(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】医用画像処理装置及びX線撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/02 20060101AFI20240410BHJP
【FI】
A61B6/02 551M
(21)【出願番号】P 2020053022
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金光 愼吾
(72)【発明者】
【氏名】加藤 久典
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-536605(JP,A)
【文献】特開2001-104295(JP,A)
【文献】特開2020-038592(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0096787(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のSID(Source Image Distance)によるX線撮影に基づいて生成されたボリュームデータを取得するボリューム取得部と、
前記第1のSIDより大きい第2のSIDから設定距離を減じた距離を算出し、前記ボリュームデータから、前記算出された距離だけ離れた位置
を視点として設定する
条件設定部と、
前記ボリュームデータを前記視点から視線方向に沿って投影した投影データを擬似画像データとして生成する擬似データ生成部と、
を有する医用画像処理装置。
【請求項2】
第1のSIDによるX線撮影に基づいて生成されたボリュームデータを取得するボリューム取得部と、
前記第1のSIDより大きい第2のSIDから設定距離を減じた距離を算出し、前記ボリュームデータに設定された関心領域の位置から前記算出された距離だけ離れた位置
を視点として設定する
条件設定部と、
前記ボリュームデータを前記視点から視線方向に沿って投影した投影データを擬似画像データとして生成する擬似データ生成部と、
を有する医用画像処理装置。
【請求項3】
前記条件設定部は、前記視点に加え、前記視線方向を設定し、
前記擬似データ生成部は、前記ボリュームデータを前記視点から前記視線方向に沿って投影することで、前記擬似画像データを生成する、
請求項1
又は2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記条件設定部は、前記視線方向として、X線検出器の検出面の直交
方向を設定する、
請求項
3に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記条件設定部は、
前記ボリュームデータに含まれる関心領域の外表面を検出し、前記視線方向として、前記
関心領域の外表面の直交方向を設定する、
請求項
3に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記条件設定部は、前記視線方向として、コントラストが最も高い擬似画像データに対応する視線方向を設定する、
請求項
3に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記条件設定部は、
前記視点として、複数の視点を設定し、
前記視線方向として、X線検出部の検出面の直交
方向を設定し、
前記擬似データ生成部は、
前記ボリュームデータを、前記複数の視点から前記
直交方向に沿ってそれぞれ投影することで、前記擬似画像データとして、複数の擬似画像データを生成する、
請求項
3に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記条件設定部は、
前記視点として、複数の視点を設定し、
前記ボリュームデータに含まれる複数の関心領域の外表面をそれぞれ検出し、
前記視線方向として、前記
複数の関心領域にそれぞれ直交する複数の方向を設定し、
前記擬似データ生成部は、
前記ボリュームデータを、前記複数の視点から前記複数の方向に沿ってそれぞれ投影することで、前記擬似画像データとして、複数の擬似画像データを生成する、
請求項
3に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
X線を照射するX線照射部と、
前記X線を検出するX線検出部と、
前記X線照射部及び前記X線検出部を制御して、第1のSIDによるX線撮影に基づいて、複数の照射方向にそれぞれ対応する複数の撮影画像データを生成する撮影データ生成部と、
前記複数の撮影画像データからボリュームデータを生成してメモリに記憶するボリューム生成部と、
前記メモリから前記ボリュームデータを取得するボリューム取得部と、
前記第1のSIDより大きい第2のSID
から設定距離を減じた距離を算出し、前記ボリュームデータから、前記算出された距離だけ離れた位置を視点として設定する条件設定部と、
前記ボリュームデータを前記視点から視線方向に沿って投影した投影データを擬似画像データとして生成する擬似データ生成部と、
を有するX線撮影装置。
【請求項10】
X線を照射するX線照射部と、
前記X線を検出するX線検出部と、
前記X線照射部及び前記X線検出部を制御して、第1のSIDによるX線撮影に基づいて、複数の照射方向にそれぞれ対応する複数の撮影画像データを生成する撮影データ生成部と、
前記複数の撮影画像データからボリュームデータを生成してメモリに記憶するボリューム生成部と、
前記メモリから前記ボリュームデータを取得するボリューム取得部と、
前記第1のSIDより大きい第2のSID
から設定距離を減じた距離を算出し、前記ボリュームデータに設定された関心領域の位置から前記算出された距離だけ離れた位置を視点として設定する条件設定部と、
前記ボリュームデータを前記視点から視線方向に沿って投影した投影データを擬似画像データとして生成する擬似データ生成部と、
を有するX線撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書等に開示の実施形態は、医用画像処理装置及びX線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非破壊検査等の工業分野や、健康診断等の医療分野において、被検体の検査部位(例えば、胸部)に放射線(代表的には、X線)を照射して、検査部位を透過した放射線の強度分布を透過データとして検出し、透過データからX線画像データを生成するX線撮影装置が広く利用されている。X線撮影装置は、X線照射を行って透過データを取得する撮影装置本体と、撮影装置本体の制御や透過データの画像処理等を行ってX線画像データを生成する医用画像処理装置とを備える。
