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  • 特許-光湿気硬化性樹脂組成物、及び硬化体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】光湿気硬化性樹脂組成物、及び硬化体
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/30 20060101AFI20240410BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20240410BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20240410BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240410BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20240410BHJP
   C09J 175/04 20060101ALN20240410BHJP
   C09J 4/06 20060101ALN20240410BHJP
【FI】
C08G18/30 070
C08G18/10
C08G18/08 038
C08F2/44 C
C08F2/50
C09J175/04
C09J4/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020566484
(86)(22)【出願日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 JP2020001369
(87)【国際公開番号】W WO2020149379
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2019007381
(32)【優先日】2019-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019012366
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019143266
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】塩島 元美
(72)【発明者】
【氏名】河田 晋治
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/056717(WO,A1)
【文献】特開2013-018853(JP,A)
【文献】特開2008-133326(JP,A)
【文献】国際公開第2017/164200(WO,A1)
【文献】特開2009-197053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18/00- 18/87
C08F 2/00- 2/60
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合性化合物と、湿気硬化性樹脂と、光重合開始剤とを含み、
前記ラジカル重合性化合物と前記湿気硬化性樹脂とのFedors法により算出したSP値差が、1.0以下であり、かつ前記ラジカル重合性化合物のFedors法により算出したSP値が9.5以上である、光湿気硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記湿気硬化性樹脂のFedors法により算出したSP値が9.5以上である、請求項1に記載の光湿気硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記湿気硬化性樹脂が、ポリカーボネート骨格を有する化合物、又はポリエステル骨格を有する化合物のいずれかを含む、請求項1又は2に記載の光湿気硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記湿気硬化性樹脂が、湿気硬化性ウレタン樹脂を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の光湿気硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ラジカル重合性化合物が、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含有する請求項1~4のいずれか1項に記載の光湿気硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記湿気硬化性樹脂に対する前記ラジカル重合性化合物の質量比(ラジカル重合性化合物/湿気硬化性樹脂)が、20/80以上90/10以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の光湿気硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記ラジカル重合性化合物と前記湿気硬化性樹脂とのFedors法により算出したSP値差が0.6以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の光湿気硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物の硬化体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光湿気硬化性樹脂組成物、及びその硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体チップ等の電子部品では、高集積化、小型化が要求されており、例えば、接着剤層を介して複数の薄い半導体チップを接合して半導体チップの積層体とすることがある。また、各種表示素子付きモバイル機器が普及している現代において、表示素子の小型化の手法として、画像表示部を狭額縁化することが行われている(以下、「狭額縁設計」ともいう)。狭額縁設計においては、ディスペンサーなどを用いて細い線幅とした接着剤により接着する技術が要求される。
【0003】
半導体チップの積層体は、例えば、一方の半導体チップ上に接着剤を塗布した後、光照射により半硬化し、その半硬化物を介して他方の半導体チップを積層し半導体チップ間を仮接着し、その後、接着剤を全硬化させ、チップ間を本接着する方法等により製造されることがある。同様に、狭額縁設計でも、塗布した接着剤で仮接着した後に本接着させる方法が検討されている。半導体チップの積層用途、狭額縁設計用途における接着剤としては、光湿気硬化性樹脂組成物の使用が検討されている。
【0004】
光湿気硬化性樹脂組成物は、一般的に、ラジカル重合性化合物、湿気硬化性ウレタン樹脂又は加水分解性シリル基含有樹脂を含むことが知られている。光湿気硬化性樹脂組成物では、塗布後の樹脂だれを防止するために揺変性付与剤が配合されることや、接着性などを向上させるために、1分子中に加水分解性シリル基を2個以上有する変成シリコーン樹脂を配合することなどが知られている(特許文献1、2参照)。
また、光湿気硬化性樹脂組成物としては、特許文献3に開示されるように、架橋性ケイ素基含有有機重合体と、光塩基発生剤と、フッ素系化合物と、1分子中に1個を超える(メタ)アクリロイル基を有する多官能化合物とを備える光湿気硬化性樹脂組成物なども知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-18621号公報
【文献】特開2018-2925号公報
【文献】国際公開2016/104787号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体チップの積層用途、狭額縁設計用途などで使用される光湿気硬化性樹脂組成物は、上記したように、本接着する前に被着体を仮接着することが多い。そのため、光硬化後に一定時間経過して湿気硬化が十分に進行した際の本接着時の接着力のみならず、光硬化直後の半硬化時におけるいわゆる初期接着力も高くすることが望まれている。しかし、従来の光湿気硬化性樹脂組成物は、本接着時の接着力を向上させつつ、初期接着力も一定値以上にすることは困難なことが多い。
【0007】
そこで、本発明は、光硬化直後の初期接着力を一定値以上にできる光湿気硬化性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、光湿気硬化性樹脂組成物に含有される、ラジカル重合性化合物と湿気硬化性樹脂とのSP値を一定値以下とすることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の[1]~[7]を提供する。
