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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】電気化学センサおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/327 20060101AFI20240410BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20240410BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
G01N27/327 357
G01N27/416 336B
G01N33/543 541A
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019530163
(86)(22)【出願日】2017-12-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 NZ2017050161
(87)【国際公開番号】W WO2018106129
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-12-02
(31)【優先権主張番号】62/432,356
(32)【優先日】2016-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/511,558
(32)【優先日】2017-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514092445
【氏名又は名称】デジタル センシング リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DIGITAL SENSING LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホッセイニ,アリ
(72)【発明者】
【氏名】パートリッジ,アシュトン
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-302403(JP,A)
【文献】特表2008-539419(JP,A)
【文献】米国特許第05567301(US,A)
【文献】米国特許第05512489(US,A)
【文献】特表2009-543090(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0129812(US,A1)
【文献】特開2007-057540(JP,A)
【文献】特開2013-142663(JP,A)
【文献】特開2016-106229(JP,A)
【文献】特表2013-500492(JP,A)
【文献】特表2014-530366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/327,
G01N 33/543,
C12Q 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小流体または流体センサシステムであって、
a.支持基材と、
b.前記支持基材上の結合領域であって、前記微小流体または流体センサシステムの第1ステージとして試料調整区画に配置された結合領域と、
c.前記支持基材の上面から突出し、電極層を含む少なくとも1つの表面構造と、
d.前記電極層上の感知面であって、試料に含有される標的分析物のうち、前記結合領域内の結合剤に結合され、前記試料に混合されるリガンドで標識された標的分析物の結合から生じる電気活性種が接触するようになっている感知面であって、前記微小流体または流体センサシステムの第2ステージとして分析区画に配置された前記感知面と、
e.磁気捕捉領域と、を備え、
前記結合剤は、1つまたは複数の磁性粒子に結合しており、
前記結合領域は、前記感知面から隔離された流路上に提供され、
前記第1ステージにおいて、前記結合領域内の1つまたは複数の磁性粒子上の結合層に付着された前記結合剤が、前記標的分析物を含有する試料と混合され、
記1つまたは複数の磁性粒子および前記結合剤は、前記磁気捕捉領域で捕捉され、
前記1つまたは複数の磁性粒子は、緩衝液で洗浄され、廃棄に向けられ、
前記センサシステムは、前記結合層に付着した前記結合剤への前記標的分析物の結合に続く前記分析区画内の前記感知面での検出可能な応答を検出するようになっていて、
前記結合剤に結合され、標識された前記標的分析物は、前記感知面での検出可能な応答を媒介する電気活性種を生じさせるように、前記第2ステージにおいて、インライン電磁弁を変化させると、前記電気活性種が前記磁気捕捉領域を通過してから前記感知面に向けられるようになり、
前記感知面が、流動環境において分離された微小流体流路または流体流路を介して前記結合領域に接続される、センサシステム。
【請求項2】
記結合領域の前記結合層が、磁性粒子上の官能表面であるとともに、前記磁性粒子が、磁気要素により生成された磁場によって前記支持基材に付着している請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項3】
前記結合領域と前記感知面との間の離隔距離が、1nm~50mmの間である、請求項1または2に記載のセンサシステム。
【請求項4】
前記センサシステムは複数の前記表面構造を含み、前記表面構造が、50nm~2000μmだけ互いに離隔している、請求項1~3のいずれか一項に記載のセンサシステム。
【請求項5】
前記表面構造の幅が、20nm~5000μmの間である、請求項1~4のいずれか一項に記載のセンサシステム。
【請求項6】
前記センサシステムは複数の前記表面構造を含み、各表面構造の頂点の幅が、1nm~5000ミクロンの間である、請求項1~5のいずれか一項に記載のセンサシステム。
【請求項7】
前記電極層が、前記表面構造の上面に堆積されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のセンサシステム。
【請求項8】
前記結合層が、前記支持基材に付着している1つまたは複数の磁性粒子上の官能表面を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のセンサシステム。
【請求項9】
前記電極層を介して1つまたは複数の感知面に電気的に接続され、前記電極層に電位を印加する測定電極を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のセンサシステム。
【請求項10】
前記電極層は、第1の電極層と第2の電極層とを含み、
前記結合層または前記結合領域が、前記第1の電極層上の第1の感知面と近接し、
前記第1の感知面が、前記第2の電極層上の第2の感知面に近接し、
前記第1の感知面の、前記結合層または前記結合領域からの第1の離隔距離が、前記第2の感知面の、前記結合層または前記結合領域からの第2の離隔距離よりも小さく、前記第1の電極層および前記第2の電極層が、互いに電気的に絶縁されている、請求項1~9のいずれか一項に記載のセンサシステム。
【請求項11】
前記支持基材が、前記表面構造と一体化している、請求項1~10のいずれか一項に記載のセンサシステム。
【請求項12】
前記感知面および前記結合領域が、微小流体または流体のセンサシステムの別個の区画にある、請求項1~11のいずれか一項に記載のセンサシステム。
【請求項13】
試料中の標的分析物の、結合剤への結合を検出する方法であって、
求項1~12のいずれか一項に定義されているセンサシステムを設けるステップと、
前記試料中の標的分析物をリガンドで標識し、前記結合剤を、前記標的分析物をリガンドで標識した所定の量の標識標的分析物、および前記標的分析物を前記リガンドで標識していない非標識標的分析物を含有する試料と接触させるステップと、
記標識標的分析物および前記非標識標的分析物を含有する試料電気活性基材接触させることで、前記電気活性基材の一部分が、前記結合剤へ結合した前記標識標的分析物によって酸化または還元されるようにするステップと、
を含み、前記結合剤に結合された前記標識標的分析物が、前記感知面で検出可能な応答を媒介する電気活性種であって、少なくとも1つの感知面に電気的に接続された測定電極における変化を測定可能とする電気活性種を生じさせる方法。
【請求項14】
前記電気活性基材がTMBである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記電気活性基材が、前記標識標的分析物に接触することで、前記電気活性基材の酸化をもたらし、還元電位で保持される前記感知面と接触することによって、前記感知面で検出可能な応答を引き出す電気活性種を産出する、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記結合層が、前記支持基材上の結合領域に付着している磁性粒子上にあり、前記結合領域が、前記支持基材上、前記支持基材内、または前記支持基材の下の磁気要素であって、使用時に、磁性粒子を前記支持基材に引きつけ、付着させる磁気要素によって確立された磁場の区域によって画定される、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記方法が、前記結合領域から離れる方向に沿って並ぶ2つ以上の電極層上に2つ以上の感知面を有するセンサシステムの使用を含む、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記方法は、さらに、2つ以上の測定電極であって、各測定電極が電極層、および少なくとも1つの感知面に電気的に接続され、前記測定電極が互いに電気的に絶縁されている測定電極における変化を測定するステップを含み、
前記結合剤と前記標的分析物との結合が行われる前記結合領域から前記感知面までの離隔距離の関数として前記検出可能な応答の前記変化を測定するステップと、
前記検出可能な応答の前記変化を、対照試料からの既知の濃度の標的分析物からの応答の前記変化と比較するステップと、
前記標的分析物を含有する試料中の前記標的分析物の前記濃度を決定するステップと、をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
試料中の標的分析物を感知する精度を向上させる方法であって、
求項1に記載の前記センサシステムを設けるステップと、
記結合剤を、前記標的分析物を含有する前記試料と接触させるステップと、
記標的分析物を前記結合剤に結合させて、前記感知面で検出可能な応答を生じさせるステップと、
なくとも1つの前記感知面に電気的に接続された測定電極における変化を測定するステップと、
を含み、前記結合剤に結合された標的分析物であって、リガンドで標識された標的分析物が、前記感知面で前記検出可能な応答を媒介する電気活性種を生じさせ、前記標的分析物を含有する試料中の前記標的分析物を感知する前記精度を向上させる方法。
【請求項20】
前記結合領域と前記感知面との間の離隔距離が、1nm~50mmの間である、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液中の標的分析物の検出のためのセンサに関する。より詳細には、本発明は、アレイ上の捕捉剤への標的分析物の結合を検出する電気化学センサに関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的または生化学的プロセスの測定の精度、および再現性が高まれば、医学的、生物学的および生物工学的用途の多くが、その恩恵を受けるであろう。しかしながら、生物学的事象に関する情報を検出可能な電子信号に変換することは、電子機器を生化学的環境に直接接続することが複雑であるため、難易度が高い。電気化学センサは、生化学的事象を電子信号に直接形質導入するため、試料の含有量の定量分析を実現するための魅力的な手段を提供する。
【0003】
電気化学センサは、試料中の標的分析物(TA:target analyte)の存在(および好ましくは濃度)を検出することが可能であるように、非常に標的特異的であるように設計されている。電気化学センサは概して、センサ基材上で固定化される標的特異的な結合剤の使用を伴う。結合剤は、酵素、核酸、抗体、全細胞または受容体を含むことができる。
【0004】
多くの診断センサが使用されているが、それらは概して、熟練したオペレータが操作するための研究所環境内の高価な装置に限られる。多くの場合、ポイントオブケア検査/感知デバイスを実現する上での主な制限は、形質導入原理を小型化する能力、およびコスト効率の良い生産方法の欠如である(Grieshaberら、2008年)。当分野で患者または医療専門家が使用するための、安価な、ハンドヘルドのデバイスの使用は限られている。
【0005】
電気化学的感知は、センサ表面と相互作用し、電子経路の測定可能な特性に影響を及ぼす/混乱させる標的分析物(TA)に依存する。一般的なアプローチが図1に図示されており、図では、金電極が混合自己組織化単分子膜(SAM:self-assembled monolayer)で覆われている。結合剤(X)は、自己組織化単分子膜(SAM)を介して電極表面に付着している(図1Aおよび図1B)。TA/TAホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP:horseradish peroxidase)混合物が、結合剤にさらされ、各成分の濃度に応じた比率で結合剤に拮抗的に結合する(図1C)。TMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)が加えられ(図1D)、HRPによって酸化される。これは、その後の金電極でのTMBの還元をもたらす。TMBの還元を定電流的に(すなわち、電極の両端の電流を介して)測定することができるので、これにより、試料中のTAの濃度の測定ができるようになる。HRPおよびTMBは、エライザ(Elisa)アッセイにおいて一般的に使用され、発色(色生成)TMBは、定電流的に相対するものとして光学的に測定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
試料中の標的分析物を検出するためのアッセイの較正は、試料の取り扱い、希釈誤差、および/または試料マトリックス(例えば、ミルク、血液または海水)による干渉などの複数の要因のために、複雑になり、不正確になり易い場合がある。既存のアッセイでは、熟練した技術者は、観察された応答が正確であり、標準に対する比較が濃度を真に反映するものであることを確実にするために、これら要因の影響を最小限に抑えるように相当な努力を注いでいる。
【0007】
先行技術の短所のうちの少なくとも1つを克服または改善する、標的分析物を検出する電気化学センサ、および標的分析物を検出する方法を提供することが本発明の目的である。あるいは、人々に有用な選択肢を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様では、本発明は、センサであって、
a.支持基材と、
b.支持基材の上面から突き出ている少なくとも1つの表面構造であって、電極層を含む表面構造と、
c.電極層上の感知面であって、標的分析物を含有する試料に接触するようになっている感知面と、
d.支持基材上の結合領域であって、感知面から離隔された結合領域と、
を備え、使用時に、結合領域で結合層に付着している結合剤もまた、標的分析物を含有する試料に接触するようになっているセンサを提供する。
【0009】
一実施形態では、結合領域の結合層は、支持基材に付着している平面層である。
【0010】
好ましくは、センサは、標的分析物が、結合層に付着している結合剤に結合した後に、感知面で検出可能な応答を検出するようになっている。
【0011】
好ましくは、結合領域と感知面との間の離隔距離が約1nmと50mmとの間であり、かつ/または、表面構造が約50nmから約2000μmだけ互いに離隔しており、かつ/または、支持基材に接合する表面構造の幅が、約20nmから約5000μmの間であり、かつ/または、各表面構造の頂点の幅が、好ましくは、約1nmから約5000ミクロンの間である。
【0012】
別の態様では、本発明は、センサであって、
a.支持基材と、
b.支持基材の上面から突き出ている少なくとも1つの表面構造であって、電極層を含む表面構造と、
c.電極層上の感知面であって、標的分析物を含有する試料に接触するようになっている感知面と、
d.支持基材上の結合領域であって、感知面から離隔された結合領域と、
を備え、使用時に、結合領域で結合層に付着している結合剤もまた、標的分析物を含有する試料に接触するようになっており、かつ、標的分析物が、結合層に付着している結合剤に結合した後に、感知面で検出可能な応答を検出するようになっているセンサを提供する。
【0013】
別の実施形態では、結合領域への結合剤の付着は、静電的、共有結合的、または結合剤を付着させた磁気ビーズを介したものである。
【0014】
別の実施形態では、結合領域の結合層は、磁場によって磁性粒子が支持基材に付着している磁性粒子上の官能表面である。
【0015】
好ましくは、センサは、磁気要素を含み、結合領域の結合層は、磁気要素により生成された磁場によって磁性粒子が支持基材に付着している磁性粒子上の官能表面である。
【0016】
別の実施形態では、本発明は、センサの製造方法であって、
a.支持基材の上面から突き出ている少なくとも1つの表面構造を支持基材に設けるステップと、
b.少なくとも1つの表面構造の上面に電極層を堆積するステップと、
c.電極層の1つまたは複数の部分が、電極層に少なくとも1つの感知面を形成するように露出したままであるように、電極層に不活性層を堆積するステップであって、この不活性層が分析対象の試料の成分に対して実質的に不活性である材料を含むステップと、
d.支持基材上に結合領域を形成するステップであって、結合領域が、少なくとも1つの結合剤を静電的、共有結合的、または磁気的に付着させるようになっているステップと、
を含み、標的分析物が結合剤に結合した後に、使用時に、検出可能な応答を感知面で検出するのに十分な離隔距離だけ、感知面が結合領域から離隔されている方法を提供する。
【0017】
好ましくは、結合領域と感知面との間の離隔距離が約1nmと50mmとの間であり、かつ/または、表面構造が約50nmから約2000μmだけ互いに離隔しており、かつ/または、支持基材に接合する表面構造の幅が、約20nmから約5000μmの間であり、かつ/または、各表面構造の頂点の幅が、好ましくは、約1nmから約5000ミクロンの間である。
【0018】
好ましくは、検出可能な応答は、電流、電圧、キャパシタンス、抵抗、コンダクタンス、インピーダンス、磁束または電場の変化を含む電気化学的な検出可能な応答を含む。好ましくは、標的分析物の結合剤への結合の結果、感知面で検出可能な応答を媒介する電気活性種が得られる。好ましくは、標識標的分析物の結合剤への結合は、非標識標的分析物の結合と競合するか、それに取って代わるか、またはそれに取って代わられ、感知面で検出可能な応答を媒介する電気活性種の生成につながる。
【0019】
好ましくは、支持基材は、ポリマー、シリコンまたはガラスを含む。好ましくは、支持基材は、単層または複数の層を含む。好ましくは、少なくとも1つの表面構造は、支持基材と一体化している。
【0020】
好ましくは、電極層は、表面構造の上面に堆積されている。
【0021】
好ましくは、電極層は、実質的に一定の厚さの層を含む。好ましくは、電極層は、表面構造、および任意に、支持基材を被覆する。好ましくは、電極層の厚さは、厚さ約1nmと500nmとの間、より好ましくは、厚さ約40と500nmとの間、または厚さ約50と100nmとの間である。より好ましくは、厚さ約5nmと30nmとの間、50と100nmとの間、70と400nmとの間、900と300nmとの間である。
【0022】
好ましくは、2つ以上の表面構造の上面上の電極層は、センサ内で電気的に接続されている。この電気的接続は、結合層または不活性層よりも下にあってもよい。
【0023】
好ましくは、感知面は電極層の上面上にある。
【0024】
好ましくは、感知面は、支持基材から突き出ている表面構造上の電極層の上面上にある。
【0025】
好ましくは、表面構造は、支持基材上の露出した電極層の広がりによって画定された感知面を含む。好ましくは、感知面は、電極層上の不活性層と境界を接している。好ましくは、不活性層が表面構造間に存在する。好ましくは、感知面は、不活性層によって他の感知面から離隔されている。好ましくは、1つの電極層上の感知面が、同じ電極層上の少なくとも1つのさらなる感知面に電気的に接続されている。好ましくは、この少なくとも1つのさらなる感知面への電気的接続は、不活性層の下にある。
【0026】
好ましくは、センサは、それぞれが電極層上に感知面を有する複数の表面構造を備える。
【0027】
好ましくは、複数の感知面が、電極層を介して電気的に接続されて感知基を形成する。一実施形態では、センサは2つ以上の感知基を含み、ここでは各感知基は、他の基から電気的に絶縁されている。好ましくは、感知面は、電気活性種との相互作用から電気化学的に不動態化されていない。検出可能な応答の電気化学的不動態化または減衰は、結合剤、結合領域、または試料によって誘起されたマトリックス効果によって生じる場合がある。好ましくは、感知面は保護コーティングを含む。好ましくは、保護コーティングはSAMまたはタンパク質を含む。
【0028】
好ましくは、保護コーティングは除去可能である。
【0029】
好ましくは、表面構造は不活性層を貫通して突き出ている。好ましくは、表面構造は支持基材から突き出ている。
【0030】
好ましくは、表面構造は、表面構造の頂部に頂点を含む。いくつかの実施形態では、頂点は、表面に起伏がある上側部分、および表面に異なる起伏がある少なくとも1つの下側部分を有する表面構造からなる。いくつかの実施形態では、表面構造または表面構造の上側部分は、ドーム状、円錐状、ピラミッド状、乳頭状、畝状または多面体形状である。
【0031】
好ましくは、畝は、支持基材の頂面に概して平行な軸に沿った断面に沿って、凸状、乳頭状、テーパ状、三角形または多角形の輪郭を有する。
【0032】
当業者であれば、頂点を有する表面構造はすべて、非常に高い倍率(例えば、原子またはナノスケール)で見ると、平坦であるように見えることが理解されよう。したがって、本明細書で提供される形状および測定値は、正確な幾何学的記述というよりもむしろ、表面構造の全体的な形状を指すように意図されている。
【0033】
好ましくは、表面構造は、凸状の上面を有する上側部分を含む。好ましくは、上側部分の表面は、頂点に向かってテーパ状になっているか、または頂点に向かって丸みを帯びている。好ましくは、支持基材の頂面に直交する平面に沿った表面構造の断面は、三角形、凸状の半円または乳頭状である。
【0034】
好ましくは、支持基材の頂面に平行な平面に沿った表面構造の断面は、実質的に三角形、実質的に円形、または実質的に正方形である。好ましくは、表面構造の断面積は、支持基材の頂面に直交する軸に沿って減少する。
【0035】
一実施形態では、表面構造は、支持基材上に均一に配置されている。一実施形態では、表面構造は、支持基材上に無作為に配置されている。
【0036】
好ましくは、表面構造は、滑らかな表面を含む。好ましくは、表面構造は、規則的な形状である。好ましくは、表面構造は、少なくとも1つの対称中心線を有し、好ましくは、2つの対称中心線を有する。好ましくは、すべての表面構造または複数の表面構造が、形状が実質的に同一である。好ましくは、すべての表面構造または複数の表面構造が、表面積が実質的に同一である。
【0037】
一実施形態では、結合層は、不活性層または支持基材の上面で平面層として堆積される。好ましくは、結合層は電極層に隣接しており、任意に、結合層と電極層との間に絶縁材料または空隙を有する。好ましくは、結合層の広がりは開口部を画定し、この開口部を貫通して感知面が試料に露出されている。
【0038】
好ましくは、結合層は表面構造のまわりに堆積され、上にある感知面が露出した状態で、表面構造の上側部分が突き出るようになっている。好ましくは、結合層は平面を含み、この平面を貫通して、少なくとも1つの表面構造が突き出ている。
【0039】
好ましくは、結合層は、結合剤に結合する材料を含む。好ましくは、この材料は、抗体などの結合剤を結合するのに適した分子官能性を有する。好ましくは、結合層は支持基材の頂面に接着している。好ましくは、結合層は導電性である。好ましくは、結合層は、電位を印加することが可能な測定電極などの電極に電気的に接続されている(か、または電気的接続に適合している)。
【0040】
好ましくは、結合剤は、特定の標的分析物に特化したアプタマーまたは抗体を含む。好ましくは、結合剤は、抗原、抗体、抗体フラグメント、単鎖可変フラグメント、ビオチン化タンパク質、ペプチド、核酸(例えば、DNA、ssDNA、mRNA、miRNA、アプタマー)、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、ポリヒスチジンまたはグルタチオンS-トランスフェラーゼを含有する組み換えにより発現されたタンパク質、アミン含有高分子または低分子、スルフヒドリル含有分子またはタンパク質発現グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、(鉛、リン酸鉛、クロム、プラチナ、パラジウム、イリジウム、銅等といったような)金属および金属塩からなる群から選択される。
【0041】
好ましくは、結合層は、保護コーティング(マトリックスによる無視できる結合を有し、結合剤の認識部分を結合のために利用可能にするコーティング)を含む。
【0042】
結合層が不活性層の表面上にある場合、好ましくは、結合層は、架橋ポリマー、フォトレジストまたは自己組織化単分子膜(SAM)を含む。好ましくは、架橋ポリマーは、SU-8、AZ40XT、Shipley 3612、ポリイミドなどのフォトレジストである。好ましくは、結合層は、スピンコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、拭き取りまたは塗装によって堆積される。好ましくは、結合層は、スピンコーティングによって支持基材に堆積される。
【0043】
磁性粒子が結合層として使用される実施形態では、結合領域は、1つまたは複数の磁性粒子を付着させるようになっている支持基材の領域を含む。
【0044】
好ましくは、結合領域は、支持基材上、支持基材内または支持基材の下に少なくとも1つの磁気要素を有する。この磁気要素は、磁性粒子を引きつけ、結合領域に磁性粒子を付着させる。
【0045】
好ましくは、結合領域は、離隔距離だけ感知面から離隔され、この離隔距離は検出可能な応答を感知面で検出するのに十分である。好ましくは、離隔距離は、感知面で検出可能な応答の検出が、結合層または結合剤によって減衰されずに行うことができるような距離である。
【0046】
好ましくは、離隔距離は、約1nmと50mmとの間である。特定の実施形態では、離隔距離は、約30nmと約5mmとの間、約100nmと約5000μmとの間、約1μmと約1000μmとの間、または、約20μmと約100μmとの間、約30nmと約5000μm、約100nmと約5mm、約1μmと約100μm、約20μmと約1000μm、約20μmと約5000μm、1μmと約5mmである。
