(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】地中連続壁及びその構築方法
(51)【国際特許分類】
E02D 5/20 20060101AFI20240410BHJP
【FI】
E02D5/20 103
(21)【出願番号】P 2020209987
(22)【出願日】2020-12-18
【審査請求日】2023-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】松本 真輔
(72)【発明者】
【氏名】坂本 博明
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-256567(JP,A)
【文献】実公昭36-022524(JP,Y1)
【文献】実公昭41-005547(JP,Y1)
【文献】特開平11-200361(JP,A)
【文献】特開2013-092008(JP,A)
【文献】特開2003-171928(JP,A)
【文献】特開2013-155589(JP,A)
【文献】特開2019-218726(JP,A)
【文献】特開2007-177483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/00-5/20
7/00-13/10
E04G 21/14-21/22
E21D 1/00-9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削溝内でソイルセメントが硬化した、外面が壁面となるソイルセメント硬化部と、
前記ソイルセメント硬化部に、鉛直方向を長さ方向し、かつ前記壁面に沿う方向に離間して埋設した複数の芯材と、
前記複数の芯材の隣り合う2つの芯材を連結する間隔保持部材と、を有し、
前記芯材の離間方向における前記間隔保持部材の、一方の端部は前記隣り合う2つの芯材の一方の芯材に固定され、他方の端部は他方の芯材と前記壁面との間に存在し、
前記他方の端部には、前記他方の芯材の、前記一方の芯材を臨む面とは反対側の面と突き当たる第1の位置決め面、及び前記他方の芯材の前記壁面を臨む面と突き当たる第2の位置決め面が存在する、地中連続壁。
【請求項2】
前記間隔保持部材が、前記芯材の離間方向に延在する板状部と、前記板状部の前記他方の端部から直角に立ち上がる屈曲部とを有し、
前記板状部が前記他方の芯材と前記壁面との間に存在し、
前記直角をなす2つの面が、前記第1の位置決め面及び前記第2の位置決め面である、請求項1に記載の地中連続壁。
【請求項3】
前記間隔保持部材が、前記壁面に向かって突出する凸部を有する、請求項1又は2に記載の地中連続壁。
【請求項4】
一組の隣り合う2つの芯材を連結する前記間隔保持部材が、一方の壁面側にのみ存在し、
前記一組の隣り合う2つの芯材の一方の芯材を含む、他の一組の隣り合う2つの芯材を連結する前記間隔保持部材が、他方の壁面側にのみ存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の地中連続壁。
【請求項5】
一組の隣り合う2つの芯材を連結する前記間隔保持部材が、両方の壁面側に存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の地中連続壁。
【請求項6】
一組の隣り合う2つの芯材を連結する前記間隔保持部材と、前記一組の隣り合う2つの芯材の一方の芯材を含む、他の一組の隣り合う2つの芯材を連結する前記間隔保持部材とは、鉛直方向における位置が異なる、請求項5に記載の地中連続壁。
【請求項7】
前記芯材の長さ方向の一部が切削可能な材料からなる切削可能部位であり、
前記隣り合う2つの芯材の前記切削可能部位どうしが、前記間隔保持部材で連結されている、請求項1~6いずれか一項に記載の地中連続壁。
【請求項8】
