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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】プリンタおよび媒体搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 7/14 20060101AFI20240410BHJP
   B41J 13/10 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
B65H7/14
B41J13/10
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020019129
(22)【出願日】2020-02-06
(65)【公開番号】P2021123474
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 幸輝
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-083828(JP,A)
【文献】特開2013-107340(JP,A)
【文献】特開2017-056703(JP,A)
【文献】特開平10-029354(JP,A)
【文献】特開2018-034459(JP,A)
【文献】特開2013-111832(JP,A)
【文献】特開2006-347742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/315-2/345
B41J 2/42-2/425
B41J 2/475-2/48
B41J 3/01-3/54
B41J 3/62
B41J 11/00-13/32
B65H 7/00-7/20
B65H 43/00-43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷が完了した記録媒体を、前記記録媒体の一部が排紙口から外部に露出した状態で保持する保持手段と、
前記保持手段により保持される記録媒体の有無を検出する検出手段と、を有し、
前記保持手段の一部が前記検出手段を覆うように配置され、前記排紙口から前記検出手段に外光が入射することを防止する遮光部材として機能し、
前記保持手段は、第1の部材および第2の部材を有し、前記第1の部材の弾性によって前記記録媒体を前記第2の部材に押圧することにより前記記録媒体を保持することを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記第1の部材が前記遮光部材として機能することを特徴とする請求項に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記第1の部材が、保持する記録媒体が存在するか否かにかかわらず前記第2の部材を押圧する第1の押圧部と、保持する記録媒体が存在しないときには前記第2の部材を押圧しない第2の押圧部とを有することを特徴とする請求項またはに記載のプリンタ。
【請求項4】
前記第1の押圧部が前記遮光部材として機能する、請求項に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記第1の部材が、片持ち梁に支持されるシート状の樹脂材料により形成されることを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項6】
前記第2の部材は前記記録媒体を支持する複数のリブが設けられた天面を有することを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項7】
前記検出手段が前記第2の部材の前記天面に取り付けられることを特徴とする請求項に記載のプリンタ。
【請求項8】
前記検出手段が、入射光量が閾値以上の場合に前記保持手段により前記記録媒体が保持されていことを検出する、請求項1からのいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項9】
記録媒体を搬送する媒体搬送装置であって、
印刷が完了した記録媒体を完全には排出せずに保持する保持手段と、
前記保持手段により保持される記録媒体の有無を検出する検出手段と、を有し、
前記保持手段の一部が前記検出手段を覆うように配置され、前記検出手段に外光が入射することを防止する遮光部材として機能し、
前記保持手段は、第1の部材および第2の部材を有し、前記第1の部材の弾性によって前記記録媒体を前記第2の部材に押圧することにより前記記録媒体を保持することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項10】
前記第1の部材が前記遮光部材として機能することを特徴とする請求項に記載の媒体搬送装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の媒体搬送装置を用いて記録媒体を搬送する電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタおよび媒体搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、L~2Lサイズ程度の写真プリントを主目的とした小型のプリンタが知られている。このようなプリンタでは小型化のために排紙トレイを有さず、印刷済みの記録媒体を完全には排出せずに端部を保持するように構成されたものがある。
【0003】