[1]ラジカル重合性化合物と、湿気硬化性樹脂と、光重合開始剤とを含み、
前記ラジカル重合性化合物と前記湿気硬化性樹脂とのSP値差が、1.0以下である光湿気硬化性樹脂組成物。
[2]前記湿気硬化性樹脂のSP値が9.5以上である、上記[1]に記載の光湿気硬化性樹脂組成物。
[3]前記湿気硬化性樹脂が、ポリカーボネート骨格を有する化合物、又はポリエステル骨格を有する化合物のいずれかを含む、上記[1]又は[2]に記載の光湿気硬化性樹脂組成物。
[4]前記湿気硬化性樹脂が、湿気硬化性ウレタン樹脂を含む、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の光湿気硬化性樹脂組成物。
[5]前記ラジカル重合性化合物が、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含有する上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の光湿気硬化性樹脂組成物。
[6]前記湿気硬化性樹脂に対する前記ラジカル重合性化合物の質量比(ラジカル重合性化合物/湿気硬化性樹脂)が、20/80以上90/10以下である、[1]~[5]のいずれか1項に記載の光湿気硬化性樹脂組成物。
[7]上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物の硬化体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光硬化直後の初期接着力を一定値以上にできる光湿気硬化性樹脂組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】接着性試験方法を示す概略図であり、図1(a)が平面図、図1(b)が側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
<硬化性樹脂組成物>
本発明の硬化性樹脂組成物は、ラジカル重合性化合物と、湿気硬化性樹脂と、光重合開始剤とを含み、ラジカル重合性化合物と湿気硬化性樹脂とのSP値差が、1.0以下である。
本発明では、SP値差を1.0以下とすることで、光湿気硬化性樹脂組成物の光硬化直後の初期接着力を向上させることができる。その原理は定かではないが以下のように推定される。SP値差を1.0以下とすると、ラジカル重合性化合物と湿気硬化性樹脂の相溶性が優れたものとなる。そのため、光硬化後の硬化性樹脂組成物において、未硬化の湿気硬化性樹脂が、被着体との界面に浸み出すいわゆるブリードアウトが抑制され、初期接着力が向上すると推定される。
【0012】
一方で、ラジカル重合性化合物と湿気硬化性樹脂とのSP値差が1.0より大きくなると、ラジカル重合性化合物と湿気硬化性樹脂の相溶性が低下して、ブリードアウトが抑制できないと推定され、初期接着力を十分に向上させることができない。
ラジカル重合性化合物と湿気硬化性樹脂とのSP値差は、ブリードアウトを抑制して、初期接着力を向上させる観点から、0.8以下が好ましく、0.6以下がより好ましい。また、上記SP値差は、小さければ小さいほどよく、0以上であればよいが、通常は一定の差が生じるので、実用的には0.01以上などになる。
【0013】
本発明において、湿気硬化性樹脂のSP値は9.5以上であることが好ましい。湿気硬化性樹脂のSP値を9.5以上とすると、ラジカル重合性化合物とのSP値の差を小さくしやすくなる。そのような観点から、湿気硬化性樹脂のSP値は、10.0以上であることがより好ましい。
また、湿気硬化性樹脂のSP値は、12.0以下が好ましく、11.5以下がより好ましく、11.0以下がさらに好ましい。湿気硬化性樹脂のSP値をこれら上限値以下とすると、ラジカル重合性化合物とのSP値差を小さくしつつ、硬化性能を十分に確保できる。また、SP値を上記範囲内とすることで、被着体に対する接着性なども良好となる。
【0014】
一方で、ラジカル重合性化合物のSP値は、好ましく9.0以上、より好ましくは9.5以上であり、また、12.0以下が好ましく、11.5以下がより好ましく、11.0以下がさらに好ましい。ラジカル重合性化合物のSP値をこれら範囲内とすることで、湿気硬化性樹脂とのSP値差を小さくしつつ、硬化性能、被着体に対する接着性なども良好にしやすくなる。
【0015】
なお、本発明において、ラジカル重合性化合物及び湿気硬化性樹脂のSP値は、Fedors法により算出したものであり、各成分が複数種から構成されるブレンド物である場合には、各構成成分のSP値を各構成割合(質量%)で比例配分して加重平均で算出する。また、SP値差は、ラジカル重合性化合物のSP値から湿気硬化性樹脂のSP値を引いたものを絶対値で表したものである。なお、SP値の単位は(cal/cm31/2である。
【0016】
本発明の光湿気硬化性樹脂組成物は、初期接着力が0.3MPa以上であることが好ましい。また、本発明の光湿気硬化性樹脂組成物は、光硬化24時間後の接着力が2.0MPa以上であることが好ましい。
なお、初期接着力とは、光湿気硬化性樹脂組成物を光硬化した後の25℃における接着力を意味する。また、光硬化24時間後の接着力とは、光湿気硬化性樹脂組成物を光硬化し、24時間経過した後の接着力を意味する。初期接着力及び光硬化24時間後の接着力の測定方法の詳細は後述する実施例で記載するとおりである。
光湿気硬化性樹脂組成物は、25℃における初期接着力が0.3MPa以上であると、被着体同士を適切に仮接着できるようになる。また、光硬化24時間後の接着力が2.0MPa以上であると、例えば本接着において被着体同士を強固に接合することができる。
【0017】
光湿気硬化性樹脂組成物は、仮接着時の接着安定性を高めるために、初期接着力が0.8MPa以上であることがより好ましい。また、仮接着時に貼り直しなども容易にできるようにするために、初期接着力は2.0MPa未満が好ましい。
また、光湿気硬化性樹脂組成物は、本接着時に被着体同士をより強固に接合するために、光硬化24時間後の接着力が3.5MPa以上がより好ましく、4.0MPa以上がさらに好ましい。また、光硬化24時間後の接着力は、高ければ高いほどよく特に限定されないが、例えば20MPa以下であり、また、10MPa以下でもよい。
【0018】
以下、光湿気硬化性樹脂組成物に含有される各成分についてより詳細に説明する。
[ラジカル重合性化合物]
本発明の光湿気硬化性樹脂組成物は、ラジカル重合性化合物を含有する。光湿気硬化性樹脂組成物は、ラジカル重合性化合物を含有することで光硬化性が付与される。光湿気硬化性樹脂組成物は、光硬化性を有することで、光照射するだけで一定の接着力が付与できるので、上記した初期接着力を確保しやすくなる。
ラジカル重合性化合物としては、分子中にラジカル重合性官能基を有すればよい。ラジカル重合性官能基としては不飽和二重結合を有する化合物が好適であり、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基などが挙げられる。
【0019】
上記したもの中では、接着性の観点、及びSP値を上記した範囲内としやすくする観点から、(メタ)アクリロイル基が好適であり、すなわち、ラジカル重合性化合物は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含有することが好ましい。なお、(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、以下、「(メタ)アクリル化合物」ともいう。
(メタ)アクリル化合物の含有量は、ラジカル重合性化合物全量基準で、50質量%以上が好ましく、55質量%以上が好ましく、60質量%以上がさらに好ましい。また、上限値は、特に限定されないが、100質量%である。
【0020】
ラジカル重合性化合物は、1分子中に1つのラジカル重合性官能基を有する単官能化合物、1分子中に2以上のラジカル重合性官能基を有する多官能化合物の一方又は両方を含んでもよいが、光湿気硬化性樹脂組成物の初期接着力を向上させる観点から、多官能化合物の量は少ない方が好ましい。具体的には、ラジカル重合性化合物全量基準における多官能化合物の含有量は25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましく、0質量%、すなわち多官能化合物を含有しないことも好ましい。
【0021】
(窒素含有化合物)
