(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】火災警報器
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20240410BHJP
G08B 17/06 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
G08B17/00 G
G08B17/06 K
(21)【出願番号】P 2020017710
(22)【出願日】2020-02-05
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 美里
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 三四郎
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-230647(JP,A)
【文献】特開2019-148879(JP,A)
【文献】特開平10-154283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B17/00-17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域における火災の発生を判断して警報する火災警報器であって、
警報音を出力する警報部を有した警報器本体と、
前記警報器本体の前方に露出した温度センサと、
前記温度センサを保護するために前記温度センサの前方を覆う保護壁を有したセンサガードと、
前記センサガードよりも後方側において、熱せられた気体を前記温度センサに誘導する少なくとも一対の誘導壁と、
前記一対の誘導壁の間隔よりも狭い間隔で、前記一対の誘導壁の内側に配置された一対の補助壁と、を備え、
前記一対の誘導壁それぞれを前記一対の誘導壁に沿って前記温度センサ側に延長したときの延長線同士の交点は、前記一対の誘導壁側からみて前記温度センサよりも遠方に位置
し、
前記一対の補助壁は、前記一対の補助壁それぞれを前記一対の補助壁に沿って前記温度センサ側に延長したときの延長線同士の交点が、前記一対の補助壁側からみて前記温度センサよりも遠方、且つ、前記一対の誘導壁の延長線同士の交点よりも近い側に位置する
ことを特徴とする火災警報器。
【請求項2】
前記センサガードは、前記保護壁と前記警報器本体とを接続する接続支柱を前記一対の誘導壁として有する
ことを特徴とする請求項1に記載の火災警報器。
【請求項3】
前記警報器本体の厚みをXとし、前記警報器本体に前記センサガードを含めた厚みをYとした場合に、Y/Xが1.5以上とされている
ことを特徴とする請求項1
又は請求項
2のいずれ
かに記載の火災警報器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度センサにより熱検知することで監視領域における火災の発生を判断して警報する火災警報器が知られている。このような火災警報器には、警報音を出力する警報部を前面側の第1ケース及び後面側の第2ケースによって収納した警報器本体と、警報器本体よりも前方に突出したサーミスタや熱電対等の温度センサと、温度センサを保護するためのセンサガードとを有したものがある(例えば特許文献1参照)。また、サーミスタや熱電対等の温度センサを警報器本体内に収納した火災警報器についても知られている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
これらの火災警報器においては、火災発生時における熱を温度センサに導くため、温度センサの位置を中心に放射状に広がる誘導壁が形成されている。この誘導壁によって、火災発生時の熱が円滑に温度センサに導かれて、火災時における早期警報につなげることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-154283号公報
【文献】特許第5124327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本件発明者らが鋭意検討した結果、警報器本体の前方に露出した温度センサやセンサガードを備える火災警報器において、温度センサの位置を中心に放射状に広がる誘導壁を有する構成では、熱を温度センサに円滑に導いているとはいい難いことを見出した。すなわち、警報器本体よりも前方に露出して温度センサやセンサガードを備える火災警報器は、温度センサを警報器本体の内部に設ける火災警報器と比較して、熱せられた気体の流通量が多くなることから、温度センサの位置を中心に放射状に広がる誘導壁では熱を適切に温度センサに導けない可能性がある。
