがって、一実施形態では、対象に対して治療剤を送達するための方法が提供される。方法は、治療剤および治療剤を含むリザーバから構成される経皮送達システムを準備することであって、治療剤が、(i)経口的に送達された場合、約48時間を超える血中半減期を有し、(ii)慢性状態を処置するためのものである、準備すること、ならびに対象の皮膚に対して経皮送達システムを投与することまたはそれを投与するように指示することを含む。方法は、治療剤の経口投与と生物学的に同等である、治療剤の経皮送達を達成し、ここで、生物学的同等性は、(a)0.70から1.43の間もしくは0.80から1.25の間にある、経皮送達システムから、および経口送達を介して投与される治療剤の、相対的な平均CmaxおよびAUCの90%信頼区間、または(b)0.70から1.43の間もしくは0.80から1.25の間にある、経皮送達システムから、および経口送達を介して投与される治療剤の、AUCおよびCmaxの幾何平均比の90%信頼区間によって確立される。一実施形態では、治療剤は、ドネペジルである。
【0162】
別の研究では、メマンチンを全身的に送達するための経皮送達システムを調製した。実施例3に記載されているように、メマンチン塩基を含む経皮送達システムを調製した。送達システムは、4%のメマンチン塩基を含む粘着剤薬物リザーバ、51%の粘着剤マトリックス内の65%の透過促進剤から構成された。透過促進剤は、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、およびレブリン酸であった。一実施形態では、酢酸エチル、オクチルドデカノール、およびレブリン酸から選択される透過促進剤から構成されるメマンチン経皮送達システムが企図される。一実施形態では、メマンチン経皮送達システムは、約25~50重量%の間、好ましくは約25~40重量%の間の酢酸エチルを含む。別の実施形態では、メマンチン経皮送達システムは、約15~40重量%の間、好ましくは約20~30重量%の間のレブリン酸を含む。別の実施形態では、メマンチン経皮送達システムは、約3~15重量%の間、好ましくは約3~10重量%の間のオクチルドデカノールを含む。
【0163】
実施例3に従って調製した経皮送達システムは、実施例4に記載されているように、メマンチンの全身的送達に関して、in vivoで試験した。このin vivo研究では、ヒト対象が、経皮送達システムによる処置を受容した。この経皮送達システムは、彼らの皮膚に対して適用され、3日間または1週間着用された後、取り外された。別の群のヒト対象は、研究の1日目および7日目に28mgの用量で服用されるメマンチン(NAMENDA XR(登録商標))の経口投与によって処置した。血液試料を対象から採取し、メマンチンの血漿中濃度を決定した。結果を図5A~5Bに示す。
【0164】
図5Aは、メマンチン経皮送達システムで1週間(丸)もしくは3日間(四角)処置されたヒト対象、または1日目および7日目に経口投与される28mgのメマンチンで処置されたヒト対象(三角)における、メマンチンの平均血漿中濃度(ng/mL単位)を示している。したがって、一実施形態では、メマンチンの経口投与によって得られる薬物動態プロファイルと生物学的に同等である薬物動態プロファイルを提供する経皮送達システムを投与することによって、メマンチンを経皮投与する方法が提供される。
【0165】
図5Bは、28mgのメマンチン錠剤を経口投与した後(三角)、および1週間着用したメマンチン経皮送達システムを取り外した後(丸)の24時間の、図5Aのデータ点を示すグラフである。経皮送達システムは、それを取り外した後の24時間で、経口投与後24時間で観察されるものと同様の、持続的で一定なメマンチン血漿中濃度をもたらす。
【0166】
図6Aは、(1)1日目~24日目まで3日毎に新しいパッチを適用しながら、28mg/日を3日間投与するように設計された経皮送達システムを用いた処置(実線)、(2)毎日28mgのメマンチンの経口錠剤を用いた処置(破線)の後の、24日目~28日目における、メマンチンの予測される平均血漿中濃度(ng/mL単位)を示している。経皮送達システムは、持続的期間(例えば3日間、5日間、7日間、14日間)にわたってメマンチンの一定な血漿中濃度をもたらし、この血漿中濃度は、同程度の日用量のメマンチンを毎日経口投与することによって達成される血漿中濃度と本質的に同じであるか、またはその約10%、15%、20%、または30%以内である。
【0167】
図6Bは、(1)4週間にわたって7日毎に新しいパッチを適用しながら、28mg/日を7日間投与するように設計された経皮送達システムを用いた処置(実線)、(2)毎日28mgのメマンチンの経口錠剤を用いた処置(破線)の後の、21日目~28日目における、メマンチンの予測される平均血漿中濃度(ng/mL単位)を示すグラフである。経皮送達システムは、持続的期間(例えば3日間、5日間、7日間、14日間)にわたってメマンチンの一定な血漿中濃度をもたらし、この血漿中濃度は、同程度の日用量のメマンチンを毎日経口投与することによって達成される、持続的期間にわたる血漿中濃度と本質的に同じであるか、またはその約5%、10%、15%、20%、または30%以内である。
