(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】血管系内に治療デバイスを挿入および配置するためのバルーンカテーテルアセンブリ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20240410BHJP
A61M 25/14 20060101ALI20240410BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20240410BHJP
A61B 17/22 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
A61M25/10 542
A61M25/14 514
A61M25/00 530
A61B17/22
(21)【出願番号】P 2020569098
(86)(22)【出願日】2019-06-13
(86)【国際出願番号】 US2019036982
(87)【国際公開番号】W WO2019241520
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-06-10
(32)【優先日】2018-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595148888
【氏名又は名称】ストライカー コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Stryker Corporation
【住所又は居所原語表記】2825 Airview Boulevard Kalamazoo MI 49002 (US)
(73)【特許権者】
【識別番号】522162015
【氏名又は名称】ストライカー ヨーロピアン オペレーションズ ホールディングス リミテッド ライアビリティー カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Stryker European Operations Holdings LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】モック,トーマス,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ブロチュ,アリス,ブラッドバリー ウェルシュ
(72)【発明者】
【氏名】マルソー,デビッド,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ボルハウス,マリエル,イー.
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー,ムルタ,エム.
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-030721(JP,A)
【文献】特開2009-291557(JP,A)
【文献】特表2010-504837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
A61M 25/14
A61M 25/00
A61B 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管系内に治療デバイスを挿入し配置するためのバルーンカテーテルアセンブリにおいて、前記バルーンカテーテルアセンブリは、
近位部分、遠位部分、およびそれらの間に延在する外側部材管腔を有する管状の外側部材であって、前記外側部材管腔が前記外側部材の遠位開口部と連絡している、外側部材と、
近位部分、遠位部分、およびそれらの間に延びる内側部材管腔を有する管状の内側部材であって、前記内側部材管腔が前記内側部材の遠位開口部と連絡しており、前記内側部材の外面と前記外側部材の内面が一緒になって環状流体経路を規定するように前記外側部材の管腔内に少なくとも部分的に配置されている内側部材と、
前記外側部材の遠位部分の外面に固定され、円周方向に延在するそれぞれの近位端および遠位端を有するバルーン部材であって、当該バルーン部材の内面と前記外側部材の外面とで膨張可能なバルーン内部を規定し、前記外側部材が、前記環状流体経路と前記バルーン内部との間に流体経路を形成する、それを通る1つまたは複数の通路を有する壁を含む、バルーン部材と、
前記1つまたは複数の通路の遠位側に、前記外側部材の遠位部分に配置された管状のシールとを具え、このシールは前記外側部材の内面と前記内側部材の外面との間に流体密シールを形成するように構成されており、前記管状のシールは近位シール部分と遠位シール部分とを具え、前記近位シール部分は前記外側部材の遠位部分の内面に周方向に配置され、前記近位シール部分の近位端から前記管状のシールの最も内側の部分へと内側に先細になるテーパ形の内面を有し、前記遠位シール部分は前記外側部材の遠位端部に配置されており、
前記内側部材が、当該内側部材の遠位部分が前記シールの近位側に配置される非シール位置から、前記内側部材の遠位部分がシールに接触し、それによって前記シールの位置で前記環状流体経路をシールするシール位置へと、前記外側部材に対して移動可能であり、
前記内側部材が前記シール位置にあるとき、前記バルーンを膨張させることが可能であり、
前記内側部材が前記非シール位置にあるとき、前記環状流体経路の流体が前記外側部材の遠位開口部を通して流れ得ることを特徴とするバルーンカテーテルアセンブリ。
【請求項2】
前記バルーン部材が、前記外側部材の遠位端の近くに固定されている、請求項1に記載のバルーンカテーテルアセンブリ。
【請求項3】
前記シールが、前記外側部材のバルーン部材の遠位に配置されている、請求項1または2に記載のバルーンカテーテルアセンブリ。
【請求項4】
前記シールおよび前記内側部材がそれぞれ、前記シールが当該シールの位置で前記環状流体経路をシールしたままで、前記内側部材の遠位部分が前記シールの遠位に配置されるように、前記内側部材が前記シールを通って遠位方向に移動できるように構成されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のバルーンカテーテルアセンブリ。
【請求項5】
前記内側部材がシール位置にあるとき、前記外側部材管腔の近位部分に導入された加圧流体が前記環状流体経路および1つまたは複数の通路をそれぞれ通り、前記バルーン内部へ入ってバルーン内部を膨張させるように構成される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のバルーンカテーテルアセンブリ。
【請求項6】
前記内側部材が非シール位置にあるとき、前記外側部材管腔および内側部材管腔をそれぞれ通して加圧流体を導入することによって、空気が前記外側部材管腔、内側部材管腔、環状流体経路、1つまたは複数の通路、およびバルーン内部のうちの1つまたは複数からパージされ得るように構成された、請求項5に記載のバルーンカテーテルアセンブリ。
【請求項7】
前記バルーン部材がエラストマーである、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のバルーンカテーテルアセンブリ。
【請求項8】
前記シールがエラストマーである、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のバルーンカテーテルアセンブリ。
【請求項9】
前記外側部材の外面がバルーン部材の下に窪みを有し、この窪みは、前記バルーン内部が膨張状態にないときに、前記バルーン部材が隣接する外側部材の外面を超えて半径方向に突出しないように前記バルーン部材を着座させるように構成される、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のバルーンカテーテルアセンブリ。
【請求項10】
前記外側部材の外径が0.027インチ~0.037インチ(0.06858cm~0.09398cm)であり、前記内側部材の内径が0.016インチ~0.026インチ(0.4064cm~0.06604cm)である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のバルーンカテーテルアセンブリ。
【請求項11】
前記外側部材の外径が0.095インチ~0.125インチ(0.2413cm~0.3175cm)であり、前記内側部材の内径が0.060インチ~0.095インチ(0.1524cm~0.2413cm)である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のバルーンカテーテルアセンブリ。
