IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社半導体エネルギー研究所の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】正極活物質の作製方法、二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240410BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240410BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021510582
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 IB2020052785
(87)【国際公開番号】W WO2020201916
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2019072940
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019124896
(32)【優先日】2019-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】門馬 洋平
(72)【発明者】
【氏名】三上 真弓
(72)【発明者】
【氏名】落合 輝明
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-523276(JP,A)
【文献】特表2013-524440(JP,A)
【文献】特表2013-524413(JP,A)
【文献】特開2000-323140(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106784626(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102054985(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0183045(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
H01M 4/505
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の材料、第2の材料および第3の材料が混合された第1の混合物を作製する第1のステップと、
前記第1の混合物を加熱し、第2の混合物を作製する第2のステップと、
前記第2の混合物、第4の材料および第5の材料が混合された第3の混合物を作製する第3のステップと、
前記第3の混合物を加熱し、第4の混合物を作製する第4のステップと、を有し、
前記第1の材料は、アルカリ金属を有するハロゲン化合物であり、
前記第2の材料は、マグネシウムを有し、
前記第3の材料は、前記アルカリ金属およびコバルトを有する金属酸化物であり、
前記第4の材料は、ニッケルを有し、
前記第5の材料は、アルミニウムを有し、
前記第4のステップにおいて、前記第3の混合物は、アニール装置の処理室において加熱され、
前記第4のステップにおいて、前記処理室で加熱される前記第3の混合物の総分量は15g以上であり、
前記第2のステップにおいて、前記加熱は酸素を有する雰囲気で行われ、
前記第2のステップにおいて、前記加熱は600℃以上950℃以下の温度範囲、かつ1時間以上100時間以下の範囲で行われ、
前記第4のステップにおいて、前記加熱は酸素を有する雰囲気で行われ、
前記第4のステップにおいて、前記加熱は600℃以上950℃以下の温度範囲、かつ1時間以上100時間以下の範囲で行われ、
前記第4のステップにおける前記加熱の温度は、前記第2のステップにおける前記加熱の温度よりも20℃以上低い、正極活物質の作製方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記アルカリ金属はリチウムであり、
前記第1の材料はフッ化リチウムであり、
前記第2の材料はフッ化マグネシウムである正極活物質の作製方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第3の材料は水酸化ニッケルであり、
前記第4の材料は水酸化アルミニウムである正極活物質の作製方法。
【請求項4】
第1の材料、第2の材料、第3の材料および第4の材料が混合された第1の混合物を作製する第1のステップと、
前記第1の混合物を加熱し、第2の混合物を作製する第2のステップと、を有し、
前記第1の材料は、アルカリ金属を有するハロゲン化合物であり、
前記第2の材料は、マグネシウムを有し、
前記第3の材料は、ニッケル、アルミニウム、チタン、バナジウムおよびクロムから選ばれる一以上を有し、
前記第4の材料は、前記アルカリ金属およびコバルトを有する金属酸化物であり、
前記第2のステップにおいて、前記加熱は600℃以上950℃以下の温度範囲、かつ1時間以上100時間以下の範囲で行われ、
前記第1の材料、前記第2の材料および前記第3の材料は、前記第1の材料、前記第2の材料、および前記第3の材料を混合し、示差走査熱量測定において、620℃以上920℃以下の範囲に極小値を有する第1のピークを有し、
前記第1のピークは負のピークである正極活物質の作製方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記アルカリ金属はリチウムであり、
前記第1の材料はフッ化リチウムであり、
前記第2の材料はフッ化マグネシウムである正極活物質の作製方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5において、
前記第3の材料はニッケルを有し、
前記第1の混合物は、前記第1の材料、前記第2の材料、前記第3の材料および前記第4の材料に加えて第5の材料が混合された混合物であり、
前記第5の材料は、アルミニウムを有する正極活物質の作製方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記第3の材料は水酸化ニッケルである正極活物質の作製方法。
【請求項8】
請求項4乃至請求項7のいずれか一において、
前記第1のピークの半値幅は100℃未満である正極活物質の作製方法。
【請求項9】
請求項4乃至請求項8のいずれか一において、
示差走査熱量測定の測定温度範囲は少なくとも、200℃以上850℃以下の範囲を含む正極活物質の作製方法。
【請求項10】
請求項4乃至請求項9のいずれか一において、
前記第2のステップにおける加熱の雰囲気は酸素を有する正極活物質の作製方法。
【請求項11】
正極活物質を有する二次電池であって、
前記正極活物質は、リチウムと、コバルトと、マグネシウムと、フッ素と、ニッケルと、アルミニウムと、を有し、
充電電圧4.60V、50℃で50サイクルの充放電を行い、50サイクル目の放電容量の1サイクル目からの減少分は、1サイクル目の放電容量を100%とした場合において、14%以下である二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、物、方法、又は、製造方法に関する。または、本発明の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、又は、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。本発明の一態様は、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、照明装置または電子機器、またはそれらの製造方法に関する。特に、二次電池に用いることのできる正極活物質、二次電池、および二次電池を有する電子機器に関する。
【0002】
なお、本明細書中において、蓄電装置とは、蓄電機能を有する素子及び装置全般を指すものである。例えば、リチウムイオン二次電池などの蓄電池(二次電池ともいう)、リチウムイオンキャパシタ、及び電気二重層キャパシタなどを含む。
【0003】
また、本明細書中において電子機器とは、蓄電装置を有する装置全般を指し、蓄電装置を有する電気光学装置、蓄電装置を有する情報端末装置などは全て電子機器である。
【背景技術】
【0004】
近年、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、空気電池等、種々の蓄電装置の開発が盛んに行われている。特に高出力、高エネルギー密度であるリチウムイオン二次電池は、携帯電話、スマートフォン、タブレット、もしくはノート型コンピュータ等の携帯情報端末、携帯音楽プレーヤ、デジタルカメラ、医療機器、次世代クリーンエネルギー自動車(ハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)等)など、半導体産業の発展と併せて急速にその需要が拡大し、充電可能なエネルギーの供給源として現代の情報化社会に不可欠なものとなっている。
【0005】
リチウムイオン二次電池に要求されている特性としては、さらなる高エネルギー密度化、サイクル特性の向上及び様々な動作環境での安全性、長期信頼性の向上などがある。
【0006】
そこでリチウムイオン二次電池のサイクル特性の向上および高容量化を目指した、正極活物質の改良が検討されている(特許文献1および特許文献2)。また、正極活物質の結晶構造に関する研究も行われている(非特許文献1乃至非特許文献4)。
【0007】
X線回折(XRD)は、正極活物質の結晶構造の解析に用いられる手法の一つである。非特許文献5に紹介されているICSD(Inorganic Crystal Structure Database)を用いることにより、XRDデータの解析を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2002-216760号公報
【文献】特開2006-261132号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】Toyoki Okumura et al,”Correlation of lithium ion distribution and X-ray absorption near-edge structure in O3-and O2-lithium cobalt oxides from first-principle calculation”,Journal of Materials Chemistry,2012,22,p.17340-17348
【文献】Motohashi,T.et al,”Electronic phase diagram of the layered cobalt oxide systemLixCoO▲2▼(0.0≦x≦1.0)”,Physical Review B,80(16);165114
【文献】Zhaohui Chen et al,“Staging Phase Transitions in LixCoO▲2▼”,Journal of The Electrochemical Society,2002,149(12)A1604-A1609
【文献】W.E.Counts et al,Journal of the American Ceramic Society,(1953)36[1]12-17.Fig.01471
【文献】Belsky,A.et al.,“New developments in the Inorganic Crystal Structure Database(ICSD):accessibility in support of materials research and design”,Acta Cryst.,(2002)B58 364-369.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の一態様は、高容量で充放電サイクル特性に優れた、リチウムイオン二次電池用正極活物質、およびその作製方法を提供することを課題の一とする。または、生産性のよい正極活物質の作製方法を提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、リチウムイオン二次電池に用いることで、充放電サイクルにおける容量の低下が抑制される正極活物質を提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、高容量の二次電池を提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、充放電特性の優れた二次電池を提供することを課題の一とする。または、高電圧で充電した状態を長時間保持した場合でもコバルト等の遷移金属の溶出が抑制された正極活物質を提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、安全性又は信頼性の高い二次電池を提供することを課題の一とする。
【0011】
または、本発明の一態様は、新規な物質、活物質粒子、蓄電装置、又はそれらの作製方法を提供することを課題の一とする。
【0012】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、明細書、図面、請求項の記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、第1の材料、第2の材料および第3の材料が混合された第1の混合物を作製する第1のステップと、第1の混合物を加熱し、第2の混合物を作製する第2のステップと、第2の混合物、第4の材料および第5の材料が混合された第3の混合物を作製する第3のステップと、第3の混合物を加熱し、第4の混合物を作製する第4のステップと、を有し、第1の材料は、アルカリ金属を有するハロゲン化合物であり、第2の材料は、マグネシウムを有し、第3の材料は、アルカリ金属およびコバルトを有する金属酸化物であり、第4の材料は、ニッケルを有し、第5の材料は、アルミニウムを有し、第4のステップにおいて、第3の混合物は、アニール装置の処理室において加熱され、第4のステップにおいて、処理室で加熱される第3の混合物の総分量は15g以上であり、第2のステップにおいて、加熱は酸素を有する雰囲気で行われ、第2のステップにおいて、加熱は600℃以上950℃以下の温度範囲、かつ1時間以上100時間以下の範囲で行われ、第4のステップにおいて、加熱は酸素を有する雰囲気で行われ、第4のステップにおいて、加熱は600℃以上950℃以下の温度範囲、かつ1時間以上100時間以下の範囲で行われ、第4のステップにおける加熱の温度は、第2のステップにおける加熱の温度よりも20℃以上低い、正極活物質の作製方法である。
【0014】
また上記構成において、アルカリ金属はリチウムであり、第1の材料はフッ化リチウムであり、第2の材料はフッ化マグネシウムであることが好ましい。
【0015】
また上記構成において、第3の材料は水酸化ニッケルであり、第4の材料は水酸化アルミニウムであることが好ましい。
【0016】
