IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社京三製作所の特許一覧

<>
  • 特許-列車位置検知装置 図1
  • 特許-列車位置検知装置 図2
  • 特許-列車位置検知装置 図3
  • 特許-列車位置検知装置 図4
  • 特許-列車位置検知装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】列車位置検知装置
(51)【国際特許分類】
   B61L 25/02 20060101AFI20240410BHJP
   G01C 21/28 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
B61L25/02 G
G01C21/28
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020109912
(22)【出願日】2020-06-25
(65)【公開番号】P2022007153
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】谷口 茂
(72)【発明者】
【氏名】山越 基玄
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-153445(JP,A)
【文献】特開2003-261028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 25/02
G01C 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車の走行する線路に沿って所定の区間に埋設された複数の磁気マーカと、
列車に搭載され、前記磁気マーカを検知する磁気センサと、
列車の走行位置を検出する走行位置検出部と、
前記走行位置検出部によって検出された列車の位置が前記所定の区間内であるとき、前記磁気センサからの信号に基づいて、列車の走行位置を検出するセンサ位置検出部と、
前記所定の区間内では、前記センサ位置検出部によって検出された位置を、列車の現在の走行位置として決定する走行位置決定部と、を備え
複数の前記磁気マーカは、列車の長さに合わせて、それぞれ所定の位置に埋設し、
前記磁気センサから当該列車の長さにひもづけされた前記磁気マーカの信号を、前記センサ位置検出部が検知した場合に、列車の走行位置を検出する列車位置検知装置。
【請求項2】
列車の走行する線路に沿って所定の区間に埋設された複数の磁気マーカと、
列車に搭載され、前記磁気マーカを検知する磁気センサと、
列車の走行位置を検出する走行位置検出部と、
前記走行位置検出部によって検出された列車の位置が前記所定の区間内であるとき、前記磁気センサからの信号に基づいて、列車の走行位置を検出するセンサ位置検出部と、
前記所定の区間内では、前記センサ位置検出部によって検出された位置を、列車の現在の走行位置として決定する走行位置決定部と、を備え
前記所定の区間は、線路の分岐点または合流点の転換点を通過後の所定距離内に設定されている列車位置検知装置。
【請求項3】
複数の前記磁気マーカは、列車の長さに合わせて、それぞれ所定の位置に埋設し、
前記磁気センサから当該列車の長さにひもづけされた前記磁気マーカの信号を、前記センサ位置検出部が検知した場合に、列車の走行位置を検出する、
ことを特徴とする請求項2に記載の列車位置検知装置。
【請求項4】
列車には、前記走行位置検出部および前記センサ位置検出部と、これらの位置検出部によってそれぞれ検出された位置の情報を地上装置に送信する送信装置と、を有する車上装置が搭載され、
列車には、前記磁気センサの配設された位置から最後尾までの長さが互いに異なる第1種、第2種の列車が存在し、
前記転換点を通過後の所定の区間には、前記第1種の列車における磁気センサの位置から最後尾までの長さ分、前記分岐点から離れた第1の磁気マーカと、前記第2種の列車における磁気センサの位置から最後尾までの長さ分、前記分岐点から離れた第2の磁気マーカと、がそれぞれ埋設されており、
前記車上装置が前記第1種の列車に搭載されているとき、前記センサ位置検出部は、前記第1の磁気マーカを検出して前記磁気センサから出力される信号に基づいて、列車の走行位置を検出し、