【0003】
胸部や頸椎のX線撮影において診断に有用なX線画像データを得るためには、焦点検出器間距離(SID:Source to image receptor distance)が特に重要となる。しかし、従来のX線撮影装置では、X線管やX線検出器等の配置に制限から、所望のSIDに係るX線画像データを取得することができない場合がある。また、胸部や頸椎のX線撮影において診断に有用なX線画像データを得るためには、検査部位へのX線の入射位置や入射角度も重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書等に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、診断に有用なX線画像データを提供することである。
【0006】
ただし、本明細書等に開示の実施形態により解決される課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を、本明細書等に開示の実施形態が解決する他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る医用画像処理装置は、ボリューム取得部と、条件設定部と、擬似データ生成部とを有する。ボリューム取得部は、第1のSIDによるX線撮影に基づいて生成されたボリュームデータを取得する。条件設定部は、第1のSIDより大きい第2のSIDに基づいて視点を設定する。擬似データ生成部は、ボリュームデータを視点から視線方向に沿って投影した投影データを擬似画像データとして生成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置を含むX線撮影装置の構成を示す概略図。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置において、トモシンセシス撮影を行う場合の配置例を示す図。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置の機能を示すブロック図。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置において、第1のSIDによる第1の撮影画像データから第2のSIDによる第2の撮影画像データを生成する方法の概念を説明するための図。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置において、トモシンセシス撮影と、再構成と、視点の設定とを説明するための図。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置において、撮影画像データと、擬似画像データとの比較例を示す図。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置の動作をフローチャートとして示す図。
【
図8】
図8は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置において、視点の設定の他の例を説明するための図。
【
図9】
図9は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置において、視線方向の設定の方法を説明するための図。
【
図10】
図10は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置において、視線方向の設定の他の方法を説明するための図。
【
図11】
図11は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置において、トモシンセシス撮の他の方法を説明するための図。
【
図12】
図12は、第2の実施形態に係る医用画像処理装置の構成及び機能を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、医用画像処理装置及びX線撮影装置の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、X線撮影装置1を示す。X線撮影装置1は、撮影装置本体11と、第1の実施形態に係る医用画像処理装置(例えば、コンソール装置)12とを備える。撮影装置本体11は、撮影制御回路21と、高電圧電源装置22と、X線照射部23と、X線検出部24とを備え、医用画像処理装置12による制御の下、被検体SのX線撮影を行う。
【0011】
なお、X線検出部24のX線検出器(例えば、FPD24a)の左右方向をX軸方向と定義し、FPD24aの上下方向をY軸方向と定義し、FPD24aの厚み方向をZ軸方向と定義する。また、
図1では、立位撮影の場合の構成を示すがその場合に限定されるものではなく、臥位撮影の場合であってもよい。後者の場合については、
図2(B)を用いて説明する。
【0012】
撮影制御回路21は、処理回路とメモリ等を備える。なお、処理回路とメモリとの構成については、後述する医用画像処理装置12の処理回路31とメモリ32と同等であるので説明を省略する。撮影制御回路21は、医用画像処理装置12からの指示を受け、高電圧電源装置22と、X線照射部23と、X線検出部24とを統括することによりX線撮影を制御する。
【0013】
高電圧電源装置22は、撮影制御回路21による制御の下、X線照射部23のX線源(例えば、X線管)23aに高電圧電力を供給する。
【0014】
X線照射部23は、X線管23aと可動絞り装置23bとを設ける。X線管23aは、高電圧電源装置22から高電圧電力の供給を受けて、高電圧電力の条件に応じてX線を発生する。可動絞り装置23bは、撮影制御回路21による制御の下、X線管23aのX線照射口で、X線を遮蔽する物質から構成された絞り羽根を移動可能に支持する。可動絞り装置23bによるX線照射口の開閉により、X線の拡がり角(例えば、
図5に示す拡がり角θc,θe,θs)等を変更することができる。X線の拡がり角θにより、X線の照射領域(例えば、
図5に示す照射領域41c,41e,41s)が決定される。なお、X線管23aの前面に、X線管23aによって発生されたX線の線質を調整する線質調整フィルタ(図示省略)を備えてもよい。
【0015】
