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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】発酵カバノキ樹液及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 1/02 20060101AFI20240410BHJP
   C12P 7/22 20060101ALI20240410BHJP
   C12P 19/04 20060101ALI20240410BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20240410BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240410BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20240410BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20240410BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20240410BHJP
   A61K 8/9728 20170101ALI20240410BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20240410BHJP
   A61K 36/07 20060101ALI20240410BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240410BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
C12P1/02 Z
C12P7/22
C12P19/04 B
C12N1/00 K
A61Q19/00
A61Q19/02
A61Q19/08
A61K8/9789
A61K8/9728
A61K36/185
A61K36/07
A61P17/00
A61P39/06
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020037453
(22)【出願日】2020-03-05
(65)【公開番号】P2021019577
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-09-05
(31)【優先権主張番号】201910689097.4
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520045491
【氏名又は名称】ゼァージァン ヤンシェンタン インスティテュート オブ ナチュラル メディケイション カンパニー、リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドゥアン、インギー
(72)【発明者】
【氏名】ワン、シンユエ
(72)【発明者】
【氏名】ホン、タオ
【審査官】飯濱 翔太郎
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101368158(CN,A)
【文献】特許第3008292(JP,B2)
【文献】特開平10-191783(JP,A)
【文献】Journal of Cosmetics, Dermatological Sciences and Applications,2019年06月12日,Vol.9,P.188-205
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P
C12N
A61Q 19/00
A61Q 19/02
A61Q 19/08
A61K 8/9789
A61P 17/00
A61P 43/00
A61K 8/9728
A61K 36/185
A61K 36/07
A61P 39/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主要な基質としてカバノキ樹液、及び株としてカバノアナタケ(Inonotus obliquus)発酵由来の、発酵カバノキ樹液であって、カバノキ樹液の含有量は、発酵において用いられる発酵培地の総重量に基づいて、90%以上であり、発酵カバノキ樹液が、100mg/L以上の総フェノール類、及び1.3g/L以上の多糖類を含む、上記発酵カバノキ樹液
【請求項2】
発酵カバノキ樹液が、カバノキ樹液を基質として、カバノアナタケ(Inonotus obliquus)を株として用いる発酵により得られる、発酵カバノキ樹液の皮膚局所組成物における使用であって、カバノキ樹液の含有量は、発酵のステップにおいて用いられる発酵培地の総重量に基づいて、90%以上であり、発酵カバノキ樹液が、100mg/L以上の総フェノール類、及び1.3g/L以上の多糖類を含む、上記使用
【請求項3】
基質としてカバノキ樹液、及び株としてカバノアナタケ(Inonotus obliquus)の発酵由来の発酵カバノキ樹液を含む皮膚局所組成物であって、カバノキ樹液の含有量は、発酵において用いられる発酵培地の総重量に基づいて、90%以上であり、発酵カバノキ樹液が、100mg/L以上の総フェノール類、及び1.3g/L以上の多糖類を含む、上記皮膚局所組成物。
【請求項4】
皮膚局所組成物における発酵カバノキ樹液の含有量が、皮膚局所組成物の総重量に基づいて、80~95%である、請求項に記載の皮膚局所組成物。
【請求項5】
スキンケア化粧品組成物、ホワイトニング化粧品組成物、又はアンチエイジング化粧品組成物である、請求項に記載の皮膚局所組成物。
【請求項6】
カバノキ樹液を基質として、カバノアナタケ(Inonotus obliquus)を株として用いる発酵のステップを含む、発酵カバノキ樹液の製造方法であって、カバノキ樹液の含有量は、発酵のステップにおいて用いられる発酵培地の総重量に基づいて、90%以上であり、発酵カバノキ樹液が、100mg/L以上の総フェノール類、及び1.3g/L以上の多糖類を含む、上記方法
【請求項7】
発酵タンクにおいて発酵のステップで得られた発酵生成物をインシチュ熱抽出して、カバノアナタケの細胞内多糖類及びポリフェノール類を発酵のステップで得られた発酵ブロスに放出するステップをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
インシチュ熱抽出のステップが、発酵生成物を60~95℃に加熱し、30~150分間保持し、次いで18~30℃に冷却することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
発酵のステップにおいて、カバノキ樹液を単独の基質として用い、任意の追加の成分を添加しない、請求項に記載の方法。
【請求項10】
発酵のステップにおいて、炭素源、窒素源、無機塩、及び/又はpH調整剤がカバノキ樹液に添加され、この場合、カバノキ樹液の含有量は、発酵のステップにおいて用いられる発酵培地の総重量に基づいて、93%以上である、請求項に記載の方法。
【請求項11】
以下のステップを含む、請求項に記載の方法:
(1)シードブロスを調製する、
(2)カバノキ樹液発酵培地を調製する、
(3)接種し、発酵して発酵生成物を得る、
