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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】ガソリン基材
(51)【国際特許分類】
   C10L 1/06 20060101AFI20240410BHJP
   C10L 1/222 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
C10L1/06
C10L1/222
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020052322
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021152097
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000105567
【氏名又は名称】コスモ石油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 靖智
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-290159(JP,A)
【文献】特開2011-213902(JP,A)
【文献】特開平09-111259(JP,A)
【文献】特開2017-125213(JP,A)
【文献】特開2006-028402(JP,A)
【文献】特開2006-328356(JP,A)
【文献】特開2009-013347(JP,A)
【文献】特開2008-208209(JP,A)
【文献】特開2017-145419(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102311349(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 1/06
C10L 1/222
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を85.0~99.0容量%含む留分を25.0~75.0容量%、
(b)常圧蒸留における蒸留範囲が85.0~220.0℃である接触改質ガソリン留分を25.0~75.0容量%、
(c)前記(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を85.0~99.0容量%含む留分および(b)常圧蒸留における蒸留範囲が85.0~220.0℃である接触改質ガソリンの合計含有量に対しアミン系酸化防止剤を5~30質量ppm
含み、沸点が40.0℃超である
ことを特徴とするガソリン基材。
【請求項2】
(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を85.0~99.0容量%含む留分を35.0~72.0容量%含む請求項1に記載のガソリン基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリン基材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に市販されているガソリン組成物は、種々のガソリン基材を配合することで製造されている。
上記ガソリン基材としては、原油を常圧蒸留しさらに脱硫処理して得られる脱硫軽質ナフサ、脱硫重質ナフサを接触改質して得られる接触改質ガソリン、接触分解法や水素化分解法で得られる分解ガソリン等を挙げることができ、これ等のガソリン基材をJIS規格(JIS K2202)で定められる各種規定を満たすように混合することでガソリン組成物が製造されている(非特許文献1(JISハンドブック2019 石油 日本規格協会編)参照)。
【0003】
一方、上記脱硫軽質ナフサは、各種石油化学製品の原料にもなり得るものであることから、経済性を考慮した場合には、ガソリン基材として脱硫軽質ナフサを極力使用しないことが求められる。
また、近年の社会情勢として、エネルギー供給構造高度化法(正式名称:「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」)の制定に代表されるように、石油資源の有効活用が着目されるようになっており、かかる観点からも、ガソリン基材として脱硫軽質ナフサを使用しないガソリン組成物が求められるようになっている。
【0004】
しかしながら、従来、脱硫軽質ナフサを使用することなく、諸特性を十分に発揮し得るガソリン組成物を低コストに製造することは困難であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】JISハンドブック2019 石油 日本規格協会編
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記技術課題を解決するために本発明者等が鋭意検討したところ、ガソリン基材として、エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分に着目するに至った。
係る留分は、ナフサを熱分解してエチレンを製造する際に生成する分解油を精密蒸留して得られるものであって、さらに必要に応じて水素化処理してエチレン製造原料として再利用されることもあるが、エチレン得率等の観点から好ましくないことから、通常、この留分は加熱炉の燃料等として消費されている。
このため、係る留分を基材として多量含有するガソリン組成物を調製すれば、石油資源の有効活用を図ることができる。
【0007】
ところで、ガソリン組成物は、通常、貯蔵タンクで各々貯蔵したガソリン基材を所望組成を有するように配合して製造されている。
【0008】
しかしながら、上記エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分は、非常に軽質で蒸気圧が高いことから、その貯蔵にはLPガス用に使用される高圧球形タンクを必要とし、ガソリン基材として簡便に利用し難い状況にある。
