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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20240410BHJP
【FI】
E02F9/00 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020095317
(22)【出願日】2020-06-01
(65)【公開番号】P2021188382
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一磨
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-140802(JP,A)
【文献】実開平04-046643(JP,U)
【文献】特開2000-104986(JP,A)
【文献】特開2000-127770(JP,A)
【文献】特開2010-248691(JP,A)
【文献】実開昭55-174555(JP,U)
【文献】特開2006-154137(JP,A)
【文献】特開2009-215699(JP,A)
【文献】特開平06-140782(JP,A)
【文献】特開2012-234005(JP,A)
【文献】特開平05-052385(JP,A)
【文献】特開2018-204284(JP,A)
【文献】特開平11-082010(JP,A)
【文献】特開2013-024078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローラを備えた下部走行体と、該下部走行体の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前部に設けられた作業装置とを備え、前記上部旋回体は、機体フレームと、該機体フレーム上の車幅方向一側部に設けられ、前記作業装置の駆動力を発生させるエンジンパワーユニットと、該エンジンパワーユニットを収納可能なハウスとを備えている建設機械において、
前記ハウスの天板上には、エンジンからの排ガスを案内する排気管と、該排気管の下流側に接続される箱形状のチャンバーとが設けられ、
前記チャンバーは、導入した排ガスを排気流として排出する円形の排風口と、
該排風口にボルト止めされるとともに、傾斜した複数の羽板をもって前記排気流を整流するルーバと
前記チャンバーの室内側であって、前記排風口の周囲に円周方向に等ピッチで設けられた複数の裏ナットと、
を備え、
前記ルーバは、前記複数の羽板を前記排風口に整列配置する円環状の取付フランジを有し、
該取付フランジには、前記裏ナットに対応する位置に複数のボルト孔が設けられていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記複数のボルト孔は、前記ルーバの取付位置を前記排風口の円周方向に調節する長孔状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の建設機械。
【請求項3】
前記排風口は、前記チャンバーの複数箇所にそれぞれ異なる向きに開口して前記ルーバが選択的に取り付けられ、一方の排風口に前記ルーバを取り付けた状態で、他方の排風口には閉塞部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の建設機械。
【請求項4】
前記排風口は、車幅方向の外向きに開口し、前記建設機械は、前記上部旋回体に安定用のジャッキを備えるとともに、施工位置に前記ジャッキを接地した静止状態で、前記作業装置から駆動力を得て地中に杭を造成する杭打機であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関し、詳しくは、エンジンパワーユニットを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、大型の杭打機やアースドリルなどの建設機械では、上部旋回体の幅方向中央に設けられたガントリやウインチなどの作業装置と、上部旋回体の両側部に設けられたエンジンパワーユニット、制御機器などの各種機器を収納したハウス(収納室)とを備えている。この種の建設機械は、輸送やハウス上での組立・保守などが安全に行えるように、ハウス上に設置した排気管を横方向に延ばして、排気管の高さ寸法を低く抑えている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-140802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、建設機械が使用される現場の多様化に伴い、建設機械を住宅街や市街地の中にある現場に搬入して使用することが増えてきている。