(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】レシチン含有化粧料基剤及びそれを配合した化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/55 20060101AFI20240410BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20240410BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240410BHJP
A61K 8/14 20060101ALI20240410BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
A61K8/55
A61K8/63
A61K8/34
A61K8/14
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2020566378
(86)(22)【出願日】2020-01-07
(86)【国際出願番号】 JP2020000095
(87)【国際公開番号】W WO2020149162
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】P 2019005307
(32)【優先日】2019-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】家谷 沙織
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-099566(JP,A)
【文献】特開2019-156726(JP,A)
【文献】特開2018-087148(JP,A)
【文献】国際公開第2015/136783(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/174868(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K36/738
CAPLUS/MEDLINE/KOSMET/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)リポソームパーツと(B)マイクロエマルジョンパーツを含む化粧料であって、
前記(A)リポソームパーツが、
(a)(a-1)水添レシチンと(a-2)γ-オリザノールとの複合体からなるリポソーム、及び、
(b)(b-1)水と(b-2)多価アルコールとを含む水性媒体を含み、
前記(a)リポソームが前記(b)水性媒体に分散され、
前記(a)リポソームの配合量が化粧料全量に対して0.00001~0.2質量%であり、前記(a)リポソームの配合量と前記(b)水性媒体の配合量との比((a):(b))が1:99~1:32の範囲内であり、
前記(b-2)多価アルコールが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、及びグリセリンからなる群から選択される少なくとも一種であり、
前記(b-1)水と(b-2)多価アルコールとの配合量比(質量比)が5:1~1:2の範囲内であり、
前記(B)マイクロエマルジョンパーツが、(c)0.5~3質量%の油分と、(d)0.1~4質量%の界面活性剤と、(e)水とを含む水中油型乳化物である、化粧料。
【請求項2】
前記(a)リポソームのモード径が100nm以下である、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
前記(b-2)多価アルコールが、1,3-ブチレングリコール及びグリセリンを含む、請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項4】
(a)リポソームの配合量が化粧料全量に対して0.001~0.15質量%である、請求項1から3のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項5】
前記(d)界面活性剤が、(d-1)親水性界面活性剤及び(d-2)親油性界面活性剤を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項6】
(f)増粘剤として0.005~0.2質量%のポリアクリル酸ナトリウムを更に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項7】
(g)0.1~5質量%のPEG/PPGジアルキルエーテルを更に含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項8】
(h)0.001~20質量%の保湿剤を更に含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項9】