印刷済みの記録媒体を完全には排出しないプリンタでは、印刷済みの記録媒体が周囲に散乱しないよう、ユーザが用紙を引き取り、印刷済みの記録媒体がなくなるまで次の印刷を待機する。そして、このような用紙搬送制御を実現するため、排紙口の近くに媒体検出用の光学センサを設けている。
【0004】
しかし、排紙口から入射する外光の影響により、印刷済みの記録媒体を保持中であるにも関わらず、印刷済みの記録媒体が保持されていないと誤検出する場合があった。特に、小型プリンタは屋外で使用されることもあるため、排紙口から外光が入射しやすく、誤検出が発生しやすい。
【0005】
特許文献1では、用紙検出用の光学センサを用いる携帯型プリンタにおいて、光学センサよりも、用紙を挿入する開口部側の部位に、用紙の導入経路側に突出するように遮光部材を設け、開口部から入射する外光が光学センサに到達することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-56703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は、用紙をプリンタに導入する開口部の近くに設けられた光学センサへ外光入射を防止する構成であり、排紙口からの入射光を防止するためには適用できない。特許文献1に記載された遮光部材を排紙口の近くに設けられた光学センサへの外光入射を防止する目的で適用すると、排出する用紙が遮光部材に衝突して搬送不良を生じるからである。また、専用の遮光部材を設けることは、コストの増加につながるという問題もある。
【0008】
本発明の目的は、印刷が完了した記録媒体が保持されているか否かを検出するプリンタにおいて、新たな部材を用いることなく、排紙口から入射する外光の影響による誤検出を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的は、印刷が完了した記録媒体を、記録媒体の一部が排紙口から外部に露出した状態で保持する保持手段と、保持手段により保持される記録媒体の有無を検出する検出手段と、を有し、保持手段の一部が検出手段を覆うように配置され、排紙口から検出手段に外光が入射することを防止する遮光部材として機能し、保持手段は、第1の部材および第2の部材を有し、第1の部材の弾性によって記録媒体を前記第2の部材に押圧することにより記録媒体を保持することを特徴とするプリンタによって達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、印刷が完了した記録媒体が保持されているか否かを検出するプリンタにおいて、新たな部材を用いることなく、排紙口から入射する外光の影響による誤検出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るプリンタおよびインクリボンカセットの外観例を示す斜視図
図2】実施形態に係るプリンタの機能構成例を示すブロック図
図3】実施形態に係るインクリボンの一部を示す図
図4A】実施形態に係るプリンタの印刷動作中の状態を示す断面図
図4B】実施形態に係るプリンタの印刷動作中の状態を示す断面図
図4C】実施形態に係るプリンタの印刷動作中の状態を示す断面図
図5】実施形態に係るプリンタの印刷動作に関するフローチャート
図6】実施形態に係るプリンタの本体上ケースおよび天面フレームを除去した状態の上面図
図7】実施形態に係る用紙ガイド部材および用紙押さえ板の分解斜視図
図8】実施形態に係る用紙ガイド部材および用紙押さえ板の取り付け構造を示す斜視図
図9図6のB-B断面図
図10図6のA-A断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明をその例示的な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定しない。また、実施形態には複数の特徴が記載されているが、その全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
なお、以下では、本発明を熱転写方式のプリンタに適用した実施形態に関して説明する。しかし、本発明は印刷方式には特に依存しないため、インクジェット方式など他の印刷方式のプリンタにも適用可能である。また、プリンタ機能を備えた電子機器にも適用可能である。
【0014】
なお、以下の説明において、「画像形成」とは、用紙などの記録媒体に対してインクなどの色材を付着させたり、記録媒体が有する色材を熱などによって発色させたりして、記録媒体上に画像を形成する1工程を意味する。また、「印刷」とは、印刷指示に基づいて画像形成を行い、画像形成された記録媒体を排紙口から出力するまでの一連の工程を意味する。また、「印刷用紙」は、紙と同様に取り扱うことが可能な、紙以外を主成分とする記録媒体を包含する意味で用いる。
【0015】
図1は、実施形態に係るプリンタ100およびプリンタ100に用いるカセット300の外観例を示す図である。図1(a)は、天面側からみた斜視図、図1(b)は、底面側からみた斜視図である。
【0016】
プリンタ100は、本体上ケース101-1と本体下ケース101-2とにより形成される空間内にカセット300、用紙搬送機構、電源(例えばバッテリー)などが収容される構成を有する。
【0017】
本体上ケース101-1と本体下ケース101-2は、プリンタ100の1側面において、接合部の一部に排紙口101-3を形成する。後述するように、本実施形態のプリンタ100は、排紙口101-3に印刷用紙の端部を保持した状態で印刷を完了する。印刷用紙の完全な排出は、ユーザが印刷用紙113をプリンタから引き抜くことで実現される。
【0018】
