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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】暗騒音発生装置
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/82 20060101AFI20240410BHJP
   E04B 1/70 20060101ALI20240410BHJP
   F24F 7/013 20060101ALI20240410BHJP
   F24F 7/10 20060101ALI20240410BHJP
   F24F 13/06 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
E04B1/82 S
E04B1/70 A
F24F7/013 101M
F24F7/10 101E
F24F13/06 A
F24F7/10 A
F24F7/10 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020133832
(22)【出願日】2020-08-06
(65)【公開番号】P2022030080
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(73)【特許権者】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】大脇 雅直
(72)【発明者】
【氏名】黒木 拓
(72)【発明者】
【氏名】中牟田 篤
(72)【発明者】
【氏名】西野 嘉一
【審査官】小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-136091(JP,A)
【文献】特開2009-236387(JP,A)
【文献】特開2016-138712(JP,A)
【文献】特開2013-160493(JP,A)
【文献】特開平07-012375(JP,A)
【文献】特開2002-295877(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0277521(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/82
E04B 1/70
F24F 7/013
F24F 7/10
F24F 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部屋の天井、又は、床、あるいは、間仕切り壁に設けられて天井裏空間側、又は、床下空間側、あるいは、壁内空間側から部屋に空気を供給するための給気孔と、当該給気孔の内側に空気が通過する際の抵抗となる抵抗装置とを備え
抵抗装置は、
給気孔を形成する円筒状部品の円筒の内径に対応した外径に形成されて給気孔の内側に設置された円筒体と、当該円筒体の一端開口側に設けられた十字形抵抗板と、当該円筒体の他端開口側に設けられた円形抵抗板とを備え、
十字形抵抗板が給気孔の部屋に近い側の内側に位置されて、円形抵抗板が給気孔の部屋から遠い側の内側に位置されたことを特徴とする暗騒音発生装置。
【請求項2】
十字形抵抗板は、直径寸法が円筒体の内周面の直径寸法に対応した寸法の十字形板の内側にスリットが形成された構成のスリット付き十字形板であって、スリットが、十字の中央板部より四方に突出する4つの各板部の延長方向に沿った各板部の中央部に形成され、
円形抵抗板は、直径寸法が円筒体の内周面の直径寸法と対応した寸法の円形板を基にして形成されて、円形板の中央に円形孔が形成され、当該円形板の中心を基準として円形板の外周において互いに90°離れた4箇所の部分を接続部として残して、当該円形板の外周縁が外周に沿って除去された円形外周縁に形成された円形状板とされ、かつ、円形孔の中心を基準として互いに90°離れた4箇所の部分を、接続部と連続して円形孔の中心に向けて延長する4つの各板部として残し、互いに周方向に隣り合う板部と板部との間の円弧状板部に、円形孔の中心を中心とした円弧状のスリットが形成されたとともに、円形外周縁と円筒体の内周面との間の空間により最外周スリットが形成されたことを特徴とする請求項に記載の暗騒音発生装置。