前記(h)保湿剤がジグリセリンである、請求項8に記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレシチンを含有する化粧料基剤に関する。より詳しくは、レシチンをリポソームの形態で安定に配合した化粧料基剤、さらには、当該化粧料基剤を含み、肌へのなじみが早く、べたつかず、塗布後のなじみの早さ、肌が柔らかい等の使用性に優れる化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
レシチンは保水効果に優れ、皮膚を健やかに保ち、肌荒れを改善する作用があることが知られている(例えば、特許文献1)。レシチンの主成分であるリン脂質は生体膜の構成成分であり、肌との親和性が良好で安全性の高い物質である。しかしながら、レシチンを化粧水等の低粘度の化粧料に配合すると析出を生じる傾向があり、レシチンを安定に分散させる種々の試みがなされている。
【0003】
特許文献2には、(a)ホスファチジルコリンの含有量が60質量%以上である水素添加リン脂質と、(b)分岐をもつ、高級脂肪酸および高級アルコールの中から選ばれる1種または2種以上と、(c)多価アルコールと、(d)水を含み、(a)成分:(b)成分=1:0.01~1:0.4(質量比)である透明乃至半透明の化粧料が開示されており、レシチンの効果実感(浸透感、べたつきがない、塗布後の肌がやわらかい等)及び安定性に優れるとされている。
【0004】
一方、レシチンの両親媒性物質としての機能に着目した発明もあるが、レシチン単独では透明な乳化物を安定に保つことは困難であり、乳化安定性を保つために配合される界面活性剤によるべたつき等が問題となっていた(特許文献3)。
【0005】
特許文献4には、水難溶性のγ-オリザノールとリン脂質(水添大豆レシチン)とを予め有機溶媒に均一に溶解した溶液から有機溶媒を除去して析出させて得られるγ-オリザノール-リン脂質複合体が開示され、当該複合体を水系の処方に分散させることにより、透明で分散安定性の高い乳化又は可溶化組成物が得られると記載されている。しかしながら、この従来技術の系におけるレシチンの安定性及び使用性は十分と言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平3-106806号公報
【文献】特許第5348784号公報
【文献】特開平2-78432号公報
【文献】特開2018-87148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、レシチンを更に安定に配合および保持することができる水系低粘度の化粧料基剤を得ること、さらには、レシチンが安定に配合され、なおかつ使用性(皮膚に塗布したときの柔らかさ、なじみの早さ等)にも優れた化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意研究の結果、レシチンとγ-オリザノールとの複合体を含むリポソームを、多価アルコールを含む水性媒体中に分散させ、前記複合体と水性媒体との配合量比率を所定範囲内に調整することにより、レシチンが長期に亘って析出することなく安定に保持できることを見出し、本発明を完成するに至った。また、前記複合体を含むリポソームのモード径を約100nm以下とすることによって安定性はさらに向上する。
【0009】
すなわち、本発明は、(a-1)レシチンと(a-2)オリザノールとを含むリポソーム(a)、及び(b-1)水と(b-2)多価アルコールとを含む水性媒体(b)を含み、前記(a)リポソームの配合量と前記(b)水性媒体の配合量との比((a):(b))が1:99~1:32の範囲内であることを特徴とする化粧料基剤を提供する。
本発明の化粧料基剤における(a)リポソームのモード径は、約100nm以下とするのが好ましい。
さらに本発明は、水添レシチンをリポソームの形態で安定に含有する前記化粧料基剤を配合した化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の化粧料基剤は、従来は安定に保つのが困難であったレシチンをリポソームの形態で安定に保持することができる。よって、当該化粧料基剤を配合した化粧料、特にマイクロエマルジョンと組み合わせた化粧料は、安定性において優れるのに加えて、使用性(皮膚に塗布したときの柔らかさ、なじみの早さ等)においても優れたものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る化粧料基剤(以下、単に「基剤」とも称する)は、(a)リポソーム及び(b)水性媒体を含む。
【0012】
(a)リポソーム
本発明における(a)リポソームは、(a-1)レシチン及び(a-2)オリザノールを含む小胞である。
【0013】
(a-1)レシチン
(a-1)レシチン(フォスファチジルコリンとも呼ばれる)は、リン脂質の中でもグリセロリン脂質の一種であり、生体膜の主要構成成分である。工業的に入手可能なレシチンとして、大豆由来の大豆レシチン、卵黄由来の卵黄レシチン等が知られている。また、種々の改質を施されたレシチンも存在し、本発明においては、特に限定されないが、水素添加処理された水添レシチンが好ましく用いられる。