前記間隔保持部材及び前記間隔保持部材の前記芯材への固定に用いられる部材が切削可能な材料からなる、請求項7に記載の地中連続壁。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の地中連続壁を構築する方法であって、
掘削溝に未硬化のソイルセメントを充填し、前記未硬化のソイルセメント中に、前記複数の芯材を1本ずつ建て込み、前記ソイルセメントを硬化させて、前記ソイルセメント硬化部を形成する工程を有し、
前記隣り合う2つの芯材の前記他方の芯材を先に建て込み、その隣に、前記間隔保持部材を固定した前記一方の芯材を、前記間隔保持部材の前記他方の端部が、前記他方の芯材と前記壁面との間を、前記他方の芯材に沿って降下するように、建て込む、地中連続壁の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地中連続壁及びその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールドトンネル用土留め壁に用いられるソイルセメント地中連続壁の施工方法として、
SMW工法、TRD工法等が知られている。
これらの工法では、地盤に掘削溝を形成するとともに、前記掘削溝内にソイルセメントを充填し、前記ソイルセメント中に複数の芯材を鉛直に建て込み、前記ソイルセメントを硬化させて地中連続壁を構築する。
【0003】
芯材は、ソイルセメント中の所定の位置に建て込む必要があるが、位置ずれが生じる場合がある。
特許文献1には、ソイルセメント中に複数の芯材を建て込んだ後、隣り合う芯材と芯材の間に、間隔保持部材として薄型の鋼板プレートを建て込む方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし特許文献1の方法は、間隔保持部材を建て込む前に、既にソイルセメント中で芯材どうしの間隔が設計値よりも広がっている場合には、該間隔を小さくすることができず、間隔保持部材としての薄型の鋼板プレートを建て込めない、または該間隔に合わせて前記鋼板プレートの寸法を都度長くするまたは短くする等の調整が必要となるという問題がある。
本発明は、芯材の位置精度に優れる地中連続壁及びその構築方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の態様を有する。
[1] 掘削溝内でソイルセメントが硬化した、外面が壁面となるソイルセメント硬化部と、
前記ソイルセメント硬化部に、鉛直方向を長さ方向とし、かつ前記壁面に沿う方向に離間して埋設した複数の芯材と、
前記複数の芯材の隣り合う2つの芯材を連結する間隔保持部材と、を有し、
前記芯材の離間方向における前記間隔保持部材の、一方の端部は前記隣り合う2つの芯材の一方の芯材に固定され、他方の端部は他方の芯材と前記壁面との間に存在し、
前記他方の端部には、前記他方の芯材の、前記一方の芯材を臨む面とは反対側の面と突き当たる第1の位置決め面、及び前記他方の芯材の前記壁面を臨む面と突き当たる第2の位置決め面が存在する、地中連続壁。
[2] 前記間隔保持部材が、前記芯材の離間方向に延在する板状部と、前記板状部の前記他方の端部から直角に立ち上がる屈曲部とを有し、
前記板状部が前記他方の芯材と前記壁面との間に存在し、
前記直角をなす2つの面が、前記第1の位置決め面及び前記第2の位置決め面である、[1]の地中連続壁。
[3] 前記間隔保持部材が、前記壁面に向かって突出する凸部を有する、[1]又は[2]の地中連続壁。
[4] 一組の隣り合う2つの芯材を連結する前記間隔保持部材が、一方の壁面側にのみ存在し、
前記一組の隣り合う2つの芯材の一方の芯材を含む、他の一組の隣り合う2つの芯材を連結する前記間隔保持部材が、他方の壁面側にのみ存在する、[1]~[3]のいずれかの地中連続壁。
[5] 一組の隣り合う2つの芯材を連結する前記間隔保持部材が、両方の壁面側に存在する、[1]~[3]のいずれかの地中連続壁。
[6] 一組の隣り合う2つの芯材を連結する前記間隔保持部材と、前記一組の隣り合う2つの芯材の一方の芯材を含む、他の一組の隣り合う2つの芯材を連結する前記間隔保持部材とは、鉛直方向における位置が異なる、[5]の地中連続壁。
