(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】コンデンサデバイス
(51)【国際特許分類】
H01G 9/02 20060101AFI20240410BHJP
H01G 9/08 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
H01G9/02
H01G9/08 D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021018909
(22)【出願日】2021-02-09
(62)【分割の表示】P 2018534594の分割
【原出願日】2016-12-29
【審査請求日】2021-03-03
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-08
(31)【優先権主張番号】102015122977.3
(32)【優先日】2015-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TDK ELECTRONICS AG
【住所又は居所原語表記】Rosenheimer Strasse 141e, 81671 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィル,ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ブエノ デ カマルゴ メッロ,ファビオ アウグスト
(72)【発明者】
【氏名】ペレッタ,イゴール
(72)【発明者】
【氏名】ファリア,パウロ
【合議体】
【審判長】山田 正文
【審判官】岩田 淳
【審判官】畑中 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-216737(JP,A)
【文献】実開昭54-62044(JP,U)
【文献】特開平4-10519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G9/02
H01G9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサデバイスであって、
楕円の芯穴を有する巻回体を備え、当該芯穴は、最大直径と最小直径とを有し、
前記最小直径は、前記最大直径よりも小さく、
前記巻回体は、電極が存在しない巻回領域内部を有し
、
前記巻回領域内部は、前記楕円の芯穴の径方向外側に繋がっており、前記巻回体の直径の少なくとも35%の直径を有し、
前記巻回領域内部は、本質的にペーパーおよび電解質からなり、
正極接続端子と負極接続端子とを備え、前記正極接続端子および前記負極接続端子の各々は、前記巻回体に接触して接続されており、前記芯穴の互いに反対側に配置され、
前記正極接続端子と前記負極接続端子との間の結合直線は、前記巻回体の前記芯穴の前記最大直径に対
して垂直となっており、
前記巻回体は、前記巻回体で点状に作用する力によって、前記巻回体の局部的にのみ生成される変形を生じ得るように構築され、前記巻回体で点状にのみ作用する力が前記巻回体全体の変形をもたらさないように構築されており、
前記巻回体の他の領域と比較して剛性が低下した前記巻回体の内部領域を備えることにより、前記巻回体の変形を局部的な領域に限定する、コンデンサデバイス。
【請求項2】
前記巻回領域内部は、前記巻回体の直径の少なくとも45%の直径を有する、請求項1に記載のコンデンサデバイス。
【請求項3】
前記芯穴の最大直径は、少なくとも6mmおよび/または前記巻回体の直径の少なくとも25%である、請求項1に記載のコンデンサデバイス。
【請求項4】
前記芯穴の前記最大直径は、前記巻回体の直径の少なくとも35%である、請求項1に記載のコンデンサデバイス。
【請求項5】
前記巻回体は、7mmから30mmまでの範囲の直径を有する、請求項1に記載のコンデンサデバイス。
【請求項6】
前記巻回体は、10mmから22mmまでの範囲の直径を有する、請求項1に記載のコンデンサデバイス。
【請求項7】
前記芯穴の前記最大直径は、前記
最小直径よりも少なくとも1mm以上大きい、請求項1に記載のコンデンサデバイス。
【請求項8】
前記コンデンサデバイスは、1つの電解コンデンサである、請求項1に記載のコンデンサデバイス。
【請求項9】
