IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイオノミックス リミテッドの特許一覧

特許7470085抗体およびチェックポイント阻害剤の併用療法
<>
  • 特許-抗体およびチェックポイント阻害剤の併用療法 図1
  • 特許-抗体およびチェックポイント阻害剤の併用療法 図2
  • 特許-抗体およびチェックポイント阻害剤の併用療法 図3
  • 特許-抗体およびチェックポイント阻害剤の併用療法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】抗体およびチェックポイント阻害剤の併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240410BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240410BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240410BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240410BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20240410BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240410BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20240410BHJP
   C07K 16/30 20060101ALN20240410BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20240410BHJP
【FI】
A61K39/395 T ZNA
A61K39/395 U
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/513
A61K31/519
A61K31/4745
C07K16/30
C07K16/28
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021148016
(22)【出願日】2021-09-10
(62)【分割の表示】P 2019514748の分割
【原出願日】2017-09-14
(65)【公開番号】P2022003046
(43)【公開日】2022-01-11
【審査請求日】2021-10-08
(31)【優先権主張番号】2016903724
(32)【優先日】2016-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502386053
【氏名又は名称】バイオノミックス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【弁理士】
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】ティナ・クリスティン・ラブラノス
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ジョン・イングリス
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・エル・レイス
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/070051(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/153916(WO,A1)
【文献】特表2014-533247(JP,A)
【文献】特表2009-531281(JP,A)
【文献】国際公開第2016/090024(WO,A1)
【文献】Nat. Rev. Cancer (2012) vol.12, no.4, p.252-264
【文献】日本臨床免疫学学会誌 (2012) vol.35, no.5, p.412-423
【文献】がん幹細胞(Cancer Stem Cell)マーカー抗体, コスモバイオ株式会社,2014年12月07日,https://www.cosmobio.co.j p/product/detail/cancerstemcells-antibody-pmb.asp?entry_id=13195
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)癌幹細胞に対する抗体、および(ii)免疫チェックポイント阻害剤を含む、対象において腫瘍を併用処置するための併用療法組成物であって、
前記抗体が、アミノ酸GYSFTAYW(配列番号1)を有する重鎖CDR1、アミノ酸ILPGSDST(配列番号2)を有する重鎖CDR2、アミノ酸ARSGYYGSSQY(配列番号3)を有する重鎖CDR3、アミノ酸ESVDSYGNSF(配列番号4)を有する軽鎖CDR1、アミノ酸LTS(配列番号5)を有する軽鎖CDR2、およびアミノ酸QQNAEDPRT(配列番号6)を有する軽鎖CDR3、を含み、かつ、前記免疫チェックポイント阻害剤が、PD-1抗体である、併用療法組成物。
【請求項2】
前記抗PD-1抗体が、ニボルマブである、請求項1に記載の併用療法組成物。
【請求項3】
癌の標準治療と組み合わせて投与される、請求項1に記載の併用療法組成物。
【請求項4】
癌の標準治療が、1つの化学療法剤または複数の化学療法剤の組み合わせの投与を含む、請求項3に記載の併用療法組成物。
【請求項5】
化学療法剤が、シクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、ムスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾロン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン、エトポシド、シスプラチン、エピルビシン、カペシタビン、ロイコボリン、フォリン酸、オキサリプラチン、ゲムシタビン、タンパク質結合パクリタキセル、イリノテカン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載の併用療法組成物。
【請求項6】