【0168】
実施例7は、本発明において特許請求される方法を支持するための別の研究において調製した、メマンチンを含む経皮送達システムについて記載している。経皮システムは、溶解剤としてのオクチルドデカノールとともに、メマンチン塩酸塩および炭酸水素ナトリウムから構成される薬物リザーバで調製した。グリセロールを担体として添加し、これらの構成成分を、アクリレートコポリマー、ポリイソブチレン、および架橋ポリビニルピロリドンの粘着剤マトリックスへと混合した。経皮送達システムのそれぞれの層における構成成分の重量パーセントについては、下の実施例7の表7.1および7.2に要約している。
【0169】
下の実施例8および9は、ヒト対象において行われた研究について記載しており、ここでは、ドネペジルを含む経皮パッチについて研究し、経口投与されたドネペジルと比較した。この研究では、患者は、1日1回の経口ドネペジル(ARICEPT(登録商標))の定常状態の薬物動態プロファイルを、ドネペジル経皮パッチ配合物と比較する、6か月間の3周期無作為化クロスオーバー研究に参加登録した。経皮パッチは、2つのサイズ、AおよびBで提供されたが、表面積以外では、これらの経皮パッチはすべての点において同じであった。研究中、60名の登録参加者は、1週間に1回の経皮パッチから送達される、5mg/日のドネペジルを1週間受容した後、10mg/日のドネペジルを4週間受容した。薬物動態の測定値について、血漿中濃度が定常レベルを達成した10mg/日の処置の第4週中に評価した。経皮処置を受容した対象の血液試料を、第4週全体にわたって毎日採取して、薬物動態を決定した。経口ドネペジルを受容した対象は、第4週の最後の日に血液を抜いて、薬物動態を決定した。研究の第4週(5週目)の日毎のドネペジルの平均血漿中濃度(ng/mL単位)を、図7Aに示す。ここでは、実線はより小さい表面積を有する経皮パッチに対応し、破線はより大きい表面積を有する経皮パッチに対応する。6日目~7日目の濃い太線は、経口ドネペジルを受容した対象の平均血漿中濃度を示しており、点線は、経口処置の場合の予測される日毎の血漿中濃度を示している。経皮パッチで処置された対象におけるドネペジルの平均血漿中濃度は、ドネペジルで経口的に処置された対象におけるドネペジルの血漿中濃度と生物学的に同等であった。より大きい経皮パッチおよびより小さい経皮パッチは、用量比例性を実証した。表2は、この研究において使用されたより小さい表面積の経皮パッチの、生物学的同等性評価における一次薬物動態パラメーターを示している。
【表2】
【0170】
図7Aに関して上述した臨床研究において対象によって報告された、吐き気、嘔吐、および下痢の胃腸関連有害事象について、図7Bに示している。小さい方のサイズの経皮パッチで処置された対象(破線で塗りつぶされた棒)および大きい方のサイズの経皮パッチで処置された対象(縦線で塗りつぶされた棒)は、経口ドネペジルで処置された対象(横線で塗りつぶされた棒)よりも、吐き気、嘔吐、および下痢の発生率が低かった。吐き気を体感した対象の数は、10mg/日のドネペジルが経皮投与された場合、経口投与よりも4倍少なかった。下痢を体感した対象の数は、10mg/日のドネペジルが経皮投与された場合、経口投与よりも2倍少なかった。したがって、一実施形態では、対象に対してドネペジルを送達するための方法であって、ドネペジルを含む経皮送達システムを準備すること、および対象の皮膚に対して経皮送達システムを投与することまたはそれを投与するように指示することを含む、方法が提供される。ドネペジルを経皮投与することによって、ドネペジルの経口投与と生物学的に同等であるドネペジルの血漿中濃度が達成され、胃腸関連有害事象の数は、同じ用量のドネペジルで経口的に処置された対象よりも2倍、3倍、4倍、または5倍少ない。一実施形態では、胃腸関連有害事象の数は、同じ用量のドネペジルで経口的に処置された対象よりも、2~5、2~4、および2~3倍の間で少なく、別の実施形態では、胃腸関連有害事象の数は、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、または少なくとも約5倍少ない。
【実施例
【0171】
III.実施例
以下の実施例は、本質的に例証的なものであり、決して限定的であることを意図するものではない。
【0172】
(実施例1)
ドネペジル経皮送達システム
ドネペジルを含む経皮送達システムを、以下の通りに調製した。
【0173】
