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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】シール材付容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20240410BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B27/32 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020087438
(22)【出願日】2020-05-19
(65)【公開番号】P2021181326
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100193404
【弁理士】
【氏名又は名称】倉田 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】大澤 梓
(72)【発明者】
【氏名】永野 陽子
(72)【発明者】
【氏名】山本 光
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 将
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-190654(JP,A)
【文献】特開2010-064779(JP,A)
【文献】国際公開第2020/059717(WO,A1)
【文献】特開2018-123174(JP,A)
【文献】特開2014-223752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部を有する容器、及び前記容器の口部に融着されているシール材を有し、
前記シール材が、前記容器と融着されている面にシーラント層を有し、
前記容器が、最外層、中間樹脂層、及び最内層を有しており、
前記最外層及び前記最内層が、ポリオレフィン系樹脂及びシリル化ポリオレフィンを含有しており
前記容器の前記口部が、前記シール材に向かって縮径しておりかつ
前記最外層及び前記最内層のシリル化ポリオレフィンの含有率が、それぞれ前記最外層及び前記最内層の質量全体を基準として、1.0~20.0質量%である、
シール材付容器。
【請求項2】
前記シール材のシーラント層が、イージーピール層で構成されている、請求項1に記載のシール材付容器。
【請求項3】
前記最外層と前記中間樹脂層との間にバリア性樹脂層を更に有する、請求項1又は2に記載のシール材付容器。
【請求項4】
前記容器に収納されている内容物を更に有する、請求項1~のいずれか一項に記載のシール材付容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール材付容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ケチャップやマヨネーズなどの粘稠な内容物が充填される樹脂製多層容器(以下、単に「多層容器」又は「容器」ということがある。)は、主にダイレクトブロー方式により、筒状のパリソンが押し出され、続いて、冷却金型内で容器の形状にブロー成形されることによって製造されることが多い。その樹脂材の構成としては、表層(最内層及び/又は最外層)として、ポリオレフィン系樹脂、例えばポリプロピレン系樹脂などを使用し、中間層に、エチレンビニルアルコール共重合体などのバリア層を備えた多層構造のものが一般的である。
【0003】
樹脂製多層容器には、透明性、耐突刺し性などとともに、容器表面の滑り性が要求される。すなわち、樹脂製多層容器においては、容器成形工程、容器の移送工程、ユーザーによる食品等の内容物充填工程、内容物充填後の移送工程、更に容器包装工程など、ラインや温度、湿度等の環境条件を異にする各工程のそれぞれにおいて、安定した連続生産を確保するために、良好な滑り性を発揮することが要求される。
【0004】
例えば、容器成形工程ラインや、内容物充填工程における容器整列ラインにおいて、容器同士の接触が生じても、当該工程や次工程での作業や生産速度に影響しないように、滑り性が要求される。また、容器に内容物が充填された後の移送ラインでは、スムーズな移送を確保するために、移送コンベヤーと容器との間の滑り性が要求される。さらに、容器包装ラインにおいては、通常、外装フィルムによる容器の包装を、高速度で行うので、容器表面とラップフィルムとの間の滑り性が要求される。これらの各工程、ラインでは、温度や湿度等の環境条件が異なるので、様々な環境条件下において、樹脂製多層容器の表面の適正な滑り性が要求される。また、容器に充填されている内容物の液切れ性を改善するために、樹脂製多層容器の内表面の滑り性が要求される。
【0005】
樹脂製多層容器の滑り性を改善するために、従来、主として最外層又は最内層の原料樹脂に、滑剤を添加することが行われている。滑剤は、通常、原料樹脂に、マスターバッチ方式で添加されたり、練り込まれたりする。