【請求項3】
抵抗装置は、最外周スリットのスリット幅が変更可能に構成されたことを特徴とする請求項に記載の暗騒音発生装置。
【請求項4】
抵抗装置は、
十字形抵抗板の4つの板部と円形抵抗板の4つの板部とが周方向にずれて対向するように設けられた構成、
又は、
十字形抵抗板の4つの板部と円形抵抗板の4つの板部とが正対するように設けられた構成であることを特徴とする請求項又は請求項に記載の暗騒音発生装置。
【請求項5】
抵抗装置は、十字形抵抗板と円形抵抗板との間の間隔が変更可能に構成されたことを特徴とする請求項乃至請求項のいずれか一項に記載の暗騒音発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室外からの生活音に対する暗騒音を室内に発生させる暗騒音発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近のマンション等の共同住宅においては、高断熱高気密化に伴い、建物外部から建物内部に入射する音のレベルが小さくなっており、住宅地では室内が夜間にA特性音圧レベルが20dB台前半になることもある。
このように、建物外部から建物内部に入射する音のレベルが小さい環境の場合、室内において、室外からの生活音が聞こえてきて気になるという問題が生じている。尚、「室外からの生活音」とは、マンションにおける上層階や隣りの他住居からの生活音、一戸建ての建物における隣接する住宅からの生活音等のことを言う。
そこで、建物の外壁に形成された給気孔の内側に抵抗装置を設け、給気孔を介して室内に流入する音の大きさを大きくするようにした暗騒音(対象とする騒音の周辺環境に発生している対象騒音以外の総体的騒音)を発生させることにより、室外からの生活音が聞こえ難い室内環境を実現できるようにした方法が知られている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-136091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した方法は、建物の外壁に形成された給気孔の内側に抵抗装置を設けて暗騒音を発生させる方法であるので、外壁に面して給気孔がない部屋には採用できないという課題があった。
本発明は、外壁に面して給気孔がない部屋であっても室外からの生活音が聞こえ難い室内環境を実現できるようにした暗騒音発生装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明に係る暗騒音発生装置は、部屋の天井、又は、床、あるいは、間仕切り壁に設けられて天井裏空間側、又は、床下空間側、あるいは、壁内空間側から部屋に空気を供給するための給気孔と、当該給気孔の内側に空気が通過する際の抵抗となる抵抗装置とを備え、抵抗装置は、給気孔を形成する円筒状部品の円筒の内径に対応した外径に形成されて給気孔の内側に設置された円筒体と、当該円筒体の一端開口側に設けられた十字形抵抗板と、当該円筒体の他端開口側に設けられた円形抵抗板とを備え、十字形抵抗板が給気孔の部屋に近い側の内側に位置されて、円形抵抗板が給気孔の部屋から遠い側の内側に位置されたことを特徴とするので、外壁に面して給気孔がない部屋であっても室外からの生活音が聞こえ難い室内環境を実現できるとともに、給気孔を介して空気が部屋に流入する際の音の大きさを大きくできる。
また、十字形抵抗板は、直径寸法が円筒体の内周面の直径寸法に対応した寸法の十字形板の内側にスリットが形成された構成のスリット付き十字形板であって、スリットが、十字の中央板部より四方に突出する4つの各板部の延長方向に沿った各板部の中央部に形成され、円形抵抗板は、直径寸法が円筒体の内周面の直径寸法と対応した寸法の円形板を基にして形成されて、円形板の中央に円形孔が形成され、当該円形板の中心を基準として円形板の外周において互いに90°離れた4箇所の部分を接続部として残して、当該円形板の外周縁が外周に沿って除去された円形外周縁に形成された円形状板とされ、かつ、円形孔の中心を基準として互いに90°離れた4箇所の部分を、接続部と連続して円形孔の中心に向けて延長する4つの各板部として残し、互いに周方向に隣り合う板部と板部との間の円弧状板部に、円形孔の中心を中心とした円弧状のスリットが形成されたとともに、円形外周縁と円筒体の内周面との間の空間により最外周スリットが形成されたことを特徴とするので、給気孔を介して空気が部屋に流入する際の音の大きさをより大きくできる。