(4)発酵生成物をインシチュ熱抽出して、カバノアナタケの細胞内多糖類及びポリフェノール類をステップ(3)で得られた発酵ブロスに放出する、及び
(5)発酵ブロスを遠心分離して菌糸を除去し、これにより上清を得、上清を濾過して発酵カバノキ樹液を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発酵カバノキ樹液(fermented birch sap)及びその製造方法に関し、ここで上記発酵カバノキ樹液は基質としてカバノキ樹液を、及び株としてカバノアナタケ(Inonotus obliquus)を用いる発酵により得られるものであり、上記方法は基質としてカバノキ樹液を、株としてカバノアナタケを用いる発酵のステップを含む。
【背景技術】
【0002】
カバノキ(birch)はカバノキ科の落葉樹であり、現在世界中で約100種存在し、主に北温帯及び冷温帯に分布している。それらのうち、約29種が中国に、主に北東部、北西部及び南西部に分布している。カバノキの樹木はヒトの干渉がほとんどない、産業汚染のない遠く離れた山岳地帯で主に成長する。カバノキ樹液(birch sap)(カバノキジュース、バーチジュースとも呼ばれる)は切断されたカバノキ樹皮から又は穴を開けた幹からの新鮮な樹液である。それは無色又は薄い黄色をしており、沈殿物も不純物もなく、軽いカバノキの芳香を有している。カバノキ樹液は、糖、アミノ酸、ビタミン類、ビオチン、サイトカイニン類、微量の鉱物元素、芳香族オイル、ベツリン、及びサポニンのような多数の化合物を含有しており、良好な保湿、抗炎症、抗しわ、ホワイトニング、及び他のスキンケア効果を有している。
【0003】
現在の発酵プロセスにおけるカバノキ樹液の使用は飲料及びワインの分野に限られている。例えば、CN107586640Aはカバノキ樹液ワインの発酵プロセスを開示し、CN108676666Aはカバノキ樹液ビール及びその醸造方法を開示しており、カバノキ樹液は酵母により発酵されアルコール飲料を製造するものである。CN109055170Aはべツラ・アルバ(Betula Alba)樹液ビネガーとその調製方法を開示し、カバノキ樹液をアルコール及び酢酸発酵により発酵してカバノキ樹液ビネガーを得ている(合計酸含有量>3%)。したがって、現存のカバノキ樹液の発酵プロセスはカバノキ樹液中のエタノール及び酢酸の含有量を増大させることを目的とするものであって、カバノキ樹液に他の活性成分を持たせることができず、そのため発酵カバノキ樹液の使用を制限するものである。CN109077960Aはベツラ・アルバ樹液を含むアンチエイジング及びホワイトニング組成物を開示するが、発酵カバノキ樹液は化粧品原料として使用されているものの、発酵株、機能性成分及び原料の有効性は不明であり、発酵サイクルは30日と長く、生産収率は極めて低いものである。
【0004】
一般にチャーガキノコとして知られるカバノアナタケ(Inonotus obliquus)は、担子菌類(Basidiomycotina)、帽菌類(Hymenomycetes)、ヒダナシタケ目(Aphyllophorales)、サルノコシカケ科(Polyproranceae)、Poria hypobrunnea Petchに属する。カバノアナタケは、炭素、カリウム、窒素、カルシウム、及びアルミニウム等の10種を超える微量元素のほか、タンパク質、多糖類、フラボン類、ポリフェノール類、ステロール類、アルカロイド類、ペプチド類、及び有機酸等の活性物質を含有する。カバノアナタケにより生産されるこれらの活性物質は抗酸化、抗炎症性、免疫調節及び他の生物学的活性を有し、良好な応用可能性を有している。
【0005】
水中発酵技術はカバノアナタケの成長サイクルを短縮することができ、短時間で多量の菌糸を得ることができ、カバノアナタケに大量の細胞内及び細胞外産物を蓄積させることができる。カバノアナタケの発酵濾液はポリフェノール類、多糖類、及び他の活性成分を含有しているが(Zhu Jinwei et al., 2011, Journal of Zhejiang University of Science and Technology, Vol. 28, No. 4, pages 616‐620; Chen Caifa et al., 2007, Chinese Herbal Medicine, No. 3, pages 358‐361)、カバノアナタケのための現存の水中発酵プロセスは菌糸バイオマスと細胞内産物(トリテルペン類、多糖類等)を得ることに焦点を置いている。例えば、CN160978465A参照。これは全トリテルペン類の収率を増大させる発酵方法を開示している。
【0006】
また、カバノアナタケの発酵濾液は従来技術においてしばしば有機溶媒で処理されたり、濃縮により処理されたりする。例えば、CN104956925Aは、カバノアナタケの連続水面下発酵により発酵ブロス及び発酵粉末を製造する方法を開示し、ここで発酵濾液は濃縮処理に付され、それにより高い製造コストとなっていた。CN106434755Aは、カバノアナタケの水面下発酵ブロスとその使用を開示し、ここで発酵ブロスはエタノールで溶出され、有機溶媒の使用により環境汚染を引き起こしやすく、エネルギー消費量を増加させやすいものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術の状態に基づき、本発明は発酵カバノキ樹液の使用を広げ、カバノアナタケの発酵濾液の使用状況を改善することを試みるものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の内容
本発明者らは、改良された性能を有する発酵カバノキ樹液濾液が、株としてカバノアナタケを用い、単独の又は
主要な基質としてカバノキ樹液を用いて発酵により得られること、及び発酵カバノキ樹液濾液がカバノキ樹液自体の活性成分を有し、多糖類、ポリフェノール類、他の活性成分にも富んでおり、それにより皮膚局所組成物のための活性原料として有利に使用できることを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0009】
そのため、一つの態様では、本発明は、基質としてカバノキ樹液を用い、株としてカバノアナタケを用いる発酵のステップを含む、発酵カバノキ樹液濾液の製造方法に関する。
【0010】
好ましい態様では、該方法はさらに、発酵タンクにおいて発酵ステップで得られた発酵ブロスをインシチュで熱抽出して、カバノアナタケの細胞内多糖類及びポリフェノール類を発酵ブロスに放出することを含む。
【0011】
一つの態様では、インシチュ熱抽出は、発酵ブロスを約60~90℃、好ましくは約65~90℃、より好ましくは約70~85℃に加熱し、約30~150分間、好ましくは約40~100分間、より好ましくは約50~80分間保持し、次いで約8~30℃、好ましくは約20~28℃に冷却することを含む。
【0012】
一般に、発酵カバノキ樹液を製造する方法は具体的に以下のステップを含む:
(1)シードブロスを調製する、
(2)カバノキ樹液発酵培地を調製する、
(3)接種し、発酵して発酵ブロスを得る、
任意に、(4)発酵ブロスをインシチュ熱抽出する、及び
(5)発酵ブロスを遠心分離して菌糸を除去し、上清を濾過して発酵カバノキ樹液濾液(すなわち発酵カバノキ樹液)を得る。
【0013】