【0006】
滑剤としては、例えば、脂肪酸アミドが汎用され、具体的には、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド(ベヘニン酸アミド)などが使用される。このうち、融点の低い滑剤は、例えばオレイン酸アミドであり、これを添加することにより、容器の温度が低いときに良好な滑り性を発揮する。融点の比較的高い滑剤は、例えばベヘニン酸アミドであり、これを添加することにより、食品などの内容物が高温充填されたときなどのように、容器が高温になるときに良好な滑り性を発揮できるようになる。これらの滑剤は、2種以上を混合して使用することも行われてきた。
【0007】
更に、樹脂製多層容器においては、該多層容器を包装や梱包する際に、袋詰めして移送する際に、又は、容器を保管している際に、容器同士又は容器と諸部材が接触したり、場合によっては、衝撃を受けたりすることがある。これらの接触や衝撃により、容器の底部や胴部が破損し、容器の密封性が失われてしまうことがある。特に、樹脂製多層容器の耐突刺し性が不十分であると、冬季における容器の移送や保管時に容器が破損する確率が高く、製品の流通に対する信頼性が損なわれるので、改善が求められていた。
【0008】
加えて、樹脂製多層容器においては、表面の透明性が劣ると、充填された内容物の状態を直感的に把握できないことがあるので、改善が求められていた。
【0009】
かかる点に鑑み、特許文献1では、(A)低密度ポリエチレン、(B)高密度ポリエチレン、(C)メタロセン触媒を用いて得られたエチレン系ポリオレフィン、及び(D)滑剤としての不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを含有する樹脂組成物からなる層を表層として備える樹脂製多層容器であって、樹脂組成物が、所与の関係を満足することを特徴とする前記の樹脂製多層容器が開示されている。
【0010】
なお、特許文献2では、シリル化ポリオレフィンの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2012-229037号公報
【文献】特開2010-37555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に記載の樹脂製多層容器では、滑剤としての不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドの存在により、良好な最外層の滑り性及び最内層の内容物液切れ性得られる。しかしながら、この滑剤が経時によりブリードアウトすることがある。そのため、最内層からは、滑剤の内容物への溶解が生じ、経時によって内容物の液切れ性が大幅に低下し、内容物全量の排出が困難となることがある。また、最外層に添加された滑剤のブリードアウト量が生産、保管環境によって変化し、夏場と冬場でボトル表面の滑り性に差異が生じることがある。
【0013】
また、特許文献1に記載の樹脂製多層容器をシール材に接着させ、シール材を剥離しようとすると、大きな力が必要となり、内容物の飛散が生じることがあった。
【0014】
そこで、安定した最外層の滑り性及び最内層の内容物液切れ性を有し、かつ弱い力で容器口部を密封するシール材を開封できる、シール材付容器を提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、鋭意検討したところ、以下の手段により上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記のとおりである:
〈態様1〉口部を有する容器、及び前記容器の口部に融着されているシール材を有し、
前記シール材が、前記容器と融着されている面にシーラント層を有し、
前記容器が、最外層、中間樹脂層、及び最内層を有しており、
前記最外層及び前記最内層が、ポリオレフィン系樹脂及びシリル化ポリオレフィンを含有しており、かつ
前記容器の前記口部が、前記シール材に向かって縮径している、
シール材付容器。
〈態様2〉前記最外層及び前記最内層のシリル化ポリオレフィンの含有率が、それぞれ前記最外層及び前記最内層の質量全体を基準として、1.0~20.0質量%である、態様1に記載のシール材付容器。
〈態様3〉前記シール材のシーラント層が、イージーピール層で構成されている、態様1又は2に記載のシール材付容器。
〈態様4〉前記最外層と前記中間樹脂層との間にバリア性樹脂層を更に有する、態様1~3のいずれか一項に記載のシール材付容器。
〈態様5〉前記容器に収納されている内容物を更に有する、態様1~4のいずれか一項に記載のシール材付容器。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、安定した最外層の滑り性及び最内層の内容物液切れ性を有し、かつ弱い力で容器口部を密封するシール材を開封できる、シール材付容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明のシール材付容器の側面断面図を示している。
