(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】昇華型インクジェット捺染転写紙及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B41M 5/52 20060101AFI20240410BHJP
B41M 5/382 20060101ALI20240410BHJP
D21H 19/22 20060101ALI20240410BHJP
D21H 19/34 20060101ALI20240410BHJP
D21H 21/24 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
B41M5/52 100
B41M5/382 400
D21H19/22
D21H19/34
D21H21/24
(21)【出願番号】P 2020121607
(22)【出願日】2020-07-15
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 一輝
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-181805(JP,A)
【文献】特開2009-131958(JP,A)
【文献】特開2009-291968(JP,A)
【文献】特開平10-016382(JP,A)
【文献】特開2018-030342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/382,5/50-5/52
D21H 19/22
D21H 19/34
D21H 21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙の一方面にインク受容層が形成され、
前記インク受容層は、粘着剤と界面活性剤と水溶性高分子とを含有し、
前記粘着剤が、ポリオレフィン系樹脂であり、
前記界面活性剤のHLB値が10~20であり、
前記水溶性高分子が、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシル化セルロース及びポリビニルアルコールの1種以上であることを特徴とする、昇華型インクジェット捺染転写紙。
【請求項2】
前記界面活性剤の含有量が、前記粘着剤100質量部に対して、5~15質量部である、請求項1に記載の昇華型インクジェット捺染転写紙。
【請求項3】
前記界面活性剤が非イオン界面活性剤である、請求項1または2に記載の昇華型インクジェット捺染転写紙。
【請求項4】
前記水溶性高分子の含有量が、前記粘着剤100質量部に対して、20~50質量部である、請求項1~3のいずれかに記載の昇華型インクジェット捺染転写紙。
【請求項5】
前記基紙の表面・サイズ度テスターで測定した、初期吸水特性の超音波が100%に達するまでの時間が、0.01~3.00秒である、請求項1~4のいずれかに記載の昇華型インクジェット捺染転写紙。
【請求項6】
粘着剤と界面活性剤とを混合した後、混合物に水溶性高分子をさらに混合してインク受容層塗液を調製し、調製したインク受容層塗液を基紙の少なくとも一方面に塗工する、昇華型インクジェット捺染転写紙の製造方法であって、
前記粘着剤が、ポリオレフィン系樹脂であり、
前記界面活性剤のHLB値が10~20であり、
前記水溶性高分子は、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシル化セルロース、又はポリビニルアルコールであることを特徴とする、昇華型インクジェット捺染転写紙の製造方法。
【請求項7】
前記インク受容層塗液が、粘着剤を含む微粒子を含有しており、前記インク受容層塗液に含まれる微粒子のメジアン径D50が0.5~20μmである、請求項
6に記載の昇華型インクジェット捺染転写紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、昇華型インクジェット捺染転写紙及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
転写捺染法には、溶融型転写捺染法、ラバープリント型転写捺染法、昇華型捺染転写法等が存在するが、必要量の小ロット化に対応できることや鮮明な印刷が高速で可能であることから、インクジェット記録方式での昇華型転写捺染法が広く用いられている。昇華型転写捺染法には、他の転写法では困難な解像度が高く鮮明な図柄のプリントが可能であるという利点があるため、化学繊維を主体とする衣類や布類等の伸縮性を有する被転写体へと使用用途が展開されている。伸縮性を有し、表面に凹凸がある被転写体に対して、より転写効率を向上させるため、捺染転写紙と被転写体との密着性を改善する必要があった。
【0003】