【0006】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その発明の目的とするところは、警報器本体の前方に露出した温度センサ及びセンサガードを設ける構成において、熱をより適切に温度センサに導くことができる火災警報器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、監視領域における火災の発生を判断して警報する火災警報器であって、警報音を出力する警報部を有した警報器本体と、前記警報器本体の前方に露出した温度センサと、前記温度センサを保護するために前記温度センサの前方を覆う保護壁を有したセンサガードと、前記センサガードよりも後方側において、熱せられた気体を前記温度センサに誘導する少なくとも一対の誘導壁と、前記一対の誘導壁の間隔よりも狭い間隔で、前記一対の誘導壁の内側に配置された一対の補助壁と、を備え、前記一対の誘導壁それぞれを前記一対の誘導壁に沿って前記温度センサ側に延長したときの延長線同士の交点は、前記一対の誘導壁側からみて前記温度センサよりも遠方に位置し、前記一対の補助壁は、前記一対の補助壁それぞれを前記一対の補助壁に沿って前記温度センサ側に延長したときの延長線同士の交点が、前記一対の補助壁側からみて前記温度センサよりも遠方、且つ、前記一対の誘導壁の延長線同士の交点よりも近い側に位置する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一対の誘導壁の延長線同士の交点は温度センサよりも遠方に位置するため、比較的多くの気体がセンサガード下に流れ込んだ場合に、温度センサの位置を中心に放射状に広がる誘導壁と比較して、一対の誘導壁の内側で気体渦を形成し難くなり、熱せられた気体を円滑に温度センサ側に寄せながらも気体渦により気体が温度センサに到達し難くなってしまう可能性を抑制することができる。従って、警報器本体よりも前方に突出して温度センサ及びセンサガードを設ける構成において、熱をより適切に温度センサに導くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るガス火災警報器の正面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るガス火災警報器の側面図である。
【
図4】検知温度と応答時間との関係を示す図であり、(a)はグラフを示し、(b)は図表を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0011】
さらに、以下において火災警報器は、壁掛け式の火災警報器を例に説明するが、これに限らず、天井式の火災警報器であってもよい。また、以下において火災警報器は、ガス検出機能も有したガス火災警報器を例に説明するが、これに限らず、ガス検出機能を有しないものであってもよいし、ガス検出機能に代えて人感機能等の他の警報機能を有するものであってもよい。加えて、火災警報器は、他の箇所に設置される警報器と連動して動作する機能を有するものであってもよい。
【0012】
図1及び
図2は、本発明の実施形態に係るガス火災警報器の構成図であって、
図1は正面図を示し、
図2は側面図を示している。
図1及び
図2に示すように、ガス火災警報器(火災警報器)1は、温度センサ20からの信号に基づいて監視領域における火災の発生を判断して警報するものである。このガス火災警報器1は、警報器本体10と、温度センサ20と、センサガード30とを備えている。
【0013】
警報器本体10は、前面側の第1ケース10aと後面側の第2ケース10bとを備え、これらケース10a,10b内に警報音を出力する警報部11が収納されている。警報部11からの警報音は、第1ケース10aに形成された複数の開口である報知開口部12を通じて外部に出力される。また、警報器本体10は、周囲に検出対象となるガス(例えばメタンガス)が存在する場合にその濃度に応じた信号を処理部(不図示)に出力するガスセンサ13をケース10a,10b内に収納している。ガスセンサ13は、第1ケース10aに形成された複数の開口である検出開口部14を通じて外部の検知対象ガスに反応可能となっている。
【0014】
