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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】緊急排水制御装置及び給湯システム
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/00 20060101AFI20240410BHJP
   A47K 1/14 20060101ALI20240410BHJP
   E03C 1/22 20060101ALI20240410BHJP
   E03C 1/23 20060101ALI20240410BHJP
   F24H 15/196 20220101ALI20240410BHJP
【FI】
A47K3/00 P
A47K1/14 B
E03C1/22 C
E03C1/23 Z
F24H15/196 301M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020197449
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085656
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】313014077
【氏名又は名称】トクラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹村 文宏
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-004144(JP,A)
【文献】特開2001-276165(JP,A)
【文献】特開2008-003966(JP,A)
【文献】特開2003-227653(JP,A)
【文献】特開2018-164691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/00
E03C 1/22
E03C 1/23
A47K 1/14
F24H 15/196
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽に設けられた排水栓の作動部と、前記排水栓の作動部を制御する排水栓制御部との間に設けられた緊急排水制御装置であって、
前記浴槽における入浴状態に関して、前記浴槽における入浴者の溺水を含む異常を検出する異常検出部から前記浴槽における入浴状態を示す情報を取得する取得部と、
前記浴槽における入浴状態が異常として前記入浴者の溺水を示す場合に前記排水栓を開放するように制御する制御部と、
を備える緊急排水制御装置。
【請求項2】
前記異常検出部は、前記浴槽における水面の高さと前記入浴者の頭部高さとを検出し、前記入浴者の頭部が前記水面より低い場合に前記入浴者の溺水を検出する溺水センサを含む、請求項1に記載の緊急排水制御装置。
【請求項3】
前記排水栓制御部は、熱源に備えられるか、または、前記熱源と前記浴槽に設けられた排水栓の作動部との間に熱源とは独立して配置される、請求項1又は請求項2に記載の緊急排水制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記浴槽における入浴状態が異常を示さない場合、前記排水栓制御部によって前記排水栓の作動を制御する情報が通過するように制御する、請求項1又は請求項2から請求項3の何れか1項に記載の緊急排水制御装置。
【請求項5】
屋内ネットワークに対して通信で接続されている熱源と、
浴槽に設けられた排水栓の作動を制御する排水栓制御部と、
浴槽における入浴状態に関して、前記浴槽における入浴者の溺水を含む異常を検出する異常検出部と、
前記浴槽に設けられた排水栓の作動部と、
前記排水栓の作動部と、前記排水栓制御部との間に設けられた緊急排水制御装置と、を備え、
前記緊急排水制御装置は、
前記異常検出部から前記浴槽における入浴状態を示す情報を取得する取得部と、前記浴槽における入浴状態が異常として前記入浴者の溺水を示す場合に前記排水栓を開放するように制御する制御部と、を備える緊急排水制御装置と、
を備える給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、緊急排水制御装置及び給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
