(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】異常振動検知装置、異常振動検知方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01H 17/00 20060101AFI20240410BHJP
G01M 15/12 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
G01H17/00 A
G01M15/12
(21)【出願番号】P 2021029077
(22)【出願日】2021-02-25
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】391008559
【氏名又は名称】株式会社トランストロン
(74)【代理人】
【識別番号】100170070
【氏名又は名称】坂田 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】小山内 宏嗣
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-229815(JP,A)
【文献】特開2020-180605(JP,A)
【文献】特開平08-278191(JP,A)
【文献】特開平01-217218(JP,A)
【文献】特開2008-196876(JP,A)
【文献】特開2003-065142(JP,A)
【文献】特表2011-503542(JP,A)
【文献】特開2003-322053(JP,A)
【文献】特開平09-189211(JP,A)
【文献】特開2020-097938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00-17/00
G01M 15/00-15/14
G01M 17/00-17/10
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内燃機関の気筒数を含む内燃機関情報に基づいて、前記内燃機関が正常に動作しているときに発生する振動の周波数である正常振動周波数についての情報を含む予測値を生成する予測値生成部と、
前記車両の振動を示す振動データであって、周波数と振動の大きさとの関係を示す振動データを取得し、当該振動データと前記予測値とを差分した結果に基づいて、異常振動を検知する異常振動検知部と、
を備えることを特徴とする異常振動検知装置。
【請求項2】
前記予測値生成部は、前記気筒数に基づいて前記正常振動周波数を求める
ことを特徴とする請求項1に記載の異常振動検知装置。
【請求項3】
前記予測値生成部は、前記気筒数に基づいて第1周波数を求め、前記第1周波数に係数を掛けて前記第1周波数を含む周波数帯域を求め、当該周波数帯域を前記正常振動周波数とする
ことを特徴とする請求項2に記載の異常振動検知装置。
【請求項4】
異常振動の周波数と、当該異常振動が発生した回数を示す情報を含む異常振動頻度情報に基づいて、前記異常振動のうちの発生頻度が閾値を超えた異常振動である高頻度異常振動を抽出する高頻度異常振動抽出部と、
前記高頻度異常振動が抽出されたことを示す情報を出力する出力部と、
を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の異常振動検知装置。
【請求項5】
前記異常振動検知部は、前記異常振動の周波数を求め、
前記異常振動頻度情報は、前記異常振動の周波数及び前記異常振動の発生日時を示す情報に基づいて生成される
を備えたことを特徴とする請求項4に記載の異常振動検知装置。
【請求項6】
表示部と、
前記表示部を制御する表示制御部と、を備え、
前記表示制御部は、前記高頻度異常振動が抽出されたことを示す情報が前記出力部から出力されたら、前記高頻度異常振動が抽出されたことを示す文字情報を前記表示部に表示させる
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の異常振動検知装置。
【請求項7】
発光部と、
前記発光部を制御する発光制御部と、を備え、
前記発光制御部は、前記高頻度異常振動が抽出されたことを示す情報が前記出力部から出力されたら前記発光部を点灯又は点滅させる
ことを特徴とする請求項4から6のいずれか一項に記載の異常振動検知装置。
【請求項8】
前記車両に設けられた加速度センサと、
前記加速度センサで取得されたデータに基づいて、経時的な振動の変化を示す経時データを生成する経時データ生成部と、
前記経時データのうちの所定期間内に取得されたデータに基づいて前記振動データを生成する振動データ生成部と、
を備え、
前記予測値生成部は、生成した前記振動データを含む過去の実測データの大きさに基づいて前記予測値の大きさを求める
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の異常振動検知装置。