または、本発明の一態様は、第1の材料、第2の材料、第3の材料および第4の材料が混合された第1の混合物を作製する第1のステップと、第1の混合物を加熱し、第2の混合物を作製する第2のステップと、を有し、第1の材料は、アルカリ金属を有するハロゲン化合物であり、第2の材料は、マグネシウムを有し、第3の材料は、ニッケル、アルミニウム、チタン、バナジウムおよびクロムから選ばれる一以上を有し、第4の材料は、アルカリ金属およびコバルトを有する金属酸化物であり、第2のステップにおいて、加熱は600℃以上950℃以下の温度範囲、かつ1時間以上100時間以下の範囲で行われ、第1の材料、第2の材料および第3の材料は、第1の材料、第2の材料、および第3の材料を混合し、示差走査熱量測定において、620℃以上920℃以下の範囲に極小値を有する第1のピークを有し、第1のピークは負のピークである正極活物質の作製方法である。
【0017】
また上記構成において、アルカリ金属はリチウムであり、第1の材料はフッ化リチウムであり、第2の材料はフッ化マグネシウムであることが好ましい。
【0018】
また上記構成において、第3の材料はニッケルを有し、第1の混合物は、第1の材料、第2の材料、第3の材料および第4の材料に加えて第5の材料が混合された混合物であり、第5の材料は、アルミニウムを有することが好ましい。
【0019】
また上記構成において、第3の材料は水酸化ニッケルであることが好ましい。
【0020】
また上記構成において、第1のピークの半値幅は100℃未満であることが好ましい。
【0021】
また上記構成において、示差走査熱量測定の測定温度範囲は少なくとも、200℃以上850℃以下の範囲を含むことが好ましい。
【0022】
また上記構成において、第2のステップにおける加熱の雰囲気は酸素を有することが好ましい。
【0023】
または、本発明の一態様は、第1の材料、第2の材料、第3の材料および第4の材料が混合された第1の混合物を作製する第1のステップと、第1の混合物を加熱し、第2の混合物を作製する第2のステップと、を有し、第1の材料は、金属Aを有するハロゲン化合物であり、第2の材料は、マグネシウムを有し、第3の材料は、ニッケル、アルミニウム、チタン、バナジウムおよびクロムから選ばれる一以上を有し、第4の材料は、金属Aおよびコバルトを有する金属酸化物であり、金属Aはアルカリ金属であり、第2のステップにおいて、加熱は600℃以上950℃以下の温度範囲、かつ1時間以上100時間以下の範囲で行われ、第1の材料、第2の材料および第3の材料は、第1の材料、第2の材料、および第3の材料を混合し、600℃以上950℃以下の温度範囲、かつ1時間以上100時間以下の範囲で加熱を行い、X線回折で分析したとき、2θが39.5°以上41.5°以下に極大を有する第1の回折ピークを有し、2θ=19.0°±0.25°、2θ=31.3°±0.25°、2θ=36.9°±0.15°および2θ=59.4°±0.25°の4つのピークが観測されない、正極活物質の作製方法である。
【0024】
また上記構成において、金属Aはリチウムであり、第1の材料はフッ化リチウムであり、第2の材料はフッ化マグネシウムであることが好ましい。
【0025】
また上記構成において、第3の材料はニッケルを有し、第1の混合物は、第1の材料、第2の材料、第3の材料および第4の材料に加えて第5の材料が混合された混合物であり、第5の材料は、アルミニウムを有することが好ましい。
【0026】
また上記構成において、第3の材料は水酸化ニッケルであることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様により、高容量で充放電サイクル特性に優れた、リチウムイオン二次電池用正極活物質、およびその作製方法を提供することができる。また、生産性のよい正極活物質の作製方法を提供することができる。また、リチウムイオン二次電池に用いることで、充放電サイクルにおける容量の低下が抑制される正極活物質を提供することができる。また、高容量の二次電池を提供することができる。また、充放電特性の優れた二次電池を提供することができる。また、高電圧で充電した状態を長時間保持した場合でもコバルト等の遷移金属の溶出が抑制された正極活物質を提供することができる。また、安全性又は信頼性の高い二次電池を提供することができる。また、新規な物質、活物質粒子、蓄電装置、又はそれらの作製方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A図1B図1Cは、物質の検査方法を説明する図である。
図2A図2B図2Cは、正極活物質の作製方法を説明する図である。
図3は、正極活物質の作製方法を説明する図である。
図4は、正極活物質の作製方法を説明する図である。
図5A図5B図5Cは、コイン型二次電池を説明する図である。
図6A図6B図6C図6Dは、円筒型二次電池を説明する図である。
図7A図7Bは、二次電池の例を説明する図である。
図8A図8B図8C図8Dは、二次電池の例を説明する図である。
図9A図9Bは、二次電池の例を説明する図である。
図10は、二次電池の例を説明する図である。
図11A図11B図11Cは、ラミネート型の二次電池を説明する図である。
図12A図12Bは、ラミネート型の二次電池を説明する図である。
図13は、二次電池の外観を示す図である。
図14は、二次電池の外観を示す図である。
図15A図15B図15Cは、二次電池の作製方法を説明する図である。
図16A図16B1図16B2図16C図16Dは、曲げることのできる二次電池を説明する図である。
図17A図17Bは、曲げることのできる二次電池を説明する図である。
図18A図18B図18C図18D図18E図18F図18G図18Hは、電子機器の一例を説明する図である。
図19A図19B図19Cは、電子機器の一例を説明する図である。
図20は、電子機器の一例を説明する図である。
図21A図21B図21Cは、車両の一例を説明する図である。
図22A図22B図22Cは、電子機器の一例を説明する図である。
図23A図23B図23Cは、DSCを用いた評価結果を示す図である。
図24A図24Bは、DSCを用いた評価結果を示す図である。
図25は、DSCを用いた評価結果を示す図である。
図26は、二次電池のサイクル特性を示す図である。
図27は、XRDの評価結果を示す図である。
図28は、XRDの評価結果を示す図である。
図29は、XRDの評価結果を示す図である。
図30は、XRDの評価結果を示す図である。
図31Aおよび図31Bは二次電池の充電電圧4.60Vにおけるサイクル特性を示す図である。
図32Aおよび図32Bは、二次電池の充電電圧4.62Vにおけるサイクル特性を示す図である。
図33Aおよび図33Bは、二次電池の充電電圧4.64Vにおけるサイクル特性を示す図である。
図34Aおよび図34Bは、二次電池の充電電圧4.66Vにおけるサイクル特性を示す図である。
図35AはSample6を用いた二次電池のサイクル特性を示す図である。図35BはSample6を用いた二次電池の50℃、充電電圧4.60Vにおける初回充放電曲線と50回目の充放電曲線を示す図である。
図36AはSample7を用いた二次電池のサイクル特性を示す図である。図36BはSample7を用いた二次電池の50℃、充電電圧4.60Vにおける初回充放電曲線と50回目の充放電曲線を示す図である。
図37AはSample8を用いた二次電池のサイクル特性を示す図である。図37BはSample8を用いた二次電池の50℃、充電電圧4.60Vにおける初回充放電曲線と50回目の充放電曲線を示す図である。
図38A乃至図38Cは二次電池の電圧4.60Vにおける連続充電特性を示す図である。
図39A乃至図39Cは二次電池の電圧4.62Vにおける連続充電特性を示す図である。
図40A乃至図40Cは二次電池の電圧4.64Vにおける連続充電特性を示す図である。
図41A乃至図41Cは二次電池の電圧4.66Vにおける連続充電特性を示す図である。
図42は連続充電試験における耐久時間について説明する図である。
図43Aおよび図43Bは、XRDの評価結果を示す図である。
図44Aおよび図44Bは、XRDの評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0030】
また、本明細書等において結晶面および方向はミラー指数で示す。結晶面および方向の表記は、結晶学上、数字に上付きのバーを付すが、本明細書等では出願表記の制約上、数字の上にバーを付す代わりに、数字の前に-(マイナス符号)を付して表現する場合がある。また、結晶内の方向を示す個別方位は[ ]で、等価な方向すべてを示す集合方位は< >で、結晶面を示す個別面は( )で、等価な対称性を有する集合面は{ }でそれぞれ表現する。
【0031】
本明細書等において、偏析とは、複数の元素(例えばA,B,C)からなる固体において、ある元素(例えばB)が空間的に不均一に分布する現象をいう。
【0032】
本明細書等において、活物質等の粒子の表層部とは、表面から10nm程度までの領域をいう。ひびやクラックにより生じた面も表面といってよい。また表層部より深い領域を、内部という。
【0033】
本明細書等において、リチウムと遷移金属を含む複合酸化物が有する層状岩塩型の結晶構造とは、陽イオンと陰イオンが交互に配列する岩塩型のイオン配列を有し、遷移金属とリチウムが規則配列して二次元平面を形成するため、リチウムの二次元的拡散が可能である結晶構造をいう。なお陽イオンまたは陰イオンの欠損等の欠陥があってもよい。また、層状岩塩型結晶構造は、厳密に言えば、岩塩型結晶の格子が歪んだ構造となっている場合がある。
【0034】
また本明細書等において、岩塩型の結晶構造とは、陽イオンと陰イオンが交互に配列している構造をいう。なお陽イオンまたは陰イオンの欠損があってもよい。
【0035】
また本明細書等において、リチウムと遷移金属を含む複合酸化物が有する擬スピネル型の結晶構造とは、空間群R-3mであり、スピネル型結晶構造ではないものの、コバルト、マグネシウム等のイオンが酸素6配位位置を占め、陽イオンの配列がスピネル型と似た対称性を有する結晶構造をいう。なお、擬スピネル型の結晶構造は、リチウムなどの軽元素は酸素4配位位置を占める場合があり、この場合もイオンの配列がスピネル型と似た対称性を有する。
【0036】
また擬スピネル型の結晶構造は、層間にランダムにLiを有するもののCdCl型の結晶構造に類似する結晶構造であるということもできる。このCdCl型に類似した結晶構造は、ニッケル酸リチウムを充電深度0.94まで充電したとき(Li0.06NiO)の結晶構造と近いが、単純な純粋なコバルト酸リチウム、またはコバルトを多く含む層状岩塩型の正極活物質では通常この結晶構造を取らないことが知られている。
【0037】
層状岩塩型結晶、および岩塩型結晶の陰イオンは立方最密充填構造(面心立方格子構造)をとる。擬スピネル型結晶も、陰イオンは立方最密充填構造をとると推定される。これらが接するとき、陰イオンにより構成される立方最密充填構造の向きが揃う結晶面が存在する。ただし、層状岩塩型結晶および擬スピネル型結晶の空間群はR-3mであり、岩塩型結晶の空間群Fm-3m(一般的な岩塩型結晶の空間群)およびFd-3m(最も単純な対称性を有する岩塩型結晶の空間群)とは異なるため、上記の条件を満たす結晶面のミラー指数は層状岩塩型結晶および擬スピネル型結晶と、岩塩型結晶では異なる。本明細書では、層状岩塩型結晶、擬スピネル型結晶、および岩塩型結晶において、陰イオンにより構成される立方最密充填構造の向きが揃うとき、結晶の配向が概略一致する、と言う場合がある。
【0038】
二つの領域の結晶の配向が概略一致することは、TEM(透過電子顕微鏡)像、STEM(走査透過電子顕微鏡)像、HAADF-STEM(高角散乱環状暗視野走査透過電子顕微鏡)像、ABF-STEM(環状明視野走査透過電子顕微鏡)像等から判断することができる。X線回折(XRD)、電子線回折、中性子線回折等も判断の材料にすることができる。TEM像等では、陽イオンと陰イオンの配列が、明線と暗線の繰り返しとして観察できる。層状岩塩型結晶と岩塩型結晶において立方最密充填構造の向きが揃うと、結晶間で、明線と暗線の繰り返しのなす角度が5度以下、より好ましくは2.5度以下である様子が観察できる。なお、TEM像等では酸素、フッ素をはじめとする軽元素は明確に観察できない場合があるが、その場合は金属元素の配列で配向の一致を判断することができる。
【0039】
また本明細書等において、正極活物質の理論容量とは、正極活物質が有する挿入脱離可能なリチウムが全て脱離した場合の電気量をいう。例えばLiCoOの理論容量は274mAh/g、LiNiOの理論容量は274mAh/g、LiMnの理論容量は148mAh/gである。
【0040】
また本明細書等において、挿入脱離可能なリチウムが全て挿入されているときの充電深度を0、正極活物質が有する挿入脱離可能なリチウムが全て脱離したときの充電深度を1ということとする。
【0041】
また本明細書等において、充電とは、電池内において正極から負極にリチウムイオンを移動させ、外部回路において負極から正極に電子を移動させることをいう。正極活物質については、リチウムイオンを離脱させることを充電という。また充電深度が0.7以上0.9以下の正極活物質を、高電圧で充電された正極活物質と呼ぶ場合がある。
【0042】
同様に、放電とは、電池内において負極から正極にリチウムイオンを移動させ、外部回路において正極から負極に電子を移動させることをいう。正極活物質については、リチウムイオンを挿入することを放電という。また充電深度が0.06以下の正極活物質、または高電圧で充電された状態から充電容量の90%以上の容量を放電した正極活物質を、十分に放電された正極活物質ということとする。
【0043】
また本明細書等において、非平衡な相変化とは、物理量の非線形変化を起こす現象をいうこととする。例えば容量(Q)を電圧(V)で微分(dQ/dV)することで得られるdQ/dV曲線におけるピークの前後では、非平衡な相変化が起き、結晶構造が大きく変わっていると考えられる。
【0044】
二次電池は例えば正極および負極を有する。正極を構成する材料として、正極活物質がある。正極活物質は例えば、充放電の容量に寄与する反応を行う物質である。なお、正極活物質は、その一部に、充放電の容量に寄与しない物質を含んでもよい。
【0045】
本明細書等において、本発明の一態様の正極活物質は、正極材料、あるいは二次電池用正極材、等と表現される場合がある。また本明細書等において、本発明の一態様の正極活物質は、化合物を有することが好ましい。また本明細書等において、本発明の一態様の正極活物質は、組成物を有することが好ましい。また本明細書等において、本発明の一態様の正極活物質は、複合体を有することが好ましい。
【0046】
放電レートとは、電池容量に対する放電時の電流の相対的な比率であり、単位Cで表される。定格容量X(Ah)の電池において、1C相当の電流は、X(A)である。2X(A)の電流で放電させた場合は、2Cで放電させたといい、X/5(A)の電流で放電させた場合は、0.2Cで放電させたという。また、充電レートも同様であり、2X(A)の電流で充電させた場合は、2Cで充電させたといい、X/5(A)の電流で充電させた場合は、0.2Cで充電させたという。
【0047】