さらに、警報器本体10は、ガスセンサ13及び温度センサ20からの信号に基づいてガス漏れや火災を判断すると共に、ガス漏れや火災を判断した場合に警報部11から警報出力させる処理部(不図示)についても収納している。
【0015】
また、警報器本体10は、第2ケース10bの上部に壁掛け用の引掛け部15を備えている。引掛け部15は正面視して略凸形状となる開口15aを有している。開口15aには壁に取り付けられたフック部(不図示)が通され、これによりガス火災警報器1は壁に対して設置される。
【0016】
温度センサ20は、周囲温度に応じた信号を処理部(不図示)に出力するものである。この温度センサ20は、警報器本体10から前方に露出しており、警報器本体10の前面側の気体温度に応じた信号を出力する。なお、本実施形態において温度センサ20は、側面視して警報器本体10よりも前方に突出して露出しているが、これに限らず、前方に露出していれば側面視して警報器本体10に一部が埋設状態であってもよいし、深く埋設され過ぎない範囲において全部が埋設状態であってもよい。
【0017】
センサガード30は、保護壁31と複数(4本)の接続支柱32とを備え、概略的に温度センサ20の前方に設けられるものである。保護壁31は、温度センサ20を保護するために温度センサ20の前方を覆う板材であって、本実施形態においては略四角形状となっている。複数の接続支柱32は、保護壁31と警報器本体10(第1ケース10a)とを接続するものである。保護壁31は、複数の接続支柱32によって支えられて警報器本体10の前面から離間した状態となっている。特に、警報器本体10の前面と保護壁31の後面とによって挟まる空間部Sは、火災時において熱せられた気体が通過する気体流路となる。
【0018】
図3は、
図2に示したA-A断面図である。
図3に示すように、ガス火災警報器1は、一対の誘導壁41を複数(2つ)備えている。一対の誘導壁41は、センサガード30の後方側且つ警報器本体10の前方側において、熱せられた気体を温度センサ20に誘導するものである。
【0019】
一対の誘導壁41のうち下側に設けられる一対の下側誘導壁41aは、下側から登ってくる気体を温度センサ20側に導くものであり、下側よりも上側の間隔が狭くなるように(温度センサ20側の間隔が狭くなるように)上下方向に対して傾斜して設けられている。
【0020】
一対の誘導壁41のうち上側に設けられる一対の上側誘導壁41bは、下側から登ってきて天井に当たった後に天井から壁伝いに下降してくる気体を温度センサ20側に導くものであり、上側よりも下側の間隔が狭くなるように(温度センサ20側の間隔が狭くなるように)上下方向に対して傾斜して設けられている。
【0021】
また、本実施形態において一対の誘導壁41は、延長線の交点P1,P2が温度センサ20よりも遠方に位置している。詳細に説明すると、一対の下側誘導壁41aのそれぞれを各下側誘導壁41a(自己)に沿って延長したときの延長線同士の交点P1は、一対の下側誘導壁41aから見て温度センサ20よりも遠方(上側)に位置している。同様に、一対の上側誘導壁41bのそれぞれを各上側誘導壁41b(自己)に沿って延長したときの延長線同士の交点P2は、一対の上側誘導壁41bから見て温度センサ20よりも遠方(下側)に位置している。
【0022】
このように、本実施形態において一対の誘導壁41は、温度センサ20を中心とする放射状に設けられておらず、熱せられた気体を比較的緩やかに温度センサ20側に寄せるように誘導することとなる。ここで、本件発明者らが鋭意検討した結果、
図3において破線で示す一対の誘導壁41’では、温度センサ20を中心とする放射状に設けられていることから、熱せられた気体を内側に寄せ過ぎてしまい、
図3に示す矢印A1のように気体渦を発生させ易い傾向にある。このため、温度センサ20に対して熱せられた気体を好適に誘導しているとはいい難い。特に、警報器本体10の前面側に露出する温度センサ20とセンサガード30とを備える構成では、従来構成(警報器本体の内部に温度センサを備える構成)と比較して、気体流通量が多いことから気体渦を発生させ易く、一対の誘導壁41’では気体を好適に誘導しているとはいい難い。
【0023】
そこで、本実施形態に係る一対の誘導壁41は、上記したように交点P1,P2を温度センサ20よりも遠方としている。これにより、熱せられた気体を比較的緩やかに温度センサ20側に寄せて、気体渦の発生を抑えて熱せられた気体を好適に誘導するようにしている。
【0024】