前記車上装置が前記第2種の列車に搭載されているとき、前記センサ位置検出部は、前記第2の磁気マーカを検出して前記磁気センサから出力される信号に基づいて、列車の走行位置を検出する、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の列車位置検知装置。
【請求項5】
列車には、前記走行位置検出部および前記センサ位置検出部と、これらの位置検出部によってそれぞれ検出された位置の情報を地上装置に送信する送信装置と、を有する車上装置が搭載され、
前記地上装置は、前記送信装置から送信される位置情報を受信する受信装置と、受信した位置情報に基づいて、列車の現在の走行位置を決定する前記走行位置決定部と、を有する、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の列車位置検知装置。
【請求項6】
前記地上装置は、前記送信装置から送信される位置情報を受信する受信装置と、受信した位置情報に基づいて、列車の現在の走行位置を決定する前記走行位置決定部と、を有する、
ことを特徴とする請求項4に記載の列車位置検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車の走行位置を検知するための列車位置検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より一般的に、走行している列車の位置を検知するために、列車の車軸に設けた速度発電機から出力する交流信号により車輪の回転数を積算して、列車の走行距離を算出している。このように車輪の回転数を利用して列車の走行位置を検出する方法では、走行中における車輪の空転や滑走が生じると、列車の走行距離を正確に算出できなくなるので、列車の走行位置検出精度が低下してしまう。
【0003】
これに対し、例えば特許文献1に開示されるように、地上側に設置された地上子やIDタグ、トランスポンダ等を列車が通過するたびに、列車の走行位置を補正することが行われている。但し、そのように走行位置を補正する場合、精度を高めようとすればするほど、設置する地上子等の数が多くなって、多額の費用がかかってしまう。また、補正の頻度があまり高くなると、その処理の演算負荷も問題になる。
【0004】
そこで、特許文献2に開示されるように、列車に搭載したGPS受信機からの緯度・経度信号に基づいて、列車の位置を検出するようにした車両運転支援システムも提案されている。このシステムでは、GPS受信機からの信号に基づいて検出した列車の位置が所定の速度検知エリア内であるか否を判定し、速度検知エリアで列車の速度が制限速度を越えないように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭60-157957号公報
【文献】特開2002-335607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献2に開示されるGPSを利用した位置検出では、ある程度以上の速度で走行する列車においては十分な精度が得られないことがあり、また、例えば街路樹やビル群などの遮蔽物の影響で、一時的に精度が低下することがある。このような精度の低下は、列車が単独で走行している場合はあまり問題にならないが、駅や転轍機の手前などでは、他の走行列車との関係から問題になることがある。
【0007】
例えば、図5に模式的に示すように、線路を一定区間(閉塞区間)に区切り、1つの閉塞区間には同時に2つ以上の列車が入らない(入れない)ようにすることで、安全を確保している。線路の分岐点には転轍機Tが設置され、その手前には進行方向が異なる列車が重複する重複区間Dが存在する。そして、閉塞区間に先行列車aが存在する間は、後続の別の列車bの重複区間Dへの進入を禁止する(閉塞)。図示の例では先行列車aの進路は、分岐点を過ぎても直進するものであり、一方、後続の列車bの進路は、図示はしないが、分岐点から左側(図の上向き)に転向するものである。
【0008】
