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  • 特許-組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 4/02 20060101AFI20240410BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20240410BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
C09J4/02
C09J11/08
H01L21/304 622J
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020556182
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 JP2019044773
(87)【国際公開番号】W WO2020101000
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2018213530
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】内田 留智
(72)【発明者】
【氏名】堂本 高士
(72)【発明者】
【氏名】谷川 貴子
(72)【発明者】
【氏名】野村 謙二
(72)【発明者】
【氏名】後藤 慶次
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-210879(JP,A)
【文献】国際公開第2018/174085(WO,A1)
【文献】特開2018-048274(JP,A)
【文献】国際公開第2009/096459(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(C)を含有し、
(A)下記(A-1)と(A-2)を含有する(メタ)アクリレート
(A-1)ホモポリマーのTgが-100℃~60℃であり、アルキル基を有する単官能(メタ)アクリレート
(A-2)多官能(メタ)アクリレート
(B)ポリイソブテン単独重合体
(C)光ラジカル重合開始剤
(A)~(B)成分の合計100質量部中、(A-1)成分54~90質量部、(A-2)成分1~40質量部、(B)成分1~20質量部を含有する
ことを特徴とする、仮固定組成物。
【請求項2】
(A-1)成分が、炭素数12以上のアルキル基を有する単官能(メタ)アクリレートである請求項1に記載の仮固定組成物。
【請求項3】
(A-2)多官能(メタ)アクリレートの分子量が900以下である請求項1又は2に記載の仮固定組成物。
【請求項4】
(A-2)成分が、脂環式骨格を有する多官能(メタ)アクリレートである請求項1~3のいずれか1項に記載の仮固定組成物。
【請求項5】
(A-2)成分が、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、及び1,3-ジ(メタ)アクリロイルオキシアダマンタンから選択される1種以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の仮固定組成物。
【請求項6】
(B)成分が、重量平均分子量が1,000以上5,000,000以下であり、且つ、分子量分布が1.1以上5.0以下であるポリイソブテン単独重合体である、請求項1~5のいずれか1項に記載の仮固定組成物。
【請求項7】
(C)成分が、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、及びオキシムエステル系化合物から選択される1種以上である光ラジカル重合開始剤である、請求項1~6のいずれか1項に記載の仮固定組成物。
【請求項8】
(C)成分が、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、及び1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン 1-(O-アセチルオキシム)から選択される1種以上である請求項1~7のいずれか1項に記載の仮固定組成物。
【請求項9】
(A)~(B)成分の合計100質量部に対して(C)成分0.01~5質量部を含有する請求項1~8のいずれか1項に記載の仮固定組成物。
【請求項10】
(A)~(B)成分の合計100質量部中、(A-1)成分54~90質量部、(A-2)成分6.8~40質量部、(B)成分1~20質量部を含有する請求項1~9のいずれか1項に記載の仮固定組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の仮固定組成物からなる仮固定接着剤。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載の仮固定組成物を硬化して得られる硬化体。
【請求項13】
請求項12に記載の硬化体からなる粘着シート。
【請求項14】
加熱質量減少率が1質量%となる温度が250℃以上である請求項12に記載の硬化体。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか1項に記載の仮固定組成物からなる電子デバイス製造用仮固定接着剤。
【請求項16】
請求項15に記載の電子デバイス製造用仮固定接着剤を使用して基材を接着した接着体。
【請求項17】
請求項15に記載の電子デバイス製造用仮固定接着剤を用いた薄型ウエハの製造方法。
【請求項18】
メカニカル剥離用の請求項15に記載の電子デバイス製造用仮固定接着剤。
【請求項19】
UVレーザー剥離用の請求項15に記載の電子デバイス製造用仮固定接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮固定用に用いる仮固定組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスは、シリコンに代表される無機系の材質の基板を主材料とし、その表面への絶縁膜形成、回路形成、研削による薄化等の加工を施すことで得られる。加工に際しては、ウエハ型の基板を用いる場合、厚さ数百μm程度のものが多く用いられるが、基板には脆くて割れやすい材質のものが多いため、特に研削による薄化に際しては破損防止措置が必要である。この措置には、従来、研削対象面の反対側の面(裏面ともいう)に、加工工程終了後に剥離することが可能な、仮固定用保護テープを貼るという方法がとられている。このテープは、有機樹脂フィルムを基材に用いており、柔軟性がある反面、強度や耐熱性が不充分であり、高温となる工程での使用には適さない。
【0003】
そこで、電子デバイス基板をシリコン、ガラス等の支持体に接着剤を介して接合することによって、裏面研削や裏面電極形成の工程の条件に対する充分な耐久性を付与するシステムが提案されている。この際に重要なのが、基板を支持体に接合する際の接着剤層である。これは基板を支持体に隙間なく接合出来、後の工程に耐えるだけの充分な耐久性が必要で、最後に薄化したウエハを支持体から簡便に剥離出来ることが必要である。
【0004】
接着剤の必要特性としては、(1)塗布に適した粘度、(2)基板を薄化する際に研削・研磨に耐えうるせん断接着力、(3)同じく基板を薄化する際に研削・研磨で基板に加わる砥石の荷重の局所的な集中による基板の破損を避けるため、荷重を面内方向に分散させつつ基板の局所的な沈下を防いで平面性をも保てる適度な硬度、(4)絶縁膜形成やはんだリフロー工程に耐えうる耐熱性、(5)薄化やレジスト工程に耐えうる耐薬品性、(6)基板を支持体から簡便に剥離出来る易剥離性、(7)剥離後に基板上に接着剤の残渣が残らないための凝集特性、(8)易洗浄性が挙げられる。
