(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】ワイヤレス給電路盤
(51)【国際特許分類】
B60M 7/00 20060101AFI20240410BHJP
H02J 50/05 20160101ALI20240410BHJP
【FI】
B60M7/00 X
H02J50/05
(21)【出願番号】P 2021046989
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】崎原 孫周
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-016206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60M 7/00
H02J 50/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面導体からなり、上方を走行する車両に非接触で給電する複数の送電電極と、
当該送電電極を下方から支持する路盤部と、
前記送電電極よりも下方に配置されて、前記送電電極に給電する給電用ケーブルと、
前記送電電極と前記給電用ケーブルとを電気的に接続する給電接続部材と、を備え、
前記路盤部には開口部が設けられ、
前記給電接続部材は、前記開口部に配置されて
おり、
前記給電接続部材は、
前記送電電極の下面に沿って設けられて、前記送電電極に接続される金属板と、
前記金属板から下方に向かって延びる金属製の芯線と、
前記芯線を取り囲むように設けられた絶縁層と、
前記絶縁層を覆うように設けられた筒状導体と、を備えていることを特徴とするワイヤレス給電路盤。
【請求項2】
前記給電接続部材は、一端が前記筒状導体に接続され、他端が接地された接地部材を備えていることを特徴とする請求項
1に記載のワイヤレス給電路盤。
【請求項3】
前記芯線、前記絶縁層、及び前記筒状導体が、前記開口部内に配置されていることを特徴とする請求項
1または
2に記載のワイヤレス給電路盤。
【請求項4】
前記路盤部の下方に空隙部が形成され、
前記給電接続部材と前記給電用ケーブルとが、前記空隙部内で電気的に接続されていることを特徴とする請求項1から
3のいずれか一項に記載のワイヤレス給電路盤。
【請求項5】
前記給電接続部材と前記給電用ケーブルとの間に、前記給電用ケーブル側のインピーダンスと、前記給電接続部材側のインピーダンスとを整合する整合回路部をさらに備えていることを特徴とする請求項1から
4のいずれか一項に記載のワイヤレス給電路盤。
【請求項6】
前記給電用ケーブルは同軸ケーブルであることを特徴とする請求項1から
5のいずれか一項に記載のワイヤレス給電路盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレス給電路盤に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車、電動カート、AGV(Automated Guided Vehicle)等、電気エネルギーを動力に用いる電動車両に対し、ワイヤレスで電力を供給するワイヤレス給電システムが用いられている。このようなワイヤレス給電システムでは、電動車両の走行面に埋設した送電電極に高周波の交流電流を流して磁場を発生させ、電動車両側の受電電極に誘導電流を発生させることで、非接触での電力供給を行う。
送電電極には、給電用ケーブルを通して給電を行う。給電用ケーブルとして、例えば伝搬損失の低い同軸ケーブルが用いられることがある。
【0003】
送電電極は、例えば厚さが数十μm程度の、平板状に形成される。このような送電電極に対し、断面が円形の同軸ケーブルの芯線を接続するには、これらの形状の相違を吸収するためのコネクタを使用することが考えられる。
例えば、特許文献1には、給電用ケーブルを構成する同軸ケーブルと、送電電極を構成する平面導体とを、同軸コネクタを介して接続する構成が開示されている。