薬物リザーバの調製:1.20グラムのソルビタンモノラウレート(SPAN(登録商標)20)を、6.00gのクエン酸トリエチルに溶解し、1.80グラムの乳酸ラウリルおよび89.69グラムの酢酸エチルと混合した。6.00グラムのグリセリン(グリセロール)を添加し、混合した。9.00グラムのドネペジル塩酸塩および1.82グラムの炭酸水素ナトリウムを添加し、混合物中に分散させた。次いで、12.00グラムの架橋微粒子化ポリビニルピロリドン(KOLLIDON(登録商標)CL-M)を添加し、混合物を均質化した。この均質化された薬物分散体に対して、43.93グラムのアクリル酸/酢酸ビニルコポリマー(DURO-TAK(登録商標)387-2287、固形分含量50.5%)を添加し、よく混合した。この湿潤粘着剤配合物を剥離ライナー上にコーティングし、ラボコーター(Werner Mathis)を使用することで乾燥させて、12mg/cmの乾燥塗工重量を得た。
【0174】
接触用粘着剤の調製:0.60グラムのソルビタンモノラウレート(SPAN(登録商標)20)を、3.0グラムのクエン酸トリエチルに溶解し、0.9グラムの乳酸ラウリル、25.45グラムの酢酸エチル、および1.34グラムのイソプロピルアルコールと混合した。6.00グラムの架橋微粒子化ポリビニルピロリドン(KOLLIDON(登録商標)CL-M)を添加し、混合物を均質化した。この均質化された混合物に対して、38.61グラムのアクリル酸/酢酸ビニルコポリマー(DURO-TAK(登録商標)387-2287、固形分含量50.5%)を添加し、よく混合した。この湿潤粘着剤配合物を剥離ライナー上にコーティングし、乾燥させて、5mg/cmの乾燥塗工重量を得た。
【0175】
積層およびダイカット:ポリプロピレン微多孔質膜(CELGARD(登録商標)2400)は、ソルビタンモノラウレート、クエン酸トリエチル、および乳酸ラウリルの溶媒混合物でそれをコーティングして、膜に溶媒混合物を染み込ませることによって前処理した。前処理した膜を、薬物リザーバの粘着剤側に積層した。次いで、接触用粘着剤を、薬物リザーバで積層された速度制御膜の上に積層した。薬物リザーバ側の剥離ライナーを、バッキングフィルムで置き換えて積層した。最終的な5層積層体を、経皮パッチへとダイカットした。
【0176】
経皮送達システム中の構成成分の重量百分率については、下の表1.1に示している。
【表1.1】
【0177】
(実施例2)
ドネペジル経皮送達システムからのドネペジルのin vivo投与
ドネペジルを含む経皮送達システムを、実施例1に記載されているように調製した。12名のヒト対象を、経皮送達システムによって処置する群(n=6)または研究の1日目および7日目に服用される5mgのドネペジル(ARICPET(登録商標))の経口投与によって処置する群の2つに無作為化した。経皮送達システムは、皮膚に対して適用し、1週間着用させた後、取り外した。経皮送達システムで処置した対象からは、血液試料を毎日採取した。経口送達ドネペジルで処置した群では、血液試料を1日目および7日目に頻度の高い時間間隔で採取し、8、10、12、および14日目にも再度採取した。処置群におけるドネペジルの平均血漿中濃度を、図2A~2Bに示す。
【0178】
(実施例3)
メマンチン経皮送達システム
メマンチンを含む経皮送達システムを、以下の通りに調製した。10グラム(g)のメマンチン塩基を、82.42gの酢酸エチル、4.34gのイソプロピルアルコール、12gのプロピレングリコール、および6.48gのレブリン酸の混合物に溶解して、透明な溶液を形成した。7.0gのヒュームドシリカ(AEROSIL(登録商標)200P)を添加し、混合物を均質化した。127.8gのアクリル酸/酢酸ビニルコポリマー(DURO-TAK(登録商標)387-2287、固形分含量50.5%)を添加し、混合物が均質になるまで混合した。
【0179】
この粘着剤配合物混合物を、シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートライナー上にコーティングし、60℃のWerner Mathisコーター内で8分間乾燥させて、1平方メートル当たり90グラムの塗工重量を有する乾燥粘着剤層を得た。経皮送達システムは、2枚の乾燥粘着剤層を、これら2枚の粘着剤層の間に挟まれた不織ポリエステル布とともに使用することで製作した。次いで、コーティングされたポリエチレンテレフタレートライナーを、バッキングフィルムで置き換えた。次いで、この積層体から経皮送達システムをダイカットした。システムのそれぞれの粘着剤層における構成成分の重量百分率については、表3.1に要約している。
【表3.1】
【0180】
(実施例4)
メマンチン経皮送達システムからのメマンチンのin vivo投与
