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特許7470096触媒、その調製方法、及び選択的水素化プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】触媒、その調製方法、及び選択的水素化プロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/17 20060101AFI20240410BHJP
   C07C 31/20 20060101ALI20240410BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240410BHJP
   B01J 23/83 20060101ALN20240410BHJP
【FI】
C07C29/17
C07C31/20 B
C07B61/00 300
B01J23/83 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021504518
(86)(22)【出願日】2019-08-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 US2019045228
(87)【国際公開番号】W WO2020033358
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】62/715,926
(32)【優先日】2018-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001706
【氏名又は名称】ダブリュー・アール・グレース・アンド・カンパニー-コーン
【氏名又は名称原語表記】W R GRACE & CO-CONN
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、ステファン アール.
【審査官】中村 政彦
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106861704(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106861701(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107778137(CN,A)
【文献】特表2009-507058(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0016643(US,A1)
【文献】国際公開第2018/060269(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/054759(WO,A1)
【文献】多羅間 公雄 他,ラネーニッケルに対するアルカリの促進作用の速度論的研究,工業化学雑誌,1958年,Vol. 61, No. 7,pp. 843-846,DOI: 10.1246/nikkashi1898.61.843
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 29/00
C07C 31/00
C07B 61/00
B01J 23/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,4-ブタンジオールを作製するためのプロセスであって、
前記プロセスが、1,4-ブチンジオールを含む溶液を、骨格金属触媒の存在下で水素と反応させることを含み、ここで前記骨格金属触媒が第1の元素、第2の元素およびプロモータからなり、
前記プロモータがセリウムであり
記第1の元素がニッケルであり、そして前記第2の元素がアルミニウムである、そして
前記触媒が、固定床の形態であり、かつ1mm~8mmの範囲の粒径を有する、
プロセス。
【請求項2】
前記触媒が、2mm~5mmの範囲の粒径を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
セリウムが、前記触媒の1重量%~5重量%の範囲の量で存在する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
