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特許7469919無端ベルトの製造方法及びコンベヤベルト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】無端ベルトの製造方法及びコンベヤベルト
(51)【国際特許分類】
   F16G 3/10 20060101AFI20240410BHJP
   B65G 15/30 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
F16G3/10 B
B65G15/30 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020043885
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2021143740
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072718
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 史旺
(74)【代理人】
【識別番号】100151002
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 剛之
(74)【代理人】
【識別番号】100201673
【弁理士】
【氏名又は名称】河田 良夫
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 信也
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-155688(JP,A)
【文献】実開平2-106323(JP,U)
【文献】特開2009-197896(JP,A)
【文献】特開2015-232392(JP,A)
【文献】特開2012-36957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 3/10
B65G 15/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側に設けた合成樹脂層と、裏面側に設けた芯体帆布層とを含むベルト基材の鋸刃状に形成された両端部を突き合わせた時に噛み合わされるとともに、前記両端部が噛み合わされたときに、前記ベルト基材の幅方向における鋸刃状部の中央部に隙間を形成する第1の接合部及び第2の接合部を、前記ベルト基材の両端部に形成する打抜工程と、
前記第1の接合部及び第2の接合部を噛み合わせた状態で保持して、前記隙間に合成樹脂材を流し込む流込工程と、
前記ベルト基材の両端部を突き合わせた箇所を加熱する加熱工程と、
を含み、
前記第1の接合部は、前記ベルト基材の幅方向における前記中央部に配置された第1鋸刃部と、前記第1鋸刃部の両端部に配置され、前記ベルト基材の延出方向における長さが前記第1鋸刃部よりも長い第2鋸刃部とを有することを特徴とする無端ベルトの製造方法。
【請求項2】
請求項に記載の無端ベルトの製造方法において、
前記第2の接合部は、前記第2鋸刃部と噛合する第3鋸刃部を少なくとも前記ベルト基材の幅方向における両端部に有することを特徴とする無端ベルトの製造方法。
【請求項3】
請求項に記載の無端ベルトの製造方法において、
前記第2の接合部は、前記ベルト基材の幅方向における前記中央部に、前記ベルト基材の延出方向における長さが前記第3鋸刃部よりも短く、前記第2鋸刃部との間で前記隙間を形成する第4鋸刃部を有することを特徴とする無端ベルトの製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求のいずれか1項に記載の無端ベルトの製造方法において、
前記合成樹脂材は、鋸刃状に形成した両端部の前記第1の接合部と前記第2の接合部とを含む噛み合わせ部分の前記表面側に載置される熱可塑性樹脂シートであり、
前記流込工程は、鋸刃状に形成した両端部の前記第1の接合部と前記第2の接合部とを含む噛み合わせ部分に前記熱可塑性樹脂シートを載置して加圧することで、熱可塑性樹脂を前記隙間に流し込む工程であることを特徴とする無端ベルトの製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の無端ベルトの製造方法において、