メマンチンを含む経皮送達システムを、実施例3に記載されているように調製した。19名のヒト対象を、以下のうちの1つで処置される4つの群に無作為化した:(1)1週間着用される、メマンチン経皮送達システム(n=5);(2)3日間着用される、メマンチン経皮送達システム(n=7);(3)研究の1日目および7日目に服用される、28mgの経口投与メマンチン(NAMENDA XR(登録商標))。経皮送達システムを、皮膚に対して適用し、1週間(群1)または3日間(群2)着用させた後、取り外した。経皮送達システムで処置した対象からは、血液試料を毎日採取した。経口送達ドネペジルで処置した群では、血液試料を1日目および7日目に頻度の高い時間間隔で採取し、8、10、12、および14日目にも再度採取した。処置群におけるメマンチンの平均血漿中濃度を、図5A~5Bに示す。
【0181】
(実施例5)
ドネペジル経皮送達システム
ドネペジルを含む経皮送達システムを、以下の通りに調製した。
【0182】
薬物リザーバの調製:ソルビタンモノラウレート(SPAN(登録商標)20)を、クエン酸トリエチルに溶解し、乳酸ラウリルと混合した。グリセロールを添加し、混合した。ドネペジル塩酸塩および炭酸水素ナトリウムを添加し、混合物中に分散させた。次いで架橋微粒子化ポリビニルピロリドン(KOLLIDON(登録商標)CL-M)を添加し、混合物を均質化した。この均質化された薬物分散体に対して、アクリル酸/酢酸ビニルコポリマー(DURO-TAK(登録商標)387-2287、固形分含量50.5%)を添加し、よく混合した。この湿潤粘着剤配合物を剥離ライナー上にコーティングし、ラボコーター(Werner Mathis)を使用することで乾燥させた。
【0183】
接触用粘着剤の調製:ソルビタンモノラウレート(SPAN(登録商標)20)を、クエン酸トリエチルに溶解し、乳酸ラウリルと混合した。架橋微粒子化ポリビニルピロリドン(KOLLIDON(登録商標)CL-M)を添加し、混合物を均質化した。この均質化された混合物に対して、アクリル酸/酢酸ビニルコポリマー(DURO-TAK(登録商標)387-2287、固形分含量50.5%)を添加し、よく混合した。この湿潤粘着剤配合物を剥離ライナー上にコーティングし、乾燥させた。
【0184】
積層およびダイカット:ポリプロピレン微多孔質膜(CELGARD(登録商標)2400)は、ソルビタンモノラウレート、クエン酸トリエチル、および乳酸ラウリルの溶媒混合物でそれをコーティングして、膜に溶媒混合物を染み込ませることによって前処理した。前処理した膜を、薬物リザーバの粘着剤側に積層した。次いで、接触用粘着剤を、薬物リザーバで積層された速度制御膜の上に積層した。薬物リザーバ側の剥離ライナーを、バッキングフィルムで置き換えて積層した。最終的な5層積層体を、経皮パッチへとダイカットした。
【0185】
経皮送達システム中の構成成分の重量百分率については、下の表5.1に示している。
【表5.1】
【0186】
(実施例6)
ドネペジル経皮送達システム
ドネペジルを含む経皮送達システムを、以下の通りに調製した。
【0187】
薬物リザーバの調製:ソルビタンモノラウレート(SPAN(登録商標)20)を、クエン酸トリエチルに溶解し、乳酸ラウリルと混合した。グリセロール(glyceol)を添加し、混合した。ドネペジル塩酸塩を添加し、混合物中に分散させた。次いで、ヒュームドシリカ(AEROSIL(登録商標)200 Pharma)を添加し、混合物を均質化した。この均質化された薬物分散体に対して、アクリル酸/酢酸ビニルコポリマー(DURO-TAK(登録商標)387-2287、固形分含量50.5%)、およびメタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸メチルコポリマー(EUDRAGIT(登録商標)EPO)を添加し、よく混合した。この湿潤粘着剤配合物を剥離ライナー上にコーティングし、ラボコーター(Werner Mathis)を使用することで乾燥させた。
【0188】
接触用粘着剤の調製:ソルビタンモノラウレート(SPAN(登録商標)20)を、クエン酸トリエチルに溶解し、乳酸ラウリルと混合した。架橋微粒子化ポリビニルピロリドン(KOLLIDON(登録商標)CL-M)を添加し、混合物を均質化した。この均質化された混合物に対して、アクリル酸/酢酸ビニルコポリマー(DURO-TAK(登録商標)387-2287、固形分含量50.5%)を添加し、よく混合した。この湿潤粘着剤配合物を剥離ライナー上にコーティングし、乾燥させた。
【0189】
積層およびダイカット:ポリプロピレン微多孔質膜(CELGARD(登録商標)2400)は、ソルビタンモノラウレート、クエン酸トリエチル、および乳酸ラウリルの溶媒混合物でそれをコーティングして、膜に溶媒混合物を染み込ませることによって前処理した。前処理した膜を、薬物リザーバの粘着剤側に積層した。次いで、接触用粘着剤を、薬物リザーバで積層された速度制御膜の上に積層した。薬物リザーバ側の剥離ライナーを、バッキングフィルムで置き換えて積層した。最終的な5層積層体を、経皮パッチへとダイカットした。