【0009】
このため、上記エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分に他の留分を混合することで、蒸気圧を大気圧未満に抑制することが考えられる。
【0010】
ところが、上記エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分は、沸点が低いことから、単に蒸気圧を大気圧未満としただけでは消防法に規定する危険物第四類特殊引火物に該当する。
消防法に規定する危険物第四類特殊引火物は、消防法上の指定数量が小さく、取り扱い上の制約が生じたり所定の設備や対応が必要になることから、ガソリン基材として利用し難い状況に変わりはない。
【0011】
さらに、上記エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分は、不飽和炭化水素の含有割合が高く、酸化安定性に劣ることから、タンク内での貯蔵安定性に劣る。
【0012】
このため、上記エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分は、他の留分を混合する場合においてもその配合割合が制限され、ガソリン基材用途に使用し難い状況にあった。
【0013】
このような状況下、本発明は、石油資源を有効活用しつつ、酸化安定性や貯蔵安定性に優れ、簡便な取り扱いが可能なガソリン基材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記技術課題を解決するために本発明者等が鋭意検討したところ、(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分を25.0~75.0容量%、(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリン留分を25.0~75.0容量%、(c)前記(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分および(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリンの合計含有量に対しアミン系酸化防止剤を5~30質量ppm含み、沸点が40.0℃超であるガソリン基材により、上記技術課題を解決し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至ったものである。
【0015】
すなわち、本発明は、
(1)(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分を25.0~75.0容量%、
(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリン留分を25.0~75.0容量%、
(c)前記(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分および(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリンの合計含有量に対しアミン系酸化防止剤を5~30質量ppm
含み、沸点が40.0℃超である
ことを特徴とするガソリン基材、
(2)(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分を35.0~72.0容量%含む上記(1)に記載のガソリン基材
を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、石油資源を有効活用しつつ、酸化安定性や貯蔵安定性に優れ、簡便な取り扱いが可能なガソリン基材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
なお、本明細書中、数値範囲を現す「~」は、その上限及び下限としてそれぞれ記載されている数値を含む範囲を表す。また、「~」で表される数値範囲において上限値のみ単位が記載されている場合は、下限値も同じ単位であることを意味する。
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。
本明細書において組成物中の各成分の含有率又は含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本明細書において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0018】
本発明に係るガソリン基材は、
(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分を25.0~75.0容量%、
(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリン留分を25.0~75.0容量%、
(c)前記(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分および(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリンの合計含有量に対しアミン系酸化防止剤を5~30質量ppm
含み、沸点が40.0℃超である
ことを特徴とするものである。
【0019】
本発明に係るガソリン基材は、(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分を含有する。
【0020】
本出願書類において、(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分とは、ナフサを熱分解してエチレンを製造する際に生成する分解油を精密蒸留して得られる、炭素数5の炭化水素を85.0容量%以上含むものであって、さらに必要に応じて水素化処理したものを意味する。
【0021】
