(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】工作機械及び摩擦接合方法
(51)【国際特許分類】
B23K 20/12 20060101AFI20240410BHJP
B23B 19/02 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
B23K20/12 D
B23B19/02 C
B23K20/12 B
(21)【出願番号】P 2020143528
(22)【出願日】2020-08-27
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【氏名又は名称】遠藤 力
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敏之
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-224706(JP,A)
【文献】特開2002-224856(JP,A)
【文献】国際公開第2020/085453(WO,A1)
【文献】特開2020-116650(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0228978(US,A1)
【文献】特開平02-152701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/00 - 20/26
B23B 1/00 - 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材を把持可能な正面主軸と、
第2部材を把持可能な背面主軸と、
前記正面主軸と前記背面主軸との間に
配置され、前記背面主軸から前記正面主軸への向きが閉方向であり、前記正面主軸から前記背面主軸への向きが開方向であり、前記第1部材を支持するガイドブッシュ装置と、を有し、
前記正面主軸に把持された前記第1部材及び前記背面主軸に把持された前記第2部材を接触した状態で前記第1部材と前記第2部材との間の接合面に摩擦熱を発生して摩擦接合する工作機械であって、
前記摩擦接合する際に、前記正面主軸は第1移動速度で制御され、前記背面主軸は第2移動速度で制御され、
前記第1移動速度と前記第2移動速度の向きは、前記
閉方向と同じ向きであり、速さは前記第2移動速度の方が前記第1移動速度よりも大きい、
ことを特徴とする工作機械。
【請求項2】
第1部材を把持可能な正面主軸と、
第2部材を把持可能な背面主軸と、
前記正面主軸と前記背面主軸との間に
配置され、前記背面主軸から前記正面主軸への向きが閉方向であり、前記正面主軸から前記背面主軸への向きが開方向であり、前記第1部材を支持するガイドブッシュ装置と、を有し、
前記正面主軸に把持された前記第1部材及び前記背面主軸に把持された前記第2部材を接触した状態で、前記第1部材と前記第2部材との間の接合面に摩擦熱を発生して摩擦接合する工作機械による摩擦接合方法であって、
前記摩擦接合する際に、前記正面主軸は第1移動速度で制御され、前記背面主軸は第2移動速度で制御され、
前記第1移動速度と前記第2移動速度の向きは、前記
閉方向と同じ向きであり、速さは前記第2移動速度の方が前記第1移動速度よりも大きい、
ことを特徴とする摩擦接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械及び摩擦接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
円柱状の一対の部材を回転させながら接触させて摩擦熱を発生して、発生した摩擦熱によって一対の部材の間の接合面を軟化することで、一対の部材を接合する摩擦接合が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、円柱状の部材等のワークを把持する主軸と、主軸に把持された部材の先端近傍を支持するガイドブッシュ装置とを有する工作機械が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-285879号公報
【文献】特開2019-81237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ガイドブッシュ装置を有する工作機械により摩擦接合処理を実行すると、摩擦熱によりに部材の端部が膨張してガイドブッシュに接触したまま部材を主軸からガイドブッシュ装置に向けて移動すると、ガイドブッシュとガイドブッシュスリーブの係合が外れ、ガイドブッシュが開く可能性があった。また、ガイドブッシュ装置に支持される部材の軸中心とガイドブッシュ装置に支持された部材と摩擦接合される部材の軸中心が一致せず、芯ずれが生じる場合があった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するものであり、芯ずれを低減して摩擦接合が可能な工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る工作機械は、第1部材を把持可能な正面主軸と、第2部材を把持可能な背面主軸と、正面主軸と背面主軸との間に配置されるガイドブッシュ装置と、を有し、正面主軸に把持された第1部材及び背面主軸に把持された第2部材を接触した状態で第1部材と第2部材との間の接合面に摩擦熱を発生して摩擦接合する工作機械であって、摩擦接合する際に、正面主軸は第1移動速度で制御され、背面主軸は第2移動速度で制御され、第1移動速度と第2移動速度の向きは、背面主軸から正面主軸への向きと同じ向きであり、速さは第2移動速度の方が第1移動速度よりも大きい。
【0008】
また、本発明に係る工接合方法は、第1部材を把持可能な正面主軸と、第2部材を把持可能な背面主軸と、正面主軸と背面主軸との間に配置されるガイドブッシュ装置と、を有し、正面主軸に把持された第1部材及び背面主軸に把持された第2部材を接触した状態で、第1部材と第2部材との間の接合面に摩擦熱を発生して摩擦接合する工作機械による摩擦接合方法であって、摩擦接合する際に、正面主軸は第1移動速度で制御され、背面主軸は第2移動速度で制御され、第1移動速度と第2移動速度の向きは、背面主軸から正面主軸への向きと同じ向きであり、速さは第2移動速度の方が第1移動速度よりも大きい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るワークの製造方法及び工作機械は、芯ずれを低減して摩擦接合が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る工作機械の斜視図である。
