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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60B 19/00 20060101AFI20240410BHJP
   B60K 7/00 20060101ALI20240410BHJP
   F16H 1/28 20060101ALI20240410BHJP
   F16C 33/76 20060101ALI20240410BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20240410BHJP
   F16C 35/06 20060101ALI20240410BHJP
   F16J 15/3204 20160101ALI20240410BHJP
【FI】
B60B19/00 H
B60K7/00
F16H1/28
F16C33/76 Z
F16C19/06
F16C35/06 Z
F16J15/3204 201
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020043804
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2021142930
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】大橋 拓也
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-134917(JP,A)
【文献】特開2007-022342(JP,A)
【文献】中国実用新案第209755188(CN,U)
【文献】特開2008-213572(JP,A)
【文献】特開平10-258642(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102018202371(DE,A1)
【文献】特開2020-138729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 19/00
B60K 7/00
F16H 1/28
F16C 33/76
F16C 19/06
F16C 35/06
F16J 15/3204
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、
前記駆動源から入力される動力を減速して出力する減速機と、
前記減速機の出力により回転するメカナムホイールと、を備え、
前記減速機は、
前記駆動源から動力が入力される減速部と、
前記減速部を支持するキャリアと、
前記キャリアに対して相対回転可能なケースと、
前記ケースと前記キャリアとの間に配置される主軸受と、を備え、
前記メカナムホイールは、前記ケース及び前記キャリアの一方に固定され、
前記ケース及び前記キャリアの他方と一体化された固定部材と前記メカナムホイールとの間に、前記主軸受とは別に配置された補助軸受を備える駆動装置。
【請求項2】
前記メカナムホイールは、第1メカナムホイールと、前記第1メカナムホイールよりも前記駆動源側に配置される第2メカナムホイールとを含み、
前記補助軸受は、前記第1メカナムホイールよりも前記第2メカナムホイール側に配置される請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記補助軸受は、一つの単列軸受によって構成される請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記メカナムホイール及び前記固定部材は、前記補助軸受を配置する軸受配置部を備え、
前記メカナムホイール及び前記固定部材のうちの少なくとも一方の前記軸受配置部の径は、軸方向に隣接する周面の径と異なる請求項1から3のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記メカナムホイールと前記固定部材の間には、前記補助軸受の転動体の直径よりも小さい径方向寸法の隙間が設けられる請求項1から4のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記補助軸受の軸方向移動を規制する規制部材を備え、
前記メカナムホイールは、前記規制部材を収納する収納部を備える請求項1から5のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記メカナムホイールと前記固定部材との間に配置され、前記補助軸受が配置される空間を封止するオイルシールを備える請求項1から6のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記固定部材の径方向外側に配置され、前記固定部材の外周部よりも高い表面硬度を持つ高硬度部材を備え、
