(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】シール部材
(51)【国際特許分類】
F16J 15/14 20060101AFI20240410BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
F16J15/14 B
F16J15/10 U
F16J15/10 B
(21)【出願番号】P 2020200513
(22)【出願日】2020-12-02
【審査請求日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2019218858
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉コンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】土屋 幸司
(72)【発明者】
【氏名】白瀬 利和
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-085536(JP,A)
【文献】米国特許第04658979(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有するとともに凹部を有し、かつ前記凹部と外部とを連通する孔を有する第一部材と、
連続気泡を有するとともに、前記第一部材によって前記凹部に保持される第二部材と、
を有
し、
前記第一部材の平面形状が環状であり、前記凹部は前記第一部材の平面形状の部分に開口するように形成される環状の凹条である、シール部材。
【請求項2】
前記第一部材は、底面部と前記底面部の周囲から起立する壁部とによって構成され、
前記凹部は、前記底面部および前記壁部の内表面で形成されている、
請求項1に記載のシール部材。
【請求項3】
前記壁部の端部から外側に突き出ているフランジ部をさらに有する、請求項2に記載のシール部材。
【請求項4】
前記壁部の外周面に形成される凹部または凸部であって、前記シール部材が設置されたときに前記壁部が起立する方向への前記シール部材の移動を規制するための規制部をさらに有する、請求項2または3に記載のシール部材。
【請求項5】
前記第一部材は、前記第一部材の外周面から外方に延在する傘部をさらに有し、
前記第一部材における前記凹部の開口端側を前記第一部材の一端とし、その反対側の端を前記第一部材の他端としたときに、
前記傘部は、前記第一部材の一端側から圧力を受けたときに前記第一部材の他端側に向けて変形するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のシール部材。
【請求項6】
前記第一部材は、前記第一部材の外周面に形成され、前記第一部材の一端部から前記傘部における前記第一部材の一端側の主面に至る溝をさらに有する、請求項5に記載のシール部材。
【請求項7】
前記第一部材が有する孔は、前記外部において、前記第一部材の前記凹部の深さ方向に交差する方向に開口している、請求項1~4のいずれか一項に記載のシール部材。
【請求項8】
前記凹部の開口端部における内周面に形成される凸部であって、前記凹部に保持されている前記第二部材に係合する係合部をさらに有する、請求項1~
7のいずれか一項に記載のシール部材。
【請求項9】
前記孔は、前記凹部の底に開口し、前記凹部の深さ方向に沿って前記第一部材を貫通している、請求項1~
8のいずれか一項に記載のシール部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
シール部材は、様々な機械要素において使用され、気密性または液密性などの所期の機能を発現する。シール部材には、複数の機能を発現するシール部材が知られている。その一例として、
図22に示されるような、通気性と液密性との両方を発現可能な通気非透水ユニットが知られている(例えば、特許文献1参照)。
図22に示されるように、通気非透水ユニット900は、例えばフッ素ゴム製のアウタケース911、インナケース912、およびこれらによって挟持される通気非透水シート913によって構成されている。
【0003】
アウタケース911は、筒状部921と、筒状部921の一端部から径方向の内方に延びる有孔底板部922と、筒状部921の他端部から径方向の外方に延びる抜止フランジ部923とを有している。インナケース912は、有孔の円筒体であり、アウタケース911の通気穴924に対応する通気穴931を中心軸CA上に有する。通気非透水シート913は、通気性を有するが透水性を有さないシートであり、例えば商品名ゴアテックス(登録商標)で知られるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートである。
【0004】
通気非透水シート913は、アウタケース911の内底面925とインナケース912の底面932とよって挟まれて、通気穴924、931を塞いだ状態でアウタケース911内に保持される。インナケース912は、インナケース912の外周面における一端部に形成されている突条部933が、アウタケース911の内周面における一端部に形成されている凹条部926に嵌合することによって、アウタケース911内に固定されている。通気非透水ユニット900は、ハウジング920に形成されている貫通孔921に着脱可能に装着されている。より詳しくは、アウタケース911の外周面における中央部に形成されている突条部927が、貫通孔921の周壁における一端部に形成されている凹条部951に嵌り込んでいる。この嵌合により、通気非透水ユニット900が貫通孔921に着脱可能に装着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、シール部材は、一つの装置において多数使用される。また、複数の機能を有するシール部材は、設置場所が制限されることがある。このため、シール部材には、取付けやすさなどの作業性のさらなる向上が求められることがある。
【0007】
本発明の一態様は、通気性と液密性とを有するとともに作業性に優れるシール部材を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るシール部材は、弾性を有するとともに凹部を有し、かつ前記凹部と外部とを連通する孔を有する第一部材と、連続気泡を有するとともに、前記第一部材によって前記凹部に保持される第二部材とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、通気性と液密性とを有するとともに作業性に優れるシール部材を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態1に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す平面図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す底面図である。
【
図4】
図1~3に示されるシール部材が貫通孔に装着された状態の一例を模式的に示す断面図である。
【
