(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】インプリント装置及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240410BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
(21)【出願番号】P 2020048025
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日下 敦之
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-073989(JP,A)
【文献】特開2019-062164(JP,A)
【文献】特開2019-140209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置であって、
前記基板の周辺領域における表面構造を
含む画像を取得する第1検出部と、
前記基板上に設けられているマークを検出する第2検出部と、
前記第1検出部で
取得された前記表面構造
を含む画像を画像処理した画像から前記インプリント材のパターンが形成される有効領域
、および前記第2検出部で検出された前記マークから前記基板上に形成されている下地パターンの位置を特定する特定部と、
前記特定部で特定された前記有効領域
、前記特定部で特定された前記下地パターンの位置、および前記基板の端部の位置から得られる前記基板の外形、に基づいて、前記型のパターン領域の面積よりも小さい面積を有
し、前記周辺領域における欠けショット領域である周辺ショット領域の形状を決定する第1決定部と、
前記第1決定部で決定された前記形状に基づいて、前記周辺ショット領域における前記インプリント材の供給位置を決定する第2決定部と、
を有することを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記特定部は、前記有効領域(VA)および該有効領域の中心VC、前記下地パターン(GP)および該下地パターンの中心PC、を特定するものであり、
前記第1決定部は、前記特定部で特定された、前記有効領域(VA)および該有効領域の中心VC、前記下地パターン(GP)および該下地パターンの中心PC、および前記基板の端部の位置から得られる前記基板の外形Sおよび該外形の中心SC、に基づいて、前記周辺ショット領域の形状を決定することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記基板を保持する基板保持部と、
前記基板を前記基板保持部に搬送する基板搬送部と、
前記基板搬送部に設けられ、前記基板の端部の位置を検出する第3検出部を更に
有することを特徴とする請求項1又は2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記第2決定部は、前記基板上のインプリント材に前記型を接触させた際に前記インプリント材が前記型の外側又は前記周辺ショット領域の外側にはみださないように、前記周辺ショット領域における前記インプリント材の供給位置を決定することを特徴とする請求項1乃至
3のうちいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記第1検出部は、前記基板を撮像して画像を取得する撮像部を含み、
前記特定部は、前記撮像部で取得された画像に含まれる前記周辺領域の画像から前記有効領域を特定することを特徴とする請求項1乃至
4のうちいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記第1検出部は、前記基板の高さを計測する計測部を含み、
前記特定部は、前記計測部で計測された前記周辺領域の高さから前記有効領域を特定することを特徴とする請求項1乃至
4のうちいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記有効領域は、楕円形状を有し、
前記第1検出部は、前記基板の周辺領域の少なくとも4箇所における表面構造
を含む画像を取得することを特徴とする請求項1乃至
6のうちいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記第1検出部と前記第2検出部とは、同一の検出部であることを特徴とする請求項
1に記載のインプリント装置。
【請求項9】
請求項1乃至
8のうちいずれか1項に記載のインプリント装置を用いてパターンを基板に形成する工程と、
前記工程で前記パターンが形成された前記基板を処理する工程と、
処理された前記基板から物品を製造する工程と、
を有することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント技術は、ナノスケールの微細なパターンの転写を可能にする技術であり、半導体素子、液晶表示素子、磁気記憶媒体などの量産用のリソグラフィ技術の1つとして提案されている。インプリント技術を用いたインプリント装置は、パターンが形成された型と基板上のインプリント材とを接触させた状態でインプリント材を硬化させ、硬化したインプリント材から型を引き離すことで基板上にパターンを形成する。インプリント装置では、インプリント材を硬化させる方法として、一般的に、光(紫外線など)の照射によってインプリント材を硬化させる光硬化法が採用されている。
