(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】生体内留置チューブ
(51)【国際特許分類】
A61F 2/848 20130101AFI20240410BHJP
A61F 2/94 20130101ALI20240410BHJP
A61M 1/00 20060101ALI20240410BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
A61F2/848
A61F2/94
A61M1/00 160
A61M25/00 500
A61M25/00 600
(21)【出願番号】P 2019525365
(86)(22)【出願日】2018-06-07
(86)【国際出願番号】 JP2018021864
(87)【国際公開番号】W WO2018230435
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2017115570
(32)【優先日】2017-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小磯 智春
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/057313(WO,A1)
【文献】特開2014-198174(JP,A)
【文献】特開2015-036043(JP,A)
【文献】特開昭62-072375(JP,A)
【文献】特開2001-224554(JP,A)
【文献】実開平01-152636(JP,U)
【文献】国際公開第2015/133333(WO,A1)
【文献】特開平5-192389(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0051911(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/848
A61F 2/94
A61M 1/00
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位側と遠位側を有する筒状部材と、
前記筒状部材の近位側に、近位側の基部と遠位側の自由端とを有する近位フラップと、
前記筒状部材の遠位側に、遠位側の基部と近位側の自由端とを有する遠位フラップとを含み
、
前記筒状部材は、インナーチューブとアウターチューブとを含む複層構造であり
、
前記筒状部材は、下記(1)の条件
を満たす遠位側第1支持体と下記(2)の条件
を満たす近位側第1支持体の少なくともいずれか一方を
有する生体内留置チューブ。
(1)前記遠位側第1支持体は、
前記遠位フラップの前記基部と前記自由端との中点よりも遠位側、かつ前記遠位フラップの前記基部よりも近位側に設けられて
おり、前記インナーチューブと前記アウターチューブとの間に配置されており、構成する材料が金属である。
(2)前記近位側第1支持体は、
前記近位フラップの前記基部と前記自由端との中点よりも近位側、かつ前記近位フラップの前記基部よりも遠位側に設けられて
おり、前記インナーチューブと前記アウターチューブとの間に配置されている。
【請求項2】
前記筒状部材は、前記遠位側第1支持体と、前記遠位フラップの前記自由端よりも近位側かつ前記筒状部材の中点よりも遠位側に設けられている遠位側第2支持体と、を有している請求項1に記載の生体内留置チューブ。
【請求項3】
前記筒状部材は、下記(1)の条件と下記(2)の条件の少なくともいずれか一方を満たす請求項1または2に記載の生体内留置チューブ。
(1)前記遠位側第1支持体は、前記遠位フラップの前記基部上に設けられている。
(2)前記近位側第1支持体は、前記近位フラップの前記基部上に設けられている。
【請求項4】
前記筒状部材は、下記(1)の条件と下記(2)の条件の少なくともいずれか一方を満たす請求項1または2に記載の生体内留置チューブ。
(1)前記遠位側第1支持体は、前記遠位フラップの前記基部と前記筒状部材の遠位端との中点よりも近位側に設けられている。
(2)前記近位側第1支持体は、前記近位フラップの前記基部と前記筒状部材の近位端との中点よりも遠位側に設けられている。
【請求項5】
前記筒状部材は、前記遠位フラップの前記自由端よりも近位側かつ前記筒状部材の中点よりも遠位側に設けられている遠位側第2支持体と前記近位フラップの前記自由端よりも遠位側かつ前記筒状部材の中点よりも近位側に設けられている近位側第2支持体の少なくともいずれか一方が設けられている請求項1~4のいずれか一項に記載の生体内留置チューブ。
【請求項6】
前記遠位側第1支持体の近位端と前記遠位側第2支持体の遠位端との中点は、前記遠位フラップの前記自由端よりも遠位側にあり、
前記近位側第1支持体の遠位端と前記近位側第2支持体の近位端との中点は、前記近位フラップの前記自由端よりも近位側にある請求項5に記載の生体内留置チューブ。
【請求項7】
前記筒状部材は、前記筒状部材の近位側から順次、第1領域と第2領域とを有し、前記近位フラップの前記基部よりも遠位側で、前記第1領域と前記第2領域の色が互いに異なる請求項1~6のいずれか一項に記載の生体内留置チューブ。
【請求項8】
前記筒状部材は、前記筒状部材の近位側から順次、第1領域と第2領域とを有し、
前記近位フラップの前記基部よりも近位側と前記遠位フラップの前記基部よりも遠位側の少なくともいずれか一方に、
前記遠位フラップの前記自由端に対応する前記筒状部材の位置または前記遠位側第2支持体の近位端と、前記近位フラップの前記自由端に対応する前記筒状部材の位置または前記第1領域の遠位端との間の前記筒状部材の平均外径よりも最大外径が大きい大径部を有する請求項5または6に記載の生体内留置チューブ。
【請求項9】
前記筒状部材は、前記筒状部材の近位側から順次、第1領域と第2領域とを有し、
前記筒状部材は、前記遠位フラップの前記自由端に対応する前記筒状部材の位置または前記遠位側第2支持体の近位端と、前記近位フラップの前記自由端に対応する前記筒状部材の位置または前記第1領域の遠位端との間の前記筒状部材の平均外径よりも最小外径が小さい小径部を有し、
前記近位フラップの前記基部と前記近位フラップが閉状態の前記近位フラップの前記自由端より近位側の位置の間と、前記遠位フラップの前記基部と前記遠位フラップが閉状態の前記遠位フラップの前記自由端より遠位側の位置の間の少なくともいずれか一方に前記小径部が設けられている請求項5または6に記載の生体内留置チューブ。
【請求項10】
前記筒状部材は、前記小径部において穴を有している請求項9に記載の生体内留置チューブ。
【請求項11】
前記筒状部材は、前記遠位側第1支持体、前記遠位フラップの前記自由端よりも近位側かつ前記筒状部材の中点よりも遠位側に設けられている遠位側第2支持体、前記近位側第1支持体、および前記近位フラップの前記自由端よりも遠位側かつ前記筒状部材の中点よりも近位側に設けられている近位側第2支持体の少なくともいずれか一つの支持体を備え、
少なくともいずれか一つの前記支持体の形状は、筒状である請求項1~10のいずれか一項に記載の生体内留置チューブ。
【請求項12】
前記筒状部材は、前記遠位側第1支持体、前記遠位フラップの前記自由端よりも近位側かつ前記筒状部材の中点よりも遠位側に設けられている遠位側第2支持体、前記近位側第1支持体、および前記近位フラップの前記自由端よりも遠位側かつ前記筒状部材の中点よりも近位側に設けられている近位側第2支持体の少なくともいずれか一つの支持体を備え、
少なくともいずれか一つの前記支持体の内径は、前記筒状部材の外径よりも小さい請求項1~11のいずれか一項に記載の生体内留置チューブ。
【請求項13】
前記筒状部材は、前記遠位側第1支持体、前記遠位フラップの前記自由端よりも近位側かつ前記筒状部材の中点よりも遠位側に設けられている遠位側第2支持体、前記近位側第1支持体、および前記近位フラップの前記自由端よりも遠位側かつ前記筒状部材の中点よりも近位側に設けられている近位側第2支持体の少なくともいずれか一つの支持体を備え、
少なくともいずれか一つの前記支持体を構成する材料は、金属である、
または、少なくともいずれか一つの前記支持体を構成する材料の硬度(タイプAデュロメータ硬さ)は、前記筒状部材を構成する材料の硬度(タイプAデュロメータ硬さ)よりも高い樹脂である請求項1~12のいずれか一項に記載の生体内留置チューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラップを有する生体内留置チューブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ステントに代表される生体内留置チューブ、特に、胆管用または膵管用のステントは、胆管や膵管等の生体内管腔が狭窄または閉塞することにより生じる胆道閉塞症、黄胆、胆道がん等の様々な疾患を治療するための医療器具である。生体内留置チューブは、胆汁の胆管内から十二指腸側への排出や、狭窄または閉塞部位の病変部を内側から拡張することによる管腔内径の維持を目的として生体管腔に留置される。生体内留置チューブの内腔にがん細胞等の病変部の組織が入り込んで生体内留置チューブの内腔が閉塞または狭窄すると、生体内留置チューブを交換する必要がある。