図5】貫通孔に装着された状態の本発明の実施形態2に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す断面図である。
【
図6】貫通孔に装着された状態の本発明の実施形態2に係るシール部材の構成の他の例を模式的に示す断面図である。
【
図7】貫通孔に装着された状態の本発明の実施形態3に係るシール部材の構成の第一の例を模式的に示す断面図である。
【
図8】貫通孔に装着された状態の本発明の実施形態3に係るシール部材の構成の第二の例を模式的に示す断面図である。
【
図9】貫通孔に装着された状態の本発明の実施形態3に係るシール部材の構成の第三の例を模式的に示す断面図である。
【
図10】貫通孔に装着された状態の本発明の実施形態3に係るシール部材の構成の第四の例を模式的に示す断面図である。
【
図11】本発明の実施形態4に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す断面図である。
【
図12】本発明の実施形態4に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す平面図である。
【
図13】本発明の実施形態4に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す底面図である。
【
図14】
図11~13に示されるシール部材が二重管の内管に装着された状態の一例を模式的に示す断面図である。
【
図15】本発明の実施形態5に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す平面図である。
【
図16】本発明の実施形態5に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す断面図である。
【
図17】本発明の実施形態5に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す底面図である。
【
図18】本発明の実施形態5に係るシール部材が貫通孔に装着された状態を模式的に示す断面図である。
【
図19】本発明の実施形態6に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す底面図である。
【
図20】本発明の実施形態6に係るシール部材が貫通孔に装着された状態を模式的に示す断面図である。
【
図21】本発明の実施形態7に係るシール部材が貫通孔に装着された状態を模式的に示す断面図である。
【
図22】通気性および液密性を有する従来のシール部材の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。なお、以下の説明において、「~」はその両端の数字を含む範囲を意味する。
図1は、本発明の実施形態1に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す断面図である。
図2は、本発明の実施形態1に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す平面図である。
図3は、本発明の実施形態1に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す底面図である。なお、
図1の断面図は、
図2に示さされるシール部材を
図2中のA-A線で切断した断面を示している。
図1~
図3に示されるように、シール部材10は、第一部材11と第二部材12とを有する。
【0012】
[第一部材]
第一部材11は、弾性を有する。第一部材11は、例えばゴム製である。第一部材11の材料の例には、フッ素ゴムおよび水素化ニトリルゴム(HNBR)が含まれる。第一部材11の材料は、第一部材11に求められる弾性に応じて適宜に決めることができ、第一部材11の弾性は、シール部材10に求められるシール性に応じて適宜に決めることが可能である。
【0013】
第一部材11は、凹部111を有する。たとえば、第一部材11は、底面部112と底面部112の周囲から起立する壁部113とによって構成されており、凹部111は、底面部112および壁部113の内表面で形成されている。第一部材11において、底面部112を平面視したときの平面形状は円形であり、壁部113の平面形状は円環状である。
【0014】
第一部材11は、凹部111と外部とを連通する孔114を有する。孔114は、底面部112を貫通する孔であり、底面部112の中央に開口し、中心軸CAに沿って延在している。このように、孔114は、凹部111の底に開口し、凹部111の深さ方向に沿って第一部材11を貫通している。
【0015】
孔114の大きさは、シール部材10に求められる通気性および液密性に応じて適宜に決めることができる。たとえば、要求される液密性が高いほど、孔114の孔径は小さいことが好ましい。また、要求される通気性が高いほど、あるいは要求される液密性が低いほど、孔114の孔径は大きくてよい。なお、「液密性」とは、液体が通過しない性質を言う。
【0016】
また、孔114の大きさは、凹部111の内径よりも十分に小さいことが、第一部材11からの第二部材12の脱落を防止する観点から好ましい。あるいは、孔114の大きさは、部品の脱落による異常の検知または機器の破損防止など、シール部材10が装着される機器に関する異常を検知する観点では、第一部材11から第二部材12を脱落させることが好ましい場合がある。このような観点によれば、孔114の大きさは、凹部111の内径よりも若干小さいことが好ましい。上記の観点から、凹部111の内径に対する孔114の孔径の割合は0.05~0.95であってよい。
【0017】
[第二部材]
第二部材12は、連続気泡を有する。連続気泡とは、第二部材12の一方の表面から他方の表面まで連通するように連結した気泡を言う。第二部材12は、スポンジのように形状を自在に変形可能であってもよいし、樹脂製の多孔質板またはモノリスのように保形性を有していてもよい。保形性とは、その物体が有する特定の形状が保たれる十分な硬さを言う。モノリスとは、微細な網目状の骨格が繋がった一体型の多孔質体である。第二部材12の空隙率は、シール部材10に求められる通気性を発現させる範囲において適宜に決めてよく、当該空隙率を有する範囲において、第二部材12は、公知の多孔質体から適宜に選ぶことができる。
【0018】
本実施形態において、第二部材12は、保形性を有している。このような保形性を有する第二部材12は、日東電工株式課社製の超高分子量ポリエチレン多孔体「サンマップLC」(厚さ2.0mm、「サンマップ」は同社の登録商標)で構成され得る。この他にも、第二部材12の材料の例には、三福工業株式会社製のフッ素樹脂発泡体、トーメイ工業株式会社製のプラスチック焼結多孔質体、株式会社染谷製作所製のプラスチック焼結多孔質体、スペイシーケミカル株式会社製のプラスチック焼結多孔質体、富士ケミカル株式会社製のプラスチック焼結多孔質体、株式会社先田製作所製のプラスチック焼結多孔質体、株式会社巴川製紙所製のフッ素繊維シート、中興化成工業株式会社製のフッ素樹脂多孔質体「C-Porous」(「シポラス」は同社の登録商標)、日東電工株式会社製のEPDMゴム発泡体「エプトシーラー」(「エプトシーラー」は同社の登録商標)、小段金属株式会社製の焼結金属多孔質体、および、株式会社創和製の透湿防水フィルター「FOLEC」(「FOLEC」は株式会社イノアックコーポレーションの登録商標)が含まれる。