本出願書類において、(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分は、炭素数5の炭化水素を85.0~99.0容量%含むものが適当であり、87.0~99.0容量%含むものがより適当である。
【0022】
(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分は、n-ペンタンの含有割合が、35.0~55.0容量%であるものが適当であり、35.0~50.0容量%であるものがより適当であり、37.0~47.0容量%であるものがさらに適当である。
【0023】
(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分は、イソペンタンの含有割合が、18.0~40.0容量%であるものが適当であり、20.0~35.0容量%であるものがより適当であり、20.0~30.0容量%であるものがさらに適当である。
【0024】
(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分は、シクロペンタンの含有割合が、3.0~15.0容量%であるものが適当であり、3.5~15.0容量%であるものがより適当であり、4.0~15.0容量%であるものがさらに適当である。
【0025】
(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分は、n-へプタン、イソペンタンおよびシクロペンタンの合計含有割合が、60.0~95.0容量%であるものが適当であり、60.0~90.0容量%であるものがより適当であり、62.0~85.0容量%であるものがさらに適当である。
【0026】
本発明に係るガソリン基材において、(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分が、n-ペンタン、イソペンタンおよびシクロペンタンを上記割合で含むことにより、優れた酸化安定性や貯蔵安定性を得易くなり、蒸気圧や沸点の調整を容易に行うことができる。
【0027】
(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分は、オレフィン分(不飽和炭化水素化合物)の含有割合が、10.0~40.0容量%であるものが適当であり、10.0~35.0容量%であるものがより適当であり、15.0~30.0容量%であるものがさらに適当である。
【0028】
(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分は、ジオレフィン分の含有割合が、5.0容量%以下であることが好ましく、0.5容量%以下であることがより好ましく、0.05容量%以下であることがさらに好ましい。
【0029】
(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分が上記のとおり所定量のオレフィン分を含有するものであっても、本発明に係るガソリン基材は、優れた酸化安定性や貯蔵安定性を容易に発揮することができる。
また、(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分のオレフィン分含有割合が上記範囲内にあることにより、本発明に係るガソリン基材をガソリン組成物に使用したときに高いオクタン価を容易に発揮することができる。
【0030】
なお、本出願書類において、上記炭素数5の炭化水素の含有割合、n-ペンタンの含有割合、イソペンタンの含有割合、シクロペンタンの含有割合、オレフィン分の含有割合およびジオレフィン分の含有割合は、JIS K 2536「石油製品成分試験方法」のガスクロマトグラフィーによる全成分試験の規定により測定した値を意味する。
【0031】
(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分は、硫黄分含有量が、20質量ppm以下であるものが適当であり、17質量ppm以下であることがより適当であり、15質量ppm以下であるものがさらに適当である。
【0032】
硫黄分含有量が20質量ppm以下であることにより、本発明に係るガソリン基材を混合して得られるガソリン組成物の使用時に、排出ガス浄化触媒の能力低下を抑制して、窒素酸化物(NOx)、炭化水素(THC)、一酸化炭素(CO)等の排出量を低減し得るとともに、排出ガス中の硫黄酸化物(SOx)量を低減することができる。
なお、本出願書類において、硫黄分含有量は、JIS K 2541の規定により測定した値を意味するものとする。
【0033】
(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分は、15℃における密度が、0.6400~0.6800g/cmであることが好ましく、0.6400~0.6700g/cmであることがより好ましく、0.6400~0.6600g/cmであることがさらに好ましい。15℃における密度が上記範囲内にあることにより、炭素数5の炭化水素の含有割合を高く維持して、オクタン価の低下と蒸気圧の上昇を容易に抑制することができる。
なお、本出願書類において、15℃における密度は、JIS K2249「原油及び石油製品-密度の求め方」により測定した値を意味する。
【0034】
(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分は、リサーチ法オクタン価(RON)が80.0~90.0であることが好ましく、83.0~90.0であることがより好ましく、85.0~90.0であることがさらに好ましい。
(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分のRONが上記範囲内にあることにより、本発明に係るガソリン基材をガソリン組成物の基材として使用したときに高い運転性を容易に発揮することができ、特にレギュラーガソリン用ガソリン組成物用の基材として使用した際に高い運転性を容易に発揮することができる。
なお、本出願書類において、RONは、JIS K 2280の規定により測定した値を意味する。