この場合、建設機械が建物の壁際に寄り付いたとき、熱と黒煙(すす)を伴った排ガスが建物に向けられるおそれがあった。特に、建設機械の中でも杭の埋設や地盤改良などを行う杭打機は、施工位置にジャッキを接地して長時間その場に止まることから、周囲環境に与える影響の程度が大きいという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、簡単な構造で排気向きを任意に変更可能な排気構造を備えた建設機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の建設機械は、クローラを備えた下部走行体と、該下部走行体の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前部に設けられた作業装置とを備え、前記上部旋回体は、機体フレームと、該機体フレーム上の車幅方向一側部に設けられ、前記作業装置の駆動力を発生させるエンジンパワーユニットと、該エンジンパワーユニットを収納可能なハウスとを備えている建設機械において、前記ハウスの天板上には、エンジンからの排ガスを案内する排気管と、該排気管の下流側に接続される箱形状のチャンバーとが設けられ、前記チャンバーは、導入した排ガスを排気流として排出する円形の排風口と、該排風口にボルト止めされるとともに、傾斜した複数の羽板をもって前記排気流を整流するルーバと、前記チャンバーの室内側であって、前記排風口の周囲に円周方向に等ピッチで設けられた複数の裏ナットと、を備え、前記ルーバは、前記複数の羽板を前記排風口に整列配置する円環状の取付フランジを有し、該取付フランジには、前記裏ナットに対応する位置に複数のボルト孔が設けられていることを特徴としている。
【0007】
また、前記複数のボルト孔は、前記ルーバの取付位置を前記排風口の円周方向に調節する長孔状に形成されていることを特徴としている。さらに、前記排風口は、前記チャンバーの複数箇所にそれぞれ異なる向きに開口して前記ルーバが選択的に取り付けられ、一方の排風口に前記ルーバを取り付けた状態で、他方の排風口には閉塞部材が取り付けられていることを特徴としている。
【0008】
また、前記排風口は、車幅方向の外向きに開口し、前記建設機械は、前記上部旋回体に安定用のジャッキを備えるとともに、施工位置に前記ジャッキを接地した静止状態で、前記作業装置から駆動力を得て地中に杭を造成する杭打機であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の建設機械によれば、排ガスが導入されるチャンバーに円形の排風口と、該排風口にボルト止めされる羽板付きのルーバとを備え、該ルーバの取付フランジにおいて複数のボルト孔を円周方向に等ピッチで設けているので、ルーバをボルト孔の数に対応した任意の回転角度で取り付けることが可能となり、建設機械が使用される現場に応じて排気向きの変更を容易に行うことができる。また、チャンバー内で排ガスを拡散してその勢いを弱めながら、ルーバによる上向きで緩やかな排気流を形成できることから、ハウス上における作業だけでなく、ハウス内の機器の保守など排風口の間近で行う作業の安全も確保される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一形態例を示す杭打機の側面図である。
図2】同じく要部側面図である。
図3図2のIII-III断面図である。
図4】同じく要部平面図である。
図5】ルーバの正面図である。
図6図5のVI-VI断面図である。
図7】排気構造の変形例を示す要部側面図である。
図8】同じく要部断面図である。
図9】同じく要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至図9は、本発明を建設機械の一例である杭打機に適用したもので、杭打機11は、図1に示すように、クローラ12aを備えた下部走行体12の上部に、旋回ベアリング13を介して上部旋回体14が旋回可能に設けられており、上部旋回体14の前部には、リーダなどの杭打用の起伏部材(図示せず)が設けられている。また、上部旋回体14の前後左右の4箇所に安定用のジャッキ15(前部側は図示せず)が設けられている。さらに、上部旋回体14の後端部に杭打機11のバランスをとるためのカウンタウエイト16が搭載されるとともに、上部旋回体14の後部上方には起伏可能なガントリ17が設けられている。
【0012】