【0003】
インプリント装置において、基板上へのインプリント材の供給(配置)は、予め決められたドロップパターンに従って、ディスペンサからインプリント材の液滴を吐出することで行われる。ドロップパターンは、例えば、基板の下地パターン(基板上に形成されているパターン)、型のパターン、ショットサイズ、基板上のショット配列などを考慮して決められている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術において、基板の周辺部のショット領域、所謂、周辺ショット領域(PF:Partial Field)に適用するドロップパターンは、基板上の設計座標(ショット配列及びショット形状)に合わせて提供されている。
【0006】
下地パターンを有する基板に対してインプリント処理を行う場合、インプリント材は、基板ではなく、下地パターンを基準として(即ち、下地パターンに対して位置合わせをして)供給される。また、下地パターンを有していない基板に対してインプリント処理を行う場合、インプリント材は、基板ではなく、基板を保持する基板ステージの座標系を基準として供給される。
【0007】
一般的に、下地パターンの中心と基板の中心とは一致していない。これは、基板上に下地パターンを形成したときの誤差の影響を受けているからである。下地パターンの中心と基板の中心とのずれは、概ね、100μm程度である。また、下地パターンが形成されているパターン領域(有効な下地パターンが存在する領域)に関しても、下地パターンの形成プロセスに起因した誤差の影響を受ける。具体的には、下地パターンのパターン領域の形状が設計値、例えば、直径294mmの真円からずれて楕円形状になっていたり、下地パターンのパターン領域の中心と基板の中心とが一致していなかったりする。下地パターンのパターン領域の中心と基板の中心とのずれは、概ね、500μm程度である。更に、基板自体の形状(外形)に関しても、製造誤差の影響を受けて、設計値、例えば、直径300mmの真円からずれて楕円形状になっていたりする。かかるずれは、概ね、200μm程度である。
【0008】
ここで、上述したように、基板パターンの中心、下地パターンの中心、下地パターンのパターン領域の中心及び形状が一致していない場合を考える。この場合、一部の周辺ショット領域では、ショット面積に対してインプリント材が不足し、基板の中心に対して対称の位置にある周辺ショット領域では、ショット面積に対してインプリント材が過剰に供給される。また、基板自体の形状がずれている場合にも、一部の周辺ショット領域では、ショット面積に対してインプリント材の過不足が発生する。
【0009】
ショット面積に対してインプリント材が不足していると、型と基板上のインプリント材とを接触させた際に、インプリント材が型のパターン(凹部)に十分に充填されず、基板上に形成されるパターンの転写不良が発生する可能性がある。また、極端な場合には、型と基板とが直接接触することで、型や基板が破損する可能性もある。一方、ショット面積に対してインプリント材が過剰に供給されていると、基板の端部や基板の外にインプリント材が供給され、基板搬送ハンドや基板ステージを汚染する可能性がある。
【0010】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされ、周辺ショット領域におけるインプリント材の供給位置を決定するのに有利なインプリント装置を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としてのインプリント装置は、型を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置であって、前記基板の周辺領域における表面構造を含む画像を取得する第1検出部と、前記基板上に設けられているマークを検出する第2検出部と、前記第1検出部で取得された前記表面構造を含む画像を画像処理した画像から前記インプリント材のパターンが形成される有効領域、および前記第2検出部で検出された前記マークから前記基板上に形成されている下地パターンの位置を特定する特定部と、前記特定部で特定された前記有効領域、前記特定部で特定された前記下地パターンの位置、および前記基板の端部の位置から得られる前記基板の外形、に基づいて、前記型のパターン領域の面積よりも小さい面積を有し、前記周辺領域における欠けショット領域である周辺ショット領域の形状を決定する第1決定部と、前記第1決定部で決定された前記形状に基づいて、前記周辺ショット領域における前記インプリント材の供給位置を決定する第2決定部と、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、例えば、周辺ショット領域におけるインプリント材の供給位置を決定するのに有利なインプリント装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一側面としてのインプリント装置の構成を示す概略図である。
【
図2】基板上の複数のショット領域の配列の一例を示す図である。
【