【0003】
生体内留置チューブは金属材料から構成されているものと、樹脂材料から構成されているものがある。上述のような治療において、樹脂材料から構成されている生体内留置チューブが使用されることがある。
【0004】
まず、従来の生体内留置チューブについて
図10を用いて説明する。
図10に示すように、樹脂材料から構成されている生体内留置チューブ201は、近位端202と遠位端203を有し、遠近方向に延在している。生体内留置チューブ201は近位側の外表面に切り込みを入れて近位フラップ205を形成し、遠位側の外表面に切り込みを入れて遠位フラップ208を形成しているものが一般的である(例えば、特許文献1~3)。近位フラップ205および遠位フラップ208は、生体内留置チューブ201を生体内管腔に固定する機能を有している。生体内留置チューブ201が胆管ステントの場合、例えば、遠位フラップ208は、胆管から十二指腸側に生体内留置チューブが脱落しないように胆管の狭窄部(閉塞部)よりも遠位側に配置され、近位フラップ205は、胆管内に生体内留置チューブ201の近位端202が奥に入り込まないように十二指腸の乳頭付近に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-36043号公報
【文献】特開平9-56809号公報
【文献】特開平5-192389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および特許文献2に開示されている生体内留置チューブは、筒状部材の外周を軸方向に切り込み、フラップを形成している。しかし、このような生体内留置チューブはフラップの強度が低く、生体内留置チューブの近位端が胆管内等に入り込むことを十分に防止できないという問題や、フラップが破断しやすいという問題があった。
【0007】
特許文献3に開示されているように、外側チューブと内側チューブの間に補強用のブレードを配設すると、フラップだけでなく生体内留置チューブ全体の強度が高まる。そのため、このような生体内留置チューブは、生体内留置チューブを内視鏡の管路内に通過させにくく、所望の留置部位まで送達しにくいという問題があった。
【0008】
本発明は、前記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、フラップの強度が高く、かつ内視鏡の管路等の通過を円滑にすることができる生体内留置チューブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決することができた生体内留置チューブは、近位側と遠位側を有する筒状部材と、筒状部材の近位側に、近位側の基部と遠位側の自由端とを有する近位フラップと、筒状部材の遠位側に、遠位側の基部と近位側の自由端とを有する遠位フラップとを含み、筒状部材は、筒状部材の径方向外方であって、遠位フラップの基部と自由端との中点よりも遠位側に設けられている遠位側第1支持体と近位フラップの基部と自由端との中点よりも近位側に設けられている近位側第1支持体の少なくともいずれか一方を有することを特徴とするものである。
【0010】
上記の生体内留置チューブにおいて、筒状部材は、下記(1)の条件と下記(2)の条件の少なくともいずれか一方を満たすことが好ましい。
(1)遠位側第1支持体は、遠位フラップの基部よりも近位側に設けられている。
(2)近位側第1支持体は、近位フラップの基部よりも遠位側に設けられている。
【0011】
上記の生体内留置チューブにおいて、筒状部材は、下記(1)の条件と下記(2)の条件の少なくともいずれか一方を満たすことが好ましい。
(1)遠位側第1支持体は、遠位フラップの基部上に設けられている。
(2)近位側第1支持体は、近位フラップの基部上に設けられている。
【0012】
上記の生体内留置チューブにおいて、筒状部材は、下記(1)の条件と下記(2)の条件の少なくともいずれか一方を満たすことが好ましい。
(1)遠位側第1支持体は、遠位フラップの基部と筒状部材の遠位端との中点よりも近位側に設けられている。
(2)近位側第1支持体は、近位フラップの基部と筒状部材の近位端との中点よりも遠位側に設けられている。
【0013】
上記の生体内留置チューブにおいて、筒状部材は、遠位フラップの自由端よりも近位側かつ筒状部材の中点よりも遠位側に設けられている遠位側第2支持体と近位フラップの自由端よりも遠位側かつ筒状部材の中点よりも近位側に設けられている近位側第2支持体の少なくともいずれか一方が設けられていることが好ましい。
【0014】
上記の生体内留置チューブにおいて、遠位側第1支持体の近位端と遠位側第2支持体の遠位端との中点は、遠位フラップの自由端よりも遠位側にあり、近位側第1支持体の遠位端と近位側第2支持体の近位端との中点は、近位フラップの自由端よりも近位側にあることが好ましい。
【0015】
上記の生体内留置チューブにおいて、筒状部材は、筒状部材の近位側から順次、第1領域と第2領域とを有し、近位フラップの基部よりも遠位側で、第1領域と第2領域の色が互いに異なることが好ましい。
【0016】
上記の生体内留置チューブにおいて、近位フラップの基部よりも近位側と遠位フラップの基部よりも遠位側の少なくともいずれか一方に、遠位フラップの自由端に対応する筒状部材の位置または遠位側第2支持体の近位端と、近位フラップの自由端に対応する筒状部材の位置または第1領域の遠位端との間の筒状部材の平均外径よりも最大外径が大きい大径部を有することが好ましい。
【0017】
上記の生体内留置チューブにおいて、筒状部材は、遠位フラップの自由端に対応する筒状部材の位置または遠位側第2支持体の近位端と、近位フラップの自由端に対応する筒状部材の位置または第1領域の遠位端との間の筒状部材の平均外径よりも最小外径が小さい小径部を有し、近位フラップの基部と近位フラップが閉状態の近位フラップの自由端より近位側の位置の間と、遠位フラップの基部と遠位フラップが閉状態の遠位フラップの自由端より遠位側の位置の間の少なくともいずれか一方に小径部が設けられていることが好ましい。
【0018】
上記の生体内留置チューブにおいて、筒状部材は、小径部に穴を有していることが好ましい。
【0019】
上記の生体内留置チューブにおいて、筒状部材は、遠位側第1支持体、遠位フラップの自由端よりも近位側かつ筒状部材の中点よりも遠位側に設けられている遠位側第2支持体、近位側第1支持体、および近位フラップの自由端よりも遠位側かつ筒状部材の中点よりも近位側に設けられている近位側第2支持体の少なくともいずれか一つの支持体を備え、少なくともいずれか一つの支持体の形状は、筒状であることが好ましい。
【0020】
上記の生体内留置チューブにおいて、筒状部材は、遠位側第1支持体、遠位フラップの自由端よりも近位側かつ筒状部材の中点よりも遠位側に設けられている遠位側第2支持体、近位側第1支持体、および近位フラップの自由端よりも遠位側かつ筒状部材の中点よりも近位側に設けられている近位側第2支持体の少なくともいずれか一つの支持体を備え、少なくともいずれか一つの支持体の内径は、筒状部材の外径よりも小さいことが好ましい。
【0021】
上記の生体内留置チューブにおいて、筒状部材は、遠位側第1支持体、遠位フラップの自由端よりも近位側かつ筒状部材の中点よりも遠位側に設けられている遠位側第2支持体、近位側第1支持体、および近位フラップの自由端よりも遠位側かつ筒状部材の中点よりも近位側に設けられている近位側第2支持体の少なくともいずれか一つの支持体を備え、少なくともいずれか一つの支持体を構成する材料は、金属である、または、少なくともいずれか一つの支持体を構成する材料の硬度(タイプAデュロメータ硬さ)は、筒状部材を構成する材料の硬度(タイプAデュロメータ硬さ)よりも高い樹脂であることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、生体内留置チューブ自体の柔軟性を維持しつつ、フラップの強度を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施の形態における生体内留置チューブのデリバリーシステムの側面図を表す。
【
図2】本発明の実施の形態における生体内留置チューブの側面図を表す。
【
図3】本発明の実施の形態における生体内留置チューブの遠位フラップ付近の一例の拡大側面図を表す。
【
図4】本発明の実施の形態における生体内留置チューブの遠位フラップ付近の他の一例の拡大側面図を表す。
【
図5】本発明の実施の形態における生体内留置チューブの遠位フラップ付近のさらに他の一例の拡大側面図を表す。
【
図6】本発明の実施の形態における生体内留置チューブの遠位フラップ付近の拡大側面図を表す。
【
図7】本発明の実施の形態における生体内留置チューブの一例の側面図を表す。
【
図8】本発明の実施の形態における生体内留置チューブの他の一例の側面図を表す。
【
図9】本発明の実施の形態における生体内留置チューブの他の一例における近位フラップが閉状態の側面図を表す。