上部旋回体14は、下面に旋回ベアリング13が取り付けられる矩形箱状のメインフレームと、該メインフレームの車幅方向両側部に枠組みされたフロアフレーム18(反対側は図示せず)とが一体的に結合されている機体フレームを有しており、各種大型部品は主にメインフレームに装着されている。右側のフロアフレーム上の前部には、作業装置であるオーガや上部旋回体14、下部走行体12などを駆動させる操作がなされる運転室19が設置されている。また、右側のフロアフレーム上の後部には、作動油タンクなどの油圧機器を収納する機器収納ハウス(図示せず)が設けられている。一方、左側のフロアフレーム18上には、エンジンの駆動を受けて圧油を供給するための油圧源装置として、エンジンパワーユニットや、これに付属する燃料タンク、排ガス浄化装置などの複数の関連機器を収納するエンジン収納ハウス20が設けられている。
【0013】
各ハウス20は、略矩形箱型に形成され、複数の点検扉20a(反対側は図示せず)がそれぞれ設けられている。また、エンジン収納ハウス20の前部には、天板20b上に移動するための階段20cや梯子20dが設けられている。これにより、保守や組立作業に従事する者は、フロアフレーム18に取り付けたステップ18aを足場として上部旋回体14の後部へ移動したり、ハウスに上がって、手摺21の内側で作業が行えるようになっている。
【0014】
エンジンパワーユニットは、図示は省略するが、フロアフレーム18上に防振状態で搭載されたディーゼルエンジン(以下、エンジンと称する)と、該エンジンにおける冷却ファンの存在側とは反対側となる後部側に、片持ち状に取り付けられた油圧ポンプ装置とを有して構成されている。また、フロアフレーム18上のエンジンの前部側、つまり冷却ファンによる冷却風の流れ方向の上流側には、冷却ファンと対面して配置されたラジエータが設けられている。さらに、エンジン収納ハウス20内における階段20cの真下付近には燃料タンク及び還元剤タンクがそれぞれ配置されている。
【0015】
エンジンの吸気管には、エンジン収納ハウス20の天板20b上に設置されたエアクリーナ22が接続されており、該エアクリーナ22で吸い込んだ新気(外部空気)をエンジンの各気筒に対して供給可能になっている。一方、エンジンの排気管には、高次の排ガス規制に対応する排ガス浄化装置が設けられている。排ガス浄化装置は、尿素水を還元剤とするSCR(Selective Catalytic Reduction:選択還元型触媒)や、排気管のSCRに対して上流側に配置されるとともに、排気管内の排ガスに向けて尿素水を噴射する噴射ノズルなどを有している。これにより、燃焼後の排ガスは、排ガス浄化装置で浄化処理がなされた後、ハウス20の天板20b上に設置された排気管に案内されて排気出口から外部に排出される。具体的には、尿素水が噴射されると、高温雰囲気下の尿素水の分解反応でアンモニアが生成され、該アンモニアによって排ガス中のNOxが還元されて水と窒素に分解されるようになっている。
【0016】
エンジンを駆動すると、エンジンパワーユニットから必要となる動力が、例えば、オーガ昇降用油圧モータやオーガ駆動用油圧モータなどを作動させる圧油が得られ、リーダの前面に装着したオーガの昇降及び回転駆動を含む各種動作が行える。これにより、杭打機11は、工事現場の施工位置にジャッキ15を接地した静止状態で、オーガから駆動力を得て地中に杭を造成することが可能になる。
【0017】
ところで、杭打機11を住宅街や市街地の中にある現場に搬入して使用する場合、隣接する建物との位置関係や風向きによって熱と黒煙を伴った排ガスが建物に向けられるおそれがある。そこで、このような事情から、杭打機11には、排気出口から排ガスと共に吹き出た排ガスの向きを任意に変更可能な排気構造が備わっている。
【0018】
前記排気構造は、図2乃至図6に示すように、エンジンからの排ガスを案内する排気管(テールパイプ)23と、該排気管23の下流側に接続されるチャンバー(排気室)24とからなり、基本的には、エンジン収納ハウス20の天板20b上において、SCR(筐体)25と一体的に集約配置され、これらを収納するハウスカバー26を含めて組付性を考慮しつつ、排気出口23aから吹き出た排ガスの排出を円滑に達成させる構造である。
【0019】
排気管23は、SCR25の下流側に接続されるU字配管部23bと、パイプ材を斜め切断して得た排気出口23aを有するL字配管部23cとを互いに連結し、排気流路全体を3次元的に延ばして形成されている。L字配管部23cは、排気出口23aがチャンバー24内に位置するように、該チャンバー24の上面24a前部に貫通固定されている。これにより、U字配管部23bとL字配管部23cとは、チャンバー24を設置するときに互いに接続され、グラスマット27を使用して接続部の段差(隙間)が吸収される。