前記オイルシールのリップ部は、前記高硬度部材に当接する請求項7に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記補助軸受の軸方向移動を規制する規制部材を備え、
前記オイルシールは、前記規制部材と前記固定部材との間に配置される請求項7または8に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記補助軸受は、前記メカナムホイールのローラと径方向から見て重なる位置に設けられる請求項1から9のいずれか1項に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、メカナムホイールを駆動する駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送台車等のホイールを駆動する駆動装置が知られる。特許文献1は、駆動源と、駆動源から入力される動力を減速して出力する減速機と、減速機の出力により回転するメカナムホイールとを備える駆動装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-134917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メカナムホイールに外部から衝撃荷重等の荷重が入力された場合を考える。この場合に、特許文献1の構造のもとでは、主軸受の配置箇所とは異なる箇所において、その入力荷重を受けることができない。これに起因して、メカナムホイールに生じる曲げモーメントの増大を招く。特許文献1の開示技術は、この曲げモーメントを低減するうえで、特段の工夫を講じていない。
【0005】
本開示の目的の1つは、メカナムホイールに生じる曲げモーメントを低減できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するための本開示のある態様は駆動装置である。この態様の駆動装置は、駆動源と、前記駆動源から入力される動力を減速して出力する減速機と、前記減速機の出力により回転するメカナムホイールと、を備え、前記減速機は、前記駆動源から動力が入力される減速部と、前記減速部を支持するキャリアと、前記キャリアに対して相対回転可能なケースと、前記ケースと前記キャリアの間に配置される主軸受と、を備え、前記メカナムホイールは、前記ケース及び前記キャリアの一方に固定され、前記ケース及び前記キャリアの他方と一体化された固定部材と前記メカナムホイールとの間に、前記主軸受とは別に配置された補助軸受を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、メカナムホイールに生じる曲げモーメントを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の駆動装置の正面断面図である。
図2図1の拡大図である。
図3】第2実施形態の駆動装置を図2と同じ視点から見た拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態を説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、適宜、構成要素を省略、拡大、縮小する。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。本明細書での「固定」、「取り付け」とは、特に明示がない限り、言及する条件を二者が直接的に満たす場合の他に、他の部材を介して満たす場合も含む。
【0010】
(第1の実施の形態)図1を参照する。駆動装置10は、搬送台車等の車体12に組み付けられ、メカナムホイール18A、18Bの駆動に用いられる。以下、メカナムホイール18A、18Bの回転中心線CL1に沿った方向を駆動装置10の軸方向Xという。この回転中心線CL1を中心とする円の円周方向、半径方向に関して、駆動装置10の「周方向」、「径方向」という。
【0011】
駆動装置10は、駆動源14と、駆動源14から入力される動力、すなわち回転を減速して出力する減速機16と、減速機16の出力により回転するメカナムホイール18A、18Bとを備える。本実施形態の駆動源14はモータである。駆動源14の具体例は特に限定されない。駆動源14は、この他にも、例えば、ギヤモータ、エンジン等でもよい。
【0012】
