(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】材料吹付装置及び材料吹付方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/02 20060101AFI20240410BHJP
E04G 11/22 20060101ALI20240410BHJP
E04G 13/02 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
E04G21/02
E04G11/22 A
E04G13/02 Z
E04G21/02 103B
(21)【出願番号】P 2020170543
(22)【出願日】2020-10-08
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】デヴィン グナワン
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 直樹
(72)【発明者】
【氏名】松田 有加
(72)【発明者】
【氏名】小林 聖
(72)【発明者】
【氏名】中村 真人
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-076168(JP,U)
【文献】特開平02-132272(JP,A)
【文献】特開平03-013663(JP,A)
【文献】特開昭61-207745(JP,A)
【文献】特開昭62-284899(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3575054(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 9/00-19/00
E04G 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の芯材に対向すると共に、前記芯材に沿って移動する移動式型枠と、
前記移動式型枠と前記芯材の間に材料を吹き付ける吹付ノズルと、
を備え、
前記吹付ノズルは、前記芯材及び前記移動式型枠の間に形成される空間に対し、前記移動式型枠の型枠面に沿う方向に材料を吹き付け
、
前記材料は、吹き出された時点で自立可能なセメント系吹付材料であり、前記セメント系吹付材料の吹付によって前記構造物の外殻構造が構築される、
材料吹付装置。
【請求項2】
前記吹付ノズルは、前記空間の鉛直上方に設けられ、前記空間の鉛直上方から鉛直下方に材料を吹き付ける、
請求項1に記載の材料吹付装置。
【請求項3】
前記移動式型枠を移動させる移動機構を備え、
前記移動機構は、前記移動式型枠が移動する方向に延びる移動フレームと、前記移動フレームに沿って前記移動式型枠を移動させる駆動部と、を有する、
請求項1又は2に記載の材料吹付装置。
【請求項4】
前記吹付ノズルの向きを可変とするノズル向き調整機構を備える、
請求項1~3のいずれか一項に記載の材料吹付装置。
【請求項5】
構造物の芯材に対向する位置に移動式型枠を配置する工程と、
前記移動式型枠と前記芯材の間に吹付ノズルから材料を吹き付ける工程と、
を備え、
前記材料を吹き付ける工程では、前記芯材及び前記移動式型枠の間に形成される空間に対し、前記移動式型枠の型枠面に沿う方向に材料を吹き付け
、
前記材料は、吹き出された時点で自立可能なセメント系吹付材料であり、前記セメント系吹付材料の吹付によって前記構造物の外殻構造が構築される、
材料吹付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、時間の経過と共に硬化する材料を吹き付ける材料吹付装置及び材料吹付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、材料を吹き付ける工法については種々のものが知られている。特許文献1には、コンクリート端部間の隙間に樹脂モルタルを吹き付けてジョイントするプレハブジョイントの施工方法が記載されている。この施工方法では、一対のコンクリートの間に配置される自走吹付装置が用いられる。
【0003】
自走吹付装置は一対のコンクリート板に対向する走行型枠を備え、走行型枠の型枠面にはホースからの樹脂モルタルを吹き付ける複数の開口が形成されている。走行型枠は、樹脂モルタルの硬化反応時間に対応した速度で移動する。この自走吹付装置では、一対のコンクリート板の間の間隙に型枠面が対向するように走行型枠が配置され、当該間隙にホースから樹脂モルタルが充填される。
【0004】
樹脂モルタルは一対のコンクリート板及び型枠面によって画成された上記の隙間において硬化し、樹脂モルタルが硬化した後に走行型枠が上方に走行する。このように、隙間への樹脂モルタルの充填、充填した樹脂モルタルの硬化、及び走行型枠の上方移動、を繰り返して自走吹付装置による樹脂モルタルの充填作業が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した自走吹付装置では、樹脂モルタルを吹き付ける開口が型枠面の直交方向を向いており、樹脂モルタルは型枠面に対して直交方向に吹き付けられる。よって、樹脂モルタルは、型枠面に直交する方向に吹き付けられるので、吹き付けられた樹脂モルタルが飛び散ったり、はね返って落下したりすることがある。このように吹き付けられる材料が飛び散ったりはね返って落下したりすることがあるので、材料のロスが大きくなることが懸念される。
【0007】