図3】基板上の複数のショット領域の配列の一例を示す図である。
【
図4】基板上の複数のショット領域の配列の一例を示す図である。
【
図5】基板上の複数のショット領域の配列の一例を示す図である。
【
図6】基板上の複数のショット領域の配列の一例を示す図である。
【
図8】周辺ショット領域におけるインプリント材の供給位置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。更に、添付図面においては、同一もしくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0016】
図1は、本発明の一側面としてのインプリント装置100の構成を示す概略図である。インプリント装置100は、物品としての半導体素子、液晶表示素子、磁気記憶媒体などのデバイスの製造工程であるリソグラフィ工程に採用される。インプリント装置100は、基板にパターンを形成する、具体的には、インプリント処理として、型を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するリソグラフィ装置である。インプリント装置100は、基板上に供給された未硬化のインプリント材と型とを接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギーを与えることにより、型のパターンが転写された硬化物のパターンを形成する。型は、テンプレート、モールド、原版とも称される。
【0017】
インプリント処理は、接触処理と、アライメント処理と、硬化処理と、分離処理とを含む。接触処理は、基板上(ショット領域上)のインプリント材と型(パターン領域)とを接触させる処理である。アライメント処理は、基板と型との位置合わせ(アライメント)を行う処理である。アライメント処理は、基板上のショット領域と型のパターン領域との重ね合わせ誤差(形状差)が低減されるように、型のパターン領域を変形させる処理を含む場合がある。硬化処理は、基板上のインプリント材と型とを接触させた状態でインプリント材を硬化させる処理である。分離処理は、基板上の硬化したインプリント材(インプリント材の硬化物からなるパターン)から型を引き離す処理である。
【0018】
本明細書及び添付図面では、基板の表面に平行な方向をXY平面とするXYZ座標系で方向を示す。XYZ座標系におけるX軸、Y軸及びZ軸のそれぞれに平行な方向をX方向、Y方向及びZ方向とし、X軸回りの回転、Y軸回りの回転及びZ軸回りの回転のそれぞれを、θX、θY及びθZとする。
【0019】
インプリント材としては、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する材料(硬化性組成物)が使用される。硬化用のエネルギーとしては、電磁波や熱などが用いられる。電磁波は、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される光、具体的には、赤外線、可視光線、紫外線などを含む。
【0020】
硬化性組成物は、光の照射、或いは、加熱により硬化する組成物である。光の照射により硬化する光硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて、非重合性化合物又は溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。
【0021】
インプリント材は、スピンコーターやスリットコーターによって基板上に膜状に付与されてもよい。また、インプリント材は、液体噴射ヘッドによって、液滴状、或いは、複数の液滴が繋がって形成された島状又は膜状で基板上に付与されてもよい。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下である。
【0022】
基板には、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂などが用いられ、必要に応じて、その表面に基板とは別の材料からなる部材が形成されていてもよい。具体的には、基板は、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスなどを含む。
【0023】
インプリント装置100は、基板Sを保持して駆動する基板駆動部SDMと、基板駆動部SDMを支持するベースフレームBFと、型Mを保持して駆動する型駆動部MDMと、型駆動部MDMを支持する構造体STとを有する。基板駆動部SDMは、基板Sを保持する基板チャックSCを含む基板ステージSSと、基板ステージSSを駆動することによって基板Sを位置決めする基板位置決め機構SAとを含む。型駆動部MDMは、型Mを保持する型チャックMCと、型チャックMCを駆動することによって型Mを位置決めする型位置決め機構MAとを含む。
【0024】
基板駆動部SDM及び型駆動部MDMは、基板Sと型Mとの相対位置(及び相対姿勢)が調整されるように、基板S及び型Mの少なくとも一方を駆動する(移動させる)駆動機構DMを構成する。駆動機構DMによる基板Sと型Mとの相対位置の調整は、基板上のインプリント材IMと型Mとの接触のための駆動や基板上の硬化したインプリント材IMから型Mを引き離すための駆動を含む。