【請求項9】
車両の内燃機関の回転数を含む内燃機関情報に基づいて、前記内燃機関が正常に動作しているときに発生する振動の周波数である正常振動周波数についての情報を含む予測値を生成するステップと、
前記車両の振動を示す振動データであって、周波数と振動の大きさとの関係を示す振動データを取得し、当該振動データと前記予測値とを差分した結果に基づいて、異常振動を検知するステップと、
を含むことを特徴とする異常振動検知方法。
【請求項10】
コンピュータを、
車両の内燃機関の回転数を含む内燃機関情報に基づいて、前記内燃機関が正常に動作しているときに発生する振動の周波数である正常振動周波数についての情報を含む予測値を生成する予測値生成部、
前記車両の振動を示す振動データであって、周波数と振動の大きさとの関係を示す振動データを取得し、当該振動データと前記予測値とを差分した結果に基づいて、異常振動を検知する異常振動検知部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常振動検知装置、異常振動検知方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、設備の正常運転時のデータのみを用いて、設備の異常の発生ないし異常の兆候を検出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、正常な振動範囲内の周波数又は正常な振動範囲に近い周波数の異常振動が発生した場合に、異常振動を異常として検知することができない。
【0005】
本発明はこのような事情を鑑みてなされたもので、正常な振動範囲内の周波数又は正常な振動範囲に近い周波数の異常振動を精度よく検知することができる異常振動検知装置、異常振動検知方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様にかかる異常振動検知装置は、車両の内燃機関の気筒数を含む内燃機関情報に基づいて、前記内燃機関が正常に動作しているときに発生する振動の周波数である正常振動周波数についての情報を含む予測値を生成する予測値生成部と、前記車両の振動を示す振動データであって、周波数と振動の大きさとの関係を示す振動データを取得し、当該振動データと前記予測値とを差分した結果に基づいて、異常振動を検知する異常振動検知部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様にかかる異常振動検知装置では、振動データと予測値とを差分した結果に基づいて異常振動を検知する。差分した結果においては、内燃機関が正常に動作しているときに発生する振動は除去され、内燃機関が正常に動作しているときに発生する振動の周波数に近い周波数の異常振動は残る。これにより、正常な振動範囲内の周波数又は正常な振動範囲に近い周波数の異常振動を精度よく検知することができる。
【0008】
前記予測値生成部は、前記内燃機関情報である前記回転数及び前記内燃機関の気筒数に基づいて前記正常振動周波数を求めてもよい。これにより、実測値から予測値を求める場合と異なり、誤差が生じず、予測値の精度を高くすることができる。
【0009】
前記予測値生成部は、前記回転数及び前記気筒数に基づいて第1周波数を求め、前記第1周波数に係数を掛けて前記第1周波数を含む周波数帯域を求め、当該周波数帯域を前記正常振動周波数としてもよい。これにより、センサの揺らぎ、遅延等により発生しうる検知ミスを減らすことができる。また、係数を調整することで検出精度の調整が容易に行える。
【0010】
異常振動の周波数と、当該異常振動が発生した回数を示す情報を含む異常振動頻度情報に基づいて、前記異常振動のうちの発生頻度が閾値を超えた異常振動である高頻度異常振動を抽出する高頻度異常振動抽出部と、前記高頻度異常振動が抽出されたことを示す情報を出力する出力部と、を備えてもよい。これにより、連続的に発生している異常振動についての情報を出力することができる。
【0011】
前記異常振動検知部は、前記異常振動の周波数を求め、前記異常振動頻度情報は、前記異常振動の周波数及び前記異常振動の発生日時を示す情報に基づいて生成されてもよい。これにより、高頻度異常振動を精度よく抽出することができる。
【0012】
表示部と、前記表示部を制御する表示制御部と、を備え、前記表示制御部は、前記高頻度異常振動が抽出されたことを示す情報が前記出力部から出力されたら、前記高頻度異常振動が抽出されたことを示す文字情報を前記表示部に表示させてもよい。これにより、異常振動が発生したこと、及び、異常振動が繰り返し発生しているか否かをユーザが知ることができる。
【0013】
発光部と、前記発光部を制御する発光制御部と、を備え、前記発光制御部は、前記高頻度異常振動が抽出されたことを示す情報が前記出力部から出力されたら前記発光部を点灯又は点滅させてもよい。これにより、異常振動が発生したことをユーザが容易に知ることができる。
