(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】異形鉄筋の継手金具及び異形鉄筋の接続方法
(51)【国際特許分類】
E04C 5/18 20060101AFI20240410BHJP
E04B 1/21 20060101ALI20240410BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20240410BHJP
E04G 21/12 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
E04C5/18 102
E04B1/21 C
E04B1/21 D
E04B1/58 503A
E04G21/12 105E
(21)【出願番号】P 2020060101
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】増子 寛
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-206147(JP,A)
【文献】特開2000-226905(JP,A)
【文献】特開平11-124958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 5/18
E04B 1/21
E04B 1/58
E04G 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する柱部材または梁部材から突出する、外周面にネジ部が形成された一対の異形鉄筋同士を接続する継手金具であって、
内周面に、一方の異形鉄筋の前記ネジ部と螺合
可能な複数の雌ネジ部が形成され、外周面に雄ネジ部が形成された、円筒状の一方側係止部材と、
内周面に、他方の異形鉄筋の前記ネジ部と螺合
可能な複数の雌ネジ部が形成され、外周面に雄ネジ部が形成された、円筒状の他方側係止部材と、
内周面に、前記一方側及び他方側係止部材の雄ネジ部と螺合する雌ネジ部を備え、前記一対の異形鉄筋にそれぞれ螺合された一方側係止部材と他方側係止部材とを接続する、円筒状の接続部材とを備え、
前記一方側係止部材に形成された複数の雌ネジ部は、当該一方側係止部材の中心からの距離が互いに異なり、
前記他方側係止部材に形成された複数の雌ネジ部は、当該他方側係止部材の中心からの距離が互いに異なり、かつ、
前記異形鉄筋の延長方向から見たときの、前記一方側係止部材
に形成された雌ネジ部の位置と前記他方側係止部材
に形成された雌ネジ部の位置の
うちのいずれ
かまたは
複数が、前記接続部材の中心位置からずれていることを特徴とする異形鉄筋の継手金具
。
【請求項2】
前記一方側係止部材
に形成された複数の雌ネジ部に替えて、当該
一方側係止部材の軸方向から見たときの形状がトラック状である穴
を設け
、
前記他方側係止部材に形成された複数の雌ネジ部に替えて、当該他方側係止部材の軸方向から見たときの形状がトラック状である穴を設けたことを特徴とする請求項1に記載の異形鉄筋の継手金具。
【請求項3】
継手金具を用いて、互いに対向する柱部材または梁部材から突出する、外周面にネジ部が形成された一対の異形鉄筋同士を接続する異形鉄筋の接続方法において、
前記継手金具が、請求項1
または請求項
2に記載の異形鉄筋の継手金具であって、
前記一対の異形鉄筋のうちの一方の異形鉄筋である一方側鉄筋の中心軸と他方の鉄筋である他方側鉄筋の中心軸との距離であるずれ量を計測するステップと、
前記ずれ量に応じて、前記一方側係止部材と他方側係止部材とに使用する係止部材を選択するステップと、
前記一方側鉄筋に前記一方側係止部材を、前記他方側鉄筋に前記他方側係止部材をそれぞれ螺入させるステップと、
前記一方側係止部材と前記他方側係止部材のいずれか一方、または、両方を、前記一方側鉄筋または他方側鉄筋の回転軸周りに回転させて、前記一方側係止部材の中心軸と前記他方側係止部材の中心軸とを一致させる軸合わせステップと、