ステップ(1)のシードブロスの調製は当業界で公知である。例えば、固体培地プレートから掻き落としたカバノアナタケは特定量(例えば50ml)のシード培養培地を含有する振盪フラスコ中に接種することができ、25~30℃の温度及び150~180rpmの振盪速度で4~6日間インキュベートして一次シードブロスを得る。一次シードブロスを一定量(例えば400ml)のシード培養培地を5~10%の接種量で含有する振盪フラスコに移し、25~30℃の一定温度で150~180rpmの振盪速度で2~3日間インキュベートして二次シードブロスを得る。
【0014】
ステップ(1)では、好ましい固体培養培地はPDA培地であり、これは1000mLの脱イオン水、0.6%のジャガイモ抽出粉末、2%のグルコース、及び1.5%のアガーを含む。好ましいシード培養培地はオーツ麦胚芽ブラン培地であり、これは1000mLの脱イオン水、3%のグルコース、1%のオーツ麦胚芽ブラン粉末、1%の酵母粉末、0.1%のリン酸二水素カリウム、及び0.05%の無水硫酸マグネシウム、天然pHを含む。
【0015】
ステップ(2)では、カバノキ樹液発酵培地が、単独の基質としてカバノキ樹液を用い、任意に炭素源、窒素源、無機塩及び/又はpH調整剤を基質に添加することにより調製される。
【0016】
カバノキ樹液は、カバノキ科カバノキ属(Betula Betulaceae)から得られ、これはBetala alba、Betula pubescens、Betula Pendula、及びBetula platyphyllaを含む。カバノキ樹液は、雪が融け始める時期から樹木が葉を出す時期までにカバノキの樹木の幹の元から人工的に穴を開けて収集することにより得られる沈殿物や不純物を含まない、無色透明で栄養に富むカバノキ樹液である。カバノキ樹液は市販されており、そのまま使うことができる(この場合、それは非濃縮カバノキ樹液又はカバノキ樹液貯蔵液とも呼ばれる)。例えば、それはDaxinganling Chaoyue Wild Berry Development Co., Ltdから購入できる。
【0017】
カバノキ樹液はカバノキ樹液貯蔵液又は濃縮カバノキ樹液であってもよく、ここで濃縮カバノキ樹液は1.2~6倍、好ましくは1.5~4倍の濃縮度を有する。
【0018】
濃縮カバノキ樹液は上記の市販のカバノキ樹液を濃縮することにより得られる。濃縮方法は当業界で公知であり、例えば加熱濃縮、低温真空濃縮、及び膜濃縮等が挙げられる。本発明では、濃縮は好ましくは低温凍結濃縮又は膜濃縮プロセス等により行われる。例えば、市販のカバノキ樹液貯蔵液製品を低温乾燥装置に導入し、-40~-70℃に冷却し、低温真空濃縮のために0.1~30Paに減圧して、様々な濃縮度の濃縮カバノキ樹液を得る。
【0019】
一つの態様では、カバノキ樹液発酵培地は単独の基質としてカバノキ樹液を用いることができ、任意の追加の成分を添加せず、任意の追加の水も添加しないが、成分の各々に本来含まれている水分を除外するものではない。
【0020】
一つの態様では、炭素源、窒素源、無機塩、及び/又はpH調整剤を任意に必要に応じてカバノキ樹液に添加することができる。
【0021】
炭素源は当業界で公知であり、グルコース、グリセロール、糖蜜、ラクトース、マンノース、マルトース、コーンスターチ、スクロース、及びフルクトース等を含むが、これらに限定されない。本発明では、グルコースが好ましい。カバノキ樹液発酵培地中の炭素源の含有量は典型的には、カバノキ樹液発酵培地の総重量に基づいて、約0~3.5%、好ましくは約0.5~3%である。
【0022】
窒素源は当業界で公知であり、ホエイプロテイン、植物タンパク質、穀粉、加水分解植物ポリペプチド、酵母粉末、及びトリプトン(tryptone)を含むが、これらに限定されない。本発明では、好ましいホエイプロテインはホエイプロテイン粉末から単離される。好ましい植物タンパク質はエンドウ粉末、及び加水分解エンドウタンパク質である。好ましい穀粉はライムギ粉、加水分解オーツ麦粉、及び加水分解玄米粉である。カバノキ樹液発酵培地中の窒素源の含有量は典型的には、カバノキ樹液発酵培地の総重量に基づいて、約0~3%、好ましくは約0.3~2.5%である。
【0023】
無機塩は当業界で公知であり、リン酸二水素カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸二水素ナトリウム、及び塩化カルシウムを含むが、これらに限定されない。本発明では、リン酸二水素カリウム、及び無水硫酸マグネシウムが好ましい。カバノキ樹液発酵培地中の無機塩の含有量は典型的には、カバノキ樹液発酵培地の総重量に基づいて、約0~0.3%、好ましくは約0.05~0.1%である。
【0024】
pH調整剤は当業界で公知であり、クエン酸、クエン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、及び水酸化ナトリウムを含むが、これらに限定されない。本発明では、クエン酸とクエン酸ナトリウムが好ましい。任意に、カバノキ樹液発酵培地のpHは、カバノキ樹液原料の最初のpHに依存してpH調整剤を用いて約5.0~6.5に調整される。
【0025】
炭素源、窒素源、無機塩、及び/又はpH調整剤が発酵培地に含まれる場合は、カバノキ樹液発酵培地はこれらの材料をカバノキ樹液に添加することにより調製することができる。炭素源、窒素源、無機塩、及び/又はpH調整剤が発酵培地に含まれる場合は、発酵培地中のカバノキ樹液の含有量は、カバノキ樹液発酵培地の総重量に基づいて、約90%以上、好ましくは約93%以上である。
【0026】
ステップ(3)の接種及び発酵は当業界で公知である。例えば、ステップ(2)のカバノキ樹液発酵培地を100~12000L発酵タンクに約60~70%(v/v)の搭載体積で添加し、121℃で20~40分間殺菌する。発酵のための発酵培地の体積に基づいて、二次シードブロスを無菌条件下で発酵タンクに約5~10%の接種量で接種し、約25~30℃の温度、180~250rmpの攪拌速度、及び1.2~2.0vvmの通気で7~9日間連続的に発酵させ、次いで発酵操作を停止し、すなわち発酵プロセスを完了し、発酵ブロスを得る。
【0027】
ステップ(4)のインシチュ熱抽出は、発酵タンク中でステップ(3)で得られた発酵ブロスをインシチュ熱抽出して、カバノアナタケの細胞内多糖類及びポリフェノール類を発酵ブロス中に放出することを含む。一つの態様では、ステップ(4)は、ステップ(3)で得られた発酵ブロスを約60~95℃、好ましくは約65~90℃、より好ましくは約70~85℃に加熱し、約30~150分、好ましくは約40~100分、より好ましくは約50~80分間保持し、次いで約18~30℃、好ましくは約20~28℃に冷却することを含む。
【0028】
ステップ(5)の遠心分離及び濾過は当業界で公知であり、典型的には6000~10000rpmで15~30分間行われる。遠心分離ステップでは、上清が発酵ブロスを遠心分離して菌糸を除去することにより得られ、該上清は濾過して発酵カバノキ樹液濾液製品を得る。
【0029】
本発明の方法は、得られた濾液産物を(115±5)℃の温度で、10~30秒間、超高温瞬間殺菌に付すことをさらに含む。殺菌発酵カバノキ樹液濾液製品を次いで貯蔵用の貯蔵タンクに移す。
【0030】