セリウムが、前記触媒の1.5重量%~3.0重量%の範囲の量で存在する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記1,4-ブチンジオールを含む溶液が、6.0~11.0の範囲のpHを有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記1,4-ブチンジオールを含む溶液が、9.0~10.0のpHを有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記プロセスがブタノールを副生成物として生成し、前記ブタノールが、前記ブタノール及び前記1,4-ブタンジオールの総重量に基づいて、3.0重量%未満の範囲である、請求項1に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、「CATALYSTS,PREPARATION METHOD THEREOF,AND SELECTIVE HYDROGENATION PROCESSES」と題する、2018年8月8日出願の米国特許仮出願第62/715,926号の出願日の利益を主張し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、触媒に関し、より具体的には、1,4ブタンジオールを調製するための触媒、その調製方法、及び触媒を用いる選択的水素化プロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
粒状固定床形態の骨格金属ニッケルは、一般に、不飽和化合物1,4ブチンジオール(butynediol、BYD)から、ポリエステルを作製する際の成分であるブタンジオール(butanediol、BDO)を作製するために工業的に使用される。
【0004】
米国特許第6,262,317号は、1,4-ブチンジオールの連続触媒水素化によって1,4-ブタンジオールを調製するためのプロセスを開示している。プロセスは、不均一系水素化触媒の存在下で、1,4-ブチンジオールを液体連続相中の水素と反応させることを含む。触媒は、一般に、元素周期表の遷移族I、VI、VII、及びVIIIの1つ以上の元素を含む。触媒は、好ましくは、活性を増加させるためのプロモータとして、元素周期表の主族II、III、IV、及びVI、遷移族II、III、IV、及びV、並びにランタニドから選択される少なくとも1つの元素を更に含む。触媒のプロモータ含有量は、一般に、最大5重量%である。触媒は、沈殿、担持、又は骨格型触媒であってもよい。
【0005】
中国特許第201210212109.2号は、1,4-ブチンジオールからの1,4-ブタンジオールの水素化調製のために特別に、骨格金属ニッケル-アルミニウム-X触媒の調製及び活性化方法を開示している。Xは、Mg、B、Sr、Cr、S、Ti、La、Sn、W、Mo、又はFeを表す。
【0006】
現在の触媒は、典型的には、予測可能な制限寿命を有する。現在のプロセスは、最大仕様限界に達するまで徐々に増加する速度でn-ブタノール及び他の副生成物を生成し、これが、床の触媒の耐用年数の終わりを規定する。浸出プロセスからの含水アルミナ残基などの骨格金属触媒中に存在する酸性Al種は、ブタノールを含む副生成物を生成させる主な原因であると考えられる。骨格金属触媒は、一般に、少量の添加元素をプロモータとして含有してもよく、その機能には、所与の水素化プロセスの化学環境における触媒の活性、選択性、及び安定性の改善が挙げられる。従来のMo、Cr、又はFeなどの骨格金属のいくつかのプロモータは、実際には、表面酸性度の増加に起因してブタノール副生成物の形成を増加させる場合がある。比較的低い温度、比較的高い圧力、及び供給pHの制御などの操作条件は以前に最適化されているが、それらの組み合わせは、依然としてブタノール形成を適切に抑制することができない。n-ブタノール及び他の副生成物の形成を最小限に抑え、かつ/又は遅延させながら、ブタンジオールを作製するためのプロセスを開発することが望まれている。ブタンジオールは、ポリエステルを作製する際の主成分である。下流の使用はブタンジオール上に不純物限界を有するため、ブタンジオールの作製プロセス中にブタンジオール中の汚染物質を低減することは、例えば、後にブタンジオールからの不純物の分離(例えば、蒸留)に関連するコストを大幅に低減することができる。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、セリウムを含む触媒の存在下で、1,4-ブチンジオール溶液から1,4-ブタンジオールを作製するためのプロセスを提供する。1,4-ブタンジオールを作製するためのプロセスは、予想外に、著しく少量の主副生成物であるブタノールを生成する。