前記一対の異形鉄筋にそれぞれ螺合された一方側係止部材と他方側係止部材とを、前記接続部材を用いて接続するステップと、を備えることを特徴とする異形鉄筋の接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周面にネジ部が形成された一対の異形鉄筋同士を接続する継手金具に関するもので、特に、互いに対向する中心軸がずれている異形鉄筋同士を接合する継手金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高層RC建物では、柱、梁部材をプレキャストすることで、工期の短縮を図ることが多い。その際、柱、梁部材の主筋は、現場の組立施工性を配慮し、精度よく作製される必要がある。
柱部材または梁部材から突出する主筋の突出位置がそろっていないと、中心軸が一致しない主筋の対ができてしまうため、組立作業性が著しく低下してしまう、といった問題点があった。そのため、プレキャスト部材を作製するメーカーでは、独自のノーハウを駆逐して、部材作製に腐心している。
従来、互いに対向する柱部材または梁部材から突出する異形鉄筋同士を接続する継手金具としては、内面と外面とにネジ部が形成された一対の第1カプラーと、内周にネジ部が形成されて、一対の第1カプラーをそれぞれ螺合する第2カプラーとを備えた構成のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の継手金具では、第2カプラーのネジ部の軸線を、中央部を境に直径方向にずらして形成することで、中心軸が一致しない主筋同士を接合可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の継手金具では、異形鉄筋同士のずれ量が同じであっても、異形鉄筋同士のずれ角度に応じて、異なった位置ずれの第2カプラーを準備する必要があった。すなわち、異形鉄筋同士のずれ量が同じでも、ずれが上下方向であるか左右方向であるかなどで、第2カプラーを変えなければならず、その結果、準備すべき継手金具の部品数(第2カプラーの数量)が多くなってしまう、といった問題点があった。
【0005】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、少ない部品数で、互いに対向する異形鉄筋の中心軸がずれている場合でも、異形鉄筋同士を、確実に、かつ、強固に接合することができる継手金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、互いに対向する柱部材または梁部材から突出する、外周面にネジ部が形成された一対の異形鉄筋同士を接続する継手金具であって、内周面に、一方の異形鉄筋の前記ネジ部と螺合可能な複数の雌ネジ部が形成され、外周面に雄ネジ部が形成された、円筒状の一方側係止部材と、内周面に、他方の異形鉄筋の前記ネジ部と螺合可能な複数の雌ネジ部が形成され、外周面に雄ネジ部が形成された、円筒状の他方側係止部材と、内周面に、前記一方側及び他方側係止部材の雄ネジ部と螺合する雌ネジ部を備え、前記一対の異形鉄筋にそれぞれ螺合された一方側係止部材と他方側係止部材とを接続する、円筒状の接続部材とを備え、前記一方側係止部材に形成された複数の雌ネジ部は、当該一方側係止部材の中心からの距離が互いに異なり、前記他方側係止部材に形成された複数の雌ネジ部は、当該他方側係止部材の中心からの距離が互いに異なり、かつ、前記異形鉄筋の延長方向から見たときの、前記一方側係止部材に形成された雌ネジ部の位置と前記他方側係止部材に形成された雌ネジ部の位置のうちのいずれかまたは複数が、前記接続部材の中心位置からずれていることを特徴とする。
ここで、「一方側係止部材または他方側係止部材の雌ネジ部の位置が接続部材の中心位置からずれている」とは、一方側係止部材の雌ネジ部の位置が一方側当該係止部材を構成する円筒の中心からずれている(偏心している)か、他方側係止部材の雌ネジ部の位置が偏心しているか、あるいは、両方の雌ネジ部の位置が偏心していることを意味する。なお、一方側係止部材の雌ネジ部の延長方向と他方側係止部材の雌ネジ部の延長方向とは、異形鉄筋の延長方向と同じであることはいうまでもない。
このような構成の継手金具を用いれば、互いに対向する中心軸がずれている異形鉄筋同士を、確実に、かつ、強固に接合することができるので、組立精度確保のための労力を軽減できるとともに、建設現場における組立作業性を向上させることができる。
【0007】
また、前記一方側係止部材に形成された複数の雌ネジ部に替えて、当該一方側係止部材の軸方向から見たときの形状がトラック状である穴を設けるとともに、 前記他方側係止部材に形成された複数の雌ネジ部に替えて、当該他方側係止部材の軸方向から見たときの形状がトラック状である穴を設けて、これらの穴に異形鉄筋を係止する構成としてもよい。