上記方法で得られた発酵カバノキ樹液濾液製品(発酵カバノキ樹液ともいう)は色が薄く、透明である。これはカバノキ樹液基質自体の栄養成分(ビタミンB類、微量元素、アミノ酸、脂肪酸等を含む)だけでなく、約100mg/L以上、好ましくは約130mg/L以上、より好ましくは約150mg/L以上の総フェノール類、及び約1.3g/L以上、好ましくは約1.8g/L以上、より好ましくは約3.0g/L以上の多糖類も含有する。総フェノール類を測定する方法はフォリン‐チオカルトー熱量測定であり、細胞外多糖類の測定方法はアントロン‐硫酸熱量測定である。測定される総フェノール類は主に没食子酸、フェルラ酸、ナリンギン、ケルセチン、ケンペロールを含む。
【0031】
本発明の方法は従来技術のものと比較して以下の利点と効果を有する。
(1)カバノアナタケを出発株として、カバノキ樹液を発酵の主要基質として用いることにより、得られる発酵カバノキ樹液濾液は総フェノール類、多糖類、及び他の活性成分が原料カバノキ樹液よりも増加し、その結果、発酵カバノキ樹液製品は優れたチロシナーゼ活性阻害と抗酸化活性を有し、それゆえ、より良好な皮膚局所効果、例えばスキンケア効果を有し、これは発酵カバノキ樹液の使用範囲を広げ、もはや飲料やワインのためだけに使用を限定することがなくなる。
【0032】
(2)醗酵カバノキ樹液濾液の処理プロセスにおいて有機溶媒を用いないので、環境にやさしく、強い操作性を有している。
【0033】
(3)得られる発酵カバノキ樹液濾液を濃縮プロセスなしで直接使用することができ、それゆえ原料の利用率が改善され、生産コストが低減する。
【0034】
(4)カバノキ樹液発酵培地の配合は最適化され、グルコース及び植物タンパク質をカバノアナタケの発酵のための炭素源及び窒素源として用いる。原料は容易に入手でき、コストは低い。最適化された発酵培地で得られる発酵濾液は色が薄く、透明であり、従来技術で報告されるカバノアナタケの発酵ブロスよりも優れた特徴を有する。
【0035】
さらに別の態様では、本発明はさらに、皮膚局所組成物における発酵カバノキ樹液製品の使用に関し、発酵カバノキ樹液はカバノキ樹液を基質として、カバノアナタケを株として用いる発酵により得られる。好ましい実施態様では、発酵カバノキ樹液濾液製品は、約100mg/L以上、好ましくは約130mg/L以上、より好ましくは約150mg/L以上の総フェノール類、及び約1.3g/L以上、好ましくは約1.8g/L、より好ましくは約3.0g/Lの多糖類を含む。
【0036】
さらに別の態様では、本発明はさらに、(A)発酵カバノキ樹液を含む皮膚局所組成物に関し、発酵カバノキ樹液は基質としてカバノキ樹液を、株としてカバノアナタケを用いる発酵により得られる。
【0037】
好ましい実施態様において、発酵カバノキ樹液濾液製品は100mg/L以上、好ましくは130mg/L以上、より好ましくは150mg/L以上の総フェノール類、及び1.3g/L以上、好ましくは1.8g/L、より好ましくは3.0g/Lの多糖類を含む。
【0038】
皮膚局所組成物における発酵カバノキ樹液の含有量は広い範囲で変更することができ、例えば、皮膚局所組成物の総重量に対して、おおよそ0より多く、100%未満、好ましくは約80~95%であり得る。
【0039】
皮膚局所組成物は医薬組成物又は化粧品組成物、特にスキンケア化粧品組成物、ホワイトニング化粧品組成物、及びアンチエイジング(抗老化)化粧品組成物を包含する。
【0040】
発酵カバノキ樹液(A)に加えて、皮膚局所組成物は任意にさらに皮膚局所組成物に通常用いられる成分(B)を含むこともでき、これはビヒクル、活性成分、及び賦形剤等を含むが、これらに限定されない。成分(B)は当業界で公知であり、当業者は要求に応じてその種類と量を選ぶことができる。例えば、成分(B)の含有量は皮膚局所組成物の総重量に対して約2~82%である。
【0041】
ビヒクルとしては、例えば、希釈剤、分散剤、又は担体が挙げられる。例として、エタノール、ジプロピレングリコール、及びブタンジオールが挙げられるが、これらに限定されない。皮膚局所組成物におけるビヒクルの含有量は当業界で公知であり、例えば、成分(B)の総重量に対して典型的には0.5~20%である。
【0042】
活性成分としては、例えば、軟化剤(エモリエント)、保湿剤、ホワイトニング活性成分(美白活性成分)、及びアンチエイジング活性成分(抗老化活性成分)が挙げられる。
【0043】
軟化剤の例には、オリーブ油、マカダミアナッツ油、スイートアーモンド油、グレープシード油、アボカド油、コーン油、ゴマ油、大豆油、ピーナッツ油、メドウフォーム油、ベニバナ種子油、ローザ・カニナ果実油、アルガニア・スピノサ核油、ホホバ種子油、ヒマワリ種子油、オオミテングヤシ果実油、スクワラン、パルミチン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、水素化ポリイソブチレン、イソセタン、イソドデカン、炭酸ジエチルヘキシル、炭酸ジオクチル、イソプロピルラウロイルサルコシネート、イソノナン酸イソノニル、水素化ポリデセン、トリエチルヘキサノイン、エチルヘキサン酸セチル、ビス‐エトキシジグリコールシクロヘキサン1,4‐ジカルボキシレート、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、エルカ酸オレイル、オクチルドデカノールミリステート、オクチルドデカノール、ポリジメチルシロキサン、オクチルポリメチルシロキサン、セチルジメチコン、及びデカメチルシクロペンタシロキサンの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない。固体軟化剤の例には、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セテアリルアルコール、ベヘニルアルコール、スクアリルアルコール、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、蜜蝋、カンデリラワックス、カルナウバワックス、ラノリン、オゾケライト、ホホバシードワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、水素化米ぬかワックス、水素化ココグリセリド、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、ミリスチン酸ミリスチル、ビスジグリセリルポリアシルアジペート‐2、ブチロスパーマムパーキー(シアバター)、及びアストロカリウムモルムル種子脂の1つ以上が含まれるが、これらに限定されない。皮膚局所組成物における軟化剤の含有量は当業界で公知であり、例えば典型的には、成分(B)の総重量に対して、1~50%である。
【0044】
保湿剤の例には、グリセロール、ジグリセロール、ブタンジオール、プロピレングリコール、1,3‐プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,3‐プロパンジオール、ポリエチレングリコール‐8、ポリエチレングリコール‐32、メチルグルセス‐10、メチルグルセス‐20、PEG/PPG‐17/6コポリマー、グリセレス‐7、グリセレス‐26、グリセリルグルコシド、PPG‐10メチルグルコースエーテル、PPG‐20メチルグルコースエーテル、PEG/PPG/ポリブチレングリコール‐8/5/3グリセロール、スクロース、トレハロース、ラムノース、マンノース、ラフィノース、ベタイン、エリスリトール、キシリトール、尿素、乳酸グリセレス‐5、ヒアルロン酸ナトリウム、加水分解ヒアルロン酸ナトリウム、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム、ポリグルタミン酸ナトリウム、加水分解スクレロチウムガム、プルラン、トレメラム(tremellam)、及びタマリンド種子多糖類の1つ以上が含まれるが、これらに限定されない。皮膚局所組成物における保湿剤の含有量は当業界で公知であり、例えば、典型的には成分(B)の総重量に対して、1~30%である。
