(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】天井面研掃ユニット
(51)【国際特許分類】
E01H 1/00 20060101AFI20240410BHJP
【FI】
E01H1/00 B
(21)【出願番号】P 2020215226
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西山 宏一
(72)【発明者】
【氏名】粟津 利一
(72)【発明者】
【氏名】栗本 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】石井 敏之
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-159057(JP,A)
【文献】特開2020-157390(JP,A)
【文献】特開2007-031973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01H 1/00
E21D 11/00-19/06
23/00-23/26
B08B 1/00-1/54
5/00-13/00
B28D 1/00-7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾式研掃機と、該乾式研掃機を移動させる移動レール部とを備え、研掃すべき天井面の下方に配置された支持架台に設置して用いることで、前記乾式研掃機によって天井面を研掃可能な天井面研掃ユニットであって、
前記移動レール部が上面部に設けられたベースフレーム部と、該ベースフレーム部と前記支持架台との間に介在して、該ベースフレーム部の四方に設置された昇降ジャッキと、該ベースフレーム部の四方に配設されて、天井面との距離を非接触で計測する距離センサーと、前記乾式研掃機を挟んだ両側に配置されて、天井面と接触したことを検知する少なくとも2箇所の接触センサーとを含んで構成され、
制御盤を介した作業員による操作により、少なくとも3箇所の前記距離センサーによって計測された天井面との距離が同様となるように、前記昇降ジャッキによる昇降を制御して、前記移動レール部による走行面を天井面と平行に配置した後に、天井面と平行な状態に前記走行面を保持したまま、前記接触センサーが天井面に接触するまで上昇させて、前記乾式研掃機によって天井面を研掃させる状態にセット可能となっている天井面研掃ユニット。
【請求項2】
前記ベースフレーム部は、矩形の平面形状を備えており、
前記距離センサーは、前記ベースフレーム部の四方の角部分に配設されており、前記接触センサーは、前記ベースフレーム部の長辺方向の両側の端部分に配置されている請求項1記載の天井面研掃ユニット。
【請求項3】
前記乾式研掃機は、天井面に研掃機本体の切削ディスクを押し付けることが可能なエアシリンダーを備えている請求項1又は2記載の天井面研掃ユニット。
【請求項4】
前記移動レール部は、左右方向レール部材と、前後方向レール部材とを含んで構成されている請求項1~3のいずれか1項記載の天井面研掃ユニット。
【請求項5】
研掃すべき天井面の下方に配置される前記支持架台は、高所作業車の作業デッキとなっている請求項1~4のいずれか1項記載の天井面研掃ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井面研掃ユニットに関し、特に、乾式研掃機によって天井面を研掃可能な天井面研掃ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、首都高速道路やその他の道路には、ボックスカルバート型の道路トンネルがコンクリート構造物として多数構築されており、そのうちの多くが、供用開始から30年以上経過している。このため、例えば古くなった道路トンネル等のコンクリート構造物の天井面に対しては、コンクリート片の剥落防止等を含む種々の補修工事が行なわれている。
【0003】
一方、コンクリート構造物の壁面に対する補修工事として、表面処理作業(下地調整工)を行なう場合、ウォータージェットを用いた研掃装置を使用して、コンクリートの表面を研掃することにより行なうのが一般的であるが(例えば、特許文献1、特許文献2参照)、これらのウォータージェットを用いた表面研掃装置では、多量の水が発生することになるため、コンクリート構造物の天井面に対して施工することは困難である。このようなことから、公知の乾式の研掃装置を使用して、ボックスカルバート型の道路トンネルの天井面を効率良く研掃できるようにする、天井面の研掃装置や研掃方法が開発されている(例えば、特許文献3、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-141354号公報