また、プリンタ100の、排紙口101-3が形成される側面とは別の側面には、開閉可能なカセットカバー101-4が設けられる。プリンタ100の内部には、カセット装着部110-1を有するシャシ110が設けられている。カセット装着部110-1にはカセットカバー101-4が開いた状態でアクセス可能である。カセットカバー101-4を開けてカセット300(以下、単にカセット300という)を矢印400の方向に挿入することにより、開口部110-1にカセット300を装着することができる。プリンタ100内の機構部品は、シャシ110が底面と側面を支持し、天面フレーム111(後述)が天面を支持するフレームに収容されている。
【0019】
カセット300には、昇華性インクが塗布されたインクリボン114がロール状に巻かれた状態で収納されている。インクリボン114はプリンタ100が有する搬送機構によって搬送される。カセット300の構造の詳細については後述する。
【0020】
プリンタ100の底面には開閉可能なトレイカバー101-5が設けられている。トレイカバー101-5を開いた状態で、用紙収容部117(図4A)に印刷用紙113(図4A)を装填することができる。印刷時には、プリンタ100が有する給紙機構により、用紙収容部117から印刷用紙113がサーマルヘッドの方向に搬送される。サーマルヘッドは、インクリボン114に塗布された各種のインクを印刷データに基づいて印刷用紙113に転写することにより、印刷データに対応した画像を印刷用紙113に形成する。
【0021】
本体上ケース101-1の天面には、表示部102および操作部103が設けられている。また、プリンタ100は外部装置と通信するための通信インタフェースを有する。本実施形態のプリンタ100は、無線通信インタフェースおよび有線通信インタフェースの両方を有している。通信インタフェースは任意の通信規格に準拠したものであってよい。本実施形態のプリンタ100は有線通信インタフェースの一例としてのUSBインタフェースを有し、側面にUSBケーブルを接続するためのコネクタ(USBコネクタ104)が設けられている。無線通信インタフェースは例えばBluetooth(登録商標)または無線LAN(IEEE802シリーズのいずれか)の規格に準拠したものであってよい。
【0022】
表示部102は複数のLEDを有し、プリンタ100の状態を点灯、消灯、および点滅といった点灯形態や、点灯色や点灯パターン(例えば点滅周期)とを用いて表す。なお、表示部102としてドットマトリックスディスプレイを用い、文字によってプリンタ100状態を表してもよい。
【0023】
操作部103は、ユーザが操作するボタン、スイッチなどの入力デバイスの総称である。図1では操作部103が電源スイッチである形態について示している。しかし、他の1つ以上の入力デバイスが設けられてもよい。
【0024】
図2は、プリンタ100の機能構成例を示すブロック図である。図2において、図1に示した構成要素には同じ参照数字を付し、重複する説明は省略する。
メインコントローラ201はCPUなどのマイクロプロセッサを有し、例えばROM202に記憶されたプログラムをRAM203に転送して実行することにより、プリンタ100の各部を制御してプリンタ100の機能を実現する。ROM202は例えば電気的に書き換え可能であってよく、メインコントローラ201のCPUが実行可能なプログラム、設定値などを記憶する。RAM203は、メインコントローラ201のCPUが実行するプログラムや、CPUがプログラムの実行中に必要な値を保持したりするために用いられる。RAM203はまた、外部装置から受信したデータを一時的に記憶したり、画像処理部213が画像処理を行う際のバッファメモリなどとして用いられたりする。
【0025】
ヘッド温度検知センサ204はサーマルヘッド116の温度を表すデータをメインコントローラ201に出力する。環境温度センサ205は、プリンタ100内の温度を表すデータをメインコントローラ201に出力する。メインコントローラ201は、ヘッド温度検知センサ204および環境温度検知センサ205の出力に基づいてサーマルヘッド116の駆動信号を補正したり、駆動を待機させたりする。
【0026】
第1の用紙検知センサ206-1および第2の用紙検知センサ206-2は、プリンタ100内の特定位置における用紙を有無を検知する。第1の用紙検知センサ206-1および第2の用紙検知センサ206-2のそれぞれは、フォトリフレクタを用いて用紙の有無を検知する。フォトリフレクタは用紙の搬送路に向けて光を照射する発光素子と、入射光量を検出する受光素子とから構成される。用紙検出センサは、発光素子を点灯させた際の入射光量(受光素子の出力)が閾値以上であれば用紙が存在すると判定し、閾値未満であれば用紙が存在しないと判定し、判定結果を示すデータをメインコントローラ201に出力する。なお、第1の用紙検知センサ206-1および第2の用紙検知センサ206-2には、入射光量に基づいて用紙の有無を判定する任意のセンサを用いることができる。
【0027】
本実施形態では、用紙収容部117とサーマルヘッド116との間の用紙搬送経路の近傍に第1の用紙検知センサ206-1を設け、排紙口101-3と搬送ローラ124(図4A)との間に第2の用紙検知センサ206-2を設けている。メインコントローラ201は、第1の用紙検知センサ206-1および第2の用紙検知センサ206-2の検知結果に基づいて印刷用紙の搬送を制御する。
【0028】
リボン検知センサ207は、インクリボン114に設けられているマーカを検出する。リボン検知センサ207もフォトリフレクタを用いたセンサであってよい。リボン検知センサは、発光素子でインクリボン114に対して光を照射しながら受光素子の出力を監視し、所定の出力変化が検出されるとマーカを検出したと判定してメインコントローラ201に通知する。メインコントローラ201は、リボン検出センサ207の通知に基づいてインクリボン114の搬送を制御する。