また、抵抗装置は、最外周スリットのスリット幅が変更可能に構成されたことを特徴とするので、給気孔を介して空気が部屋に流入する際の音の大きさを調整できるようになる。
また、抵抗装置は、十字形抵抗板の4つの板部と円形抵抗板の4つの板部とが周方向にずれて対向するように設けられた構成、又は、十字形抵抗板の4つの板部と円形抵抗板の4つの板部とが正対するように設けられた構成であることを特徴とするので、給気孔を介して空気が部屋に流入する際の音の大きさをより大きくでき、特に、十字形抵抗板の4つの板部と円形抵抗板の4つの板部とが周方向にずれて対向するように設けられた構成とすることにより、給気孔を介して空気が部屋に流入する際の音の大きさをさらに大きくできるようになる。
また、抵抗装置は、十字形抵抗板と円形抵抗板との間の間隔が変更可能に構成されたことを特徴とするので、給気孔を介して空気が部屋に流入する際の音の大きさを調整できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】暗騒音発生方法を採用した建物の例を示す断面図。
図2】暗騒音発生方法を採用した建物の例を示す平面図。
図3】暗騒音発生装置を示す断面図。
図4】抵抗装置を示す斜視図
図5】抵抗装置を示す正面図、及び、背面図。
図6】抵抗装置を示す斜視図、正面図、及び、背面図。
図7】実験1の実験結果を示す図。
図8】実験2の実験結果を示す図。
図9】実験3の実験結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
実施形態1の暗騒音発生方法は、図1に示すように、建物10の外部から建物10内に取り込んだ空気を天井裏空間11Sを介して建物10内の部屋12に給気するように構成された建物、例えば、24時間換気システムとして、建物10の外部から外気を建物10の内部に強制給気するとともに建物10の内部から建物10の外部に強制排気を行う第1種換気方式を採用している建物10において、部屋12の天井11に設けられた給気孔1の内側に空気が通過する際の抵抗となる抵抗装置2を設けることにより、当該給気孔1を介して空気が部屋12に流入する際の音の大きさを大きくして、建物10の外壁9に面して給気孔がない部屋12であっても室外からの生活音が聞こえ難い室内環境を実現できるようにした暗騒音発生方法である。
【0008】
図1図2に示すように、24時間換気システムの第1種換気方式を採用する共同住宅(マンション)などの建物10においては、建物10の外部から建物10の内部に強制的に取り込んだ空気を建物10の内部の各部屋12,12…に分配し、かつ、特定の場所から建物10の外部に空気を強制排気するように構成されている。
そこで、実施形態1の暗騒音発生方法では、建物10の外部から建物10の内部に取り込んだ空気を建物10内の複数の各部屋12,12…に分配するために複数の各部屋12,12…の天井11,11…に給気孔1,1…を設け、各給気孔1,1…の内側に抵抗装置2,2…を設けるようにした。
例えば、建物10は、図1図2に示すように、建物10の外部から外気を建物10の内部に取り込む給気手段13と、熱交換システム14と、特定の部屋(例えば寝室)の天井11に設けられた内気取込孔17と、各部屋12,12…の各天井11,11…に設けられた各給気孔1,1…と、各給気孔1,1…の内側に設けられた各抵抗装置2,2…と、建物10の内部の空気を建物10の外部に排気する排気手段15とを備えている。
【0009】
給気手段13は、例えば図示しないが、建物10の外壁9に形成された貫通孔と、当該貫通孔内に装着されて外気取込孔を形成する円筒体と、当該円筒体における熱交換システム14に近い他端開口側に設けられた給気ファン等の強制給気手段とを備えて、外気を天井裏空間11Sに取込む手段である。
