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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】コイル装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/06 20060101AFI20240410BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20240410BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
H01F17/06 D
H01F27/29 125
H01F27/28 152
H01F27/29 X
H01F17/06 A
H01F17/06 F
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020093499
(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公開番号】P2021190529
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】王 晨
(72)【発明者】
【氏名】杉本 聡
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-139356(JP,A)
【文献】特開2019-134147(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0178797(US,A1)
【文献】特開2019-204845(JP,A)
【文献】特開2009-141200(JP,A)
【文献】特開2020-053555(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0292459(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0231406(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/06
H01F 27/29
H01F 27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、
少なくとも一部が前記コアに近接しているコイルと、
設置面に実装するための実装部と、
前記実装部の下面と前記コアの底面との間に所定高さの隙間を形成するように、前記コイルに接続されて前記実装部へと繋がっている底上げ部と、を有し、
前記コアから離れる方向に沿って延びている前記実装部の長さが、前記所定高さよりも長く、
前記コアは、メインコアと、前記メインコアの上面に配置しているサブコアと、を有し、
前記メインコアの側面には前記コイルの側面が前記メインコアの側面から飛び出さない溝が形成されているコイル装置。
【請求項2】
前記所定高さは、0.5~5.0mmである請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記コイルと、前記底上げ部とは、連続する1つの板状導体または平角状ワイヤで構成してある請求項1または2に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記底上げ部の幅は、前記実装部の幅と略同じ幅である請求項1~3のいずれかに記載のコイル装置。
【請求項5】
前記実装部は、前記コアから離れる方向に向けて、前記底上げ部の下端から延びている請求項1~4のいずれかに記載のコイル装置。
【請求項6】
前記コイルは、前記底上げ部に接続している端コイル部と、前記端コイル部と接続している中間コイル部と、を有する請求項1~のいずれかに記載のコイル装置。
【請求項7】
前記底上げ部の幅は、前記中間コイル部の最大幅以上であり、前記コアの最大幅以下である請求項に記載のコイル装置。
【請求項8】
前記底上げ部は、複数の脚部を有し、
前記端コイル部は、前記中間コイル部と接続している主端コイル部と、前記主端コイル部と複数の前記脚部とを接続している連結部と、を有する請求項またはに記載のコイル装置。
【請求項9】
前記中間コイル部は、複数の主中間コイル部と、隣り合う前記主中間コイル部を接続している副中間コイル部と、を有する請求項のいずれかに記載のコイル装置。
【請求項10】
前記コアは、メインコアと、前記メインコアの上面に配置しているサブコアと、を有し、
前記コイルの少なくとも一部が、前記メインコアと前記サブコアとに挟まれている請求項1~のいずれかに記載のコイル装置。
【請求項11】