図2図2は、シール材を剥離させる前後の本発明のシール材付容器の側面断面図を示している。
図3図3は、シール材を剥離させる前後の従来のシール材付容器の側面断面図を示している。
図4図4は、シール材を剥離させる前後の実施例1のシール材付容器の断面写真を示している。
図5図5は、シール材を剥離させる前後の比較例1のシール材付容器の断面写真を示している。
図6図6は、シール材を剥離させる前後の比較例3のシール材付容器の断面写真を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
《シール材付容器》
図1に示すように、本発明のシール材付容器100は、
口部10aを有する容器10、及び容器10の口部10aに融着されているシール材20を有し、
シール材が、容器10と融着されている面にシーラント層22を有し、
容器10が、最外層12、中間樹脂層16、及び最内層18を有しており、
最外層12及び最内層18が、ポリオレフィン系樹脂及びシリル化ポリオレフィンを含有しており、かつ
容器10の口部10aが、シール材20に向かって縮径している。
【0019】
本発明者らは、上記の構成によれば、シール材の開封を容易に行うことができ、その結果、内容物の飛散を抑制することができることを見出した。
【0020】
より具体的には、図3(a)に示すように、最外層12に滑剤を含有している容器10とシール材20とを融着させて従来のシール材付容器100’を得ると、容器10の最外層12とシール材20のシーラント層との間に樹脂溜まり12aが形成される。このシール材付容器100’のシール材20を剥離しようとしたときに、この樹脂溜まり12aの存在により、容器10とシール材20とが強固に融着されているため、大きな力が必要となり、その結果、内容物の飛散が生じることがあった。また、シール材を剥離しようとしても、容器10の最外層は滑剤が入っているものの、脆性は大きくないので、樹脂溜まりが破断することなく、樹脂溜まりのシール外端面からシール材のシーラント層の凝集破壊により剥離が進行することとなる。その結果、図3(b)に示すように、樹脂溜まり12a、及びシール材20のシーラント層22の一部22aが容器10側に残存することがあった。
【0021】
これに対し、上記の本発明の構成を有する容器10とシール材20とを融着させて得た、図2(a)に示すシール材付容器100ではシール材20を剥離する際には、上記の最外層の構成によって、樹脂溜まり12aと最外層12との界面の脆性が大きくなっている。また、シール材20を引っ張る方向と口部の縮径している方向とが近いこととにより、この樹脂溜まり12aと最外層12との界面にシール材20を引っ張る力が集中しやすくなる。これらの相互作用によれば、この樹脂溜まり12aが破断し、この破断部をきっかけとして剥離が進行することとなる。その結果、従来のシール材付容器の場合よりも弱い力で破断させることができる。
【0022】
本発明のシール材付容器は、容器に収納されている内容物を更に有していてよい。内容物は、ケチャップ、マヨネーズ、マスタード、中濃ソース等の粘性調味料、歯磨き粉等の粘性洗剤等の内容物であってよい。
【0023】
以下では、本発明の各構成要素について説明する。
【0024】
〈容器〉
容器は、口部を有する容器である。シール材が口部に融着されている状態において、容器の口部は、シール材に向かって縮径している。この容器は、樹脂製ブローボトル、すなわち樹脂製のブロー成型により製造された容器であってよい。
【0025】
この容器は、容器の各層を構成する樹脂を、多層押出機を用い、溶融した有底パリソンとして押し出し、このパリソンを、金型内に入れてエアーを吹き込むことによって成形し、次いで、得られた容器の端部を、シール材を接着させたときに口部がシール材に向かって縮径する形状となるようにして切断することにより、作製することができる。
【0026】
(最外層)
最外層は、ポリオレフィン系樹脂及びシリル化ポリオレフィンを含有している。
【0027】
最外層の厚さは、5μm以上、10μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、50μm以上、60μm以上、70μm以上、80μm以上、90μm以上、100μm以上、又は110μm以上であることが、強度及び成形性を確保する観点から好ましく、また200μm以下、170μm以下、150μm以下、又は140μm以下であることが、容器としての取り扱い性を向上させる観点から好ましい。
【0028】
また、最外層の厚さは、最内層の厚さよりも厚いことが、成形安定性の観点から好ましい。
【0029】
(最外層:ポリオレフィン系樹脂)
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。
【0030】