【0190】
経皮送達システム中の構成成分の重量百分率については、下の表6.1に示している。
【表6.1】
【0191】
(実施例7)
メマンチン経皮送達システム
薬物リザーバの調製:2.0gの量のグリセロールおよび2.0gのオクチルドデカノールを、29.35gの酢酸エチルおよび1.86gのイソプロピルアルコールの混合物と混合した。溶液中で、5.0gのメマンチン塩酸塩および1.95gの炭酸水素ナトリウムを、撹拌することによって分散させた。この分散体に対して、3.0gの架橋ポリビニルピロリドン(KOLLIDON(登録商標)CL-M)を添加し、均質化した。この均質化された分散体に対して、11.99gのアクリレートコポリマー(DURO-TAK(登録商標)387-2287、固形分含量50.5%)を添加し、よく混合した。この湿潤粘着剤配合物を剥離ライナー上にコーティングし、Werner Mathisコーターを使用することで乾燥させて、15mg/cmの乾燥塗工重量を得た。
【0192】
接触用粘着剤の調製:2.0gの量のオクチルドデカノールを、20.67gのn-ヘプタンと混合した。この溶液に対して、4.00gの架橋ポリビニルピロリドン(KOLLIDON(登録商標)CL-M)を添加した後、混合物を均質化した。この均質化された混合物に対して、23.33gの量のポリイソブチレン/ポリブチレン(60/40)粘着剤溶液(固形分含量60%)を添加し、よく混合した。ポリイソブチレン粘着剤溶液は、10%の、Oppanol(登録商標)B-100として公知であるポリイソブチレン、50%の、Oppanol(登録商標)B-12として公知であるポリイソブチレン、および40%の、Indopol(登録商標)H1900として公知であるポリブテンの混合物であった。この湿潤粘着剤配合物を剥離ライナー上にコーティングし、乾燥させて、5mg/cmの乾燥塗工重量を得た。
【0193】
ポリプロピレン微多孔質膜(CELGARD(登録商標)2400)は、オクチルドデカノールでそれをコーティングして、膜に溶媒を染み込ませることによって前処理した。前処理した膜を、薬物リザーバ層と接触用粘着剤層との間に積層した。薬物リザーバ層上の剥離ライナーを、バッキング(3M SCOTCHPAK(登録商標)1012)で置き換えて積層した。最終的な5層積層体を、パッチへとダイカットした。
【0194】
in vitro皮膚フラックス研究を、0.64cmの有効拡散面積を有するFranz型拡散セルを使用することで実施した。ヒトの表皮の皮膜を、拡散セルのドナー区画とレセプター区画との間に固定した。経皮送達システムを皮膚の上に置き、2つの区画を一緒にきつく締め付けた。レセプター区画には、0.01%のゲンタマイシンを含有する、0.01Mのリン酸緩衝液、pH=6.5を充填した。レセプター区画内の溶液は、レセプター区画内で磁気撹拌子を使用することで絶えず撹拌した。温度は、32±0.5℃に維持した。定期的な間隔を置いて、レセプター溶液から試料を抜き取り、レセプター溶液を新鮮なリン酸緩衝溶液で置き換えた。試料中の薬物含有量を、メマンチンに関してLCMSを使用することで分析した。フラックスプロファイル(示さず)は、7日間にわたって比較的一定のままである。
【0195】
経皮送達システムのそれぞれの層における構成成分の重量パーセントについては、下の表7.1および表7.2に要約している。
【表7.1】
【表7.2】
【0196】
(実施例8)
経皮システムを評価する方法
経皮送達システムを、実施例6に従って調製する。
【0197】
およそ60名の患者を登録し、それぞれ4週間の処置研究のための、30名の患者の2つの処置アームへと無作為に分ける。アーム1の患者は、経皮システムで処置し、ここでは、1日当たり5mgのドネペジルを送達するための経皮システムを7日間着用させる。最初の7日間の期間の後、システムを3週間にわたって、毎週、1日当たり10mgのドネペジルを送達するための経皮システムと取り替える。アーム2の患者は、5mgのドネペジル(ARICEPT)の経口日用量で7日間にわたって処置した後、1日1回、10mgの用量のドネペジル(ARICEPT)で28日間にわたって処置する。
【0198】
アーム1の対象に関しては、血液試料を以下の時間点で採取して、ドネペジルの血中濃度および薬物動態を決定する:投薬前;投薬後1日目の0時間目、2時間目、6時間目、および12時間目;2~15日目および22日目の0時間目;20日目の0、3、6、および12時間目;30~35日目の1および12時間目;36日目の0、2、6、および12時間目;37~38、41、44、47、50、および54日目の0時間目。
【0199】