【0029】
印刷用紙113およびインクリボン114は用紙搬送モータ209によって搬送される。用紙搬送モータ209の動作は、メインコントローラ201の指示に従ってモータドライバ208が制御する。
【0030】
ポジションチェンジモータ210は、サーマルヘッド116の位置を、画像形成時の位置や、待機もしくはインクリボン交換時の位置など、複数の位置の間で切り替えたり、機械的要素の位相切り替え機構を駆動したりする。ポジションチェンジモータ210の動作は、メインコントローラ201の指示に従ってモータドライバ208が制御する。
【0031】
通信部211は、上述した通信インタフェースである。通信部211は外部機器と相互に通信を行い、外部装置から印刷するデータや各種の命令を受信したり、外部装置にプリンタ100の情報などを送信したりする。メインコントローラ201は、外部装置から命令や指示を受信すると、それらに応じた動作を実行する。
【0032】
画像データ入力部212であり、通信部211を通じて外部装置から画像データを受け取る。なお、画像データ入力部212の機能はメインコントローラ201が実施してもよく、その場合には画像データ入力部212は不要である。
【0033】
画像処理部213は、画像データ入力部212が外部装置から受信した画像データに対して画像処理を適用する。画像処理部213が適用可能な画像処理には、画像データの復号処理、リサイズ処理、各種の補正処理などが含まれてよいが、これらは単なる例示であり、他の画像処理が適用されてもよい。画像処理部213はまた、画像処理を適用された画像データに基づいて印刷用のデータを生成する。
【0034】
ヘッドドライバ214は、画像処理部213で生成された印刷データに基づいてサーマルヘッド116の駆動を制御する。ヘッドドライバ214は、印刷データに基づいてサーマルヘッド116に設けられた複数の発熱体のそれぞれに印加する電気信号を生成し、サーマルヘッド116に出力する。サーマルヘッド116の発熱体は電気信号を熱エネルギーに変換し、インクリボン114に塗布されている色材(染料)を印刷用紙に転写する。
【0035】
図3は本実施形態に係るインクリボン114の構成例を示す図である。インクリボン114は複数の色材が搬送方向に1色ずつ規則的に配置された構成を有する。ここではインクリボン114がフルカラー印刷用であり、画像形成用の色材としてイエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)の色材を有するものとする。さらに、インクリボン114は、印刷用紙の画像形成面に保護層を形成するための無色透明の色材であるオーバーコート(OC)を有する。インクリボン114が有する画像形成用の色材の種類は一例であり、他の色材を用いてもよい。また、オーバーコート用の色材は必須でない。
【0036】
本実施形態のインクリボン114には画像形成用の3つの色材とオーバーコート用の1つの色材とが搬送方向に周期的に配列されており、異なる色材間の境界にはマーカー114-1が設けられている。マーカー114-1は、リボン検知センサ207で検出可能な反射率を有する物質で構成される。マーカー114-1は、インクリボン114ベースフィルムを利用したり、物質を塗布したりすることにより形成される。
【0037】
インクリボン114は、厚さ2~10数μm程度の耐熱性の高いベースフィルム(例えばPETフィルムなど)に、色材が塗布された構成を有する。画像形成用の色材は、染料、バインダー、可塑剤、粘結剤等からなり、厚さは0.2~5μm程度である。また、オーバーコート用の色材は、スチロース誘導体、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、バインダー等からなり、厚さは0.5~5μm程度である。また、ベースフィルムの、色材が塗布された面の反対側の面には、摩擦抵抗を小さくしインクリボン114の走行を安定化させるための潤滑材や、サーマルヘッド表面を清掃するための研磨剤などを含んだ層が塗布により形成されている。なお、ここで述べた塗料の組成や厚みなどは例示である。
【0038】
マーカー114-1のうち、色材の繰り返し単位の開始を示すマーカーは、他のマーカーと異なるパターンもしくは反射率を有する。図3の例では、搬送方向においてイエロー(Y)の色材の直前(あるいはオーバーコートの色材とイエロー(Y)の色材との境界)に設けられるマーカー114-1Yが、色材の繰り返し単位の開始を示すマーカーである。図3の例では、マーカー114-1M、114-1C、114-1OCがインクリボン114の幅方向に延びる1本の直線で構成されるのに対し、マーカー114-1Yはインクリボン114の幅方向に延びる2本の直線で構成されている。
【0039】
プリンタ100の印刷動作を、印刷動作中の異なる状態におけるプリンタ100の断面図である図4A図4Cと、プリンタ100の印刷動作に関するフローチャートである図5とを用いて説明する。
図4A(a)は待機状態、図4A(b)は給紙状態、図4B(a)は画像形成の開始前状態、図4B(b)は画像形成中、図4C(a)は画像形成終了後、排紙動作前の状態、図4C(b)は排紙動作後におけるプリンタ100の各部の状態をそれぞれ示している。後述するように、プリンタ100の排紙動作は、印刷用紙の一部をプリンタ内で保持した状態で完了し、印刷用紙を完全にはプリンタ外へ排出しない。
【0040】