前記コンデンサデバイスは、内部に絞り溝が形成されたハウジングを備え、前記巻回体は、前記ハウジングの内部に配置され、前記巻回体は、前記絞り溝により保持される、請求項1に記載のコンデンサデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンデンサデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
このコンデンサデバイスは、具体的には1つの電解コンデンサであり得る。このコンデンサデバイスは、具体的には軸構造の1つの電解コンデンサであり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、改善されたコンデンサデバイスを提供することである。この改善されたコンデンサデバイスは、たとえば1つの巻回体に作用する力(複数)による損傷に対して敏感とならないようにすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題は請求項1に記載のコンデンサデバイスによって解決される。
【0005】
本発明は1つのコンデンサデバイスを提示し、このコンデンサデバイスは、1つの楕円の芯穴を有する1つの巻回体を備え、この芯穴は、最大直径とこの最大直径より小さな最小直径とを有する。上記の巻回体は、この巻回体で点状に作用する力によって、この巻回体の局部的にのみ生成される変形を生じ得るように構築されている。
【0006】
芯穴は、ここではこの巻回体の内側の1つの開孔部を意味し、この開孔部にはこの巻回体のシート(複数)は存在しない。この芯穴は、この巻回体のシートが1つの心棒の回りに巻回され、この後この心棒が取り外されることによって生成する。楕円形の芯穴を生成するためには、1つの楕円形または扁平な心棒を使用することができる。
【0007】
局部的に限定された変形が生じるような、上記の芯穴の楕円形状も、また上記の巻回体の構造も、巻回体に作用する力(複数)によって生じ得る損傷に対して、本コンデンサデバイスが敏感でないようにすることを可能とする。
【0008】
コンデンサデバイスの巻回体は、一般的には円形の断面を有する1つの円筒形状のハウジング内に構築されているので、この巻回体の断面がほぼ円形の形状を有していると有利である。この巻回体断面の円形の形状によって、このハウジングからこの巻回体に作用する力(複数)が、この巻回体の外周に渡って均等に分布されていることを保証することができる。ここで上記の芯穴の楕円形状は、この巻回体の形状に狙い通りに合わせ込むことを可能とする。たとえば1つの正極接続端子または1つの負極接続端子の配設のために、たとえばこの巻回体が所定の領域で拡がっていると、この影響はこれに対応した楕円の芯穴の構造によって相殺することができる。こうしてこの楕円の芯穴は、上記の巻回体の異なる幅の領域が実質的に均等に、この巻回体に作用する力(複数)によって影響を受けるようにすることを保証することができる。
【0009】
上記の芯穴の直径は、ここでは2つの互いに反対側にあるこの芯穴の縁点を互いに結び、そしてここでこの芯穴の中点を通って延在する結合直線を意味する。その楕円形で、非円形である形状のために、この芯穴は異なる大きさの直径を備える。具体的には、この芯穴は、この芯穴の2つの互いに反対側にある2つの縁点の最大距離を表す、最大の直径を備えており、ここでこれらの点の結合直線はこの芯穴の中点を通って延在している。これに対応して、最小の直径は、この芯穴の2つの互いに反対側にある2つの縁点の最小距離を表しており、ここでこれら2つの点の結合直線はこの巻回体の穴の中点を通って延在している。ここでこの芯穴は常に、巻回軸に対して垂直になっている断面で見ており、この巻回軸の回りにこの巻回体が巻回されている。
【0010】
さらに上記の巻回体は、この巻回体で点状に作用する力によって、この巻回体の局部的にのみ生成される変形を生じ得るように構築されている。ここで局部的な変形は、この巻回体の外周全部に渡って延在するものでなく、むしろこの巻回体の部分領域にのみに関するものと考えてよい。特にこの巻回体は、この巻回体で点状にのみ作用する力がこの巻回体全体の変形をもたらさないように構築されている。
【0011】
ここでは、力がこの巻回体全体に、全面的に作用するのでなく、むしろこの巻回体の全表面よりも顕著に小さな領域にのみ作用する場合に、力が点状に作用すると表現することができる。ここでは1つの絞り溝(Sicke)によってこの巻回体に印加される力も、点状に作用するものと考える。
