(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】車輌用部品及び車輌用前照灯
(51)【国際特許分類】
F21S 41/657 20180101AFI20240410BHJP
B60Q 1/068 20060101ALI20240410BHJP
F21W 102/10 20180101ALN20240410BHJP
【FI】
F21S41/657
B60Q1/068 100
F21W102:10
(21)【出願番号】P 2020085100
(22)【出願日】2020-05-14
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【氏名又は名称】中川 裕人
(72)【発明者】
【氏名】原 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】内田 幸司
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-334462(JP,A)
【文献】特表2005-513744(JP,A)
【文献】実開平02-023236(JP,U)
【文献】米国特許第04306276(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K 9/00- 9/90
F21S 2/00-45/70
B60Q 1/00- 1/56
F21W 102/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプハウジングに対して回転されるアジャスティングスクリューが螺合され前記アジャスティングスクリューの回転方向に応じて前記ランプハウジングに対して前後方向へ移動されるナット部材と、
前記ランプハウジングに対して回動可能なランプユニットの連結部に連結され前記ナット部材の前後方向への移動に応じて前記ナット部材に対して変位される球軸受部材とを備え、
前記球軸受部材には前記連結部に形成された連結孔に挿通される挿通部が設けられ、
前記挿通部の外周面には外周側に突出され前記連結孔の開口縁に押し当てられる押当部が形成され
、
前記球軸受部材における前記押当部の前後には周方向に離隔して位置された複数の受け部と前後方向において変形可能な弾性変形部とが設けられ、
前記弾性変形部が弾性変形され前記連結部が前記受け部と前記弾性変形部によって前後から挟持された状態で前記球軸受部材が前記連結部に連結される
車輌用部品。
【請求項2】
前記押当部が周方向に離隔して複数形成された
請求項1に記載の車輌用部品。
【請求項3】
前記弾性変形部が環状に形成された
請求項1又は請求項2に記載の車輌用部品。
【請求項4】
前記連結部に係合凹部が形成され、
前記受け部には前記弾性変形部側に突出され前記係合凹部に挿入される係合突部が設けられた
請求項1、請求項2又は請求項3に記載の車輌用部品。
【請求項5】
少なくとも一方に開口を有するランプハウジングと、
連結孔が形成された連結部を有し前記ランプハウジングに対して回動可能にされたランプユニットと、
前記ランプハウジングに対して回転されるアジャスティングスクリューと、
前記アジャスティングスクリューが螺合され前記アジャスティングスクリューの回転方向に応じて前記ランプハウジングに対して前後方向へ移動されるナット部材と、
前記連結部に連結され前記ナット部材の前後方向への移動に応じて前記ナット部材に対して変位される球軸受部材とを備え、
前記球軸受部材には前記連結孔に挿通される挿通部が設けられ、
前記挿通部の外周面には外周側に突出され前記連結孔の開口縁に押し当てられる押当部が形成され
、
前記球軸受部材における前記押当部の前後には周方向に離隔して位置された複数の受け部と前後方向において変形可能な弾性変形部とが設けられ、
前記弾性変形部が弾性変形され前記連結部が前記受け部と前記弾性変形部によって前後から挟持された状態で前記球軸受部材が前記連結部に連結される
車輌用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光軸調整機構に用いられる車輌用部品及びこれを有する車輌用前照灯についての技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌用前照灯には、例えば、カバーとランプハウジングによって構成された灯具外筐の内部に光源等を有するランプユニットが配置されたものがあり、このような車輌用前照灯には、光軸の向きの初期調整であるエイミング調整を行うエイミング調整機構が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ランプユニットはエイミング調整機構を介してランプハウジングに支持され、エイミング調整機構の動作によってランプユニットがランプハウジングに対して回動(傾動)される。