【0005】
接着剤とその剥離方法としては、光吸収性物質を含む接着剤に高強度の光を照射し、接着剤層を分解することによって支持体から接着剤層を剥離する技術(特許文献1)、熱溶融性の炭化水素系化合物を接着剤に用い、加熱溶融状態で接合・剥離を行う技術(特許文献2)が提案されている。前者の技術はレーザー等の高価な装置が必要であり、且つ、基板1枚あたりの処理時間が長くなる等の問題があった。後者の技術は加熱だけで制御するため簡便である反面、200℃を超える高温での熱安定性が不充分であるため、適用範囲は狭かった。
【0006】
1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する1種又は2種以上の(メタ)アクリレートを含有してなる接着剤組成物を用いて基材同士を貼り合わせ、該接着剤組成物を硬化させることにより形成した接着体に対して、中心波長が172nm又は193nmのエキシマ光を照射する工程を含み、少なくとも一方の基材は該エキシマ光に対して透過性を示す接着体の解体方法が開示されている(特許文献3)。しかし、特許文献3は、より長波長の光を使用することについて記載がない。本発明は、剥離方法にエネルギーの強いエキシマ光を使用する必要がない。
【0007】
樹脂組成として、ポリイソブテン樹脂及び多官能(メタ)アクリレートを含み、かつ粘着付与剤を含まない、電子デバイスで用いるための接着性封入用組成物の技術が開示されている(特許文献4)。また単官能(メタ)アクリレートをモノマーとして使うことも記載されているが、単官能(メタ)アクリレートのガラス転移温度が記載されていないため、該樹脂組成物を電子デバイス製造工程用仮固定剤として応用する際に必要とされる柔軟性の発現方法が不明であるという問題があった。
【0008】
樹脂組成として、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、及びポリイソブテン単独重合体を含む、有機エレクトロルミネッセンスデバイス等の電子デバイスのための接着性封入用組成物の技術も開示されている(特許文献5)。しかし、単官能(メタ)アクリレートのガラス転移温度が記載されていないため、該樹脂組成物を電子デバイス製造工程用仮固定剤として応用する際に必要とされる柔軟性の発現方法が不明であるという問題があった。
【0009】
樹脂組成として、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、及びイソブテン・無水マレイン酸共重合ポリマーを含む、異種基材間接着のための樹脂組成物及び接着・解体方法が開示されている(特許文献6)。しかし、特許文献6のポリマーは無水マレイン酸由来成分を含有しないイソブテンの単独重合体ではなく、接着方法についても詳述されていない。特許文献6は、粘度等のスピンコート適合性について記載がない。
【0010】
活性エネルギー線による硬化が可能な、オレフィン系ポリマー構造を含むウレタンアクリレート樹脂とポリイソブチレン樹脂からなる複合樹脂組成物の技術が開示されている(特許文献7)。しかし、特許文献7は、仮固定用について記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2004-064040号公報
【文献】特開2006-328104号公報
【文献】国際公開第2011/158654号公報
【文献】特許第5890177号公報
【文献】特表2009-524705号公報
【文献】特許第6139862号公報
【文献】特開2017-226785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって例えば、従来技術に係る組成物を仮固定に用いても、その相溶性、スピンコートプロセス適合性、耐熱性が十分ではないこと、またメカニカル剥離や各種レーザー剥離プロセスへの適性もまた十分でないこと、という課題が解決できていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
即ち、本発明は、以下の通りである。
<1>下記(A)~(C)を含有する仮固定組成物。
(A)下記(A-1)と(A-2)を含有する(メタ)アクリレート
(A-1)ホモポリマーのTgが-100℃~60℃である単官能(メタ)アクリレート
(A-2)多官能(メタ)アクリレート
(B)ポリイソブテン単独重合体
(C)光ラジカル重合開始剤
【0014】
<2>(A-1)成分が、アルキル基を有する単官能(メタ)アクリレートである<1>に記載の仮固定組成物。
【0015】
<3>(A-2)多官能(メタ)アクリレートの分子量が900以下である<1>又は<2>に記載の仮固定組成物。
【0016】
<4>(A-2)成分が、脂環式骨格を有する多官能(メタ)アクリレートである<1>~<3>のいずれか1項に記載の仮固定組成物。
【0017】
<5>(A-2)成分が、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、及び1,3-ジ(メタ)アクリロイルオキシアダマンタンから選択される1種以上である、<1>~<4>のいずれか1項に記載の仮固定組成物。
【0018】
<6>(B)成分が、重量平均分子量が1,000以上5,000,000以下であり、且つ、分子量分布が1.1以上5.0以下であるポリイソブテン単独重合体である、<1>~<5>のいずれか1項に記載の仮固定組成物。
【0019】
<7>(C)成分が、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、及びオキシムエステル系化合物から選択される1種以上である光ラジカル重合開始剤である、<1>~<6>のいずれか1項に記載の仮固定組成物。
【0020】
<8>(C)成分が、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、及び1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン 1-(O-アセチルオキシム)から選択される1種以上である<1>~<7>のいずれか1項に記載の仮固定組成物。
【0021】
<9>(A)~(B)成分の合計100質量部に対して(C)成分0.01~5質量部を含有する<1>~<8>のいずれか1項に記載の仮固定組成物。
【0022】
<10>(A)~(B)成分の合計100質量部中、(A-1)成分54~90質量部、(A-2)成分1~40質量部、(B)成分1~20質量部を含有する<1>~<9>のいずれか1項に記載の仮固定組成物。
【0023】
<11><1>~<10>のいずれか1項に記載の仮固定組成物からなる仮固定接着剤。
【0024】
<12><1>~<10>のいずれか1項に記載の仮固定組成物を硬化して得られる硬化体。
【0025】
<13><12>に記載の硬化体からなる粘着シート。
【0026】
<14>加熱質量減少率が1質量%となる温度が250℃以上である<12>に記載の硬化体。
【0027】
<15><1>~<10>のいずれか1項に記載の仮固定組成物からなる電子デバイス製造用仮固定接着剤。
【0028】
<16><15>に記載の電子デバイス製造用仮固定接着剤を使用して基材を接着した接着体。
【0029】
<17><15>に記載の電子デバイス製造用仮固定接着剤を用いた薄型ウエハの製造方法。
【0030】
<18>メカニカル剥離用の<15>に記載の電子デバイス製造用仮固定接着剤。
【0031】
<19>UVレーザー剥離用の<15>に記載の電子デバイス製造用仮固定接着剤。
【発明の効果】
【0032】