そのように重複区間Dよりも先で進路が分かれ、先行列車aが分岐点を通過して閉塞区間から進出するまで、後続の列車bは重複区間D(同じ閉塞区間)に進入することができない。運転間隔の短縮を図るためには、先行列車aが重複区間Dを抜け、分岐点を通過すれば速やかに信号機Sを作動させ、後続の列車bの進入を許可することが求められる。そのためには、先行列車aの位置の検出精度をできるだけ高くして、その最後尾が分岐点(或いは転轍機T)を通過したことを、高い精度で検出する必要がある。
【0009】
本発明は以上の課題を考慮したものであり、その目的は、多額の費用がかからないように配慮しながら、必要な場合に列車の走行位置を高い精度で検知できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係る1つの態様は、列車の走行する線路に沿って所定の区間に埋設された複数の磁気マーカと、列車に搭載され、前記磁気マーカを検知する磁気センサと、列車の走行位置を検出する走行位置検出部と、前記走行位置検出部によって検出された列車の位置が前記所定の区間内であるとき、前記磁気センサからの信号に基づいて、列車の走行位置を検出するセンサ位置検出部と、前記所定の区間内では、前記センサ位置検出部によって検出された位置を、列車の現在の走行位置として決定する走行位置決定部と、を備えるものである。
(2)上記(1)の態様において、複数の前記磁気マーカは、列車の長さに合わせて、それぞれ所定の位置に埋設し、前記磁気センサから当該列車の長さにひもづけされた前記磁気マーカの信号を、前記センサ位置検出部が検知した場合に、列車の走行位置を検出するようにしてもよい。
(3)上記(1)または(2)の態様において、列車には、前記走行位置検出部および前記センサ位置検出部と、これらの位置検出部によってそれぞれ検出された位置の情報を地上装置に送信する送信装置と、を有する車上装置が搭載され、前記地上装置は、前記送信装置から送信される位置情報を受信する受信装置と、受信した位置情報に基づいて、列車の現在の走行位置を決定する前記走行位置決定部と、を有していてもよい。
(4)上記(1)~(3)のいずれかの態様において、前記所定の区間は、線路の分岐点または合流点の転換点を通過後の所定距離内に設定されていてもよい。
(5)上記(1)~(4)のいずれかの態様において、列車には、前記磁気センサの配設された位置から最後尾までの長さが互いに異なる第1種、第2種の列車が存在し、前記転換点を通過後の所定の区間には、前記第1種の列車における磁気センサの位置から最後尾までの長さ分、前記分岐点から離れた第1の磁気マーカと、前記第2種の列車における磁気センサの位置から最後尾までの長さ分、前記分岐点から離れた第2の磁気マーカと、がそれぞれ埋設されており、前記車上装置が前記第1種の列車に搭載されているとき、前記センサ位置検出部は、前記第1の磁気マーカ―を検出して前記磁気センサから出力される信号に基づいて、列車の走行位置を検出し、前記車上装置が前記第2種の列車に搭載されているとき、前記センサ位置検出部は、前記第2の磁気マーカ―を検出して前記磁気センサから出力される信号に基づいて、列車の走行位置を検出するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の列車位置検知装置によれば、多額の費用がかからないように配慮しながら、必要な場合に列車の走行位置を高い精度で検知できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る実施形態の列車位置検知装置の概略構成を示す図である。
図2】車上装置、地上装置のそれぞれの構成を示す機能ブロック図である。
図3】分岐点を通過した後の所定の区間における磁気マーカの配置について説明する図である。
図4】列車位置検知装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図5】重複区間に先行列車が存在する間、後続の別の列車の進入を禁止することを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本明細書の実施形態においては、全体を通じて、同一の部材には同一の符号を付している。
【0014】