【0014】
(a-2)オリザノール
(a-2)オリザノールは、コメヌカ油に含有される成分であり、フェルラ酸とテルペンアルコールのエステルである。γ-オリザノールは皮膚コンディショニング剤等として化粧料に配合可能であるが、エタノールや水に溶け難く、水性化粧料に安定に配合するのが困難であることが知られている。
【0015】
本発明における(a)リポソームは、(a-1)レシチンとしての水添レシチンと、(a-2)オリザノールとしてのγ-オリザノールとを、有機溶媒中に均一に溶解し、当該溶液から有機溶媒を除去し、水添レシチンとγ-オリザノールとを同時に析出せしめて得られる複合体を用いて調製するのが好ましい。
【0016】
上記のようにして調製される水添レシチンとγ-オリザノールの複合体は、水添レシチンの含有量が60~80質量%、γ-オリザノールの含有量が20~40質量%となるようにするのが好ましい。そのような複合体として市販品を用いることができ、例えば、日本精化株式会社製の「フィトプレソームOR(PhytopresomeOR)」(商品名)等が好ましい例として挙げられる。
【0017】
本発明の基剤における(a)リポソーム(好ましくは水添レシチンとγ-オリザノールの複合体)の配合量は、0.0001~5質量%、好ましくは0.01~3質量%である。
【0018】
本発明の基剤は、前記(a)リポソームが(b)水性媒体中に分散されてなるものであり、(b)水性媒体は、(b-1)水及び(b-2)多価アルコールを含む。
【0019】
(b-1)水
(b-1)水は、化粧料に配合可能なものであれば特に限られず、精製水、イオン交換水、温泉水などであってよい。
【0020】
(b-2)多価アルコール
(b-2)多価アルコールは、特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン等が挙げられる。本発明の基剤における多価アルコールとしては、1,3-ブチレングリコール及びグリセリンを組み合わせて配合するのが使用性の観点から好ましい。
【0021】
本発明の基剤においては、(a)リポソームのモード径を約100nm以下とするのが好ましく、より好ましくは約80nm以下、さらに好ましくは約60nm以下である。一方、モード径が小さすぎても安定性が低下することから、約40nm以上とするのが好ましい。モード径とは、粒径分布における最頻度粒径である。
また、粒径が100nmを超えるリポソームが多くなると、粒子同士が合一して凝集しやすくなり、安定性が低下する傾向がある。従って、本発明におけるリポソームは、粒径を均一化し、粒径が100nmを超えるリポソームの含有量を少なくするのが好ましい。例えば、本発明においては、(a)リポソームの90%径(d90径)を200nm以下とするのが好ましく、より好ましくは150nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。
【0022】
リポソーム粒子を微小化及び均一化する方法は特に限定されないが、例えば、高圧乳化を用いて実施することができる。高圧乳化は、ホモジナイザー(例えば、マントンゴウリン、フレンチプレス、マイクロフルイダイザー等)を用いて、30MPa・s以上、好ましくは50MPa・s以上、特に好ましくは80MPa・s以上の高圧下で乳化する方法である。高圧乳化処理を複数回繰り返すことにより、リポソーム粒子の微小化及び均一化が促進されるので、2回以上、例えば3回、4回または5回程度の高圧乳化処理を施すのが好ましい。
【0023】
本発明の基剤は、(a)リポソームの配合量と(b)水性媒体の配合量との比(質量比)「(a):(b)」を、1:99~1:32の範囲内にしたことを特徴とする。この比を前記範囲内にすることによって、高圧乳化によって調製されるリポソームのモード径を100nm以下にすることができる。なお、リポソームの配合量が増えると、肌に適用した際に若干のぬめりを感じる場合があるので、上記の比を1:99~1:50程度にするのが更に好ましい。一方、水性媒体の配合量がリポソームの配合量の99倍を超えると粒径が均一化されたリポソームを調製するのが困難になり、32倍に満たないとリポソームの安定性が低下して析出を生じる場合がある。
【0024】
(b)水性媒体においては、(b-1)水と(b-2)多価アルコールの配合量比(質量比)「(b-1):(b-2)」を、5:1~1:2の範囲内にするのが好ましい。また、防腐効果の観点から、(b-2)多価アルコールの配合量は、基剤全体に対して40質量%以上とするのが好ましく、例えば40~60質量%、好ましくは45~55質量%とすることができる。
【0025】
本発明の基剤は、微小化かつ均一化されたリポソーム粒子が水性媒体中に分散した基剤であり、ほぼ透明な外観を呈する。本発明の基剤の透明度(L値)は、好ましくは70以上、より好ましくは80以上、さらに好ましくは85以上である。このような透明度の高い基剤とすることにより、様々な基剤と組み合わせてバリエーション豊富な化粧料を調製することが可能になる。
