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特許7469982ジャケット式パネル構造体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】ジャケット式パネル構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20240410BHJP
【FI】
B23K20/12 366
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020131058
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2022027205
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】522160125
【氏名又は名称】MAアルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】田坂 直樹
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-232305(JP,A)
【文献】特開2002-134670(JP,A)
【文献】特開2002-254182(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109564066(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/00 - 20/26
F28D 1/00
F28F 3/00、9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の押出し形材からなり、平面状に並べられた複数のパネル部材と、各パネル部材の上に載置状態に重ねられた多穴管状フィン部材と、を有し、
前記多穴管状フィン部材にはフィン本体部の側方に張り出すフランジ部が一体に形成されており、
前記パネル部材の側板部同士が突き合せられ、これら側板部の突き合せ部において、各側板部の下部に形成された鉤部同士が係合し、各側板部の上部同士及び該側板部上で突き合せ状態の前記多穴管状フィン部材の前記フランジ部同士が一体に摩擦撹拌接合されてなる接合部が形成されていることを特徴とするジャケット式パネル構造体。
【請求項2】
前記多穴管状フィン部材は、前記フィン本体部の上面が前記フランジ部同士の接合部の上面と同じ高さかそれより高く設定されていることを特徴とする請求項1に記載のジャケット式パネル構造体。
【請求項3】
前記フランジ部の下面及び前記側板部の上面には、相互に係合する凸リブと溝とが前記突き合せ部に沿って形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のジャケット式パネル構造体。
【請求項4】
中空の押出し形材からなり、側板部の下部に鉤部が形成された複数のパネル部材と、各パネル部材の上に載置状態に重ねられ、フィン本体部の側方に張り出すフランジ部が一体に形成されてなる多穴管状フィン部材と、を作製しておき、
前記鉤部相互を係合した状態で前記パネル部材の前記側板部同士を突き合せて前記パネル部材を複数並べるとともに、これらパネル部材の上に前記多穴管状フィン部材を重ねることにより、前記パネル部材の側板部の上部同士の上に前記フランジ部同士を突き合せた状態で重ねた後、前記側板部の上部同士及び前記多穴管状フィン部材のフランジ部同士を一体に摩擦撹拌接合することを特徴とするジャケット式パネル構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャケット式パネル構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ等の電子機器やハイブリッド車両、燃料電池車両等に積載されるバッテリーにおいては、バッテリーが積載される部位の壁をジャケット構造とする、あるいはバッテリーをジャケット構造の壁で形成したケースに収容して、ジャケット内に冷却媒体を流通させることにより、バッテリーからの熱を放散するようにしている。
【0003】
このようなジャケット構造体の例として、特許文献1には、上方を開口した箱状のジャケット本体と、その開口を封止する封止体とにより液冷ジャケットが開示されており、封止体に、ジャケット本体の開口内に配置されるフィンが設けられ、ジャケット本体内を流通する流体との熱交換を促進する構成である。この場合、封止体が二枚の基板部を積層した構造とされ、フィンはその基板部の一方に一体成形されている。