X線照射部23は、X線管23aと可動絞り装置23bとを一体として移動することが可能な可動装置を備える。X線照射部23を把持した操作者により手動で、又は、入力インターフェース34への入力操作により自動で、X線管23aと可動絞り装置23bとを一体として移動させることができる。
【0016】
X線照射部23は、可動装置の一例として、X線管23aと可動絞り装置23bとの上部側に、検査室の天井に設けられたX軸方向及びZ軸方向に敷設されたレール上を走行可能にレールに係合される車輪Aを設けることができる。その場合、車輪Aが、天井レールに沿うX軸方向及びZ軸方向に移動可能となる。車輪AがX軸方向及びZ軸方向に移動されることにより、X線管23aと可動絞り装置23bとを一体としてX軸方向及びZ軸方向に移動可能である。X線管23aと可動絞り装置23bとのZ軸方向へのスライド移動により、X線管23aのZ軸方向の位置、つまり、X線管23aの焦点とFPD24aとの間の距離(SID:Source Image Distance)を変更することができる。SIDにより、Z軸方向におけるX線の焦点(例えば、
図5に示す焦点Fc,Fe,Fs)の位置が決定される。
【0017】
また、X線照射部23は、可動装置の一例として、Y軸方向に伸縮可能な伸縮構造体Bを設けることができる。その場合、伸縮構造体Bの下側が、Y軸方向に移動可能となる。伸縮構造体BがY軸方向に伸縮されることにより、伸縮構造体Bの下部側に設けられるX線管23aと可動絞り装置23bとを一体としてY軸方向に移動可能である。X線管23aと可動絞り装置23bとのY軸方向のスライド移動により、X線管23aの焦点のY軸方向の位置、つまり、X線管23aの焦点(例えば、
図5に示す焦点Fc,Fe,Fs)の高さを変更することができる。
【0018】
さらに、X線照射部23は、可動装置の一例として、X線管23aと可動絞り装置23bとを保持し、X軸の平行で焦点を通る軸を中心として回転可能な回転構造体Cを設けることができる。その場合、回転構造体Cが、X軸を中心として回転可能となる。回転構造体CがX軸を中心として回転されることにより、回転構造体Cに保持されるX線管23aと可動絞り装置23bとを一体として回転可能である。回転構造体Cの回転移動により、FPD24aに対するX線の照射方向(例えば、
図6に示す照射方向Gc)を変更することができる。照射方向は、「ビュー」とも呼ばれる。
【0019】
X線検出部24は、X線検出器としてのFPD(Flat Panel Detector)24a(
図2に図示)と、A/D(Analog to Digital)変換回路(図示省略)とを備える。
【0020】
FPD24aは、X線照射部23のX線管23aに対向するように、かつ、その検出面がX軸及びY軸に平行になるように設けられる。FPD24aは、X線を検出する複数の検出素子を備える。複数の検出素子は、マトリクス状に配置される。
【0021】
A/D変換回路は、FPD24aから出力される時系列的なアナログ信号(ビデオ信号)の投影データをデジタル信号に変換し、医用画像処理装置12に出力する。
【0022】
また、X線検出部24は、可動装置の一例として、Z軸方向に移動可能な移動構造体(図示省略)を設けることができる。その場合、当該移動構造体が、Z軸方向に移動可能となる。当該移動構造体がZ軸方向に移動されることにより、移動構造体に保持されるFPD24aをZ軸方向に移動可能である。FPD24aのZ軸方向の移動により、X線管23aとの間の距離であるSID等を変更することもできる。
【0023】
なお、X線検出部24は、I.I.(Image Intensifier)-TV系であってもよい。I.I.-TV系では、透過X線及び直接入射されるX線を可視光に変換し、さらに、光-電子-光変換の過程で輝度の倍増を行なって感度のよい投影データを形成させ、CCD(Charge Coupled Device)撮像素子を用いて光学的な投影データを電気信号に変換する。
【0024】
上述したように、回転構造体CのY軸方向のスライド移動と、回転構造体Cの回転移動とを組み合わせることにより、X線撮影装置1は、胸部Mを複数の照射方向から撮影可能なトモシンセシス撮影を行うことができる。
【0025】
図2(A)は、立位撮影で、所定のSIDを維持したままトモシンセシス撮影を行う場合の配置例を示す。
図2(A)に示すように、X線管23aを保持する回転構造体CのY軸方向(上下方向)へのスライド移動と、回転構造体Cの回転移動とが行われる。回転構造体Cが上方向に存在する場合は、回転構造体Cは時計周りに回転移動された状態である一方で、回転構造体Cが下方向に存在する場合は、回転構造体Cは反時計周りに回転移動された状態である。
【0026】
図2(B)は、臥位撮影で、所定のSIDを維持したままトモシンセシス撮影を行う場合の配置例を示す。
図2(B)に示すように、X線管23aを保持する回転構造体CのY軸方向(頭足方向)へのスライド移動と、回転構造体Cの回転移動とが行われる。回転構造体Cが頭方向に存在する場合は、回転構造体Cは時計周りに回転移動された状態である一方で、回転構造体Cが足方向に存在する場合は、回転構造体Cは反時計周りに回転移動された状態である。
【0027】
図2(A),(B)に示すように、FPD24aは、複数の照射方向(
図2(A),(B)ではそれぞれ3個の照射方向)でそれぞれ入射したX線を検出することができる。このように、X線撮影装置1は、複数の照射方向にそれぞれ対応する複数の撮影画像データを取得するトモシンセシス撮影を行うことが可能である。また、後述するように、取得された複数の撮影画像データからボリュームデータを生成することが可能である。
【0028】
図1の説明に戻って、医用画像処理装置12は、処理回路31と、メモリ32と、画像生成回路33と、入力インターフェース34と、ディスプレイ35と、ネットワークインターフェース36とを備える。なお、画像生成回路33は、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)等によって構成されるものである。しかしながら、その場合に限定されるものではなく、画像生成回路33の機能の全部又は一部は、処理回路31がプログラムを実行することで実現されるものであってもよい。
【0029】