【0014】
前記車両に設けられた加速度センサと、前記加速度センサで取得されたデータに基づいて、経時的な振動の変化を示す経時データを生成する経時データ生成部と、前記経時データのうちの所定期間内に取得されたデータに基づいて前記振動データを生成する振動データ生成部と、を備え、前記予測値生成部は、生成した前記振動データを含む過去の実測データの大きさに基づいて前記予測値の大きさを求めてもよい。これにより、高精度の予測値を生成することができる。
【0015】
本発明の他の態様にかかる異常振動検知方法は、車両の内燃機関の回転数を含む内燃機関情報に基づいて、前記内燃機関が正常に動作しているときに発生する振動の周波数である正常振動周波数についての情報を含む予測値を生成するステップと、前記車両の振動を示す振動データであって、周波数と振動の大きさとの関係を示す振動データを取得し、当該振動データと前記予測値とを差分した結果に基づいて、異常振動を検知するステップと、を含むことを特徴とする。また、本発明の他の態様にかかるプログラムは、コンピュータを、車両の内燃機関の回転数を含む内燃機関情報に基づいて、前記内燃機関が正常に動作しているときに発生する振動の周波数である正常振動周波数についての情報を含む予測値を生成する予測値生成部、前記車両の振動を示す振動データであって、周波数と振動の大きさとの関係を示す振動データを取得し、当該振動データと前記予測値とを差分した結果に基づいて、異常振動を検知する異常振動検知部、として機能させる。これにより、正常な振動範囲内の周波数又は正常な振動範囲に近い周波数の異常振動を精度よく検知することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、正常な振動範囲内の周波数又は正常な振動範囲に近い周波数の異常振動を精度よく検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係る情報処理装置としての制御装置を含む異常振動検知装置1の全体構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図2】異常振動検知装置1のデータの流れの一例を模式的に示す図である。
【
図5】振動データと予測値とを差分した結果の一例を示す図である。
【
図7】異常振動情報DB42の一例を示す図である。
【
図8】異常振動頻度情報DB43の一例を示す図である。
【
図9】制御装置10のハードウェア構成の一例を概略的に示すブロック図である。
【
図10】異常振動検知装置1による処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図11】発光部31及び表示部32を含む表示装置30の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0019】
図1は、本実施形態に係る異常振動検知装置1の全体構成の一例を示す機能ブロック図である。
図2は、異常振動検知装置1のデータの流れの一例を模式的に示す図である。異常振動検知装置1は、車両の内燃機関から発生する振動が正常な振動か否かを検知する装置である。
【0020】
異常振動検知装置1は、経時データ生成部11と、振動データ生成部12と、予測値生成部13と、異常振動検知部14と、高頻度異常振動抽出部15と、出力部16と、発光制御部17と、表示制御部18と、記憶部19と、センサ21と、入力部22と、発光部31と、表示部32とを備える。異常振動検知装置1は情報処理装置としての制御装置10を含む。制御装置10は、移動体通信網又は無線通信等の通信ネットワークを介して図示しない外部装置と互いに通信可能に構成されている。
【0021】
経時データ生成部11は、加速度センサを含むセンサ21(後に詳述)で取得されたデータに基づいて、経時的な振動の変化を示す経時データを生成する。経時データ生成部11は、センサ21でからデータを取得し、A/D変換を行い、A/D変換後のデータに基づいて振動の振幅及び周波数を求める。加速度センサで取得されたデータに基づいて、振動の振幅及び周波数を求める手法は公知であるため、説明を省略する。
【0022】
経時データ生成部11は、任意のサンプリング周期毎に、連続して振動の振幅及び周波数を求める。つまり、経時データ生成部11では、経時的な振動の変化を示す経時データを生成する。
【0023】
振動データ生成部12は、経時データのうちの所定期間内に取得されたデータに基づいて、車両の振動を示す振動データを生成する。振動データは、周波数と振動の大きさとの関係を示す。振動データ生成部12は、経時データ生成部11から経時データを取得し、そのうちの一定期間内に取得されたデータを周波数解析して、周波数と振動の大きさとの関係を示す振動データを生成する。本実施の形態では、振動データ生成部12は、高速フーリエ変換をすることによりパワースペクトルを得る。すなわち、振動データ生成部12は、