また、駆動機構DMによる基板Sと型Mとの相対位置の調整は、基板Sと型Mとのアライメントを含む。基板駆動部SDMは、基板Sを複数の軸(例えば、X軸、Y軸及びθZ軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸、θZ軸の6軸)に関して駆動するように構成されている。型駆動部MDMは、型Mを複数の軸(例えば、Z軸、θX軸及びθY軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸、θZ軸の6軸)に関して駆動するように構成されている。
【0025】
インプリント装置100は、基板上(ショット領域上)にインプリント材IMを供給(配置又は分配)するためのディスペンサDSPを有する。但し、ディスペンサDSPは、インプリント装置100の外部装置として構成されていてもよい。ディスペンサDSPは、例えば、基板上におけるインプリント材IMの配置を示すドロップパターンに従って、かかる配置が再現されるように、基板S(基板ステージSS)の駆動と同期して、基板Sに対してインプリント材IM(の液滴)を吐出する。インプリント装置100においては、例えば、ディスペンサDSPが基板上の1つのショット領域にインプリント材IMを供給するたびにインプリント処理が行われる。また、ディスペンサDSPが基板上の複数のショット領域にインプリント材IMを供給した後に、かかる複数のショット領域のそれぞれに対してインプリント処理が行われてもよい。
【0026】
また、インプリント装置100は、硬化部CUと、オフアクシススコープOASと、アライメントスコープASと、フォーカスセンサFSと、基板搬送部STUと、基板アライナーPAと、撮像部ISと、型変形部MAGと、制御部CNTとを有する。
【0027】
硬化部CUは、基板上のインプリント材IMに型Mのパターン領域Pが接触した状態でインプリント材IMに硬化用のエネルギー(例えば、紫外線などの光)を照射することによってインプリント材IMを硬化させる。
【0028】
オフアクシススコープOASは、基板S(のショット領域)に設けられたマーク(アライメントマーク)SMKを検出することで、マークSMKの位置、即ち、基板Sの位置を計測する。オフアクシススコープOASは、本実施形態では、基板上に設けられているマークSMKを検出する第2検出部として機能させることができる。
【0029】
アライメントスコープASは、基板Sに設けられたマークSMKと型M(のパターン領域P)に設けられたマーク(アライメントマーク)MMKとを検出することで、基板S(マークSMK)と型M(マークMMK)との相対位置(位置ずれ)を計測する。アライメントスコープASは、本実施形態では、基板上に設けられているマークSMKを検出する第2検出部として機能させることができる。また、アライメントスコープASは、本実施形態では、基板Sの周辺領域における表面構造を検出する第1検出部として機能させることもできる。
【0030】
フォーカスセンサFSは、基板Sの表面に光を斜入射で投光する投光系と、基板Sの表面で反射した光を受光する受光系とを含み、基板Sの高さ方向(Z方向)の位置を計測する計測部である。フォーカスセンサFSは、本実施形態では、基板Sの周辺領域における表面構造を検出する第1検出部として機能させることができる。
【0031】
基板搬送部STUは、各種の搬送機構やハンドなどを含み、基板Sを基板保持部として機能する基板ステージSS(基板チャックSC)に搬送する。基板アライナーPAは、基板搬送部STUに設けられ、基板Sを基板ステージSSに搬送する前に、基板Sの外形及び位置を計測する。基板アライナーPAは、本実施形態では、基板Sの外形を規定する基板Sの端部の位置を検出する第3検出部として機能する。
【0032】
撮像部ISは、光学系(不図示)を介して、型Mのパターン領域Pを含む視野を撮像する。このように、撮像部ISは、基板Sを撮像して画像を取得する機能を有する。撮像部ISは、例えば、接触工程において、基板上のインプリント材IMと型Mのパターン領域Pとの接触領域が拡大する様子や型Mと基板Sとの間隙によって形成される干渉縞を撮像する。また、撮像部ISは、本実施形態では、基板Sの周辺領域における表面構造を検出する第1検出部として機能させることができる。
【0033】
型変形部MAGは、型M(パターン領域P)を変形させる機能を有する。型変形部MAGは、本実施形態では、基板上のショット領域ごとに、ショット領域と型Mのパターン領域Pとの形状差が低減されるように、型Mのパターン領域Pの形状を補正する。型変形部MAGは、型Mに対して、パターン領域Pに平行な方向に力を加えてパターン領域Pを変形させることで、型Mのパターン領域Pの形状を補正する。
【0034】
制御部CNTは、記憶部に記憶されたプログラムに従って、インプリント装置100の各部を統括的に制御してインプリント装置100を動作させる。制御部CNTは、本実施形態では、インプリント処理及びそれに関連する処理を制御する。制御部CNTは、プログラムが組み込まれた汎用又は専用の情報処理装置(コンピュータ)で構成されている。なお、制御部CNTは、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのPLD(Programmable Logic Device)によって構成されてもよい。また、制御部CNTは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)によって構成されてもよい。