減速機16は、駆動源14を支持する基部20を備える。基部20は、軸方向Xに延びる円筒状部材である。基部20は、車体12に固定される。基部20には、駆動源14の本体部14aが取り付けられる。
【0013】
減速機16は、入力軸22と、入力軸22を介して駆動源14から動力が入力される減速部24と、減速部24を支持するキャリア26A、26Bと、キャリア26A、26Bに対して相対回転可能なケース28と、を備える。
【0014】
入力軸22は、駆動源14の出力軸14bから動力を伝達可能に出力軸14bに接続される。入力軸22は、ケース28及び基部20の内側に配置される。
【0015】
減速部24は、駆動源14から入力される動力を減速し、その動力をキャリア26A、26Bまたはケース28に伝達する。この動力の伝達先は、後述する回転体36を構成し、本実施形態ではケース28である。本実施形態の減速機16は偏心揺動型減速機であり、減速部24は、ケース28の内周部に設けられる内歯歯車30と噛み合う揺動外歯歯車である。
【0016】
ケース28は軸方向Xに延びる円筒状部材である。ケース28の内側には減速部24及びキャリア26A、26Bが配置される。
【0017】
キャリア26A、26Bは、減速部24に対して軸方向側部に配置される。本実施形態のキャリア26A、26Bは、減速部24に対して車体側に配置される第1キャリア26Aと、減速部24に対して反車体側に配置される第2キャリア26Bとを含む。第1キャリア26Aと第2キャリア26Bはキャリヤピン等の連結体32によって連結される。連結体32は、第1キャリア26A及び第2キャリア26Bの一方の一部として一体成形されてもよいし、これらとは別体でもよい。
【0018】
キャリア26A、26Bは、ボルト等の締結部材B1によって、基部20の反車体側端部に固定される。これにより、キャリア26A、26Bは、車体12に固定される固定体34の少なくとも一部を構成する。また、ケース28は、後述する主軸受38A、38Bを介して、固定体34に対して回転可能に支持される回転体36の少なくとも一部を構成する。本実施形態において、固定体34は、キャリア26A、26Bの他に、減速機16の基部20を備える。また、本実施形態において、回転体36は、ケース28の全体である。
【0019】
減速機16は、ケース28とキャリア26A、26Bとの間に配置される主軸受38A、38Bを備える。固定体34を構成するキャリア26A、26Bは、主軸受38A、38Bを介して、回転体36を構成するケース28を回転可能に支持する。主軸受38A、38Bは、アンギュラ玉軸受、円筒コロ軸受等の転がり軸受である。主軸受38A、38Bは、ケース28と第1キャリア26Aとの間に配置される第1主軸受38Aと、ケース28と第2キャリア26Bとの間に配置される第2主軸受38Bとを含む。
【0020】
メカナムホイール18A、18Bは、回転体36とともに回転することで走行面を走行可能である。走行面は、例えば、床面、レール等である。本実施形態のメカナムホイール18A、18Bは、ケース28の外周側に配置される第1メカナムホイール18Aと、第1メカナムホイール18Aよりも駆動源14側に配置される第2メカナムホイール18Bとを含む。複数のメカナムホイール18A、18Bは、軸方向Xに配列される。複数のメカナムホイール18A、18Bは、共通する回転中心線CL1周りに回転可能である。本実施形態において、第1メカナムホイール18Aの内側には、ケース28の他に、減速機16の減速部24が配置される。本実施形態では、第1メカナムホイール18Aの軸方向外側面18aよりも軸方向内側に減速機16全体が配置される。また、第2メカナムホイール18Bの軸方向外側面18bより軸方向内側に減速機16全体が配置される。
【0021】
メカナムホイール18A、18Bは、ホイール本体40と、ホイール本体40に対して回転自在に取り付けられる複数の樽状のローラ42とを備える。ローラ42は、回転中心線CL1に対して傾斜した回転軸線CL2を中心として回転自在である。本実施形態において、第1メカナムホイール18Aと第2メカナムホイール18Bとのホイール本体40は、同じ部材の一部として一体形成されている。
【0022】
メカナムホイール18A、18Bは、ケース28及びキャリア26A、26Bの一方に固定される。この「一方」は、回転体36及び固定体34のうちの回転体36を構成し、本実施形態ではケース28である。これを実現するうえで、第1メカナムホイール18Aのホイール本体40は、ボルト等の締結部材B2によって、回転体36を構成するケース28に固定される。この他に、第1メカナムホイール18Aのホイール本体40の内側には、ケース28が圧入される。
【0023】