本発明は、前記の化粧料基剤(リポソームパーツ)を他の基剤と組み合わせて調製される化粧料にも関する。
【0026】
本発明の化粧料で用いられる他の基剤としては、乳化系、可溶化系の基剤を用いることができ、特に限定されない。本発明の化粧料は、リポソームパーツとして安定に保持されたレシチンを含有しているため、レシチンによる作用を有効に生かすことができるスキンケア化粧料とするのに適している。
【0027】
以下に、他の基剤としてマイクロエマルジョンを用いて調製される化粧料(以下、「本発明の化粧料」ともいう)の例について説明するが、他の基剤はマイクロエマルジョンに限定されるものではない。
【0028】
本発明の化粧料は、(A)リポソームパーツと(B)マイクロエマルジョンパーツを混合することにより調製される。
(A)リポソームパーツは、前述した本発明の化粧料基剤からなる。
【0029】
(B)マイクロエマルジョンパーツは、(c)油分を(d)界面活性剤で(e)水に乳化した水中油型乳化物である。本明細書におけるマイクロエマルジョンとは、乳化油滴の平均粒径が10~500nm、好ましくは100nm以下のエマルジョンを指すものとする。(B)マイクロエマルジョンパーツの透明度は特に限定されず、例えば、L値が1~99の範囲となる透明度を有するものが使用可能である。
【0030】
(c)油分
本発明で用いる(c)油分は、通常化粧料に配合され得る油性成分であれば特に限定されるものでなく、例えば、シリコーン油、エステル油、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、油脂等が挙げられる。
【0031】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状シリコーン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の環状シリコーンが挙げられる。
【0032】
エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ペンタエリスリトール、トリー2-エチルヘキシル酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-クチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチルなどが例示される。
【0033】
炭化水素油としては、イソドデカン、イソヘキサデカン、水添ポリイソブテン等の揮発性炭化水素油、流動パラフィン、オゾケライト、スクワレン、プリスタン、パラフィン、セレシン等の不揮発性炭化水素油が例示される。
【0034】
高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン(ベヘニン)酸、オレイン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などが例示される。
【0035】
高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等の直鎖アルコール;モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2-デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の分枝鎖アルコールなどが例示される。
【0036】
油脂としては、アボカド油、ツバキ油、月見草油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリンなどが例示される。
【0037】
(d)界面活性剤
本発明で使用する(d)界面活性剤は、特に限定されないが、非イオン性界面活性剤を用いるのが好ましい。また、(d-1)HLBが10以上の親水性界面活性剤と、(d-2)HLBが10未満の親油性界面活性剤とを組み合わせて配合するのが使用性の観点から好ましい。
【0038】
(d-1)親水性界面活性剤
(d-1)親水性界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(15)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)モノステアレート、ポリオキシエチレン(30)グリセリルトリイソステアレート、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートなどが例示できる。
【0039】
(d-2)親油性界面活性剤