【0019】
第二部材12は、上記多孔体の円板であり、その径は、第一部材11の内径と実質的に同じである。第二部材12は、例えば、凹部111の開口部から底面部112まで第二部材12を押し込むことにより、凹部111に嵌め込まれる。壁部113は弾性を有することから、硬質な第二部材12の周縁部は壁部113に食い込み、第二部材12が凹部111の底に固定される。こうして、第二部材12は、第一部材11のみによって凹部111内に保持される。
【0020】
[シール部材の装着]
図4は、シール部材10が貫通孔102に装着された状態の一例を模式的に示す断面図である。
図4に示されるように、ハウジング100は外壁101を有しており、外壁101は貫通孔102を有している。貫通孔102は、シール部材10の外径と実質的に同じ大きさの孔径を有している。ハウジング100は、例えば内部空間と外空間とを隔てる筐体である。ハウジング100の内部空間は、圧力が変動する空間である。ハウジング100の外表面は、外空間に露出している。
図4では、
図4の紙面に対して下側を当該内部空間とし、上側を当該外空間としている。
【0021】
シール部材10は、底面部112を内部空間側から外空間に向けてシール部材10を貫通孔102に押し込むことによって、貫通孔102に装着される。シール部材10は、このような簡易な作業によって貫通孔102に装着され得る。あるいは、底面部112を内部空間側から外空間に向けて第一部材11を貫通孔102に押し込み、次いで貫通孔102に装着されている第一部材11の凹部111に第二部材12を内部空間側から押し込む。このような簡易な二段階の作業によって、シール部材10は、貫通孔102に装着されてもよい。
【0022】
[シール部材の機能]
シール部材10は、弾性を有する第一部材11が貫通孔102に接することによって貫通孔102に装着されている。よって、第一部材11は、貫通孔102の周壁面と十分に密着している。このように、シール部材10は、貫通孔102を密閉している。
【0023】
シール部材10は、孔114を有し、凹部111と外部とが連通しているが、凹部111には、通気性と液密性と保形性を有する第二部材12が収容されている。したがって、シール部材10は、ハウジング100の貫通孔102を密閉しているが、ハウジング100の内部空間と外空間との間では、第二部材12の通気性により通気可能である。したがって、ハウジング100の内部空間の圧力が高まると、内部空間の空気は、第二部材12および孔114を通って外空間に放出される。
【0024】
一方で、外空間からは、貫通孔102に装着されているシール部材10に対して水が供給されることがある。しかしながら、シール部材10に必要な通気性に応じた小さな孔径を孔114が有する場合には、水は孔114に侵入しにくい。
【0025】
また、孔114は、液密性を有する第二部材12によって塞がれている。したがって、孔114に水が侵入しても、孔114からのハウジング100の内部空間への浸水が防止される。
【0026】
このように、シール部材10は、ハウジング100内の内圧を逃がすことが可能であり、かつハウジング100内への水の侵入することを防止する用途で好適に使用することができる。
【0027】
[作用効果]
前述したように、シール部材10は、第一部材11および第二部材12の二部材から構成される。このため、第二部材12を第一部材11に嵌め込むだけで、通気性および液密性という複数の機能を有するシール部材を、前述した従来の通気非透水ユニットに比べて、簡易に構成することが可能である。
【0028】
また、上記の簡易な構造を有することから、ハウジング100の貫通孔102に装着された第一部材11に第二部材12を嵌め込むことによりシール部材10を構成することが可能である。このように、シール部材10は、従来の複数機能のシール部材に比べて、より簡易に組み立てることが可能である。また、使用中のシール部材10から第二部材12をシール部材10の設置場所において容易に外すことができ、当該設置場所での第二部材12の交換も容易である。
【0029】
また、シール部材10において、底面部112の内径は孔114の孔径よりも十分に大きくすることが可能である。よって、内部空間の圧力が高まった場合に、外側に向けて押される第二部材12を底面部112が十分な面積で支えることができる。よって、外側に向けて押される第二部材12が外空間側へ脱落することを十分に抑制することが可能である。
【0030】
また、シール部材10は、ハウジング100の貫通孔102に装着されているが、シール部材10における底面部112の内径と孔114の孔径との大きさの関係によって、シール部材10の貫通孔102への保持力を制御することが可能である。たとえば、孔114の孔径を大きくして内部空間の圧力を外空間側に抜けやすく、または、孔114の孔径を小さくして内部空間の圧力を外空間側に抜けにくくすることで、シール部材10の貫通孔102への保持力を制御することが可能である。
【0031】
また、例えば、内部空間の内圧が上昇した場合にシール部材10が外れるように、シール部材10の貫通孔102への保持力が制御されていてもよい。第一部材11は弾性を有しているため、壁部113の外径によって、シール部材10の貫通孔102への保持力を調整することが可能である。このように内部空間の圧力に応じて外部空間への外れやすさを調整することは、内部空間側に配置されている様々な機械要素の、内部空間の圧力上昇による破損を防止するのに好適である。
【0032】
また、第二部材12は、第一部材11のみによって第一部材11に保持される。したがって、第一部材11内に第二部材12を保持するための第三の部材を要さない。このため、従来の通気非透水ユニットに比べて、中心軸CA方向における第一部材11の寸法を小さくすることが可能となり、あるいは、第二部材12の寸法を大きくすることが可能である。よって、従来の通気非透水ユニットに比べて、さらなる小型化が可能であり、あるいは、液密性をさらに高めることが可能である。
【0033】
また、第二部材12が保形性を有することから、第二部材12が内部空間の圧力の上昇に応じて変形することが抑制される。このため、底面部112が第二部材12に当接する部分の面積を、第二部材12が可撓性などの変形可能な柔軟性を有する場合に比べて、十分に小さくすることが可能である。よって、第一部材11の径方向の寸法を、孔114の孔径と第二部材12の外径とに応じて決めることが可能となり、従来の通気非透水ユニットに比べて、径方向の寸法をさらに小さくすることが可能である。
【0034】
また、孔114は、中心軸CAに沿って底面部112を貫通している。よって、内部空間の圧力上昇時において、通過する空気に対する孔114による抵抗が少ない。したがって、シール部材10の通気性を十分に高める観点から有利である。
【0035】
また、シール部材10は、第一部材11と第二部材12の二部材から構成され、また、前述したような寸法の高い自由度を有している。よって、シール部材10の設置場所が、通気性と液密性との両方が要求されるとともに限定された構造であったとしても、これに対応した大きさおよび形状にすることが容易であり、従来の通気非透水ユニットに比べて、高い汎用性が期待される。