標準治療が5-フルオロウラシル+ロイコボリン+イリノテカンを含む、請求項4または5に記載の併用療法組成物。
【請求項7】
化学療法剤が血管破壊剤である、請求項4に記載の併用療法組成物。
【請求項8】
腫瘍が、膀胱癌腫瘍、乳癌腫瘍、結腸癌腫瘍、消化器癌腫瘍、腎癌腫瘍、肺癌腫瘍、卵巣癌腫瘍、膵癌腫瘍、前立腺癌腫瘍、近位または遠位胆管癌腫瘍、黒色腫、大腸癌腫瘍、転移性大腸癌腫瘍、転移性膵癌腫瘍、三種陰性乳癌腫瘍および小細胞肺癌腫瘍からなる群から選択される、請求項1に記載の併用療法組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、腫瘍の処置のための併用療法に関する。本併用は、癌幹細胞マーカーに対する抗体およびチェックポイント阻害剤を含む。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
現在、免疫療法の臨床上の利益を、より広範な患者集団に拡大するという非常に強い動きがあり、ここでは、多くの患者が反応しない。チェックポイント阻害剤が治療法として使用される免疫学的アプローチは、分化した腫瘍細胞からなる腫瘍塊に偏っている。
【0003】
チェックポイント阻害剤は、免疫システムの攻撃に対する癌の主な防御の1つを克服しようとしている。免疫システムT細胞は、疾病や感染の兆候について体内を絶えず巡回している。免疫システムT細胞が他の細胞と出会うと、その細胞の表面上の特定のタンパク質を探索し、特定のタンパク質は細胞のアイデンティティーの印として働く。特定のタンパク質が、その細胞が正常かつ健康であることを示している場合、T細胞はその細胞を放置する。特定のタンパク質が、その細胞が感染しているか、または癌性であることを示唆している場合、T細胞はその細胞に対する攻撃を引き起こす。T細胞が攻撃を開始すると、免疫システムは一連のさらなる分子を増加させて、攻撃により体内の正常な組織が損傷するのを防ぐ。これらの分子が、免疫チェックポイントとして知られている。
【0004】
腫瘍細胞はしばしば、細胞の癌性を暴露するタンパク質を身につけている。しかしながら、腫瘍細胞は時に、アイデンティティーの盗用に相当することを犯し、正常な細胞のタンパク質に身を隠している。最近の研究により、癌細胞が、免疫システム攻撃を抑制し回避するために、しばしば免疫チェックポイント分子を利用することが示されている。これらの正常に見えるタンパク質によってだまされたT細胞は、腫瘍細胞が攻撃されないようにさせ得る。
【0005】
チェックポイント阻害剤は、癌細胞上のこれらの正常なタンパク質を遮断するか、またはそれらに反応するT細胞上のタンパク質を遮断する。その結果、T細胞が細胞を癌性であると認識し、免疫システム攻撃を仕掛けるのを妨げていた、目隠しを取り除くことができる。
【0006】
イピリムマブ(ヤーボイ(登録商標))、ペムブロリズマブ(キイトルーダ(登録商標))、およびニボルマブ(オプジーボ(登録商標))を含む、3つのチェックポイント阻害剤が、米国食品医薬品局から、癌に対する迅速な承認を受けている。これらおよび他の免疫チェックポイント療法は、今日の癌処置における、最も有望な最前線の1つとなっている。
【0007】
一方、癌幹細胞(CSC)は、このより分化した腫瘍塊と比較して、異なる遺伝子および抗原の発現プロファイルを示している。これにより、CSCはチェックポイント阻害剤の治療効果を回避し、腫瘍を再増殖させることができる。LGR5は、いくつかの固形癌において、自己再生可能で、これらの能力を欠く子孫細胞への分化が可能である、CSCまたは腫瘍開始亜集団の機能的マーカーであることが確認されている。重要な証拠ではまた、これらのCSCが免疫抑制の表現型を有し、抗腫瘍宿主免疫反応を回避することを可能にしていることが示されている[1-8]。これは、CSCのサブセットがT細胞免疫を下方制御する可能性を開く。
【0008】
チェックポイント阻害剤を回避し、治療に対する全体的な反応性を下方制御することができる、腫瘍内の細胞サブセットの存在は、抗LGR5抗体がチェックポイント阻害剤と組み合わされる併用療法に、その能力を存分に発揮させ、より大きな治療効果を与える。
【0009】
免疫チェックポイント療法とCSC標的化薬との組み合わせは、それぞれのアプローチの臨床的有用性を改善し得、チェックポイント阻害剤の治療的価値を高めることができ、より多くの「反応者」を生み出す患者集団へと後押しするであろう。
【発明の概要】
【0010】
本発明者らは、癌幹細胞に対する抗体と免疫療法剤との組み合わせが、抗癌幹細胞抗体単独または免疫療法剤単独のいずれかによる処置と比較した場合に、癌を処置する有効性を増大させることを見出した。
【0011】
従って、第1の局面において、本発明は、(i)癌幹細胞に対する抗体、および(ii)チェックポイント阻害剤を投与することを含む、対象において腫瘍を処置するための併用療法を提供する。
【0012】
第2の局面において、本発明は、本発明の併用療法を含む、対象において腫瘍を処置する方法を提供する。
【0013】
第3の局面において、本発明は、混合物として該併用療法の成分(i)および(ii)を含む組成物を提供する。
【0014】
第4の局面において、本発明は、腫瘍の処置のための医薬の調製における、該併用療法の成分(i)および(ii)の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】マウス大腸癌(CRC)腫瘍モデルにおける腫瘍増殖抑制
【0016】
図2】全T細胞の腫瘍への動員-全リンパ球に対する%としての、腫瘍性CD3
【0017】
図3】細胞傷害性T細胞の腫瘍への動員-CD3に対する%としての、腫瘍性CD8
【0018】
図4】CD4に対する%としての、腫瘍性Treg細胞
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の詳細な説明
本明細書を通して、文脈上別段の要求がない限り、用語「含む」(comprise、またはcomprisesもしくはcomprisingなどの変形)は、記載された要素もしくは整数、または要素もしくは整数の群を含むが、他の要素もしくは整数、または要素もしくは整数の群をいずれも除外しないことを意味することは、理解されるであろう。
【0020】
本明細書において、いずれの先行刊行物(もしくはそれから得られる情報)への言及、またはいずれの公知の事項への言及も、その先行刊行物(もしくはそれから得られる情報)または公知の事項が、本明細書に関する努力傾注分野における共通の一般的知識の一部を形成するということの認知、または承認、またはいずれの形態の示唆としても見なされるものではなく、そう見なされるべきでもない。