【文献】特開2005-254156号公報
【文献】特開2017-40103号公報
【文献】特開2017-40104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3や特許文献4に記載の天井面の研掃装置や研掃方法では、昇降フレームの昇降を案内するガイド支柱部の高さが制限されるため、適用できる天井面の高さに制約が生じることになり、またアウトリガー部によって運搬車両の荷台を水平又は略水平になるように調整する必要があることから、アウトリガー部の据え付けが難しい作業現場において用いることは困難である。
【0006】
本発明は、研掃すべき天井面の下方に配置された任意の支持架台に設置して用いることを可能にして、コンクリート構造物の天井面を、乾式研掃装置によって効率良く研掃することのできる天井面研掃ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、乾式研掃機と、該乾式研掃機を移動させる移動レール部とを備え、研掃すべき天井面の下方に配置された支持架台に設置して用いることで、前記乾式研掃機によって天井面を研掃可能な天井面研掃ユニットであって、前記移動レール部が上面部に設けられたベースフレーム部と、該ベースフレーム部と前記支持架台との間に介在して、該ベースフレーム部の四方に設置された昇降ジャッキと、該ベースフレーム部の四方に配設されて、天井面との距離を非接触で計測する距離サンサーと、前記乾式研掃機を挟んだ両側に配置されて、天井面と接触したことを検知する少なくとも2箇所の接触センサーとを含んで構成され、制御盤を介した作業員による操作により、少なくとも3箇所の前記距離サンサーによって計測された天井面との距離が同様となるように、前記昇降ジャッキによる昇降を制御して、前記移動レール部による走行面を天井面と平行に配置した後に、天井面と平行な状態に前記走行面を保持したまま、前記接触センサーが天井面に接触するまで上昇させて、前記乾式研掃機によって天井面を研掃させる状態にセット可能となっている天井面研掃ユニットを提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0008】
そして、本発明の天井面研掃ユニットは、前記ベースフレーム部が、矩形の平面形状を備えており、前記距離サンサーは、前記ベースフレーム部の四方の角部分に配設されており、前記接触センサーは、前記ベースフレーム部の長辺方向の両側の端部分に配置されていることが好ましい。
【0009】
また、本発明の天井面研掃ユニットは、前記乾式研掃機が、天井面に研掃機本体の切削ディスクを押し付けることが可能なエアシリンダーを備えていることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明の天井面研掃ユニットは、前記移動レール部が、左右方向レール部材と、前後方向レール部材とを含んで構成されていることが好ましい。
【0011】
さらにまた、本発明の天井面研掃ユニットは、研掃すべき天井面の下方に配置される前記支持架台が、高所作業車の作業デッキとなっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の天井面研掃ユニットによれば、研掃すべき天井面の下方に配置された任意の支持架台に設置して用いることを可能にして、コンクリート構造物の天井面を、乾式研掃装置によって効率良く研掃することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の好ましい一実施形態に係る天井面研掃ユニットの使用状態を説明する側面図である。
【
図2】本発明の好ましい一実施形態に係る天井面研掃ユニットの側面図である。
【
図3】本発明の好ましい一実施形態に係る天井面研掃ユニットの上面図である。
【
図4】本発明の好ましい一実施形態に係る天井面研掃ユニットの正面図である。
【