(d-2)親油性界面活性剤としては、特に限定されないが、ステアリン酸ステアリル、ジステアリン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル(ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2)、ポリオキシエチレン(3)オレイルエーテル、ステアリン酸ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル、モノステアリン酸エチレングリコール、トリオレイン酸ポリオキシエチレン(3)グリセリル、ポリオキシエチレン(4)ソルビタントリステアレートなどが例示できる。
【0040】
(e)水
本発明における(B)マイクロエマルジョンパーツは、(c)油分を(d)界面活性剤を用いて(e)水に乳化した水中油型乳化物である。その調製方法は特に限られず、化粧料に汎用されている方法を用いることができる。
【0041】
(B)マイクロエマルジョンパーツにおける(c)油分及び(d)界面活性剤の配合量は、安定なマイクロエマルジョンが調製できる量であれば特に限定されない。(c)油分の配合量は、通常は0.05~5質量%、好ましくは0.5~3質量%である。(d)界面活性剤は、通常は0.1~4質量%、好ましくは0.5~2質量%である。
【0042】
本発明の化粧料は、前記(A)リポソームパーツと(B)マイクロエマルジョンパーツとを混合することにより調製できる。(A)リポソームパーツと(B)マイクロエマルジョンパーツとの配合量比率は特に限定されるものではない。但し、リポソームの配合量が多いと肌に適用した際にぬめりを感じることがある。従って、最終的に得られる化粧料において、(a)リポソームの配合量(即ち、レシチンとオリザノールの合計配合量)が、化粧料全量に対して0.00001~0.2質量%、好ましくは、0.001~0.15質量%、より好ましくは、0.01~0.1質量%となるように調製する。
【0043】
(f)増粘剤
本発明の化粧料に(f)増粘剤を添加すると、肌への適用時のなめらかさが向上する。本発明で好ましく用いられる増粘剤としては、アラビアガム、トラガントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、ジェランガム、カラギーナン等の植物系高分子;キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子;コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子;カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子;メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース等のセルロース系高分子;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子;ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンとビニルアセテート共重合物、カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリル酸アルカノールアミン、アルキルメタクリレートとジメチルアミノエチルメタクリレート共重合物、ポリ2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ポリメタクリロイルオキシトリメチルアンモニウム等のアクリル系高分子等が挙げられる。
【0044】
上記した(f)増粘剤の中でも、ポリアクリル酸ナトリウムを添加したときになめらかさの向上効果が特に顕著である。ポリアクリル酸ナトリウムとしては、重量平均分子量10万~1000万程度のものが好ましく用いられる。中でも、重量平均分子量が50万~800万であり、なおかつ分子量が1000万以上のポリマーの含有率が10質量%以下のものが更に好ましい。ポリアクリル酸ナトリウムの市販品として、アロンビスSX(東亜合成株式会社製)等が挙げられる。ポリアクリル酸ナトリウムの配合量は、0.005~0.2質量%、好ましくは0.005~0.1質量%である。
【0045】
(g)PEG/PPGジアルキルエーテル
本発明の化粧料に(g)PEG/PPGジアルキルエーテルを配合することにより、なめらかさを更に改善することができる。(g)PEG/PPGジアルキルエーテルの具体例としては、PEG/PPG-10/10ジメチルエーテル、PEG/PPG-9/2ジメチルエーテル、PEG/PPG-14/7ジメチルエーテル、PEG/PPG-6/14ジメチルエーテル、PEG/PPG-15/5ジメチルエーテル、PEG/PPG-25/25ジメチルエーテル、PEG/PPG-10/10ジエチルエーテル、PEG/PPG-10/10ジプロピルエーテル、PEG/PPG-10/10ジブチルエーテル等が挙げられる。中でも、PEG/PPG-14/7ジメチルエーテルを配合するのが好ましい。
(g)PEG/PPGジアルキルエーテルの配合量は、特に限定されないが、化粧料全量に対して、0.1~5質量%、好ましくは0.1~3質量%である。
【0046】
(h)保湿剤