特許文献2は、フィンは有していないが、ジャケット本体と封止体とが接合されており、封止体上に発熱体が設置され、ジャケット内部に水等の流体を流通させて発熱体を冷却する構成である。
これら特許文献において、ジャケット本体は箱状の一体物であり、その開口部に封止体が摩擦撹拌接合によって固定されている。
【0004】
この種のジャケット構造体を大型化する場合、ジャケット本体や封止体の幅を大きく形成するには強度上の限界があるため、ジャケット本体や封止体を複数組、並べた状態に接合してジャケット本体及び封止体を構成する必要がある。
【0005】
特許文献3には、2枚の面板とこれらを接続する複数のリブとからなる中空押出し形材同士の接合構造が開示されており、中空押出し形材を構成する2枚の面板の一方側を圧入構造或いは接着構造の接合とし、他方側を摩擦撹拌接合する構成が採用されている。
また、特許文献4には、外板、内板、これらの間の支持板により構成されるアルミニウム合金の押出成形からなるダブルスキンパネルを並べて接合する技術において、一方のダブルスキンの外板の鉤部と他方のダブルスキンの外板の鉤部とを係合しつつ、これらの内板の端面同士を突き合せ、その係合部分及び突き合せ部分を摩擦撹拌接合する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-42819号公報
【文献】特開2017-189783号公報
【文献】特開2004-230412号公報
【文献】特開2013-27923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献3や4に記載の接合方法によってパネルを接合して大型の冷却ジャケットを構成する場合、特許文献1記載のように封止体の基板部とフィンとを一体成形した構造であると、重量が大きいために取り扱いが煩雑で作業性が悪いとともに、パネル間の接合が難しく、接合後の強度不足が懸念される。
【0008】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、組み立て作業を容易にするとともに、強固な接合部を形成して、大型化に対応でき、バッテリーケース等として利用可能なジャケット式パネル構造体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のジャケット式パネル構造体は、中空の押出し形材からなり、平面状に並べられた複数のパネル部材と、各パネル部材の上に載置状態に重ねられた多穴管状フィン部材と、を有し、
前記多穴管状フィン部材にはフィン本体部の側方に張り出すフランジ部が一体に形成されており、
前記パネル部材の側板部同士が突き合せられ、これら側板部の突き合せ部において、各側板部の下部に形成された鉤部同士が係合し、各側板部の上部同士及び該側板部上で突き合せ状態の前記多穴管状フィン部材の前記フランジ部同士が一体に摩擦撹拌接合されてなる接合部が形成されている。
【0010】
パネル部材の上に多穴管状フィン部材を載置状態に重ねた構成としたことにより、これらパネル部材と多穴管状フィン部材とを別個に取り扱うことができ、組み立て作業を容易にすることができる。また、パネル部材を鉤部に係合することにより、パネル部材同士を突き合せた状態として摩擦撹拌接合することができ、しかも、パネル部材と多穴管状フィン部材とを一体に接合でき、接合作業も容易である。
また、多穴管状フィン部材がパネル部材により支持されるため、多穴管状フィン部材を薄肉に形成してもパネル部材により強固に保持され、かつ、パネル部材と一体に接合されていることから、接合部も強固であり、大型化を図ることが容易であり、複数部材を同時に接合するため熱歪を最小限にとどめることができる。
【0011】
このジャケット式パネル構造体において、前記多穴管状フィン部材は、前記フィン本体部の上面が前記フランジ部同士の接合部の上面と同じ高さかそれより高く設定されているとよい。
【0012】
摩擦撹拌接合された状態では、その接合部にばり等により部分的な突起部が形成される。この実施態様の冷却ジャケットでは、フィン本体部の上面がフランジ部同士の接合部の上面と同じ高さかそれより高く形成されているので、突起部がフィン本体部から突出することはなく、その上に収容されるバッテリー等の収容スペースを阻害しない。