給湯装置をリモートコントローラ(リモコン)で制御して浴槽に湯を張る給湯システムが一般的になっている。浴槽に湯を張る給湯装置を制御して、予め設定した時間になると自動で浴槽に給湯を開始する給湯システムも普及している。しかし、浴槽への給湯が始まった際に浴槽の排水栓が開いていると、給湯装置で温められ、浴槽へ注がれた湯が排水口から流れ出てしまう。そこで、浴槽への給湯が始まると、自動的に排水栓を閉じる技術が提案されている。例えば、特許文献1には、HEMS(Home Energy Management System)を利用した構成により、給湯装置に対する湯張りの指示に応じて、排水栓の閉栓制御を行う排水装置の発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-028276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の発明では、浴槽に設けられた排水栓の作動を排水装置の制御部によって制御するが、例えば、溺水などの浴槽における入浴状態に関する異常が検出された場合に対処するためには、排水装置の制御部の再構成及び複雑な構成を再度設計し直すなどを行って機能を追加することが必要となる。従って、浴槽における入浴状態に関する異常に対処する新たな機能を追加するためには、複雑な再構成や複雑な再設計が要求され、排水装置の汎用性が低下する。
【0005】
本開示は、上記の点に鑑みてなされたものであり、浴槽に設けられた排水栓の作動を制御する排水栓制御部で緊急排水制御を行う場合と比べて、排水栓制御部の構成を変更することなく汎用性を向上することが可能な緊急排水制御装置及び給湯システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様に係る緊急排水制御装置は、浴槽に設けられた排水栓の作動部と、前記排水栓の作動部を制御する排水栓制御部との間に設けられた緊急排水制御装置であって、前記浴槽における入浴状態に関する異常を検出する異常検出部から前記浴槽における入浴状態を示す情報を取得する取得部と、前記浴槽における入浴状態が異常を示す場合に前記排水栓を開放するように制御する制御部と、を備える。
【0007】
本開示の第1態様によれば、排水栓の作動部と排水栓の作動部を制御する排水栓制御部との間に緊急排水制御装置を設ける構成とすることで、浴槽に設けられた排水栓の作動を制御する排水栓制御部で緊急排水制御を行う場合と比べて、汎用性を向上させることができる。例えば、入浴状態に関する異常が検出された場合への対処のために、既設の排水装置や排水制御部をそのまま利用することが可能であり、既設の排水装置や排水制御部の再構成及び複雑な構成を再度設計し直すなどを行う機能の追加は不要である。
【0008】
本開示の第2態様に係る緊急排水制御装置は、第1態様に係る緊急排水制御装置であって、前記排水栓制御部は、熱源に備えられるか、または、前記熱源と前記浴槽に設けられた排水栓の作動部との間に熱源とは独立して配置される。
【0009】
本開示の第2態様によれば、排水栓制御部が熱源に備えられた場合、または、排水栓制御部が熱源と浴槽に設けられた排水栓の作動部との間に熱源とは独立して配置された場合の何れの場合であっても適用が可能である。
【0010】
本開示の第3態様に係る緊急排水制御装置は、第1態様又は第2態様に係る緊急排水制御装置であって、前記制御部は、前記浴槽における入浴状態が異常を示さない場合、前記排水栓制御部によって前記排水栓の作動を制御する情報が通過するように制御する。
【0011】
本発明の第3態様によれば、浴槽における入浴状態が異常を示さない場合に、排水栓の作動を制御する情報が通過される構成とすることで、浴室に関係するシステムの汎用性を向上させることができる。例えば、給湯システムにおける湯張りの信号はそのまま排水栓の作動部へ出力され、通常のシステムで利用される排水栓の作動を制御する情報は変更されたり消去されることなく通常のシステムで利用されるままの状態で入出力される。
【0012】
本開示の第4態様に係る給湯システムは、屋内ネットワークに対して通信で接続されている熱源と、浴槽に設けられた排水栓の作動を制御する排水栓制御部と、浴槽における入浴状態に関する異常を検出する異常検出部と、前記浴槽に設けられた排水栓の作動部と、前記排水栓の作動部と前記排水栓制御部との間に設けられた緊急排水制御装置と、を備え、前記緊急排水制御装置は、前記異常検出部から前記浴槽における入浴状態を示す情報を取得する取得部と、前記浴槽における入浴状態が異常を示す場合に前記排水栓を開放するように制御する制御部と、を備える緊急排水制御装置と、を備える。
【0013】
本発明の第4態様によれば、排水栓の作動部と排水栓の作動部を制御する排水栓制御部との間に緊急排水制御装置を設ける構成とすることで、浴槽に設けられた排水栓の作動を制御する排水栓制御部で緊急排水制御を行う場合と比べて、汎用性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、浴槽に設けられた排水栓の作動を制御する排水栓制御部で緊急排水制御を行う場合と比べて、排水栓制御部の構成を変更することなく汎用性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る給湯システムの概略構成を示す図である。
