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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】クーラーボックス
(51)【国際特許分類】
   A01K 97/20 20060101AFI20240410BHJP
   A45C 11/00 20060101ALI20240410BHJP
   A45C 13/10 20060101ALI20240410BHJP
   B65D 81/38 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
A01K97/20 501
A45C11/00 L
A45C13/10 M
B65D81/38 P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020145606
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022040753
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】田中 綾一
(72)【発明者】
【氏名】早川 俊
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-278050(JP,A)
【文献】特開2018-039562(JP,A)
【文献】特開2004-238035(JP,A)
【文献】米国特許第06119858(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 97/20
A45C 11/00
A45C 13/10
B65D 81/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有し収納物を内部に収納できる本体部と、前記本体部に対して移動して前記開口部を開閉する蓋部と、を備え、
前記本体部及び前記蓋部のうち一方は、被係合部を備え、
前記本体部及び前記蓋部のうち他方は、
外部からの操作がなされる操作部と、
前記操作部の操作に応じてアンロック位置とロック位置の2位置に移動する移動部と、
前記移動部が接触することで前記移動部を前記アンロック位置から前記ロック位置に移動することを防止すると共に、前記操作部が操作された場合には、前記操作部にかかる操作力により前記移動部が接触をしない状態に変化して、前記移動部が前記ロック位置に移動することを許容する規制部と、
前記被係合部に対して移動可能であって、前記移動部が前記ロック位置へ移動することにより前記被係合部に係合することで、前記蓋部を閉じ状態で保持するロック機構部と、
を備え
前記規制部は、前記操作部の操作がない場合は、前記移動部との接触した状態を保つクーラーボックス。
【請求項2】
前記移動部を前記アンロック位置へ付勢する付勢部を備える、請求項1に記載のクーラーボックス。
【請求項3】
前記規制部は段差を有し、
前記移動部は、前記アンロック位置では前記段差に接触することで意図しない前記アンロック位置から前記ロック位置への移動を防止し、前記操作部の操作により前記段差を乗り越え、前記ロック位置に移動する、請求項1または2に記載のクーラーボックス。
【請求項4】
前記本体部は、前記被係合部を備え、
前記蓋部は、前記操作部、前記移動部、前記規制部、前記ロック機構部を備え、
前記操作部は、前記操作に伴う外力を受け、前記ロック機構部を作動させる力の起点となる作動起点部を備え、
前記作動起点部は、前記ロック機構部と連動するよう回動可能に支持され、
前記蓋部での外方位置に前記作動起点部が設けられ、前記蓋部での内方位置に前記移動部が設けられ、
前記操作部においてユーザーが把持することで前記外力を入力する部分である把持部が、前記作動起点部よりも更に前記蓋部での外方位置に設けられ、
前記把持部から前記移動部を経て前記作動起点部に至る力の経路が梃子として機能し、
前記作動起点部から前記梃子において支点となる前記移動部までの距離に比べ、前記把持部において前記蓋部での内外方向で前記外力のかかる位置から前記移動部までの距離が長い、請求項1~3のいずれかに記載のクーラーボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クーラーボックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