【0036】
[実施形態1の変形例]
なお、第一部材11の平面形状は、貫通孔102の形状に合う形状であればよい。たとえば、貫通孔102の平面形状が四角形であれば、第一部材11の外周面の平面形状も四角形であってよい。この場合、凹部111の平面形状は、第二部材12を保持することが可能な範囲で適宜に決めることができ、例えば四角形でもよいし、円形などのそれ以外の形状であってよい。
【0037】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0038】
[第一の例]
図5は、本発明の実施形態2に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す断面図である。
図5は、この例における当該シール部材が貫通孔に装着された状態を模式的に示している。本実施形態は、第一部材における壁部がその外周面に突条部を有すること以外は、前述した実施形態1と実質的に同じである。
【0039】
図5に示されるように、シール部材21は、壁部113の外周面に周設されている突条部213を有している。突条部213は、壁部113の中心軸CAに沿う方向における略中央部に形成されている。一方、ハウジング100の貫通孔102は、突条部213に嵌合する凹条部202を有している。凹条部202は、貫通孔102の内周壁の中心軸CAに沿う方向における略中央部に形成されている。
【0040】
シール部材21を内部空間側から貫通孔102に押し込むと、壁部113の突条部213が貫通孔102の凹条部202に嵌合する。このため、貫通孔102に装着されたシール部材21の、中心軸CAに沿う方向における移動が、実施形態1に比べてより強く規制される。このように、突条部213は、シール部材21が設置されたときに中心軸CAに沿う方向(壁部113が起立する方向)へのシール部材21の移動を規制するための規制部として機能する。シール部材21は、前述した実施形態1のシール部材10に比べて、シール部材21の貫通孔102からの脱落を防止する観点からより効果的である。
【0041】
なお、貫通孔102が凹条部202を有さない場合であっても、シール部材21は、実施形態1に比べてより強固に貫通孔102に装着される。これは、貫通孔102の内周壁面に対して、シール部材21の突条部213が、壁部113における突条部213以外の部分に比べて、貫通孔102の内周壁面をより強く押圧するためである。
【0042】
[第二の例]
突条部213の数および位置は、上記の規制部として機能する範囲において、適宜に決めることが可能である。
図6は、本発明の実施形態2におけるシール部材の構成の他の例を模式的に示す断面図である。
図6は、当該他の例における当該シール部材が貫通孔に装着された状態を模式的に示している。
図6に示される例は、一つの突条部213に代えて二つの突条部214、215を有する点で
図5に示される例と異なる。また、
図6に示される例は、壁部113の先端部の内周側に周設されている突条部216をさらに有する点で
図5に示される例と異なる。
【0043】
なお、以下、中心軸CAに沿う方向におけるシール部材の部分の位置について、凹部の開口側を「一端」、その反対側(底面部側または孔側)を「他端」、とも言う。
【0044】
図6に示されるように、シール部材22は、壁部113の外周面に周設されている二つの突条部214、215を有している。突条部214は、壁部113における他端側の外周面に周設されており、突条部215は、壁部113の一端側の外周面に周設されている。貫通孔102には、前述の凹条部202は形成されていないが、形成されていてもよい。
【0045】
シール部材22を内部空間側から貫通孔102に押し込むと、突条部214は径方向に押圧されて第一部材11の弾性によって変形する。貫通孔102の内周壁が第一部材11の突条部214を乗り越えることによってシール部材22が貫通孔102に押し込まれる。突条部214は、貫通孔102を通り越すと、再び壁部113の外方へ突出する。突条部214は、貫通孔102の外空間側の開口端縁よりも外空間側に位置し、突条部215は、貫通孔102の内部空間側の開口端縁よりも内部空間側に位置している。
【0046】
シール部材22が貫通孔102内において中心軸CAに沿って外空間に向けて移動しようとすると、突条部215が貫通孔102における内側の開口端縁に係止する。シール部材22が貫通孔102内において中心軸CAに沿って内部空間に向けて移動しようとすると、突条部214が貫通孔102における外側の開口端縁に係止する。このように、突条部214、215は、シール部材22が設置されたときに壁部113が起立する方向へのシール部材22の移動を規制するための規制部として機能する。
【0047】
一方、突条部216は、壁部113における先端部の内周側に周設されており、第二部材12の一端縁に係合している。このように、突条部216は、凹部111の開口端部における内周面に形成される凸部であって、凹部111に保持されている第二部材12に係合する係合部となっている。このため、実施形態1に比べて、第二部材12の内部空間側への脱落がより強く抑制される。したがって、例えば、内部空間が負圧になった場合など、第二部材12が凹部111の開口から脱落することを防止することができる。
【0048】
[実施形態2の変形例]
なお、本実施形態において、突条部213~216は、周設されていない凸部に置き換えることが可能である。また、突条部213は、貫通孔102が凹条部202に代えて凸部または突条部を有する場合には、それに嵌合する凹部または凹条部に置き換えることが可能である。
【0049】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。本実施形態は、フランジ部を有する以外は前述した実施形態2と同様である。
【0050】
[第一の例]
図7は、本発明の実施形態3におけるシール部材の構成の第一の例を模式的に示す断面図である。
図7は、第一の例における当該シール部材が貫通孔に装着された状態を模式的に示している。
図7に示されるシール部材は、突条部215に代えて、壁部113における一端部にフランジ部301を有する以外は、前述した実施形態2の第二の例と同様である。
【0051】
図7に示されるように、シール部材31は、壁部113の外周面における一端部に周設されているフランジ部301を有する。フランジ部301は、壁部113の周壁から径方向に沿って外方に延出する板状の部分であって、その平面形状が円環状の部分である。壁部113の外径に対するフランジ部301の外径の比は、例えば、後述する過剰な押し込みを防止する観点から、適宜に決めることが可能である。
【0052】
フランジ部301は、前述の突条部215に比べて、十分に大きな厚さを有している。フランジ部301の厚さは、例えば、フランジ部301が十分に大きな剛性を発現する観点から、適宜に決めることが可能である。
【0053】