前記メインコアは、前記コイルの少なくとも一部を収容する溝部を有する請求項10に記載のコイル装置。
【請求項12】
前記メインコアおよびサブコアの少なくとも1つは、モールドコアである請求項10または11に記載のコイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばインダクタなどとして好適に用いられるコイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板などに実装するチップコイルとして、コイルとなる導体がコアを貫くように配置され、コアが導体を覆っているコイル装置が知られている。この種のコイル装置では、コイルの端子の実装部とコアの底面とが同一平面にあり、実装時には、実装部とコアの底面が、設置面に接触する(特許文献1)。
【0003】
電子部品を内蔵した装置の小型化の要請から、電源系などに用いるコイル装置を内蔵する電子機器の小型化の要請もいっそう高まっている。そこで、従来以上に、電子機器を小型化できるコイル装置の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-153642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、コイル装置が実装される電子機器の製品全体をよりいっそう小型化することができるコイル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るコイル装置は、
コアと、
少なくとも一部が前記コアに近接しているコイルと、
設置面に実装するための実装部と、
前記実装部と前記コアの底面との間に所定高さの隙間を形成するように、前記コイルに接続されて前記実装部へと繋がっている底上げ部と、を有するコイル装置。
【0007】
本発明に係るコイル装置を、たとえば基板などに実装すると、コアの底面と設置面との間に隙間が形成される。この隙間には、たとえばICやコンデンサといった他の電子部品などを実装することができる。この隙間に他の電子部品などを実装することで、基板に他の電子部品を実装するスペースが不要になるため、トータルでの実装面積の低減が図られ、電子機器の小型化に寄与する。本発明のコイル装置は、たとえば電源系のインダクタとして好ましく用いられる。
【0008】
前記所定高さは、特に限定されないが、好ましくは、0.5~5.0mm、さらに好ましくは0.5~3.0mm、特に好ましくは0.5mm~2mmである。所定高さがこの範囲にあることで、他の電子部品などを設置面とコアの底面との隙間に容易に装着することができ、また、コイル装置の実装高さが必要以上に高くなることもない。
【0009】
好ましくは、前記コイルと、前記底上げ部とは、連続する1つの板状導体または平角状ワイヤである。このように構成することで、板状導体(または平角状ワイヤ/以下同様)を折り曲げることにより、容易に、底上げ部を備えるコイル装置を形成することができる。
【0010】
前記実装部は、底上げ部とは別部材で接続されて繋がっていてもよいが、好ましくは、底上げ部の下端として形成されることで繋がっていてもよく、あるいは、底上げ部に連続する一つの板状導体または平角状ワイヤとして形成されることで繋がっていてもよい。実装部に繋がっている底上げ部により、コアの底面は、実装部より高い位置に配置され、設置面との間に隙間を形成する。この隙間に、他の電子部品を実装することができる。
【0011】
好ましくは、前記底上げ部の幅は、前記実装部の幅と略同じ幅である。このように構成してある底上げ部と実装部は、たとえば単一の板状導体により容易に一体成形して得ることができる。また、実装部と底上げ部の電気抵抗を同程度にすることができる。また、実装部の幅は、底上げ部の幅より広くしてもよい。このように構成することで、実装部の電気抵抗を下げることができると共に、実装の安定性が向上する。
【0012】
好ましくは、前記実装部は、前記コアから離れる方向に向けて、前記底上げ部の下端から延びている。このように構成することで、コイル装置を基板などに実装する場合、底上げ部の内側に、ハンダフィレットが形成される。その結果、コイル装置を基板上に安定的に固定することができる。
【0013】
好ましくは、前記コアから離れる方向に沿って延びている前記実装部の長さが、前記所定高さよりも長い。この場合には、コイル装置は、基板などに対してさらに安定的に実装することができる。
【0014】
好ましくは、前記コイルは、前記底上げ部に接続している端コイル部と、前記端コイル部と接続している中間コイル部と、を有する。このように構成することで、コアに近接しているコイルの全長が長くなり、得られるインダクタンスを向上させることができる。中間コイル部と端コイル部とは、単一の板状導体を折曲成形により同時に形成されることができ、中間コイル部と端コイル部とは、相互に略垂直方向に直線状に延びていてもよい。
