(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】ハンドル
(51)【国際特許分類】
B62D 1/06 20060101AFI20240410BHJP
G01V 3/08 20060101ALI20240410BHJP
H01H 36/00 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
B62D1/06
G01V3/08 D
H01H36/00 J
(21)【出願番号】P 2021007995
(22)【出願日】2021-01-21
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 秀明
(72)【発明者】
【氏名】時田 孝志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀伸
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-190856(JP,A)
【文献】国際公開第2019/235200(WO,A1)
【文献】特開2022-11766(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0131833(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第113734269(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0133130(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持操作用の把持部を備えたハンドルであって、
内部と連通する連通部を備え、前記把持部に対応する導電性の把持部芯金と、
この把持部芯金内にこの把持部芯金と絶縁されて配置され、前記連通部から前記把持部芯金の外部に導出される芯線と、
前記把持部芯金と前記芯線とに電気的に接続されて前記把持部芯金と前記芯線とを電極とする静電容量センサを構成するセンサユニットと、
前記把持部芯金を覆って形成される被覆部材と、
を有することを特徴とするハンドル。
【請求項2】
操向用シャフトと接続されるシャフト接続部と、
このシャフト接続部に対応するシャフト接続部芯金と、
前記シャフト接続部と把持部とを連結する連結部と、
この連結部に対応する連結部芯金と、
少なくとも前記シャフト接続部芯金及び前記連結部芯金と把持部芯金とを絶縁する絶縁部と、
を備えることを特徴とする請求項1記載のハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持操作用の把持部を備えたハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車のハンドルすなわちステアリングホイールに対して機能を追加付与することが要求されてきている。例えば、運転者が把持部であるリム部を把持したことを検出するためのセンサを備えるステアリングホイールが知られている。この構成では、リム部を構成する把持部芯金であるリム部芯金に対してシート状のシールド電極が巻き付けられるとともに、シールド電極を覆って絶縁体が形成され、かつ、絶縁体を覆ってシート状の検出電極が巻き付けられて形成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6714788号公報 (第7-8頁、
図1-3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の構成の場合、リム部の外観を低下させないために、表面に凹凸が生じないように可能な限り細い検出電極を丁寧に巻き付ける必要があり、製造が煩雑であるとともに、コストが高くなる。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、良好な外観で容易かつ安価に製造できるハンドルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載のハンドルは、把持操作用の把持部を備えたハンドルであって、内部と連通する連通部を備え、前記把持部に対応する導電性の把持部芯金と、この把持部芯金内にこの把持部芯金と絶縁されて配置され、前記連通部から前記把持部芯金の外部に導出される芯線と、前記把持部芯金と前記芯線とに電気的に接続されて前記把持部芯金と前記芯線とを電極とする静電容量センサを構成するセンサユニットと、前記把持部芯金を覆って形成される被覆部材と、を有するものである。
【0007】
請求項2記載のハンドルは、請求項1記載のハンドルにおいて、操向用シャフトと接続されるシャフト接続部と、このシャフト接続部に対応するシャフト接続部芯金と、前記シャフト接続部と把持部とを連結する連結部と、この連結部に対応する連結部芯金と、少なくとも前記シャフト接続部芯金及び前記連結部芯金と把持部芯金とを絶縁する絶縁部と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載のハンドルによれば、静電容量センサを構成するための専用の部材を用いたり、これら専用の部材を被覆部材の外観に凹凸が生じないように把持部芯金に巻き付けたりするなどの手間が不要で、把持部芯金を被覆部材によって覆った状態で、良好な外観を有するハンドルを容易かつ安価に製造できる。
【0009】
請求項2記載のハンドルによれば、請求項1記載のハンドルの効果に加えて、静電容量センサの電極の機能を把持部芯金と芯線とに制限できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は本発明の一実施の形態のハンドルの芯金を示す正面図、(b)は
図2のI-I相当位置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