アーム2の対象に関しては、血液試料を以下の時間点で採取して、ドネペジルの血中濃度および薬物動態を決定する:1日目の0、1、2、3、4、6、8、および12時間目;2、8、15、22、および29日目の0時間目;35日目の0、1、2、3、4、6、8、および12時間目;36、37、40、43、46、49、および53日目の0時間目。
【0200】
処置関連有害事象を有する対象の数を、36日間の拘束期間中は毎日、また21日間の休薬期間中7回の来院時に評価する。アーム1の対象における局部皮膚刺激の評価もまた、36日間の拘束期間中は毎日、また21日間の休薬期間中7回の来院時に評価する。皮膚刺激については、刺激なし;かろうじて知覚可能な最小限の紅斑;容易に視認可能な明確な紅斑;最小限の浮腫または最小限の丘疹応答;紅斑および丘疹;明確な浮腫;紅斑、浮腫、および丘疹;小水疱性皮疹;適用部位を超えて広がる強い反応の8ポイント分類尺度を使用して評価する。アーム1の対象の局所接着性については、90%以上が接着した状態(本質的に皮膚から浮き上がっていない);75%以上90%未満が接着した状態(一部の縁部のみ皮膚から浮き上がっている);50%以上75%未満が接着した状態(経皮システムの半分未満が皮膚から浮き上がっている);50%未満しか接着していないが離れなかった状態(離れてはいないが、脱落せずに、経皮システムの半分よりも多くが皮膚から浮き上がっている);パッチが完全に離れた状態(経皮システムが完全に皮膚から離れている)という接着パーセント尺度に従って、36日間の拘束期間中は毎日2回評価する。
【0201】
(実施例9)
経皮システムを評価する方法
経皮送達システムを、実施例5および6の教示に従って調製する。
【0202】
およそ60名の患者を登録し、それぞれ4週間の処置研究のための、20名の患者の3つの処置アームへと無作為に分ける。アーム1の患者は、1日当たり5mgのドネペジルを送達するための配合物Aの経皮システムで処置し、この経皮システムを7日間着用させる。最初の7日間の期間の後、システムを3週間にわたって、毎週、1日当たり10mgのドネペジルを送達するための配合物Aの経皮システムと取り替える。アーム1の患者は、1日当たり5mgのドネペジルを送達するための配合物Bの経皮システムで処置し、この経皮システムを7日間着用させる。最初の7日間の期間の後、システムを3週間にわたって、毎週、1日当たり10mgのドネペジルを送達するための配合物Bの経皮システムと取り替える。アーム3の患者は、5mgのドネペジル(ARICEPT)の経口日用量で7日間にわたって処置した後、1日1回、10mgの用量のドネペジル(ARICEPT)で28日間にわたって処置する。
【0203】
アーム1およびアーム2の対象に関しては、血液試料を以下の時間点で採取して、ドネペジルの血中濃度および薬物動態を決定する:投薬前;投薬後1日目の0時間目、2時間目、6時間目、および12時間目;2~15日目および22日目の0時間目;20日目の0、3、6、および12時間目;30~35日目の1および12時間目;36日目の0、2、6、および12時間目;37~38、41、44、47、50、および54日目の0時間目。
【0204】
アーム3の対象に関しては、血液試料を以下の時間点で採取して、ドネペジルの血中濃度および薬物動態を決定する:1日目の0、1、2、3、4、6、8、および12時間目;2、8、15、22、および29日目の0時間目;35日目の0、1、2、3、4、6、8、および12時間目;36、37、40、43、46、49、および53日目の0時間目。
【0205】
処置関連有害事象を有する対象の数を、36日間の拘束期間中は毎日、また21日間の休薬期間中7回の来院時に評価する。アーム1の対象における局部皮膚刺激の評価もまた、36日間の拘束期間中は毎日、また21日間の休薬期間中7回の来院時に評価する。皮膚刺激については、刺激なし;かろうじて知覚可能な最小限の紅斑;容易に視認可能な明確な紅斑;最小限の浮腫または最小限の丘疹応答;紅斑および丘疹;明確な浮腫;紅斑、浮腫、および丘疹;小水疱性皮疹;適用部位を超えて広がる強い反応の8ポイント分類尺度を使用して評価する。アーム1の対象の局所接着性については、90%以上が接着した状態(本質的に皮膚から浮き上がっていない);75%以上90%未満が接着した状態(一部の縁部のみ皮膚から浮き上がっている);50%以上75%未満が接着した状態(経皮システムの半分未満が皮膚から浮き上がっている);50%未満しか接着していないが離れなかった状態(離れてはいないが、脱落せずに、経皮システムの半分よりも多くが皮膚から浮き上がっている);パッチが完全に離れた状態(経皮システムが完全に皮膚から離れている)という接着パーセント尺度に従って、36日間の拘束期間中は毎日2回評価する。
【0206】