【0035】
図2は、基板上の複数のショット領域SRの配列の一例を示す図である。
図2には、基板Sの中心(中心位置)SCと、下地パターンGPの中心(中心位置)PCと、有効領域VAの中心(中心位置)VCとが一致している理想的な状態を示している。下地パターンGPは、下地形成プロセスを経て基板Sに既に形成されているパターンであって、ショット領域SRの配列を決めるものである。有効領域VAは、下地形成プロセスで決定され、インプリント材が塗布(供給)される領域、即ち、インプリント材のパターンが形成される領域である。有効領域VAは、主に、下地パターンGPを形成する際の感光材(レジスト)の回転塗布などの影響を受ける。
【0036】
図3は、基板上の複数のショット領域SRの配列の一例を示す図であって、基板Sの中心SCと、下地パターンGPの中心PCとがずれている状態を示している。この場合、基板Sの周辺部における周辺ショット領域SRAは、設計形状、即ち、
図2に示す理想的な状態における周辺ショット領域SRAの形状とは異なる形状を有する。周辺ショット領域SRAは、基板Sの端部(縁)で切り取られるショット領域、即ち、型Mのパターン領域Pの面積よりも小さい面積を有するショット領域であって、欠けショット領域とも呼ばれる。
【0037】
図4は、基板上の複数のショット領域SRの配列の一例を示す図であって、基板Sの中心SCと、有効領域VAの中心VCとがずれている状態を示している。この場合においても、周辺ショット領域SRAは、
図2に示す理想的な状態における周辺ショット領域SRAの形状とは異なる形状を有する。
【0038】
図5は、基板上の複数のショット領域SRの配列の一例を示す図であって、基板Sが設計形状(本実施形態では、円形状)とは異なる形状(本実施形態では、楕円形状)を有している状態を示している。この場合においても、周辺ショット領域SRAは、
図2に示す理想的な状態における周辺ショット領域SRAの形状とは異なる形状を有する。
【0039】
図6は、基板上の複数のショット領域SRの配列の一例を示す図であって、基板Sの中心SCと、下地パターンGPの中心PCと、有効領域VAの中心VCとがずれており、且つ、基板Sが設計形状とは異なる形状を有している状態を示している。この場合においても、周辺ショット領域SRAは、
図2に示す理想的な状態における周辺ショット領域SRAの形状とは異なる形状を有する。
【0040】
図2に示すように、理想的な状態では、基板Sの中心SCと、下地パターンGPの中心PCと、有効領域VAの中心VCとが一致している。一方、実際には、基板上に最初の下地パターンGPを形成する場合、基板上に基準がないため、基板ステージSSの位置制御を基準として、基板上に下地パターンGPが形成される。一般的に、基板ステージSSに基板Sを搬送する際には、まず、基板アライナーPAで基板Sの外形を計測し、その計測結果から基板Sの中心SCを求める。そして、基板Sの中心SCと基板ステージS(基板チャックSC)の中心とが一致するように、基板搬送部STUを介して、基板Sを基板ステージSSに搬送する。従って、基板Sの外形の計測精度、基板Sの外形形状の設計形状からのずれ、及び、基板搬送部STUによる基板Sの搬送誤差などの影響によって、基板Sの中心SCと基板ステージSSの中心との間にずれ(誤差)が生じる。下地パターンGPは基板ステージSSの中心を基準として形成されるため、基板Sの中心SCと基板ステージSSの中心とのずれは、そのまま、基板Sの中心SCと下地パターンGPの中心PCとの間のずれとなる。このため、
図3に示すように、周辺ショット領域SRAの形状が影響を受ける。
【0041】
また、下地パターンGPを形成する際に、例えば、感光材を回転塗布するような場合を考える。この場合、基板Sの中心SCと、感光材の塗布時の回転中心との間にずれがあると、
図4に示すように、有効領域VRの位置にずれが生じ、有効領域VRの中心VCにずれが生じる。また、塗布時の回転中心の偏芯などの影響によって、有効領域VRの形状も設計形状からずれることがあり、周辺ショット領域SRAの形状が影響を受ける。
【0042】
更に、
図5に示すように、基板Sの外形形状の設計形状が円形状であったとしても、製造誤差などによって、実際には、楕円形状になる場合がある。このような場合にも、周辺ショット領域SRAの形状が影響を受ける。
【0043】
そこで、本実施形態では、
図6に示すように、上述した誤差要因、即ち、基板Sの中心SC、下地パターンGPの中心CP、有効領域VAの中心VC、有効領域VAの形状及び基板Sの外形のそれぞれが誤差を有している場合において有利な技術を提供する。具体的には、上述した誤差要因がある場合であっても、周辺ショット領域SRAに対して最適なドロップパターン、即ち、周辺ショット領域SRAにおけるインプリント材IM(の液滴)の供給位置を決定する技術を提供する。
【0044】
図7は、本実施形態において、周辺ショット領域SRAにおけるインプリント材IMの供給位置を決定する処理に関する制御部CNTの機能を示すブロック図である。制御部CNTは、