【0008】
また、本発明は、上記の継手金具を用いて、互いに対向する柱部材または梁部材から突出する、外周面にネジ部が形成された一対の異形鉄筋同士を接続する方法であって、前記一対の異形鉄筋のうちの一方の異形鉄筋である一方側鉄筋の中心軸と他方の鉄筋である他方側鉄筋の中心軸との距離であるずれ量を計測し、前記ずれ量に応じて、前記一方側係止部材と他方側係止部材とに使用する係止部材を選択した後、前記一方側鉄筋に前記一方側係止部材を、前記他方側鉄筋に前記他方側係止部材をそれぞれ螺入させ、しかる後に、前記一方側係止部材と前記他方側係止部材のいずれか一方、または、両方を、前記一方側鉄筋または他方側鉄筋の回転軸周りに回転させて、前記一方側係止部材の中心軸と前記他方側係止部材の中心軸とを一致させる軸合わせし、最後に、前記一対の異形鉄筋にそれぞれ螺合された一方側係止部材と他方側係止部材とを、前記接続部材を用いて接続するようにしたことを特徴とする。
このような係止手順で、一対の異形鉄筋同士を接続すれば、容易に、かつ、確実に、一対の異形鉄筋同士を接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に係る異形鉄筋の継手金具を示す図である。
【
図3】本実施の形態に係る異形鉄筋の接合方法を示す工程図である。
【
図4】本発明による異形鉄筋の継手金具の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1(a)~(c)は、本実施の形態を示す図で、(a)図は断面図、(b)図は左側面図、(c)図は右側面図である。各図において、1A,1Bは異形鉄筋、2は本発明による異形鉄筋の継手金具、3a,3bは柱部材または梁部材などの鉄筋コンクリート構造部材(以下、構造部材という)である。
異形鉄筋1A,1Bは、ともに、外周面に、コンクリートとの付着性を向上させるためのネジ部1a,1bが形成された鉄筋で、それぞれが、一端が互いに対向する構造部材3a,3b内に埋設され、他端が一方の構造部材3a(構造部材3b)の端面から他方の構造部材3b(3a)方向に突出している。
異形鉄筋の継手金具2(以下、継手金具2という)は、一方側鉄筋1Aの中心線と他方側鉄筋1Bの中心線とが一直線上にない場合、すなわち、異形鉄筋1A,1Bの延長方向と垂直な平面内で見たときに、対向する2つの異形鉄筋1A,1Bの位置がずれている場合に用いられる。なお、本例では、異形鉄筋1A,1Bの径及びピッチを同一とした。
以下、異形鉄筋1Aを一方側鉄筋、異形鉄筋1Bを他方側鉄筋という。
なお、互いに対向する構造部材3a,3bとしては、
図2(a)に示す、柱梁接合部31の柱32の上に設置される梁33A,33Bの主筋33a、33bであってもよいし、
図2(b)に示す、柱32に接合される梁部材34C,34Dの主筋34c,34dであってもよい。また、図は省略するが、本発明は、柱を構成する2つの柱部材の主筋同士の連結にも適用可能である。
【0011】
継手金具2は、一方側係止部材21と他方側係止部材22と接続部材23とを備える。
一方側係止部材21は、内周面に一方側鉄筋1Aと螺合される雌ネジ部である内ネジ部21aが形成され、外周面に接続部材23と螺合される雄ネジ部である外ネジ部21bが形成された円筒状の部材である。
他方側係止部材22も、一方側係止部材21と同一構成の円筒状の部材で、内周面に他方側鉄筋1Bと螺合される雌ネジ部である内ネジ部22aが形成され、外周面に接続部材23と螺合される雄ネジ部である外ネジ部22bが形成されている。
接続部材23は、一方側係止部材21と他方側係止部材22とを連結する円筒状の部材で、内周面には、一方側及び他方側係止部材21,22の外ネジ部21b,22bと螺合する雌ネジ部である連結用ネジ部23aが形成され、外周面には円環状の突起23bが形成されている。また、符号23c,23dは、接続部材23の外面側から内面側に貫通する貫通孔で、23cは、継手金具2の内部空間2Sにモルタルや樹脂等の充填材を注入するため充填材注入孔で、23dは、充填材の注入時に継手金具2の内部空間2Sから空気を逃がすための空気抜き穴である。