処理回路31は、X線撮影装置1の全体の動作を制御する。処理回路31は、専用又は汎用のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processor Unit)、又はGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサの他、ASIC、及び、プログラマブル論理デバイス等を意味する。プログラマブル論理デバイスとしては、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(SPLD:Simple Programmable Logic Device)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:Complex Programmable Logic Device)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:Field Programmable Gate Array)等が挙げられる。
【0030】
また、処理回路31は、単一の回路によって構成されてもよいし、複数の独立した処理回路要素の組み合わせによって構成されてもよい。後者の場合、メモリ32は処理回路要素ごとに個別に設けられてもよいし、単一のメモリ32が複数の処理回路要素の機能に対応するプログラムを記憶するものであってもよい。
【0031】
メモリ32は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等によって構成される。メモリ32は、USB(Universal Serial Bus)メモリ及びDVD(Digital Video Disk)等の可搬型メディアによって構成されてもよい。メモリ32は、処理回路31において用いられる各種処理プログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(Operating System)等も含まれる)や、プログラムの実行に必要なデータを記憶する。また、OSに、操作者に対するディスプレイ35への情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力インターフェース34によって行うことができるGUI(Graphic User Interface)を含めることもできる。なお、メモリ32は、記憶部の一例である。
【0032】
画像生成回路33は、処理回路31による制御の下、撮影装置本体11のX線検出部24のA/D変換回路(図示省略)から出力された透過データに対して対数変換処理(LOG処理)を行なって必要に応じて加算処理して、X線画像データを撮影画像データとして生成する。また、画像生成回路33は、処理回路31による制御の下、生成された撮影画像データに対して画像処理を施す。画像処理としては、データに対する拡大/階調/空間フィルタ処理や、時系列に蓄積されたデータの最小値/最大値トレース処理、及びノイズを除去するための加算処理等が挙げられる。
【0033】
画像生成回路33は、生成した撮影画像データをメモリ32等の記憶装置に記録する。なお、画像生成回路33は、画像生成部の一例である。
【0034】
入力インターフェース34は、操作者によって操作が可能な入力デバイスと、入力デバイスからの信号を入力する入力回路とを含む。入力デバイスは、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面に触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等によって実現される。入力デバイスが操作者から入力操作を受け付けると、入力回路は当該入力操作に応じた電気信号を生成して処理回路31に出力する。なお、入力インターフェース34は、入力部の一例である。
【0035】
ディスプレイ35は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ35は、画像生成回路33によって生成された撮影画像データや、後述する擬似画像データや、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。例えば、ディスプレイ35は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等である。なお、ディスプレイ35は、表示部の一例である。
【0036】
ネットワークインターフェース36は、ネットワークの形態に応じた種々の情報通信用プロトコルを実装する。ネットワークインターフェース36は、この各種プロトコルに従って、X線撮影装置1と、外部の画像サーバ(図示省略)等の機器とを接続する。この接続には、電子ネットワークを介した電気的な接続等を適用することができる。ここで、電子ネットワークとは、電気通信技術を利用した情報通信網全般を意味し、無線/有線の病院基幹のLAN(Local Area Network)やインターネット網のほか、電話通信回線網、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワーク及び衛星通信ネットワーク等を含む。なお、ネットワークインターフェース36は、ネットワーク接続部の一例である。
【0037】
続いて、医用画像処理装置12の機能について説明する。
【0038】
図3に示すように、処理回路31は、メモリ32に記憶された、又は、処理回路31内に直接組み込まれたコンピュータプログラムを読み出して実行することで、撮影データ生成機能311と、撮影データ取得機能312と、ボリューム生成機能313と、ボリューム取得機能314と、条件設定機能315と、擬似データ生成機能316とを実現する。以下、機能311~316がソフトウェア的に機能する場合を例に挙げて説明するが、機能311~316の全部又は一部は、ASIC等の回路により実現されてもよい。また、機能311~316の全部又は一部は、撮影装置本体11の撮影制御回路21により実現されるものであってもよい。
【0039】
まず、X線撮影装置1の意義について説明する。X線管23aの1つの位置からのX線撮影による1つの撮影画像データによれば、1回のX線撮影により被検体Sの検査部位Mに関する撮影画像データを取得することができる。ここで、検査部位Mが胸部の場合のX線撮影では、SIDが、第7~8胸椎の中心へのX線の入射位置や入射角度等にとって重要である。
【0040】
しかしながら、撮影装置本体11のレイアウトの自由度から、SIDを大きくすることが難しい場合がある。例えば、立位撮影用の撮影装置本体11に比べて臥位撮影用の撮影装置本体11では構造的な制限からSIDを大きくすることが難しい場合がある。そこで、X線撮影装置1では、第1のSIDによる第1の撮影画像データから、第1のSIDより大きい第2のSIDによる第2の撮影画像データを、擬似的な撮影画像データ(以下、「擬似画像データ」と呼ぶ)として生成するものである。