本開示は、材料のロスを低減させることができる材料吹付装置及び材料吹付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る材料吹付装置は、構造物の芯材に対向すると共に、芯材に沿って移動する移動式型枠と、移動式型枠と芯材の間に材料を吹き付ける吹付ノズルと、を備え、吹付ノズルは、芯材及び移動式型枠の間に形成される空間に対し、移動式型枠の型枠面に沿う方向に材料を吹き付け、材料は、吹き出された時点で自立可能なセメント系吹付材料であり、セメント系吹付材料の吹付によって構造物の外殻構造が構築される。
【0009】
この材料吹付装置では、芯材に材料が吹き付けられる。このとき、移動式型枠が空間を隔てて芯材に対向し、吹付ノズルから材料が当該空間に吹き付けられる。吹付ノズルは、当該空間に対し、移動式型枠の型枠面に沿う方向に材料を吹き付ける。従って、材料は芯材及び移動式型枠の型枠面で囲まれた空間に型枠面に沿う方向に吹き付けられるので、吹き付けられた材料を飛び散らないようにすることができる。すなわち、吹き付けられた材料が飛び散ったり跳ね返ったりすることを抑制することができる。よって、芯材と移動式型枠の間に形成された空間に効率よく材料を充填することができるので、吹き付けられる材料のロスを低減させることができる。
【0010】
吹付ノズルは、空間の鉛直上方に設けられ、空間の鉛直上方から鉛直下方に材料を吹き付けてもよい。この場合、芯材と移動式型枠の間に形成される空間に対して鉛直下方に材料が吹き付けられるので、当該空間から外への材料の飛散を抑制することができる。従って、材料のロスをより確実に低減させることができる。
【0011】
前述した材料吹付装置は、移動式型枠を移動させる移動機構を備え、移動機構は、移動式型枠が移動する方向に延びる移動フレームと、移動フレームに沿って移動式型枠を移動させる駆動部と、を有してもよい。この場合、駆動部の駆動力によって、移動フレームに沿って移動式型枠を移動させることができる。従って、移動式型枠の移動を容易に行うことができるので、材料の吹付及び硬化の作業を効率よく行うことができる。
【0012】
前述した材料吹付装置は、吹付ノズルの向きを可変とするノズル向き調整機構を備えてもよい。この場合、ノズル向き調整機構によって吹付ノズルの向きを変えながら材料の吹付を行うことができる。よって、吹き付けられる材料の量の偏りを低減させて、材料の吹付の均一性を高めることができる。
【0013】
本開示に係る材料吹付方法は、構造物の芯材に対向する位置に移動式型枠を配置する工程と、移動式型枠と芯材の間に吹付ノズルから材料を吹き付ける工程と、を備え、材料を吹き付ける工程では、芯材及び移動式型枠の間に形成される空間に対し、移動式型枠の型枠面に沿う方向に材料を吹き付け、材料は、吹き出された時点で自立可能なセメント系吹付材料であり、セメント系吹付材料の吹付によって構造物の外殻構造が構築される。
【0014】
この材料吹付方法では、移動式型枠を空間を隔てて芯材に対向させる。そして、当該空間に吹付ノズルから材料を吹き付ける。このとき、当該空間に対し、吹付ノズルから、移動式型枠の型枠面に沿う方向に材料が吹き付けられる。すなわち、芯材及び移動式型枠に沿う方向に材料が吹き付けられる。従って、材料は芯材及び型枠面に当たらないように吹き付けられるので、材料が飛び散ったり跳ね返ったりすることを抑制することができる。よって、前述した材料吹付装置と同様、芯材と移動式型枠の間に材料を効率よく充填することができるので、吹き付けられる材料のロスを低減させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、材料のロスを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1(a)は、コンクリート構造物の鋼材の例を示す斜視図である。
図1(b)は、コンクリート構造物の芯材の例を示す斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1(b)の芯材にセメント系吹付材料が吹き付けられて外殻が形成される状態を示す斜視図である。
図2(b)は、構築された外殻から芯材が撤去される状態を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、完成したコンクリート構造物の例を示す斜視図である。
【
図4】
図4(a)、
図4(b)及び
図4(c)は、第1実施形態に係る材料吹付装置によって芯材に材料を吹き付ける手順を示す縦断面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る材料吹付装置の移動式型枠を示す側面図である。
【
図6】
図6(a)は、吹き付けられた材料の例を示す図である。
図6(b)は、吹き付けられた材料の
図6(a)とは異なる例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る材料吹付装置の構成の例を示す側面図である。
【
図9】
図9(a)、
図9(b)及び
図9(c)は、ノズルの向きを変えながら材料を吹き付ける状態の例を示す図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る材料吹付装置のノズル向き可変機構を模式的に示す側面図である。
【
図11】
図11(a)及び
図11(b)は、第1実施形態に係る材料吹付装置によって2層目の材料を吹き付ける状態を示す断面図である。
【
図12】
図12(a)は、材料吹付装置の移動式型枠の変形例を示す側面図である。
図12(b)は、
図12(a)の移動式型枠を示す平面図である。
【
図14】