【0015】
前記底上げ部の幅は、前記中間コイル部の最大幅と同等以上であってもよく、前記コアの最大幅以下であってもよい。底上げ部を、この範囲内にすることで、さらに安定的に実装することができる。
【0016】
前記底上げ部は、複数の脚部を有してもよい。また、前記端コイル部は、前記中間コイル部と接続している主端コイル部と、前記主端コイル部と複数の前記脚部とを接続している連結部と、を有していてもよい。底上げ部に複数の脚部を有することにより、コイル装置が底上げした状態で、より安定的に基板などに実装することができる。また、底上げ部の電気抵抗をさらに小さくすることができる。
【0017】
前記中間コイル部は、複数の主中間コイル部と、隣り合う前記主中間コイル部を接続している副中間コイル部と、を有していてもよい。このように構成することで、コアに近接しているコイルの全長が長くなり、インダクタンスを向上させることができる。
【0018】
前記コアは、メインコアと、前記メインコアの上面に配置しているサブコアと、を有してもよい。また、前記コイルの少なくとも一部が、前記メインコアと前記サブコアとに挟まれていてもよい。また、前記メインコアは、前記コイルの少なくとも一部を収容する溝部を有していてもよい。コアが、メインコアとサブコアに分割できるため、コアの内側に形成される溝部に、容易に、コイルとなる導体を配置することができる。
【0019】
また、コアは、メインコアとサブコアとに分割されていなくてもよく、一体に成形されているコアにコイルをインサート成形していてもよい。前記メインコアおよびサブコアの少なくとも1つは、モールドコアであってもよい。前記メインコアおよびサブコアの少なくとも1つは、磁性体を含んでいることが好ましいが、いずれのコアも、磁性体を含まない樹脂またはセラミックなどで構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A図1Aは本発明の一実施形態に係るコイル装置の一部透視斜視図である。
図1B図1Bは本発明の他の実施形態に係るコイル装置の一部透視斜視図である。
図1C図1Cは本発明のさらに他の実施形態に係るコイル装置の一部透視斜視図である。
図1D図1Dは本発明のさらに他の実施形態に係るコイル装置の一部透視斜視図である。
図2A図2A図1Aに示すコイル装置の分解斜視図である。
図2B図2B図1Bに示すコイル装置の分解斜視図である。
図2C図2C図1Cに示すコイル装置の分解斜視図である。
図2D図2D図1Dに示すコイル装置の分解斜視図である。
図3図3図1Aに示すコイル装置を基板に実装した状態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1Aに示す本発明の一実施形態に係るコイル装置1は、たとえば電源系回路の表面実装型インダクタなどとして用いられる。このコイル装置1は、コア10と、コイル20とを有する。コア10は、略直方体形状のメインコア10aと、そのZ軸方向の上方に配置された略直方体形状のサブコアとを有する。コイル20の中間コイル部22は、これらのコア10a,10bの間に挟まれて、X軸方向に直線状に延びている。なお、図1A(他の図も同様)において、X軸(第1軸)、Y軸(第2軸)およびZ軸(第3軸)は、相互に垂直である。
【0023】
図2Aに示すように、本実施形態では、コイル20は、X軸方向に延びる中間コイル部22と、中間コイル部22の両端に一体的に接続してあり、Z軸方向に延びる一対の端コイル部21と、を有している。また、それぞれの端コイル部21のZ軸下端には、Z軸方向に延びる底上げ部30が一体的に接続している。さらに、底上げ部30のZ軸下端には、実装部40としての屈曲片41が、底上げ部30からX軸方向に外側に折り曲げて形成してある。
【0024】
本実施形態では、これらのコイル20、底上げ部30および屈曲片41は、一枚の板状導体をプレス加工することにより得られ、コイル20の中間コイル部22は、X軸方向に直線状に延びており、端コイル部21と底上げ部30とは、同一平面上でZ軸方向に直線状に延びており、屈曲片41は、中間コイル部22と同じ直線上で、X軸に沿ってコア10から外側に延びている。本実施形態では、これらのコイル20、底上げ部30および屈曲片41は、X軸方向から見て、一直線上に配置してあり、全て同じY軸方向幅を有する。
【0025】