【請求項12】
前記外側部材の遠位部分がスロット付きハイポチューブを含む、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のバルーンカテーテルアセンブリ。
【請求項13】
血管系内に治療デバイスを挿入し配置するためのバルーンカテーテルアセンブリにおいて、
近位部分、遠位部分、およびそれらの間に延びる外側部材管腔を有する管状の外側部材であって、前記外側部材管腔は前記外側部材の遠位開口部と流体連絡している、外側部材と、
近位部分、遠位部分、およびそれらの間に延びる内側部材管腔を有する管状の内側部材であって、前記内側部材管腔は前記内側部材の遠位開口部と連絡しており、前記内側部材の外面と前記外側部材の内面が一緒になって環状流体経路を規定するように少なくとも部分的に外側部材内に配置されている内側部材と、
前記外側部材の遠位部分の外面に固定され、円周方向に延在するそれぞれの近位端および遠位端を有するバルーン部材であって、当該バルーン部材の内面と前記外側部材の外面とで膨張可能なバルーン内部を規定し、前記外側部材が、前記環状流体経路と前記バルーン内部との間に流体経路を形成する、それを通る1つまたは複数の通路を有する壁を含む、バルーン部材と、
前記内側部材の遠位部分に配置されたシールであって、前記外側部材の内面と前記内側部材の外面との間に流体密シールを形成するように構成されたシールとを具え、
前記外側部材の外面が前記バルーン部材の下に窪みを有し、この窪みは、前記バルーン部材が膨張状態にないときに、前記バルーン部材が隣接する外側部材の外面を超えて半径方向に突出しないように前記バルーン部材を着座させるように構成され、
前記内側部材が、前記シールが前記外側部材の遠位開口部の遠位側に配置される非シール位置から、前記シールが前記外側部材管腔内に配置され、前記シールが前記外側部材の内面に接触して前記環状流体経路をシールするシール位置へと、前記外側部材に対して移動可能であり、
前記内側部材が前記シール位置にあるとき、前記バルーンを膨張させることが可能であり、
前記内側部材が前記非シール位置にあるとき、前記環状流体経路の流体が前記外側部材の遠位開口部を通して流れ得ることを特徴とするバルーンカテーテルアセンブリ。
【請求項14】
前記バルーン部材がエラストマーである、請求項13に記載のバルーンカテーテルアセンブリ。
【請求項15】
前記シールがエラストマーである、請求項13または14に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項16】
前記シールが、前記内側部材の外面の周りに円周方向に配置されている、請求項13乃至15のいずれか一項に記載のバルーンカテーテルアセンブリ。
【請求項17】
前記シールが前記内側部材の遠位端の近くに配置されている、請求項13乃至16のいずれか一項に記載のバルーンカテーテルアセンブリ。
【請求項18】
前記内側部材がさらに、前記外側部材の遠位端の遠位側に配置された前記内側部材の遠位端に遠位ストップを具え、当該ストップは前記内側部材の遠位端が前記外側部材の遠位端を越えて近位方向に移動するのを防ぐように構成される、請求項13乃至17のいずれか一項に記載のバルーンカテーテルアセンブリ。
【請求項19】
前記シールおよび内側部材が、前記内側部材が前記外側部材に対して近位方向に移動されて前記内側部材がシール位置に配置されたときに、前記外側部材管腔に導入された流体がそれぞれ前記環状流体経路を通り、前記1つまたは複数の通路を通って、バルーン内部へと流れるように構成される、請求項13乃至18のいずれか一項に記載のバルーンカテーテルアセンブリ。
【請求項20】
前記シールおよび内側部材が、前記内側部材が前記
管状の外側部材に対して遠位方向に移動されて前記内側部材が非シール位置に配置されたときに、前記内側部材管腔、外側部材管腔、環状流体経路、1つまたは複数の通路、およびバルーン内部のそれぞれのうちの1つまたは複数に流体を導入し、導入された流体がそれぞれ前記内側部材の遠位開口部および前記外側部材の遠位開口部を通って出ることによって空気がパージされ得るように構成される、請求項19に記載のバルーンカテーテルアセンブリ。
【請求項21】
前記シールはエラストマー材料でなる管状のシールであり、小さな近位端から大きな遠位端へとテーパ形をなす円錐形の外面を有し、前記バルーンカテーテルアセンブリはさらに、前記シールの内側部材の外側面に配置された遠位ストップを有し、このストップが前記内側部材の遠位端が前記外側部材の遠位端を超えて近位方向に動くのを防止する、請求項13乃至20いずれか一項に記載のバルーンカテーテルアセンブリ。
【請求項22】
前記外側部材の外径が0.016インチ~0.026インチ(0.04064cm~0.06604cm)であり、前記内側部材の内径が0.027インチ~0.037インチ(0.06858cm~0.09398cm)の間である、請求項13乃至21のいずれか一項に記載のバルーンカテーテルアセンブリ。
【請求項23】
前記外側部材の遠位部分がスロット付きハイポチューブを含む、請求項13乃至22のいずれか一項に記載のバルーンカテーテルアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は一般に、患者の血管系の管腔内で処置を実行するための医療デバイスおよび方法に関し、より具体的には、虚血性脳卒中の治療や、他の治療または診断目的での血流の遮断または制限などの、血管系内でバルーンガイドカテーテルを使用して処置を実行するためのデバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]介入療法、薬物送達、診断、灌流などを含む様々な医療処置を実行するために、様々な設計の医療用カテーテルが以前に提供されてきた。一般に、医療用カテーテルは、患者における侵入部位を通して、静脈や動脈などの患者の血管系にカテーテルを導入することによって使用される。カテーテルは、治療的および/または診断的医療処置を実行するために、カテーテルを血管系を通して標的部位に誘導および押送することによって、入口部位から進められる。
【0003】
[0003]ある種類の血管内カテーテルの一例は、細長い管状部材と、当該管状部材に、例えば管状部材の遠位部分または他の適切な位置に取り付けられたバルーンとを具えるバルーンカテーテルがある。管状部材は、流体をバルーンに注入してバルーンを膨張させるために、管状部材の近位端からバルーンまで延びる膨張管腔を具える。様々な異なる医療処置を実施するための様々なタイプのバルーンカテーテルが以前に開示されている。例えば、虚血性脳卒中などの神経障害を診断および治療するためのバルーンカテーテルが、米国特許第6,638,245号(’245特許)に開示されており、その開示は本明細書に完全に組み込まれる。
図10Aおよび10Bは、’245特許に開示されているような従来技術のバルーンガイドカテーテル150を示す。このバルーンカテーテル150は、外側管状部材170と、当該外側管状部材170内の内側管状部材172とを具えている。バルーンカテーテル150は、外側管状部材160の遠位端に配置された膨張可能なバルーン160を有する。外側管状部材170と内側管状部材172との間の環状空間は、バルーン160を膨張させるための流体供給管腔158を形成する。バルーンカテーテル150は、導入器シースを通して患者の血管系内の標的部位に進められる。所定の位置に配置されると、治療カテーテルが、内側管状部材172の作業管腔152を通って標的部位に進められ得る。したがって、バルーンカテーテル150といった従来型バルーンカテーテルは、少なくとも3つのカテーテルシャフトの太さ(外側管状部材170、内側管状部材172、およびイントロデューサシースの合計の太さ)を必要とする。このように、従来のバルーンカテーテルは3つのカテーテルシャフトを収容しなければならず、これは特に神経血管系など小さな血管に用いる場合に、バルーンガイドカテーテルの外径を血管系の血管に適合するのに十分に小さくするための作業管腔の直径に制限となり得る。
【0004】
[0004]神経血管系におけるバルーンカテーテルの使用は、カテーテル設計に多くの課題を提示する。一つには、脳内の血管は通常、直径が非常に小さく数ミリメートル以下であるため、これらの血管に進められるカテーテルの外径は、1フレンチ(0.33mm)程度である必要がある。さらに、脳血管系は非常に曲がりくねっており、神経カテーテルは、曲がりくねった経路を通って移動しそれに順応するために、特に遠位端で非常に柔軟である必要がある。また、脳の血管は非常に壊れやすいため、神経カテーテルは滑らかで非外傷性の末梢を有している必要がある。