【0045】
ホワイトニング有効成分には、コウジ酸、アスコルビルグルコシド、アルブチン、トラネキサム酸、ニコチンアミド、フィトステロール、フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシルラウロイルグルタミン酸、フェネチルレゾルシノール、ウコン(Curcuma Longa)、シラカンバ樹皮エキス、セラミド2、セラミド3、アセチルフィトスフィンゴシン、レスベラトロール、プテロカルプスマルスピウム樹皮エキス、コレウスホルスコリ根エキス、コショウ種子エキス、ユビキノン、コレステロール、ステアリン酸コレステリル、アスコルビン酸、ジパルミチン酸アスコルビル、トコフェロール(ビタミンE)、酢酸トコフェリル、ビサボレン、アスコルビルテトライソパルミタート、ピリドキシンジカプリラート、ピリドキシンジパルミタート、レチニルパルミタート、フィトステリル/オクチルドデシルラウロイルグルタマート、ビスベヘニル/イソステアリル/フィトステリルダイマージリノレイルダイマージリノレアート、フィトステリルマカデミアート、様々なペプチド、及び様々な植物抽出物等の一つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。皮膚局所組成物におけるホワイトニング活性成分の含有量は当業界で公知であり、例えば成分(B)の総重量に対して、典型的には0.01~30%である。
【0046】
アンチエイジング活性成分の例には、トコフェロール(ビタミンE)、レチノール、パルミチン酸レチニル、加水分解コラーゲン、加水分解エラスチン、アラントイン、酵母エキス、オリザノール、テトラヒドロクルクミン、エラグ酸、ユビキノン、ホエイプロテイン、ペプチド、アセチルヘキサペプチド‐8、パルミトイルペンタペプチド‐4、サリチロイルフィトスフィンゴシン、濃縮カバノキ樹液、シリマリン、セリシン、トコフェリルリン酸ナトリウム、リボ核酸(RNA)、ジペプチドジアミノブチロイルベンジルアミドジアセタート、パルミトイルトリペプチド‐5、オリゴペプチド‐1、ヘキサペプチド‐9、パルミトイルオリゴペプチド、パルミトイルテトラペプチド‐7、ブドウ種子エキス、プテロカルプスマルスピウム樹皮エキス、チャノキ(Camellia sinensis)ポリフェノール類、ワインエキス、リンゴ種子エキス、ヨーロッパブナ芽エキス、バオバブエキス、アルテミアエキス、イリス根エキス、ヘスペリジン、ジンセノシド、丹参(Salvia miltiorrhiza)エキス、ニコチンアミド、ウルソール酸、ヒアルロン酸ナトリウム、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム、加水分解ヒアルロン酸ナトリウム、リコペン、アラビアコーヒーノキエキス、ジペプチド‐2、乳酸、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、月見草油、セラミド、ジパルミトイルヒドロキシプロリン、ヒドロキシステアリン酸、サリチル酸、エルゴチオネイン、リゾレシチン、カルノシン、デカルノシンHCL、リポ酸、アデノシン、グリコーゲン、レスベラトロール、フェルラ酸、ビフィズス菌培養溶解質、及び乳酸球菌培養溶解質などの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。アンチエイジング活性成分の含有量は当業界で公知であり、例えば成分(B)の総重量に対して、典型的に0.01~10%である。
【0047】
賦形剤は例えば、乳化剤、増粘剤、保存剤、香料等が挙げられる。
【0048】
乳化剤の例には、オリーブ油脂肪酸セテアリル、オリーブ油脂肪酸ソルビタン、ポリソルベート‐60、ポリソルベート‐80、メチルグルコースセスキステアラート、PEG‐20メチルグルコースセスキステアラート、PEG‐40硬化ヒマシ油、PPG‐26‐ブテス‐26、PEG‐4ポリグリセリル‐2ステアラート、PEG‐60硬化ヒマシ油、ステアレス‐2、ステアレス‐21、PPG‐13‐デシルテトラデセス‐24、セテアリルグルコシド、PEG‐100ステアラート、グリセリルステアラート、グリセリルステアラートSE、ココグルコシド、セテアレス‐25、PEG‐40ステアラート、ポリグリセリル‐3メチルグルコースジステアラート、クエン酸ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸ポリグリセリル‐10、ミリスチン酸ポリグリセリル‐10、ジオレイン酸ポリグリセリル‐10、ラウリン酸ポリグリセリル‐10、イソステアリン酸ポリグリセリル‐10、オレイン酸ポリグリセリル‐10、ジイソステアリン酸ポリグリセリル‐10、ラウリン酸ポリグリセリル‐6、ミリスチン酸ポリグリセリル‐6、ステアリン酸スクロース、ポリステアリン酸スクロースなどの一つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。皮膚局所組成物における乳化剤の含有量は当業界で公知であり、例えば成分(B)の総重量に対して、典型的に0.5~10%である。
【0049】
増粘剤の例には、カルボマー、アクリレート及びその誘導体、キサンタンガム、アラビアゴム、ポリエチレングリコール‐14M、ポリエチレングリコール‐90M、スクシニル多糖類、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの高分子ポリマーの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。皮膚局所組成物における増粘剤の含有量は当業界で公知であり、例えば成分(B)の総重量に対して、典型的に0.1~10%である。
【0050】
保存剤の例には、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾリジニル尿素、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、クロロフェネシン、デヒドロ酢酸ナトリウム、カプリルヒドロキサム酸、1,2‐ヘキサンジオール、1,2‐ペンタンジオール、p‐ヒドロキシアセトフェノン、カプリリルグリコール、グリセリルカプリレート、グリセリルウンデシレナート、ソルビタンカプリラート、エチルヘキシルグリセロール、及びシャクヤク根エキスなどの一つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。皮膚局所組成物における保存剤の含有量は当業界で公知であり、例えば成分(B)の総重量に対して、典型的に0.01~2%である。
【0051】
発酵カバノキ樹液濾液は、皮膚局所組成物(医薬組成物又は化粧品組成物)の産業で公知の任意の方法により、他の医薬又は化粧品成分と混合して、医薬組成物又は化粧品組成物を得ることができる。上記の他の医薬又は化粧品成分は皮膚局所組成物に一般に用いられる成分(B)である。
【0052】
皮膚局組成物は、必要に応じて、溶液、懸濁液、軟膏、クリーム、ローション、ジェル、粉末又はスプレーなどの様々な製品形態に調製することができる。