【0021】
本明細書で言及された全ての刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
本明細書で用いられているように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数の局面を含むことに留意しなければならない。したがって、例えば、「薬剤(an agent)」への言及には、1つの薬剤、ならびに2つ以上の薬剤が含まれる;「分子(a molecule)」への言及には、1つの分子、ならびに2つ以上の分子が含まれる、などである。
【0023】
第1の局面において、本発明は、(i)癌幹細胞に対する抗体、および(ii)チェックポイント阻害剤を投与することを含む、対象において腫瘍を処置するための併用療法を提供する。
【0024】
第2の局面において、本発明は、本発明の併用療法を含む、対象において腫瘍を処置する方法を提供する。
【0025】
第3の局面において、本発明は、混合物として該併用療法の成分(i)および(ii)を含む組成物を提供する。
【0026】
第4の局面において、本発明は、腫瘍の処置のための医薬の調製における、該併用療法の成分(i)および(ii)の使用を提供する。
【0027】
癌幹細胞に対する抗体は、好ましくは抗LGR5抗体である。当該抗体の例は、WO2015/153916に詳細に記載されており、該開示は相互参照により本明細書に組み込まれる。
【0028】
複数の実施形態において上述したように、併用療法は、LRG5に特異的に結合するヒト抗体またはヒト化抗体の使用を包含する。いくつかの実施形態において、該抗体はLGR5に特異的に結合するが、R-SpoのLGR5への結合は阻害しない。他の実施形態は、LGR5によるR-Spoシグナル伝達を阻害することなくLGR5に結合する抗体を含む。さらに他の実施形態は、LGR5に結合するが、LGR5によるR-Spoの結合またはシグナル伝達の両方を阻害しない抗体を含む。別の実施形態は、LGR5に結合し、Wnt経路によるLGR5シグナル伝達もまた阻害する抗体である。いくつかの実施形態において、これらの抗体は、Wnt経路によるLGR5シグナル伝達を阻害し、RSpoシグナル伝達とは無関係であり得る。
【0029】
LGR5は、系列追跡(lineage tracing)研究を通して、腸内の正常な幹細胞および腫瘍始原細胞の非常に特異的なマーカーとして同定された。これまでに、Wnt発現の無効化(abrogation)後にその発現が抑制される、約150個の遺伝子が同定された。これらの「Wnt標的遺伝子」の包括的な特徴付けにより、LGR5が、陰窩基底部で増殖する10~14個の楔形細胞の集団で選択的に発現されることが見出された。これらの陰窩基底部円柱細胞は、以前から幹細胞集団の候補であると提案されていた。遺伝性lacZ-LGR5レポーター遺伝子を用いたインビボ系列追跡を用いて、LGR5腸管幹細胞が、陰窩基底部から絨毛の先端まで伸びた、lacZ+子孫細胞の連続した帯を生じさせる、成体腸管幹細胞の多能性自己再生集団であることが確認されている。
【0030】
CSC上のLGR5の特異的発現は、CSCを選択的かつ効果的に標的とする機会を提供する。LGR5は、正常な組織と比較して、CRC、膵臓および他のほとんどの固形腫瘍において高度に過剰発現されており、それによってCRC、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、肺癌、胃癌および肝臓癌において、CSCを標的とする幅広い治療域を提供する。
【0031】
LGR5自体は、分泌されたR-スポンジンリガンドに結合してLGR5陽性細胞上のWntシグナルを選択的に増幅および増強する、Wnt-Fzd-LRP受容体複合体の任意の(facultative)成分である。LGR5がWntに依存しない方法でシグナル伝達できるという証拠もある。さらに、関連する膜貫通型RING型E3ユビキチンリガーゼZNRF3(zinc and RING finger 3)またはRNF43(RING finger 43)は、LGR5+幹細胞において特異的に発現され、Frizzled受容体を選択的にユビキチン化することによってWntシグナルを減少させ、それにより、分解するためにこれらのWnt受容体を標的とする。R-スポンジンリガンドはLGR5と相互作用して、膜貫通型ZNRF3またはRNF43と三元複合体を形成する。これらの三元複合体の形成は、Wnt-Fzd-LRP複合体からZNRF3またはRNF43を隔離し、標準的および非標準的Wntシグナル伝達を安定化させる。最後に、Norrinは、未知の関連生物学を有するLGRファミリーのさらなるリガンドとして同定されている。
【0032】
CRCにおけるゲートキーピング変異(gate keeping mutation)は、大腸腺腫症(APC)遺伝子の欠損であり、Wntシグナル伝達の異常な活性化をもたらす(正常に作用すれば、結腸陰窩における幹細胞の自己再生と分化とのバランスを調節する)。腸管幹細胞におけるWntシグナル伝達の調節不全は、結腸において悪性CRCの前駆体である腺腫性ポリープの形成をもたらす。誘導性APC遺伝子ノックアウトマウスと、LGR5幹細胞が4つの蛍光遺伝子マーカー(GFP/YFP/ECFP/RFP)のうちの1つにより特異的かつ無作為に標識されたマウスとの交配戦略を用いて、LGR5幹細胞がこれらのマウス腸腫瘍の起源または根源であることを確認した。APC欠失誘導の4週間後に単色の腫瘍(すなわち、全てGFPまたは全てRFP)が出現したことから、これらの腫瘍が単一のLGR5幹細胞に由来することが確認された。さらに、このモデルでは、LGR5幹細胞の蛍光遺伝子タグを別の色に切り替えることもできたため、赤色の腫瘍を生成するRFP+LGR5癌幹細胞を途中でECFP+LGR5癌幹細胞に変換することができ、依然として腫瘍の種を蒔いていたが、全て赤色であったGFP+の腫瘍塊に浸潤する青色の腫瘍細胞を生じさせた。この切り替え実験は、LGR5 CSCが腸腫瘍の起源であり、腸腫瘍の増殖を開始し、かつ増殖の種を蒔くことができるというさらなる確証を提供しただけでなく、それらが腫瘍形成を継続的に維持する(すなわち長期の再増殖能力を有する)という確証を提供した。
【0033】