本発明の化粧料には、安定に配合されたレシチンと協働して肌を柔らかくする効果を発揮させるため、(h)保湿剤を配合するのが好ましい。
(h)保湿剤としては、ジグリセリン、ジプロピレングリコール、プロパンジオール、PEG-20、エリスリトール、アセチルヒアルロン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらの中でも、ジグリセリンが好適に用いられる。
(h)保湿剤の配合量は0.001~20質量%であり、好ましくは0.001~10質量%である。
【0047】
本発明の化粧料には、上記成分に加えて、化粧料や医薬部外品等に通常用いられる他の任意成分を、本発明の効果を阻害しない範囲で配合することができる。他の任意成分としては、限定されないが、例えば、分散剤、防腐剤、各種薬剤、緩衝剤、香料等が挙げられる。
【0048】
本発明の化粧料は、レシチンが安定に配合されたスキンケア化粧料とするのに適している。その形態は特に限定されないが、例えば、ローション、乳液、化粧水、美容液等の形態で提供することができる。
【実施例】
【0049】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの記載により何ら限定されるものではない。なお、配合量は特記しない限り質量%を意味する。
【0050】
(A)化粧料基剤
下記の表1に示す処方でレシチンとオリザノールとの複合体を含むリポソーム分散液(化粧料基剤)を調製した。調製には100Mpa・sの高圧乳化(2回)を実施した。得られたリポソーム分散液のリポソーム粒径分布を測定した。
【0051】
【0052】
表1に示すように、リポソーム構成成分(水添レシチン-オリザノール複合体)の配合量と水性媒体(水+多価アルコールを含む)の配合量の比率が1:99~1:32となる範囲内では、モード径が100nm以下であり、かつd90径が200nm以下となるリポソーム分散液(基剤)が得られた。実施例1~3のいずれでも、レシチンが析出することなく安定に保持された。但し、同じ条件下で調製した場合、リポソーム濃度を増加させると、リポソーム粒子の微小化及び均一化が促進される傾向が見られた。
【0053】
下記の表2に記載の組成物に5回の高圧乳化を実施して、化粧料基剤(実施例4)を調製した。
【0054】
【0055】
上記の実施例4の基剤をリポソームパーツ(A)とし、下記の表3に掲げる組成で別途調製したマイクロエマルジョン(B)と組み合わせて配合した化粧料を調製した。得られた各例の化粧料について、外観、使用性等を以下の基準に従って評価した。
A+:最も優れている
A:非常に優れている
B:優れている
C:普通
D:劣っている
【0056】
【0057】
表3に示すように、本発明の基剤をリポソームパーツ(A)とし、マイクロエマルジョンパーツ(B)と組み合わせて配合した実施例5は、評価した全ての項目で優れているとの結果が得られた。また、実施例5のマイクロエマルジョンパーツ(B)からグリセリンを除去した実施例6は、ぬめりのなさが更に向上した。これらに対して、レシチンを含有するリポソームパーツ(A)を配合しない比較例1は、きしみのなさやべたつきのなさ及び塗布したときのやわらかさに欠けていた。また、比較例1のマイクロエマルジョンパーツ(B)におけるPEG/PPG-ジアルキルエーテルの配合量を増量した比較例2では、きしみのなさやべたつきのなさ及び塗布したときのやわらかさに関しては改善がみられたが、浸透感やぬめりのなさが低下した。
【0058】
以下に、本発明の化粧料の別の処方例を挙げる。
処方例1:化粧料
配合成分 配合量(質量%)
(A)リポソームパーツ
実施例4 10
(B)マイクロエマルジョンパーツ
グリセリン 8.25
ジグリセリン 3
ジプロピレングリコール 9
1,3-ブチレングリコール 1
PEG/PPG-14/7ジメチルエーテル 1.5
ポリアクリル酸Na 0.02
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 1.0
ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2 0.5
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 1.0
イソステアリルアルコール 0.5
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
緩衝剤 適量
キレート剤 適量
フェノキシエタノール 適量
イオン交換水 残余
合計 100
【0059】
処方例2:半透明化粧水
配合成分 配合量(質量%)
(A)リポソームパーツ
実施例4 1
(B)マイクロエマルジョンパーツ
エタノール 5
グリセリン 5
ジプロピレングリコール 7
1,3-ブチレングリコール 5
エリスリトール 1
キシリトール 1
PEG/PPG-17/4ジメチルエーテル 3
POE(30)フィトステロール 0.15
セスキオレイン酸ソルビタン 0.05
イソステアリルアルコール 0.5