図2において、10は例えば車両としての自動車の(ステアリング)ハンドルであるステアリングホイールである。このステアリングホイール10は、ハンドル本体であるステアリングホイール本体11、及び、このステアリングホイール本体11の乗員側に装着されるモジュール12などを備えている。なお、ステアリングホイール10は、通常傾斜した状態で車両に備えられる操向用シャフトであるステアリングシャフトに装着されるものであるが、以下、ステアリングホイール10を運転者(乗員)側から見て、矢印U方向を上側、矢印D方向を下側、車両の前側すなわち前側上方のフロントガラス側を前側あるいは背面側、車両の後側すなわち後側下方を後側、手前側あるいは正面側として説明する。また、ステアリングホイール10の各部の位置は、中立(ニュートラル)位置とした状態を基準とする。
【0013】
そして、ステアリングホイール本体11は、把持部であるリム部(グリップ部)15と、このリム部15の内側に位置するシャフト接続部であるボス部16と、これらリム部15とボス部16とを連結する複数の連結部であるスポーク部17と、から構成されている。
【0014】
リム部15は、運転者(乗員)により把持操作される部分である。リム部15は、少なくとも円弧状に形成されている。本実施の形態において、リム部15は、円環状に形成されている。
【0015】
ボス部16は、リム部15により周囲が囲まれている。ボス部16には、モジュール12が取り付けられる。
【0016】
スポーク部17は、本実施の形態において、左右及び下部の3本形成されている。すなわち、スポーク部17は、アナログ時計の9時方向、3時方向、及び、6時方向にそれぞれ形成されている。
【0017】
また、ステアリングホイール本体11は、
図1(a)及び
図1(b)に示す芯金20を備えている。芯金20は、例えば金属製である。芯金20は、ボス部16(
図2)の車体側となる背面側に、ステアリングシャフトと歯合するセレーション構造を備えた略円筒状のボス22を備えているとともに、ボス22に、ボス部16(
図2)を構成するシャフト接続部芯金つまりボス芯金(ハブコア芯金)であるボスプレート23が一体的に固着されている。そして、ボスプレート23から、スポーク部17(
図2)を構成する連結部芯金であるスポーク芯金部24が連続して一体的に形成されている。さらに、芯金20は、スポーク芯金部24に、リム部15に対応する把持部芯金であるリム芯金部25が溶接などして固着されている。
【0018】
スポーク芯金部24は、放射状に設けられている。スポーク芯金部24は、ボスプレート23と一体的に、例えばマグネシウム合金などにより形成されている。スポーク芯金部24は、必ずしもすべてのスポーク部17(
図2)に対応していなくてもよい。本実施の形態において、スポーク芯金部24は、ボスプレート23の左右から突出してそれぞれリム芯金部25と連結されている。すなわち、左右のスポーク部17(
図2)のみがスポーク芯金部24を有し、
図2に示すように、下部のスポーク部17についてはフィニッシャ26により構成されている。
【0019】
図1(a)及び
図1(b)に示すリム芯金部25は、リム部15の一部を構成するものである。リム芯金部25は、リム部15の形状に対応する形状に形成されている。すなわち、リム芯金部25は、リム部15の形状に応じて、例えば円弧状に形成されている。本実施の形態において、リム芯金部25は、円環状に形成されている。図示される例では、リム芯金部25は、スポーク芯金部24との連結部分を除く位置で周方向に分断され、絶縁部である接合部28によって互いに接合され円環状となっている。すなわち、本実施の形態のリム芯金部25は、上半分を構成する一のリム芯金部分である半円弧状の上部リム芯金部25aと、他のリム芯金部分である円弧状の左右の下部リム芯金部25b,25bと、の3つに分断されている。接合部28は、互いに接合する部分同士を絶縁する機能を有する。すなわち、左右の接合部28は、リム芯金部25とボスプレート23及び左右のスポーク芯金部24とを絶縁した状態で接合し、下部の接合部28は、左右の下部リム芯金部25b,25bを互いに絶縁した状態で接合する。接合部28は、例えばガラス繊維を含有するナイロン材などの合成樹脂により形成されている。
【0020】
また、リム芯金部25は、鉄などの導電性の金属により形成されている。リム芯金部25は、断面円形状であり、内部に空間部25cを有する筒状となっている。すなわち、リム芯金部25は、中空状に形成されている。リム芯金部25には、空間部25cと連通する連通部25dが形成されている。連通部25dは、リム芯金部25の内部の空間部25cと外部とを連通する部分である。好ましくは、連通部25dは、リム部15とスポーク部17(
図2)との連結部分に位置してリム芯金部25に形成されている。図示される例では、連通部25dは、リム部15と下部のスポーク部17(
図2)との連結部分である下部に位置してリム芯金部25に形成されている。本実施の形態において、連通部25dは、下部リム芯金部25b,25bの互いに対向する端部に形成されている。連通部25dは、接合部28により覆われている。
【0021】
リム芯金部25の内部、すなわち空間部25cには、芯線30が配置されている。芯線30は、導電性を有する鉄などの金属により形成されている。芯線30は、リム芯金部25内にこのリム芯金部25と絶縁されて配置されている。芯線30は、例えば空間部25cの中央部に位置し、リム芯金部25の内面から離れて位置する。芯線30は、リム芯金部25の周方向に沿って配置されている。すなわち、芯線30は、円弧状に配置されている。また、芯線30は、リム芯金部25の内部全体に亘り配置されている。芯線30は、リム芯金部25の連通部25dからリム芯金部25の外部に一端部が導出されている。芯線30の他端部は、一端部に対して離れて位置する。
【0022】
そして、芯線30と、リム芯金部25に電気的に接続された配線32と、が、センサユニット(センサECU)34と電気的に接続されている。センサユニット34は、例えばボス部16(