特許文献1に開示されたような構成では、同軸コネクタや同軸ケーブルが、送電電極が埋設された走行面上に突出している。このため、高周波電流が流れる同軸コネクタや同軸コネクタを電動車両や歩行者が踏みつけたり、足等を引っ掛けたりしてしまうのを防ぐには、同軸コネクタが配置されている場所の周辺への立ち入りを制限する必要が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、給電用ケーブルやコネクタ等が走行面上に突出するのを抑えつつ、給電用ケーブルと送電電極とを接続することが可能な、ワイヤレス給電路盤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明のワイヤレス給電路盤は、平面導体からなり、上方を走行する車両に非接触で給電する複数の送電電極と、当該送電電極を下方から支持する路盤部と、前記送電電極よりも下方に配置されて、前記送電電極に給電する給電用ケーブルと、前記送電電極と前記給電用ケーブルとを電気的に接続する給電接続部材と、を備え、前記路盤部には開口部が設けられ、前記給電接続部材は、前記開口部に配置されていることを特徴とする。
このような構成によれば、給電用ケーブルは、送電電極よりも下方に配置されている。また、送電電極を下方から支持する路盤部には開口部が設けられ、送電電極と給電用ケーブルを電気的に接続する給電接続部材は、開口部に配置されている。
このように、給電用ケーブルや給電接続部材は、送電電極よりも下方に設けられているため、給電接続部材や給電用ケーブルが走行面上に突出するのを抑えつつ、給電用ケーブルと送電電極とを接続することが可能となる。
【0007】
本発明の一態様においては、本発明のワイヤレス給電路盤は、前記給電接続部材が、前記送電電極の下面に沿って設けられて、前記送電電極に接続される金属板と、前記金属板から下方に向かって延びる金属製の芯線と、前記芯線を取り囲むように設けられた絶縁層と、前記絶縁層を覆うように設けられた筒状導体と、を備えている。
このような構成によれば、金属板は、送電電極の下面に沿って設けられる。また、金属板から下方に向かって延びる芯線、絶縁層、及び筒状導体は、金属板よりも下方に位置することになる。したがって、給電接続部材が走行面上に突出するのを効率的に抑えることができる。
また、給電接続部材は、芯線と、絶縁層と、筒状導体とを備えているので、例えば芯線や絶縁層の形状を適切に設計することによって、芯線、絶縁層、及び筒状導体により形成された部分の、金属板とは反対側の端部を、ワイヤレス給電路盤の特性インピーダンスと同等のインピーダンスを有する状態とすることができる。すなわち、ワイヤレス給電路盤の特性インピーダンスと同等のインピーダンスを有する部分を、送電電極からより下方に離れて、給電用ケーブルに近づけて位置付けることができるため、給電用ケーブルを電気的に給電接続部材に接続したときの、給電効率の低下を抑制することができる。
【0008】
本発明の一態様においては、前記給電接続部材は、一端が前記筒状導体に接続され、他端が接地された接地部材を備えている。
このような構成によれば、接地部材により適切に給電接続部材を接地することができる。
【0009】
本発明の一態様においては、前記芯線、前記絶縁層、及び前記筒状導体が、前記開口部内に配置されている。
このような構成によれば、給電接続部材が走行面上に突出するのを効率的に抑えることができる。
【0010】
本発明の一態様においては、本発明のワイヤレス給電路盤は、前記路盤部の下方に空隙部が形成され、前記給電接続部材と前記給電用ケーブルとが、前記空隙部内で電気的に接続されている。
このような構成によれば、給電接続部材と給電用ケーブルとの接続部分を空隙部内に収容することができる。
【0011】
本発明の一態様においては、本発明のワイヤレス給電路盤は、前記給電接続部材と前記給電用ケーブルとの間に、前記給電用ケーブル側のインピーダンスと、前記給電接続部材側のインピーダンスとを整合する整合回路部をさらに備えている。
このような構成によれば、整合回路部によって、給電接続部材と給電用ケーブルのインピーダンスを整合することができる。これにより、反射を抑え、給電効率が低下するのを抑えることができる。
【0012】
本発明の一態様においては、前記給電用ケーブルは同軸ケーブルである。