図1はこの発明の列車位置検知装置の概略構成を模式的に示しており、本実施形態では列車位置検知装置は、列車1に搭載される車上装置2と、地上装置3とを備えている。線路は、走行制御の単位となる複数の区間に分けられており、地上装置3は、複数区間に対応して1台、設けられ、列車1の在線情報や進路情報(図外の連動装置から得られる)を基に、列車1に対する走行制御情報を生成する。なお、各区間毎に1台の地上装置3が設けられていてもよい。
【0015】
図1に表れているように、本実施形態の列車1には、車上装置2よって制御されるGPS受信機4と、磁気センサ5とが搭載されている。車上装置2は、それらの信号を取得して、以下に述べるように列車1の走行位置を検出するための処理を行う。GPS受信機4は、人口衛星との通信によって位置を検出する周知のものであり、その説明は省略する。また、磁気センサ5は、線路に沿って埋設された複数の磁気マーカ6(6A,6B,…)との相互作用によって位置を検出する。
【0016】
磁気センサ5は一例として公知のマグネトインピーダンス(MI:Magneto Impedance)センサであり、本実施形態では、列車1の前後方向(長手方向)の中央部において、その床などに路面から100~250mm程度離して配設されている。これは、外部磁界に応じてインピーダンスが変化する感磁体を含むマグネトインピーダンス素子を利用して、磁気を検出するものである。なお、それ以外に例えばフラックスゲートセンサ、TMR型センサ等を用いることもできる。
【0017】
一方、磁気マーカ6は一例として柱状の磁石であり、酸化鉄の磁粉を基材である高分子材料中に分散させた等方性フェライトラバーマグネットが用いられる。この磁気マーカ6は、例えば路面に穿設された穴に収容された状態で埋設される。なお、磁気マーカ6の外周面に、樹脂モールドによる保護層を設けてもよいし、ガラス繊維により強化した樹脂モールドを形成してもよい。
【0018】
また、本実施形態の磁気マーカ6には、その一方の端面に積層した態様でRFIDタグ(Radio Frequency Identification;無線タグであり、図示は省略する)を備えている。このようにRFIDタグを備える本例の磁気マーカ6は、前記磁気センサ5によって磁気的に検出可能であるのに加えて、磁気的な方法に依らずに各種の情報を車上装置2に提供可能である。本実施形態では、磁気マーカ6のID情報として、その位置の情報や予めヒモづけられた列車1の種類等の情報を提供する。
【0019】
すなわち、図1に表れているように磁気マーカ6として、例えば転轍機T1の交流地点には、転轍機T1の通過を検出するために閉塞区間BL1に磁気マーカ6A,6Bが埋設され、また、転轍機T2の手前には、磁気マーカ6A,6Bを通過した列車1が信号機S3(閉塞区間BL3)に到達する前に転轍機T2の転換作動を完了できるような所定距離だけ離れて、閉塞区間BL2に磁気マーカ6Xが埋設されている。さらに、転轍機T2の通過後の所定区間P内には、詳しくは後述するが、磁気マーカ6C,6Dが埋設され、他方向にも同様な所定区間内に磁気マーカ6が埋設されている。つまり、磁気マーカ6は、列車1の位置を高い精度で検出する必要のある、予め設定された区間に埋設されている。
【0020】
車上装置2は、いわゆるコンピュータ装置からなり、所定のプログラムを実行して各種の処理を行う処理演算ユニット(CPU)、この処理演算ユニットにおいて使用されるプログラムやデータを記憶するROMやRAM等のメモリを備えている。一例として処理演算ユニットは、基本的にはGPS受信機4からの信号に基づいて、列車1の位置を検出し、高い精度の要求される予め設定された区間では、さらに磁気センサ5からの信号に基づいて、列車1の位置を検出する。
【0021】
そのために車上装置2は、図2の機能ブロック図に示すように、GPS受信機4からの信号に基づいて、列車1の走行位置を検出するGPS位置検出部21と、このGPS位置検出部21によって検出された位置が予め設定された区間内にあるか否か判定する区間判定部22と、この区間判定部22によって区間内にあると判定されたとき、磁気センサ5からの信号に基づいて、列車1の走行位置を検出するセンサ位置検出部23と、を備えている。
【0022】