【0041】
図4は、第1のSIDによる第1の撮影画像データから第2のSIDによる第2の撮影画像データを生成する方法の概念を説明するための図である。
【0042】
図4は、第1のSIDによる配置と第2のSIDによる配置との関係を示す。
図4は、FPD24aと、第1のSIDに従ってFPD24aに対して配置される、焦点FcのX線管23aとを示す。第1のSIDによるX線撮影に基づいて第1の撮影画像データが取得される。ここで、被検体の胸部撮影において、頸椎、胸椎、腰椎は湾曲しているため、頸椎、胸椎、腰椎へのX線の入射位置及び入射角度は一定ではない。
【0043】
一般的に、頸椎、胸椎、腰椎を撮影する場合は、第1のSIDより大きい第2のSIDに従ってFPD24aに対して配置される、焦点Fc´のX線管23aからのX線撮影が望ましい場合がある。例えば、検査部位Mが胸部である場合、診断に適した画像を得るためには、肺の上葉と中葉の境界がX線の入射方向として適切とされている。そのためには、第7~8胸椎の中心から水平距離で約2000[mm]程度離れた位置を焦点とすることが好適とされている。しかし、撮影装置本体11のレイアウトの自由度から、SIDを第1のSIDより大きく約2000[mm]とすることが難しい場合がある。
【0044】
そこで、X線撮影装置1では、第1のSIDによる第1の撮影画像データに基づいてボリュームデータを生成し、第1のSIDより大きい第2のSIDによる第2の撮影画像データを、擬似画像データとして生成する。
【0045】
図3の説明に戻って、撮影データ生成機能311は、撮影装置本体11の撮影制御回路21を制御して、撮影装置本体11に第1のSIDでトモシンセシス撮影を実行させる機能と、画像生成回路33を制御して、トモシンセシス撮影により収集された透過データに基づいて、複数の照射方向にそれぞれ対応する複数のX線投影データを、複数の撮影画像データとして生成する機能とを含む。また、撮影データ生成機能311は、複数の撮影画像データをメモリ32に記憶させる機能を含む場合もある。なお、撮影データ生成機能311は、撮影データ生成部の一例である。
【0046】
図5の上段を用いて、トモシンセシス撮影について説明する。
図5の上段は、実座標系、つまり、XYZ座標系において、第1のSIDに従ってFPD24aに対して配置されたX線管23aの3個の焦点Fc,Fe,Fsを示す。焦点Fcで発生したX線は拡がり角θcに基づく照射領域41cで検査部位Mに入射し、FPD24aのY軸方向の中心付近に到達する。焦点Feで発生したX線は拡がり角θeに基づく照射領域41eで検査部位Mに入射し、FPD24aのY軸の負側に到達する。焦点Fsで発生したX線は拡がり角θsに基づく照射領域41sで検査部位Mに入射し、FPD24aのY軸の正側に到達する。
【0047】
図3の説明に戻って、撮影データ取得機能312は、撮影データ生成機能311によって生成された複数の撮影画像データをメモリ32から取得する機能を含む。なお、撮影データ取得機能312は、撮影データ取得部の一例である。
【0048】
ボリューム生成機能313は、撮影データ取得機能312によって取得された複数の撮影画像データに基づいて、ボリュームデータを生成する機能を含む。例えば、ボリューム生成機能313は、XYZ座標系に対応するUVW座標系に、複数の撮影画像データ、つまり、投影プロファイルを位置合わせして配列し、複数の投影プロファイルを逆投影(バックプロジェクション)処理することで、UVW座標系の3次元空間にボリュームデータを生成する。逆投影前の複数の投影プロファイルにそれぞれ、エッジをキャンセルするためのフィルタを掛けてもよい。
【0049】
また、ボリューム生成機能313は、ボリュームデータをメモリ32に記憶させる機能を含む場合もある。なお、ボリューム生成機能313は、ボリューム生成部の一例である。
【0050】
図5の中段を用いて、再構成(例えば、逆投影処理)について説明する。
図5の中段は、データ空間座標系、つまり、UVW座標系において、FPD24aの検出面Oから一定の距離だけW軸の負方向に離れた位置に生成されるボリュームデータ領域Nを示す。焦点Fcから検出面Oまで拡がる照射領域41c(上段に図示)に対応する位置にデータ領域42cが存在する。焦点Feから検出面Oまで拡がる照射領域41e(上段に図示)に対応する位置にデータ領域42eが存在する。焦点Fsから検出面Oまで拡がる照射領域41sに対応する位置にデータ領域42sが存在する。データ領域42c,42e,42sの重なる位置を含むようにボリュームデータ領域Nが生成される。
【0051】
以下、XYZ座標系のサイズとUVW座標系のサイズとが1対1に対応している場合について説明する。
【0052】
なお、ボリュームデータ領域Nを、データ領域42c,42e,42sの全てが重なるデータ領域とするが、その場合に限定されるものではない。ボリュームデータ領域Nは、データ領域42c,42e,42sの全てが重なる領域を含む領域であればよい。
【0053】
図3の説明に戻って、ボリューム取得機能314は、ボリューム生成機能313によって生成されたボリュームデータをメモリ32から取得する機能を含む。なお、ボリューム取得機能314は、ボリューム取得部の一例である。
【0054】
条件設定機能315は、第1のSIDより大きい第2のSIDに基づいて視点を設定する機能を含む。具体的には、条件設定機能315は、XYZ座標系の第2のSIDをUVW座標系に換算し、換算されたUVW座標系の第2のSIDに基づいて、視点を設定する。なお、条件設定機能315は、条件設定部の一例である。
【0055】
擬似データ生成機能316は、ボリューム取得機能314によって取得されたボリュームデータを、条件設定機能315によって設定された視点から視線方向(投影方向)に沿って投影することで、投影データを擬似画像データとして生成する機能を含む。具体的には、擬似データ生成機能316は、UVW座標系のボリュームデータを、UVW座標系の視点から投影することで擬似画像データを生成する。なお、擬似データ生成機能316は、擬似データ生成部の一例である。
【0056】
図5の下段を用いて、視点の設定について説明する。
図5の下段は、FPD24aの検出面O(中段に図示)に対応する、UVW座標系の投影面Pを示す。また、