【0012】
この変形を局部的な領域に限定することは、様々な方法で達成することができる。たとえば上記の巻回体は、1つの巻回領域内部を備えてよく、この巻回領域内部には電極が存在せず、そしてこの巻回領域内部は、直接上記の楕円の芯穴に繋がっている。代替としてまたは追加的に、この巻回体は、1つのとりわけ大きく形成された楕円の芯穴を備え、この芯穴は、たとえば少なくとも6mmの最大直径を備え、および/またはこの巻回体の直径の少なくとも25%の最大直径を備える。以上により上記の2つの実施形態例では、この巻回体の内部領域は、この内部領域がセパレータ材料のみを備えるか、あるいはこの内部領域に材料が存在しないことによって、その剛性が低下し、こうしてこの内部領域はその剛性が低下した領域において、上記巻回体で点状に作用する力を吸収することができ、そして1つの局部的な変形の形態でこの力を消散させることができる。
【0013】
このようなこの巻回体で点状に作用する力は、たとえばこの巻回体が配設されているハウジングに形成されている1つの絞り溝によって生じ得る。上記の円柱状の巻回体は、このハウジング内に、この絞り溝によって保持することができる。これに対応して、ここでこの絞り溝は、この巻回体に保持力を印加する。
【0014】
たとえば、正極接続端子(複数)および負極接続端子(複数)が上記の巻回体に溶接される点状の溶接部位(複数)に、この巻回体は脆弱部を有し、この脆弱部は、この巻回体の機械的な変形の際に、この巻回体の貫通(Durchstechen)をもたらし得る。この際1つの負極シートが1つの正極シートと接触し、そして直流的な短絡を生じ、この短絡はこのコンデンサデバイスの破壊をもたらし得る。
【0015】
上述のコンデンサデバイスは、上記の巻回体の変形が低減されて、このような貫通が発生することを防止することができる。
【0016】
本願に記載するコンデンサデバイスの構成は、以上のようにして巻回体の貫通の危険性を低減することができる。この巻回体の大きすぎる変形の結果、しばしば貫通が生じる。上述したように、しかしながら本願に記載する巻回体の構成によって、このような変形を局部的に限定することができる。以上により、絶縁破壊の防止のための他の方法、たとえば特に厚いあるいは高密度のセパレータ(複数)、すなわち電解質ペーパーは、短絡を防止するためには不要である。はるかに薄いセパレータ(複数)、すなわち40μm~60μmの厚さの電解質ペーパーを使用することができ、これらの薄いセパレータは、小さなESR(ESR=Equivalent Series Resistance)を有するコンデンサデバイスを構築することを可能とする。こうしてこのようなコンデンサデバイスは、小さな内部損失抵抗を備え、そしてこれにより、より良好な効率を備える。
【0017】
1つの実施形態例においては、上記の巻回体は、電極が存在しない1つの巻回領域内部を備えてよく、この巻回領域内部は、上記の楕円の芯穴で径方向外側に繋がっており、そしてこの巻回体の直径の少なくとも35%の直径、好ましくはこの巻回体の直径の少なくとも45%の直径を有する。上記の巻回領域内部は、具体的には上記の楕円の芯穴で径方向外側に繋がっていてよい。
【0018】
この巻回領域内部は、1つのセパレータ材料から成っていてよい。この巻回領域内部は、ペーパーすなわち電解質ペーパーから成っていてよい。この巻回領域内部は、ペーパーおよび電解質から成っていてよい。この巻回領域内部は、実質的にリング状となっていてよく、そして上記の楕円の芯穴を包囲してよい。ここで上記の巻回領域内部の直径は、実質的にリング状の巻回領域内部では、このリングの外径を表している。
【0019】
上記の巻回領域内部には電極が無いので、この巻回領域内部は、上記の巻回体の電極を含む他の領域よりも柔らかくなっている。これによりこの巻回領域内部は、力がこの巻回体に印加されると容易に変形する。これに応じてこの巻回領域内部は、この巻回体に印加される力(複数)を吸収することを可能とし、この巻回体の電極が配設されている領域の変形および/または損傷を生じることが無い。このようにしてこの巻回体の貫通(Durchstechen)による電気的な短絡の危険性が低減される。
【0020】