また、車上装置2は、前記GPS位置検出部21と、センサ位置検出部23とによってそれぞれ検出された位置の情報を地上装置3に送信するための通信ユニット24(送信装置)も備えている。なお、列車1には公知の速度発電機11も備わっており、車上装置2は、速度発電機11からの速度信号を積算して列車1の位置を算出する走行位置算出部25も備えている。
【0023】
一方、地上装置3は、前記のように車上装置2から送信されてくる位置情報を受信するための通信ユニット31(受信装置)と、この受信した位置情報に基づいて、列車1の現在の走行位置を決定する走行位置決定部32と、を備えている。走行位置決定部32は、GPS位置検出部21によって検出された位置(GPS検出位置)と、センサ位置検出部23によって検出された位置(センサ検出位置)とが異なる場合に、磁気センサ5からの信号を優先して位置を決定する。
【0024】
また、走行位置決定部32は、現在までの所定時間内における列車1の位置の履歴や近隣の区間に存在する他の列車1の位置の情報も加味して、走行位置の補正を行う。そのために地上装置3には、複数の列車1の車上装置2から送信されてくる位置情報をそれぞれ時系列に記憶・更新する位置情報記憶部33も備えている。走行位置決定部32は、例えば、単一の線路上で先行列車1を後続の別の列車1が追い越すことはない、という観点を加味してそれぞれの列車1の位置を決定する。
【0025】
そのようにGPS位置検出部21による検出結果を基本とし、必要に応じてセンサ位置検出部23による検出結果を優先するのは、多額の費用がかからないように配慮しながら、必要な場合に列車1の走行位置を高い精度で検知するためである。一般的にGPSを利用した位置検出では、ある程度以上の速度で走行する場合に十分な精度が得られないことが知られており、また、例えば街路樹やビル群などの遮蔽物の影響で一時的に精度が低下することもある。
【0026】
このような精度の低下は、列車が単一の線路を単独で走行している場合は問題にならないが、駅の構内や分岐点の付近などでは他の列車との関係から問題になることがある。すなわち、例えば図1に表れているように線路の分岐点および合流点には転轍機Tが設置され、例えば閉塞区間BL3において、線路の分岐点である転轍機T2の手前、即ち分岐点の通過前には、進行方向が異なる列車1が重複する重複区間Dがある。そして、この重複区間Dに先行の列車1が存在する間は、後続の別の列車1の進入を禁止しなくてはならない(閉塞)。
【0027】
一方、分岐点の通過後は進路が分かれており、図3(a)に示すように、先行する列車1の進路は、分岐点を過ぎても直進する一方、同図に仮想線で示すように、後続の列車1の進路は分岐点から左側(図の上向き)に転向するものとする。このような場合、先行する列車1が重複区間Dを抜けた後、速やかに転轍機T2を転換して後続の列車1の進入を許可することにより、列車1の運転間隔の短縮が図られるが、そのためには、先行する列車1の最後尾が分岐点(転轍機T2)を通過したことを高い精度で検出する必要がある。
【0028】
また、これは2つの線路が合流する合流点(転轍機T1)についても同じであり、合流する別線路の列車1に対して速やかに進入を許可するために、先行する列車1の最後尾が合流点(転轍機T1)を通過したことを高い精度で検出する必要がある。
【0029】
そこで、本実施形態では、上述した分岐点について図1を参照して、線路の分岐点(転轍機T2)通過後の所定の区間P内に、複数の磁気マーカ6C,6Dを埋設しており、これにより、長さの異なる種々の列車1について、その最後尾が分岐点を通過したことを直接的に検出することができる。すなわち、一般的に列車1の長さは、その編成によって数種類のものがあるが、ここでは説明を簡略化するために、図3(b)に示すように、相対的に長い第1種の列車1Aと第2種の列車1Bについて、対比して説明する。
【0030】
まず、上述したように列車1A,1Bには、その前後方向の中央部に磁気センサ5が配設されており、走行中に磁気マーカ6の上を通過すると、磁気センサ5からの信号が車上装置2に入力される。このため、仮に磁気マーカ6を分岐点の通過直後に埋設すると、この磁気マーカ6を検出した後に、列車1A,1Bのそれぞれの長さの半分だけ進んだ後に、その最後尾が分岐点を通過することになる。
【0031】