前記裏面側から前記第1の接合部及び第2の接合部を噛み合わせた箇所を補強用帆布シートで被覆する工程を含むことを特徴とする無端ベルトの製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の無端ベルトの製造方法において、
前記表面側から前記第1の接合部及び第2の接合部を噛み合わせた箇所を補強用樹脂シートで被覆する工程を含むことを特徴とする無端ベルトの製造方法。
【請求項7】
請求項に記載の無端ベルトの製造方法において、
前記補強用樹脂シートは、前記ベルト基材の合成樹脂層の材質と同一の材質であることを特徴とする無端ベルトの製造方法。
【請求項8】
請求項から請求項のいずれか1項に記載の無端ベルトの製造方法において、
前記加熱工程は、前記第1の接合部及び第2の接合部を噛み合わせた箇所を前記ベルト基材の厚み方向に加圧する工程を含むことを特徴とする無端ベルトの製造方法。
【請求項9】
表面側に設けた合成樹脂層と、裏面側に設けた芯体帆布層と、を含むベルト基材の端部同士が接合されたコンベヤベルトであって、
前記ベルト基材の鋸刃状に形成された両端部を突き合わせて噛み合わされるとともに、前記両端部を噛み合わせたときに、前記ベルト基材の幅方向における鋸刃状部の中央部に隙間を形成する第1の接合部及び第2の接合部が前記ベルト基材の両端部に形成され、
前記第1の接合部及び第2の接合部を噛み合わせた状態で保持して、前記隙間に合成樹脂材を流し込んだ後、前記ベルト基材の両端部を突き合わせた箇所を加熱して前記両端部を接合して無端状とし
前記第1の接合部は、前記ベルト基材の幅方向における前記中央部に配置された第1鋸刃部と、前記第1鋸刃部の両端部に配置され、前記ベルト基材の延出方向における長さが前記第1鋸刃部よりも長い第2鋸刃部とを有することを特徴とするコンベヤベルト。
【請求項10】
請求項に記載のコンベヤベルトにおいて、
前記第2の接合部は、前記第2鋸刃部と噛合する第3鋸刃部を少なくとも前記ベルト基材の幅方向における両端部に有することを特徴とするコンベヤベルト。
【請求項11】
請求項10に記載のコンベヤベルトにおいて、
前記第2の接合部は、前記ベルト基材の幅方向における前記中央部に、前記ベルト基材の延出方向における長さが前記第3鋸刃部よりも短く、前記第2鋸刃部との間で前記隙間を形成する第4鋸刃部を有することを特徴とするコンベヤベルト。
【請求項12】
請求項から請求項11のいずれか1項に記載のコンベヤベルトにおいて、
前記合成樹脂材は、鋸刃状に形成した両端部の前記第1の接合部と前記第2の接合部とを含む噛み合わせ部分に熱可塑性樹脂シートを載置して加圧することで、前記隙間に流し込まれることを特徴とするコンベヤベルト。
【請求項13】
請求項から請求項12のいずれか1項に記載のコンベヤベルトにおいて、
前記隙間に流し込まれる前記合成樹脂材は常温で固まった後は、前記合成樹脂層の引張強度よりも強く、伸びが前記合成樹脂層よりも小さいことを特徴とするコンベヤベルト。
【請求項14】
請求項9から請求項13のいずれか1項に記載のコンベヤベルトにおいて、
前記裏面側から前記第1の接合部及び第2の接合部を噛み合わせた箇所を補強用帆布シートで被覆していることを特徴とするコンベヤベルト。
【請求項15】
請求項から請求項14のいずれか1項に記載のコンベヤベルトにおいて、
前記表面側から前記第1の接合部及び第2の接合部を噛み合わせた箇所を補強用樹脂シートで被覆していることを特徴とするコンベヤベルト。
【請求項16】
請求項15に記載のコンベヤベルトにおいて、
前記補強用樹脂シートは、前記ベルト基材の合成樹脂層の材質と同一の材質であることを特徴とするコンベヤベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤ装置に用いられる無端ベルトの製造方法及びコンベヤベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