【
図10】従来の生体内留置チューブの側面図を表す。
【
図11】従来の生体内留置チューブにおける近位フラップが閉状態の近位フラップ付近の拡大側面図を表す。
【
図12】生体内留置チューブのフラップ部の拡大側面図を表す。
【
図13】
図12に示す生体内留置チューブのフラップのXIII-XIII線における断面図を表す。
【
図14】測定サンプルのフラップ部の引張強度の測定方法についての説明図を表す。
【
図15】測定サンプルのフラップ部の引張強度の測定結果のグラフを表す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0025】
生体内留置チューブは、生体内留置チューブを病変部まで搬送するために、生体内留置チューブを設置する部位を有するカテーテル等のデリバリーシステム(搬送装置)に取り付けて用いられる。
【0026】
本発明において、近位側とは生体内留置チューブの延在方向に対して使用者(術者)の手元側の方向を指し、遠位側とは近位側の反対方向(すなわち処置対象側の方向)を指す。また、生体内留置チューブの近位側から遠位側への方向を軸方向と称する。径方向とは筒状部材の半径方向を指し、径方向において内方とは筒状部材の軸中心側に向かう方向を指し、径方向において外方とは内方と反対側に向かう放射方向を指す。
【0027】
なお、以下の実施形態においては、生体内留置チューブの近位側のフラップ(近位フラップ)と遠位側のフラップ(遠位フラップ)を総称してフラップとする場合がある。また、生体内留置チューブの遠位側第1支持体と近位側第1支持体を総称して第1支持体、遠位側第2支持体と近位側第2支持体を総称して第2支持体、第1支持体と第2支持体を総称して支持体、遠位側第1支持体と遠位側第2支持体を総称して遠位側支持体、近位側第1支持体と近位側第2支持体を総称して近位側支持体とする場合がある。
【0028】
(1)デリバリーシステム
本発明の生体内留置チューブの製造方法について詳しく説明する前に、まず、
図1を参照して、生体内留置チューブを留置対象部位に送達するデリバリーシステムの構成例を説明する。
図1にデリバリーシステムの一例を示す。デリバリーシステム2は、インナーカテーテル3の径方向の外方にアウターカテーテル4と生体内留置チューブ1が配置されている。生体内留置チューブ1とアウターカテーテル4とは縫合糸5によって結合されている。生体内留置チューブ1とアウターカテーテル4とが結合されていることにより、病変部へ生体内留置チューブ1を搬送する際に、生体内管腔において生体内留置チューブ1を引き戻し、位置の微調節をすることが可能となる。そのため、病変部の適切な位置に生体内留置チューブ1を留置しやすくなる。アウターカテーテル4の径方向の外方に挿入補助チューブ6が配置されている。挿入補助チューブ6によって、生体内留置チューブ1の搬送途中にフラップを折り返りにくくすることができ、かつ、挿入時にデリバリーシステム2のキンクを防止することができる。その結果、生体内留置チューブ1の搬送を円滑に行うことができる。
【0029】
(2)生体内留置チューブの全体構成
本発明において、生体内留置チューブは、近位側と遠位側を有する筒状部材と、筒状部材の近位側に、近位側の基部と遠位側の自由端とを有する近位フラップと、筒状部材の遠位側に、遠位側の基部と近位側の自由端とを有する遠位フラップとを含み、筒状部材の径方向外方であって、遠位フラップの基部と自由端との中点よりも遠位側に第1支持体が設けられていることを特徴とするものである。以下、
図2~
図9を用いて本発明における生体内留置チューブについて、説明する。なお、
図2~
図9において、紙面左方向が生体内留置チューブの遠位側に相当し、紙面右方向が生体内留置チューブの近位側に相当する。
【0030】
図2に示すように、本発明の実施の形態における生体内留置チューブ1は、近位側と遠位側を有する筒状部材104と、筒状部材104の近位側に、近位側の基部106と遠位側の自由端107とを有する近位フラップ105と、筒状部材104の遠位側に、遠位側の基部109と近位側の自由端110とを有する遠位フラップ108とを含んでいる。生体内留置チューブ1は、近位端102と遠位端103を有しており、軸方向に延在している。基部106とは、近位フラップ105が筒状部材104から立ち上がる基点であり、自由端107とは、筒状部材104から立ち上がった近位フラップ105の先端である。基部109とは、遠位フラップ108が筒状部材104から立ち上がる基点であり、自由端110とは、筒状部材104から立ち上がった遠位フラップ108の先端である。
【0031】
図2~
図5に示すように、筒状部材104は、筒状部材104の径方向外方であって、遠位フラップ108の基部109と自由端110との中点P3よりも遠位側に設けられている遠位側第1支持体10と近位フラップ105の基部106と自由端107との中点P4よりも近位側に設けられている近位側第1支持体30の少なくともいずれか一方を有する。
図2~
図5では、筒状部材104に遠位側第1支持体10と近位側第1支持体30の両方が設けられている例を示している。すなわち、遠位フラップ108の基部109と自由端110との中点P3よりも遠位側に、遠位側第1支持体10の近位端10aが配置されており、近位フラップ105の基部106と自由端107との中点P4よりも近位側に、近位側第1支持体30の遠位端30bが配置されている。遠位側第1支持体10は、遠位フラップ108の基部109に応力がかかることにより基部109が裂けて、遠位フラップ108が破断することを防ぐために筒状部材104の遠位フラップ108付近に配置するものである。近位側第1支持体30も遠位側第1支持体10と同様に、近位フラップ105の基部106に応力がかかることにより基部106が裂けて、近位フラップ105が破断することを防ぐために筒状部材104の近位フラップ105付近に配置するものである。なお、遠位側第1支持体10および近位側第1支持体30のさらなる詳細については後述する。
【0032】
(3)筒状部材
筒状部材104の内径は、軸方向全体にわたって一定であってもよく、軸方向の位置によって異なっていてもよい。
【0033】
筒状部材104の遠位端103の外径は、遠位フラップ108の自由端110に対応する筒状部材104の位置と、近位フラップ105の自由端107に対応する筒状部材104の位置の間の筒状部材104の平均外径よりも小さいことが好ましい。筒状部材104の外径が、遠位端部において、遠位端103に向かってテーパ状に小さくなっていてもよい。筒状部材104の遠位端103の外径が小さくなっていることにより、生体内管腔の狭窄部あるいは閉塞部を生体内留置チューブ1が通過しやすくなる。
【0034】
筒状部材104の肉厚は、必要な強度、柔軟性に応じて適宜設定することができるが、0.2mm以上0.6mm以下であることが好ましい。筒状部材104の肉厚をこのように設定することにより、生体内留置チューブ1の強度を十分なものとすることができ、かつ生体内留置チューブ1に柔軟性を付与することが可能となる。
【0035】
筒状部材104の近位端102の肉厚は、遠位フラップ108の自由端110に対応する筒状部材104の位置と、近位フラップ105の自由端107に対応する筒状部材104の位置の間の筒状部材104の平均肉厚よりも厚いことが好ましい。筒状部材104の近位端102の肉厚がこのようになっていることにより、生体内留置チューブ1のプッシャビリティを向上することができる。近位端102の端面は、平坦であることが好ましい。これにより、生体内留置チューブ1の近位端102端面の強度が一定となり、生体内留置チューブ1のプッシャビリティを向上することができる。また、近位端102の端面は、体腔内を傷つけないようにするために、外周が面取りされていてもよい。
【0036】
筒状部材104、近位フラップ105、および遠位フラップ108を構成する材料としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂が好適に用いられる。なお、筒状部材104、近位フラップ105、および遠位フラップ108を構成する材料は同じであってもよく、異なっていてもよい。筒状部材104、近位フラップ105、および遠位フラップ108を構成する材料が同じであれば、生体内留置チューブ1の全体的な強度や柔軟性が均一なものとなる。また、例えば、近位フラップ105と遠位フラップ108を構成する材料を、筒状部材104を構成する材料よりも硬度の高い材料とすることにより、近位フラップ105および遠位フラップ108の生体内管腔への保持力は高いが、筒状部材104の柔軟性は保たれている生体内留置チューブ1とすることができる。
【0037】
(4)第1領域および第2領域