なお、一対の誘導壁41は、上下方向(鉛直方向であって火災時における気体の流れ方向)を中心線として対称構造となっているが、特にこれに限らず、非対称構造であってもよい。また、一対の上側誘導壁41bと温度センサ20との上下方向距離は、一対の下側誘導壁41aと温度センサ20との上下方向距離よりも長くされているが、特にこれに限らず、一対の上側誘導壁41bと温度センサ20との上下方向距離の方が短くされていてもよい。
【0025】
ここで、本実施形態に係るセンサガード30は、保護壁31と警報器本体10とを接続する接続支柱32を一対の誘導壁41として有している。これにより、センサガード30の接続支柱32を一対の誘導壁41として利用でき、構成の簡素化を図ることができる。特に、一対の誘導壁41とは別に接続支柱32を備えた場合には接続支柱32が気体の流れに乱れを発生させる可能性があるが、一対の誘導壁41と接続支柱32とが一体であることから、このような乱れを発生させ難く、熱せられた気体を好適に誘導し易くすることができる。
【0026】
さらに、本実施形態に係るガス火災警報器1は、複数(2つ)の一対の補助壁42を備えている。一対の補助壁42についても一対の誘導壁41と同様に、センサガード30の後方側且つ警報器本体10の前方側において、熱せられた気体を温度センサ20に誘導するものである。また、一対の補助壁42は、一対の誘導壁41よりも内側に配置されている。
【0027】
一対の補助壁42のうち下側に設けられる一対の下側補助壁42aは、下側から登ってきて一対の下側誘導壁41aによって温度センサ20側に寄せられた気体を更に温度センサ20側に導くものであり、下側よりも上側の間隔が狭くなるように(温度センサ20側の間隔が狭くなるように)上下方向に対して傾斜して設けられている。一対の下側補助壁42aは、上下方向に見て、一対の下側誘導壁41aと温度センサ20と間に位置している。
【0028】
一対の補助壁42のうち上側に設けられる一対の上側補助壁42bについても同様に、一対の上側誘導壁41bによって寄せられた気体を更に温度センサ20側に導くものであり、上側よりも下側の間隔が狭くなるように(温度センサ20側の間隔が狭くなるように)上下方向に対して傾斜して設けられている。一対の上側補助壁42bは、上下方向に見て、一対の上側誘導壁41bと温度センサ20と間に位置している。
【0029】
また、本実施形態において一対の補助壁42は、延長線の交点P3,P4が温度センサ20よりも遠方に位置している。詳細に説明すると、一対の下側補助壁42aのそれぞれを各下側補助壁42a(自己)に沿って延長したときの延長線同士の交点P3は、一対の下側補助壁42aから見て温度センサ20よりも遠方(上側)に位置している。
【0030】
ここで、交点P3は、交点P1よりも近い側(下側)に位置している。このため、一対の下側補助壁42aの方が一対の下側誘導壁41aよりも熱せられた気体の流れ方向に対して交差するように配置されている。よって、一対の下側誘導壁41aによって流れ方向が変えられた気体を一対の下側補助壁42aによって一層温度センサ20側に寄せるようにすることができ、より一層適切に熱を温度センサ20に導くことができる。
【0031】
一対の上側誘導壁41bと一対の上側補助壁42bも同様であって、交点P4は、交点P2よりも近い側(上側)に位置しており、一対の上側誘導壁41bによって流れ方向が変えられた気体を一対の上側補助壁42bによって一層温度センサ20側に寄せるようにすることができ、より一層適切に熱を温度センサ20に導くことができる。
【0032】
なお、一対の補助壁42についても、上下方向(鉛直方向であって火災時における気体の流れ方向)を中心線として対称構造となっているが、特にこれに限らず、非対称構造であってもよい。また、一対の上側補助壁42bと温度センサ20との上下方向距離は、一対の下側補助壁42aと温度センサ20との上下方向距離よりも短くされているが、特にこれに限らず、一対の上側補助壁42bと温度センサ20との上下方向距離の方が長くされていてもよい。
【0033】
また、
図2に示すように、一対の補助壁42は、センサガード30の後面から警報器本体10に向かって警報器本体10に接触しない範囲内で(警報器本体10に対して隙間を有して)垂下するように設けられているが、これに限らず、警報器本体10とセンサガード30とを接続して設けられていてもよい。なお、一対の補助壁42は、センサガード30の後面から警報器本体10に対して隙間を有した状態で警報器本体10に向かって延びていることが好ましい。一対の補助壁42に隙間を有することで温度センサ20の周囲の気体が一対の補助壁42の外側に逃げ易くなる。このため、火災発生時において熱せられた気体がセンサガード30の後方に流入する際に、温度センサ20の周囲に存在している熱せられていない気体がスムーズに逃げていくこととなり、更に適切に熱を温度センサ20に導くことができる。