【0020】
チャンバー24は、導入した排ガスを一旦滞留させるための排気室であり、前後方向に延びる矩形箱状をなし、室内の排ガスを排気流として排出する排風口28を備え、該排風口28のある外側面をハウス20の外側面と略面一ないし若干内側に引き込んだ位置に設けられている。また、チャンバー24は、ハウス20上に設置するときに前後一対のブラケット29,29を介してボルト30で固定され、天板20bから浮かした状態で保持されている。
【0021】
排風口28は、チャンバー24の後部外側面を円形に開口させることによって、車幅方向外向きの開口を形成している。この排風口28には、傾斜した6枚の羽板31aをもって排気流を整流するルーバ31が取り付けられている。ルーバ31は、各羽板31aを排風口28に整列配置する円環状の取付フランジ31bと、排風口28に挿入係止される短寸円筒状のリング部材31cとを同心に位置合わせして接合したものである。
【0022】
取付フランジ31bは、チャンバー24の外側面からはみ出ない程度の大きさの外径と、排風口28の大きさに対応した内径とを有する円環板状部材である。また、各羽板31aは、リング部材31cの内周側において傾斜した状態で、例えば、取付フランジ31bの板面に対して45度の傾きで、その両端部がそれぞれ溶接されている。これにより、ルーバ31を着脱する動作に伴って、各羽板31aが排風口28に対して一体で出入り可能になっている。
【0023】
また、取付フランジ31bは、排風口28の周囲に設けた4箇所の裏ナット(溶接ナット)24bに対応する位置に4つのボルト孔31dを有している。これら4つのボルト孔31dは、全て同一形状であって、取付フランジ31bの円周方向に4等分した90度ピッチ(取付ピッチ)で設けられるとともに、円周方向に一定長さをもって延びた長孔状に形成されている。これにより、4つのボルト32を使用して排風口28にルーバ31を仮止めした状態で、その取付位置が排風口28の円周方向に回転可能で、かつ、ボルト孔31dの円弧長さに対応した中心角度θとして、例えば、50度の範囲で回動調節することが可能である(図5)。すなわち、ルーバ31の取付位置は、排気向きが斜め上下方向及び斜め前後方向となる選択位置に加え、この4種類の選択位置から任意の角度に、例えば、両側へ25度ずつ回動させて設定することが可能である。
【0024】
ハウスカバー26は、SCR25や排気管23などが程よく収まる大きさの箱形状であり、外側面には、ハウス20の天板20bに取り付けた状態で、チャンバー24の排風口28を露出させる切欠き口26aが設けられている。切欠き口26aは、チャンバー24の外形に対応した幅と切込み深さ(高さ)とを有している。また、ハウスカバー26の上面は、貫通孔や突出部のない平坦状に形成されており、例えば、車体上で機器の保守を行う際に、上部旋回体14の前部及び後部間の行き来を可能にする足場となる。
【0025】
このように形成された杭打機11は、製造工程の終盤において、ハウス20の天板20b上にエアクリーナ22やSCR25、排気管23、チャンバー24などの吸排気系部品を設置した後、クレーンの吊り操作によってハウスカバー26が組み付けられる。
【0026】
ハウスカバー26の組付作業を終えると、杭打機11は、燃料や作動油、尿素水の供給工程を経て完成状態となり、エンジンパワーユニットを稼働することよって必要な動力が、例えば、オーガ昇降用油圧モータ及びオーガ駆動用油圧モータを作動させる圧油が得られ、オーガの昇降及び回転駆動を含む各種動作によって杭打ち機能を発揮できる状態となる。その後、動作確認を終えた杭打機11は、本塗装がなされて工場から出荷される。
【0027】
ここで、エンジンパワーユニットを稼働すると、排気出口23aから吹き出た排ガスは、排気管23とチャンバー24との流路断面積の差によって拡散して流速が低下する。これにより、風速が弱まった排ガスはルーバ31によって整流され、排風口28から排気流として設定方向に、例えば、上方外向きに排出される(図3)。
【0028】
このように、本発明の建設機械によれば、排ガスが導入されるチャンバー24に円形の排風口28と、該排風口28にボルト止めされる羽板付きのルーバ31とを備え、該ルーバ31の取付フランジ31bにおいて複数のボルト孔31dを円周方向に等ピッチで設けているので、ルーバ31をボルト孔31dの数に対応した任意の回転角度で取り付けることが可能となり、建設機械が使用される現場に応じて排気向きの変更を容易に行うことができる。また、チャンバー24内で排ガスを拡散してその勢いを弱めながら、ルーバ31による上向きで緩やかな排気流を形成できることから、ハウス20上における作業だけでなく、ハウス20内の機器の保守など排風口28の間近で行う作業の安全も確保される。