図2に示すように、筒状部材104は、近位側から順次、第1領域50と第2領域60とを有し、近位フラップ105の基部106よりも遠位側で、第1領域50と第2領域60の色が互いに異なることが好ましい。第1領域50と第2領域60の色が互いに異なるとは、第1領域50の色と第2領域60の色とで、JIS Z8721で定める色相、明度、および彩度の少なくとも1つが異なっていることを指す。筒状部材104が第1領域50と第2領域60とを有し、第1領域50と第2領域60の色が互いに異なることにより、生体内留置チューブ1を生体内管腔の所望の箇所へ搬送する際に、生体内留置チューブ1の近位フラップ105の位置を内視鏡にて確認することが容易となる。第2領域60の色が第1領域50と異なる色であり、内視鏡下で視認しやすい色であれば、第1領域50と第2領域60との境界を確認することが容易となり、生体内留置チューブ1の近位フラップ105を確認しやすくなる。例えば、第1領域50の色が黒色等の明度の低い色であり、第2領域60の色が黄色等の明度の高い色であってもよい。また、第1領域50の色が明度の高い色であり、第2領域60の色が明度の低い色であってもよい。
【0038】
第1領域50および第2領域60とは別に、筒状部材104は、近位フラップ105の基部106よりも近位側に、第1領域50と第2領域60の少なくともいずれか一方と色が異なる領域を有していてもよい。筒状部材104が近位フラップ105の基部106よりも近位側に色が異なる領域を有していれば、生体内留置チューブ1の近位端102と遠位端103の判別がしやすくなる。また、近位フラップ105の基部106よりも近位側に色が異なる領域を有していなければ、第1領域50が目立ち、内視鏡での第1領域50の視認性が高まる。
【0039】
第1領域50と第2領域60の色を互いに異なるものとするには、例えば、筒状部材104において第1領域50と第2領域60となる部分の少なくとも一方を着色する方法や、第1領域50と第2領域60となる部分の少なくとも一方に筒状部材104とは色が異なるフィルムや筒型部材を配置する方法等が挙げられる。筒状部材104の第1領域50と第2領域60となる部分の少なくとも一方を着色する方法としては、塗料を塗布する、染料にて染色する等の方法が挙げられる。中でも、筒状部材104の第1領域50となる部分に、筒状部材104とは異なる色の塗料を塗布して着色することが好ましい。このように第1領域50と第2領域60の色を互いに異なるものとすることにより、内視鏡にて生体内留置チューブ1の近位フラップ105の位置の視認性を高めることができる。また、筒状部材104は、第2領域60より遠位側に、第2領域60とは異なる色の領域を有してもよい。なお、後述する近位側第2支持体40の色を第1領域50の色とは異なる色とし、近位側第2支持体40を第2領域60としてもよい。
【0040】
第1領域50、および第2領域60の軸方向の長さは、視認しやすいように適宜設定することができる。第1領域50の近位端50aは、筒状部材104の近位フラップ105の基部106よりも近位側にあり、第1領域50の遠位端50bは、筒状部材104の近位フラップ105の基部106よりも遠位側にあることが好ましい。なお、第1領域50の近位端50aは、筒状部材104の近位フラップ105の基部106よりも遠位側にあってもよい。また、第1領域50の近位端50aは、筒状部材104の近位端102と一致していてもよい。
【0041】
図7~
図9に示すように、第2領域60の近位端60aは、近位フラップ105の自由端107に対応する筒状部材104の位置P2よりも遠位側に配置されていることが好ましい。近位フラップ105の自由端107に対応する筒状部材104の位置P2とは、近位フラップ105を筒状部材104に沿わせて、近位フラップ105が閉じた状態としたときに、近位フラップ105の自由端107が筒状部材104と接する位置のことである。
【0042】
(5)近位フラップおよび遠位フラップ
近位フラップ105は筒状部材104の近位部に、遠位フラップ108は筒状部材104の遠位部に設けられる。近位フラップ105および遠位フラップ108は、例えば、筒状部材104の端部の表面に切り込みを入れることにより形成してもよい。また、近位フラップ105または遠位フラップ108を構成する、筒状部材104とは異なる部材であるフラップ部材を筒状部材104の近位端部、遠位端部に設けることにより形成してもよい。この場合、フラップ部材を筒状部材104に接合する等の方法を採用することができる。近位フラップ105と遠位フラップ108とは、同じ方法で形成されてもよく、異なる方法で形成されてもよい。
【0043】
近位フラップ部材または遠位フラップ部材を筒状部材104の外表面に接合してフラップを形成する場合、フラップ部材は筒状部材104を構成する材料と同じであってもよく、異なっていてもよい。筒状部材104とフラップ部材との接合方法としては、熱溶着、超音波溶着、接着剤による接着等が挙げられるが、熱溶着による接合が好ましい。熱溶着によって筒状部材104とフラップ部材とを接合することにより、筒状部材104とフラップ部材との接合強度を高めることができる。
【0044】
十二指腸の乳頭付近にがん等の病変部がある場合には、生体内留置チューブ1の近位フラップ105付近が病変部に接する可能性がある。この場合、筒状部材104の近位フラップ105付近に、近位フラップ105の作製のため筒状部材104に切り込みを入れることによって形成される穴があると、この穴から生体内留置チューブ1の内腔にがん細胞等が侵入し、生体内留置チューブ1の内腔を塞ぐ、または狭窄するおそれがある。そのため、近位フラップ105付近へがん等の病変部が接する可能性がある場合等には、近位フラップ105付近にがん細胞等が侵入できる程度の大きさの穴が形成されないよう、近位フラップ部材を筒状部材104に設けることによって、近位フラップ105を形成することが好ましい。
【0045】
生体内留置チューブ1を生体内から回収する際に、遠位フラップ108が破断することを防ぐために、遠位フラップ108の強度を高めることが好ましい。遠位フラップ108の強度を高めるため、筒状部材104の遠位端部に切り込みを入れることによって、遠位フラップ108と筒状部材104を一体に形成することが好ましい。
【0046】
近位フラップ105は、近位側から遠位側に向かう軸方向かつ径方向の外方に向かって延在している。遠位フラップ108は、遠位側から近位側に向かう軸方向かつ径方向の外方に向かって延在している。近位フラップ105および遠位フラップ108は、それぞれ1または複数設けられていてもよく、例えば、2以上、3以上、または5以下であることも許容される。近位フラップ105または遠位フラップ108が複数設けられる場合、各フラップが筒状部材104の周方向において等間隔に配置されていることが好ましい。複数の近位フラップ105がこのように配置されていることにより、生体内留置チューブ1の近位端102が生体内管腔に入り込むことを防止する効果を高めることができる。複数の遠位フラップ108がこのように配置されていることにより、生体内留置チューブ1が生体内管腔から脱落することを防止する効果を高めることができる。また、近位フラップ105または遠位フラップ108が複数設けられる場合は、後述するフラップの基部から自由端までの長さやフラップの幅、厚みは、全て同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、各フラップの長さや幅、厚みが同じであれば、製造が容易となる。また、各フラップの長さや幅、厚みが異なることにより、それぞれのフラップの強度を変えることができる。具体例としては、応力がかかりやすく破断のおそれがある箇所のフラップの強度を上げる、柔軟性が求められる箇所のフラップの強度を下げる等が挙げられる。
【0047】
近位フラップ105の基部106から自由端107までの長さ、および遠位フラップ108の基部109から自由端110までの長さは、特に限定されないが、4mm以上15mm以下であることが好ましい。フラップの基部から自由端までの長さをこのように設定することにより、フラップに十分な弾性を持たせることができ、生体内留置チューブ1が所望の位置以外に入り込むことを防ぐことができる。
【0048】
近位フラップ105の肉厚は、特に限定されないが、近位フラップ105の肉厚を筒状部材104の近位端の肉厚よりも薄くすることにより、近位フラップ105と接する生体内管腔を傷つけにくくすることができる。近位フラップ105の肉厚を筒状部材104の近位端の肉厚よりも厚くすることにより、近位フラップ105の強度を上げることができる。また、近位フラップ105の肉厚は、基部106から自由端107にかけて一定であってもよく、異なっていてもよい。例えば、近位フラップ105の基部106から自由端107に向かって肉厚が減少している部分を有していてもよい。
【0049】
遠位フラップ108の肉厚は、特に限定されないが、筒状部材104の近位端102の肉厚よりも薄いことが好ましい。遠位フラップ108の肉厚を筒状部材104の近位端102の肉厚よりも薄くすることにより、遠位フラップ108が生体内管腔の管壁を穿孔したり傷つけたりすることを防ぐことができる。また、遠位フラップ108の肉厚は、遠位フラップ108の自由端110に対応する筒状部材104の位置と、近位フラップ105の自由端107に対応する筒状部材104の位置の間の筒状部材104の平均肉厚よりも厚いことも好ましい。遠位フラップ108の肉厚がこのようになっていることにより、遠位フラップ108の生体内管腔への保持力を高めることができる。