【0035】
(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分は、リード蒸気圧(RVP)が、通常、110.0~145.0kPaであり、本発明に係るガソリン基材を構成する上では、110.0~135.0kPaであることがより適当であり、 110.0~125.0kPaであることがさらに適当である。
(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分のリード蒸気圧(RVP)が上記のように高いものであっても、本発明に係るガソリン基材は、蒸発ガス量を容易に低減し、ガソリン組成物の基材として使用したときに、所望の低温始動性を容易に発揮することができる。
なお、本出願書類において、リード蒸気圧(RVP)は、JIS K 2258の規定により測定した、華氏100°(37.8℃)下における値を意味する。
【0036】
(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分は、常圧蒸留における蒸留範囲が、通常、20℃~75℃であり、本発明に係るガソリン基材を構成する上では、25~75℃であることがより適当であり、25~73℃であることがさらに適当である。
(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分の蒸留範囲が上記のように低いものであっても、本発明に係るガソリン基材は、消防法に規定する危険物第四類特殊引火物ではなく、より取り扱いが容易な危険物第四類第一石油類として扱うことができ、ガソリン組成物の基材として好適に使用することができる。
【0037】
なお、本出願書類において、(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分の蒸留範囲は、JIS K 2541により測定された値を意味する。
【0038】
(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分は、酸化安定度が、通常、100~220分間である。
本発明のガソリン基材は、酸化安定度が低い(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分を一定割合含むものであるにも拘わらず、優れた酸化安定性および貯蔵安定性を発揮し得るものである。
なお、本出願書類において、酸化安定度は、JIS K 2287(誘導期間法)の規定により測定した値を意味する。
【0039】
本発明に係るガソリン基材は、(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分を25.0~75.0容量%含むものであり、35.0~72.0容量%含むものが適当であり、40.0~70.0容量%含むものがより適当である。
【0040】
本発明に係るガソリン基材は、(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分を上記範囲で含む場合においても、酸化安定性や貯蔵安定性に優れ、簡便に取り扱うことができる。
【0041】
本発明に係るガソリン基材は、(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリン留分を含むものである。
【0042】
本出願書類において、(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリン留分とは、分留範囲約40~230℃の重質ナフサを、水素気流中、高温、高圧下で触媒と接触させ、異性化、脱水素、環化、水素化分解等の改質反応を行って得られる接触改質ガソリン留分のうち、常圧蒸留したときの初留点が85.0℃以上のものを意味する。
上記接触改質反応時に用いられる触媒としては、白金系触媒や、白金にレニウム、イリジウム、ゲルマニウムなどの金属を加えたバイメタル触媒が挙げられる。また、上記接触改質反応を行うプロセスとしては、プラットフォーミング法、ウルトラフォーミング法、レニフォーミング法、パワーフォーミング法、マグナフォーミング法またはフードリフォーミング法等が挙げられ、接触改質時の温度や圧力については公知の条件から適宜選択することができる。
【0043】
(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリン留分としては、接触改質プロセスで得られた接触改質ガソリンを脱ベンゼン処理した初留点が85.0℃以上の留分や、係る留分をさらに脱キシレン処理した初留点が85.0℃以上の留分を挙げることができ、これ等いずれかの留分においてさらに脱多環芳香族処理した初留点が85.0℃以上の留分が好ましい。
【0044】
上記脱ベンゼン処理、脱キシレン処理および脱多環芳香族処理は、接触改質ガソリンを精密蒸留することで行うことができる。
なお、脱多環芳香族処理とは、3環以上の多環芳香族化合物を取り除くことを意味する。
【0045】
(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリン留分としては、具体的には、以下の(1)~(4)のいずれかの留分を挙げることができる。
・接触改質ガソリンを、常圧蒸留装置により、沸点75℃以下の軽質接触改質ガソリン留分、沸点75℃超85℃未満のベンゼン留分および沸点85℃以上の重質接触改質ガソリン留分に分留したときの、(1)重質接触改質ガソリン留分。
・上記沸点85℃以上の重質接触改質ガソリンを、さらに常圧蒸留装置により、沸点135℃以下のトルエン留分、沸点135℃超145℃未満のキシレン留分および沸点145℃以上の重質アロマ留分に分留したときの、(2)トルエン留分。
・上記重質アロマ留分から沸点190℃超の成分(3環以上の多環芳香族分)を蒸留カットして得られた、(3)沸点145~190℃の炭素数9~12程度の芳香族炭化水素を主成分とする留分(以下、適宜、BC9留分と称する)。
・上記(2)トルエン留分と(3)BC9留分とを混合して得られる、(4)トルエン留分およびBC9留分の混合留分。