図5】乾式研掃機の(a)は側面図、(b)は後面図、(d)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好ましい一実施形態に係る天井面研掃ユニット10は、コンクリート構造物の天井面として、例えば供用開始から30年以上経過して古くなったボックスカルバート型の道路トンネルの天井面50を、乾式研掃機30によって研掃するための装置として使用される。本実施形態の天井面研掃ユニット10は、支持架台41として、公知の高所作業車40の作業デッキ41に設置して用いられ、乾式研掃機30を研掃すべき天井面50に沿って安定した状態で移動させることを可能にして、コンクリート構造物であるボックスカルバート型の道路トンネルの天井面50を、乾式研掃装置30によって効率良く研掃することができるようにする機能を備えている。
【0015】
そして、本実施形態の天井面研掃ユニット10は、
図2~
図4に示すように、乾式研掃機30と、乾式研掃機30を移動させる移動レール部18とを備え、研掃すべき天井面50の下方に配置された支持架台である高所作業車40の作業デッキ41に設置して用いることで、乾式研掃機30によって天井面50を研掃可能な天井面研掃用のユニットであって、移動レール部18が上面部に設けられたベースフレーム部11と、ベースフレーム部11と支持架台(作業デッキ)41との間に介在して、ベースフレーム部11の四方に設置された昇降ジャッキ15と、ベースフレーム部11の四方に配設されて、天井面50との距離を非接触で計測する距離サンサー16と、乾式研掃機30を挟んだ両側に配置されて、天井面50と接触したことを検知する少なくとも2箇所の接触センサー17とを含んで構成されている。少なくとも3箇所の距離サンサー16によって計測された天井面50との距離が同様となるように、昇降ジャッキ15による昇降を制御して、移動レール部18による走行面を天井面50と平行に配置した後に、天井面50と平行な状態に走行面を保持したまま、接触センサー17が天井面50に接触するまで上昇させて、乾式研掃機30によって天井面50を研掃させる状態にセット可能となっている(
図1参照)。
【0016】
また、本実施形態では、ベースフレーム部11は、矩形の平面形状を備えており(
図3参照)、距離サンサー16は、ベースフレーム部11の四方の角部分に配設されており、接触センサー17は、ベースフレーム部11の長辺方向Xの両側の端部分に配置されている。
【0017】
さらに、本実施形態では、移動レール部18は、左右方向レール部材18aと、前後方向レール部材18bとを含んで構成されている。
【0018】
本実施形態では、天井面研掃ユニット10によって天井面50が研掃される、ボックスカルバート型の道路トンネルは、例えば現場打ちコンクリートやプレキャストコンクリートによる公知の工法を用いて形成された、中空の矩形断面形状を有するトンネルである。ボックスカルバート型の道路トンネルは、中空の矩形断面形状の底部に形成される道路の路面51(
図1参照)に縦断勾配がある場合には、天井面50もまた、同様の又は略同様の縦断勾配を備えるように、天井面50をトンネルの延設方向に傾斜させた状態で構築されている。ボックスカルバート型の道路トンネルは、中空の矩形断面形状の底部に形成される道路の路面51に横断勾配がある場合には、天井面50は、同様の横断勾配で傾斜することなく、好ましくは横断方向に水平又は略水平に天井面50が形成された状態で構築されている。
【0019】
また、本実施形態では、作業デッキ41に天井面研掃ユニット10が設置される高所作業車40は、
図1に示すように、例えば公知の昇降機構42によって昇降可能な作業デッキ41を、トラックの荷台部分に備える作業用の車両であって、作業デッキ41の平坦な作業床を足場として、作業員が各種の高所作業を行うことができるようになっている。また作業デッキ41の平坦な作業床を支持架台として、各種の装置や機器を設置することで、例えば地上からのリモートコントローラ(図示せず。)による操作によって、これらの装置や機器による高所作業を行えるようになっている。本実施形態では、作業デッキ41は、例えば地上からのリモートコントローラによる操作によって、高所作業車40の荷台部分43から好ましくは0~3.4m程度の高さまで昇降可能となっており、これによって相当程度の高さに位置する天井面50に対しても、作業デッキ41に設置された天井面研掃ユニット10によって、効率良く研掃作業を行うことができるようになっている。
【0020】
高所作業車40の作業デッキ41には、天井面研掃ユニット10の他、制御盤や、エア機器、発電機、集塵機、コンプレッサー等を積み込むこともできる。高所作業車40の作業デッキ41に、これらの装置や機器を全て積み込むことができない場合には、例えば2tトラックによる補助運搬車両(図示せず。)を使用して、例えば発電機、集塵機、コンプレッサー等を積み込んだ状態で、天井面50の研掃箇所まで搬送し、天井面50の研掃箇所では、これらの機器と天井面研掃ユニット10とを、例えばワンタッチ継手やカムロックやコネクター等の公知の接続手段を用いて接続して、天井面50の研掃作業を行えるようになっている。