図7に示すように、特定部102と、第1決定部104と、第2決定部106とを含む。なお、周辺ショット領域SRAにおけるインプリント材IMの供給位置を決定する処理は、本実施形態のように、インプリント装置100の制御部CNTで行われてもよいし、インプリント装置100の外部の情報処理装置などで行われてもよい。
【0045】
まず、基板ステージ上の基板Sの周辺領域における表面構造を検出する。ここで、基板Sの周辺領域は、少なくとも有効領域VAの境界を含む領域である。また、基板Sの周辺領域は、基板Sの端部を含んでいてもよい。基板Sの周辺領域における表面構造の検出には、例えば、撮像部ISを用いることができる。撮像部ISは、基板Sの周辺領域を撮像して画像を取得し、かかる画像を特定部102に入力する。
【0046】
次に、特定部102は、基板Sの周辺領域における表面構造から有効領域VAを特定する。具体的には、特定部102は、撮像部ISで取得された画像に対して画像処理を施し、かかる画像に含まれる周辺領域の画像から有効領域VAを特定する。
【0047】
次いで、第1決定部104は、特定部102で特定された有効領域VAに基づいて、周辺ショット領域SRAの形状を決定する。例えば、第1決定部104は、プリアライナーPAで計測された基板Sの外形、及び、基板上のショット領域の配列を示すショット情報に対して、特定部102で特定された有効領域VAを適用することで、周辺ショット領域SRAの形状を決定する。
【0048】
次に、第2決定部106は、第1決定部104で決定された周辺ショット領域SRAの形状に基づいて、周辺ショット領域SRAにおけるインプリント材の供給位置を決定する。この際、第2決定部106は、基板上のインプリント材IMに型Mを接触させた際にインプリント材IMが型Mの外側又は周辺ショット領域SRAの外側にはみださないように、周辺ショット領域SRAにおけるインプリント材IMの供給位置を決定する。また、第2決定部106は、基板上のインプリント材IMと型Mとを接触させた状態において、インプリント材IMが型Mのパターン領域P(凹部)に十分に充填されるように、周辺ショット領域SRAにおけるインプリント材IMの供給位置を決定する。
【0049】
図8(a)乃至
図8(e)を参照して、本実施形態において決定される周辺ショット領域SRAにおけるインプリント材IMの供給位置について具体的に説明する。
図8(a)は、通常のショット領域、即ち、型Mのパターン領域Pの面積と同じ面積を有するショット領域(FF:Full Field)におけるインプリント材IMの供給位置(ドロップパターン)を示す図である。第2決定部106は、
図8(b)に示すように、
図8(a)に示すドロップパターンから、周辺ショット領域SRAの形状に合わせて、インプリント材IMの供給位置を切り出すことで、周辺ショット領域SRAにおけるインプリント材IMの供給位置を決定する。また、
図8(c)に示すように、インプリント材IMの充填性を考慮して、周辺ショット領域SRAの端部までインプリント材IMが配置されるように、周辺ショット領域SRAにおけるインプリント材IMの供給位置を決定してもよい。また、
図8(d)に示すように、インプリント材IMの充填性及び基板Sの端部までの距離を考慮して、周辺ショット領域外までインプリント材IMが配置されるように、周辺ショット領域SRAにおけるインプリント材IMの供給位置を決定してもよい。また、
図8(e)に示すように、有効領域VAと有効領域VAの外側の領域との境界の段差を緩和するために、周辺ショット領域SRAの端部にインプリント材IMを追加で配置するように、インプリント材IMの供給位置を決定してもよい。
【0050】
また、周辺ショット領域SRAの形状を決定する際には、下地パターンPGの位置、即ち、下地パターンPGの中心CPを用いることが好ましい。この場合、特定部102は、アライメントスコープASで検出された基板上のマークSMKから基板上に形成されている下地パターンPGの中心CPを特定する。そして、第1決定部104は、特定部102で特定された有効領域VA(の中心VC)及び下地パターンPGの中心CPに基づいて、周辺ショット領域SRAの形状を決定する。
【0051】
このように、本実施形態では、基板上の有効領域VA(有効領域VAの中心VC)や下地パターンGPの中心CPを特定し、それらの位置関係から、周辺ショット領域SRAの形状を決定する。かかる周辺ショット領域SRAの形状は、
図3乃至
図6を参照して説明した誤差要因(ずれ)が考慮されているため、そのショット面積の精度が保証され、ショット面積に対するインプリント材IMの過不足を低減することが可能となる。そして、このようにして決定された周辺ショット領域SRAの形状に基づいて、周辺ショット領域SRAにおけるインプリント材IMの供給位置を決定する。これにより、周辺ショット領域SRAにおいても、インプリント材IMが型Mの外側又は周辺ショット領域SRAの外側にはみださず、且つ、インプリント材IMが型Mのパターン領域P(凹部)に十分に充填される。従って、インプリント装置100は、基板上に形成されるパターンの転写不良の発生、及び、インプリント材IMによる基板ステージSSや基板搬送部STUの汚染を抑制することができる。
【0052】