【0010】
図2に示すように、熱交換システム14は、給気手段13により建物10の外部から取込まれた外気と特定の部屋(例えば寝室)から取込まれた内気とで熱交換処理を行った後、この熱交換処理後の空気を各部屋12,12…に分配供給する装置である。熱交換システム14としては、熱交換機能の他、空気洗浄機能を備えたものを用いてもよい。
尚、図2の建物10の平面図(間取図)において、Eは玄関、Cdは廊下、BRは寝室、UBはトイレ付浴室、Wは洗面室、Kは台所、WRは洋室、Cはクローゼット、JRは和室、LDはリビングダイニングルームである。
【0011】
図3に示すように、給気孔1は、天井11を形成する天井板に形成された貫通孔11aを貫通するように取付けられた円筒状部品1Aの断面円形の内側貫通孔1Hにより形成される。
尚、円筒状部品1Aの一端開口(下端開口)1aの開口縁側には取付フランジ1Fが設けられている。当該円筒状部品1Aを他端開口(上端開口)1b側から貫通孔11aに貫通させて取付フランジ1Fの上面と天井板の下面とを近接させた状態で、例えばビスやねじ等を取付フランジ1F及び天井板に貫通させて図外の天井下地に締結することにより、当該円筒状部品1Aが天井11に取付けられ、天井11に部屋12と天井裏空間11Sとを連通させる給気孔1が設けられることになる。
また、円筒状部品1Aの一端開口1a側には、当該円筒状部品1Aの一端開口(給気孔1の部屋側開口)1aを開閉する例えばルーバー開閉部等の開閉体1Rを備えた蓋1Eが着脱自在に取付けられることが好ましい。
【0012】
排気手段15は、例えば図示しないが、特定の部屋12(例えば浴室や洗面室)の天井等に形成された貫通孔と、当該貫通孔内に装着されて内気排出孔を形成する円筒体と、当該筒体の天井裏空間等に位置される開口側に設けられた排気ファン等の強制排気手段とを備えて、建物内の空気を外部に排出するように構成された手段である。
【0013】
図1図2に示すように、給気手段13の外気送出口(上述した円筒体の他端開口)13aと熱交換システム14の外気取込口14aとがダクト16Aにより繋がれている。
また、図2に示すように、熱交換システム14の内気取込口14bと特定の部屋12(例えば寝室)の天井11に設けられた内気取込孔17の天井裏側開口とがダクト16Bにより繋がれている。尚、特定の部屋は1つ以上であればよく、内気取込孔17も1つ以上であればよい。
そして、図1図2に示すように、熱交換システム14の処理済み空気送出口14cと各部屋12,12…の各天井11,11…に設けられた各給気孔1,1…の各天井裏側開口(上述した円筒状部品1Aの他端開口(上端開口)1b)とがダクト16C,16C…により繋がれている。
【0014】
尚、熱交換システム14の外気取込口14a及び内気取込口14bの近傍には給気ファンが設けられ、かつ、熱交換システム14の処理済み空気送出口14cの近傍には排気ファンが設けられている。
【0015】
従って、給気手段13により建物10の外部から建物10の内部に取込まれた外気が天井裏空間11Sに配置されたダクト16A、外気取込口14aを経由して熱交換システム14に取り込まれる。また、特定の部屋12(例えば寝室)の内気が天井11に設けられた各内気取込孔17、天井裏空間11Sに配置されたダクト16B、内気取込口14bを経由して熱交換システム14に取り込まれる。そして、熱交換システム14により、外気と内気との熱交換処理が行われ、この熱交換処理後の空気が、処理済み空気送出口14c、ダクト16C,16C…、各部屋12,12…の各天井11,11…に設けられた各給気孔1,1…、各給気孔1,1…内に設けられた抵抗装置2,2…を経由して各部屋12,12…に分配されて供給されることになる。
【0016】
また、24時間換気システムの第1種換気方式では、給気手段13により建物10の外部から建物10の内部に取込む空気量と、排気手段15により建物10の内部から建物10の外部に排気される空気量が等しくなるように調整される。
【0017】