(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリン留分としては、上記(2)トルエン留分、(3)BC9留分または(4)トルエン留分およびBC9留分の混合留分であることが好ましい。
【0046】
(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリン留分としては、芳香族分(芳香族炭化水素)の含有割合が、50.0~100.0容量%であるものが適当であり、55.0~100.0容量%であるものがより適当であり、65.0~100.0容量%であるものがさらに適当である。
【0047】
(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリン留分中の芳香族分(芳香族炭化水素)の含有割合が上記範囲内にあることにより、本発明に係るガソリン基材を用いて得られるガソリン組成物において、燃費の低下や運転性の低下を容易に抑制することができる。
【0048】
なお、本出願書類において、上記芳香族分含有量は、JIS K 2536「石油製品成分試験方法」のガスクロマトグラフィーによる全成分試験の規定により測定した値を意味する。
【0049】
(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリン留分は、硫黄分含有量が、5質量ppm以下であるものが適当であり、3質量ppm以下であることがより適当であり、2質量ppm以下であるものがさらに適当である。
【0050】
(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリン留分中の硫黄分が5質量ppm以下であることにより、本発明に係るガソリン基材を混合して得られるガソリン組成物の使用時に、排出ガス浄化触媒の能力低下を抑制して、窒素酸化物(NOx)、炭化水素(THC)、一酸化炭素(CO)等の排出量を低減し得るとともに、排出ガス中の硫黄酸化物(SOx)量を低減することができる。
なお、本出願書類において、硫黄分含有量は、JIS K 2541の規定により測定した値を意味するものとする。
【0051】
(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリン留分は、15℃における密度が、0.8000~0.8900g/cmであることが好ましく、0.8100~0.8850g/cmであることがより好ましく、0.8150~0.8850g/cmであることがさらに好ましい。15℃における密度が上記範囲内にあることにより、本発明に係るガソリン基材を用いて得られるガソリン組成物において、燃費の低下を容易に抑制することができる。
【0052】
(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリン留分は、リサーチ法オクタン価(RON)、が90~115であることが好ましく、92~115であることがより好ましく、95~115であることがさらに好ましい。
(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリン留分のRONが上記範囲内にあることにより、本発明に係るガソリン基材をガソリン組成物の基材として使用したときに高い運転性を容易に発揮することができ、特にレギュラーガソリン用ガソリン組成物用の基材として使用した際に高い運転性を容易に発揮することができる。
【0053】
(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリン留分は、リード蒸気圧(RVP)が、1.0~20.0kPaであるものが好ましく、1.0~15.0kPaであることがより好ましく、1.0~13.0kPaであることがさらに好ましい。
(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリン留分のリード蒸気圧(RVP)が上記範囲内にあることにより、本発明に係るガソリン基材の蒸気圧を容易に大気圧未満することができる。
【0054】
(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリン留分は、蒸留範囲が、85.0~220.0℃であることが好ましく、85.0~210.0℃であることがより好ましく、85.0~200.0℃であることがさらに好ましい。
(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリン留分の蒸留範囲が上記範囲内にあることにより、本発明に係るガソリン基材の蒸気圧を容易に大気圧未満にすることができる。
【0055】
なお、本出願書類において、(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリン留分の蒸留範囲は、JIS K 2541により測定された値を意味する。
【0056】
(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリン留分は、酸化安定度が、600分間以上であるものが好ましく、650分間以上であるものがより好ましく、700分間以上であるものがさらに好ましい。
(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリン留分は、酸化安定度が上記範囲内にあることにより貯蔵安定性に優れ、貯蔵時におけるガム状物質の生成を抑制することができると考えられる。
【0057】
本発明に係るガソリン基材は、(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリン留分を、25.0~75.0容量%含むものであり、28.0~65.0容量%含むものが好ましく、30.0~60.0容量%含むものがより好ましい。
【0058】