魚等を収納するために用いられるクーラーボックスとして、例えば特許文献1に記載されたものがある。このクーラーボックス(特許文献1では「保冷箱」)は、箱本体と開閉のための蓋とを備えており、蓋を閉じた状態で保つためのロック装置(特許文献1では「開閉装置」)を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4963258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなクーラーボックスでは、ユーザーが意図していないのにロック装置が働いてロックが掛かり、蓋が開放できない状態になることがあったため、使い勝手の点で改良の余地があった。
【0005】
そこで本発明は、ロック装置に関して使い勝手を向上したクーラーボックスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、開口部を有し収納物を内部に収納できる本体部と、前記本体部に対して移動して前記開口部を開閉する蓋部と、を備え、前記本体部及び前記蓋部のうち一方は、被係合部を備え、前記本体部及び前記蓋部のうち他方は、外部からの操作がなされる操作部と、アンロック位置とロック位置の2位置に移動する移動部と、前記移動部が接触することで前記移動部を前記ロック位置に移動することを防止すると共に、前記操作部が操作された場合には前記移動部が前記ロック位置に移動することを許容する規制部と、前記被係合部に対して移動可能であって、前記移動部が前記ロック位置へ移動することにより前記被係合部に係合することで、前記蓋部を閉じ状態で保持するロック機構部と、を備えるクーラーボックスである。
【0007】
この構成によれば、操作部の操作以外の、ユーザーが意図しない外力が操作部にかかっても、規制部により移動部がアンロック位置に保持されているため、ロック機構部が作動しない。
【0008】
そして、前記移動部を前記アンロック位置へ付勢する付勢部を備えるものとできる。
【0009】
この構成によれば、付勢部により、移動部をアンロック位置に保持できる。
【0010】
そして、前記規制部は段差を有し、前記移動部は、前記アンロック位置では前記段差に接触することで意図しない前記アンロック位置から前記ロック位置への移動を防止し、前記操作部の操作により前記段差を乗り越え、前記ロック位置に移動するものとできる。
【0011】
この構成によれば、段差を利用することで、規制部を簡単な構成とできる。
【0012】
そして、前記本体部は、前記被係合部を備え、前記蓋部は、前記操作部、前記移動部、前記規制部、前記ロック機構部を備え、前記操作部は、前記操作に伴う外力を受け、前記ロック機構部を作動させる力の起点となる作動起点部を備え、前記作動起点部は、前記ロック機構部と連動するよう回動可能に支持され、前記蓋部での外方位置に前記作動起点部が設けられ、前記蓋部での内方位置に前記移動部が設けられ、前記操作部においてユーザが把持することで前記外力を入力する部分である把持部が、前記作動起点部よりも更に前記蓋部での外方位置に設けられ、前記作動起点部から前記移動部までの距離に比べ、前記把持部から前記移動部までの距離が長いものとできる。
【0013】
この構成によれば、梃子の原理により、ロック機構部を操作するための把持部に加えられる力を比較的小さな力とできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、操作部の操作以外の外力が操作部にかかってもロック機構部が作動しない。このため、ロック装置に関して使い勝手を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るクーラーボックスで、蓋部が開かない状態(レバーがロック状態)を示す斜視図である。
図2】同クーラーボックスのレバー周りであって、レバーのアンロック状態を示す要部拡大斜視図である。
図3】同クーラーボックスのロック装置のうち、図1に示す左側に設けられた1組を抜き出して示す斜視図である。
図4】同クーラーボックスの長手方向中央での要部縦断面図であり、レバー(アンロック状態)に外力がかかってもロック機構部が作動しない状態を示す。
図5】同クーラーボックスの長手方向中央での要部縦断面図であり、ユーザーのレバー操作によりロック機構部が作動した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明につき、一実施形態を取り上げて説明を行う。本実施形態のクーラーボックス1の形状を図1に示す。ただし、図1において本体部2の外観は輪郭のみを二点鎖線で表示している。なお、以下の説明における表現にて、「上・下」、「高・低」、「水平」は、図1図5の図示状態に対応する。「内・外」は、図1に示す蓋部3の平面視での中央部分を向いた方向を内方とし、蓋部3の平面視での端縁を向いた方向を外方とする。図4及び図5では図示右方が内方であり、図示左方が外方である。
【0017】