図5の下段は、XYZ座標系の第2のSID(例えば、2000[mm])から換算されたUVW座標系の第2のSIDを示す。なお、第2のSIDを無限大として設定することもできる。その場合、視点を基点とした中心投影ではなく、視線方向がほぼ平行な平行投影が可能となる。
【0057】
図5の下段に示すように、条件設定機能315は、UVW座標系に換算された第2のSIDから設定距離を減じた距離を算出し、ボリュームデータ領域N(例えば、再構成中心H)から、算出された距離だけ離れた位置を視点F1として設定する。設定距離は、予め設定される一定の距離であってもよいし、第2のSIDに基づいて算出される投影面Pと再構成中心Hとの間の距離であってもよい。なお、それらの場合に限定されるものではなく、条件設定機能315は、設定距離を「0」とみなし、投影面Pの位置から、UVW座標系に換算された第2のSIDに対応する距離だけ離れた位置を視点F1として設定してもよい。ここで、視線方向G1は、XYZ座標系のFPD24aの検出面の直交方向に対応する方向、つまり、W軸の正方向であればよい。
【0058】
図3の説明に戻って、擬似データ生成機能316は、擬似画像データを擬似画像としてディスプレイ35に表示させる機能を含む。また、擬似データ生成機能316は、擬似画像データをメモリ32に登録する機能を含む場合もある。なお、擬似データ生成機能316は、擬似データ生成部の一例である。
【0059】
図6の上段は、実際のX線撮影により生成される撮影画像データの生成方法を示す。第1のSIDにより配置されたX線管23aの焦点Fcから、Z軸の正方向を照射方向Gcとし、拡がり角θcでX線が照射され、FPD24aによりX線が検出される。これにより、第1のSIDに基づく撮影画像データが生成される。
【0060】
図6の下段は、ボリュームデータ領域Nから生成される擬似画像データの生成方法を示す。UVW座標系に換算された第2のSIDにより設定された視点F1から、W軸の正方向である視線方向G1に沿って、拡がり角θ1で、ボリュームデータ領域Nが投影面Pに投影される。なお、拡がり角θ1は、投影面P上の投影サイズが、XYZ座標系における検出面上のX線の照射サイズと同程度になるように設定されればよい。これにより、第2のSIDによる擬似画像データが生成される。
【0061】
以上のように、X線撮影装置1によれば、撮影装置本体11のレイアウトの自由度から、SIDを大きくすることが難しい場合であっても、第1のSIDによる撮影画像データから、第1のSIDより大きい第2のSIDによる擬似画像データを生成して表示することができる。これにより、検査部位Mが胸部等の場合であっても、操作者に診断容易な画像を提供することができる。
【0062】
続いて、医用画像処理装置12の動作について説明する。
【0063】
図7は、医用画像処理装置12の動作をフローチャートとして示す図である。
図7において、「ST」に数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
【0064】
撮影データ生成機能311は、撮影装置本体11の撮影制御回路21を制御して、撮影装置本体11に第1のSIDでトモシンセシス撮影を実行させる(ステップST1)。第1のSIDのトモシンセシス撮影については
図5の上段を用いて説明済みである。撮影データ生成機能311は、画像生成回路33を制御して、ステップST1によるトモシンセシス撮影により収集された透過データに基づいて、複数の照射方向にそれぞれ対応する複数の撮影画像データを生成し、複数の撮影画像データをメモリ32に記憶させる(ステップST2)。
【0065】
撮影データ取得機能312は、ステップST2によって生成及び記憶された複数の撮影画像データをメモリ32から取得する(ステップST3)。ボリューム生成機能313は、ステップST3によって取得された複数の撮影画像データに基づいて、ボリュームデータを生成し、ボリュームデータをメモリ32に記憶させる(ステップST4)。ボリュームデータの再構成については
図5の中段を用いて説明済みである。
【0066】
ボリューム取得機能314は、ステップST4によって生成及び記憶されたボリュームデータをメモリ32から取得する(ステップST5)。条件設定機能315は、XYZ系の第2のSIDをUVW座標系に換算する(ステップST6)。条件設定機能315は、ステップST6によって換算されたUVW座標系の第2のSIDに基づいて、後述する投影処理における視点を設定する(ステップST7)。視点の設定については
図5の下段を用いて説明済みである。
【0067】
擬似データ生成機能316は、ステップST5によって取得されたUVW座標系のボリュームデータを、ステップST7によって設定された視点から投影することで擬似画像データを生成し、擬似画像データを擬似画像としてディスプレイ35に表示させる(ステップST8)。
【0068】
コンソール装置等の医用画像処理装置12は、第1のSIDにより取得された撮影画像データから、第1のSIDより大きい第2のSIDに対応する擬似画像データを生成することができる。これにより、医用画像処理装置12によれば、検査部位Mへの入射位置や入射角度が考慮された、診断に有用な擬似画像データを操作者に提供することができる。
【0069】
(第1の変形例)
図5の下段に示すように、X線撮影装置1は、ボリュームデータ領域Nの所定位置(例えば、再構成中心)Hを基準として視点F1を設定したが、その場合に限定されるものではない。例えば、X線撮影装置1の条件設定機能315は、ボリュームデータ領域Nを用いて第7~8胸椎の中心等の関心領域Jを検出し、関心領域Jを基準として視点を設定してもよい。
【0070】
条件設定機能315は、関心領域Jを検出処理に、機械学習を用いてもよい。また、機械学習としてCNN(畳み込みニューラルネットワーク)や畳み込み深層信念ネットワーク(CDBN:Convolutional Deep Belief Network)等の、多層のニューラルネットワークを用いた深層学習が用いられてもよい。
【0071】
例えば、条件設定機能315は、胸椎を含む大量のボリュームデータを機械学習に通すことでモデルを作成し、ステップST5(
図7に図示)によって取得されたボリュームデータをモデルに入力することで、機械学習による比較を行って結果として第7~8胸椎の中心等の関心領域Jの座標(u,v,w)を出力する。
【0072】