特許文献1には、無機粒子とバインダーを含む第一塗工層上に、ポリオレフィン系エマルションとヒドロキシル化セルロースを特定比率で含有する第二塗工層を設けた、昇華型インクジェット捺染転写紙が記載されている。特許文献2には、視覚的に白色度が高く、色再現性を良好とするために、支持体上に特定の高分子化合物を含有するインク受理層を設けたインクジェット記録シートが記載されている。特許文献3には、原紙表面に水溶性ポリエステル系バインダー及び天然系糊剤を含有する糊層を設けた捺染用紙が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-181805号公報
【文献】特開平11-058932号公報
【文献】特開2016-104917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載される昇華型インクジェット捺染転写紙は、受容層塗料を含有する第一塗工層上に、粘着性の第二塗工層を積層した構成のため、被転写体との粘着力を向上させるために第二塗工層の塗工量を多くすると、第一塗工層の機能が低下し、インク受容性及び転写性が低下する。また、第一塗工層によるインク受容性及び転写性を向上させるには、第二塗工層の塗工量を少なくする必要があるが、この場合、被転写体への密着性が低下する。すなわち、特許文献1に記載の昇華型インクジェット捺染転写紙の構成では、被転写体への密着性、インク受容性、転写性を全て向上させることは困難であった。また、特許文献1に記載の昇華型インクジェット捺染転写紙は、第一塗工層と第二塗工層とを別の工程で塗工する必要があるため、製造工程が煩雑となり、改良の余地があった。
【0006】
特許文献2に記載されるインクジェット記録シートは、用紙として求められる物性が捺染転写紙とは大きく異なり、本願発明の昇華型インクジェット捺染転写紙に転用することは難しい。
【0007】
特許文献3に記載される捺染用紙においても、スチーミングや水洗い工程を有する転写方法に用いられる捺染用紙であり、天然系糊剤は被転写体との粘着力が弱く本願発明の昇華型インクジェット捺染転写紙に転用することは難しい。
【0008】
本発明は、被転写体への密着性に優れ、インク受容性及び転写適性が良好で塗工欠陥の少ない昇華型インクジェット捺染転写紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る昇華型インクジェット捺染転写紙は、基紙の一方面にインク受容層が形成されたものであり、インク受容層は、粘着剤と界面活性剤と水溶性高分子とを含有し、粘着剤が、ポリオレフィン系樹脂であり、界面活性剤のHLB値が10~20であり、水溶性高分子が、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシル化セルロース及びポリビニルアルコールの1種以上であることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る昇華型インクジェット捺染転写紙の製造方法は、粘着剤と界面活性剤とを混合した後、混合物に水溶性高分子をさらに混合してインク受容層塗液を調製し、調製したインク受容層塗液を基紙の一方面に塗工するものであり、粘着剤が、ポリオレフィン系樹脂であり、界面活性剤のHLB値が10~20であり、水溶性高分子は、カルボキシメチルセルロースであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被転写体への密着性に優れ、インク受容性及び転写適性が良好で塗工欠陥の少ない昇華型インクジェット捺染転写紙を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る昇華型インクジェット捺染転写紙は、基紙の一方面にインク受容層が形成されたものである。以下、基紙及びインク受容層の詳細を説明する。
【0013】
(基紙:原料パルプ)
基紙を構成する原料パルプとしては、例えば、バージンパルプ、古紙パルプ、これらのパルプを組み合わせたもの等を使用することができる。
【0014】
バージンパルプとしては、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ;ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(TGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ(MP)を、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
【0015】
古紙パルプとしては、例えば、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ(DIP)、離解・脱墨・漂白古紙パルプ等を、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