【0029】
さらに、取付フランジ31bに設けたボルト孔31dの形状を、ルーバ31の取付位置を排風口28の円周方向に調節する長孔状に形成しているので、現場の風向きが変化するなどの気象状況に応じて排気向きを微調整することができる。とりわけ、杭打機11のような、施工位置に長時間止まるような使用態様であっても、排気向きの最適化を図ることが容易に行え、しかも、従来から用いられている横向きの排気管に対して複雑な改造を施す必要がないことから、安価で製作性にも優れている。すなわち、排気向きを変えたいといった現場のニーズに確実に応えることができる。
【0030】
図7乃至図9は、本発明の排気構造を備えた杭打機の変形例を示している。なお、以下の説明において、前記形態例に示した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0031】
本変形例では、前記形態例の排気構造をそのまま有しており、チャンバー24の上面24a後部に前記排風口28と同一形状の追加の排風口33を備えることにより、2つの排風口28,33に対して前記ルーバ31を選択的に取り付けることが可能である。そして、2つの排風口28,33のうち、一方(上面)の排風口33にルーバ31を取り付けた状態で、他方(外側面)の排風口28には、4箇所の裏ナット24bを使用して閉塞部材34がボルト止めされている。閉塞部材34は、ルーバ31における取付フランジ31bの外径と同一径の円板であり、取付用のボルト32のサイズに対応した4つの丸孔(図示せず)を有している。
【0032】
そして、このように構成された本形態例においても、ルーバ31の特徴的な取付構造によって排ガスの整流効果が発揮でき、さらに、本形態例の場合には、取付互換性のあるルーバ31と閉塞部材34とを有して構成することにより、必要時に簡単な組み替え作業で排ガスの排出方向を横向きから上向きに、又は、その逆の向きに変更することができる。しかも、チャンバー24の上面24aにルーバ31を取り付けた場合、傾斜した羽板31aによって上方内向きの排気流を形成することが可能となり、たとえ建物の壁際で施工を行う場合であっても、周囲環境に与える影響を最小限にすることができる(図8)。すなわち、多様な使用環境に広く対応することが可能な建設機械の排気構造が得られる。
【0033】
なお、本発明は、建設機械として杭打機を例示したが、これに限られず、アースドリルやクレーンなど、掘削装置や荷役装置の動力源としてエンジンパワーユニットを備えた各種建設機械に適用することができる。この場合、チャンバーを備えた排気構造を設ける際に、排気系に対して大幅な構造変更を要しないので、モデルチェンジや新型開発を円滑に進めることが可能となる。とりわけ、製造や保守などでハウスカバーの着脱が予定されるが、切欠き口の存在により、クレーンを巻き上げたり巻き下げたりするだけの簡単な操作で、真上からハウスカバーの装着と取外しが行えることから、作業効率を高める効果が得られる。
【0034】
これに加えて、チャンバーは、板金構造を採用することにより、軽量かつ安価で、その取り扱いも良好なものであるが、構造は特に限定されず、組立性を損なわない範囲で排気管とチャンバーとを別体構造にすることができる。また、排風口は、チャンバーの外側面や上面以外の面に、例えば、前面あるいは後面などにも備えることができる。さらに、ルーバは、ボルト孔を丸孔(円形)にして円周上に多数配置してもよく、羽板の枚数や傾斜角度についても排気口の向きや風量などの条件に応じて適宜設定することができる。
【符号の説明】
【0035】
11…杭打機、12…下部走行体、12a…クローラ、13…旋回ベアリング、14…上部旋回体、15…ジャッキ、16…カウンタウエイト、17…ガントリ、18…フロアフレーム、18a…ステップ、19…運転室、20…エンジン収納ハウス、20a…点検扉、20b…天板、20c…階段、20d…梯子、21…手摺、22…エアクリーナ、23…排気管、23a…排気出口、23b…U字配管部、23c…L字配管部、24…チャンバー、24a…上面、24b…裏ナット、25…SCR、26…ハウスカバー、26a…切欠き口、27…グラスマット、28…排風口、29…ブラケット、30…ボルト、31…ルーバ、31a…羽板、31b…取付フランジ、31c…リング部材、31d…ボルト孔、32…ボルト、33…排風口、34…閉塞部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9