本発明に係るガソリン基材は、(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分、(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリン留分および(c)アミン系酸化防止剤を、合計で、50.0~100.0容量%含むものが好ましく、60.0~100.0容量%含むものがより好ましく、70.0~100.0容量%含むものがさらに好ましい。
【0059】
本発明に係るガソリン基材は、(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分を所定量含むものであっても、(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリン留分を上記割合で含むことにより、蒸気圧ないしは沸点を所望範囲に容易に制御してその貯蔵を容易に行い得るとともに、簡便に取り扱うことができる。
【0060】
本発明に係るガソリン基材は、(c)アミン系酸化防止剤を含むものである。
【0061】
本発明に係るガソリン基材において、(c)アミン系酸化防止剤としては、アミノ基を有する酸化防止性能を発揮し得る化合物であれば特に制限されない。
【0062】
本発明に係るガソリン基材において、(c)アミン系酸化防止剤として、具体的には、N,N'-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン、N,N'-ジイソプロピル-p-フェニレンジアミン等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0063】
本発明に係るガソリン基材は、(c)(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分および(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリンの合計含有量に対し、アミン系酸化防止剤を、5~30質量ppm含むものであり、5~25質量ppm含むものが好ましく、8~25質量ppm%含むものがさらに好ましい。
なお、上記アミン系酸化防止剤の含有濃度は、下記式により算出した値を意味する。
アミン系酸化防止剤の含有濃度(質量ppm)=[(c)アミン系酸化防止剤の配合量(g)/{(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分および(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリンの合計含有量(g)]×10
【0064】
本発明に係るガソリン基材は、(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分を所定量含むものであっても、(c)アミン系酸化防止剤を上記割合で含むことにより、酸化安定性や貯蔵安定性を所望範囲に容易に制御してその貯蔵を容易に行うことができる。
【0065】
本発明に係るガソリン基材は、(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分、(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリン留分および(c)アミン系酸化防止剤とともに、接触分解ガソリンやアルキレート等から選ばれる一種以上のガソリン留分や、2,6-ジ-tert-ブチルフェノールや2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール等から選ばれる一種以上のフェノール系酸化防止剤をさらに含んでもよい。
【0066】
本発明に係るガソリン基材は、沸点が、40.0℃超である。なお、本出願書類に係るガソリン基材の沸点は、JIS K 2233平衡還流沸点により測定された値を意味する。
本発明に係るガソリン基材は、(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分を所定量配合してなるものであるにも拘わらず、沸点を40.0℃超に制御し得るものであり、このために、消防法に規定する危険物第四類第一石油類として取り扱うことが可能となり、ガソリン基材として容易かつ簡便に取り扱うことができる。
【0067】
本発明に係るガソリン基材は、リード蒸気圧(RVP)が、101.3kPa以下であることが好ましく、100.0kPa以下であることがより好ましく、95.0kPa以下であることがさらに好ましい。
本発明に係るガソリン基材は、(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分を所定量配合してなるものであるにも拘わらず、リード蒸気圧(RVP)を上記範囲に制御して、高圧球形タンク等特別な保管蔵設備を必要とすることなく容易かつ安定して貯蔵することができる。
【0068】
本発明に係るガソリン基材は、芳香族分(芳香族炭化水素)の含有割合が、19.5~75.0容量%であるものが好ましく、19.5~65.0容量%であるものがより好ましく、19.5~60.0容量%であるものがさらに好ましい。
【0069】
本発明に係るガソリン基材中の芳香族分(芳香族炭化水素)の含有割合が上記範囲内にあることにより、本発明に係るガソリン基材において、(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分を所定量含むにも拘わらず、優れた酸化安定性や貯蔵安定性を容易に発揮することができる。
【0070】
本発明に係るガソリン基材は、オレフィン分(不飽和炭化水素化合物)の含有割合が、2.5~28.0容量%であるものが適当であり、2.5~25.0容量%であるものがより適当であり、3.5~25.0容量%であるものがさらに適当である。
【0071】
本発明に係るガソリン基材は、オレフィン分含有割合が上記範囲内にあることにより、ガソリン組成物に配合したときに高いオクタン価を容易に発揮することができる。
【0072】
本発明のガソリン基材は、ジオレフィンの含有割合が3.5容量%以下であることが好ましく、0.5容量%以下であることがより好ましく、0.01容量%以下であることがさらに好ましい。