シール部材31を内部空間側から貫通孔102に押し込むと、フランジ部301における他端側の平面部が、ハウジング100の外壁101における貫通孔102の開口周辺部に当接する。フランジ部301は、外方への十分な突出長さと十分な剛性を有している。したがって、シール部材31の装着作業時に、作業者はフランジ部301における一端側の平面部を押圧することで、シール部材31を貫通孔102内に押し込むことができる。よって、シール部材31の装着作業をより迅速かつ円滑に実施することが可能である。
【0054】
また、フランジ部301が貫通孔102の開口端縁に当接すると、シール部材31はそれ以上、貫通孔102に押し込まれることがない。したがって、シール部材31は、内部空間側からの押し込みによって所期の位置に装着され得る。
【0055】
[第二の例]
本実施形態において、フランジ部の位置は、シール部材の装着時における押し込み方向に応じて適宜に決めることが可能である。
図8は、本発明の実施形態3におけるシール部材の構成の第二の例を模式的に示す断面図である。
図8は、第二の例における当該シール部材が貫通孔に装着された状態を模式的に示している。
図8に示されるシール部材32は、突条部214に代えてフランジ部302を有する以外は、前述した実施形態2の第二の例と同様である。
【0056】
図8に示されるように、シール部材32は、底面部112の外周面に周設されているフランジ部302を有する。フランジ部302は、配置されている位置が異なる以外は、前述のフランジ部301と同様に構成されている。フランジ部302は、壁部113の外周面における他端部に配置されている。
【0057】
フランジ部302における他端側の平面部を押圧してシール部材32を外空間側から貫通孔102に押し込むと、シール部材32が所期の位置まで押し込まれて貫通孔102に装着される。シール部材32は、壁部113の外周面における他端側にフランジ部302を有することから、ハウジング100の外空間側から貫通孔102に装着することが可能である。よって、本実施形態における前述の第一の例に比べて、シール部材32の装着作業をより容易に実施することが可能である。
【0058】
[第三の例]
本実施形態において、突条部の位置および数も適宜に決めることが可能である。
図9は、本発明の実施形態3におけるシール部材の構成の第三の例を模式的に示す断面図である。
図9は、第三の例における当該シール部材が貫通孔に装着された状態を模式的に示している。
図9に示されるシール部材33は、壁部113の外周面における一端側にフランジ部303を有し、かつフランジ部303と壁部113の外周面との間にテーパ部313を有する以外は、前述した実施形態2の第一の例と同様である。
【0059】
図9に示されるように、シール部材33は、壁部113の外周面における一端側に周設されているフランジ部303を有する。フランジ部303よりも他端側には、フランジ部303の他端側の平面部から壁部113の外周面に向けて傾斜する表面を有するテーパ部313が周設されている。テーパ部313は、その外径が、フランジ部303から壁部113に向けて漸次縮小する部分である。一方、ハウジング100の貫通孔102における内部空間側の開口部には、貫通孔102の開口端から貫通孔102の直胴の周壁部にかけて、テーパ部323が周設されている。テーパ部323は、その径が内部空間側から外空間に向けて漸次縮小する部分である。
【0060】
シール部材33を内部空間側から貫通孔102に押し込むと、シール部材33のテーパ部313は、貫通孔102のテーパ部323を案内し、テーパ部323に当接する。このため、これらのテーパ部の当接によって、貫通孔102内におけるシール部材33の装着位置が決定する。したがって、貫通孔102における所期の位置にシール部材33をより容易に装着することが可能である。
【0061】
また、シール部材33が貫通孔102に装着されている状態では、テーパ部313とテーパ部323とが密着する。よって、前述した本実施形態における第一の例および第二の例に比べて、貫通孔102に対するシール部材33の密閉性のさらなる向上が期待される。
【0062】
[第四の例]
本実施形態において、テーパ部を有する場合においても、フランジ部の位置は、シール部材の装着時における押し込み方向に応じて適宜に決めることが可能である。
図10は、本発明の実施形態3におけるシール部材の構成の第四の例を模式的に示す断面図である。
図10は、第四の例における当該シール部材が貫通孔に装着された状態を模式的に示している。
図10に示されるシール部材34は、フランジ部304およびテーパ部314の位置が異なる以外は、前述した本実施形態における第三の例と同様である。
【0063】
図10に示されるように、シール部材34は、底面部112の外周面に周設されているフランジ部304と、フランジ部304の一端側の平面部から壁部113の外周面に向けて傾斜する表面を有するテーパ部314とを有する。テーパ部314は、その外径が、フランジ部304から壁部113に向けて漸次縮小する部分である。また、ハウジング100の貫通孔102における外空間側の開口部には、貫通孔102の開口端から貫通孔102の直胴の周壁部にかけて、テーパ部324が周設されている。テーパ部324は、その径が内部空間側から外空間に向けて漸次縮小する部分である。
【0064】
シール部材34を外空間側から貫通孔102に押し込むと、シール部材34のテーパ部314が、貫通孔102のテーパ部324に当接する。このように、第四の例では、ハウジング100の外空間側からシール部材34を貫通孔102に装着可能であることから、前述した本実施形態における第三の例に比べて、シール部材34の装着作業をより容易に実施することが可能である。
【0065】
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
図11は、本発明の実施形態4に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す断面図である。
図12は、本発明の実施形態4に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す平面図である。
図13は、本発明の実施形態4に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す底面図である。なお、
図11の断面図は、
図12に示さされるシール部材を
図12中のA-A線で切断した断面を示している。
図11~
図13に示されるように、シール部材40は、第一部材41と第二部材42とを有する。
【0066】
[第一部材]
第一部材41は、例えばゴム製であり、弾性を有している。第一部材41の平面形状は、円環状であり、第一部材41をその中心軸CAを含む平面で切断した断面の形状は、略U字形状である。第一部材41における略U字形状の内側の空間は、
図11の紙面に対して下向きに開口する凹部411となっている。このように、第一部材41の平面形状は環状であり、凹部411は、第一部材41の平面形状の部分に開口するように形成された環状の凹条となっている。
【0067】