無端ベルトは、物品(搬送物)の搬送や、動力の伝達の目的で使用されている。無端ベルトは、帯状のベルト基材の両端部を接合することにより製造される。接合方法としては、例えばフィンガージョイント方式が挙げられる(特許文献1参照)。フィンガージョイント方式による接合方法は、ベルト基材の一端部を鋸刃状に、他端部を一端部の形状に相補的な鋸刃状に打ち抜き加工した後、打ち抜き加工された両端部を突き合わせた状態で接合する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-197896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した無端ベルトは、コンベヤ装置が有するヘッドプーリ及びテールプーリ間に巻き掛けられる。例えばテールプーリがヘッドプーリに対して平行に組み付けられていない場合、或いはプーリ間が平行であっても機側フレームにプーリ軸が垂直に軸支されていない場合、コンベヤ装置の駆動時に、無端ベルトは、テールプーリにおいて無端ベルトの幅方向へずれる事象が発生する。無端ベルトの横ずれは、無端ベルトの搬送面に載置される搬送物の搬送速度の高速化に伴って助長される傾向にある。また、コンベヤ装置が短機長のコンベヤ装置であればあるほど、無端ベルトの横ずれが発生しやすい。無端ベルトの横ずれは、無端ベルトの蛇行や、無端ベルトのプーリからの逸脱の原因となる。したがって、コンベヤ装置の組み立てにおいて、これらプーリ周囲の構成部品の組付精度は重要であり、また、その作業は、熟練度を有する作業となる。
【0005】
本発明は、コンベヤ装置の駆動時に発生する横ずれや該横ずれに起因した蛇行を防止することができるようにした無端状のコンベヤベルト、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の無端ベルトの製造方法は、表面側に設けた合成樹脂層と、裏面側に設けた芯体帆布層とを含むベルト基材の鋸刃状に形成された両端部を突き合わせた時に噛み合わされるとともに、前記両端部が噛み合わされたときに、前記ベルト基材の幅方向における鋸刃状部の所定範囲に隙間を形成する第1の接合部及び第2の接合部を、前記ベルト基材の両端部に形成する打抜工程と、前記第1の接合部及び第2の接合部を噛み合わせた状態で保持して、前記隙間に合成樹脂材を流し込む流込工程と、前記ベルト基材の両端部を突き合わせた箇所を加熱する加熱工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
また、前記所定範囲は、前記ベルト基材の幅方向における中央部であることを特徴とする。
【0008】
また、前記第1の接合部は、前記ベルト基材の幅方向における中央部に配置された第1鋸刃部と、前記第1鋸刃部の両端部に配置され、前記ベルト基材の延出方向における長さが前記第1鋸刃部よりも長い第2鋸刃部とを有することを特徴とする。
【0009】
なお、前記第2の接合部は、前記第2鋸刃部と噛合する第3鋸刃部を少なくとも前記ベルト基材の幅方向における両端部に有することが好ましい。
【0010】
さらに、前記第2の接合部は、前記ベルト基材の幅方向における中央部に、前記ベルト基材の延出方向における長さが前記第3鋸刃部よりも短く、前記第2鋸刃部との間で前記隙間を形成する第4鋸刃部を有することが好ましい。
【0011】
また、前記合成樹脂材は、鋸刃状に形成した両端部の前記第1の接合部と前記第2の接合部とを含む噛み合わせ部分の前記表面側に載置される熱可塑性樹脂シートであり、前記流込工程は、鋸刃状に形成した両端部の前記第1の接合部と前記第2の接合部とを含む噛み合わせ部分に前記熱可塑性樹脂シートを載置して加圧することで、熱可塑性樹脂を前記隙間に流し込む工程であることが好ましい。
【0012】
また、前記裏面側から前記第1の接合部及び第2の接合部を噛み合わせた箇所を補強用帆布シートで被覆する工程を含むことを特徴とする。
【0013】
また、前記表面側から前記第1の接合部及び第2の接合部を噛み合わせた箇所を補強用樹脂シートで被覆する工程を含むことを特徴とする。
【0014】
なお、前記補強用樹脂シートは、前記ベルト基材の合成樹脂層の材質と同一の材質であることが好ましい。
【0015】
また、前記加熱工程は、前記第1の接合部及び第2の接合部を噛み合わせた箇所を前記ベルト基材の厚み方向に加圧する工程を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明のコンベヤベルトは、表面側に設けた合成樹脂層と、裏面側に設けた芯体帆布層と、を含むベルト基材の端部同士が接合されたコンベヤベルトであって、前記ベルト基材の鋸刃状に形成された両端部を突き合わせて噛み合わされるとともに、前記両端部を噛み合わせたときに、前記ベルト基材の幅方向における鋸刃状部の所定範囲に隙間を形成する第1の接合部及び第2の接合部が前記ベルト基材の両端部に形成され、前記第1の接合部及び第2の接合部を噛み合わせた状態で保持して、前記隙間に合成樹脂材を流し込んだ後、前記ベルト基材の両端部を突き合わせた箇所を加熱して前記両端部を接合して無端状としたことを特徴とする。