本発明によって、例えば、相溶性、スピンコートプロセス適合性、耐熱性に優れる組成物が得られる。更に、メカニカル剥離や各種レーザー剥離プロセスに適合する仮固定組成物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施例1の組成の試料を用いてベアSiウエハとガラス支持体を接合してから剥離した後のベアシリコンウエハ表面のXPS解析データである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下本発明を説明する。本明細書においては別段の断わりがないかぎりは、数値範囲はその上限値及び下限値を含むものとする。
【0035】
単官能(メタ)アクリレートとは、1分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物をいう。多官能(メタ)アクリレートとは、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物をいう。n官能(メタ)アクリレートとは、1分子中にn個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物をいう。
【0036】
本発明の実施形態で提供できるのは、仮固定用に用いる仮固定組成物(以下、組成物ということもある。)であって、下記(A)~(C)を含有する。
(A)下記(A-1)と(A-2)を含有する(メタ)アクリレート
(A-1)ホモポリマーのTgが-100℃~60℃である単官能(メタ)アクリレート
(A-2)多官能(メタ)アクリレート
(B)ポリイソブテン単独重合体
(C)光ラジカル重合開始剤
【0037】
(A-1)ホモポリマーのTgが-100℃~60℃である単官能(メタ)アクリレートとは、単独で重合した際に得られるホモポリマーのガラス転移温度(以下、Tgと略記することもある)が-100℃~60℃である単官能(メタ)アクリレートをいう。ホモポリマーのTgが-50℃~0℃である単官能(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0038】
ホモポリマーのTgが-100~60℃を示す(メタ)アクリレートとしては、ラウリル(メタ)アクリレート(アクリレートのホモポリマーのTg:-30℃、メタクリレートのホモポリマーのTg:-65℃)、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート(アクリレートのホモポリマーのTg:-85℃、メタクリレートのホモポリマーのTg:-10℃)、n-ブチル(メタ)アクリレート(メタクリレートのホモポリマーのTg:20℃)、i-ブチル(メタ)アクリレート(メタクリレートのホモポリマーのTg:20℃)、t-ブチル(メタ)アクリレート(メタクリレートのホモポリマーのTg:20℃)、メトキシエチル(メタ)アクリレート(アクリレートのホモポリマーのTg:-50℃)、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート(ホモポリマーのTg:25℃)、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(メタクリレートのホモポリマーのTg:55℃)、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(アクリレートのホモポリマーのTg:-7℃、メタクリレートのホモポリマーのTg:26℃)、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート(アクリレートのホモポリマーのTg:-65℃)、イソオクチル(メタ)アクリレート(アクリレートのホモポリマーのTg:-58℃、メタクリレートのホモポリマーのTg:-30℃)、イソステアリル(メタ)アクリレート(アクリレートのホモポリマーのTg:-18℃、メタクリレートのホモポリマーのTg:30℃)、イソノニル(メタ)アクリレート(アクリレートのホモポリマーのTg:-58℃、メタクリレートのホモポリマーのTg:-30℃)、2-デシル-1-テトラデカニル(メタ)アクリレート(アクリレートのホモポリマーのTg:-36℃、メタクリレートのホモポリマーのTg:10℃)、2-テトラデシル-1-オクタデカニル(メタ)アクリレート(アクリレートのホモポリマーのTg:-8℃)、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(-(CHCHO)n-構造を有する、n=1~17)(メタ)アクリレート(ホモポリマーのTg:-25~20℃)、フェノキシエチレングリコールアクリレート(ホモポリマーのTg:-25~30℃)等が挙げられる。これらの(メタ)アクリレートは1種以上を使用出来る。
【0039】
ガラス転移とは、高温では液体であるガラス等の物質が温度降下により、ある温度範囲で急激にその粘度を増し、ほとんど流動性を失って非晶質固体になるという変化を指す。ガラス転移温度の測定方法としては特に限定はないが、一般に熱重量測定、示差走査熱量測定、示差熱測定、動的粘弾性測定等より算出されるガラス転移温度を指す。これらの中では、動的粘弾性測定が好ましい。
(メタ)アクリレートのホモポリマーのガラス転移温度は、J.Brandrup,E.H.Immergut,Polymer Handbook,2nd Ed.,J.Wiley,New York 1975、光硬化技術データブック(テクノネットブックス社)等に記載されている。
【0040】
(A-1)としては、分子量が550以下の単官能(メタ)アクリレートが好ましい。
【0041】
(A-1)としては、アルキル基を有する単官能アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0042】
アルキル基としては、直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、及び脂環式アルキル基から選択される1種以上が好ましく、直鎖状アルキル基、及び分岐鎖状アルキル基から選択される1種以上がより好ましい。(B)成分との相溶性向上(特には高分子量の(B)成分との相溶性向上)の観点からは、(A-1)成分は長鎖かつ分岐鎖状又は環状のアルキル基を有することが好ましく、例えば炭素数12以上、より好ましくは炭素数12~40、さらに好ましくは炭素数12~32の、例えばイソステアリル基、イソテトラコサニル基(2-デシル-1-テトラデカニル基など)、イソドトリアコンタニル基(2-テトラデシル-1-オクタデカニル基など)などの分岐鎖状アルキル基、又はシクロアルキル基を有することが好ましい。このような長鎖・高分子かつ脂肪族傾向の強い成分を用いること(さらに好ましくは系全体の脂肪族傾向を高めること)で、仮固定組成物に求められる低揮発性、耐薬品性及び耐熱性を向上できる。
【0043】
(A-1)アルキル基を有する単官能アルキル(メタ)アクリレートとしては、下記式1の(メタ)アクリレートが好ましい。
【0044】
【化1】
【0045】
は水素原子がより好ましい。
【0046】
の炭素数は4~32が好ましく、8~28がより好ましく、12~24が更に好ましく、16~20が最も好ましく、炭素数18が尚更好ましい。これらの(メタ)アクリレートは1種以上を使用出来る。
【0047】
が炭素数4~32のアルキル基を有する単官能アルキル(メタ)アクリレートとしては、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコデシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、2-デシル-1-テトラデカニル(メタ)アクリレート、2-テトラデシル-1-オクタデカニル(メタ)アクリレート等といった、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。これらの中では、イソステアリル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0048】