本発明のラジカル重合性化合物は、窒素含有化合物を含むことが好ましい。窒素含有化合物を用いることにより、光湿気硬化性樹脂組成物の初期接着力が良好になる。光湿気硬化性樹脂組成物は、被着体に塗布した後、紫外線などの活性エネルギー線を照射して光硬化されるが、その際、一般的には後述するように酸素存在下で光硬化されることが多い。ラジカル重合性化合物が窒素含有化合物を含有すると、酸素存在下でも適切に光硬化され、それにより、初期接着力が良好になると推定される。
窒素含有化合物は、窒素原子及びラジカル重合性官能基を有する化合物であればよく、(メタ)アクリル化合物でもよいし、(メタ)アクリル化合物以外の化合物でもよい。また、窒素含有化合物は、1つのラジカル重合性官能基を有する単官能であってもよいし、2以上のラジカル重合性官能基を有する多官能であってもよい。ただし、光湿気硬化性樹脂組成物は、初期接着力を高める観点から、上記のように多官能化合物の含有量が少ないほうがよく、ラジカル重合性化合物全量基準における多官能化合物が上記範囲内となるように調整されるとよい。
【0022】
窒素含有化合物は、鎖状の窒素含有化合物及び環状構造を有する窒素含有化合物の一方又は両方を含有してもよいが、光湿気硬化性樹脂組成物の初期接着力を良好とする観点から、環状構造を有する窒素含有化合物を含むことが好ましく、鎖状の窒素含有化合物と、環状構造を有する窒素含有化合物を併用することがより好ましい。
【0023】
環状構造を有する窒素含有化合物としては、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタムなどのラクタム構造を有する窒素含有化合物、N-アクリロイルモルホリンなどのモルホリン骨格含有化合物、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等の環状イミド化合物などが挙げられる。これらの中では、具体的にはN-ビニルカプロラクタム、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドなどのアミド基又はイミド基含有化合物がより好ましく、N-ビニルカプロラクタムなどのアミド基含有化合物がさらに好ましい。
【0024】
鎖状の窒素含有化合物としては、例えば、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ(メタ)アクリレート、アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の鎖状のアミノ基含有(メタ)アクリレート、ジアセトンアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等の鎖状の(メタ)アクリルアミド化合物、N-ビニルアセトアミドなどが挙げられる。
【0025】
また、鎖状の窒素含有化合物としては、ウレタン(メタ)アクリレートであってもよい。ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、イソシアネート化合物に、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を、反応させたものを使用することができる。ここで、イソシアネート化合物と(メタ)アクリル酸誘導体の反応には、触媒として触媒量のスズ系化合物などを使用するとよい。ウレタン(メタ)アクリレートは、単官能でも、2官能などの多官能でもよいが、上記のとおり単官能が好ましい。
【0026】
上記水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ポリエチレングリコール等の二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレートや、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等の三価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート又はジ(メタ)アクリレートや、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
ウレタン(メタ)アクリレートを得るために使用するイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート等のポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0028】
また、イソシアネート化合物としては、ポリオールと過剰のイソシアネート化合物との反応により得られる鎖延長されたポリイソシアネート化合物も使用することができる。ここで、ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールプロパン、カーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。
これらポリイソシアネート化合物を使用することで、多官能のウレタン(メタ)アクリレートを得ることができる。
【0029】
ウレタン(メタ)アクリレートを得るために使用するイソシアネート化合物としては、ブタンイソシアネート、ヘキサンイソシアネート、デカンイソシアネートなどのアルカンモノイソシアネート、シクロペンタンイソシアネート、シクロヘキサンイソシアネート、イソホロンモノイソシアネートなどの環状脂肪族モノイソシアネートなどの脂肪族モノイソシアネートが挙げられる。これらモノイソシアネート化合物を使用することで、単官能のウレタン(メタ)アクリレートを得ることができる。
単官能のウレタン(メタ)アクリレートは、より具体的には、上記したモノイソシアネート化合物と、二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレートとを反応して得られたウレタン(メタ)アクリレートが好ましく、その好適な具体例としては、1,2-エタンジオール1-アクリラート2-(N-ブチルカルバマート)が挙げられる。
【0030】
上記ウレタン(メタ)アクリレートのうち市販されているものとしては、例えば、M-1100、M-1200、M-1210、M-1600(いずれも東亞合成社製)、EBECRYL230、EBECRYL270、EBECRYL8402、EBECRYL8411、EBECRYL8412、EBECRYL8413、EBECRYL8804、EBECRYL8803、EBECRYL8807、EBECRYL9270、EBECRYL210、EBECRYL4827、EBECRYL6700、EBECRYL220、EBECRYL2220(いずれもダイセル・オルネクス社製)、アートレジンUN-9000H、アートレジンUN-9000A、アートレジンUN-7100、アートレジンUN-1255、アートレジンUN-330、アートレジンUN-3320HB、アートレジンUN-1200TPK、アートレジンSH-500B(いずれも根上工業社製)、U-2HA、U-2PHA、U-3HA、U-4HA、U-6H、U-6LPA、U-6HA、U-10H、U-15HA、U-122A、U-122P、U-108、U-108A、U-324A、U-340A、U-340P、U-1084A、U-2061BA、UA-340P、UA-4100、UA-4000、UA-4200、UA-4400、UA-5201P、UA-7100、UA-7200、UA-W2A(いずれも新中村化学工業社製)、AI-600、AH-600、AT-600、UA-101I、UA-101T、UA-306H、UA-306I、UA-306T(いずれも共栄社化学株式会社製)、CN-902、CN-973、CN-9021、CN-9782、CN-9833(いずれもアルケマ社製)、ビスコート#216(大阪有機化学工業株式会社)等が挙げられる。
【0031】
鎖状の窒素含有化合物は、上記のなかでは、ウレタン(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートは上記のとおり単官能が好ましいが、単官能に加えて2官能などの多官能のウレタン(メタ)アクリレートを有していてもよい。
【0032】
ラジカル重合性化合物全量基準における窒素含有化合物の含有量は、湿気硬化性樹脂組成物の初期接着力を良好とする観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、最も好ましくは60質量%以上である。また、窒素含有化合物の上記含有量は、100質量%以下であればよいが、窒素含有化合物以外のラジカル重合性化合物を適切な量含有させるために、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下ある。
【0033】