なお、本実施形態では、撮像部ISを用いて基板Sの周辺領域における表面構造を検出しているが、基板Sの高さを計測するフォーカスセンサFSを用いて基板Sの周辺領域における表面構造を検出してもよい。上述したように、有効領域VAと有効領域VAの外側の領域との境界には、一般的に、段差が形成されている。従って、フォーカスセンサFSで計測された基板Sの周辺領域の高さ(高さ部分)から、有効領域VAと有効領域VAの外側の領域との境界の段差を特定することで、有効領域VAを特定することができる。
【0053】
また、基板上のマークSMKを検出するアライメントスコープASを用いて基板Sの周辺領域における表面構造を検出することも可能である。従って、基板Sの周辺領域における表面構造及び下地パターンPGの位置の両方の検出に、同一の検出部、即ち、アライメントスコープASを用いることができる。
【0054】
また、第1決定部104は、特定部102で特定された有効領域VA(の中心VC)に加えて、基板Sの端部の位置から得られる基板Sの外形にも基づいて、周辺ショット領域SRAの形状を決定してもよい。例えば、基板上の有効領域VAと基板Sの端部との距離が短い場合には、インプリント材IMを供給する領域(塗布領域)を有効領域VAの境界よりも内側に設定することがある。また、基板上の有効領域VAと基板Sの端部との距離が長い場合には、インプリント材IMを供給する領域を有効領域VAの境界よりも外側に設定することがある。このような場合には、基板Sの端部の位置から得られる基板Sの外形にも基づいて、周辺ショット領域SRAの形状を決定することが有用である。基板Sの端部の位置は、例えば、撮像部ISで取得された画像やアライメントスコープASで検出された基板Sの周辺領域における表面構造から得ることができる。また、基板搬送部STUに設けられた基板プリアライナーPAから基板Sの端部の位置(外形)を得ることもできる。
【0055】
また、有効領域VAの形状(外形)が楕円形状である場合には、基板Sの周辺領域の少なくとも4箇所(4点)における表面構造を検出すればよい。これにより、有効領域VAの全周における表面構造を検出する場合よりも短時間で有効領域VAを特定することが可能となる。
【0056】
インプリント装置IMPを用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは、各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型などである。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMなどの揮発性又は不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAなどの半導体素子などが挙げられる。型としては、インプリント用のモールドなどが挙げられる。
【0057】
硬化物のパターンは、上述の物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入などが行われた後、レジストマスクは除去される。
【0058】
次に、物品の具体的な製造方法について説明する。
図9(a)に示すように、絶縁体などの被加工材が表面に形成されたシリコンウエハなどの基板を用意し、続いて、インクジェット法などにより、被加工材の表面にインプリント材を付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材が基板上に付与された様子を示している。
【0059】
図9(b)に示すように、インプリント用の型を、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材に向け、対向させる。
図9(c)に示すように、インプリント材が付与された基板と型とを接触させ、圧力を加える。インプリント材は、型と被加工材との隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型を介して照射すると、インプリント材は硬化する。
【0060】
図9(d)に示すように、インプリント材を硬化させた後、型と基板を引き離すと、基板上にインプリント材の硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材に型の凹凸のパターンが転写されたことになる。
【0061】
図9(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材の表面のうち、硬化物がない、或いは、薄く残存した部分が除去され、溝となる。
図9(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材の表面に溝が形成された物品を得ることができる。ここでは、硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子などに含まれる層間絶縁用の膜、即ち、物品の構成部材として利用してもよい。
【0062】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0063】
100:インプリント装置 IS:撮像部 FS:フォーカスセンサ CNT:制御部 AS:アライメントスコープ PA:基板アライナー