定電流充電とは例えば、充電レートを一定として充電を行う方法を指す。定電圧充電とは例えば、充電が上限電圧に達したら、電圧を一定とし、充電を行う方法を指す。定電流放電とは例えば、放電レートを一定として放電を行う方法を指す。
【0048】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の正極活物質の作製方法等について説明する。
【0049】
本発明の一態様の正極活物質は、アルカリ金属Aを有するハロゲン化合物と、マグネシウムを有する化合物と、アルカリ金属Aおよび遷移金属を有する金属酸化物と、を混合し、アニール(加熱、熱処理、等と表現する場合がある)を施すことにより得られる。またアニールプロセスにおいて、前記3つの材料に加えて、金属Mを有する化合物を加えることが好ましい。金属Mを有する化合物を加えることにより、正極活物質の構造安定性が向上し、二次電池の充電電圧を高めることができる場合がある。その結果として、エネルギー密度が高まる。また、二次電池の寿命が長くなる。
【0050】
アルカリ金属Aおよび遷移金属を有する金属酸化物において、遷移金属は例えばコバルト、マンガン、ニッケルおよび鉄の一以上であることが好ましい。また、アルカリ金属Aおよび遷移金属を有する金属酸化物が有する遷移金属は、後述する金属Mとは異なる元素であることが好ましい。
【0051】
アルカリ金属Aおよび遷移金属を有する金属酸化物は例えば、層状岩塩型の構造を有する。あるいは例えば、スピネル型の構造を有する。
【0052】
金属Mは例えば、ニッケル、アルミニウム、マンガン、チタン、バナジウム、鉄およびクロムから選ばれる一以上であり、特にニッケルおよびアルミニウムの一以上であることが好ましい。
【0053】
アルカリ金属Aを有するハロゲン化合物と、マグネシウムを有する化合物とを混合し、加熱することにより、共融反応が生じることが示唆される。あるいは、共融点が低下する。あるいは、共晶反応が生じる。あるいは共晶点が低下する。共融反応が生じることにより例えば、互いの融点よりも低い温度で溶融を生じさせ、アルカリ金属Aおよび遷移金属を有する金属酸化物の表面、および内部にマグネシウムを添加することができる。
【0054】
一方、アルカリ金属Aを有するハロゲン化合物、マグネシウムを有する化合物、およびアルカリ金属Aおよび遷移金属を有する金属酸化物の3つの材料に加えて、金属Mを有する化合物を加えることにより、アルカリ金属Aを有するハロゲン化合物とマグネシウムを有する化合物の共融反応が阻害される場合がある。該共融反応が阻害される理由として、金属Mを有する化合物が、該共融反応が示唆される温度よりも低い温度において、マグネシウムを有する化合物およびアルカリ金属Aを有するハロゲン化合物の少なくとも一方と反応することが挙げられる。
【0055】
また、該共融反応の生じやすさは、アニールの雰囲気、圧力、およびアニール装置の処理室の内部の体積に対するアニールされる材料の全分量により、変化する場合がある。
【0056】
金属Mを有する化合物は、該共融反応が示唆される温度よりも低い温度において、マグネシウムを有する化合物およびアルカリ金属Aを有するハロゲン化合物との反応量が小さいことが好ましい。
【0057】
また、金属Mを有する化合物が該共融反応を阻害しやすい場合には例えば、アルカリ金属Aを有するハロゲン化合物、マグネシウムを有する化合物、およびアルカリ金属Aおよび遷移金属を有する金属酸化物を混合し、アニールを施したのち、金属Mを有する化合物を混合し、アニールを施せばよい。
【0058】
該共融反応が示唆される温度よりも低い温度における、アルカリ金属Aを有するハロゲン化合物およびマグネシウムを有する化合物と、金属Mを有する化合物と、の反応を以下の方法で検査することができる。
【0059】
なお、アルカリ金属Aを有するハロゲン化合物と共融反応を生じる物質としてここまで、マグネシウムを有する化合物について述べたが、マグネシウムを有する化合物に替えて、元素Xを有する化合物を用いることができる。元素Xとして、カルシウム、ジルコニウム、ランタン、バリウム等の元素を用いることができる。また例えば元素Xとして銅、カリウム、ナトリウム、亜鉛等の元素を用いることができる。また元素Xとして、上記に示す元素に加えてマグネシウムを有してもよい。また元素Xとして上記に示す元素のうち二以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
<DSC>
図1Aには物質91と物質92の反応を、DSC(示差走査熱量測定:Differential scanning calorimetry)を用いて検査する例を示す。ここでは、物質91はアルカリ金属Aを有するハロゲン化合物であり、物質92は元素Xを有する化合物である。
【0061】
ステップS01において、物質91および物質92を準備する。
【0062】
次に、ステップS02において、物質91および物質92を混合し、混合物81を得る。
【0063】
次にステップS03において、検査を行う。ここでは、検査としてDSCを行う。DSCでは、測定温度を走査し、熱量の変化を観測する。この熱量の変化は例えば、融解などの吸熱反応や、結晶化などの発熱反応により生じる。
【0064】
物質91と物質92は温度T(1)において吸熱反応を示唆する熱量の変化が観測されることが好ましい。
【0065】
図1Bには物質91、物質92および物質93の反応を、DSCを用いて検査する例を示す。ここでは、物質93は金属M(1)を有する化合物である。金属M(1)として、金属Mの記載を参照することができる。
【0066】
物質91、物質92および物質93の混合物81の検査を、DSCを用いて行う。図1Aにおける検査において観測された温度T(1)の反応が、物質93を加えることによりどの程度阻害されるか、検査を行うことができる。
【0067】
より具体的には例えば、図1Aにおける検査でDSCを行い、温度T(1)に吸熱反応を示唆するピークがピーク強度I(1)にて観測される。ここで温度T(1)は好ましくは620℃以上920℃以下、より好ましくは700℃以上850℃以下、さらに好ましくは700℃以上770℃以下である。
【0068】
図1Bにおける検査においてDSCを行い、温度-熱流曲線を取得し、好ましくは[温度T(1)-50℃]以上[温度T(1)+50℃]以下、より好ましくは[温度T(1)-30℃]以上[温度T(1)+30℃]以下においてピーク強度I(1)の0.3倍以上の強度で、吸熱反応を示唆するピークが観測される場合には、共融反応の阻害は顕著ではない、と判断する。このとき、観測されるピークの半値幅は100℃を超えないことが好ましく、50℃以下であることが好ましく、30℃以下であることがより好ましい。
【0069】
ここでピーク強度I(1)は、混合物の全重量のうち、物質91と物質92が占める配合比で規格化を行って算出することが好ましい。
【0070】
ここで、DSCの走査速度は、例えば20℃/min.、好ましくは例えば2℃/min.以上30℃/min.以下が好ましい。
【0071】
また、ピーク強度として、DSCの微分波形を取得し、微分前の温度-熱流曲線においてピークが観測された温度の前後において、微分波形で観測される極大点と極小点の高さの差をピーク強度としてもよい。微分波形で観測される極大点が観測されるピーク位置と、温度-熱流曲線のピーク位置との差分の絶対値は、温度-熱流曲線のピークの半値幅の0.5倍より小さいことが好ましい。微分波形で観測される極小点が観測されるピーク位置と、温度-熱流曲線のピーク位置との差分の絶対値も、温度-熱流曲線のピークの半値幅の0.5倍より小さいことが好ましい。
【0072】
図1Cには物質91、物質92、物質93および物質94の反応を、DSCを用いて検査する例を示す。ここでは、物質94は金属M(2)を有する化合物である。金属M(2)として、金属Mの記載を参照することができる。また、金属M(2)は、金属M(1)とは異なる金属を含むことが好ましい。
【0073】
物質91、物質92、物質93および物質94の混合物81の検査を、DSCを用いて行う。図1Aにおける検査において観測された温度T(1)の反応が、物質93および物質94を加えることによりどの程度阻害されるか、検査を行うことができる。温度T(1)の反応が阻害されることが示唆された場合には、図1Bにおいて、物質93に替えて物質94とし、検査を行う。これにより、物質93および物質94のいずれが、温度T(1)における反応の阻害への寄与が高いか、知ることができる。
【0074】
図1A図1Bおよび図1CのステップS01において、金属酸化物95を加えて検査を行ってもよい。金属酸化物95はここではアルカリ金属Aおよび遷移金属を有する金属酸化物である。
【0075】
金属酸化物95を加えてDSCを行う場合には、加えない場合に比べて、ピークが観測される温度T(1)は例えば、100℃程度高くなる場合がある。
【0076】
アルカリ金属Aとして例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等を用いればよく、特にリチウムを用いることが好ましい。アルカリ金属Aおよび遷移金属を有する金属酸化物として、例えば、層状岩塩型の構造を有する金属酸化物を用いればよい。あるいは、空間群R-3mで表される構造を有する金属酸化物を用いればよい。
【0077】
アルカリ金属Aおよび遷移金属を有する金属酸化物として、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、コバルトの一部がマンガンで置換されたコバルト酸リチウム、コバルトの一部がニッケルで置換されたコバルト酸リチウム、またはニッケル-マンガン-コバルト酸リチウムを用いることができる。
【0078】
アルカリ金属Aおよび遷移金属を有する金属酸化物がニッケルを有する場合には例えばコバルトとニッケルの原子数の和(Co+Ni)に占める、ニッケルの原子数(Ni)の割合Ni/(Co+Ni)が、0.1未満であることが好ましく、0.075以下であることがより好ましい。高電圧で充電した状態を長時間保持すると、正極活物質から遷移金属が電解液に溶出し、結晶構造が崩れる恐れが生じる。しかし上記の割合でニッケルを有することで、正極活物質100からの遷移金属の溶出を抑制できる場合がある。
【0079】
アルカリ金属Aを有するハロゲン化合物として例えば、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、等が挙げられる。特にフッ化リチウムは、後述するアニール工程で溶融しやすいため好ましい。
【0080】
元素Xを有する化合物として、マグネシウムを有する化合物を用いることができる。マグネシウムを有する化合物として例えば、フッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、等が挙げられる。
【0081】
本発明の一態様の正極活物質の作製においては、アルカリ金属Aを有するハロゲン化合物としてフッ化リチウムを用い、マグネシウムを有する化合物としてフッ化マグネシウムを用いることが好ましい。フッ化リチウムを混合することでフッ化マグネシウムの融点よりも低い温度で溶融させることができ、この共融現象を利用して正極活物質を作製する。
【0082】
金属Mを有する化合物として例えば、金属の水酸化物、酸化物、等を用いることができる。金属Mが有する金属の一がニッケルの場合には例えば、水酸化ニッケル、酸化ニッケル、等を用いることができる。金属Mが有する金属の一がアルミニウムの場合には例えば、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、等を用いることができる。金属Mが有する金属の一がマンガンの場合には例えば、水酸化マンガン、酸化マンガン、等を用いることができる。
【0083】
また、金属Mを有する化合物として、金属アルコキシドを用いてもよい。例えば、アルミニウムイソプロポキシド、テトラメトキシチタン、等を用いることができる。
【0084】
本発明の一態様の正極活物質は上記に記載の、アルカリ金属Aおよび遷移金属を有する金属酸化物を有することが好ましい。また、本発明の一態様の正極活物質が粒子を有する場合には例えば、該粒子は、上記に記載の、アルカリ金属Aおよび遷移金属を有する金属酸化物を含むことが好ましい。
【0085】
本発明の一態様の正極活物質は、マグネシウムおよび金属Mを有することが好ましい。また、本発明の一態様の正極活物質粒子を有し、該粒子が上記に記載の、アルカリ金属Aおよび遷移金属を有する金属酸化物を含む場合には、該金属酸化物は、一部の領域、より具体的には例えば粒子の表面およびその近傍において、マグネシウムおよび金属Mの少なくとも一方を有する。
【0086】
<XRD>
図1Bあるいは図1Cに示す検査としてXRDを行ってもよい。XRDにおいて例えば、物質92に含まれる元素Xと、物質93または/および物質94に含まれる金属元素の一以上と、を含む化合物の存在が示唆される場合には、物質91と物質92の共融反応が顕著に阻害されると判断する。なお、検査においてはまず、600℃以上950℃以下の温度範囲、かつ1時間以上100時間以下の範囲で加熱を行い、その後、XRD評価を行う。
【0087】
アルカリ金属Aおよび遷移金属を有する金属酸化物が岩塩層状型構造の場合には、例えばXRDにおいてスピネル構造に起因するピークが観測される場合に、共融反応が顕著に阻害されると判断する。より具体的には例えば金属Mとしてアルミニウムを用いる場合には、XRDにおいて2θ=19.0°±0.25°、2θ=31.3°±0.25°、2θ=36.9°±0.15°および2θ=59.4°±0.25°の4つのピークの少なくともいずれかが観測される場合に、共融反応が顕著に阻害されると判断する。これらのピークはMgAlに起因することが示唆される。またこれらのピークは例えば観測されない、あるいはピーク強度が充分に低いことが好ましい。一例として、XRDにおいて、2θが15°以上90°以下の範囲において観測されるピークのうち最も強い強度で観測されるピークの強度に比べて、MgAlに起因することが示唆される、2θ=19.0°±0.25°、2θ=31.3°±0.25°、2θ=36.9°±0.15°および2θ=59.4°±0.25°の4つのピークの全てが0.02倍以上の強度で観測されることは、好ましくない。
【0088】
ここで、物質91と、物質92と、物質93および物質94の少なくとも一方と、を混合し、加熱を行い、XRD分析を行い共融反応が顕著に阻害されると判断されるピークが観測される場合でも、物質91と、物質92と、物質93および物質94の少なくとも一方と、に加えさらに金属酸化物95を混合し、加熱を行った場合には、金属酸化物95に起因するピークの強度が高いために、上記の、共融反応が顕著に阻害されると判断されるピークが観測されない場合がある。
【0089】
<作製方法>
図2A図2Bおよび図2Cには、図1で述べた物質91、物質92、物質93、物質94および金属酸化物95を用いて本発明の一態様の正極活物質を作製する方法の一例を示す。
【0090】
なお、簡略化のため、本明細書等で示す作製フローにおいて、工程を一部省略して表記する場合がある。
【0091】
図2Aに示すフローは、ステップS11において準備された物質91、物質92、物質93、物質94および金属酸化物95を混合し、ステップS34においてアニールを行い、ステップS36において正極活物質100を得る。