図14は、第2実施形態に係る材料吹付装置を示す側面図である。
【
図15】
図15は、第2実施形態に係る材料吹付装置の移動式型枠を移動させる態様を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図面を参照しながら、本開示に係る材料吹付装置及び材料吹付方法の実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0018】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る材料吹付装置及び材料吹付方法では、構造物が構築される。構造物は、一例として、コンクリート構造物である。一般的に、コンクリート構造物を構築するときには、鉄筋を組み立てた後に鉄筋を囲むように型枠を配置し、型枠の内部にコンクリートを打設し、一定期間養生した後に脱枠を行って構造物が構築される。このように、構造物の構築では、型枠の配置を含む複数の工種が混在しており、作業が煩雑であるという現状がある。また、近年は、建設技能者が不足しており、例えば型枠大工等、大工作業員の減少が生じており、今後は大工作業員の人員確保が困難となることが懸念される。
【0019】
本実施形態に係る材料吹付装置及び材料吹付方法では、セメント系吹付材料の吹付によって構造物の外殻構造を構築するため、型枠の配置を不要とすることができ、作業を効率よく行うことができる。その結果、大工作業員等の作業者が不足する状況下であっても、構造物の構築作業を効率よく行うことができる。
【0020】
最初に構造物の構築の例について説明する。本実施形態では、コンクリート構造物を構築する。まず、
図1(a)及び
図1(b)に示されるように、芯材1を設置する。芯材1は、例えば、鋼材2と、エアチューブ3とを含む。一例として、鋼材2は、H鋼2bとL鋼2cを含む。しかしながら、鋼材は鉄筋等でもよく、その種類は特に限定されない。また、芯材は、エアチューブ3に代えて、エキスパンドメタルを含んでいてもよく、芯材の種類も特に限定されない。
【0021】
まず、長手方向が鉛直方向D1に沿うように立てた複数の鋼材2を第1方向D2及び第2方向D3のそれぞれに沿って並ぶように配置する。このとき、平面視において複数の鋼材2が枠状となるように複数の鋼材2を配置する。第1方向D2は平面視における複数の鋼材2の長手方向を示しており、第2方向D3は平面視における複数の鋼材2の短手方向を示している。
【0022】
平面視において、複数の鋼材2は矩形枠状を成すように配置されてもよい。この場合、4本のL鋼2cが平面視における鋼材2の隅部を構成し、複数のH鋼2bが平面視における鋼材2の辺部を構成する。例えば、各H鋼2bはフランジ部が平面視における鋼材2の外側を向くように配置され、各L鋼2cはL字の外側の面が平面視における鋼材2の外側を向くように配置される。
【0023】
例えば、第1方向D2に沿って並ぶ複数本(3本)のH鋼2bからなる2つの組C1を第2方向D3に沿って並べた後に、各組C1の一端及び他端のそれぞれにL鋼2cを配置する。そして、第2方向D3に沿って並ぶ一対のL鋼2cの間にH鋼2bを配置する。一例として以上のように鋼材2を配置するが、鋼材2の種類、本数及び配置態様は上記の例に限られず適宜変更可能である。
【0024】
鋼材2を配置した後にはエアチューブ3を配置する。エアチューブ3は、例えば、柱状を呈する。長手方向に直交する方向に切断したエアチューブ3の断面は、例えば、角丸長方形状とされている。エアチューブ3は一対の鋼材2の間に配置される。具体例として、エアチューブ3は、H鋼2bのウェブとL鋼2cの内面との間、及び、第1方向D2に沿って並ぶ一対のH鋼2bのウェブ同士の間、のそれぞれに配置される。
【0025】
例えば、エアチューブ3は、長手方向に直交する平面で切断した断面の断面積が大きい第1エアチューブ3bと、当該断面の断面積が小さい第2エアチューブ3cとを含んでいてもよい。一例として、第1エアチューブ3bは当該断面の長辺が第1方向D2に沿うように配置され、第2エアチューブ3cは当該断面の長辺が第2方向D3に沿うように配置される。
【0026】
例えば、第1方向D2に沿って並ぶ複数本(一例として4本)の第1エアチューブ3bからなる2つの組C2を第2方向D3に沿って並べた後に、一対の組C2の間のそれぞれに複数本(一例として2本)の第2エアチューブ3cを配置する。一例として以上のようにエアチューブ3を配置するが、エアチューブ3の種類、形状、大きさ、数及び配置態様は上記の例に限られず適宜変更可能である。
【0027】
芯材1(鋼材2及びエアチューブ3)を配置した後には、
図2(a)及び
図2(b)に示されるように、平面視における芯材1の外周部1bに一定の厚さTの材料Mを吹き付けて構造物Sの外殻S1を形成する。本開示において、「材料」とは、時間の経過と共に硬化する材料を示しており、例えば、コンクリート、モルタル又はセメント系材料が挙げられる。
【0028】
この材料Mの吹付が本実施形態に係る材料吹付装置及び材料吹付方法によって行われる。本実施形態では、硬化した材料Mが外殻S1となるので型枠を不要とすることが可能である。また、材料Mの吹付によって構造物Sの外殻S1を形成できるので、材料Mの吹付を自動化すれば構造物Sの型枠に相当する外殻S1の構築を機械的に行うことが可能となる。更に、材料Mによって外殻S1が構成されることにより、脱型作業を不要とすることができ、材料Mとして通常のコンクリートよりも緻密性や強度が高い材料を用いた場合は外殻S1の構造の耐久性を高める効果も期待できる。また、芯材1がH鋼2bを含む場合には、H鋼2bによって構造物Sの構造としての性能が向上する。