【0034】
加えて、本実施形態に係るガス火災警報器1は、一対の停止壁43をさらに備えている。一対の停止壁43は、気体の流れ方向(上下方向)と直交して設けられる板材であり、横方向にみて、一対の停止壁43の中心は、一対の誘導壁41と一対の補助壁42との間に位置するように設けられている。このような一対の停止壁43は、一対の誘導壁41によって内側に寄せられたものの、一対の補助壁42の内側に入り損ねた気体を食い止める効果を有する。食い止められた気体は、横方向に分散するものの一部は温度センサ20側に向かうこととなる。よって、更に熱を温度センサ20に導くことができる。なお、停止壁43は、一方の停止壁43aと他方の停止壁43bとの形状が異なっており、一方の停止壁43aは断面矩形状であるが、他方の停止壁43bは中央側に断面視して厚みが大きくなる膨出部を有している。
【0035】
さらに、本実施形態に係るガス火災警報器1は厚みが調整されている。
図2に示すように本実施形態に係るガス火災警報器1において、警報器本体10の厚みをXとし、警報器本体10にセンサガード30を加えた厚みをYとした場合、Y/Xが1.5以上とされている。このように構成することで、警報器本体10とセンサガード30との隙間(空間部S)を確保して気体そのものの流れが悪くなってしまうことを防止することができる。
【0036】
次に、本実施形態に係るガス火災警報器1の作用を説明する。
【0037】
まず、ガス火災警報器1の真下付近で火災が発生したとする。このとき、熱せられた気体は、火災箇所から上昇していき、ガス火災警報器1の下方からセンサガード30の後方に入り込む。
【0038】
入り込んだ気体は、まず一対の下側誘導壁41aによって内側(温度センサ20側)に誘導される。このとき、一対の下側誘導壁41aは、気体渦の発生を抑えつつ気体を内側に誘導する。
【0039】
次に、内側に誘導された気体は、一対の下側補助壁42aによって更に内側(温度センサ20側)に誘導される。また、一対の下側補助壁42aによって内側に誘導されず外側に漏れた気体は、一対の停止壁43によって食い止められて、一部が温度センサ20側に向かう。
【0040】
以上より、本実施形態に係るガス火災警報器1は、真下付近で火災が発生した場合に、熱をより適切に温度センサ20に導くことができる。
【0041】
また、ガス火災警報器1の真下から離れた位置で火災が発生したとする。このとき、熱せられた気体は、火災箇所から上昇していき、天井を経て壁伝いにガス火災警報器1の上方からセンサガード30の後方に入り込む。
【0042】
上方から入り込んだ気体は、まず一対の上側誘導壁41bによって内側(温度センサ20側)に誘導される。このとき、一対の上側誘導壁41bは、気体渦の発生を抑えつつ気体を内側に誘導する。
【0043】
次に、内側に誘導された気体は、一対の上側補助壁42bによって更に内側(温度センサ20側)に誘導される。また、一対の上側補助壁42bによって内側に誘導されず外側に漏れた気体は、一対の停止壁43によって食い止められて、一部が温度センサ20側に向かう。
【0044】
以上より、本実施形態に係るガス火災警報器1は、真下から離れた位置で火災が発生した場合に、熱をより適切に温度センサ20に導くことができる。
【0045】
図4は、検知温度と応答時間との関係を示す図であり、(a)はグラフを示し、(b)は図表を示している。なお、
図4に示す例においては、同じ箇所で火災を発生させたときの警報点(警報閾値)まで達する時間を計測したものであり、放射状の誘導壁41’のみを備える場合、一対の誘導壁41aのみを備える場合、並びに、一対の誘導壁41a及び一対の補助壁42bを備える場合の警報点まで達する時間を計測している。
【0046】
図4(a)及び
図4(b)に示すように、放射状の誘導壁41’のみを備える場合、警報点まで達する時間は火災発生から21秒となった。これに対して、一対の誘導壁41aのみを備える場合には警報点まで達する時間は火災発生から14秒となり、一対の誘導壁41a及び一対の補助壁42bを備える場合には警報点まで達する時間は火災発生から8秒となった。