【0092】
図1Bまたは図1Cの検査において、物質93および物質94の少なくとも一方が物質91と物質92の共融を示唆する反応を顕著に阻害する、と判断される場合には、図2Bに示すフローを用いて正極活物質100を得ることが好ましい。特にアニールされる材料の全分量が多い場合、より均一に処理を行うために、図2Bに示すフローを用いることが好ましい場合がある。より均一な処理が行われることにより、得られる正極活物質100の品質を向上させることができる。また、具体的には例えば、材料の形態が粉体であり、粉体の全分量が15g以上である場合には、図2Bに示すフローを用いればよい。粉体の全分量が例えば15g以上の場合には、1回のアニールでは粉体の表面がアニール雰囲気に充分に露出されない場合がある。そのような場合において、共融反応が、より阻害されやすい場合がある。図2Bのフローを用いることにより、共融反応をより確実に生じさせることができるため、好ましい。あるいは、アニールの雰囲気、圧力、およびアニール装置の処理室の体積に対するアニールされる材料の全分量を工夫してもよい。一方、粉体の全分量が例えば15g未満の場合には、粉体の表面がアニール雰囲気に露出されやすくなり、共融反応の阻害が抑制される場合がある。ここで、アニールは例えば加熱炉を用いて行えばよい。加熱炉の容積が例えば10L以上、あるいは20L以上、あるいは30L以上である。
【0093】
図2Bに示すフローは、物質93および物質94を、ステップS34のアニールより後に加えるフローを示す。ステップS11において準備された物質91、物質92および金属酸化物95を混合し、ステップS34においてアニールを行う。ステップS34により得られた混合物に物質93および物質94を加えて混合し、ステップS55においてアニールを行い、ステップS36において正極活物質100を得る。
【0094】
図2Bに示すフローを用いることにより、物質93および物質94による、物質91と物質92の共融反応の阻害が、抑制される。
【0095】
また、物質94が物質91と物質92の共融を示唆する反応を顕著に阻害する、と判断され、物質93は顕著には阻害しない、と判断された場合には例えば、図2Cに示すフローを用いることもできる。
【0096】
図2Cに示すフローは、ステップS11において準備された物質91、物質92、物質93および金属酸化物95を混合し、ステップS34においてアニールを行う。ステップS34により得られた混合物に物質94を加えて混合し、ステップS55においてアニールを行い、ステップS36において正極活物質100を得る。
【0097】
<作製方法2>
図2Bに示す作製方法の一例を図3に示す。図3に示す作製方法においては、アルカリ金属Aおよび遷移金属を有する金属酸化物として、アルカリ金属およびコバルトを有する金属酸化物を用いる場合の例を示す。また、元素Xを有する化合物として、マグネシウムを有する化合物を用いる場合の例を示す。
【0098】
<ステップS11>
図3のステップS11に示すように、まず混合物902の材料を準備する。図3では、アルカリ金属Aを有するハロゲン化合物としてフッ化リチウムLiFを用意し、マグネシウムを有する化合物としてフッ化マグネシウムMgFを用意することとする。フッ化リチウムLiFとフッ化マグネシウムMgFは、LiF:MgF=65:35(モル比)程度で混合すると混合物の融点を下げる効果が最も高くなる(非特許文献4)。一方、フッ化リチウムが多くなると、リチウムが過剰になりすぎサイクル特性が悪化する懸念がある。そのため、フッ化リチウムLiFとフッ化マグネシウムMgFのモル比は、LiF:MgF=x:1(0≦x≦1.9)であることが好ましく、LiF:MgF=x:1(0.1≦x≦0.5)がより好ましく、LiF:MgF=x:1(x=0.33近傍)がさらに好ましい。なお本明細書等において近傍とは、その値の0.9倍より大きく1.1倍より小さい値とする。
【0099】
また、次の混合および粉砕工程を湿式で行う場合は、溶媒を用意する。溶媒としてはアセトン等のケトン、エタノールおよびイソプロパノール等のアルコール、エーテル、ジオキサン、アセトニトリル、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等を用いることができる。リチウムと反応が起こりにくい、非プロトン性溶媒を用いることがより好ましい。図3のステップS11においては、アセトンを用いることとする。
【0100】
<ステップS12>
次にステップS12において、上記の混合物902の材料を混合および粉砕する。混合は乾式または湿式で行うことができるが、湿式はより小さく粉砕することができるため好ましい。混合には例えばボールミル、ビーズミル等を用いることができる。ボールミルを用いる場合は、例えばメディアとしてジルコニアボールを用いることが好ましい。この混合および粉砕工程を十分に行い、混合物902を微粉化することが好ましい。
【0101】
<ステップS13、ステップS14>
ステップS13において、上記で混合、粉砕した材料を回収し、ステップS14において、混合物902を得る。
【0102】
混合物902は、例えばD50が600nm以上20μm以下であることが好ましく、1μm以上10μm以下であることがより好ましい。このように微粉化された混合物902ならば、後の工程でリチウム、遷移金属および酸素を有する複合酸化物と混合したときに、複合酸化物の粒子の表面に混合物902を均一に付着させやすい。複合酸化物の粒子の表面に混合物902が均一に付着していると、加熱後に複合酸化物粒子の表層部にもれなくハロゲンおよびマグネシウムを分布させやすいため好ましい。表層部にハロゲンおよびマグネシウムが含まれない領域があると、充電状態において後述の擬スピネル型の結晶構造になりにくいおそれがある。
【0103】
<ステップS25>
次にステップS25において、アルカリ金属Aおよびコバルトを有する金属酸化物として、金属酸化物95を準備する。金属酸化物95は、アルカリ金属Aを有する材料とコバルトを有する材料の混合物を焼成して得ることができる。あるいはあらかじめ、合成された金属酸化物を用いてもよい。
【0104】
<ステップS31>
次にステップS31において、混合物902と、金属酸化物95と、を混合する。金属酸化物95のコバルトの原子数TMと、混合物902が有するマグネシウムの原子数MgMix1との比は、TM:MgMix1=1:y(0.005≦y≦0.05)であることが好ましく、TM:MgMix1=1:y(0.007≦y≦0.04)であることがより好ましく、TM:MgMix1=1:0.02程度がさらに好ましい。
【0105】
ステップS31の混合は、金属酸化物95の粒子を破壊しないためにステップS12の混合よりも穏やかな条件とすることが好ましい。例えば、ステップS12の混合よりも回転数が少ない、または時間が短い条件とすることが好ましい。また湿式よりも乾式のほうが穏やかな条件であると言える。混合には例えばボールミル、ビーズミル等を用いることができる。ボールミルを用いる場合は、例えばメディアとしてジルコニアボールを用いることが好ましい。
【0106】
<ステップS32、ステップS33>
次にステップS32において、上記で混合した材料を回収し、ステップS33において混合物903を得る。
【0107】
<ステップS34>
次にステップS34において、混合物903をアニールする。
【0108】
アニールは、適切な温度および時間で行うことが好ましい。適切な温度および時間は、金属酸化物95の粒子の大きさおよび組成等の条件により変化する。粒子が小さい場合は、大きい場合よりも低い温度または短い時間がより好ましい場合がある。
【0109】
例えばステップS25の粒子の平均粒子径(D50)が12μm程度の場合、アニール温度は例えば600℃以上950℃以下が好ましい。アニール時間は例えば3時間以上が好ましく、10時間以上がより好ましく、60時間以上がさらに好ましい。
【0110】
一方、ステップS25の粒子の平均粒子径(D50)が5μm程度の場合、アニール温度は例えば600℃以上950℃以下が好ましい。アニール時間は例えば1時間以上10時間以下が好ましく、2時間程度がより好ましい。
【0111】
アニール後の降温時間は、例えば10時間以上50時間以下とすることが好ましい。
【0112】
混合物903をアニールすると、まず混合物902のうち融点の低い材料(例えばフッ化リチウム、融点848℃)が溶融し、金属酸化物95の粒子の表層部に分布すると考えられる。次に、この溶融した材料の存在により他の材料の融点降下が起こり、他の材料が溶融すると推測される。例えば、フッ化マグネシウム(融点1263℃)が溶融し、金属酸化物95の粒子の表層部に分布すると考えられる。
【0113】
そして表層部に分布した混合物902が有する元素は、金属酸化物95の粒子中に固溶すると考えられる。
【0114】
この混合物902が有する元素の拡散は、金属酸化物95の粒子の内部よりも、表層部および粒界近傍の方が速い。そのためマグネシウムおよびハロゲンは、表層部および粒界近傍において、内部よりも高濃度となる。後述するが表層部および粒界近傍のマグネシウム濃度が高いと、結晶構造の変化をより効果的に抑制することができる。
【0115】
<ステップS35、ステップS36>
次にステップS35において、上記でアニールした材料を回収し、ステップS36において、混合物904を得る。
【0116】
<ステップS41>
次にステップS41において、金属M源を準備する。金属Mがアルミニウムの場合には例えば、コバルト酸リチウムが有するコバルトの原子数を1とし、金属源が有するアルミニウムのモル濃度が0.001倍以上0.02倍以下となればよい。金属Mがニッケルの場合には例えば、コバルト酸リチウムが有するコバルトの原子数を1とし、金属源が有するニッケルのモル濃度が0.001倍以上0.02倍以下となればよい。金属Mがアルミニウムおよびニッケルの場合には例えば、コバルト酸リチウムが有するコバルトの原子数を1とし、金属源が有するアルミニウムのモル濃度が0.001倍以上0.02倍以下、かつ、金属源が有するニッケルのモル濃度が0.001倍以上0.02倍以下となればよい。
【0117】
後のステップS42において、湿式で混合を行う場合には、ステップS41において溶媒も準備する。
【0118】
図3のステップS41では一例として、金属源として水酸化ニッケルを、溶媒としてアセトンを用いる例を示す。
【0119】
<ステップS42>
次にステップS42において、金属源および溶媒を混合および粉砕する。混合および粉砕については、ステップS12等の条件を参照することができる。
【0120】
<ステップS43>
次にステップS43において、ステップS42で粉砕した金属M源を回収する。
【0121】
<ステップS44>
次にステップS44において、ステップS41で準備された金属M源が有する金属と異なる金属を有する金属M源を準備する。後のステップS45において、湿式で混合を行う場合には、ステップS44において溶媒も準備する。図3のステップS44では一例として、金属源として水酸化アルミニウムを準備し、溶媒としてアセトンを準備する。
【0122】
<ステップS45>
次にステップS45において、金属源および溶媒を混合および粉砕する。混合および粉砕については、ステップS12等の条件を参照することができる。
【0123】
<ステップS46>
次にステップS46において、ステップ45で粉砕した金属M源を回収する。
【0124】
<ステップS53>
次にステップS53において、混合物904、ステップS43で回収された金属M源およびステップS46で回収された金属M源を混合する。
【0125】
<ステップS54、ステップS55>
次にステップS54において、混合物を回収し、ステップS55において混合物905を得る。
【0126】
<ステップS56>
次にステップS56において、混合物905のアニールを行う。アニール時間は、規定温度の範囲内での保持時間を1時間以上50時間以下とすることが好ましく、2時間以上20時間以下がより好ましい。焼成時間が短すぎると表層部に形成される金属Mを有する化合物の結晶性が低い場合がある。あるいは、金属Mの拡散が不充分となる場合がある。あるいは有機物が表面に残存する場合がある。しかし焼成時間が長すぎると、金属Mの拡散が進みすぎて表層部および結晶粒界近傍の濃度が低くなる恐れがある。また、生産性が低下する。
【0127】
規定温度としては500℃以上1200℃以下が好ましく、700℃以上920℃以下がより好ましく、800℃以上900℃以下がさらに好ましい。規定温度が低すぎると表層部に形成される金属Mを有する化合物の結晶性が低い場合がある。あるいは、金属Mの拡散が不充分となる場合がある。あるいは有機物が表面に残存する場合がある。
【0128】
また、焼成は酸素を含む雰囲気で行うことが好ましい。酸素分圧が低い場合、焼成温度をより低くしないとコバルトが還元するおそれがある。
【0129】
本実施の形態では、規定温度を850℃として2時間保持することとし、昇温は200℃/h、酸素の流量は10L/minとする。
【0130】
焼成後の冷却は、冷却時間を長くとると、結晶構造を安定させやすく好ましい。たとえば、規定温度から室温までの降温時間を10時間以上50時間以下とすることが好ましい。ここで、ステップS56における焼成温度は、ステップS34における焼成温度よりも低い、ことが好ましい。例えば、ステップS56における焼成温度は、ステップS34における焼成温度よりも20℃以上低い、あるいは30℃以上低い、あるいは45℃以上低いことが好ましい。
【0131】
<ステップS57、ステップS58>
次にステップS57において、冷却された粒子を回収する。さらに、粒子をふるいにかけることが好ましい。上記の工程で、ステップS58において正極活物質100を得る。
【0132】
<作製方法3>
次に、図2Cに示す作製方法の一例を図4に示す。図4に示す作製方法においては、アルカリ金属Aおよび遷移金属を有する金属酸化物として、アルカリ金属およびコバルトを有する金属酸化物を用いる場合の例を示す。また、元素Xを有する化合物として、マグネシウムを有する化合物を用いる場合の例を示す。
【0133】
<ステップS11>
図4に示すステップS11は、アルカリ金属Aを有するハロゲン化合物、マグネシウムを有する化合物および溶媒に加えて、金極M(1)源を準備する点が、図3と異なる。
【0134】
<ステップS12乃至ステップS14>
次に、ステップS12、ステップS13およびステップS14を経て、アルカリ金属Aを有するハロゲン化合物、マグネシウムを有する化合物および金極M(1)源の混合物である混合物906を得る。ステップS12乃至ステップS14の条件等については図3の記載を参照することができる。
【0135】
ステップS14の後に、混合物906の検査を行ってもよい。
【0136】
<ステップS25>
次にステップS25において、アルカリ金属Aおよびコバルトを有する金属酸化物として、金属酸化物95を準備する。金属酸化物95は、アルカリ金属Aを有する材料とコバルトを有する材料の混合物を焼成して得ることができる。あるいはあらかじめ、合成された金属酸化物を用いてもよい。
【0137】
<ステップS31乃至ステップS33>