【0016】
(基紙:添加剤)
基紙には、必要により添加剤を内添することができる。
【0017】
添加剤としては、例えば、填料、サイズ剤、紙質向上剤、凝結剤、消泡剤、蛍光増白剤、硫酸バンド、歩留り向上剤、濾水性向上剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、着色染料、着色顔料、耐水化剤等を、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
【0018】
(基紙:下塗り層)
基紙には、必要により水溶性高分子を主成分とする下塗り層を設けてもよい。
【0019】
水溶性高分子としては、例えば、天然高分子系を使用することができる。天然高分子系としては、例えば、コーン、小麦、タピオカ、ポテト等の生澱粉を各種製法で変性させた、酵素分解澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、カチオン化澱粉、尿素リン酸化澱粉、変性酸化澱粉や、カルボキシメチルセルロース(以下、「CMC」ともいう)、カルボキシエチルセルロース(CEC)等を、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。また、下塗り層には、例えば、サイズ剤、耐水化剤、着色染料、着色顔料、消泡剤、蛍光増白剤等の添加剤を含有させることができる。
【0020】
(基紙:ESTサイズ度)
基紙としては、表面・サイズ度テスター(EST12、emtec製)で測定した、基紙の初期吸水特性の超音波透過強度が100%に達するまでの時間(以下、ESTサイズ度ともいう)は、0.01~3.00秒であるものを使用する。基紙としては、ESTサイズ度が0.50~2.00秒であるものがより好ましく、0.80~1.80秒であることがより好ましい。表面・サイズ度テスターで測定したESTサイズ度は、インク受容層塗料の塗工直後における基紙へのインク受容層塗料の浸透性を表すパラメータである。ESTサイズ度が0.01秒未満の場合、インク受容層塗料が基紙へと過度に浸透し、インク受容層に微細な欠陥が生じ、画像再現性を若干低下させる可能性がある。一方、ESTサイズ度が3.00秒を越える場合、インク受容層塗料が基紙へと浸透しにくく、インク受容層と基紙との密着性の悪化を招く結果、画像再現性を若干低下させる可能性がある。したがって、画像再現性を高めるために、ESTサイズ度が0.01~3.00秒の範囲内である基紙を用いることが好ましい。ESTサイズ度は、例えば、基紙のサイズ剤等の添加剤の種類、添加量や下塗り層の塗工量や添加剤の種類、添加量を組み合わせて調整することができる。
【0021】
(アンダー層)
昇華型インクジェット捺染転写紙において、昇華型捺染インク受容層と基紙との間に、カルボキシメチルセルロース等を含有するアンダー層が形成されていても良い。アンダー層が形成されていることにより、混合塗料の塗工直後における湿潤塗料の馴染みがよくなるため、より少ない塗工量でピンホールのない連続被膜が得られ易くなるという効果が奏される。
【0022】
なお、アンダー層を形成するためのアンダー層塗料には、CMCのほかに、例えば、澱粉、酸化澱粉、カチオン化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉等の澱粉誘導体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースサルフェート等のセルロース誘導体、各種ケン化度のポリビニルアルコール(以下、「PVA」ともいう)やそのシラノール変性物、カルボキシル化物、カチオン化物等の各種PVA誘導体、カゼイン、ゼラチン、変性ゼラチン、大豆蛋白等の水溶性天然高分子化合物、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、スチレン-無水マレイン酸共重合体ナトリウム塩、ポリスチレンスルフォン酸ナトリウム等の水溶性合成高分子化合物といった成分が含有されていてもよく、アンダー層を設けることによる効果が阻害されない限り、特に限定はない。
【0023】
また、アンダー層塗料としてインク受容層塗料と同じ塗料を用いてもよい。この場合、インク受容層塗料を1回塗工するよりも少ない塗工量で、塗工欠陥を充分に阻止することができ、塗工適性に優れる。
【0024】
アンダー層を形成する場合、アンダー層塗料の塗工量(乾燥後)は、3.0g/m2以下とする。アンダー層塗料の塗工量(乾燥後)が3.0g/m2を越えると、透気度が高くなり過ぎ、捺染転写時にブリスターが発生し、ブリスター発生箇所では転写した画像の再現性が低下する。
【0025】