【0004】
エイミング調整はランプユニットを灯具外筐に対して上下方向へ回動させると共に左右方向へ回動させることにより直交する2方向において行われる。これらの上下方向と左右方向のエイミング調整には前後方向に延びる二つのアジャスティングスクリューが用いられ、一方のアジャスティングスクリューを軸回り方向へ回転することによりランプユニットが上下方向へ回動され、他方のアジャスティングスクリューを軸回り方向へ回転することによりランプユニットが左右方向へ回動される。
【0005】
エイミング調整を行うための車輌用部品には球軸受(球軸受部材)やナット部材等の各種の部品が存在するが、車輌用部品にはランプハウジングに対して回動(傾動)されるランプユニットのリフレクター等に設けられた連結部に各種の手段によって連結されるものがある。
【0006】
このような連結の手段として、例えば、球軸受部材等の車輌用部品が連結部にバヨネット結合によって連結されるものがある(例えば、特許文献2参照)。バヨネット結合は複数の係合突部(バヨネット爪)を連結部に形成された連結孔の溝部にそれぞれ挿通し、車輌用部品を連結部に対して回転させて係合突部を連結部に係合させることにより行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-55600号公報
【文献】実開平2-23236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、車輌用前照灯においては、上記したように、ランプユニットがエイミング調整機構を介してランプハウジングに支持されているため、エイミング調整機構を構成する車輌用部品の連結部に対する連結状態が不安定である場合には、車輌用部品の連結部に対するガタ付き等が生じ易くなり、ランプユニットのランプハウジングに対する安定した支持状態を確保することができなくなる。
【0009】
このようなエイミング調整機構の連結部に対する連結状態が不安定である場合には、車輌用前照灯に不必要な振動が生じ易くなったり、ランプユニットの光源からの出射時に予め設定された配光パターンが形成されなくなる等の不具合を生じるおそれがある。
【0010】
そこで、本発明車輌用部品及び車輌用前照灯は、ランプユニットの連結部に対する球軸受部材の安定した連結状態を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1に、本発明に係る車輌用部品は、ランプハウジングに対して回転されるアジャスティングスクリューが螺合され前記アジャスティングスクリューの回転方向に応じて前記ランプハウジングに対して前後方向へ移動されるナット部材と、前記ランプハウジングに対して回動可能なランプユニットの連結部に連結され前記ナット部材の前後方向への移動に応じて前記ナット部材に対して変位される球軸受部材とを備え、前記球軸受部材には前記連結部に形成された連結孔に挿通される挿通部が設けられ、前記挿通部の外周面には外周側に突出され前記連結孔の開口縁に押し当てられる押当部が形成され、前記球軸受部材における前記押当部の前後には周方向に離隔して位置された複数の受け部と前後方向において変形可能な弾性変形部とが設けられ、前記弾性変形部が弾性変形され前記連結部が前記受け部と前記弾性変形部によって前後から挟持された状態で前記球軸受部材が前記連結部に連結されるものである。
【0012】
これにより、挿通部に形成された押当部が連結部に押し当てられた状態で球軸受部材が連結部に連結される。また、弾性変形された弾性変形部が連結部に押し付けられて受け部と弾性変形部が連結部を挟持した状態で球軸受部材が連結部に連結される。
【0013】
第2に、上記した本発明に係る車輌用部品においては、前記押当部が周方向に離隔して複数形成されることが望ましい。
【0014】
これにより、複数の押当部が連結孔の開口縁の周方向に離隔した位置に押し当てられる。
【0017】
上記した本発明に係る車輌用部品においては、前記弾性変形部が環状に形成されることが望ましい。
【0018】
これにより、弾性変形された弾性変形部が連結孔の周囲の全体に押し付けられるため、弾性変形部の連結部に対する接触面積が大きくなる。