このような構成によれば、ワイヤレス給電路盤を適切に実現可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、給電用ケーブルやコネクタ等が走行面上に突出するのを抑えつつ、給電用ケーブルと送電電極とを接続することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るワイヤレス給電路盤の構成を示す断面図である。
【
図2】
図1のワイヤレス給電路盤に用いられる給電接続部材の断面図である。
【
図3】
図2の給電接続部材を下方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明によるワイヤレス給電路盤を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
本発明の実施形態に係るワイヤレス給電路盤の構成を示す断面図を
図1に示す。
図1に示すように、ワイヤレス給電路盤1は、電気自動車や電動カート、電動フォークリフト、電動自動運搬装置等の電動車両に対して非接触で給電を行う。ワイヤレス給電路盤1は、例えば、電動車両が使用される施設内(屋内)に設置される。ワイヤレス給電路盤1は、施設内に限らず、屋外に設置することも可能である。ワイヤレス給電路盤1は、基体8上に設けられている。基体8は、例えば、施設のコンクリート基礎、床スラブ等である。基体8は、地盤、地盤上に敷設された砕石等であってもよい。ワイヤレス給電路盤1は、路盤部2と、送電電極3と、接地部4と、給電用ケーブル10と、整合回路部20と、給電接続部材30と、を備えている。
【0016】
路盤部2は、後に説明する送電電極3を下方から支持する。路盤部2は、基層6と、絶縁層7と、を備えている。絶縁層7は、基層6の下側に形成されている。絶縁層7は、基層6を下方から支持している。路盤部2は、例えば上下方向に100~150mm程度(より具体的には、例えば130mm)の厚さを有している。
【0017】
送電電極3は、基層6上に設けられている。送電電極3は、平面導体として形成され、ワイヤレス給電を行うための電力の送電路であり、例えば、車両の進行方向Drに沿って帯板状に延びている。送電電極3は、後に説明する走行面5fに沿った面内で、車両の進行方向Drに直交する幅方向(
図1の紙面に直交する方向)に間隔を開けて複数(例えば2本)が配置されている。送電電極3は、板状、又はシート状の平面導体からなる。送電電極3は、高周波電力のスキンデプスを十分満足する厚み(例えば35μm程度)を有する、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属材料からなる。
送電電極3上には、ゴム系材料等の絶縁材料からなる保護層5が形成されている。保護層5は、例えば上下方向の厚さが数mm(例えば4mm)程度とされている。保護層5の上面は車両が走行する走行面5fとなっており、保護層5は送電電極3と車両を離間せしめて送電電極3を保護する。
【0018】
走行面5f上を走行する図示されない車両においては、車体の、車輪と近接する部分に、電極が設けられている。また、車輪の、例えばタイヤの内側には、導体としてのスチールベルトが設けられている。送電電極3に電力が供給されると、送電電極3とスチールベルトの間、及びスチールベルトと車体の電極との間に、静電容量が形成されることにより、送電電極3と車体の電極との間に静電容量が形成される。この静電容量を介して、送電電極3から車体の電極に対して高周波電力エネルギーが伝送される。
【0019】
接地部4は、基体8上に形成されている。接地部4は、導電性を有した金属材料によって形成される。接地部4は、例えば、板状、シート状をなしている。接地部4は、高周波電力のスキンデプスを十分満足する厚み(例えば35μm程度)を有する金属からなり、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス等からなる。接地部4は、送電電極3に通電することで発生する電磁界をシールドする。接地部4は、送電電極3で発生する電磁界が、給電方向(車両側、すなわち上方)以外の方向に拡散することを抑える。
【0020】
本実施形態において、路盤部2は、基体8上に複数本の支持脚9を介して支持され、いわゆる二重床を形成している。これにより、路盤部2の下方の、路盤部2と、基体8上の接地部4との間には、例えば空隙部Sが形成されている。
【0021】