以上の駆動装置10の動作を説明する。駆動源14から減速部24に回転が入力される。減速部24に入力された回転は、減速部24で減速されて回転体36に伝達される。回転体36がメカナムホイール18A、18Bとともに回転することで、走行面上をメカナムホイール18A、18Bが走行する。
【0024】
ここで、駆動装置10は、ケース28及びキャリア26A、26Bのうちの他方と一体化された固定部材44とメカナムホイール18A、18Bとの間に配置される補助軸受46を備える。この「他方」は、固定体34及び回転体36のうちの固定体34を構成し、本実施形態ではキャリア26A、26Bである。この「固定部材44」は、本実施形態では、固定体34の一部となる減速機16の基部20である。
【0025】
補助軸受46は、主軸受38A、38Bとは別に配置される。補助軸受46は、主軸受38A、38Bに対して軸方向Xに離れた箇所に配置される。補助軸受46は、主軸受38A、38Bに対して径方向外側に配置される。補助軸受46は、第1メカナムホイール18Aよりも第2メカナムホイール18B側に配置される。本実施形態の補助軸受46は、この条件を満たす位置として、第2メカナムホイール18Bの内側に配置される。補助軸受46は、第2メカナムホイール18Bの軸方向Xでの中心位置P1に対して、主軸受38A、38Bとは軸方向Xの反対側に配置される。補助軸受46は、径方向から見て、第2メカナムホイール18Bのローラ42と重なる位置に設けられる。
【0026】
図2を参照する。本実施形態の補助軸受46は玉軸受である。補助軸受46は、転動体48と、内輪50と、外輪52とを備える。内輪50には、転動体48が転動する内側転動面50aが設けられる。外輪52には、転動体48が転動する外側転動面52aが設けられる。本実施形態において、内輪50は固定部材44とは別体であり、外輪52はメカナムホイール18A、18Bとは別体である。
【0027】
補助軸受46は、単列の転動体48を備える単列軸受によって構成される。補助軸受46は、一つの単列軸受によって構成される。これは、メカナムホイール18A、18Bと固定部材44との間に単数の単列軸受のみが配置されることを意味する。
【0028】
以上の駆動装置10の効果を説明する。
【0029】
(A)駆動装置10は、固定部材44とメカナムホイール18A、18Bとの間に配置された補助軸受46を備える。メカナムホイール18A、18Bに外部から衝撃荷重等の荷重が入力された場合を考える。この場合に、主軸受38A、38Bの配置箇所に対して軸方向Xに離れた箇所において、その入力荷重を補助軸受46によって受けることができる。よって、主軸受38A、38Bの配置箇所とは異なる箇所において、その入力荷重に起因するメカナムホイール18A、18Bの曲げモーメントを低減できる。これにより、メカナムホイール18A、18Bの撓み変形に起因するメカナムホイール18A、18Bと固定部材44との接触を避けることができる。ひいては、駆動装置10の耐久性の向上を企図できる。
【0030】
(B)補助軸受46は、第1メカナムホイール18Aよりも第2メカナムホイール18B側に配置される。主軸受38A、38Bに対して軸方向Xに離れた箇所にある第2メカナムホイール18Bに荷重が入力された場合、その入力荷重を主軸受38A、38Bでしっかりと受けることができない。この場合でも、第2メカナムホイール18Bに入力される荷重を補助軸受46によって受けることができる。よって、第2メカナムホイール18Bの曲げモーメントを効果的に低減できる。これにより、第2メカナムホイール18Bの撓み変形に起因する第2メカナムホイール18Bと固定部材44との接触を避けることができる。
【0031】
(C)メカナムホイール18A、18Bのローラ42には外部の走行面から直接に荷重が入力される。本実施形態の補助軸受46は、径方向から見て、このような荷重が直接に入力されるローラ42と重なる位置に設けられる。よって、径方向から見て、ローラ42とは重ならない位置に補助軸受46を設ける場合と比べ、メカナムホイール18A、18Bの曲げモーメントを効果的に低減できる。
【0032】
(D)補助軸受46は、一つの単列軸受によって構成される。これにより、補助軸受46を複数の軸受によって構成する場合や、補助軸受46を複列軸受によって構成する場合と比べ、補助軸受46に要する部品コストの削減を企図できる。
【0033】