【0019】
上記した本発明に係る車輌用部品においては、前記連結部に係合凹部が形成され、前記受け部には前記弾性変形部側に突出され前記係合凹部に挿入される係合突部が設けられることが望ましい。
【0020】
これにより、受け部と弾性変形部が連結部を挟持して球軸受部材が連結部に連結された状態において係合凹部に係合突部が挿入されるため、球軸受部材が連結部に連結された状態において球軸受部材の連結部に対する回転が規制される。
【0021】
本発明に係る車輌用前照灯は、少なくとも一方に開口を有するランプハウジングと、連結孔が形成された連結部を有し前記ランプハウジングに対して回動可能にされたランプユニットと、前記ランプハウジングに対して回転されるアジャスティングスクリューと、前記アジャスティングスクリューが螺合され前記アジャスティングスクリューの回転方向に応じて前記ランプハウジングに対して前後方向へ移動されるナット部材と、前記連結部に連結され前記ナット部材の前後方向への移動に応じて前記ナット部材に対して変位される球軸受部材とを備え、前記球軸受部材には前記連結孔に挿通される挿通部が設けられ、前記挿通部の外周面には外周側に突出され前記連結孔の開口縁に押し当てられる押当部が形成され、前記球軸受部材における前記押当部の前後には周方向に離隔して位置された複数の受け部と前後方向において変形可能な弾性変形部とが設けられ、前記弾性変形部が弾性変形され前記連結部が前記受け部と前記弾性変形部によって前後から挟持された状態で前記球軸受部材が前記連結部に連結されるものである。
【0022】
これにより、挿通部に形成された押当部が連結部に押し当てられた状態で球軸受部材が連結部に連結される。また、弾性変形された弾性変形部が連結部に押し付けられて受け部と弾性変形部が連結部を挟持した状態で球軸受部材が連結部に連結される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、挿通部に形成された押当部が連結部に押し当てられた状態で球軸受部材が連結部に連結されるため、球軸受部材の連結部に対するガタ付きが防止され、ランプユニットの連結部に対する球軸受部材の安定した連結状態を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図2乃至
図11と共に本発明車輌用部品及び車輌用前照灯の実施の形態を示すものであり、本図は、車輌用前照灯の断面図である。
【
図2】結合構造体とアジャスティングスクリューの一部とを連結部とともに示す斜視図である。
【
図3】球軸受部材とナット部材を分離した状態で連結部とともに示す斜視図である。
【
図4】球軸受部材とナット部材を
図3とは異なる方向から見た状態で示す斜視図である。
【
図5】結合構造体が連結部に連結された状態を示す断面図である。
【
図6】第1の部分と第2の部分を開いた状態で示す球軸受部材の斜視図である。
【
図8】球軸受部材が連結部の連結孔に後方から挿入された状態を示す正面図である。
【
図9】球軸受部材が連結部の連結孔に後方から挿入された状態を球軸受部材の突状部が設けられた位置で切断した断面図である。
【
図10】連結部の連結孔に挿入された球軸受部材が回転されて連結部に連結された状態を示す正面図である。
【
図11】連結部の連結孔に挿入された球軸受部材が回転されて連結部に連結された状態を球軸受部材の突状部が設けられた位置で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明車輌用部品及び車輌用前照灯を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。
【0026】
車輌用前照灯1は、それぞれ車体の前端部における左右両端部に取り付けられて配置されている。
【0027】
車輌用前照灯1は前方に開口された凹部を有するランプハウジング2とランプハウジング2の開口を閉塞するカバー3とを備えている(
図1参照)。ランプハウジング2とカバー3によって灯具外筐4が構成され、灯具外筐4の内部空間が灯室5として形成されている。
【0028】
ランプハウジング2には、例えば、上面部2aから後面部2bに亘る部分に支持突部6が設けられている。支持突部6には前方に開口され前後に延びる案内スリット6aが形成されている。ランプハウジング2には、例えば、一方の側面部にも図示はしないが支持突部が設けられている。ランプハウジング2には後面部2bに前後に貫通された軸挿通孔7、7が形成されている(