【0005】
[0005]バルーンカテーテルは、一般に、カテーテルを患者の血管系に進めるにあたり、カテーテルから空気をパージすることによる使用前の準備を必要とする。上記のように、バルーンカテーテルは、通常、細長いチューブと膨張管腔とを有する。場合によっては、バルーンカテーテルはまた、複数のチューブを有し得る(例えば、外側チューブ内に配置された内側チューブを具える同心チューブ)。チューブ、膨張管腔、およびバルーンを含むこれらの構造体はそれぞれ、空気が患者に導入されて患者に塞栓症やその他の外傷を引き起こすのを防ぐために、カテーテルを患者の血管系を通して前進させる前に、流体(例えば、生理食塩水)で空気をパージしなければならない。しかしながら、膨張管腔からバルーンへの、そして多くの場合、カテーテルの管内の端部が閉鎖された流体経路のために、システムからすべての空気をパージすることは困難であり、非常に時間がかかる。また、流体経路が閉じているため、カテーテルからすべての空気がいつパージされたかを判断することも困難である。その結果、手術の準備中に従来のバルーンカテーテルから空気をパージするのに最大15分かかることも多く、それでもパージが常に成功しているとは限らなかった。
【発明の概要】
【0006】
[0006]本発明は、公知のバルーンカテーテルよりも迅速な準備と、カテーテル内の空気のより効果的なパージ(およびカテーテルを生理食塩水などの流体で満たすこと)を可能にする革新的な構成を有するバルーンガイドカテーテルに関する。ここに開示するバルーンガイドカテーテルは、患者の血管系内への治療デバイスの挿入および位置決めに有用である。例えば、バルーンガイドカテーテルは、冠状動脈閉塞または虚血性脳卒中などの血管の閉塞を画像化、診断、および/または治療するのに特に有用である。虚血性脳卒中は、血管の狭窄または塞栓(例えば、血栓、または血管内の他の異常な物質)の存在のいずれかによって、脳内の血管の閉塞によって引き起こされる。本発明のバルーンガイドカテーテルはまた、より柔軟な遠位端を有するように調整できることから、神経血管系での使用に特によく適している。
【0007】
[0007]上述したように、バルーンカテーテルは通常、カテーテルを患者の血管系に進める前に、システムから空気をパージする準備を必要とする。本発明のバルーンガイドカテーテルは、管状部材の管腔とバルーンを膨張させるための膨張管腔とが開放端の流路を有するパージ構成と、膨張管腔が封鎖され、加圧流体を膨張管腔に注入してバルーンを膨張させることができる膨張構成との間で調整可能である。
【0008】
[0008]第1の実施形態では、本発明によるバルーンガイドカテーテルは、近位部分と、遠位部分と、それらの間に延びる外側部材管腔とを有する、細長い可撓性の管状外側部材を具える。この外側部材の管腔は、当該外側部材の遠位開口部と連絡している。細長い可撓性の管状の内側部材が、内側部材の外面と外側部材の内面が一緒になって内側部材と外側部材との間の環状流体経路を規定するように、少なくとも部分的に外側部材の管腔内に配置される。この内側部材は、送達/治療カテーテルであり得る。内側部材は、近位部分と、遠位部分と、それらの間に延びる内側部材管腔とを有する。内側部材の管腔は、当該内側部材の遠位開口部と連絡している。
【0009】
[0009]バルーンが、外側部材に固定されている。このバルーンは、外側部材の任意の適切な部分に固定することができ、それは遠位部分を含むがこれに限定されない。バルーンは、それぞれの近位端および遠位端を有するエラストマー部材を含む。バルーンの近位端および遠位端は、エラストマー部材の内面と外側部材の外面とが膨張可能なバルーン内部を規定するように、外側部材の遠位部分の外面に円周方向に固定される。外側部材は、外側部材の壁を通る1つまたは複数の通路を有し、これが環状流体経路とバルーン内部との間に流体経路を形成する。
【0010】
[0010]エラストマー管状シールが、外側部材の周りに円周方向に、外側部材の壁を通る1つまたは複数の通路の遠位に配置されている。例えば、この管状シールは、外側部材の遠位部分の内面の周りに円周方向に配置されてもよいし、他の適切なシール構成であってもよい。シールは、外側部材の遠位端の近位に固定することができる。シールは、内側部材がシール位置にあるときに環状流体経路をシールするように、外側部材の内面と内側部材の外面との間に流体密シールを形成するように構成される。
【0011】
[0011]内側部材は、当該内側部材の遠位部分がシールの近位に配置される非シール位置から、内側部材の遠位部分がシールに接触し、それによってシールの位置で環状流体経路を密閉するシール位置へと、外側部材に対して長手方向に動くことができる。換言すれば、内側部材は、シール位置と非シール位置との間で外側部材内で伸縮することができる。この相対運動は、内側部材と外側部材との間に長手方向の相対運動が生じるように、内側部材を移動することによって、または外側部材を移動することによって達成することができる。
【0012】
[0012]このように、外側部材と内側部材との間の環状空間がバルーンの膨張管腔を形成するため、本発明のバルーンガイドカテーテルは、(上記のように)3つのシャフトを有する従来技術のバルーンカテーテルと同じ機能を実行するために2つのシャフトしか要らず、したがって2つのシャフトの厚さのみを必要とする。これは、非常に有利な空間効率を提供し、バルーンガイドカテーテルの所与の外径に対して、バルーンガイドカテーテルの内側作業管腔を公知のバルーンカテーテルよりも大きくすることが可能となる。
【0013】
[0013]バルーンガイドカテーテルの別の態様では、シールおび内側部材は、シールが環状流体経路を閉塞し続けたまま、内側部材の遠位部分がシールの遠位に配置されるように、シールを通して内側部材を遠位に動かせるように構成することができる。この動きは、体外または曲がりくねった血管系内で生じ得る。このように、内側部材の遠位部分が外側部材の遠位端およびバルーンを越えて遠位方向に延在することにより、ガイドカテーテルアセンブリにより柔軟な遠位端を提供する。これは、患者の血管系を通してカテーテルをガイドするのに役立つ。
【0014】
[0014]本発明の別の態様では、内側部材が非シール位置にあるとき(すなわち、内側部材の遠位部分がシールの近位に位置するとき)、流体がカテーテルの管腔および流体経路を通って流れ、内側部材の遠位開口部および外側部材の遠位開口部を通って流出するように、加圧流体をそれぞれの外側部材の管腔および内側部材の管腔を通して導入することによって、バルーンガイドカテーテルから空気をパージすることができる。より具体的には、外側部材管腔、内側部材管腔、環状流体経路、1つまたは複数の通路、およびバルーン内部のうちの1つまたは複数を通って流体が流れ、内側部材の遠位開口部および外側部材の遠位開口部を通って流出するように、それぞれの外側部材管腔および内側部材管腔を通して加圧流体を導入することによって、外側部材管腔、内側部材管腔、環状流体経路、1つまたは複数の通路、およびバルーン内部のうちの1つまたは複数からそれぞれ空気がパージされる。これにより、カテーテルに流体を導入してカテーテルから空気をパージするためのオープンエンド流路が実現する。したがって、ユーザは、内側部材の遠位開口部および外側部材の遠位開口部を通って流出する流体を観察することによって、カテーテルから空気がうまくパージされたことを確認することができる。
【0015】
[0015]さらに別の態様では、内側部材がシール位置にあるとき、外側部材管腔の近位部分に導入された加圧流体が、それぞれ環状流体経路および1つまたは複数の通路を通ってバルーン内部に流れ込み、それによってバルーンを膨張させる。このシールは、外側部材の壁の膨張通路の遠位に配置されている。したがって、内側部材がシール位置にあるとき、環状流体経路が膨張通路の遠位の位置で閉塞され、その結果、外側部材の近位部分で環状流体経路に注入された加圧流体が膨張通路を通って加圧流体をバルーンに注入する。
【0016】
[0016]本発明の別の実施形態は、バルーンガイドカテーテルの第1の実施形態の使用方法に関する。この方法は、内側部材が非シール位置に配置された状態でガイドカテーテルから空気をパージすることによって、患者の血管系に挿入するためのバルーンガイドカテーテルを準備するステップを含む。内側部材は非シール位置に事前に配置されていてもよいし、あるいはこの内側部材は外側部材に対して移動されて、当該内側部材が非シール位置に配置されてもよい。内側部材管腔および外側部材管腔を通して流体を導入し、内側部材の遠位開口部および外側部材の遠位開口部を通って流出する流体を観察することによって、外側部材管腔、内側部材管腔、1つまたは複数の通路、環状流路およびバルーンの1つまたは複数から空気がパージされる。流体が内側部材の遠位開口部および外側部材の遠位開口部から気泡がなく流出するのが観察された場合、ユーザは、バルーンガイドカテーテルから空気が除去されたことを保証することができる。