代替としてまたは追加的に、上記の芯穴の最大直径は少なくとも6mmであってよく、および/または上記の巻回体の直径の少なくとも25%であってよい。こうして上記の芯穴は、上記のコンデンサの製造のために巻回工程で必要な大きさよりも大きく形成されていてよい。この際この大きな芯穴は、上記の巻回領域内部と同様に機能する。これは上記の巻回体に作用する力(複数)を、上記の電極が形成されている領域におけるこの巻回体の変形が生じないように、吸収することを可能とする。さらに上記の芯穴の最大直径は、上記の巻回体の直径の少なくとも35%となっていてよい。
【0021】
上記の拡大された芯穴も、また電極が無い巻回領域内部の形成も、巻回型コンデンサの一般的な目標である、出来る限り大きな電極によってキャパシタンスを大きくするということでは、逆行するように見える。上述したように、しかしながら上記の実施形態例は、上記の巻回体に作用する力(複数)による損傷に対して敏感でない巻回体を構築することを可能とする。この利点は、達成可能な最大キャパシタンスが低減されることを相殺して余りあるものである。
【0022】
上記の巻回体は、7mm~30mmの範囲、好ましくは10~22mmの範囲の直径を有して良い。このオーダーの大きさの直径は、巻回型電解コンデンサではおしなべて一般的なものである。この直径は、上記の楕円の芯穴の直径に関連して用いられる。ここでは上記の楕円の芯穴は、この巻回体のその内部におけるあまり重要でない部分に材料が無いように構成されていることが示されている。以上によりこの巻回体の剛性は低減され、そしてこの巻回体はこれに作用する力(複数)による損傷に対して敏感でないようになる。
【0023】
上記の芯穴の最大直径は、上記の芯穴の最小直径よりも少なくとも1mm以上大きくてよい。この最大直径がこの最小直径よりも少なくとも1mm以上大きいと、これに対応した上記の楕円の芯穴の向きとすることで、上記の正極接続端子および負極接続端子が円形の巻回体の変形をもたらすという影響を相殺することができる。
【0024】
本コンデンサデバイスは、1つの正極接続端子および1つの負極接続端子を備え、これらはそれぞれ上記の巻回体と接続されており、そしてこれらは互いに上記の芯穴の反対側に配設されている。
【0025】
この正極接続端子と負極接続端子との間の結合直線は、この巻回体の最大の直径に沿った線に対して垂直となり得る。この正極接続端子と負極接続端子との間に結合直線は、この巻回体の最小の直径に沿った線に対して平行に延在し得る。以上ではこの巻回体は、巻回軸に対して垂直に切った断面で見ている。上記の正極接続端子および上記の負極接続端子に関するこのようなこの楕円の芯穴の向きによって、この楕円の芯穴がこれらの接続端子によるこの巻回体の変形を相殺することが保証される。これによりその断面がほぼ円形となるように巻回体を構築することができる。
【0026】
本コンデンサデバイスは、1つの電解コンデンサであってよい。
【0027】
以下では、図を参照して、本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】1つの第1の実施形態例による、1つのコンデンサデバイスの断面を示す。
【
図2】1つのコンデンサデバイスのレントゲン写真を示す。
【
図3A】ハウジングがコンデンサデバイスの巻回体に印加する力の分布を示す。
【
図3B】ハウジングがコンデンサデバイスの巻回体に印加する力の分布を示す。
【
図4】1つの第2の実施形態例による、1つのコンデンサデバイスの断面を示す。
【0029】
図1は、1つのコンデンサデバイス1の1つの第1の実施形態例を示す。このコンデンサデバイス1は、1つの巻回体2を備える。この巻回体2は、正極シート3,負極シート4,およびセパレータ5から成る複数の層を備え、これらの層は上下に重なって1つの巻回軸の回りに巻回されている。このセパレータ5は、ペーパーであってよい。これらの正極シート3および負極シート4は、それぞれこのコンデンサデバイスの1つの電極を形成する。
図1は、このコンデンサデバイス1を断面で示し、ここでこのコンデンサデバイス1は、巻回軸に対して垂直に切断されている。
【0030】
このコンデンサデバイス1は、1つの楕円の芯穴6を備える。この楕円の芯穴の中心点は、この巻回体2の中心点に在る。この楕円の芯穴6は、最大直径7および最小直径8を備え、ここでこの最小直径8は、この最大直径7よりも小さくなっている。この最大直径7も、またこの最小直径8も、この楕円の芯穴6の中心点を通って延在している。この楕円の芯穴6は、上記の複数の層が平坦または楕円の1つの巻回芯棒の回りに巻回されて生成される。