【
図2】
図1に示すガイドブッシュ装置の断面図である。
【
図3】
図1に示す工作機械により実行される摩擦接合処理のフローチャートである。
【
図4(a)-4(d)】
図3に示す摩擦接合処理に含まれる処理を示す図(その1)であり、(a)はS101に示す処理を示し、(b)はS102に示す処理を示し、(c)はS103に示す処理を示し、(d)はS104に示す処理を示す。
【
図4(e)-4(h)】
図3に示す摩擦接合処理に含まれる処理を示す図(その2)であり、(e)はS105に示す処理を示し、(f)はS106に示す処理を示し、(g)はS107に示す処理を示し、(h)はS108に示す処理を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の様々な実施形態について説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、それらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0012】
(実施形態に係る工作機械の構成及び機能)
図1は、実施形態に係る工作機械の斜視図である。
【0013】
工作機械1は、ベッド10と、正面主軸11と、背面主軸12と、ガイドブッシュ装置13と、刃物台14と、NC装置18とを有する。ベッド10には、正面主軸11、背面主軸12、ガイドブッシュ装置13及び刃物台14が搭載される。正面主軸11は、円柱状の第1部材W1を把持可能な中空状の部材であり、レール15に沿って移動する移動機構上に設置されることによってZ1方向に移動可能である。背面主軸12は、第1部材W1と略同径の円柱状の第2部材W2を把持可能な中空状の部材であり、レール16及び17に沿って移動する移動機構上に設置されることによってZ2方向及びX2方向に移動可能である。正面主軸11と背面主軸12の回転や移動などは、工作機械1に搭載しているNC装置18によって、制御されている。
【0014】
ガイドブッシュ装置13を
図2に示す。ガイドブッシュ装置13は、工作機械のベッドに固定されるガイドブッシュホルダ24と、軸受23で回転可能に支持されたガイドブッシュスリーブ22と、ガイドブッシュスリーブ22に篏入されるガイドブッシュ21から構成されている。
【0015】
ガイドブッシュ装置13は、ガイドブッシュ21とガイドブッシュ21の後端部に螺合したドローバー25とを相対回転させることで、ガイドブッシュ21が図の左右方向に移動することで、先端外形部のテーパー面26がガイドブッシュスリーブ22の先端内径部のテーパー面27と係合し、その係合の度合いによってガイドブッシュ21の先端部の開き具合が調整され、第1部材W1を所定の開度で支持する。
【0016】
(第1実施形態に係る工作機械による摩擦接合処理)
図3は工作機械1により実行される摩擦接合処理のフローチャートであり、
図4は摩擦接合処理に含まれる処理を示す図である。
図3~4に示す摩擦接合処理は、NC装置18からの指令により工作機械1の各要素を制御するとともに協働して実行される。
【0017】
まず、NC装置18の指令により、第1部材W1を正面主軸11に配置すると共に、第2部材W2を背面主軸12に配置する(S101、a)。
【0018】
次いで、第1部材W1の回転を開始する(S102、b)。
【0019】
次いで、摩擦接合するために、第1部材W1及び第2部材W2を背面主軸12から正面主軸11への向きに移動する(S103、c)。このとき、NC装置18は、所定の第1移動速度V1で第1部材W1を移動するように正面主軸11を制御する。さらに、NC装置18は、第1移動速度V1よりも大きい所定の第2移動速度V2で第2部材W2を移動するように背面主軸12を制御する。第2部材W2が移動する第2移動速度V2が第1部材W1が移動する第1移動速度V1よりも大きいので、第2部材W2が第1部材W1に接触して第1部材W1と第2部材W2との間の接合面に摩擦推力が印加されて、摩擦接合が開始する。
【0020】
第1部材W1は所定の回転数RFで回転しながら第1速度V1で背面主軸12から正面主軸11への向きに移動し、第2部材W2は第1速度V1よりも大きい第1速度V1で第1部材W1と同じの向きに移動する。第1部材W1と第2部材W2との間の接合面の温度は、第1部材W1が回転することにより発生する摩擦による加熱により徐々に上昇する。
【0021】
次いで、第1部材W1と第2部材W2とが接触した後、摩擦による加熱で接合面が所定の温度になるまでの時間が経過した後に、NC装置18の指令により、第1部材W1は、回転を停止する(S104、d)。
【0022】
次いで、第1部材W1及び第2部材W2を背面主軸12から正面主軸11への向きに更に移動する(S105、e)。第1部材W1及び第2部材W2を背面主軸12から正面主軸11への向きに更に移動することで、第1部材W1と第2部材W2との間の接合面にアップセット推力に印加される。
【0023】
次いで、所定のアップセット時間に亘ってアップセット推力が接合面に印加された後、正面主軸11及び背面主軸12の移動を停止し、接合面へのアップセット推力の印加を停止する(S106、f)。
【0024】
次いで、NC装置18の指令により、接合面の周囲に形成されたバリを除去する(S107、g)。
【0025】
そして、第1部材W1と第2部材W2とを接合して形成された接合部材W3を引き抜き(S108、h)、処理は終了する。
【0026】
(実施形態に係る工作機械の作用効果)
工作機械1では、第1部材W1と第2部材W2との間の接合面に摩擦推力を印加するときに、第1部材W1及び第2部材W2の双方を背面主軸12から正面主軸11への向きに移動することで、第1部材が傾いてガイドブッシュに接触したときでもガイドブッシュ21とガイドブッシュスリーブ22の係合が外れることがなくなる。その結果、ガイドブッシュ21が開いて第1部材W1の軸と第2部材W2の軸がずれるおそれが低くなる。
【0027】
また、工作機械1では、第1部材W1と第2部材W2との間の接合面にアップセット推力を印加するときも摩擦推力の場合と同様に、第1部材W1及び第2部材W2の双方を背面主軸12から正面主軸11への向きに移動するので、ガイドブッシュ21が開いて第1部材W1の軸方向が第2部材W2の軸方向からずれるおそれが低くなる。
【符号の説明】
【0028】
1 工作機械
11 正面主軸
12 背面主軸
13 ガイドブッシュ装置
14 刃物台
18 NC装置