【0017】
[0017]バルーンガイドカテーテルは、患者の血管系に挿入される。本書に記載のように、バルーンガイドカテーテルは、入口切開部を介して、下大静脈または鼠径部近くの大腿動脈などの入口血管に挿入され得る。次に、内側部材と外側部材が血管系を通って進められ、バルーンが治療部位に配置される。内側部材と外側部材は、同時または別々に、同じ速度または異なる速度で前進させることができる。
【0018】
[0018]バルーンを治療部位に配置した状態で、バルーンを膨らませる。内側部材がシール位置に配置された状態で、流体を外側部材管腔に導入し、流体が環状流体経路を通り、1つまたは複数の通路を通り、膨張可能なバルーン内部に流れるようにすることによってバルーンを膨張させる。バルーンは、当該バルーンが血管を閉塞するように、血管内で膨張されることができる。これにより、バルーンの下流の血管が血流から隔離される。次に、画像化、塞栓除去、血管内デバイス移植といった治療処置を行うことができる。例えば、画像化カテーテルを内側部材を通して挿入し、内側部材の遠位端を越えて前進させて、血管または周囲の組織を画像化することができる。虚血性脳卒中の治療などで塞栓を除去する場合、塞栓除去デバイスを内側部材を通して挿入し、内側部材の遠位端を越えて前進させて、環状疱疹を把持または他の方法で捕捉し、血管から塞栓を除去することができる。
【0019】
[0019]さらなる態様では、この方法は、内側部材を非シール位置からシール位置に、および/またはシール位置から非シール位置に移動させるステップを含み得る。
【0020】
[0020]この方法のさらに別の態様では、内側部材の遠位部分がシールを通って外側部材の遠位端を超えて延びるように、内側部材を外側部材に対して移動させることができる。これにより、血管系を通してカテーテルを誘導および前進させるためのバルーンガイドカテーテルにより柔軟な先端が提供される。内側部材および外側部材を血管系に挿入し、内側部材および外側部材を血管系を通して前進させるステップの前または最中に、内側部材を前進させて、内側部材の遠位部分を外側部材の遠位端を超えて延ばすことができる。バルーンを膨張させる前または後に、バルーンに影響を与えずに内側部材を前進させて、内側部材の遠位部分を延ばすことができる。外側部材を定位置に残したままバルーンを迅速に収縮させて血管系から完全に除去するために、内側部材をシールの近位に進めることができる。
【0021】
[0021]本発明によるバルーンガイドカテーテルの第2の実施形態は、シールが、外側部材の内面ではなく、内側部材の遠位部分の外面周りに円周方向に配置されることを除いて、上記第1の実施形態と同様である。この第2の実施形態では、バルーンガイドカテーテルは、近位部分および遠位部分と、それらの間に延びる外側部材管腔とを有する細長い可撓性の管状外側部材を具える。外側部材管腔は、外側部材の遠位開口部と流体連絡している。細長い柔軟な管状内側部材が、内側部材の外面と外側部材の内面が一緒になって環状流体経路を規定するように、少なくとも部分的に外側部材内に配置される。この内側部材は、近位部分、遠位部分、およびそれらの間に延びる内側部材管腔を有する。内側部材管腔は、内側部材の遠位開口部と連絡している。
【0022】
[0022]バルーンは、例えば外側部材の遠位部分で外側部材に固定される。このバルーンは、外側部材の遠位部分の外面に固定され、その円周方向にそれぞれ近位端および遠位端を有するエラストマー部材を有し、このエラストマー部材の内面と外側部材の外面とで膨張可能なバルーン内部が規定される。外側部材は、当該外側部材の壁を通る1つまたは複数の通路を有し、これが環状流体経路とバルーン内部との間に流体経路を形成し、それによってバルーンを膨張させる。
【0023】
[0023]エラストマーの管状シールが、内側部材の遠位部分の外面の周りに円周方向に配置されている。このシールは、外側部材の内面と内側部材の外面との間に流体密シールを形成するように構成される。
【0024】
[0024]内側部材は、シールが外側部材の遠位開口部の遠位に配置される非シール位置から、シールが外側部材管腔内に配置され、外側部材の内面に接触することによって環状流体経路を閉塞するシール位置へと、外側部材に対して長手方向に移動可能である。換言すれば、内側部材は、非シール位置とシール位置との間で外側部材内で伸縮することができる。
【0025】
[0025]バルーンガイドカテーテルの第2の実施形態の別の態様では、内側部材が、外側部材の遠位端の遠位に位置する内側部材の遠位端に遠位ストップをさらに具え、それにより、内側部材が外側部材の遠位端を越えて近位方向に移動するのをストップが防ぐ。
【0026】
[0026]第2の実施形態のさらに別の態様では、シールおよび内側部材は、内側部材が非シール位置にあるときに、内側部材管腔、外側部材管腔、環状流体経路、1つまたは複数の通路、およびバルーンのうちの1以上を介して流体を導入し、内側部材の遠位開口部および外側部材の遠位開口部から排出することによって、内側部材管腔、外側部材管腔、環状流体経路、1つまたは複数の通路、およびバルーンのうちの1以上から空気がパージされ得るように構成される。
【0027】
[0027]第2の実施形態のさらに別の特徴では、シールおよび内側部材は、内側部材がシール位置にあるとき、外側部材管腔に導入された流体が環状流体経路を通り、1つまたは複数の通路を通って膨張可能なバルーン内部に流れ、それによってバルーンを膨張させるように構成される。
【0028】
[0028]さらに別の態様では、シールおよび内側部材は、内側部材の遠位部分の少なくとも一部が、外側部材の遠位端を越えて遠位方向に進められ、ガイドカテーテルの柔軟な遠位ガイド部分を形成するように構成され得る。例えば、長さは、外側部材の遠位端を超えて延在することができ、医師によってバルーンの長さの約1倍、2倍、3倍、4倍、またはそれ以上の長さなど、ケースバイケースで選択することができる。
【0029】
[0029]本発明の別の実施形態は、バルーンガイドカテーテルの第2の実施形態の使用方法に関する。この方法は、内側部材をシール位置と非シール位置との間で移動させるプロセスがわずかに異なることを除いて、第1の実施形態の使用方法と同様である。この方法は、内側部材が非シール位置に配置された状態で、すなわち、シールが外側部材出口の遠位に配置された状態でガイドカテーテルから空気をパージすることによって、患者の血管系に挿入するためのバルーンガイドカテーテルを準備するステップを含む。内側部材は、シール位置に事前に配置されてもよいし、あるいは内側部材は、外側部材に対して移動することにより内側部材がシール位置に配置されてもよい。空気は、内側部材管腔および外側部材管腔を通して流体を導入し、内側部材の遠位開口部および外側部材の遠位開口部を通って流出する流体を観察することによって、外側部材の管腔、内側部材の管腔、1つまたは複数の通路、環状流路およびバルーンのうちの1以上からパージされる。流体が内側部材の遠位開口部および外側部材の遠位開口部から気泡なしで流出するのが観察された場合、バルーンガイドカテーテルは正常に空気が除去されている。
【0030】
[0030]バルーンガイドカテーテルは、患者の血管系に挿入される。本書に記載のように、バルーンガイドカテーテルは、入口切開部を通して、下大静脈または鼠径部近くの大腿動脈などの入口血管に挿入され得る。次に、内側部材と外側部材が血管系を通って進められ、バルーンが治療部位に配置される。内側部材と外側部材は、同時または別々に、同じ速度または異なる速度で前進させることができる。
【0031】
[0031]バルーンを治療部位に配置した状態で、バルーンを膨らませる。内側部材がシール位置に配置された状態(すなわち、シールが外側部材の内面に接触して環状流体経路を閉塞するように外側部材出口内にシールが配置された状態)で、流体を外側部材管腔に導入し、流体が環状流体経路を通り、1つまたは複数の通路を通り、膨張可能なバルーン内部に流れるようにすることによってバルーンが膨張される。第2の実施形態を使用する手順の残りの部分は、第1の実施形態について上で説明したものと同様である。
【0032】
[0032]さらなる態様では、バルーンガイドカテーテルの第2の実施形態の使用方法は、内側部材を非シール位置からシール位置に、および/またはシール位置から非シール位置に移動させるステップを含み得る。