鎖状の窒素含有化合物と、環状構造を有する窒素含有化合物を併用する場合、光湿気硬化性樹脂組成物の初期接着力を良好とする観点から、鎖状の窒素含有化合物に対する環状構造を有する窒素含有化合物の質量比(環状/鎖状)は、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.4以上がさらに好ましい。また、鎖状の窒素含有化合物に対する環状構造を有する窒素含有化合物の質量比(環状/鎖状)は、上記同様の観点から、2.0以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1.2以下がさらに好ましい。
【0034】
(窒素含有化合物以外のラジカル重合性化合物)
本発明のラジカル重合性化合物は、上記した窒素含有化合物以外の化合物(以下、窒素非含有化合物ともいう)を含むことが好ましい。
窒素非含有化合物は、ラジカル重合性官能基を1つ有する単官能化合物でもよいし、ラジカル重合性官能基を2つ以上有する多官能化合物であってもよいし、これらの両方を含んでもよいが、光湿気硬化性樹脂組成物の初期接着力を高める観点から、多官能化合物は少ない方が好ましく、含有しないことがより好ましい。具体的には、上記したとおり、ラジカル重合性化合物全量基準における多官能化合物の含有量を上記した範囲内に調整するとよい。
【0035】
窒素非含有化合物としては、ラジカル重合性官能基を有する化合物であれば特に制限されないが、(メタ)アクリル化合物が好ましく、中でも(メタ)アクリル酸エステル化合物が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル化合物は、上記のとおり、単官能、多官能のいずれでもよいが、単官能が好ましい。多官能は2官能でもよいが、3官能以上でもよい。
単官能の(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、アルキル(メタ)アクリレート、脂環構造含有(メタ)アクリレート、芳香環含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0036】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなど、アルキル基の炭素数が1~18のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
脂環構造含有(メタ)アクリレートとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の脂環式構造を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
芳香環含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、2-フェニルエチル(メタ)アクリレート等のフェニルアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のフェノキシアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0037】
また、単官能の(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、環状エーテル基含有(メタ)アクリレートを使用してもよい。環状エーテル基含有(メタ)アクリレートとしては、エポキシ環、オキセタン環、テトラヒドロフラン環、ジオキソラン環、ジオキサン環などを有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
エポキシ環含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。オキセタン環含有(メタ)アクリレートとしては、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレートが挙げられる。テトラヒドロフラン環含有(メタ)アクリレートとしては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアルコールの(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。テトラヒドロフルフリルアルコールの(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸の多量体エステル(例えば、分子量150~550程度)であってもよい。ジオキソラン環含有(メタ)アクリレートとしては、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2,2-シクロヘキシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ジオキサン環を有する(メタ)アクリレートとしては、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0038】
また、単官能の(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのアルコキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリオキシエチレン系(メタ)アクリレートなども挙げられる。
また、単官能の(メタ)アクリル化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル含有(メタ)アクリル化合物などを使用してもよい。
【0039】
2官能の(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えば、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエーテルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
また、3官能以上の(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
窒素非含有化合物は、上記したとおり単官能が好ましく、また、アクリル(メタ)アクリレート、脂環構造含有(メタ)アクリレート、芳香環含有(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。また、これらに加えて、さらに、接着力を向上させる観点から、オキセタン環含有(メタ)アクリレートなどの環状エーテル基含有(メタ)アクリレートを含むことも好ましい。
【0042】
ラジカル重合性化合物全量基準における窒素非含有化合物の含有量は、0質量%以上であればよいが、光湿気硬化性樹脂組成物の初期接着力を良好とする観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。そして好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは50質量%以下であり、最も好ましくは40質量%以下である。
【0043】
光湿気硬化性樹脂組成物におけるラジカル重合性化合物の含有量は、光湿気硬化性樹脂組成物全量基準で、20質量%以上が好ましい。ラジカル重合性化合物を20質量%以上とすると、光湿気硬化性樹脂組成物に適切な光硬化性を付与でき、初期接着力が良好となる。これら観点から、ラジカル重合性化合物の上記含有量は、30質量%以上がより好ましく、55質量%以上がさらに好ましい。
また、ラジカル重合性化合物の含有量は、光湿気硬化性樹脂組成物全量基準で、80質量%以下が好ましい。ラジカル重合性化合物を80質量%以下とすると、光湿気硬化性樹脂組成物に湿気硬化性樹脂を一定量以上含有させることが可能になり、適切な湿気硬化性を付与しやすくなる。そのような観点から、ラジカル重合性化合物の上記含有量は、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。
【0044】
[湿気硬化性樹脂]
本発明の光湿気硬化性樹脂組成物は、湿気硬化性樹脂を含有し、それにより、湿気硬化性が付与される。湿気硬化性を有すると、硬化性樹脂組成物を加熱しなくても硬化できるため、硬化性樹脂組成物を硬化するとき、接着部または接着部周辺の電子部品などの被着体が加熱により損傷などすることを防止できる。また、湿気硬化性であることで硬化したときの接着性を高めやすくなり、光硬化24時間後の接着力を上記したように高めやすくなる。
【0045】
本発明で使用する湿気硬化性樹脂としては、例えば、湿気硬化性ウレタン樹脂、加水分解性シリル基含有樹脂等が挙げられ、なかでも、湿気硬化性ウレタン樹脂が好ましい。