給電用ケーブル10は、図示しない高周波電源から供給される高周波の交流電流を、整合回路部20、及び給電接続部材30を介して送電電極3に給電する。給電用ケーブル10は、同軸ケーブルからなり、送電電極3よりも下方に配置されている。本実施形態において、給電用ケーブル10は、空隙部S内に配置されている。給電用ケーブル10は、先端に設けられたコネクタ11を介して整合回路部20に接続されている。
【0022】
整合回路部20は、後に説明する給電接続部材30と給電用ケーブル10との間に配置されている。整合回路部20は、高周波電源から給電用ケーブル10を通して供給される交流電流を整合し、同軸ケーブルからなる給電用ケーブル10側と、送電電極3に接続される後述の給電接続部材30側との間でインピーダンス調整を図る。整合回路部20は、空隙部S内に配置されている。整合回路部20は、金属製の筐体21を有している。同軸ケーブルからなる給電用ケーブル10は、中心に位置する芯線の外側を、絶縁体を介してグランド材12で覆うように構成されている。この、給電用ケーブル10のグランド材12は、金属製の筐体21に接続されている。筐体21は、金属製の取付金具22を介して、接地部4に固定されている。これにより、グランド材12は、コネクタ11、金属製の筐体21及び取付金具22を介して接地部4に接地されている。給電用ケーブル10の芯線は、後に説明するように、整合回路部20を介して、給電接続部材30の芯線32に電気的に接合されている。
【0023】
図2は、
図1のワイヤレス給電路盤に用いられる給電接続部材の断面図である。
給電接続部材30は、送電電極3と給電用ケーブル10とを電気的に接続する。給電接続部材30は、送電電極3よりも下方に配置されている。
図1、
図2に示すように、給電接続部材30は、金属板31と、芯線32と、絶縁層33と、筒状導体34と、接地部材35と、を備えている。
金属板31は、基層6上に配置されている。金属板31は、送電電極3の下側に、送電電極3の下面3bに沿うように、かつ送電電極3と基層6に挟まれるように配置され、送電電極3に電気的に接続されている。芯線32は、金属製で、その上端が金属板31の下面に接合されている。芯線32は、金属板31から下方に向かって延びている。絶縁層33は、芯線32を取り囲むように、上下方向に延びる円柱状(円筒状)に形成されている。筒状導体34は、上下方向に延びる円筒状で、絶縁層33の外周部を覆うように設けられている。
路盤部2、すなわち基層6と絶縁層7の各々には、開口部2hが設けられている。本実施形態においては、開口部2hは、路盤部2を上下方向に貫通するように設けられた貫通孔である。芯線32、絶縁層33、及び筒状導体34は、この開口部2hに設けられ、開口部2hを通して下方の空隙部S内に突出している。金属板31、芯線32、及び筒状導体34は、それぞれ、銅、アルミニウム等、電気抵抗が小さい導電性材料から形成されている。なお、芯線32、及び筒状導体34は、送電電極3よりも下方に位置するのであれば、金属板31から下方に直線状に延びておらず、適宜、湾曲又は屈曲していてもよい。
【0024】
接地部材35は、銅、アルミニウム等の導電性材料から形成され、
図1に示すように、一端35aが筒状導体34に接続され、他端35bが接地部4に接地されている。接地部材35の一端35aは、上下方向から見て例えばC字状に形成され、筒状導体34の外周面に沿って周方向に延び、ネジ34n等で締め付けることで、筒状導体34に接続されている。接地部材35の他端35bは、ビス36等により、接地部4に接地されている。
【0025】
このような給電接続部材30の芯線32と、整合回路部20とは、接続線50を介して電気的に接続されている。接続線50は、いわゆる単線で、一端が整合回路部20を介して、給電用ケーブル10の芯線に電気的に接続されている。接続線50の他端には、例えば圧着端子からなる接続端子51が設けられている。また、給電接続部材30の芯線32にも、圧着端子からなる接続端子52が設けられている。接続端子51と接続端子52とは、これら接続端子51と接続端子52の各々に設けられた図示されない貫通孔を介し、金属製のビス53等によって互いに接続されている。
【0026】