【0013】
このジャケット式パネル構造体において、前記フランジ部の下面及び前記側板部の上面には、相互に係合する凸リブと溝とが前記突き合せ部に沿って形成されているとよい。
【0014】
フィン部材のフランジ部とパネル部材の側板部とが一体に摩擦撹拌接合されるが、フランジ部と側板部とが凸リブと溝とにより係合状態とされているので、接合時にフランジ部が移動することが防止され、寸法精度の安定した接合部が形成される。
【0015】
本発明のジャケット式パネル構造体の製造方法は、中空の押出し形材からなり、側板部の下部に鉤部が形成された複数のパネル部材と、各パネル部材の上に載置状態に重ねられ、フィン本体部の側方に張り出すフランジ部が一体に形成されてなる多穴管状フィン部材と、を作製しておき、
前記鉤部相互を係合した状態で前記パネル部材の前記側板部同士を突き合せて前記パネル部材を複数並べるとともに、これらパネル部材の上に前記多穴管状フィン部材を重ねることにより、前記パネル部材の側板部の上部同士の上に前記フランジ部同士を突き合せた状態で重ねた後、前記側板部の上部同士及び前記多穴管状フィン部材のフランジ部同士を一体に摩擦撹拌接合する。
【0016】
パネル部材の側板部の下部で鉤部同士を係合した状態で側板部の上部同士及び多穴管状フィン部材のフランジ部同士を一体に摩擦撹拌接合しているので、摩擦撹拌接合時の部材の挙動を抑制でき、長さ方向にわたって均一な接合を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のジャケット式パネル構造体によれば、組み立て作業が容易であるとともに、強固な接合部を形成して、大型化に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態におけるジャケット式パネル構造体を有するバッテリーケース示す斜視図である。
図2図1に示す状態から隔壁部材を省略した斜視図である。
図3図2の横断面図であるである。
図4図3のEで示す部分の拡大断面図である。
図5図4に示す突合せ部を摩擦撹拌接合した状態を示す断面図である。
図6図3のFで示す部分の拡大断面図である。
図7】パネル部材の断面図である。
図8】多穴管状フィン部材の断面図である。
図9】一方の側壁部材の断面図である。
図10】他方の側壁部材の断面図である。
図11】隔壁部材の断面図である。
図12】本発明の他の実施形態におけるジャケット式パネル構造体の図4同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るジャケット式パネル構造体の実施形態を有するバッテリーケースを図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1図11は一実施形態のジャケット式パネル構造体を有するバッテリーケースを示している。
このバッテリーケース1は、図1図3に示すように、全体として上方を開放した直方体の箱状に形成されており、押出し形材からなる中空部材であり、平面状に複数並べられたパネル部材10と、各パネル部材10の上に重ねられた複数の多穴管状フィン部材40と、複数並べられた状態のパネル部材10の列の両側に配置された一対の側壁部材50A,50Bと、両側壁部材50A,50Bの間を複数に区画する複数の隔壁部材60と、を有している。
【0021】
パネル部材10は、複数が横に並べられた状態でバッテリーケース1の底板部を構成しており、その列の両側に側壁部材50A,50Bが一つずつ配置されている。これらパネル部材10及び側壁部材50A,50Bは、その押出し成形方向をいずれもバッテリーケース1の長さ方向に配置している。
【0022】
パネル部材10は、図7に示すように、全体として平板形状の板状部11の両側部に板状部11より高さの大きい側板部12A,12Bが一体に形成されている。板状部11は、相互に平行な表面部材13及び裏面部材14と、これらを一定の間隔をあけて連結する縦リブ15とにより構成される。側板部12A,12Bは、板状部11の表面部材13及び裏面部材14の側端に連結され、幅方向寸法より高さ方向寸法が大きい矩形枠状断面に形成されている。この側板部12A,12Bの上面は板状部11の表面部材13の上面より高く(表面部材13の上面が側板部12A,12Bの上面より低く)設定され、板状部11と側板部12A,12Bとの間に高さh1の段差部16が形成される。
【0023】