【0029】
例えば、材料Mは、材料吹付装置から吹き出された時点で自立可能な材料によって構成されており、自立させた状態で吹付を続けることが可能な材料である。一例として、材料Mはセメント系材料である。材料Mの吹付は、例えば、鋼材2の外周面2d、及びエアチューブ3の外周面3dに対して行われる。鋼材2の外周面2dは、例えば、H鋼2bのフランジの外面、及びL鋼2cの外側の面を含む。エアチューブ3の外周面3dは、一対の鋼材2(H鋼2b又はL鋼2c)の間から露出するエアチューブ3の外面である。
【0030】
材料Mの吹付を行って材料Mが硬化した後には、エアチューブ3を取り出してエアチューブ3を撤去する。その後、
図2(b)及び
図3に示されるように、外殻S1の内部の中空部分S2に鉄筋かごを配置してコンクリートS3を打設した後に、コンクリート構造物である構造物Sの構築が完了する。
【0031】
ところで、
図2(a)に示されるように、材料Mの吹付を行うときに、芯材1の外周部1bに直接(例えば外周部1bの面に直交する方向から)材料Mの吹付を行うと、吹き付けた材料Mが飛び散って材料Mのリバウンド(材料Mが跳ね返る現象)が生じ、材料Mのロスが生じうる。また、吹き付けた材料Mの側面(表面)の仕上げ、及び吹付厚さである厚さTの調整が必要であり、更に、材料Mの吹付のためのスペースを十分に確保できない場合が生じうる。
【0032】
これに対し、本実施形態に係る材料吹付装置及び材料吹付方法では、上記の種々の問題を解決可能とされている。
図4(a)、
図4(b)及び
図4(c)は、本実施形態に係る材料吹付装置10を模式的に示す縦断面図である。
図4(a)に示されるように、材料吹付装置10は、芯材1に対向する移動式型枠11と、材料Mを吹き付ける吹付ノズル12とを備える。
【0033】
図5は、移動式型枠11を拡大した移動式型枠11の側面図である。
図4及び
図5に示されるように、移動式型枠11は、例えば、芯材1に対向する型枠面11bを有する型枠面部11cと、型枠面部11cを芯材1の反対側において支持する支持部11dとを備える。
【0034】
本開示において、「移動式型枠」とは、移動することが可能とされた型枠を示している。「移動式型枠」は、施工中に移動する型枠だけでなく、現場の状況によっては移動しない型枠も含んでいる。具体例として、後述する
図16のように芯材51が低くて移動させる必要がない移動式型枠41も含まれる。本開示において、「型枠面」とは、芯材に対向する移動式型枠の面を示している。「型枠面」は、例えば、芯材に対向する移動式型枠の平坦状の面である。しかしながら、「型枠面」は、平坦面以外の面であってもよく、例えば、曲面状、又は少なくとも一部に凹凸を有する形状であってもよい。
【0035】
例えば、型枠面11bは矩形状を呈し、型枠面部11cは板状を呈する。一例として、支持部11dは、側面視において型枠面部11cから離れるに従って縮小する台形状とされている。しかしながら、型枠面11b、型枠面部11c及び支持部11dの形状は、上記の例に限られず適宜変更可能である。一例として、移動式型枠は曲面状の型枠面を有していてもよい。
【0036】
移動式型枠11は、例えば、鋼製である。しかしながら、移動式型枠11は、例えば、木製や樹脂製であってもよく、移動式型枠11の材料は特に限定されない。移動式型枠11は、芯材1との距離が前述した厚さTと一致するように型枠面11bが芯材1に対向するように配置される。
【0037】
吹付ノズル12は、例えば、移動式型枠11に支持されている。一例として、吹付ノズル12は、支持機構(不図示)を介して移動式型枠11の支持部11dに支持されている。吹付ノズル12は、芯材1及び移動式型枠11の間に形成される空間Kに対向する。吹付ノズル12は、芯材1及び移動式型枠11が並ぶ方向D4(一例として水平方向)に対して交差(一例として直交)する方向D5に沿って空間Kに対向する。方向D5は、例えば、鉛直方向D1と一致していてもよい。また、方向D5は、型枠面11bに平行な方向であってもよい。
【0038】
次に、本実施形態に係る材料吹付方法の例について説明する。まず、
図4(a)及び
図4(b)に示されるように、芯材1に対向する位置に空間Kを隔てて移動式型枠11を設置する(移動式型枠を設置する工程)。そして、吹付ノズル12を空間Kと方向D5に沿って並ぶように配置する(吹付ノズルを配置する工程)。
【0039】
上記のように、吹付ノズル12を配置した状態で吹付ノズル12から方向D5に沿うように材料Mを吹き出す(材料を吹き付ける工程)。方向D5は型枠面11bに沿う方向であるため、このとき、型枠面11bに沿って材料Mが吹き付けられる。
【0040】
「型枠面に沿う方向に材料を吹き付ける」とは、移動式型枠が移動する方向に沿うように材料を吹き付けること、及び、芯材に沿う方向に材料を吹き付けること、の双方を含む。更に、「型枠面に沿う方向に材料を吹き付ける」ことには、型枠面に対して平行に材料を吹き付けることだけでなく、後述する
図9等に示されるように、型枠面(又は芯材)に対して斜めに吹き付ける場合も含まれる。「型枠面に対して斜めに吹き付ける場合」は、材料が飛び散らない程度に吹付ノズル傾けて材料を吹き付けることを示している。なお、
図4の具体例では、吹付ノズル12は鉛直下方に材料Mを吹き出す。吹付ノズル12から吹き出した材料Mは空間Kに充填される。材料Mは吹付ノズル12から吹き出された後に時間の経過と共に硬化する(材料を硬化する工程)。
【0041】
材料Mの硬化速度に合わせて(例えば、材料Mが自立可能な時点で)、