【0017】
また、前記所定範囲は、前記ベルト基材の幅方向における中央部であることを特徴とする。
【0018】
また、前記第1の接合部は、前記ベルト基材の幅方向における中央部に配置された第1鋸刃部と、前記第1鋸刃部の両端部に配置され、前記ベルト基材の延出方向における長さが前記第1鋸刃部よりも長い第2鋸刃部とを有することを特徴とする。
【0019】
また、前記第2の接合部は、前記第2鋸刃部と噛合する第3鋸刃部を少なくとも前記ベルト基材の幅方向における両端部に有することを特徴とする。
【0020】
なお、前記第2の接合部は、前記ベルト基材の幅方向における中央部に、前記ベルト基材の延出方向における長さが前記第3鋸刃部よりも短く、前記第2鋸刃部との間で前記隙間を形成する第4鋸刃部を有することが好ましい。
【0021】
また、前記合成樹脂材は、鋸刃状に形成した両端部の前記第1の接合部と前記第2の接合部とを含む噛み合わせ部分に熱可塑性樹脂シートを載置して加圧することで、前記隙間に流し込まれることを特徴とする。
【0022】
また、前記隙間に流し込まれる前記合成樹脂材は、常温で固まった後は、前記合成樹脂層の引張強度よりも強く、伸びが前記合成樹脂層よりも小さいことが好ましい。
【0023】
また、前記表面側から前記第1の接合部及び第2の接合部を噛み合わせた箇所を補強用樹脂シートで被覆していることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、コンベヤ装置に組み付けられるヘッドプーリ及びテールプーリの組付精度に関係なく、走行時に発生する横ずれ、ひいては蛇行を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】(a)本実施形態に示すコンベヤ装置を駆動モータ側から視認したときの一例を示す斜視図、(b)駆動モータ側とは反対側から視認したときの一例を示す斜視図である。
図2】ベルトコンベヤ装置に用いるプーリ及びプーリに巻き掛けられる無端ベルトの状態を示す斜視図である。
図3】無端ベルトの接合部分の断面図である。
図4】ベルト基材の両端部のフィンガー継手部を突き合わせた状態を示す図である。
図5】無端ベルトの製造工程の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】(a)ベルト基材の両端部を突き合わせた状態を示す断面図、(b)ベルト基材の両端部に充填層が形成された状態を示す断面図、(c)無端ベルトの状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本実施形態のベルトコンベヤ装置10の構成について、図1及び図2を用いて説明する。本実施形態のベルトコンベヤ装置10は、短機長のベルトコンベヤ装置を一例として挙げている。
【0027】
図1及び図2に示すように、ベルトコンベヤ装置10は、装置本体15、ヘッドプーリ20、テールプーリ21、ドライブプーリ22、絞りプーリ23、駆動モータ24、無端ベルト25等を含む。
【0028】
装置本体15は、上部フレーム16、側部プレート17,18等を含む。上部フレーム16は水平上部のベッド部を有し、ベッド部にて無端ベルト25の往路側部分を下方から支持する。上部フレーム16は、幅方向の両端部に、下方(図1及び図2中-Z方向)に90°屈曲された屈曲部16a,16b(機側フレーム部)を有する。これら屈曲部16a,16bは、無端ベルト25の走行方向の両端部にヘッドプーリ20及びテールプーリ21をそれぞれ回動自在に軸支する。屈曲部16aは、駆動部の外側をなす側部プレート17の上端部を固着する。屈曲部16bは、駆動部の外側をなす側部プレート18の上端部を固着する。
【0029】
側部プレート17,18は、ドライブプーリ22及び絞りプーリ23を回動自在に軸支する。
【0030】
ヘッドプーリ20は、上部フレーム16の屈曲部16a,16bの一端側に軸支される。
【0031】
テールプーリ21は、ヘッドプーリ20が軸支される一端側とは反対側となる他端側で、上部フレーム16の屈曲部16a,16bに軸支される。
【0032】