【実施例
【0053】
本発明を以下、例を参照してさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例及び比較例は本発明を具体的に説明するためだけに用いられるものであると理解されるべきであり、本発明の添付の特許請求の範囲を何ら限定するように理解されるべきではない。
【0054】
以下の例において、実施例1~5で用いられたカバノアナタケ株は、中国林業微生物保護管理センター(China Forestry Microbial Species Conservation and Management Center)に寄託された(株コード cfcc 6584)。比較例5~8で用いられた酵母(Saccharomyces cerevisiae)株はAngel Yeast Co.,Ltdからのものであった(株番号 ANGEL 1021)。
【0055】
実施例1:発酵カバノキ樹液濾液の調製
(1)シードブロスの調製
カバノアナタケを固体PDA培地プレートから掻き落とし、50mLのシード培地を含有する振盪フラスコに接種し、28℃の温度、及び150rpmの振盪速度で4日間インキュベートして、1次シードブロスを得た。1次シードブロスを400mLのシード培養培地を含有する振盪フラスコに10%の接種量で移し、28℃の一定温度及び150rpmで2日間インキュベートして、2次シードブロスを得た。ここで、シード培養培地は1000mLの脱イオン水、3%のグルコース、1%のオーツ麦胚芽ブラン粉末、1%の酵母粉末、0.1%のリン酸二水素カリウム、及び0.05%の無水硫酸マグネシウム、天然pHを含んでいた。
【0056】
(2)カバノキ樹液発酵培地の調製
基質として大興安嶺北東部(Daxing’an Mountain, Northeast)で採集したカバノキ樹液貯蔵液(ブリックス 0.875)に、炭素源として2%のグルコース、窒素源として0.3%のホエイプロテイン(WPI90、ニュージーランドのFonterra Groupから購入可能)、0.1%のリン酸二水素カリウム、及び0.05%の無水硫酸マグネシウムを加え、カバノキ樹液発酵培地のpHを1Mクエン酸水溶液で5.5に調整した。
【0057】
(3)接種及び発酵
上記ステップ(2)で調製したカバノキ樹液発酵培地を300L発酵タンクに60%(v/v)の搭載量で加え、121℃で30分間殺菌した。発酵のための発酵培地の体積に基づいて、2次シードブロスを5%の接種量で発酵タンクに無菌条件下で接種し、30℃、200rpm、及び1.8vvmの通気で7日間連続的に発酵させ、次いで発酵操作を停止して発酵ブロスを得た。
【0058】
(4)発酵カバノキ樹液濾液の調製
上記ステップ(3)で得られた発酵ブロスをタンク内で90℃にインシチュで加熱し、60分間保持し、28℃に冷却し、次いで6000rpmで30分間遠心分離して菌糸を除去した。遠心分離により得られた上清を珪藻プレートアンドフレームフィルターにより濾過し、カバノアナタケ発酵カバノキ樹液濾液を得た。さらに得られた濾液を120℃の温度で30秒間、超高温瞬間殺菌により殺菌し、殺菌された発酵カバノキ樹液濾液を貯蔵のため貯蔵タンクに移した。
【0059】
(5)発酵カバノキ樹液濾液の総フェノール類及び多糖類の含有量を測定した。結果を表1に示す。
【0060】
実施例2:発酵カバノキ樹液濾液の調製
(1)シードブロスの調製
シードブロスの調製手順は実施例1に記載した通りであった。
【0061】
(2)カバノキ樹液発酵培地の調製
基質としてフィンランドで採集したカバノキ樹液貯蔵液(ブリックス 1.3)に、炭素源として1.5%のグルコース、窒素源として1%のエンドウ粉末(Cargill Grain and Oil (Nantong) Co., Ltd.から購入可能)、0.1%のリン酸二水素カリウム、及び0.05%の無水硫酸マグネシウムを加え、カバノキ樹液発酵培地のpHを1Mクエン酸ナトリウム水溶液で5.8に調整した。
【0062】
(3)接種及び発酵
上記ステップ(2)で調製したカバノキ樹液発酵培地を100L発酵タンクに65%(v/v)の搭載量で加え、121℃で30分間殺菌した。発酵のための発酵培地の体積に基づいて、2次シードブロスを7%の接種量で発酵タンクに無菌条件下で接種し、30℃、200rpm、及び1.6vvmの通気で7日間連続的に発酵させ、次いで発酵操作を停止して発酵ブロスを得た。
【0063】
(4)発酵カバノキ樹液濾液の調製
上記ステップ(3)で得られた発酵ブロスをタンク内で80℃にインシチュで加熱し、90分間保持し、25℃に冷却し、次いで実施例1に記載するように遠心分離、濾過、及び加熱殺菌に付した。
【0064】
(5)発酵カバノキ樹液濾液の総フェノール類及び多糖類の含有量を測定した。結果を表1に示す。
【0065】
実施例3:発酵カバノキ樹液濾液の調製
(1)シードブロスの調製
シードブロスの調製手順は実施例1に記載した通りであった。
【0066】
(2)カバノキ樹液発酵培地の調製
基質としてカバノキ樹液濃縮物(3倍の濃縮度、ブリックス 3.58、小興安山北東部(Xiaoxing’an Mountain, Northeast)からのカバノキ樹液貯蔵液から作成された)に、炭素源として0.5%のグルコース、窒素源として3%の加水分解オーツ麦タンパク質(Xiamen Biograin Biological Technologyから購入可能)、0.1%のリン酸二水素カリウム、及び0.05%の無水硫酸マグネシウムを加え、カバノキ樹液発酵培地のpHを1Mクエン酸ナトリウム水溶液で6.0に調整した。
【0067】
(3)接種及び発酵
上記ステップ(2)で調製したカバノキ樹液発酵培地を500L発酵タンクに65%(v/v)の搭載量で加え、121℃で30分間殺菌した。発酵のための発酵培地の体積に基づいて、2次シードブロスを10%の接種量で発酵タンクに無菌条件下で接種し、30℃、220rpm、及び1.8vvmの通気で7日間連続的に発酵させ、次いで発酵操作を停止して発酵ブロスを得た。
【0068】
(4)発酵カバノキ樹液濾液の調製
上記ステップ(3)で得られた発酵ブロスをタンク内で65℃にインシチュで加熱し、120分間保持し、28℃に冷却し、次いで実施例1に記載するように遠心分離、濾過、及び加熱殺菌に付した。
【0069】
(5)発酵カバノキ樹液濾液の総フェノール類及び多糖類の含有量を測定した。結果を表1に示す。
【0070】
実施例4:発酵カバノキ樹液濾液の調製
(1)シードブロスの調製
シードブロスの調製手順は実施例1に記載した通りであった。
【0071】
(2)カバノキ樹液発酵培地の調製
基質としてカバノキ樹液濃縮物(1.5倍の濃縮度、ブリックス 1.8、小興安山北東部(Xiaoxing’an Mountain, Northeast)からのカバノキ樹液貯蔵液から作成された)に、炭素源として1.5%のグルコース、窒素源として3%の加水分解エンドウ豆タンパク質(ROQUETTE(China)Co.,Ltd.から購入可能)、0.1%のリン酸二水素カリウム、及び0.05%の無水硫酸マグネシウムを加え、カバノキ樹液発酵培地のpHを1Mクエン酸ナトリウム水溶液で6.0に調整した。
【0072】
(3)接種及び発酵
接種及び発酵の手順は実施例1に記載した通りであった。
【0073】
(4)発酵カバノキ樹液濾液の調製