図2】緊急排水制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】緊急排水制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図4】緊急排水制御装置による緊急排水制御処理の流れを示すフローチャートである。
図5】本実施形態の他の例に係る給湯システムの概略構成を示す図である。
図6】比較例に係る給湯システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0017】
まず、本開示の実施形態を説明する前に、比較例について説明する。
図6は、比較例に係る給湯システム900の構成例を示す図である。図6に示した給湯システム900は、熱源920が浴槽930に給湯を開始する際に、排水栓制御装置910が排水栓931の状態をセンサ932から取得し、排水栓931が開栓状態にあれば排水栓931を閉栓するものである。排水栓制御装置910は、商用電源990からの交流電力を供給する電源980に接続することで、電力の供給を受ける。
【0018】
例えば、熱源920を操作する熱源専用リモコン921によって浴槽930への湯張りが指示されると、排水栓制御装置910は、熱源専用リモコン921から送られた湯張り信号を検知する。そして、排水栓制御装置910は、湯張り信号の検知に基づいてモータを駆動させることで、排水栓931の閉栓を行う。
【0019】
排水栓制御装置910、及び熱源専用リモコン921は、HA(Home Automation)配線によってHA端子用インターフェースユニット(IFU)940と接続されている。従って、排水栓制御装置910、及び熱源専用リモコン921は、それぞれ図示しないHA端子を備える。
【0020】
さらに、拡張ECU(Electronic Control Unit)941をIFU940に接続することで、浴室に関係する装置を増設したり、浴室の外部から熱源920を制御したりすることができる。
【0021】
例えば、インターネット等の外部ネットワーク945に接続する場合は、拡張ECU941にルータ942を接続し、ルータ942を外部ネットワーク945に接続する。ルータ942を外部ネットワーク945に接続することで、サーバ950から熱源920の動作を制御することができる。サーバ950には、熱源920の動作を制御するための連携ソフト951がインストールされている。熱源920を動作させたいユーザは、スマートフォン等の外部端末960を用いて、宅内又は宅外からサーバ950に接続し、連携ソフト951を実行することで、熱源920を動作させることができ、例えば指定した時間になると浴槽930へ給湯を開始させることができる。
【0022】
また例えば、浴室暖房乾燥機などのHA装置971を拡張ECU941に接続するには、埋込HA端子970を別途設置して、埋込HA端子970を拡張ECU941にHA配線で接続し、HA装置971を埋込HA端子970にHA配線で接続する。
【0023】
しかし、図6に示したように、HA装置971の回路毎に埋込HA端子970(例えば、JEM-A端子を有するIFU)が必要となるため、装置の増設の際の設置及び接続が煩雑になる。
【0024】
ところで、HA装置971の一例として、入浴中の入浴者の浴室における入浴状態を検出して、入浴状態が異常な場合に入浴状態が異常であることを報知する見守り装置が知られている。浴槽における入浴状態の異常とは、入浴者の頭部が水没して溺水している状態等のように、入浴者が頭部を露出させつつ入浴している通常の入浴状態とは異なる入浴状態をいう。このような入浴状態が異常な場合は、迅速かつ確実に入浴状態が異常であることを報知することが要求される。また、例えば溺水等のような入浴状態が異常の場合は、排水栓931の開栓を行うことで、異常に対する対応を行うことが望まれる。ところが、比較例では、ネットワーク化してシステムを構築することで信号授受に関する汎用性を高めることができるものの、上述したように浴槽における入浴状態に関する異常に対処する新たな機能を追加するためには、機能追加のための排水栓制御装置910の複雑な再構成や複雑な再設計が要求され、既存の排水栓制御装置910又は排水栓制御装置910を含む給湯システム900の汎用性が低下する。
【0025】
本開示の実施の形態では、浴槽に設けられた排水栓の作動を制御する排水栓制御部において緊急排水制御を行う場合と比べて、排水栓制御部の構成を変更することなく汎用性を向上することが可能な緊急排水制御装置及び給湯システムを提供する。