また、両側板部12A,12Bの外側部の下部には鉤部17A,17Bがそれぞれ形成されている。これら鉤部17A,17Bは、一方の側板部12Aの鉤部17Aは外側面から外方に突出して先端部が上方に屈曲した形状であり、上方に開放状態とされている。他方の側板部12Bの鉤部17Bは外側面より内側で下方に開放した溝形状に形成されている。そして、2個のパネル部材10を横に並べたときに、隣接する側板部12A,12Bの鉤部17A,17Bが相互に係合する形状に形成され、これら鉤部17A,17Bを係合することにより、2個のパネル部材10の両側板部12A,12B同士が突き合せ状態に連結される構成である(図4参照)。また、両側板部12A,12Bの上部角部(側板部12A,12Bの外方側角部)の内面は断面三角形状に肉盛り部18が形成されて厚肉となっており、一方、その角部の外面は斜めに面取り部19が形成されている。
【0024】
多穴管状フィン部材40は、図8に示すように、多穴管状のフィン本体部41の両側部に外側方に延びるフランジ部42が一体に形成されている。フィン本体部41は、パネル部材10の両側板部12A,12Bの間に配置できるように、パネル部材10の板状部11よりわずかに小さい幅寸法の板状に形成されており、両側板部12A,12Bの間で板状部21の表面部材13の上面に重ねるように載置される。このフィン本体部41は、パネル部材10及び側壁部材50A,50Bと同様、押出形材により形成され、その押出し方向をバッテリーケース1の長さ方向に配置しており、上下方向に沿う複数の仕切り壁43により、冷媒が流通される多数の流路44が幅方向に並んで形成されている。
【0025】
フランジ部42は、フィン本体部41の高さ方向の途中位置からフィン本体部41の面方向に沿って外方に張り出している。この場合、フィン本体部41の下面からフランジ部42の下面までの高さh2は、パネル部材10の表面部材13の上面と側板部12A,12Bの上面との間の段差部16の高さh1とほぼ同じかわずかに小さい寸法に形成され、フィン本体部41を板状部11に重ねたときに、フランジ部42がパネル部材10の側板部12A,12Bの上面に重ねられる高さ位置に設けられている。
【0026】
一方、フィン部材41の上面においては、フィン本体部41の上面より若干低い位置からフランジ部42が張り出している。言い換えると、フィン本体部41の上面とフランジ部42の上面との間に高さh3の段差部46が形成されており、フランジ部42の上面よりフィン本体部41の上面が上方に突出している。その段差部46の高さh3は、後述する摩擦撹拌接合により生じるバリ等の突起部Qの高さより大きく形成される。
また、フランジ部42の先端には、先端に向かうにしたがって漸次厚肉になる断面三角形状のフック部45が一体に形成され、そのフック部45がパネル部材10の側板部12A,12Bの面取り部29に重ねられるようになっている(図4参照)。
【0027】
側壁部材50A,50Bは、図9及び図10に示すように、やや幅広のベース部51の幅方向の中央部に、垂直に立ち上る縦壁部52が一体に形成されている。また、ベース部51において、パネル部材10の側板部12A,12Bに対向する内側部には、その内側に配置されるパネル部材10における側板部12A,12Bの鉤部17A,17Bに係合する鉤部53A,53Bが形成されている。すなわち、一方の側壁部材50Aのベース部51には、図9に示すように、内側面から外方に突出して上方に開放する鉤部53Aが形成され、他方の側壁部材50Bのベース部51には、図10に示すように、内側面よりも内側で下方に開放する鉤部53Bが形成されている。
【0028】
この場合、図6に示すように、側壁部材50A,50Bのベース部51の高さh4は、パネル部材10にフィン部材40を重ねたときの総高さh5と同じ高さに形成されているが、パネル部材10の側板部12A,12Bと突き合せられる部分の高さh6は、側板部12A,12Bにフィン部材40のフランジ部42が重ねられたときの高さh7と同じ高さに形成されている。つまり、ベース部51の内側端部の一部が薄く切り落とされており、フィン本体部41とフランジ部42との段差部46の高さh3と同じ高さ(h4-h6=h3)の段差部54が形成されている。また、このベース部51の内側端部の上方角部には、側板部12A,12Bと同様に、厚肉の肉盛り部55が形成されている。ただし、側板部12A,12Bとは異なり、面取り部19は形成されていない。
【0029】