さらに、第一部材41は、凹部411と外部とを連通する孔412を有している。孔412は、複数形成されている。たとえば、第一部材41には、四つの孔412が形成されている。孔412のそれぞれは、第一部材41を平面視したときに、中心軸CAを中心とする四回対称の位置のそれぞれに形成されている。孔412は、凹部411の前述した略U字形状の底に開口し、中心軸CAに沿って延在している。このように、孔412は、凹部411の底に開口し、凹部411の深さ方向に沿って第一部材41を貫通している。
【0068】
さらに、第一部材41は、凹部411の開口部において対向する壁部の内側に、それぞれの壁部から突出する一対の突条部413、413を有している。突条部413、413は、互いに対向して突出しているが、互いの間には隙間を有している。
【0069】
[第二部材]
第二部材42は、連続気泡を有する。第二部材42は、例えば、樹脂製のスポンジであり、前述した超高分子量ポリエチレン多孔体のうちの多孔質板であり、あるいは前述したモノリスである。第二部材42は、断面において凹部411と突条部413、413とが形成する略円形の空間を満たしている。このように、第二部材42は、第一部材41の弾性と一対の突条部413、413とによって凹部411に保持されている。また、突条部413、413は、凹部411の開口端部における内周面に形成される凸部であって、凹部411に保持されている第二部材42に係合する係合部となっている。
【0070】
[シール部材の装着と作用効果]
図14は、シール部材40が二重管の内管に装着された状態の一例を模式的に示す断面図である。二重管400は、内管401と内管401を内包する外管402とによって構成されている。内管401は、気体が流通する管とする。
図14に示されるように、シール部材40は、凹部411の開口部を下向きにして内管401に嵌められ、内管401と外管402との間の隙間を塞いでいる。
【0071】
凹部411に保持されている第二部材42は、連続気泡を有することから通気性を有する。したがって、内管401と外管402との隙間におけるシール部材40よりも下側にある気体は、凹部411に入り、第二部材42内を通過し、孔413を通ってシール部材40よりも上側に流通することが可能である。
【0072】
一方、シール部材40の上側から流体がシール部材40に到達した場合では、平面視したときにシール部材40が占める部分に対して孔413が十分に小さいことから、当該流体は実質的にはシール部材40を通過することができない。特に、第二部材42が通気性と液密性とを有する部材である場合には、上側からシール部材40に到達した液体は、孔413に侵入しても第二部材42を通過することができない。このように、シール部材40は、二重管400における隙間を、下側に対しては通気可能に封止し、上側に対しては流体が実質的に流通しないように封止している。
【0073】
ここで、シール部材40よりも下側の位置、例えば
図14中の矢印Pで示す位置で内管401が破損し、内管401中の気体が漏れ出たとする。内管401から漏れた気体は、内管401と外管402との隙間を通ってシール部材40に到達する。シール部材40は、下側に対しては通気可能に隙間を封止していることから、内管401から漏れ出た気体は、第二部材42、孔412を通ってシール部材40を通過する。漏れ出た気体は、例えば
図14に示すように、シール部材40よりも上側において、外管402に形成されている点検窓から検出され得る。その結果、シール部材40よりも下側の位置で内管401が破損していることがわかる。
【0074】
このように、シール部材40は、隙間を封止しつつ、凹部411の開口側での気体の発生を孔413側で検出可能とする用途で好適に使用することができる。
【0075】
[実施形態4の変形例]
凹部411は、環状の凹条でなくてもよい。たとえば、凹部411は、シール部材40の周方向において分断された一つの、または複数の凹部であってもよい。シール部材40が複数の凹部を有する場合では、複数の凹部は、シール部材40を平面視したときに、中心軸CAを中心とする点対称または回転対称の位置にあることが、シール部材40の使用時における変形に偏りが生じることを抑制する観点から好ましい。また、このような観点から、複数の凹部の数は、2以上あることが好ましく、さらに好ましくは3以上である。
【0076】
また、シール部材40の装着位置を容易に決定する観点、あるいは、シール部材40が装着位置からずれることを抑制する観点から、シール部材40は、シール部材40の外表面から突出する凸部または凹部をさらに有していてもよい。この場合、シール部材40が装着される側の構造には、当該凸部または凹部に嵌合する凹部または凸部が形成されていることが好ましい。
【0077】
また、シール部材40が有する孔は、一個でもよい。孔の数が少ないことは、シール部材40を通過した気体の検出を容易にし、また当該検出の精度を高める観点から好ましい。
【0078】
〔実施形態5〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
図15は、本発明の実施形態5に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す平面図である。
図16は、本発明の実施形態5に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す断面図である。
図17は、本発明の実施形態5に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す底面図である。
図16の断面図は、
図15に示さされるシール部材を
図15中のA-A線で切断した断面を示している。シール部材50は、第一部材51と第二部材12とを有する。
【0079】
[構成]
第一部材51は、第一部材51の外周面から外方に延在する傘部をさらに有する以外は、前述した実施形態3における第二の例の第一部材と実質的に同様の構成を有している。たとえば
図16に示されるように、傘部511は、フランジ部302からさらに外方に延在している。
【0080】
傘部511は、円環状の平面形状を有する板状の部分である。傘部511は、第一部材51と一体的に成形されており、第一部材51と同様に弾性を有する。また、第一部材51は、外側ほど下方に位置するように傾いて形成されている。傘部511は、外側に向けてわずかに先細りとなるように形成されている。
【0081】
傘部511のフランジ部302側の端部の下側の主面(一端側の主面)には、凹部512が形成されている。凹部512は、
図17に示されるように、第一部材51を下から見たときに、フランジ部302の周囲を囲む円環状の平面形状を有する、下に向けて凹の曲面で形成される窪みである。このように、傘部511の厚さは、フランジ部302の厚さに比べて凹部512において薄くなっており、傘部511が凹部512から上側に折れ曲がりやすくなっている。
【0082】
[シール部材の装着]
図18は、本発明の実施形態5に係るシール部材が貫通孔に装着された状態を模式的に示す断面図である。
図18に示されるように、シール部材50は、貫通孔102に挿入される。貫通孔102の近傍にはオリフィス103が形成されている。オリフィス103は、外壁101を貫通するより小さな孔であり、内部空間からの流体の所期の流入量に応じた形状を有している。オリフィス103は、貫通孔102の近傍であって、傘部511の凹部512に開口する位置に形成されている。オリフィス103の数は、一つであってもそれ以上であってもよい。複数のオリフィス103が存在する場合では、オリフィス103は、シール部材50の中心軸CA(貫通孔102の中心軸)に対して対称の位置にあることが好ましい。たとえば、オリフィス103の数は、好ましくは2または4である。