また、湿気硬化性樹脂は、ポリカーボネート骨格を有する化合物又はポリエステル骨格を有する化合物のいずれかを含むことが好ましい。これらのいずれかを有することで、湿気硬化性樹脂は、SP値が上記した所望の範囲内となり、ラジカル重合性化合物のSP値との差を小さくしやすくなる。湿気硬化性樹脂は、ポリカーボネート骨格を有する化合物及びポリエステル骨格を有する化合物の両方が使用されてもよいが、いずれか一方が使用されることが好ましい。
また、湿気硬化性樹脂においては、例えば、ウレタン樹脂を構成するポリオール化合物に後述するようにポリカーボネートポリオール又はポリエステルポリオールを使用することで、湿気硬化性樹脂にポリカーボネート骨格又はポリエステル骨格を導入することができる。
【0046】
(湿気硬化性ウレタン樹脂)
湿気硬化性ウレタン樹脂は、イソシアネート基を有する。湿気硬化性ウレタン樹脂は、分子内のイソシアネート基が空気中又は被着体中の水分と反応して硬化する。湿気硬化性ウレタン樹脂は、1分子中にイソシアネート基を1個のみ有していてもよいし、2個以上有していてもよい。なかでも、分子の主鎖両末端にイソシアネート基を有することが好ましい。
【0047】
湿気硬化性ウレタン樹脂は、1分子中に2個以上の水酸基を有するポリオール化合物と、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを反応させることにより得ることができる。
上記ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応は、通常、ポリオール化合物中の水酸基(OH)とポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基(NCO)のモル比で[NCO]/[OH]=2.0~2.5の範囲で行われる。
【0048】
湿気硬化性ウレタン樹脂の原料となるポリオール化合物としては、ポリウレタンの製造に通常用いられている公知のポリオール化合物を使用することができ、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリアルキレンポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。これらのポリオール化合物は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
これらの中では、上記のとおり、ラジカル重合性化合物とのSP値差を小さくする観点からは、ポリエステルポリオール又はポリカーボネートポリオールを使用することが好ましい。また、これらの中では、ポリカーボネートポリオールが好ましい。ポリカーボネートポリオールを使用することで、硬化物の耐候性、耐熱性、耐湿性などに優れた光湿気硬化性樹脂組成物を提供できる。
【0049】
上記ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価カルボン酸とポリオールとの反応により得られるポリエステルポリオール、ε-カプロラクトンを開環重合して得られるポリ-ε-カプロラクトンジオール等のポリカプロラクトンポリオールが挙げられる。
ポリエステルポリオールの原料となる上記多価カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5-ナフタル酸、2,6-ナフタル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸、ドデカメチレンジカルボン酸等が挙げられる。
ポリエステルポリオールの原料となるポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール等が挙げられる。
【0050】
ポリカーボネートポリオールとしては、ポリカーボネートジオールが好ましく、ポリカーボネートジオールの好ましい具体例としては、以下の式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0051】
【化1】

式(1)においてRは炭素数4~16の二価の炭価水素基、nは1~500の整数である。
【0052】
式(1)において、Rは、好ましくは脂肪族飽和炭化水素基である。Rが脂肪族飽和炭化水素基であることで、耐熱性が良好になりやすくなる。また、熱劣化などにより黄変等も生じにくくなり耐候性も良好となる。脂肪族飽和炭化水素基からなるRは、鎖状構造又は環状構造を有していてもよいが、応力緩和性や柔軟性を良好にしやすい観点から、鎖状構造を有することが好ましい。また、鎖状構造のRは直鎖状又は分岐状のいずれでもよい。
nは5~200であることが好ましく、10~150であることがより好ましく、20~50であることがさらに好ましい。
また、湿気硬化性ウレタン樹脂(a1)を構成するポリカーボネートポリオールに含まれるRは、1種単独で使用してよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上併用する場合には、少なくとも一部が炭素数6以上の鎖状の脂肪族飽和炭化水素基であることが好ましく、より好ましくは少なくとも一部が炭素数7以上の鎖状の脂肪族飽和炭化水素基であることが好ましい。
炭素数7以上の鎖状の脂肪族飽和炭化水素基を含むことで、応力緩和性や柔軟性を良好にしやすくなる。ポリカーボネートジオールが上記式(1)で表される化合物である場合、炭素数7以上の鎖状の脂肪族飽和炭化水素基の割合は、全ポリカーボネートジオールに含まれるRに対して、20モル%以上100モル%以下が好ましく、30%以上100モル%以下がより好ましく、50%以上100モル%以下がさらに好ましい。
炭素数7以上の鎖状の脂肪族飽和炭化水素基は、好ましくは炭素数8以上12以下であり、さらに好ましくは炭素数8以上10以下である。
Rの具体例としては、テトラメチレン基、ペンチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基などの直鎖状であってもよいし、例えば3-メチルペンチレン基などのメチルペンチレン基、メチルオクタメチレン基などの分岐状であってもよい。1分子中における複数のRは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。したがって、一分子中に2種類以上のRを含んでもよく、その場合、好ましくは一分子中に2種又は3種のRを含む。例えば、ポリカーボネートポリオールは、1分子中に炭素数6以下のRと、炭素数7以上のRを含有する共重合体であってもよく、この場合、いずれのRも鎖状の脂肪族飽和炭化水素基であるとよい。
また、Rは直鎖状の脂肪族飽和炭化水素基を含んでもよいし、分岐状の脂肪族飽和炭化水素基を含んでもよい。ポリカーボネートポリオールにおけるRは分岐状と直鎖状のRが併用されていてもよいし、直鎖状のRが単独で使用されていてもよい。
なお、ポリカーボネートポリオールは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
湿気硬化性ウレタン樹脂の原料となるポリイソシアネート化合物としては、芳香族ポリイソシアネート化合物、脂肪族ポリイソシアネート化合物が好適に用いられる。
芳香族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートの液状変性物、ポリメリックMDI、トリレンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物としては、なかでも、全硬化後の接着力を高くできる観点からは、芳香族ポリイソシアネート化合物が好ましく、中でもジフェニルメタンジイソシアネート及びその変性物がより好ましい。また、光湿気硬化性樹脂組成物の硬化物に、応力緩和性、柔軟性などを付与しやすくする観点からは、脂肪族ポリイソシアネート化合物が好ましい。
ポリイソシアネート化合物は、単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0054】
(加水分解性シリル基含有樹脂)
本発明で使用する加水分解性シリル基含有樹脂は、分子内の加水分解性シリル基が空気中又は被着体中の水分と反応して硬化する。
加水分解性シリル基含有樹脂は、1分子中に加水分解性シリル基を1個のみ有していてもよいし、2個以上有していてもよい。なかでも、分子の主鎖両末端に加水分解性シリル基を有することが好ましい。なお、上記加水分解性シリル基含有樹脂として、イソシアネート基を有するものを含まない。
【0055】
加水分解性シリル基は、下記式(2)で表される。
【化2】