ドライブプーリ22は、無端ベルトの走行方向において、ヘッドプーリ20及びテールプーリ21間の中央からヘッドプーリ20側にずれた位置に、且つ、ベルトコンベヤ装置10の上下方向(図2中Z方向)において、ヘッドプーリ20及びテールプーリ21よりも下方に配置される。ドライブプーリ22は、側部プレート17,18に回動自在に軸支される。
【0033】
詳細は省略するが、ドライブプーリ22の回転軸は、駆動軸の向きをギアなどで変換された駆動モータ24に接続される。ドライブプーリ22は、ヘッドプーリ20により折り返された無端ベルト25の裏面を外周面に対面させるように巻き掛けられる。
【0034】
絞りプーリ23は、ドライブプーリ22により斜め上方に折り返された無端ベルト25の搬送面側が巻き掛けられ、テールプーリ21に向けて折り返す。絞りプーリ23は、図示を省略したテークアップユニットによりヘッドプーリ20に向けて付勢される。したがって、絞りプーリ23は、無端ベルト25に張力を付加しながら、ドライブプーリ22への巻き掛け量を確保する。
【0035】
駆動モータ24は、ドライブプーリ22を回転させる。駆動モータ24が駆動すると、ドライブプーリ22が回転し、該ドライブプーリ22に巻き掛けられた無端ベルト25をテールプーリ21に向けて送り出す。同時に、ドライブプーリ22は、ヘッドプーリ20からのベルト部分を引き込む。つまり、無端ベルト25は、ヘッドプーリ20とテールプーリ21との往路側(ベルトコンベヤ装置10の上面)において、図2中A方向に走行する。
【0036】
無端ベルト25は、ベルトコンベヤ装置10の上部では表面を搬送面とし、ヘッドプーリ20及びテールプーリ21間で張られて往路側を形成し、ヘッドプーリ20及びテールプーリ21にて下方に折り曲げられた復路側に、ドライブプーリ22や絞りプーリ23などに巻き掛けられる部分を有する。無端ベルト25の全長は、ヘッドプーリ20、テールプーリ21、ドライブプーリ22、絞りプーリ23に巻き掛けたときに、張力を付加することができる長さに設定される。
【0037】
図3に示すように、無端ベルト25は、帯状のベルト基材40の両端部を接合することで無端状にしたものである。ヘッドプーリ20やテールプーリ21の径の小さな、短機長のベルトコンベヤなどでは、接合部のたわみ剛性があまりに強いと短機長に適用が難しく、ベルト基材40は、例えば芯体帆布層45と、合成樹脂層46とを有する。芯体帆布層45に用いる帆布の材質は、例えばポリエステル帆布やナイロン帆布などである。また、この帆布の積層枚数は必要強度によるがたわみ剛性との兼ね合いで1プライ~数プライである。合成樹脂層46の材質は、例えばポリウレタン樹脂である。本実施形態では、合成樹脂層46の材質の一例としてポリウレタン樹脂を挙げたが、熱可塑性樹脂であれば、例えばポリエステルエラストマーなど他の合成樹脂を用いることも可能である。
【0038】
ベルト基材40は、ベルト基材40の延出方向における両端部に、第1接合部51、第2接合部52を有する。第1接合部51及び第2接合部52は、相補的な関係を有している。以下、ベルト基材40の両端部をフィンガージョイント方式で接合する場合について説明する。
【0039】
第1接合部51は、ベルト基材40の幅方向における中央部(図3中範囲Aで示す領域)に設けられる鋸刃部(請求項に記載の第1鋸刃部に相当)55と、その両端部に設けられる鋸刃部(請求項に記載の第2鋸刃部に相当)56とを有する。これら鋸刃部55,56は、隣り合う鋸刃部により形成される谷の部分が、ベルト基材40の長手方向における位置が同一位置となるように設けられる。ここで、図3中範囲Aの幅は、例えば30mmである。
【0040】
以下、ベルト基材40の長手方向において、鋸刃部55の谷の位置から鋸刃部55の山の位置までの長さを鋸刃部55の長さL1と称する。また、ベルト基材40の長手方向において、鋸刃部56の谷の位置から鋸刃部56の山の位置までの長さを鋸刃部56の長さL2と称する。鋸刃部55の長さL1は、鋸刃部56の長さL2よりも短い(L1<L2)。例えば、鋸刃部55の長さL1は、例えばL1=48mmである。鋸刃部56の長さL2は、例えばL2=50mmである。このとき、ベルト基材40の幅は、例えば393mmである。
【0041】
また、ベルト基材40の幅方向において、鋸刃部の谷の位置から、隣り合う鋸刃部の谷の位置までの長さをピッチP1とする。鋸刃部55,56におけるピッチP1は、例えばP1=10mmである。
【0042】