図1に一方の軸挿通孔7のみを示す。)。ランプハウジング2には後面部2bに軸取付部8が設けられている。軸取付部8は支持突部6の下方に位置されている。他方の軸挿通孔7は軸取付部8の側方に位置されている。
【0029】
軸取付部8にはピボット軸9が取り付けられている。ピボット軸9は前後に延びる被取付軸部9aと被取付軸部9aの前端部に連続された球状部9bとを有し、被取付軸部9aが軸取付部8に取り付けられ、球状部9bが灯室5において軸取付部8の前側に位置されている。
【0030】
灯室5にはランプユニット10が配置されている。ランプユニット10は、例えば、リフレクター11と図示しない光源を有する構成にされている。尚、ランプユニット10はリフレクター11と光源を有する構成に限られることはなく、例えば、投影レンズやシェード等の他の部材を有する構成にされていてもよい。ランプユニット10において光源から出射された光はリフレクター11で反射され、平行光にされてカバー3を透過されて前方へ向けて照射される。
【0031】
リフレクター11にはそれぞれ後方に突出された取付部12と連結部13、13が設けられている(
図1に一方の連結部13のみを示す。)。一方の連結部13は取付部12の上方に位置され、他方の連結部13は取付部12の側方に位置されている。
【0032】
取付部12にはピボットホルダー14が取り付けられ、ピボットホルダー14には保持部14aが設けられている。ピボットホルダー14の保持部14aにはアジャスティングスクリュー9の球状部9bが保持され、ピボットホルダー14が球状部9bを支点として任意の方向へ回転可能にされている。ピボットホルダー14とピボット軸9はエイミング調整機構の一部を構成する部品であり、リフレクター11がエイミング調整機構を構成するピボットホルダー14とピボット軸9を介してランプハウジング2に支持され、球状部9bを支点としてピボットホルダー14と一体になってランプハウジング2に対して回動(傾動)可能にされている。
【0033】
連結部13は後端部が略前後方向を向く連結面部15として設けられ、連結面部15には前後に貫通された連結孔16が形成されている(
図2参照)。連結孔16は円形状に形成された貫通部16aと貫通部16aの径方向における外側に位置された溝部16b、16b、16bとから成り、溝部16b、16b、16bが周方向に離隔して位置されている。
【0034】
連結面部15には溝部16b、16b、16bの前側開口縁のうち周方向における一端部にそれぞれ案内傾斜面15a、15a、15aが形成されている。案内傾斜面15aは周方向へ行くに従って前後に変位するように傾斜されている。連結面部15の前面側には係合凹部15bが形成され、係合凹部15bは前方及び貫通部16a側に開口されている。
【0035】
連結面部15には貫通部16aの周囲に規制突部17、17、17が周方向に離隔して設けられている。規制突部17は前方に突出され、周方向において溝部16bに隣接する位置に設けられている。
【0036】
連結部13、13の連結面部15、15にはそれぞれ結合構造体18、18が連結される(
図1参照)。結合構造体18は何れも樹脂材料によって形成された球軸受部材19とナット部材20が結合されて構成されている(
図2乃至
図4参照)。
【0037】
球軸受部材19は第1の部分21と第2の部分22がヒンジ部23、23を支点にして開閉可能にされ、ヒンジ部23、23を支点にして第1の部分21と第2の部分22が閉じられることにより両者が結合されて構成される(
図3、
図4及び
図6参照)。第1の部分21と第2の部分22は球軸受部材19が構成された状態において上下に位置され、ヒンジ部23、23が前端部において左右に離隔した状態で位置される(
図3乃至
図5参照)。
【0038】
第1の部分21と第2の部分22にはそれぞれ結合用の各部が設けられている(
図6参照)。第1の部分21には係止突部21a、21aと位置決めピン21b、21bと係合爪部21c、21cがそれぞれ左右に離隔して位置され、第2の部分22には係止爪部22a、22aと位置決め穴22b、22bと係合縁部22c、22cがそれぞれ左右に離隔して位置されている。
【0039】
第1の部分21と第2の部分22が閉じられた状態において、係止突部21a、21aがそれぞれ係止爪部22a、22aに係止され、位置決めピン21b、21bがそれぞれ位置決め穴22b、22bに挿入されて位置決めされ、係合爪部21c、21cがそれぞれ係合縁部22c、22cに係合されて球軸受部材19が構成される(
図3乃至
図5参照)。
【0040】