【0021】
本実施形態では、天井面研掃ユニット10を構成するベースフレーム部11は、例えば溝形鋼や山形鋼等を組み付けることによって、立体的な枠形状に形成されており、高所作業車40の作業デッキ41に納まる大きさとして、例えば左右方向Yの幅が1750mm、前後方向Xの長さが3000mm程度の大きさの、矩形の平面形状を有している(
図3参照)。ベースフレーム部11には、当該ベースフレーム部11を構成する矩形枠形状の上部フレーム部12における、長辺方向(前後方向X)の両側部分に短辺方向(左右方向Y)に延設して取り付けられた一対の側部溝形鋼12aの上端面、及び一対の側部溝形鋼12aの中間部分に設けられた中間部溝形鋼12bの上端面に、各々、後述する移動レール部18を構成する左右方向レール部材18aが、互いに平行に延設した状態で敷設されている。
【0022】
ベースフレーム部11の上部フレーム部12による上面部に設けられた移動レール部18は、
図3に示すように、乾式研掃機30を左右方向(短辺方向)Yに移動させる左右方向レール部材18aと、乾式研掃機30を前後方向(長辺方向)Xに移動させる前後方向レール部材18bとを含んで構成されている。左右方向レール部材18aは、上述のように、ベースフレーム部11を形成する上部フレーム部12に取り付けられた一対の側部溝形鋼12a及び中間部溝形鋼12bの上端面に敷設されて、上部フレーム部12の短辺方向Yに平行に延設して3列に設けられている。左右方向レール部材18aの上には、前後方向レール部材18bを敷設した横行フレーム部46が、左右方向Yに走行移動可能に載置されている。
【0023】
横行フレーム部46は、例えば溝形鋼や山形鋼等を組み付けることにより形成され、例えば左右方向Yの幅が600mm程度、前後方向Xの長さがベースフレーム部11の長さよりも若干長い、例えば3200mm程度の大きさの、前後方向Xに縦長の矩形の平面形状を備えている。横行フレーム部46を形成する、左右一対の長辺部分に配置された長辺部溝形鋼46aの上端面には、前後方向レール部材18bが各々敷設されている。前後方向レール部材18bの上には、乾式研掃機30が、前後方向Xに走行移動可能に載置されている。一対に前後方向レール部材18bの上端面によって規定される、これらの上端面を含む面が、乾式研掃機30の走行面を形成している。
【0024】
また、横行フレーム部46には、当該横行フレーム部46を、ベースフレーム部11の上部フレーム部12による上面部に敷設された左右方向レール部材18aに沿って走行移動させるための、走行車輪46bや走行駆動装置46c(
図4参照)が取り付けられている。移動レール部18は、本実施形態では、左右方向レール部材18a及び前後方向レール部材18bの他、横行フレーム部46や、走行車輪46b、走行駆動装置46c等を含んで構成されている。
【0025】
移動レール部18によって、ベースフレーム部11の上部フレーム部12の長辺方向(前後方向X)及び短辺方向(左右方向Y)に移動可能に設けられた乾式研掃機30は、
図5(a)~(c)に示すように、走行基台部31と、走行基台部31との間にロードセル32を介在させて走行基台部31の上方に配置された中間プレート部33と、中間プレート部33との間にエアシリンダー34を介在させて中間プレート部33のさらに上方に配置された研掃機取付けプレート35と、研掃機取付けプレート35に支持されて取り付けられた研掃機本体36とを含んで構成される。走行基台部31の4箇所の角部分から上方に立設して、ガイドシャフト37が設けられており、これらのガイドシャフト37に、研掃機取付けプレート35の4箇所の角部分に設けられたリニアブッシュ38を各々装着することによって、これらのガイドシャフト37やリニアブッシュ38にガイドさせて、研掃機取付けプレート35を、エアシリンダー34の伸縮に伴って、安定した状態で上下に昇降させることができるようになっている。エアシリンダー34は、研掃機本体36の切削ディスク36aを天井面50に押し付けることができるようになっている。
【0026】