(インク受容層)
インク受容層は、粘着剤と、水溶性高分子と、界面活性剤とを含有するインク受容層塗料からなる。
【0026】
(粘着剤)
粘着剤としては、ポリオレフィン系樹脂を好適に使用することができる。ポリオレフィン系樹脂は、捺染転写時の熱により溶融して被転写体への粘着性及び可塑性を発現する。インク受容層がポリオレフィン系樹脂を含有することにより、捺染転写時における昇華型インクジェット捺染転写紙と被転写体との密着性が向上し、被転写物への転写画像のズレを防止できる。本明細書において、ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン類を重合させたポリマーであり、1種類のオレフィンのホモポリマーだけでなく、炭素鎖長の異なる2種類以上のオレフィンを共重合させた共重合体や、オレフィンとアクリル酸やメタクリル酸等のアクリル系モノマーとを共重合させた共重合体を含む。ポリオレフィン系樹脂の平均重量平均分子量としては、密着性の観点から、30,000~40,000程度のものを使用することが好ましい。また、粘着剤は、水系のインク受容層塗料として塗工するため、ポリオレフィン系樹脂を水に分散させたものを使用することが好ましい。
【0027】
(水溶性高分子)
水溶性高分子は、昇華型捺染インクを捕捉、吸収する機能と、バインダーとしての機能を有する。インク受容層は、水溶性高分子として、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシル化セルロース及びポリビニルアルコール(PVA)の1種以上を含有する。ヒドロキシル化セルロースとしては、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。その他の水溶性高分子として、例えば、酸化澱粉、カチオン化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉等の澱粉誘導体、セルロースサルフェート等のセルロース誘導体やそのシラノール変性物、カルボキシル化物、カゼイン、ゼラチン、変性ゼラチン、大豆蛋白等の水溶性天然高分子化合物、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、スチレン-無水マレイン酸共重合体ナトリウム塩、ポリスチレンスルフォン酸ナトリウム等の水溶性合成高分子化合物の中から選択される1種以上を併用することができる。インクジェット捺染転写紙に要求されるインク受容性の観点から、カルボキシメチルセルロースを使用することが好ましい。
【0028】
インク受容層における水溶性高分子の含有量は、粘着剤100質量部に対して20~50質量部であることが好ましい。水溶性高分子の含有量が、粘着剤100質量部に対して20質量部未満の場合、インク受容性が不十分となる可能性があり、50質量部を超える場合、粘着性が不十分となる可能性がある。すなわち、水溶性高分子の含有量が、粘着剤100質量部に対して、20~50質量部であることにより、インクジェット捺染転写紙に要求されるインク受容性と、転写ズレ防止のための粘着性とを両立することができる。インク受容層における水溶性高分子の含有量は、粘着剤100質量部に対して25~45質量部であることがより好ましい。
【0029】
(界面活性剤)
インク受容層塗料を調整する際、粘着剤と水溶性高分子とを混合すると、粘着剤と水溶性高分子が凝集する。インク受容層塗料に凝集物が含まれると、インク受容層塗料の塗工装置のスクリーン(フィルタ)の目詰まりが発生し、昇華型インクジェット捺染転写紙の安定的な生産が困難となる。また、インク受容層塗料中に凝集物が含まれると、インク受容層塗料の塗工ムラが生じたり、乾燥後のインク受容層にストリークやスクラッチと呼ばれる欠陥が生じたりする可能性がある。粘着剤の配合量を少なくすると、凝集が軽減されるが、昇華型インクジェット捺染転写紙の粘着性も低下する。
【0030】
そこで、本実施形態に係るインク受容層(インク受容層塗料)には、界面活性剤を配合する。界面活性剤としては、HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)値が10~20である化合物を好適に使用することができる。インク受容層塗料にHLB値が10~20である界面活性剤を配合することにより、水溶性高分子と粘着剤との凝集を抑制することができる。界面活性剤のHLB値は、13~20であることが好ましく、16~20であることがより好ましい。HLB値がより高い界面活性剤を用いることにより、ポリオレフィン系樹脂からなる粘着剤の水への分散性を向上させることができる。
【0031】