【0050】
近位フラップ105と遠位フラップ108の肉厚や長さは、同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、近位フラップ105の長さを遠位フラップ108の長さよりも長くすることにより、近位フラップ105が径方向外方に大きく開き、生体内留置チューブ1の近位端102が生体内管腔へ入り込むことを防止する効果を向上させることができる。遠位フラップ108の長さを近位フラップ105の長さよりも長くすることにより、遠位フラップ108の開く大きさを大きくすることができ、生体内管腔への保持力を高めることができる。近位フラップ105の肉厚が遠位フラップ108の肉厚より薄いと、近位フラップ105が内視鏡の管路内壁と干渉しにくくなってデリバリー性能の向上の効果がある。近位フラップ105の肉厚が遠位フラップ108の肉厚より厚いと、近位フラップ105の強度が上がって、生体内留置チューブ1の近位端102が生体内管腔へ入り込むことを防止する効果を高めることができる。近位フラップ105と遠位フラップ108の肉厚は、0.2mm以上0.6mm以下であることが好ましい。なお、フラップの肉厚は、フラップの基部から自由端にかけて一定であってもよく、異なっていてもよい。
【0051】
近位フラップ105、遠位フラップ108を構成する材料は、特に限定されないが、筒状部材104を構成する樹脂として挙げたものを使用することができる。なお、フラップを構成する材料は、筒状部材104を構成する材料と同じであってもよく、異なっていてもよい。フラップを構成する材料と筒状部材104を構成する材料が同じであれば、筒状部材104とフラップの接合性がよくなり、筒状部材104にフラップを設けることが容易となる。フラップを構成する材料と筒状部材104を構成する材料が異なっていれば、例えば、筒状部材104を構成する材料を柔らかいものとし、筒状部材104の柔軟性は高いがフラップの強度が高い生体内留置チューブ1とすることができる。
【0052】
近位フラップ105を構成する材料の硬度(タイプAデュロメータ硬さ)は、遠位フラップ108の自由端110に対応する筒状部材104の位置と、近位フラップ105の自由端107に対応する筒状部材104の位置の間の筒状部材104を構成する材料の平均硬度(タイプAデュロメータ硬さ)よりも高いことも好ましい。タイプAデュロメータ硬さは、JIS K7215に準拠した方法にて測定することができる。近位フラップ105を構成する材料の硬度を高くすることにより、近位フラップ105の剛性が増し、生体内留置チューブ1を生体内管腔に固定する機能を向上させることができる。
【0053】
(6)遠位側第1支持体および近位側第1支持体の好ましい配置
図3に示すように、遠位側第1支持体10は、遠位フラップ108の基部109よりも近位側に設けられており、近位側第1支持体30は、近位フラップ105の基部106よりも遠位側に設けられていることが好ましい。すなわち、遠位フラップ108の基部109と自由端110との中点P3よりも遠位側に遠位側第1支持体10の近位端10aが配置され、遠位フラップ108の基部109よりも近位側に遠位側第1支持体10の遠位端10bが配置されていることが好ましい。また、近位フラップ105の基部106と自由端107との中点P4よりも近位側に近位側第1支持体30の遠位端30bが配置され、近位フラップ105の基部106よりも遠位側に近位側第1支持体の近位端30aが配置されることが好ましい。遠位側第1支持体10をこのように配置することにより、遠位フラップ108に応力が加わった際にその応力を遠位側第1支持体10で受けることができる。その結果、応力が遠位フラップ108の基部109に応力が加わって基部109が裂け、その基部109の裂け目が筒状部材104の遠位端103まで達して遠位フラップ108が破断することを防ぐことができる。また、近位側第1支持体30をこのように配置することにより、遠位側第1支持体10と同様に、近位フラップ105に応力が加わった際にその応力を近位側第1支持体30で受けることができ、近位フラップ105が破断することを防ぐことができる。
【0054】
図4に示すように、遠位側第1支持体10は、遠位フラップ108の基部106上に設けられており、近位側第1支持体30は、近位フラップ105の基部106上に設けられていることも好ましい。すなわち、遠位フラップ108の基部109と自由端110との中点P3よりも遠位側であり、かつ、基部109よりも近位側に遠位側第1支持体10の近位端10aが配置され、基部109よりも遠位側に遠位側第1支持体10の遠位端10bが配置されていることが好ましい。また、近位フラップ105の基部106と自由端107との中点P4よりも近位側であり、かつ、基部106よりも遠位側に近位側第1支持体30の遠位端30bが配置され、基部106よりも近位側に近位側第1支持体の近位端30aが配置されることが好ましい。遠位側第1支持体10をこのように配置することにより、遠位フラップ108に加わった応力を遠位側第1支持体10で受けることができる。そのため、遠位フラップ108の基部109に応力がかかり、基部109が裂けて遠位フラップ108が破断することを防止できる。また、近位側第1支持体30をこのように配置することにより、遠位側第1支持体10と同様に、近位フラップ105に加わった応力を近位側第1支持体30で受けることができ、近位フラップ105が破断することを防止できる。
【0055】
図5に示すように、遠位側第1支持体10は、遠位フラップ108の基部109と筒状部材104の遠位端103との中点P5よりも近位側に設けられており、近位側第1支持体30は、近位フラップ105の基部106と筒状部材104の近位端102との中点P6よりも遠位側に設けられていることも好ましい。すなわち、遠位フラップ108の基部109と自由端110との中点P3よりも遠位側であり、かつ、基部109よりも遠位側に遠位側第1支持体10の近位端10aが配置され、基部109と筒状部材104の遠位端103との中点P5よりも近位側に遠位側第1支持体10の遠位端10bが配置されていることが好ましい。また、近位フラップ105の基部106と自由端107との中点P4よりも近位側であり、かつ、基部106よりも近位側に近位側第1支持体30の遠位端30bが配置され、基部106と筒状部材104の近位端102との中点P6よりも遠位側に近位側第1支持体30の近位端30aが配置されることが好ましい。遠位側第1支持体10をこのように配置することにより、遠位フラップ108の基部109に応力が加わり、基部109が一部裂けてしまった場合でも、遠位側第1支持体10を越えて基部109が筒状部材104の遠位端103まで裂けることを防ぐことができ、遠位フラップ108の破断を防止することが可能となる。また、近位側第1支持体30をこのように配置することにより、遠位側第1支持体10と同様に、近位フラップ105に応力が加わった際にその応力を近位側第1支持体30で受けることができ、近位フラップ105が破断することを防止することが可能となる。
【0056】
(7)遠位側第2支持体および近位側第2支持体
生体内留置チューブ1全体の強度を高めるために、遠位側第2支持体20と近位側第2支持体40の少なくともいずれか一方が設けられていてもよい。詳細には、遠位フラップ108の自由端110よりも近位側かつ筒状部材104の中点P9よりも遠位側に設けられている遠位側第2支持体20と近位フラップ105の自由端107よりも遠位側かつ筒状部材104の中点P9よりも近位側に設けられている近位側第2支持体40の少なくともいずれか一方が設けられていてもよい。例えば、遠位フラップ108付近の筒状部材104の強度が低い部分が過度に折れ曲がることによって生体内留置チューブ1を所望の留置部分に搬送することが困難となるおそれがある。このように、生体内留置チューブ1の強度を上げたい部分に遠位側第2支持体20または近位側第2支持体40を設けることにより、生体内留置チューブ1全体の強度が向上し、プッシャビリティを向上させることができる。
【0057】
(8)遠位側第1支持体、遠位側第2支持体、近位側第1支持体および近位側第2支持体の構成
生体内留置チューブ1には、少なくとも遠位側第1支持体と近位側第1支持体のいずれか一方が設けられる。生体内留置チューブ1には、遠位側第1支持体、近位側第1支持体に加えて、遠位側第2支持体と近位側第2支持体の少なくともいずれか一方が設けられてもよい。
【0058】