第2接合部52は、ベルト基材40の幅方向における中央部(図3中範囲Aで示す領域)に設けられる鋸刃部(請求項に記載の第4鋸刃部に相当)61と、その両端部に設けられる鋸刃部(請求項に記載の第3鋸刃部に相当)62とを有する。これら鋸刃部61,62は、隣り合う鋸刃部により形成される谷の部分が、ベルト基材40の長手方向における位置が同一位置となるように設けられる。
【0043】
以下、ベルト基材40の長手方向において、鋸刃部61の谷の位置から鋸刃部61の山の位置までの長さを鋸刃部61の長さL3と称する。また、ベルト基材40の長手方向において、鋸刃部62の谷の位置から鋸刃部62の山の位置までの長さを鋸刃部62の長さL4と称する。鋸刃部61の長さL3は、鋸刃部62の長さL4よりも短い(L3<L4)。例えば、鋸刃部61の長さL3は、例えばL3=48mmである。鋸刃部62の長さL4は、例えばL4=50mmである。
【0044】
また、ベルト基材40の幅方向において、鋸刃部の谷の位置から、隣り合う鋸刃部の谷の位置までの長さをピッチP2とする。鋸刃部61,62におけるピッチP2は、例えばP2=10mmである。
【0045】
第1接合部51と第2接合部52とを突き合わせると、ベルト基材40に設けられる第1接合部51の鋸刃部56と、第2接合部52の鋸刃部62とは隙間なく噛み合う。その一方で、ベルト基材40の中央部に配置される第1接合部51の鋸刃部55と、第2接合部52の鋸刃部61との間には隙間65(図4参照)が生じる。詳細は後述するが、隙間65には、ベルト基材40の合成樹脂層46とは異なる材質で、常温で固化した場合は合成樹脂層46の引張強度が大きく強く、伸びが合成樹脂層46より小さいように構成される合成樹脂を接合材として利用する。以下、隙間65に充填された合成樹脂の層を充填層66と称する。
【0046】
補強帆布シート67は、芯体帆布層45の下面(無端ベルト25の裏面)側からベルト基材40の突き合わせ箇所を被覆する。補強帆布シート67は、補強帆布層68と、合成樹脂層69とを有する。補強帆布層68に用いる帆布は、ベルト基材40の芯体帆布層45と同一の材質(例えばポリエステル帆布)である。また、合成樹脂層69の材質は、ベルト基材40の合成樹脂層46の材質と同一の材質(例えばポリウレタン樹脂)である。
【0047】
テープ状熱可塑性樹脂材シート(以下、熱可塑性樹脂シートと称する)70は、合成樹脂層46の上面(無端ベルト25の表面)側からベルト基材40の突き合わせ箇所を被覆するように載置される。熱可塑性樹脂シート70の材質は、ベルト基材40の合成樹脂層46とは異なる材質で、常温で固化した場合は合成樹脂層46の引張強度が大きく強く、伸びが合成樹脂層46より小さいように構成される合成樹脂である。熱可塑性樹脂シート70は、第1接合部51と第2接合部52とを突き合わせた箇所の上方に載置され、加圧されることで、隙間65へ流し込まれる。これにより、充填層66が形成される。
【0048】
補強用樹脂シート71は、充填層66が形成された第1接合部51と第2接合部52との接合部分の上方に載置された後、後述する加熱・加圧処理により、合成樹脂層46と一体化される。この補強用樹脂シート71の材質は、合成樹脂層46と同一の材質である。
【0049】
次に、無端ベルトの製造方法について、図5のフローチャートに基づいて説明する。
【0050】
ステップS101は、ベルト基材を打ち抜く工程である。ベルト基材40を打ち抜く工程としては、ベルト基材40の一端側となる位置でベルト基材40を打ち抜き、第1接合部51を形成する第1の打ち抜き工程と、ベルト基材40の他端側となる位置でベルト基材40を打ち抜き、第2接合部52を形成する第2の打ち抜き工程とを含む。なお、第2の打ち抜き工程が行われるベルト基材40の位置は、製造された無端ベルト25の長さが、ベルトコンベヤ装置に組み付けた無端ベルト25に対して張力を付加できる長さとなる位置である。
【0051】
ステップS102は、合成樹脂層46とは異なる熱可塑性樹脂を接合部へ充填する処理である。まず、ベルト基材40の第1接合部51及び第2接合部52を突き合わせた状態で、ベルト基材40を保持する。上述したように、第1接合部51が有する鋸刃部55の長さL1は、その両端に位置する鋸刃部56の長さL2よりも短い。同様に、第2接合部52が有する鋸刃部61の長さL3は、その両端に位置する鋸刃部62の長さL4よりも短い。したがって、ベルト基材40の第1接合部51及び第2接合部52を突き合わせると、ベルト基材40の幅方向における中央部分には、隙間65が生じる。このステップS102では、第1接合部51と第2接合部52とを突き合わせることで生じた隙間65に、熱可塑性樹脂シート70を上方から載置して加圧して可塑性を生じさせて熱可塑性合成樹脂を隙間65へ流し込み、裏ぬけするまで圧入(プレス加工)する。これにより、充填層66が生成される(図6(a)及び図6(b)参照)。