そうして磁気マーカ6の検出後に最後尾が分岐点を通過するまでの時間は、列車1A,1Bの長さによって異なり、また、その走行速度によっても変化する。よって、磁気マーカ6の検出に基づいて最後尾の位置を算出(即ち間接的に検出)することはできるが、ここには走行速度の算出誤差が積算されてしまう。なお、列車1の最後尾に磁気センサ5を設けることも考えられるが、列車1が逆向きに走行することも考慮すれば、先頭と最後尾の両方に車上装置2を設けなくてはならなくなる。
【0032】
そこで、本実施形態では、磁気マーカ6を分岐点の直後に埋設するのではなく、列車1A,1Bの長さの半分だけ分岐点から離して埋設しており、それ故に、長さの異なる数種類の列車1(図3の例では1A,1B)のそれぞれに対応して、複数の磁気マーカ6C,6Dが埋設されている。具体的には、相対的に短い第2種の列車1Bに対応して、比較的分岐点に近い位置に磁気マーカ6Cが埋設され、相対的に長い方の第1種の列車1Aに対応して、比較的分岐点から離れた位置に磁気マーカ6Dが埋設されている。
【0033】
つまり、分岐点通過後の所定の区間Pには、第1種の列車1Aにおける磁気センサ5の位置から最後尾までの長さ分、分岐点から離れた第1の磁気マーカ6Dと、第2種の列車1Bにおける磁気センサ5の位置から最後尾までの長さ分、分岐点から離れた第2の磁気マーカ6Cと、がそれぞれ埋設されている。第1、第2の磁気マーカ6C,6DはそれぞれのRFIDタグによって、自身が対応する列車1の種類(1A,1B)の情報を車上装置2に提供する。
【0034】
これに応じて車上装置2のセンサ位置検出部23は、車上装置2が第1種の列車1Aに搭載されている場合、磁気マーカ6Dを検出して磁気センサ5から出力される信号に基づいて、列車1Aの最後尾が分岐点を通過したことを検出する。また、センサ位置検出部23は、車上装置2が第2種の列車1Bに搭載されている場合、磁気マーカ6Cを検出して磁気センサ5から出力される信号に基づいて、列車1Bの最後尾が分岐点を通過したことを検出する。これは、線路が合流する場合の合流点(転轍機T1)通過後の所定の区間に埋設する複数の磁気マーカ6A,6Bに関しても同様である。
【0035】
次に、本実施形態の列車位置検知装置によって列車1の走行位置を検知する処理について、図4のフローチャートを参照して具体的に説明する。なお、図の左側には車上装置2で行われる処理を、また、右側には地上装置3で行われる処理を、それぞれ示す。これらの処理は、予め設定した時間(例えば100ミリ秒)毎に繰り返し実行される。
【0036】
まず、車上装置2では、列車1の走行とともにルーチンが開始され、ステップS1においてGPS受信機4からの信号が入力されて、列車1の位置の情報(GPS位置情報)が取得される。続いて、そうして取得された列車1の位置が予め設定した区間内(例えば図1の閉塞区間BL3)かどうか判定され(ステップS2)、区間内でなければ(NO)後述のステップS5に進む一方、区間内であれば(YES)ステップS3に進む。
【0037】
ステップS3では、磁気センサ5からの信号が入力され、RFIDタグの情報から列車1の種類(例えば図3を参照して上述した1A、1B)が一致するかどうか判定し、一致していなければ(NO)、前記ステップS1において取得したGPS位置情報を地上装置3に送信する(ステップS5)。
【0038】
一方、前記ステップS3において、列車1の種類が一致していると判定すれば(YES)、列車1の位置について、磁気マーカ6による高精度の情報のセンサ位置情報を取得する(ステップS4)。前記GPS位置情報と、前記ステップS4で取得したセンサ位置情報とを両方ともに地上装置3に送信して(ステップS6)、処理を終了する。つまり、列車1が設定区間外にある場合、磁気マーカ6を検出しない場合、および、検出した磁気マーカ6が列車1にひもづけされたものでない場合は、GPS位置情報のみを地上装置3へ送信する。
【0039】
一方、地上装置3では、前記のように車上装置2から送信されてくる列車1の位置情報を受信すると、割り込みで処理を開始し、受信した情報にセンサ位置情報が含まれているか否か判定する(ステップS7)。そして、センサ位置情報が含まれていなければ(NO)、GPS位置情報に基づいて列車1の走行位置を決定する(ステップS8)。なお、このときに位置情報記憶部33から読みだした列車1の前回の位置情報に基づき、必要に応じてGPS位置情報を補正することが好ましい。