操作部103により電源オンされると、メインコントローラ201は起動処理を実行し、プリンタ100は待機状態となる。起動処理においてカセット300がセットされていなかったり、用紙収容部117に印刷用紙113がなかったりといったエラーが検出された場合、メインコントローラ201は表示部102を通じてユーザにエラーを通知する。
【0041】
プラテンローラ115は、印刷用紙を搬送したり、印刷用紙をサーマルヘッド116の発熱体に押圧したりするために設けられている。サーマルヘッド116はサーマルヘッド回転軸119により支持され、サーマルヘッド回転軸119を回転軸として移動可能である。サーマルヘッド116は、不図示の付勢部材により図中時計回り方向、すなわちプラテンローラ115とサーマルヘッド116との距離が大きくなる方向へ付勢されている。そのため、図4A(a)に示す待機状態および図4C(b)に示す排紙動作後の状態においては、他の状態よりもプラテンローラ115とサーマルヘッド116との距離が大きい。
【0042】
外部装置との通信が可能な状態になったのち、外部装置において、印刷するデータの選択と印刷指示とが与えられると、外部装置からプリンタ100に印刷指示情報が送信される。通信部211は印刷指示情報のうち印刷命令をメインコントローラ201に、印刷対象であるデータを画像データ入力部212に、それぞれ出力する。画像処理部213は画像データ入力部212から得られるデータに基づいて印刷用データを生成し、ヘッドドライバ214に出力する。
【0043】
一方、メインコントローラ201は印刷指示を受信すると、印刷動作を開始する(図5)。メインコントローラ201は印刷動作を開始すると、ポジションチェンジモータ210を制御し、サーマルヘッド回転軸119を中心に図中反時計回りにサーマルヘッド116を回転させる。これにより、メインコントローラ201は、図4A(b)に示す様に、図4A(a)に示す待機位置と、プラテンローラ115とニップする図4B(b)に示す画像形成中の位置との中間位置へサーマルヘッド116を移動する(S102)。
【0044】
また、ポジションチェンジモータ210は、給紙ローラ121を、印刷用紙113に接触しない位置から、印刷用紙に接する位置まで押下する。給紙ローラ121は、図4A(a)に示す待機位置では、印刷用紙113から離間した位置に退避している。図4A(b)に示す中間位置において、給紙ローラ121は印刷用紙113に接触する位置に押下される。
【0045】
ポジションチェンジモータ210の動作によるサーマルヘッド116や給紙ローラ121の移動は、ポジションチェンジモータ210の駆動力を利用する機構によって間接的に実現される。
【0046】
サーマルヘッド116の移動が完了すると、メインコントローラ201は給紙動作を開始する(S103)。不図示の付勢部材により給紙ローラ121側へ付勢された加圧板120は、用紙収容部117内に収容された印刷用紙113を給紙ローラ121へ押圧する。
【0047】
メインコントローラ201は、用紙搬送モータ209(図4Aには不図示)を制御し、給紙ローラ121を図中反時計方向へ回転させる。加圧板120により給紙ローラ121に押圧されている印刷用紙113は、給紙ローラ121の回転に伴って、サーマルヘッド116とプラテンローラ115との隙間に向かって搬送される。ここで、印刷用紙113が複数枚まとめて搬送されることを防ぐために、分離土手部122が設けられている。分離土手部122により、用紙収容部117に収容された印刷用紙113のうち一番上の1枚だけが搬送され、2枚目以降は分離土手部122に突き当たることによって移動を停止する。
【0048】
搬送された印刷用紙113が第1の用紙検知センサ206-1に検出されると、メインコントローラ201は給紙動作が正常に行われていると判定する。印刷用紙113は、回転可能に支持された切換板123を上方へ移動させながら図中左方向へ進行し、搬送ローラ124と搬送従動ローラ125とが形成するニップ部へ進入する。
【0049】
搬送ローラ124には印刷用紙113を正確に搬送するために、印刷用紙113の裏面(画像形成される面と反対側の面)に突き刺さる微小な突起が複数形成されている。搬送ローラ124は用紙搬送モータ209(図4Aには不図示)により駆動される。用紙搬送モータ209は、ステッピングモーターであり、印刷用紙113の搬送量を正確に制御可能である。印刷用紙113が、搬送ローラ124と搬送従動ローラ125とが形成するニップ部へ搬送されると、メインコントローラ201は、ポジションチェンジモータ210を制御して給紙ローラ121を図4A(a)に示す待機状態の位置へ移動させる。これにより、用紙収容部117内の印刷用紙がさらに搬送されることを防止する。
【0050】
搬送ローラ124および搬送従動ローラ125による印刷用紙113の搬送が継続されること、印刷用紙113の後端が第1の用紙検知センサ206-1の位置を通過したことが検知される。メインコントローラ201は、この検知に応答して印刷用紙113をさらに所定量搬送してから搬送を停止する。搬送が停止した時点で、印刷用紙113の後端は切換板123の先端よりも左側にある。
【0051】
次に、メインコントローラ201は、印刷用紙113を逆方向へ所定量搬送し、図4B(a)に示す画像形成開始位置で停止させる(S104)。逆方向への搬送時に印刷用紙113の後端は切換板123の上側を通る。そして、印刷用紙113は給紙ローラ121の下側を通過し、バッテリ126の下部を仕切り、かつ保持しているガイド壁127と、用紙収容部壁128との間のスペースへと搬送される。
【0052】
給紙動作が完了し、印刷用紙113が画像形成開始位置へ停止すると、メインコントローラ201はインクリボン114の頭出し動作を実行する(S105)。インクリボン114の頭出し動作は、インクリボン114の色材の繰り返し単位の開始を示すマーカー(マーカー114-1Y)の検出動作である。