癌におけるLGR5の機能的役割は、RNA干渉(RNAi)ノックダウン研究を通じて検証されている。CRC腫瘍細胞株のパネルにおけるLGR5のノックダウンは、インビトロで軟寒天コロニーの増殖を有意に阻害し、また、インビボでHCT1 16結腸腫瘍異種移植片の増殖も有意に阻害した。LGR5 RNAiノックダウンでは、続いて、インビトロで患者由来のCRC腫瘍細胞に由来するCSCコロニーの増殖も減少させることが示された。最後に、選別されたLGR5+患者由来の異種移植CRC腫瘍細胞は、対照LGR5-細胞と比較して、インビボで腫瘍形成性が高いことがわかった。
【0034】
CSCは、外科手術および標準治療の化学療法で治療された多くの癌患者における、腫瘍再発の発生率が高いことの原因であると考えられている。例えば、乳癌患者由来のCD44+CSCは化学療法後に増加することが見出されており、高レベルのCSCは化学療法に対する臨床反応の乏しさと相関していた。同様に、転移性CRCでは、化学療法後の損傷した肝臓においてLGR5の発現が上方制御されており、化学療法に反応してLGR5 CSCが増加すると、転移性疾病が発症および/または悪化することが示唆された。実際、LGR5の発現は、原発CRC腫瘍と比較して転移部位において有意に大きいことが見出されている。
【0035】
抗LGR5抗体
本明細書で用いられる場合、用語「抗体」には、合成抗体、モノクローナル抗体、組換えで生産された抗体、細胞内抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、合成抗体、1本鎖Fv(scFv)、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、ジスルフィド結合Fv(sdFv)(二重特異性sdFvを含む)、および抗イディオタイプ(抗Id)抗体、および上記のいずれかの抗体のエピトープ結合フラグメントが含まれるが、これらに限定されない。本明細書で提供されるいくつかの実施形態の抗体は、単一特異性、二重特異性、三重特異性、またはより多重の特異性であってよい。多重特異性抗体は、あるポリペプチドの異なるエピトープに特異的であり得るか、またはあるポリペプチドおよびある異種エピトープ(例えば、異種ポリペプチドまたは固体支持体材料)の両方に特異的であり得る。例えば、PCT公開公報WO O93/17715; WO 92/08802; W091/00360; WO 92/05793; Tutt, et al., J. Immunol. 147:60-69 (1991); 米国特許番号第4,474,893号;第4,714,681号;第4,925,648号;第5,573,920号; 第5,601,819号; Kostelny et al., J. Immunol. 148:1547-1553 (1992)を参照されたい。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本明細書で用いられる場合、LGR5には、NCBIアクセッション番号NM_003667.2の範囲内のヌクレオチドコード配列またはそのフラグメントによってコードされる、NCBIアクセッション番号NP_003658.1のポリペプチドまたはそのフラグメントを含むヒトLGR5が含まれるが、これらに限定されない。NCBIアクセッション番号NP_003658.1のアミノ酸配列および全事項、ならびにNM_003667.2のヌクレオチド配列および全事項は、その全体が参照により完全に組み込まれる。本明細書で企図されるLGR5フラグメントの例には、LGR5外部ドメイン、膜貫通ドメイン、または細胞内ドメイン、およびこれらの一部が含まれる。
【0036】
WO2015/15396は、抗LGR5抗体の軽鎖および/または重鎖を産生するハイブリドーマを開示しており、18G7H6A3および18G7H6A1と命名された抗LGR5抗体を含む。ヒトの治療のためには、抗LGR5抗体は、ヒト化抗体またはヒトモノクローナル抗体であることが好ましい。これらの抗体の特定のバージョンは、WO2015/153916に記載されている18G7H6A1または18G7H6A3である。
【0037】
特定の実施形態では、抗体は、アミノ酸GYSFTAYW(配列番号1)またはその保存的変異体を有する重鎖CDR1を含む。
【0038】
特定の実施形態では、抗体は、アミノ酸ILPGSDST(配列番号2)またはその保存的変異体を有する重鎖CDR2を含む。
【0039】
特定の実施形態では、抗体は、アミノ酸ARSGYYGSSQY(配列番号3)またはその保存的変異体を有する重鎖CDR3を含む。
【0040】
特定の実施形態では、抗体は、アミノ酸ESVDSYGNSF(配列番号4)またはその保存的変異体を有する軽鎖CDR1を含む。
【0041】
特定の実施形態では、抗体は、アミノ酸LTS(配列番号5)またはその保存的変異体を有する軽鎖CDR2を含む。
【0042】
特定の実施形態では、抗体は、アミノ酸QQNAEDPRT(配列番号6)またはその保存的変異体を有する軽鎖CDR3を含む。
【0043】
特定の実施形態では、抗体は、配列番号7または8を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0044】
特定の実施形態では、抗体は、配列番号9または10を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0045】
様々な実施形態では、抗体の糖鎖付加は、改変することができる。例えば、糖鎖欠損抗体を作成することができる(すなわち、抗体が糖鎖付加を欠いている)。糖鎖付加は、例えば、抗体の標的抗原への親和性を増加させるために、変えることができる。これらの糖鎖の改変は、例えば、抗体配列内の1つ以上の糖鎖付加部位を変えることによって達成することができる。例えば、1つ以上のアミノ酸置換を行って、1つ以上の可変領域フレームワークの糖鎖付加部位を除去し、それによってその部位における糖鎖付加を除去することができる。この糖鎖欠損は、抗体の抗原に対する親和性を増加させ得る。本手法は、米国特許番号第5,714,350号および第6,350,861号に、さらに詳細に記載されており、これらはそれぞれが、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0046】