【0026】
図1は、本実施形態に係る給湯システムの概略構成を示す図である。
【0027】
図1に示した給湯システム1は、熱源20が浴槽30に給湯を開始する際に、排水栓制御装置22が排水栓31の状態をセンサ32から取得し、排水栓31が開栓状態にあれば排水栓31を閉栓するものである。排水栓制御装置22は、商用電源90からの交流電力を供給する電源80に接続することで、電力の供給を受ける。
【0028】
熱源20は、上水道を加熱して給湯管に湯を供給する。熱源20は、屋内ネットワーク45に接続するため、専用線等でHEMSアダプタ41と接続されている。HEMSアダプタ41は、所定の規格、例えばECHONET Lite(登録商標)規格に対応したものである。
【0029】
熱源専用リモコン21は、熱源20を遠隔操作するためのリモコンであり、例えば台所、浴室内に設置される。熱源20は、熱源専用リモコン21で指定された温度に水を温め、熱源専用リモコン21からの指示に基づいて浴槽30へ給湯する。また、熱源20は、指定された時刻になると、浴槽30への給湯を開始する機能を有する。本実施形態では、熱源20は、自動的に浴槽30へ給湯を行うかどうかの設定である風呂自動モード設定を有する。指定された時刻になり、風呂自動モード設定が「切」から「入」に変化すると、熱源20は、自動的に浴槽30へ給湯を行い、所定の給湯量に達すると給湯を停止するとともに、指定された温度に浴槽30の湯を保温する。風呂自動モード設定は、熱源専用リモコン21又はHEMSコントローラ43によって設定されてもよく、後述の外部端末60によって設定されてもよい。
【0030】
本実施形態に係る排水栓制御装置22は、LAN(Local Area Network)等の屋内ネットワーク45に接続されている熱源20に対して、浴槽30への給湯状態を定期的に問い合わせて取得する。排水栓制御装置22は、給湯状態の問い合わせに、予め定められた規格、例えばECHONET Lite規格を用いている。給湯状態とは、熱源20から浴槽への給湯に関する状態をいい、給湯を待機している状態、給湯を開始した状態、給湯している状態、給湯を停止している状態、給湯が完了した状態等が挙げられる。そして、排水栓制御装置22は、風呂自動モード設定が「切」から「入」に変化して、給湯状態が浴槽30へ給湯している状態の場合に、モータ31Mを駆動させることで排水栓31を閉めるように制御する。
【0031】
排水栓制御装置22は、ルータ40と接続されることで、LAN等の屋内ネットワーク45に接続される。HEMSアダプタ41はルータ40と接続される。このように排水栓制御装置22及び熱源20が通信で接続されることで、熱源20に対して、浴槽30への給湯状態を定期的に問い合わせて取得することができる。
【0032】
本実施形態では、緊急排水制御装置10は、排水栓制御装置22と排水栓31との間、具体的には、排水栓制御装置22と排水栓31の開閉を作動させるモータ31Mとの間に備えられる。緊急排水制御装置10は、浴槽における入浴状態に関する異常に対処するための装置である。緊急排水制御装置10は、入浴状態に関する異常が検出された異常時には、異常に対処する処理を行う。一方、緊急排水制御装置10は、異常が検出されていない通常時には、排水栓制御装置22と排水栓31との間で通信される情報を、変更したり消去したりすることなく、そのまま入出力する処理を行う。なお、緊急排水制御装置10は、電源80に接続することで電力の供給を受けることが可能である(図示省略)。また、緊急排水制御装置10は、図示しない独立した電源を備えて、電力の供給を受けてもよい。
【0033】
緊急排水制御装置10は、異常検出装置47に接続される。異常検出装置47は、浴槽における異常検出装置であって、入浴者の浴槽における入浴状態を検出して浴槽における入浴状態が異常か否かを示すオンオフ信号等の二値信号を出力する通信を行う。図1に示した例では、入浴者の入浴状態を見守る装置であって、入浴者の溺水を検出する溺水センサを備えた見守り装置が示されている。このように排水栓制御装置22に見守り装置等の異常検出装置47が接続されることで、複雑な接続等の構成が要求されることなく、入浴者の浴槽における入浴状態を示す情報を簡単な構成で取得することができる。
【0034】