コイル20、底上げ部30および屈曲片41を構成する板状導体としては、特に限定されないが、たとえば銅、銅合金、銀、金などの金属が用いられる。板状導体の表面には、たとえば金属メッキが施してある。金属メッキとしては、たとえばニッケルメッキ、錫メッキ、はんだメッキ、銀メッキなどが例示され、メッキは単層でもよく複層でもよい。金属メッキは、板状導体の表面において、少なくともハンダが付着する側の片面、または両面に形成してあることが好ましい。
【0026】
また、板状導体の内、メインコア10aまたはサブコア10bに接触するコイル20の表面には、絶縁被膜が形成されていてもよい。たとえば金属磁性体を含むコア10a,10bなどのように、コア10a,10bの表面が導体である場合には、絶縁されることが好ましいためである。なお、これらのコア10aおよび10bの表面に絶縁被膜がなされていてもよい。
【0027】
図3に示すように、板状導体の内、実装部40となる屈曲片41の下面は、たとえば基板50のランド52aなどに電気的に接続されるために、絶縁被膜が形成されずに導体部分が露出していることが好ましい。また、底上げ部30の内側表面には、ハンダ60のフィレットを形成するために、導体部分が露出していることが好ましい。
【0028】
本実施形態では、図2Aに示すように、メインコア10aのコア上面11は、サブコア10bのコア底面13bと図示しない接着剤で固定されて一体化され、これらの間に、コイル20の中間コイル部22を挟み込む。メインコア10aのX軸方向の一辺の長さは、中間コイル部22のX軸方向の長さと略同じである。また、メインコア10aのZ軸方向の一辺の長さは、端コイル部21のZ軸方向の長さと略同じである。
【0029】
メインコア10aには、コア上面11と、X軸に沿って向き合う一対のコア側面12と、コア底面13aとにかけて溝部14が形成してある。コア上面11での溝部14は、Y軸方向の中央でX軸に沿って形成してあり、中間コイル部22のZ軸方向の厚みと同等またはそれ以上に対応する深さを有する。また、コア側面12での溝部14は、上面11での溝部14と連絡するように、Y軸方向の中央でZ軸に沿って、端コイル部21の厚みと同等またはそれ以上に対応する深さを有する。
【0030】
また、図3に示すように、コア底面13aでは、溝部14の両端は、繋がってはおらず、コア底面13aのX軸方向の中央部には、X軸に沿って所定長さで、溝部14が形成されていない。なお、本実施形態では、溝部14は、メインコア10aの上面11またはサブコア10bの下面13bにのみ形成してもよく、側面12および下面13aには、形成しなくてもよい。
【0031】
ただし、溝部14をメインコア10aの側面12にも形成することで、端コイル部21の外面が側面12から飛び出すことが抑制され、コイル装置1の小型化に寄与する。また、端コイル部21が溝14の内部に入り込むことで、コア10との磁気的結合が強くなり、インダクタンスの向上に寄与する。また、図3に示すように、溝部14をメインコア10aの底面にも形成することで、ハンダ60のフィレットがコア10の底面13aに接触することを抑制することもできる。
【0032】
本実施形態のコイル装置1では、メインコア10aのコア上面11での溝部14に中間コイル部22が収容してあり、コア側面12での溝部14に端コイル部21が収容してある。本実施形態では、中間コイル部22と溝部14とは、図示しない接着剤で固定してあるが、端コイル部21と溝部14とが接着剤で固定してあってもよい。なお、コア10とコイル20とが基板50(図3参照)に実装したときに分離しなければよく、必ずしも接着剤で固定する必要はない。
【0033】
コア10を構成するメインコア10aとサブコア10bとは、それぞれ、たとえばフェライトまたは金属磁性体(アモルファス合金磁性体を含む)などの磁性体と、樹脂とを含む複合磁性体で形成されている。すなわち、メインコア10aとサブコア10bとは、たとえばモールドコアで構成されていてもよい。あるいは、メインコア10aは、磁性体の焼結体であってもよい。また、サブコア10bも同様に、磁性体および樹脂を含む複合磁性体で形成されている。あるいは、サブコア10bは磁性体の焼結体であってもよい。金属磁性体としては、たとえばCo基アモルファス合金などが用いられる。
【0034】
なお、メインコア10aとサブコア10bとは、異なる種類の磁性体で構成されていてもよく、あるいは、サブコア10b(またはメインコア10a)は、たとえば樹脂やセラミックなどの非磁性体で構成してあってもよい。あるいは、メインコア10aとサブコア10bとの双方を、たとえば樹脂やセラミックなどの非磁性体で構成してあってもよい。
【0035】
本実施形態のコイル装置1では、底上げ部30は、コイル20と一体化されて成形され、図3に示すように、底上げ部30の下端に位置する実装部40の下面(基板50の設置面51)とコア10の底面13aとの間に所定高さの隙間hを形成する。隙間hは、X軸に沿って略均一であることが好ましいが、多少は異なっていてもよい。