【0040】
また、前記ステップS7において、受信した情報にセンサ位置情報が含まれていると判定すれば(YES)、このセンサ位置情報によって走行位置を決定する。すなわち、センサ位置情報は精度が高いので、これに基づいて列車1の走行位置を決定すればよいが(ステップS9)、このときセンサ位置情報とともに受信したGPS位置情報と、位置情報記憶部33から読みだした列車1の前回の位置情報も加味することが好ましい。こうして決定した走行位置を位置情報記憶部33に記憶(列車1の位置を更新)して(ステップS10)、処理を終了する。
【0041】
以上、説明したように本実施形態の列車位置検知装置によれば、列車1の走行中に基本的にはGPS受信機4からの信号に基づいて列車1の位置を検出し、特に高い精度の要求される所定の区間Pにおいては、さらに磁気マーカ6を検出した磁気センサ5からの信号に基づいて、列車1の位置を補正するようにしている。このことで、線路の全体に多数の磁気マーカ6を埋設しなくて済み、多額の費用を必要としない。
【0042】
一方で、例えば信号機や分岐点または合流点の付近など、高い位置検出精度が要求される区間(予め設定した区間)においては、前記のように磁気センサ5からの信号に基づいて、列車1の位置を決定することで、列車1の走行位置を高い精度で検知することができる。このように一部の区間だけであれば、それほど多くの磁気マーカ6は必要ないし、処理の演算負荷もあまり大きくはならない。
【0043】
特に、前記の設定区間の中でも分岐点通過後の所定の区間Pには、長さの異なる複数種類の列車1(1A,1B)に対応付けて、その長さの半分だけ分岐点から離して複数の磁気マーカ6(6C,6D)を埋設しているので、どの種類の列車1であっても、その最後尾が分岐点を通過したことを直接的に検出することができ、これに応じて速やかに重複区間(閉塞区間)の閉塞を解くことができる。これにより、先行列車1と後続の列車1との間隔を詰めた効率の良い運行を実現できる。
【0044】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0045】
例えば、上述の実施形態では、列車1に搭載された車上装置2にGPS位置検出部21とセンサ位置検出部23とを備える一方、地上装置3には、前記のGPS位置検出部21やセンサ位置検出部23によって検出した位置情報に基づいて、列車1の現在の走行位置を決定する走行位置決定部32を備えているが、これには限定されず、走行位置決定部32も車上装置2に備えてもよいし、反対にGPS位置検出部21やセンサ位置検出部23も地上装置3に備えてもよい。
【0046】
また、上述の実施形態では、地上装置3に位置情報記憶部33も備えており、これに時系列に記憶・更新されている複数の列車1の位置情報も加味して、列車1の走行位置を決定するようにしているが、これにも限定されず、地上装置3には位置情報記憶部33を設けなくてもよい。
【0047】
さらに、上述の実施形態では、線路の分岐点通過後の所定距離(種々の列車1の長さに関連する距離)内を所定の区間Pとして、この区間内に複数の磁気マーカ6を埋設するとともに、列車1には前後方向の中央部に磁気センサ5を配設しているが、これにも限定されず、分岐点通過直後に単一の磁気マーカ6を埋設し、列車1の先頭および最後尾にそれぞれ設けた磁気センサ5によって検出するようにしてもよい。
【0048】
また、上述の実施形態では、GPS受信機4からの信号に基づいて、列車1の位置が予め設定した区間内かどうか判定しているが、速度発電機11からの速度信号を積算して列車1の位置を算出し、列車1の位置が予め設定した区間内かどうか判定してもよい。その場合、GPS位置情報に替わり走行位置算出部25の列車の位置情報により車上装置2および地上装置3で処理が行われる。
【符号の説明】
【0049】
1;列車、2;車上装置、3;地上装置、4;GPS受信機、5;磁気センサ、
6;磁気マーカ、
21;GPS位置検出部、23;センサ位置検出部、24;通信ユニット(送信装置)
31;通信ユニット(受信装置)、32;走行位置決定部、33;位置情報記憶部。
図1
図2
図3
図4
図5