【0033】
[0033]この方法のさらに別の態様では、内側部材の遠位部分が外側部材の遠位端を超えて延在して柔軟なガイド部分を提供するように、内側部材を外側部材に対して移動させることができる。これにより、血管系を通してカテーテルを誘導および前進させるためのバルーンガイドカテーテルにより柔軟な先端が提供される。内側部材および外側部材を血管系に挿入し、内側部材および外側部材を血管系を通して前進させるステップの前または最中に、内側部材を前進させて、内側部材の遠位部分を外側部材の遠位端を超えて延ばすことができる。
【0034】
[0034]さらなる態様において、本書に記載のバルーンガイドカテーテルは、ガイドカテーテル以外のさらなる用途に使用することができる。本書に記載のバルーンカテーテルは、バルーンカテーテルの様々な適切な用途に使用することができ、それにはバルーンカテーテルを使用して別のカテーテルをガイドするかどうかに拘わらず、診断または治療処置を実行することが含まれる。
【0035】
[0035]さらに、本書に記載のバルーンカテーテルはまた、任意の適切なバルーンマイクロカテーテル用途で使用するためのマイクロカテーテルとして構成することができる。例えば、バルーンマイクロカテーテルは、本書に記載のバルーンガイドカテーテルのすべての構造および特徴を有し、ここで外側部材、内側部材、およびバルーンなどのその構成要素は、血管系の小血管内へ進められるようにサイズ決定および構成される。例えば、バルーンマイクロカテーテルは、0.095インチから0.125インチの外径(外側部材の外径)と、0.060インチから0.095インチの内径(内側部材の内径)を有するなど、典型的なバルーンガイドカテーテルよりも柔軟で小さい構成要素でできていてもよい。例えば、このサイズのバルーンガイドカテーテルは、血栓摘出吸引を行うのに有用であり得る。さらに、神経血管内の小血管などの非常に小さな血管内で用いる場合、外側部材の外径は0.027インチから0.037インチであり、内側部材の内径は0.016インチから0.026インチである。したがって、バルーンマイクロカテーテルは、神経血管、心臓血管、または他の小血管内など、血管系の非常に小さな血管内へと進めることができる。
【0036】
[0036]したがって、本書に記載の実施形態は、革新的なバルーンガイドカテーテルおよびその使用方法を提供し、これにより、従来のバルーンカテーテルよりも迅速な準備およびカテーテル内の空気の効果的なパージが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
[0037]実施形態についての上記および他の態様が、添付の図面を参照してさらに詳細に説明される。ここで同じ参照番号は同じ要素を指し、同じ要素の説明は、関連する場合はいつでも、説明されたすべての実施形態に適用され得る。
【
図1】[0038]
図1は、本発明の一実施形態による、内側部材が非シール位置にあるバルーンガイドカテーテルの側部断面図である。
【
図2】[0039]
図2は、本発明の一実施形態による、内側部材がシール位置にある、
図1のバルーンガイドカテーテルの側部断面図である。
【
図3】[0040]
図3は、本発明の一実施形態による、内側部材の遠位部分が外側部材の遠位端を超えて延在している、
図1のバルーンガイドカテーテルの側部断面図である。
【
図4】[0041]
図4は、本発明の一実施形態による、内側部材がシール位置にあり、バルーンが膨張している、
図1のバルーンガイドカテーテルの側部断面図である。
【
図5】[0042]
図5は、本発明の一実施形態による、
図1のバルーンガイドカテーテルの遠位部分の代替構造を示す側部断面図である。
【
図6】[0043]
図6は、本発明の一実施形態による、
図1のバルーンガイドカテーテルを使用するための手順を示す側部断面図である。
【
図7】[0044]
図7は、本発明の別の実施形態による、内側部材が非シール位置にある、バルーンガイドカテーテルの側部断面図である。
【
図8】[0045]
図8は、本発明の一実施形態による、内側部材がシール位置にある、
図6のバルーンガイドカテーテルの側部断面図である。
【
図9】[0046]
図9A-9Bは、本発明の一実施形態による、内側部材が非シール位置にあるバルーンガイドカテーテルの側部断面図を示す。
【
図10】[0047]
図10A-10Bは、米国特許第6,638,245号に開示されているような、従来技術のバルーンガイドカテーテルの側部断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
[0048]
図1~4は、虚血性脳卒中の治療、および他の治療のための血流の遮断または制限、あるいは施術時における診断目的の使用などの、血管系内の処置を実行するためのバルーンガイドカテーテル10を示す。バルーンガイドカテーテル10は、カテーテル10を使用して外科的処置を実行するための迅速な準備を可能にするように特別に構成され、それにはカテーテル10からの空気の迅速かつ効果的なパージを提供することが含まれる。
【0039】
[0049]バルーンガイドカテーテル10は、細長い、柔軟な、管状の外側部材12を具える。この外側部材12は、近位部分14、遠位部分16、および近位部分14と遠位部分16との間に延びる外側部材管腔18とを有する。外側部材管腔18は、外側部材12の遠位端22にある遠位開口20と流体連絡している。
【0040】
[0050]外側部材12は、ポリマーチューブまたは他の適切な材料で作成することができる。外側部材12はまた、外側部材12の補強部分および/または強化部分を提供するために、1つまたは複数の補強部材を有し得る。例えば、コイル、ブレード、リボン、ハイポチューブや他の構造部材を、外側部材12の所定の部分に沿って、外側部材の内側、外側に配置したり、および/または外側部材の壁内に埋め込むことができる。補強部材は、特定の条件下で外側部材12の補強部分に特定の形状を提供するために、超弾性合金または形状記憶材料などの任意の適切な材料で作ることができる。
【0041】
[0051]細長い、柔軟な管状の内側部材30が、外側部材の管腔18内に配置されている。この内側部材30は、外側部材12内でそれに対して長手方向にスライド可能である。内側部材30は、近位部分38と、遠位部分40と、近位部分38および遠位部分40の間に延びる内側部材管腔42とを有する。内側部材管腔42は、内側部材30の遠位開口部43と流体連絡している。外側部材12と同様に、内側部材30は、ポリマーチューブまたは他の適切な材料で作成することができ、内側部材10の補強部分および/または強化部分を提供するための1つまたは複数の補強部材を有し得る。補強部材は、コイル、ブレード、リボン、ハイポチューブ、または内側部材30の所定の部分に沿って内側部材の内側または外側に配置され、および/または壁内に埋め込まれた他の構造部材であり得る。補強部材は、特定の条件下で外側部材12の補強部分に特定の形状を提供するために、超弾性合金または形状記憶材料などの任意の適切な材料で作ることができる。
【0042】
[0052]内側部材30の外面32および外側部材の内面34は、内側部材30と外側部材12との間の環状流体経路36を規定する。内側部材管腔42は、内側部材30の遠位開口部44と連絡している。
【0043】
[0053]バルーンガイドカテーテル10は、外側部材12の遠位部分16で外側部材12に固定されたバルーン46を有する。このバルーン46は、例えば遠位部分16より近位に、外側部材12の中央部分など、外側部材12上の任意の適切な位置に設けてもよいことを理解されたい。バルーン46は、エラストマー部材で形成され、近位端48および遠位端50を有する。バルーン46は様々な方法で外側部材12に固定され得るが、ここに記載の実施形態では、バルーン46の近位端48および遠位端50は、外側部材12の遠位部分16の外面17に固定され、その周りに円周方向に配置される。したがって、エラストマー部材の内面と外部材12の外面17とで、膨張可能なバルーン内部52が規定される。外側部材12は、外側部材12の壁を通る1つまたは複数の導管または通路54を有し、これが環状流体経路36とバルーン内部52との間に流体経路を形成する。
【0044】
[0054]エラストマーの管状シール56が、1つまたは複数の通路54の遠位となるように、外側部材12の遠位端22の近くの外側部材12上に配置される。このシール56は、内側部材30がシール56内に配置されたとき、すなわち、内側部材30の遠位部分40がシール56内にあるように内側部材30が配置されたときに、内側部材30の周りに流体密シールを形成する限り、外側部材12上に様々な方法で構成され得る。