【0083】
[作用効果]
シール部材50は、貫通孔102に装着された状態では、傘部511は下方に傾いて延在する形状であることから、傘部511の周縁部が外壁101の上面に押し付けられる。このように、傘部511の周縁部は、オリフィス103よりも外側で外壁101に向けて付勢されて当接する。シール部材50は、貫通孔102およびオリフィス103を密閉している。よって、オリフィス103は、外部に対して密閉され、外部からオリフィス103を介する内部空間への流体の侵入が防止される。
【0084】
内部空間の圧力が高まると、前述の実施形態と同様に、内部空間の空気は、第二部材12および孔114を通って外空間に放出される。当該空気は、オリフィス103を通って外壁101の表面と凹部512との間の空間にも到達する。しかしながら、当該空気は、外壁101に向けて付勢されている傘部511が外壁101に密着しているため、外部へ流出しない。
【0085】
内部空間の圧力の上昇によって内部空間からの通気量が第二部材12の設定されている通気量を上回ると、内部空間の圧力がさらに上昇する。外壁101の表面と凹部512との間の空間の圧力が傘部511の外壁101への付勢力に打ち勝つと、傘部511は、一端側(図中における下側)の主面が外方に向くように開き、内部空間の空気は、オリフィス103からも外部へ放出される。その結果、内部空間の圧力の上昇は抑制され、圧力上昇に伴う内部空間での機械要素の破損が防止される。このように、傘部511は、第一部材51の一端側から圧力を受けたときに、第一部材51の他端側に向けて変形するように構成されている。
【0086】
なお、傘部511は、一端側から圧力を受けたときに他端側に向けて、その全体が変形してもよいし、その一部が変形してもよい。たとえば、傘部511の一端側の圧力が高い部分が主に変形してもよい。
【0087】
また、内部空間の圧力に抗する傘部511の付勢力は、傘部511の厚さ、凹部512の深さ(傘部511の基端部における厚さ)、凹部512の断面形状、および、傘部511の下方へ傾斜する角度によって適宜に調整することが可能である。よって、所望の付勢力が発現される範囲において、傘部511は、前述した以外の形態であってもよい。たとえば、傘部511は、下方に傾斜せず、下側の主面が外壁101と水平である形態であってもよいし、凹部512を有さない形態であってもよい。あるいは傘部511は、オリフィス103よりも外側の外壁の部分ではなく、オリフィス103の開口を密閉する形状を有していてもよい。
【0088】
また、傘部511は、第一部材51におけるフランジ部302以外の部分、例えば壁部113から外方に延在してもよい。
【0089】
このように、シール部材50は、前述した実施形態の利点に加えて、内部空間で設定値を超えて圧力が上昇したときの圧力の上昇を防止する観点からより効果的である。
【0090】
〔実施形態6〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
図19は、本発明の実施形態6に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す底面図である。
【0091】
[構成]
シール部材60は、第一部材61と第二部材12とを有する。第一部材61は、溝611をさらに有する以外は、前述した実施形態5の第一部材と実質的に同様の構成を有している。溝611は、第一部材61の外周面に形成されている。溝611は、第一部材61における壁部113の一端部(図中の下端部)から壁部113の他端部まで延在し、さらにフランジ部302の表面に形成されて凹部512に至る形状に形成されている。中心軸CAに沿う溝611の断面形状は略L字型である。第一部材61は、二本の溝611を有しており、それぞれの溝611は、互いに中心軸CAに対して対称の位置に形成されている。このように、第一部材61は、第一部材61の外周面に形成され、第一部材61の一端部から傘部511における一端側の主面に至る溝611をさらに有している。
【0092】
[シール部材の装着]
図20は、本発明の実施形態6に係るシール部材が貫通孔に装着された状態を模式的に示す断面図である。
図20に示されるように、シール部材60は、貫通孔102に挿入される。第一部材61と貫通孔102および外壁101との間には、溝611による隙間が形成される。溝611により、内部空間と外壁101および凹部512の間の隙間とを連通する二本の細い通路が形成される。なお、溝611の一端の位置は、シール部材60が貫通孔102に装着されたときに内部空間内であればよく、例えば本実施形態であれば、中心軸CAに沿う方向における突条部215のいずれの位置でもよい。
【0093】
また、当該通路の数は、一本でもそれ以上でもよい。複数の通路(溝611)が存在する場合では、溝611は、シール部材60の中心軸CA(貫通孔102の中心軸)に対して対称の位置にあることが好ましい。たとえば、溝611の数は、好ましくは2または4である。
【0094】
[作用効果]
内部空間の圧力が設定値を超えると内部空間の圧力がさらに上昇し、溝611により形成されている通路によって内部空間と連通している、外壁101および凹部512の間の隙間の圧力も上昇する。当該隙間の圧力が傘部511の外壁101への付勢力に打ち勝つと、傘部511は、他端側により傾くように、一端側(図中の下側)の主面が外方に向くように開き、内部空間の空気は、溝611による通路を通って外部へ放出される。その結果、内部空間の圧力の上昇は抑制され、圧力上昇に伴う内部空間での機械要素の破損が防止される。よって、シール部材60は、前述した実施形態5と同様に、前述した実施形態の利点に加えて、内部空間で設定値を超えて圧力が上昇したときの圧力の上昇を防止する観点からより効果的である。
【0095】
加えて、シール部材60は、前述した実施形態5の利点に加えて、貫通孔102の周囲にオリフィス103が形成されていない場合であっても、内部空間で設定値を超えて圧力が上昇したときの圧力の上昇を防止するのに有効である。
【0096】
〔実施形態7〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
図21は、本発明の実施形態7に係るシール部材が貫通孔に装着された状態を模式的に示す断面図である。シール部材70は、第一部材71と第二部材12とを有する。
【0097】
シール部材70は、孔114に代えて孔714を有する以外は、前述した実施形態3における第二の例の第一部材と実質的に同様の構成を有している。
【0098】
第一部材71が有する孔714は、壁部113の基端部において壁部113を貫通しており、凹部111の内外を連通している。孔714は、一つでもそれ以上でもよい。第一部材71が複数の孔714を有する場合では、孔714は、シール部材70の平面視したときの形状において、中心軸CAから放射状に延在し、互いに等間隔となる位置にあることが好ましい。たとえば、孔714の数は、好ましくは2または4である。このように、第一部材71は、外部において、第一部材71の凹部111の深さ方向に交差する方向に開口している。