図4(c)に示されるように、移動式型枠11及び吹付ノズル12が方向D5(例えば鉛直上方)に沿って移動する(移動式型枠を移動する工程)。例えば、吹付ノズル12は移動式型枠11と一体的に移動する(吹付ノズルを移動する工程)。その後吹付ノズル12が方向D5に沿うように材料Mを吹き出す。
【0042】
以上のように、移動式型枠11の方向D5に沿った移動、吹付ノズル12の方向D5に沿った材料Mの吹き出し、及び材料Mの自立、を繰り返しながら材料Mを吹き付けていくことにより、外殻S1の構築が完了する。このように材料Mの吹付を行うことにより、狭隘なスペースで吹付のための十分なスペースを確保できない場合であっても、材料Mの吹付を効率よく行うことができる。
【0043】
ここで、吹付ノズル12の材料Mの吹付量は、材料Mの硬化速度に合わせて調整されてもよい。また、材料吹付装置10は、例えば、急結剤又は硬化促進剤を空間Kに注入する注入ノズル13を備えていてもよい。一例として、注入ノズル13は、移動式型枠11の下部に固定されており、型枠面11bの下部の位置に急結剤又は硬化促進剤を吹き出す開口13bを有してもよい。注入ノズル13は、充填された材料Mに養生剤を散布する養生剤散布ノズルであってもよい。この場合、充填された材料Mの表面に対して自動的に養生剤を散布することができる。
【0044】
材料吹付装置10は、移動式型枠11が方向D5に沿って移動するときに材料Mの表面を均す均し部材19を備えていてもよい。例えば、均し部材19は、移動式型枠11の下部に取り付けられた均し刃であって、移動式型枠11が方向D5に沿って移動するときに移動式型枠11から露出する材料Mの表面M5に当てられる。このように、移動式型枠11の移動と共に均し部材19が材料Mの表面M5に当てられた状態で移動するので、材料Mの表面M5の均し作業を移動式型枠11の移動と共に自動的に行うことができる。
【0045】
材料吹付装置10による材料Mの吹付の方法は適宜変更可能である。例えば、
図6(a)に示されるように、芯材1及び移動式型枠11の間に形成された空間Kへの方向D5に沿った材料Mの吹付、方向D5に沿った移動式型枠11及び吹付ノズル12の移動、を繰り返しながら、吹付エリアA1、吹付エリアA2、吹付エリアA3、吹付エリアA4・・・の順に材料Mの吹付を行ってもよい。
【0046】
吹付エリアA1,A2,A3,A4に対し、複数の材料吹付装置10によって材料Mの吹付を行ってもよい。また、材料吹付装置10は、吹付エリアA1,A2,A3,A4が並ぶ方向D6における移動式型枠11の両端のそれぞれに空間Kを封止する封止材14を備えていてもよい。
【0047】
例えば、封止材14は、移動式型枠11に対して着脱可能とされている。一例として、封止材14は、鉛直下方から鉛直上方に向かって吹付エリアA1,A2,A3,A4に対する材料Mの吹付を行うときに移動式型枠11に取り付けられていてもよく、吹付エリアA1,A2,A3,A4の上端まで吹付が終わったときに移動式型枠11から取り外されてもよい。
【0048】
封止材14により、空間Kからの材料Mの方向D6への漏れを抑制することが可能となり、材料Mのロスを更に低減できる。また、方向D6に沿って吹付エリアA1、吹付エリアA2、吹付エリアA3、吹付エリアA4・・・のように順次吹付を行う場合、例えば、吹付エリアA4の吹付のときに、隣接する吹付エリアA3に吹き付けられた材料Mを(例えば封止材14に代えて)封止材として用いることができる。
【0049】
図6(b)に示されるように、材料吹付装置10は、封止材14に代えて、方向D6の両端に、方向D6に突出する凸部、及び方向D6に窪む凹部を含む凹凸面14bが形成された封止材14cを備えていてもよい。この場合、吹付エリアA1と吹付エリアA2の間、吹付エリアA2と吹付エリアA3の間、及び吹付エリアA3と吹付エリアA4の間、のそれぞれに凹凸M1が形成されるように材料Mの吹付を行うことが可能となる。従って、吹付エリアA1と吹付エリアA2の間、吹付エリアA2と吹付エリアA3の間、及び吹付エリアA3と吹付エリアA4の間、のそれぞれにおける接触面積を大きくすることができるので、外殻S1の一体性を高めることが可能となる。
【0050】
図7は、材料吹付装置10の構成の詳細の例を示す正面図(型枠面11bに直交する方向から見た図)である。
図8は、材料吹付装置10の構成の詳細を示す縦断面図である。
図7及び
図8に示されるように、材料吹付装置10は、例えば、移動式型枠11を移動させる移動機構15を備える。
【0051】
移動機構15は、例えば、移動式型枠11が移動する方向D5に延びる移動フレーム16と、移動フレーム16に沿って移動式型枠11を移動させる駆動部17とを有する。駆動部17は吹付ノズル12を移動させてもよい。例えば、吹付ノズル12は、移動フレーム16を介して移動式型枠11に移動可能に支持されている。
【0052】
移動フレーム16を介して吹付ノズル12が移動式型枠11に支持される場合、移動式型枠11と吹付ノズル12とを一体として移動させることができるので、吹付ノズル12を単体として移動させる手間を低減できる。一例として、移動フレーム16は、方向D6に沿って並ぶと共に各々が方向D5に延在する一対のレール16bを有し、駆動部17は一対のレール16bに沿うように移動式型枠11を移動させる。
【0053】
例えば、移動フレーム16は、吹付ノズル12を移動可能に支持するノズル支持フレーム16cを含んでいてもよい。一例として、ノズル支持フレーム16cは、移動式型枠11から鉛直上方に延びると共に方向D6に沿って並ぶ一対の柱部16dと、一対の柱部16dの間で方向D6に延在するレール16fとを有する。