【0008】
したがって、本発明の一例は、1,4-ブタンジオールを作製するためのプロセスである。このプロセスは、1,4-ブチンジオールを含む溶液を、プロモータとしてセリウムを含む触媒の存在下で、水素と反応させることを含んでもよい。
【0009】
本発明の別の例は、1,4-ブタンジオールを作製するための触媒である。触媒は、プロモータとしてセリウムを含む骨格金属触媒であってもよい。
【0010】
本発明の別の例は、触媒を調製するプロセスである。プロセスは、酸化セリウム、第1の元素、及び第2の元素を溶融及び混合して合金を形成し、続いてアルカリ溶液を使用して活性化して触媒を形成することを含んでもよい。第1の元素はNiであってもよく、第2の元素はアルミニウムであってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、本開示の技術的解決策に対するより良好な理解を当業者に提供するために、本発明の実施形態を参照して説明される。
【0012】
本明細書において「約」により修飾された数値は、数値がその10%だけ変化し得ることを意味する。本明細書において「約」により修飾された数値範囲は、数値範囲の上限及び下限がその10%だけ変化し得ることを意味する。
【0013】
本発明の一例は、1,4-ブタンジオールを作製するためのプロセスである。このプロセスは、1,4-ブチンジオールを含む溶液を、プロモータとしてセリウムを含む触媒の存在下で、水素と反応させることを含んでもよい。
【0014】
1,4-ブチンジオールを含む溶液は、水溶液の形態である技術グレードの1,4-ブチンジオールであってもよく、不溶性又は溶解した構成成分として、ブチンジオール合成からの成分、例えば、銅、ビスマス、アルミニウム、又はケイ素化合物を更に含有することができる。1,4-ブチンジオールを含む溶液の主溶媒は、通常、水である。1,4-ブチンジオールを含む溶液は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、又は1,4-ブタンジオールなどの他の溶媒を含んでもよい。溶液中の1,4-ブチンジオール含有量は、一般に、溶液の10~90重量%、好ましくは20~80重量%、特に好ましくは30~70重量%である。一実施形態では、1,4-ブチンジオールを含む溶液は、100%純粋なブチンジオールである。
【0015】
1,4-ブチンジオールを含む溶液は、約6.0~約11.0、好ましくは約9~約10の範囲のpHを有し得る。
【0016】
反応に必要な水素は、好ましくは純粋な形態で使用される。しかし、メタン及び一酸化炭素などの更なる成分も含有し得る。このプロセスの固定床反応器に適用される水素圧力は、約15~約30MPaの範囲であってもよい。固定床反応器の入口温度は、約80℃~約120℃の範囲であってもよい。供給溶液の流量は、ブチンジオールの所望の変換レベルを可能にするように当業者によって選択され得る。ブチンジオールの所望の変換レベルは、次に、プロセス流が反応器入口に部分的に再利用されるかどうかに依存する。非再利用プロセス流の場合、「単一の通過」における所望の変換レベルは、通常、有機化合物基準で非常に高い、すなわち99重量%超である。
【0017】
本発明によれば、使用される触媒は、C≡C三重結合及び二重結合を単結合に水素化することができるものである。触媒は、固定床、スラリー若しくは懸濁液、又はそれらの組み合わせの形態であってもよい。一実施形態では、触媒は固定床の形態であり、約1mm~約8mm、好ましくは約2mm~約5mmの範囲の粒径を有し得る。別の実施形態では、触媒はスラリー又は懸濁液の形態であり、約10μm~約100μm、好ましくは約20μm~約80μmの範囲の中央粒径を有してもよい。
【0018】
触媒は、Ni、Co、Cu、Fe、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも第1の元素を更に含んでもよい。一実施形態では、第1の元素は、Niである。触媒は、アルミニウム、モリブデン、クロム、鉄、銅、スズ、ジルコニウム、亜鉛、チタン、バナジウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも第2の元素を更に含んでもよい。一実施形態では、第2の元素は、アルミニウムである。
【0019】