【0099】
図21に示されるように、シール部材70は、外壁101に形成された凹部104の底に形成された貫通孔102に装着される。内部空間の圧力上昇により空気が第二部材12を通過し、孔714を通って外部に放出される。一方で、孔714は、外部において第一部材71の凹部111の深さ方向に対して横向きに開口している。よって、水が外部からシール部材70に勢いよく当たっても、水が第二部材12に直撃し得ない。よって、シール部材70は、シール部材70に外部から勢いよく水が当たることによる内部空間への浸水または第二部材12の脱落を防止する観点から、より効果的である。
【0100】
加えて、シール部材70では、孔714は、中心軸CAに沿う方向において、フランジ部302と凹部111との間に形成されている。したがって、フランジ部を有さないシール部材の側面に孔714が開口する場合に比べて、外部からの水の孔714の侵入を防ぐ観点からより有利である。
【0101】
このように、前述の実施形態において、第一部材が有する孔は、中心軸CAに沿って延在していなくてもよい。たとえば、当該孔は、中心軸CAに対して斜めまたは横向きなどの、中心軸CAを横断する方向に沿って延在していてもよい。それにより、実施形態7のような浸水を防止するのに有利な効果が奏される。
【0102】
〔その他の実施形態〕
本発明は上述した各実施形態に限定されず、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0103】
たとえば、本発明の実施形態において、シール部材は、シールすべき部位に装着される時におけるシール部材の方向性を示す構成をさらに有していてもよい。このような構成は、例えば、底面部の外表面または壁部の他端部における「封水側」との表示であってもよいし、壁部の一端部における「高圧側」、「通気側」などの表示であってもよい。また、上記の構成は、例えば、装着時におけるシール部材の押し込み方向を示す矢印であってもよいし、装着されたシール部材における通気可能な方向を示す矢印であってもよい。さらに、上記の構成は、例えば、所期の押し込み方向の場合にシール部材を円滑に押し込み可能とするテーパ面または案内溝、であってもよい。
【0104】
〔まとめ〕
本発明の実施形態に係るシール部材(10、21、22、31、32、33、34、40、50、60、70)は、弾性を有するとともに凹部(111、411)を有し、かつ当該凹部と外部とを連通する孔(114、412、714)を有する第一部材(11、41、51、61、71)と、連続気泡を有するとともに、第一部材によって凹部に保持される第二部材(12、42)とを有する。本発明の実施形態は、シール部材が前述の第一部材と第二部材の二部材のみで構成され得ることから、通気性と液密性とを有するとともに作業性に優れるシール部材を実現することができる。
【0105】
本発明の実施形態において、第一部材は、底面部(112)と底面部の周囲から起立する壁部(113)とによって構成され、凹部は、底面部および壁部の内表面で形成されていてもよい。この構成は、通気を要する空間を画成するハウジングの貫通穴を塞ぐシール部材を実現する観点からより一層効果的である。
【0106】
また、本発明の実施形態において、シール部材は、壁部の端部から外側に突き出ているフランジ部(301、302、303、304)をさらに有していてもよい。この構成は、シール部材をシールすべき部位に装着する際の作業性を高める観点からより一層効果的である。
【0107】
また、本発明の実施形態において、シール部材は、壁部の外周面に形成される凹部または凸部であって、シール部材が設置されたときに壁部が起立する方向へのシール部材の移動を規制するための規制部(突条部213、214、215)をさらに有していてもよい。この構成は、シール部材を装着すべき部位に装着したシール部材の脱落を抑制する観点からより一層効果的である。
【0108】
また、本発明の実施形態において、第一部材は、第一部材の外周面から外方に延在する傘部(511)をさらに有し、第一部材における凹部の開口端側を第一部材の一端とし、その反対側の端を第一部材の他端としたときに、傘部は、第一部材の一端側から圧力を受けたときに第一部材の他端側に向けて変形するように構成されていてもよい。このような構成は、シール部材を装着したときに封止すべき空間の圧力が高くなり過ぎた場合の圧力の上昇を抑制する観点からより一層効果的である。
【0109】
また、本発明の実施形態において、第一部材は、第一部材の外周面に形成され、第一部材の一端部から傘部における第一部材の一端側の主面に至る溝(611)をさらに有していてもよい。このような構成は、圧抜け用の孔(オリフィス103)がなくてもシール部材を装着したときに封止すべき空間の圧力が高くなり過ぎた場合の圧力の上昇を抑制する観点からより一層効果的である。
【0110】
また、本発明の実施形態において、第一部材が有する孔は、外部において、第一部材の凹部の深さ方向に交差する方向に開口していてもよい。このような構成は、外部からの勢いの強い水が第二部材を通過することを防止する観点、および、そのような水の勢いによって第二部材が第一部材から脱落することを防止する観点からより一層効果的である。
【0111】
また、本発明の実施形態において、第一部材の平面形状が環状であり、凹部は第一部材の平面形状の部分に開口するように形成される環状の凹条であってもよい。この構成は、凹部の開口側での気体の発生を孔側で検出可能に隙間を封止するシール部材を実現する観点からより一層効果的である。
【0112】
また、本発明の実施形態において、凹部の開口端部における内周面に形成される凸部(216、413)であって、凹部に保持されている第二部材に係合する係合部をさらに有していてもよい。この構成は、第二部材が凹部から脱落することを防止する観点から、より一層効果的である。
【0113】
また、本発明の実施形態において、孔は、凹部の底に開口し、凹部の深さ方向に沿って第一部材を貫通していてもよい。この構成は、シールすべき部位に装着されたシール部材における十分な通気性を実現する観点からより一層効果的である。
【符号の説明】
【0114】
10、21、22、31、32、33、34、40、50、60、70 シール部材
11、41、51、61、71 第一部材
12、42 第二部材
100、950 ハウジング
101 外壁
102、951 貫通孔
103 オリフィス
104、111、411、512 凹部
112 底面部
113 壁部
114、412、714 孔
202 凹条部
213、214、215、216、413、927、933 突条部
301、302、303、304 フランジ部
313、314、323、324 テーパ部
400 二重管
401 内管
402 外管
511 傘部
611 溝
900 通気非透水ユニット
911 アウタケース
912 インナケース
913 通気非透水シート
921 筒状部
922 有孔底板部
923 抜止フランジ部
924、931 通気穴
925 内底面
926、952 凹条部
932 底面
CA 中心軸