【0053】
メインコントローラ201は、インクリボン114の搬送を開始する。具体的には、メインコントローラ201は、カセット300内に設けられた巻取り軸301と係合する巻き取り機構を不図示の動力により図中反時計回りに駆動する。これにより、供給軸302に巻かれているインクリボン114が巻取り軸301に巻き取られる。メインコントローラ201は、インクリボン114の巻き取りを行いながら、リボン検知センサ207の出力を監視する。そして、メインコントローラ201は、インクリボン114の色材の繰り返し単位の開始を示すマーカー(マーカー114-1Y)に対応する出力が検出されると、インクリボン114の巻き取りを停止する。
【0054】
メインコントローラ201は、インクリボン114の搬送を開始してから規定時間内にマーカー114-1Yが検出されればマーカーを正常検出したと判定し、S108を実行する。一方、メインコントローラ201は、インクリボン114の搬送を開始してから規定時間内にマーカー114-1Yが検出されなければマーカーを正常検出しなかったと判定し、S107を実行する。
【0055】
S107でメインコントローラ201は、カセット300の異常と判定し、表示部102を通じてエラーをユーザに報知し、S128およびS129を実行する(印刷用紙を排出して印刷動作を終了する)。
【0056】
S108でメインコントローラ201は、ポジションチェンジモータ210を制御して、サーマルヘッド116をサーマルヘッド回転軸119を中心に図中反時計回りに回転させ、図4B(b)に示す画像形成位置へ移動させる。画像形成位置においてサーマルヘッド116には、プラテンローラ115によってインクリボン114と印刷用紙113とが押圧されている。
【0057】
S109でメインコントローラ201は、印刷データのうちY成分に対する画像形成処理を実行する。メインコントローラ201は、印刷用紙113およびインクリボン114を排紙口101-3方向に搬送する。搬送と並行して、ヘッドドライバ214が印刷データのY成分に基づいてサーマルヘッド116の発熱体に印加する電流を制御することにより、インクリボン114に塗布されたYインクが印刷用紙113へ転写され、Y成分の画像が形成される。画像形成中、インクリボン114と印刷用紙113は同じ速度で搬送される。そのため、プリンタ100に設けられたインクリボン搬送機構には一定トルク以上の負荷が掛かるとスリップをする不図示のトルクリミッタ機構が組み込まれている。
【0058】
インクリボン114と印刷用紙113は、サーマルヘッド116の発熱体下を通過してから一定の距離の間は密着状態を保持したまま同一方向に搬送された後、互いに離間する方向へ搬送される。すなわち、印刷用紙113は搬送ローラ124により図中左方向へ搬送され、インクリボン114はサーマルヘッド116に一体的に配された剥離板129に摺動しながらカセット300内に設けられたガイド軸303方向に搬送される。
【0059】
印刷用紙113に対するY成分の画像形成が完了すると、S110でメインコントローラ201は、ポジションチェンジモータ210を駆動してサーマルヘッド116を図4C(a)に示される中間位置に退避させる。
【0060】
その後、S111でメインコントローラ201は、印刷用紙を再び図4B(a)に示す画像形成開始位置に搬送する。そして、S112でメインコントローラ201はインクリボン114の頭出しを行う。ここでの頭出しは、Mインクの先頭に設けられたマーカー114-1Mの検出である。その後、メインコントローラ201は、S106、S108、S109と同様にしてS113~S115で印刷データのM成分について画像形成を実行する。
【0061】
M成分についての画像形成が終了すると、メインコントローラ201は、M成分と同様にしてC成分についての画像形成を実行する(S116~S121)。その後、メインコントローラ201は、保護層を形成するためにOCインクを用いた画像形成を実行する(S122~S127)。OCインクを用いた画像形成では、印刷用紙の画像形成面の全体に保護層を形成するための印刷データを用いる。
【0062】
OCインクを用いた画像形成が終了すると、メインコントローラ201は、図4C(a)に示す中間位置にサーマルヘッド116を移動させた後、印刷用紙113を排紙口101-3方向に搬送する。メインコントローラ201は、第2の用紙検知センサ206-2で印刷用紙113が検知されるようになってから、用紙サイズに応じた一定距離搬送を継続したのち、搬送を停止させる(S128)。印刷用紙113の搬送停止位置は、印刷用紙113の後端が搬送ローラ124と搬送従動ローラ125とのニップ部を通過し、かつ印刷用紙が存在することを第2の用紙検知センサ206-2が検出可能な位置である。
【0063】
S128で排紙が完了すると、S129でメインコントローラ201は、サーマルヘッド116を図4C(b)に示した待機位置に移動させて印刷動作を終了する。このようにして、イエロー、マゼンダ、シアン、オーバーコートの順に画像形成動作を繰り返すことにより、フルカラーの画像と保護層が印刷用紙113に形成される。
【0064】
上述したように、印刷処理が終了した時点で、印刷用紙113の後端はプリンタ100内に留まっている。これは、プリンタ100が排紙トレイを有していないため、印刷用紙の後端までプリンタ100の外部に搬送すると、印刷用紙113が落下するためである。プリンタ100は、印刷済みの印刷用紙113の落下を防止しつつ、印刷用紙113をプリンタ100から容易に引き出せるように保持する部材を有している。具体的には、図11を用いて後述するように、搬送ローラ124の下流側(排紙口101-3側)に、印刷用紙113を上下から挟んで保持する用紙ガイド部材130および132を設けている。