【0052】
ステップS103は、加熱・加圧処理(熱融着処理)である。図6(b)に示すように、ベルト基材40の接合部分の表面(生成される無端ベルト25の外側の面)が合成樹脂層46と同じ材質の補強用樹脂シート71により被覆される。同時に、ベルト基材40の接合部分の裏面(生成される無端ベルト25の内側の面)側が補強帆布シート67により被覆される。
【0053】
この状態で、ベルト基材40は、図示を省略したプレス機により、ベルト基材40の厚み方向に加熱・加圧される。この加熱・加圧により、ベルト基材40の接合部分が一体化される。その後、ベルト基材40の両端が冷却されて融着され、ベルト基材40の両端部面を被覆する図示しない合成樹脂層46と同じ材質の補強用樹脂シート71は溶融される。また、補強帆布シート67は、ベルト基材40の芯体帆布層45に熱圧着される。これにより、無端ベルト25が製造される。
【0054】
ここで、図6(c)に示すように、製造された無端ベルト25は、幅方向における中央部分にのみ、合成樹脂層46とは異なる熱可塑性樹脂が断面にわたり存在する層(充填層66)を有している。ベルト基材40の接合部分において、芯体帆布は、無端ベルト25の長手方向において、補強帆布が熱圧着されているものの、両端部を突き合わせただけである。また、無端ベルト25の幅方向における中央部分は、無端ベルト25の厚み方向において、無端ベルト25の表面側から合成樹脂層46、熱可塑性樹脂の充填層66の順に層として連続して積層される。その一方で、無端ベルト25の幅方向における両端部は、合成樹脂層46のみの層となる。ここで、合成樹脂層46とは異なる熱可塑性樹脂の部分は合成樹脂層46と比較して伸びにくい。つまり、無端ベルト25の幅方向における両端部分に比べ無端周全体としても無端ベルト25の中央部分は伸びず、周径も小さい。その結果、無端ベルト25の幅方向における中央部分は、その両端部分に比べて、無端ベルト25の長手方向に負荷をかけないと、無端ベルト25の長手方向に伸張しない。したがって、無端ベルト25は、幅方向における中央部分が、その両端部分よりも無端ベルト25の長手方向に高い張力を有したベルトとなる。その結果、このように製造した無端ベルト25を、ベルトコンベヤ装置10に組み込んだ場合、無端ベルト25と、ヘッドプーリ20、テールプーリ21、ドライブプーリ22、絞りプーリ23の各プーリとの間に生じる摩擦力を起こす接触面に垂直な内向きの荷重が、無端ベルト25の幅方向における中央部分が最も高くなる。言い換えると、無端ベルト25の幅方向における範囲Aの領域が、その他の領域よりも摩擦力を起こす接触面に垂直な内向きの荷重が大きくなり、あたかも幅Aの細長いベルトを各プーリへ巻き掛けたかのような力状態となる。言い換えれば、無端ベルト25は、長機長のベルトコンベヤで使用される搬送ベルトのように各プーリに接することとなる。長機長ベルトコンベヤは、短機長ベルトコンベヤよりも各プーリの中心回動軸に対する巻き掛け角度が搬送方向に対し許容することは自明である。したがって、ヘッドプーリ20に対して、テールプーリ21が傾いて組み付けられていたとしても、無端ベルト25の横ずれや、無端ベルト25の蛇行を抑止することが可能となる。
【0055】
本実施形態では、芯体帆布層45及び合成樹脂層46の2層からなるベルト基材40を一例として取り上げているが、芯体帆布層及び合成樹脂層を交互に積層したベルト基材など、無端ベルトに用いるベルト基材の種類に関係なく、本発明を採用することが可能である。
【0056】
本実施形態では、ベルト基材40の幅方向の中央部において高張力を有する無端ベルト25を例に挙げているが、高張力を有する箇所は、ベルト基材40の幅方向の中央部を含む複数箇所としてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10…ベルトコンベヤ装置、25…無端ベルト、40…ベルト基材、51・・・第1接合部、52…第2接合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6