【0047】
このように、気体渦の発生を抑制するように設けられた一対の誘導壁41を有する場合は、放射状の誘導壁41’を有する場合よりも応答時間が短くなっており、熱を適切に温度センサ20側に導けることがわかった。また、更に一対の補助壁42bを備える場合には、一層応答時間が短くなっており、より一層熱を適切に温度センサ20側に導けることがわかった。
【0048】
このようにして、本実施形態に係るガス火災警報器1によれば、一対の誘導壁41の延長線同士の交点P1,P2は温度センサ20よりも遠方に位置するため、比較的多くの気体がセンサガード30の後方に流れ込んだ場合に、温度センサ20の位置を中心に放射状に広がる誘導壁41’と比較して、一対の誘導壁41の内側で気体渦を形成し難くなり、熱せられた気体を円滑に温度センサ20側に寄せながらも気体渦により気体が温度センサ20に到達し難くなってしまう可能性を抑制することができる。従って、警報器本体10よりも前方に突出して温度センサ20及びセンサガード30を設ける構成において、熱をより適切に温度センサ20に導くことができる。
【0049】
また、センサガード30は、保護壁31と警報器本体10とを接続する接続支柱32を一対の誘導壁41として有するため、センサガード30の接続支柱32と誘導壁41とを共通化して、構成の簡素化を図ることができる。
【0050】
また、一対の誘導壁41の間隔よりも狭い間隔で一対の誘導壁41の内側に配置された一対の補助壁42をさらに備え、一対の補助壁42の交点P3,P4が温度センサ20よりも遠方に位置するため、一対の誘導壁41によって気体渦を抑えつつも内側に寄せた気体を、更に一対の補助壁42によって内側に寄せることができ、より適切に熱を温度センサ20に導くことができる。
【0051】
また、一対の補助壁42の延長線同士の交点P3,P4は、一対の誘導壁41の延長線同士の交点P1,P2よりも近い側に位置しているため、一対の補助壁42の方が一対の誘導壁41よりも熱せられた気体の流れ方向に対して交差するように配置されている。よって、一対の誘導壁41によって温度センサ20側へ寄せた気体を一対の補助壁42に沿って更に温度センサ20側に寄せるようにすることができる。従って、より一層適切に熱を温度センサ20に導くことができる。
【0052】
また、警報器本体10の厚みをXとし、警報器本体10にセンサガード30を含めた厚みをYとした場合に、Y/Xが1.5以上とされているため、警報器本体10とセンサガード30との間が狭く気体の流通量が減少し過ぎてしまい、一対の誘導壁41が機能し難くなってしまう事態を防止することができる。
【0053】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能な範囲で適宜他の技術を組み合わせてもよい。
【0054】
例えば、上記実施形態においてセンサガード30は、正面視して略四角形状であるが、これに限らず、丸形状等の他の形状であってもよい。なお、壁掛け式のガス火災警報器1(火災警報器)については、火災により熱せられた気体は、下又は上からガス火災警報器1に到達することが多いことから、略四角形状をしているが、天井式のガス火災警報器1(火災警報器)については、火災により熱せられた気体がどの方向から到達するのか予め分かり難く、このような場合には、センサガード30を丸形状等としていてもよい。
【0055】
さらに、本実施形態に係るガス火災警報器1は、接続支柱32を一対の誘導壁41としているが、これに限らず、ガス火災警報器1の前面側に設けられる他の構成を一対の誘導壁41、一対の補助壁42、及び一対の停止壁43としてもよい。
【0056】
また、上記実施形態においてはセンサガード30が警報器本体10と一体に形成されていてもよいし、別体のものが警報器本体10に後付けされてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 :ガス火災警報器(火災警報器)
10 :警報器本体
10a :第1ケース
10b :第2ケース
11 :警報部
12 :報知開口部
13 :ガスセンサ
14 :検出開口部
15 :引掛け部
15a :開口
20 :温度センサ
30 :センサガード
31 :保護壁
32 :接続支柱
41 :誘導壁
41a :下側誘導壁
41b :上側誘導壁
42 :補助壁
42a :下側補助壁
42b :上側補助壁
43 :停止壁
P1~P4 :交点
S :空間部