上記ステップ(3)で得られた発酵ブロスを発酵タンクでの熱抽出を行うことななく、実施例1に記載するように遠心分離、濾過、及び加熱殺菌を直接施した。
【0074】
(5)発酵カバノキ樹液濾液の総フェノール類及び多糖類の含有量を測定した。結果を表1に示す。
【0075】
実施例5:発酵カバノキ樹液濾液の調製
(1)シードブロスの調製
シードブロスの調製手順は実施例1に記載した通りであった。
【0076】
(2)カバノキ樹液発酵培地の調製
炭素源、窒素源、無機塩、及びpH調整剤を添加することなく、実施例3のカバノキ樹液濃縮物(3倍の濃縮度、ブリックス 3.58、小興安山北東部(Xiaoxing’an Mountain, Northeast)からのカバノキ樹液貯蔵液から作成された)を原料として用いた。
【0077】
(3)接種及び発酵
接種及び発酵の手順は実施例3に記載した通りであった。
【0078】
(4)発酵カバノキ樹液濾液の調製
発酵カバノキ樹液濾液の調製手順は実施例3に記載した通りであった。
【0079】
(5)発酵カバノキ樹液濾液の総フェノール類及び多糖類の含有量を測定した。結果を表1に示す。
【0080】
比較例1:未発酵カバノキ樹液濾液の調製
(1)カバノキ樹液培地の調製
カバノキ樹液培地の調製及び殺菌手順は実施例1に記載した通りであった。
【0081】
(2)未発酵カバノキ樹液濾液の調製
カバノキ樹液培地に接種及び発酵を施さず、未発酵カバノキ樹液濾液の調製手順は実施例1のステップ(4)に記載した通りであった。
【0082】
(3)未発酵カバノキ樹液濾液の総フェノール類及び多糖類の含有量を測定した。結果を表1に示す。
【0083】
比較例2:未発酵カバノキ樹液濾液の調製
(1)カバノキ樹液培地の調製
カバノキ樹液培地の調製及び殺菌手順は実施例2に記載した通りであった。
【0084】
(2)未発酵カバノキ樹液濾液の調製
カバノキ樹液培地に接種及び発酵を施さず、未発酵カバノキ樹液濾液の調製手順は実施例2のステップ(4)に記載した通りであった。
【0085】
(3)未発酵カバノキ樹液濾液の総フェノール類及び多糖類の含有量を測定した。結果を表1に示した。
【0086】
比較例3:未発酵カバノキ樹液濾液の調製
(1)カバノキ樹液培地の調製及び殺菌
カバノキ樹液培地の調製手順は実施例3に記載した通りであった。
【0087】
(2)未発酵カバノキ樹液濾液の調製
カバノキ樹液培地に接種及び発酵を施さず、未発酵カバノキ樹液濾液の調製手順は実施例3のステップ(4)に記載した通りであった。
【0088】
(3)未発酵カバノキ樹液濾液の総フェノール類及び多糖類の含有量を測定した。結果を表1に示した。
【0089】
比較例4:未発酵カバノキ樹液濾液の調製
(1)カバノキ樹液培地の調製
カバノキ樹液培地の調製及び殺菌手順は実施例4に記載した通りであった。
【0090】
(2)未発酵カバノキ樹液濾液の調製
カバノキ樹液培地に接種及び発酵を施さず、未発酵カバノキ樹液濾液の調製手順は実施例4のステップ(4)に記載した通りであった。
【0091】
(3)未発酵カバノキ樹液濾液の総フェノール類及び多糖類の含有量を測定した。結果を表1に示した。
【0092】
比較例5:酵母発酵カバノキ樹液濾液の調製
(1)カバノキ樹液発酵培地の調製
カバノキ樹液発酵培地の調製及び殺菌手順は実施例1に記載した通りであった。
【0093】
(2)酵母発酵カバノキ樹液及びその濾液の調製
30g/HL(百リットル)の添加量にしたがって、90gの酵母凍結乾燥粉末を1L殺菌生理食塩水に加え、均一に分散して、酵母シードブロスを得た。酵母シードブロスを300L発酵タンクに接種し、30℃、200rmp、及び1.2vvmの通気で48時間連続的に発酵させ、次いで発酵操作を停止して酵母発酵ブロスを得た。酵母発酵カバノキ樹液濾液を実施例1のステップ(4)に記載のように得た。
【0094】
(3)酵母発酵カバノキ樹液濾液の総フェノール類及び多糖類の含有量を測定した。結果を表1に示した。
【0095】
比較例6:酵母発酵カバノキ樹液濾液の調製
(1)カバノキ樹液発酵培地の調製
カバノキ樹液発酵培地の調製及び殺菌手順は実施例2に記載した通りであった。
【0096】
(2)酵母発酵カバノキ樹液及びその濾液の調製
30g/HL(百リットル)の添加量にしたがって、30gの酵母凍結乾燥粉末を350mL殺菌生理食塩水に加え、均一に分散して、酵母シードブロスを得た。酵母シードブロスを100L発酵タンクに接種し、30℃、180rmp、及び1.2vvmの通気で48時間連続的に発酵させ、次いで発酵操作を停止して酵母発酵ブロスを得た。酵母発酵カバノキ樹液濾液を実施例2のステップ(4)に記載のように得た。
【0097】
(3)酵母発酵カバノキ樹液濾液の総フェノール類及び多糖類の含有量を測定した。結果を表1に示した。
【0098】
比較例7:酵母発酵カバノキ樹液濾液の調製
(1)カバノキ樹液発酵培地の調製
カバノキ樹液発酵培地の調製及び殺菌手順は実施例3に記載した通りであった。
【0099】
(2)酵母発酵カバノキ樹液及びその濾液の調製
30g/HL(百リットル)の添加量にしたがって、150gの酵母凍結乾燥粉末を1.8L殺菌生理食塩水に加え、均一に分散して、酵母シードブロスを得た。酵母シードブロスを500L発酵タンクに接種し、30℃、200rmp、及び1.2vvmの通気で48時間連続的に発酵させ、次いで発酵操作を停止して酵母発酵ブロスを得た。酵母発酵カバノキ樹液濾液を実施例3のステップ(4)に記載のように得た。
【0100】
(3)酵母発酵カバノキ樹液濾液の総フェノール類及び多糖類の含有量を測定した。結果を表1に示した。
【0101】
比較例8:酵母発酵カバノキ樹液濾液の調製
(1)カバノキ樹液発酵培地の調製
カバノキ樹液発酵培地の調製及び殺菌手順は実施例4に記載した通りであった。
【0102】
(2)酵母発酵カバノキ樹液及びその濾液の調製
30g/HL(百リットル)の添加量にしたがって、90gの酵母凍結乾燥粉末を1L殺菌生理食塩水に加え、均一に分散して、酵母シードブロスを得た。酵母シードブロスを300L発酵タンクに接種し、30℃、180rmp、及び1.2vvmの通気で48時間連続的に発酵させ、次いで発酵操作を停止して酵母発酵ブロスを得た。酵母発酵カバノキ樹液濾液を実施例4のステップ(4)に記載のように得た。
【0103】
(3)酵母発酵カバノキ樹液濾液の総フェノール類及び多糖類の含有量を測定した。結果を表1に示した。
【0104】
表1:実施例1~5で得られた発酵カバノキ樹液濾液及び比較例1~8で得られたカバノキ樹液濾液の総フェノール類及び多糖類の含有量
【0105】
【表1】
【0106】
結果は、カバノアナタケにより生産された発酵カバノキ樹液濾液は、未発酵カバノキ樹液濾液及び従来酵母により発酵されたカバノキ樹液濾液よりも極めて有意に高い含有量の総フェノール類及び多糖類を含んでおり、これが生成物の活性を大きく増大させ、それにより皮膚局所組成物にそれを用いる可能性が生じていることを示した。
【0107】
実施例6:発酵カバノキ樹液濾液のホワイトニング効果の試験
この実施例では、実施例1~5で得られた発酵カバノキ樹液濾液及び比較例1~8で得られたカバノキ樹液濾液のホワイトニング効果を、チロシナーゼ活性阻害率に基づいて以下のように評価した。
【0108】
(1)チロシナーゼ活性阻害率の評価原理:チロシナーゼ(EC.1.14.18.1)は有機体においてメラニン合成のための重要な酵素であり、L‐チロシンの加水分解によりL‐dopaを形成する反応を触媒し、次いでL‐dopaを酸化してドパキノンを形成し、次いでこれに一連の酵素的及び非酵素的反応を施し、メラニンを形成する。それゆえ、有機体において生産されたメラニンの量はチロシナーゼの活性の阻害により調整することができる。