図1~4の実施形態に示されるように、遠位シール部分58は外側部材12の遠位端22に配置され、近位シール部分60は、外側部材12の遠位部分16の内面34の周囲に円周方向に配置されている。近位シール部分60は、近位シール部分60の近位端からシール56の最も内側の部分まで内側に先細になるテーパ形の内面を有し得る。テーパ形の内面62は、内側部材30が、内側部材30の遠位端41がシール56の近位にある位置から、遠位部分40がシール56内にある位置へ移動されるときに、内側部材30をシール56を通して案内および補助するように作用する。したがって、シール56は、内側部材30が環状流体経路36をシールするシール位置にあるときに(
図3参照)、外側部材12の内面34と内側部材30の外面32との間に流体密シールを形成するように構成される。
【0045】
[0055]内側部材30は、外側部材12に対して、非シール位置(
図1に示される)からシール位置(
図2および
図3に示される)までスライド可能である。この相対運動は、内側部材30と外側部材12との間に長手方向の相対運動が生じるように、内側部材30を動かしたり、外側部材12を動かしたり、あるいは両方を動かしたりすることによって達成され得る。しかしながら、ほとんどの運用において、カテーテル10をシール位置から非シール位置に調整するとき、外側部材12は静止したままで、内側部材30が動かされる。
【0046】
[0056]
図1に示すように、内側部材30の非シール位置において、内側部材30の遠位端41(および遠位部分40)は、内側部材30がシール56と接触しないように、シール56より近位に配置される。
図2に転じると、内側部材30を外側部材12内でスライドさせることによって内側部材30がシール位置へと外側部材12に対して長手方向に動かされ、これにより内側部材30の遠位部分40がシール56の内側に配置されて遠位部分40がシール56に接触する。内側部材30がシール位置にあるとき、シール56が、シール56の位置で環状流体経路36をシールする。
【0047】
[0057]バルーンガイドカテーテル10はまた、外側部材12の近位部分14に固定されたハブ62を具え得る。このハブ62は、外側部材管腔18に流体を挿入したり、または外側部材管腔18から流体を抽出したりするために、外側部材管腔18のみと流体連絡する(すなわち、内側部材管腔42から隔離された)流体ポート64を有する。例えば、流体ポート64は、注射器68または対応するオスのルアーロックを有する他の流体源を取り付けるためのメスのルアーロック66を有し得る。
【0048】
[0058]バルーンガイドカテーテル10はまた、内側部材30の近位部分38に固定された流体インターフェース70を具え得る。この流体インターフェース70は、内側部材管腔42に流体を挿入したり、あるいはそこから流体を抽出したりするために、内側部材管腔42のみと流体連絡する(すなわち、外側部材管腔18から隔離された)開口部を有し得る。例えば、流体インターフェース70は、注射器68または対応するオスのルアーロックを有する他の流体源を取り付けるためのメスのルアーロック72を有し得る。
【0049】
[0059]
図3に転じると、バルーンガイドカテーテル10は、内側部材30の遠位部分40がシール56および外側部材12の遠位端22を越えて遠位に延びるように、内側部材30が
図2よりも遠位に移動した状態で示されている。シール56および内側部材30は、シール56が環状流体経路36の流体密シールを維持した状態で、内側部材30がシール56を通って遠位に移動され得るように構成される。換言すれば、内側部材30は、外側部材12に対して伸縮自在であるか、あるいは内側部材30は外側部材12に対して伸縮式であることができる。バルーンガイドカテーテル10のこの構成は、特にバルーン46が取り付けられた外側部材12の遠位部分16が比較的堅くて柔軟性に欠け得るため、ガイドカテーテルアセンブリ10により柔軟な遠位端を提供する。より柔軟な遠位先端は、血管系、特に神経血管などの血管系の曲がりくねった領域を通してカテーテル10を誘導および操作することをより容易にすることができる。
【0050】
[0060]再び
図1を参照すると、内側部材30が非シール位置にあるとき、内側部材30および外側部材12それぞれの近位部分38、14および遠位開口部43、20からの流体経路が開いているので、空気はバルーンガイドカテーテル10から容易にパージされ得る。空気は、ハブ62の流体ポート64を介して外側部材管腔18を通して、および流体インターフェース70を介して内側部材管腔42を通して加圧流体を導入することによって、バルーンガイドカテーテル10からパージされる。
図1に示されるように、生理食塩水などの流体で満たされた注射器68aを、流体ポート64のルアーロック66に取り付ける。次に、注射器68aを使用して加圧流体を外側部材管腔18に注入して、流体が環状流体経路36、外側部材管腔18、通路54、バルーン46を通って流れ、外側部材の遠位開口20を通って出て行くようにする。同様に、生理食塩水などの流体で満たされた注射器68bを、流体インターフェース70のルアーロック72に取り付ける。注射器68bは、流体が内側部材管腔42、通路54、バルーン46を通って流れ、内側部材の遠位開口部43を通って出て行くように、加圧された流体を内側部材の管腔42に注入する。カテーテルから空気をパージするためにカテーテルに流体を注入するための開放端流路は、外側部材の遠位開口部20および内側部材の遠位開口部43を通る流体の流出を観察することによって、カテーテル10から空気がうまくパージされたことの確認を可能にする。
【0051】
[0061]
図2、3および4を参照すると、内側部材30がシール位置にあるとき、ハブ62の流体ポート64を介して外側部材管腔18に加圧流体を注入することによってバルーン46を膨張させることができる。内側部材30がシール位置にある状態で、環状流体経路36が膨張通路54より遠位の位置でシールされると、環状流体経路36に注入された加圧流体が膨張通路54を介してバルーン46に加圧流体を注入する。注入された流体は、それぞれ環状流体経路36および通路54を通ってバルーン内部に流れ込み、
図4に示されるようにバルーン46を膨張させる。バルーン46は、膨張流体を減圧することによって収縮させることができる。一方法では、膨張流体は、注射器68aを通して吸引することによって、または単に流体ポート64を通して圧力を解放することによって減圧され得る。
【0052】
[0062]別の方法では、バルーン46は、
図1に示すように、内側部材30を非シール位置に移動させることによって(すなわち、内側部材30を外側部材12に対して近位方向に引っ張って、通路を封鎖解除することによって)迅速に収縮させることができる。これにより、バルーン46内の加圧流体が外側部材の管腔18に放出可能になる。別の構成では、シール56は、内側部材の遠位端41がシール56の近位となるように内側部材30が外側部材12内に引っ込められたときに外側部材の遠位開口部20をシールするように構成することができる。
【0053】
[0063]
図5は、外側部材12、バルーン46、およびシール56の遠位部分16の代替構成の詳細図を示す。膨張していない状態のバルーン46が、
図5に破線で示されている。この構成では、外側部材12は、らせん状のカットパターンを有するステンレス鋼のハイポチューブで形成された近位ハイポチューブ部分90を具える。この近位ハイポチューブ部分90は、当該近位ハイポチューブ部分90の外側を覆う外部コーティング92を有する。外部コーティング92は、Pebax35Dのようなポリマーなどの任意の適切な材料であり得る。外部コーティング92は、外部コーティング92を近位ハイポチューブ部分90に押し出すこと(extruding)によって適用することができる。近位ハイポチューブ部分92はまた、当該近位ハイポチューブ部分90の内側を覆う内部コーティング93を有する。内部コーティング93は、好ましくは、PTFE(テフロン(登録商標))または他の適切なポリマー材料などの低摩擦ポリマー材料である。内部コーティング93はまた、内部コーティング93を近位ハイポチューブ部分90に押し出すことによって、近位ハイポチューブ部分90に適用することができる。遠位部分16は、近位ハイポチューブ部分92の遠位端に取り付けられた遠位ハイポチューブ部分94を有する。この遠位ハイポチューブ部分94は、例えば、スロットカットパターンを有するステンレス鋼ハイポチューブ(ハイポチューブ90と一体であるか、溶接などによってハイポチューブ部分94に取り付けられた別個のハイポチューブ)であり得る。