なお、本明細書において、ポリエチレン系樹脂とは、ポリマーの主鎖にエチレン基の繰返し単位を、50mol%超、60mol%以上、70mol%以上、又は80mol%以上含む樹脂であり、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、カルボン酸変性ポリエチレン、カルボン酸変性エチレンビニルアセテート共重合体、アイオノマー、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物からなる群より選択される。
【0031】
本明細書において、ポリプロピレン系樹脂とは、ポリマーの主鎖にプロピレン基の繰返し単位を、50mol%超、60mol%以上、70mol%以上、又は80mol%以上含む樹脂であり、例えば、ポリプロピレン(PP)ホモポリマー、ランダムポリプロピレン(ランダムPP)、ブロックポリプロピレン(ブロックPP)、塩素化ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0032】
(最外層:シリル化ポリオレフィン)
シリル化ポリオレフィンとしては、上記のポリオレフィン系樹脂の一部においてシリコーンが共重合されているポリオレフィン系樹脂である。
【0033】
かかるシリル化ポリオレフィンとしては、例えば特許文献2に記載の方法、すなわち特定のヒドロシランと、ハロゲン化遷移金属とを混合攪拌し、得られた懸濁溶液を濾過して遷移金属触媒組成物を得る工程、及び遷移金属触媒組成物の存在下、ビニル基1つ以上含む末端二重結合含有ポリオレフィンと上記のヒドロシランとを反応させる工程を順次実施する方法により得られるシリル化ポリオレフィンを用いることができる。
【0034】
シリル化ポリオレフィンの含有率は、最外層の質量全体を基準として、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、0.7質量%以上、1.0質量%以上、1.5質量%以上、2.0質量%以上、2.5質量%以上、又は3.0質量%以上であってよく、また20.0質量%以下、17.0質量%以下、15.0質量%以下、12.0質量%以下、10.0質量%以下、9.0質量%以下、8.0質量%以下、7.0質量%以下、6.0質量%以下、又は5.0質量%以下であってよい。
【0035】
(中間樹脂層)
中間樹脂層としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系ポリマー、ポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性樹脂を単独で、又は2種類以上組み合わせて複層で使用することができる。
【0036】
ビニル系ポリマーとしては、例えばポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル(PAN)等が挙げられる。
【0037】
ポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0038】
ポリアミドとしては、例えばナイロン(登録商標)6、ナイロンMXD6等のナイロン等が挙げられる。
【0039】
特に、上記の樹脂を混合させて用いる場合には、中間樹脂層は、容器の成形の際に生じた樹脂端材を再利用して得た樹脂層(いわゆる回収層)であってもよい。
【0040】
中間樹脂層の厚さは、7μm以上、10μm以上、15μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、50μm以上、60μm以上、又は65μm以上であることが、強度及びバリア性を確保する観点から好ましく、また150μm以下、120μm以下、100μm以下、80μm以下、75μm以下、又は70μm以下であることが、容器としての取り扱い性を向上させる観点から好ましい。
【0041】
(最内層)
最内層は、ポリオレフィン系樹脂及びシリル化ポリオレフィンを含有している。ポリオレフィン系樹脂及びシリル化ポリオレフィンの種類及び含有率としては、最外層に関する記載を参照することができる。
【0042】
最内層の厚さは、5μm以上、10μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、50μm以上、60μm以上、70μm以上、80μm以上、90μm以上、又は100μm以上以上であることが、強度及び成形性を確保する観点から好ましく、また200μm以下、170μm以下、150μm以下、140μm以下、130μm以下、120μm以下、又は110μm以下であることが、容器としての取り扱い性を向上させる観点から好ましい。
【0043】
(バリア性樹脂層)
バリア性樹脂層は、バリア性樹脂で構成されている層である。バリア性樹脂としては、透明であり、かつ外部からの水分や有機ガス及び無機ガスが内部へと透過することを抑制することができる材料を用いることができる。かかるバリア性樹脂としては、例えば環状オレフィンポリマー、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン等を用いることができる。
【0044】