【0109】
(2)試薬
(a)PBSバッファー(0.2M、pH6.8):51mlの0.2Mリン酸二水素ナトリウム溶液及び49mLの0.2Mリン酸水素二ナトリウム溶液を十分に混合した。
【0110】
(b)L‐チロシン(1.5mM):0.0272gのL‐チロシンをPBSバッファーであらかじめ分散させ、30分間超音波処理し、100mLメスフラスコに移し、計量のためにPBSバッファーで一定体積とした。
【0111】
(c)チロシナーゼ(250U):チロシナーゼ(Sigma Aldrichから購入)をPBSバッファーに溶解し、100mLメスフラスコに移し、計量のためにPBSバッファーで一定体積として250U/mLの使用溶液を調製した。
【0112】
(3)4つの遠心分離チューブA、B、C、及びDに0.25mL L‐チロシン及び0.25mL PBSをそれぞれ添加した。チューブB及びDに0.25mL サンプル溶液を追加的に添加した。チューブA及びCに0.25mL PBS溶液を追加的に添加した。4つのチューブを十分に渦混合し、37℃の一定温度で10分間保持し、チューブC及びDには0.25mL酵素溶液を添加し、チューブA及びBには同体積のPBSバッファーを添加して試験サンプル体積とした。4つのチューブを37℃で20分間保持した。200マイクロリットルの上記試験溶液を96ウェルプレートに添加し、475nmでの吸光度をミクロプレートリーダーで検出した。
【0113】
(4)チロシン活性阻害率の計算
チロシナーゼ活性阻害率%=((C-A)-(D-B))/(C-A)*100%
得られた結果を下記表2に示した。
【0114】
表2:実施例1~5で得られた発酵カバノキ樹液濾液及び比較例1~8で得られたカバノキ樹液濾液のチロシナーゼ活性阻害率の比較
【0115】
【表2】
【0116】
結果は、カバノアナタケにより生産された発酵カバノキ樹液濾液は、未発酵カバノキ樹液濾液及び従来酵母により発酵されたカバノキ樹液濾液よりも極めて有意に高いチロシナーゼ活性阻害率を示しており、これはカバノアナタケにより生産された発酵カバノキ樹液濾液が大きなホワイトニング効果を有し、したがってホワイトニング効果を有する皮膚局所組成物、特にホワイトニング化粧品組成物において用いることができることを示した。
【0117】
実施例7:発酵カバノキ樹液濾液の抗酸化の試験
この実施例では、実施例1~5で得られた発酵カバノキ樹液濾液及び比較例1~8で得られたカバノキ樹液濾液の抗酸化を、ヒドロキシルラジカル清掃率及びDPPHラジカル清掃率に基づいて以下のように評価した。
【0118】
1.ヒドロキシルラジカル清掃率
(1)試験原理:FeCl‐EDTA、過酸化水素及びアスコルビン酸の混合物をpH7.4で反応させてヒドロキシルラジカルを生成し、このヒドロキシルラジカルがデオキシリボースを分解してマロンジアルデヒドを形成することができることが知られている。低pHで、生成物マロンジアルデヒド(MDA)及びチオバルビツール酸(TBA)を加熱しピンクの発色団を生成し、ヒドロキシラジカル含有量をピンクの発色団の含有量に基づいて測定することができる。
【0119】
(2)試験方法:(A)75μL 0.8mM FeCl+75μL 4mM EDTA+600μL 4mM KHPO‐KOHバッファー+2.0565mL 蒸留水+43.5μL 3%H+75μL 112mMデオキシリボース+75μL 4mM アスコルビン酸;(B)75μL 0.8mM FeCl+75μL 4mM EDTA+600μL 4mM KHPO‐KOHバッファー+2.0565mLサンプル溶液+43.5μL 3%H+75μL 112mM デオキシリボース+75μL 4mM アスコルビン酸;(C)75μL 0.8mM FeCl+75μL 4mM EDTA+600μL 4mM KHPO‐KOHバッファー+2.0565mLサンプル溶液+43.5μL 3%H+75μL 4mM アスコルビン酸を含む、3つの群の反応試薬を調製した。すべての群の反応混合物を37℃で1時間一定温度の水浴でインキュベートし、次いで、混合物に2mLの0.6%TBAを添加し、15分間沸騰水浴で加熱し、急速に冷却し、遠心分離した。上清を450nm、532nm、及び600nmの吸光度で測定した。
【0120】
(3)計算方法
ヒドロキシラジカル清掃率(%)=[1-(B-C)/A]*100%
【0121】
2.DPPHラジカル清掃率
(1)試験原理:DPPHラジカルは一電子ラジカルであり、517nmに特徴的な吸収を有している。フリーラジカルスカベンジャーは、DPPHラジカルの一電子とペアを形成して、517nmの吸収を消失させることができ、退色の程度はそれが受け取る電子の数と定量的な関係を有しており、これからフリーラジカルスカベンジャーの清掃能力が推測される。
【0122】
(2)試験方法:(A)1mL 蒸留水+3mL 0.1mM DPPH 反応溶液;(B)1mL サンプル溶液+3mL 0.1mM DPPH反応溶液;(C)1mL サンプル溶液+3mL エタノールを含む、3つの群の反応試薬を調製し混合した。すべての群を室温で30分間暗闇で十分に振盪し反応させ、次いで517nmで吸光度を測定した。
【0123】
(3)計算方法
DPPHラジカル清掃率(%)=[1-(B-C)/A]*100%
【0124】
得られた結果を以下の表3に示す。
【0125】
表3:実施例1~5で得られた発酵カバノキ樹液濾液及び比較例1~8で得られたカバノキ樹液濾液のヒドロキシルラジカル清掃率及びDPPHラジカル清掃率
【0126】
【表3】
【0127】
結果は、カバノアナタケにより生産された発酵カバノキ樹液濾液は、未発酵カバノキ樹液濾液及び従来酵母により発酵されたカバノキ樹液濾液よりも極めて有意に高いヒドロキシルラジカル清掃率及びDPPHラジカル清掃率を示しており、これはカバノアナタケにより生産された発酵カバノキ樹液濾液が大きな抗酸化効果を有し、したがって抗酸化効果を有する皮膚局所組成物、特に抗酸化化粧品組成物において用いることができることを示した。
【0128】
実施例8:ホワイトニングトナー(ホワイトニング化粧液)の調製
この実施例では、実施例1で調製された発酵カバノキ樹液濾液を用いて、ホワイトニングトナー(ホワイトニング化粧液)を調製した。配合は以下の通りとした。
【0129】
【表4】
【0130】
トナー(化粧液)を以下のように調製した。発酵カバノキ樹液濾液、安息香酸ナトリウム及びペンタンジオールを混合し濾過した。
【0131】
実施例9:抗酸化フェイスクリームの調製
この実施例では、実施例3で調製された発酵カバノキ樹液濾液を用いて、フェイスクリームを調製した。配合は以下の通りとした。
【0132】
【表5】
【0133】
フェイスクリームを以下のように調製した。上記配合中の油相成分及び水相成分をそれぞれ混合し、75℃に加熱してそれぞれ油相及び水相を調製した。得られた油相及び水相を均一化し、真空ホモジナイザーで乳化し、45℃に冷却し、香料及び安息香酸ナトリウムを添加し、よく混合した。
【0134】
上記例の技術的解決策は本発明の好ましい実施態様である。本発明の原理から離れることなく、様々な修正と変更を行うことができ、これらの修正と変更もまた本発明の範囲内にあるとみなされるべきである。