多くの例示的態様および実施形態について上で考察してきたが、当業者であれば、ある特定の修正、並べ替え、追加、およびそれらの部分的組合せを認識するであろう。したがって、以下に添付される特許請求の範囲および下文にて導入される請求項は、すべてのそのような修正、並べ替え、追加、および部分的組合せを、それらの本来の趣旨および範囲内にあるものとして包含するように解釈されることが意図される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
対象に対して治療剤を送達するための方法であって、
治療剤および前記治療剤を含むリザーバから構成される経皮送達システムを準備することであって、前記治療剤が、(i)経口的に送達された場合、約48時間を超える血中半減期を有し、(ii)慢性状態を処置するためのものである、準備すること、ならびに
対象の皮膚に対して前記経皮送達システムを投与することまたはそれを投与するように指示すること
を含み、
それによって、前記投与することが、前記治療剤の経口投与と生物学的に同等である、前記治療剤の定常状態での経皮送達を達成し、ここで、生物学的同等性は、(a)前記経皮送達システムから、および経口送達を介して投与される前記治療剤の、相対的な平均CmaxおよびAUCの90%信頼区間が、0.70から1.43の間にあること、または(b)前記経皮送達システムから、および経口送達を介して投与される前記治療剤の、AUCおよびCmaxの幾何平均比の90%信頼区間が、0.70から1.43の間にあることによって確立される、
方法。
(項目2)
前記治療剤が、難水溶性の薬剤である、項目1に記載の方法。
(項目3)
生物学的同等性が、健常対象において確立される、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
生物学的同等性が、絶食状態において確立される、いずれかの先行する項目に記載の方法。
(項目5)
生物学的同等性が確立され、生物学的同等性が、(a)前記経皮送達システムから、および経口送達を介して投与される前記治療剤の、相対的な平均CmaxおよびAUCの90%信頼区間が、0.80から1.25の間にあること、または(b)前記経皮送達システムから、および経口送達を介して投与される前記治療剤の、AUCおよびCmaxの幾何平均比の90%信頼区間が、0.80から1.25の間にあることによって確立される、いずれかの先行する項目に記載の方法。
(項目6)
前記治療剤が、ドネペジル塩基、ドネペジル塩、メマンチン塩基、メマンチン塩、フィンゴリモド塩基、およびフィンゴリモド塩である、いずれかの先行する項目に記載の方法。
(項目7)
前記慢性状態が、アルツハイマー病であるか、または前記慢性状態が、多発性硬化症である、いずれかの先行する項目に記載の方法。
(項目8)
前記投与することまたは投与するように指示することが、週1回投与することまたは投与するように指示することを含む、いずれかの先行する項目に記載の方法。
(項目9)
前記治療剤が、ドネペジル塩基またはドネペジル塩であり、前記経皮送達システムが、1~25mg/24時間を提供する用量のドネペジル塩基またはドネペジル塩を含む、いずれかの先行する項目に記載の方法。
(項目10)
前記経皮送達システムが、薬物リザーバおよび接触用粘着剤を含み、前記薬物リザーバおよび/または前記接触用粘着剤が、(i)グリセロール、(ii)クエン酸トリエチル、(iii)ポリビニルピロリドンのうちの1つを含む、いずれかの先行する項目に記載の方法。
(項目11)
前記経皮送達システムが、薬物リザーバおよび接触用粘着剤を含み、前記薬物リザーバおよび/または前記接触用粘着剤が、(i)乳酸ラウリル、(ii)クエン酸トリエチル、および(iii)グリセロールのうちの1つを含む、項目1から9のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記経皮送達システムが、(i)乳酸ラウリル、(ii)クエン酸トリエチル、および(iii)グリセロールのうちの2つを含む薬物リザーバを含む、項目1から9のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記薬物リザーバが、ドネペジル塩酸塩および炭酸水素ナトリウムを含む、いずれかの先行する項目に記載の方法。
(項目14)
前記薬物リザーバが、ソルビタンモノラウレートおよび乳酸ラウリルのうちの一方または両方を追加的に含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記治療剤が、メマンチン塩基またはメマンチン塩であり、前記経皮送達システムが、7~28mg/24時間を提供する用量のメマンチン塩基またはメマンチン塩を含む、項目1から5、7から8、または10から12のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記経皮送達システムが、薬物リザーバおよび接触用粘着剤を含み、前記薬物リザーバが、メマンチン塩およびアルカリ塩を含む、項目1から5、7から8、または10から12のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記経皮送達システムが、オクチルドデカノールおよびグリセロールのうちの1つを含む薬物リザーバを含む、項目15または項目16に記載の方法。