図8(A)は、ボリュームデータ領域Nに設定される、第7~8胸椎の中心等の関心領域Jを示す。X線の第7~8胸椎の中心への水平照射を模擬するように、視点F2と、視線方向G2とが設定される。条件設定機能315は、UVW座標系に換算された第2のSIDから設定距離を減じた距離を算出し、ボリュームデータ領域Nの関心領域Jから、算出された距離だけ離れた位置を視点F2として設定する。なお、その場合に限定されるものではなく、条件設定機能315は、設定距離を「0」とみなし、投影面Pの位置から、UVW座標系に換算された第2のSIDに対応する距離だけ離れた位置を視点F2として設定してもよい。ここで、視線方向G2は、XYZ座標系のFPD24aの検出面の直交方向に対応する方向、つまり、W軸の正方向であればよい(
図8(B)に図示)。
【0073】
コンソール装置等の医用画像処理装置12の第1の変形例によれば、第7~8胸椎の中心等の関心領域Jを中心とした擬似画像データを生成することができるので、診断に有用な擬似画像データを操作者に提供することができる。
【0074】
(第2の変形例)
図5の下段に示すように、X線撮影装置1は、視線方向G1を、XYZ座標系のFPD24aの検出面の直交方向に対応する方向、つまり、W軸の正方向としたが、その場合に限定されるものではない。条件設定機能315は、視点に加え、視線方向を設定し、擬似データ生成機能316は、ボリュームデータを、設定された視線方向に沿って投影することで、擬似画像データを生成してもよい。
【0075】
例えば、X線撮影装置1の条件設定機能315は、ボリュームデータ領域Nを用いて第7~8胸椎の中心等の関心領域Jを検出し、関心領域Jへの入射位置及び入射角度を考慮した視線方向を設定し、視線方向を基準として視点を設定してもよい。なお、関心領域Jの検出方法は、第1の変形例で説明した関心領域Jの検出方法と同等であるので、説明を省略する。
【0076】
図9は、ボリュームデータ領域Nに設定される、第7~8胸椎の中心等の関心領域Jを示す。X線の第7~8胸椎の中心への垂直な照射を模擬するように、関心領域Jの直交方向に視線方向G3が設定される。条件設定機能315は、UVW座標系に換算された第2のSIDから設定距離を減じた距離を算出し、ボリュームデータ領域Nの関心領域Jから、算出された距離だけ離れた位置を視点F3として設定する。なお、その場合に限定されるものではなく、条件設定機能315は、設定距離を「0」とみなし、投影面Pから、UVW座標系に換算された第2のSIDに対応する距離だけ離れた位置を視点F3として設定してもよい。ここで、視線方向G3は、XYZ座標系のFPD24aの検出面の直交方向に対応する方向、つまり、W軸の正方向から角度を有する(
図8(B)に図示)。
【0077】
コンソール装置等の医用画像処理装置12の第2の変形例によれば、第7~8胸椎の中心等の関心領域Jにほぼ垂直にX線が入射された場合の擬似画像データを生成することができるので、診断に有用な擬似画像データを操作者に提供することができる。
【0078】
(第3の変形例)
図5の下段に示すように、X線撮影装置1は、視線方向G1を、XYZ座標系のFPD24aの検出面の直交方向に対応する方向、つまり、W軸の正方向としたが、その場合に限定されるものではない。条件設定機能315は、視点に加え、視線方向を設定し、擬似データ生成機能316は、ボリュームデータを、設定された視線方向に沿って投影することで、擬似画像データを生成してもよい。
【0079】
例えば、X線撮影装置1の条件設定機能315は、ボリュームデータ領域Nを用いて第7~8胸椎の境界線等の曲線Lを検出し、曲線Lに沿った視線方向を設定し、視線方向を基準として視点を設定してもよい。なお、曲線Lの検出方法は、第1の変形例で説明した関心領域Jの検出方法と同等であるので、説明を省略する。
【0080】
図10は、ボリュームデータ領域Nに設定される、第7~8胸椎の境界線等の曲線Lを示す。X線の第7~8胸椎の境界に沿った照射を模擬するように、曲線Lに沿った方向に視線方向G4が設定される。条件設定機能315は、UVW座標系に換算された第2のSIDから設定距離を減じた距離を算出し、ボリュームデータ領域Nの曲線L(端点Q、端点R、又は、端点Qと端点Rとの中点)から、算出された距離だけ離れた位置を視点F4として設定する。なお、その場合に限定されるものではなく、条件設定機能315は、設定距離を「0」とみなし、投影面Pから、UVW座標系に換算された第2のSIDに対応する距離だけ離れた位置を視点F4として設定してもよい。ここで、視線方向G4は、ボリュームデータ領域Nの曲線Lの端点Qと端点Rとを結ぶ直線に沿うものであり、XYZ座標系のFPD24aの検出面の直交方向に対応する方向、つまり、W軸の正方向から角度を有する。
【0081】
コンソール装置等の医用画像処理装置12の第3の変形例によれば、第7~8胸椎の境界線等の曲線Lに沿ってX線が入射された場合の、診断に有用な擬似画像データを操作者に提供することができる。
【0082】
(第4の変形例)
図5の下段に示すように、X線撮影装置1は、視線方向G1を、XYZ座標系のFPD24aの検出面の直交方向に対応する方向、つまり、W軸の正方向としたが、その場合に限定されるものではない。条件設定機能315は、視点に加え、視線方向を設定し、擬似データ生成機能316は、ボリュームデータを、設定された視線方向に沿って投影することで、擬似画像データを生成してもよい。
【0083】
例えば、X線撮影装置1の条件設定機能315は、視線方向として、コントラストが最も高い擬似画像データに対応する視線方向を設定する。その場合、条件設定機能315が、ボリュームデータを、複数の視線方向に沿ってそれぞれ投影することで、擬似データ生成機能316は、複数の擬似画像データの候補を生成する。そして、擬似データ生成機能316は、複数の擬似画像データの候補の中からコントラストが最も高い擬似画像データの候補を擬似画像データとして抽出する。
【0084】
コンソール装置等の医用画像処理装置12の第4の変形例によれば、コントラストに優れた、診断に有用な擬似画像データを操作者に提供することができる。
【0085】
(第5の変形例)
条件設定機能315と擬似データ生成機能316とが、ボリュームデータから、1つの関心領域に対して1つの視点及び1つの視線方向を設定して、1つの擬似画像データを生成する方法について説明したが、その場合に限定されるものではない。例えば、条件設定機能315は、UVW座標系に換算された第2のSIDを用いて複数の視点を設定し、FPD24aの検出面の直交方向に対応する複数の方向を設定してもよい。その場合、擬似データ生成機能316は、ボリュームデータを、設定された複数の視点から、設定された複数の方向に沿ってそれぞれ投影することで、V軸方向に複数の擬似画像データを生成する。擬似データ生成機能316は、複数の擬似画像データを繋いで長尺画像データを生成することもできる。