α-オレフィンオリゴマー 0.1
キサンタンガム 0.1
クエン酸 適量
クエン酸ナトリウム 適量
メタリン酸ナトリウム 適量
フェノキシエタノール 適量
香料 適量
イオン交換水 残余
合計 100
【0060】
処方例3:半透明化粧水
配合成分 配合量(質量%)
(A)リポソームパーツ
実施例4 1
(B)マイクロエマルジョンパーツ
グリセリン 10
ジプロピレングリコール 7
1,3-ブチレングリコール 5
POE(10)メチルグルコシド 2
エリスリトール 1
PEG-400 1
PEG/PPG-14/7ジメチルエーテル 1
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.2
ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2 0.1
イソステアリルアルコール 0.3
ヒドロキシエチルセルロース 0.1
クエン酸 適量
クエン酸ナトリウム 適量
エデト酸2ナトリウム 適量
フェノキシエタノール 適量
香料 適量
イオン交換水 残余
合計 100
【0061】
処方例4:美白用半透明化粧水
配合成分 配合量(質量%)
(A)リポソームパーツ
実施例4 1
(B)マイクロエマルジョンパーツ
エタノール 7
グリセリン 4
ジプロピレングリコール 5
1,3-ブチレングリコール 3
POE(10)メチルグルコシド 1
PEG-20 1
PEG/PPG-14/7ジメチルエーテル 1
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.2
ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2 0.1
イソステアリルアルコール 0.2
イソステアリン酸 0.1
α-オレフィンオリゴマー 0.1
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
酢酸トコフェロール 0.1
トラネキサム酸 2
オウゴンエキス 0.1
ジオウエキス 0.1
ユキノシタエキス 0.1
オドリコソウエキス 0.1
クエン酸 適量
クエン酸ナトリウム 適量
エデト酸3ナトリウム 適量
フェノキシエタノール 適量
香料 適量
イオン交換水 残余
合計 100
【0062】
処方例5:美白用半透明化粧水
配合成分 配合量(質量%)
(A)リポソームパーツ
実施例4 1
(B)マイクロエマルジョンパーツ
エタノール 8
グリセリン 3
ジプロピレングリコール 5
1,3-ブチレングリコール 3
POE(10)メチルグルコシド 1
PEG-20 1
PEG/PPG-14/7ジメチルエーテル 1
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.2
ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2 0.1
イソステアリルアルコール 0.2
イソステアリン酸 0.1
α-オレフィンオリゴマー 0.1
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
アスコルビン酸グルコシド 2
塩酸アルギニン 0.1
水酸化カリウム 0.4
オウゴンエキス 0.1
ジオウエキス 0.1
ユキノシタエキス 0.1
オドリコソウエキス 0.1
クエン酸 適量
クエン酸ナトリウム 適量
エデト酸2ナトリウム 適量
パラベン 適量
香料 適量
イオン交換水 残余
合計 100
【0063】
処方例6:化粧水
配合成分 配合量(質量%)
(A)リポソームパーツ
実施例4 1
(B)マイクロエマルジョンパーツ
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.2
ジイソステアリン酸ポリグリセル-2 0.2
トリエチルヘキサノイン 0.1
メチルグルセス-10 0.5
1,3-ブチレングリコール 6
カルボキシビニルポリマー 0.01
フェノキシエタノール 0.3
3-エトキシサリチル酸ナトリウム 1
ミシマサイコ根抽出物 0.1
エタノール 5
グリセリン 5
香料 適量
イオン交換水 残余
合計 100
【0064】
処方例7:美白用白濁化粧水
配合成分 配合量(質量%)
(A)リポソームパーツ
実施例4 1
(B)マイクロエマルジョンパーツ
イソステアリン酸 0.3
スクワラン 0.1
オクタン酸セチル 0.1
ベヘニルアルコール 0.1
ステアリルアルコール 0.05
ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル 0.1
セスキイソステアリン酸ソルビタン 0.03
1,3-ブチレングリコール 0.6
ステアロイルメチルタウリンナトリウム 0.05
クエン酸 0.005
クエン酸ナトリウム 0.045
エデト酸ナトリウム 0.01
イノシトール 0.5
ビタミンCエチル 1.0
イオン交換水 残余
合計 100