【0047】
好ましくは、粒子は、支持基材の上面に直接付着している。好ましくは、粒子は、支持基材上の不活性表面に付着している。好ましくは、磁性粒子は、上記で定義されたような離隔距離だけ感知面から離隔されている。
【0048】
好ましくは、感知面および結合領域は、微小流体システム内に収容されている。好ましくは、感知面および結合領域は、微小流体システムの別個の区画内にある。
【0049】
好ましくは、結合領域は、センサに塗布される試料の成分に対して不活性である。好ましくは、結合領域は、支持基材上、支持基材内、または支持基材の下の磁気要素によって確立された磁場の区域によって画定される。
【0050】
一実施形態では、結合層は、支持基材に付着している1つまたは複数の磁性粒子上に官能表面を含む。好ましくは、粒子は、強磁性粒子または常磁性粒子である。好ましくは、磁性粒子の支持基材への付着は、磁気要素と磁性粒子との間の磁気的吸引力によるものである。好ましくは、感知面は、使用時に、表面構造が試料に露出されるように、粒子の上方に突き出ている。好ましくは、感知面は、使用時に、表面構造が試料に露出されるように、粒子の層を貫通して突き出ている。
【0051】
好ましくは、粒子は、表面構造のまわりの表面に付着し、上にある感知面が露出した状態で、表面構造の上側部分が突き出るようになっている。好ましくは、粒子は、表面構造のまわりの表面に付着し、表面構造それ自体を被覆する。好ましくは、磁気要素は、磁場を発生させる要素を含む。好ましくは、この要素は、電磁石または強磁性体を含む。好ましくは、磁気要素は、センサに固定されているか、または取り外し可能である。
【0052】
好ましくは、磁気要素は、表面構造のまわりの粒子を付着するように位置決めされ、上にある感知面が露出した状態で、表面構造の上側部分が粒子を貫通して突き出るようになっている。
【0053】
好ましくは、磁気要素は、電極層に隣接している粒子を付着するように位置決めされ、任意に、粒子と電極層との間に絶縁材料または空隙を有する。
【0054】
好ましくは、磁気要素は、感知面から離隔された結合領域に粒子を付着するように位置決めされる。
【0055】
好ましくは、粒子上の官能表面は、結合剤に結合する官能性材料を含む。好ましくは、この官能性材料は、抗体などの結合剤を結合するのに適した分子官能性を有する。
【0056】
好ましくは、磁性粒子は、カルボキシル化、アミノ化、ビオチン化、またはプロテインAもしくはGコーティングを含む官能表面を含む。好ましくは、カルボキシル化コーティングである。
【0057】
好ましくは、結合層は、非特異性の結合を排除する保護コーティングを含む。好ましくは、結合層の一部分がブロッキング剤でブロッキングされている。好ましくは、ブロッキング剤は、エタノールアミン、または界面活性剤(例えば、トゥイーン(tween))、タンパク質、OVA、BSA、リン酸塩である。
【0058】
好ましくは、粒子への付着に適した結合剤は、特定の標的分析物に特化した抗原または抗体を含む。好ましくは、結合剤は、抗原、抗体、アプタマー、抗体フラグメント、単鎖可変フラグメント、ビオチン化タンパク質、ペプチド、核酸、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、ポリヒスチジンまたはグルタチオンS-トランスフェラーゼを含有する組み換えにより発現されたタンパク質、アミン含有高分子または低分子、スルフヒドリル含有分子またはタンパク質発現グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、(鉛、リン酸鉛、クロム、プラチナ、パラジウム、イリジウム、銅等といったような)金属および金属塩からなる群から選択される。
【0059】
一実施形態では、センサは、標的分析物の結合剤への結合からの応答を検出するようになっている2つ以上の感知基を含む。
【0060】
さらなる実施形態では、センサは、電極層を介して1つまたは複数の感知面または感知基に電気的に接続された測定電極を含む。
【0061】
好ましくは、測定電極は、電流、インピーダンス、電圧、キャパシタンス、抵抗、コンダクタンス、磁束または電場のうちの1つまたは複数の変化を測定する測定手段に接続される。
【0062】
好ましくは、センサは、センサ表面上で試料を保持するのに適した試料容器を備えるセンサシステムの一部を含む。好ましくは、センサシステムは、基準電極をさらに含む。好ましくは、センサシステムは、対向電極をさらに含む。好ましくは、対向電極および基準電極は、検出可能な応答の検出時に試料と接触している。
【0063】
一実施形態では、センサは、非流動環境での配備に適している。別の実施形態では、センサは、流動環境での配備に適している。
【0064】
好ましくは、センサは、単一の磁気結合領域および単一の感知面を有する。
【0065】
好ましくは、センサは、複数の感知面への複数の結合領域、単一の感知面への複数の結合領域を有する。
【0066】
さらなる実施形態では、結合層または結合領域は、第1の電極層上の第1の感知面に隣接しており、
この第1の感知面は、第2の電極層上の第2の感知面に隣接しており、
第1の感知面の、結合層または結合領域からの第1の離隔距離は、第2の感知面の、結合層または結合領域からの第2の離隔距離よりも小さく、
第1の電極層および第2の電極層は、互いに電気的に絶縁されている。好ましくは、センサは、標的分析物が結合剤に結合した後に、第1の感知面および第2の感知面で、検出可能な応答を検出するようになっている。好ましくは、第1の感知面に隣接している結合領域は、支持基材上、支持基材内、または支持基材の下の磁気要素によって確立された磁場の区域によって画定される。
【0067】
好ましくは、センサは、第3、第4、第5、またはさらなる感知面をさらに含み、それらはそれぞれ、第3、第4、第5、またはさらなる電極層であって、それぞれが互いに電気的に絶縁されている電極層上に位置しており、
結合層または結合領域と、それぞれの感知面との間の離隔距離は、電極層の数が増加するにつれて次第に大きくなる。
【0068】
好ましくは、センサは、標的分析物が結合剤に結合した後に、少なくとも第1の感知面および第2の感知面で、検出可能な応答を検出するようになっている。
【0069】
一実施形態では、(センサ表面と結合領域との間の)第1の離隔距離は、約1nmと5mmとの間であり、第2の離隔距離は、約1nmと約5mmとの間である。特定の実施形態では、離隔距離は、約30nmと1mmとの間、約100nmと500μmとの間、約1μmと200μmとの間、または約20μmと100μmとの間である。離隔距離は、約30nmと約5mmとの間、約100nmと約5000μmとの間、約1μmと約1000μmとの間、または、約20μmと約100μmとの間、約30nmと約5000μm、約100nmと約5mm、約1μmと約100μm、約20μmと約1000μm、約20μmと約5000μm、1μmと約5mmとすることができる。
【0070】
一実施形態では、第1の感知面と第2の感知面との間の、第1の感知面間距離は、約30nmと1mmとの間である。(それぞれが別々の電極層に接続された)隣接した感知面同士の、後続する感知面間距離は、好ましくは、約30nmと1mmとの間である。
【0071】
特定の実施形態では、センサは、それぞれが測定電極に接続された、2つ以上の別々の電極層を含む。好ましくは、センサは、5~8個の電極層を含む。
【0072】
一実施形態では、電極層は、結合領域、または絶縁材料または空隙を有する少なくとも1つの他の電極層から電気的に絶縁されている。
【0073】
第1の態様の一実施形態では、本発明は、センサであって、
a.支持基材と、
b.支持基材と一体化しており、かつ、支持基材の上面から突き出ている複数の表面構造であって、それぞれが表面構造の上面上に電極層を含む表面構造と、
c.電極層上の感知面であって、試料に接触するようになっている感知面と、
e.支持基材上の結合領域であって、感知面から離隔された結合領域と、
f.支持基材上、支持基材内または支持基材の下にあり、使用時に、支持基材に付着する磁気要素であって、磁性粒子が粒子上の官能表面に付着している結合剤を含むとともに、結合剤が試料に接触し、試料内の標的分析物に結合するようになっている磁気要素と、
を備えるセンサを提供する。
【0074】
好ましくは、結合領域は、磁気要素によって確立された磁場の区域によって画定される。
【0075】
好ましくは、感知面は、磁性粒子上の結合層から離隔されている。好ましくは、感知面は、標的分析物が、結合層に付着している結合剤に結合した後に、検出可能な応答が感知面で検出されるのに十分な離隔距離だけ結合層から離隔されている。好ましくは、離隔距離は、約30nmと1mmとの間、約100nmと500μmとの間、約1μmと200μmとの間、または約20μmと100μmとの間である。離隔距離は、約30nmと約5mmとの間、約100nmと約5000μmとの間、約1μmと約1000μmとの間、または、約20μmと約100μmとの間、約30nmと約5000μm、約100nmと約5mm、約1μmと約100μm、約20μmと約1000μm、約20μmと約5000μm、1μmと約5mmとすることができる。
【0076】
好ましくは、結合領域と感知面との間の離隔距離が約1nmと50mmとの間であり、かつ/または、表面構造が約50nmから約2000μmだけ互いに離隔しており、かつ/または、支持基材に接合する表面構造の幅が、約20nmから約5000μmの間であり、かつ/または、各表面構造の頂点の幅が、好ましくは、約1nmから約5000ミクロンの間である。
【0077】
さらなる態様では、本発明は、センサであって、
a.支持基材と、
b.支持基材の上面から突き出ている少なくとも1つの表面構造であって、電極層を含む表面構造と、
c.電極層上の感知面であって、標的分析物または電気活性種を含有する試料に接触するようになっている感知面と、
d.磁気要素を位置決めして、1つまたは複数の磁性粒子を支持基材に付着させる磁場を確立するようになっている磁気要素位置決め手段と、
を備えるセンサを提供する。
【0078】
好ましくは、磁気位置決め手段は、磁石である。好ましくは、磁石は、ネオジム鉄ボロン、サマリウムコバルト、アルニコ、および、セラミックまたはフェライトから形成されるような永久磁石である。好ましくは、磁石は、電磁石である。
【0079】
好ましくは、磁石位置決め手段は、結合領域の表面上の単層として粒子を捕捉するように位置決めされる。
【0080】
第1の態様のセンサに関して記載された特徴、変形および実施形態は、本発明の上記の態様と組み合わせて適用可能であり、本発明の上記の態様と組み合わせて読まれるように意図されている。
【0081】
第2の態様では、本発明は、センサであって、
a.任意に、表面構造がその上に形成された支持基材と、
b.支持基材上、および任意に、表面構造に堆積された電極層と、
c.第1の電極層上の第1の感知面、および少なくとも第2の電極層上の第2の感知面であって、試料に接触するようになっている感知面と、
d.支持基材上、および任意に、電極層上の結合領域であって、第1の感知面および第2の感知面から離隔されている結合領域と、
を備えるとともに、使用時に、結合領域で結合層に付着している結合剤が、標的分析物を含有する試料に接触するセンサを提供する。
【0082】
第2の態様の実施形態では、結合領域は、支持基材上、支持基材内、または支持基材の下の磁気要素によって確立された磁場の区域によって画定され、この磁気要素は、使用時に、磁性粒子を支持基材に引きつけ、付着させるが、この磁性粒子は、標的分析物を含有する試料に接触するようになっている結合層を含む。
【0083】
好ましくは、結合領域は、支持基材上、支持基材内または支持基材の下に少なくとも1つの磁気要素を有する。この磁気要素は、磁性粒子を引きつけ、結合領域に磁性粒子を付着させる。
【0084】
好ましくは、この結合領域は、第1の電極層上の第1の感知面に隣接しており、
この第1の感知面は、第2の電極層上の第2の感知面に隣接しており、
第1の感知面の、結合領域からの第1の離隔距離は、第2の感知面の、結合領域からの第2の離隔距離よりも小さく、
第1の電極層および第2の電極層は、互いに電気的に絶縁されている。
【0085】
第1の態様のセンサに関して記載された特徴、変形および実施形態は、第2の態様の特徴と組み合わせて適用可能であり、第2の態様の特徴と組み合わせて読まれるように意図されている。
【0086】
第3の態様では、本発明は、センサの製造方法であって、
a.支持基材の上面から突き出ている少なくとも1つの表面構造を支持基材に設けるステップと、
b.少なくとも1つの表面構造の上面に電極層を堆積するステップと、
c.電極層の1つまたは複数の部分が、電極層に少なくとも1つの感知面を形成するように露出したままであるように、電極層に不活性層を堆積するステップであって、この不活性層が分析対象の試料の成分に対して実質的に不活性である材料を含むステップと、
d.支持基材上に結合領域を形成するステップであって、支持基材上、支持基材内、または支持基材の下の磁気要素または磁気要素位置決め手段を位置決めすることにより、結合領域が磁性粒子を支持基材に付着させて、磁性粒子を引きつけることが可能な磁場の確立を容易にするようになっているステップと、
e.任意に、磁性粒子を結合領域に付着させるステップと、
f.任意に、結合剤を磁性粒子上の結合層上の官能表面に付着させるステップと、
を含み、標的分析物が結合剤に結合した後に、使用時に、検出可能な応答を感知面で検出するのに十分な離隔距離だけ、感知面が結合領域から離隔されている方法を提供する。
【0087】
不活性層は、フォトレジスト、塗料、自己組織化単分子膜(SAM)、エポキシ樹脂とすることが可能であろう。
【0088】
好ましくは、製造方法は、磁気要素および/または磁気要素位置決め手段をセンサに付着させるステップをさらに含む。
【0089】
好ましくは、磁気要素位置決め手段は、磁石である。好ましくは、磁石は、ネオジム鉄ボロン、サマリウムコバルト、アルニコ、および、セラミックまたはフェライトから形成されるような永久磁石である。好ましくは、磁石は、電磁石である。
【0090】
好ましくは、磁石位置決め手段は、結合領域の表面上の単層として粒子を捕捉するように位置決めされる。
【0091】
好ましくは、支持基材は、ポリマー、シリコンまたはガラスを含む。好ましくは、少なくとも1つの表面構造は、支持基材と一体化している。
【0092】
好ましくは、電極層は、スパッタリング、好ましくはマグネトロンスパッタリング技術、蒸着、塗装、スプレーコーティング、またはスピンコーティングからなる群から選択される技術によって、表面構造上に堆積される。
【0093】
好ましくは、電極層は、表面構造、および任意に、支持基材を被覆する、実質的に一定の厚さの層を含む。好ましくは、電極層の厚さは、厚さ約1nmと5μmとの間、より好ましくは、厚さ40と500nmとの間または50と100nmとの間である。より好ましくは、厚さ約5nmと3μmとの間、50と100nmとの間、70と400nmとの間、900と300nmとの間である。
【0094】
好ましくは、保護コーティングが電極層に塗布される。好ましくは、保護コーティングは、結合層と比べて電極層に優先的に結合する。保護コーティングは、任意のコーティングとすることができるが、特定の実施形態では、保護コーティングはSAMで構成されている。この実施形態では、SAM中のチオール基は、表面に結合する一方、結合層に結合しない(か、または結合の程度が小さい)。
【0095】
好ましくは、電極層は、導電性金属、炭素、ガラス状炭素、炭質材料、グラフェン、カーボンナノチューブ、導電性インク、充填ポリマー、導電性ポリマー、または層構造からなる群から選択される導電性材料を含む。好ましくは、導電性金属は、金、銀、ニッケルまたはプラチナを含む。好ましくは、層構造は、金を含有するチタン、金を含有するクロム、または導電性ポリマーを含有する金を含む。
【0096】
好ましくは、感知面は、表面構造の上側部分を結合層または不活性層が存在しないまま残して、支持基材/表面構造上に結合層または不活性層を堆積することによって形成される。この結果、表面構造の上側部分上の電極層の表面が、感知面として露出されることになる。
【0097】
好ましくは、離隔距離は、約1nmと50mmとの間である。特定の実施形態では、離隔距離は、約30nmと5mmとの間、約100nmと5000μmとの間、約1μmと1000μmとの間、または約20μmと100μmとの間である。離隔距離は、約30nmと約5mmとの間、約100nmと約5000μmとの間、約1μmと約1000μmとの間、または、約20μmと約100μmとの間、約30nmと約5000μm、約100nmと約5mm、約1μmと約100μm、約20μmと約1000μm、約20μmと約5000μm、1μmと約5mmとすることができる。
【0098】
好ましくは、この方法は、それぞれが各表面構造の電極層上に形成された感知面を有する複数の表面構造の生成を含む。
【0099】
好ましくは、複数の感知面は、電気的に接続されて感知基を形成する。好ましくは、複数の感知面との間の電気的接続は、結合層の下にある。一実施形態では、方法は、2つ以上の感知基を形成するステップを含み、ここでは各感知基は、他の基から電気的に絶縁されている。
【0100】
好ましくは、方法は、感知面または結合層/結合領域のうちの少なくとも1つに、保護コーティングを堆積するステップをさらに含む。好ましくは、保護コーティングは、SAM、フォトレジスト、またはタンパク質(オバルブミン、または比活性のない他のブロッキングタンパク質など)を含む。
【0101】
好ましくは、保護コーティングは、アルカンチオール(HS(CH2)XCH3、式中、X=0~16(X=0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16)から作られ、エタノール溶液から堆積されたSAMである。
【0102】
好ましくは、SAMは、C6~C24の炭素鎖を含む長鎖分子を含み、それらは、アルカン、アルケン、アルキン、または芳香族とすることができる。好ましくは、C6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、もしくは24、またはこれらの混合物である。
【0103】
好ましくは、SAMは、C10以下の炭素鎖を含む短鎖分子を含む。好ましくは、C1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10、またはこれらの混合物である。
【0104】
好ましくは、SAMは、長鎖分子(上記のC10~C24)、および短鎖分子(上記のC1~C10)を含む混合SAMであり、それらは、アルカン、アルケン、アルキン、または芳香族とすることができる。
【0105】
好ましくは、混合SAMは、(上記の)C6~C24の炭素鎖を含む長鎖分子、および(上記の)C10~C1の短鎖分子を含む。
【0106】
好ましくは、長鎖SAMは、アジド、アミン、カルボン酸塩、アルデヒド、ケトン、エステル、もしくはカルボン酸、またはこれらの混合物からなる群から選択される分子を含む。このような分子は、SAMの終端部に存在している。
【0107】
好ましくは、短鎖SAMは、アルカン、アジド、アミン、ヒドロキシル基、カルボン酸塩、もしくはカルボン酸、またはこれらの混合物からなる群から選択される分子を含む。このような分子は、SAMの終端部に存在している。
【0108】
1つの特定の実施形態では、SAMは、C6よりも炭素数が大きいカルボン酸分子を含む長鎖分子と、ヒドロキシル基分子を含む短鎖分子と、の混合物を含む。上記の実施形態では、SAM長鎖分子は、好ましくは、C6~C24分子から選択される。
【0109】
好ましくは、表面構造は、ホットエンボス、CFT処理、射出成形、スタンピング、またはリソグラフィ技術によって、支持基材上に形成される。好ましくは、表面構造は、表面構造の頂部に頂点を有して形成される。先に定義された表面構造のさらなる実施形態もまた、第3の態様に適用可能である。
【0110】
好ましくは、結合領域は、電極層に隣接して形成される。好ましくは、絶縁材料が結合層と電極層との間に堆積される。絶縁材料は、電極層から結合層を絶縁する不活性層である。
【0111】
好ましくは、感知面は、試料に露出されている感知面を画定する不活性層の堆積によって形成される。
【0112】
好ましくは、感知面は、スピンコーティングによって表面構造のまわりに結合層を堆積することによって形成され、表面構造面の上側部分が露出するようになっている。
【0113】
好ましくは、結合剤は、静電付着または共有結合によって磁性粒子の官能表面に付着している。好ましくは、結合剤は、捕捉剤をさらに含む。
【0114】
好ましくは、ブロッキング剤は、結合領域上に堆積される。ブロッキング剤は、結合領域および結合層の両方への非特異性の結合をブロッキングするためのものである。ブロッキング剤の例としては、タンパク質(BSA、OVA)、または低分子、例えば、エタノールアミンが含まれる。
【0115】
好ましくは、磁性粒子上の結合層は、結合剤に結合する材料を含む。
【0116】
好ましくは、結合層は、保護コーティングを含む。好ましくは、保護コーティングは、SAMまたはタンパク質を含む。
【0117】
好ましくは、粒子上の官能表面は、結合剤に結合する官能性材料を含む。好ましくは、この官能性材料は、抗体などの結合剤を結合するのに適した分子官能性を有する。
【0118】
好ましくは、磁性粒子は、カルボキシル化、アミノ化、ビオチン化、またはプロテインAもしくはGコーティングを含む官能表面を含む。
【0119】
好ましくは、結合層は、非特異性の結合を排除する保護コーティングを含む。好ましくは、結合層の一部分がブロッキング剤でブロッキングされている。好ましくは、ブロッキング剤は、エタノールアミン、または界面活性剤(例えば、トゥイーン)である。
【0120】
好ましくは、結合剤は、特定の標的分析物に特化した抗原または抗体を含む。好ましくは、結合剤は、抗原、抗体、抗体フラグメント、単鎖可変フラグメント、ビオチン化タンパク質、ペプチド、核酸、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、ポリヒスチジンまたはグルタチオンS-トランスフェラーゼを含有する組み換えにより発現されたタンパク質、アミン含有高分子または低分子、スルフヒドリル含有分子またはタンパク質発現グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、または、金属および金属塩からなる群から選択される。
【0121】
好ましくは、SAM結合層は、C6以上の炭素鎖を含む長鎖分子を含む。好ましくは、SAM結合層は、C5以下の炭素鎖を含む短鎖分子を含む。好ましくは、SAM結合層は、長鎖分子および短鎖分子を含む混合SAMである。好ましくは、混合SAMは、C6以上の炭素鎖を含む長鎖分子、およびC5以下の短鎖分子を含む。好ましくは、長鎖SAMは、アジド、アミン、カルボン酸塩、またはカルボン酸からなる群から選択される末端官能基を含む。好ましくは、短鎖SAMは、アルカン、アジド、アミン、ヒドロキシル基、カルボン酸塩、またはカルボン酸からなる群から選択される分子を含む。
【0122】
好ましくは、SAMは、C6~C24の炭素鎖を含む長鎖分子を含み、それらは、アルカン、アルケン、アルキン、または芳香族とすることができる。好ましくは、C6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、もしくは24、またはこれらの混合物である。
【0123】
好ましくは、SAMは、C10以下の炭素鎖を含む短鎖分子を含む。好ましくは、C1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10、またはこれらの混合物である。
【0124】
好ましくは、SAMは、長鎖分子(上記のC6~C24)、および短鎖分子(上記のC1~C6)を含む混合SAMであり、それらは、アルカン、アルケン、アルキン、または芳香族とすることができる。
【0125】
好ましくは、混合SAMは、(上記の)C6~C24の炭素鎖を含む長鎖分子、および(上記の)C6~C1の短鎖分子を含む。
【0126】
好ましくは、長鎖SAMは、アジド、アミン、カルボン酸塩、アルデヒド、ケトン、エステル、もしくはカルボン酸、またはこれらの混合物からなる群から選択される分子を含む。このような分子は、SAMの終端部に存在している。
【0127】
好ましくは、短鎖SAMは、アルカン、アジド、アミン、ヒドロキシル基、カルボン酸塩、もしくはカルボン酸、またはこれらの混合物からなる群から選択される分子を含む。このような分子は、SAMの終端部に存在している。
【0128】
1つの特定の実施形態では、SAMは、C6よりも炭素数が大きいカルボン酸分子を含む長鎖分子と、ヒドロキシル基分子を含む短鎖分子と、の混合物を含む。上記の実施形態では、SAM長鎖分子は、好ましくは、C6~C24分子から選択される。好ましくは、結合層はSAMを含み、上記で定義されているように、表面構造の上側部分には存在しない。
【0129】
好ましくは、結合層を堆積するステップは、前の段落で説明したようにSAM結合層を塗布するステップを含む。好ましくは、堆積は、
a.長鎖SAMまたは混合SAM(例えば、上述したもの)を電極層に塗布するステップと、
b.電極層に電荷を印加して、表面構造の上側部分からSAMを選択的に除去するステップと、
c.短鎖SAMが上記bから得られた表面構造の上側部分に主に付着するように、短鎖SAM(例えば、上述したもの)を電極層に塗布するステップと、
d.任意に、結合剤を結合層に塗布するステップであって、この結合剤が長鎖SAMに優先的に結合するステップと、
e.任意に、さらなる電荷を電極層に印加して、表面構造の上側部分から短鎖SAMを選択的に除去し、SAM分子が実質的に存在しない感知面を生み出すステップと、
を含む。
【0130】
好ましくは、感知面は、支持基材および表面構造上の不活性層の堆積の広がりによって画定され、感知面が、表面構造上の電極層上に形成されるようになっている。一実施形態では、不活性層は、ブロッキング剤または保護コーティングがその上に堆積された結合層を含む。
【0131】
好ましくは、不活性層は、センサに塗布される試料のどんな成分の非特異性の結合に対しても、実質的に非反応性、および抵抗性を示す。
【0132】
一実施形態では、この方法は、2つ以上の感知基を形成するために、2つ以上の別々の電極層の堆積を含む。一実施形態では、電極層は、結合領域、または絶縁材料または空隙を有する少なくとも1つの他の電極層から電気的に絶縁されている。
【0133】
好ましくは、結合領域と感知面との間の離隔距離が約1nmと50mmとの間であり、かつ/または、表面構造が約50nmから約2000μmだけ互いに離隔しており、かつ/または、支持基材に接合する表面構造の幅が、約20nmから約5000μmの間であり、かつ/または、各表面構造の頂点の幅が、好ましくは、約1nmから約5000ミクロンの間である。
【0134】
第4の態様では、本発明は、試料中の標的分析物の、結合剤への結合を検出する方法であって、
a.センサであって、
i.支持基材と、
ii.支持基材の上面から突き出ている少なくとも1つの表面構造であって、電極層を含む表面構造と、
iii.電極層上の感知面であって、試料に接触するようになっている感知面と、