次に、ステップS31、ステップS32およびステップS33を経て、混合物906と金属酸化物95の混合物である混合物907を得る。ステップS31乃至ステップS33の条件等については図3の記載を参照することができる。
【0138】
ステップS33の後に、混合物907の検査を行ってもよい。
【0139】
<ステップS34>
次にステップS34において、混合物907のアニールを行う。アニールの条件等については図3の記載を参照することができる。
【0140】
<ステップS35>
次にステップS35においてアニールされた粉体を回収し、ステップS36において混合物908を得る。
【0141】
<ステップS47>
次にステップS47において、金属M(2)源および溶媒を準備する。ここでは一例として、ゾルゲル法を適用し、金属M(2)源としてアルミニウムイソプロポキシドを、溶媒としてイソプロパノールを用いる例を示す。
【0142】
<ステップS53>
次にステップS53において、アルミニウムイソプロポキシドをイソプロパノールに溶解させ、さらに混合物908を混合する。金属酸化物95の粒径によって、金属アルコキシドの必要量は異なる。粒径(D50)が20μm程度ならば、金属酸化物95が有するコバルトの原子数を1とし、アルミニウムイソプロポキシドが有するアルミニウムの濃度が0.001倍以上0.02倍以下となるよう加えることが好ましい。混合物908は、水蒸気を含む雰囲気下で撹拌されることが好ましい。撹拌はたとえばマグネチックスターラーで行うことができる。撹拌時間は、雰囲気中の水と金属アルコキシドが加水分解および重縮合反応を起こすのに十分な時間であればよく、例えば4時間、25℃、湿度90%RH(Relative Humidity、相対湿度)の条件下で行うことができる。また、湿度制御、および温度制御がされていない雰囲気下、例えばドラフトチャンバー内の大気雰囲気下において攪拌を行ってもよい。そのような場合には攪拌時間をより長くすることが好ましく、例えば室温において12時間以上、とすればよい。
【0143】
雰囲気中の水分と金属アルコキシドを反応させることで、液体の水を加える場合よりもゆっくりとゾルゲル反応を進めることができる。また常温で金属アルコキシドと水を反応させることで、たとえば溶媒のアルコールの沸点を超える温度で加熱を行う場合よりもゆっくりとゾルゲル反応を進めることができる。ゆっくりとゾルゲル反応を進めることで、厚さが均一で良質な被覆層を形成することができる。
【0144】
<ステップS54、ステップS55>
次にステップS54において、混合液から沈殿物を回収し、ステップS55において混合物909を得る。回収方法としては、ろ過、遠心分離、蒸発乾固等を適用することができる。沈殿物は金属アルコキシドを溶解させた溶媒と同じアルコールで洗浄することができる。その後、回収した残渣を乾燥し、混合物909を得る。乾燥工程は例えば、80℃で1時間以上4時間以下、真空または通風乾燥することができる。
【0145】
<ステップS56>
次にステップS56において、混合物909を焼成する。焼成時間は、規定温度の範囲内での保持時間を1時間以上50時間以下とすることが好ましく、2時間以上20時間以下がより好ましい。焼成時間が短すぎると表層部に形成される金属M(2)を有する化合物の結晶性が低い場合がある。あるいは、金属M(2)の拡散が不充分となる場合がある。あるいは有機物が表面に残存する場合がある。しかし焼成時間が長すぎると、金属M(2)の拡散が進みすぎて表層部および結晶粒界近傍の濃度が低くなる恐れがある。また、生産性が低下する。
【0146】
規定温度としては500℃以上1200℃以下が好ましく、700℃以上920℃以下がより好ましく、800℃以上900℃以下がさらに好ましい。規定温度が低すぎると表層部に形成される金属M(2)を有する化合物の結晶性が低い場合がある。あるいは、金属M(2)の拡散が不充分となる場合がある。あるいは有機物が表面に残存する場合がある。
【0147】
また、焼成は酸素を含む雰囲気で行うことが好ましい。酸素分圧が低い場合、焼成温度をより低くしないとCoが還元するおそれがある。
【0148】
本実施の形態では、規定温度を850℃として2時間保持することとし、昇温は200℃/h、酸素の流量は10L/minとする。
【0149】
焼成後の冷却は、冷却時間を長くとると、結晶構造を安定させやすく好ましい。たとえば、規定温度から室温までの降温時間を10時間以上50時間以下とすることが好ましい。ここで、ステップS56における焼成温度は、ステップS34における焼成温度よりも低い、ことが好ましい。
【0150】
<ステップS57、ステップS58>
次にステップS57において、冷却された粒子を回収する。さらに、粒子をふるいにかけることが好ましい。上記の工程で、ステップS58において正極活物質100を得る。
【0151】
なお、図2乃至図4では金属M、物質93、物質94、ニッケルまたはアルミニウムを有する正極活物質の作製方法について説明したが、本発明の一態様はこれに限らない。本実施の形態の冒頭に述べたように、本発明の一態様の正極活物質は、アルカリ金属Aを有するハロゲン化合物と、マグネシウムを有する化合物と、アルカリ金属Aおよび遷移金属を有する金属酸化物と、を混合し、アニール(加熱、熱処理、等と表現する場合がある)を施すことにより得られる。必ずしも金属Mを有さなくてもよい。金属Mを有さない場合は、アニールプロセスは1回が最も好ましい場合がある。アニールプロセスが1回のみであると、複数回の場合よりも生産性を向上させることができる。
【0152】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0153】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の正極活物質について説明する。
【0154】
<正極活物質>
本発明の一態様の正極活物質を用いることにより、二次電池の容量を高め、かつ、充放電サイクルに伴う放電容量の低下を抑制する。
【0155】
[正極活物質の構造]
正極活物質は、キャリアイオンとなる金属(以降、元素A)を有することが好ましい。元素Aとして例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、およびカルシウム、ベリリウム、マグネシウム等の第2族の元素を用いることができる。
【0156】
正極活物質において、充電に伴いキャリアイオンが正極活物質から脱離する。元素Aの脱離が多ければ、二次電池の容量に寄与するイオンが多く、容量が増大する。一方、元素Aの脱離が多いと、正極活物質が有する化合物の結晶構造が崩れやすくなる。正極活物質の結晶構造の崩れは、充放電サイクルに伴う放電容量の低下を招く場合がある。本発明の一態様の正極活物質が元素Xを有することにより、二次電池の充電時にキャリアイオンが脱離する際の結晶構造の崩れが抑制される場合がある。元素Xは例えば、その一部が元素Aの位置に置換される。元素Xとしてマグネシウム、カルシウム、ジルコニウム、ランタン、バリウム等の元素を用いることができる。また例えば元素Xとして銅、カリウム、ナトリウム、亜鉛等の元素を用いることができる。また元素Xとして上記に示す元素のうち二以上を組み合わせて用いてもよい。
【0157】
また、本発明の一態様の正極活物質は、元素Xに加えてハロゲンを有することが好ましい。フッ素、塩素等のハロゲンを有することが好ましい。本発明の一態様の正極活物質が該ハロゲンを有することにより、元素Xの元素Aの位置への置換が促進される場合がある。
【0158】
また、本発明の一態様の正極活物質は、二次電池の充電および放電により価数が変化する金属(以降、元素Me)を有する。元素Meは例えば、遷移金属である。本発明の一態様の正極活物質は例えば元素Meとしてコバルト、ニッケル、マンガンのうち一以上を有し、特にコバルトを有する。また、元素Meの位置に、アルミニウムなど、価数変化がなく、かつ元素Meと同じ価数をとり得る元素、より具体的には例えば三価の典型元素を有してもよい。前述の元素Xは例えば、元素Meの位置に置換されてもよい。また本発明の一態様の正極活物質が酸化物である場合には、元素Xは酸素の位置に置換されてもよい。
【0159】
本発明の一態様の正極活物質として例えば、層状岩塩型結晶構造を有するリチウム複合酸化物を用いることが好ましい。より具体的には例えば層状岩塩型結晶構造を有するリチウム複合酸化物として、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、ニッケル、マンガンおよびコバルトを有するリチウム複合酸化物、ニッケル、コバルトおよびアルミニウムを有するリチウム複合酸化物、等を用いることができる。また、これらの正極活物質は空間群R-3mで表されることが好ましい。
【0160】
層状岩塩型結晶構造を有する正極活物質において、充電深度を高めると結晶構造の崩れが生じる場合がある。ここで結晶構造の崩れとは例えば層のズレである。結晶構造の崩れが不可逆な場合には、充電と放電の繰り返しに伴い二次電池の容量の低下が生じる場合がある。
【0161】
本発明の一態様の正極活物質が元素Xを有することにより例えば、充電深度が深くなっても、上記の層のズレが抑制される。ズレを抑制することにより、充放電における体積の変化を小さくすることができる。よって、本発明の一態様の正極活物質は、優れたサイクル特性を実現することができる。また、本発明の一態様の正極活物質は、高電圧の充電状態において安定な結晶構造を取り得る。よって、本発明の一態様の正極活物質は、高電圧の充電状態を保持した場合において、ショートが生じづらい場合がある。そのような場合には安全性がより向上するため、好ましい。
【0162】
本発明の一態様の正極活物質では、十分に放電された状態と、高電圧で充電された状態における、結晶構造の変化および同数の遷移金属原子あたりで比較した場合の体積の差が小さい。
【0163】
本発明の一態様の正極活物質は化学式AM(y>0、z>0)で表わされる場合がある。例えばコバルト酸リチウムはLiCoOで表される場合がある。また例えばニッケル酸リチウムはLiNiOで表される場合がある。
【0164】
元素Xを有する、本発明の一態様の正極活物質では、充電深度が0.8以上の場合において、空間群R-3mで表され、スピネル型結晶構造ではないものの、元素Me(例えばコバルト)、元素X(例えばマグネシウム)、等のイオンが酸素6配位位置を占め、陽イオンの配列がスピネル型と似た対称性を有する場合がある。本構造を本明細書等では擬スピネル型の結晶構造と呼ぶ。なお、擬スピネル型の結晶構造は、リチウムなどの軽元素は酸素4配位位置を占める場合があり、この場合もイオンの配列がスピネル型と似た対称性を有する。
【0165】
充電に伴うキャリアイオンの脱離により、正極活物質の構造は不安定となる。擬スピネル型結晶構造は、キャリアイオンが脱離したにもかかわらず、高い安定性を保つことができる構造である、といえる。
【0166】
本発明の充電深度が高い場合において、擬スピネル型構造を有する正極活物質を二次電池に用いることにより、例えばリチウム金属の電位を基準として4.6V程度の電圧において、より好ましくは4.62V乃至4.7V程度の電圧において、正極活物質の構造が安定であり、充放電による容量低下を抑制することができる。なお、二次電池において例えば負極活物質として黒鉛を用いる場合には、例えば二次電池の電圧が4.3V以上4.5V以下において、より好ましくは4.35V以上4.55V以下において、正極活物質の構造が安定であり、充放電による容量低下を抑制することができる。
【0167】
また擬スピネル型の結晶構造は、層間にランダムにLiを有するもののCdCl型の結晶構造に類似する結晶構造であるということもできる。このCdCl型に類似した結晶構造は、ニッケル酸リチウムを充電深度0.94まで充電したとき(Li0.06NiO)の結晶構造と近いが、純粋なコバルト酸リチウム、またはコバルトを多く含む層状岩塩型の正極活物質では通常この結晶構造を取らないことが知られている。
【0168】
層状岩塩型結晶、および岩塩型結晶の陰イオンは立方最密充填構造(面心立方格子構造)をとる。擬スピネル型結晶も、陰イオンは立方最密充填構造をとると推定される。これらが接するとき、陰イオンにより構成される立方最密充填構造の向きが揃う結晶面が存在する。ただし、層状岩塩型結晶および擬スピネル型結晶の空間群はR-3mであり、岩塩型結晶の空間群Fm-3m(一般的な岩塩型結晶の空間群)およびFd-3m(最も単純な対称性を有する岩塩型結晶の空間群)とは異なるため、上記の条件を満たす結晶面のミラー指数は層状岩塩型結晶および擬スピネル型結晶と、岩塩型結晶では異なる。本明細書では、層状岩塩型結晶、擬スピネル型結晶、および岩塩型結晶において、陰イオンにより構成される立方最密充填構造の向きが揃うとき、結晶の配向が概略一致する、と言う場合がある。
【0169】
擬スピネル型の結晶構造は、ユニットセルにおけるコバルトと酸素の座標を、Co(0,0,0.5)、O(0,0,x)、0.20≦x≦0.25の範囲内で示すことができる。
【0170】
本発明の一態様の正極活物質において、充電深度0の体積におけるユニットセルの体積と、充電深度0.82の擬スピネル型結晶構造のユニットセルあたりの体積の差は2.5%以下が好ましく、2.2%以下がさらに好ましい。
【0171】
擬スピネル型の結晶構造では、2θ=19.30±0.20°(19.10°以上19.50°以下)、および2θ=45.55±0.10°(45.45°以上45.65°以下)に回折ピークが出現する。より詳しく述べれば、2θ=19.30±0.10°(19.20°以上19.40°以下)、および2θ=45.55±0.05°(45.50°以上45.60以下)に鋭い回折ピークが出現する。
【0172】
なお、本発明の一態様の正極活物質は高電圧で充電したとき擬スピネル型の結晶構造を有するが、粒子のすべてが擬スピネル型の結晶構造でなくてもよい。他の結晶構造を含んでいてもよいし、一部が非晶質であってもよい。ただし、XRDパターンについてリートベルト解析を行ったとき、擬スピネル型の結晶構造が50wt%以上であることが好ましく、60wt%以上であることがより好ましく、66wt%以上であることがさらに好ましい。擬スピネル型の結晶構造が50wt%以上、より好ましくは60wt%以上、さらに好ましくは66wt%以上あれば、十分にサイクル特性に優れた正極活物質とすることができる。
【0173】
元素Xの原子数は、元素Meの原子数の0.001倍以上0.1倍以下が好ましく、0.01より大きく0.04未満がより好ましく、0.02程度がさらに好ましい。ここで示す元素Xの濃度は例えば、ICP-MS等を用いて正極活物質の粒子全体の元素分析を行った値であってもよいし、正極活物質の作製の過程における原料の配合の値に基づいてもよい。
【0174】
元素Meとしてコバルトおよびニッケルを有する場合には、コバルトとニッケルの原子数の和(Co+Ni)に占める、ニッケルの原子数(Ni)の割合Ni/(Co+Ni)が、0.1未満であることが好ましく、0.075以下であることがより好ましい。
【0175】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0176】
(実施の形態3)