複数の実施形態では、抗体は、NCBIアクセッション番号NP_003658.1(配列番号47)のヒトLGR5ポリペプチドまたはそのフラグメントに、少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも97%、または少なくとも99%、または100%の同一性を有するLGR5ポリペプチドを含むか、またはこれから成るポリペプチドに、特異的に結合する。これらのフラグメントは、例えば、LGR5ポリペプチドの、少なくとも約5、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、または900の連続もしくは非連続アミノ酸、または前述の長さのいずれかの間の任意の数の連続もしくは非連続アミノ酸であることができる。
【0047】
上述のように、本発明の併用療法は、チェックポイント阻害剤の使用を包含する。本明細書で用いられる「チェックポイント阻害剤」は、免疫チェックポイントタンパク質の活性を阻害する任意の化合物または薬剤を指す。チェックポイント阻害剤には、免疫チェックポイント分子結合タンパク質、免疫チェックポイント分子に結合する抗体(またはそのフラグメントまたは変異体)、免疫チェックポイント分子の発現を下方制御する核酸、または免疫チェックポイント分子に結合して、免疫チェックポイントタンパク質の機能および/または活性を阻害する他の任意の分子(すなわち、小有機分子、ペプチド模倣体、アプタマーなど)が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0048】
一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、プログラム細胞死リガンド1(Programmed Death-Ligand 1)(PD-L1)(B7-H1、CD274としても知られる)、プログラム細胞死1(Programmed Death 1)(PD-1)、CTLA-4、PD-L2(B7-DC、CD273)、LAG3、TIM3、2B4、A2aR、B7H1、B7H3、B7H4、BTLA、CD2、CD27、CD28、CD30、CD40、CD70、CD80、CD86、CD137、CD160、CD226、CD276、DR3、GAL9、GITR、HAVCR2、HVEM、IDO1、IDO2、ICOS(誘導性T細胞共刺激分子、inducible T cell costimulator)、KIR、LAIR1、LIGHT、MARCO(コラーゲン構造を有するマクロファージ受容体、macrophage receptor with collageneous structure)、PS(ホスファチジルセリン)、OX-40、SLAM、TIGHT、VISTA、および/またはVTCN1の阻害剤から選択される。
【0049】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1の阻害剤である。一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD-1抗体である。ある特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、ニボルマブである。例えば、米国特許番号 第7,029,674号; 第6,808,710号; または米国特許出願番号第20050250106号および第20050159351号に開示される、PD-1生物活性の阻害剤(すなわち、PD-1のリガンド)を、本明細書で提供される方法において、用いることができる。PD-1に対する例示的な抗体には、以下が含まれる:BioXcell由来の抗マウスPD-1抗体クローンJ43(カタログ番号BE0033-2);BioXcell由来の抗マウスPD-1抗体クローンRMP1-14(カタログ番号BE0146);マウス抗PD-1抗体クローンEH12;MerckのMK-3475抗マウスPD-1抗体(キイトルーダ、ペムブロリズマブ、ランブロリズマブ);およびANB011として知られるAnaptysBioの抗PD-1抗体;抗体MDX-1 106(ONO-4538);Bristol-Myers SquibbのヒトIgG4モノクローナル抗体ニボルマブ(オプジーボ(登録商標)、BMS-936558、MDX1106);AstraZenecaのAMP-514およびAMP-224;およびCureTech Ltdのピディリズマブ(CT-011)。
【0050】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-L1の阻害剤である。例示的な免疫チェックポイント阻害剤には、抗体(例えば、抗PD-L1抗体)、RNAi分子(例えば、抗PD-L1 RNAi)、アンチセンス分子(例えば、抗PD-L1アンチセンスRNA)、ドミナントネガティブタンパク質(例えば、ドミナントネガティブPD-L1タンパク質)、および低分子阻害剤が含まれる。例示的な抗PD-L1抗体には、クローンEH12が含まれる。PD-L1に対する例示的な抗体には、以下が含まれる:GenentechのMPDL3280A(RG7446);BioXcell由来の抗マウスPD-L1抗体クローン 10F.9G2(カタログ番号BE0101);Bristol-Meyer’s Squibb由来の抗PD-L1モノクローナル抗体MDX-1105(BMS-936559)およびBMS-935559;MSB0010718C;マウス抗PD-L1クローン29E.2A3;およびAstraZenecaのMEDI4736。
【0051】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-L2の阻害剤である。他の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1とPD-L2との間の相互作用を低減させる。例示的な免疫チェックポイント阻害剤には、抗体(例えば、抗PD-L2抗体)、RNAi分子(例えば、抗PD-L2 RNAi)、アンチセンス分子(例えば、抗PD-L2アンチセンスRNA)、ドミナントネガティブタンパク質(例えば、ドミナントネガティブPD-L2タンパク質)、および低分子阻害剤が含まれる。抗体には、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、脱免疫化(deimmunized)抗体、およびIg融合タンパク質が含まれる。