【0073】
本発明に係るガソリン基材は、硫黄分含有量が、15質量ppm以下であるものが好ましく、12質量ppm以下であることがより好ましく、10質量ppm以下であるものがさらに適当である。
【0074】
本発明に係るガソリン基材中の硫黄分が15質量ppm以下であることにより、本発明に係るガソリン基材を混合して得られるガソリン組成物の使用時に、排出ガス浄化触媒の能力低下を抑制して、窒素酸化物(NOx)、炭化水素(THC)、一酸化炭素(CO)等の排出量を低減し得るとともに、排出ガス中の硫黄酸化物(SOx)量を低減することができる。
【0075】
本発明に係るガソリン基材は、15℃における密度が、0.6900~0.8100g/cmであることが好ましく、0.6950~0.800g/cmであることがより好ましく、0.6950~0.8150g/cmであることがさらに好ましい。15℃における密度が上記範囲内にあることにより、本発明に係るガソリン基材を用いて得られるガソリン組成物において、燃費の低下を容易に抑制することができる。
【0076】
本発明に係るガソリン基材は、リサーチ法オクタン価(RON)が、89.0~105.0であることが好ましく、90.0~104.0であることがより好ましく、90.5~104.5であることがさらに好ましい。
本発明に係るガソリン基材のRONが上記範囲内にあることにより、ガソリン組成物の基材として使用したときに高い運転性を容易に発揮することができ、特にレギュラーガソリン用ガソリン組成物用の基材として使用した際に高い運転性を容易に発揮することができる。
【0077】
本発明に係るガソリン基材は、酸化安定度が、600分間以上であるものが好ましく、650分間以上であるものがより好ましく、700分間以上であるものがさらに好ましい。
本発明のガソリン基材は、酸化安定度が600分間以上であることにより貯蔵安定性に優れ、貯蔵時におけるガム状物質の生成を抑制することができると考えられる。
【0078】
本発明に係るガソリン基材は、50%留出温度(T50)が、45.0~165.0℃であることが好ましく、50.0~165.0℃であることが好ましく、50.0~163.0℃であることがより好ましい。
【0079】
また、本発明に係るガソリン基材は、70%流出量(E70)が、20.0~75.0容量%であることが好ましく、25.0~75.0容量%であることがより好ましく、30.0~75.0容量%であることがさらに好ましい。
【0080】
本発明に係るガソリン基材は、T50およびE70が上記範囲内であることにより、ガソリン組成物の基材として使用したときに、良好な始動性、運転性、加速性を発揮することができる。
なお、本出願書類において、上記T50およびE70は、JIS K 2258の規定により測定した値を意味する。
【0081】
本発明に係るガソリン基材は、レギュラーガソリンやハイオクガソリン等のガソリン組成物の基材として有効に使用することができ、特にレギュラーガソリンの基材として有効に使用することができる。
【0082】
本発明に係るガソリン基材を用いてガソリン組成物を製造する場合、特に制限はないが、本発明に係るガソリン基材以外に、必要に応じて、例えば、以下に記載する(i)~(v)のいずれかのガソリン基材を適宜所望割合配合することができる。
(i)灯・軽油から常圧残油に至る石油留分、好ましくは重質軽油や減圧軽油を、従来公知の接触分解法、特に流動接触分解法(UOP法、シェル二段式法、フレキシクラッキング法、ウルトラオルソフロー法、テキサコ法、ガルフ法、ウルトラキャットクラッキング法、RCC法、HOC法等)により、固体酸触媒(例えば、シリカ・アルミナにゼオライトを配合したもの等)で分解して得られた接触分解ガソリン。
(ii)イソブタンと低級オレフィン(ブテン、プロピレン等)を原料として、酸触媒(硫酸、フッ化水素、塩化アルミニウム等)の存在下で反応させて得られるアルキレート。
(iii)原油や粗油等の常圧蒸留時、改質ガソリン製造時、あるいは分解ガソリン製造時等に蒸留して得られるブタン、ブテン類を主成分としたC4留分。
(iv)直鎖の低級パラフィン系炭化水素の異性化によって得られるアイソメレート、又はアイソメレートを精密蒸留して得られるイソペンタン。
(v)エチルターシャリーブチルエーテル(ETBE)、ターシャリーアミルメチルエーテル(TAME)、ターシャリーアミルエチルエーテル(TAEE)、エタノールおよびブタノール等から選ばれる一種以上の含酸素化合物。
(vi)接触改質装置より得られる、軽質接触改質ガソリン留分および重質接触改質ガソリン留分。
【0083】
本発明によれば、石油資源を有効活用しつつ、酸化安定性や貯蔵安定性に優れ、簡便な取り扱いが可能なガソリン基材を提供することができる。
【0084】
以下、実施例を参照して本発明を更に詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を実施した場合の代表的な例を示すもので、本発明は本実施例により何ら限定されるものではない。
表中の分析値は上記各測定方法に基づいて測定した値である。また、「―」となっている項目は未測定であることを示す。
【0085】
以下の実施例および比較例において下記ガソリン基材を使用した。
<(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分>
(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分として、ナフサを熱分解してエチレンを製造する際に生成する分解油を精密蒸留し、水素化処理して得られた、表1に示す特性を有するC5留分a~C5留分cを用いた。
<(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリン留分>
(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリン留分として、下記留分を用いた。