研掃機本体36は、コンクリートの床面等を研掃して平坦な作業面を形成することが可能な、公知の種々の研削機に、適宜改良を加えることによって用いることができる。このような研削機として、例えば商品名「新型トルネード」(CRT株式会社製)を好ましく用いることができる。研掃機本体36は、切削ディスク36aや、吸引集塵装置36bや、駆動モータ36c等を備えている。また、切削ディスク36aの周囲を囲むようにして、可撓性を備えるヘラ部材やブラシ状部材等からなる飛散防止部材(図示せず。)が設けられている。これによって、切削ディスク36aを上向きにした状態で、ボックスカルバート型の道路トンネルの天井面50に押し付けて研削する際に生じる粉塵が、研掃機本体36の外に漏れ出るのを、効果的に回避することが可能になる。研掃機本体36に接続して、排出管49が設けられている(
図1、
図2参照)。
【0027】
乾式研掃機30の走行基台部31には、横行フレーム部46の長辺部溝形鋼46aの上端面に敷設された前後方向レール部材18bに沿って乾式研掃機30を走行移動させるための、走行車輪31aや走行駆動装置31bが取り付けられている。これによって、乾式研掃機30は、横行フレーム部46の上面部に敷設された前後方向レール部材18bに沿って、上部フレーム部12の長辺方向Xに走行移動できるようになっていると共に、横行フレーム部46をベースフレーム部11の上部フレーム部12の上面部に敷設された左右方向レール部材18aに沿って走行移動させことで、ベースフレーム部11の短辺方向Xにも、移動できるようになっている。
【0028】
乾式研掃機30の中間プレート部33と研掃機取付けプレート35との間に介在して伸縮可能に配置されたエアシリンダー34は、研掃機取付けプレート35の前部と後部に各々取り付けられており、走行基台部31と中間プレート部33との間に介在するロードセル32によって計測される、研掃機本体36による道路トンネルの天井面への押付け力が、例えば0.3~0.9Mpaとなるように、研掃機取付けプレート35を昇降させた状態で、研掃機本体36の切削ディスク36aを天井面50に押し付けることができるようになっている。研掃機取付けプレート35を昇降させるシリンダー部材として、エアシリンダー34を用いたことにより、道路トンネルの天井面50に存在する例えば±40mm程度の凹凸に追随させて、これらの凹凸を吸収することが可能になる。
【0029】
そして、本実施形態では、天井面研掃ユニット10は、ベースフレーム部11と支持架台である高所作業車40の作業デッキ41との間に介在して、ベースフレーム部11の四方に設置された昇降ジャッキ15と、ベースフレーム部11の四方に配設されて、天井面50との距離を非接触で計測する距離サンサー16と、乾式研掃機30を挟んだ両側に配置されて、天井面50と接触したことを検知する少なくとも2箇所の接触センサー17とを備えている。
【0030】
昇降ジャッキ15は、ベースフレーム部11の上部フレーム部12とトラス構造の連結フレーム部14を介して立体的な枠形状となるように一体として組み付けられた、矩形枠形状の下部フレーム部13における、四カ所の角部分に、ボルト接合や溶接接合によって当該下部フレーム部13や連結フレーム部14に接合された状態で、取り付けられている。下部フレーム部13は、長辺方向Xの長さが上部フレーム部12よりも短く形成されている。これによって、昇降ジャッキ15は、ベースフレーム部11の四方の角部領域に、上下方向に伸縮可能な状態で、4箇所に設けられることになる。
【0031】
各々の昇降ジャッキ15として、本実施形態では、例えばスクリュージャッキを好ましく用いることができる。昇降ジャッキ15は、例えば駆動モータ(図示せず。)による駆動力によって、好ましくはリモートコントローラからの操作により伸縮できるようになっている。昇降ジャッキ15は、駆動モータが連結された駆動本体部15aを下部フレーム部13や連結フレーム部14に接合して、伸縮部15b(
図4参照)を縦方向に延設させた状態で取り付けられている。また昇降ジャッキ15の伸縮部15bの下端部には、設置盤部15cが取り付けられている。これらの4箇所の設置盤部15cを、高所作業車40の作業デッキ41による作業床に各々密着させて載置することで、天井面研掃ユニット10を、高所作業車40の作業デッキ41に、安定した状態で据え付けることが可能になる。4箇所の角部領域に配置された各々の昇降ジャッキ15を伸縮させることで、ベースフレーム部11、及びこれの上面部の上部フレーム部12に取り付けられた移動レール部18による走行面を、上下に昇降させたり、研掃すべき天井面50と平行又は略平行に走行面が配置されるように、その傾きを容易に調整できるようになっている。
【0032】