iv.支持基材上の結合領域であって、感知面から離隔され、かつ、磁場を含む結合領域と、
を備えるセンサを設けるステップと、
b.磁性粒子を結合領域に付着させるステップであって、この磁性粒子が磁性粒子上の結合層に付着している少なくとも1つの結合剤を含むステップと、
c.結合剤を、標的分析物を含有する試料と接触させるステップと、
d.標的分析物を結合剤に結合させて、感知面で検出可能な応答を生じさせるステップと、
e.少なくとも1つの感知面に電気的に接続された測定電極における変化を測定するステップと、
を含み、標的分析物の結合剤への結合が、感知面で検出可能な応答を媒介する電気活性種を生じさせる方法を提供する。
【0135】
好ましくは、感知面および結合領域は、微小流体システム内に収容されている。
【0136】
好ましくは、感知面および結合領域は、センサまたは微小流体システムの別個の区画内にある。
【0137】
好ましくは、磁性粒子は、結合領域における磁場の活性化によって結合領域に付着している。好ましくは、磁場の活性化は、支持基材上、支持基材内、または支持基材の下で磁気要素を位置決めすることを含む。好ましくは、磁場の活性化は、支持基材上、支持基材内、または支持基材の下で電磁石を活性化することを含む。
【0138】
好ましくは、磁気位置決め手段は、ネオジム鉄ボロン、サマリウムコバルト、アルニコ、および、セラミックまたはフェライトから形成されるような永久磁石である。
【0139】
好ましくは、電気活性種は、還元電位または酸化電位で保持される感知面で検出可能な応答を引き出す酸化的レドックス状態にある。好ましくは、還元電位は、約0mVと-1000mVとの間である。一実施形態では、還元電位は、約-350mVと、-450mV、または約-200mV、-300mV、もしくは-400mVとの間であるか、または0と約-1mVとの間である。
【0140】
好ましくは、酸化電位は、約0mVと1500mVとの間である。一実施形態では、酸化電位は、約150mVと、600mV、または約200mV、300mV、もしくは400mVとの間である。
【0141】
一実施形態では、電気活性基材(任意に、TMBを含む)は、リガンド標識標的分析物(任意に、HRPを含む)に接触することで、電気活性基材の酸化をもたらし、電気活性種(任意に、酸化TMBを含む)を産出し、この電気活性種が、還元電位で保持される感知面と接触することによって、感知面で検出可能な応答(任意に、検出可能な応答が酸化TMBの還元を含む場合)を引き出す。
【0142】
好ましくは、標的分析物は、リガンドに共役する。
【0143】
好ましくは、電気活性種は、結合標的分析物が電気活性基材に露出した後に生成される。
【0144】
好ましくは、試料は、センサの表面全体にわたって試料を流すことによって塗布される。好ましくは、試料は、封じ込め装置内を流れている。好ましくは、封じ込め装置は、微小流体流路またはインラインセンサを備える。
【0145】
好ましくは、試料は、自動の手段または手動の手段によって塗布される。好ましくは、試料は、試料でセンサを浸水させるか、または洗浄することによって塗布される。好ましくは、センサは、封じ込め装置内に保持され、試料は、封じ込め装置に塗布される。好ましくは、封じ込め装置は、微小流体流路を備える。
【0146】
好ましくは、感知面および結合領域のうちの少なくとも1つの上の保護コーティングは、変化を測定するステップの前に除去される。
【0147】
好ましくは、測定電極で測定された変化は、電流、インピーダンス、電圧、キャパシタンス、抵抗、コンダクタンス、磁束、または電場の変化からなる群から選択される。
【0148】
第4の態様の一実施形態では、本発明は、試料中の標的分析物の、結合剤への結合を検出する方法であって、
a.第1の態様、第2の態様、または第4の態様で定義されているようなセンサを設けるステップと、
b.リガンドで標的分析物を標識するステップと、
c.センサおよび結合剤を、所定の量の標識標的分析物、および非標識標的分析物を含有する試料と接触させるステップと、
d.センサに電気活性基材を塗布することで、電気活性基材の一部分が、結合した標識標的分析物によって酸化または還元されるようにするステップと、
e.少なくとも1つの感知面に電気的に接続された測定電極における変化を測定するステップと、
を含み、標識標的分析物または非標識標的分析物の結合剤への結合が、感知面で検出可能な応答を媒介する電気活性種を生じさせる方法を提供する。
【0149】
好ましくは、前の段落の実施形態は、直接法もしくは間接法、競合法、サンドイッチ法または置換法アッセイを含む。
【0150】
第4の態様のさらなる実施形態では、方法は、感知面で還元電位を印加することによってリガンド触媒を再生成するステップをさらに含む。
【0151】
第4の態様の一実施形態では、結合層および結合剤は、磁性粒子上にあり、この磁性粒子は、磁場によってセンサ表面に付着している。
【0152】
別の実施形態では、この方法は、磁場の不活性化による磁性粒子の離脱を含む。
【0153】
磁場は、当業者に既知の方法によって活性化または不活性化される磁気要素によって確立される。
【0154】
好ましくは、結合領域と感知面との間の離隔距離が約1nmと50mmとの間であり、かつ/または、表面構造が約50nmから約2000μmだけ互いに離隔しており、かつ/または、支持基材に接合する表面構造の幅が、約20nmから約5000μmの間であり、かつ/または、各表面構造の頂点の幅が、好ましくは、約1nmから約5000ミクロンの間である。
【0155】
1つの特定の実施形態では、方法は、
a.第1の結合剤を用いて磁性粒子の第1のセットを付着させることと、
b.試料中の標的分析物の、第1の結合剤への結合を検出する方法を実行するステップと、
c.磁場を不活性化して、磁性粒子の第1のセットを除去することと、
d.第2の結合剤を用いて磁性粒子の第2のセットを付着することと、
e.試料中の標的分析物の、第2の結合剤への結合を検出する方法を実行するステップと、
を含む。
【0156】
好ましくは、この方法は、磁性粒子の第3のセット、またはさらなるセットを用いて繰り返される。
【0157】
好ましくは、感知面および磁性粒子は、微小流体システム内、または微小流体システムの一部に収容されている。好ましくは、感知面および結合領域は、微小流体システムの別個の区画内にある。好ましくは、感知面および結合領域は、第1の態様に関して定義されているような離隔距離だけ離隔されている。
【0158】
第4の態様のさらなる実施形態では、方法は、結合領域上の結合部からの距離が増大している2つ以上の電極層上に2つ以上の感知面を有するセンサの使用を含み、
変更を測定するステップが、2つ以上の測定電極であって、それぞれが電極層、および少なくとも1つの感知面に電気的に接続されている測定電極であり、互いに電気的に絶縁されている測定電極における変化を測定するステップを含むとともに、この方法は、
a.結合部からの離隔距離の関数として検出可能な応答の変化を測定するステップと、
b.任意に、検出可能な応答の変化を、対照試料からの既知の濃度の標的分析物からの応答の変化と比較するステップと、
c.任意に、試料中の標的分析物の濃度を決定するステップと、
をさらに含む。
【0159】
本発明の先の態様または実施形態のセンサに関して説明した特徴、変化、および実施形態は、これらの特徴と組み合わせて適用可能であり、これらの特徴と組み合わせて読まれるように意図されている。
【0160】
第5の態様では、本発明は、試料中の標的分析物の濃度を決定する方法であって、
a.第2の態様で定義されているようなセンサを設けるステップと、
b.少なくとも1つの結合剤を結合領域で結合層に付着させるステップと、
c.結合剤、および少なくとも1つの感知面を含むセンサを、標的分析物を含有する試料と接触させるステップと、
d.2つ以上の測定電極であって、それぞれが電極層、および少なくとも1つの感知面に電気的に接続されている測定電極であり、互いに電気的に絶縁されている測定電極における変化を測定するステップと、
e.結合剤の標的分析物への結合が生じる結合部からの離隔距離の関数として、検出可能な応答の変化を測定するステップと、
f.応答の変化を、対照試料からの既知の濃度の標的分析物からの応答の変化と比較するステップと、
g.試料中の標的分析物の濃度を決定するステップと、
を含むとともに、標的分析物の結合剤への結合が、感知面で検出可能な応答を媒介する電気活性種を生じさせる方法を提供する。
【0161】
好ましくは、センサは、流動環境で配備される。好ましくは、センサは、微小流体システム内、または微小流体システムの一部に収容されている。好ましくは、感知面および結合領域は、微小流体システムの別個の区画内にある。好ましくは、感知面および結合領域は、第1の態様に関して定義されているような離隔距離だけ離隔されている。
【0162】
第5の態様の一実施形態では、結合層は、支持基材上の結合領域に付着している磁性粒子上にあり、この結合領域は、支持基材上、支持基材内、または支持基材の下の磁気要素によって確立された磁場の区域によって画定され、この磁気要素は、使用時に、磁性粒子を支持基材に引きつけ、付着させる。
【0163】
好ましくは、結合領域と感知面との間の離隔距離が約1nmと50mmとの間であり、かつ/または、表面構造が約50nmから約2000μmだけ互いに離隔しており、かつ/または、支持基材に接合する表面構造の幅が、約20nmから約5000μmの間であり、かつ/または、各表面構造の頂点の幅が、好ましくは、約1nmから約5000ミクロンの間である。
【0164】
本発明の先の態様および実施形態に関して説明した特徴、変化、および実施形態は、この態様の特徴と組み合わせて適用可能であり、この態様の特徴と組み合わせて読まれるように意図されている。
【0165】
当業者であれば、本明細書に記載の本発明の態様、実施形態、および特徴は、個々に、または全体として、前記態様、実施形態、または特徴のうちの2つ以上の任意の組み合わせ、またはすべての組み合わせにおいて、組み合わせることができることが理解されよう。
【0166】
本発明のさらなる態様は、本発明のすべての新規な態様において考慮されるべきであるが、それらは、本発明の実際の適用の少なくとも1つの例を提供する以下の説明を読めば、当業者には明らかになるであろう。
【0167】
次に、添付の図面を参照して、例としてのみ、本発明の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0168】
図1】感知面が結合領域と同じである自己組織化単分子膜(SAM)を有する電極の先行技術からの一例を示す。
図2】本発明の4つの実現可能な構成を示す。図2Aは、電極層の露出区域である感知面を図示し、図2Bは、凸状断面を有する表面構造を図示する。図2Cは、三角形状断面を有する感知面を図示する。
図2D】三角形状断面を有するセンサの断面概略図を示す。3次元的に表現すれば、この実施形態の表面構造は、円錐形状、または畝(畝状)となり得る。
図3図2に示される各構成の平面図を示し、4×4アレイとしての電極を示す。
図4】TMB還元/酸化に基づくセンサの感知メカニズムであって、感知面から結合剤を離隔するセンサの感知メカニズムを示す。
図5】結合領域と感知面とが隔離されているが、隣接している本発明の実施形態を、直線構成(A)および円形構成(B)で示す。構成Bは、(i)側面図および(ii)平面図に分かれており、矢印は、起こり得る流れの方向を示す。
図6】感知面から隔離された結合領域を示し、Aは、複数の平坦な感知面を示し、Bは、細孔の基部における複数の感知面を示し、Cは、支持基材/電極層上に三角形状断面を有する複数の表面構造を示し、Dは、支持基材/電極層上に三角形状断面を有する複数の表面構造を示し、ここでは、感知面だけが不活性層または結合層の上方に露出されている。
図7】試料(7.1)からの標的分析物(TA)の、センサの結合領域上の結合剤への結合を示し、この後に、リガンド標識標的分析物(TA-HRP)(7.2)の結合が続く。
図8】結合標的分析物(TA)、または結合したリガンド標識標的分析物(TA-HRP)の、A.低TA装填、およびB.高TA装填の下での、同じ濃度の電気活性基材(TMBred)への露出、ならびに、結果として生じるそれぞれの場合の連続的な電極の表面上の電気活性基材TMBoxの還元を示す。
図9】低TA濃度(試料濃度A)、および高TA濃度(試料濃度B)の応答曲線を示す。
図10A】分割センサへの先端電極アレイの一体化を示す。
図10B】結合領域としての微小電極アレイの使用、および分割センサへの先端電極アレイの一体化を示す。
図11】先端部のアレイ感知面に対する平坦な感知面について認められた電流密度範囲間の比較を示す。
図12図12Aは、5つの電極層、およびセンサの区域を画定する流路を有する多分析物センサを示す。図12Bは、図12Aで強調表示される領域に位置する、均一に配置された感知基(アレイ)を示す。図12Cは、結合層を貫通して突き出ている金電極チップを有する単一の感知面を示す。
図13】(A)金、(B)SU8、(C)反応性イオンエッチング後のSU8上のHRP吸収に対する、エタノールアミンによるブロッキングの効果を、ブロッキング剤なしの場合(左側の柱状図、陰影なし)、およびブロッキング剤ありの場合(右側の柱状図、黒い陰影付き)の両方を示す。
図14】電気活性種の生成のモデル化データ、ならびに2つの濃度、すなわち、A-30モル(ms)およびB-5モル(ms)に対して予想される出力電流(図14C)の一例を示す。図14Cは、センサ閾値を表示するとともに、5つの電極がすべて高濃度に対する応答を示し、最初の2つの電極のみが低濃度に応答することもまた表示する。
図15】金表面、SU8表面、およびラッカー表面へのタンパク質結合の分光光度試験を示す。
図16】SU8上の分光光度アッセイによるP4標準曲線を示す。
図17】センサ表面が結合領域(SU8)内にある電気化学的アッセイによるP4標準曲線を示す。
図18】コーティングされていない金電極(a、黒い実線)、SAMをコーティングした金電極(b、間隔の大きい破線)、およびクリーニングした金電極(c、点線)に対するサイクリックボルタンメトリー走査を示す。
図19】還元されたTMBの存在下で、-200mVまたは-400mVのいずれかで保持されたWAおよびWBからの電気化学的応答を示す。
図20】-400mVで、外部からHを追加せずに、表面固定抗体に結合したHRP-P4を、既知の濃度のP4と交換することによるTMB還元応答を示す。
図21】60秒の測定後の電流応答を示す。
図22】結合層としてのSAMと、結合層と比較して表面構造の官能性が異なる感知面を有するアレイへの官能化/脱官能化と、を使用して調製されたセンサを示す。
図23】支持基材の下の磁石によって確立された結合領域に磁性粒子が付着している本発明の実施形態を示す。
図24】支持基材の下の磁石によって確立された結合領域に磁性粒子が付着しているとともに、離隔距離だけ、感知面が結合領域から離隔されている本発明の実施形態を示す。
図25】電気化学的検出に対するELISA(光学的)検出において酸化TMBの検出に使用された場合の、本発明の方法の精度および感度を示す。
図26】三角形状断面を有する表面構造を有する導電性表面上の電流密度のコンピュータモデルを示す。構造の頂点の色が暗くなっている箇所は、電流密度の集束が大きくなっていることを表示する。同じ図が、カラー(A)、および白黒(B)で示されている。
図27】半円形状断面を有する表面構造を有する導電性表面上の電流密度のコンピュータモデルを示す。構造の頂点の色が暗くなっている箇所は、電流密度の集束が大きくなっていることを表示する。同じ図が、カラー(A)、および白黒(B)で示されている。
図28A】競合アッセイ-実施例7の流体工学に基づいた分析を示す。
図28B】置換アッセイ-実施例8における磁気ビーズの使用の実例を示す。
図29】結合され、放出されたビーズに対するセンサの電流滴定応答-実施例9を示す。
図30】最初の捕捉および洗浄、続いて、電気化学センサの下での放出および再捕捉によって生成された-実施例10-様々なTMB濃度についての、光学的応答と電気化学的応答との間の相関関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0169】
定義
「結合剤」とは、結合層に付着し、標的分析物に直接的または間接的のいずれかで結合して、電気活性種を生み出すセンサの成分を指す。
【0170】
「付着する」または「結合する」とは、電気活性種が支持体に何らかの方法で結合または付着する共有結合、静電結合、磁気的吸引力、または他の何らかの結合態様を意味する。
【0171】
「粒子」とは、その官能表面上で結合剤を保持または捕捉することが可能であり、かつ、センサの表面への付着またはセンサの表面からの離脱に十分な可動性を有する任意の離脱可能な要素を意味する。特定の実施形態では、粒子は磁性粒子であり、センサ上、センサ内、またはセンサの下に磁場を確立することによって付着または離脱させることができる。
【0172】
「微小流体流路」とは、小さなサイズが流体経路内の層流を誘起する流路を指す。
【0173】
「テーパ状」とは、幅が広い表面構造から幅が狭い表面構造になっていくことを意味する。
【0174】
「滑らか」とは、表面の角度の変化の割合が実質的に変化しないことを意味する。
【0175】
「リガンド」とは、標的分析物に付着し、直接的または間接的のいずれかで、試料に塗布された電気活性基材の活性化(すなわち、酸化または還元)の原因となる成分を指す。リガンドは一般的には酵素であり、例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(「HRP」)、アルカリフォスファターゼ(AP)、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、およびカタラーゼからなる群から選択することができる。
【0176】
「電気化学的に不動態化された」とは、表面の、電気活性種との電気化学的相互作用を阻害する物質による感知面の部分的または完全なマスキングまたはブロッキングを指す。
【0177】
「電気活性基材」とは、レドックス活性化合物、例えば、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン、略して「TMB」、またはキノンを指す。いくつかの実施形態では、電気活性基材は、HRPリガンドを再生成するための過酸化水素(H)などの追加の活性化種を含む。これらの場合では、電気活性基材という用語は、このような活性化種を包含するように意図されている。当業者であれば、電気活性種が生成され、触媒(例えば、HRPリガンド)が再生成されるために、電気活性基材が含有していなければならない活性化種が分かるであろう。
【0178】
「電気活性種」とは、標的分析物の、結合剤への結合の結果として生成された、電子を供与または受容する種であって、感知面と接触すると、検出可能な応答を引き出す種を意味する。電気活性種は、結合部(すなわち、結合が実際に生じている箇所)から、検出可能な応答または変化を生み出している感知面まで、(拡散または流動によって)移動させることによって、応答を媒介する。
【0179】
「形質導入」とは、結合剤または捕捉剤によって標的分析物の結合事象を測定するために使用されるメカニズムを指す。結合事象は、(基材の、リガンドへの結合によって生じる)電気化学的応答を発生させ、この電気化学的応答は、感知面で検出可能な応答として測定される。検出可能な応答は、基材が酸化または還元されるときの、感知面における電子の損失または利得であってもよい。
【0180】
「非流動環境」とは、試料の横方向の移動が、センサの上面全体にわたって実質的にゼロであることを意味する。
【0181】
「流動環境」とは、検出可能であり、かつ、制御状態または非制御状態のいずれかの、実質的に横方向の試料の移動が、センサの上面全体にわたって存在していることを意味する。流れの方向は、通常、結合剤から感知面への方向となる。しかしながら、流れは、単に、結合部から感知面への電気活性種の急速な拡散を助長する撹拌または震動であってもよい。
【0182】
「堆積した」とは、表面上に形成されていることを意味し、任意の形態の形成物、層状物または産出物を指すことができる。一実施形態では、堆積は、スパッタリングによって実現される。好ましくは、堆積された層は、この層が上に堆積される層に対して、ある程度の粘着性を有する。この粘着性は、共有結合、静電結合であってもよいし、あるいはファン・デル・ワールス力を含んでもよい。
【0183】
電極層に関しての「実質的に一定の厚さ」とは、電極層が支持基材または結合層を被覆する程度に関して、それほど大幅に変動しないことを意味する。センサの機能に実質的に影響がない、層の厚さの意図的でない変動は、「実質的に一定の厚さ」という用語に組み込まれるように意図されている。
【0184】
結合層または結合剤の影響に関しての「減衰した」とは、感知面で検出された応答が、結合層の存在もしくは結合剤の結合作用の存在によって妨げられるか、または電気的にブロッキングされることを意味する。
【0185】
本明細書で言及される場合の「表面構造」とは、単一の表面構造または複数の表面構造を指すように意図されている。
【0186】
「備える、含む(comprise)」「備えている、含んでいる(comprising)」などは、文脈上そうでないことがはっきりと求められない限り、排他的または網羅的な意味合いに対立するものとしての包括的な意味合いで、すなわち、「~を含むが、それらに限定されずに(including, but not limited to)」という意味合いで解釈されるものとする。
【0187】
「不活性」とは、アレイの成分、およびそれらに通常塗布される溶液/試料に対する反応性が低い材料を指す。「不活性」表面に反応性が欠如していることで、成分の、表面への化学的結合、物理的結合、または静電結合が確実に最小限に抑えられる。ハイブリッド形成する成分(核酸など)の場合、不活性表面は、非特異性のハイブリッド形成および結合を最小限に抑える。不活性層は、溶液の特定の成分の結合を特に促進したり、層を別の表面に結合したりする特徴または特性を含む結合層とは対照的である。
【0188】
説明
本発明者らは、標的分析物が結合層上で結合剤に結合することで、センサ上の感知面で検出可能な応答が得られるセンサを開発した。ただし、この感知面は結合層から離隔されているが、同じセンサ上にある。本発明者らは、センサ上の感知面から結合層および結合領域を離隔させることが、安定した結合層を実現し易くする一方で、感知面での感知に対する干渉もまた制限することを見出した。このようにして、感知面は、結合剤によって実質的に電気的に妨げられず、したがって、検出可能な応答は減衰されない。したがって、本発明は、感知面での応答の検出、続いて、測定電極での検出を増やすとともに、結合領域、結合剤、捕捉剤、標的分析物、マトリックス、またはそれらの相互作用のうちの1つまたは複数により生じる干渉の低減、または完全停止もまた可能にしようとするものである。したがって、本発明は、低レベルの標的分析物の検出の精度が向上したセンサ、ならびにセンサ内、およびセンサ間の両方で再現性のある応答を提供しようとするものである。
【0189】
本発明はまた、試料中の標的分析物を感知する精度を向上させる(例えば、図25を参照)方法であって、
a.支持基材と、
b.支持基材の上面から突き出ている少なくとも1つの表面構造であって、電極層を含む表面構造と、
c.電極層上の感知面であって、試料に接触するようになっている感知面と、
d.支持基材上の結合領域であって、感知面から離隔された結合領域と、
を備えるセンサを設けるステップと、
e.結合剤を、標的分析物を含有する試料と接触させるステップと、
f.標的分析物が結合剤に結合させて、感知面で検出可能な応答を生じさせるステップと、
g.少なくとも1つの感知面に電気的に接続された測定電極における変化を測定するステップと、
を含み、標的分析物の結合剤への結合が、感知面で検出可能な応答を媒介する電気活性種を生じさせ、試料中の標的分析物を感知する精度を(例えば、電気化学的検出と比較して)向上させる方法に関する。
【0190】
結合層および結合剤は、磁性粒子上にあり、この磁性粒子は、磁場によってセンサ表面に付着していることが好ましい。
【0191】
この方法は、磁場の不活性化および再活性化によって磁性粒子を離脱し、置換する能力もまた含む。
【0192】
磁場は、好ましくは、(永久磁石または電磁石のいずれかとして)センサに直接または間接的に接続されている磁気要素によって確立される。
【0193】
好ましくは、磁気要素は、ネオジム鉄ボロン、サマリウムコバルト、アルニコ、および、セラミックまたはフェライトから形成されるような永久磁石である。
【0194】
好ましくは、磁気要素は、結合領域の表面上の単層として磁性粒子を捕捉するように位置決めされる(そのため、「磁気位置決め要素」と呼ぶ場合もあるが、同義のことに言及していると読み取ることができる)。
【0195】
この方法は、
a.第1の結合剤を用いて磁性粒子の第1のセットを付着させることと、
b.試料中の標的分析物の、第1の結合剤への結合を検出する方法を実行するステップと、
c.磁場を不活性化して、磁性粒子の第1のセットを除去することと、
d.第2の結合剤を用いて磁性粒子の第2のセットを付着することと、
e.試料中の標的分析物の、第2の結合剤への結合を検出する方法を実行するステップと、
を追加的に含むこともできる。この方法は、同一の、または異なる標的分析物の検出のために磁性粒子の第3のセット、またはさらなるセットを用いて繰り返してもまたよい。
【0196】
表面構造は、円錐状、ピラミッド状、もしくは畝状、またはこれらの組み合わせが好ましいであろう。
【0197】
センサ表面と、結合層/結合領域との間の離隔距離は、好ましくは、約30nmと5mmとの間、約100nmと5000μmとの間、約1μmと1000μmとの間、または約20μmと100μmとの間である。この離隔距離は、約30nmと約5mmとの間、約100nmと約5000μmとの間、約1μmと約1000μmとの間、または約20μmと約100μmとの間、約30nmと約5000μm、約100nmと約5mm、約1μmと約100μm、約20μmと約1000μm、約20μmと約5000μm、1μmと約5mmであってもまたよい。
【0198】
好ましくは、結合領域と感知面との間の離隔距離が約1nmと50mmとの間であり、かつ/または、表面構造が約50nmから約2000μmだけ互いに離隔しており、かつ/または、支持基材に接合するの表面構造の幅が、約20nmから約5000μmの間であり、かつ/または、各表面構造の頂点の幅が、好ましくは、約1nmから約5000ミクロンの間である。
【0199】
図1は、先行技術の設計を示し、TMBの電気化学的測定を活用するバイオセンサの一般的な設計を図示する。電極表面は、捕捉剤(X)をそこに付着させる(図1B)ことが可能な官能基を含有するSAM層(図1A)で官能化されている。標的種
【数1】

および標識標的
【数2】

は、捕捉剤(図1C)に結合しようと競合し、その後、TMBが加えられ、TMBoxの測定が電気化学的に決定される(図1D)。このアプローチの課題は、捕捉剤の結合および測定を同時に行わなければならないという、電極表面の競合要件に関するものである。この、測定から結合を分離するということが、本発明によって対処される。
【0200】