図3に示すような周波数と振動の大きさとの関係を示す振動データを生成する。なお、振動データにおける振動の大きさはパワーであるが、振幅の絶対値でもよい。
【0024】
振動データ生成部12は、生成した振動データを、記憶部19が有する実測データDB40に格納する。なお、実測データDB40には、過去に車両で測定された振動の実測データが予め格納されている。また、実測データDB40は車種ごとに作成することが望ましい。
【0025】
図6は、実測データDB40の一例を示す図である。実測データは、日時を示す情報と、その日時に取得された振動に関する情報(周波数、大きさ)等が含まれる。なお、同じ日時に周波数が異なる複数の振動成分が測定されることもあるため、実測データは、日時が同じデータを複数有する場合がある。
【0026】
図1、2の説明に戻る。予測値生成部13は、センサ21から取得された情報及び記憶部19に記憶された情報(内燃機関情報、実測データ等)に基づいて、内燃機関が正常に動作しているときに発生する振動(正常な振動)の予測値を生成する。内燃機関情報は、車両の内燃機関の気筒数、内燃機関の点火タイミング、燃料噴射量の関係等を含む情報である。また、予測値は、正常な振動の周波数である正常振動周波数及び正常な振動の大きさについての情報を含む。
【0027】
予測値生成部13は、アクセル開度を検知するセンサ、車速計等を含むセンサ21から入力された情報、すなわち車両のアクセル開度及び車速に基づいて内燃機関の点火タイミング、燃料噴射量の関係等の情報を記憶部19から取得し、これらに基づいて内燃機関の回転数を算出する。なお、内燃機関の点火タイミング、燃料噴射量の関係等の情報は車種毎に異なる。記憶部19には、内燃機関の点火タイミング、燃料噴射量の関係等の情報が車種を示す情報と関連付けて記憶されている。
【0028】
目標とする回転数や気筒数により、内燃機関の制御量、例えば、燃料点火のタイミング、バルブ動作のタイミング、燃料噴射量等が変わる。予測値生成部13は、回転数及び気筒数や内燃機関の制御量に基づいて正常動作時の基準周波数(本発明の第1周波数に相当)を算出する。
【0029】
例えば、予測値生成部13は、現在の車速とアクセル開度とから目標車速を算出し、目標車速になるような点火タイミングと燃料噴射量との組み合わせを記憶部19から取得する。なお、記憶部19から取得する情報は車種により異なるが、車種により重量、変速機のギヤ比、タイヤ径などの違いにより制御量に補正を掛ける必要があるため、あらかじめ車種毎の情報を記憶部19に記憶させておく。
【0030】
なお、図示しないエンジンコントローラも、予測値生成部13と同様に現在の車速とアクセル開度とから目標車速を算出し、目標車速になるように点火タイミングと燃料噴射量とを調整する。予測値生成部13は、図示しないエンジンコントローラからから火タイミングと燃料噴射量の情報を取得してもよい。
【0031】
次に、予測値生成部13は、現時点の点火タイミングから回転数を算出する。例えば、4気筒の内燃機関なら1回転につき2回点火し、6気筒の内燃機関なら1回転につき3回点火するため、点火タイミングの間隔から回転数を逆算可能である。
【0032】
次に、予測値生成部13は、当該算出された回転数に基づいて振動周波数を算出する。本実施形態では、内燃機関の爆発による振動周波数を数式(1)に基づいて算出し、バルブ動作による振動周波数を数式(2)に基づいて算出する。なお、気筒数は車種に応じて記憶部19から取得される。
<数式(1)>
内燃機関の爆発による振動周波数(Hz)=気筒数/2×回転数(rpm)/60
<数式(2)>
バルブ動作による振動周波数(Hz)=気筒数×回転数(rpm)/60
【0033】
内燃機関の気筒数が6であり、回転数が6000rpmである場合、予測値生成部13は、内燃機関の爆発による振動周波数を、数式(1)により200Hzと算出し、これを基準周波数とする。また、予測値生成部13は、爆発による振動周波数の2次高調波である400Hzについても基準周波数とする。さらに、予測値生成部13は、バルブ動作による振動周波数を、数式(2)により400Hzと算出し、これを基準周波数とする。
【0034】
予測値生成部13は、周波数が基準周波数である振動の大きさ(パワー又は振幅の絶対値)である基準値を、過去の実測データから求める。記憶部19に含まれる実測データDB40には、過去に車両で測定された振動の実測データが記憶されており、予測値生成部13は、現時点の回転数(点火タイミング)、燃料噴射量に基づいて過去の実測データから振動の大きさを取得し、取得した振動の大きさに基づいて基準値の大きさを求める。例えば、予測値生成部13は、抽出された実測データの振幅又は振幅の二乗の最大値を基準値としてもよい。
【0035】