界面活性剤の種類は、特に限定されず、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも利用できるが、中でも非イオン(ノニオン)界面活性剤を用いると、水溶性高分子とポリオレフィン系樹脂からなる粘着剤との凝集を抑制効果に優れるので好ましい。非イオン界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
インク受容層における界面活性剤の含有量は、粘着剤100質量部に対して、5~15質量部であることが好ましい。界面活性剤の含有量が、粘着剤100質量部に対して5質量部未満の場合、水溶性高分子と粘着剤との凝集抑制効果が不十分となる可能性があり、15質量部を超える場合、捺染転写時における粘着力が低下したり、インクジェット方式による印刷時のインキの滲みが発生したりする可能性がある。
【0033】
(その他の添加剤)
インク受容層には、無機微粒子、インク定着剤、サイズ剤、着色染料、着色顔料、消泡剤、蛍光増白剤、粘度調整剤、潤滑剤等の添加剤を含有させることができる。
【0034】
無機微粒子として、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、シリカ粒子、クレー、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、アルミナ、コロイダルアルミナ、アルミナ水和物(擬ベーマイト等)、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト等の1種以上をインク受容層に含有させることができる。
【0035】
また、インク定着剤としては、高粘度の塗料中でも安定性が高い観点から、ポリアミンエピクロロヒドリン系化合物を好適に使用することができる。
【0036】
(製造方法)
本実施形態に係る昇華型インクジェット捺染転写紙は、インク受容層塗料を調製し、調製したインク受容層塗料を基紙の一方面に塗工し、塗膜を乾燥させることにより製造することができる。
【0037】
インク受容層塗料は、ミキシングタンク内の粘着剤の分散液中に界面活性剤を投入し、攪拌して混合した後、混合物に水溶性高分子を更に投入して攪拌することにより調製することができる。粘着剤と水溶性高分子とを混合する前に、粘着剤及び界面活性剤を混合することにより、粘着剤の表面が界面活性剤により覆われ、水溶性高分子を投入しても水溶性高分子の極性官能基と粘着剤との相互反応が抑制されることにより、粘着剤及び水溶性高分子の凝集が抑制されるものと考えられる。これに対して、粘着剤の分散液に水溶性高分子を投入した場合、または、水溶性高分子に粘着剤の分散液を投入した場合、粘着剤と水溶性高分子との凝集が進行してしまい、その後に界面活性剤を混合してもインク受容層塗料を凝集のない状態とすることができない。
【0038】
インク受容層塗料に含まれる微粒子のメジアン径D50は、0.5~20μmであることが好ましい。インク受容層塗料に含まれる微粒子のメジアン径D50は、粘着剤及び水溶性高分子の凝集の程度を表す指標であり、インク受容層塗料に含まれる微粒子のメジアン径D50が20μm以下であれば、上述した塗工装置のスクリーンの目詰まりや、塗工不良、インク受容層の欠陥等を抑制することができる。インク受容層塗料に含まれる微粒子のメジアン径D50の下限値は特に限定されないが、インク受容層塗料には粘着剤であるポリオレフィン系樹脂の微粒子が含まれるため、下限値は、粘着剤微粒子の粒径を反映した値となる。ここで示すメジアン径D50は、レーザー回折・散乱式の粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製、製品名:HRA MT3300)を用いて測定されるものである。
【0039】
インク受容層の塗工方法は特に限定されないが、ロッドコータやブレードコータ、エアナイフコータ等の塗工機を用いて塗工することができる。
【0040】
インク受容層の塗工量としては、インクの裏抜けの抑制及びインク乾燥性を両立させる観点から、片面あたり2.0~12.0g/m2が好ましく、3.0~10.0g/m2がより好ましく、4.0~8.0g/m2がさらに好ましい。
【0041】
(昇華型インクジェット捺染転写紙)
本実施形態に係る昇華型インクジェット捺染転写紙とポリエステル生地とを重ね合わせて200℃で30秒間熱プレスした後の昇華型インクジェット捺染転写紙及びポリエステル生地の接着強度は、0.15~2N/100mmであることが好ましい。接着強度がこの範囲であれば、捺染転写時に昇華型インクジェット捺染転写紙と被転写体との密着を維持して両者の位置ズレを抑制でき、捺染転写後に昇華型インクジェット捺染転写紙を剥離した際に被転写体への粘着剤の転移を抑制できる。上記の範囲内でも、200℃で30秒間熱プレスした後の昇華型インクジェット捺染転写紙及びポリエステル生地の接着強度は、0.2~1N/100mmであることがより好ましく、0.3~0.6N/100mmであることが更に好ましい。