本実施形態のクーラーボックス1は、基本的には従来のものと同様で、上方に開口した開口部21を有し、魚等の収納物を内部に収納できる本体部2と、本体部2に対して移動して開口部21を開閉する蓋部3と、を備える。そして、図3に示すように、本体部2と蓋部3とにわたって、蓋部3を閉じ状態で保持する(開かない状態とする)ためのロック装置Lが設けられている。ロック装置Lは、図3図5に示すように、本体部2に設けられる被係合部22と、蓋部3に設けられるレバー31、アンロック保持部32、規制部33、ロック機構部34の組み合わせとで構成されている。クーラーボックス1は2組のロック装置L,Lを有し、本体部2及び蓋部3における二つの長辺のそれぞれに1組ずつ設けられている。図3にはそのうち、図1における左側の長辺に設けられた1組を抜き出して示している。
【0018】
本体部2は、被係合部としての固定軸22を備える(図3図5参照)。固定軸22は、図3に示すような金具の一部であって、この金具が本体部2の壁面にねじ止め等されたことで、本体部2に固定的に設けられている。本実施形態の本体部2では、固定軸22が、本体部2の開口部21における二つの長辺にそれぞれ沿って、軸心が水平方向に延びるように設けられている。例えば、本体部2の各長辺において、固定軸22が、長手方向中央に対して対称の位置に2本設けられている。この固定軸22は、開口部21の外側に配置されている。本実施形態の固定軸22は、例えば、断面形状が円形状の直棒状である。
【0019】
蓋部3は、開口部21を覆う蓋部本体3Aと、ユーザーがクーラーボックス1の外部から操作する操作部としてのレバー31と、レバー31に連動するロック機構部34(図3参照)を備える。レバー31は、図1及び図5に示す、蓋部本体3Aとの関係で寝た状態がロック状態で、図2及び図4に示す、一部が上方に飛び出た状態がアンロック状態である。
【0020】
本実施形態の蓋部3は「両開き」とされており、蓋部3の本体部2に対する移動は、例えば開口部21の上方に略平行状態で移動し、蓋部3の全体が本体部2から離反するような移動とできる。また、蓋部3の本体部2に対する移動は、後述するレバー31の一方をロック状態とし、他方をアンロック状態とすることで、平面視形状における平行な二つの長辺のうち一つに設けられた1組のロック装置Lをヒンジとして機能させ、他の一つの長辺側において蓋部3が持ち上がって蓋部3が回動するような移動ともできる。これらの移動により、蓋部3は、閉じ状態と開き状態とにできる。
【0021】
レバー31は、図1に示すように、蓋部3の長辺を有する両端部における長手方向中央に設けられている。また、レバー31は、その一部が上下方向に移動可能である。具体的にレバー31は、図1図2図4図5に示すように、蓋部本体3Aに対して外側部分(把持部312)が上下方向に移動するように設けられている。
【0022】
レバー31は、ユーザーが指を掛けて把持することで、レバー31を操作するための外力を入力する部分である把持部312を備える。把持部312は板状で外方に張り出すように形成されており、下面にユーザーの指が掛けられる。本実施形態の把持部312は、ユーザーが外側から内側に向けて手を差し込むことのできるよう、レバー31における外側に設けられている。このようにすることで、レバー31において把持部312が内側に設けられた場合と比べ、蓋部3でレバー31を設けるために必要なスペースを減らすことができ、その分、蓋部3の内部において断熱材の配置可能な容積を増やすことができる。また、レバー31を蓋部3の外側に寄せることができるので、蓋部3に現れる段差を減らすことができ、ユーザーがクーラーボックス1に腰掛けた場合のユーザーの違和感を減少できる。また、クーラーボックス1の側方からも、ユーザーがレバー31を操作できる。
【0023】
レバー31における把持部312はユーザーに操作(ユーザーによる意図的な操作)がされていないとき、引張ばねである付勢部323(図4及び図5参照)の弾性力により蓋部本体3Aに対して斜め上方に付勢(ばね付勢)されている。付勢部323が引張り方向に付勢することにより、レバー31はアンロック状態に保持される。レバー31がユーザーに操作されると(例えば、ユーザーによりレバー31の把持部312が、移動部322が規制部33の段差331を乗り越える程度の力で押し下げられると)、レバー31は蓋部本体3Aに対し、レバー31の回動軸であるレバー支持軸311の軸心を中心として回動する。レバー31とロック機構部34とは図3に示すように物理的に連結されていて、レバー31の操作によって一体に移動する。このため、レバー31を移動させると、変位がレバー支持軸311を介してロック機構部34に伝達されることにより、ロック部材341が連動(回動)する。
【0024】