本発明の継手金具2では、一方側係止部材21の内ネジ部21aの中心線を、一方側係止部材21を構成する円筒の中心線からずらした位置に形成するとともに、他方側係止部材22の内ネジ部22aの中心線についても、他方側係止部材22の中心線からずらした位置に形成している。すなわち、一方側係止部材21の内ネジ部21aの位置と他方側係止部材22の内ネジ部22aの位置とは、ともに、偏心している。
なお、本例では、一方側係止部材21の外径と長さ(円筒の高さ)、及び、内ネジ部21aの中心と円筒の中心との距離を、他方側係止部材22の外径と長さ、及び、内ネジ部22aの中心と円筒の中心との距離とを同一とした。
また、後述するように、一方側鉄筋1Aと異形鉄筋1Bとの間に、一方側係止部材21及び他方側係止部材22を挿入可能なように、接続部材23の長さを、一方側係止部材21(または、他方側係止部材22)の長さの3倍よりやや広めに設定した。
【0012】
次に、異形鉄筋の接合方法について、
図3の工程図を参照して説明する。
はじめに、
図3(a)の左側の図に示すように、一方側鉄筋1Aの延長方向から見たときの一方側鉄筋1Aと他方側鉄筋1Bとの距離(ずれ量e)を求める。そして、予め準備しておいた、ずれ量eの異なる複数の係止部材の中から、一方側係止部材21と他方側係止部材22とに使用する係止部材を選択して取出す。
ずれ量eは、例えば、水平片4aが水平面に平行になるよう設置された断面がL字型の台4の角部に一方側鉄筋1Aを置き、台4の水平片4aと他方側鉄筋1Bとの距離pと、台4の垂直片4bと他方側鉄筋1Bとの距離qとを計測し、距離pと距離qと異形鉄筋(1A,1B)の径dとから算出することができる。
あるいは、
図3(a)の右側の図に示すように、1枚の板材4’を、一方側鉄筋1Aに斜めにあてがうとともに、板材4’の先端を他方側鉄筋1Bの先端よりも図示しない構造部材3b側まで延長し、他方側鉄筋1Bの外周と板材4’をとの距離を計測し、これをずれ量eとしてもよい。
ずれ量がeであるときには、一方側係止部材21と他方側係止部材22として、同図の右側の図に示すように、偏心量がe/2である係止部材を選択すればよい。
次に、
図3(b)に示すように、接続部材23の内側(連結用ネジ部23aの内側)に他方側鉄筋1Bをくぐらせた状態で、接続部材23を他方側鉄筋1Bの先端側とは反対側に移動させた後、一方側鉄筋1Aに一方側係止部材21を螺入させ、次に、他方側鉄筋1Bに他方側係止部材22を螺入させる。すなわち、一方側鉄筋1Aのネジ部1aと一方側係止部材21の内ネジ部21aとを螺合させ、他方側鉄筋1Bのネジ部1bと他方側係止部材22の内ネジ部22aとを螺合させる。
一方側及び他方側鉄筋1A,1Bは、それぞれ、構造部材3a,3bに固定されている。したがって、一方側係止部材21と他方側係止部材22とを、それぞれ、係止部材21,22の内ネジ部21a,22aの中心軸を中心に回転させることで、一方側鉄筋1Aに一方側係止部材21を螺入させ、他方側鉄筋1Bに他方側係止部材22を螺入させる。
このとき、一方側及び他方側鉄筋1A,1Bを、それぞれ、一方側及び他方側係止部材21,22の一方側及び他方側鉄筋1A,1B側とは反対側に突き出るようにすれば、一方側及び他方側鉄筋1A,1Bと一方側及び他方側係止部材21,22とをより強固に接続させることができる。
【0013】
次に、
図3(c)に示すように、接続部材23と他方側係止部材22とを螺合させる。
本例では、後述する軸合わせのため、接続部材23を、他方側係止部材22の一方側係止部材21側までは螺入せず、他方側係止部材22の一方側係止部材21側を少しあけておくようにしている。これにより、作業者が、一方側係止部材21と他方側係止部材22の位置関係の調整が容易となる。
図3(d)は、軸合わせの一例を示す図である。
軸合わせは、一方側係止部材21と他方側係止部材22とを、それぞれ、係止部材21,22の内ネジ部21a,22aの中心軸を中心に回転させることで、係止部材21,22の高さ及び左右のずれをなくして、一方側係止部材21の中心軸と他方側係止部材22の中心軸とを一致させることをいう。
例えば、同図の左側の図に示すように、一方側鉄筋1Aの延長方向から見たときの他方側係止部材22の中心が、一方側係止部材21の中心よりも右上にある場合には、他方側係止部材22を、他方側係止部材22の内ネジ部22aの中心軸を中心に、他方側鉄筋1Bから少し引き抜くように回転させるとともに、一方側係止部材21を、一方側係止部材21の内ネジ部21aの中心軸を中心に、一方側鉄筋1Aに螺入ように回転させればよい。これにより、同図の右側の図に示すように、一方側係止部材21の中心軸と他方側係止部材22の中心軸とを一致させることができる。