各支持体の形状は特に限定されないが筒状であることが好ましく、円筒状、多角筒状、筒にスリットが入った断面C字型の形状、線材を巻回したコイル形状等が挙げられる。中でも、遠位側第1支持体10、遠位側第2支持体20、近位側第1支持体30、および近位側第2支持体40の少なくともいずれか一つの形状は、筒状であることが好ましい。遠位側第1支持体10の形状が筒状であることにより、遠位フラップ108に外力が加わった際に、遠位側第1支持体10全体でその外力を受けることができ、遠位フラップ108が破断することを防ぐことができる。近位側第1支持体30の形状が筒状であることにより、近位フラップ105に外力が加わった際に、近位側第1支持体30全体でその外力を受けることができ、近位フラップ105が破断することを防ぐことができる。また、遠位側第2支持体20と近位側第2支持体40の少なくともいずれか一方の形状が筒状である場合には、生体内留置チューブ1の遠位側第2支持体20と近位側第2支持体40の少なくともいずれか一方が設けられる箇所の強度を高める効果が奏される。生体内留置チューブに設けられる支持体のすべての形状は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0059】
第1支持体の近位端から遠位端までの長さである、第1支持体の軸方向の長さは、特に限定されないが、支持体の長さを長くするとフラップの破断を防ぐ効果が高まり、短くすると、生体内留置チューブ1の柔軟性を保つことができる。第1支持体の軸方向の長さは、必要な効果に応じて適宜選択することができる。第2支持体の軸方向の長さも第1支持体の軸方向の長さと同様に、必要な効果に応じて設定することができる。それぞれの支持体の長さは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
図3において、遠位側第1支持体10の軸方向の長さは、遠位側第1支持体の近位端10aから遠位端10bまでの長さである。同様に、近位側第1支持体30の軸方向の長さは、近位側第1支持体30の近位端30aから遠位端30bまでの長さである。
【0060】
支持体の肉厚は、特に限定されないが、支持体の肉厚を厚くするとフラップの破断を防ぐ効果が高まる。また、支持体の肉厚を薄くすると、生体内留置チューブ1の柔軟性が高まり、支持体と筒状部材との段差が小さくなる。その結果、生体内留置チューブ1を病変部まで容易に搬送しやすくなる。
【0061】
支持体の少なくともいずれか一つの内径は、筒状部材104の外径よりも小さいことが好ましい。これにより、支持体が筒状部材104に強固に固定された状態となり、支持体が生体内留置チューブ1から外れにくくなる。支持体の内径を筒状部材104の外径よりも小さくするには、例えば、支持体を金属で構成して、支持体の軸方向に切り込みを入れておき、筒状部材104の径方向外方に支持体を配置した後、支持体をかしめて支持体の切り込みを入れた部分を重ね合わせて、支持体の内径を小さくする方法や、支持体を熱収縮性の樹脂で構成して、支持体の内径が筒状部材104の外径よりも大きいまたは同等の筒形状とし、支持体に熱を加えて支持体の内径を筒状部材104の外径よりも収縮させればよい。
【0062】
支持体を構成する材料は、特に限定されず、例えば、ステンレス、チタン、コバルトクロム合金、白金イリジウム合金等の金属、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等の樹脂が挙げられる。中でも、支持体の少なくともいずれか一つを構成する材料は、筒状部材104を構成する材料よりも強度が高いことが好ましい。
【0063】
筒状部材104を構成する材料よりも強度が高い材料としては、例えば、金属、筒状部材104を構成する材料よりもタイプAデュロメータ硬さが高い樹脂が挙げられる。すなわち、支持体の少なくともいずれか一つを構成する材料が、樹脂である場合、その材料の硬度(タイプAデュロメータ硬さ)は、筒状部材104を構成する材料の硬度(タイプAデュロメータ硬さ)よりも高いことが好ましい。タイプAデュロメータ硬さは、JIS K7215に準拠した方法にて測定することができる。第1支持体を構成する材料が筒状部材104を構成する材料よりも強度が高いことにより、フラップの基部が筒状部材104の端部まで裂けることを防止し、フラップの破断を防ぐことができる。
【0064】
X線透視等により生体内留置チューブ1の位置の検出が可能となるため、支持体の少なくともいずれか一つを構成する材料はX線不透過材料を含んでいてもよい。内視鏡下での生体内留置チューブ1の視認性を高くするためには、支持体の少なくともいずれか一つを構成する材料を筒状部材104とは異なる色とするか、筒状部材104とは異なる材料とすることが好ましい。例えば、近位側第2支持体40の色を筒状部材104の第1領域50の色とは異なる色とすることにより、近位側第2支持体40を第2領域60としてもよい。
【0065】
支持体は、筒状部材104に1または複数設けられていてもよく、例えば、2以上、または4以下であることも許容される。例えば、遠位側第1支持体10が筒状部材104に複数設けられている場合には、遠位フラップ108の破断防止効果をより高めることが可能となる。
【0066】
図6に示すように、遠位側第1支持体10の近位端10aと遠位側第2支持体20の遠位端20bとの中点P7は、遠位フラップ108の自由端110よりも遠位側にあり、近位側第1支持体30の遠位端30bと近位側第2支持体40の近位端40aとの中点P8は、近位フラップ105の自由端107よりも近位側にあることが好ましい。例えば、筒状部材104の遠位側に切り込みを入れることによって遠位フラップ108を形成した場合、生体内留置チューブ1の遠位フラップ108付近の強度が低下し、生体内留置チューブ1を生体内管腔の所望の留置部分へ搬送する際に、生体内留置チューブ1の遠位フラップ108付近が折れ曲がり、生体内留置チューブ1のプッシャビリティが低下するおそれがある。近位フラップ105についても同様であり、筒状部材104の近位側に切り込みを入れて近位フラップを形成した場合は、生体内留置チューブ1の近位フラップ105付近が折れ曲がり、生体内留置チューブ1のプッシャビリティが低下するおそれがある。そのため、遠位フラップ108と遠位側第1支持体10、遠位側第2支持体20をこのように配置し、近位フラップ105と近位側第1支持体30、近位側第2支持体40をこのように配置することにより、遠位側第1支持体10と遠位側第2支持体20によって生体内留置チューブ1の遠位フラップ108付近の強度を高め、近位側第1支持体30と近位側第2支持体40によって生体内留置チューブ1の近位フラップ105付近の強度を高めて、遠位フラップ108や近位フラップ105の折れ曲がりを防ぐことができる。
【0067】
(9)大径部を有する構成
図7に示すように、生体内留置チューブ1は、近位フラップ105の基部106よりも近位側と遠位フラップ108の基部109よりも遠位側の少なくともいずれか一方に、遠位フラップ108の自由端110に対応する筒状部材104の位置P1、または遠位側第2支持体20の近位端20aと、近位フラップ105の自由端107に対応する筒状部材104の位置P2、または第1領域50の遠位端50bとの間の筒状部材104の平均外径よりも最大外径が大きい大径部111を有することが好ましい。遠位フラップ108の自由端110に対応する筒状部材104の位置P1とは、遠位フラップ108を筒状部材104に沿わせて、遠位フラップ108が閉じた状態としたときに、遠位フラップ108の自由端110が筒状部材104と接する位置のことである。近位フラップ105の自由端107に対応する筒状部材104の位置P2とは、近位フラップ105を筒状部材104に沿わせて、近位フラップ105が閉じた状態としたときに、近位フラップ105の自由端107が筒状部材104と接する位置のことである。近位フラップ105の基部106よりも近位側に大径部111を有することにより、近位フラップ105の強度を高め、近位フラップ105の破断を防ぐことができる。同様に、遠位フラップ108の基部109よりも遠位側に大径部111を有することにより、遠位フラップ108の強度を高めることができる。
【0068】
近位フラップ105の基部106よりも近位側に大径部111を形成するには、例えば、近位フラップ105を構成するフラップ部材を筒状部材104の径方向外方に重ね合わせて配置し、筒状部材104の外表面にフラップ部材を接合すればよい。フラップ部材と筒状部材104が互いに接合される部分では外径が大きくなるため、生体内留置チューブ1の近位フラップ105の基部106よりも近位側に大径部111が形成される。さらに、このように生体内留置チューブ1を製造することにより、近位フラップ105の基部106付近に穴が形成されず、穴を介して生体内留置チューブ1の内腔にがん細胞等の病変部が侵入することを防ぐことができる。
【0069】
遠位フラップ108の基部109よりも遠位側に大径部111を形成するには、近位フラップ105の基部106よりも近位側に大径部111を形成する方法と同様に、遠位フラップ108を構成するフラップ部材を筒状部材104の径方向外方に重ね合わせて配置し、筒状部材104の外表面にフラップ部材を接合する方法等が挙げられる。このように遠位フラップ108を形成することにより、フラップ部材と筒状部材104が互いに接合される部分では外径が大きくなるため、生体内留置チューブ1の遠位フラップ108の基部109よりも遠位側に大径部111が形成される。
【0070】