レバー支持軸311は、断面形状が円形状の直棒状であり、蓋部3における二つの長辺にそれぞれ沿って、軸心が水平方向に延びるように設けられている(図3には一つの長辺に沿うものが示されている)。レバー支持軸311は、ロック機構部34と連動するよう回動可能に支持される。本実施形態では、レバー支持軸311は回動軸342により回動可能に支持される。つまり、図4及び図5に示すように、レバー支持軸311の軸心はロック装置Lにおいて不動ではなく、回動軸342を中心に回動する。ただし、この回動は移動部322と規制部33とによって規制される。レバー支持軸311は、ユーザーによるレバー31の操作に伴う外力を受け、ロック機構部34を作動させる力の起点となる作動起点部として機能する。この機能については後述する。
【0025】
レバー31には、図3に示すようにアンロック保持部32が接続されている。アンロック保持部32は、レバー延長部321と移動部322とを備える。レバー延長部321は、レバー31の長手方向両端から蓋部3の内方に延びる、2本の枝状の部分である。移動部322は、断面形状が円形状の直棒状であり、両端がレバー延長部321,321に支持されている。移動部322の軸心は、レバー支持軸311の軸心に対して平行とされている。
【0026】
移動部322は、図4に示すアンロック位置と図5に示すロック位置の2位置に移動する。移動部322は、蓋部3においてレバー31の内側下方に設けられた規制部33に対し、接触し得ることで、意図しないロック位置への移行を防止する。詳しくは、移動部322は、アンロック位置では規制部33の有する段差331に対して離れているか接触しており、段差331を乗り越え、ロック位置に移動する。移動部322は、レバー支持軸311に対して所定範囲内で接近及び離反できる。
【0027】
アンロック保持部32は、移動部322を固定突起35の方向に付勢することで、移動部322をアンロック位置に保持する付勢部323を備える。本実施形態の付勢部323はコイル状の引張ばねを備えている。この付勢部323における一端部は移動部322に取り付けられており、他端部は蓋部3に形成された、不動である前記固定突起35に取り付けられている。また、規制部33に移動部322を接触させることで、段差331を乗り越えることを防止し、移動部322をアンロック位置に保持できる。
【0028】
以上、移動部322と規制部33との組み合わせによって、レバー31とロック機構部34との連動がされる場合(ロック機構部34が作動できる状態に対応)と、連動がされない場合(ロック機構部34が作動できない状態に対応)とを設けることができる。
【0029】
ここで、本実施形態のクーラーボックス1において、レバー31(把持部312)の操作力を小さくするための構成について説明する。作動起点部としてのレバー支持軸311は、蓋部3での外方位置に設けられている。移動部322は、蓋部3での内方位置に設けられている。また、把持部312は、レバー支持軸311よりも更に蓋部3での外方位置に設けられている。更に、図5に示すように縦断面視にて、レバー支持軸311から移動部322までの直線距離L311に比べ、把持部312から移動部322までの直線距離L312(説明上、把持部312において操作力がかかる位置を図5に示した矢印P3bの位置とする)が長く設定されている。このように各部の距離が設定されたことから、規制部33の段差331を乗り越えて内方に移動し、規制部33に載った状態の移動部322が支点、操作力がかかる把持部312が力点、回動軸342に対して回動するレバー支持軸311が作用点となるように形成された梃子において、梃子の原理により、ロック機構部34を操作するための把持部312に加えられる力を、例えば把持部が蓋部での内方位置に設けられ、ユーザーが内側から外側に向けて把持部に手を差し込む構成であって、この把持部を蓋部の外縁に近づけるように設けたものに比べると、比較的小さな力とできる。
【0030】
規制部33は、移動部322が接触することで移動部322をアンロック位置に保持すると共に、レバー31が操作された場合には移動部322が段差331を乗り越えて、移動部322がロック位置に移動することを許容する。
【0031】
規制部33は段差331を有する。段差331は図5に示す形状であって、蓋部3における外側に比べて内側が高く形成されている。段差331における低い部分と高い部分との間で立ち上げられた壁部3311に、アンロック位置の移動部322が接触することで意図しないロック位置への移行を防止する。本実施形態ではこのとき、移動部322が付勢部323により付勢されて移動部322の状態を保持している。移動部322の位置(アンロック位置、ロック位置)は、移動部322が段差331を乗り越えるか否かにより定まる。従って、本実施形態のクーラーボックス1では、移動部322のロック位置への移動の防止、及び、ロック位置への移動の許容を、規制部33が有する部分形状である段差331を利用して行う。このため、規制部33を簡単な構成とできる。
【0032】