【0042】
(バックコート層)
本実施形態に係る昇華型インクジェット捺染転写紙の基紙の他方面、すなわち、インク受容層が形成された面とは反対側の面にバックコート層を設けても良い。バックコート層を有することで、捺染転写時の昇華ガスが紙面側へと抜ける裏抜けを防止する効果を奏する。また表裏の水分差を調整することができ、カール高さをより低減できる効果も奏する。
【0043】
バックコート層には、無機粒子として1.50~3.00μmの範囲にメジアン径D50を有し、アスペクト比が20を超えるデラミネートカオリンが含まれることが好ましい。ここで示す無機粒子の粒子径(メジアン径D50)は、レーザー回折・散乱式の粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製、製品名:MT3300)を用いて測定されるものである。
【0044】
他の無機粒子としては、昇華型インクジェット捺染転写紙の効果が奏される限り、カオリン、シリカ粒子、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、アルミナ、コロイダルアルミナ、アルミナ水和物(擬ベーマイト等)、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト等の無機顔料を含有することができる。これらは単独で又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0045】
バックコート層には、バインダーとしてタピオカ澱粉とSBラテックスが含まれることが好ましい。さらにバックコート層には、ポリエチレングリコール(以下、PEGともいう)が含まれていることが好ましい。
【0046】
(透気度)
本実施形態に係る昇華型インクジェット捺染転写紙の透気度は、100~10,000秒であることが好ましく、500~1,500秒がより好ましい。透気度は、JIS P 8117(2009)に準拠して測定した測定値である。透気度の値がこの範囲内であることによって、昇華したインキをインク受容層から被転写体へと良好に転写することができると共に、昇華したインキが基紙の裏面側へと抜けることを抑制することができる。透気度が100秒未満の場合、昇華したインキが紙の裏面側に抜け、転写用の熱ロールまたは熱板を汚損してしまうため好ましくない。一方、透気度が10,000秒を越える場合、インク受容層内の水分が基紙に浸透せず乾燥性が悪化し、インク受容層内の水分が熱転写時に抜けず、ブリスター等を引き起こす可能性があるため好ましくない。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係る昇華型インクジェット捺染転写紙は、インク受容層が粘着剤としてポリオレフィン系樹脂を含有するため、捺染転写時における粘着性に優れ、被転写体が伸縮性を有する布素材である場合でも絵柄の転写ズレを抑制することができる。また、本実施形態に係る昇華型インクジェット捺染転写紙は、基紙の一方面側に1層のインク受容層を設けた構成であるため、インク受容性を有する層の表面に粘着性を付与するための層を積層した構成と比べて、インク受容性及び転写性を向上させることができると共に、製造時の工数を低減し、生産効率を向上させることもできる。また、インク受容層が、粘着剤、水溶性高分子及び界面活性剤含有する塗料により形成されているため、粘着剤及び水溶性高分子の凝集物に起因する塗工欠陥の少ない昇華型インクジェット捺染転写紙とすることができる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明に係る昇華型インクジェット捺染転写紙を具体的に実施した実施例を説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない
【0049】
<基紙の製造例>
LBKP80質量%とNBKP20質量%とを配合したものに、填料として、重質炭酸カルシウム及びタルクを灰分が8.0%となるように添加し、添加剤として、クラフトパルプ全量100質量%に対して、カチオン化デンプンを0.8質量%、アルキルケテンダイマー(内添サイズ剤)を0.3質量%、アニオン変性ポリアクリルアマイドを0.3質量%添加して紙料を調製した。この紙料を抄紙機で抄紙し、表面・サイズ度テスター(EST12、emtec製)で測定した初期吸水特性の超音波透過強度が100%に達するまでの時間(ESTサイズ度)が1.50秒である基紙を得た。
【0050】
インク受容層塗料の成分として、以下の材料を使用した。
(粘着剤)
ポリオレフィン系樹脂(エチレン-メタクリル酸共重合体)エマルション
(水溶性高分子)
・CMC:FINFIX(三晶(株)製)
・ヒドロキシル化セルロース:SANHEC(三晶(株)製)