図2は、本発明の4つの実現可能な実施形態を図示し、これらの実施形態はそれぞれ、支持基材電極層と、結合剤(X)がその上に付着し得る結合層と、を含む。本実施形態は、以下のものを含む。
A-電極の表面上への結合層の堆積によって形成された、電極層1の感知面2を露出させる開口部を形成する隔離された感知面を含む。この実施形態では、各感知面は、露出されている電極層の表面積によって画定されている。
【0201】
BおよびC-これらの実施形態では、結合層は、最高点すなわち頂点6を有する表面構造4上に存在する感知面と境界を接している。これらの特定の実施形態では、表面構造は、凸状断面または三角形状断面を有する。3次元の実施形態であれば、表面構造は、半球体(B)、もしくは円錐体(C)として存在し得るか、または半円形状断面もしくは三角形状断面を有する畝状となり得る。図2Dは、図2Cと類似した表面トポロジーを有するが、電極層1は支持基材8上に堆積されて、はるかにもっと薄い電極層を生成している。薄い電極層は、高価な場合もある電極材料(例えば、金またはプラチナ)が、少なくなるなどの利点を有する。
【0202】
図3は、図2に示される各構成の平面図を示し、4×4アレイとしての電極を示す。代替的な実施形態(図3に示されていない)は、図2A図2Bまたは図2Cに示されるような断面の輪郭形状を有する畝または流路の使用を含む。
【0203】
本発明は、センサであって、
a.支持基材と、
b.支持基材の上面から突き出ている少なくとも1つの表面構造であって、電極層を含む表面構造と、
c.電極層上の感知面であって、試料に接触するようになっている感知面と、
d.支持基材上の結合領域であって、感知面から離隔された結合領域と、
を備えるセンサを提供する。
【0204】
別の態様では、本発明は、センサであって、
a.支持基材と、
b.支持基材の上面から突き出ている少なくとも1つの表面構造であって、電極層を含む表面構造と、
c.電極層上の感知面であって、標的分析物を含有する試料に接触するようになっている感知面と、
d.支持基材上の結合領域であって、感知面から離隔された結合領域と、
を備え、使用時に、結合領域で結合層に付着している結合剤が、標的分析物を含有する試料に接触しており、かつ、センサが、標的分析物が結合層に付着している結合剤に結合した後に、感知面で検出可能な応答を検出するようになっているセンサを提供する。
【0205】
本発明はまた、好ましくは、センサの製造方法であって、
a.支持基材の上面から突き出ている少なくとも1つの表面構造を支持基材に設けるステップと、
b.少なくとも1つの表面構造の上面に電極層を堆積するステップと、
c.電極層の1つまたは複数の部分が、電極層に少なくとも1つの感知面を形成するように露出したままであるように、電極層に不活性層を堆積するステップであって、この不活性層が分析対象の試料の成分に対して実質的に不活性である材料を含むステップと、
d.支持基材上に結合領域を形成するステップであって、結合領域が、少なくとも1つの結合剤を静電的、共有結合的、または磁気的に付着させるようになっているステップと、
を含み、標的分析物が結合剤に結合した後に、使用時に、検出可能な応答を感知面で検出するのに十分な離隔距離だけ、感知面が結合領域から離隔されている方法を提供する。
【0206】
好ましくは、結合領域は、結合剤が付着した結合層を含む磁性粒子を引きつけて付着させる磁場を含む。
【0207】
使用時に、上述したセンサの支持基材は、磁性粒子が磁場を介して付着する。磁場は、結合領域としてセンサの区域を画定する。結合領域は、溶液中の標的分析物と、磁性粒子上の結合層上の官能表面に付着している結合剤との間の結合が生じている箇所である。
【0208】
必ずしも必要ではないが、本発明のセンサは、微小流体環境内に収容されていてもよい。この環境では、試料溶液は、再現性があり、かつ、均質な方法で、結合領域および感知面上を通過することができる。好ましくは、層流特性を有する。
【0209】
本発明は、試料中の標的分析物の、結合剤への結合を検出する方法であって、
a.支持基材と、支持基材の上面から突き出ている少なくとも1つの表面構造であって、電極層を含む表面構造と、電極層上の感知面であって、試料に接触するようになっている感知面と、支持基材上の結合領域であって、感知面から離隔された結合領域と、
を含むセンサを設けるステップと、
b.磁性粒子を結合領域に付着させるステップであって、この磁性粒子が磁性粒子上の結合層に付着している少なくとも1つの結合剤を含むステップと、
c.結合剤を、標的分析物を含有する試料と接触させるステップと、
d.標的分析物を結合剤に結合させて、感知面で検出可能な応答を生じさせるステップと、
e.少なくとも1つの感知面に電気的に接続された測定電極における変化を測定するステップと、
を含み、標的分析物の結合剤への結合が、感知面で検出可能な応答を媒介する電気活性種を生じさせる方法を提供する。
【0210】
一実施形態では、標的分析物は、リガンドに共役し、このリガンドが、電気活性基材への露出の後に、電気活性種を生じさせる。このようにして、電気活性種は、リガンド共役結合標的分析物の、電気活性基材への露出の後に生成される。
【0211】
競合アッセイ環境では、標的分析物、およびリガンド標識標的分析物(例えば、標識HRP)は、結合剤に結合しようと競合する。リガンド標識標的分析物(例えば、HRP)が結合すると、電気活性種(例えば、TMB)は、リガンド(例えば、HRP)によって酸化される。感知面で検出可能な応答は、感知面上の電気活性種(例えば、TMB)の還元の結果生じる。
【0212】
図4は、感知面4が結合領域/層2にすぐ隣接した、本発明の実施形態を示す。
【0213】
図5は、結合領域/層2および感知面4が空隙5によって隔離され、直線(図5A)もしくは円形(図5B)のいずれかの配置で互いに隣接している、本発明の実施形態を示す。
【0214】
図6は、標的分析物の結合から、結合剤X(以下でより詳細に説明する)への応答を検出するために使用されている複数の感知基を示す。
【0215】
本発明の特定の実施形態は、図7(以下でより詳細に説明する)に示される。この実施形態では、方法は、
a.結合剤X(例えば、抗体または抗原)をセンサの結合層に付着させるステップと、
b.リガンド(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP))で標的分析物(TA)を標識するステップと、
c.一定の量の標識標的分析物を、非標識標的分析物(TA(O))を含む試料に加えるステップと、
d.試料をセンサに塗布して、標識標的分析物と、非標識標的分析物との間に競合アッセイが生じるようにするステップと、
e.センサに、電気活性基材、例えば、Hの存在下でTMBを塗布することで、電気活性基材の一部分が、結合した標識標的分析物によって酸化または還元されるようにするステップと、
f.感知面で、電気活性基材の酸化または還元に対応する応答信号を測定するステップと、
を含む。
【0216】
図8は、活性化種(この実施形態ではTMBプラスH2O2)の存在下での、結合層上を、次に感知面上を通過するセンサへの電気活性基材の導入を示す。これについては、さらに以下でより詳細に説明する。
【0217】
図9は、低いTA濃度(試料濃度A)および高いTA濃度(試料濃度B)において複数の電極応答から得られると予想されるデータの型を示す。それぞれ、標識標的分析物が溶液中の結合剤に結合した後に生成された電気活性種(この場合にはTMBox)の量に対応する点で衰微している。これについては、さらに以下でより詳細に説明する。
【0218】
図10Aおよび図10Bは、図8に類似した配置を示す。ただし、これらの実施形態では、先端部のアレイ(結合層/不活性層上に突き出ている感知面を有する表面構造)を使用して、複数の電極層センサの感度の向上を実現する。これについては、さらに以下でより詳細に説明する。
【0219】
一実施形態では、結合層が、磁場によって支持基材上の結合領域(センサ表面)に付着している磁性粒子上にあることが必要である。競合アッセイの一方の実施形態では、試料は、結合領域で結合剤と接触し、標識標的分析物は、非標識標的分析物と競合して、結合剤を得ようとする。質量作用の法則によれば、結合した標識標的分析物の量は、標識標的分析物と非標識標的分析物の総濃度の関数である。非標識標的分析物の濃度が増加するにつれて、標識標的分析物の結合剤への結合が減り、応答信号が減少する。電気活性基材が塗布され、応答が測定される。応答は、結合領域から離隔された感知面で測定される。そのため、応答信号が小さいほど、試料中にある非標識標的分析物が多くなる。このようにして、非標識標的分析物の濃度は、既知の標識標的分析物濃度および測定された応答信号に基づいて、計算することができる。
【0220】
電気活性種を検出するために、電位が測定電極および対向電極の両端に印加される。電位は、還元電位または酸化電位とすることができる。一実施形態では、電位は-100mVと-300mVとの間である。一実施形態では、TMBが電気活性種である場合、電位は-100mVと-300mVの間である。一実施形態では、電位は-150mVと-1000mvとの間、または-180mVと-450mVとの間である。一実施形態では、電位は、-350mVと、-450mV、または約-200mV、-300mV、もしくは-400mVとの間である。
【0221】
一実施形態では、-400mVの電流が、測定電極/電極層、および対向電極の両端に印加される。この実施形態では、リガンドとしてHRPを使用する場合には、電流は、試料中で(HOから)、リガンド標識標的分析物を有する電気活性基材の反応を伝播する過酸化物を生成するのに十分である。システムは、ある期間の間、平衡状態に保たれ、次に、検出可能な応答の測定が行われる。
【0222】
電気活性基材としてのHRPおよびTMBのメカニズムの反応スキームは、以下のような反応で示される。
【化1】
【0223】
したがって、HRPおよび過酸化物の存在下で、上記の触媒作用が起こる。この等式は、反応が、電子が測定電極において伝達され、測定される電極層の感知面で電気化学信号の検出を可能にする電気活性種を生成する、電気活性プロセスであることを示す。
【0224】
上述した、電気化学的応答の測定に関する実施形態では、システムは、HRPによるTMBの還元および酸化に限定されるのではなく、レドックスプロセスに依拠する任意の電気活性種にもまた適用可能である。リガンド-基材の対の他の例としては、例えば、HRP/キノン、HRP/DAB、HRP/aec、HRP ABTS、HRP/ホモバニリン酸、HRP/OPD、HRP/AmplexRed、または糖尿病モニタリング用グルコースのグルコースオキシダーゼ還元が含まれる。
【0225】
好ましくは、検出可能な応答は、電流、インピーダンス、電圧、キャパシタンス、インピーダンス、抵抗またはコンダクタンスの変化を含む電気化学的な検出可能な応答を含む。電極を用いたこのような応答の測定は、当業者に既知のものである。好ましくは、標的分析物の、結合剤への結合は、感知面で検出可能な応答を媒介する電気活性種を放出する。これは、電気活性種が、結合部(すなわち、結合剤が標的分析物に接触する箇所)から移動し、感知面に接触することにより、検出可能な応答を生じる電子を供与または受容することを意味する。
【0226】
支持基材は、センサの基部を形成し、表面構造を支持している。好ましくは、支持基材は、ポリマー、シリコンまたはガラスを含む。ポリマーが使用される場合、ポリマーは通常無定形であるが、半結晶性ポリマーとすることも可能であろう。好ましくは、押し出し成形ポリマーが使用される。ポリマーの適切な形態は、当業者に既知のものであるが、例えば、ポリカーボネートおよびPMMAを含む。それは、可撓性または剛性とすることができ、好ましくは、平面である。当技術分野の当業者に既知であるように、支持基材の厚さは、主として、適切な取り扱いを確実なものにするのに必要な厚さによって決まる。したがって、好ましくは、支持基材は、厚さ約50ミクロンから約5mmの間、または厚さ約500ミクロンから約2mmの間、または厚さ約50ミクロンから約100ミクロンの間である。
【0227】
一実施形態では、支持基材は、導電性材料である。別の実施形態では、支持基材は、非導電性材料である。支持基材層が非導電性材料である場合、それは絶縁材料としてもまた作用し得る。本発明で使用される適切な可撓性材料の例としては、熱可塑性ポリウレタン、ゴム、シリコーンゴム、および可撓性エポキシ樹脂が含まれる。本発明で使用される適切な剛性基材の材料の例としては、ガラス、PMMA、PC、PS、セラミック、樹脂、複合材料、充填ポリマーおよび剛性エポキシ樹脂が含まれる。以下でより詳細に説明するように、基材の材料もまた、金、銀、ニッケル等といったような金属から形成することができる。
【0228】
表面構造は、それらが支持基材に接する箇所で、互いに接合されている場合もあれば、互いに離れて位置することで、支持基材の実質的に平面の上面が各表面構造の基部間に存在するようになっている場合もある。
【0229】
一実施形態では、表面構造は、支持基材と一体化されている。これは、表面構造が支持基材と同じ材料から形成され、支持基材から突き出ていることを意味する。この実施形態では、支持基材の上面は、順序づけられた構成または無作為の構成で配置された表面構造のアレイを含む場合もある。この実施形態では、電極層は、表面構造(および電極層が露出している場合には、支持基材)の上面上に形成することができる。表面構造が一体化された支持基材は、既知の方法、例えば、ホットエンボス、CFT処理、射出成形、スタンピング、またはリソグラフィ技術によって形成することができる。
【0230】
代替的な実施形態では、表面構造は、支持基材とは異なる材料から形成され、支持基材に堆積されるか、または支持基材に付着する。この実施形態では、表面構造は、電極層に一体化されている場合もある。これは、表面構造が電極層の一部であり、かつ、電極層と同じ材料から形成されていることを意味する。
【0231】
あるいは、電極層は、表面構造上に堆積されるか、またはそれ以外の方法で形成することができ、前記表面構造は、支持基材上に堆積されているか、支持基材と一体化されているか、またはそれ以外の方法で支持基材上に形成されている。表面構造が様々な材料から形成された支持基材は、既知の方法、例えば、ホットエンボス、CFT処理、フォトレジストのレーザ加工、スタンピング、またはリソグラフィ技術によって形成することができる。
【0232】
電極層は、任意の適切な導電性材料を含む。好ましくは、電極層は、導電性金属、炭素、ガラス状炭素、炭質材料、グラフェン、カーボンナノチューブ、導電性インク、充填ポリマー、導電性ポリマー、金、銀、ニッケル、プラチナ、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウムスズ(ITO)、ドープシリコン、二酸化チタンまたは層構造からなる群から選択される導電性材料を含む。好ましくは、導電性金属は、金、銀、ニッケルまたはプラチナを含む。好ましくは、層構造は、金を含有するチタン、金を含有するクロム、または導電性ポリマーを含有する金を含む。
【0233】
一実施形態では、不活性層または結合層は、電極層上に堆積される。
【0234】
一実施形態では、電極層は、表面構造上に堆積される。この実施形態では、すべての露出した平坦な支持基板表面もまた、電極層の境界によっては、電極層によって被覆されることになる。好ましくは、電極層は、実質的に一定の厚さの層を含む。電極層が表面構造の上面上に堆積されている場合には、電極層の上面のトポロジーは、下にある表面構造のトポロジー、および任意に、支持基材のトポロジーに対応していることが好ましい。表面のトポロジーのこの対応は、図2Dに見ることができ、図では、電極層1が支持基材8上に堆積されている。
【0235】
電極層の厚さは任意の適切な厚さとすることができるが、好ましくは、厚さ約1nmと5μmとの間、より好ましくは、厚さ40と500nmとの間、または厚さ50と100nmとの間である。より好ましくは、厚さ約5nmと3nmとの間、50と100nmとの間、70と400nmとの間、900と300nmとの間である。本発明者らは、約15nm未満である層を使用することは、電荷の伝導性に関する問題により、あまり望ましくないことを見出した。加えて、厚さ500nmよりも厚い層は、電極層を作るために使用する材料の、一般的には金のコストにより、経済面での短所をもたらす。
【0236】
好ましくは、電極層は、電極層を測定電極に電気的に接続するのに適した、1つまたは複数の端子接続手段を含む。好ましくは、端子接続手段は、スロットコネクタなどのコネクタと係合するようになっている。好ましくは、端子接続手段は、支持基材、結合層、または不活性層の表面上に突き出ている表面構造を有する支持基材の領域を含む。
【0237】
一実施形態、例えば、図12に示されるセンサでは、電極層は、端子接続手段上へと延在している。本発明者らは、センサアレイを外部回路に接続するのに好都合なメカニズムは、結合領域、および対応する表面構造(本明細書に記載されているような)を有する電極を有するセンサの第1の領域と、表面構造のない、SU8のような不活性層によって完全に被覆された電極を有するセンサの第2の領域と、表面構造を有する第3の領域であって、電極がコネクタ上の電極に対応し、電気的接続を行うことを可能にする第3の領域と、を提供することを含むことを見出した。好ましくは、第2の領域は、結合層または不活性層だけの露出を含み、一方、電極層は、結合層または不活性層の下を通過している。第2の領域は、センサが微小流体環境中で用いられる場合、接続シールで封止するようになっている。好ましくは、第3の領域は、結合層または不活性層の露出を含み、電極層を含む表面構造もまた露出され、外部回路との接続を容易にする。本発明者らは、センサ表面上に領域をこのように配置することにより、微小流体環境において特に良好な封止を助長しながらも、センサアレイへの有効な接続が依然として可能であることを見出した。
【0238】
本発明のセンサは、結合領域または結合層から離隔された少なくとも1つの感知面を含む。好ましくは、結合領域は、離隔距離だけ感知面から離隔され、この離隔距離は検出可能な応答を感知面で検出するのに十分である。
【0239】
好ましくは、離隔距離は、約1nmと50mmとの間である。特定の実施形態では、離隔距離は、約30nmと5mmとの間、約100nmと5000μmとの間、約1μmと1000μmとの間、または約20μmと100μmとの間である。離隔距離は、約30nmと約5mmとの間、約100nmと約5000μmとの間、約1μmと約1000μmとの間、または、約20μmと約100μmとの間、約30nmと約5000μm、約100nmと約5mm、約1μmと約100μm、約20μmと約1000μm、約20μmと約5000μm、1μmと約5mmとすることができる。
【0240】
センサに適切な離隔距離は、電気活性種が感知面に達するのにかかる時間によってある程度決まる。この時間は、試料の粘性、センサ上の試料の流動速度、または撹拌速度を含む多くの要因による影響を受ける。
【0241】
一実施形態では、センサは、非流動環境での使用に適している。この実施形態では、感知面が応答を検出する能力は、試料中の電気活性種の拡散特性によって決まる。これは、ひいては、(マトリックス効果を考慮に入れた)試料の性質、および電気活性種の濃度、したがって、標的分析物の濃度および結合剤の密度によって決まる。好ましくは、感知面は、例えば、図4に示されるように、結合領域にすぐ隣接している。好ましくは、非流動環境での離隔距離は、約30nmと500μmとの間、約1μmと200μmとの間、または約20μmと100μmとの間である。
【0242】
別の実施形態では、センサは、流動環境での使用に適している。この実施形態では、試料は、センサの上面を横切って流れることで、結合部から感知面への電気活性種の速度が加速されるようになっている。あるいは、流動環境は、撹拌された試料を含む場合があり、これは、感知面への迅速な拡散を助長する。好ましくは、感知面は、例えば、図4に示されるように、結合領域にすぐ隣接している。好ましくは、流動環境における離隔距離は、約30nmと50cmとの間である。特定の実施形態では、離隔距離は、約30nmと50mmとの間、約100nmと5000μmとの間、約1μmと2000μmとの間、または約20μmと100μmとの間である。
【0243】
一実施形態では、感知面は、不活性層または結合層の広がりによって感知面の区域が画定される電極層の露出面を含む。例えば、図2Aは、電極層1の露出区域である感知面を図示する。好ましくは、不活性層が表面構造間に存在する。不活性層が表面構造間に存在する場合、これは、電極層の一部が感知面として露出されるように、不活性層が部分的に表面構造を被覆し得ることを意味するように意図されている。
【0244】
図2A図2B図2Cを参照し、本明細書でさらに説明するように、層2は、不活性層として始まっているが、捕捉剤によって官能化されると、その広がり全体が結合領域である結合層になる。
【0245】
代替的な実施形態では、感知面は、支持基材から突き出ている表面構造の上面上にある。例えば、図2Bは、(表面構造の露出された上側部分として画定された)感知面であって、表面構造4上に、凸状断面を有する頂点6を有する感知面を図示し、図2Cは、頂点6を有する三角形状断面を有する表面構造4上の感知面を図示する。
【0246】
好ましくは、表面構造は、結合層または不活性層によって画定された(すなわち、結合層または不活性層と境界を接している)感知面を含む。好ましくは、各表面構造は、単一の感知面を含む。好ましくは、感知面は、結合層または不活性層によって他の感知面から離隔されている。好ましくは、表面構造は、結合層または不活性層を貫通して突き出ている。本発明者らは、結合層または不活性層上に延在する表面構造を含む本発明の利点の1つは、感知面における電気活性種の検出が、結合層または不活性層の上面と同一平面上またはその上下にある感知面と比較して、増強されるということであることを見出した。この増強は、本発明の好適な態様の有益な特徴である。
【0247】
図11は、Ag/AgCl基準電極と比較した、リン酸緩衝液中のフェロシアン化物(0.1mol)の、平面電極(A)および先端電極(B)の両方についての、別々の(AおよびB)、ならびに重ね合わせた(C)サイクリックボルタモグラムを示す。示されているサイクリックボルタンメトリーのトレースは、電極の相対面積を考慮に入れており、信号の劇的な増加、したがって7μmの先端電極対平面電極のアレイに対して得られた信号対ノイズの劇的な増加を示している。先端部は、7ミクロン×7ミクロンの正方形であり、かつ、高さが5ミクロン前後である基部を有するピラミッドである。挿入図Aは、およそ2μAcm-2の応答範囲を示す。対照的に、挿入図Bは、同じ表面積に対して-16000μAcm-2で、ほぼ8000倍の大きさの応答範囲を示す。この効果は、平面電極の場合に見られる二次元の拡散ではなく、先端部に向けての球状の拡散が原因で、微小電極において生じる(図26および図27もまた参照されたい)。
【0248】
好ましくは、表面構造は、頂点から頂点で、約50nm~約2000μm、約50nm~約1000μm、約100nm~約1000μm、約250nm~約1000μm、約5nm~約750μm、約5nm~約500μm、約5nm~約100μmだけ、互いに離隔されている。好ましくは、離隔距離は均一である。
【0249】
好ましくは、本発明の任意の実施形態の表面構造の、支持基材に接合する箇所における幅は、約20nmから約5000μmの間である。より好ましくは、約40nm~約4000μm、約55nm~約3000μm、約75nm~約2500μm、約100nm~約4000μm、約250nm~約3500μm、約20nm~約3500μm、約2nm~約4000μm、約20nm~約2500μm、約20nm~約4000μm、約20nm~約3000μm、約20nm~約2000μmである。
【0250】
好ましくは、各表面構造の頂点の幅は、好ましくは、約1nmから約5000ミクロンの間であり、より好ましくは、約10nmから約10ミクロンの間、または約20nm~約2ミクロン、または約30nm~約1ミクロンである。各表面構造の頂点の幅は、支持基材に接合する箇所よりも小さく、例えば、約1nmの幅の頂点の場合には、支持基材に接合する箇所の幅は、約20nmよりも大きくなり得る。
【0251】
感知面は、試料に接触するようになっている。これは、センサの使用時に、感知面が、検出可能な応答の検出を遅らせる妨害物がない状態で試料に露出されていることを意味する。好ましくは、感知面は電極層の上面上にある。感知面は、電子を受容するか、または電気活性種に電子を供与し、その結果、検出可能な応答をもたらす表面である。好ましくは、センサは、それぞれが感知面を有する複数の表面構造を含む。複数の感知面が、互いに、および測定電極に接続されて、標的分析物が結合剤に結合することにより生じる検出可能な応答を測定する。いくつかの実施形態では、接続された感知面は、感知基を形成し、1つ、2つ、またはそれ以上の感知基が存在する場合もある。各感知基の感知面は、センサの特定の領域に密集していてもよいし、あるいは、他の感知基からの他の感知面に点在していてもよい。感知基は、互いに電気的に絶縁され、各感知基における検出可能な応答は、他の感知基から独立して測定することができる。感知基のこの配置により、センサは、対照基と、内部複製と、様々な標的分析物を検出するか、または様々な結合剤に接続されている感知基と、を提供することが可能になる。複数の電極層または感知基は、電極層を分割することにより形成することができる。これは、当業者に既知の任意の手段によって実現することが可能であるが、これらの手段は、リソグラフエッチング、レーザ加工、またはシャドーマスキングを含むことができる。
【0252】
図12Aは、互いに電気的に絶縁された3つの電極層123上の3つの異なる標的分析物を検出するのに適したセンサを示す。流路124は、試料が、入口121から出口122へ、図12Bおよび図12Cに示される感知面上を通過させるように画定されている。図12Bおよび図12Cはそれぞれ、単一のアレイ(感知基)、および単一の感知面の走査型電子顕微鏡画像である。
【0253】
一実施形態では、結合領域は、感知面に対して異なる平面上にある。この実施形態であれば、支持基材は、平面配列を有することになり、例えば、流路は、感知面が流路の一方側にあり、結合領域が流路の底部にある。この構成は、本発明の範囲内であるように意図されており、本明細書に記載の他の実施形態は、センサの任意の形態の平面配列を実現するように適合させることができる。
【0254】
別の実施形態では、結合領域は、センサの別個の区画内にあるか、または感知面に対して異なる位置、向き、もしくはレベルにあることで、2つが、本明細書に記載されているような離隔距離だけ、隔離されるようになっている。好ましくは、結合領域および感知面は、微小流体または流体流路内にあり、微小流体または流体流路を介して接続されるようになっている。これらの構成要素の接続により、結合後に生成された電気活性種が、感知面へと拡散、またはそれ以外の方法で(例えば、ポンピングによって)移送されて、検出可能な応答を発生することが可能になる。
【0255】