レバー31の操作以外の外力(クーラーボックス1にかかる振動や衝撃等による、ユーザーの意図とは関係ない外力)は、例えば、図4に矢印P3aを記載したように、レバー31に内外の偏りなく下方にかかる。移動部322は、付勢部323により付勢されている。しかし、前記下方にかかる力では、移動部322は段差331に接触するだけであり上方に移動しないため、段差331を乗り越えることがない。移動部322が上方に移動しないと、壁部3311のために段差331を乗り越えられないからである。この状態では、移動部322のロック位置への移動が防止されるので、レバー支持軸311が回動軸342に対して回動しない。このため、ロック機構部34が作動しない。
【0033】
一方、ユーザーによりレバー31(把持部312)が操作された場合、外力である操作力は、例えば、図5に矢印P3bを記載したように、レバー31での外側に位置する把持部312において下方にかかる。この力が作動起点部であるレバー支持軸311に伝達され、レバー支持軸311が回動軸342に対して回動する。この回動と並行して、レバー支持軸311を支点(ただし、この支点としての支持軸311は不動ではなく、前述のように回動軸342に対して移動(回動)する)、把持部312が力点、移動部322が作用点となる梃子の関係が、移動部322が段差331を乗り越えるまでの間、一時的に生じ、その結果、移動部322が上昇する(図5のレバー支持軸311周りに示した、移動部322の移動に関する反時計回りの矢印M322)。段差331における壁部3311よりも上方に移動部322が上昇する。この上昇の際、移動部322は壁部3311に接触することもあるし、接触しないこともある。移動部322が上昇すると、移動部322の内方に壁部3311が位置しないようになるので、移動部322が規制部33の上方で内方に移動する。この移動部322の内方への移動に伴い、図5に示すように、付勢部323である引張ばねは伸長する。これが段差331を乗り越えた状態である。そうすると、レバー支持軸311が回動軸342に対して回動することが阻止されなくなるため、レバー支持軸311が移動可能範囲を、図5に示した位置まで下がりきるように移動してロック機構部34が作動する。この際の梃子の原理による操作力の低減作用は前述した通りである。
【0034】
このように、外部からレバー31が操作されないとき、ユーザーが意図しない場合に蓋部3が閉じ状態で保持されること(開けられなくなること)を防止できる。これにより、例えば、蓋部3の任意の場所を掴んで蓋部3の開け閉め操作ができるため、狭い釣り船の上でクーラーボックスを使用する際の操作性を向上できる。また、ユーザーは、収納物としての釣り上げた大量の魚を、順次、クーラーボックス1内に収納する際に、レバー31の操作を行わなくても、蓋部3を開閉して容易に収納することができる。
【0035】
ロック機構部34は、固定軸22に対して移動可能であり、移動部322の規制部33における段差331を乗り越えたことにより固定軸22に係合することで、蓋部3を閉じ状態で保持する。
【0036】
ロック機構部34は、固定軸22に係合する係合片としてのロック部材341を備える。本実施形態の蓋部3では、ロック部材341が、蓋部3における二つの長辺にそれぞれ沿って設けられている。例えば、蓋部3の各長辺において、ロック部材341が、長手方向中央に対して対称の位置に2個設けられている。各ロック部材341は、図4及び図5に示すように、本体部2が備える固定軸22に対して移動(回動)可能である。さらに、各ロック部材341は、固定軸22に係合する係合部としての爪部3411を有する。爪部3411は、固定軸22に対する回動範囲の一方側を向いている。本実施形態の爪部3411は、固定軸22を基準とした奥側(図4及び図5における左側)を向いている。
【0037】
ロック機構部34における2個のロック部材341,341は、連結部343により連結され一体となっている。そしてロック機構部34は、連結部343から上方に立ち上げられ内方に延びるL字状の回動枝部344が一体に設けられている。回動枝部344は、レバー31を挟んで2個設けられている。2個の回動枝部344,344には、レバー31のレバー支持軸311が貫通して固定されている。
【0038】
また、ロック部材341は、蓋部本体3Aに対して回動する。ロック部材341の回動範囲は、本体部2の固定軸22を基準とした場合に手前側(図4参照)から、爪部3411が固定軸22に並ぶ位置(図5参照)までわたるように設定されている。なお、爪部3411が固定軸22を越えた奥側に至るまで設定してもよい。ロック部材341は、ロック部材341の回動中心である回動軸342を基準として、蓋部3を水平とした場合で下方に延びている。なお、本実施形態のロック部材341は、例えば、ポリアセタール樹脂のような樹脂や、樹脂にガラスを混入した材料で形成されている。