【0054】
一例として、レール16bは、移動式型枠11の方向D6の両端のそれぞれに配置され、一対のレール16bの間において移動式型枠11は方向D5に沿って移動する。例えば、移動式型枠11の方向D6の両端のそれぞれから柱部16dが鉛直上方に延びていてもよく、一対の柱部16dの間の領域が吹付ノズル12の移動可能領域である。
【0055】
この場合、吹付ノズル12は、一対の柱部16dの間において方向D6に移動自在とされている。また、吹付ノズル12を移動可能に支持するレール16fは、例えば、柱部16dから芯材1側に突出する。これにより、芯材1と移動式型枠11の間に形成される空間Kの鉛直上方に吹付ノズル12が位置する状態が実現される。
【0056】
なお、柱部16dに対してレール16fが方向D5に沿って移動可能であってもよい。この場合、移動式型枠11及び空間Kに対する吹付ノズル12の距離を調整することが可能となる。以上のように移動フレーム16が縦横に延びるレールを備えることにより、移動式型枠11の移動、及び吹付ノズル12による材料Mの吹付を自動化させることが可能となる。
【0057】
また、材料吹付装置10は、移動フレーム16の下部に取り付けられたローラ18を備えていてもよい。例えば、一対のレール16bの下端のそれぞれにローラ18が取り付けられている。この場合、ローラ18を転動させることによって、移動フレーム16、移動式型枠11及び吹付ノズル12を方向D6に移動させることができる。
【0058】
図9(a)、
図9(b)、
図9(c)及び
図10に示されるように、方向D5に対する吹付ノズル12の角度θ(吹付ノズル12からの材料Mの吹付の方向)が可変であってもよい。例えば、材料吹付装置10は、吹付ノズル12の向き(角度θ)を可変とするノズル向き調整機構22を備えていてもよい。
【0059】
この場合、ノズル向き調整機構22によって方向D5に対する吹付ノズル12の角度θを調整することが可能となる。その結果、芯材1に移動式型枠11が対向する方向である方向D4に均一に材料Mを吹き付けることができるので、材料Mの吹付の均一性を高めることができる。
【0060】
図11に示されるように、材料Mの吹付は、方向D4に沿って複数層行ってもよい。すなわち、方向D5に沿って行う材料Mの吹付を、材料Mの層L1と層L2が方向D4に積層されるように、複数回行ってもよい。この場合、芯材1と移動式型枠11の間に吹付ノズル12から方向D5に沿って材料Mを吹き付けて、方向D5に沿った材料Mの吹付及び硬化を行って層L1を形成する。その後、移動式型枠11及び吹付ノズル12を層L1から離れるように移動させ、層L1と移動式型枠11の間に吹付ノズル12から材料Mを方向D5に沿って吹き付けて層L2を形成する。
【0061】
例えば、移動式型枠11の型枠面部11cは、支持部11dに対して着脱可能であってもよい。一例として、
図11(b)、
図12(a)及び
図12(b)に示されるように、例えば、型枠面部11cに代えて凹凸21d付きの型枠面21bを有する型枠面部21cが支持部11dに取り付けられてもよい。この場合、例えば1層目の材料Mの表面に、方向D4に突出する凸部M2、及び方向D4に窪む凹部M3を形成することができる。一例として、方向D5に沿って見たときの凹凸21dの形状は台形状とされている。
【0062】
例えば、芯材1に対して材料Mを吹き付けて層L1を形成するときには、支持部11dに凹凸21d付きの型枠面部21cを取り付けて、芯材1と型枠面21bの間に方向D5に沿って吹付ノズル12から材料Mを吹き付ける。このように材料Mの吹付を行うことにより、方向D5に沿って見たときに、凸部M2及び凹部M3が形成された層L1を形成することが可能となる。すなわち、方向D5に延在する凹凸21dを有する型枠面部21cを支持部11dに取り付けて材料Mの吹付を行うことにより、移動式型枠11の方向D5への移動に抵抗することなく、層L1の表面に凸部M2及び凹部M3を形成できる。
【0063】
そして、層L2を形成するときには、支持部11dに凹凸を有しない平坦状の型枠面部11cを取り付けて、層L1と型枠面11bの間に方向D5に沿って吹付ノズル12から材料Mを吹き付ける。このとき、層L1の凸部M2及び凹部M3と型枠面11bとの間に材料Mが充填されて硬化する。
【0064】
これにより、層L1と層L2の間に凹凸が形成されるように材料Mの吹付を行うことが可能となる。従って、層L1と層L2の間の接触面積を大きくすることができるので、層L1と層L2の一体性を高めることができる。なお、上記の例では、層L1及び層L2の2層からなる外殻S1を構築する例について説明したが、層の数は1又は3以上であってもよい。
【0065】
図13(a)及び
図13(b)に示されるように、材料吹付装置10は、移動式型枠11が方向D5に沿って移動するときに養生シート20bが材料Mの表面M5に沿って引き出されるロール部材20を備えていてもよい。ロール部材20は、例えば、移動式型枠11の下部に取り付けられており、移動式型枠11が方向D5に沿って移動するときに移動式型枠11から露出する材料Mの表面M5に沿うように養生シート20bを繰り出す。この場合、移動式型枠11の移動と共にロール部材20が養生シート20bを材料Mの表面M5に沿うように養生シート20bを繰り出すので、材料Mの表面M5への養生シート20bの配置を移動式型枠11の移動と共に自動的に行うことができる。養生シート20bにより、吹付けた材料Mが封緘養生され、硬化後の品質を向上させることができる。なお,養生シート20bを繰り出す機構の代わりに、塗膜養生材を散布する機構を設けてもよい。