(項目18)
前記メマンチン塩が、メマンチン塩酸塩であり、前記アルカリ塩が、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウムである、項目16に記載の方法。
(項目19)
前記接触用粘着剤が、高級アルコールおよび生体適合性ポリマーを含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記高級アルコールが、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、およびオレイルアルコールからなる群から選択される、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記生体適合性ポリマーが、ポリイソブチレン(PIB)、シリコーンポリマー、アクリレートコポリマー、ブチルゴム、ポリブチレン、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、それらの混合物、またはそれらのコポリマーからなる群から選択される、項目19または項目20に記載の方法。
(項目22)
前記薬物リザーバが、(a)約10~30重量%のメマンチンHClと約5~15重量%の炭酸水素ナトリウムとの反応によってin situで生成されるメマンチン塩基、(b)約5~15重量%のオクチルドデカノール、(c)約5~15重量%のグリセロール、(d)約10~30重量%の架橋ポリビニルピロリドン、ならびに(e)約20~50重量%のアクリレートポリマーから本質的になる、項目15から21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記治療剤が、フィンゴリモド塩基またはフィンゴリモド塩であり、前記経皮送達システムが、0.05~2mg/24時間を提供する用量のフィンゴリモド塩基またはフィンゴリモド塩を含む、項目1から5、7から8、または10から12のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
経皮システムを評価するための方法であって、
対象に対して、治療剤および前記治療剤から構成されるリザーバを含む経皮送達システムを投与することまたはそれを投与するように指示することであって、前記治療剤が、(i)経口的に送達された場合、約48時間を超える血中半減期を有し、(ii)慢性状態を処置するためのものである、投与することまたは投与するように指示すること、ならびに
対象に対して、経口投与を介して前記治療剤を投与することまたはそれを投与するように指示すること
を含み、
それによって、前記投与することが、前記治療剤の経口投与と生物学的に同等である、前記治療剤の定常状態での経皮送達を達成し、ここで、生物学的同等性は、(a)前記経皮送達システムから、および経口送達を介して投与される前記治療剤の、相対的な平均CmaxおよびAUCの90%信頼区間が、0.70から1.43の間にあること、または(b)前記経皮送達システムから、および経口送達を介して投与される前記治療剤の、AUCおよびCmaxの幾何平均比の90%信頼区間が、0.70から1.43の間にあることによって確立される、
方法。
(項目25)
前記経皮送達システムが、前記対象に対して、x mg/日の用量を投与し、経口投与を介して前記治療剤を投与される前記対象が、x mg/日の20%以内の用量を受容し、ここで、xは0.05~25である、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記経皮送達システムが、前記対象に対して、x mg/日の用量を投与し、経口投与を介して前記治療剤を投与される前記対象が、x mg/日を受容し、ここで、xは0.05~25である、項目24に記載の方法。
(項目27)
前記経皮送達システムを投与される前記対象および経口投与を介して前記治療剤を投与される前記対象が、同じ対象である、項目24に記載の方法。
(項目28)
前記経皮送達システムを投与される前記対象および経口投与を介して前記治療剤を投与される前記対象が、異なる対象である、項目24に記載の方法。
(項目29)
生物学的同等性が、前記経皮送達システムを投与される前記対象から、および経口投与を介して前記治療剤を投与される前記対象から採取された血液試料から確立される、項目24から28のいずれか一項に記載の方法。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B