【0036】
この隙間hには、たとえばICやコンデンサなど他の電子部品70を、単一または複数で実装することができる。この隙間hに対応する空間に他の電子部品70を配置し、基板50のランド52a,52aの間に配置されたランド52bに接続させて実装することができる。そのため、その基板50には、他の電子部品70を実装するスペースが、コイル装置1の実装スヘーストは別に設ける必要がなくなり、トータルでの実装面積の低減が図られ、電子機器の小型化に寄与する。したがって、本実施形態のコイル装置1は、たとえば小型化が要求される電源系電子機器のインダクタとして好ましく用いられる。
【0037】
所定高さhは、特に限定されないが、好ましくは、0.5~5.0mm、さらに好ましくは0.5~3.0mm、特に好ましくは0.5mm~2mmである。所定高さhがこの範囲にあることで、他の電子部品70などを設置面51とコア10の底面13aとの隙間hに容易に装着することができ、また、コイル装置1の実装高さが必要以上に高くなることもない。
【0038】
また本実施形態では、コイル20と、底上げ部30とは、連続する1つの板状導体で構成してあるため、板状導体を折り曲げることにより、容易に、底上げ部30を備えるコイル装置1を形成することができる。
【0039】
また本実施形態では、底上げ部30は、設置面51に実装するための実装部40に接続していることから、コアの底面13aは、実装部40より高い位置に配置され、設置面51との間に隙間hを形成する。この隙間hに、他の電子部品70を容易に実装することができる。
【0040】
さらに本実施形態では、底上げ部30の幅(Y軸に沿った/以下同様)は、実装部40の幅と略同じ幅である。このように構成してある底上げ部30と実装部40は、たとえば単一の板状導体により容易に一体成形して得ることができる。また、実装部30と底上げ部40の電気抵抗を同程度にすることができる。なお、実装部40の幅は、底上げ部30の幅より広くしてもよい。このように構成することで、実装部40の電気抵抗を下げることができると共に、実装の安定性が向上する。
【0041】
さらに本実施形態では、実装部40は、コア10から離れる方向に向けて、底上げ部30の下端から延びているので、コイル装置1を基板50に実装する場合、底上げ部30の内側に、ハンダ60のフィレットが形成される。その結果、実装時に、底上げ部30の内側に存在するハンダ60のフィレットの存在により、一対の端コイル部21が、メインコア10aをX軸の両側から締め付ける方向に応力が作用する。そのために、コイル装置1を基板50上に安定的に固定することができる。
【0042】
また本実施形態では、コア10から離れる方向に沿って延びている実装部40の長さが、所定高さhよりも長いため、コイル装置1は、基板50に対してさらに安定的に実装することができる。
【0043】
さらに本実施形態では、コイル20は、底上げ部30に接続している端コイル部21と、端コイル部21と接続している中間コイル部22と、を有する。このため、コア10に近接(接触含む/以下同様)しているコイル20の全長が長くなり、得られるコイル装置1のインダクタンスを向上させることができる。また、中間コイル部22と端コイル部21とは、単一の板状導体を折曲成形により同時に形成されることができる。
【0044】
本実施形態では、底上げ部30の幅は、中間コイル部22の最大幅と同等以上であってもよく、コア10の最大幅以下である。底上げ部30を、この範囲内にすることで、さらに安定的に実装することができる。
【0045】
なお、本実施形態では、コア10は、メインコア10aとサブコア10bとに分割されており、組み合わされることで、メインコア10aとサブコア10bとの間にコイル20の中間コイル部22がコア10の内部に埋設される。ただし、コイル20の中間コイル部22は、一体成形されるコア10の内部にインサート成形されてもよい。すなわち、コア10は、メインコア10aとサブコア10bとを接着剤で一体化せずに、一つのコア10にコイル20の中間コイル部22をインサート成形してもよい。
【0046】
また、上述した実施形態において、コイル20と底上げ部30と実装部40とを、単一の板状導体により一体的に成形してあるが、これらは、平角導体により、一体的に成形してもよい。
【0047】
また、本発明の別の実施形態では、コイル20の内の中間コイル部22のみを、ワイヤ状導体または平角導体で構成し、中間コイル部22の両端に、端コイル部21と底上げ部30と実装部40とからなる板状導体を、電気的に接続するように構成してもよい。あるいは、中間コイル部22、端コイル部21、底上げ部30と、実装部40とを、それぞれ別々の導体で構成し、それらを電気的に接続してもよい。ただし、少なくとも端コイル部21と底上げ部30とは、同一の導体で一体化して構成することが好ましい。