ベースフレーム部11の四方に配設されて、天井面50との距離を非接触で計測する距離サンサー16は、本実施形態では、例えば天井面50に向けて電磁波を放射した際の反射波を検知することで、道路トンネルの天井面50との離れを検出することが可能な、公知の非接触式のセンザーとなっている。本実施形態では、距離サンサー16は、ベースフレーム部11の四方の角部分から各々前後方向Xに張り出して設けられた、張出し支持プレート47の先端部分から立設する立設ロッド48の基端部分に、当該基端部分から張り出すようにして、4箇所に取り付けられている(
図2、
図3参照)。
【0033】
乾式研掃機30を挟んだ両側に配置されて、天井面50と接触したことを検知する接触センサー17は、本実施形態では、基端部分に非接触式の距離サンサー16が取り付けられた、ベースフレーム部11の四方の角部分に設けられた上述の張出し支持プレート47の先端部分から立設する、立設ロッド48の先端部に取り付けられることで、好ましくは乾式研掃機30を挟んだベースフレーム部の長辺方向の両側の端部分に、少なくとも2箇所として、4箇所に設けられている。接触センサー17は、乾式研掃機30の研掃機本体36の切削ディスク36aよりも高い位置として、例えば切削ディスク36aよりも5cm程度高い位置に配置されている。接触センサー17が天井面50に接触することで、昇降ジャッキ15による研掃機本体36及び切削ディスク36aの上昇を、ストップできるようになっている。
【0034】
接触センサー17は、例えばバネ部材により上方に付勢された状態で設けられたセンサー本体や、リミットスイッチ、スイッチアジャスター等を含んで構成される公知のセンサーであって、好ましくはセンサー本体がバネ部材による付勢力に抗して押し込まれることで、天井面50との接触を検出できるようになっている。
【0035】
上述の構成を備える本実施形態の天井面研掃ユニット10を用いて、ボックスカルバート型の道路トンネルの天井面50を研掃するには、高所作業車40の作業デッキ41を上昇させていない状態で、作業デッキ41に天井面研掃ユニット10を積み込んで、天井面53の研掃箇所まで移動させる。高所作業車40は一般車両と同じように道路上を走行できるので、天井面研掃ユニット10を、道路トンネルにおける天井面50の研掃箇所まで、スピーディーに移動させることが可能になる。
【0036】
ボックスカルバート型の道路トンネルの天井面50の研掃箇所では、必要に応じて後続する補助運搬車両に積み込まれた、例えば発電機、集塵機、コンプレッサー等の補助機器と、天井面研掃ユニット10とを、例えばワンタッチ継手やカムロックやコネクター等の接続手段を用いて接続する。しかる後に、例えば高所作業車40に設けられた制御盤(図示せず。)と接続させた例えばペンダントスイッチ等によるリモートコントローラを用いて、以下のようにして天井面50の研掃作業が行なわれることになる。
【0037】
すなわち、本実施形態の天井面研掃ユニット10によって、コンクリート構造物であるボックスカルバート型の道路トンネルの天井面50を研掃する研掃方法では、
図1に示すように、天井面研掃ユニット10を積み込んだ高所作業車40を天井面50の研掃箇所まで移動させた後に、高所作業車40の荷台部分43の四方の角部領域に設けられた、4箇所のローラジャッキ44を伸長することで、これの下端部のローラ部44aを路面51に当接させて、作業デッキ41が昇降可能に設けられた高所作業車40及びこれの荷台部分43を、安定した状態で据え付けることが可能になる。
【0038】
次に、リモートコントローラを操作し、好ましくは制御盤に設けられたモニター画面を見ることで、各々の距離サンサー16で検出された天井面50との距離を確認しながら、高所作業車40の昇降機構42を駆動制御して、天井面研掃ユニット10が設置された作業デッキ41を、乾式研掃機30の研掃機本体36の切削ディスク36aの天井面50との離れが、例えば170~200mm程度となるまで上昇させる。
【0039】
ここで、高所作業車40の荷台部分43は、例えば道路の路面51の勾配なりに配置されていて、必ずしも水平には配置されていないことから、昇降機構42の駆動によって上昇した作業デッキ41や、これに搭載された天井面研掃ユニット10の移動レール部18による研掃機本体36の走行面を、天井面50と平行に配置されるように調整する必要がある。
【0040】