溺水センサの一例には、浴室の天井に設けられて浴槽へ向けて音波を放射し、その反射波により高さを検出する検出器が挙げられる。この場合、放射及び反射による音波により、浴槽における水面の高さと入浴者の頭部の高さを検出し、検出結果を比較して両者の高さが予め定めた範囲内のときに溺水と検知することが可能である。溺水センサの他例には、浴室リモコンに備える赤外線センサにより位置を検出する検出器が挙げられる。この場合、浴室に設置された熱源20を操作するための浴室リモコンに赤外線センサを備え、入浴中における入浴者の頭部の位置を検出し、その頭部の位置が予め定めた水面位置又は給湯により定まる水面位置より下の位置であるときに溺水と検知することが可能である。また、溺水センサのその他の例には、浴槽における水位を検出する検出器が挙げられる。この場合、入浴中の水位を検出し、入浴者の頭部が水没して溺水している状態の水位に対して予め定めた閾値を超える水位のときに溺水と検知することが可能である。
【0035】
また、緊急排水制御装置10は、例えば、屋内ネットワーク45とは独立した専用線によって溺水センサ等の異常検出装置47と接続することで、ネットワークを介して信号を受け取る場合における受信不良(例えば、UDP:User Datagram Protocol、通信プロトコルによる受信不良)が生じる虞はない。この独立した専用線は、有線接続又は無線接続によって緊急排水栓制御装置10と異常検出装置47とに専用に接続される。このため、入浴状態が異常を示す信号をネットワークを介して受信する場合と比べて、確実に入浴状態が異常を示す信号を取得できる。
【0036】
さらに、緊急排水制御装置10は、警報装置等の報知装置48と接続される。報知装置48は、浴槽における異常を報知する装置であって、緊急排水制御装置10からの緊急信号によって少なくとも浴槽における入浴状態が異常の場合に報知を行う。図1に示した例では、入浴者の入浴状態が異常であるときに警報を報知する警報装置が示されている。報知装置48は、例えば、屋内ネットワーク45とは独立した専用線によって緊急排水制御装置10と接続することで、複雑な接続等の構成が要求されることなく、入浴者の浴槽における入浴状態(例えば異常)を報知するための情報を出力することができる。また、専用線によって入浴状態が異常を示す信号を出力できるので、例えばネットワークを介して信号を送信する場合における送信不良が生じる虞はない。このため、入浴状態が異常を示す信号をネットワークを介して送信する場合と比べて、確実に入浴状態が異常を示す信号を報知装置48へ出力できる。
【0037】
さらにまた、緊急排水制御装置10は、入浴状態に関する異常が検出された異常時には、異常に対処する処理を行い、異常が検出されていない通常時には、排水栓制御装置22と排水栓31との間で通信される情報をそのまま入出力する処理を行う。このため、給湯システム1が緊急排水制御装置10を備える構成とした場合であっても、緊急排水制御装置10を備える以前の構成で通信される情報が変更されたり消去されることはない。従って、既存の給湯システムに、入浴状態に関する異常への対処のための緊急排水制御装置10の増設が可能となり、排水栓制御装置22の構成を変更することなく緊急排水制御装置10の汎用性を向上することができる。
【0038】
また、給湯システム1は屋内ネットワーク45で各装置が繋がることで、給湯システム1に接続する装置に汎用性があり、比較例と比べて装置の増設が容易となっている。図1に示した例では、ルータ40に照明、インターホン、及びAV機器等の屋内装置42を接続した例が示されている。また、図1には、ルータ40にHEMSコントローラ43を接続し、HEMSコントローラ43に太陽光パネル等の発電装置44を接続した例が示されている。HEMSコントローラ43は、所定の規格、例えばECHONET Lite規格に対応したものであってもよい。熱源20がECHONET Lite規格に対応したものであれば、HEMSコントローラ43から熱源20に対して給湯を指示することができる。
【0039】
また、図1には、ルータ40がインターネット等の宅外ネットワーク46でサーバ50と接続されている例が示されている。ルータ40を宅外ネットワーク46に接続することで、サーバ50から熱源20の動作を制御することができる。サーバ50には、熱源20の動作を制御するための連携ソフト51がインストールされている。熱源20を動作させたいユーザは、スマートフォン等の外部端末60を用いて、宅内又は宅外からサーバ50に接続し、連携ソフト51を実行することで、熱源20を動作させることができる。例えば、熱源20を動作させたいユーザは、外部端末60を用いて、宅内又は宅外からサーバ50に接続することで、指定した時間になると浴槽30へ給湯を開始させることができる。
【0040】
また、図1のように装置が接続されていることで、外部端末60は、ルータ40に接続されている熱源20以外の装置を外出先等から制御することができる。例えば、外部端末60は、外出先等から発電装置44の発電状況を取得して、提示することができる。また例えば、外部端末60は、外出先等から浴室装置や屋内装置42を制御することができる。
【0041】