触媒は、骨格金属触媒であってもよい。好適な骨格金属触媒としては、骨格金属ニッケル、骨格金属銅、骨格金属コバルト、骨格金属ニッケル/モリブデン、骨格金属ニッケル/銅、骨格金属ニッケル/クロム、骨格金属ニッケル/クロム/鉄、又はレニウムスポンジが挙げられる。
【0020】
セリウムは、触媒の約1重量%~約5重量%、好ましくは約1.5重量%~約3.0重量%の範囲の量で触媒中に存在し得る。
【0021】
反応器中の水素とブチンジオールとのモル比は、少なくとも3:1、好ましくは4:1~100:1である。
【0022】
本発明のプロセスにおいて固定床反応器が使用される場合、触媒の固定床を通って流れる溶液及び気体の空間速度は限定されない。当業者であれば、溶液及び気体の空間速度を調節して、ブタノールなどの少量の副生成物と共に、最適収率の1,4-ブタンジオールを得ることができる。
【0023】
本発明による触媒は、1種類のみの触媒又は数種類の触媒の混合物を含んでもよい。いくつかの種類の触媒の混合物は、擬似均一系混合物として、又は個々の反応ゾーンがそれぞれ擬似均一系触媒床からなる構造化床として存在し得る。例えば、反応の開始時に1つの種類の触媒を使用し、更に下流で混合物を使用するために、方法を組み合わせることも可能である。
【0024】
このプロセスは、ブタノール及び1,4-ブタンジオールの総重量に基づいて、約3.0重量%未満、好ましくは約2.5重量%未満の範囲の副生成物としてブタノールを生成し得る。
【0025】
1,4-ブタンジオールを作製するためのプロセスの一実施形態では、触媒は骨格元素触媒である。触媒は、Ni、Co、Cu、Fe、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも第1の元素と、アルミニウム、モリブデン、クロム、鉄、銅、スズ、ジルコニウム、亜鉛、チタン、バナジウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも第2の元素と、セリウムと、を含む。セリウムは、触媒の約1重量%~約5重量%の範囲の量で存在する。1,4-ブチンジオールを含む溶液は、約9.0~約10.0のpHを有する。このプロセスは、ブタノール及び1,4-ブタンジオールの総重量に基づいて、約3.0重量%未満の範囲のブタノールを副生成物として生成する。
【0026】
本発明の別の例は、1,4-ブタンジオールを作製するための触媒である。触媒は、プロモータとしてセリウムを含む骨格金属触媒を含んでもよい。セリウムは、触媒の約1.0重量%~約5.0重量%、好ましくは約1.5重量%~約3.0重量%の範囲の量で触媒中に存在する。約1.0重量%~約5.0重量%のセリウムを含む一実施形態では、骨格金属の第1の元素は、ニッケルであり、骨格金属の第2の元素は、アルミニウムである。
【0027】
本発明の別の例は、触媒を調製するプロセスである。このプロセスは、酸化セリウム、第1の元素、及び第2の元素を溶融及び混合して合金を形成することを含んでもよい。次いで、合金は、アルカリ溶液と接触させることによって活性化される。一実施形態では、アルカリ溶液は、1重量%~25重量%の範囲の濃度を有する水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの水溶液である。
【0028】
第1の元素は、Ni、Co、Cu、Fe、及びそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。第2の元素は、アルミニウム、モリブデン、クロム、鉄、銅、スズ、ジルコニウム、亜鉛、チタン、バナジウム、及びそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。一実施形態では、第1の元素は、Niであり、第2の元素は、アルミニウムである。Niは、酸化セリウム、Ni、及びアルミニウムの総重量に基づいて、約40重量%~約60重量%の範囲の量で存在し得る。アルミニウムは、酸化セリウム、Ni、及びアルミニウムの総重量に基づいて、約40重量%~約60重量%の範囲の量で存在し得る。酸化セリウムは、酸化セリウム、Ni、及びアルミニウムの総重量に基づいて、約1重量%~約5重量%、好ましくは約1.5重量%~約3.5重量%の範囲の量で存在し得る。酸化セリウムは、溶融及び混合プロセス中に合金中のセリウムに変換され得る。
【0029】
一実施形態では、アルカリ溶液を、合金床を通して連続的に圧送して、合金を活性化する。別の実施形態では、合金粒子をバッチ中のアルカリ溶液に添加して、合金を活性化する。一実施形態では、触媒は、骨格金属触媒である。