【0052】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4の阻害剤である。一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗CTLA-4抗体である。ある特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、イピリムマブである。一実施形態では、抗CTLA-4抗体は、抗原提示細胞上に発現されたCD80(B7-1)および/またはCD86(B7-2)への、CTLA-4の結合を遮断する。CTLA-4に対する例示的な抗体には、以下が含まれる:Bristol Meyers Squibbの抗CTLA-4抗体イピリムマブ(ヤーボイ(登録商標)、MDX-010、BMS-734016およびMDX-10としても知られる);Millipore由来の抗CTLA4抗体、クローン9H10;Pfizerのトレメリムマブ(CP-675,206、チシリムマブ);およびAbcam由来の抗CTLA4抗体クローンBNI3。
【0053】
いくつかの実施形態では、抗CTLA-4抗体は、例えば、WO 98/42752; 米国特許番号第6,682,736号および第6,207,156号; Hurwitz et al. (1998); Camacho et al. (2004) (antibody CP-675206); Mokyr et al. (1998)(これらは、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0054】
いくつかの実施形態では、CTLA-4阻害剤は、WO1996040915に開示されるCTLA-4リガンドである。いくつかの実施形態では、CTLA-4阻害剤は、CTLA-4発現の核酸阻害剤である。
【0055】
本明細書に開示されている組成物、剤形、および方法で使用するための任意の好適な免疫チェックポイント阻害剤が企図される。免疫チェックポイント阻害剤の選択は複数の要因に依存し、免疫チェックポイント阻害剤の選択は当業者の技術の範囲内である。例えば、考慮されるべき要因には、免疫チェックポイント阻害剤のさらなる薬物相互作用、および免疫チェックポイント阻害剤が服用され得る期間が含まれる。いくつかの例では、免疫チェックポイント阻害剤は、長期間、例えば慢性的に服用され得る免疫チェックポイント阻害剤である。
【0056】
免疫チェックポイント阻害剤が抗体である実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体、合成抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、1本鎖Fv(scFv)(二重特異性scFvを含む)、1本鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、および上記のいずれかの抗体のエピトープ結合フラグメントであり得る。特に、本発明で用いられる抗体には、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分、すなわち、免疫特異的に免疫チェックポイント分子に結合する免疫チェックポイント分子に対する結合部位を含有する分子が含まれる。本発明で用いられる免疫グロブリン分子は、任意の種類(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)、またはサブクラスの免疫グロブリン分子であることができる。好ましくは、本発明で用いられる抗体はIgGであり、より好ましくはIgG1である。
【0057】
一実施形態では、さらに、免疫チェックポイント阻害剤には、例えばMEDI―4736(WO 2011066389 A1に開示)、MPDL328OA(US 8217149 B2に開示)、およびMIH1(Affymetrix、eBioscience(16.5983.82)を介して入手可能)などのPD-L1を遮断するヒト化抗体または完全なヒト抗体、並びに、現在研究中の他のPD-L1阻害剤が含まれ得るが、これらに限定されない。本発明によれば、免疫チェックポイント阻害剤は、好ましくは、CTLA-4、PD-1またはPD-L1阻害剤から選択され、例えば、上述の公知のCTLA-4、PD-1またはPD-L1阻害剤(イピリムマブ、トレメリムマブ、ランブロリズマブ(labrolizumab)、ニボルマブ、ピディリズマブ、AMP-244、MEDI-4736、MPDL328OA、MIH1)から選択される。
【0058】
本発明の併用療法は、一般に、患者に投与される典型的な癌の標準治療の補助として、投与されるであろう。用いられる標準的な化学療法剤の例には、シクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、ムスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾロン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン、エトポシド、シスプラチン、エピルビシン、カペシタビン、ロイコボリン、フォリン酸、オキサリプラチン、ゲムシタビン、タンパク質結合パクリタキセルおよびイリノテカンが含まれる。いくつかの例では、標準治療には、大腸癌の処置で用いられる5-フルオロウラシル+ロイコボリン+イリノテカンなどの、薬剤の組み合わせの使用が包含されるであろう。
【0059】
本発明の併用療法はさらに、血管破壊剤(VDA)の投与を含んでよい。血管破壊剤に関する情報は、WO 06/084338、WO 07/087684およびWO 08/070908において提供されており、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0060】
血管破壊剤は式(I)の化合物、またはその塩、溶媒和物もしくはプロドラッグ、もしくはその塩であることが好ましい。
【化1】

(式中、
Xは、O、S、SO、SO、Se、SeO、SeO、またはNRを表し、ここで、Rは、H、O、場合により置換されたアシル、場合により置換されたアルケニル、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアリール、場合により置換されたシクロアルケニル、場合により置換されたシクロアルキル、場合により置換されたヘテロアリール、場合により置換されたヘテロシクリル、および場合により置換されたスルホニルから選択され、