【0048】
さらに、本発明の別の実施形態では、メインコア10aとサブコア10bとを、Y軸方向にさらに長く成形し、溝部14を、Y軸方向に所定間隔で複数形成し、各溝部14毎に、コイル20を配置させてもよい。その場合には、複数のコイル20を並列に一体化させたコイル装置を実現することもできる。
【0049】
(第2実施形態)
図1Bおよび図2Bに示すように、本実施形態のコイル装置1aでは、コイル20の端コイル21の構成と、底上げ部30の構成と、メインコア10aに形成してある溝部14の構成が、前述した実施形態と異なるのみであり、その他の構成および作用効果は、前述した実施形態と同様なので、共通する部分の説明は一部省略する。
【0050】
本実施形態のコイル装置1aでは、底上げ部30は、複数の脚部30aを有し、端コイル部21は、中間コイル部22と接続している主端コイル部21aと、主端コイル部21aと複数の脚部30aとを接続している連結部21bと、を有する。主端コイル部21aの幅(Y軸に沿って/以下同様)は、中間コイル部22の幅よりも大きく、図示の例では、1.5倍以上に大きく、メインコア10aの幅よりも小さい。
【0051】
各連結部21bと各脚部30aの幅は、略同一であり、中間コイル部22の幅と略同一である。連結部21bと、その下部に連続して形成してある脚部30aは、主端コイル部21aのY軸方向の両端からZ軸に沿って下方に直線状に伸びており、脚部30aの最下端が、実装部40となっている。連結部21bと、その下部に連続して形成してある脚部30aとの境界は、メインコア10aの底面13a付近であり、明確には区別されない。
【0052】
本実施形態では、端コイル部21と脚部30aとは、中間コイル部22と共に、単一の板状導体からプレス加工などにより形成され、メインコア10aの側面12に近接して位置している部分が、端コイル部21として定義される。端コイル部21の中でも、脚部30aよりも幅広の部分が、主端コイル部21aとして定義され、主端コイル部21aよりも幅が狭く分岐している部分を複数の連結部21bとして定義することができる。
【0053】
本実施形態では、溝部14は、メインコア10aの上面11のみに形成してあり、その溝部14に、中間コイル部22が収容してある。端コイル部21と底上げ部30(脚部30a)は、メインコア10aのX軸に沿って相互に反対側に位置する側面12に沿って、同一平面上に配置される。複数の脚部30aからなる底上げ部30は、前述した実施形態と同様に、図3に示す隙間hを、底上げ部30の下端である実装部40(基板50の設置面51)と底面13aとの間に形成する。
【0054】
本実施形態では、複数の脚部30aからなる底上げ部30の内面のみに、ハンダ60のフィレットを形成することもできるが、底上げ部30の外面にも、ハンダ60のフィレットを形成してもよい。複数の脚部30aからなる底上げ部30の内面のみに、ハンダ60のフィレットを形成するためには、底上げ部30の外面には、絶縁被膜を残す方法や、ハンダ付着防止のための表面処理を行う方法が考えられる。
【0055】
本実施形態では、底上げ部30に複数の脚部30aを有することにより、コイル装置1aのコア10の底面13aが底上げした状態で、図1Aに示す屈曲片41を形成することなく、安定的にコイル装置1aを基板50に実装することができる。また、底上げ部30の電気抵抗をさらに小さくすることができる。なお、本実施形態においても、図1Aに示すような屈曲片41を、各脚部30aに一体成形して実装部40としてもよい。
【0056】
なお、本実施形態において、端コイル部21を、主端コイル部21aと、複数(図では一対)の連結部21bとで構成してあるが、主端コイル部21aのみで構成してもよい。すなわち、端コイル部21の主端コイル部21aから連結部21bを介さないで、直接に脚部30aに繋がっていてもよい。また、一対の脚部30aは、Y軸方向に連続されて単一の脚部となり、主端コイル部21aの幅で主端コイル21aから連続的に形成してあってもよい。
【0057】
(第3実施形態)
図1Cおよび図2Cに示すように、本実施形態のコイル装置1bでは、コイル20の構成と、底上げ部30の構成と、メインコア10aに形成してある溝部14の構成が、前述した実施形態と異なるのみであり、その他の構成および作用効果は、前述した実施形態と同様なので、共通する部分の説明は一部省略する。
【0058】