式(2)中、Rは、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数6以上20以下のアリール基、炭素数7以上20以下のアラルキル基、又は、-OSiR (Rは、それぞれ独立に、炭素数1以上20以下の炭化水素基である)で示されるトリオルガノシロキシ基である。また、式(2)中、Xは、それぞれ独立に、ヒドロキシ基又は加水分解性基である。さらに、式(2)中、aは、1~3の整数である。
【0056】
上記加水分解性基は特に限定されず、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基等が挙げられる。なかでも、活性が高いことから、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基が好ましい。また、加水分解性が穏やかで取扱いやすいことから、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基がさらに好ましい。また、安全性の観点からは、反応により脱離する化合物がそれぞれエタノール、アセトンである、エトキシ基、イソプロペノキシ基が好ましい。
【0057】
上記ヒドロキシ基又は上記加水分解性基は、1個のケイ素原子に対して、1~3個の範囲で結合することができる。上記ヒドロキシ基又は上記加水分解性基が1個のケイ素原子に対して2個以上結合する場合には、それらの基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0058】
上記式(2)におけるaは、硬化性の観点から、2又は3であることが好ましく、3であることが特に好ましい。また、保存安定性の観点からは、aは、2であることが好ましい。
また、上記式(2)におけるRとしては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基、トリメチルシロキシ基、クロロメチル基、メトキシメチル基等があげられる。なかでも、メチル基が好ましい。
【0059】
上記加水分解性シリル基としては、例えば、メチルジメトキシシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリス(2-プロペニルオキシ)シリル基、トリアセトキシシリル基、(クロロメチル)ジメトキシシリル基、(クロロメチル)ジエトキシシリル基、(ジクロロメチル)ジメトキシシリル基、(1-クロロエチル)ジメトキシシリル基、(1-クロロプロピル)ジメトキシシリル基、(メトキシメチル)ジメトキシシリル基、(メトキシメチル)ジエトキシシリル基、(エトキシメチル)ジメトキシシリル基、(1-メトキシエチル)ジメトキシシリル基、(アミノメチル)ジメトキシシリル基、(N,N-ジメチルアミノメチル)ジメトキシシリル基、(N,N-ジエチルアミノメチル)ジメトキシシリル基、(N,N-ジエチルアミノメチル)ジエトキシシリル基、(N-(2-アミノエチル)アミノメチル)ジメトキシシリル基、(アセトキシメチル)ジメトキシシリル基、(アセトキシメチル)ジエトキシシリル基等が挙げられる。
【0060】
加水分解性シリル基含有樹脂としては、例えば、加水分解性シリル基含有ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
上記加水分解性シリル基含有ポリウレタン樹脂を製造する方法としては、例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させてポリウレタン樹脂を製造する際に、さらに、シランカップリング剤等のシリル基含有化合物を反応させる方法等が挙げられる。具体的には例えば、特開2017-48345号公報に記載されている加水分解性シリル基を有するウレタンオリゴマーの合成方法等が挙げられる。
なお、加水分解性シリル基含有ポリウレタン樹脂に使用されるポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物は、上記した湿気硬化性ウレタン樹脂に使用されるポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物と同様であるので、その説明は省略する。
【0061】
上記シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシ-エトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。なかでも、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランが好ましい。これらのシランカップリング剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0062】
なお、湿気硬化性ウレタン樹脂は、イソシアネート基と加水分解性シリル基の両方を有していてもよい。イソシアネート基と加水分解性シリル基の両方を有する湿気硬化性ウレタン樹脂は、まず、上記した方法にてイソシアネート基を有する湿気硬化性ウレタン樹脂を得て、さらに該湿気硬化性ウレタン樹脂にシランカップリング剤を反応させることで製造することが好ましい。
なお、イソシアネート基を有する湿気硬化性ウレタン樹脂の詳細は上記したとおりである。なお、湿気硬化性に反応させるシランカップリング剤としては、上記で列挙したものから適宜選択して使用すればよいが、イソシアネート基との反応性の観点からアミノ基又はメルカプト基を有するシランカップ剤を使用することが好ましい。好ましい具体的としては、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0063】
さらに、湿気硬化性樹脂は、ラジカル重合性官能基を有していてもよい。湿気硬化性樹脂が有していてもよいラジカル重合性官能基としては、不飽和二重結合を有する基が好ましく、特に反応性の面から(メタ)アクリロイル基がより好ましい。なお、ラジカル重合性官能基を有する湿気硬化性樹脂は、上記したラジカル重合性化合物には含まず、湿気硬化性樹脂として扱う。
湿気硬化性樹脂は、上記した各種の樹脂から適宜選択して1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0064】
湿気硬化性樹脂の重量平均分子量は特に限定されないが、好ましい下限は800、好ましい上限は20,000である。重量平均分子量がこの範囲であると、硬化性組成物の貯蔵弾性率、粘度などを上記した範囲内に調整しやすくなる。
湿気硬化性樹脂の重量平均分子量のより好ましい下限は1,500、より好ましい上限は12,000、さらに好ましい下限は2,000、さらに好ましい上限は8,000である。
なお、本明細書において上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定する際のカラムとしては、Shodex LF-804(昭和電工社製)が挙げられる。また、GPCで用いる溶媒としては、テトラヒドロフランが挙げられる。
【0065】
光湿気硬化性樹脂組成物における湿気硬化性樹脂の含有量は、光湿気硬化性樹脂組成物全量基準で、15質量%以上が好ましい。湿気硬化性樹脂を15質量%以上とすると、湿気硬化性樹脂に適切な湿気硬化性を付与で、光硬化24時間後の接着力を高めやすくなる。これら観点から、光湿気硬化性樹脂の上記含有量は、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上が好ましい。
また、湿気硬化性樹脂の含有量は、光湿気硬化性樹脂組成物全量基準で、75質量%以下が好ましい。光湿気硬化性樹脂を75質量%以下とすると、光湿気硬化性樹脂組成物にラジカル重合性化合物を一定量以上含有させることが可能になり、適切な光硬化性を付与しやすくなる。また、初期接着力も向上させやすくなる。そのような観点から、ラジカル重合性化合物の上記含有量は、60質量%以下がより好ましく、40質量%以下がよりさらに好ましい。
【0066】
光湿気硬化性樹脂組成物において、湿気硬化性樹脂に対するラジカル重合性化合物の質量比(ラジカル重合性化合物/湿気硬化性樹脂)は、20/80以上90/10以下が好ましく、30/70以上80/20以下がより好ましい。質量比がこれら範囲内となることで、光湿気硬化性樹脂組成物にバランスよく、光硬化性と湿気硬化性を付与でき、初期接着力及び光硬化24時間後の接着力のいずれも所望の範囲内に調整しやすくなる。また、初期接着力をより高くする観点からは、ラジカル重合性化合物の含有量が多いほうがよく、具体的には、50/50より大きく80/20以下がさらに好ましく、60/40以上80/20以下がよりさらに好ましい。
【0067】
(光重合開始剤)