予測値生成部13は、このようにして求められた基準周波数及び基準値に対して検出感度の重みづけを行う。予測値生成部13は、基準周波数に係数を掛けて基準周波数を含む周波数帯域を求め、当該周波数帯域を正常振動周波数として求める。なお、係数の大きさは任意であり、周波数帯域の幅は係数に依存する。係数は、記憶部19に記憶されていてもよいし、入力部22から入力されてもよい。
【0036】
例えば、基準周波数は200Hzであり、検出感度±1%を係数とすると、予測値生成部13は、基準周波数が200Hzのときの正常振動周波数を198Hz~202Hzと算出する。
【0037】
仮に、基準周波数のみを正常振動周波数とすると、センサ21の揺らぎ、遅延等により、本来正常な振動を異常振動とするエラーが多数抽出されるおそれがある。そのため、予測値生成部13は、基準周波数を含む周波数帯域を正常振動周波数とすることで、エラーを減らすことができる。
【0038】
また、予測値生成部13は、基準値に係数(任意に設定することができる)を掛けたものを予測値の大きさとすることで、路面振動等により振動成分の値が大きくなった場合にも、その振動成分を正常振動としてキャンセルすることができる。
【0039】
図4は、予測値の一例を示すグラフである。予測値を示すグラフは、横軸が周波数であり、縦軸がパワーである。正常振動周波数f2は、基準周波数f1を中心とする周波数帯域である。なお、振動データ(
図3参照)の縦軸がパワーであるため、予測値の縦軸もパワーとしたが、振動データの縦軸が振幅の絶対値である場合には、予測値の縦軸も振幅の絶対値とすればよい。
【0040】
予測値は、正常振動周波数f2の部分の値が大きく、それ以外の部分の値が小さい矩形波である。正常振動周波数f2以外の部分の大きさは、路面の凹凸や、車速に依存するサスペンションの共振等の影響を受ける。したがって、本実施形態では、予測値生成部13は、センサ21から入力された車速に基づいて正常振動周波数f2以外の部分の値を決定する。
【0041】
図1、2の説明に戻る。異常振動検知部14は、振動データ生成部12から振動データを取得し、予測値生成部13から予測値を取得し、振動データと予測値とを差分する。そして、異常振動検知部14は、振動データと予測値とを差分した結果に基づいて、異常振動を検知する。
【0042】
図5は、振動データと予測値とを差分した結果の一例であり、
図3に示す振動データと、
図4に示す予測値との差分を示す。異常振動検知部14は、
図5に示すように、
図3に示す振動データに含まれる振動成分A、B、Cから、周波数が正常振動周波数f2の範囲内にある振動成分Aを除去する。そして、除去されなかった振動成分B、Cを異常振動として検知する。
【0043】
また、異常振動検知部14は、検知された異常振動の周波数を求める。つまり、異常振動検知部14は、振動成分B、Cの周波数f3、f4を異常振動の周波数として求める。また、異常振動検知部14は、異常振動の周波数と大きさとを関連付けた異常振動情報を記憶部19に含まれる異常振動情報DB42に格納し、記憶部19に含まれる異常振動頻度情報DB43を更新する。
【0044】
図7は、異常振動情報DB42の一例を示す図である。異常振動情報DB42には、異常振動情報や、異常振動の発生日時を示す情報等が含まれる。例えば、周波数f3、f4の異常振動が検知された場合には、異常振動の周波数f3、f4と、当該異常振動の発生日時が異常振動情報DB42に格納されることで、異常振動情報DB42が更新される。なお、異常振動情報DB42において異常振動の発生日時は必須ではない。
【0045】
図8は、異常振動頻度情報DB43の一例を示す図である。異常振動頻度情報DB43は、異常振動情報DB42に基づいて生成され、異常振動情報DB42が更新される度に更新される。異常振動頻度情報DB43には、異常振動の周波数を示す情報と、当該異常振動が発生した回数を示す情報等が含まれる。異常振動が発生した回数は、ある周波数のデータが異常振動情報DB42に何個含まれているかを示す。
【0046】
図1、2の説明に戻る。高頻度異常振動抽出部15は、異常振動検知部14で検知された異常振動情報と、異常振動頻度情報DB43に格納された異常振動情報に基づいて、異常振動のうちの発生頻度が閾値を超えた異常振動である高頻度異常振動を抽出する。
【0047】
高頻度異常振動抽出部15は、異常振動頻度情報DB43を参照して、異常振動検知部14から取得した異常振動の周波数の頻度(発生回数)を取得する。そして、高頻度異常振動抽出部15は、発生回数が所定の閾値以上である場合には、異常振動検知部14で検知された異常振動を高頻度異常振動として抽出する。また、高頻度異常振動抽出部15は、抽出された高頻度異常振動の周波数を取得する。
【0048】
高頻度異常振動抽出部15は、異常振動検知部14で検知された異常振動が高頻度異常振動である場合には、高頻度異常振動が抽出されたことを示す情報を出力部16に出力する。なお、高頻度異常振動抽出部15は、高頻度異常振動が抽出されたこと及び抽出された高頻度異常振動の周波数を含む高頻度異常振動情報を出力部16に出力してもよい。