【0030】
一実施形態では、触媒を調製するプロセスは、酸化セリウム、第1の元素、及び第2の元素を溶融及び混合して合金を形成することと、合金をアルカリ水溶液と接触させて触媒を生成することと、を含む。第1の元素は、Ni、Co、Cu、Fe、及びそれらの混合物からなる群から選択され、第2の元素は、アルミニウム、モリブデン、クロム、鉄、銅、スズ、ジルコニウム、亜鉛、チタン、バナジウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される。酸化セリウムは、酸化セリウム、第1の元素、及び第2の元素の総重量に基づいて、約1重量%~約5重量%の範囲の量で存在する。約1.0重量%~約5.0重量%のセリウムを含む一実施形態では、骨格金属の第1の元素は、ニッケルであり、骨格金属の第2の元素は、アルミニウムである。
【0031】
本発明の別の例は、本発明の一実施形態による触媒を調製するプロセスによって生成される触媒である。
【0032】
本発明の様々な実施形態の説明は、例示を目的として提示されたものであり、包括的であることを意図するものでも、開示された実施形態に限定されるものでもない。記載された実施形態の範囲及び趣旨から逸脱することなく、多くの変更及び変形が当業者には明らかであろう。本明細書で使用される用語は、実施形態の原理、市場で見出される技術に対する実用的又は技術的改良、又は当業者が本明細書に開示される実施形態を理解できるようにするために選択された。
【0033】
以下、本発明について、実施例を参照してより詳細に述べる。但し、本発明の範囲は以下の実施例に限定されない。
【実施例
【0034】
比較例1:非促進ニッケル触媒
触媒の調製
【0035】
2つの成分を溶融及び混合することにより、58重量%のAl及び42重量%のNiを含有する合金を形成した。次いで、合金を粉砕し、8~12メッシュサイズの範囲内の、又は約2mm~約3mmの範囲の直径を有する合金粒子に篩い分けした。
【0036】
合金粒子の390gの部分をビーカーに入れて、「床」を形成した。この合金粒子の床は、「浸出剤」と接触させることによって触媒に変換され、これは、水性NaOH溶液の5つの部分を、一定速度で合金床を通して連続的に圧送することを含む。NaOH水溶液の各部分は18リットルであり、5つの部分の強度は、それぞれ0.9%、1.75%、2.6%、3.5%、及び最後に4.35%からのプロセス中に増加した。NaOH水溶液の各部分を、40分間合金床を通して送達し、一方、浸漬した冷却コイル(内部水流を有する)を使用して、38℃の目標でプロセスの温度を制御する。
【0037】
次いで、触媒を2リットルの0.25%NaOH溶液で10分間洗浄した後、流出洗浄水がpH9に達するまで45℃の水で洗浄した。
触媒の試験
【0038】
調製した触媒を、約0.5インチの内径及び約6インチの高さを有する床寸法を有する垂直カラム反応器に充填したとき、それらを水湿潤状態に維持した。この量は、18mLの体積を有する触媒床への量である。
【0039】
固体2-ブチン-1,4-ジオールを35重量%で水に溶解させることにより、反応物質供給溶液を調製した。選択性への影響について試験する変数として、少量の15%NaOH溶液を添加することにより、反応物質供給溶液のpHを5.0又は10.0のいずれかに調整した。
【0040】
用いた反応条件は、入口温度100℃、ピーク温度150℃(出口温度)、水素圧=2500psig(17MPa)、及び制御可能な範囲の液体供給流量:0.25~0.35mL/分であった。Hガス(300mL/分)の並流上向き流、及び液体を維持した。
【0041】
この触媒電荷を試験する過程で、液体供給流量を様々な時点で増加させた後、数日間一定レベルに維持した。供給源を、別の独立変数としてpH10と5との間で切り替えた。用いた反応物質供給溶液のpH及び液体流量のシーケンスを表1に列挙する。
【0042】
有機生成物の重量%で記載される生成物アッセイを、Restek Stabilwax 30×0.32×0.5カラム、90%のエタノール溶媒、内部標準としてのジグリム、及び炎イオン化検出器を使用して、GC分析により決定した。表1の各条件について報告された収率は、各8時間の連続運転後に採取された試料からの平均である。
【0043】