1AおよびR1Bは、各々独立して、H、カルボキシ、シアノ、ジハロメトキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、ペンタハロエチル、ホスホリルアミノ、ホスホノ、ホスフィニル、スルホ、トリハロエテニル、トリハロメタンチオ、トリハロメトキシ、トリハロメチル、場合により置換されたアシル、場合により置換されたアシルアミノ、場合により置換されたアシルイミノ、場合により置換されたアシルイミノキシ、場合により置換されたアシルオキシ、場合により置換されたアリールアルキル、場合により置換されたアリールアルコキシ、場合により置換されたアルケニル、場合により置換されたアルケニルオキシ、場合により置換されたアルコキシ、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアルキニル、場合により置換されたアルキニルオキシ、場合により置換されたアミノ、場合により置換されたアミノアシル、場合により置換されたアミノアシルオキシ、場合により置換されたアミノスルホニル、場合により置換されたアミノチオアシル、場合により置換されたアリール、場合により置換されたアリールオキシ、場合により置換されたシクロアルケニル、場合により置換されたシクロアルキル、場合により置換されたヘテロアリール、場合により置換されたヘテロシクリル、場合により置換されたオキシアシル、場合により置換されたオキシアシルアミノ、場合により置換されたオキシアシルオキシ、場合により置換されたオキシアシルイミノ、場合により置換されたオキシスルフィニルアミノ、場合により置換されたオキシスルホニルアミノ、場合により置換されたオキシチオアシル、場合により置換されたオキシチオアシルオキシ、場合により置換されたスルフィニル、場合により置換されたスルフィニルアミノ、場合により置換されたスルホニル、場合により置換されたスルホニルアミノ、場合により置換されたチオ、場合により置換されたチオアシル、場合により置換されたチオアシルアミノを表すか、またはR1AおよびR1Bは、一緒になって、場合により置換されたアリール、場合により置換されたヘテロシクリル、場合により置換されたヘテロアリール、場合により置換されたシクロアルキル、もしくは場合により置換されたシクロアルケニルを形成し、
1Cは、C1‐3アルコキシ、C1‐3アルキルチオ、C1‐3アルキルアミノ、またはC1‐3ジアルキルアミノを表し、
1Dは、ヒドロキシまたはアミノを表し、
Lは、C=O、O、S、SO、SO、Se、SeO、SeO、C=NZ’、もしくはNR’を表し、ここで、Z’は、H、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアリール、もしくは場合により置換されたアミノであり、かつ、R’は、H、O、場合により置換されたアシル、場合により置換されたアルケニル、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアリール、場合により置換されたシクロアルケニル、場合により置換されたシクロアルキル、場合により置換されたヘテロアリール、場合により置換されたヘテロシクリル、もしくは場合により置換されたスルホニルから選択され、
2A‐R2Eは、各々独立して、H、カルボキシ、シアノ、ジハロメトキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、ペンタハロエチル、ホスホリルアミノ、ホスホノ、ホスフィニル、スルホ、トリハロエテニル、トリハロメタンチオ、トリハロメトキシ、トリハロメチル、場合により置換されたアシル、場合により置換されたアシルアミノ、場合により置換されたアシルイミノ、場合により置換されたアシルイミノキシ、場合により置換されたアシルオキシ、場合により置換されたアリールアルキル、場合により置換されたアリールアルコキシ、場合により置換されたアルケニル、場合により置換されたアルケニルオキシ、場合により置換されたアルコキシ、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアルキニル、場合により置換されたアルキニルオキシ、場合により置換されたアミノ、場合により置換されたアミノアシル、場合により置換されたアミノアシルオキシ、場合により置換されたアミノスルホニル、場合により置換されたアミノチオアシル、場合により置換されたアリール、場合により置換されたアリールオキシ、場合により置換されたシクロアルケニル、場合により置換されたシクロアルキル、場合により置換されたヘテロアリール、場合により置換されたヘテロシクリル、場合により置換されたオキシアシル、場合により置換されたオキシアシルアミノ、場合により置換されたオキシアシルイミノ、場合により置換されたオキシアシルオキシ、場合により置換されたオキシスルフィニルアミノ、場合により置換されたオキシスルホニルアミノ、場合により置換されたオキシチオアシル、場合により置換されたオキシチオアシルオキシ、場合により置換されたスルフィニル、場合により置換されたスルフィニルアミノ、場合により置換されたスルホニル、場合により置換されたスルホニルアミノ、場合により置換されたチオ、場合により置換されたチオアシル、場合により置換されたチオアシルアミノ、または場合により置換されたチオアシルオキシを表すか、または、R2AおよびR2B、R2BおよびR2C、R2CおよびR2D、ならびにR2DおよびR2Eのいずれかが、一緒になって、場合により置換されたアリール、場合により置換されたヘテロシクリル、場合により置換されたヘテロアリール、場合により置換されたシクロアルキル、もしくは場合により置換されたシクロアルケニルを形成し、ならびに、
Qは、H、CN、ハロゲン、トリアルキルシリル、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアルケニル、場合により置換されたアルキニル、場合により置換されたアシル、場合により置換されたオキシアシル、場合により置換されたアシルアミノ、場合により置換されたアミノアシルアミノ、OR’’、SR’’、もしくはNR’’R’’(ここで、R’’は、各々独立して、H、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアルケニル、場合により置換されたアルキニル、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアルケニル、場合により置換されたアルキニル、場合により置換されたアリール、場合により置換されたヘテロアリール、場合により置換されたヘテロシクリル、場合により置換されたアシル、および場合により置換されたオキシアシルを表す)を表すか、または、NR’’’NR’’’(ここで、R’’’は、各々独立して、H、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアルケニル、場合により置換されたアルキニル、場合により置換されたアリール、および場合により置換されたヘテロアリールを表す)を表す)。