本発明の光湿気硬化性樹脂組成物は、さらに光重合開始剤を含有する。硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤を含有することで、光硬化性が適切に付与される。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、チオキサントン等が挙げられる。
上記光重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、IRGACURE184、IRGACURE369、IRGACURE379、IRGACURE379EG、IRGACURE651、IRGACURE784、IRGACURE819、IRGACURE907、IRGACURE2959、IRGACURE OXE01、IRGACURE TPO(いずれもBASF社製)、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル(いずれも東京化成工業社製)等が挙げられる。
【0068】
硬化性樹脂組成物における光重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上10質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上5質量部以下である。光重合開始剤の含有量がこれら範囲内であることにより、得られる硬化性樹脂組成物が光硬化性及び保存安定性に優れたものとなる。また、上記範囲内とすることで、光ラジカル重合化合物が適切に硬化され、接着力を良好にしやすくなる。
【0069】
(湿気硬化促進触媒)
硬化性樹脂組成物は、湿気硬化性樹脂の湿気硬化反応を促進させる湿気硬化促進触媒を含有することが好ましい。湿気硬化促進触媒を使用することにより、硬化性樹脂組成物は、湿気硬化性がより優れたものとなり、接着力を高めやすくなる。
湿気硬化促進触媒としては、具体的にはアミン系化合物、金属系触媒などが挙げられる。アミン系化合物としては、ジ(メチルモルホリノ)ジエチルエーテル、4-モルホリノプロピルモルホリン、2,2’-ジモルホリノジエチルエーテル等のモルホリン骨格を有する化合物、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、1,2-ビス(ジメチルアミノ)エタンなどのジメチルアミノ基を2つ有するジメチルアミノ基含有アミン化合物、トリエチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2,6,7-トリメチル-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
金属系触媒としては、ジラウリル酸ジn-ブチルスズ、ジ酢酸ジn-ブチルスズ、オクチル酸スズ等のスズ化合物、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛等の亜鉛化合物、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト等のその他の金属化合物が挙げられる。
湿気硬化促進触媒は、上記した中ではアミン系化合物であることが好ましく、モルホリン骨格を有する化合物がより好ましい。
【0070】
湿気硬化促進触媒の含有量は、湿気硬化性樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上8質量部以下が好ましく、0.1質量部以上5質量部以下がより好ましい。湿気硬化促進触媒の含有量が上記範囲内であることにより、硬化性樹脂組成物の保存安定性等を悪化させることなく、湿気硬化反応を促進させる効果が優れたものとなる。
【0071】
(カップリング剤)
硬化性樹脂組成物は、カップリング剤を含有してもよい。硬化性樹脂組成物にカップリング剤を含有させることで、接着力を向上させやすくなる。カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、ジルコネート系カップリング剤等が挙げられる。なかでも、接着性を向上させる効果に優れることから、シランカップリング剤が好ましい。
【0072】
シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、テジルトリメトキシシラン、1,6-ビス(トリメトキシリル)ヘキサン等が挙げられる。
【0073】
上記チタネート系カップリング剤としては、例えば、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
上記ジルコネート系カップリング剤としては、例えば、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド、シルコニウムテトラノルマルブトキシド等が挙げられる。
カップリング剤としては、シランカップリング剤が好ましい。また、シランカップリング剤の中でも、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシランなどのイソシアネート基含有シランカップリング剤が好ましい。
カップリング剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0074】
光湿気硬化性樹脂組成物がカップリング剤を含有する場合、カップリング剤の含有量は、ラジカル重合性化合物と湿気硬化性樹脂の合計量100質量部に対して、0.05質量部以上10質量部以下が好ましく、0.2質量部以上5質量部以下がより好ましく、0.5質量部以上3質量部以下がさらに好ましい。カップリング剤の含有量がこれら範囲内とすることで、接着力を向上させやすくなる。
【0075】
(充填剤)
本発明の硬化性樹脂組成物は、充填剤を含有してもよい。充填剤を含有することにより、本発明の硬化性樹脂組成物は、好適なチクソ性を有するものとなり、塗布後の形状を充分に保持することができる。充填剤としては、粒子状のものを使用すればよい。
充填剤としては、無機充填剤が好ましく、例えば、シリカ、タルク、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム等が挙げられる。なかでも、得られる硬化性樹脂組成物が紫外線透過性に優れるものとなることから、シリカが好ましい。また、充填剤は、シリル化処理、アルキル化処理、エポキシ化処理等の疎水性表面処理がなされていてもよい。
充填剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
充填剤の含有量は、ラジカル重合性化合物と湿気硬化性樹脂の合計量100質量部に対して、好ましくは1質量部以上25質量部以下、より好ましくは2質量部以上20質量部以下、さらに好ましくは3質量部以上15質量部以下である。
【0076】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記で述べた成分以外にも、ワックス粒子、イオン液体、着色剤、発泡粒子、膨張粒子、反応性希釈剤などのその他の添加剤を含有していてもよい。
硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、溶剤により希釈されていてもよい。硬化性樹脂組成物が溶剤により希釈される場合、硬化性樹脂組成物の質量部は、固形分基準であり、すなわち、溶剤を除いた質量部を意味する。
【0077】
本発明の硬化性樹脂組成物を製造する方法としては、混合機を用いて、湿気硬化性樹脂、ラジカル重合性化合物、および光重合開始剤、さらに、必要に応じて配合される、湿気硬化促進触媒、充填剤、カップリング剤などのその他の添加剤とを混合する方法等が挙げられる。混合機としては、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー(遊星式撹拌装置)、ニーダー、3本ロール等が挙げられる。
【0078】
[硬化体]
本発明の光湿気硬化性樹脂組成物は、硬化され、硬化体として使用されるものである。本発明の光湿気硬化性樹脂組成物は、例えば、被着体間に配置された状態で、硬化されることで被着体間を接合できる。
具体的には、光湿気硬化性樹脂組成物は、一方の被着体に塗布し、その後、光照射により光硬化させ、例えばBステージ状態(すなわち、半硬化)にするとよい。一方の被着体は、半硬化された光湿気硬化性樹脂組成物を介して、他方の被着体に重ね合わされ、被着体間を仮接着させるとよい。本発明では、光湿気硬化性樹脂組成物は、半硬化直後の接着力(すなわち、初期接着力)が良好となるので、適切な接着力で、被着体間を仮接着できる。