球軸受部材19は略円筒状に形成されたベース筒部24とベース筒部24の前端寄りの位置から径方向において外側に突出された受け部25、25、25と受け部25、25、25の後側においてベース筒部24から径方向において外側に張り出された弾性変形部26とを有している。
【0041】
ベース筒部24は略後半部における内側の空間が挿入空間24aとして形成され、挿入空間24aを形成する壁面が球面状に形成されている。ベース筒部24の内部における下端部には上方に開口された規制穴24bが形成され、規制穴24bが挿入空間24aに連通されている。
【0042】
ベース筒部24における受け部25、25、25と弾性変形部26の間の部分は挿通部27として設けられている。挿通部27には径方向において他の部分より外方に僅かに突出された突状部28、28、28が周方向に離隔して設けられている(
図4、
図5及び
図7参照)。突状部28の外面は、周方向における両側の部分がそれぞれ傾斜部28a、28aとして形成され、傾斜部28a、28aの間の部分が押当部28bとして形成されている。傾斜部28a、28aは周方向において互いに近づくに従って挿通部27の径方向における外側に変位するように傾斜され、押当部28bはベース筒部24の中心軸を基準とした緩やかな円弧面に形成されている。従って、押当部28bは挿通部27において最も外周側に位置されている。
【0043】
受け部25は後面のうち周方向における中央部が真後ろを向く平面状の受け面25aとして形成されている。受け部25、25、25のうち一つの受け部25には後方に突出された係合突部25bが設けられている。
【0044】
弾性変形部26は皿バネとして設けられ、ベース筒部24に連続された張出部26aと張出部26aの外周に連続された押さえ部26bとから成る。弾性変形部26は、張出部26aが外周側へ行くに従って前方に変位するように傾斜され、張出部26aが前後方向において弾性変形可能にされている。
【0045】
ナット部材20は前後方向が軸方向にされた筒状の挿通支持部29と挿通支持部29の後半部から上方に突出された中間部30と中間部30の上端に連続された被支持部31とから成る(
図2乃至
図5参照)。
【0046】
挿通支持部29の内部空間はスクリュー挿通孔32として形成されている。挿通支持部29は前半部が回動支点部33として設けられ後半部が挿入部34として設けられている。
【0047】
回動支点部33は前面を除き外面が球面状に形成されている。回動支点部33には下方に突出された被規制軸33aが設けられ、被規制軸33aは外径が球軸受部材19のベース筒部24に形成された規制穴24bの径より小さくされている。挿入部34は後方へ行くに従って径が大きくなる形状に形成されている。
【0048】
スクリュー挿通孔32には回動支点部33の内部に最も径が小さくされた部分が形成され、この最も径が小さくされた部分を形成する壁面に螺溝32aが形成されている。
【0049】
被支持部31は上下方向を向く平板状のベース面部31aとベース面部31aの左右方向における中央部から上方に突出された仕切部31bと仕切部31bの左右に位置された板バネ部31c、31cとベース面部31aの左右両端寄りの位置からそれぞれ下方に突出された被案内突部31d、31dとを有している。板バネ部31c、31cは左右方向における外側の端部がそれぞれベース面部31aの左右両端部に連続され、上方に凸の円弧面状に形成されている。板バネ部31c、31cは上下方向において弾性変形可能にされている。被案内突部31dは前後に延びる形状に形成されている。
【0050】
ナット部材20は回動支点部33が挿入空間24aに挿入されて球軸受部材19に連結される(
図2及び
図5参照)。回動支点部33の挿入空間24aへの挿入は、第1の部分21と第2の部分22が開かれた状態において回動支点部33が第2の部分22に配置され、第1の部分21と第2の部分22が閉じられることにより行われる。
【0051】
ナット部材20が球軸受部材19に連結された状態においては、ベース筒部24の後端側の部分が回動支点部33に対して摺動可能にされ、球軸受部材19が回動支点部33を支点として任意の方向へ回転可能にされる。ナット部材20が球軸受部材19に連結された状態において、ナット部材20の被規制軸33aは球軸受部材19の規制穴24bに挿入される。従って、球軸受部材19が回動支点部33を支点として回転されたときに、被規制軸33aが規制穴24bを形成する壁面に接することにより球軸受部材19のナット部材20に対する過度の回転が規制される。
【0052】