【0039】
爪部3411は、固定軸22に対して移動可能であって、外部からの操作(例えば、ユーザーによる外部からのレバー31の操作(意図的な操作))により固定軸22に係合することで、蓋部3を閉じ状態で保持する。また、爪部3411は、固定軸22に対して係合されたロック状態(図5参照)と、前記係合(固定軸22に対する係合)が解除されたアンロック状態(図4参照)との間で移動可能である。本実施形態の爪部3411は、開口部21に近い側から固定軸22に近づくように(図示の時計回り)に移動可能である。さらに、爪部3411は、外部からの操作がされないとき、アンロック状態で維持可能であり、板ばね345の弾性力よりも大きい力で外部からの操作がされることにより板ばね345に、板ばね345を変形させ得る力が加わったとき、アンロック状態からロック状態に移動する。
【0040】
ロック機構部34は、ロック部材341の爪部3411と連動し且つ弾性力を有する弾性部として板ばね345を備える。板ばね345は、金属や樹脂といった弾性材料により構成されている。具体的に、板ばね345は、ステンレス鋼製である。ロック部材341には、内外方向で貫通する貫通孔346が設けられている。板ばね345は、貫通孔346に挿通されている。なお、貫通孔346の形成は必須ではなく、板ばね345がロック部材341を貫通しなくてもよい。
【0041】
以上、本実施形態のクーラーボックス1では、規制部33が移動部322をロック位置に移動することを防止できることから、レバー31の操作以外の外力がレバー31にかかっても、規制部33により移動部322がアンロック位置に保持されているため、ロック機構部34が作動しない。このため、クーラーボックス1における蓋部3のロック装置に関して使い勝手を向上できる。
【0042】
以上、本発明の一実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるもの
ではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0043】
例えば、前記実施形態の蓋部3は「両開き」であったが、蓋部3において、平面視形状における平行な二つの長辺のうち一つにつき、前述した1組のロック装置Lとは異なる、本体部2から分離不能なヒンジ(例えば一般的に流通しているヒンジ)が設けられたことによる「片開き」とすることもできる。
【0044】
また、前記実施形態のクーラーボックス1では、本体部2に設けられた被係合部としての固定軸22と、蓋部3に設けられた、固定軸22に係合するロック機構部34とを備えていたが、これとは逆に、本体部2がロック機構部を備え、蓋部3が被係合部を備えていてもよい。
【0045】
また、前記実施形態の操作部は、把持部312が上下方向に移動可能なレバー31であったが、水平方向または上下方向に、直線軌跡で移動可能な部材であってもよい。この場合、前記移動部322に相当する部材がレバー31の移動に伴い直線軌跡で移動するものであってもよい。例えば、前記レバー31に相当するスライド部材を、蓋部本体3Aに対して水平方向等にスライドさせることにより、スライドによる力がロック部材341に伝達され、ロック部材341が、アンロック状態からロック状態に移動する構成であって、しかも、前記規制部33に相当する部材が、前記移動部322に相当する部材が接触することでアンロック位置に移動することを防止されると共に、スライド部材が操作された場合には前記移動部322に相当する部材をロック位置に移動することを許容する構成とすることが考えられる。
【0046】
なお、蓋部3は、既存のクーラーボックスの蓋部の代わりに用いられ、既存のクーラーボックスの本体部に取り付けるように構成することも可能である。取り替えた蓋部3を本体部に取り付けたクーラーボックスでは、前記実施形態のクーラーボックス1と同じく、外部から操作されないとき、係合部(爪部3411)は常に被係合部(固定軸22)に対する係合が解除された状態で維持されるため、ユーザーが意図しない場合に蓋部3が閉じ状態で保持されることを防止できる。よって、既存のクーラーボックスの蓋部を上述のような蓋部3に交換するだけで、既存のクーラーボックスをより使い勝手を向上したものに改良できる。
【符号の説明】
【0047】
1…クーラーボックス、2…本体部、3…蓋部、3A…蓋部本体、21…開口部、22…固定軸(被係合部)、31…レバー(操作部)、311…レバー支持軸(作動起点部)、312…把持部、321…レバー延長部、322…移動部、323…付勢部、331…段差、3311…壁部、34…ロック機構部、341…ロック部材、342…回動軸、343…連結部、344…回動枝部、345…板ばね、346…貫通孔、35…固定突起、L…ロック装置
図1
図2
図3
図4
図5