本実施の形態では、先の実施の形態で説明した正極活物質100を有する二次電池に用いることのできる材料の例について説明する。本実施の形態では、正極、負極および電解液が、外装体に包まれている二次電池を例にとって説明する。
【0177】
[正極]
正極は、正極活物質層および正極集電体を有する。
【0178】
<正極活物質層>
正極活物質層は、少なくとも正極活物質を有する。また、正極活物質層は、正極活物質に加えて、活物質表面の被膜、導電助剤またはバインダなどの他の物質を含んでもよい。
【0179】
正極活物質としては、先の実施の形態で説明した正極活物質100を用いることができる。先の実施の形態で説明した正極活物質100を用いることで、高容量でサイクル特性に優れた二次電池とすることができる。
【0180】
導電助剤としては、炭素材料、金属材料、又は導電性セラミックス材料等を用いることができる。また、導電助剤として繊維状の材料を用いてもよい。活物質層の総量に対する導電助剤の含有量は、1wt%以上10wt%以下が好ましく、1wt%以上5wt%以下がより好ましい。
【0181】
導電助剤により、活物質層中に電気伝導のネットワークを形成することができる。導電助剤により、正極活物質どうしの電気伝導の経路を維持することができる。活物質層中に導電助剤を添加することにより、高い電気伝導性を有する活物質層を実現することができる。
【0182】
導電助剤としては、例えば天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ等の人造黒鉛、炭素繊維などを用いることができる。炭素繊維としては、例えばメソフェーズピッチ系炭素繊維、等方性ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維を用いることができる。また炭素繊維として、カーボンナノファイバーやカーボンナノチューブなどを用いることができる。カーボンナノチューブは、例えば気相成長法などで作製することができる。また、導電助剤として、例えばカーボンブラック(アセチレンブラック(AB)など)、グラファイト(黒鉛)粒子、グラフェン、フラーレンなどの炭素材料を用いることができる。また、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金などの金属粉末や金属繊維、導電性セラミックス材料等を用いることができる。
【0183】
また、導電助剤としてグラフェン化合物を用いてもよい。
【0184】
グラフェン化合物は、高い導電性を有するという優れた電気特性と、高い柔軟性および高い機械的強度を有するという優れた物理特性と、を有する場合がある。また、グラフェン化合物は平面的な形状を有する。グラフェン化合物は、接触抵抗の低い面接触を可能とする。また、薄くても導電性が非常に高い場合があり、少ない量で効率よく活物質層内で導電パスを形成することができる。そのため、グラフェン化合物を導電助剤として用いることにより、活物質と導電助剤との接触面積を増大させることができるため好ましい。スプレードライ装置を用いることで、活物質の表面全体を覆って導電助剤であるグラフェン化合物を被膜として形成することが好ましい。また、電気的な抵抗を減少できる場合があるため好ましい。ここでグラフェン化合物として例えば、グラフェン、マルチグラフェン、又はRGOを用いることが特に好ましい。ここで、RGOは例えば、酸化グラフェン(graphene oxide:GO)を還元して得られる化合物を指す。
【0185】
粒径の小さい活物質、例えば1μm以下の活物質を用いる場合には、活物質の比表面積が大きく、活物質同士を繋ぐ導電パスがより多く必要となる。そのため導電助剤の量が多くなりがちであり、相対的に活物質の担持量が減少してしまう傾向がある。活物質の担持量が減少すると、二次電池の容量が減少してしまう。このような場合には、導電助剤としてグラフェン化合物を用いると、グラフェン化合物は少量でも効率よく導電パスを形成することができるため、活物質の担持量を減らさずに済み、特に好ましい。
【0186】
グラフェン化合物として例えばグラフェンまたはマルチグラフェンを用いればよい。ここで、グラフェン化合物はシート状の形状を有することが好ましい。また、グラフェン化合物は、複数のマルチグラフェン、または(および)複数のグラフェンが部分的に重なりシート状となっていてもよい。
【0187】
活物質層の縦断面においては、活物質層の内部において概略均一にシート状のグラフェン化合物が分散することが好ましい。複数のグラフェン化合物は、複数の粒状の正極活物質を一部覆うように、あるいは複数の粒状の正極活物質の表面上に張り付くように形成され、互いに面接触することが好ましい。
【0188】
ここで、複数のグラフェン化合物同士が結合することにより、網目状のグラフェン化合物シート(以下グラフェン化合物ネットまたはグラフェンネットと呼ぶ)を形成することができる。活物質をグラフェンネットが被覆する場合に、グラフェンネットは活物質同士を結合するバインダとしても機能することができる。よって、バインダの量を少なくすることができる、又は使用しないことができるため、電極体積や電極重量に占める活物質の比率を向上させることができる。すなわち、二次電池の容量を増加させることができる。
【0189】
ここで、グラフェン化合物として酸化グラフェンを用い、活物質と混合して活物質層となる層を形成後、還元することが好ましい。グラフェン化合物の形成に、極性溶媒中での分散性が極めて高い酸化グラフェンを用いることにより、グラフェン化合物を活物質層の内部において概略均一に分散させることができる。均一に分散した酸化グラフェンを含有する分散媒から溶媒を揮発除去し、酸化グラフェンを還元するため、活物質層に残留するグラフェン化合物は部分的に重なり合い、互いに面接触する程度に分散していることで三次元的な導電パスを形成することができる。なお、酸化グラフェンの還元は、例えば熱処理により行ってもよいし、還元剤を用いて行ってもよい。
【0190】
従って、活物質と点接触するアセチレンブラック等の粒状の導電助剤と異なり、グラフェン化合物は接触抵抗の低い面接触を可能とするものであるから、通常の導電助剤よりも少量で粒状の正極活物質とグラフェン化合物との電気伝導性を向上させることができる。よって、正極活物質の活物質層における比率を増加させることができる。これにより、二次電池の放電容量を増加させることができる。
【0191】
また、予め、スプレードライ装置を用いることで、活物質の表面全体を覆って導電助剤であるグラフェン化合物を被膜として形成し、さらに活物質同士間をグラフェン化合物で導電パスを形成することもできる。
【0192】
バインダとしては、例えば、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレン-スチレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体などのゴム材料を用いることが好ましい。またバインダとして、フッ素ゴムを用いることができる。
【0193】
また、バインダとしては、例えば水溶性の高分子を用いることが好ましい。水溶性の高分子としては、例えば多糖類などを用いることができる。多糖類としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体や、澱粉などを用いることができる。また、これらの水溶性の高分子を、前述のゴム材料と併用して用いると、さらに好ましい。
【0194】
または、バインダとしては、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル(ポリメチルメタクリレート、PMMA)、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、エチレンプロピレンジエンポリマー、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース等の材料を用いることが好ましい。
【0195】
バインダは上記のうち複数を組み合わせて使用してもよい。
【0196】
例えば粘度調整効果の特に優れた材料と、他の材料とを組み合わせて使用してもよい。例えばゴム材料等は接着力や弾性力に優れる反面、溶媒に混合した場合に粘度調整が難しい場合がある。このような場合には例えば、粘度調整効果の特に優れた材料と混合することが好ましい。粘度調整効果の特に優れた材料としては、例えば水溶性高分子を用いるとよい。また、粘度調整効果に特に優れた水溶性高分子としては、前述の多糖類、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体や、澱粉を用いることができる。
【0197】
なお、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体は、例えばカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩などの塩とすることにより溶解度が上がり、粘度調整剤としての効果を発揮しやすくなる。溶解度が高くなることにより電極のスラリーを作製する際に活物質や他の構成要素との分散性を高めることもできる。本明細書においては、電極のバインダとして使用するセルロースおよびセルロース誘導体としては、それらの塩も含むものとする。
【0198】
水溶性高分子は水に溶解することにより粘度を安定化させ、また活物質や、バインダとして組み合わせる他の材料、例えばスチレンブタジエンゴムなどを、水溶液中に安定して分散させることができる。また、官能基を有するために活物質表面に安定に吸着しやすいことが期待される。また、例えばカルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体は、例えば水酸基やカルボキシル基などの官能基を有する材料が多く、官能基を有するために高分子同士が相互作用し、活物質表面を広く覆って存在することが期待される。
【0199】
活物質表面を覆う、または表面に接するバインダが膜を形成する場合には、不動態膜としての役割を果たして電解液の分解を抑える効果も期待される。ここで、不動態膜とは、電気の伝導性のない膜、または電気伝導性の極めて低い膜であり、例えば活物質の表面に不動態膜が形成された場合には、電池反応電位において、電解液の分解を抑制することができる。また、不動態膜は、電気の伝導性を抑えるとともに、リチウムイオンは伝導できるとさらに望ましい。
【0200】
<正極集電体>
正極集電体としては、ステンレス、金、白金、アルミニウム、チタン等の金属、及びこれらの合金など、導電性が高い材料をもちいることができる。また正極集電体に用いる材料は、正極の電位で溶出しないことが好ましい。また、シリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることができる。また、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成してもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等がある。集電体は、箔状、板状(シート状)、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。集電体は、厚みが5μm以上30μm以下のものを用いるとよい。
【0201】
[負極]
負極は、負極活物質層および負極集電体を有する。また、負極活物質層は、導電助剤およびバインダを有していてもよい。
【0202】
<負極活物質>
負極活物質としては、例えば合金系材料や炭素系材料等を用いることができる。
【0203】
負極活物質として、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な元素を用いることができる。例えば、シリコン、スズ、ガリウム、アルミニウム、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、銀、亜鉛、カドミウム、インジウム等のうち少なくとも一つを含む材料を用いることができる。このような元素は炭素と比べて容量が大きく、特にシリコンは理論容量が4200mAh/gと高い。このため、負極活物質にシリコンを用いることが好ましい。また、これらの元素を有する化合物を用いてもよい。例えば、SiO、MgSi、MgGe、SnO、SnO、MgSn、SnS、VSn、FeSn、CoSn、NiSn、CuSn、AgSn、AgSb、NiMnSb、CeSb、LaSn、LaCoSn、CoSb、InSb、SbSn等がある。ここで、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な元素、および該元素を有する化合物等を合金系材料と呼ぶ場合がある。
【0204】
本明細書等において、SiOは例えば一酸化シリコンを指す。あるいはSiOは、SiOと表すこともできる。ここでxは1近傍の値を有することが好ましい。例えばxは、0.2以上1.5以下が好ましく、0.3以上1.2以下がより好ましい。
【0205】
炭素系材料としては、黒鉛、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック等を用いればよい。
【0206】
黒鉛としては、人造黒鉛や、天然黒鉛等が挙げられる。人造黒鉛としては例えば、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス系人造黒鉛、ピッチ系人造黒鉛等が挙げられる。ここで人造黒鉛として、球状の形状を有する球状黒鉛を用いることができる。例えば、MCMBは球状の形状を有する場合があり、好ましい。また、MCMBはその表面積を小さくすることが比較的容易であり、好ましい場合がある。天然黒鉛としては例えば、鱗片状黒鉛、球状化天然黒鉛等が挙げられる。
【0207】
黒鉛は、リチウムイオンが黒鉛に挿入されたとき(リチウム-黒鉛層間化合物の生成時)にリチウム金属と同程度に低い電位を示す(0.05V以上0.3V以下 vs.Li/Li)。これにより、リチウムイオン二次電池は高い作動電圧を示すことができる。さらに、黒鉛は、単位体積当たりの容量が比較的高い、体積膨張が比較的小さい、安価である、リチウム金属に比べて安全性が高い等の利点を有するため、好ましい。
【0208】
また、負極活物質として、二酸化チタン(TiO)、リチウムチタン酸化物(LiTi12)、リチウム-黒鉛層間化合物(Li)、五酸化ニオブ(Nb)、酸化タングステン(WO)、酸化モリブデン(MoO)等の酸化物を用いることができる。
【0209】
また、負極活物質として、リチウムと遷移金属の複窒化物である、LiN型構造をもつLi3-xN(M=Co、Ni、Cu)を用いることができる。例えば、Li2.6Co0.4は大きな充放電容量(900mAh/g、1890mAh/cm)を示し好ましい。
【0210】
リチウムと遷移金属の複窒化物を用いると、負極活物質中にリチウムイオンを含むため、正極活物質としてリチウムイオンを含まないV、Cr等の材料と組み合わせることができ好ましい。なお、正極活物質にリチウムイオンを含む材料を用いる場合でも、あらかじめ正極活物質に含まれるリチウムイオンを脱離させることで、負極活物質としてリチウムと遷移金属の複窒化物を用いることができる。