ここで、高周波電源に接続された給電用ケーブル10を構成する同軸ケーブルに市販のものを用いる場合、給電用ケーブル10のインピーダンスは、例えば50Ωとなる。これに対し、例えば本実施形態のワイヤレス給電路盤1においては、路盤部2上に設けられ、保護層5で覆われた送電電極3のインピーダンスが、例えば110Ω等と、給電用ケーブル10のインピーダンスとは、基本的には異なる値となる。このような場合に、整合回路部20は、送電電極3側のインピーダンス(110Ω)と給電用ケーブル10側のインピーダンス(50Ω)を整合させる。
【0027】
次に、芯線32、絶縁層33、及び筒状導体34の、断面形状の設計について説明する。
図3は、
図2の給電接続部材を下方から見た図である。
図2、
図3に示すように、給電接続部材30において、芯線32、絶縁層33、及び筒状導体34の部分は、同軸ケーブルと同様の構成を有している。このような給電接続部材30のインピーダンスZ0は、次式で表される。
【数1】
ここで、ε
rは、絶縁層33を形成する誘電体の比誘電率、d
1は芯線32の外径、d
2は絶縁層33の外径である。
上式(1)に基づき、絶縁層33に、比誘電率ε
r=2.3~2.4であるポリエチレンを用いる場合、芯線32の外径d
1を3mm、絶縁層33の外径d
2を48mmとすることで、給電接続部材30のインピーダンスを、送電電極3のインピーダンスと同じ値、すなわち約110Ωとすることができる。
【0028】
このような構成において、接続線50の長さは、可能な限り短くするのが望ましい。接続線50の長さが長いと、給電用ケーブル10の端部、すなわち給電用ケーブル10側のインピーダンスを有する部分の末端と、給電接続部材30の、芯線32が絶縁層33と筒状導体34に囲われた部分の端部30b、すなわち送電電極3側のインピーダンスを有する部分の末端との間が離れすぎる。すると、整合回路部20による、インピーダンスの整合の効果が低減し、インピーダンスの不整合により給電時に反射が生じて、給電効率が低下する可能性があるからである。
換言すれば、芯線32を絶縁層33と筒状導体34で囲った構造を、送電電極3から下方に向けて延伸させているのは、送電電極3と同等のインピーダンスを有する部分を、給電用ケーブル10に近づけることを意図したものである。
この観点からすれば、例えば、整合回路部20と給電接続部材30は、平面視したときに、これらの距離ができるだけ小さいほうが望ましい。また、給電接続部材30の、芯線32、絶縁層33、及び筒状導体34も、できるだけ下方に延伸して、その端部30bができるだけ整合回路部20に近い位置に設けられるのが望ましい。
【0029】
上述したようなワイヤレス給電路盤1は、平面導体からなり、上方を走行する車両に非接触で給電する複数の送電電極3と、送電電極3を下方から支持する路盤部2と、送電電極3よりも下方に配置されて、送電電極3に給電する給電用ケーブル10と、送電電極3と給電用ケーブル10とを電気的に接続する給電接続部材30と、を備え、路盤部2には開口部2hが設けられ、給電接続部材30は、開口部2hに配置されている。
このような構成によれば、給電用ケーブル10は、送電電極3よりも下方に配置されている。また、送電電極3を下方から支持する路盤部2には開口部2hが設けられ、送電電極3と給電用ケーブル10を電気的に接続する給電接続部材30は、開口部2hに配置されている。
このように、給電用ケーブル10や給電接続部材30は、送電電極3よりも下方に設けられているため、給電接続部材30や給電用ケーブル10が走行面5f上に突出するのを抑えつつ、給電用ケーブル10と送電電極3とを接続することが可能となる。
【0030】
また、給電接続部材30は、送電電極3の下面3bに沿って設けられて、送電電極3に接続される金属板31と、金属板31から下方に向かって延びる金属製の芯線32と、芯線32を取り囲むように設けられた絶縁層33と、絶縁層33を覆うように設けられた筒状の筒状導体34と、を備えている。
このような構成によれば、金属板31は、送電電極3の下面に沿って設けられる。また、金属板31から下方に向かって延びる芯線32、絶縁層33、及び筒状導体34は、金属板31よりも下方に位置することになる。したがって、給電接続部材30が走行面5f上に突出するのを効率的に抑えることができる。