実施形態1に係る暗騒音発生方法に用いられる暗騒音発生装置は、図3に示すように、部屋12の天井に設けられて天井裏空間11S側から部屋12に空気を供給するための給気孔1と、当該給気孔1の内側に空気が通過する際の抵抗となる抵抗装置2とを備えた構成である。
【0018】
抵抗装置2は、例えば図4に示すように、給気孔1を形成する円筒状部品1Aの内径(即ち、内側貫通孔1Hの孔径)に対応した外径に形成された円筒体21と、当該円筒体21の両端の開口部近傍にそれぞれ設けられる抵抗板として、十字形抵抗板22と、円形抵抗板23とを備えた構成である。
十字形抵抗板22は、円筒体21の一端開口21a側に取付けられて給気孔1内に設置された場合に円筒状部品1Aのフランジ1Fが付いた一端開口1a側に位置される抵抗板である。
円形抵抗板23は、円筒体21の他端開口21b側に取付けられて給気孔1内に設置された場合に円筒状部品1Aのフランジ1Fがない他端開口1b側に位置される抵抗板である。
【0019】
十字形抵抗板22は、図4図5(a)に示すように、例えば、所定板厚(例えば、板厚0.1mm~2mm程度)でかつ直径寸法が円筒体21の内周面の直径寸法に対応した寸法の十字形板の内側にスリット(板を貫通する貫通孔)24が形成された構成のスリット付き十字形板である。
スリット24は、十字の中央板部25より四方に突出する4つの各板部26,26…の延長方向に沿った各板部26,26…の中央部に形成される。
そして、4つの各板部26,26…の延長端側が、円筒体21の一端開口21a側の内面、又は、円筒体21の一端開口21aの開口縁に、溶接、接着、ねじ止め、係合手段等の連結手段により連結される。
【0020】
円形抵抗板23は、図4図5(b)に示すように、例えば、所定板厚(例えば、板厚0.1mm~2mm程度)でかつ直径寸法が円筒体21の内周面の直径寸法と対応した寸法の円形板を基にして形成される。即ち、当該円形板の中央に円形孔が形成され、当該円形板の中心を基準として当該円形板の外周において互いに90°離れた4箇所の部分を接続部31として残して、当該円形板の外周縁が外周に沿って数mm程度除去された円形外周縁32に形成された円形状板とされ、かつ、当該円形状板の内側に元の円形板の中心を中心とする円形孔33が形成されて、さらに、当該円形孔33の外周囲に複数の円弧状のスリット34,35,38が形成された構成の同心円弧状スリット付き円形板である。
【0021】
円形外周縁32と円形孔33との間において、円形孔33の中心を基準として互いに90°離れた4箇所の部分を、接続部31と連続して円形孔33の中心に向けて延長する4つの各板部36,36…として残し、互いに周方向に隣り合う板部36と板部36との間の円弧状板部37,37…に、円形孔33の中心を中心とした円弧状のスリット34,35,38が形成された構成である。
円形抵抗板23の最も外周側に形成される最外周スリット38は、円形外周縁32と円筒体21の内周面との間の間隔がスリット幅となるスリットである。即ち、円形外周縁32と円筒体21の内周面との間の空間により最外周スリット38が形成されている。
4つの各板部36,36…にそれぞれ形成されたスリット34,34…は、円形孔33の中心を中心とした所定半径の円周に沿って形成された円弧状のスリットである。
また、4つの各板部36,36…にそれぞれ形成されたスリット35,35…は、円形孔33の中心を中心とした上述の所定半径よりも大きい半径の円周に沿って形成された円弧状のスリットである。
【0022】
そして、4つの各接続部31,31…が、円筒体21の他端開口21b側の内面、又は、円筒体21の他端開口21bの開口縁に、溶接、接着、ねじ止め、係合手段等の連結手段により連結されることにより、円筒体21の内周面と円形抵抗板23の円形外周縁32との間に、円弧状の最外周スリット38,38…が形成される。
即ち、円形抵抗板23は、円形孔33の中心に近い方から順に、円弧状のスリット34,35,38を形成する構成、つまり、複数の同心の円弧状スリット34,35,38を備えたスリット付き円形板である。
【0023】