・PVA:クラレポバール105((株)クラレ製)
(界面活性剤)
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル
【0051】
(実施例1~10及び比較例2)
水に分散させた粘着剤100質量部に対して、表1に記載の部数の界面活性剤を加えて混合した後、表1に記載の部数の水溶性高分子を更に加えて混合してインク受容層塗料を調製した。尚、表1に示す含有量の単位(部数)は質量部であり、粘着剤及び水溶性高分子の値は固形分換算での含有割合を示す。基紙の一方面にロッドコータを用いてインク受容層塗料を塗工して乾燥させ、インク受容層を形成した。インク受容層塗料の塗工量(乾燥後)は、表1に示す通りとした。
【0052】
【0053】
(比較例3)
軽質炭酸カルシウム100質量部に対して、EVA8.0質量部、PVA4.0質量部、インク定着剤12.0質量部を混合した下塗り塗料を調製した。基紙の一方面にロッドコータを用いて下塗り塗料を塗工して乾燥させて下塗り塗工層を形成し、さらにその上層に粘着剤をロッドコータを用いて塗工して粘着層を形成した。尚、下塗り塗料の塗工量(乾燥後)は、5.0g/m2(乾燥後)、粘着剤の塗工量は7.0g/m2とした。
【0054】
(比較例1)
水に分散させた粘着剤100質量部に対して、表1に記載の部数の水溶性高分子を加えて混合し、インク受容層塗料を調製した。基紙の一方面にロッドコータを用いてインク受容層塗料を塗工して乾燥させ、インク受容層を形成した。インク受容層塗料の塗工量(乾燥後)は、表1に示す通りとした。
【0055】
(比較例4)
水に溶解させた水溶性高分子に対して、粘着剤を加えて混合し、インク受容層塗料を調製した。水溶性高分子の配合量は、粘着剤100質量部に対して表1に記載の部数とした。基紙の一方面にロッドコータを用いてインク受容層塗料を塗工して乾燥させ、インク受容層を形成した。インク受容層塗料の塗工量(乾燥後)は、表1に示す通りとした。
【0056】
表1には、塗工液に含まれる微粒子のメジアン径D50と、インク受容層塗料の調整時の凝集の有無を併せて示す。尚、メジアン径D50は、レーザー回折・散乱式の粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製、製品名:HRA MT3300)を用いて測定されるものである。また、凝集の有無は、ステンレス製スクリーンメッシュ(250本/inch)に上記塗工液を投入して、水を加えて濾過した後のステンレス製スクリーンメッシュを目視で観察し、以下の基準に沿って評価した。
◎:スクリーンメッシュに残渣が全く認められない。
○:スクリーンメッシュに残渣がほぼ認められない。
△:スクリーンメッシュに残渣が僅かに認められる。
×:スクリーンメッシュに残渣が多く認められる。又は、塗工液がスクリーンメッシュを通過しない。
【0057】
得られた昇華型インクジェット捺染転写紙を以下の方法により評価した。
【0058】
(1)滲み
インクジェットプリンタ(セイコーエプソン(株)製、SC-F9350)及び昇華型捺染インク(セイコーエプソン(株)製、SC5HDK100P(ブラック)、SC5C100P(シアン)、SC5M100p(マゼンタ)、SC5Y100P(イエロー))を用い、昇華型インクジェット捺染転写紙に720dpi×720dpiで、モデル画像を印刷した。昇華型インクジェット捺染転写紙の印刷面を目視で観察し、滲みの有無を以下の評価基準で評価した。
◎:滲みがない。
○:滲みが僅かに認められるが、実用上問題ない程度である。
×:滲みが目立って認められる。
【0059】
(2)乾燥性
インクジェットプリンタ(セイコーエプソン(株)製、SC-F9350)及び昇華型捺染インク(セイコーエプソン株)製、SC5HDK100P(ブラック)、SC5C100P(シアン)、SC5M100P(マゼンタ)、SC5Y100P(イエロー))を用い、昇華型インクジェット捺染転写紙に720dpi×720dpiで、黒100%のベタ印刷を行った。印刷から1分後に、印字面をテッシュペーパーで擦り、拭取った際に、紙面上のインクの伸びの有無を目視で確認し、以下の評価基準で評価した。
◎:乾燥が非常に早く、拭取り後の紙面上でインクの伸びが全くない。
○:乾燥が若干遅く、拭取り後の紙面上でインクの伸びが僅かに認められるが、実用上問題ない程度である。
×:乾燥が遅く、拭取り後の紙面上でインクの伸びが認められる。
【0060】
(3)裏抜け
昇華型インクジェット捺染転写紙にインクジェットプリンタでCMYKの4色をベタ印刷した後、ポリエステル生地と重ね合わせ、平台転写機で200℃、90秒間の条件で熱プレスすることにより印刷した画像をポリエステル生地に転写した。なお、昇華型インクジェット捺染転写紙と熱板との間には、普通紙を介在させた。転写後に、介在させた普通紙へのインキの付着の有無を目視で確認し、以下の評価基準に基づいて評価した。