目的の主な副生成物、n-ブタノール(「BuOH」)は、この標準的なベースライン触媒の様々な条件にわたって3.1%~3.8%の範囲であった。より高いpHの供給溶液を使用すると、ブタノール収率が低くなる。第2の副生成物、ヒドロキシブトキシテトラヒドロフラン、生成物と供給分子との反応及び脱水によって形成された環化アセタールは、表1に「アセタール」として列挙される。未変換ブチンジオールは「BYD」と呼ばれ、%変換率は、100%から減算されたBYD残余レベルに基づく。
比較例2:La促進ニッケル触媒
【0044】
合金形成及び活性化、触媒試験、並びにBYD-BDO系における触媒生成物の分析を含む触媒調製に関しては、比較例1の手順に従った。合金調製は、58重量%のAl、2重量%のNi、及び40重量%の6% La-94% Ni二元合金(American Elements)の混合物を使用した。得られた3成分合金の、ICPによるバルク化学分析により、2.6重量%のLaが得られた。同様の分析により、活性化触媒は、2.9重量%のLaを含有していた。
【0045】
BYD供給pHと液体流量との各々の組み合わせでの触媒試験は、表1に示すように、ブタノール、すなわち、5.8~6.2重量%の有意に高い範囲を得た。
実施例1:Ce促進ニッケル触媒
【0046】
合金形成及び活性化、触媒試験、並びにBYD-BDO系における触媒生成物の分析を含む触媒調製に関しては、比較例1の手順に従った。比較例1と比較して、実施例1の合金調製物は、57.8重量%のAl及び40.6重量%のNiと共に、1.6重量%で合金混合物に添加される、粒状形態(直径0.5~1.0mm)の酸化セリウム、CeOの使用による標準Ni-Alタイプとは異なっていた。混合及び溶融プロセスは、CeOをCeに変換し、これは元素合金に組み込まれた。得られた固体合金上のX線回折は、CeO出発物質の不在を示した。ICPによる合金のバルク化学分析により、1.3重量%のCeが得られた。同様の分析により、活性化触媒は、Alの選択的除去後に1.5重量%のCeを含有した。
【0047】
pH10でのBYD供給溶液を用いた触媒の適用は、表1に示すように、流量に応じて、著しく低い範囲のブタノール、すなわち、2.5重量%~3.2重量%を得た。
実施例2:Ce促進ニッケル触媒(より高いCe含有量)
【0048】
合金形成及び活性化、触媒試験、並びにBYD-BDO系における触媒生成物の分析を含む触媒調製に関しては、比較例1の手順に従った。合金調製は、実施例1の方法に従ったが、酸化セリウムを、57.7重量%のAl及び39.3重量%のNiと共に、3.0重量%で合金化混合物に添加した。ICPによる合金のバルク化学分析によって、1.9重量%のCeが得られた。同様の分析により、活性化触媒は、2.9重量%のCeを含有した。
【0049】
pH10でのBYD供給溶液の様々な組み合わせでの触媒の適用は、表1に示すように、更により低い範囲のブタノール、すなわち、2.1重量%~2.8重量%を得た。
【0050】
BYD供給溶液のpHの効果を以下のように研究した。
【0051】
上記の触媒が固定床反応器に充填されたままで、試験の連続した3つの段階を実施した。3つの連続する段階では、BYD供給溶液のpHは、それぞれ8、9、及び11で変化した。各段階は、0.30cc/分の固定供給流量で約5日間の持続時間であった。BDO収率及び副生成物の含有量を表1に示す。表1の実施例2に示すように、ブタノール副生成物は、BYD供給溶液のpHが上昇するにつれて減少し続ける。
【0052】
しかしながら、アセタール副生成物は、pH11(1.2%まで)で増加し、pH10(0.7%)で見られる傾向を続ける。組み合わせたブタノール及びアセタール副生成物の総含有量は、pH9~10の範囲で最低である。
実施例3:Ce促進ニッケル触媒。
【0053】
合金形成及び活性化、触媒試験、並びにBYD-BDO系における触媒生成物の分析を含む合金調製に関しては、実施例2の手順に従った。活性化触媒のバルク化学分析は、触媒が2.1%のCeを含有することを示した。
【0054】
pH10での供給溶液及び0.4mL/分の比較的高い流量での触媒の適用は、Laプロモータを使用する比較例2と同様に、表1に示すように、3.4重量%のブタノール含有量を得た。
【0055】
これらの実施例は、ブタノール副生成物の形成を著しく低減することによって、プロセスの選択性を予想外に改善する、セリウムプロモータの有用性を実証する。

【表1】
【0056】