駆動装置10の他の特徴を説明する。メカナムホイール18A、18Bは、補助軸受46を配置する外側軸受配置部54を備える。メカナムホイール18A、18Bは、外側軸受配置部54が設けられる第1内径部56と、外側軸受配置部54に隣接する第2内径部58とを備える。第2内径部58は、第1内径部56に対して軸方向Xの主軸受38A、38B側(図中左側)に設けられる。外側軸受配置部54の内径R54は、軸方向Xに隣接する第2内径部58の内周面の内径R58と異なる。本実施形態において第2内径部58の内径R58は、外側軸受配置部54の内径R54よりも小さくなる。また、第2内径部58の内径R58は、補助軸受46の外輪52の内径よりも大きくなる。第2内径部58の内径R58は、補助軸受46の内輪50の外径よりも大きくなるとも捉えることができる。
【0034】
固定部材44は、補助軸受46を配置する内側軸受配置部60を備える。固定部材44は、内側軸受配置部60が設けられる第1外径部62と、内側軸受配置部60に隣接する第2外径部64とを備える。第2外径部64は、第1外径部62に対して軸方向Xの主軸受38A、38B側(図中左側)に設けられる。内側軸受配置部60の外径R60は、軸方向に隣接する第2外径部64の外周面の外径R64と異なる。本実施形態において第2外径部64の外径R64は、内側軸受配置部60の外径R60よりも大きくなる。
【0035】
(E)軸受配置部54、60は、切削加工等の加工時において高い寸法精度を要求される。前述の構成によれば、外側軸受配置部54と第2内径部58の間に段差部66を形成できる。また、内側軸受配置部60と第2外径部64の間に段差部66を形成できる。よって、段差部66を目安として、高い寸法精度が要求される軸受配置部54、60の軸方向範囲を目視によって把握し易くなる。ひいては、精度の確保のための管理が容易となる。
【0036】
メカナムホイール18A、18Bは、第1内径部56よりも軸方向Xの主軸受38A、38B側に設けられる第3内径部68を備える。第3内径部68の内径R68は、外側軸受配置部54の内径R54よりも小さくなる。メカナムホイール18A、18Bの第3内径部68と固定部材44の第2外径部64との間には隙間70が設けられる。この隙間70の径方向寸法L70は、補助軸受46の転動体48の直径R48よりも小さくなる。この隙間70は、第1メカナムホイール18A及び第2メカナムホイール18Bの両方の内側に設けられる。この隙間70は、径方向から見て、第1キャリア26Aと重なる位置から、駆動源14の本体部14aと重なる位置までの範囲に少なくとも設けられる(図1参照)。
【0037】
(F)以上のように、メカナムホイール18A、18Bと固定部材44の間には、転動体48の直径R48よりも小さい径方向寸法L70の隙間70が設けられる。仮に、メカナムホイール18A、18Bと固定部材44の間に転動体48の直径R48以上の径方向寸法L70の隙間のみを設ける場合を考える。この場合と比べ、本実施形態によれば、メカナムホイール18A、18Bの内周部の切削加工量を減らすことができる。ひいては、メカナムホイール18A、18Bの加工が容易となる。また、径方向寸法L70を本実施形態のように小さくしても、補助軸受46が配置されているため、メカナムホイール18と固定部材44が接触するおそれがほとんどない。
【0038】
駆動装置10は、補助軸受46の軸方向移動を規制する規制部材72を備える。規制部材72は、補助軸受46に対して主軸受38A、38Bとは軸方向Xの反対側(本実施形態では車体側)に配置される。本実施形態の規制部材72は環状をなす。規制部材72は、補助軸受46に当接する小外径部72aと、小外径部72aに対して補助軸受46とは軸方向反対側に配置される大外径部72bとを備える。大外径部72bは、小外径部72aよりも大きい外径を持つ。規制部材72は、大外径部72bを貫通するボルト等の締結部材B3によって、メカナムホイール18A、18Bに着脱可能に固定される。
【0039】
(G)メカナムホイール18Bは、規制部材72を収納する収納部74を備える。収納部74は、メカナムホイール18Bの軸方向外側面18bに開口し、その開口箇所から軸方向内側に延びている。規制部材72は、収納部74に全体が収まるように収納される。規制部材72は、収納部74の開口箇所から軸方向外側にはみ出ていないということである。これにより、車体等の外部構造物と規制部材72との干渉を避け易くなる。
【0040】
図1を参照する。駆動装置10は、減速部24を収納する空間を封止することで第1封入空間76を形成するシール要素78A、78B、78Cを備える。第1封入空間76には、第1潤滑剤(不図示)が封入される。第1潤滑剤は、減速部24と内歯歯車30との噛合箇所、主軸受38A、38B等の潤滑に用いられる。シール要素78A、78B、78Cは、基部20と入力軸22との間をシールする第1シール要素78Aと、ケース28とキャリア26A、26Bとの間をシールする第2シール要素78Bと、ケース28の反車体側端部をシールする第3シール要素78Cとを含む。