一実施形態では、この方法は、2つ以上の感知基を形成するために、2つ以上の別々の電極層の堆積を含む。センサの製造時に、電極層は、電極層を支持基材/表面構造上にスパッタリングする際にマスキング処理、例えば、シャドーマスクを使用することにより離隔される。シャドーマスクは、導電性電極層が画定された区域に堆積されるのを防ぎ、したがって、確実に電極層が互いに電気的に絶縁されるようにする。これは、図12Aの例に示されている。
【0256】
一実施形態では、電極層は、結合領域、または絶縁材料または空隙を有する少なくとも1つの他の電極層から電気的に絶縁されている。
【0257】
空隙の幅は、隣接したもの(ナノメートルの距離)から、約50cmまでの範囲に及ぶ場合があり、管材料を介して接続されている場合もある。1つの構成では、溶液は、磁気ビーズ捕捉から、電磁弁へ、そして次に、測定電極へと進む。そのため、磁気ビーズコレクタと電磁弁との間をセンサまで戻る管材料が存在し、この管材料は約20~50cmとすることができる。別の構成では、磁気ビーズ捕捉は、はるかに短い(約2~5cm)微小流体流路を介して測定電極に接続されている。
【0258】
絶縁材料は、不活性材料とすることが可能であるが、電極層と結合層との間に位置する管材料によって形成されてもまたよい。
【0259】
好ましくは、表面構造は、表面構造の頂部に頂点を含む。頂点は、最高点を有する任意の形状の表面構造上に存在する場合もある。頂点は、表面構造上の感知面への、電気活性種の迅速な拡散を可能にする。
【0260】
いくつかの実施形態では、頂点は、表面に起伏がある上側部分、および表面に異なる起伏がある少なくとも1つの下側部分を有する表面構造上にある。上側部分とは、結合層または不活性層の上面上に延在する表面構造の部分を指すように意図されている。いくつかの実施形態では、表面構造または表面構造の上側部分は、ドーム状、円錐状、ピラミッド状、乳頭状、畝状、多面体形状、または平坦状である。
【0261】
好ましくは、支持基材の頂面に直交する平面に沿った表面構造の断面は、三角形、凸状の半円または乳頭状である。好ましくは、支持基材の頂面に平行な平面に沿った表面構造の断面は、実質的に三角形、実質的に円形、または実質的に正方形である。
【0262】
好ましくは、表面構造の断面積は、支持基材の頂面に直交する軸に沿って減少する。
【0263】
最も好ましくは、表面構造は、円錐、ピラミッド、もしくは畝、またはこれらの組み合わせである。
【0264】
好ましくは、表面構造は、凸状である表面を有する上側部分を含む。好ましくは、上側部分の表面は、頂点に向かって(例えば、鉛筆のような)テーパ状になっているか、または頂点に向かって丸みを帯びている(例えば、ドーム)。好ましくは、上側部分の断面は、三角形、正方形、凸状の半円、乳頭状、または平坦状である。
【0265】
一実施形態では、表面構造は、支持基材上に均一に配置されている。別の実施形態では、表面構造は、支持基材上に無作為に配置されている。
【0266】
別の実施形態では、表面構造は、滑らかな表面を含む。滑らかな表面構造を使用することは、感知面が表面構造の輪郭を辿って、感知面から再現性のある測定を行うことが可能になることを意味する。加えて、結合層、SAM、不活性層または保護コーティングが感知面に付着している場合、前記層、SAM、またはコーティングの厚さは、実質的に一定の厚さになる。加えて、表面構造は規則的な形状であることが好ましい。好ましくは、複数の表面構造が、形状および表面積が実質的に同一である。形状および表面積が複製された規則的な表面構造により、同じアレイ上の感知面全体にわたって、またアレイ間でも再現性のある測定が可能になる。
【0267】
センサを構成する表面構造(したがって感知面)の数は、用途に依存する。一実施形態では、センサは、少なくとも1つの表面構造を含む。いくつかの実施形態では、複数の表面構造が用いられ、それぞれがセンサアレイを形成する感知面を有する。このようなアレイは、2x2アレイから、何十億x何十億のアレイ、1x何十億のアレイ、または、任意の他の配列の表面構造までの範囲に及ぶ場合がある。好ましくは、センサは、100を超える表面構造、10000を超える表面構造、または1000000を超える表面構造を含むアレイを含む。
【0268】
各感知面のサイズは、その表面積によって測定することができる。好ましくは、表面積は、1nmと10mmとの間である。一実施形態では、各感知面の面積は、約30nmと50μmとの間、または、約50nmと10μmとの間である。表面構造が畝を含む場合、畝は、好ましくは、長さ約100nmと1cmとの間である。単一の先端部の好ましい面積は、この範囲が作り易いことが分かっているので、約1μmと約20μmとの間である。実用的な見地から、nA範囲での測定が比較的容易であるので、先端部の総面積は、1mm~3mmが好適である。
【0269】
好ましくは、表面構造は、ホットエンボス、CFT処理、射出成形、レーザ誘起架橋、ロール成形、スタンピング、またはリソグラフィ技術によって、支持基材上に形成される。好ましくは、表面構造は、表面構造の頂部に頂点を有して形成される。表面構造のさらなる実施形態は、第1の態様において定義されているとともに、第2の態様に関連する。
【0270】
好ましくは、感知面は保護コーティングを含む。代替的な実施形態では、結合層または不活性層は、保護コーティングである。保護コーティングは、保護する表面への結合剤および試料成分の非特異性の結合を最小限に抑えるか、または非特異性の結合を防ぐ機能を果たす。好ましくは、保護コーティングは、自己組織化単分子膜(SAM)、エタノールアミン、またはBSAまたはOVAのようなタンパク質層を含む。保護コーティングは、好ましくは、結合剤がセンサに塗布される前にセンサに塗布される。保護コーティングは、次に、好ましくは、電気活性基材の検出前に除去される。これにより、感知面での応答の検出に対する保護コーティングのあらゆる干渉を確実に最小限に抑えるようにする。保護コーティングは、タンパク質の結合、および試料(例えば、血液、ミルク等)の感知面への塗布に起因するマトリックス効果もまた最小限に抑える。
【0271】
SAMの塗布方法は、当業者に既知のものである。一実施形態では、SAMは、エタノール中にSAMを溶かし、次に、SAM/エタノール混合液をセンサ表面に、ある期間の間、例えば、10分から1時間の間塗布することによって塗布される。次に、余分な混合液が洗い流される。SAMは、次に、Ag/AgClに対して-400mVの還元電位を印加することによって感知面から除去することができる。保護コーティングが、アビジンもしくはBSAのようなタンパク質である場合、または抗体捕捉剤である場合であっても、測定前に除去しなくてもよいし、電気測定を妨げるものではない。
【0272】
一実施形態では、保護コーティングは、結合剤を塗布する前に感知面に塗布される。好ましくは、保護コーティングは、アルカンチオール(HS(CHCH、式中、X=0~16(アルカン、アルケン、アルキン、芳香族形態、およびこれらの組み合わせにおけるX=0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16)から作られ、エタノール溶液から堆積されたSAMである。好ましくは、保護コーティングの除去は、電気活性種(例えば、TMB)の最終測定の前に行われる。
【0273】
別の実施形態では、保護コーティングは、結合層として塗布されて、結合剤および試料成分の、電極層への非特異性の結合を最小限に抑えるか、または非特異性の結合を防ぐ。この実施形態では、電荷密度(電流または電圧)を集中させるための先端部の官能性を利用して、感知アッセイを行う前に感知面の脱保護を可能にする。
【0274】
好ましくは、保護コーティングは、銀/塩化銀基準電極に対して-200mVと-1Vとの間の、好ましくは、-400mVの還元電位を印加することによって除去される。-400mVの印加は、さらにリガンド触媒(例えば、HRP)を再生成するのに望ましいHもまた生成する。
【0275】
本発明の一実施形態では、本発明者らは、結合剤(捕捉剤を含む)を磁性粒子に付着させることにより、それらを結合領域に効果的に付着させることが可能であることを見出した。磁性粒子は、磁場を通って結合領域の表面に引きつけられ、磁場が活性化されている間、粒子は、結合領域に「付着」している。磁場が除去されるか、または不活性化されると、粒子は、結合領域表面から「離脱」し、洗浄流体中で自由に除去することができる。この実施形態では、結合剤は、本質的に2つ以上の薬剤、すなわち、結合層と相互作用して結合層に付着する第1の部分と、結合剤の第1の部分に付着しながら試料中の標的分析物と相互作用する第2の、またはさらなる部分(「捕捉剤」)と、を含む。
【0276】
本発明のこの実施形態では、結合層は、結合領域それ自体の表面上ではなく、磁性粒子の表面に付着している。結合層、ならびに、結合層に付着し得る結合剤および捕捉剤の特徴は、これ以外の点では、本明細書に記載のものと同じである。感知面および表面構造は、標的分析物が結合剤/捕捉剤に結合した後に、検出可能な応答を検出する際に効果的であることが本発明者らによって示されている。
【0277】
結合領域が磁性粒子を収容するようになっていることで、センサの製造時に結合剤/捕捉剤を結合層/結合領域に付着させる必要がなくなる。これは材料のコスト低減など、重要な長所を有する。様々な結合剤/捕捉剤を迅速にセンサに付着させ、センサから離脱させることが可能であることで、同じセンサ上の、および同じセンサシステムまたは微小流体デバイス内で複数の標的分析物に対する容易な試験が可能になる。
【0278】
一実施形態では、本発明は、試料中の標的分析物への、結合剤への結合を検出する方法であって、
a.第1の結合剤を用いて磁性粒子の第1のセットを結合領域に付着させることと、
b.試料中の標的分析物の、第1の磁場の活性化を含む第1の結合剤への結合を検出する方法を実行するステップと、
c.第1の磁場を不活性化して、磁性粒子の第1のセットを除去することと、
d.第2の結合剤を用いて、第2の磁場の活性化を介して磁性粒子の第2のセットを結合領域に付着させることと、
e.試料中の標的分析物の、第2の結合剤への結合を検出する方法を実行するステップと、
を含む方法を提供する。
【0279】
標的分析物の結合を検出する方法は、前述した通りであるが、好ましくは、
支持基材と、支持基材の上面から突き出ている少なくとも1つの表面構造であって、電極層を含む表面構造と、電極層上の感知面であって、試料に接触するようになっている感知面と、支持基材上の結合領域であって、感知面から離隔され、かつ、磁場を含む結合領域と、を備えるセンサを設けるステップと、磁性粒子または複数の磁性粒子を結合領域に付着させるステップであって、この磁性粒子または複数の磁性粒子が磁性粒子または複数の磁性粒子上の結合層に付着している少なくとも1つの結合剤を含むステップと、
結合剤を、標的分析物を含有する試料と接触させるステップと、標的分析物を結合剤に結合させて、感知面で検出可能な応答を生じさせるステップと、少なくとも1つの感知面に電気的に接続された測定電極における変化を測定するステップと、を含み、標的分析物の結合剤への結合が、感知面で検出可能な応答を媒介する電気活性種を生じさせる。
【0280】
磁性粒子の第1のセットは、試料中の特定の標的分析物を検出するのに適した結合剤/捕捉剤をその上に有することができる。第2のセットは、試料中の同じまたは別の標的分析物を検出するのに適した結合剤/捕捉剤をその上に有することができる。付着および離脱のさらなるセット、およびステップもまた想定される。磁場の活性化/不活性化によって付着および離脱させる好都合な方法により、同じ汎用センサを複数の検出アッセイに使用することが可能になる。
【0281】
図23および図24は、磁性粒子の付着の例を示す。図23は、センサの表面のすぐ下に磁気要素を有する。この構成では、磁性粒子が隣接する表面構造間に存在することが予想される。粒子の深さは、表面構造および粒子の相対的なサイズに依存する。
【0282】
図23で分かるように、粒子をセンサの表面に付着させるために磁場を使用することにより、アレイの表面構造がその中に突き出ているセンサの表面全体にわたって深さが実質的に一定な層が可能になる。いくつかの実施形態では、表面構造は、粒子の層の上方に突き出ている。他の実施形態では、表面構造は、粒子の層の中に突き出ている。これらの実施形態ではいずれも、表面構造は、試料中の標的分析物が、磁性粒子に付着した結合剤に結合した後に引き出された、検出可能な応答を検出する際に効果的である。
【0283】
図24は、感知面から離隔された磁気要素を有する。好ましくは、図24に図示される構成は、微小流体環境内にあり、感知面は、磁気要素を有する結合領域からは下流にある。代替的な実施形態では、表面構造および表面構造のそれぞれの感知面は、標的分析物の結合剤への結合が生じる結合領域から離れて位置している。好ましくは、感知面は、本明細書に記載されているような離隔距離だけ結合領域から離隔されている。一実施形態では、感知面は、ある区画の1つの表面上にあり、結合領域は、同じ区画の対向する表面上または隣接する表面上にある。表面は、同じ平面上にあってもよいし、異なる平面上にあってもよいし、互いに向きが異なっていてもよい。
【0284】
実施例10および図30に記載されるようなさらなる実施形態は、図24のように、第1の捕捉箇所で磁気ビーズを捕捉し、ビーズを洗浄することになる。次に、ビーズを放出し、図23のように、センサの下に配置された第2の磁気領域上でそれらを捕捉し、そこで感知を行うことになる。
【0285】
磁場は、センサ支持基材上、センサ支持基材内、またはセンサ支持基材の下の磁気要素によって確立される。本発明のこの実施形態の場合、結合領域は、磁性粒子がそこに引きつけられ、センサの表面に「付着している」区域として画定される。
【0286】
磁気要素は、磁場を生じ、磁性粒子を引きつける任意の適切な要素とすることができる。例えば、磁気要素は、フェリ磁性体または電磁石とすることができる。
【0287】
本発明での使用に適している磁性粒子は、Dynabeads(Invitrogen/Thermo Fisher Scientific社)、Chromospheres,Bioclone、および関連文献を含む、当業者に既知のものである。このような粒子は、常磁性または強磁性とすることができ、それら粒子の表面上に結合層を有することになる。この結合層は、本明細書では官能表面とも呼ばれる。結合層は、以下に記載されているように、1つまたは複数の結合剤を結合するようになっている。
【0288】
磁場を確立するために、磁気要素は、基材の表面に近接するように位置決めされ、好ましくは、微小流体環境において、磁気要素は、流動経路内の任意の磁性粒子に、結合領域の上面への付着を実現させるのに十分に流路に接近している。いくつかの実施形態では、磁気要素位置決め手段は、センサの下面に保持されて、(図23に見られるように)磁気要素、および結果として生じた磁場の正確な位置決めを実現する。したがって、いくつかの実施形態では、本発明のセンサは、磁気要素位置決め手段を含む。好ましくは、磁気位置決め手段は、磁石である。好ましくは、磁石は、ネオジム鉄ボロン、サマリウムコバルト、アルニコ、および、セラミックまたはフェライトから形成されるような永久磁石である。好ましくは、磁石は、電磁石である。好ましくは、磁気位置決め手段は、結合領域の表面上の単層として粒子を捕捉する磁場の影響を最大化するようなやり方で位置決めされる。
【0289】
本明細書で言及される場合の「結合層」とは、磁性粒子上の層である。当業者であれば、支持基材「の上方に(above)」または支持基材「~の上に(on)」という用語は、磁性粒子が支持基材上に直接付着していることを示唆しないことが理解されよう。層、磁性粒子、または感知面は、1つまたは複数の介在層、例えば、電極層を有した状態で、間接的に支持基材の上にあってもよい。それは、微小流体デバイスの封緘層の上にある場合もある。使用時に、結合剤は、特定の標的分析物と結合して、検出可能な応答を発生する。
【0290】
本発明の他の実施形態(図2A図2Cに示される)では、結合層2は、電極層の上面上に堆積される。図2Dに示されるさらなる実施形態では、表面構造4の上側部分は、露出されて、感知面4aを形成する。結合層2は、支持基材8上の電極層1上に堆積されている。図5Aおよび図5Bに示される代替的な実施形態では、結合層は、支持基材(図示せず)の上面上に堆積されている。これらの実施形態では、結合層は、電極層3と接触していない。代わりに、結合層は電極層3に隣接しており、任意に、それらの間に絶縁材料または空隙5を有する。同様の発明のこれらの実施形態では、結合層は、磁性粒子上に見られ、図23および図24に示される実施形態に示される結合層と同様の目的を有する。
【0291】
一実施形態では、結合層または不活性層は、表面構造の表面の上側部分が、(表面構造の頂点のまわりの)感知面として露出されるように、表面構造のまわりに堆積される。一実施形態では、結合層または不活性層の広がりは、開口部を画定し、この開口部を貫通して感知面が試料に露出されている。概してテーパ状になっている構成を有する表面構造を使用する場合、結合層の厚さ、およびテーパの角度は、試料に露出される感知面の区域を決定する。例えば、図2B図2C図2D図4、および図6Dは、結合層または不活性層2が表面構造4の、支持基材または電極層1から突き出ている部分を被覆していることを示す。本発明のこの特徴によって、感知面として露出した表面構造の上側部分だけで、非常に小さい感知面を画定することが可能になる。表面構造4は、好ましくは、頂点6を有する。本発明者らは、非常に小さい感知面を使用すれば、図11に示されるように、またこの図に関して前述したように、感知面で検出される応答の変化に対するセンサの感度を向上させることを見出した。小サイズの(約30μm四方、好ましくは、5μm~30μm、10μm~30μm、15μm~25μm、5μm~25μm四方よりも小さい)電極は、微小電極挙動を生じ、これは、サイズが小さくなるにつれて、拡散時間がますます速くなるとともに、信号対ノイズが大きくなることがわかっている。
【0292】
好ましくは、結合層は、結合剤に結合する材料を含む。好ましくは、結合層は、架橋ポリマー、フォトレジストまたは自己組織化単分子膜(SAM)を含む。好ましくは、架橋ポリマーは、SU-8のようなエポキシ系ネガ型フォトレジストである。他の適切な結合層材料は、ポジ型およびネガ型フォトレジストのいずれか、ならびにアジド、アミン、カルボン酸塩、アルデヒド、ケトン、エステルもしくはカルボン酸、またはこれらの混合物からなる群から選択される末端分子を含むSAMなど、当業者に既知のものである。このような分子は、SAMの終端部に存在している。結合層は、複数の層であってもよいが、好ましくは、結合層は、前述の材料からなる単一の層を含む。結合剤の結合層への付着が強力であり、洗浄したり、試料に露出したりすることによって除去されないこともまた重要である。好ましくは、付着は共有結合であるが、それは静電結合とすることもまた可能であろう。
【0293】
結合層は、特定の結合剤を効率的に結合するために、プレコーティングを用いて堆積させることができる。例えば、プレコーティングは、プロテインA、GまたはA/G、プロテインL、二次抗体、ニュートラアビジンタンパク質またはストレプトアビジン、ビオチン、ビオチン結合タンパク質Ni2+またはグルタチオン、無水マレイン酸、マレイミドまたは抗GSTを含むことができる。既存の知識または理論に束縛されることを望まないが、プレコーティングは、それらのFc領域を介して抗体を結合するためのプロテインA、GまたはA/Gを含むことができる。プロテインLは、カッパ軽鎖を通してFab抗体フラグメントおよび単鎖可変フラグメント(ScFvs)を結合するためのものである。二次抗体は、プロテインA、GまたはLの代替物として抗体を結合するためのものである。ニュートラアビジンタンパク質またはストレプトアビジンは、ビオチン化タンパク質、ペプチドまたは核酸を結合するためのものである。ビオチンは、アビジン、ストレプトアビジン、またはニュートラアビジンを結合するためのものである。ビオチン結合タンパク質Ni2+またはグルタチオンは、ポリヒスチジンまたはグルタチオンS-トランスフェラーゼを含有する組み換えにより発現されたタンパク質を結合するためのものである。無水マレイン酸は、アミン含有高分子または低分子を結合するためのものである。マレイミドは、スルフヒドリル含有分子を結合するためのものであり、抗GSTは、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)を発現しているタンパク質を捕捉するためのものである。
【0294】
好ましくは、結合層の厚さは、約0.1μmから約1μmであり、より好ましくは、0.2から0.4μmである。厚さは、約0.2μmと約0.8μmとの間、約0.4μmと約0.7μm、約0.3μmと約0.9μm、約0.1μmと約0.6μmであってもまたよい。
【0295】
結合領域は、標的分析物の結合剤への結合がそこで生じる支持基材の区域である。いくつかの実施形態では、結合領域の広がりは、支持基材に磁性粒子を引きつけて付着させるために使用される磁場の広がりによって画定される。磁性粒子を付着させるように意図されている実施形態では、結合領域は、1つまたは複数の磁性粒子を付着させるようになっている支持基材の領域を含む。好ましくは、結合領域は、支持基材上、支持基材の下、または支持基材内の磁気要素によって確立された磁場の区域によって画定される。あるいは、磁性粒子は、支持基材上の不活性層に付着させることができる。不活性層は、好ましくは、フォトレジストまたはSAMである。結合領域もまた、磁気要素を受容するか、または特定の範囲-すなわち、結合領域に磁場を向けたり、集中させたりするために使用される構成要素を保持するように意図された磁気要素位置決め手段によって画定することができる。好ましくは、磁気位置決め手段は、磁石である。好ましくは、磁石は、ネオジム鉄ボロン、サマリウムコバルト、アルニコ、および、セラミックまたはフェライトから形成されるような永久磁石である。好ましくは、磁石は、電磁石である。好ましくは、それは、表面上の単層としてすべてのビーズの捕捉を確実にするために、磁場の影響が最大化されるように配置された磁石である。
【0296】
本発明では、結合領域は、離隔距離だけ感知面から離隔されている。この離隔距離は、感知面が、標的分析物の結合剤への結合後に生成された電気活性種(例えば、TMB)を感知することが依然として可能な距離に制限されている。本発明のこの態様は、結合剤が結合領域に結合すること、または標的分析物が結合剤に結合することにより生じる検出干渉を低減するセンサを提供するための鍵となるものである。
【0297】
好ましくは、離隔距離は、感知面で検出可能な応答の検出が、結合層または結合剤よって減衰されずに行うことができるような距離である。好ましくは、離隔距離は、約1nmと約50mmとの間である。特定の実施形態では、離隔距離は、約30nmと5mmとの間、約100nmと5000μmとの間、約1μmと1000μmとの間、または約20μmと100μmとの間である。離隔距離は、約30nmと約5mmとの間、約100nmと約5000μmとの間、約1μmと約1000μmとの間、または、約20μmと約100μmとの間、約30nmと約5000μm、約100nmと約5mm、約1μmと約100μm、約20μmと約1000μm、約20μmと約5000μm、1μmと約5mmとすることができる。好ましくは、結合領域は、センサに塗布される試料の成分に対して不活性である。
【0298】
適切な結合剤は通常、特定の抗体(標的分析物)に特化した抗原を含む。しかしながら、代替の結合剤、例えば、抗体、アプタマーもしくはアンチセンス、抗体フラグメント、単鎖可変フラグメント、ビオチン化タンパク質、ペプチド、核酸(ssDNA、RNA、mRNA、miRNA)、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、ポリヒスチジンもしくはグルタチオンS-トランスフェラーゼを含有する組み換えにより発現されたタンパク質、アミン含有高分子または低分子、スルフヒドリル含有分子もしくはグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)を発現しているタンパク質は、当業者に既知のものである。
【0299】
好ましくは、ブロッキング剤は、結合剤の堆積後にセンサに塗布される。ブロッキング剤の効果は、結合層の他の部分、または結合領域もしくは結合層、または電極層のあらゆる未反応区域での試料成分の、非特異性の結合を最小化または防止することである。好ましくは、ブロッキング剤はエタノールアミン、または、BSAもしくはOVAなどのタンパク質である。
【0300】
好ましくは、保護コーティングがセンサに塗布される。好ましくは、保護コーティングは、結合層または電極層に電位が印加されていることにより、電極層または結合層に優先的に結合する。保護コーティングは、任意のコーティングとすることができるが、特定の実施形態では、保護コーティングはSAMで構成されている。この実施形態では、SAM中のチオール基は、表面に結合するが、望ましくない区域、例えば、電位が印加されていない区域には結合しない(か、または、結合の程度が小さい)。
【0301】
図13は、様々な結合層上のリガンド(HRP)吸収に及ぼすブロッキング剤(エタノールアミン)の効果を示す。この実施形態では、結合層は、A-金、B-SU8、およびC-反応性イオンエッチング後のSU8である。明らかに、ブロッキング剤は、様々な表面上へのリガンドの吸収の低下に実質的かつ有意な効果を有する。
【0302】
結合層(例えば、磁性粒子上の官能表面)への結合剤の塗布、および塗布の位置は、既知のプロセスに従って制御される。例えば、塗布は、自動制御システムによって制御したり、微小流体的に画定したりすることができる。代替的な実施形態では、粒子は、結合剤で粒子を洗浄/浸水させることによって調製することができる。いくつかの実施形態では、微小電極アレイを製造するために、センサを他のセンサとともに支持基材上に位置決めすることができる。
【0303】
結合剤は、既知のプロトコル(例えば、2008年、Blagoiらの中で概説されたものがあり、参照およびサポートとして読者は、この文献を参照されたい)に従って結合層上の官能表面に結合する。好ましくは、結合剤は、静電付着または共有結合によって結合層に付着している。一実施形態では、結合層は、タンパク質捕捉剤上でアミンに結合するエポキシ側基を有するSU8を含む。
【0304】
好ましくは、結合剤は、捕捉剤をさらに含む。この実施形態では、結合剤は、本質的に2つ以上の薬剤、すなわち、結合層と相互作用して結合層に付着する第1の部分と、結合剤の第1の部分に付着しながら試料中の標的分析物と相互作用する第2の、またはさらなる部分(「捕捉剤」)と、を含む。本明細書で結合剤について言及する場合、このような結合剤が複数の部分で構成され得ること、また「結合剤」という用語は、これらの複数の部分または追加の捕捉剤を含むように意図されており、それらを様々なステップにおいて適用して、結合剤を構成し得ることは、当業者であれば分かる。
【0305】
一実施形態では、結合剤は、ビオチン結合タンパク質、例えば、アビジンを含む。この実施形態では、捕捉剤は、アプタマーを含む。別の実施形態では、結合剤は、試料中に存在する抗原に結合して電気活性種を生成するのに適した抗体を含む。
【0306】
一実施形態では、センサの結合領域は、電極の感知面から離隔されている。図5は、結合層2および感知面が(5で)隔離され、直線(図5A)または円形(図5B)のいずれかの配置で互いに隣接している、本発明の実施形態を示す。