結合構造体18は球軸受部材19がバヨネット結合によりリフレクター11の連結部13に設けられた連結面部15に、以下のようにして連結される(
図5、
図8、
図9、
図10及び
図11参照)。
【0053】
先ず、球軸受部材19における弾性変形部26より前側の部分が連結孔16に後方から挿入される(
図8及び
図9参照)。このときベース筒部24は貫通部16aに挿入され受け部25、25、25がそれぞれ溝部16b、16b、16bに挿入される。球軸受部材19における弾性変形部26より前側の部分が連結孔16に挿入された状態においては、受け部25、25、25の略全体が連結面部15の前側に位置され、弾性変形部26が連結面部15の後面に接した状態にされる。
【0054】
次に、球軸受部材19が連結面部15に対して軸回り方向における一方向へ回転される(
図10及び
図11参照)。球軸受部材19が連結面部15に対して回転されるときには、球軸受部材19は受け部25、25、25の傾斜部28a、28a、28aがそれぞれ案内傾斜面15a、15a、15aに摺動されて僅かに前方に変位され、受け部25、25、25が連結面部15の前面に乗り上げられる。
【0055】
このように球軸受部材19の連結面部15に対する回転時には、球軸受部材19は傾斜部28aが案内傾斜面15aに摺動されて僅かに前方に変位されて受け部25が連結面部15の前面に乗り上げられ、球軸受部材19が案内傾斜面15aに案内されて連結面部15に対して回転される。従って、球軸受部材19の連結面部15に対する連結作業を容易かつ正確に行うことができる。
【0056】
球軸受部材19は受け部25、25、25が規制突部17、17、17に接する位置まで回転され、受け部25、25、25がそれぞれ規制突部17、17、17に接することにより、球軸受部材19の連結面部15に対する回転が規制される(
図10参照)。受け部25が規制突部17に接した状態においては、受け部25の係合突部25bが連結面部15の係合凹部15bに挿入されて係合される(
図5参照)。
【0057】
このように連結部13には係合凹部15bが形成され、受け部25には弾性変形部26側に突出され係合凹部15bに挿入される係合突部25bが設けられている。
【0058】
従って、受け部25と弾性変形部26が連結部13を挟持して球軸受部材19が連結部13に連結された状態において係合凹部15bに係合突部25bが挿入されるため、球軸受部材19が連結部13に連結された状態において球軸受部材19の連結部13に対する回転が規制され、振動等による球軸受部材19の連結部13からの脱落を防止することができる。
【0059】
また、球軸受部材19が連結面部15に対して軸回り方向における一方向へ回転されたときには、突状部28、28、28の傾斜部28a、28a、28aが連結孔16を形成する壁面(連結孔16の開口縁)に摺動され押当部28b、28b、28bがこの壁面に押し当てられる(
図11参照)。従って、押当部28b、28b、28bが連結孔16側から連結面部15に密着される。
【0060】
上記のように球軸受部材19が連結面部15に対して回転されるときには、球軸受部材19が僅かに前方に変位されるため、弾性変形部26が弾性変形されて押さえ部26bが連結面部15の後面に押し当てられ受け部25、25、25の受け面25a、25a、25aが連結面部15の前面に密着される。
【0061】
このように球軸受部材19における押当部28bの前後には周方向に離隔して位置された複数の受け部25と前後方向において変形可能な弾性変形部26とが設けられ、弾性変形部26が弾性変形され連結部13が受け部25と弾性変形部26によって前後から挟持された状態で球軸受部材19が連結部13に連結される。
【0062】
従って、弾性変形された弾性変形部26が連結部13に押し付けられて受け部25と弾性変形部26が連結部13を挟持した状態で球軸受部材19が連結部13に連結されるため、球軸受部材19の連結部13に対するガタ付きが防止され球軸受部材19を連結部13に安定した状態で連結することができる。
【0063】
また、弾性変形部26が環状に形成されているため、弾性変形された弾性変形部26が連結孔16の周囲の全体に押し付けられるため、弾性変形部26の連結部13に対する接触面積が大きく球軸受部材19を連結部13に一層安定した状態で連結することができる。
【0064】
球軸受部材19が連結部13に連結された結合構造体18は、ナット部材20がランプハウジング2の支持突部6に前後方向へ移動可能な状態で支持される(
図1参照)。
【0065】