[7] 前記芯材の長さ方向の一部が切削可能な材料からなる切削可能部位であり、
前記隣り合う2つの芯材の前記切削可能部位どうしが、前記間隔保持部材で連結されている、[1]~[6]のいずれかの地中連続壁。
[8] 前記間隔保持部材及び前記間隔保持部材の前記芯材への固定に用いられる部材が切削可能な材料からなる、[7]の地中連続壁。
[9] [1]~[8]のいずれかの地中連続壁を構築する方法であって、
掘削溝に未硬化のソイルセメントを充填し、前記未硬化のソイルセメント中に、前記複数の芯材を1本ずつ建て込み、前記ソイルセメントを硬化させて、前記ソイルセメント硬化部を形成する工程を有し、
前記隣り合う2つの芯材の前記他方の芯材を先に建て込み、その隣に、前記間隔保持部材を固定した前記一方の芯材を、前記間隔保持部材の前記他方の端部が、前記他方の芯材と前記壁面との間を、前記他方の芯材に沿って降下するように、建て込む、地中連続壁の構築方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、芯材の位置精度に優れる地中連続壁及びその構築方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る地中連続壁の斜視図である。
【
図3】
図1、2に示す地中連続壁の構築方法を示す斜視図である。
【
図4】
図1、2に示す地中連続壁の変形例を示す概略断面図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る地中連続壁の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1の実施形態>
図1、2は、本発明の第1の実施形態に係る地中連続壁1を示したものである。
図1は斜視図、
図2は
図1中のA-A線に沿う断面図である。
図1、2においてZ方向は鉛直方向、X-Y平面は水平面を示す。X方向は壁面3a、3bに沿う方向、Y方向は地中連続壁1の厚さ方向を示す。図中符号TはY方向における壁厚を示す。
【0010】
本実施形態の地中連続壁1は、掘削溝2内でソイルセメントが硬化したソイルセメント硬化部11(
図1では図示略)と、ソイルセメント硬化部11に埋設した複数の芯材21、22…と、隣り合う2つの芯材21、22を連結する間隔保持部材31を有する。
複数の芯材21、22…は、長さ方向がZ方向であり、X方向に沿って一列に、かつ所定のピッチPで互いに離間して存在する。X方向を芯材21、22…の離間方向ともいう。
後述するように、隣り合う2つの芯材21、22は、
図1、2において紙面右側から左側に向かって順に施工したものである。紙面右側の芯材を第1の芯材21、紙面左側の芯材を第2の芯材22ということもある。また、第1の芯材21から第2の芯材22に向かうX方向を「芯材施工方向」という。
芯材21、22…を挟んで両側に存在する壁面3a、3bのうち、芯材施工方向を向いて左側の壁面を第1の壁面3a、右側の壁面を第2の壁面3bともいう。
【0011】
第1の芯材21及び第2の芯材22は、Z方向から見たときの平面形状が長方形である。
第1の芯材21及び第2の芯材22において、互いを臨む面を対向面21c、22dという。
第1の芯材21の外面のうち、第1の壁面3aを臨む面(壁面3aに沿う面)を第1の側面21aといい、第2の壁面3bを臨む面(壁面3bに沿う面)を第2の側面21bという。
【0012】
第1の芯材21は、切削可能な材料からなる第1の柱状複合材(切削可能部位)51と、第1の柱状複合材51のZ方向の両端に接合された第1のH形鋼61を有する。
第2の芯材22は、切削可能な材料からなる第2の柱状複合材(切削可能部位)52と、第2の柱状複合材52のZ方向の両端に接合された第2のH形鋼62を有する。
本実施形態において、第1の芯材21と第2の芯材22とを連結する間隔保持部材31は、第1の柱状複合材51と第2の柱状複合材52とを連結する。