【0061】
好ましくは、血管破壊剤が、2-メチル-7-ヒドロキシ-3-(3,4,5-トリメトキシベンゾイル)-6-メトキシベンゾフラン(BNC105)、または6-メトキシ-2-メチル-3-(3,4,5-トリメトキシベンゾイル)-1-ベンゾフラン‐7‐イルリン酸二ナトリウム(BNC105P)である。
【0062】
処置される腫瘍は、広範囲の腫瘍のいずれであってもよいが、特定の実施形態では、併用療法は、膀胱癌腫瘍、乳癌腫瘍、結腸癌腫瘍、消化器癌腫瘍、腎癌腫瘍、肺癌腫瘍、卵巣癌腫瘍、膵癌腫瘍、前立腺癌腫瘍、近位または遠位胆管癌腫瘍、黒色腫、大腸癌腫瘍、転移性大腸癌腫瘍、転移性膵癌腫瘍、三種陰性乳癌腫瘍および小細胞肺癌腫瘍からなる群から選択される腫瘍を対象とする。
【実施例
【0063】
実施例1.抗PD1と組み合わせた18G7(BNC101マウス同等物)
本発明者らは、同系のMC38マウス結腸腫瘍モデルにおいて、免疫療法用抗PD1抗体と組み合わせた18G7(WO2015/153916に詳細に記載されている)の有効性を決定するために、研究を行った。18G7抗体を、1日目、8日目および15日目に、15mg/kgで静脈内投与し、抗PD-1抗体(クローンRMP1-14)を、1日目、4日目、8日目、12日目および16日目に、5mg/kgで腹腔内投与した。C57/BL6マウスにMC38細胞を皮下接種した。腫瘍が約100~150mmの体積に達した時に、1グループあたり10匹のマウスのグループに無作為に分けた。


【0064】
本研究の目的は、C57BL/6免疫適格性マウスにおいて、皮下MC38マウス結腸腺癌モデルの処置において、単剤としての、または抗PD-1抗体と組み合わせた場合の、18G7抗体のインビボの治療有効性を、前臨床的に評価することであった。この同系のモデルは抗PD-1単剤療法に反応して、伝統的な腫瘍増殖抑制研究における補完療法に対して相加/相乗効果が見られることが知られている。しかしながら、癌幹細胞(CSC)標的化薬から期待されることは、必ずしも短期間の研究で直接的なTGI(腫瘍増殖抑制)効果が見られることではなく、処置により標準治療または外科手術後の長期的な利益のために腫瘍および免疫システムがプライミングされ、奏効期間が延長されることであろう。本研究は、これが事実であることを示している。
【0065】
図1において、腫瘍増殖抑制グラフにより、MC38モデルから予測されるように、抗PD-1が増殖抑制に関してエフェクターであったことが示されている。18日間にわたる腫瘍増殖抑制のみを見た本実験形式において、18G7抗体によるLGR5阻害からさらなる恩恵は得られなかった。MC38細胞はLGR5を発現することが知られているが、18G7抗体のMC38細胞への結合は直接的な抗増殖効果をもたらさなかった。
【0066】
CSCは腫瘍微小環境に対して免疫抑制能力を有し、腫瘍に対する免疫攻撃を弱めることが知られている。理想的には、BNC101処置によるLGR5+veCSCの減少は、それらの免疫抑制能力を制限し、抗PD-1の治療活性をより高めることができるであろう。この効果は、この動物モデルの倫理的制限が許容するよりも、現れるのに長い時間がかかる可能性があるか、あるいは、再移植アッセイにおいて証明しなければならない効果である。
【0067】
これらの制限を考慮すると、腫瘍のフローサイトメトリー解析は、(抗PD-1が、細胞傷害性T細胞が腫瘍標的に対して有効であり続けるという想定される作用機構により、この時点で活性を有していたにもかかわらず)18日という早い時期には効果を発揮する機会を有し得なかった変化を指し示す、集団の変化を有するエフェクター免疫細胞のスナップショットを可能にする。フローサイトメトリーを、終了時(20日目)に、サンプルに対して実施した。腫瘍を、以下の集団について解析した:CD3、CD4、CD8;CD4、CD25、Foxp3およびCD11b、Ly6G、Ly6C。
【0068】
全T細胞(CD3+ve)の腫瘍への動員は、処置間で比較的安定であるが、抗PD-1処置動物由来の腫瘍ではT細胞含量のわずかな有意でない増加が見られ、CD8細胞(CD3のサブセット)を維持/増殖させる処置と一致する(図2)。
【0069】
腫瘍に存在する細胞傷害性T細胞の有意な増加は抗PD-1処置動物において明らかであり、そして最も興味深いことに18G7の添加によりさらに増加した。抗PD-1と抗PD-1+18G7との間の比較は有意ではないが、アイソタイプと比較した有意性のさらなる増加は、免疫抑制性CSCの減少が細胞傷害性T細胞のより多くの蓄積を可能にし、さらに「免疫システムのブレーキを解除する」という前提と一致する効果を例示している(図3)。CSCだけではなく、LGR5を発現する腫瘍塊を抗LGR5が標的とすることによって引き起こされる他の腫瘍微小環境の要因が、この効果をさらに高める可能性がある。
【0070】
腫瘍性Treg細胞の解析はおそらく、最も有望な結果である。制御性T細胞(CD4+/CD25+/FoxP3+)または免疫抑制細胞は一般に、免疫システムの局所的活性化を抑制または下方制御し、病的な自己反応性を予防する。癌に関しては、これは細胞傷害性CD8細胞の誘導および増殖を抑制している、腫瘍による免疫減衰化(immune dampening)および免疫回避に変換される。
【0071】
CSCとTreg細胞を介した免疫抑制との間の複雑なシグナル伝達経路の関係性は文献に見られ、また、本明細書で潜在的に指摘されている。アイソタイプ対照と比較して、18G7処置由来のTreg細胞は減少し(9.4%)、抗PD-1抗体療法を使用した場合にはTreg細胞は有意に減少するが(33.9%の減少)、抗PD-1抗体療法を18G7と組み合わせて使用した場合にはTreg細胞はさらにより有意に減少する(57.3%の減少)(図4)。本結果は、免疫療法の組み合わせの分野における、抗LGR5抗体療法の位置づけを理解する上で重要となり得る。

【0072】
参考文献
図1
図2
図3
図4
【配列表】
0007470085000001.app