【0307】
本発明のセンサは、非流動環境で、例えば、開放容器内に配備することができる。感知面が結合領域に近接していることにより、結合の結果として生成された十分な電気活性種が、確実に検出可能な応答をもたらすことになる。
【0308】
しかしながら、いくつかの実施形態では、流動環境でセンサを使用することが好ましい。例えば、流路が試料の流れを方向付けする、流体/微小流体環境でセンサを使用する場合である。流動環境では、電気活性基材が速く感知面に到達し、これにより、最大の検出可能な応答が、確実に検出されるはずである。図5は、流動環境における本発明の実施形態を示し、図中の矢印は、流れの方向を示す。電極の感知面が、空隙5、またはフォトレジストもしくはSAM層のような絶縁材料によって結合領域から隔離されているこの実施形態では、感知面で検出される電気活性種の数を増やすために、流れを有することが好ましい。
【0309】
本発明のセンサは、電解質溶液中に配備されることが好ましい。好ましくは、本発明の任意の実施形態の溶液は、電解質を含む。好ましくは、この溶液は水であるが、アルコール、エーテル、アセトンおよびDMSOのような有機溶媒とすることもまた可能である。好ましくは、電解質は、NaClのような非緩衝食塩溶液、または、酸性溶液および基礎液H2SO4、HNO3、NaOHを含む、通常生物学で使用される緩衝液を含む。好ましくは、本発明の任意の実施形態の溶液は、淡水、海水、血液、尿、ミルク、または唾液からなる群から選択される。一実施形態では、本発明の任意の実施形態の溶液は、基準電極をさらに含む。
【0310】
一実施形態では、溶液は、基準電極をさらに含む。電流が流れている間、例えば、感知プロセスの間、基準電極は、電圧の測定および制御を支援する。基準電極の特性および位置決めは、当業者に既知のものである。
【0311】
好ましくは、電極アレイおよびその使用方法は、溶液と接触している基準電極をさらに含む。好ましくは、基準電極は、Ag/AgCl、SHE、NHE、RHE、SCEから形成された電極を含む。
【0312】
結合領域から感知面を隔離するという概念の拡張が、図6に示されている。これらの実施形態では、複数の感知基(例えば、電極1、2、3)を使用して、結合層2上の標的分析物の、結合剤Xへの結合からの応答を検出する。
【0313】
結合層2は、当業者に既知の、上記でより詳細に説明した方法によって生成することができる。表面構造(図6Cおよび図6D)は、三角形状断面を有するものとして示されているが、(上述したような)他の形状および形態もまた効果的となることが理解される。
【0314】
図6Dは、感知面同士を互いに隔離させ、かつ、各感知面と境界を接する表面構造の感知面4間の結合層7を示す。この層は、結合剤の塗布の間、エタノールアミンのようなブロッキング剤でマスキングまたはブロックされ、この層が結合領域にならないようにする。実質上、結合層のこの部分は、標的分析物または他の試料成分の非特異性の結合を防ぐための不活性層とみなすことができる。図6Dに示される不活性層は、先端部間に不活性材料の結合剤を用いた官能化がない点で、図2Cに示される結合層とは異なる。
【0315】
好ましくは、不活性層は、結合層と同じ材料から作られる。しかしながら、別の実施形態では、不活性層は、結合層とは異なる材料で作られる。
【0316】
磁性粒子がセンサの表面に付着している場合、表面は、検出対象の分析物を含む試料流体の成分に対して不活性であるのが理想的である。これは、表面が試料流体の典型的な成分に対して実質的に反応しないことを意味する。
【0317】
電気応答性を有する不活性層または保護コーティングが表面構造上の感知面にも塗布される場合には、感知の前に、電位を印加して感知面を選択的に脱保護することができる。
【0318】
本発明者らは、微小電極アレイを形成するように、すべてが電気的に接続された複数の感知面を有することにより、より大きな信号応答の検出が可能になることを見出した。加えて、本発明者らは、感知面の表面積を最小限に抑えることにより、各感知面の感度が向上することを見出した。これは、感知面の信号対ノイズ比は、感知面の面積が減少するにつれて増大することを意味する(例えば、図11を参照されたい)。電気ノイズは、どの回路にも存在し、非常に小さい電流では、より明白になっている。そのため、ノイズを最小限に抑え、信号対ノイズ比を最大化することが重要である。したがって、本発明者らは、平面電極は、同じ公称総面積の感知面よりも約8000倍感度が低いが、結合層を追加して感知面としての表面構造の上側部分を画定することによって、(図11に示されるように)約7μm(平面視直径)の感知面先端部のアレイに減少されることを見出した。電極が約30μmよりも小さくなると、(先に言及したように)電極内で微小電極挙動が生じ始め、先端部のサイズは10μm未満(1μm~10μm、1μm~8μm、3μm~7μm、すなわち1 2 3 4 5 6 7 8 9 10μm)の頂点で鋭くなる。
【0319】
使用時に、センサは、1つまたは複数の感知面または感知基に電気的に接続された測定電極を含む。好ましくは、測定電極は、電流、インピーダンス、電圧、キャパシタンス、抵抗、コンダクタンス、磁束または電場のうちの1つまたは複数の変化を測定する測定手段に接続されている。適切な測定手段は、当業者に既知のものであるが、測定電極の例としては、Ivium Compactstat、またはPalmsens MultiEmStatが挙げられる。いくつかの実施形態では、測定電極を使用して、保護コーティングまたは不活性層を用いて感知面を保護または脱保護する。この実施形態は、感知面に対する反応成分の非特異性の結合を最小限に抑え、感知面の特定の保護または脱保護を提供する際に使用される。
【0320】
一実施形態では、電極は、磁気要素に電気的に接続されている。この電極は、測定電極と同じ官能性を有し、磁性粒子を結合領域に付着、または結合領域から離脱させるために使用することができる。
【0321】
測定電極は通常、電極層に正電位または負電位を印加するようにもまた構成されている。これにより、電気活性種への、もしくは電気活性種からの保護、脱保護または電荷移動を容易にすることができる。
【0322】
好ましくは、センサは、センサシステムの一部を含む。センサシステムは、試料を感知面に接触させ、検出可能な応答を検出できるようにするのに適した配線、電極、および溶液を包含する。センサシステムは、好ましくは、センサ表面に試料を保持するための容器を含む。センサシステムはまた、好ましくは、検出可能な応答の検出時に試料に接触するように構成された基準電極および対向電極をさらに含む。好ましくは、基準電極および/または対向電極は静止しており、感知面から一定の距離にある。適切なシステムおよび構成は、当業者に既知のものである。
【0323】
好ましくは、本発明の任意の実施形態の対向電極は、実質的に不活性の導体材料を含む。この実例において、「不活性の」という用語は、センサから対向電極への電流の確立および通過後の質量および状態において、対向電極が実質的に変化していないことを意味する。したがって、「不活性の」対向電極は、溶液の成分に対して実質的に非反応性である。好ましくは、対向電極は、金属、Pt、金、炭素、グラファイト、グラフェン、炭素繊維、カーボンナノチューブ、バッキーボール、導電性ポリマーPPy、PA、Pアセチレンからなる群から選択される材料から形成される。対向電極は、適切な支持体、例えば、ポリマーガラス、金属上に堆積された固体層または導電層で作られていてもよい。好ましくは、第1の態様の任意の実施形態の対向電極は、表面構造に対して固定された向きにある。
【0324】
好ましくは、第1の態様の任意の実施形態の対向電極は、センサに取り付けられる。好ましくは、対向電極は、アレイの表面構造のそれぞれの間の距離の差を最小にするような向きに保持される。好ましくは、対向電極の向きは、アレイの上面よりも上方である。これらの実施形態では、対向電極から各表面構造の頂点までの距離は、実質的に等距離である。これにより、対向電極を配置することにより生じる検出ノイズを最小限に抑える。
【0325】
好ましくは、本発明の任意の実施形態の対向電極は、実質的に不活性の導体材料を含む。この実例において、「不活性の」という用語は、電極層から対向電極への電流の確立および通過後の質量および状態において、対向電極が実質的に変化していないことを意味する。したがって、「不活性の」対向電極は、溶液の成分に対して実質的に非反応性である。好ましくは、対向電極は、金属、Pt、金、ニッケル、銅、鉄、炭素、グラファイト、グラフェン、炭素繊維、カーボンナノチューブ、バッキーボール、導電性ポリマーPPy、PA、ポリアセチレン(Polycetylene)、ステンレス鋼からなる群から選択される材料から形成される。対向電極は、適切な支持体、例えば、ポリマーガラス、金属上に堆積された固体層または導電層で作られていてもよい。対向電極は、適切な支持体、例えば、ポリマーガラス、金属上に堆積された固体層または導電層で作られていてもよい。好ましくは、対向電極は、地金(Au、Pt、ステンレス鋼、および/または銅など)、または、AuもしくはPtメッキ基材(金属、ポリマーおよび/またはガラスなど)である。好ましくは、本発明の任意の実施形態の対向電極は、表面構造に対して固定された向きにある。
【0326】
好ましくは、本発明の任意の実施形態の対向電極は、電極アレイに取り付けられる。
【0327】
好ましくは、対向電極は、アレイの表面構造のそれぞれの間の距離の差を最小にするような向きに保持される。好ましくは、対向電極の向きは、アレイの上面よりも上方である。これらの実施形態では、対向電極から各表面構造の頂点までの距離は、実質的に等距離である。これにより、対向電極を配置することにより生じる検出ノイズを最小限に抑える。
【0328】
一実施形態を図12Aに示すが、図では、基準電極が左側に示され、3つの電極層(測定電極に接続されるようになっている)が中央に示され、また、対向電極が右側に示されている。図12Aを参照する。5つの金電極がある。外側の2つの方が、幅が広く、対向電極である。内側の3つは、測定電極であり、感知を行う。各測定電極は、流路内に実際の測定を行う先端部のアレイを有し、それは次に、平板状の金としてエポキシ層の下に続き、次に、コネクタの先端部を形成するために上がってくる。様々な電極間の間隔は、既製のプラグコネクタ内の電極と位置合わせされる。
【0329】
いくつかの実施形態では、センサシステムは、本明細書に記載されているような磁気要素位置決め手段をさらに含む。
【0330】
試料はそれ自体、既知の方法に従って調製することができる。試料の前処理は概して必要ではないが、ある特定のタンパク質または他の成分が存在すると、粘性を低減させたり、センサ表面に対する反応または粘着性を制限したりするのに望ましいある程度の前処理を行う場合がある。一定のpH、および導電性の溶液を確保にするために、通常、緩衝液が試料に加えられる。
【0331】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載されているようなセンサの製造方法を提供する。一実施形態では、方法は、
a.支持基材の上面から突き出ている少なくとも1つの表面構造を支持基材に設けるステップと、
b.少なくとも1つの表面構造の上面に電極層を堆積するステップと、
c.電極層に少なくとも1つの感知面を形成するように、電極層に不活性層を堆積するステップであって、この不活性層が分析対象の試料の成分に対して実質的に不活性である材料を含むステップと、
d.支持基材上に結合領域を形成するステップであって、支持基材上、支持基材内、または支持基材の下に磁気要素を位置決めすることにより、結合領域が磁性粒子を支持基材に付着させて、磁性粒子を引きつけることが可能な磁場を確立するようになっているステップと、
e.任意に、磁性粒子を結合領域に付着させるステップと、
f.任意に、結合剤を磁性粒子上の結合層の官能表面に付着させるステップと、
を含み、標的分析物が結合剤に結合した後に、使用時に、検出可能な応答を感知面で検出するのに十分な離隔距離だけ、感知面が結合領域から離隔されている。
【0332】
好ましくは、製造方法は、磁気要素および/または磁気要素位置決め手段をセンサに付着させるステップをさらに含む。
【0333】
センサの使用方法およびセンサの製造方法におけるさらなるステップは、上述したように、磁性粒子を結合剤に露出させることを含む。一実施形態では、結合剤は、ビオチン結合タンパク質、例えば、アビジンを含む。任意に、捕捉剤が結合剤の一部として塗布され、標的分析物と結合する結合剤を増強する。一実施形態では、捕捉剤は、アプタマーまたは抗体を含む。
【0334】
センサが試料に露出され、標的分析物が結合剤に結合したら、センサシステム内の1つまたは複数の電極に還元電位が印加される。特定の実施形態では、印加される還元電位は、約-350mVと、-450mV、または約-200mV、-300mV、もしくは-400mVとの間である。これは、感知面上の保護コーティング、および任意に、結合領域を除去する効果を有し、このようにそれを脱保護して、電気活性基材を加えた後に生成される電気活性種に対する感度を向上させることが可能になる。そのため、センサは、感知面上ではなく結合層上に保護層を含む。
【0335】
好ましくは、SAM層がセンサ表面上に堆積される。一実施形態では、SAM層は、C6以上の炭素鎖を含む長鎖分子を含む。好ましくは、SAMは、C6~C24の炭素鎖を含む長鎖分子を含み、それらは、アルカン、アルケン、アルキン、または芳香族とすることができる。好ましくは、C6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、もしくは24、またはこれらの混合物である。
【0336】
好ましくは、SAMは、C5以下の炭素鎖を含む短鎖分子を含む。好ましくは、C1、2、3、4、5またはこれらの混合物である。
【0337】
好ましくは、SAMは、長鎖分子(上記のC6~C24)、および短鎖分子(上記のC1~C5)を含む混合SAMであり、それらは、アルカン、アルケン、アルキン、または芳香族とすることができる。
【0338】
好ましくは、混合SAMは、(上記の)C6~C24の炭素鎖を含む長鎖分子、および(上記の)C5~C1の短鎖分子を含む。好ましくは、長鎖SAMは、アジド、アミン、カルボン酸塩、アルデヒド、ケトン、エステル、もしくはカルボン酸、またはこれらの混合物からなる群から選択される分子を含む。このような分子は、SAMの終端部に存在している。
【0339】
好ましくは、短鎖SAMは、アルカン、アジド、アミン、ヒドロキシル基、カルボン酸塩、もしくはカルボン酸、またはこれらの混合物からなる群から選択される分子を含む。このような分子は、SAMの終端部での内に存在している。1つの特定の実施形態では、SAMは、C6よりも炭素数が大きいカルボン酸分子を含む長鎖分子と、ヒドロキシル基分子を含む短鎖分子と、の混合物を含む。上記の実施形態では、SAM長鎖分子は、好ましくは、(前述したように)C6~C24分子から選択される。特定の実施形態では、SAM長鎖分子は、好ましくは、C6、C8、C10、C12、C14、C16、C18またはC20分子からなる群から選択される。単層として調製されたときの方が安定しているので、永続的に付着させるSAM(すなわち、電荷の印加によって除去されることを意図しないもの)には、長鎖SAM分子が好ましい。
【0340】
別の実施形態では、SAM層は、C5以下の炭素鎖を含む短鎖分子を含む。好ましくは、短鎖SAMは、アルカン、アジド、アミン、ヒドロキシル基、カルボン酸塩またはカルボン酸、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される分子を含む。それらはそれほど安定していないので、SAM層が除去されることを意図する場合には、短鎖SAMが好ましい。
【0341】
一実施形態では、SAM層は、長鎖分子と短鎖分子との混合物を含む。好ましくは、混合SAMは、C6以上の炭素鎖を含む長鎖分子、およびC5以下の炭素鎖を含む短鎖分子を含む。長鎖SAMおよび短鎖SAMは、上述した分子を含むことができる。1つの特定の実施形態では、SAMは、C6よりも炭素数が大きいカルボン酸分子を含む長鎖分子と、ヒドロキシル基分子を含む短鎖分子と、の混合物を含む。他の適切なSAM分子は、当業者に既知のものである。本発明者らは、SAM中で長鎖分子と短鎖分子との混合物を使用することが、結合層上の非特異性の結合を低減する上で、これまで認識されていない恩恵を提供することを見出した。理論に束縛されることを望まないが、長鎖状分子は表面上で大きな面積を占め、したがって、短鎖分子を塗布することにより、長鎖分子間の空隙を満たすことで、表面を保護することが可能になると考えられている。好ましくは、短鎖分子:長鎖分子の比率は、2:1~20:1の間であり、より好ましくは、約10:1である。4:1~16:1、7:1~14:1、9:1~11:1でもまた好ましい。
【0342】
好ましくは、SAMは、単層として堆積される。
【0343】
好ましくは、アレイを製造する方法は、電極層または支持基材のいずれかの上に層を、例えば、前節で説明したような層を堆積するステップを含む。好ましくは、堆積は、
a.長鎖SAMまたは(上述したような長鎖と短鎖との)混合SAMを電極層に塗布するステップと、
b.電極層に電荷を印加して、表面構造の上側部分からSAM(長鎖SAMまたは長鎖と短鎖との混合SAM)を選択的に除去するステップと、
c.短鎖SAMが上記bから得られた表面構造の上側部分に主に付着するように、短鎖SAM(例えば、上述したもの)を電極層に塗布するステップと、
d.任意に、結合剤を結合層に塗布するステップであって、結合剤が長鎖SAMまたは長鎖と短鎖との混合SAMに優先的に結合するステップと、
任意に、さらなる電荷を電極層に印加して、表面構造の上側部分から短鎖SAMを選択的に除去し、SAM分子が実質的に存在しない感知面を生み出すステップと、
を含む。
【0344】
好ましくは、結合領域と感知面との間の離隔距離が約1nmと50mmとの間であり、かつ/または、表面構造が約50nmから約2000μmだけ互いに離隔しており、かつ/または、支持基材に接合する表面構造の幅が、約20nmから約5000μmの間であり、かつ/または、各表面構造の頂点の幅が、好ましくは、約1nmから約5000ミクロンの間である。
【0345】
本明細書に記載されているように、電極層に電荷を印加するステップにより、電荷密度が表面構造の先端部(または上側部分)に集中することになる(図11を参照)。この結果、表面構造の上側部分からSAMを選択的に除去できるようになる。表面構造の、この後露出される上側部分に付着する短鎖SAMを塗布するステップにより、表面構造の先端部/上側部分で結合剤の短鎖SAMへの結合を最小限に抑えながら、結合剤を塗布することが可能になる。電極層に電荷を印加する最終ステップは、次に、上側部分から短鎖SAMを脱保護または除去し、これにより、SAMまたは結合剤が実質的に存在しない電極層表面(感知面)を残す。このプロセスは、清浄な感知面を提供し、感知面での、結合表面で結合する電気活性種の検出を最大化することが、本発明者らによって見出されている。
【0346】
図22Aに示される同様の発明の一実施形態では、センサは、支持基材8上の電極層1の上の結合層2として、SAMを使用して調製される。電極層表面(好ましくは、金)は、混合SAM結合層2、例えば、電極層の露出面全体をコーティングするSAM-OHおよびSAM-COOH(s-OH、s-COOHとして示される)を含む層でコーティングされる。(実施例4で実証するように)電流を印加する。この電流は、表面構造4Aの上側部分から混合SAMを除去し(図示せず)、次に図22Bにおいて、表面構造の露出した上側部分を、アルカンSAMのような短鎖SAM(s-OH)、および結合剤(Y)で埋め戻す。結合剤は、表面構造の基部のまわりの結合層上の混合SAM中の長鎖SAM分子に優先的に付着する。図22Cでは、短鎖(例えば、アルカン)SAMは、感知面(すなわち、表面構造の上側部分)から除去される。センサの製造後、それは、本明細書に記載されているようなアッセイに使用することができる。
【0347】
センサの較正は、通常、標的分析物(TA)のセンサ応答を一連の標的分析物標準と比較することによって実現される。この処理には、既知の濃度でTAの原液を調製し、連族稀釈を行って、試料内のTAの予想される濃度に及ぶ標準範囲を得ることを伴う。試料のTAの応答と標準とを比較することで、試料中のTAの濃度を予測することが可能になる。しかしながら、これは、試料の取り扱い、希釈誤差、および/または試料マトリックスによる干渉(例えば、ミルク、血液、海水)を含む複数の要因によって複雑になる場合がある。どの分析においても、観察された応答が正確であり、標準に対する比較が濃度を真に反映するものであることを確実にするために、熟練した技術者が、これら要因の影響を最小限に抑えるように相当な努力を注いでいる。
【0348】
本発明者らは、2つ以上の感知面が標的分析物の結合部から次第に遠くなるように位置する構成を用いることにより、自己較正センサの製造が可能であることを見出した。この自己較正は、標的分析物の結合剤への結合によってもたらされる応答の測定に関して上述した概念を用いる。
【0349】
したがって、さらなる態様では、本発明は、センサであって、
a.任意に、表面構造がその上に形成された支持基材と、
b.支持基材上、および任意に、表面構造に堆積された電極層と、
c.第1の電極層上の第1の感知面、および少なくとも第2の電極層上の第2の感知面であって、試料に接触するようになっている第1の感知面および少なくとも第2の感知面と、
d.支持基材上、および任意に、電極層上の結合領域であって、第1の感知面および第2の感知面から離隔されている結合領域と、
を備えるとともに、使用時に、結合領域で結合層に付着している結合剤が、標的分析物を含有する試料に接触するようになっているセンサを提供する。
【0350】
第2の態様の実施形態では、結合領域は、支持基材上、支持基材内、または支持基材の下の磁気要素によって確立された磁場の区域によって画定され、この磁気要素は、使用時に、磁性粒子を引きつけ、支持基材に付着させるが、この磁性粒子は、標的分析物を含有する試料に接触するようになっている結合層を含む。
【0351】
好ましくは、結合領域は、支持基材上、支持基材内または支持基材の下に少なくとも1つの磁気要素を有する。この磁気要素は、磁性粒子を引きつけ、結合領域に磁性粒子を付着させる。
【0352】
さらなる実施形態では、センサは、第3、第4、第5、またはさらなる感知面をさらに含み、それらはそれぞれ、第3、第4、第5、またはさらなる電極層であって、それぞれが互いに電気的に絶縁されている電極層上に位置しており、結合領域と、それぞれの感知面との間の離隔距離は、電極層の数が増加するにつれて次第に大きくなる。後続の電極層および関連する感知面は、結合領域から次第に遠く離れるように位置決めされる。流動環境で配備する場合、電極は、試料の流れの方向によって実質的に画定された軸に沿って、センサ上に位置決めされる。結合領域で標的分析物と結合する結合剤を含む磁性粒子の使用は、本発明のこの態様、および本発明のすべての関連する実施形態の範囲内で特に想定される。
【0353】
任意の数の感知面を別々の電極層に接続することができる。標的分析物が結合剤に結合した後に比較可能な応答測定値を検出するために、センサは、少なくとも第1の感知面および第2の感知面において、および好ましくは、すべての感知面において検出可能な応答を検出するようになっている。別々の電極層に付着した各感知面または感知基の距離が増加すると、(試料中の標的分析物のもとの濃度がわかっているという前提で)応答を比較し、較正曲線を決定することが可能になる。
【0354】
感知面は、通常、その他の電極層から独立して応答測定値をそこから測定することが可能な、単一の別々の電極層に電気的に接続された感知基の一部となることが理解される。
【0355】
電気的に絶縁された電極層上に2つ以上の感知面を設けることによって、同じ試料に関して、検出可能な応答の複数の測定を同時に行うことができる。このことは、実験の再現を行うだけでなく、センサ応答の自己較正もまた可能にする手段を提供する。図7および図8は、複数の電極検出の例を図示する。図7.1は、結合剤を付着した結合層上を通過しているTA(白い円)を含有する試料を示す。TAは、結合部で結合剤に選択的に結合する。図7.2は、センサ上を通過している既知の濃度の、リガンド標識標的分析物-TA-HRP(黒い円)を含有する標準液を示す。標識標的分析物は、利用可能な結合剤に結合する。
【0356】
図8は、活性化種(この実施形態ではTMBプラスH)の存在下での、結合層上、次に感知面上を通過するセンサへの電気活性基材の導入を示す。電気活性基材は、低TA充填下(図8A)および高TA充填下(図8B)の両方でリガンド(HRP)によって酸化され、次に、連続的な電極の表面上で還元される。電極の表面上での還元は、(上述したように)還元電位を印加することによって実現される。感知面に接触する(すなわち、酸化または還元される)際の電気活性種の検出可能な応答のサイズは、TMBの還元を示す矢印のサイズによって表示されている。類似した配置が図10Aおよび図10Bに示されている。ただし、これらの実施形態では、先端部のアレイ(結合層/不活性層の上方に突き出ている感知面を有する表面構造)を使用して、複数の電極層センサの感度の向上を実現する。同様に、図10Bは、電気活性種が生成される結合層/結合領域としての微小電極アレイの使用を示す。これは、図10Bに示されるセンサアレイが、適切な還元電位、例えば、約-300mV、または約-400mV未満で電極アレイを保持することによりリガンド触媒(HRP)を生成することができるため、再生種、例えば、Hを加えてこれを再生成する必要がなくなるという点を除き、図8で説明したものと同様である。したがって、さらなる実施形態では、本発明は、本明細書に記載されているように、試料中の標的分析物の結合剤への結合を検出し、感知面で還元電位を印加することによってリガンド触媒を再生成することで、再生種に対する必要を最小限にするか、または必要をまったくなくすようにする方法を提供する。
【0357】
図9は、低いTA濃度(試料濃度A)および高いTA濃度(試料濃度B)において複数の電極応答から得られると予想されるデータの型を示す。それぞれ、標識標的分析物が溶液中の結合剤に結合した後に生成された電気活性種(この場合にはTMBox)の量に対応する点で衰微している。これは、結合したリガンド標識TA(この場合はHRP)の濃度に等しく、また、試料中の非標識TAの量に反比例する。このようにして、標準曲線を作成する必要なしに、標的分析物の濃度が確定される。
【0358】
本発明者らは、電気活性種生成後の感知面における信号減衰を予測するためのコンピュータモデルを構築した。このモデルは、結合領域と感知面との間の距離、流速、濃度、および温度を含む変数を考慮に入れている。
【0359】
図14は、高濃度(14A)および低濃度(14B)に対する、「ジェネレータ」(結合領域)で酸化され、「コレクタ」(電極層上の感知面)で還元される電気活性種TMBの生成に関するモデル化データを示す。図14Cは、出力電流が濃度1および濃度2で、どのように観察されると予想されるかを示す。
【0360】