図2)に配置される。センサユニット34は、リム芯金部25と芯線30とを電極とする静電容量センサを構成する。すなわち、センサユニット34は、運転者などの乗員がリム部15(
図2)を把持しているか否かを静電容量の変化に基づいて検出する(ハンズオフ検知)把持検出部の回路を、リム芯金部25及び芯線30とともに構成する。静電容量センサにおいて、好ましくは、リム芯金部25(配線32)をプラス電極、芯線30をマイナス電極とする。また、静電容量センサの感度を向上するために、好ましくは、リム芯金部25と芯線30とは、接近させて配置されている。すなわち、リム芯金部25と芯線30との距離は、離れていて、かつ、小さいほど好ましい。
【0023】
また、リム芯金部25の空間部25cには、芯線30を覆って合成樹脂などの充填材36が充填されている。充填材36は、絶縁性を有し、芯線30とリム芯金部25(配線32)とを絶縁する。充填材36としては、例えばTPO材などのエラストマが用いられる。
【0024】
また、リム芯金部25の表面は、被覆部材38により覆われている。本実施の形態において、被覆部材38は、例えばリム芯金部25全体、スポーク芯金部24の一部及び接合部28を覆って形成されている。被覆部材38としては、例えば軟質の発泡ポリウレタン樹脂を微細発泡させたものが使用される。本実施の形態において、被覆部材38の表面は、皮革等からなる表皮体39により覆われているが、表皮体39は必須の構成ではない。すなわち、被覆部材38をリム部15(
図2)の最外層としてもよい。
【0025】
そして、ステアリングホイール10を製造する際には、鋳造などにより成形されたリム芯金部25と、一体的に成形されたボスプレート23及びスポーク芯金部24とを接合部28により接合して芯金20を成形する。次いで、この芯金20のリム芯金部25の空間部25c内に芯線30を配置し、空間部25cを充填材36に充填して硬化させる。さらに、連通部25dから引き出した芯線30と、リム芯金部25に電気的に接続された配線32とを含んで接合部28を形成した中間体を、所定の成形型にセットし、例えばRIM成形などを用いて被覆部材38を形成し、必要に応じて表皮体39を巻き付ける。この形成したステアリングホイール本体11は、ステアリングシャフトと連結して車体側に取り付ける。次いで、芯線30及び配線32をセンサユニット34と電気的に接続する。
【0026】
この後、ステアリングホイール本体11に、モジュール12を取り付けるとともに、必要に応じてフィニッシャ26などを取り付けることで、ステアリングホイール10が車体に取り付けられた状態で完成する。
【0027】
このように製造されたステアリングホイール10は、リム部15を乗員が把持すると、リム部15と乗員の手との接触面積または近接面積に応じて静電容量が増加する。静電容量センサでは、静電容量の変化量を所定の閾値と比較することで、乗員がリム部15を把持しているか否かを判定する。静電容量は、被覆部材38及び表皮体39の厚みが大きいほど変化量が低下するものの、閾値を被覆部材38及び表皮体39の厚みに応じて設定することで、厚みが大きくても乗員がリム部15を把持しているか否か判定可能となる。
【0028】
このように、本実施の形態によれば、リム部15に対応する通常の強度部材である導電性のリム芯金部25内に芯線30をリム芯金部25と絶縁して配置し、芯線30を連通部25dからリム芯金部25の外部に導出するとともに、リム芯金部25と芯線30とをセンサユニット34と電気的に接続して静電容量センサを構成する。そのため、静電容量センサを構成するための専用のマットやシートなどの部材を用いたり、また、これら部材を被覆部材38の外観に凹凸が生じないようにリム芯金部25に巻き付けたりするなどの手間が不要で、リム芯金部25を被覆部材38によって覆った状態で、静電容量センサを備えない通常のものと同様の良好な外観を有する静電容量センサ付きステアリングホイール10を容易かつ安価に製造できる。
【0029】
また、ボスプレート23及びスポーク芯金部24とリム芯金部25とを接合部28によって絶縁することで、静電容量センサの電極の機能をリム芯金部25と芯線30とに制限できる。
【0030】
さらに、連通部25dを構成する下部リム芯金部25b,25b間を接合部28によって接合することで、連通部25dから引き出された芯線30と、リム芯金部25に電気的に接続される配線32と、を接合部28によって互いに絶縁し、芯線30と配線32とをセンサユニット34に対し異なる極性で電気的に接続可能となる。
【0031】
なお、上記の一実施の形態において、連通部25dは、下部のスポーク部17とリム部15との連結部分に限らず、左右いずれかのスポーク部17とリム部15との連結部分にてリム芯金部25に形成されていてもよい。
【0032】
また、連通部25dは、リム芯金部25を分断して形成するものに限らず、リム芯金部25の一部に形成した内部の空間部25cと連通する孔を連通部25dとし、その連通部25dから芯線30を引き出してもよい。
【0033】
接合部28は、スポーク芯金部24までを樹脂材として一体的に形成してもよい。
【0034】
ステアリングホイール10は、3本のスポーク部17を備えた構成に限られず、2本、あるいは4本以上のスポーク部17を備えた構成などとしてもよい。
【0035】
そして、ステアリングホイール10は、自動車などの車両だけでなく、任意の乗物のステアリング用のハンドルとして用いてよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、例えば自動車などの車両用のステアリングホイールとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0037】
10 ハンドルであるステアリングホイール
15 把持部であるリム部
16 シャフト接続部であるボス部
17 連結部であるスポーク部
23 シャフト接続部芯金であるボスプレート
24 連結部芯金であるスポーク芯金部
25 把持部芯金であるリム芯金部
25d 連通部
28 絶縁部である接合部
30 芯線
34 センサユニット
38 被覆部材