抵抗装置は、図4図5に示すように、十字形抵抗板22の各板部26,26…と円形抵抗板23の各板部36,36…とが周方向にずれて対向するように設けられた構成の抵抗装置2(以下、軸クロスタイプという)であってもよいし、あるいは、図6に示すように、十字形抵抗板22の各板部26,26…と円形抵抗板23の各板部36,36…とが周方向にずれていない構成、即ち、各板部26,26…と各板部36,36…とが正対するように設けられた構成の抵抗装置2A(以下、軸正対タイプという)であってもよい。
【0024】
十字形抵抗板22が給気孔1を形成する円筒状部品1Aのフランジ1Fが付いた一端開口1a側に位置されて、かつ、円形抵抗板23が当該円筒状部品1Aのフランジ1Fがない他端開口1b側に位置されるように、抵抗装置2、又は、抵抗装置2Aが、円筒状部品1Aの内側に設置されて、溶接、接着、ねじ止め、係合手段等の取付手段により円筒状部品1Aに取付けられる。
そして、十字形抵抗板22が部屋12に近い側に位置され、円形抵抗板23が部屋12から遠い側、即ち、天井裏空間11S側に位置されように、内側に抵抗装置2が取付けられた円筒状部品1Aが上述したように天井11に取付けられることによって、部屋12の天井11に暗騒音発生装置が取付けられることになる。
【0025】
実施形態1の暗騒音発生装置を用いた暗騒音発生方法によれば、熱交換システム14から、空気が、ダクト16C,16C…、各部屋12,12…の各天井11,11…に設けられた各給気孔1,1…を介して各部屋12,12…に分配されて供給される場合において、空気が、各給気孔1,1…内に設けられた抵抗装置2又は抵抗装置2Aを通過する際に抵抗等によって音が発生する。即ち、当該給気孔1、抵抗装置2を介して空気が部屋12に流入する際の音の大きさを大きくできる。
従って、建物10の外壁9に面して給気孔がない部屋12であっても室外からの生活音が聞こえ難い室内環境を実現できるようになる。また、複数の部屋12,12…毎に、室外からの生活音が聞こえ難い室内環境を実現できる。
また、建物の換気方式を、第1種換気方式としたことにより、換気をスムーズにできるとともに、部屋12において、室外からの生活音が聞こえ難い室内環境を実現できる。
【0026】
即ち、まず、熱交換システム14からの空気が、円形抵抗板23の円弧状のスリット34,35,38を通過する際には、各円弧状板部37,37…及び各板部36,36…に衝突することにより音が発生するとともに、熱交換システム14からの空気が、円形孔33を通過する際には、速度が上がり、速度が上がった状態で十字形抵抗板22に衝突して音が発生するので、空気が部屋12に流入する際の音がより大きくなる。
【0027】
尚、実施形態1の暗騒音発生装置の効果を確認するため、以下のような実験を行った。
・実験1
円形抵抗板23の最外周スリット38のスリット幅を変化させることによって、A特性音圧レベルと風量との関係がどのようになるかを検証する実験。
・実験2
十字形抵抗板22と円形抵抗板23との間の間隔を変化させることによって、A特性音圧レベルがどのようになるかを検証する実験。
・実験3
上述した軸クロスタイプと軸正対タイプとで、A特性音圧レベル及び1/3オクターブバンド音圧レベルがどのようになるかを検証する実験。
【0028】
・実験方法
無響室内に天井を模擬した天井模型を設置し、天井模型に円筒体を貫通させて給気孔1を形成するとともに、給気孔1内に、給気孔1の一端開口側に十字形抵抗板22が位置して給気孔1の他端開口側に円形抵抗板23が位置するように抵抗装置2(軸クロスタイプ)又は抵抗装置2A(軸正対タイプ)を設置し、給気孔1の他端開口側から一端開口側に向けて風を通過させる実験装置を作製し、抵抗装置2の試験体の違いによる効果の違いを検証した。尚、実験では、天井模型の裏面において給気孔1の他端開口側を囲む密閉ボックスを設け、この密閉ボックスと送風ファンとを約20mのダクトで繋ぐとともに、ダクトの途中に消音ボックスを設置した構成として、送風ファンから発生する音が測定されないように、送風ファンから密閉ボックス内側の抵抗装置2に送風するようにした。
A特性音圧レベル及び1/3オクターブバンド音圧レベルの測定では、マイクロフォンのヘッドケースの中心位置を、給気孔1の一端開口の中心位置から1m離れた位置に固定した。
そして、送風ファンを駆動して風が抵抗装置2を通過する際に発生する音の音圧レベルを測定した。