隔壁部材60は、図1に示すように、パネル部材10の上に、この実施形態では4個設けられており、そのうち2個は、両側板部12A,12Bの前端部及び後端部に配設され、その間に残り2個の隔壁部材60が一定の間隔で設けられることにより、両側板部12A,12Bの間を3個の空間に仕切っている。これら隔壁部材60も、中空の押出形材からなるが、その押出し方向を他のパネル部材10及び側壁部材50A,50Bと直交するように、バッテリーケース1の幅方向に配置している。各隔壁部材60は、図11に示すように、細幅板状の底板61と該底板61の幅方向の中央部に立設された壁部材62とから構成され、この壁部材62が中空状に形成されている。また、この隔壁部材60は、両側壁部材50A,50Bのベース部51から上方に突出する縦壁部52と同じ高さに形成されている。
【0030】
これら部材から構成されるバッテリーケース1は、以下のようにして製造される。
まず、各部材を押出し成形により形成し、所定の長さに切断しておく。そして、複数(図1に示す例では4個)のパネル部材10を側板部12A,12Bを隣接させた状態で横に並べるとともに、その両側に側壁部材50A,50Bを配置し、各パネル部材10の板状部11の上にフィン部材40を載置する。前述したように、この状態で、図4及び図6に示すように、各パネル部材10の隣接する側板部12A,12Bの鉤部17A,17B相互、及び最も外側の側板部12A,12Bと側壁部材50A,50Bのベース部51との鉤部17A,17B,53A,53B相互をそれぞれ係合した状態とし、フランジ部42先端のフック部45が側板部12A,12Bの面取り部29により形成される窪みに係合する。
【0031】
そして、隣接するパネル部材10において突き合せ状態となっている両側板部12A,12Bの上部同士及びその上のフィン部材40のフランジ部42同士、さらに、パネル部材10において最も外側の側板部12A,12Bの上部及びその上に重ねられているフィン部材40のフランジ部42と、これらに対向して突き合せ状態となっている両側壁部材50A,50Bのベース部51の上部との間(突き合せ部)を摩擦撹拌接合により一体化する。
【0032】
この摩擦撹拌接合は、図4及び図6に鎖線で示すように、例えば円柱状のショルダ部71と、その先端中央から突出するピン部72とを有する接合用ツール70が用いられる。
接合用ツール70をピン部72の軸心を中心として回転させながら、隣接するパネル部材10の両側板部12A,12B同士及びその上に重ねられたフィン部材40のフランジ部42同士の突き合せ部に矢印で示すように真上からピン部72を押し込み、ショルダ部71の先端を突き合せ部の上面に接触させた状態で突き合せ部に沿って長さ方向に移動させる。このときに発生する摩擦熱と回転による材料の撹拌とにより、各部材の界面を消失させつつ接合する。これにより形成される摩擦撹拌接合部Gは、図5に示すように、パネル部材10の両側板部12A,12Bの上部及びその上に重ねられたフィン部材40のフランジ部42の先端部を一体化している。
【0033】
この摩擦撹拌接合において、接合用ツール70の回転を伴う直線移動により、パネル部材10及びフィン部材40の突き合せ部を押し広げようとする力が作用するが、パネル部材10の側板部12A,12B同士が鉤部17A,17Bにより係合した状態であるので、突き合せ部が開くことはない。しかも、摩擦撹拌接合部のほぼ真下で鉤部17A,17Bが係合しているので、突き合せ状態を確実に維持して正確に接合することができる。摩擦撹拌接合であるので熱による歪みも少ない。したがって、長さ方向にわたって均一に接合でき、パネル部10の上方の各収容空間を均一な寸法で正確に形成することができる。
【0034】
パネル部材10と側壁部材50A,50Bとの突き合せ部も同様に、パネル部材10の側板部12A,12Bの鉤部17A,17Bと側壁部材50A,50Bの鉤部53A,53Bとを係合した状態で接合用ツール70を用いて摩擦撹拌接合される。この場合、多穴管状フィン部材40のフランジ部42は、側壁部材50A,50Bのベース部材51の内側部と接合される。
なお、説明の便宜のため、図5を除き、図1,2,4,6では、摩擦撹拌接合する前の状態で各部材を配置している。
【0035】