【0031】
さらにこのコンデンサデバイス1は、1つの正極接続端子9および1つの負極接続端子10を備える。これらの正極接続端子9および負極接続端子10は、それぞれ帯状に形成されている。これらの接続端子は上記の巻回軸の方向に延伸している。この正極接続端子9は、正極シート3と電気的に接続している。この負極接続端子10は、負極シート4と電気的に接続している。これらいずれの場合もその接続は溶接によって行われる。具体的には、この正極接続端子9は、正極シート3に複数の部位で点状に溶接されていてよい。この負極接続端子10は、負極シート4に複数の部位で点状に溶接されていてよい。
【0032】
1つの代替の実施形態例においては、本発明によるコンデンサデバイス1は、上記の正極シート3に溶接されている複数の正極接続端子9、および上記の負極シート4に溶接されている複数の負極接続端子10を備えてよい。
【0033】
図2は、このような複数の正極接続端子9および複数の負極接続端子10を有する代替の実施形態例による1つのコンデンサデバイス1のレントゲン写真を示す。
図2では、これらの接続端子9,10がそれぞれ点状に正極シート3あるいは負極シート4に結合されていることが見て取れる。これらの点状の溶接部位(複数)によって、巻回体2に凹凸が生じ得る。
【0034】
この巻回体2は、1つのハウジング11内に配設されており、このハウジングはほぼ円筒形となっている。このハウジング11には1つの絞り溝12が形成されている。ここで、たとえばこの絞り溝12によって、機械的な圧力がこの巻回体2に印加されると、これにより具体的には上記の接続端子9,10の点状の溶接によって生じるこの巻回体2の凹凸のある部位が、この機械的な圧力によって機械的な変形をうける危険性がある。このような機械的な変形によって、このコンデンサデバイス1は電圧耐性が損なわれ得る。
【0035】
しかしながらさらに重要な危険性は、いわゆる「貫通」にある。この際上記の巻回体2の複数の層は強く変形し、その機械的な変形の結果正極シート3が負極シート4に直接接触することが起こり、こうして電気的な短絡がおこるようになる。以下にさらに詳細に説明されるように、この巻回体2は、このような巻回体2で点状に作用する力の結果生じる変形が局部的に限定されたままとなるように構成されている。以上によりこの巻回体2の様々な部位に生じる複数の変形が互いに強め合うことを防止することもできる。
【0036】
図1は巻回体2が、正極シート3および負極シート4が無い、1つの巻回領域内部13を備えることを示す。この巻回領域内部13は、直接楕円の芯穴6に繋がっている。この巻回領域内部13において、この巻回体2はセパレータの層(複数)のみを含んでいる。ここでこのセパレータは、具体的にはペーパーおよび電解質であり得る。正極シート3および負極シート4は、この巻回領域内部13に配設されていないので、この巻回領域内部13にはこれらのシート3,4から形成される電極(複数)は無い。この巻回領域内部13は、この巻回体2の直径DWの少なくとも35%の直径DIWを有し、好ましくはこの直径DWの少なくとも45%となっている。
【0037】
この巻回領域内部13には電極が無いので、この巻回領域内部は小さな機械的剛性を有する。これによりこの巻回領域内部は、さらに外側にあるこの巻回体2の領域よりも柔らかく構成されている。このためこの巻回体2全体は、正極シート3および負極シート4がこの巻回領域内部13にも配設された場合よりも堅くなっていないであろう。これはこの巻回体2に点状に作用する力(複数)が、この巻回体2の局部的な変形(複数)のみを生じることをもたらす。具体的にはこの巻回体2は、たとえば巻回領域内部13の1つの部分において変形することができ、これによってこの巻回体2の他の領域に悪影響が無いようにすることができる。こうしてこの巻回領域内部13は、この作用する力を吸収し、この力をこの巻回体2の他の領域に伝えることがない。
【0038】
さらに
図1は、正極接続端子9および負極接続端子10が互いに芯穴6の反対側に配設されていることを示す。具体的にはこの正極接続端子9とこの負極接続端子10との間の結合直線14は、上記の芯穴6の最大直径8に対して垂直になっている。
【0039】