(10)小径部を有する構成
小径部は、フラップの基部から、閉状態のフラップの自由端の間に設けられていることが好ましい。小径部の軸方向の長さは、フラップの基部から閉状態のフラップの自由端までの長さよりも小さいことが好ましい。
図8に示すように、筒状部材104は、遠位フラップ108の自由端110に対応する筒状部材104の位置P1または遠位側第2支持体20の近位端20aと、近位フラップ105の自由端107に対応する筒状部材104の位置P2または第1領域50の遠位端50bとの間の筒状部材104の平均外径よりも最小外径が小さい小径部114を有し、近位フラップ105の基部106と近位フラップ105が閉状態の近位フラップ105の自由端107より近位側の位置の間と、遠位フラップ108の基部109と遠位フラップ108が閉状態の遠位フラップ108の自由端110より遠位側の位置の間の少なくともいずれか一方に小径部114が設けられていることが好ましい。この場合、
図9に示すように、近位フラップ105が閉状態の近位フラップ105の自由端107が小径部114の遠位端116よりも遠位側にあるか、または遠位フラップ108が閉状態の遠位フラップ108の自由端110が小径部114の近位端115よりも近位側にあるか、少なくともいずれか一方にあることが好ましい。フラップの閉状態とは、フラップを筒状部材104に沿わせて、フラップが閉じた状態のことである。なお、小径部114は、後述する穴を有していることによって、遠位フラップ108の自由端110に対応する筒状部材104の位置P1または遠位側第2支持体20の近位端20aと、近位フラップ105の自由端107に対応する筒状部材104の位置P2または第1領域50の遠位端50bとの間の筒状部材104の平均外径よりも最小外径が小さくなっていてもよい。また、小径部114は、穴を有さずに遠位フラップ108の自由端110に対応する筒状部材104の位置P1または遠位側第2支持体20の近位端20aと、近位フラップ105の自由端107に対応する筒状部材104の位置P2または第1領域50の遠位端50bとの間の筒状部材104の外径全体が小さくなることによって、最小外径が筒状部材104の平均外径よりも小さくなっていてもよい。
【0071】
近位フラップ105の基部106と近位フラップ105が閉状態の近位フラップ105の自由端107より近位側の位置の間に小径部114が設けられていることにより、近位フラップ105が閉じた状態としたときに筒状部材104と近位フラップ105が重なる箇所の筒状部材104の外径を小さくすることが可能となる。遠位フラップ108の基部109と遠位フラップ108が閉状態の遠位フラップ108の自由端110より遠位側の位置の間に小径部114が設けられていることにより、遠位フラップ108を閉じた状態としたときに筒状部材104と遠位フラップ108が重なる箇所の筒状部材104の外径を小さくすることが可能となる。なお、筒状部材104とフラップが重なる箇所の筒状部材104の外径を小さくすることにより、生体内留置チューブ1を内視鏡の管路等に通過させる際に、管路の内壁と生体内留置チューブ1とが干渉しにくくなり、管路の通過が円滑となる。
【0072】
近位フラップ105の基部106と近位フラップ105が閉状態の近位フラップ105の自由端107より近位側の位置の間、または、遠位フラップ108の基部109と遠位フラップ108が閉状態の遠位フラップ108の自由端110より遠位側の位置の間に小径部114を形成するには、例えば、筒状部材104の近位端部を削ぎ落として筒状部材104に開口部を形成し、その開口部にフラップを構成するフラップ部材を配置する方法や、筒状部材104の近位端部を、フラップを構成するフラップ含有筒型部品、フラップ含有筒型部材よりも遠位側に配置する遠位側筒型部品、フラップ含有筒型部品と遠位側筒型部品の内腔に配置する内腔筒型部品の3種の部品から構成し、遠位側筒型部品の近位端をフラップ含有筒型部品のフラップの基部よりも遠位側または近位側に配置する方法等が挙げられる。このように生体内留置チューブ1を製造することにより、生体内留置チューブ1のフラップの基部よりも遠位側また近位側に小径部114が形成され、フラップが筒状部材104に沿って閉じた状態の時に、筒状部材104とフラップが重なる箇所の外径を小さくすることができる。
【0073】
図10および
図11に示すように、従来の生体内留置チューブ201は、筒状部材204に切り込みを入れて近位フラップ205を形成している。そのため、近位フラップ205を筒状部材204に沿わせて、近位フラップ205が閉じた状態において、近位フラップ205の自由端207は小径部214の遠位端216よりも近位側に位置する。遠位フラップ208についても同様に、筒状部材204に切り込みを入れて遠位フラップ208を形成している。そのため、遠位フラップ208を筒状部材204に沿わせて遠位フラップ208が閉じた状態において、遠位フラップ208の自由端210は小径部214の近位端215よりも遠位側に位置する。
【0074】
図8および
図9に示すように、本発明の生体内留置チューブ1は、近位フラップ105の基部106と近位フラップ105が閉状態の近位フラップ105の自由端107より近位側の位置の間に小径部114が設けられている場合、近位フラップ105が閉じた状態において、近位フラップ105の自由端107は小径部114の遠位端116よりも遠位側に位置する。また、小径部114の軸方向の長さは、近位フラップ105の軸方向の長さよりも短いことが好ましい。
【0075】
遠位フラップ108の基部109と遠位フラップ108が閉状態の遠位フラップ108の自由端110より遠位側の位置の間に小径部114が設けられている場合、遠位フラップ108が閉じた状態において、遠位フラップ108の自由端110は小径部114の近位端115よりも近位側に位置する。また、小径部114の軸方向の長さは、遠位フラップ108の軸方向の長さよりも短いことが好ましい。
【0076】
小径部114の位置について、フラップの基部とフラップが閉状態のフラップの自由端の位置の間に小径部114が設けられていることが好ましい。小径部は、フラップの基部側または自由端側に偏って設けられてもよい。特に、フラップの基部側に設けられることが好ましい。
【0077】
筒状部材104は、小径部114において、穴を有していてもよい。穴は、筒状部材104の内腔と筒状部材104の外部とが連通する貫通穴であってもよい。また、穴は、筒状部材104上のくぼみであって、筒状部材104の内腔と筒状部材104の外部とが連通していないものであってもよい。
【0078】
穴の深さ方向に垂直な面の穴の断面積は、特に限定されないが、筒状部材104の内腔の最大断面積よりも小さいことが好ましい。穴の大きさがこのようになっていれば、がん細胞等の病変部が穴に接する場合でも、病変部が穴から生体内留置チューブ1の内腔に侵入しにくくすることができる。
【0079】
穴の形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、矩形、多角形等が挙げられる。また、筒状部材104の軸方向における穴の長さは、小径部114の全域にわたってもよく、小径部114の遠位端116から近位端115までの長さよりも短くてもよい。
【0080】
穴の位置は、フラップの基部からフラップの閉状態の自由端の位置にわたっていてもよく、それよりも小さくてもよい。筒状部材104の軸方向に直交する方向の穴の長さは、近位フラップ105の軸方向に直交する方向の長さよりも短いことが好ましい。穴の形状がこのようになっていることにより、穴を介してがん細胞等の病変部が生体内留置チューブ1の内腔に侵入する可能性を低くすることができる。
【0081】
支持体が設けられた生体内留置チューブ1の製造方法の例を以下に示す。本製造方法による場合、筒状部材104はインナーチューブとアウターチューブとを含む複層構造となり、筒状部材104の層間に支持体が配置される。本製造方法により、所望の位置にフラップまたは支持体を配置することができる。
【0082】
始めに、インナーチューブに支持体を被せる。支持体はリング状の形状であってもよく、板状であってもよく、C字状であってもよい。支持体がリング状である場合、インナーチューブに支持体を通して、インナーチューブ上に支持体を配置する。また、支持体が板状である場合、支持体をインナーチューブの外周に沿う形状に丸めて端部を固定して、インナーチューブ上に支持体を配置する。リング状やC字状の支持体をインナーチューブに被せた後、支持体を縮径してインナーチューブ状に取り付けてもよい。板状やC字状の支持体の端部の固定は、溶着、接着等任意の方法を用いることができる。
【0083】