作業デッキ41に搭載された天井面研掃ユニット10における研掃機本体36の走行面が、天井面50と平行に配置されるように調整するには、例えば、まずベースフレーム部11の短辺方向Yにおける一方の側に設けられた2台の昇降ジャッキ15の伸縮を制御して、距離サンサー16によって天井面50との距離を確認しながら、好ましくはトンネルの軸方向と直角な短辺方向Yにおいて、研掃機本体36の走行面と天井面50とが平行に配置されるように調整する。
【0041】
しかる後に、例えばベースフレーム部11の長辺方向Xにおける一方の側に設けられた2台の昇降ジャッキ15の伸縮を制御して、距離サンサー16によって天井面50との距離を確認しながら、好ましくはトンネルの軸方向に沿った長辺方向Xにおいて、研掃機本体36の走行面と天井面50とが平行に配置されるように調整する。これらによって、走行面の全体を、天井面50と平行又は略平行に配置することが可能になる。
【0042】
走行面の全体を、天井面50と平行又は略平行に配置したら、例えばベースフレーム部11における4箇所の角部領域に配置された昇降ジャッキ15を、同時に伸長させるように制御して、走行面の全体が天井面50と平行又は略平行に配置された状態を保持したまま、接触センサー17が天井面50との接触を検出するまで、ベースフレーム部11及びこれに取り付けられた研掃機本体36を上昇させる。
【0043】
4箇所の昇降ジャッキ15を同時に伸長させることで、ベースフレーム部11及び研掃機本体36を上昇させて、接触センサー17が天井面50との接触を検出したら、ベースフレーム部11及び研掃機本体36の上昇が自動停止するように、リモートコントローラによって制御されるようにしておくことで、自動停止したベースフレーム部11は、好ましくは乾式研掃機30の研掃機本体36の切削ディスク36aと、天井面50との間に5cm程度の所定の隙間を保持した状態のまま、研掃機本体36が縦横に移動できるように、走行面の全体を、天井面50と平行又は略平行となるように配置することが可能になる。
【0044】
このようにして、掃機本体36の切削ディスク36aと、天井面50との間に5cm程度の所定の隙間を保持した状態のまま、移動レール部18による走行面を、天井面50と平行又は略平行となるように配置したら、例えば乾式研掃機30を走行面におけるスタート位置に据え付けた状態で、研掃機本体36の切削ディスク36aを駆動モータ36cにより回転駆動させる共に、エアシリンダー34によって、例えば0.3~0.9Mpaの押付け力で、切削ディスク36aの周囲のヘラ部材やブラシ状部材等による飛散防止部材(図示せず。)を、天井面50に押し付ける。
【0045】
切削ディスク36aを回転させつつ、これの周囲の飛散防止部材を天井面50に押し付けたら、この状態を保持したまま、例えば横行フレーム部46に敷設された前後方向レール部材18bに沿って、例えば乾式研掃機30を長辺方向Xの一方の端部のスタート位置から他方の端部に向けて自動走行させる。前後方向レール部材18bには、好ましくはこれの両端部にリミットスイッチ設けられているので、乾式研掃機30が前後方向レール部材18bの上を走行移動することにより他方の端部に至ると、走行が自動停止する。
【0046】
乾式研掃機30が前後方向レール部材18bの他方の端部で自動停止したら、横行フレーム部46を、左右方向レール部材18aに沿って例えば200~300mm程度、短辺方向Yに走行移動させて停止させる。しかる後に、上述と同様に、横行フレーム部46の前後方向レール部材18bに沿って、乾式研掃機30を長辺方向Xの他方の端部から一方の端部に向けて自動走行させる。このようにして、切削ディスク36aを回転させながら、前後方向レール部材18bに沿った乾式研掃機30の長辺方向への走行移動及び停止と、横行フレーム部46の左右方向レール部材18aに沿った短辺方向Yへの走行移動及び停止を繰り返すことによって、高所作業車40を据え付けた当該研掃箇所における、天井面50の全体を、効率良く研掃することが可能になる。
【0047】
高所作業車40を据え付けた当該研掃箇所における天井面50の全体の研掃が終了したら、ベースフレーム部11における4箇所の角部領域に配置された昇降ジャッキ15を、同時に収縮させるように制御して、好ましくは移動レール部18による走行面が天井面50と平行又は略平行となっている状態を保持したまま、乾式研掃機30をベースフレーム部11と共に例えば10cm程度降下させる。乾式研掃機30をベースフレーム部11と共に降下させて、切削ディスク36aの飛散防止部材を天井面50から離間させたら、好ましくは高所作業車40の荷台部分43の四方の角部領域に設けられた、4箇所のローラジャッキ44の下端部のローラ部44aを路面51に当接させて、高所作業車40及びこれの荷台部分43を安定させている状態を保持したまま、高所作業車40を低速で運転して、当該研掃箇所と隣接する次の研掃箇所まで、支持架台である作業デッキ41に設置された天井面研掃ユニット10を移動させる。