図2は、緊急排水制御装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0042】
図2に示すように、緊急排水制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、ストレージ14、通信インタフェース(I/F)15、及び入出力インタフェース(I/F)17を有する。各構成は、バス16を介して相互に通信可能に接続されている。
【0043】
CPU11は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU11は、ROM12またはストレージ14からプログラムを読み出し、RAM13を作業領域としてプログラムを実行する。CPU11は、ROM12またはストレージ14に記録されているプログラムにしたがって、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM12またはストレージ14には、入浴者の溺水等の入浴状態の異常時(緊急時)に浴槽30に設けられた排水栓31の作動を制御する緊急排水制御プログラムが格納されている。
【0044】
ROM12は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM13は、作業領域として一時的にプログラムまたはデータを記憶する。ストレージ14は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)またはフラッシュメモリ等の記憶装置により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、および各種データを格納する。
【0045】
通信インタフェース15は、排水栓制御装置22と排水栓31(モータ31M)との間の通信を少なくとも中継する通信を行うためのインタフェースであり、例えば、排水栓制御装置22と排水栓31との間の通信線に並列接続される。通信インタフェース15は、排水栓制御装置22から排水栓31への排水栓31の閉塞又は開放を示す信号を取得して出力する。また、センサ32から排水栓制御装置22へのセンサ信号を取得して出力する。さらに、入浴状態に関する異常が検出された異常時には排水栓31の開放を示す信号を出力する。
【0046】
なお、通信インタフェース15は、排水栓制御装置22と排水栓31との間の通信線に接続される場合の例を説明するが、排水栓制御装置22と排水栓31(モータ31M)との間の通信線に信号を中継する中継装置を設けて、中継装置に対して通信するようにしてもよい。また、排水栓制御装置22と排水栓31との間の通信線をバス16に直結してもよい。この場合、通信インタフェース15は不要である。
【0047】
入出力インタフェース17は、異常検出装置47及び報知装置48と通信するためのインタフェースであり、二値信号による通信を可能とするように構成されている。
【0048】
なお、緊急排水制御装置10は、熱源20等の他の機器と通信するためのインタフェースを備えてもよい(図示省略)。このインタフェースは、例えば、イーサネット(登録商標)等の規格を用いることが可能である。なお、他の通信規格として、FDDI、及びWi-Fi(登録商標)等の規格を用いてよい。
【0049】
上記の緊急排水制御プログラムを実行する際に、緊急排水制御装置10は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。緊急排水制御装置10が実現する機能構成について説明する。
【0050】
図3は、緊急排水制御装置10の機能構成の例を示すブロック図である。
【0051】
図3に示すように、緊急排水制御装置10は、機能構成として、取得部101及び制御部102を有する。各機能構成は、CPU11がROM12またはストレージ14に記憶された排水栓制御プログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0052】
取得部101は、排水栓制御装置22による排水栓31の作動部(モータ31M)を作動させる制御を示す信号を取得する。また、取得部101は、異常検出装置47から出力された二値信号を取得する。
【0053】
制御部102は、入浴者の溺水等の入浴状態の異常時(緊急時)に浴槽30に設けられた排水栓31の作動、すなわち、排水栓31の作動部(モータ31M)の作動を制御する。具体的には、制御部102は、取得部101で取得された二値信号が、溺水等のように浴槽における入浴状態の異常を示す場合に排水栓31を開くように制御する。なお、制御部102は、給湯状態が浴槽30へ給湯している状態のときに、入浴状態の異常を示す場合は、入浴状態の異常を優先し、排水栓31を開くように制御する。
【0054】