このようにして得られる摩擦撹拌接合部Gは、材料が撹拌して接合しているので、図5に示すように表面にばり状の突起部Qが形成される。この突起部Qの高さよりも大きく、フィン本体部41の上面よりとフランジ部42の上面との段差46の高さh3を形成しておくことにより、接合部Gの突起部Qがフィン本体部41の上面より上方に突出することが防止される。また、多穴管状フィン部材40において、フランジ部42の幅はフィン本体部41に比べると相当に小さいので、収容されるバッテリー(図示略)は、フランジ部42の上方をまたぐようにしてフィン本体部41の上面に載置され、幅広のフィン本体部41により安定して支持される。したがって、接合部Gの表面に研削加工等を施すことなく突起部Qを残したままであっても、多穴管状フィン部材40の上に載置されるバッテリーを傷つけることがない。
【0036】
側壁部材50A,50Bとパネル部材10との接合部においても同様であり、側壁部材50A,50Bのベース部51の内側部に段差部54を形成しておいたので、摩擦撹拌接合部Gの突起部Qがこの段差部54の高さ(h4-h6)の範囲内に収まり、上方に突出することはなく、バッテリーを傷つけない。
本発明におけるジャケット式パネル構造体は、この実施形態では、以上のようにして摩擦撹拌接合された状態のパネル部材10、多穴管状フィン部材40、及び側壁部材50A,50Bのベース部51により構成される。
【0037】
図12は、本発明の他の実施形態において、図4同様の要部を示している。一実施形態と共通する要素には同一符号を付して説明を簡略化する。
この実施形態では、多穴管状フィン部材40のフランジ部42の基端部寄りの位置(フィン本体部41に近い位置)の裏面に、フィン本体部41の長さ方向に沿う凸リブ81が形成されており、一方、パネル部材10の側板部12A,12Bの上面には、多穴管状フィン部材40のフランジ部42の凸リブ81に対応する溝82が長さ方向に沿って形成され、パネル部材10の上に多穴管状フィン部材40を載置したときに、フランジ部42の凸リブ81が側板部12A,12Bの溝82に係合されるようになっている。
【0038】
なお、摩擦撹拌接合する前の組み立て状態では、一実施形態と同様、各パネル部材10の隣接する側板部12A,12Bの鉤部17A,17B相互が係合され、フランジ部42先端のフック部45が側板部12A,12Bの面取り部29により形成される窪みに係合した状態で突き合せられる。図示は省略するが、最も外側の側板部12A,12Bと側壁部材50A,50Bのベース部51との鉤部17A,17B,53A,53B相互も係合している。この最も外側の側板部12A,12Bにおいても、多穴管状フィン部材40のフランジ部42の凸リブ71と側板部12A,12Bの溝72とが係合する。
【0039】
そして、隣接するパネル部材10の両側板部12A,12B同士及びその上に重ねられた多穴管状フィン部材40のフランジ部42同士の突き合せ部、パネル部材10と側壁部材50A,50Bとの突き合せ部をそれぞれ摩擦撹拌接合する。このとき、多穴管状フィン部材40のフランジ部42は、突き合せ部の長さ方向に沿う凸リブ81が側板部12A,12Bの溝82に係合しているので、接合ツール70の回転を伴う移動による外力を受けても、凸リブ81と溝82との係合により、フランジ部12がずれることなく、長さ方向にわたってより均一な接合部Gを形成することができる。
【0040】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において変更を加えることが可能である。
実施形態ではバッテリーケースを例示したが、本発明は、これに限らず、各種発熱部品を収容するケースの壁に用いることができる。また、ケースのような箱状の形状に限らず、発熱部品が載置され、あるいは接触して配置される部分の壁に本発明を適用することができる。さらに、発熱部品の放熱だけでなく、多穴管状フィン部材の流路に熱媒を流通させて、適宜の温度に調整する場合にも適用すること可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 ジャケット式パネル構造体
10 パネル部材
11 板状部
12A,12B 側板部
13 表面部材
14 裏面部材
15 縦リブ
16 段差
17A,17B 鉤部
18 肉盛り部
19 面取り部
40 フィン部材
41 フィン本体部
42 フランジ部
43 仕切り壁
44 流路
45 フック部
50A,50B 側壁部材
51 ベース部
52 縦壁部
53A,53B 鉤部
54 肉盛り部
55 面取り部
60隔壁部材
61 底板
62 壁部材
70 接合ツール
81 凸リブ
82 溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12