(A-1)の中では、炭素数10以上の分岐鎖状アルキル基を側鎖に有する単官能(メタ)アクリレートも好ましい。炭素数10以上の分岐鎖状アルキル基を側鎖に有する単官能(メタ)アクリレートとしては、2-デシル-1-テトラデカニル(メタ)アクリレート、及び2-テトラデシル-1-オクタデカニル(メタ)アクリレートから選択される1種以上が好ましい。
【0049】
(A-1)単官能(メタ)アクリレートの使用量は、(A)~(B)成分の合計100質量部中、54~90質量部が好ましく、54~80質量部がより好ましく、54~75質量部がさらに好ましい。54質量部以上であれば混合後の樹脂組成物が相分離する恐れがないと同時に室温での柔軟性が得られ、90質量部以下であれば塗布に必要な粘度と耐熱性と硬化性が得られる。特許文献7に記載の組成物は、単官能(メタ)アクリレートの使用量が53質量部未満であり、電子デバイス製造用仮固定組成物として必要な柔軟性が得られない恐れがある。
【0050】
(A-2)多官能(メタ)アクリレートとは、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物をいう。(メタ)アクリロイル基としては、アクリロイル基のみ有してもよく、メタクリロイル基のみ有してもよく、アクリロイル基とメタクリロイル基の両方を有してもよい。
【0051】
(A-2) 多官能(メタ)アクリレートの分子量は900以下が好ましく、700以下がより好ましく、500以下が最も好ましく、300以下が尚更好ましい。
【0052】
(A-2)多官能(メタ)アクリレートとしては、2官能(メタ)アクリレート、3官能(メタ)アクリレート、4官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0053】
2官能(メタ)アクリレートとしては、1,3-アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリストールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル)プロパン、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0054】
3官能(メタ)アクリレートとしては、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロイキシエチル]イソシアヌレート等が挙げられる。
【0055】
4官能以上の(メタ)アクリレートとしては、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0056】
(A-2)の中では、脂環式骨格を有する多官能(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数5以上の脂環式骨格を有する多官能(メタ)アクリレートがより好ましい。炭素数5以上の脂環式骨格を有する多官能(メタ)アクリレートとしては、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,3-ジ(メタ)アクリロイルオキシアダマンタンから選択される1種以上が好ましい。
【0057】
(A-2)多官能(メタ)アクリレートの使用量は、(A)~(B)成分の合計100質量部中、1~40質量部が好ましく、10~30質量部がより好ましく、20~26質量部がさらに好ましい。1質量部以上であれば良好な硬化性、耐熱性、及び剥離性が得られ、40質量部以下であれば混合後の組成物が相分離する恐れがなく、及び耐熱性が低下する恐れがない。
【0058】
(B)ポリイソブテン単独重合体とは、イソブテンを原料モノマーとして用いた重合によって得られるホモポリマーをいう。
【0059】
(B)ポリイソブテン単独重合体は、(A)成分と配合した際に適度な粘度を得られる観点から、いわゆる高分子グレードであるのが好ましく、例えば重量平均分子量が1,000以上5,000,000以下、さらに好ましくは80,000以上5,000,000以下であることが好ましい。また(B)ポリイソブテン単独重合体は、分子量分布が1.1以上5.0以下であることが好ましく、2.2以上2.9以下であるのがより好ましい。特に好ましくは、重量平均分子量が80,000以上5,000,000以下かつ分子量分布が2.2以上2.9以下であってよい。これらのポリイソブテン単独重合体は1種以上を使用出来る。
【0060】
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定される標準ポリスチレン換算の値である。具体的には、平均分子量は、下記の条件にて、溶剤としてテトラヒドロフランを用い、GPCシステム(東ソー社製SC-8010)を使用し、市販の標準ポリスチレンで検量線を作成して求めた。
【0061】
流速:1.0ml/min
設定温度:40℃
カラム構成:東ソー社製「TSK guardcolumn MP(×L)」6.0mmID×4.0cm1本、及び東ソー社製「TSK-GELMULTIPOREHXL-M」7.8mmID×30.0cm(理論段数16,000段)2本、計3本(全体として理論段数32,000段)
サンプル注入量:100μl(試料液濃度1mg/ml)
送液圧力:39kg/cm
検出器:RI検出器
【0062】
(B)ポリイソブテン単独重合体の使用量は、(A)~(B)成分の合計100質量部中、1~20質量部が好ましく、5~20質量部がより好ましい。1質量部以上であれば塗布に際して必要な粘度が得られ、20質量部以下であれば混合後の組成物が相分離する恐れがなく、良好な硬化性と耐熱性が得られる。上述したいわゆる高分子グレードの(B)成分を用いることで、少量の添加であっても所望の粘度を得やすい効果のみならず、さらにスピンコート適合性だけでなくバーコート適合性をも得られる(すなわち、適合させる対象のプロセスを選択できる)という効果も奏される。
【0063】
(C)光ラジカル重合開始剤とは、例えば、紫外線或いは可視光線の照射により分子が切断され、2つ以上のラジカルに分裂する化合物をいう。
【0064】
(C)光ラジカル重合開始剤としては、反応速度、硬化後の耐熱性、低アウトガス性の点で、α-アミノアルキルフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、及びオキシムエステル系化合物から選択される1種以上が好ましく、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、及びオキシムエステル系化合物から選択される1種以上が高感度であることからより好ましい。
【0065】
α-アミノアルキルフェノン系化合物としては、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン-1、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モリフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン等が挙げられる。これらの中では、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モリフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オンが好ましい。
【0066】
アシルフォスフィンオキサイド系化合物としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらの中では、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドが好ましい。