尚、稼働音は定常的な音であるため、20秒間の等価音圧レベルを求めた。
換気量は、風量計を用いて測定した。
【0029】
実験1では、軸クロスタイプの抵抗装置2を使用した。抵抗装置2の円筒体21の外径が90mm、円形抵抗板23の円形孔33の直径は40mmのものを用い、抵抗装置2がない(抵抗装置2を備えない)試験体S,最外周スリット38のスリット幅を1mmにした試験体1、最外周スリット38のスリット幅を3mmにした試験体2、最外周スリット38のスリット幅を5mmにした試験体3、最外周スリット38のスリット幅を10mmにした試験体4を用いて、各試験体毎に、通過風量を変化させた場合に、A特性音圧レベルがどのように変化するかを検証した。
【0030】
実験1の実験結果を図7に示す。
実験1の実験結果から以下の傾向が判明した。
(1)スリット38の幅を小さくすると発生する音(A特性音圧レベル)は大きくなる。
(2)風量が大きくなるとA特性音圧レベルが大きくなる。
【0031】
実験2では、円筒体21の外径が90mm、円形抵抗板23の円形孔33の直径は40mm、最外周スリット38のスリット幅3mmの軸クロスタイプの抵抗装置2、及び、軸正対タイプの抵抗装置2Aを使用し、各タイプの抵抗装置において、十字形抵抗板22と円形抵抗板23との間の間隔を、10mm、20mm、30mm、40mmに変化させて、A特性音圧レベルを測定し、当該間隔の違いにより、A特性音圧レベルがどのように変化するかを検証した。
【0032】
実験2の実験結果を図8に示す。
実験2の実験結果から以下の傾向が判明した。
(1)十字形抵抗板22と円形抵抗板23との間の間隔を変えることで発生音の大きさが変化し、間隔を狭くすると発生音が大きくなる。
【0033】
実験3では、円筒体21の外径が90mm、円形抵抗板23の円形孔33の直径は40mm、最外周スリット38のスリット幅3mmの軸クロスタイプの抵抗装置2、及び、軸正対タイプの抵抗装置2Aを使用し、軸クロスタイプにおいて、十字形抵抗板22と円形抵抗板23との間の間隔を、10mmにした試験体1、20mmにした試験体2、30mmにした試験体3、40mmにした試験体4を用いるとともに、軸正対タイプにおいて、十字形抵抗板22と円形抵抗板23との間の間隔を、10mmにした試験体5、20mmにした試験体6、30mmにした試験体7、40mmにした試験体8を用い、それぞれの試験体において、1/3オクターブバンド音圧レベルを測定した。
【0034】
実験3の実験結果を図9に示す。
実験3の実験結果から以下の傾向が判明した。
(1)軸クロスタイプの抵抗装置2の方が、十字形抵抗板22と円形抵抗板23との間の間隔が狭い場合に発生する音が大きくなる。
【0035】
実施形態2
実施形態1では、円筒体21と十字形抵抗板22と円形抵抗板23とを備えた抵抗装置が給気孔1の内側に設置されて構成された暗騒音発生装置を例示したが、暗騒音発生装置は、給気孔1を形成する円筒状部品1Aの内側に、十字形抵抗板22と円形抵抗板23とが直接取付けられた構成としてもよい。即ち、給気孔1を形成する円筒状部品1Aのフランジ1Fが付いた一端開口1a側の内側に十字形抵抗板22が取付けられるともに、給気孔1を形成する円筒状部品1Aのフランジ1Fがない他端開口1b側の内側に円形抵抗板23が取付けられた構成の暗騒音発生装置としてもよい。
【0036】
実施形態3
上述した実験1を考慮して、実施形態3では、円形抵抗板23の最外周スリット38のスリット幅を変更可能な暗騒音発生装置とした。即ち、円筒体21の内周面又は給気孔1を形成する円筒状部品1Aの内周面と円形外周縁32と間の間隔を変更可能とするため、円形孔33の中心から円形外周縁32までの距離が異なるように形成された複数種の円形抵抗板23を備え、これら複数種の円形抵抗板23が円筒体21又は給気孔1に対して着脱可能に構成された暗騒音発生装置とした。
実施形態3の暗騒音発生装置によれば、最外周スリット38のスリット幅を調整することで、給気孔1を介して空気が部屋12に流入する際の音の大きさ、即ち、発生させる暗騒音の大きさを調整可能な暗騒音発生装置を提供できる。
【0037】
実施形態4