【0049】
また、高頻度異常振動抽出部15は、異常振動検知部14で検知された異常振動が高頻度異常振動でない場合には、異常振動が抽出されたことを示す情報を出力部16に出力する。なお、高頻度異常振動抽出部15は、異常振動の周波数と大きさとを関連付けた異常振動情報を出力部16に出力してもよい。
【0050】
出力部16は、高頻度異常振動抽出部15から出力された情報を発光制御部17及び表示制御部18に出力する。なお、出力部16は、高頻度異常振動抽出部15から出力された情報を図示しない外部装置等に通信ネットワーク等を介して送信してもよい。
【0051】
発光制御部17は、高頻度異常振動が抽出されたことを示す情報が出力部16から出力されたら、発光部31を点灯又は点滅させるように、発光部31を制御する。
【0052】
表示制御部18は、高頻度異常振動が抽出されたことを示す情報が出力部16から出力されたら、高頻度異常振動が抽出されたことを示す文字情報を表示部32に表示させるように、表示部32を制御する。
【0053】
記憶部19は、制御装置10で実行される処理に必要な種々の情報(例えば、内燃機関情報)を記憶する。記憶部19は、複数のデータベースを含む。記憶部19は、例えば、実測データDB40(
図6参照)、異常振動情報DB42(
図7参照)、異常振動頻度情報DB43(
図8参照)を有する。なお、実測データDB40、異常振動情報DB42、異常振動頻度情報DB43において、振動に関する情報に含まれる振動の大きさは、パワーでもよいし、振幅の絶対値でもよい。
【0054】
センサ21と、車両に設けられた各種センサを含む。センサ21は、例えば、内燃機関に設けられた加速度センサ、アクセル開度を検知するセンサ、車速計等を有する。
【0055】
入力部22は、ユーザの操作による入力(以下、「ユーザ入力」と称する。)を受け付ける。ユーザ入力は、例えば、予測値生成部13で検出感度の重みづけを行うときに用いる係数の入力、発生頻度の閾値等を含む。なお、入力部22は必須ではなく、ネットワークを介して接続された外部装置が入力部22を有していてもよい。
【0056】
発光部31は、例えば、LEDである。入力部22及び表示部32は、例えば、入力機能を担うタッチセンサと表示機能を担うディスプレイとを含むタッチパネルである。
【0057】
図9は、制御装置10のハードウェア構成の一例を概略的に示すブロック図である。制御装置10は、制御装置10の各部を制御する制御部50と、通信部52と、記憶部54と、を備える。制御部50は、CPU(Central Processing Unit)56及びメモリ58を主に備えて構成される。
【0058】
制御部50では、記憶部54又はメモリ58等に格納された所定のプログラムをCPU56が実行することにより、すでに説明した各種の機能部として機能する。
【0059】
通信部52は、外部の装置と通信するための通信インターフェース等で構成される。通信部52は、例えば、出力部16と図示しない外部の制御装置等との間で各種の情報を送受信する。
【0060】
記憶部54は、ハードディスク等で構成される。この記憶部54は、制御部50における処理の実行に必要な各種プログラムや各種の情報、及び処理結果の情報を記憶する。
【0061】
なお、制御装置10は、専用又は汎用のサーバ・コンピュータ等の情報処理装置を用いて実現することができる。また、制御装置10は、単一の情報処理装置により構成されるものであっても、通信ネットワーク上に分散した複数の情報処理装置により構成されるものであってもよい。また、
図9は、制御装置10が有する主要なハードウェア構成の一部を示しているに過ぎず、制御装置10は、サーバ装置や情報処置装置が一般的に備える他の構成を備えることができる。
【0062】
次に、
図10を参照して、異常振動検知装置1による処理の流れの一例を説明する。
図10は、異常振動検知装置1による処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、以下のステップの順番は、適宜、変更することができる。
【0063】
(ステップS10)
経時データ生成部11は、センサ21で取得されたデータに基づいて経時データを生成し、振動データ生成部12は、経時データのうちの所定期間内に取得されたデータに基づいて振動データ(
図3参照)を生成する。
【0064】
(ステップS11)
また、経時データ生成部11は、ステップS10で生成した振動データを実測データDB40に格納する。
【0065】
(ステップS12)
予測値生成部13は、センサ21から取得された情報及び記憶部19に記憶された情報に基づいて正常な振動の予測値(
図4参照)を生成する。
【0066】