【0013】
第1の柱状複合材51及び第2の柱状複合材52は、例えばシールド掘削機のカッターによって切削可能な材料からなる。具体例として、硬質発泡ウレタン樹脂をガラス長繊維で強化した複合材料(積水化学工業株式会社製品名「エスロン(登録商標)ネオランバーFFU(登録商標)」等)が例示できる。ガラス長繊維の繊維方向はZ方向に平行である。
【0014】
第1の柱状複合材51及び第2の柱状複合材52はZ方向を高さ方向とする四角柱状である。図示していないが、第1の柱状複合材51は、複数枚の板材(例えばFFU板材)をX方向に積層して一体化した積層体である。第1のH形鋼61のウェブ部61aがZ方向に延びた部分を、前記積層体に設けた溝部に嵌めて接着することで、第1の柱状複合材51と第1のH形鋼61とを一体化している。さらに、第1の柱状複合材51と第1のH形鋼61との接合を補強するために、例えば、前記ウェブ部61aに平行な接着用鋼板を設け、前記接着用鋼板の一端側を前記積層体に設けた溝部に嵌めて接着するとともに、他端側をH形鋼61のフランジ部やウェブ部61aに固定することが好ましい。第2の柱状複合材52と第2のH形鋼62との接合も同様である。
第1の柱状複合材51と第2の柱状複合材52とは同じ大きさである場合が一般的であるが、施工性を考慮して、第1の芯材21と、第2の芯材22が異なる大きさで交互に施工される場合もある。
本実施形態では、第1の柱状複合材51において、X方向における柱状複合材の寸法51xとH形鋼の寸法61xとが同じで、Y方向における柱状複合材の寸法51yとH形鋼の寸法61yとが同じである状態、すなわち、柱状複合材とH形鋼の外面が面一であるが、これに限らない。51xと61x、又は51yと61yとが互いに異なる状態、すなわち外面が面一でない場合もある。
X方向の寸法51xは例えば150~600mmであり、Y方向の寸法51yは例えば250~900mmである。前記の通り、柱状複合材51及びH形鋼61のX方向の寸法、Y方向の寸法は同一である場合と、異なる場合がある。
第2の柱状複合材52及び第2の第1のH形鋼62の寸法も同様である。
【0015】
間隔保持部材31は水平断面がL字状であり、X方向に延在する板状部32と、X方向における板状部32の先端部(第1の芯材21側の端部)33から直角に立ち上がる屈曲部35を有する。
板状部32はY方向の厚さが一定であり、Y方向に垂直な表面32a及び裏面32bは平坦面である。屈曲部35は、X方向の厚さが一定の板状であり、X方向に垂直な裏面35c及び表面35dは平坦面である。
X方向における板状部32の基端部(第2の芯材22側の端部)34は第2の柱状複合材52に固定している。
【0016】
板状部32の先端部33は、第1の芯材21と第1の壁面3aとの間に存在している。
板状部32の裏面32bと、屈曲部35の裏面35cは直角をなす。これら2つの面は、第1の芯材21と第2の芯材22の水平面内における相対位置が設計通りであるときに、第1の芯材21(第1の柱状複合材51)の外面と突き当たる位置決め面である。
具体的に、X方向における第1の芯材21と第2の芯材22の間隔が拡大しようとすると、屈曲部35の裏面35cが、第1の芯材21の対向面21cとは反対側の面(離間方向の反対側の面)21dと突き当たり、間隔の拡大を阻止できる。
またY方向において、第2の芯材22が第1の芯材21に対して相対的に、第1の壁面3aから遠ざかる方向にずれようとすると、板状部32の裏面32bが、第1の芯材21の第1の側面21aと突き当たり、Y方向における芯材の位置ずれを阻止できる。
【0017】
Y方向における間隔保持部材31の厚みt1は、10mm以上が好ましい。上限は、Y方向における壁厚Tと第1の柱状複合材51の寸法51yとの差の1/2以下、すなわちt1≦(T-51y)/2である。X方向における間隔保持部材31の厚みt2の好ましい範囲はt1と同じである。