上述した実験2,3を考慮して、十字形抵抗板22と円形抵抗板23との間の間隔が変更可能に構成された暗騒音発生装置とした。
実施形態4の暗騒音発生装置によれば、十字形抵抗板22と円形抵抗板23との間の間隔を調整することで、給気孔1を介して空気が部屋12に流入する際の音の大きさ、即ち、発生させる暗騒音の大きさを調整可能な暗騒音発生装置を提供できる。
【0038】
尚、実施形態では、暗騒音発生装置や内気取込孔を天井に設けた例を示したが、暗騒音発生装置や内気取込孔17を床に設けるようにしてもよい。この場合、給気手段、熱交換システム、ダクト等は、床下空間に設ければよい。
即ち、建物の外部から建物の内部に取り込んだ空気を床に設けられた給気孔を介して部屋に給気するように構成された建物において、給気孔の内側に空気が通過する際の抵抗となる抵抗装置を設けることにより、当該給気孔を介して空気が部屋に流入する際の音の大きさを大きくするようにした暗騒音発生方法とするとともに、当該暗騒音発生方法に使用する暗騒音発生装置は、部屋の床に設けられて床下空間側から部屋に空気を供給するための給気孔と、当該給気孔の内側に空気が通過する際の抵抗となる抵抗装置とを備えた構成とすればよい。
【0039】
また、暗騒音発生装置や内気取込孔17を、壁内空間を有した間仕切り壁に設けるようにしてもよい。この場合、ダクト等は、壁内空間に設ければよい。
即ち、建物の外部から建物の内部に取り込んだ空気を間仕切り壁に設けられた給気孔を介して部屋に給気するように構成された建物において、給気孔の内側に空気が通過する際の抵抗となる抵抗装置を設けることにより、当該給気孔を介して空気が部屋に流入する際の音の大きさを大きくするようにした暗騒音発生方法とするとともに、当該暗騒音発生方法に使用する暗騒音発生装置は、部屋の間仕切り壁に設けられて壁内空間側から部屋に空気を供給するための給気孔と、当該給気孔の内側に空気が通過する際の抵抗となる抵抗装置とを備えた構成とすればよい。
【0040】
また、内気取込孔17内に抵抗装置を設けて暗騒音発生装置を構成してもよい。
また、抵抗装置の材質は特に限定されない。例えば、合成樹脂、金属等により抵抗装置を形成すればよい。
【0041】
熱交換システム及びダクトを備えない構成としてもよい。
この場合、強制給気手段、及び、強制排気手段のいすれか一方、又は、両方を備えない構成としてもよい。
このような場合、建物外部から、天井裏空間、床下空間、壁内空間を経由する空気を部屋内に給気するために、給気孔1に給気ファンを設ければよい。
【0042】
また、実施形態では、建物の外部から建物の内部に取り込んだ空気を建物内の複数の各部屋に分配するために複数の各部屋の天井に給気孔を設け、各給気孔の内側に抵抗装置を設けた例を示したが、必ずしも、建物内の複数の各部屋に分配する構成とする必要はない。即ち、建物内の特定の1つの部屋の天井、又は、床、あるいは、間仕切り壁に給気孔を設けて、当該給気孔の内側に空気が通過する際の抵抗となる抵抗装置を設けることにより、当該給気孔を介して空気が部屋に流入する際の音の大きさを大きくするようにすればよい。
【0043】
上述した給気手段13の円筒体、給気孔1を形成する円筒状部品1A、排気手段15の円筒体は、必ずしも円筒体でなくともよく、例えば角筒体などの筒体であってもよい。
【0044】
また、抵抗装置は、円形抵抗板、十字形抵抗板のいずれか一方のみを備えた構成であってもよい。
【0045】
また、抵抗装置は、給気孔の内側に空気が通過する際の抵抗となるものであれば、どのような構成であってもかまわない。
【0046】
また、実施形態では、建物としてマンション等の共同住宅を例示したが、本発明は、一戸建て、ホテル、事務所、その他の建物にも適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 給気孔、2,2A 抵抗装置、10 建物、11 天井、12 部屋、
21 円筒体、22 十字形抵抗板、23 円形抵抗板、26 板部、31 接続部、
36 板部、38 最外周スリット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9