【0086】
また、例えば、条件設定機能315は、UVW座標系に換算された第2のSIDを用いて複数の視点を設定し、前記ボリュームデータに含まれる複数の関心領域J(
図8及び
図9に図示)にそれぞれ直交する複数の方向を設定してもよい。その場合、擬似データ生成機能316は、ボリュームデータを、設定された複数の視点から、設定された複数の方向に沿ってそれぞれ投影することで、V軸方向に複数の擬似画像データを生成する。擬似データ生成機能316は、複数の擬似画像データを繋いで長尺画像データを生成することもできる。
【0087】
(第6の変形例)
トモシンセシス撮影を行う構成例について、
図2を用いて説明した。しかしながら、トモシンセシス撮影を行う構成は、Y軸方向に直線的にスライド移動されるX線管23aから、固定されたFPD24aに対してX線が照射される構成に限定されるものではない。例えば、Y軸方向に直線的にスライド移動されるX線管23aから、Y軸方向に直線的にスライド移動されるFPD24aに対してX線が照射される構成であってもよい。
【0088】
図11に示すように、Y軸の正方向に直線的にX線管23aがスライド移動される場合に、Y軸の負方向に直線的にFPD24aがスライド移動されることで、トモシンセシス撮影が行われる。また、X線管23aは、Y軸方向に直線的にスライド移動される場合に限定されるものでもなく、X線管23aの焦点とFPD24aの中心との中点を中心にした円弧方向に移動することでトモシンセシス撮影を実現するものであってもよい。さらに、X線管23aとFPD24aとは、X線管23aの焦点とFPD24aの中心との中点を中心にした円弧方向に回転移動可能なアーム(図示省略)に保持され、アームの回転により円弧方向に移動することでトモシンセシス撮影を実現するものであってもよい。
【0089】
(第2の実施形態)
図12は、第2の実施形態に係る医用画像処理装置80を示す。医用画像処理装置80は、ワークステーションや、読影端末等であり、ネットワークを介して、X線撮影装置1又は医用画像管理装置(画像サーバ)70に相互通信可能に接続される。なお、医用画像処理装置80は、オフラインの装置であってもよいし、医用画像管理装置70の機能を有するものであってもよい。
【0090】
医用画像処理装置80は、処理回路81と、メモリ82と、入力インターフェース84と、ディスプレイ85と、ネットワークインターフェース86とを備える。処理回路81と、メモリ82と、入力インターフェース84と、ディスプレイ85と、ネットワークインターフェース86とは、
図1に示す処理回路31と、メモリ32と、入力インターフェース34と、ディスプレイ35と、ネットワークインターフェース36とそれぞれ同等の構成を有するものとして説明を省略する。
【0091】
処理回路81は、メモリ82に記憶された、又は、処理回路81内に直接組み込まれたコンピュータプログラムを読み出して実行することで、ボリューム取得機能814と、条件設定機能815と、擬似データ生成機能816とを実現する。以下、機能814~816がソフトウェア的に機能する場合を例に挙げて説明するが、機能814~816の全部又は一部は、ASIC等の回路により実現されてもよい。また、機能814~816を医用画像システム上の複数の装置で分散して行う構成としてもよい。
【0092】
メモリ82は、ボリューム生成機能313(
図3に図示)によって生成され、ネットワークインターフェース86を介してX線撮影装置1又は医用画像管理装置70から取得されたボリュームデータを記憶する。又は、メモリ82は、ボリューム生成機能313(
図3に図示)によって生成され、可搬型の記憶媒体を介してX線撮影装置1又は医用画像管理装置70から取得されたボリュームデータを記憶する。
【0093】
ボリューム取得機能814は、メモリ82からボリュームデータを取得する機能を含む。ボリューム取得機能814は、
図3に示すボリューム取得機能314と同等の機能を有する。なお、ボリューム取得機能814は、ボリューム取得部の一例である。
【0094】
条件設定機能815は、
図3に示す条件設定機能315と同等の機能を含む。なお、条件設定機能815は、条件設定部の一例である。
【0095】
擬似データ生成機能816は、
図3に示す擬似データ生成機能316と同等の機能を含む。なお、擬似データ生成機能816は、擬似データ生成部の一例である。
【0096】
なお、医用画像処理装置80の動作については、
図7に示す医用画像処理装置12のステップST5~ST8の動作と同等であるので、説明を省略する。
【0097】
X線撮影装置1又は医用画像管理装置70にネットワーク接続されたワークステーション等の医用画像処理装置80、又は、オフラインの医用画像処理装置80によれば、第1のSIDにより取得された撮影画像データから、第1のSIDより大きい第2のSIDに対応する擬似画像データを生成することができる。これにより、医用画像処理装置80によれば、検査部位Mへの入射位置や入射角度が考慮された、診断に有用な擬似画像データを操作者に提供することができる。
【0098】
なお、撮影データ生成機能311は、撮影データ生成部の一例である。撮影データ取得機能312は、撮影データ取得部の一例である。ボリューム生成機能313は、ボリューム生成部の一例である。ボリューム取得機能314,814は、ボリューム取得部の一例である。条件設定機能315,815は、条件設定部の一例である。擬似データ生成機能316,816は、擬似データ生成部の一例である。
【0099】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、診断に有用なX線画像データを提供することができる。
【0100】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0101】
1 X線撮影装置
11 撮影装置本体
12 医用画像処理装置(例えば、コンソール装置)
23 X線照射部
23a X線管
24 X線検出部
24a FPD
31 処理回路
80 医用画像処理装置(例えば、ワークステーション)
311 撮影データ生成機能
312 撮影データ取得機能
313 ボリューム生成機能
314,814 ボリューム取得機能
315,815 条件設定機能
316,816 擬似データ生成機能