なお、制御部102は、取得部101で取得された二値信号が、浴槽における入浴状態の異常を示す場合に、報知装置48に対して二値信号を出力するように制御することが可能である。また、制御部102は、浴槽における入浴状態の異常を示す場合、入浴状態が異常であることを示す情報を屋内ネットワークを介して屋内装置に出力するようにしてもよい。この場合、排水栓制御装置22を介して緊急排水制御装置10をルータ40に接続し、屋内ネットワーク45を介して照明、インターホン、及びAV機器に通信を行うように制御すればよい。
【0055】
また、緊急排水制御装置10は、通常時に、排水栓制御装置22と排水栓31との間で通信される情報をそのまま入出力する処理を行う。具体的には、取得部101は、排水栓制御装置22による排水栓31の作動部(モータ31M)を作動させる制御を示す信号(閉塞又は開放を示す情報)、及びセンサ32による排水栓31の状態を示す信号(閉塞又は開放を示す情報)を取得する。制御部102は、取得部で取得された信号をそのまま出力する。
【0056】
次に、緊急排水制御装置10の作用について説明する。
【0057】
図4は、緊急排水制御装置10による緊急排水制御処理の流れを示すフローチャートである。CPU11がROM12又はストレージ14から緊急排水制御プログラムを読み出して、RAM13に展開して実行することにより、緊急排水制御処理が行なわれる。
【0058】
緊急排水制御装置10が起動すると、CPU11は、ステップS100で、イニシャル処理を実行する。CPU11は、イニシャル処理として、排水栓制御装置22と排水栓31との間で通信される情報をそのまま入出力する処理を実行する。例えば、排水栓制御装置22による排水栓31の作動部(モータ31M)を作動させる制御を示す信号(閉塞又は開放を示す情報)、及びセンサ32による排水栓31の状態を示す信号(閉塞又は開放を示す情報)を取得し、そのまま出力する処理を実行する。
【0059】
次に、CPU11は、ステップS102で、異常検出装置47から出力された二値信号を取得することで、浴槽における入浴状態を示す情報を取得する。
【0060】
次に、CPU11は、ステップS104で、二値信号がオン信号か否かを判別することによって、浴槽における入浴状態を示す情報が溺水等のように浴槽における入浴状態の異常を示す情報であるかどうかを判定する。CPU11は、ステップS104の判定の結果、二値信号がオフ信号であり、入浴状態の異常を示していない場合(ステップS104で否定判定)、ステップS100に処理を戻す。
【0061】
一方、CPU11は、ステップS104の判定の結果、二値信号がオン信号であり、溺水等のように入浴状態の異常を示している場合(ステップS104で肯定判定)、ステップS106に処理を移行し、排水栓31が閉栓状態であれば開栓する排水栓31の開栓処理を実行する。例えば、排水栓31のモータ31Mの作動により排水栓31を開栓させる信号を出力する。
【0062】
本実施形態の緊急排水制御装置10は、浴槽における入浴状態が異常を示す場合、他の装置と連携を図ることが可能である。具体的には、CPU11は、ステップS108で、専用線により接続されている報知装置48へ二値信号による緊急信号を出力する緊急警報処理を実行する。緊急警報処理は、入浴状態が異常の場合に異常を示す二値信号(例えばオン信号)である緊急信号を報知装置48へ出力することによって、報知装置48から緊急警報を報知させる緊急信号出力処理である。これによって、浴槽における入浴状態が異常であることを浴室外に報知し確認させることが可能になる。
【0063】
次に、CPU11は、ステップS110で、浴槽における入浴状態の異常が解除されたかどうかを判定する。ステップS110における判定は、異常検出装置47の出力信号である二値信号が、入浴状態の異常を示していないオフ信号に切り替わったかどうかを判定すればよい。
【0064】
ステップS110の判定の結果、入浴状態の異常が解除されていない場合は(ステップS110で否定判定)、CPU11は、ステップS106に処理を戻して、上述した処理を繰り返す。
【0065】
一方、ステップS110の判定の結果、入浴状態の異常が解除された場合は(ステップS110で肯定判定)、CPU11は、ステップS112で、復帰処理を実行した後に、ステップS100に処理を戻す。復帰処理の一例には、CPU11が、報知装置48への二値信号による緊急信号の出力を中止する処理が挙げられる。
【0066】
なお、CPU11は、上記ステップS106の排水栓31の開栓処理において、モータ31Mの不具合等の何らかの理由で排水栓31が閉栓できなかった場合に、ステップS108で、緊急警報処理とは異なる警報処理を実行してもよい。例えば、報知装置48へ緊急信号とは異なる信号(例えば、開栓不良信号)を出力して、警報の音量を拡大する処理、及び警報を断続的に行う処理を実行してもよい。この場合、二値信号に加えて、例えば断続的なオン信号による緊急信号とは異なる信号(例えば、開栓不良信号)を用いればよい。