【0067】
オキシムエステル系化合物としては、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン 1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。これらの中では、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン 1-(O-アセチルオキシム)が好ましい。
【0068】
(C)光ラジカル重合開始剤の使用量は、反応速度及び硬化後の耐熱性、低アウトガス性の点で、(A)~(B)の合計100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、0.1~1質量部がより好ましい。0.01質量部以上だと十分な硬化性が得られ、5質量部以下だと低アウトガス性及び耐熱性が損なわれる恐れがない。
【0069】
本発明の組成物は、高温に暴露されたあとの剥離性を維持するために、酸化防止剤を使用してよい。酸化防止剤としては、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、2,2-メチレン-ビス(4-メチル-6-ターシャリーブチルフェノール)、カテコール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、モノターシャリーブチルハイドロキノン、2,5-ジターシャリーブチルハイドロキノン、p-ベンゾキノン、2,5-ジフェニル-p-ベンゾキノン、2,5-ジターシャリーブチル-p-ベンゾキノン、ピクリン酸、クエン酸、フェノチアジン、ターシャリーブチルカテコール、2-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、2,6-ジターシャリーブチル-p-クレゾール及び4-[[4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]アミノ]-2,6-ジターシャリーブチルフェノール等が挙げられる。
【0070】
酸化防止剤の使用量は、(A)~(C)の合計100質量部に対して、0.001~3質量部が好ましい。0.001質量部以上だと高温に暴露されたあとの剥離性の維持が確保され、3質量部以下だと良好な接着性が得られ、未硬化になることもない。
【0071】
組成物の塗布方法としては、各種コーター、スクリーン印刷、スピンコート等の公知の塗布方法を用いることが出来る。本発明の組成物の粘度は、塗布性や作業性の点で、100mPa・s以上が好ましく、1000mPa・s以上がより好ましく、2000mPa・s以上が最も好ましい。本発明の組成物の粘度は、塗布性や作業性の点で、10000mPa・s以下が好ましく、5000mPa・s以下がより好ましく、4000mPa・s以下が最も好ましい。100mPa・s以上だと塗布性、特にスピンコートによる塗布性に優れる。10000mPa・s以下だと作業性に優れる。
【0072】
スピンコートとは、例えば、基板に液状組成物を滴下し、基板を所定の回転数で回転させることにより、組成物を基板表面に塗布する方法である。スピンコートにより、高品質な塗膜を効率よく生産できる。
【0073】
本発明の組成物は、仮固定用樹脂組成物として使用出来る。本発明の組成物は、仮固定接着剤として使用出来る。本発明の組成物は、硬化して粘着シートとして使用出来る。本発明の組成物は、電子デバイス製造用仮固定接着剤として使用出来る。
【0074】
本発明の組成物を用いて基材同士を接着する際は、可視光線若しくは紫外線(波長365~405nm)においてエネルギー量が1~20000mJ/cmになるように照射することが好ましい。エネルギー量が1mJ/cm以上だと十分な接着性が得られ、20000mJ/cm以下だと生産性が優れ、光ラジカル重合開始剤からの分解生成物が発生しにくく、アウトガスの発生が抑制される。生産性、接着性、低アウトガス性、易剥離性の点で、1000~10000mJ/cmであることが好ましい。
【0075】
本発明の組成物によって接着される基材には、特に制限はないものの、少なくとも一方の基材は光を透過する透明基材が好ましい。透明基材としては、水晶、ガラス、石英、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム等の無機基材、プラスチック等の有機基材等が挙げられる。これらの中では、汎用性があり、大きい効果が得られる点で、無機基材が好ましい。無機基材の中では、ガラス、及び石英から選択される1種以上が好ましい。
【0076】
本発明の組成物は一実施形態において、光硬化型であり、その硬化体は優れた耐熱性及び剥離性を有する。本発明の組成物の硬化体は一実施形態において、高温で暴露されてもアウトガス量が少なく、種々の光学部品や光学デバイス、電子部品の接合、封止、コーティングに好適である。本発明の組成物は、耐溶剤性、耐熱性、接着性等といった、多岐にわたる耐久性が必要とされる用途、特に半導体製造プロセス用途に適している。
【0077】
本発明の組成物の硬化体は、室温から高温まで使用出来る。プロセス中の加熱温度は、350℃以下が好ましく、300℃以下がより好ましく、250℃以下が最も好ましい。本発明の仮固定接着剤(の硬化体)で接着した接着体は、高いせん断接着力を有するため薄化工程等には耐えることが出来、絶縁膜形成等の加熱工程を経た後には容易に剥離出来る。高温で使用する場合、本発明の組成物の硬化体は、例えば、好ましくは200℃以上、より好ましくは250℃以上の高温で使用出来る。
【0078】
更に本発明では一実施形態において、接着剤により基材を接着した接着体に外力を加えることにより剥離出来る。例えば、刃物、シート又はワイヤーを差し込むことにより剥離出来る。
【0079】
<薄型ウエハの製造方法>
本発明の薄型ウエハの製造方法は、半導体回路等を有するウエハと支持体との接着剤層として、仮固定接着剤(以下、接着剤ということもある。)を用いることを特徴とする。本発明の薄型ウエハの製造方法は下記(a)~(e)の工程を有する。
【0080】
[工程(a)]
工程(a)は、表面に回路形成面を有し、裏面に回路非形成面を有するウエハの前記回路形成面を、接着剤を介して、支持体に接合する際に、前記支持体又は回路付きウエハ上にスピンコート法で接着剤を塗布し、もう一方の支持体又は回路付きウエハと真空下で貼り合わせる工程である。
【0081】
回路形成面及び回路非形成面を有するウエハは、一方の面が回路形成面であり、他方の面が回路非形成面であるウエハである。本発明が適用できるウエハは、通常、半導体ウエハである。該半導体ウエハとしては、シリコンウエハのみならず、窒化ガリウムウエハ、タンタル酸リチウムウエハ、ニオブ酸リチウムウエハ、炭化ケイ素ウエハ、ゲルマニウムウエハ、ガリウム-ヒ素ウエハ、ガリウム-リンウエハ、ガリウム-ヒ素-アルミニウムウエハ等が挙げられる。該ウエハの厚さは、特に制限はないが、600~800μmが好ましく、625~775μmがより好ましい。支持体としては、例えば、光を透過する透明基材が用いられる。
【0082】
[工程(b)]
工程(b)は、接着剤を光硬化させる工程である。前記ウエハ加工体(積層体基板)が形成された後、可視光線若しくは紫外線(波長365nm~405nm)領域においてエネルギー量が1~20000mJ/cmになるように照射することが好ましい。エネルギー量が1mJ/cm以上だと十分な接着性が得られ、20000mJ/cm以下だと生産性が優れ、光ラジカル重合開始剤からの分解生成物が発生しにくく、アウトガスの発生も抑制される。生産性、接着性、低アウトガス性、易剥離性の点で、1000~10000mJ/cmがより好ましい。