次に、タイ層95を、近位ハイポチューブ部分90の遠位部分の外面および遠位ハイポチューブ部分94の近位端に適用することができる。タイ層95は、遠位カバー97(バルーン46およびシール56を一体的に形成する)への外部コーティング92の結合を促進する。例えば、外部コーティング92を形成する材料が遠位カバー97への結合に適合しない可能性があるため、外部コーティング92と遠位カバー97の両方に効果的に結合するタイ層が使用される。タイ層は、95A EX TL LLDPEなどの任意の適切な材料で形成することができる。遠位カバー97は、遠位ハイポチューブ部分94に適用される。1つのプロセスでは、遠位カバー97は、遠位ハイポチューブ部分94上にスライドされる細いチューブから形成され得る。遠位カバー97は、任意の適切な材料、好ましくは硬度の低い材料(50ショアA未満、例えばメディプレン(商標)、クロノプレン(商標)、シリコーン、またはレジリエント(商標))で形成することができる。次に、細いチューブを加熱および/または溶融し、マンドレルを使用して形成し、遠位カバーの領域にシール56、バルーン46、および外側管腔12の管腔を形成することができる。1つの例示的なプロセスでは、第1のマンドレルが、外側チューブ12の管腔を形成するための直径を有する遠位ハイポチューブ部分94内に設置される。細いチューブが溶けて、外側チューブの管腔が形成される。次に、第2のマンドレルが、シール56を形成するための遠位ハイポチューブ部分94の遠位端に取り付けられる。細いチューブはこの領域で溶けてシール56を形成する。細いチューブは、バルーン46を形成するのに適した初期厚さを有し、膨張流体がバルーンに注入されたらこの部分が拡張できるように、細いチューブはバルーン46の長さだけ遠位ハイポチューブ部分94に取り付けられないままにされる。
【0054】
[0064]
図5に示すように、バルーン46は、バルーン46が非膨張状態にあるとき、隣接するタイ層95と同一平面である外径を有する(破線で示される非膨張バルーン46)。したがって、バルーン46が膨張していないとき、バルーン46は、外側部材12の隣接部分の外面に対して隆起または突出した領域を形成しない。
図6に転ずると、バルーンガイドカテーテル10を使用して、血管82内の塞栓80を除去するための医療処置を実行する方法がここで説明される。ステップAで、バルーンガイドカテーテル10は、バルーンガイドカテーテル10から空気をパージすることによって、患者の血管系に挿入するために準備される。
図6ステップAに示されるように、内側部材30は、非シール位置に配置される。この内側部材30は、無菌包装から取り出されたときにシール位置に事前配置されてもよく、または内側部材30は、外側部材12に対して移動されて、内側部材30をシール位置に配置されてもよい。上記のように、フラッシング流体(例えば、生理食塩水)で満たされた注射器68aが流体ポート64に取り付けられ、フラッシング流体(例えば、生理食塩水)で満たされた注射器68bが流体インターフェース72に取り付けられる。注射器68a、68bを操作してフラッシング流体を注入し、外側部材管腔18、環状流体経路36、流体通路54、バルーン46、および/または内側部材管腔42に通し、外側部材の遠位開口部20および内側部材の遠位開口部43を通って排出されるようにする。流体が内側部材の遠位開口部および外側部材の遠位開口部から(例えば、気泡なしで)流出するのが観察されると、バルーンガイドカテーテル10は正常に空気が除去され、バルーンガイドカテーテル10は患者の血管系に挿入する準備ができる。
【0055】
[0065]
図6のステップBにおいて、内側部材30が外側部材12に対して遠位方向に移動され、シール56が遠位部分の外面32に接触し、それによって環状流体経路36がシールされる。ステップ(b)は、バルーンガイドカテーテルを患者の血管系に挿入する前または後で実行できることを理解されたい。
【0056】
[0066]ステップCにおいて、バルーンガイドカテーテル10が患者の血管系に挿入され、血管系の血管82内の塞栓80(治療部位)に近接する位置へと進められる。例えば、バルーンガイドカテーテル10は、入口切開を通して、下大静脈または鼠径部近くの大腿動脈などの入口血管に挿入される。バルーンガイドカテーテル10は血管系を通って前進し、バルーン46を塞栓80に近接する血管82内に配置する。内側部材30および外側部材12は、同時または別々に、同じ速度または異なる速度で前進させることができる。内側部材30は外側部材12に対して伸縮式であり、内側部材30の遠位部分40が外側部材12の遠位端22を越えて延びることによって、ガイドカテーテルアセンブリ10により柔軟な遠位先端を提供する。上述したように、より柔軟な遠位先端は、血管系、特に神経血管などの血管系の曲がりくねった領域を通してカテーテル10の誘導および操作をより容易にすることができる。
【0057】
[0067]
図6のステップDでは、バルーン46が塞栓80の近くに配置された状態で、内側部材30がシール位置に配置された状態でバルーン46が膨張される。バルーン46を膨張させるために、膨張流体(例えば、生理食塩水)で満たされた注射器68aを流体ポート64に取り付けて作動させると、膨張流体が環状流体経路36を通り、1つまたは複数の通路54を通り、膨張可能なバルーン内部へと注入される。膨張したバルーン46は、塞栓の部分を含めて、バルーン46の下流の血管82を血流から隔離する。
【0058】
[0068]
図6のステップEにおいて、塞栓除去デバイス84が内側部材管腔42を通して挿入され、内側部材30の遠位端41を越えて前進し、塞栓82を把持するか、他の方法で捕捉する。
図6のステップFで、塞栓82が患者から取り外され、バルーンガイドカテーテル10が患者から抜去される。塞栓82は、塞栓82を捕捉した塞栓除去デバイス82を、内側部材管腔42を通して近位側に引っ張って患者から出すことによって取り去ることができる。あるいは、捕捉された塞栓82を有する内側部材30を塞栓除去デバイス82と共に近位に引っ張って、患者から外に出すことができる。内側部材30は、外側部材12を患者内の所定の位置に残したままで、近位方向に引っ張ることができる。その後、外側部材12は、例えば外側部材12を通して他のカテーテルまたは医療機器を進めるためのガイドカテーテルとして引き続き使用することができる。
【0059】
[0069]さらに別の方法では、膨張流体を減圧することによって(例えば、注射器68aを通して吸引することによって)バルーン46を収縮させ、塞栓除去デバイス84およびバルーンガイドカテーテル10を血管82から近位側に引き戻して、塞栓80が血管82から除去される。
【0060】
[0070]
図6に示され、本明細書に記載されるバルーンガイドカテーテル10の使用方法は、塞栓を除去するものに限定されず、任意の適切な医療処置を実行するように変更できることを理解されたい。例えば、塞栓を除去する代わりに、
図6の方法は、医療画像装置を内側部材管腔42を通して挿入し、内側部材30の遠位端41を越えて前進させるように変更することができる。その後、医療画像装置を使用して、治療部位を撮像することができる。他の医療処置において、バルーンガイドカテーテル10は、当業者が理解するように、血管内デバイス移植などのために使用することができる。
【0061】
[0071]ここで、
図7-8に転ずると、虚血性脳卒中の治療、および他の治療または診断目的のための血流の遮断または制限など、血管系内で処置を実行するためのバルーンガイドカテーテル100の第2の実施形態が示されている。このバルーンガイドカテーテル100は、バルーンガイドカテーテル10と同様に、カテーテル10からの空気の迅速かつ効果的なパージを実現するなど、外科的処置を実行するための迅速な準備を可能にするように特別に構成される。バルーンガイドカテーテル100は、外側部材の内面ではなく、内側部材30の遠位部分40の外面32の周りに円周方向に配置されたシール156を有することを除いて、バルーンガイドカテーテル10と同様である。実際、バルーンガイドカテーテル100は、バルーンガイドカテーテル10と同じ要素の多くを有し、ここで同じ符号は同じ要素を指し、同じ要素の説明は、関連する場合はいつでも両方の実施形態に当てはまる。
【0062】
[0072]バルーンガイドカテーテル10と同じまたは同様に、バルーンガイドカテーテル100は、細長い柔軟な管状の外側部材12と、外側部材の管腔18内に配置された細長い柔軟な管状の内側部材30とを有する。バルーンガイドカテーテル100の外側部材12および内側部材30は、バルーンガイドカテーテル10と同じまたは同様の特徴を有する。内側部材30の遠位部分40は、外側部材12の遠位開口20を通って延在する。