【0048】
天井面研掃ユニット10を次の研掃箇所まで移動させたら、当該次の研掃箇所において上述と同様の工程を繰り返して、当該次の研掃箇所における天井面50の全体を研掃する。
【0049】
またこのような天井面研掃ユニット10の移動及び研掃箇所における天井面50の研掃作業を繰り返し行って、例えば研掃作業の施工現場の全体における天井面50の研掃作業が終了したら、好ましくはベースフレーム部11の4箇所の角部領域に配置された昇降ジャッキ15を全収縮させて、天井面研掃ユニット10を降下させると共に、乾式研掃機30を走行面の中央部分に移動させて固定し、さらに高所作業車40の昇降機構42を駆動制御して、天井面研掃ユニット10が設置された作業デッキ41を、荷台部分43における収納位置まで降下させることで、天井面研掃ユニット10を搭載した高所作業車40を、他の施工現場まで移動させることが可能な状態とすることができる。
【0050】
したがって、本実施形態の天井面研掃ユニット10及びこれを用いた研掃方法によれば、天井面研掃ユニット10は、移動レール部18が上面部に設けられたベースフレーム部11と、ベースフレーム部11と支持架台(作業デッキ)41との間に介在して、ベースフレーム部11の四方に設置された昇降ジャッキ15と、ベースフレーム部11の四方に配設されて、天井面50との距離を非接触で計測する距離サンサー16と、乾式研掃機30を挟んだ両側に配置されて、天井面50と接触したことを検知する少なくとも2箇所の接触センサー17とを含んで構成されているので、天井面研掃ユニット10は、支持架台(作業デッキ)41に支持されて、天井面50と近接するこれの下方に設置された後に、移動レール部18による乾式研掃機30の走行面を、天井面50から所定の間隔をおいて平行又は略平行に配置可能とする機能を、自ら備えることになる。これによって、本実施形態の天井面研掃ユニット10は、研掃すべき天井面50の下方に配置された任意の支持架台として、高所作業車40の作業デッキ41に設置して用いられて、コンクリート構造物であるボックスカルバート型の道路トンネルの天井面50を、乾式研掃装置30によって効率良く研掃することが可能になる。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本発明の天井面研掃ユニットによって天井面が研掃されるコンクリート構造物は、ボックスカルバート型の道路トンネルである必要は必ずしもなく、コンクリート橋のコンクリート桁等をコンクリート構造物として、これの底面部分を研掃すべき天井面として、本発明の天井面研掃ユニットによって研掃することもできる。また、天井面研掃ユニットが設置される研掃すべき天井面の下方に配置される支持架台は、高所作業車の作業デッキである必要は必ずしも無く、研掃すべき天井面の下方に組み付けられた仮設の足場や、研掃すべき天井面の下方に移動可能に設けられた作業台車等であっても良い。さらに、ベースフレーム部の四方に配設された4箇所の距離サンサーのうち、3箇所の距離サンサーを用いて、天井面との距離が同様となるように、昇降ジャッキによる昇降を制御することもできる。
【符号の説明】
【0052】
10 天井面研掃ユニット
11 ベースフレーム部
12 上部フレーム部
12a 側部溝形鋼
12b 中間部溝形鋼
13 下部フレーム部
14 連結フレーム部
15 昇降ジャッキ
15a 駆動本体部
15b 伸縮部
15c 設置盤部
16 距離サンサー
17 接触センサー
18 移動レール部
18a 左右方向レール部材
18b 前後方向レール部材
30 乾式研掃機
31 走行基台部
31a 走行車輪
31b 走行駆動装置
32 ロードセル
33 中間プレート部
34 エアシリンダー
35 研掃機取付けプレート
36 研掃機本体
36a 切削ディスク
36b 吸引集塵装置
36c 駆動モータ
40 高所作業車
41 作業デッキ(支持架台)
42 昇降機構
43 荷台部分
44 ローラジャッキ
44a ローラ部
46 横行フレーム部
46a 長辺部溝形鋼
46b 走行車輪
46c 走行駆動装置
47 張出し支持プレート
48 立設ロッド
50 天井面
51 道路の路面
X 長辺方向(前後方向)
Y 短辺方向(左右方向)