【0083】
[工程(c)]
工程(c)は、支持体と接合したウエハの回路非形成面を研削又は研磨する工程、即ち、工程(a)にて貼り合わせて得られたウエハ加工体のウエハ裏面側を研削して、該ウエハの厚みを薄くする工程である。薄型化されたウエハの厚さは、10~300μmが好ましく、30~100μmがより好ましい。ウエハ裏面の研削加工の方式には特に制限はなく、公知の研削方式が採用される。研削は、ウエハと砥石(ダイヤモンド等)に水をかけて、冷却しながら行うことが好ましい。
【0084】
[工程(d)]
工程(d)は、回路非形成面を研削したウエハ加工体、即ち、裏面研削によって薄型化されたウエハ加工体の回路非形成面に加工を施す工程である。この工程にはウエハレベルで用いられる様々なプロセスが含まれる。例えば、電極形成、金属配線形成、保護膜形成等が挙げられる。より具体的には、電極等の形成のための金属スパッタリング、金属スパッタリング層をエッチングするためのウェットエッチング、金属配線形成のマスクとするためのレジストの塗布、露光、及び現像によるパターンの形成、レジストの剥離、ドライエッチング、金属めっきの形成、TSV形成のためのシリコンエッチング、シリコン表面の酸化膜形成等、従来公知のプロセスが挙げられる。
【0085】
[工程(e)]
工程(e)は剥離工程である。本工程は工程(d)で加工を施したウエハをウエハ加工体から剥離する工程である。例えば、薄型化したウエハに様々な加工を施した後、ダイシングする前にウエハ加工体からウエハを剥離する工程である。この際、あらかじめ薄化、加工した面にダイシングテープを貼り付けておくことが出来る。この剥離工程は、一般に室温から60℃程度までの比較的低温の条件で実施される。この剥離工程としては、公知のメカニカル剥離工程、UV又はIRレーザー剥離工程のいずれも採用することが出来る。メカニカル剥離工程とは、例えば、ブレードをウエハ加工体の界面端部に挿入してウエハ・支持体間に開裂を発生させるためにウエハ加工体のウエハを下側にして水平に固定しておき、ブレード挿入後に上方の支持体に上向きの応力を印加して前記開裂を進展させてウエハ・支持体を剥離させる工程を含む剥離工程である。このような剥離工程は、例えば、特許第6377956号公報や特開2016-106404号公報に記載されている。IRレーザー剥離工程とは、例えば、ウエハ加工体の光学的に透明な支持体側の端部から接線方向に直線状に往復しながら走査するように、IRレーザーを全面に照射してレーザーのエネルギーにより接着剤層を加熱・分解させて剥離する工程である。このような剥離工程は例えば特許第4565804号公報に記載されている。このIRレーザー剥離工程を実施するために、仮固定剤層とガラス支持体の間にIRレーザー光を吸収して熱に変換する光熱変換層(例えば3M社のLTHC)を設けてもよい。3M社のLTHCを用いる場合、例えば、LTHCをガラス支持体上にスピンコートして硬化し、仮固定剤層はウエハ上にスピンコートしてからLTHC層が形成された前記ガラス支持体と貼り合わせてUV硬化することが出来る。3M社のLTHCを用いてIRレーザー剥離工程を実施する方法は、例えば上記と同じ特許第4565804号公報に記載されている。UVレーザー剥離工程とは、ウエハ加工体の光学的に透明な支持体側からIRレーザーと同様の方法で照射して接着剤層を分解させて剥離する工程である。このような剥離工程は、例えば、特表2019-501790号公報や国際公開第2014/058601号に記載されている。
【0086】
本発明の実施形態に係る組成物の剥離にあたっては、これらの剥離方法のいずれかが使用出来る。このとき、ウエハ加工体のウエハ又は支持体の一方を水平に固定しておき、刃物を入れることや溶剤(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の脂肪族系又は芳香族系炭化水素系の溶剤)で接着剤層の外周部を膨潤させて剥離のきっかけを作った後、他方を水平方向から一定の角度を付けて持ち上げることが好ましい。これらの剥離方法は、通常、室温で実施されるが、上限90℃程度で加温することも好ましい。レーザーを用いる場合は、YAGレーザー又はYVO4レーザーを用いることが好ましい。
【0087】
(e)加工を施したウエハを支持体から剥離する工程が、メカニカル剥離工程の場合、
(f)加工を施したウエハのウエハ面にダイシングテープを接着する工程と、
(g)ダイシングテープ面を吸着面に真空吸着する工程と、
(h)吸着面の温度が10~100℃の温度範囲で、前記支持体を、加工を施した前記ウエハから剥離する工程と、を含むことが好ましい。このようにすると、支持体を、加工を施したウエハから容易に剥離することが出来、後のダイシング工程を容易に行うことが出来る。
【0088】
レーザーで剥離する場合は、例えば
(i)加工を施したウエハを光学的に透明な支持体側を上にして、水平な場所に、好ましくはダイシングテープを介して設置/固定する工程と、
(j)加工を施した前記ウエハの支持体側からレーザーを走査するように全面に照射する工程、
を含むことが好ましい。このようにすると、支持体を、加工を施したウエハから容易に剥離することが出来、後のダイシング工程を容易に行うことが出来る。
【0089】
(e)加工を施したウエハを支持体から剥離する工程を経た後のウエハは表面を洗浄せずにそのまま次のプロセスに進ませることも出来る。洗浄する場合は加工を施したウエハを支持体から剥離する工程を経た後に、(k)剥離したウエハの回路形成面に残存した接着剤を除去する工程を行うことが好ましい。工程(e)により、支持体から剥離されたウエハの回路形成面には、接着剤が一部残存している場合がある。剥離した支持体は、洗浄し再利用することが好ましいが、支持体表面に接着剤残渣が固着する場合がある。接着剤残渣を除去する方法としては、接着剤残渣に粘着テープを付着させ180°の方向にピールする方法、薬液に浸漬する方法等が挙げられる。
【0090】
上記仮固定組成物とは別に、本発明の仮固定組成物に用いられるものと同じ組成物の構成材料の全部又は一部は、特許第4565804号公報に記載のIRレーザー光を吸収して熱に変換する光熱変換層(LTHC)の原料としても使用可能である。本組成物を光熱変換層(LTHC)の原料とすることで、光熱変換層の耐熱性を向上させることが可能となる。
【実施例
【0091】
以下に、実験例をあげて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0092】
(実験例)
特記しない限り、23℃、湿度50%で実験した。表1~5に示す組成の硬化性樹脂組成物(以下、液状樹脂組成物ということもある)を調製し、評価した。実験例に記載の硬化性樹脂組成物中の各成分としては、以下の化合物を選択した。
【0093】
(組成)
(A-1) ホモポリマーのTgが-100℃~60℃である単官能(メタ)アクリレートとして、以下の化合物を選択した。
イソステアリルアクリレート(大阪有機化学工業社製「ISTA」、ホモポリマーのガラス転移温度:-18℃、分子量325)
2-デシル-1-テトラデカニルアクリレート(共栄社化学社製「ライトアクリレートDTD-A(DTD-A)」、ホモポリマーのガラス転移温度:-36℃、分子量409)
2-テトラデシル-1-オクタデカニルアクリレート(共栄社化学社製「ライトアクリレートDOD-A(DOD-A)」、ホモポリマーのガラス転移温度:-8℃、分子量521)
【0094】
(A-2) 多官能(メタ)アクリレートとして、以下の化合物を選択した。
トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学工業社製「NKエステルA-DCP(A-DCP)」、分子量304)
トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(新中村化学工業社製「NKエステルDCP(DCP)」、分子量332)
1,3-ジアクリロイルオキシアダマンタン(三菱ガス化学社製「ダイヤピュレストADDA(ADDA)」、分子量276)
トリメチロールプロパントリメタクリレート(新中村化学工業社製「NKエステルTMPT(TMPT)」、分子量338)
【0095】
(B) ポリイソブテン単独重合体として、以下の化合物を選択した。
Oppanol N 150EP(BASF社製、PS(ポリスチレン)換算重量平均分子量(Mw):3,050,000、分子量分布2.9)
Oppanol N 100(BASF社製、PS換算重量平均分子量(Mw):1,550,000、分子量分布2.9)
Oppanol N 80(BASF社製、PS換算重量平均分子量(Mw):1,050,000、分子量分布2.4)
Oppanol N 50SF(BASF社製、PS換算重量平均分子量(Mw):565,000、分子量分布2.4)
Oppanol B 15SFN(BASF社製、PS換算重量平均分子量(Mw):108,000、分子量分布3.2)
Tetrax 6T(JXTGエネルギー社製、PS換算重量平均分子量(Mw):80,000、分子量分布2.2)
Tetrax 3T(JXTGエネルギー社製、PS換算重量平均分子量(Mw):49,000、分子量分布2.2)
【0096】
(C) 光ラジカル重合開始剤として、以下の化合物を選択した。
2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン-1(BASF社製「Irgacure 369E」)
2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モリフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン(BASF社製「Irgacure 379EG」)
ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製「Irgacure 819」)
2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製「Irgacure TPO」)
1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン 1-(O-アセチルオキシム)(BASF社製「Irgacure OXE02」)
2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(BASF社製「Irgacure 651」)
アセトフェノン(東京化成工業社製)
【0097】
酸化防止剤として、以下の化合物を選択した。
4-((4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イル)アミノ)-2,6-ジ-t-ブチルフェノール(BASF社製「IRGANOX 565」)
【0098】
(評価)
液状樹脂組成物の材料の相溶性(表の「材料の相溶性」、「吸光度」):80℃での加温混合により材料を均一な混合物とした後、23℃まで冷やして均一状態が維持されるかを確認した。日本分光社製の紫外可視分光光度計V-650を用い、光路長方向の幅10mmのセルに入れたサンプルの、波長660nmでの吸光度(OD660)を測定した。吸光度が0.1未満の場合は相溶で可、0.1以上の場合、及び目視で相分離等の不均一化が確認された場合は非相溶で不可とした。吸光度は、相溶性の点で、0.1未満が好ましい。
【0099】
粘度(表の「スピンコートプロセス適合性」、「粘度」):上記「材料の相溶性」において、23℃で均一状態が維持される液状樹脂組成物の粘度を測定し、実際のプロセスで想定される基材上面へのスピンコートに対する適合性を評価した。Anton-Paar社製レオメーターMCR302を用い、コーンプレートCP50-2を用いて23℃の温度条件で粘度を測定した。せん断速度が1s-1の点でのせん断粘度が2000mPa・s以上4000mPa・s未満であるものを優、4000mPa・s以上10000mPa・s以下、又は、100mPa・s以上2000mPa・s未満であるものを可、10000mPa・sを超える、又は、100mPa・s未満であるものを不可とした。粘度は、スピンコートプロセスへの適合性の点で、100~10000mPa・sが好ましい。
【0100】
硬化体の加熱質量減少率(表の「耐熱性1」、「硬化体の1%加熱質量減少温度」):作製した液状樹脂組成物をPETフィルムに挟み込み、厚さ50μmになるまで押し広げた。樹脂組成物を、波長365nmのブラックライトにより積算光量3000mJ/cmの条件にて硬化させ、硬化体を作製した。得られた硬化体5mgを、ブルカー・エイエックスエス社製示差熱・熱質量同時測定装置「TG-DTA2000SA」により、窒素気流下、昇温速度10℃/分で30℃から350℃まで、その後続けて空気気流下の昇温速度20℃/分で350℃から800℃まで昇温し、得られた硬化体の加熱質量減少率を測定した。硬化体の1質量%加熱質量減少温度を示した。250℃以上の値を示したものを優、200℃以上250℃未満の値を示したものを可、150℃以上200℃未満の値を示したものを準可、150℃未満の値を示したものを不可とした。加熱質量減少率が1質量%となる温度は、半導体製造高温工程適合性の点で、150℃以上が好ましく、250℃以上がより好ましい。
【0101】
硬化体の弾性率範囲(表の「耐熱性2」・「-50~250℃での弾性率」):ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製粘弾性測定装置RSA-G2を用いてサンプルの動的粘弾性を測定した。測定はチャック間距離10mm、サンプル幅8mm、サンプル厚み0.5mm、歪み0.1%、引張周波数1Hz、昇温速度3℃/min、温度範囲-50~250℃の範囲で行った。本条件で温度領域全域にわたって貯蔵弾性率E’が10kPa以上であるサンプルを可、いずれかの温度領域で10kPa未満となるサンプルを不可とした。弾性率は、10kPa以上が好ましい。
【0102】
高温での接着性(表の「高温条件下(250℃・1h・大気中)での接着性」、「外縁部の変色の幅」、「加熱による剥離」):作製した液状樹脂組成物にて、4インチシリコンウエハ(直径10cm×厚さ0.47mm)と4インチガラスウエハ(直径10cm×厚さ0.7mm)を貼り合わせた。貼り合わせに際し、樹脂組成物の厚みは50μmとなるように調整した。貼り合わせ後、波長365nmのブラックライトにより積算光量3000mJ/cmの条件にて硬化させ、高温条件下での接着性評価用試験片を作製した。接着剤は貼り合わせ面の全面に塗布した。ブラックライトは、4インチガラスウエハ表面から照射した。完成した試験片を予め所定の温度に加熱したホットプレート上に4インチシリコンウエハ側を下にして載せ、外縁部の変色領域のウエハ中心方向への幅、及びガラス側から目視で確認出来る剥離の有無を観察した。ホットプレートの温度は200℃及び250℃、加熱継続時間は1時間とした。各温度条件で変色領域の外縁部から中心方向への広がりの幅が5mm以下で且つ剥離が認められないものは可、幅が5mmを超えたものや剥離が認められたものは不可とした。変色領域の外縁部から中心方向への広がりの幅は、5mm以下が好ましい。
【0103】
メカニカル/UVレーザー剥離プロセス適合性評価用試験体の作製工程:作製した液状樹脂組成物にて、4インチシリコンウエハ(直径100mm×厚さ0.47mm)と4インチガラスウエハ(直径100mm×厚さ0.7mm)を貼り合わせ、ブラックライトにより、365nmの波長の積算光量3000mJ/cmの条件にて硬化させ、剥離・解体試験片を作製した。接着剤は貼り合わせ面の全面に塗布した。ブラックライトは、4インチガラスウエハ表面から照射した。