本実施形態のコイル装置1bでは、コイル20の中間コイル部22は、複数の主中間コイル部22a1,22a2と、隣り合う主中間コイル部22a1,22a2を接続している副中間コイル部22bと、を有する。複数の主中間コイル部22a1,22a2は、メインコア10aの上面に形成してある複数の溝部14の内部に収容され、Y軸方向に所定間隔で略平行に、それぞれX軸方向に直線状に配置してある。
【0059】
Y軸に沿って一端側(手前側)に配置してある主中間コイル部22a1のX軸に沿って右端には、主中間コイル部22a1の幅(Y軸に沿って/以下同様)と略同じ幅で、端コイル部21がZ軸に沿って下方に折曲成形して連結してある。端コイル部21のZ軸に沿って下端に、底上げ部30が、端コイル部21と略同じ幅で同一平面上に一体的に連続している。底上げ部30の下端が、実装部40として構成される。
【0060】
主中間コイル部22a1,22a2のX軸に沿って左端には、これらを連結するように、副中間コイル部22bがZ軸下方に折曲成形して連結してある。副中間コイル部22bは、平行に配置された主中間コイル部22a1のX軸に沿って左端と主中間コイル部22a2のX軸に沿って左端とを連絡するように、十分に広い幅を有する。副中間コイル部22bの幅は、一対の主中間コイル部22a1,22a2の幅にそれらの間の隙間をプラスした寸法と同程度である。
【0061】
副中間コイル部22bのZ軸に沿って下端には、同一平面上に同じ幅で連続して底上げ部30が一体成形してあり、底上げ部30の下端が実装部40となっている。
【0062】
主中間コイル部22a2のX軸に沿って右端には、主中間コイル部22a2の幅と略同じ幅で、端コイル部21がZ軸下方に折曲成形して連結してある。端コイル部21のZ軸に沿って下端に、底上げ部30が、端コイル部21と略同じ幅で一体的に連続している。底上げ部30の下端が、実装部40として構成される。
【0063】
メインコア10aのコア上面11には、Y軸に沿って所定間隔でX軸に沿って平行に延びる一対の溝部14が形成してある。これらの溝部14には、それぞれ主中間コイル部22a1,22a2が収容されるようになっている。
【0064】
また、メインコア10aのX軸に沿って向き合う一対のコア側面12の内の奥側一端側には、上面11に形成してある溝部14に同じ幅で連続する溝部14がそれぞれ形成してある。その側面12に形成してある溝部14には、それぞれコイル20の端コイル部21が収容され、それらの溝部14の下端(メインコア部10aの底面13a)からZ軸に沿って下方に各底上げ部30が突出するようになっている。
【0065】
また、メインコア10aのX軸に沿って向き合う一対のコア側面12の内の手前側の他端側には、上面11に形成してある一対の溝部14を連絡するように共通溝部15が形成してある。共通溝部15には、コイル20の副中間コイル部22bが収容され、共通溝部15の下端(メインコア部10aの底面13a)からZ軸に沿って下方に、副中間コイル部22bの底上げ部30が突出するようになっている。
【0066】
本実施形態のコイル装置1bでは、中間コイル部22が複数の主中間コイル部22a1,22a2と、副中間コイル部22bとで構成され、コア10に近接しているコイル20の全長が長くなり、インダクタンスを向上させることができる。副中間コイル部22bの実装部40は、たとえば図示省略してある基板上の孤立したランドなどに接続され、電気回路上では、他の電気回路に接続されないが、使用目的によっては、他の電気回路に接続されてもよい。
【0067】
(第4実施形態)
図1Dおよび図2Dに示すように、本実施形態のコイル装置1cでは、コイル20の構成と、底上げ部30の構成と、メインコア10aに形成してある溝部14の構成が、前述した実施形態と異なるのみであり、その他の構成および作用効果は、前述した実施形態と同様なので、共通する部分の説明は一部省略する。
【0068】
本実施形態のコイル装置1cでは、コイル20の中間コイル部22は、複数の主中間コイル部22a1,22a2,22a3と、隣り合う主中間コイル部22a1,22a2を接続している副中間コイル部22b1と、隣り合う主中間コイル部22a2,22a3を接続している副中間コイル部22b2と、を有する。複数の主中間コイル部22a1,22a2,22a3は、メインコア10aの上面に形成してある複数の溝部14の内部に収容され、Y軸方向に所定間隔で略平行に、それぞれX軸方向に直線状に配置してある。
【0069】
Y軸に沿って一端側(手前側)に配置してある主中間コイル部22a1のX軸に沿って右端には、主中間コイル部22a1の幅(Y軸に沿って/以下同様)より少し広い幅で、端コイル部21がZ軸に沿って下方に折曲成形して連結してある。端コイル部21のZ軸に沿って下端に、底上げ部30が、端コイル部21より狭い幅で同一平面上に一体的に連続している。底上げ部30の下端が、実装部40として構成される。