【0211】
また、コンバージョン反応が生じる材料を負極活物質として用いることもできる。例えば、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(FeO)等の、リチウムとの合金を作らない遷移金属酸化物を負極活物質に用いてもよい。コンバージョン反応が生じる材料としては、さらに、Fe、CuO、CuO、RuO、Cr等の酸化物、CoS0.89、NiS、CuS等の硫化物、Zn、CuN、Ge等の窒化物、NiP、FeP、CoP等のリン化物、FeF、BiF等のフッ化物でも起こる。
【0212】
負極活物質層が有することのできる導電助剤およびバインダとしては、正極活物質層が有することのできる導電助剤およびバインダと同様の材料を用いることができる。
【0213】
<負極集電体>
負極集電体には、正極集電体と同様の材料を用いることができる。なお負極集電体は、リチウム等のキャリアイオンと合金化しない材料を用いることが好ましい。
【0214】
[電解液]
電解液は、溶媒と電解質を有する。電解液の溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が好ましく、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、メチルジグライム、アセトニトリル、ベンゾニトリル、テトラヒドロフラン、スルホラン、スルトン等の1種、又はこれらのうちの2種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いることができる。
【0215】
また、電解液の溶媒として、難燃性および難揮発性であるイオン液体(常温溶融塩)を一つ又は複数用いることで、二次電池の内部短絡や、過充電等によって内部温度が上昇しても、二次電池の破裂や発火などを防ぐことができる。イオン液体は、カチオンとアニオンからなり、有機カチオンとアニオンとを含む。電解液に用いる有機カチオンとして、四級アンモニウムカチオン、三級スルホニウムカチオン、および四級ホスホニウムカチオン等の脂肪族オニウムカチオンや、イミダゾリウムカチオンおよびピリジニウムカチオン等の芳香族カチオンが挙げられる。また、電解液に用いるアニオンとして、1価のアミド系アニオン、1価のメチド系アニオン、フルオロスルホン酸アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロボレートアニオン、パーフルオロアルキルボレートアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、またはパーフルオロアルキルホスフェートアニオン等が挙げられる。
【0216】
また、上記の溶媒に溶解させる電解質としては、例えばLiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiAlCl、LiSCN、LiBr、LiI、LiSO、Li10Cl10、Li12Cl12、LiCFSO、LiCSO、LiC(CFSO、LiC(CSO、LiN(CFSO、LiN(CSO)(CFSO)、LiN(CSO等のリチウム塩を一種、又はこれらのうちの二種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いることができる。
【0217】
二次電池に用いる電解液は、粒状のごみや電解液の構成元素以外の元素(以下、単に「不純物」ともいう。)の含有量が少ない高純度化された電解液を用いることが好ましい。具体的には、電解液に対する不純物の重量比を1%以下、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.01%以下とすることが好ましい。
【0218】
また、電解液にビニレンカーボネート、プロパンスルトン(PS)、tert-ブチルベンゼン(TBB)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、またスクシノニトリル、アジポニトリル等のジニトリル化合物などの添加剤を添加してもよい。添加する材料の濃度は、例えば溶媒全体に対して0.1wt%以上5wt%以下とすればよい。
【0219】
また、ポリマーを電解液で膨潤させたポリマーゲル電解質を用いてもよい。
【0220】
ポリマーゲル電解質を用いることで、漏液性等に対する安全性が高まる。また、二次電池の薄型化および軽量化が可能である。
【0221】
ゲル化されるポリマーとして、シリコーンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリエチレンオキサイド系ゲル、ポリプロピレンオキサイド系ゲル、フッ素系ポリマーのゲル等を用いることができる。
【0222】
ポリマーとしては、例えばポリエチレンオキシド(PEO)などのポリアルキレンオキシド構造を有するポリマーや、PVDF、およびポリアクリロニトリル等、およびそれらを含む共重合体等を用いることができる。例えばPVDFとヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体であるPVDF-HFPを用いることができる。また、形成されるポリマーは、多孔質形状を有してもよい。
【0223】
また、電解液の代わりに、硫化物系や酸化物系等の無機物材料を有する固体電解質や、PEO(ポリエチレンオキシド)系等の高分子材料を有する固体電解質を用いることができる。固体電解質を用いる場合には、セパレータやスペーサの設置が不要となる。また、電池全体を固体化できるため、漏液のおそれがなくなり安全性が飛躍的に向上する。
【0224】
硫化物系固体電解質には、チオシリコン系(Li10GeP12、Li3.25Ge0.250.75等)、硫化物ガラス(70LiS・30P、30LiS・26B・44LiI、63LiS・38SiS・1LiPO、57LiS・38SiS・5LiSiO、50LiS・50GeS等)、硫化物結晶化ガラス(Li11、Li3.250.95等)が含まれる。硫化物系固体電解質は、高い伝導度を有する材料がある、低い温度で合成可能、また比較的やわらかいため充放電を経ても導電経路が保たれやすい等の利点がある。
【0225】
酸化物系固体電解質には、ペロブスカイト型結晶構造を有する材料(La2/3-xLi3xTiO等)、NASICON型結晶構造を有する材料(Li1-XAlTi2-X(PO等)、ガーネット型結晶構造を有する材料(LiLaZr12等)、LISICON型結晶構造を有する材料(Li14ZnGe16等)、LLZO(LiLaZr12)、酸化物ガラス(LiPO-LiSiO、50LiSiO・50LiBO等)、酸化物結晶化ガラス(Li1.07Al0.69Ti1.46(PO、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO等)が含まれる。酸化物系固体電解質は、大気中で安定であるといった利点がある。
【0226】
ハロゲン化物系固体電解質には、LiAlCl、LiInBr、LiF、LiCl、LiBr、LiI等が含まれる。また、これらハロゲン化物系固体電解質を、ポーラスアルミナやポーラスシリカの細孔に充填したコンポジット材料も固体電解質として用いることができる。
【0227】
また、異なる固体電解質を混合して用いてもよい。
【0228】
中でも、NASICON型結晶構造を有するLi1+xAlTi2-x(PO(0<x<1)(以下、LATP)は、アルミニウムとチタンという、本発明の一態様の二次電池に用いる正極活物質が有してもよい元素を含むため、サイクル特性の向上について相乗効果が期待でき好ましい。また、工程の削減による生産性の向上も期待できる。なお本明細書等において、NASICON型結晶構造とは、M(XO(M:遷移金属、X:S、P、As、Mo、W等)で表される化合物であり、MO八面体とXO四面体が頂点を共有して3次元的に配列した構造を有するものをいう。
【0229】
[セパレータ]
また二次電池は、セパレータを有することが好ましい。セパレータとしては、例えば、紙、不織布、ガラス繊維、セラミックス、或いはナイロン(ポリアミド)、ビニロン(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタンを用いた合成繊維等で形成されたものを用いることができる。セパレータはエンベロープ状に加工し、正極または負極のいずれか一方を包むように配置することが好ましい。
【0230】
セパレータは多層構造であってもよい。例えばポリプロピレン、ポリエチレン等の有機材料フィルムに、セラミック系材料、フッ素系材料、ポリアミド系材料、またはこれらを混合したもの等をコートすることができる。セラミック系材料としては、例えば酸化アルミニウム粒子、酸化シリコン粒子等を用いることができる。フッ素系材料としては、例えばPVDF、ポリテトラフルオロエチレン等を用いることができる。ポリアミド系材料としては、例えばナイロン、アラミド(メタ系アラミド、パラ系アラミド)等を用いることができる。
【0231】
セラミック系材料をコートすると耐酸化性が向上するため、高電圧充放電の際のセパレータの劣化を抑制し、二次電池の信頼性を向上させることができる。またフッ素系材料をコートするとセパレータと電極が密着しやすくなり、出力特性を向上させることができる。ポリアミド系材料、特にアラミドをコートすると、耐熱性が向上するため、二次電池の安全性を向上させることができる。
【0232】
例えばポリプロピレンのフィルムの両面に酸化アルミニウムとアラミドの混合材料をコートしてもよい。また、ポリプロピレンのフィルムの、正極と接する面に酸化アルミニウムとアラミドの混合材料をコートし、負極と接する面にフッ素系材料をコートしてもよい。
【0233】
多層構造のセパレータを用いると、セパレータ全体の厚さが薄くても二次電池の安全性を保つことができるため、二次電池の体積あたりの容量を大きくすることができる。
【0234】
[外装体]
二次電池が有する外装体としては、例えばアルミニウムなどの金属材料や樹脂材料を用いることができる。また、フィルム状の外装体を用いることもできる。フィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料からなる膜上に、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さらに該金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成樹脂膜を設けた三層構造のフィルムを用いることができる。
【0235】
(実施の形態4)
本実施の形態では、先の実施の形態で説明した正極活物質100を有する二次電池の形状の例について説明する。本実施の形態で説明する二次電池に用いる材料は、先の実施の形態の記載を参酌することができる。
【0236】
[コイン型二次電池]
まずコイン型の二次電池の一例について説明する。図5Aはコイン型(単層偏平型)の二次電池の外観図であり、図5Bは、その断面図である。
【0237】
コイン型の二次電池300は、正極端子を兼ねた正極缶301と負極端子を兼ねた負極缶302とが、ポリプロピレン等で形成されたガスケット303で絶縁シールされている。正極304は、正極集電体305と、これと接するように設けられた正極活物質層306により形成される。また、負極307は、負極集電体308と、これに接するように設けられた負極活物質層309により形成される。
【0238】
なお、コイン型の二次電池300に用いる正極304および負極307は、それぞれ活物質層は片面のみに形成すればよい。
【0239】
正極缶301、負極缶302には、電解液に対して耐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えばステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい。正極缶301は正極304と、負極缶302は負極307とそれぞれ電気的に接続する。
【0240】
これら負極307、正極304およびセパレータ310を電解質に含浸させ、図5Bに示すように、正極缶301を下にして正極304、セパレータ310、負極307、負極缶302をこの順で積層し、正極缶301と負極缶302とをガスケット303を介して圧着してコイン形の二次電池300を製造する。
【0241】
正極304に、先の実施の形態で説明した正極活物質を用いることで、高容量でサイクル特性に優れたコイン型の二次電池300とすることができる。
【0242】
ここで図5Cを用いて二次電池の充電時の電流の流れを説明する。リチウムを用いた二次電池を一つの閉回路とみなした時、リチウムイオンの動きと電流78iの流れは同じ向きになる。なお、リチウムを用いた二次電池では、充電と放電でアノード(陽極)とカソード(陰極)が入れ替わり、酸化反応と還元反応とが入れ替わることになるため、反応電位が高い電極を正極と呼び、反応電位が低い電極を負極と呼ぶ。したがって、本明細書においては、充電中であっても、放電中であっても、逆パルス電流を流す場合であっても、充電電流を流す場合であっても、正極は「正極」または「+極(プラス極)」と呼び、負極は「負極」または「-極(マイナス極)」と呼ぶこととする。酸化反応や還元反応に関連したアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いると、充電時と放電時とでは、逆になってしまい、混乱を招く可能性がある。したがって、アノード(陽極)やカソード(陰極)という用語は、本明細書においては用いないこととする。仮にアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いる場合には、充電時か放電時かを明記し、正極(プラス極)と負極(マイナス極)のどちらに対応するものかも併記することとする。
【0243】
図5Cに示す2つの端子には充電器が接続され、二次電池300が充電される。二次電池300の充電が進めば、電極間の電位差は大きくなる。
【0244】
[円筒型二次電池]
次に円筒型の二次電池の例について図6を参照して説明する。円筒型の二次電池600の外観図を図6Aに示す。図6Bは、円筒型の二次電池600の断面を模式的に示した図である。図6Bに示すように、円筒型の二次電池600は、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面および底面に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップと電池缶(外装缶)602とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
【0245】
中空円柱状の電池缶602の内側には、帯状の正極604と負極606とがセパレータ605を間に挟んで捲回された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子はセンターピンを中心に捲回されている。電池缶602は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶602には、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を電池缶602に被覆することが好ましい。電池缶602の内側において、正極、負極およびセパレータが捲回された電池素子は、対向する一対の絶縁板608、609により挟まれている。また、電池素子が設けられた電池缶602の内部は、非水電解液(図示せず)が注入されている。非水電解液は、コイン型の二次電池と同様のものを用いることができる。