一実施形態では、第1の離隔距離は、約1nmと5mmとの間であり、第2の離隔距離は、約1nmと約5mmとの間である。特定の実施形態では、第1の離隔距離、および/または第2の離隔距離(もしくは感知面間距離)は、約30nmと1mmとの間、約100nmと500μmとの間、約1μmと200μmとの間、または約20μmと100μmとの間である。離隔距離は、約30nmと約5mmとの間、約100nmと約5000μmとの間、約1μmと約1000μmとの間、または、約20μmと約100μmとの間、約30nmと約5000μm、約100nmと約5mm、約1μmと約100μm、約20μmと約1000μm、約20μmと約5000μm、1μmと約5mmとすることができる。
【0361】
一実施形態では、第1の感知面と第2の感知面との間の、第1の感知面間距離は、約30nmと1mmとの間である。(それぞれが別々の電極層に接続された)隣接した感知面同士の、後続する感知面間距離は、好ましくは、約30nmと1mmとの間である。
【0362】
センサは、任意の数の電極表面を含むことができる。特定の実施形態では、センサは、2つ以上の、好ましくは、2と10との間(例えば、2 3 4 5 6 7 8 9 10)の、それぞれが測定電極に接続された別々の電極層を含む。好ましくは、センサは、5~8個の電極層を含む。好ましくは、3~8個、4~9個、5~7個、2~8個である。
【0363】
一実施形態では、電極層のうちのいずれかは、結合領域、または絶縁材料または空隙を有する他の電極層から電気的に絶縁されている。絶縁材料は、SAMまたはフォトレジストなどである。
【0364】
非自己較正センサに関して本明細書に記載の特徴、変形および実施形態はすべて、自己較正センサの特徴と組み合わせて適用可能であり、自己較正センサの特徴と組み合わせて読まれるように意図されている。
【0365】
したがって、さらなる態様では、本発明は、試料中の標的分析物の濃度を決定する方法であって、
a.センサであって、
●任意に、表面構造がその上に形成された支持基材と、
●支持基材上、および任意に、表面構造に堆積された電極層と、
●第1の電極層上の第1の感知面、および少なくとも第2の電極層上の第2の感知面であって、試料に接触するようになっている第1の感知面、および少なくとも第2の感知面と、
●支持基材上、および任意に、電極層上の結合領域であって、第1の感知面および第2の感知面から離隔された、磁性粒子上の結合層に付着している少なくとも1つの結合剤を有する結合領域と、
を含むセンサを設けるステップと、
b.結合領域で結合剤を、標的分析物を含有する試料と接触させるステップと、
c.2つ以上の測定電極であって、それぞれが電極層、および少なくとも1つの感知面に電気的に接続されている測定電極であり、互いに電気的に絶縁されている測定電極における変化を測定するステップと、
d.結合部からの離隔距離の関数として検出可能な応答の変化を測定するステップと、
e.任意に、応答の変化を、対照試料からの既知の濃度の標的分析物からの応答の変化と比較するステップと、
f.試料中の標的分析物の濃度を決定するステップと、
を含むとともに、結合領域における標的分析物の結合剤への結合が、感知面で検出可能な応答を媒介する電気活性種を生じさせる方法を提供する。
【0366】
本発明のこの自己較正態様は、いくつかの要因を調節することによってシステムをカスタマイズすることができるため、かなりの汎用性を有する。いくつかの要因の調節には以下のものが含まれる。
1.結合部で生成される電気活性種、例えば、TMBoxの量。それは、
a.結合領域の表面積、ならびに
b.結合領域中の結合剤の数および利用可能性
によって定められる。
2.微小流体流路内の流速。本発明の特定の実施形態では、流れは、無流量であるか、または一定流量である。一実施形態では、流れはパルス状または傾斜状である。
3.微小流体試料取り扱いを通じて利用可能な試料の取り扱い方法論、例えば、流体力学的集束および遠心集束
4.レドックスプロセスを駆動する電圧制御
5.結合領域と感知面との間の距離
【0367】
このアプローチの主な利点の1つは、実際の試料上で較正が行われるため、試料の取り扱い、およびマトリックス効果に関連するエラーが排除されるということである。さらなる一実施形態では、保護コーティングが下流の感知面に塗布され、電気活性種の検出前にのみ除去される。
【0368】
図7に示される例は、捕捉剤へのアクセスを求めて効果的に競合するTAおよびTA-HRPに基づく競合アッセイの例である。しかしながら、システムは、競合アッセイに限定されるのではなく、他の型のELISAアッセイ、限定するものではないが例えば、以下のアッセイに適用可能である。
●結合剤が結合領域に結合され、TAが結合剤に結合し、そしてリガンド(例えば、HRP)を有する第2の結合剤がTAに結合されるサンドイッチ法アッセイ。このようにして、TAが2つの結合剤の間に「サンドイッチ」される。もしくは、
●結合剤が結合領域に結合され、そしてTA-リガンドが結合剤の上に結合される置換法アッセイ。TAを含有する試料に露出することにより、TAがTA-HRPを置換する結果となる。
【0369】
唯一の要件は、感知面によって検出された電気活性種の濃度が、標的分析物の濃度に正比例して、または反比例して対応することである。
【0370】
図25は、電気化学的検出に対するELISA検出において酸化TMBの検出に使用した場合の、本発明の方法の精度および感度を図示する。結果が互いに密接に反映し合うことにより、本発明のアッセイを有効にしていることが分かる。しかしながら、本発明の電気化学的検出技術は、典型的な光学的検出技術を用いた光学的検出限界ではなく、ピコアンペアまで電流を測定することができるので、少なくとも2桁は感度が高い。
【0371】
応答曲線に影響する追加の要因には、センサ応答を引き出すために用いられる方法もまた含まれる場合がある。これは、用いられるセンサの型と、応答がセンサとTAとの間の相互作用を介して直接得られるか、または二次プロセス、例えば、後続の電極での二次/三次反応を介して得られるかどうか、とによって決まる。
【0372】
自己較正センサの特徴は、本発明の他のセンサに関連して上述した通りである。例えば、図10は、三角形状断面および頂点を有する表面構造を示すが、これらの構造は、他の態様に関連して上述したようなものであってもよい。
【0373】
本発明は、試料中の標的分析物の、結合剤への結合を検出する方法であって、
a.センサであって、
i.支持基材と、
ii.支持基材の上面から突き出ている少なくとも1つの表面構造であって、電極層を含む表面構造と、
iii.電極層上の感知面であって、試料に接触するようになっている感知面と、
iv.支持基材上の結合領域であって、試料に接触するようにもなっているとともに、感知面から離隔され、かつ、磁場を含む結合領域と、
を備えるセンサを設けるステップと、
b.磁性粒子を結合領域に付着させるステップであって、この磁性粒子が、磁性粒子上の結合層に付着している少なくとも1つの結合剤を含むステップと、
c.結合剤および感知面を、標的分析物を含有する試料と接触させるステップと、
d.標的分析物を結合剤に結合させて、感知面で検出可能な応答を生じさせるステップと、
e.少なくとも1つの感知面に電気的に接続された測定電極における変化を測定するステップと、
を含み、標的分析物の結合剤への結合が、感知面で検出可能な応答を媒介し、少なくとも1つの感知面に電気的に接続された測定電極における変化検出可能な応答を測定する電気活性種を生じさせ、
結合領域と感知面との間の離隔距離が、約1nmと50mmとの間であり、表面構造が、頂点から頂点で約50nm~約2000μmだけ互いに離隔しており、かつ/または、支持基材に接合する表面構造の幅が、約20nmから約5000μmの間であり、かつ/または、各表面構造の頂点の幅が、好ましくは、約1nmから約5000ミクロンの間である、方法を含むこともまた分かる。
【0374】
本発明は、試料中の標的分析物の濃度を決定する方法であって、
a.センサであって、
i.結合領域を含む支持基材と、
ii.支持基材の上面から突き出ている少なくとも1つの表面構造であって、電極層を含む表面構造と、
iii.電極層上の感知面であって、試料に接触するようになっている感知面と、
iv.磁気要素と、
v.支持基材上の結合領域であって、結合層を含むとともに、試料に接触するようにもなっており、かつ、感知面から離隔され、磁気要素によって生成された磁場を含む結合領域と、
を備えるセンサを設けるステップと、
b.少なくとも1つの結合剤を結合領域で結合層に付着させるステップと、
c.結合剤、および少なくとも1つの感知面を含むセンサを、標的分析物を含有する試料と接触させるステップと、
d.2つ以上の測定電極であって、それぞれが電極層、および少なくとも1つの感知面に電気的に接続されている測定電極であり、互いに電気的に絶縁されている測定電極における変化を測定するステップと、
e.結合剤の標的分析物への結合が生じる結合部からの離隔距離の関数として、検出可能な応答の変化を測定するステップと、
f.応答の変化を、対照試料からの既知の濃度の標的分析物からの応答の変化と比較するステップと、
g.試料中の標的分析物の濃度を決定するステップと、
を含むとともに、標的分析物の結合剤への結合が、感知面で検出可能な応答を媒介する電気活性種を生じさせ、
結合領域と感知面との間の離隔距離が、約1nmと50mmとの間であり、表面構造が、頂点から頂点で約50nm~約2000μmだけ互いに離隔しており、かつ/または、支持基材に接合する表面構造の幅が、約20nmから約5000μmの間であり、かつ/または、各表面構造の頂点の幅が、好ましくは、約1nmから約5000ミクロンの間である、方法を含むこともまた分かる。
【0375】
本発明は、センサの製造方法であって、
a.支持基材の上面から突き出ている少なくとも1つの表面構造を支持基材に設けるステップと、
b.少なくとも1つの表面構造の上面に電極層を堆積するステップと、
c.電極層の1つまたは複数の部分が、電極層に少なくとも1つの感知面を形成するように露出したままであるように、電極層に不活性層を堆積するステップであって、この不活性層が分析対象の試料の成分に対して実質的に不活性である材料を含むステップと、
d.支持基材上に結合領域を形成するステップであって、結合領域が、少なくとも1つの結合剤を静電的、共有結合的、または磁気的に付着させるようになっているステップと、
を含み、標的分析物が結合剤に結合した後に、使用時に、検出可能な応答を感知面で検出するのに十分な離隔距離だけ、感知面が結合領域から離隔されている方法を含むこともまた分かる。
【0376】
表面構造は、頂点から頂点で約50nm~約2000μmだけ互いに離隔しており、かつ/または、支持基材に接合する表面構造の幅は、約20nmから約5000μmの間であり、かつ/または、各表面構造の頂点の幅は、好ましくは、約1nmから約5000ミクロンの間であることが好適である。少なくとも1つの表面構造は、支持基材と一体化していることが好適である。保護コーティングは、電極層に塗布されることが好適である。表面構造の上側部分を、結合層または不活性層が存在しないまま残し、支持基材または表面構造上に結合層または不活性層を堆積させることで、表面構造の上側部分の上の電極層の表面が感知面として露出されるようにすることにより、感知面を形成することが好適である。結合層または不活性層は、電極層に隣接して堆積されることが好適である。不活性層は、導電性であり、不活性層に電位を印加することが可能な少なくとも1つの電極に接続されていることが好適である。電極層または支持基材のいずれかの上に結合層を堆積するステップが、SAM結合層を塗布するステップを含むことが好適である。
【0377】
以上および以下において引用している出願、特許、および出版物があれば、すべてのその開示が参照によって本明細書に援用される。
【0378】
本明細書におけるいかなる先行技術への言及も、その先行技術が世界中のあらゆる国の努力分野において周知の一般知識の一部を形成することの承認またはいずれかの形態の示唆ではなく、またそのように解釈されるべきではない。
【0379】
上記の説明において、既知の等価物を有する整数または構成要素に対して言及がなされている場合、それらの整数は、個別に述べられているかのように、本明細書に組み込まれる。
【0380】
本明細書に記載の現在の好ましい実施形態に対する様々な変更および修正は、当業者に明白であろうことに留意されたい。このような変更および修正は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、かつ、その付随する利点を減じることなしに、行うことができる。したがって、このような変更および修正が本発明の範囲内に含まれることが意図されている。
【実施例
【0381】
すべての実施例に用いる材料
PBSパレット、KFeCN、KFeCN、NHS、EDC、TMBおよびチオールは、Sigma Aldrich社から購入し、受け取ったままの状態で使用した。ホースラディッシュペルオキシダーゼ-P4(HRP-P4)は、2012年のMonerrisらの方法論を用いて合成した。P4抗体は、BioRad社から購入した(Mouse Anti Progesterone 7720-1430)。
【0382】
実施例1-プロゲステロン抗体のSU8上への吸収
目的
HRP-P4およびTMBを用いた光学アッセイフォーマットを用いて、結合剤プロゲステロン抗体の、結合層SU8上への結合を実証する。
【0383】
方法
結合層SU8を基材の材料(スライドガラス)上にスピンコーティング(4000rpm)して、厚さおよそ0.2~0.4μmの層を得た。表面をエタノールで洗浄し、窒素で乾燥させた。試験区域は、直径6mmのPMMAウェルを用いて画定した。P4抗体(PBS中20μg/mlを75μl)をウェルに加え、25℃で1時間インキュベートした。余分な抗体は、洗浄緩衝液(トゥイーン(tween)PBS)で表面をすすぎ落とす(3×5分)ことにより除去した。ブロッキング剤としてエタノールアミン溶液(pH8.5のトリス緩衝液中1M溶液から100μl)とともに、表面を1時間インキュベートして非特異性の結合をブロッキングした。アッセイは、75μlのHRP-P4(200ng/ml)を用いて、1時間インキュベートして行った。洗浄緩衝液(6×2ml)で5分間洗浄した後、表面を100μlのTMB溶液(0.1mg/ml、0.006%H)とともに、20分間インキュベートした。TMB溶液を96ウェルのプレートに移し、20μlのHSO(2M)を加えた。吸光測定は、450nmで行った。
【0384】
結果
結果を図15に示し、抗体が金表面およびSU8表面の両方に結合していることを示している。しかしながら、SU8の方が高い結合親和性を示した。非特異性の結合を調べるために、表面をHRPまたは、エタノールアミンおよびHRPに直接さらした。HRP-P4は表面に強力に結合する一方で、結合はエタノールアミンによって効果的にブロッキングされた。
【0385】
以下の実施例では、レドックスプロセスは通常、定電圧を用いて反応を駆動する。しかしながら、これらは、当業者に知られているように、サイクリックボルタンメトリーまたは定電流を用いて駆動することもまた可能である。また、以下の実施例は通常、カソードで起こるが、当業者であれば理解するように、それらはアノードでの反応にもまた適用可能であろう。
【0386】
結論
SU8コーティングは、表面改質を必要とせずに抗体の直接結合のために望まれる特性を有することを示している。
【0387】
実施例2-プロゲステロンの光学的検出
目的:
Elisaフォーマットを用いてP4を検出するためにSU8コーティングした表面の使用を実証する。
【0388】
方法
SU8コーティングしたスライドガラス表面をP4抗体でコーティングし、実施例1で規定したプロトコルを用いて、エタノールアミンで埋め戻した。HRP-P4インキュベーションをP4標準溶液(0、5、10、15、20、25、50および100ng/ml)の存在下で、1時間実施した。次に、表面を洗浄緩衝液で5分間ずつ6回洗浄した。次に、TMBおよびHSO4を加え、分光光度測定を実施例1におけるように行った。
【0389】
結果
結果を図16に示す。
【0390】
結論
結果は、SU8に非共有結合したP4抗体を用いると、P4アッセイを実施し得ることを示した。
【0391】
実施例3-センサ表面が、結合領域から突き出ている一連の先端部である電気化学的プラットフォームを用いたプロゲステロンの検出。
目的
実施例1および実施例2において最適化された条件を用いて、感知面(金)がSU8結合層上の結合領域内にある電気化学的測定を用いてP4アッセイを行う。
【0392】
方法
実施例1で用いた方法論を、SU8結合層から突き出ている20μmの先端部のアレイ(図12に示されるようなもの)に適用した。抗体を3μlの液滴として測定電極でのみ塗布し、結合剤が付着した結合領域を作り出した。電気化学的測定を行う前に、センサ表面全体を洗浄緩衝液で5分間、6回洗浄した。電流滴定測定は、TMB溶液(0.1mg/ml、0.006%H)中で、-200mV(Ag/AgClに対して)で3分間行った。
【0393】
結果
図17は、感知面が結合領域(SU8)内にある電気化学的アッセイによるP4標準曲線を示す。
【0394】
結論
結果は、感知面が結合領域内にある場合であれば、電気化学的P4アッセイを実施し得ることを示した。
【0395】
実施例4-自己組織化単分子膜(SAM)保護コーティングの除去
目的
目的は、電気化学的に除去することが可能な、感知面に対する保護コーティングとして作用する金の上のSAMの可逆吸着を用いて、電気化学的測定の前に清浄な表面を提供することであった。
【0396】
方法
金電極をOプラズマ(2分)で反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)を用いてクリーニングし、直ちにチオール溶液(0.1Mエタノール溶液)に60分間浸漬した。表面をエタノール、次に脱イオン水ですすいだ。SAMは、20mVs-1で、(Ag/AgClに対して)0.1Vから-1.1Vまでサイクルさせるか、または電圧を-1V(Ag/AgClに対して)で少なくとも20分間保持するかのいずれかによって、PBS中でカソード的に脱着した。金の上のSAMの形成およびその電気化学的脱着は、20mV/sで、(Ag/AgClに対して)、0.6から-0.2Vまで走査することによって、PBS中のフェリシアン化物/フェロシアン化物(0.5M)溶液中で、サイクルさせることにより決定した。
【0397】
結果
図18は、コーティングされていない金電極(a、黒い実線)、SAMをコーティングした金電極(b、間隔の大きい破線)、およびクリーニングされた金電極(c、点線)に対するサイクリックボルタンメトリー走査を示す。
【0398】
結論
結果は、20分後に平面電極からSAMが効果的に除去されたことを示した。走査(c)が元々の走査(a)と同一でない理由は、極微量のSAMが表面上に残存していることが原因であると考えられる。しかしながら、清浄度のレベルは、測定およびOの還元からHを生成するのに十分である。
【0399】
実施例5-結合領域から離隔された平面電極上のP4の電気化学的検出
目的
感知面が結合領域から離隔しており、かつ、その場でのH形成の効果を示しているフォーマットを用いた、プロゲステロンの電気化学的検出の使用を例証する。
【0400】
方法
10μm離隔して隣接する金電極(WAおよびWB)をOプラズマ(3x)でRIEを用いてクリーニングし、チオール溶液(0.1Mエタノール溶液)に60分間浸漬した。電極をエタノール、次に脱イオン水ですすいだ。SAMは、実施例4で説明したように、PBS中で電極(WA)の1つから選択的に除去した。P4抗体(結合剤)は、実施例1で説明したように、クリーニングした電極(WA)(結合層)上に固定化し、その後、HRP-P4(リガンド標識標的分析物)にさらした。次に、実施例4で説明したように、SAMを第2の電極(WB)(感知面)から除去した。
【0401】
パートA:その場でのH生成の効果
がない状態でTMB(還元された)をセンサに加え、(Ag/AgClに対して)-200mVで、次に-400mVで電極をそれぞれ保持することにより、酸化したTMBからのレドックス応答を測定した。
【0402】
パートB:P4アッセイ
パートAで調製した電極をP4(5ng/mL)とともに30分間インキュベートして、抗体に結合したHRP-P4と交換させた。TMB(還元された)を加え、酸化したTMBからの電気化学的応答を(Ag/AgClに対して)-400mVで測定した。このプロセスを30ng/mLおよび100ng/mLのP4溶液を用いて順次繰り返した。
【0403】
結果
パートA
図19は、還元されたTMBの存在下で、-200mVまたは-400mVのいずれかで保持されたWAおよびWBからの電気化学的応答を示す。-200mVでは、両方の作用電極(点線のWAおよび一点短鎖線のWB)は、HRP-P4を再生成するためのHを加えずにTMBを還元させたことに起因して、電流応答を示さなかった。-400mVでは、WA(破線)は、表面が抗体の存在によってブロッキングされているので、TMBの酸化に対して低電流応答を示し、電気化学センサで現在使用されているもの、すなわち、捕捉剤が電極の上に直接配置されているものと相関する。-400mVでは、WB(実線)は、擬似定常状態および電流の増強をもたらす、HRP-P4を再活性化するためのHの生成およびTMBのレドックスサイクリングの両方に起因する有意な電流応答を示す。
【0404】
パートB
図20は、-400mVで、外部からHを追加せずに、表面固定抗体に結合したHRP-P4を、既知の濃度のP4と交換することによるTMB還元応答を示す。図21は、60秒測定後の電流応答を示す。
【0405】
結論
結果は、感知面から結合領域を離隔させると、電流が有意に増強され、感度および信号対ノイズ比が向上することを示した。結果は、試料中のP4を検出するためのセンサの使用もまた例証した。
【0406】
実施例6-競合アッセイフォーマットでの磁性粒子の使用
目的:微小流体における競合アッセイフォーマットでの磁気ビーズの使用を実証する
磁気ビーズ結合P4一次抗体、P4標識HRP、およびP4濃度が未知であるミルク試料を含有する混合物200μlをELISAウェル中で混合した。図23に図示されるように、磁気要素が感知面のすぐ下の箇所にあるセンサアレイ全体にわたって、この溶液を、シリンジポンプを介して0.5μl/分で汲み出した。結合ビーズを緩衝液で洗浄し、次に、TMB/H2O2の溶液にさらした。測定された電流は、結合HRPの量に比例し、ゆえに、試料中の未知の濃度のP4に間接的に比例する。
【0407】
実施例7-競合アッセイ流体フォーマットでの磁気ビーズの使用
目的:微小流体における競合アッセイフォーマットでの磁気ビーズの使用を実証する
競合アッセイの流体工学に基づいた分析を図28Aに図示する。P4一次抗体と結合した100μlの磁気ビーズ、およびリン酸緩衝液中のP4標識HRP(100μl)を含有する溶液を、シリンジポンプを用いて(0.5μl/分で)、微小流体のミキサ領域を用いて緩衝液中でP4濃度が異なる試料(試料)と混合した。次に、混合溶液を磁気捕捉区域全体にわたって通過させて、流体の壁にぶつかるビーズをトラップした。次に、トラップした磁気ビーズを緩衝液で洗浄した。TMB/H2O2溶液をビーズ上に通過させ、次に、インライン電磁弁を変化させることによってこれをセンサ区域上に向けた。電気化学的測定は、ステンレス鋼電極に対して-200mVで2端子測定を用いて行った。
実施例6におけるように、測定された電流は、磁気捕捉区域からセンサに溶液を流すのに要した時間による応答の遅れを除いて、結合HRPの量に比例した。
【0408】
実施例8-置換アッセイフォーマットでの磁性粒子の使用
目的:微小流体における置換アッセイフォーマットでの磁気ビーズの使用を実証する
このプロセスを図28Bに図示する。P4一次抗体と結合した100μlの磁気ビーズ、およびリン酸緩衝液中でP4標識HRP(磁気ビーズHRP標識標的)を含有する溶液を、シリンジポンプを用いて(0.5μl/分で)、微小流体のミキサ領域を用いて緩衝液中のP4濃度が異なる試料(試料)と混合した。次に、混合溶液を磁気捕捉区域全体にわたって通過させて、流体の壁にぶつかるビーズをトラップした。次に、トラップした磁気ビーズを緩衝液で洗浄した。TMB/H2O2溶液をビーズ上に通過させ、次に、インライン電磁弁を変化させることによってこれをセンサ区域上に向けた。電気化学的測定は、ステンレス鋼電極に対して-200mVで2端子測定を用いて行った。ここでもまた、測定された電流は、磁気捕捉区域からセンサに溶液を流すのに要した時間による応答の遅れを除いて、結合HRPの量に比例した。
【0409】
実施例9-磁気ビーズの段階的な「付着」、除去および置換
目的
プロゲステロンの検出のための磁気ビーズの段階的な付着、除去、および置換を実証する
【0410】
方法
図28に図示したシステムを通して混合し、磁気捕捉区域に結合させたプロテインG:P4抗体:P4-HRP複合体で構成された磁気ビーズ。次に、ビーズを緩衝液で洗浄し、次に、センサ上に向けられたTMB/H2O2の溶液にさらし、ステンレス鋼に対して-200mVで2端子測定を用いて測定した。次に、磁石を除去して解放し、ビーズを緩衝液によって洗浄して、廃棄した。新たなビーズのセットを用いてこのプロセスを繰り返した。
【0411】
結果
図29は、結合され、次に、システム内で放出されたビーズの連続的なセット(1および2)に対するセンサの2端子の電流滴定応答を示す。結果は、蠕動ポンプのパルシングを示す。領域Aは、HRP結合ビーズ上のTMBの1分間のインキュベーション時間に対応し、領域Bは、インキュベーション後のTMBに対するセンサの応答を示す。最適応答は、領域Bの下でのピークの積分によって決定され、これは、>97%の再現性を示した。
【0412】
結論
結果は、ビーズの結合、放出、および再結合の成功、ならびにビーズの連続したアリコートが非常に類似した応答を与えたことを示した。
【0413】
実施例10-磁気クリーニング後の感知
目的
アプローチの再構成可能な性質を実証する
方法
この方法は、以下のプロセスに従う。
1.図24に示されるように、第1の磁石上でビーズを捕捉し、
2.緩衝液でビーズをクリーニングし、
3.ビーズを放出し、
4.図23に示されるように、センサのすぐ下に配置された第2の磁石上でビーズを捕捉する。
【0414】
プロテインG:P4抗体:P4-HRP複合体で構成された磁気ビーズを図28に図示したシステムを通して混合し、磁気捕捉区域に結合させた。ビーズを緩衝液で洗浄して、廃棄し、次に、センサの下に配置された第2の磁石上で捕捉されるように放出した。TMB/H2O2をセンサ上に向け、ステンレス鋼に対して-200mVで2端子測定を用いて応答を測定した。第2の磁石を除去し、緩衝液によってビーズを洗浄して廃棄した。
【0415】
結果
応答は、先に報告されたものと類似しており、図30に示されるように、光学的応答に対する優れた相関関係を示した。
【0416】
結論
結果は、結合、洗浄、放出、再捕捉、およびTMB応答(TBM responses)の測定の成功を示した。
【0417】
参考文献
Blagoi,Keller,Johansson,Boisen,Dufva(2008).Functionalization of SU-8 Photoresist Surfaces with IgG Proteins.Applied Surface Science 255(2008)2896-2902.