なお、ステップS10、S11の後にステップS12を行ってもよいし、ステップS12の後にステップS10、S11を行ってもよいし、ステップS10、S11とステップS12とを同時に行ってもよい。
【0067】
(ステップS13)
異常振動検知部14は、振動データ生成部12から振動データを取得し、予測値生成部13から予測値を取得し、振動データと予測値とを差分し、この差分した結果(
図5参照)に基づいて異常振動を検知する。
【0068】
(ステップS14)
また、異常振動検知部14は、ステップS13で検知した異常振動を異常振動情報DB42に格納し、かつ、異常振動頻度情報DB43を更新する。
【0069】
(ステップS15)
高頻度異常振動抽出部15は、ステップS13で検知された異常振動の結果と、異常振動頻度情報DB43に記憶された異常振動情報に基づいて高頻度異常振動を抽出する。高頻度異常振動が抽出されたら、高頻度異常振動抽出部15は、抽出結果を出力部16に出力する。
【0070】
(ステップS16)
出力部16は、異常振動が抽出されたことを示す情報及び高頻度異常振動が抽出されたことを示す情報を出力する。例えば、出力部16は、高頻度異常振動が抽出されたことを示す情報を発光制御部17及び表示制御部18に出力する。
【0071】
図11は、発光部31及び表示部32を含む表示装置30の一例を示す図である。表示装置30は、発光部31と、表示部32と、複数のメータ33、34を含む。
図10に示す例では、発光部31である警告灯が点灯し、表示部32に文字が表示されている。発光制御部17は、高頻度異常振動が抽出されたことを示す情報が出力部16から出力されたら、発光部31を点灯させる。これにより、運転手は異常振動が発生したことを容易に知ることができる。
【0072】
表示制御部18は、異常振動が抽出されたことを示す情報が出力部16から出力されたら、高頻度異常振動が抽出されたことを示す文字情報(例えば「ENG振動検出」という文字情報)を表示部32に表示させる。また、表示制御部18は、高頻度異常振動が抽出されたことを示す情報が出力部16から出力されたら、高頻度異常振動が抽出されたことを示す文字情報(例えば「CHECK ENGINE」という文字情報)を表示部32に表示させる。これにより、運転手は、異常振動が発生したこと、及び、異常振動が繰り返し発生しているか否かを知ることができる。
【0073】
また、例えば、出力部16は、高頻度異常振動が抽出されたことを示す情報をネットワークを介して、管理事務所等に配置された外部装置や、サーバ等に送信してもよい。
【0074】
異常振動検知装置1は、
図10に示す処理を、例えば内燃機関が動作している間じゅう、所定の周期で連続して行う。
【0075】
以上、本実施形態によれば、振動データと予測値とを差分した結果に基づいて異常振動を検知するため、正常な振動範囲内の周波数又は正常な振動範囲に近い周波数の異常振動を精度よく検知することができる。
【0076】
例えば、過去の振動データに基づいて異常振動を求める場合には、内燃機関が正常に動作しているときに発生する振動の周波数に近い周波数の異常振動が発生すると、異常振動なのか正常な振動なのかを精度よく区別できないおそれがある。また、予め異常振動を記憶しておき、そのデータに基づいて異常振動を求める場合には、未知の異常振動を検知できないおそれがある。それに対し、本実施形態では、内燃機関の回転数等から予測値を算出し、振動データから予測値を差分するため、異常振動の検知精度を高くし、未知の異常振動も検知することができる。
【0077】
また、本実施形態によれば、内燃機関の回転数及び気筒数に基づいて予測値(正常振動周波数)を求めるため、実測値から予測値を求める場合と異なり、誤差が生じず、予測値の精度を高くすることができる。また、基準周波数に係数を掛けて正常振動周波数とすることで、センサ21の揺らぎ、遅延等により発生しうる検知ミスを減らすことができる。さらに、係数を調整することで検出精度の調整が容易に行える。
【0078】
また、本実施形態によれば、異常振動が発生した回数を異常振動頻度情報DB43に格納し、これに基づいて異常振動のうちの発生頻度が閾値を超えた高頻度異常振動を抽出する、すなわち実際の振動測定結果に基づいて高頻度異常振動を抽出するため、高頻度異常振動を精度よく抽出することができる。また、高頻度異常振動が抽出されたことを示す情報を出力するため、路面状況等により稀に発生する異常振動は高頻度異常振動とせず、連続的に発生している高頻度異常振動についての情報を出力することができる。また、出力結果を見た運転手等は、異常振動が一時的なものか恒久的なものかを知ることができる。
【0079】
また、本実施形態によれば、振動データ生成部12で生成された振動データを含む過去の実測データを実測データDB40に格納し、予測値生成部13は実測データDB40に格納された情報に基づいて予測値(基準値)の大きさを求めるため、高精度の予測値を生成することができる。