【0041】
(H)駆動装置10は、メカナムホイール18A、18Bと固定部材44との間に配置されるオイルシール80を備える。オイルシール80は、各シール要素78A~78Cとは別体に設けられる。オイルシール80は、補助軸受46が配置される空間を封止することで第2封入空間82を形成する。第2封入空間82は、第1封入空間76に対して駆動源14側(車体側)に設けられ、オイルシール80と第2シール要素78Bによって閉じられている。第2封入空間82には、第2潤滑剤(不図示)が封入される。第2潤滑剤は、補助軸受46の潤滑に用いられる。これにより、補助軸受46として密封型軸受を用いずとも、補助軸受46を潤滑できるようになる。
【0042】
図2を参照する。駆動装置10は、固定部材44の第1外径部62の径方向外側に配置される筒状の高硬度部材84を備える。高硬度部材84は、締まり嵌め、中間嵌め等によって、固定部材44の第1外径部62に固定される。高硬度部材84の外周部は、固定部材44の第1外径部62の外周部よりも高い表面硬度を持つ。高硬度部材84の外周部と固定部材44の外周部との硬度差は、たとえば、ビッカース硬度で50Hv以上となる。この硬度差は、例えば、次の条件を満たした場合に実現される。この条件とは、例えば、固定部材44及び高硬度部材84を金属によって構成することである。また、これに加えて、高硬度部材84の外周部に焼き入れ処理を行い、固定部材44の外周部に同様の熱処理を行わないことである。
【0043】
オイルシール80のリップ部80aは高硬度部材84の外周部に当接する。他部材に対するリップ部80aの当接箇所は、メカナムホイール18A、18Bとともにオイルシール80が回転したとき、リップ部80aが擦れることで摩耗し易い。このような摩耗し易い箇所に高硬度部材84を用いることで、その当接箇所での耐摩耗性を確保できる。
【0044】
(I)オイルシール80は、メカナムホイール18A、18Bの内側に配置される規制部材72と固定部材44との間に配置される。オイルシール80は、締まり嵌め、中間嵌め等によって、規制部材72に取り付けられる。これにより、規制部材72がない場合と比べ、オイルシール80の外径寸法を小型化できる。
【0045】
(第2実施形態)図3を参照する。本実施形態の駆動装置10は、第1実施形態と比べ、補助軸受46、規制部材72等に関連する構成が相違する。
【0046】
本実施形態の補助軸受46は、ころ軸受である。補助軸受46は、転動体48の他に、複数の転動体48の相対位置を保持するリテーナ86を備える。本実施形態の補助軸受46は、専用の内輪50を備えておらず、固定部材44が内輪50を兼ねている。これは、固定部材44の外周面が内側転動面50aを構成していることを意味する。本実施形態の補助軸受46は、専用の外輪52を備えておらず、メカナムホイール18Bが外輪52を兼ねている。これは、メカナムホイール18A、18Bの内周面が外側転動面52aを構成していることを意味する。
【0047】
規制部材72は、補助軸受46に当接する小内径部72cと、小内径部72cに対して補助軸受46とは軸方向反対側に配置される大内径部72dとを備える。大内径部72dは、小内径部72cよりも内径が大きい。オイルシール80は、規制部材72の大内径部72dと固定部材44との間に配置される。
【0048】
オイルシール80のリップ部80aは、第1実施形態とは異なり、固定部材44の第1外径部62の外周部に当接する。固定部材44に対するリップ部80aの当接箇所は、焼き入れ処理を行うことで高硬度化していてもよい。
【0049】
本実施形態のメカナムホイール18A、18Bの第3内径部68は、第2内径部58を兼ねており、外側軸受配置部54との間に段差部66を形成する。これにより、前述の(E)と同様、軸受配置部54の精度の確保のための管理が容易となる。
【0050】
この他に、本実施形態の駆動装置10は、前述した(A)~(D)、(F)~(I)で説明した構成要素を備え、それらの説明に対応する効果を得られる。
【0051】
各構成要素の他の変形例を説明する。
【0052】
駆動装置10は、搬送台車に組み込まれる例を説明したが、その組み込み相手となる車体は特に限定されない。
【0053】
減速機16は、偏心揺動型減速機に限定されず、他の方式を採用してもよい。減速機16は、たとえば、遊星歯車型減速機でもよいし、偏心揺動型と遊星歯車型の組み合わせでもよい。遊星歯車減速機の場合、減速部24は、例えば、遊星歯車である。偏心揺動型減速機として、入力軸22(クランク軸)が回転中心線CL1上に配置されるセンタークランク式を説明した。偏心揺動型減速機の具体例は特に限定されない。このほかにも、回転中心線CL1からオフセットした位置に複数の入力軸22(クランク軸)が配置される振り分け式でもよい。