【0066】
次に、本実施形態に係る材料吹付装置10及び材料吹付方法から得られる作用効果について詳細に説明する。例えば
図4(a)、
図4(b)及び
図4(c)に示されるように、本実施形態に係る材料吹付装置10及び材料吹付方法では、芯材1に材料Mが吹き付けられる。このとき、移動式型枠11が空間Kを隔てて芯材1に対向し、吹付ノズル12から材料Mが空間Kに吹き付けられる。
【0067】
吹付ノズル12は、空間Kに対し、移動式型枠11の型枠面11bが沿う方向である方向D5に沿って材料Mを吹き付ける。従って、材料Mは芯材1及び移動式型枠11の型枠面11bに沿って吹き付けられるので、吹き付けられた材料Mを飛び散らないようにすることができる。すなわち、吹き付けられた材料Mが飛び散ったり跳ね返ったりすることを抑制することができる。よって、芯材1と移動式型枠11の間に形成された空間Kに効率よく材料Mを充填することができるので、吹き付けられる材料Mのロスを低減させることができる。
【0068】
吹付ノズル12は、空間Kの鉛直上方に設けられ、空間Kの鉛直上方から鉛直下方に材料Mを吹き付けてもよい。この場合、芯材1と移動式型枠11の間に形成される空間Kに対して鉛直下方に材料Mが吹き付けられるので、空間Kから外への材料Mの飛散を抑制することができる。従って、材料Mのロスをより確実に低減させることができる。
【0069】
図7及び
図8に示されるように、材料吹付装置10は、移動式型枠11を移動させる移動機構15を備え、移動機構15は、移動式型枠11が移動する方向に延びる移動フレーム16と、移動フレーム16に沿って移動式型枠11を移動させる駆動部17と、を有してもよい。この場合、駆動部17の駆動力によって、移動フレーム16に沿って移動式型枠11を移動させることができる。
【0070】
図9(a)、
図9(b)、
図9(c)及び
図10に示されるように、材料吹付装置10は、吹付ノズル12の向きを可変とするノズル向き調整機構22を備えてもよい。この場合、ノズル向き調整機構22によって吹付ノズル12の向きを変えながら材料Mの吹付を行うことができる。よって、吹き付けられる材料Mの量の偏りを低減させて、材料Mの吹付の均一性を高めることができる。
【0071】
また、本実施形態では、
図4(a)、
図4(b)及び
図4(c)に例示されるように、芯材1に対向する位置に移動式型枠11を配置する工程と、移動式型枠11と芯材1の間に吹付ノズル12から材料を吹き付ける工程とを備え、材料を吹き付ける工程では、芯材1及び移動式型枠11の間に形成される空間Kに対し、移動式型枠11の型枠面11bに沿う方向D5に材料Mを吹き付けることで構造物Sの外殻S1を形成する外殻の構築方法(構造物の外殻構築)について説明した。この外殻の構築方法によれば、硬化した材料Mが外殻S1となるので型枠を不要とすることができる。また、材料Mの吹付によって外殻S1を形成できるので外殻S1の構築を機械的に行うことができる。更に、材料Mによって外殻S1が構成されることにより、脱型作業を不要とすることができ、材料Mとして通常のコンクリートよりも緻密性や強度が高い材料を用いた場合は外殻S1の構造の耐久性を高める効果も期待できる。
【0072】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る材料吹付装置30及び材料吹付方法について
図14及び
図15を参照しながら説明する。第2実施形態に係る材料吹付装置30及び材料吹付方法の一部の構成は、前述した材料吹付装置10及び材料吹付方法の一部の構成と同一であるため、以下では前述と重複する説明を適宜省略する。
【0073】
前述の第1実施形態では、鉛直方向に移動する移動式型枠11と、鉛直方向に材料Mを吹き付ける吹付ノズル12とを備える材料吹付装置10について説明した。これに対し、材料吹付装置30は、吹付エリアA1,A2,A3,A4が並ぶ方向D6に沿って移動する移動式型枠31と、移動式型枠31の型枠面に沿う方向D5に材料Mを吹き付ける吹付ノズル32とを備える。
【0074】
材料吹付装置30は、方向D6に延在すると共に方向D5に沿って並ぶ一対の移動フレーム35を更に備える。移動式型枠31は、移動フレーム35に対して方向D6に沿って移動可能に支持されている。移動式型枠31が移動する方向D6は、吹付ノズル32が材料Mを吹き付ける方向D5に対して交差している。一例として、方向D5は鉛直方向であり、方向D6は水平方向である。
【0075】
第2実施形態に係る材料吹付方法では、芯材1及び移動式型枠31の間に形成された空間への方向D5に沿った材料Mの吹付(材料を吹き付ける工程)、方向D6に沿った移動式型枠31及び吹付ノズル32の移動(移動式型枠を移動する工程)、を繰り返しながら、吹付エリアA1、吹付エリアA2、吹付エリアA3、吹付エリアA4の順に材料Mの吹付を行う。具体的には、まず、吹付エリアA1において、芯材1の前に移動式型枠31の型枠面を空間を隔てて対面させ(移動式型枠を配置する工程)、この空間に吹付ノズル32が方向D5に沿って材料Mの吹き付けを行う。
【0076】
吹付エリアA1に材料Mを吹き付けて吹付エリアA1の材料Mが硬化し(材料を硬化さえる工程)、移動式型枠31を方向D6に移動させ(移動式型枠を移動させる工程)、吹付エリアA2において芯材1の前に移動式型枠31の型枠面を空間を隔てて対面させる。そして、吹付エリアA2における芯材1と移動式型枠31の間の空間に、上記同様、吹付ノズル32により材料Mの吹付を行う(材料を吹き付ける工程)。以上のように、移動式型枠31の方向D6への移動、及び移動式型枠31と芯材1の間への吹付ノズル32からの方向D5に沿った材料Mの吹付、を繰り返した後に材料吹付方法の一連の工程が完了する。