本開示の原理及び実施形態は、本明細書に記載される。本開示の実施形態の説明は、本開示の方法及びそのコア概念を理解するのを助けるためにのみ使用される。一方、当業者であれば、本開示は、本開示の範囲に関するものであり、技術的スキームは、技術的特徴の特定の組み合わせに限定されず、また本発明の概念から逸脱することなく、技術的特徴又は技術的特徴と同等の特徴を組み合わせることによって形成される、他の技術的スキームを網羅するべきである。例えば、技術的スキームは、本開示に開示されるように上記の特徴(限定するものではないが)を同様の特徴で置き換えることによって得ることができる。
[発明の態様]
[1]
1,4-ブタンジオールを作製するためのプロセスであって、
1,4-ブチンジオールを含む溶液を、触媒の存在下で水素と反応させることを含み、
前記触媒が、セリウムを含む、プロセス。
[2]
前記触媒が、固定床、懸濁液、又はそれらの組み合わせの形態である、1に記載のプロセス。
[3]
前記触媒が、前記固定床の形態であり、約1mm~約8mmの範囲の粒径を有する、2に記載のプロセス。
[4]
前記触媒が前記懸濁液の形態であり、約10~約100μmの範囲の中央粒径を有する、2に記載のプロセス。
[5]
前記触媒が、Ni、Co、Cu、Fe、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも第1の元素を更に含む、1に記載のプロセス。
[6]
前記第1の元素が、Niである、5に記載のプロセス。
[7]
前記触媒が、アルミニウム、モリブデン、クロム、鉄、銅、スズ、ジルコニウム、亜鉛、チタン、バナジウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも第2の元素を更に含む、5に記載のプロセス。
[8]
前記第2の元素が、アルミニウムである、7に記載のプロセス。
[9]
前記触媒が、骨格金属触媒である、1に記載のプロセス。
[10]
セリウムが、前記触媒の約1重量%~約5重量%の範囲の量で存在する、1に記載のプロセス。
[11]
セリウムが、前記触媒の約1.5重量%~約3.0重量%の範囲の量で存在する、1に記載のプロセス。
[12]
前記1,4-ブチンジオールを含む溶液が、約6.0~約11.0の範囲のpHを有する、1に記載のプロセス。
[13]
前記1,4-ブチンジオールを含む溶液が、約9.0~約10.0のpHを有する、1に記載のプロセス。
[14]
前記プロセスが、前記ブタノール及び前記1,4-ブタンジオールの総重量に基づいて、約3.0重量%未満の範囲のブタノールを副生成物として生成する、1に記載のプロセス。
[15]
1,4-ブタンジオールを作製するための触媒であって、
プロモータとしてセリウムを含む骨格金属触媒を含む、触媒。
[16]
セリウムが、前記触媒の約1重量%~約5.0重量%の範囲の量で存在する、15に記載の触媒。
[17]
セリウムが、前記触媒の約1.5重量%~約3.0重量%の範囲の量で存在する、15に記載の触媒。
[18]
触媒を調製するプロセスであって、
酸化セリウム、第1の元素、及び第2の元素を溶融及び混合して合金を形成することを含み、
前記第1の元素が、Ni、Co、Cu、Fe、及びそれらの混合物からなる群から選択され、前記第2の元素が、アルミニウム、モリブデン、クロム、鉄、銅、スズ、ジルコニウム、亜鉛、チタン、バナジウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される、プロセス。
[19]
前記第1の元素が、Niであり、前記第2の元素が、アルミニウムである、18に記載のプロセス。
[20]
Niが、前記酸化セリウム、Ni、及びアルミニウムの総重量に基づいて、約40重量%~約60重量%の範囲の量で存在する、19に記載のプロセス。
[21]
アルミニウムが、前記酸化セリウム、Ni、及びアルミニウムの総重量に基づいて、約40重量%~約60重量%の範囲の量で存在する、19に記載のプロセス。
[22]
酸化セリウムが、前記酸化セリウム、前記第1の元素、及び前記第2の元素の総重量に基づいて、約1重量%~約5重量%の範囲の量で存在する、18に記載のプロセス。
[23]
前記第1の元素が、Niであり、前記第2の元素が、アルミニウムである、22に記載のプロセス。
[24]
酸化セリウムが、前記溶融及び混合中に前記合金中のセリウムに変換される、18に記載のプロセス。
[25]
前記合金をアルカリ水溶液と接触させて、前記触媒を生成することを更に含む、18に記載のプロセス。
[26]
前記触媒が、骨格金属触媒である、25に記載のプロセス。
[27]
18に記載のプロセスによって生成される、触媒。