ナット部材20は被支持部31が、例えば、ランプハウジング2の上面部2aと支持突部6の間に前方から挿入され、板バネ部31c、31cが上面部2aの下面に接した状態にされ、被案内突部31d、31dが支持突部6に形成された案内スリット6aの左右の開口縁に接した状態又は近接した状態にされる。従って、板バネ部31c、31cによってランプハウジング2に対するガタ付きが防止され被案内突部31d、31dが支持突部6に案内されることにより、ナット部材20が支持突部6に対して前後方向へ円滑に移動可能にされる。
【0066】
結合構造体18にはアジャスティングスクリュー35が挿通されて組み付けられる(
図1、
図2及び
図6参照)。アジャスティングスクリュー35は前後に延びる軸部36と軸部36の後端部から外方に張り出されたフランジ部37とを有している。軸部36は前半部が螺合部36aとして設けられている。
【0067】
アジャスティングスクリュー35は軸部36がランプハウジング2の後面部2bに形成された軸挿通孔7に後方から挿入され、フランジ部37が後面部2bに突き当てられた状態にされる(
図1参照)。アジャスティングスクリュー35はランプハウジング2に対して軸方向(前後方向)へ移動不能かつ軸回り方向へ回転可能な状態にされる。アジャスティングスクリュー35は軸部36がナット部材20の挿通支持部29と球軸受部材19のベース筒部24に挿通され、螺合部36aが挿通支持部29に形成された螺溝32aに螺合される。
【0068】
結合構造体18、18とアジャスティングスクリュー35、35はピボットホルダー14とピボット軸9とともにエイミング調整機構の一部を構成する部品であり、リフレクター11がエイミング調整機構を構成する結合構造体18、18とアジャスティングスクリュー35、35を介してランプハウジング2に支持される。
【0069】
一方のアジャスティングスクリュー35が回転されると、アジャスティングスクリュー35の回転に伴って螺溝32aが送られて結合構造体18が支持突部6に対して前後方向へ移動され、結合構造体18の前後方向への移動に伴ってリフレクター11がピボット軸9の球状部9bを支点として上下方向へ回動(傾動)されて上下方向におけるエイミング調整が行われる。このとき球軸受部材19が回動支点部33を支点としてナット部材20に対して回転され、ナット部材20の移動に伴って球軸受部材19に付与される負荷が吸収され、リフレクター11が円滑に回動される。
【0070】
また、他方のアジャスティングスクリュー35が回転されると、アジャスティングスクリュー35の回転に伴って螺溝32aが送られて結合構造体18が支持突部6に対して前後方向へ移動され、結合構造体18の前後方向への移動に伴ってリフレクター11がピボット軸9の球状部9bを支点として左右方向へ回動(傾動)されて左右方向におけるエイミング調整が行われる。このとき球軸受部材19が回動支点部33を支点としてナット部材20に対して回転(回動)され、ナット部材20の移動に伴って球軸受部材19に付与される負荷が吸収され、リフレクター11が円滑に回動される。
【0071】
以上に記載した通り、車輌用前照灯1にあっては、球軸受部材19には連結部13に形成された連結孔16に挿通される挿通部27が設けられ、挿通部27の外周面には外周側に突出され連結孔16の開口縁に押し当てられる押当部28bが形成されている。
【0072】
従って、挿通部27に形成された押当部28bが連結部13に押し当てられた状態で球軸受部材19が連結部13に連結されるため、球軸受部材19の連結部13に対するガタ付きが防止され、ランプユニット10の連結部13に対する球軸受部材19の安定した連結状態を確保することができる。
【0073】
また、押当部28bが周方向に離隔して複数形成されているため、複数の押当部28bが連結孔16の開口縁の周方向に離隔した位置に押し当てられるため、球軸受部材19が安定した状態で連結部13に連結され球軸受部材19の連結部13に対するガタ付きを確実に防止することができる。
【0074】
尚、球軸受部材19に設けられる押当部28bの数は任意であるが、球軸受部材19の連結部13に対する安定した連結状態を確保するために周方向に離隔して複数が設けられることが望ましい。
【符号の説明】
【0075】
1…車輌用前照灯、2…ランプハウジング、10…ランプユニット、14…連結部、15b…係合凹部、16…連結孔、19…球軸受部材、20…ナット部材、25…受け部、25b…係合突部、26…弾性変形部、27…挿通部、28b…押当部、35…アジャスティングスクリュー