【0077】
以上、第2実施形態に係る材料吹付装置30及び材料吹付方法では、吹付ノズル32は、移動式型枠31と芯材1との間に形成された空間に対し、移動式型枠31の型枠面に沿う方向である方向D5に材料Mを吹き付ける。従って、材料Mは芯材1及び移動式型枠31の型枠面に沿って吹き付けられるので、吹き付けられた材料Mを飛び散らないようにすることができる。従って、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0078】
(第3実施形態)
続いて、第3実施形態に係る材料吹付装置40及び材料吹付方法について説明する。材料吹付装置40は、移動式型枠41と、移動式型枠41の型枠面41bに沿う方向D5に材料Mを吹き付ける吹付ノズル42とを備える。第3実施形態では、芯材51の高さが前述した芯材1よりも低いので、移動式型枠41は移動しない。芯材51に空間Kを隔てて移動式型枠41の型枠面41bを対向させた状態で、吹付ノズル42が方向D5に沿った空間Kへの材料Mの吹付を行う。
【0079】
第3実施形態に係る材料吹付方法では、まず
図16(a)に示されるように、芯材51に対向する位置に空間Kを隔てて移動式型枠41を設置し(移動式型枠を設置する工程)、吹付ノズル42を空間Kと方向D5に沿って並ぶように配置する(吹付ノズルを配置する工程)。
【0080】
そして、
図16(b)及び
図16(c)に示されるように、吹付ノズル42から方向D5に沿うように材料Mを吹き付ける(材料を吹き付ける工程)。材料Mの吹付によって空間Kに材料Mを充填させた後に材料Mを硬化させ(材料を硬化する工程)、その後、
図16(d)に示されるように、移動式型枠41を材料Mから外した後に材料吹付方法の一連の工程が完了する。
【0081】
以上、第3実施形態に係る材料吹付装置40及び材料吹付方法では、吹付ノズル42は移動式型枠41と芯材51との間に形成された空間Kに対し、移動式型枠41の型枠面41bに沿う方向である方向D5に材料Mを吹き付ける。従って、前述した各実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0082】
以上、本開示に係る材料吹付装置及び材料吹付方法の種々の実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、前述した実施形態の各例に限定されない。すなわち、本発明が特許請求の範囲に記載された要旨を変更しない範囲において種々の変形及び変更が可能であることは、当業者によって容易に認識される。例えば、材料吹付装置の各部の構成、形状、大きさ、数、材料及び配置態様、並びに、材料吹付方法の工程の内容及び順序は、前述した内容に限られず適宜変更可能である。
【0083】
例えば、前述した実施形態では、材料Mがセメント系材料である例について説明した。しかしながら、材料Mは、例えば樹脂系材料等であってもよく、セメント系材料以外の材料であってもよい。
【0084】
また、前述した実施形態では、移動式型枠11が鉛直方向D1に沿って移動する例について説明した。しかしながら、移動式型枠が移動する方向は、例えば、水平方向又は斜め方向等、鉛直方向以外の方向であってもよい。この場合も、移動式型枠の型枠面に沿って吹付ノズルが材料を吹き付けることにより、材料のリバウンドを抑制できるので、前述と同様の効果が得られる。なお、吹付ノズルが材料を吹き付ける方向も、型枠面に沿った方向であれば、特に限定されない。
【0085】
また、前述した実施形態では、芯材1が延びる方向に移動式型枠11が移動フレーム16に沿って移動する例について説明した。しかしながら、移動式型枠が移動する方向、及び移動フレームが延びる方向は、上記の例に限定されない。例えば、芯材に接近及び離間する方向に移動フレームが延びていて、当該方向に沿って移動式型枠が移動してもよい。
【0086】
また、前述した実施形態では、材料吹付装置10による材料Mの吹付で構造物Sの外殻S1を構築する例について説明した。しかしながら、本発明に係る材料吹付装置及び材料吹付方法は、外殻構造の構築以外にも適用可能である。また、本発明に係る材料吹付装置及び材料吹付方法は、前述したようにコンクリート構造物の構築にも適用可能であるし、コンクリート構造物以外の構造物の構築にも適用可能である。例えば、本発明は、材料の吹付による部材の補修工事にも適用可能であり、種々の現場に適用させることが可能である。
【符号の説明】
【0087】
1…芯材、1b…外周部、2…鋼材、2b…H鋼、2c…L鋼、2d…外周面、3…エアチューブ、3b…第1エアチューブ、3c…第2エアチューブ、3d…外周面、10…材料吹付装置、11…移動式型枠、11b,21b…型枠面、11c,21c…型枠面部、11d…支持部、12…吹付ノズル、13…注入ノズル、13b…開口、14,14c…封止材、14b…凹凸面、15…移動機構、16…移動フレーム、16b,16f…レール、16c…ノズル支持フレーム、16d…柱部、17…駆動部、18…ローラ、19…均し部材、20…ロール部材、20b…養生シート、21d…凹凸、22…ノズル向き調整機構、A1,A2,A3,A4…吹付エリア、C1,C2…組、D1…鉛直方向、D2…第1方向、D3…第2方向、D4,D5,D6…方向、K…空間、L1,L2…層、M…材料、M1…凹凸、M2…凸部、M3…凹部、M5…表面、S…構造物、S1…外殻、S2…中空部分、S3…コンクリート、θ…角度。