【0067】
また、緊急排水制御装置10は、入浴者の溺水等の入浴状態の異常時(緊急時)に排水栓31の開栓処理を実行したことを示す情報を屋内ネットワーク45に出力してもよい。例えば、排水栓制御装置22を介して緊急排水制御装置10を、ルータ40に接続し、入浴状態の異常時に排水栓31の開栓処理を実行した旨を示す情報を、屋内ネットワーク45に出力してもよい。また、入浴状態の異常時の開栓処理を実行した場合に、センサ32をモニタして排水栓31の開栓に成功又は失敗したことを示す情報を、屋内ネットワーク45に出力してもよい。これらの情報は、例えば熱源専用リモコン21又はHEMSコントローラ43に出力してもよい。さらに、屋内ネットワーク45を介して屋内装置42によって入浴状態の異常を知らせる異常報知処理を実行してもよい。異常報知処理の一例には、入浴状態の異常を知らせるための照明の点滅、インターホンの鳴動、及びAV機器の鳴動を実行させるための情報の出力、又は照明、インターホン、及びAV機器に対する通信による制御が挙げられる。また、異常報知処理の他例には、外部端末60への入浴状態の異常を知らせるためのメッセージ情報の出力が挙げられる。メッセージ情報は、例えば熱源専用リモコン21又はHEMSコントローラ43に出力してもよい。これによって、浴槽における入浴状態が異常であることを、浴室外において確認させることが可能になる。
【0068】
以上説明したように本実施形態に係る緊急排水制御装置10は、例えば、自動的に浴槽30へ給湯を行う風呂自動モード等の既存の処理を実行させる利便性を提供しつつ、溺水等の入浴状態が異常の場合には排水栓31を開栓し、緊急排水を行う緊急対応が可能になる。従って、浴槽に設けられた排水栓の作動を制御する排水栓制御部で緊急排水制御を行う場合と比べて、排水栓制御部の構成を変更することなく汎用性を高めつつ、浴槽における溺水等の異常に対して確実に対処することが可能になる。また、入浴状態が異常であることを専用線による二値信号の取得で行うことにより、複雑な接続等の構成が要求されることなく、浴槽における入浴状態の異常を簡単な構成で、かつ確実に取得することができる。
【0069】
上述した緊急排水制御装置10は、排水栓制御装置22と排水栓31(例えばモータ31M)との間に備えられた場合を説明したが(図1)、本開示はこれに限定されるものではない。緊急排水制御装置10の他例として、図5に示すように、排水栓制御を行う制御装置20Bを備えた熱源20Aを含む給湯システム1Aに適用することが可能である。
【0070】
具体的には、図5に示すように、制御装置20Bを備えた熱源20Aと、排水栓31(モータ31M)との間の通信線20Cに、熱源20A(制御装置20B)と排水栓31(モータ31M)との間の通信を中継するように緊急排水制御装置10を設ければよい。緊急排水制御装置10は、取得部101で、溺水センサ等からの溺水信号を、入浴状態が異常であることを示す信号として取得する。緊急排水制御装置10は、制御部102で、入浴状態が異常の場合には排水栓31を開栓する制御を行う。制御部102は、排水栓31が開栓したことを示すモニタ信号、又は溺水信号の少なくとも一つから警報を発するように報知装置48を制御する。これによって、報知装置48を確認した、例えば外部の管理人や報知装置48に連動した駆け付けサービス等の装置管理者が入浴状態の詳細を把握でき、例えば、救命の手配などの適切な対処が可能となる。
【0071】
なお、上記各実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した排水栓制御処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、排水栓制御処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0072】
また、上記各実施形態では、排水栓制御処理のプログラムがROMまたはストレージに予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的(non-transitory)記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 給湯システム
10 緊急排水制御装置
20 熱源
22 排水栓制御装置
30 浴槽
45 屋内ネットワーク
46 宅外ネットワーク
47 異常検出装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6