次いで、インナーチューブの支持体上の少なくとも一部にアウターチューブを被せる。アウターチューブは、少なくとも支持体を覆う長さであればよく、インナーチューブと同じ長さやインナーチューブより長くてもよい。インナーチューブとアウターチューブの材料は同じであってもよく、異なっていてもよい。インナーチューブとアウターチューブの材料は、インナーチューブとアウターチューブを固定する工程において、固定しやすい材料を選択することが好ましい。アウターチューブの内径は、インナーチューブをその内腔に配置可能なように、インナーチューブの外径よりも大きいことが好ましい。これによりインナーチューブにアウターチューブを被せる作業が容易になる。筒状部材104は、支持体の上側または下側に複数の層があってもよい。各層の厚さや材質を制御することにより、生体内留置チューブ1のサイズや硬さを制御することができる。
【0084】
重ねたインナーチューブとアウターチューブを固定する。インナーチューブやアウターチューブが熱可塑性の材料である場合、インナーチューブおよびアウターチューブの上に熱収縮チューブを被せ、加熱して熱溶着により、インナーチューブとアウターチューブとを固定する。インナーチューブとアウターチューブの間に接着剤を注入して固定することもできる。
【0085】
固定したインナーチューブとアウターチューブからなる筒状部材104の所定位置に切断手段を用いて切り込みを入れ、フラップ部を形成する。切断手段は、筒状部材104を薄くスライスできる刃物であることが好ましい。フラップ部の形成は、例えば、ナイフ等の刃物で筒状部材104を削ぎ切る、はさみ等で筒状部材104に切り込みを入れる等により行うことができる。フラップ部の位置は、支持体との関係で筒状部材104の所定位置に形成することができる。
【0086】
以上の製造方法は、遠位側支持体においても、近位側支持体においても適用することができる。支持体をフラップの基部と筒状部材104の端部との中点よりも基部側に設ける生体内留置チューブ1を作製する場合、インナーチューブの肉厚をアウターチューブの肉厚よりも厚くし、フラップの厚さをアウターチューブより厚くすることで、フラップの耐引き裂き性を向上させ、フラップの強度を高くすることができる。
【0087】
以上のように、本発明の生体内留置チューブは、近位側と遠位側を有する筒状部材と、筒状部材の近位側に、近位側の基部と遠位側の自由端とを有する近位フラップと、筒状部材の遠位側に、遠位側の基部と近位側の自由端とを有する遠位フラップとを含み、筒状部材は、筒状部材の径方向外方であって、遠位フラップの基部と自由端との中点よりも遠位側に設けられている遠位側第1支持体と近位フラップの基部と自由端との中点よりも近位側に設けられている近位側第1支持体の少なくともいずれか一方を有することを特徴とする。このような構成であることにより、生体内留置チューブ自体の柔軟性は維持しつつ、遠位フラップと近位フラップの少なくともいずれか一方の強度を高くすることができる。
【0088】
本願は、2017年6月13日に出願された日本国特許出願第2017-115570号に基づく優先権の利益を主張するものである。2017年6月13日に出願された日本国特許出願第2017-115570号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例】
【0089】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0090】
生体内留置チューブの具体的な製造方法の一例は次の通りである。高硬度ポリウレタン(製品名:Carbothane PC3572D(ルーブリゾール社製))と低硬度ポリウレタン(製品名:Carbothane PC3555D(ルーブリゾール社製))と硫酸バリウムを、30:40:30の重量比率で混練し、押出成形にて筒状部材のインナーチューブ(外径:内径=2.30mm:1.90mm)を作製する。
【0091】
続いて、インナーチューブ内に芯材を挿入し、支持体であるPt/Ir製リングマーカ(外径:内径=2.40mm:2.35mm)をインナーチューブに被せ、ブロックワイズ社製のリングかしめ装置(Model SGL - Standard Force)を用いてPt/Ir製リングマーカの外周へ圧力を印加し、インナーチューブ外表面上にPt/Ir製リングマーカを取り付ける。
【0092】
インナーチューブと同一材料で作製した筒状部材のアウターチューブ(外径:内径=2.65mm:2.45mm)を支持体であるPt/Ir製リングマーカとインナーチューブ上に被せる。
【0093】
アウターチューブ上に熱収縮チューブを被せ、215℃で70秒間加熱し、インナーチューブとアウターチューブを熱溶着する。熱収縮チューブおよび芯材を取り外し、熱溶着したインナーチューブとアウターチューブからなる筒状部材の所定位置に剃刀を用いて切り込みを入れ、フラップを作製する。
【0094】
上記製造方法により、実施例の生体内留置チューブを作製した。比較例として、支持体を設ける工程を除く工程により、支持体のない生体内留置チューブを作製した。実施例および比較例の生体内留置チューブは同じサイズ、材質であり、
図12および
図13に示すように、フラップの長さL5は8mm、フラップの厚さT5は0.5mm、生体内留置チューブの外径ODは2.5mmとした。実施例にのみ、近位フラップ105の基部106から生体内留置チューブの近位端側へ1.5mm(FP1)、生体内留置チューブの近位端102から近位フラップ105側へ4mm(FP2)の箇所に、チューブ長軸方向の長さが1.5mmの近位側第1支持体30であるPt/Ir製リングマーカを設けた。
【0095】
実施例と比較例の生体内留置チューブのフラップ部の引張強度を測定し、引張強度の測定値を比較する。引張強度の測定方法について、
図14を用いて説明する。試験方法は以下のとおりとした。
<引張強度測定方法>
1. 測定サンプル301(本発明品と比較品)を37℃の水中に2時間浸漬した。
2.
図14に示すように、引張試験機の上側チャック311に測定サンプル301のフラップ部302を配置し、引張試験機の下側チャック312に測定サンプル301の端部303を配置する。引張試験機(TOYOSEIKI製 ストログラフE II-L05)のチャック部の周囲には、37℃の水を充填した水槽320を配置する。引張試験機の上側チャック311と下側チャック312との間の距離であるチャック間距離D1は25mmとした。
3. 上側チャック311を500mm/minの速度で上方へ移動させ、測定サンプル301が破壊されるまでの最大荷重を測定値とした。
【0096】
引張試験の評価結果を
図15に示す。実施例の測定サンプル301破壊時の最大荷重は、7.42N、比較例の測定サンプル301は、6.56Nであった。これにより、支持体304をフラップの基部と筒状部材の端部との中点よりも基部側に設けた生体内留置チューブのフラップの引張強度が向上することが確認できた。
【符号の説明】
【0097】
1:生体内留置チューブ
2:デリバリーシステム
3:インナーカテーテル
4:アウターカテーテル
5:縫合糸
6:挿入補助チューブ
10:遠位側第1支持体
10a:遠位側第1支持体の近位端
10b:遠位側第1支持体の遠位端
20:遠位側第2支持体
20a:遠位側第2支持体の近位端
20b:遠位側第2支持体の遠位端
30:近位側第1支持体
30a:近位側第1支持体の近位端
30b:近位側第1支持体の遠位端
40:近位側第2支持体
40a:近位側第2支持体の近位端
40b:近位側第2支持体の遠位端
50:第1領域
50a:第1領域の近位端
50b:第1領域の遠位端
60:第2領域
102:生体内留置チューブの近位端
103:生体内留置チューブの遠位端
104:筒状部材
105:近位フラップ
106:近位フラップの基部
107:近位フラップの自由端
108:遠位フラップ
109:遠位フラップの基部
110:遠位フラップの自由端
111:大径部
112:大径部の近位端
113:大径部の遠位端
114:小径部
115:小径部の近位端
116:小径部の遠位端
201:従来の生体内留置チューブ
202:従来の生体内留置チューブの近位端
203:従来の生体内留置チューブの遠位端
204:従来の筒状部材
205:従来の近位フラップ
206:従来の近位フラップの基部
207:従来の近位フラップの自由端
208:従来の遠位フラップ
209:従来の遠位フラップの基部
210:従来の遠位フラップの自由端
214:従来の小径部
215:従来の小径部の近位端
216:従来の小径部の遠位端
301:測定サンプル
302:フラップ部
303:測定サンプルの端部
304:支持体
311:引張試験機の上側チャック
312:引張試験機の下側チャック
320:水槽
P1:遠位フラップの自由端に対応する筒状部材の位置
P2:近位フラップの自由端に対応する筒状部材の位置
P3:遠位フラップの基部と自由端との中点
P4:近位フラップの基部と自由端との中点
P5:遠位フラップの基部と筒状部材の遠位端との中点
P6:近位フラップの基部と筒状部材の近位端との中点
P7:遠位側第1支持体の近位端と遠位側第2支持体の遠位端との中点
P8:近位側第1支持体の遠位端と近位側第2支持体の近位端との中点
P9:筒状部材の中点
D1:引張試験機のチャック間距離
L5:フラップの長さ
T5:フラップの厚さ
OD:生体内留置チューブの外径
FP1:近位フラップの基部から生体内留置チューブの近位端側への距離
FP2:生体内留置チューブの近位端から近位フラップ側への距離