【0065】
なお、次の画像形成を行うには、印刷済みの印刷用紙113がプリンタ100から除去される必要がある。したがって、メインコントローラ201は、印刷済みの印刷用紙113がプリンタ100から除去されたか否かを、第2の用紙検知センサ206-2の出力に基づいて判定する。S130でメインコントローラ201は、第2の用紙検知センサ206-2で用紙が検知されているか否かを判定し、検知されていると判定されればS131を、検知されていないと判定されればS133を実行する。
【0066】
S131でメインコントローラ201は、表示部102を用いて、印刷が完了した印刷用紙をプリンタから取り除くことを促す表示を開始する。S132でメインコントローラ201は、S130と同様の判定を行い、第2の用紙検知センサ206-2で用紙が検知されていると判定されればS131を繰り返し実行し、検知されていないと判定されればS133を実行する。
S133でメインコントローラ201は、次の印刷指示を受け付け可能な印刷待機状態へ移行する。
【0067】
次に、プリンタ100の排紙口101-3付近の構造について図6図11を用いて説明する。
図6は、本体上ケース101-1と、天面フレーム111とを取り除いた状態のプリンタ100の上面図である。天面側(上側)に設けられる用紙ガイド部材130の排紙口101-3側には、用紙押さえ板131が取り付けられている。用紙押さえ板131は、底面側(下側)に設けられる用紙ガイド部材132の上部を覆っている。用紙押さえ板131(第1の部材)と、用紙ガイド部材132(第2の部材)とは、印刷が完了した印刷用紙113を一部が排紙口から外部に露出した状態で保持する保持手段を構成する。
【0068】
図7に示すように、用紙押さえ板131は、排紙口101-3側を上底とし、下底よりも上底が短い略台形状の弾性シート状部材によって形成される。用紙押さえ板131は遮光性を有する。用紙押さえ板131は例えばシート状の樹脂材料から形成することができるが、他の材料を用いてもよい。用紙押さえ板131の遮光性は、用紙押さえ板131を形成する素材が本来有する特性であってもよいし、顔料などによる着色などによって素材に付加した特性であってもよい。ここでは一例として、黒色顔料で着色されたPET(ポリエチレンテレフタレート)のシート状部材を用いるものとする。用紙押さえ板131の厚みは例えば1mm以下とすることができるが、使用する素材の剛性や、必要な押圧力などに応じて定めることができる。
【0069】
用紙押さえ板131は、上底部分に2箇所の切り欠き131-3を有する。その結果、用紙押さえ板131は排紙口101-3側に先細り形状の3つの凸部131-1および131-2が形成されている。図6に示すように、3つの凸部のうち、中央の凸部131ー1(第1の押圧部)は両脇の2つの凸部131-2(第2の押圧部)よりも用紙搬送方向および幅方向(用紙搬送方向と直交する方向)とも大きいサイズを有する。
【0070】
用紙押さえ板131は、下底側の端部を用紙ガイド部材130の用紙押さえ板取り付け部130-1に両面テープなどにより取り付けられ、用紙ガイド部材130に片持ち梁に支持される。これにより、用紙押さえ板131の上底側の端部で印刷済みの印刷用紙113を上方から押圧し、用紙ガイド部材132との間で印刷済みの印刷用紙113の後端部分を保持することができる。印刷済みの印刷用紙113は、ユーザが引き出せるよう、一部が排紙口101-3から露出した状態で保持される。
【0071】
用紙押さえ板131の2つの切り欠き部131-3からは、用紙ガイド部材132を不図示のシャシ110の底面部に固定するためのビス133が見えている。図6中、点線で囲んだ排紙部付近について、用紙ガイド部材130、132、および用紙押さえ板131を分解して排紙口101-3側からみた斜視図を図7に示す。
【0072】
図8(a)は、図7において用紙ガイド部材130に用紙押さえ板131を取り付けた状態を、図8(b)は、用紙ガイド部材130、132、および用紙押さえ板131がプリンタ100内に組み込まれた状態を、排紙口101-3側からみた斜視図である。
【0073】
さらに、図6中、点線で囲んだ排紙部付近について、不図示の第2の用紙検知センサ206-2上にあたるB-B断面の構成を図9に、端部付近にあたるA-A断面の構成を図10に示す。
【0074】
図9および図10に示すように、用紙ガイド部材130をプリンタ100に組み込んだ状態において、用紙押さえ板取り付け部130-1は排紙口101-3側に向かって下に傾斜した状態となる。換言すれば、用紙押さえ板取り付け部130-1は、用紙ガイド部材130がプリンタ100に取り付けられた状態で、用紙ガイド部材132の天面(記録用紙をガイドする面)と鋭角を成すように構成されている。
【0075】
図7に示すように、用紙ガイド部材132の天面には、突条であるガイドリブ132-1が幅方向に6か所、印刷用紙の搬送方向に渡って設けられている。搬送される印刷用紙は裏面をガイドリブ132-1に支持される。ガイドリブ132ー1は、用紙ガイド部材132と印刷用紙113との接触面積を削減し、スムーズな搬送に寄与する。
【0076】
天面132のうち、ガイドリブ132-1がない部分には、ベース面132-2と、ベース面132-2よりも下がった窪み部132-3とが形成されている。ベース面132-2の裏側には、第2の用紙検知センサ206-2とサーミスタ135が実装されたセンサ基板134が取り付けらる。ベース面132-2には、第2の用紙検知センサ206-2とサーミスタ135がベース面132-2から露出するように切り欠きが設けられている(図8(a))。