【0054】
ケース28が回転体36を構成し、キャリア26A、26Bが固定体34を構成する例を説明した。この場合に、キャリア26A、26Bと一体化される固定部材44として減速機16の基部20を説明した。固定部材44の具体例は特に限定されず、減速機16の基部20とは別体のキャリア26A、26Bに固定される部材でもよい。
【0055】
この他にも、ケース28が固定体34の少なくとも一部を構成し、キャリア26A、26Bが回転体36の少なくとも一部を構成してもよい。この場合、メカナムホイール18A、18Bは、ケース28及びキャリア26A、26Bのうち、回転体36を構成するキャリア26A、26Bに固定されていればよい。この場合、補助軸受46は、固定体34を構成するケース28と一体化された固定部材44とメカナムホイール18A、18Bとの間に配置されていればよい。この場合、固定部材44は、ケース28とは別体であり、ケース28と一体化される他部材を想定している。
【0056】
メカナムホイール18A、18Bは、第1メカナムホイール18Aと第2メカナムホイール18Bを含む例を説明したが、いずれか一方のみを含んでいてもよい。この他にも、メカナムホイール18A、18Bは三つ以上のメカナムホイール18A、18Bを含んでもよい。また、補助軸受46は、第2メカナムホイール18Bとは別のメカナムホイール18A、18B(例えば、第1メカナムホイール18A)の内側に配置されてもよい。
【0057】
補助軸受46は、複数列の転動体48を備える複列軸受によって構成されてもよい。メカナムホイール18A、18Bと固定部材44の間には複数の補助軸受46が配置されてもよい。
【0058】
前述の(F)で説明した効果を得るうえで、実施形態とは異なり、メカナムホイール18A、18Bの外側軸受配置部54及び固定部材44の内側軸受配置部60の少なくとも一方の径が、軸方向に隣接する周面の径と異なっていればよい。同様の効果を得るうえで、第2内径部58の内径R58は、外側軸受配置部54の内径R54よりも大きくともよい。また、同様の効果を得るうえで、第2外径部64の外径R64は、内側軸受配置部60の外径R60よりも小さくともよい。
【0059】
メカナムホイール18A、18Bと固定部材44の間には、転動体48の直径R48以上の径方向寸法L70を持つ隙間70のみが設けられてもよい。
【0060】
駆動装置10は規制部材72を備えなくともよい。メカナムホイール18A、18Bは、規制部材72を収納する収納部74を備えていなくともよい。これは、例えば、規制部材72の全体がメカナムホイール18A、18Bの軸方向外側に配置される場合を想定している。
【0061】
補助軸受46は、外輪52と内輪50の間の空間を封止するシール部材が組み込まれた密封型軸受でもよい。この場合、オイルシール80を省略してもよい。また、第2シール要素78Bを省略して第1封入空間76と第2封入空間82を連通していてもよい。これは、第1封入空間76に封入される第1潤滑剤と、第2封入空間82に封入される第2潤滑剤とを、共通の潤滑剤によって構成する場合を想定している。
【0062】
固定部材44及び高硬度部材84の素材は特に限定されない。これらは、例えば、樹脂等によって構成されてもよい。
【0063】
オイルシール80は、規制部材72と固定部材44との間に配置せずに、メカナムホイール18A、18Bに直接に取り付けてもよい。
【0064】
補助軸受46は、メカナムホイール18A、18Bのローラ42と径方向から見て重ならない位置に設けられてもよい。
【0065】
以上の実施形態及び変形例は例示に過ぎない。これらを抽象化した技術的思想は、実施形態及び変形例の内容に限定的に解釈されるべきではない。実施形態及び変形例の内容は、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態」との表記を付して強調している。しかしながら、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【符号の説明】
【0066】
10…駆動装置、14…駆動源、16…減速機、18A…第1メカナムホイール、18B…第2メカナムホイール、24…減速部、26A…キャリア、28…ケース、38A、38B…主軸受、42…ローラ、44…固定部材、46…補助軸受、48…転動体、54…軸受配置部、70…隙間、72…規制部材、74…収納部、80…オイルシール、80a…リップ部、84…高硬度部材。
図1
図2
図3