【0063】
[0073]バルーンガイドカテーテル100はまた、外側部材12の遠位部分16の外面17に固定され、その周りに円周方向に配置されたバルーン46を有する。外側部材12は、環状流体経路36とバルーン内部52との間に流体経路を形成する、外側部材12の壁を通る1つまたは複数の導管または通路54を有する。
【0064】
[0074]バルーンガイドカテーテル100は、内側部材30の遠位部分40の外面32の周りに円周方向に配置されたエラストマーの管状シール156を有する。シール156は、外側部材12の内面34と内部材30の外面32との間に流体密シールを形成するように構成される。シール156は、適切な形状および構成を有することができるが、
図7-8に示されるシール156は、小さな近位端157から、当該近位端よりも大きな直径を有する大きな遠位端159へとテーパ形をなす円錐形の外面を有する。シール156の円錐形は、内側部材30が外側部材12に対して近位方向に移動したときに、シール156が外側部材12の遠位開口部20に挿入され、それによりシール156が外側部材12の遠位開口部20内に近位方向に移動するのを促す。
【0065】
[0075]バルーンガイドカテーテル100は、外側部材12の遠位端58の遠位に位置する内側部材30の遠位端41に遠位ストップ190を有し、このストップ190は、内側部材30の遠位端41が外側部材30の遠位端58を超えて近位方向に動くのを防ぐ。
【0066】
[0076]内側部材30は、シール156が外側部材の遠位開口部20の遠位側に配置されている非シール位置(
図7に示す)から、シール156が外側部材管腔18内に配置されてシール156が外側部材12の内面34に接触し、それによって環状流体経路36がシールされるシール位置(
図8に示す)へと、外側部材12に対して長手方向に移動可能である。シール位置では、遠位ストップ190が、外側部材12の遠位端58に押し付けられる。
【0067】
[0077]
図7に示すように、内側部材30の非シール位置では、シール156は外側部材の遠位開口部20の遠位に配置され、シールが外側部材12に接触しない。
図7を参照すると、内側部材30が外側部材12に対して長手方向近位側にシール位置へと移動され、シール156が外側部材の遠位開口部20に挿入される。内側部材が
図7に示すようにシール位置にあるとき、シール156は、シール56の位置で環状流体経路36を閉塞する。
【0068】
[0078]
図7を参照すると、内側部材30が非シール位置にあるとき、それぞれ内側部材30および外側部材12の近位部分38、14から遠位開口部43、20への流体経路が開いているので、空気はバルーンガイドカテーテル100から容易にパージすることができる。空気は、ハブ62の流体ポート64を介して外側部材の管腔18を通して、および流体インターフェース70を介して内側部材の管腔42を通して加圧流体を導入することによって、バルーンガイドカテーテル100からパージされる。
図6に示されるように、生理食塩水などの流体で満たされた注射器68aが、流体ポート64のルアーロック66に取り付けられる。次に、注射器68aを用いて加圧流体を外側部材管腔18に注入して、流体が環状流体経路36、外側部材管腔18、通路54、バルーン46を通って流れ、外側部材の遠位開口20を通って出て行くようにする。同様に、生理食塩水などの流体で満たされた注射器68bが、流体インターフェース70のルアーロック72に取り付けられる。注射器68bで加圧流体を内側部材の管腔42に注入し、流体が内側部材の管腔42、通路54、バルーン46を通って流れ、内側部材の遠位開口部43を通って出て行くようにする。カテーテルから空気をパージするためにカテーテルに流体を注入するための開放端流路により、外側部材の遠位開口部20および内側部材の遠位開口部43を通る流体の流出を観察することによって、カテーテル100から空気がうまくパージされたことが確認可能となる。
【0069】
[0079]
図8に示すように、内側部材30がシール位置にある状態で、環状流体経路36は膨張通路54の遠位の位置でシールされ、環状流体経路36に注入された加圧流体が膨張通路54を介してバルーン46に注入されるようになる。
図8に示すように、注射器68aを流体ポート64に取り付け、注射器68aを作動させると、膨張流体が環状流体経路36および通路54をそれぞれ通って流れ、バルーン内部に注入されてバルーン46を膨張させる。
【0070】
[0080]バルーンガイドカテーテル10と同様に、内側部材30は、内側部材30の遠位部分40の所望の量が外側部材12の遠位端22を越えて遠位に延びるように、遠位に移動させることができる。このようにして、遠位端22の遠位に延びる内側部材30の遠位部分40は、ガイドカテーテルアセンブリ10に柔軟な遠位端を提供する。この柔軟な遠位先端は、神経血管のような曲がりくねった領域などの血管系を通してカテーテル100を誘導および操作することを容易にすることができる。
【0071】
[0081]バルーンガイドカテーテル100のバルーン46は、膨張流体を減圧することによって収縮させることができる。一方法では、膨張流体は、注射器68aを通して吸引することによって、または単に流体ポート64を通して圧力を解放することによって減圧することができる。あるいは、バルーン46は、
図7に示されるように、内側部材30を非シール位置に移動させ(すなわち、内側部材30を外側部材12に対して遠位方向に押すことによって)、それによって環状流体経路36および通路54の閉鎖が解除され、バルーン46内の加圧流体を環状流体経路36の遠位端を越えて放出可能にすることによって、迅速に収縮させることができる。
【0072】
[0082]バルーンガイドカテーテル100を使用する方法は、
図6を参照して前述したように、バルーンガイドカテーテル10を使用する方法とほぼ同じであるが、本明細書に記載されているように、内側部材30をシール位置と非シール位置との間で移動させるプロセスが異なる。したがって、
図6に示される方法の説明は、非シール位置とシール位置との間の内側部材30の調整の違いを除いて、バルーンガイドカテーテル100を使用する方法に等しく該当する。
【0073】
[0083]
図5に示されるようなバルーン46のフラッシュ(同一面)構造と同様に、バルーンガイドカテーテル10および100はまた、膨張していないバルーン46が外側部材12の隣接する外面と実質的に同一平面となるか、半径方向に突出しないように構成することができる。例えば、
図9A-9Bは、バルーン46の領域における外側部材12の外径が減少した直径を有し、バルーン46の近位端48からバルーン46の遠位端50まで外側部材12の長さ方向に延在する窪み47(またはポケット47)を形成することを除いて、バルーンガイドカテーテル10と同じであるバルーンガイドカテーテル200の別の実施形態を示す。したがって、バルーン46が非膨張状態にあるとき、バルーン46は、バルーン46に隣接する外側部材12の外面とほぼ同一平面上となる。バルーンガイドカテーテル200およびその操作は、バルーンガイドカテーテル10と同じである。
【0074】
[0084]バルーンガイドカテーテル100も、
図9A-9Bに示される窪み47と同じか類似の窪みまたはポケットを有してもよい。この場合も、そのようなバルーンガイドカテーテルおよびその操作は、バルーンガイドカテーテル200と同じである。
【0075】
[0085]特定の実施形態を図示し説明したが、上記の説明は、これらの実施形態の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。本発明の多くの態様の実施形態および変形例が本明細書に開示され説明されているが、そのような開示は、説明および例示のみを目的として提供されている。したがって、特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正を行うことができる。例えば、実施形態に記載された構成要素のすべてが必須ではなく、本発明は、記載された構成要素の任意の適切な組み合わせを含むことができ、本発明の構成要素の一般的な形状および相対的サイズは変更することができる。システムおよび方法は細胞学的サンプルについて説明されているが、それらは任意のタイプのサンプルについて構成および利用することができる。したがって、実施形態は、特許請求の範囲内に含まれ得る代替案、変更、および均等物を例示することを意図している。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物を除いて、限定されるべきではない。