また、給電接続部材30は、芯線32と、絶縁層33と、筒状導体34とを備えているので、例えば芯線32や絶縁層33の形状を適切に設計することによって芯線32、絶縁層33、及び筒状導体34により形成された部分の、金属板31とは反対側の端部30bを、ワイヤレス給電路盤1の特性インピーダンスと同等のインピーダンスを有する状態とすることができる。すなわち、ワイヤレス給電路盤1の特性インピーダンスと同等のインピーダンスを有する部分を、送電電極3からより下方に離れて、給電用ケーブル10に近づけて位置付けることができるため、給電用ケーブル10を電気的に給電接続部材30に接続したときの、給電効率の低下を抑制することができる。
【0031】
また、給電接続部材30は、一端35aが筒状導体34に接続され、他端35bが接地された接地部材35と、を備えている。
このような構成によれば、接地部材35により適切に給電接続部材30を接地することができる。
【0032】
また、芯線32、絶縁層33、及び筒状導体34が、開口部2h内に配置されている。
このような構成によれば、給電接続部材30が走行面5f上に突出するのを効率的に抑えることができる。
【0033】
また、路盤部2の下方に空隙部Sが形成され、給電接続部材30と給電用ケーブル10とが、空隙部S内で電気的に接続されている。
このような構成によれば、給電接続部材30と給電用ケーブル10との接続部分、整合回路部20等を空隙部S内に収容することができる。
【0034】
また、ワイヤレス給電路盤1は、給電接続部材30と給電用ケーブル10との間に、給電用ケーブル10側のインピーダンスと、給電接続部材30側のインピーダンスとを整合する整合回路部20をさらに備えている。
このような構成によれば、給電接続部材30と給電用ケーブル10のインピーダンスを整合することができる。これにより、反射を抑え、給電効率が低下するのを抑えることができる。
【0035】
また、給電用ケーブル10は同軸ケーブルである。
このような構成によれば、ワイヤレス給電路盤1を適切に実現可能である。
【0036】
(実施形態の変形例)
なお、本発明のワイヤレス給電路盤1は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、路盤部2は、基体8上に複数本の支持脚9を介して支持され、いわゆる二重床を形成しているようにしたが、これに限らない。路盤部2と基体8との間に、コンクリート等が充填され、給電用ケーブル10と給電接続部材30との接続部分のみに空隙部Sを形成するようにしてもよい。また、既存の床を掘り込んで、空隙部Sを形成するようにしてもよい。給電用ケーブル10と給電接続部材30との接続部や整合回路部20を、ボックスに収容し、ワイヤレス給電路盤1中に埋設するようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、接地部4は基体8上に形成されていたが、これに限られない。接地部4は、基層6と絶縁層7の間に介装されていてもよいし、絶縁層7の下面に沿って設けられていてもよい。この場合には、接地部4には、基層6や絶縁層7の開口部2hと同じ位置に、給電接続部材30が設けられるための開口部が設けられるのが望ましい。更に、この場合においては、給電接続部材30は接地部4を貫通して設けられるため、筒状導体34が接地部4の近傍に位置することとなり、したがって筒状導体34を接地部34に接続するための接地部材35を設ける必要がない。ただし、この場合においても、給電接続部材30を基体8に固定することを目的として、上記実施形態の接地部材35と同様な構成の固定部材が必要となる可能性は有る。
【0037】
また、上記実施形態において、給電対象となる電動車両は、電気自動車、電動カート、電動フォークリフト、電動自動運搬装置等(AGV)に限らず、例えば、新都市交通システム用の車両、物品搬送用のロボット等であってもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 ワイヤレス給電路盤 30 給電接続部材
2 路盤部 31 金属板
2h 開口部 32 芯線
3 送電電極 33 絶縁層
3b 下面 34 筒状導体
4 接地部 35 接地部材
7 絶縁層 35a 一端
10 給電用ケーブル 35b 他端
20 整合回路部 S 空隙部