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Monerris et al.(2012).Integrated electrochemical immunosensor with gold nanoparticles for the determination of progesterone.Sensors and Actuators B:Chemical 166-167:586-592.
【0418】
本発明は、以下を含むとみなすことができ、特許請求することができる。
1.センサであって、
a.支持基材と、
b.支持基材の上面から突き出ている少なくとも1つの表面構造であって、電極層を含む表面構造と、
c.電極層上の感知面であって、試料に接触するようになっている感知面と、
d.支持基材上の結合領域であって、感知面から離隔された結合領域と、
を備えるとともに、使用時に、結合領域で結合層に付着している結合剤が、標的分析物を含有する試料に接触しているセンサ。
2.請求項1に記載のセンサであって、結合領域の結合層が、磁場によって磁性粒子が支持基材に付着している磁性粒子上の官能表面であるセンサ。
3.センサであって、
a.任意に、表面構造がその上に形成された支持基材と、
b.支持基材上、および任意に、表面構造に堆積された電極層と、
c.第1の電極層上の第1の感知面、および少なくとも第2の電極層上の第2の感知面であって、試料に接触するようになっている第1の感知面および少なくとも第2の感知面と、
d.支持基材上、および任意に、電極層上の結合領域であって、第1の感知面および第2の感知面から離隔されている結合領域と、
を備えるとともに、使用時に、結合領域で結合層に付着している結合剤が、標的分析物を含有する試料に接触しているセンサ。
4.請求項3に記載のセンサであって、結合層が、感知面から離隔され、かつ、第1の電極層上の第1の感知面に隣接した結合領域を含むとともに、
この第1の感知面が、第2の電極層上の第2の感知面に隣接しており、
第1の感知面の、結合領域からの第1の離隔距離が、第2の感知面の、結合領域からの第2の離隔距離よりも小さく、
第1の電極層および第2の電極層が、互いに電気的に絶縁されているセンサ。
5.請求項1~4いずれか一項に記載のセンサであって、電極層が表面構造の上面に堆積されているセンサ。
6.請求項1~5のいずれか一項に記載のセンサであって、結合領域が、1つまたは複数の磁性粒子を付着させるようになっている支持基材の領域を含むセンサ。
7.請求項1~6のいずれか一項に記載のセンサであって、感知面が、支持基材から突き出ている表面構造上の電極層の上面上にあるセンサ。
8.請求項1~7のいずれか一項に記載のセンサであって、表面構造が、表面構造の頂部に頂点を含むセンサ。
9.請求項1~8のいずれか一項に記載のセンサであって、結合層が、支持基材に付着した1つまたは複数の磁性粒子上の官能表面を含むセンサ。
10.請求項1~9のいずれか一項に記載のセンサであって、結合領域が、支持基材上、支持基材内、または支持基材の下に少なくとも1つの磁気要素を含むセンサ。
11.請求項1~10のいずれか一項に記載のセンサであって、結合領域が、支持基材に磁性粒子を引きつけ、付着させるようになっている磁場を含むセンサ。
12.請求項1~11のいずれか一項に記載のセンサであって、電極層を介して1つまたは複数の感知面または感知基に電気的に接続された測定電極を含むセンサ。
13.請求項1~12のいずれか一項に記載のセンサであって、結合層が磁性粒子上に官能表面を含むとともに、結合層が結合剤を付着させるようになっているセンサ。
14.請求項1~13のいずれか一項に記載のセンサであって、感知面および結合領域が、微小流体システム内に収容されているセンサ。
15.請求項1~14のいずれか一項に記載のセンサであって、感知面および結合領域が、微小流体システムの別個の区画内にあるセンサ。
16.請求項1~15のいずれか一項に記載のセンサであって、結合層または結合領域が、第1の電極層上の第1の感知面に隣接しており、
この第1の感知面が、第2の電極層上の第2の感知面に隣接しており、
第1の感知面の、結合層または結合領域からの第1の離隔距離は、第2の感知面の、結合層または結合領域からの第2の離隔距離よりも小さく、
第1の電極層および第2の電極層は、互いに電気的に絶縁されているセンサ。
17.センサの製造方法であって、
a.支持基材の上面から突き出ている少なくとも1つの表面構造を支持基材に設けるステップと、
b.少なくとも1つの表面構造の上面に電極層を堆積するステップと、
c.電極層の1つまたは複数の部分が、電極層に少なくとも1つの感知面を形成するように露出したままであるように、電極層に不活性層を堆積するステップであって、この不活性層が分析対象の試料の成分に対して実質的に不活性である材料を含むステップと、
d.支持基材上に結合領域を形成するステップであって、支持基材上、支持基材内、または支持基材の下の磁気要素または磁気要素位置決め手段を位置決めすることにより、結合領域が磁性粒子を支持基材に付着させて、磁性粒子を引きつけることが可能な磁場の確立を容易にするようになっているステップと、
e.任意に、磁性粒子を結合領域に付着させるステップと、
f.任意に、結合剤を磁性粒子上の結合層の官能表面に付着させるステップと、
を含むとともに、標的分析物が結合剤に結合した後に、使用時に、検出可能な応答を感知面で検出するのに十分な離隔距離だけ、感知面が結合領域から離隔されている方法。
18.請求項17に記載の方法であって、少なくとも1つの表面構造が支持基材と一体化している方法。
19.請求項17または18に記載の方法であって、磁気要素および/または磁気要素位置決め手段を、センサに付着させるステップをさらに含む製造方法。
20.請求項17~19のいずれか一項に記載の方法であって、保護コーティングが電極層に塗布されている方法。
21.請求項17~20のいずれか一項に記載の方法であって、表面構造の上側部分を、結合層または不活性層が存在しないまま残し、支持基材または表面構造上に結合層または不活性層を堆積させることで、表面構造の上側部分の上の電極層の表面が感知面として露出されるようにすることにより、感知面が形成される方法。
22.請求項17~21のいずれか一項に記載の方法であって、表面構造が、表面構造の頂部に頂点を有して形成される方法。
23.請求項17~22のいずれか一項に記載の方法であって、結合層または不活性層が、電極層に隣接して堆積されている方法。
24.請求項17~23のいずれか一項に記載の方法であって、不活性層が、導電性であり、不活性層に電位を印加することが可能な少なくとも1つの電極に接続されている方法。
25.請求項17~24のいずれか一項に記載の方法であって、感知面が、支持基材および表面構造上に不活性層を堆積することによって形成され、感知面が、表面構造上の電極層に形成されるようになっている方法。
26.請求項17~25のいずれか一項に記載の方法であって、電極層または支持基材のいずれかの上に結合層を堆積するステップが、SAM結合層を塗布するステップを含む方法。
27.請求項17~26のいずれか一項に記載の方法であって、感知面および結合領域が、微小流体システム内に形成されている方法。
28.請求項17~27のいずれか一項に記載の方法であって、感知面および結合領域が、微小流体システムの別個の区画内に形成されている方法。
29.試料中の標的分析物の、結合剤への結合を検出する方法であって、
a.請求項1~16のいずれか一項に定義されているセンサ、または、
i.支持基材と、
ii.支持基材の上面から突き出ている少なくとも1つの表面構造であって、電極層を含む表面構造と、
iii.電極層上の感知面であって、試料と接触するようになっている感知面と、
iv.支持基材上の結合領域であって、感知面から離隔され、かつ、磁場を含む結合領域と、
を備えるセンサを設けるステップと、
b.磁性粒子を結合領域に付着させるステップであって、この磁性粒子が磁性粒子上の結合層に付着している少なくとも1つの結合剤を含むステップと、
c.結合剤を、標的分析物を含有する試料と接触させるステップと、
d.標的分析物を結合剤に結合させて、感知面で検出可能な応答を生じさせるステップと、
e.少なくとも1つの感知面に電気的に接続された測定電極における変化を測定するステップと、
を含み、標的分析物の結合剤への結合が、感知面で検出可能な応答を媒介する電気活性種を生じさせる方法。
30.試料中の標的分析物の濃度を決定する方法であって、
a.請求項1~16のいずれか一項に定義されているセンサ、または、
i.結合領域を含む支持基材と、
ii.支持基材の上面から突き出ている少なくとも1つの表面構造であって、電極層を含む表面構造と、
iii.電極層上の感知面であって、試料に接触するようになっている感知面と、
iv.支持基材上の結合領域であって、感知面から離隔され、かつ、磁場を含む結合領域と、
を備えるセンサを設けるステップと、
b.少なくとも1つの結合剤を結合領域で結合層に付着させるステップと、
c.結合剤、および少なくとも1つの感知面を含むセンサを、標的分析物を含有する試料と接触させるステップと、
d.2つ以上の測定電極であって、それぞれが電極層、および少なくとも1つの感知面に電気的に接続されている測定電極であり、互いに電気的に絶縁されている測定電極における変化を測定するステップと、
e.結合剤の標的分析物への結合が生じる結合部からの離隔距離の関数として、検出可能な応答の変化を測定するステップと、
f.応答の変化を、対照試料からの既知の濃度の標的分析物からの応答の変化と比較するステップと、
g.試料中の標的分析物の濃度を決定するステップと、
を含むとともに、標的分析物の結合剤への結合が、感知面で検出可能な応答を媒介する電気活性種を生じさせる方法。
31.請求項29または30に記載の方法であって、電気活性基材が、リガンド標識標的分析物に接触することで、電気活性基材の酸化をもたらし、電気活性種を産出し、この電気活性種が、還元電位で保持される感知面と接触することによって、感知面で検出可能な応答を引き出す方法。
32.請求項29~31のいずれか一項に記載の方法であって、結合層が、支持基材上の結合領域に付着している磁性粒子上にあり、この結合領域が、支持基材上、支持基材内、または支持基材の下の磁気要素によって確立された磁場の区域によって画定され、この磁気要素が、使用時に、磁性粒子を支持基材に引きつけ、付着させる方法。
33.請求項29~32のいずれか一項に記載の方法であって、試料が、センサの表面全体にわたって試料を流すことによって塗布される方法。
34.請求項29~33のいずれか一項に記載の方法であって、
a.請求項1~16のいずれか一項に定義されているセンサ、または、
i.結合領域を含む支持基材と、
ii.支持基材の上面から突き出ている少なくとも1つの表面構造であって、電極層を含む表面構造と、
iii.電極層上の感知面であって、試料に接触するようになっている感知面と、
iv.支持基材上の結合領域であって、感知面から離隔され、かつ、磁場を含む結合領域と、
を備えるセンサを設けるステップと、
b.少なくとも1つの結合剤を結合層に付着させるステップと、
c.リガンドで標的分析物を標識するステップと、
d.センサ、結合剤、および少なくとも1つの感知面を、競合アッセイが起こるように、所定の量の標識標的分析物、および非標識標的分析物を含有する試料と接触させるステップと、
e.センサに電気活性基材を塗布することで、電気活性基材の一部分が、結合した標識標的分析物によって酸化または還元されるようにするステップと、
f.少なくとも1つの感知面に電気的に接続された測定電極における変化を測定するステップと、
を含み、標識標的分析物または非標識標的分析物の結合剤への結合が、感知面で検出可能な応答を媒介する電気活性種を生じさせる方法。
35.請求項29~34のいずれか一項に記載の方法であって、感知面で還元電位を印加することによってリガンド触媒を再生成するステップをさらに含む方法。
36.請求項29~35のいずれか一項に記載の方法であって、結合領域からの距離が増大している2つ以上の電極層上に2つ以上の感知面を有するセンサの使用を含み、
変化を測定するステップが、2つ以上の測定電極であって、それぞれが電極層、および少なくとも1つの感知面に電気的に接続されている測定電極であり、互いに電気的に絶縁されている測定電極における変化を測定するステップを含むとともに、
結合部からの離隔距離の関数として検出可能な応答の変化を測定するステップと、
検出可能な応答の変化を、対照試料からの既知の濃度の標的分析物からの応答の変化と比較するステップと、
試料中の標的分析物の濃度を決定するステップと、
をさらに含む方法。
37.請求項29~36のいずれか一項に記載の方法であって、感知面および結合領域が、微小流体システム内に収容されている方法。
38.請求項29~37のいずれか一項に記載の方法であって、感知面および結合領域が、微小流体システムの別個の区画内に収容されている方法。
39.センサの製造方法であって、
a.支持基材の上面から突き出ている少なくとも1つの表面構造を支持基材に設けるステップと、
b.少なくとも1つの表面構造の上面に電極層を堆積するステップと、
c.電極層の1つまたは複数の部分が、電極層に少なくとも1つの感知面を形成するように露出したままであるように、電極層に不活性層を堆積するステップであって、この不活性層が分析対象の試料の成分に対して実質的に不活性である材料を含むステップと、
d.支持基材上に結合領域を形成するステップであって、結合領域が、少なくとも1つの結合剤を静電的、共有結合的、または磁気的に付着させるようになっているステップと、
を含み、標的分析物が結合剤に結合した後に、使用時に、検出可能な応答を感知面で検出するのに十分な離隔距離だけ、感知面が結合領域から離隔されている方法。
40.請求項39に記載の方法であって、表面構造が、頂点から頂点で約50nm~約2000μmだけ互いに離隔しており、かつ/または、支持基材に接合する表面構造の幅が、約20nmから約5000μmの間であり、かつ/または、各表面構造の頂点の幅が、好ましくは、約1nmから約5000ミクロンの間である方法。
41.請求項39または40に記載の方法であって、少なくとも1つの表面構造が、支持基材と一体化している方法。
42.請求項39~41のいずれか一項に記載の方法であって、保護コーティングが電極層に塗布される方法。
43.請求項39~42のいずれか一項に記載の方法であって、表面構造の上側部分を、結合層または不活性層が存在しないまま残し、支持基材または表面構造上に結合層または不活性層を堆積させることで、表面構造の上側部分の上の電極層の表面が感知面として露出されるようにすることにより、感知面を形成する方法。
44.請求項43に記載の方法であって、結合層または不活性層が、電極層に隣接して堆積される方法。
45.請求項43または44に記載の方法であって、不活性層が、導電性であり、不活性層に電位を印加することが可能な少なくとも1つの電極に接続されている方法。
46.請求項39~45のいずれか一項に記載の方法であって、電極層または支持基材のいずれかの上に結合層を堆積するステップが、SAM結合層を塗布するステップを含む方法。
47.試料中の標的分析物を感知する精度を向上させる方法であって、
a.支持基材と、
b.支持基材の上面から突き出ている少なくとも1つの表面構造であって、電極層を含む表面構造と、
c.電極層上の感知面であって、試料に接触するようになっている感知面と、
d.支持基材上の結合領域であって、感知面から離隔された結合領域と、
を備えるセンサを設けるステップと、
e.結合剤を、標的分析物を含有する試料と接触させるステップと、
f.標的分析物を結合剤に結合させて、感知面で検出可能な応答を生じさせるステップと、
g.少なくとも1つの感知面に電気的に接続された測定電極における変化を測定するステップと、を含むとともに、
標的分析物の、結合剤への結合が、感知面で検出可能な応答を媒介し、試料中の標的分析物を感知する精度を向上させる電気活性種を生じさせる方法。
48.請求項47に記載の方法であって、結合領域と感知面との間の離隔距離が、約1nmと約50mmとの間である方法。
49.試料中の標的分析物の濃度を決定する方法であって、
a.センサであって、
i.結合領域を含む支持基材と、
ii.支持基材の上面から突き出ている少なくとも1つの表面構造であって、電極層を含む表面構造と、
iii.電極層上の感知面であって、試料に接触するようになっている感知面と、
iv.磁気要素と、
v.支持基材上の結合領域であって、結合層を含むとともに、試料に接触するようにもなっており、かつ、感知面から離隔され、磁気要素によって生成された磁場を含む結合領域と、
を備えるセンサを設けるステップと、
b.少なくとも1つの結合剤を結合領域で結合層に付着させるステップと、
c.結合剤、および少なくとも1つの感知面を含むセンサを、標的分析物を含有する試料と接触させるステップと、
d.2つ以上の測定電極であって、それぞれが電極層、および少なくとも1つの感知面に電気的に接続されている測定電極であり、互いに電気的に絶縁されている測定電極における変化を測定するステップと、
e.結合剤の標的分析物への結合が生じる結合部からの離隔距離の関数として、検出可能な応答の変化を測定するステップと、
f.応答の変化を、対照試料からの既知の濃度の標的分析物からの応答の変化と比較するステップと、
g.試料中の標的分析物の濃度を決定するステップと、
を含むとともに、標的分析物の結合剤への結合が、感知面で検出可能な応答を媒介する電気活性種を生じさせ、
結合領域と感知面との間の離隔距離が、約1nmと50mmとの間であり、表面構造が、頂点から頂点で約50nm~約2000μmだけ互いに離隔しており、かつ/または、支持基材に接合する表面構造の幅が、約20nmから約5000μmの間であり、かつ/または、各表面構造の頂点の幅が、好ましくは、約1nmから約5000ミクロンの間である方法。
50.試料中の標的分析物の、結合剤への結合を検出する方法であって、
a.センサであって、
i.支持基材と、
ii.支持基材の上面から突き出ている少なくとも1つの表面構造であって、電極層を含む表面構造と、
iii.電極層上の感知面であって、試料に接触するようになっている感知面と、
iv.支持基材上の結合領域であって、試料に接触するようにもなっているとともに、感知面から離隔され、かつ、磁場を含む結合領域と、
を備えるセンサを設けるステップと、
f.磁性粒子を結合領域に付着させるステップであって、この磁性粒子が、磁性粒子上の結合層に付着している少なくとも1つの結合剤を含むステップと、
g.結合剤および感知面を、標的分析物を含有する試料と接触させるステップと、
h.標的分析物を結合剤に結合させて、感知面で検出可能な応答を生じさせるステップと、
を含むとともに、標的分析物の結合剤への結合が、感知面で検出可能な応答を媒介し、少なくとも1つの感知面に電気的に接続された測定電極における変化を測定する電気活性種を生じさせ、
結合領域と感知面との間の離隔距離が、約1nmと50mmとの間であり、表面構造が、頂点から頂点で約50nm~約2000μmだけ互いに離隔しており、かつ/または、支持基材に接合する表面構造の幅が、約20nmから約5000μmの間であり、かつ/または、各表面構造の頂点の幅が、好ましくは、約1nmから約5000ミクロンの間である方法。
51.センサであって、
a.支持基材と、
b.支持基材の上面から突き出ている少なくとも1つの表面構造であって、電極層を含む表面構造と、
c.電極層上の感知面であって、標的分析物を含有する試料に接触するようになっている感知面と、
d.支持基材上の結合領域であって、感知面から離隔された結合領域と、
を備え、使用時に、結合領域で結合層に付着している結合剤もまた、標的分析物を含有する試料に接触するようになっているセンサ。
52.センサであって、
a.支持基材と、
b.支持基材の上面から突き出ている少なくとも1つの表面構造であって、電極層を含む表面構造と、
c.電極層上の感知面であって、標的分析物を含有する試料に接触するようになっている感知面と、
d.支持基材上の結合領域であって、感知面から離隔された結合領域と、
を備え、使用時に、結合領域で結合層に付着している結合剤もまた、標的分析物を含有する試料に接触するようになっており、かつ、標的分析物が、結合層に付着している結合剤に結合した後に、感知面で検出可能な応答を検出するようになっているセンサ。
53.センサの製造方法であって、
a.支持基材の上面から突き出ている少なくとも1つの表面構造を支持基材に設けるステップと、
b.少なくとも1つの表面構造の上面に電極層を堆積するステップと、
c.電極層の1つまたは複数の部分が、電極層に少なくとも1つの感知面を形成するように露出したままであるように、電極層に不活性層を堆積するステップであって、この不活性層が、分析対象の試料の成分に対して実質的に不活性である材料を含むステップと、
d.支持基材上に結合領域を形成するステップであって、支持基材上、支持基材内、または支持基材の下の磁気要素または磁気要素位置決め手段を位置決めすることにより、結合領域が、少なくとも1つの磁性粒子を支持基材に付着させて、磁性粒子を引きつけることが可能な磁場の確立を容易にするようになっているステップと、
e.任意に、磁性粒子を結合領域に付着させるステップと、
f.任意に、結合剤を磁性粒子上の結合層上の官能表面に付着させるステップと、
を含み、標的分析物が結合剤に結合した後に、使用時に、検出可能な応答を感知面で検出するのに十分な離隔距離だけ、感知面が結合領域から離隔されている方法。
54.請求項51または52に記載のセンサであって、結合領域への結合剤の付着が、静電的、共有結合的、または結合剤を付着させた磁気ビーズを介したもののいずれかであるセンサ。
図1
図2
図2D
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A-B】
図14C
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28A
図28B
図29
図30