X方向における間隔保持部材31の寸法31xは、X方向における第1の柱状複合材51の寸法51xとピッチPと間隔保持部材31の厚みt2との合計と同じである。
Y方向における屈曲部35の寸法35yは、100mm以上が好ましい。上限は、Y方向における柱状複合材51の寸法51yと間隔保持部材31の厚みt1との合計値以下であり、51yとt1の合計値の50%以下が好ましい。
Z方向における間隔保持部材31の寸法31zは50~600mmが好ましい。
【0018】
間隔保持部材31は、FRP(繊維強化プラスチック)等の切削可能な材料からなる。FRPは補強長繊維を備えたものが好ましい。補強長繊維の繊維方向は水平方向が好ましい。間隔保持部材31の基端部34から屈曲部35の先端まで連続する補強長繊維を備えることがより好ましい。なお、屈曲部35については前記補強長繊維を部分的に増加させてもよい。
間隔保持部材31の材料と、第1、第2の柱状複合材51、52の材料とが同じであってもよい。
【0019】
間隔保持部材31の基端部34と第2の柱状複合材52との固定は、FRP製のボルト65等の固定部材を用いて緊結する方法が好ましい。
本実施形態では、第2の柱状複合材52のY方向に垂直な端面52aにボルト固定孔66を穿孔し、ボルト固定孔66内に、ケミカルアンカー(登録商標)67を用いてボルト65を固定している。
又は、ボルト固定孔66内にボルト65を挿入し、両者の隙間に接着剤を充填して固定してもよい。
又は、ボルト固定孔66を雌ネジ穴とし、ボルト65とボルト固定孔66を螺合して固定してもよい。
ボルト65の代わりにFRP製の寸切ボルトとナットを用いてもよい。
【0020】
本実施形態の地中連続壁1は、地盤に掘削溝2を形成するとともに、掘削溝2内に未硬化のソイルセメント12を充填し、未硬化のソイルセメント12中に複数の芯材21、22…を1本ずつ建て込み、ソイルセメント12を硬化させてソイルセメント硬化部11を形成する方法で構築できる。
【0021】
図3に示すように、先に建て込んだ第1の芯材21の隣に、第2の芯材22を建て込む前に、間隔保持部材31の一方の端部(基端部34)を第2の芯材22(第2の柱状複合材52)に固定する。第2の芯材22に固定した間隔保持部材31の他方の端部(板状部32の先端部33)が、第1の芯材21と第1の壁面3aとの間を、第1の芯材21に沿って降下するように、第2の芯材22を鉛直に建て込む。
【0022】
第2の芯材22を建て込む際に、もしくは建て込み終了後に、又はそれらの両方において、屈曲部35の裏面35cと第1の芯材21の面21dとが突き当たり、かつ板状部32の裏面32bが、第1の芯材21の側面21aと突き当たると、周囲のソイルセメント12による浮力や芯材の復元力等を受けても、第2の芯材22と第1の芯材21の間隔を設計通りに配置できる。第1の芯材21と第2の芯材22とが間隔保持部材で連結されることで、第1の芯材21と第2の芯材22が所定の離隔で配置された状態で、ソイルセメント12が硬化すると、設計通りのピッチで芯材が配置された地中連続壁が得られる。
【0023】
なお、
図4に示すように、間隔保持部材31の第1の壁面3aを臨む面(板状部の表面32a)に、壁面に向かって突出する凸部37が存在する態様としてもよい。
本態様によれば、第1の壁面3aと凸部37とが突き当たることで、Y方向における芯材の移動が制限され、Y方向における位置ずれを抑制できる。
具体的に、Y方向において、第2の芯材22が第1の壁面3aに近づく方向にずれようとすると、凸部37が、第1の壁面3aと突き当たり、Y方向における芯材の位置ずれを阻止できる。
さらに、第1の芯材21及び第2の芯材22が設計通りの配置にあるときに、凸部37が第1の壁面3aと突き当たるように設けると、建て込み時の位置精度がより向上する。これによりX方向、Y方向ともに狙いの位置精度で施工することが可能となる。
凸部37は間隔保持部材31と同じ材料で一体的に設けることが好ましい。凸部37の、第1の壁面3aを臨む面37aは、平坦面であることが好ましい。
【0024】