バリア性樹脂層の厚さは、7μm以上、10μm以上、又は15μm以上であることが、強度及びバリア性を確保する観点から好ましく、また100μm以下、80μm以下、60μm以下、55μm以下、50μm以下、45μm以下、40μm以下、又は35μm以下であることが、容器としての取り扱い性を向上させる観点から好ましい。
【0045】
(他の層)
容器は、随意の他の層を更に有していてもよい。他の層としては、例えば接着層、及び他の樹脂層が挙げられる。接着層としては、多層押出に適した接着層、例えば酸変性ポリオレフィン、例えば無水マレイン酸変性ポリオレフィン等の接着性樹脂を用いることができる。また、他の樹脂層としては、例えば中間樹脂層に関して挙げたものを用いることができる。
【0046】
〈シール材〉
シール材は、容器の口部に融着されているシール材である。シール材は、容器と融着されている面にシーラント層を有する。シール材は、バリア層を更に有していてよい。
【0047】
また、シール材は、他の樹脂層を更に有していてもよい。
【0048】
(シーラント層)
シーラント層としては、例えばポリエチレン系樹脂を用いることができる。これらの樹脂は、例えば、延伸又は無延伸フィルム、押出積層用の溶融樹脂、ホットメルト用の塗料などの形態でよい。
【0049】
また、シーラント層としては、これらの樹脂で構成されていない、市販のイージーピール樹脂やイージーピールシーラントフィルム等のイージーピール層を用いてもよい。これらのイージーピール層は、異種のポリオレフィン系樹脂で構成される海島構造を有していてよく、例えばポリプロピレン系樹脂を島、ポリエチレン系樹脂を海とする海島構造を有していてよい。特に、上記の構成を有する容器と、これらのイージーピール層との組合せによれば、更に剥離強度を弱くすることができ、その結果、内容物の飛散を更に抑制することができる。
【0050】
シーラント層の厚さは、10μm以上、15μm以上、20μm以上、又は25μm以上であってよく、又は70μm以下、60μm以下、50μm以下、45μm以下、40μm以下、又は35μm以下であってよい。
【0051】
(バリア層)
バリア層は、透明バリア層であってもよく、又は不透明バリア層であってもよい。バリア層が透明バリア層である場合、バリア性基材層が透明バリア性基材層となることができる。
【0052】
(バリア層:透明バリア層)
透明バリア層としては、透明であり、かつ外部からの水分や有機ガス及び無機ガスが容器の内部へと透過することを抑制することができる材料を用いることができる。かかる透明バリア層としては、例えばシリカ蒸着膜、アルミナ蒸着膜、若しくはシリカ・アルミナ二元蒸着膜等の無機物蒸着膜、又はポリ塩化ビニリデンコーティング膜、ポリクロロトリフルオロエチレンコーティング膜、若しくはポリフッ化ビニリデンコーティング膜等の有機物コーティング膜を用いることができる。また、容器に関して挙げたバリア性樹脂層を、透明バリア層として用いることもできる。
【0053】
透明バリア層として無機物蒸着膜を用いる場合、透明バリア層の厚さは、100nm以上、200nm以上、300nm以上、500nm以上、700nm以上、又は1μm以上であることが、強度及びバリア性を確保する観点から好ましく、また5μm以下、4μm以下、3μm以下、又は2μm以下であることが、容器としての取り扱い性を向上させる観点から好ましい。
【0054】
透明バリア層としてバリア性樹脂層又は有機物コーティング膜を用いる場合、透明バリア層の厚さは、7μm以上、10μm以上、又は15μm以上であることが、強度及びバリア性を確保する観点から好ましく、また100μm以下、80μm以下、60μm以下、55μm以下、50μm以下、45μm以下、40μm以下、又は35μm以下であることが、容器としての取り扱い性を向上させる観点から好ましい。
【0055】
(バリア層:不透明バリア層)
不透明バリア層としては、例えば上記の無機物蒸着膜に加え、銅箔、アルミニウム箔等の単体金属箔層、ステンレス箔等の合金箔層等を用いることができる。
【0056】
不透明バリア層の厚さは、7μm以上、10μm以上、又は15μm以上であることが、強度及びバリア性を確保する観点から好ましく、また45μm以下、40μm以下、又は35μm以下であることが、取り扱い性を向上させる観点から好ましい。
【0057】
(他の樹脂層)
他の樹脂層としては、例えば容器の中間樹脂層に関して挙げた樹脂を用いることができる。
【0058】
(他の層)
シール材は、随意の他の層を更に有していてもよい。他の層としては、例えば接着層を用いることができる。シール材の接着層としては、特に限定されず、例えばドライラミネート接着剤、ホットメルト接着剤等を用いることができる。
【実施例
【0059】
実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0060】
《容器の作製》
4種6層多層押出機で、最外層(133μm)/接着層(2μm)/バリア性樹脂層(16μm)/接着層(2μm)/中間樹脂層(69μm)/最内層(109μm)の層構成を有する溶融パリソンを押し出し、金型内でエアーを吹き込むことにより、容量500ml、重量16gのブローボトルを作製した。各層の構成は以下のとおりである:
最外層及び最内層:低密度ポリエチレンを主成分とするポリオレフィン95質量%、シリル化ポリオレフィン5質量%の樹脂組成物
バリア性樹脂層:エチレン-ビニルアルコール共重合体(エバール、クラレ社、エチレン含有率44mol%)
中間樹脂層:ブローボトルの切断された部分の端材を粉砕した樹脂(回収樹脂)
接着層:無水マレイン酸変性ポリオレフィン(モディック、三菱化学社)
【0061】
シール材を接着させたときに、口部がシール材に向かって縮径する形状となるようにして、得られたブローボトルを切断して、実施例1の容器を作製した。
【0062】
(実施例2)
最外層及び最内層として、低密度ポリエチレンを主成分とするポリオレフィン90質量%、シリル化ポリオレフィン10質量%の樹脂組成物を用いたことを除き、実施例1と同様にして、実施例2の容器を作製した。
【0063】
〈比較例1~2〉
最外層及び最内層の構成を、表1に示すようにしたことを除き、実施例1と同様にして、比較例1~2の容器を作製した。なお、滑剤としては、オレイン酸アミド(cis-9,10-octadecenoamide)を用いた。
【0064】
〈比較例3〉
シール材を接着させたときに、口部がシール材に向かって縮径せずに円柱状(ストレート)に延びる形状となるようにして、得られたブローボトルを切断したことを除き、実施例1と同様にして、比較例3の容器を作製した。
【0065】
《評価》
〈最外層の静止摩擦係数〉
容器内に水500gを充填し、これを24℃の環境で保管期間8時間保管した。次いで、容器内の水の量を200gまで減らし、容器をSUS板上に横置きし、測定機器(摩擦測定機TR-2、東洋精機社)で、SUS板上のボトルを口部側から引っ張った際の静止摩擦係数を測定した。
【0066】
〈全量排出性〉
容器内にトマトケチャップ500gを充填し、内容物を排出した際の残渣の重量を測定した。
【0067】
〈易剥離性〉
PET(12μm)//AL(25μm)//PET(25μm)//イージーピーフィルム(30μm)の層構成(「//」はドライラミネート接着剤を示している。)を有するシール材を、温度180℃、時間3秒の条件で、容器の口部にヒートシールした。このシール材を、引張試験機を用いて45度の角度で剥離させて、剥離強度を測定した。
【0068】
〈樹脂溜まりの破断〉
上記と同様にシール材を剥離させた後の断面を、顕微鏡で80倍に拡大して観察した。評価基準は以下のとおりである:
〇:樹脂溜まりが破断していた。
×:樹脂溜まりが残存していた。
【0069】
実施例1については、シール材を剥離させる前及び後の断面写真を、それぞれ図4(a)及び(b)に示している。比較例2については、シール材を剥離させる前及び後の断面写真を、それぞれ図5(a)及び(b)に示している。比較例3については、シール材を剥離させる前及び後の断面写真を、それぞれ図6(a)及び(b)に示している。
【0070】
実施例及び比較例の構成及び評価結果を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
表1から、最外層及び最内層が、ポリオレフィン系樹脂及びシリル化ポリオレフィンを含有しており、かつ口部がシール材に向かって縮径している、実施例1~2の容器では、静止摩擦係数、全量排出時の残渣、及び剥離強度のいずれにおいても、良好な評価が得られたことが理解できよう。また、図4から、実施例1の容器は、シール材を剥離した際に、樹脂溜まりの破断が生じていることが理解できよう。
【0073】
これに対し、最外層及び最内層が、シリル化ポリオレフィンを含有していない比較例1の容器では、5℃における静止摩擦係数、全量排出時の残渣、及び剥離強度が良好ではなかった。
【0074】
また、最外層及び最内層が、シリル化ポリオレフィンの代わりに滑剤を含有している比較例2の容器では、24℃における静止摩擦係数が良好ではなかた。また、全量排出時の残渣、及び剥離強度は、比較例1の容器よりも良好ではあったものの、実施例1~2の容器よりは良好ではなかった。また、図5から、比較例2の容器では、シール材を剥離した際に、樹脂溜まりの破断が生じていないことが理解できよう。
【0075】
また、図6から、比較例3の容器でも、シール材を剥離した際に、樹脂溜まりの破断が生じていないことが理解できよう。なお、比較例3については、シール強度及び写真による外観評価以外の評価は行っていないが、最外層及び最内層の構成が実施例1と同じであることから、これらの評価については同等の評価が得られることが推測できよう。
【符号の説明】
【0076】
10 容器
10a 口部
12 最外層
12a 樹脂溜まり
14 バリア層
16 中間樹脂層
18 最内層
20 シール材
22 シーラント層
22a シーラント層の一部
24 バリア層
100 シール材付容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6