【0104】
(1)メカニカル剥離プロセス適合性(表の「剥離性」・「剥離力」)評価:得られた試験体の両基材間にPETシートを差し込み、試験体をダイシングテープ(デンカ社製ERK-3580)にシリコンウエハ面を下にして貼り付け、貼り付けたものをバキュームチャックの上に載せて固定した状態で試験体の端部に直径50mmの吸盤を貼り付け、その吸盤の中央に電子バネ秤の測定部を取り付けて同秤を上方へ垂直に引き上げる方法で剥離性を評価した。剥離に要する力(剥離力)が10N未満であったものを優、10N以上50N以下であったものを可、50Nを超えたもの、及びPETシートを差し込むことが出来なかったものを不可とした。剥離力は、50N以下が好ましく、10N以下がより好ましく、10N未満が最も好ましい。本値が50N以下だとメカニカル剥離プロセスによる剥離が容易になる。本値が10N未満であればメカニカル剥離プロセスに特に好ましく適用出来る。
【0105】
(2)UVレーザー剥離プロセス適合性(表6の「UVレーザー剥離性」)評価:得られた試験体のガラス支持体側からUVレーザーを照射した。UVレーザーはクォークテクノロジー社製UVレーザーQLA-355を、出力6W、周波数100kHz、スキャンピッチ25μm、ビーム径56μmで使用した。剥離力の評価は、上記(1)メカニカル剥離プロセス適合性評価と同じ手順で剥離力を測定することによって行った。
【0106】
(3)IRレーザー剥離プロセス適合性評価:本方法は、例えば特許第4565804号公報に記載されている方法を用いることが出来る。特許第4565804号公報には、例えば特許第4405246号公報に記載の、光を吸収して熱に変換する光熱変換層(LTHC層)を液状樹脂組成物と併用する方法が記載されている。LTHC層は、支持体表面に塗布して硬化させることにより形成される。特許第4565804号公報にはLTHC層が表面に形成された支持体の同層形成面側と、液状樹脂組成物をスピンコートしたシリコンウエハの液状樹脂組成物塗布面を接合し、支持体側からUV照射して硬化する方法により作製した積層体を、支持体を上面にして固定装置に固定し、上面からYAGレーザー又は半導体レーザーを照射して解体する方法が記載されている。この解体は、LTHC層がIRレーザーの光エネルギーを吸収して熱に変換し、その熱が隣接する樹脂層を分解・気化させ、気化により発生した気体の層が支持体と樹脂層の間の接着力を消失させることでなされる。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】
【0110】
【表4】
【0111】
【表5】
【0112】
【表6】
【0113】
表1~5の結果から、本発明の樹脂組成物は、相溶性、スピンコートプロセス適合性、耐熱性に優れる組成物であることが分かる。(A-1)を用いず、モノマーを全て(A-2)とした場合、ポリイソブテンが析出し、相溶性を有さない(比較例1)。(A-2)を用いないと、要求される耐熱性(1%加熱質量減少温度、弾性率)を有さない(比較例2)。(B)を用いないと粘度が必要最低限の値に達しない(比較例3)。(C)として、耐熱性の低いフェニルケトン系光ラジカル重合開始剤であるアセトフェノンを用いると、本発明の効果を有するものの、耐熱性は小さい(実施例26)。
【0114】
また表6の結果から、実施例1に係る組成物が、メカニカル剥離性に優れ、かつUVレーザー剥離性も優れていたことがわかる。特にUVレーザーの照射後には、UV照射前は3Nだった剥離力の値が0.8Nまで低下していることが確認された。
【0115】
本発明の樹脂組成物は、材料の相溶性とスピンコートに際して必要な最低粘度が確保出来ており、室温及び高温条件での接着性、耐熱性及び剥離性に優れる。
【0116】
本実施例に係る樹脂組成物は、メカニカル剥離プロセスに対する適合性を有する。上記実施例1に記載の方法で作製したシリコンウエハ/ガラス支持体積層体の端部の基材界面に開裂発生用の薄くて鋭利な金属のブレードを挿入してからガラス支持体を上側にして水平に固定しておき、ブレード挿入後に上方の支持体に上向きの応力を印加して前記開裂を進展させてウエハ・支持体を剥離させる方法により、剥離力3Nで剥離可能であった。
【0117】
又、剥離に要するエネルギーの評価方法として、上記同様に薄くて鋭利なブレードを一定距離だけ挿入し、その時に開裂が進展する距離を測定するMaszara試験という方法を用いた。同試験においても、実施例1の組成の液状樹脂を用いて接合したサンプルは、0.8J/cm2という充分に低い値を示した。
【0118】
加えて、上記のメカニカル剥離により剥離した積層体のシリコンウエハ表面のXPS元素解析をサーモ社製 X 線光電子分光装置K-Alphaを用いて実施した結果、接合前のシリコンウエハと同じデータが得られた(すなわち有機物に由来する炭素ピーク強度に変化が見られなかった)。この結果から、剥離後のシリコンウエハの洗浄が不要である効果が得られることもわかった。図1及び下記表7は、実施例1の組成の試料を用いてベアSiウエハとガラス支持体を接合してから剥離した後のベアシリコンウエハ表面のXPS解析データである。元素分析の結果、仮固定剤の樹脂組成物の残渣がないことが確認出来る。
【0119】
図1に示したXPSデータから、対照(リファレンス)の未洗浄品では組成物の残渣が付着していることを示すピークがあることがわかる。一方、本実施例に係るサンプルの未洗浄品では、そのピークが明らかに小さく、洗浄を要しない。下記表7には、対照と本実施例のサンプルのそれぞれについて三箇所の測定を行い、検出元素の半定量値とその平均値とを示した。
【0120】
【表7】
【0121】
本実施例に係る樹脂組成物は、UVレーザー剥離プロセスに対する適合性を有する。上記実施例1に記載の方法で作製したシリコンウエハ/ガラス支持体積層体をシリコンウエハを下側にして固定装置に固定し、ガラス支持体側からクォークテクノロジー社製UVレーザーQLA-355を、出力6W、周波数100kHz、スキャンピッチ25μm、ビーム径56μmで照射後、上記(1)メカニカル剥離プロセス適合性評価と同じ手順で剥離力を測定したところ、UV照射前は3Nだった値が0.8Nまで低下していた。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、耐熱性、低アウトガス性、剥離性に優れる。
本発明の組成物は、種々の電子部品、光学部品や光学デバイスの製造において、紫外線又は可視光線を照射するだけで容易に強い接着性を発現するために、作業性、生産性に優れる。本発明の組成物の硬化体は、更に250℃という高温でもアウトガスの量が極めて少ない。本発明の組成物は、加工後に剥離するのが容易である。そのため、本発明の組成物を用いて接着した種々の電子部品、光学部品、光学デバイスは、200℃を超えるような高温での蒸着処理や、高温での焼付塗装が施される場合でも、適用可能である。
【0123】
ICや抵抗、インダクタ等の電子部品以外にイメージセンサ等の光学部品も回路基板への表面実装が適用されるようになっている。その場合は高温のハンダリフローに通される。近年、特にハンダの鉛フリー化に伴い、ハンダリフローの温度条件も厳しくなってきている。このような生産工程において、光学部品や光学デバイスの品質を高めるために、又は、生産性や生産歩留まりを高めるために、本発明の組成物の使用箇所は、高温加熱処理に十分に耐えることが要求される。本発明の組成物を使用して製造された光学部品や光学デバイスは、前記高温加熱処理に十分耐えることができるため、産業上大変有用である。
図1