なお、接続部材23と他方側係止部材22とは、一体に回転するので、一方側係止部材21の中心軸と他方側係止部材22との中心軸とが一致すれば、接続部材23の中心軸と一方側係止部材21の中心軸も当然一致する。
最後に、
図3(e)に示すように、接続部材23を、他方側係止部材22から一方側係止部材21方向に移動させて、接続部材23と一方側係止部材21とを螺合することで、一方側鉄筋1Aと他方側鉄筋1Bとを接続する。
これにより、
図1(a)に示すように、一方側鉄筋1Aと他方側鉄筋1Bとを、容易にかつ精度よく接続することができる。
一方側鉄筋1Aと他方側鉄筋1Bとの接続後には、接続部材23の充填材注入孔23cから、継手金具2の内部の空間2Sにモルタルや樹脂等の充填材を注入することで、一方側鉄筋1Aと他方側鉄筋1B、及び、一方側及び他方側鉄筋1A,1Bと継手金具2との接続を更に強固にすることができる。
ところで、梁や柱を構築する際、一方側鉄筋1A、他方側鉄筋1B、及び、継手金具2は、コンクリート中に埋設されるが、本例では、継手金具2の外周面である接続部剤23の外周面に円環状の突起23bを形成することで、継手金具2へのコンクリートの付着性を向上させるようにしている。したがって、梁や柱の強度を高めることができる。
このように、本発明の継手金具2を用いれば、異形鉄筋1A,1Bのずれの方向が上下方向であっても左右方向であっても、ずれ量eが同じあれば対応可能なので、準備すべき継手金具2の部品数を大幅に低減することができる。
【0014】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【0015】
例えば、前記実施の形態では、異形鉄筋1A,1Bの径を同一としたが、異形鉄筋1A,1Bの径が異なっていてもよい。この場合には、係止部材21,22の内ネジ部21a,22aの径を変更することで対応可能である。
また、前記実施の形態では、係止部材21,22として、偏心量がe/2である係止部材を選択したが、ずれ量eが小さい場合には、
図4(a)に示すように、一方側係止部材21として、内ネジ部21aが一方側係止部材21の中心に形成された係止部材を選択し、他方側係止部材22として、偏心量がeである係止部材を選択してもよい。
また、前記実施の形態では、係止部材21,22の内ネジ部21a,22aを、それぞれ、1個としたが、
図4(b)の係止部材24のように、偏心量が互いに異なる複数個の内ネジ部24a,24a’を形成したものであってもよい。同図では、偏心量がe/2である内ネジ部24aと偏心量がe’/2の内ネジ部24a’の2個の内ネジ部がある例を示したが、偏心量の異なる内ネジ部の個数は3個以上であってもよい。
あるいは、
図4(c)の係止部材25のように、ネジ穴ではなく、トラック状の穴25aであってもよい。これは、異形鉄筋1A,1Bと係止部材とを螺合しなくても、異形鉄筋1A,1Bが穴25aに拘束されていれば、対向する異形鉄筋1A,1B同士を接合できるからである。このとき、トラック状の穴25aの内壁に、異形鉄筋1A,1Bの連結用ネジ部23aの凹凸に合わせた凹凸を設ければ、異形鉄筋1A,1Bを更に強く拘束できる。
また、
図4(d)の係止部材26のように、内ネジ部26aの他に、係止部材26の延長方向に延長する穴26cを設ければ、係止部材26を軽量化できる。
また、前記実施の形態では、接続部材23の外周面の中央に円環状の突起23bを形成したが、円環状の突起23bを複数設けてもよい。あるいは、接続部材23の外周面に凹凸を形成しても、継手金具2へのコンクリートの付着性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0016】
1A,1B 異形鉄筋、1a,1b 異形鉄筋のネジ部、2 異形鉄筋の継手金具、
2S 内部空間、3a,3b 鉄筋コンクリート構造部材、21 一方側係止部材、
22 他方側係止部材、21a,22a 内ネジ部、21b,22b 外ネジ部、
23 接続部材、23a 連結用ネジ部、23b 突起、23c 充填材注入孔、
23d 空気抜き穴。