また
図4に示すように、第1の芯材21と第2の芯材22を連結する間隔保持部材31を、第1の壁面3a側にのみ設け、第2の芯材22と第3の芯材23を連結する間隔保持部材31を、第2の壁面3b側にのみ設け、第3の芯材23と第4の芯材24を連結する間隔保持部材31を、第1の壁面3a側にのみ設ける態様としてもよい。
このように、間隔保持部材31を、芯材施工方向において左右交互に設けると、間隔保持部材31どうしの干渉を避けることができる。
【0025】
<第2の実施形態>
図5、6は、本発明の第2の実施形態に係る地中連続壁101を示したものである。
図5は斜視図、
図6は
図1中のB-B線に沿う断面図である。
図1~4と同じ構成要素には同じ符号を付して説明を省略する。
本実施形態が第1の実施形態と異なる点は、芯材施工方向を向いて左右両側に隔保持部材31を設けた点、及びZ方向における隔保持部材31の設置位置(高さ)を、芯材施工方向に向かって漸次高くした点である。
【0026】
本実施形態によれば、芯材のY方向の移動を、Y方向に沿う2方向から阻止できるため、Y方向における芯材の位置ずれをより確実に抑制できる。
また、後から建て込む芯材における間隔保持部材31の設置位置を、先に建て込んだ芯材よりも高くすることによって、間隔保持部材31どうしの干渉を避けることができる。
なお、本実施形態においても、
図4に示すように、前記凸部37を間隔保持部材31に設けてもよい。
【0027】
第1及び第2の実施形態によれば、芯材建て込み時の芯材の位置ずれを抑制でき、芯材の位置精度を向上できる。これによりソイルセメント地中連続壁の品質向上及び施工安定性を向上できる。例えば、シールドトンネル用土留め壁の構築に好適であり、芯材の位置精度を向上して、立坑壁の品質を確保できる。
【0028】
特に、芯材の長さ方向の一部が切削可能部位である場合、間隔保持部材を芯材(切削可能部位)に容易に固定でき、固定作業を現場で行うことができる。また、間隔保持部材を芯材(切削可能部位)に固定する位置の変更も容易であり、現場での変更にも容易に対応できる。
【0029】
なお、第1及び第2の実施形態において以下の変更も可能である。
例えば、間隔保持部材の第1の位置決め面と突き当たる、芯材どうしの対向面とは反対側の面は、溝の内面であってもよい。
具体的には、先に建て込む芯材の側面(壁面を臨む面)に、Z方向に平行な溝を設け、間隔保持部材の屈曲部を前記溝に嵌合させてもよい。施工時は、前記溝に、後に建て込む芯材の間隔保持部材の屈曲部をZ方向に摺動可能に嵌合した状態で、Z方向に建て込む。
この構成によれば、溝の内面を構成する、X方向に垂直な面に間隔保持部材の屈曲部の外面が突き当たり、位置ずれを抑制できる。
【0030】
また、上記実施形態では、間隔保持部材の基端部を、後に建て込む芯材に固定する位置を、芯材の側面(壁面を臨む面)としたが、これに限らない。例えば、間隔保持部材の基端部に屈曲部を設けて、この屈曲部を芯材どうしの対向面に緊結してもよい。
【符号の説明】
【0031】
1、101 地中連続壁
2 掘削溝
3a 第1の壁面
3b 第2の壁面
11 ソイルセメント硬化部
12 未硬化のソイルセメント
21 第1の芯材(他方の芯材)
22 第2の芯材(一方の芯材)
23 第3の芯材
24 第4の芯材
21a 第1の側面
21b 第2の側面
21c、22d 対向面
21d 対向面とは反対側の面
31 間隔保持部材
32 板状部
32a 板状部の表面
32b 板状部の裏面(第2の位置決め面)
33 板状部の先端部(間隔保持部材の他方の端部)
34 板状部の基端部(間隔保持部材の一方の端部)
35 屈曲部
35c 屈曲部の裏面(第1の位置決め面)
35d 屈曲部の表面
37 凸部
51 第1の柱状複合材(切削可能部位)
52 第2の柱状複合材(切削可能部位)
61 第1のH形鋼
61a ウェブ部
62 第2のH形鋼
62a ウェブ部
65 ボルト
66 ボルト固定孔
67 ケミカルアンカー(登録商標)