【0080】
なお、本実施形態では、経時データ生成部11及び振動データ生成部12が制御装置10に含まれたが、経時データ生成部11及び振動データ生成部12は必須ではない。例えば、経時データ生成部11及び振動データ生成部12が別の制御装置(別ユニット)に設けられていており、予測値生成部13が別ユニットから振動データを取得してもよい。
【0081】
また、本実施形態では、出力部16は、高頻度異常振動抽出部15から出力された情報を発光制御部17及び表示制御部18に出力したが、発光制御部17及び表示制御部18は必須ではなく、いずれか一方でよい。同様に、発光部31及び表示部32もいずれか一方でよい。
【0082】
また、本実施形態では、制御装置10が発光制御部17及び表示制御部18を有したが、発光制御部17及び表示制御部18は必須ではなく、制御装置10以外に設けられていてもよい。同様に、発光部31及び表示部32も必須ではなく、ネットワーク等で接続された外部装置に発光部31や表示部32が設けられていてもよい。
【0083】
また、本実施形態では、センサ21が内燃機関に設けられた加速度センサを有したが、加速度センサが設けられる位置はこれに限られない。例えば、制御装置10を内燃機関に設け、加速度センサを制御装置10に設けてもよい。
【0084】
また、本実施形態では、出力部16は、異常振動が抽出されたことを示す情報及び高頻度異常振動が抽出されたことを示す情報を出力したが、異常振動情報DB42に格納された情報をネットワークを介して外部装置、サーバ等に送信してもよい。また、表示制御部18は、異常振動情報DB42に格納された情報が出力部16から出力されたら、出力された情報を表示部32に表示させてもよい。
【0085】
また、本実施形態では、高頻度異常振動抽出部15において、異常振動検知部14で検知された異常振動が高頻度異常振動である場合には、高頻度異常振動が抽出されたことを示す情報から出力部16に出力したが、高頻度異常振動抽出部15は、高頻度異常振動が周期的に発生している場合にエラーを出力部16に出力してもよい。例えば、高頻度異常振動抽出部15は、記憶部19が有するDBに高頻度異常振動の周波数と発生時刻と関連付けて記憶し、このDBに格納されたデータに基づいて高頻度異常振動が周期的に発生しているか周波数毎に求めればよい。
【0086】
また、本実施形態では、記憶部19が実測データDB40、異常振動情報DB42、異常振動頻度情報DB43を有したが、これらは記憶部19以外に設けられていてもよい。例えば、制御装置10とネットワーク等で接続された外部装置やサーバ装置に実測データDB40、異常振動情報DB42、異常振動頻度情報DB43が設けられており、制御装置10が通信部52を介してこれらのDBから情報を取得してもよい。
【0087】
また、本実施形態では、予測値が正常振動周波数及び正常な振動の大きさについての情報を含んだが、正常な振動の大きさについての情報は必須ではない。例えば、予測値が正常振動周波数についての情報のみを有していてもよい。この場合には、異常振動検知部14は、振動データと予測値とを差分するときに、正常振動周波数について差分した結果が0になるようにしてもよい。
【0088】
また、本実施形態では、記憶部19に含まれる実測データDB40に過去に車両で測定された振動の実測データ(周波数、大きさ)が記憶されており、予測値生成部13は、現時点の回転数(点火タイミング)に基づいて過去の実測データから振動の大きさを取得したが、実測データDB40及び予測値生成部13が過去の実測データから振動の大きさを取得する方法はこれに限られない。例えば、実測データDB40は、振動に関する情報として、周波数、大きさに加えて燃料噴射量を記憶しておいてもよい。そして、予測値生成部13は、周波数及び燃料噴射量に基づいて実測データDB40から振動の大きさを取得してもよい。これにより、検出精度を上げることができる。
【0089】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではない。本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他に適用したものであってもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 :異常振動検知装置
10 :制御装置
11 :経時データ生成部
12 :振動データ生成部
13 :予測値生成部
14 :異常振動検知部
15 :高頻度異常振動抽出部
16 :出力部
17 :発光制御部
18 :表示制御部
19 :記憶部
21 :センサ
22 :入力部
30 :表示装置
31 :発光部
32 :表示部
33 :メータ
34 :メータ
40 :実測データDB
42 :異常振動情報DB
43 :異常振動頻度情報DB
50 :制御部
52 :通信部
54 :記憶部
56 :CPU
58 :メモリ