【0070】
主中間コイル部22a1,22a2のX軸に沿って左端には、これらを連結するように、副中間コイル部22b1がZ軸下方に折曲成形して連結してある。副中間コイル部22b1は、平行に配置された主中間コイル部22a1のX軸に沿って左端と主中間コイル部22a2のX軸に沿って左端とを連絡するように、十分に広い幅を有する。副中間コイル部22b1の幅は、一対の主中間コイル部22a1,22a2の幅にそれらの間の隙間をプラスした寸法と同程度、またはそれ以上である。
【0071】
副中間コイル部22b1のY軸に沿って手前側端でZ軸に沿っての下端には、副中間コイル部22b1の幅よりも狭い幅で、同一平面上に連続して底上げ部30が一体成形してあり、底上げ部30の下端が実装部40となっている。底上げ部30の幅は、いずれかの主中間コイル部22a1,22a2,22a3の幅と同程度である。主中間コイル部22a1,22a2,22a3の幅は、略同一であることが好ましい。
【0072】
主中間コイル部22a2,22a3のX軸に沿って右端には、これらを連結するように、副中間コイル部22b2がZ軸下方に折曲成形して連結してある。副中間コイル部22b2は、平行に配置された主中間コイル部22a2のX軸に沿って右端と主中間コイル部22a3のX軸に沿って右端とを連絡するように、十分に広い幅を有する。副中間コイル部22b2の幅は、一対の主中間コイル部22a2,22a3の幅にそれらの間の隙間をプラスした寸法と同程度、またはそれ以上である。
【0073】
副中間コイル部22b1のY軸に沿って奥側端でZ軸に沿っての下端には、副中間コイル部22b2の幅よりも狭い幅で、同一平面上に連続して底上げ部30が一体成形してあり、底上げ部30の下端が実装部40となっている。この底上げ部30の幅も、いずれかの主中間コイル部22a1,22a2,22a3の幅と同程度である。
【0074】
Y軸に沿って他端側(奥側)に配置してある主中間コイル部22a3のX軸に沿って左端には、主中間コイル部22a3の幅より少し広い幅で、端コイル部21がZ軸に沿って下方に折曲成形して連結してある。端コイル部21のZ軸に沿って下端に、底上げ部30が、端コイル部21より狭い幅で同一平面上に一体的に連続している。底上げ部30の下端が、実装部40として構成される。
【0075】
メインコア10aのコア上面11には、Y軸に沿って所定間隔でX軸に沿って平行に延びる3つの溝部14が形成してある。これらの溝部14には、それぞれ主中間コイル部22a1,22a2,22a3が収容されるようになっている。
【0076】
また、メインコア10aのX軸に沿って向き合う一対のコア側面12には、溝部は形成されない。X軸に沿って左側の一方のコア側面12には、副中間コイル部22b1と端コイル部21とがY軸に沿って、この順で所定間隔に、コア側面12に近接して配置してある。また、X軸に沿って右側の他方のコア側面12には、端コイル部21と副中間コイル部22b1とがY軸に沿って、この順で所定間隔に、コア側面12に近接して配置してある。各底上げ部30は、メインコア部10aの底面13aからZ軸に沿って下方に突出するようになっている。
【0077】
本実施形態のコイル装置1cでは、中間コイル部22が、複数の主中間コイル部22a1,22a2,22a3と、副中間コイル部22b1,22b2とで構成してある。このため、コア10に近接しているコイル20の全長が長くなり、インダクタンスを向上させることができる。副中間コイル部22b1,22b2の実装部40は、たとえば図示省略してある基板上の孤立したランドなどに接続され、電気回路上では、他の電気回路に接続されないが、使用目的によっては、他の電気回路に接続されてもよい。
【0078】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0079】
たとえば、本発明のコイル装置は、電源系回路のインダクタ以外に、ノイズフィルタ、トランス、カップルドインダクタなどとしても用いられる。
【符号の説明】
【0080】
1,1a~1c…コイル装置
10…コア
10a…メインコア
10b…サブコア
11…上面
12…側面
13a,13b…底面
14…溝部
15…共通溝部
20…コイル
21…端コイル部
21a…主端コイル部
21b…連結部
22…中間コイル部
22a1,22a2…主中間コイル部
22b,22b1,22b2…副中間コイル部
30…底上げ部
30a…脚部
40…実装部
41…屈曲片
50…基板
51…設置面
52a,52b…ランド
60…ハンダ
70…他の電子部品
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3