◎:介在させた普通紙へのインクの付着が認められない。
○:介在させた普通紙へのインクの付着が認められるが、実用上問題ない付着量である。×:介在させた普通紙へのインクの付着が顕著に認められ、実用上問題となる付着量である。
【0061】
(4)濃度
上記評価項目(3)で画像を転写したポリエステル生地のCMYKの色濃度を濃度計(コニカミノルタジャパン(株)製、FD-5)を用いて測定し、以下の評価基準で評価した。
◎:布素材への転写濃度が高い。
○:布素材への転写濃度は「評価◎」と比較すると低下しているが、実用上問題ない程度である。
×布素材への転写濃度が低く、実用上問題がある程度の濃度である。
【0062】
(5)ゴースト
上記評価項目(3)で画像を転写したポリエステル生地を目視で観察し、転写ズレ(ゴースト)の有無を以下の基準で評価した。
◎:転写ズレがない。
○:転写ズレが僅かに認められるが、実用上問題ない程度である。
×:転写ズレが目立って認められる。
【0063】
(6)層剥がれ
上記評価項目(3)で画像を転写したポリエステル生地を目視で観察し、基紙から剥離した層(インク受容層または粘着層)の有無を下の基準で評価した。
◎:基紙から剥離した層が残存していない。
○:基紙から剥離した層が僅かに残存しているが、実用上問題ない程度である。
△:基紙から剥離した層が残存している。
【0064】
(6)ヒートシール強度
幅100mm×流れ方向150mmに裁断した昇華型インクジェット捺染転写紙と、同サイズのポリエステル生地と重ね合わせ、平台転写機で200℃、30秒間の条件で熱プレスした。昇華型インクジェット捺染転写紙がポリエステル生地にシールされた状態で5分間放置した後、引張試験機(東洋精機製作所社製:ストログラフ E-S)を用い、引張り速度を0.5mm/minでT字剥離させてヒートシール強度を測定した。
【0065】
昇華型インクジェット捺染転写紙のインク受容層を目視で確認し、ストリークやスクラッチ等の塗工欠陥の有無を以下の基準で評価した。
◎:インク受容層に塗工欠陥がない。
○:インク受容層に塗工欠陥が僅かに認められるが、目立たない。
△:インク受容層に塗工欠陥が認められるが、実用上問題ない程度である。
×:インク受容層に塗工欠陥が目立って認められる。
【0066】
実施例1~10及び比較例1~4に係る昇華型インクジェット捺染転写紙の評価結果を、表2に示す。
【0067】
【0068】
実施例1~10に係る昇華型インクジェット捺染転写紙は、インクジェットプリンタでの印刷時の滲みが少なく、乾燥性にも優れており、インク受容性が良好であった。また、捺染転写時のインクの裏抜けが少なく、布地への画像の転写濃度も高く、ヒートシール強度(接着強度)が良好であることから、転写時のゴーストや層の剥離も抑制されており、転写適性が良好であった。また、インク受容層の塗工欠陥は極めて少なく、塗工欠陥が認められた実施例8でも実用上問題ない程度であった。したがって、本発明によれば、被転写体への密着性に優れ、インク受容性及び転写適性が良好で塗工欠陥の少ない昇華型インクジェット捺染転写紙を実現できることが確認された。また、表1に示すように、実施例1~10においては、インク受容層塗料の調整時に塗料の凝集は使用上問題のある程度のものは認められなかった。
【0069】
これに対して、比較例1では、界面活性剤が配合されていないため、インク受容層塗料の調整時に粘着剤と水溶性高分子が凝集して凝集物が多く生じ、インク受容層に塗工欠陥が目立って認められた。
【0070】
比較例2では、HLB値が10未満の界面活性剤を用いたため、粘着剤と水溶性高分子の凝集抑制効果が十分ではなく、インク受容層塗料の調整時に粘着剤と水溶性高分子が凝集して凝集物が多く生じ、インク受容層に塗工欠陥が目立って認められた。
【0071】
比較例3では、下塗り塗工層(インク受容層)と粘着層とを別の層として形成し、下塗り塗工層上に粘着層を積層した構成であるので、下塗り塗工層のインク受容性が悪く、捺染転写後における布地への画像の転写濃度も低くなった。
【0072】
比較例4では、界面活性剤が配合されていないため、インク受容層塗料の調整時に粘着剤と水溶性高分子が凝集して凝集物が多く生じ、インク受容層に塗工欠陥が目立って認められた。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、布素材(特に、伸縮性を示す素材に適している)に絵柄を転写するための昇華型インクジェット捺染転写紙として利用することができ、被転写物への密着性が優れるため、転写濃度が向上して、印字ムラも低減でき、高速印刷可能(インク乾燥性が良好)が可能なため、昇華型インクジェット捺染転写紙に好適に使用することができる。