この正極接続端子9およびこの負極接続端子10によって、巻回体2の大きさは、この2つの接続端子9,10の結合直線14の方向で大きくなっている。この影響を相殺するために、楕円の芯穴6は、この2つの接続端子9,10の結合直線14が、この楕円の芯穴の最小直径8に対して平行に延在するように配向されている。これらの接続端子9,10によるこの巻回体2の拡張は、こうして芯穴6の薄く形成された方向において相殺される。以上により全体としてほぼ円形の断面の巻回体を実現することができる。
【0040】
この円形の断面は、コンデンサデバイス1のハウジング11は、通常円形の断面を有しているので、しばしば有利となり得る。巻回体2が円形の断面を有する1つのハウジング内に組み込まれると、円形の巻回体2は、このハウジング11から印加される機械的力(複数)がこの巻回体2の外周に渡って均等に分布されるという利点を有する。このような力は、具体的にはこのハウジング11に取り付けられる絞り溝12によって印加され得る。この巻回体2の形状が円形から大きくずれると、このような力(複数)は、不均等に分布されているであろうが、これはこのコンデンサデバイス1の耐振性に不利に作用するであろう。
【0041】
図3Aおよび3Bは、巻回体2を1つの絞り溝12を有するハウジング11の中に入れた後に、それぞれの巻回体2に作用する力を示している。図示を簡単にするために、これらの
図3Aおよび3Bには負極シートが示されていない。
【0042】
ここで
図3Aは、円形の芯穴を備え、電極が存在しない巻回領域内部13を全く備えない1つのコンデンサデバイス1を示す。
図3Aは、正極接続端子9の負極接続端子10との結合直線14に沿って、特に大きな機械的な力が巻回体2に作用することを示している。これにより不均等な力の分布となり、これはこのコンデンサデバイス1の耐振性に悪影響を与える。
【0043】
これに対し
図3Bは、楕円の芯穴6を備え、電極が存在しない巻回領域内部13を備える巻回体2での均等な力の分布を示している。ここで
図3Aと比較して、正極接続端子9の負極接続端子10との結合直線14に沿って、大幅に小さな機械的な力が巻回体2に作用していることが見て取れる。これにより、大幅により均等な力分布となり、こうしてこの巻回体2は改善された耐振性を備える。
【0044】
こうして上記の楕円の芯穴6および巻回領域内部13は、互いに補足的な技術的効果をもたらす。最小直径8が正極接続端子9の負極接続端子10との結合直線14と一致するように、この楕円の芯穴6を配向することによって、この巻回体2のほぼ円形の断面を実現することができ、この円形の断面はこの巻回体2に作用する力(複数)を均等に分布する効果をもたらす。さらにこの巻回領域内部13は、これらの力によって生成される変形を吸収することができるように、そしてこの変形か局部的にのみ生じるように機能し、この巻回体2全体に悪影響を与えないように機能する。こうしてこのコンデンサデバイス1は全体として、巻回体2に印加される力(複数)による損傷に対して、とりわけ敏感でないものとなる。
【0045】
図4は、本発明によるコンデンサデバイス1の1つの第2の実施形態例を示し、このコンデンサデバイスでは芯穴6は、上記の巻回工程で必要であるよりももっと大きな最大直径7を備える。この芯穴6は、たとえば少なくとも6mmの最大直径7を有してよい。代替としてまたは追加的に、この芯穴6は巻回体2の直径DWの少なくとも25%の最大直径7を有してよく、好ましくはこの巻回体2の直径DWの少なくとも35%であってよい。この際この巻回体2は、5mm~30mmの範囲、好ましくは10~22mmの範囲の直径を有して良い。
【0046】
この特に大きく形成された楕円の芯穴6は、丁度上記の第1の実施形態例における電極の無い巻回領域内部13のように、この巻回体2がより堅くならないように作用する。この特に大きく形成された楕円の芯穴6は、これによって、この巻回体2に点状に作用する力(複数)による局部的な変形を可能とする。
【符号の説明】
【0047】
1 : コンデンサデバイス
2 : 巻回体
3 : 正極シート
4 : 負極シート
5 : セパレータ
6 : 芯穴
7 : 最大直径
8 : 最小直径
9 : 正極接続端子
10 : 負極接続端子
11 : ハウジング
12 : 絞り溝
13 : 内側巻回領域
14 : 結合直線
DIW : 巻回領域内部の直径
DW : 巻回体の直径