【0077】
最も外側に設けられた2つのガイドリブ131ー1のそれぞれの内側には窪み部132-3が形成されている。中央のベース面132-2と窪み部132-3とに挟まれた2本のガイドリブ132-1の間には、用紙ガイド部材132をプリンタ100のシャシの底面に取り付けるビス133を受け入れる座繰り部132-4が設けられている。
【0078】
図8(a)に示すように、用紙押さえ板131は用紙ガイド部材130がプリンタ100に組み込まれていない状態では平らな形状を有している。しかし、用紙ガイド部材130がプリンタ100に組み込み状態においては、図8(b)に示すように、中央の凸部131-1の先端部分が用紙ガイド部材132のベース面132-2に沿って屈曲する。凸部131ー1が、ベース面132-2のうち少なくとも第2の用紙検知センサ206-2とサーミスタ135が露出する切り欠き部を覆うよう、凸部131ー1の大きさおよび/または用紙ガイド部材130,132の位置関係が定められる。
【0079】
図9に示すように、用紙押さえ板131の凸部131-1は、用紙ガイド部材130がプリンタ100に組み込まれた状態において、第2の用紙検知センサ206-2上に位置する。また、凸部131ー1の先端部分はベース面132-2に沿って変形し、ベース面132-2にが密着している。用紙押さえ板131は弾性シート材料で形成されているため、凸部131-1(第1の押圧部)はベース面132-2を常に押圧するように付勢されている。
【0080】
用紙押さえ板131は遮光性を有するため、第2の用紙検知センサ206-2の上部を覆うだけでなく、ベース面132-2の排紙口101-3側に密着するように変形することにより、排紙口101-3から入射する外光を効果的に遮断することができる。そのため、排紙口101-3から入射する外光が第2の用紙検知センサ206-2の受光部に入射し、印刷用紙113が存在しないにもかかわらず存在すると誤検知することを防止する効果が高い。
【0081】
一方、図11に示すように、用紙押さえ板131の凸部131-2は、用紙ガイド部材130がプリンタ100に組み込まれた状態で、用紙ガイド部材132の窪み部132-3に対応する位置に設けられており、さらに凸部131ー1よりも短い。そのため、用紙押さえ板131の凸部131-2(第2の押圧部)は、用紙ガイド部材130がプリンタ100に組み込まれた状態でも用紙ガイド部材132の窪み部132-3に沿って変形しない。凸部131-2は、その先端が、窪み部132-3に接するか、窪み部132-3との間に印刷用紙の厚みよりも小さい間隙を形成する。用紙押さえ板131の凸部131-2(第2の押圧部)は、保持する印刷用紙113が存在するときだけ用紙ガイド部材132への押圧力を発生する。
【0082】
用紙ガイド部材132の凸部131ー1および131ー2は、搬送された印刷用紙113によって上側へと持ち上げられる。これにより、用紙押さえ板131の凸部131-1および131ー2は、用紙押さえ板131の弾性によって、印刷用紙113を用紙ガイド部材132の天面に向かって押圧する。
【0083】
ここで、両端の凸部131-2の先端を常時変形する状態にしないのは、印刷用紙が存在しない状態においてクリープが生じないようにするためである。常に変形した状態である凸部131-1にクリープが生じる恐れがあり、その場合には用紙ガイド部材132へ向かう押圧力は徐々に弱まってしまう。
【0084】
用紙押さえ板131の凸部131-1と、凸部131-2それぞれとの間の切り欠き部131-3は、ガイドリブ132-1を避けるように形成されている。用紙押さえ板131に、常時変形して用紙ガイド部材132を押圧する凸部131-1と、保持する印刷用紙113が存在するときだけ変形して用紙ガイド部材132を押圧する凸部131-2とを設けることにより、クリープによる押圧力の低下を抑制している。
【0085】
また、第2の用紙検知センサ206-2を覆う凸部131-1については、用紙ガイド部材132を常時押圧する様に構成することで、用紙ガイド部材132との密着性を向上させて、排紙口から入射する外光の遮蔽効果を高めている。
【0086】
本実施形態では、印刷が完了した記録媒体を完全には排出せずに保持する保持機構と、保持機構に保持されている記録媒体の有無を検出するセンサとを有するプリンタにおいて、排紙口から入射する外光を保持機構を構成する部材を利用して遮断するようにした。そのため、排紙口から入射する外光の影響による記録媒体の有無の誤検出を、遮光のための部材を新たに設けることなく抑制することができる。
【0087】
(その他の実施形態)
上述の実施形態ではプリンタを対象として記載したが、本発明は記録媒体を搬送する媒体搬送装置に対しても同様に適用可能である。すなわち、本発明にはプリントヘッドやインクリボンなど、画像形成に関する構成は必須ではない。
【0088】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0089】
本発明は上述した実施形態の内容に制限されず、発明の精神および範囲から離脱することなく様々な変更及び変形が可能である。したがって、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0090】
100…プリンタ、101-1…本体上ケース、101-2…本体下ケース、101-3…排紙口、113…印刷用紙、114…インクリボン、130、132…用紙ガイド部材、131…用紙押さえ板
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10