・接触改質ガソリンを分留して得られた沸点85℃以上の重質接触改質ガソリン留分を、さらに常圧蒸留装置により分留して得られた、沸点135℃以下の表1に示す特性を有するトルエン留分。
・接触改質ガソリンを分留して得られた沸点85℃以上の重質接触改質ガソリン留分を、さらに常圧蒸留装置により分留して得られた沸点145℃以上の重質アロマ留分から、沸点190℃超の成分(3環以上の多環芳香族分)を蒸留カットして得られた表1に示す特性を有する炭素数9~12程度の芳香族炭化水素を主成分とする留分(BC9留分)。
【0086】
【表1】
【0087】
また、以下の実施例において、(c)アミン系酸化防止剤として、N,N’―ジ-sec-ブチル-p-フェニルジアミンを使用するとともに、以下の比較例において、フェノール系酸化防止剤として、2,6-ジ-tert-ブチルフェノールを使用した。
【0088】
(実施例1~実施例3)
上記(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分としてC5留分bと、(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリン留分としてトルエン留分またはBC9留分と、(c)アミン系酸化防止剤とを、各々以下の表2に示す配合割合となるように配合して各ガソリン基材を得た。
なお、アミン系酸化防止剤の配合量は、(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分および(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリンの合計含有量に対する濃度(質量ppm)で示している。
各実施例で得られたガソリン基材の特性を表2に示す。
【0089】
(比較例1~比較例3)
上記C5留分a~C5留分cを、各々、比較例1~比較例3に係る ガソリン基材とした。
各ガソリン基材の特性は、上述したとおりである。
【0090】
(比較例4~比較例6)
上記(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分としてC5留分bと、(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリン留分としてトルエン留分またはBC9留分と、(c)アミン系酸化防止剤またはフェノール系酸化防止剤とを、各々以下の表2に示す配合割合となるように配合して各ガソリン基材を得た。
なお、アミン系酸化防止剤またはフェノール系酸化防止剤の配合量は、(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分および(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリンの合計含有量に対する濃度(質量ppm)で示している。
各比較例で得られたガソリン基材の特性を表2に示す。
【0091】
【表2】
【0092】
表2より、実施例1~実施例3で得られたガソリン基材は、(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分と、(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリン留分と、(c)アミン系酸化防止剤とを各々所定割合で含む、沸点が40.0℃超であるものであることから、簡便な取り扱いが可能であるとともに、酸化安定度が1440分間超と酸化安定性の目安となる600分間を超え酸化安定性および貯蔵安定性に優れるものであることが分かる。
【0093】
一方、表1および表2より、比較例1~比較例6で得られたガソリン基材は、(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分のみからなるものであったり(比較例1~比較例3)、(a)エチレン製造プラントから副生する炭素数5の炭化水素を主成分として含む留分および(b)常圧蒸留における初留点が85.0℃以上の接触改質ガソリン留分の配合割合が所定範囲外であったり(比較例5)、(c)アミン系酸化防止剤を含まないものであったり(比較例4)、アミン系酸化防止剤に代えてフェノール系酸化防止剤のみを含むものである(比較例6)ために、沸点が34℃~36℃と低かったり(比較例1~比較例3、比較例5)、酸化安定度が160~590分間で酸化安定性および貯蔵安定性に劣るものである(比較例1~比較例4、比較例6)ことが分かる。
【0094】
(ガソリン組成物の調製)
以下に示す各ガソリン基材を用いて、ガソリン組成物を調製した。
・実施例1で得られたガソリン基材
・脱硫軽質ナフサ
原油を常圧蒸留して得られる軽質ナフサを水素化脱硫処理した留分であり、蒸留範囲が25~100℃の性状を有するもの。
・重質接触分解ガソリン
流動接触分解法により得られるガソリン留分のうち、一部軽質分を分留し、脱硫処理したもの。
・C4留分
原油や粗油等の常圧蒸留時、改質ガソリン製造時、あるいは分解ガソリン製造時等に蒸留して得られるブタン、ブテン類が主成分であるもの。
・重質接触改質ガソリン
接触改質法より得られる改質ガソリンから、沸点75℃以下の軽質接触改質ガソリンと、ベンゼン留分を分留して除いたもの。
・エチルターシャリーブチルエーテル(ETBE)
【0095】
(実施例4および参考例1)
上記各基材を表3に示す配合割合となるように混合して、各ガソリン組成物を調製した。各例で得られたガソリン組成物の特性を表3に示す。
【0096】
【表3】
【0097】
表3より、実施例1で得られたガソリン基材を用いて調製されたガソリン組成物(実施例4)は、脱硫軽質ナフサを用いて調製された従来のガソリン組成物(参考例1)と同等の特性を有するものであることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明によれば、石油資源を有効活用しつつ、酸化安定性や貯蔵安定性に優れ、簡便な取り扱いが可能なガソリン基材を提供することができる。