ここで、一般的に一方の被着体に塗布された光湿気硬化性樹脂組成物は、他方の被着体に重ねられる前に、光硬化される。したがって、光湿気硬化性樹脂組成物は、大部分が大気中に露出した状態で(すなわち、酸素に接触した状態で)光硬化されるが、上記したようにラジカル重合性化合物が窒素含有化合物を含有することで、酸素存在下で硬化されても初期接着力が良好となる。
その後、半硬化状態の硬化性樹脂組成物は、湿気硬化性樹脂を湿気により硬化させることで、全硬化させ、硬化性樹脂組成物を介して重ね合わせた被着体間が十分な接着力で接合される。
【0079】
被着体への硬化性樹脂組成物の塗布は、例えばディスペンサーで行うとよいが、特に限定されない。また、光硬化時に照射する光は、ラジカル重合性化合物が硬化できる活性エネルギー線であれば特に限定されないが、紫外線が好ましい。また、硬化性樹脂組成物は、湿気により全硬化させるときには、大気中に所定時間放置すればよい。
【0080】
本発明の硬化性樹脂組成物は、好ましくは電子機器用接着剤に使用される。したがって、被着体は、特に限定されないが、好ましくは、電子機器を構成する各種部品である。電子機器を構成する各種部品としては、電子部品、又は電子部品が取り付けられる基板などであり、より具体的には、表示素子に設けられる各種の電子部品、電子部品が取り付けられる基板、半導体チップなどが挙げられる。被着体の材質としては、金属、ガラス、プラスチック等のいずれでもよい。また、被着体の形状としては、特に限定されず、例えば、フィルム状、シート状、板状、パネル状、トレイ状、ロッド(棒状体)状、箱体状、筐体状等が挙げられる。
【0081】
例えば、本発明の硬化性樹脂組成物は、電子機器内部などにおいて、例えば基板と基板とを接着して組立部品を得るために使用される。このようにして得られた組立部品は、第1の基板と、第2の基板と、本発明の硬化体を有し、第1の基板の少なくとも一部が、第2の基板の少なくとも一部に硬化体を介して接合される。なお、第1の基板及び第2の基板は、好ましくは、それぞれ少なくとも1つの電子部品が取り付けられている。
【0082】
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、狭額縁用途で使用されることが好ましい。例えば、スマートフォンなどの携帯電話用表示装置等の各種表示素装置では、細幅の四角枠状(すなわち、狭額縁)のベースの上に、接着剤が塗布されて、その接着剤を介して表示パネル、タッチパネルなどが組み付けられるが、その接着剤として、本発明の硬化性樹脂組成物を使用するとよい。
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物は、半導体チップ用途で使用することが好ましい。本発明の硬化性樹脂組成物は、半導体チップの用途では、例えば、半導体チップ同士を接合するために使用される。
【実施例
【0083】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0084】
本実施例において、各種物性を以下のように評価した。
(初期接着力)
図1(a)、(b)に示すように、ディスペンサーを用いて、アルミニウム基板11に幅1.0±0.1mm、長さ25±2mm、及び厚さが0.4±0.1mmとなるように光湿気硬化性樹脂組成物10を塗布し、水銀ランプで紫外線を3,000mJ/cm照射することによって光硬化させた。その後、アルミニウム基板11にガラス板12を貼り合わせ、100gの重りを置き、25℃、50RH%で10分間放置することにより湿気硬化させて、接着性評価用サンプル13を得た。
その後、25℃の雰囲気下で引張り試験機(「オートグラフAG-X」、株式会社島津製作所製)を用いて剪断方向Sに5mm/secの速度で引張り、アルミニウム基板11とガラス板12とが剥がれる際の強度を測定して初期接着力とした。
初期接着力は、以下の評価基準で評価した。
AA:0.8MPa以上
A:0.3MPa以上0.8MPa未満
B:0.3MPa未満
【0085】
(光硬化24時間後接着力)
初期接着力と同様の方法で、サンプルを作製して、光湿気硬化性樹脂組成物10を光硬化させた。その後、アルミニウム基板11にガラス板12を貼り合わせ、100gの重りを置き、25℃、50RH%で24時間放置することにより湿気硬化させて、接着性評価用サンプル13を得た。
接着性評価用サンプル13を用いて、初期接着力の測定方法と同様にサンプル13をせん断方向Sに引張り、アルミニウム基板11とガラス板12とが剥がれる際の強度を測定して光硬化24時間後接着力とした。光硬化24時間後接着力は、以下の評価基準で評価した。
A:2.0MPa以上
B:2.0MPa未満
【0086】
各実施例、比較例で使用した湿気硬化性ウレタン樹脂は、以下の合成例に従って作製した。
[合成例1]
ポリオール化合物A(水酸基価:110mgKOH、三菱ケミカル社製、「BENEBiOL NL1010DB」)を用意した。ポリオール化合物A100質量部と、0.01質量部のジブチル錫ジラウレートとを500mL容のセパラブルフラスコに入れ、真空下(20mmHg以下)、100℃で30分間撹拌し混合した。その後常圧とし、ポリイソシアネート化合物としてジフェニルメタンジイソシアネート(日曹商事社製、「Pure MDI」)52質量部を入れ、80℃で3時間撹拌して反応させ、ポリカーボネート骨格ウレタン(重量平均分子量6,600)を得た。
【0087】
[合成例2]
ポリオール化合物B(水酸基価:212mgKOH、ダイセル化学社製、「Placcel205U」、ポリカプロラクトンポリオール)を100質量部と、0.01質量部のジブチル錫ジラウレートとを500mL容のセパラブルフラスコに入れ、真空下(20mmHg以下)、100℃で30分間撹拌し、混合した。その後常圧とし、ポリイソシアネート化合物としてジフェニルメタンジイソシアネート(日曹商事社製、「Pure MDI」)100質量部を入れ、80℃で3時間撹拌して反応させ、ポリエステル骨格ウレタン(重量平均分子量6,300)を得た。
【0088】
[合成例3]
ポリオール化合物C(ポリテトラメチレンエーテルグリコール、三菱化学社製、「PTMG-2000」)を100質量部と、0.01質量部のジブチル錫ジラウレートとを500mL容のセパラブルフラスコに入れ、真空下(20mmHg以下)、100℃で30分間撹拌し、混合した。その後常圧とし、ポリイソシアネート化合物としてジフェニルメタンジイソシアネート(日曹商事社製、「Pure MDI」)26.5質量部を入れ、80℃で3時間撹拌して反応させ、ポリエーテル骨格ウレタン(重量平均分子量2,700)を得た。
【0089】
各実施例、比較例で使用した、湿気硬化性ウレタン樹脂以外の成分は、以下のとおりであった。
(ラジカル重合性化合物)
環状窒素含有化合物:N-ビニル-ε-カプロラクタム(東京化成工業株式会社製、商品名「NVC」)
単官能アクリレート(1):ブチルアクリレート(東京化成工業株式会社製、単官能)
単官能アクリレート(2):テトラヒドロフルフリルアルコールの(メタ)アクリル酸多量体エステル(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「ビスコート#150D」、単官能)
単官能ウレタンアクリレート:1,2-エタンジオール1-アクリラート2-(N-ブチルカルバマート)(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「ビスコート#216」、単官能)
二官能ウレタンアクリレート:ダイセル・オルネクス社製、商品名「EBECRYL8413」、2官能ウレタンアクリレート
光重合開始剤(1):2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、BASF社製、商品名「Irgacure 379EG」
光重合開始剤(2):ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、BASF社製、商品名「Irgacure TPO」
湿気硬化促進触媒:2,2’-ジモルホリノジエチルエーテル、サンアプロ社製、商品名「U-CAT 660M」
充填剤:トリメチルシリル化処理シリカ(日本アエロジル社製、「RY 200S」、一次粒子径7nm)
【0090】
[実施例1~6、比較例1~3]
表1に記載された配合比に従い、各材料を、遊星式撹拌装置(シンキー社製、「あわとり練太郎」)にて温度50℃で撹拌した後、セラミック3本ロールにて温度50℃で均一に混合して実施例1~6、比較例1~3の硬化性樹脂組成物を得た。
【0091】
【表1】
【0092】
各実施例1~6に示すように、ラジカル重合性化合物と湿気硬化性樹脂とのSP値差(ΔSP値)を小さくすることで、初期接着力を十分に高くできた。それに対して、比較例ではSP値差が大きくなったため、初期接着力を高くできなかった。
図1