【0246】
円筒型の蓄電池に用いる正極および負極は捲回するため、集電体の両面に活物質を形成することが好ましい。正極604には正極端子(正極集電リード)603が接続され、負極606には負極端子(負極集電リード)607が接続される。正極端子603および負極端子607は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。正極端子603は安全弁機構612に、負極端子607は電池缶602の底にそれぞれ抵抗溶接される。安全弁機構612は、PTC素子(Positive Temperature Coefficient)611を介して正極キャップ601と電気的に接続されている。安全弁機構612は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャップ601と正極604との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子611は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaTiO)系半導体セラミックス等を用いることができる。
【0247】
また、図6Cのように複数の二次電池600を、導電板613および導電板614の間に挟んでモジュール615を構成してもよい。複数の二次電池600は、並列接続されていてもよいし、直列接続されていてもよいし、並列に接続された後さらに直列に接続されていてもよい。複数の二次電池600を有するモジュール615を構成することで、大きな電力を取り出すことができる。
【0248】
図6Dはモジュール615の上面図である。図を明瞭にするために導電板613を点線で示した。図6Dに示すようにモジュール615は、複数の二次電池600を電気的に接続する導線616を有していてもよい。導線616上に導電板を重畳して設けることができる。また複数の二次電池600の間に温度制御装置617を有していてもよい。二次電池600が過熱されたときは、温度制御装置617により冷却し、二次電池600が冷えすぎているときは温度制御装置617により加熱することができる。そのためモジュール615の性能が外気温に影響されにくくなる。温度制御装置617が有する熱媒体は絶縁性と不燃性を有することが好ましい。
【0249】
正極604に、先の実施の形態で説明した正極活物質を用いることで、高容量でサイクル特性に優れた円筒型の二次電池600とすることができる。
【0250】
[二次電池の構造例]
二次電池の別の構造例について、図7乃至図11を用いて説明する。
【0251】
図7A及び図7Bは、二次電池の外観図を示す図である。二次電池913は、回路基板900を介して、アンテナ914、及びアンテナ915に接続されている。また、二次電池913には、ラベル910が貼られている。さらに、図7Bに示すように、二次電池913は、端子951と、端子952と、に接続されている。
【0252】
回路基板900は、端子911と、回路912と、を有する。端子911は、端子951、端子952、アンテナ914、アンテナ915、及び回路912に接続される。なお、端子911を複数設けて、複数の端子911のそれぞれを、制御信号入力端子、電源端子などとしてもよい。
【0253】
回路912は、回路基板900の裏面に設けられていてもよい。なお、アンテナ914及びアンテナ915は、コイル状に限定されず、例えば線状、板状であってもよい。また、平面アンテナ、開口面アンテナ、進行波アンテナ、EHアンテナ、磁界アンテナ、誘電体アンテナ等のアンテナを用いてもよい。又は、アンテナ914若しくはアンテナ915は、平板状の導体でもよい。この平板状の導体は、電界結合用の導体の一つとして機能することができる。つまり、コンデンサの有する2つの導体のうちの一つの導体として、アンテナ914若しくはアンテナ915を機能させてもよい。これにより、電磁界、磁界だけでなく、電界で電力のやり取りを行うこともできる。
【0254】
アンテナ914の線幅は、アンテナ915の線幅よりも大きいことが好ましい。これにより、アンテナ914により受電する電力量を大きくできる。
【0255】
二次電池は、アンテナ914及びアンテナ915と、二次電池913との間に層916を有する。層916は、例えば二次電池913による電磁界を遮蔽することができる機能を有する。層916としては、例えば磁性体を用いることができる。
【0256】
なお、二次電池の構造は、図7に限定されない。
【0257】
例えば、図8A及び図8Bに示すように、図7A及び図7Bに示す二次電池913のうち、対向する一対の面のそれぞれにアンテナを設けてもよい。図8Aは、上記一対の面の一方を示した外観図であり、図8Bは、上記一対の面の他方を示した外観図である。なお、図7A及び図7Bに示す二次電池と同じ部分については、図7A及び図7Bに示す二次電池の説明を適宜援用できる。
【0258】
図8Aに示すように、二次電池913の一対の面の一方に層916を挟んでアンテナ914が設けられ、図8Bに示すように、二次電池913の一対の面の他方に層917を挟んでアンテナ918が設けられる。層917は、例えば二次電池913による電磁界を遮蔽することができる機能を有する。層917としては、例えば磁性体を用いることができる。
【0259】
上記構造にすることにより、アンテナ914及びアンテナ918の両方のサイズを大きくすることができる。アンテナ918は、例えば、外部機器とのデータ通信を行うことができる機能を有する。アンテナ918には、例えばアンテナ914に適用可能な形状のアンテナを適用することができる。アンテナ918を介した二次電池と他の機器との通信方式としては、NFC(近距離無線通信)など、二次電池と他の機器との間で用いることができる応答方式などを適用することができる。
【0260】
又は、図8Cに示すように、図7A及び図7Bに示す二次電池913に表示装置920を設けてもよい。表示装置920は、端子911に電気的に接続される。なお、表示装置920が設けられる部分にラベル910を設けなくてもよい。なお、図7A及び図7Bに示す二次電池と同じ部分については、図7A及び図7Bに示す二次電池の説明を適宜援用できる。
【0261】
表示装置920には、例えば充電中であるか否かを示す画像、蓄電量を示す画像などを表示してもよい。表示装置920としては、例えば電子ペーパー、液晶表示装置、エレクトロルミネセンス(ELともいう)表示装置などを用いることができる。例えば、電子ペーパーを用いることにより表示装置920の消費電力を低減することができる。
【0262】
又は、図8Dに示すように、図7A及び図7Bに示す二次電池913にセンサ921を設けてもよい。センサ921は、端子922を介して端子911に電気的に接続される。なお、図7A及び図7Bに示す二次電池と同じ部分については、図7A及び図7Bに示す二次電池の説明を適宜援用できる。
【0263】
センサ921としては、例えば、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい、又は赤外線を測定することができる機能を有すればよい。センサ921を設けることにより、例えば、二次電池が置かれている環境を示すデータ(温度など)を検出し、回路912内のメモリに記憶しておくこともできる。
【0264】
さらに、二次電池913の構造例について図9及び図10を用いて説明する。
【0265】
図9Aに示す二次電池913は、筐体930の内部に端子951と端子952が設けられた捲回体950を有する。捲回体950は、筐体930の内部で電解液に含浸される。端子952は、筐体930に接し、端子951は、絶縁材などを用いることにより筐体930に接していない。なお、図9Aでは、便宜のため、筐体930を分離して図示しているが、実際は、捲回体950が筐体930に覆われ、端子951及び端子952が筐体930の外に延在している。筐体930としては、金属材料(例えばアルミニウムなど)又は樹脂材料を用いることができる。
【0266】
なお、図9Bに示すように、図9Aに示す筐体930を複数の材料によって形成してもよい。例えば、図9Bに示す二次電池913は、筐体930aと筐体930bが貼り合わされており、筐体930a及び筐体930bで囲まれた領域に捲回体950が設けられている。
【0267】
筐体930aとしては、有機樹脂など、絶縁材料を用いることができる。特に、アンテナが形成される面に有機樹脂などの材料を用いることにより、二次電池913による電界の遮蔽を抑制できる。なお、筐体930aによる電界の遮蔽が小さければ、筐体930aの内部にアンテナ914やアンテナ915などのアンテナを設けてもよい。筐体930bとしては、例えば金属材料を用いることができる。
【0268】
さらに、捲回体950の構造について図10に示す。捲回体950は、負極931と、正極932と、セパレータ933と、を有する。捲回体950は、セパレータ933を挟んで負極931と、正極932が重なり合って積層され、該積層シートを捲回させた捲回体である。なお、負極931と、正極932と、セパレータ933と、の積層を、さらに複数重ねてもよい。
【0269】
負極931は、端子951及び端子952の一方を介して図7に示す端子911に接続される。正極932は、端子951及び端子952の他方を介して図7に示す端子911に接続される。
【0270】
正極932に、先の実施の形態で説明した正極活物質を用いることで、高容量でサイクル特性に優れた二次電池913とすることができる。
【0271】
[ラミネート型二次電池]
次に、ラミネート型の二次電池の例について、図11乃至図17を参照して説明する。ラミネート型の二次電池は、可撓性を有する構成とすれば、可撓性を有する部位を少なくとも一部有する電子機器に実装すれば、電子機器の変形に合わせて二次電池も曲げることもできる。
【0272】
図11を用いて、ラミネート型の二次電池980について説明する。ラミネート型の二次電池980は、図11Aに示す捲回体993を有する。捲回体993は、負極994と、正極995と、セパレータ996と、を有する。捲回体993は、図10で説明した捲回体950と同様に、セパレータ996を挟んで負極994と、正極995とが重なり合って積層され、該積層シートを捲回したものである。
【0273】
なお、負極994、正極995およびセパレータ996からなる積層の積層数は、必要な容量と素子体積に応じて適宜設計すればよい。負極994はリード電極997およびリード電極998の一方を介して負極集電体(図示せず)に接続され、正極995はリード電極997およびリード電極998の他方を介して正極集電体(図示せず)に接続される。
【0274】
図11Bに示すように、外装体となるフィルム981と、凹部を有するフィルム982とを熱圧着などにより貼り合わせて形成される空間に上述した捲回体993を収納することで、図11Cに示すように二次電池980を作製することができる。捲回体993は、リード電極997およびリード電極998を有し、フィルム981と、凹部を有するフィルム982との内部で電解液に含浸される。
【0275】
フィルム981と、凹部を有するフィルム982は、例えばアルミニウムなどの金属材料や樹脂材料を用いることができる。フィルム981および凹部を有するフィルム982の材料として樹脂材料を用いれば、外部から力が加わったときにフィルム981と、凹部を有するフィルム982を変形させることができ、可撓性を有する蓄電池を作製することができる。
【0276】
また、図11Bおよび図11Cでは2枚のフィルムを用いる例を示しているが、1枚のフィルムを折り曲げることによって空間を形成し、その空間に上述した捲回体993を収納してもよい。
【0277】
正極995に、先の実施の形態で説明した正極活物質を用いることで、高容量でサイクル特性に優れた二次電池980とすることができる。
【0278】
また図11では外装体となるフィルムにより形成された空間に捲回体を有する二次電池980の例について説明したが、例えば図12のように、外装体となるフィルムにより形成された空間に、短冊状の複数の正極、セパレータおよび負極を有する二次電池としてもよい。
【0279】
図12Aに示すラミネート型の二次電池500は、正極集電体501および正極活物質層502を有する正極503と、負極集電体504および負極活物質層505を有する負極506と、セパレータ507と、電解液508と、外装体509と、を有する。外装体509内に設けられた正極503と負極506との間にセパレータ507が設置されている。また、外装体509内は、電解液508で満たされている。電解液508には、実施の形態2で示した電解液を用いることができる。
【0280】
図12Aに示すラミネート型の二次電池500において、正極集電体501および負極集電体504は、外部との電気的接触を得る端子の役割も兼ねている。そのため、正極集電体501および負極集電体504の一部は、外装体509から外側に露出するように配置してもよい。また、正極集電体501および負極集電体504を、外装体509から外側に露出させず、リード電極を用いてそのリード電極と正極集電体501、或いは負極集電体504と超音波接合させてリード電極を外側に露出するようにしてもよい。
【0281】
ラミネート型の二次電池500において、外装体509には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料からなる膜上に、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さらに該金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成樹脂膜を設けた三層構造のラミネートフィルムを用いることができる。
【0282】
また、ラミネート型の二次電池500の断面構造の一例を図12Bに示す。図12Aでは簡略のため、2つの集電体で構成する例を示しているが、実際は、図12Bに示すように、複数の電極層で構成する。
【0283】
図12Bでは、一例として、電極層数を16としている。なお、電極層数を16としても二次電池500は、可撓性を有する。図12Bでは負極集電体504が8層と、正極集電体501が8層の合計16層の構造を示している。なお、図12Bは負極の取り出し部の断面を示しており、8層の負極集電体504を超音波接合させている。勿論、電極層数は16に限定されず、多くてもよいし、少なくてもよい。電極層数が多い場合には、より多くの容量を有する二次電池とすることができる。また、電極層数が少ない場合には、薄型化でき、可撓性に優れた二次電池とすることができる。
【0284】
ここで、ラミネート型の二次電池500の外観図の一例を図13及び図14に示す。図13及び図14は、正極503、負極506、セパレータ507、外装体509、正極リード電極510及び負極リード電極511を有する。
【0285】
図15Aは正極503及び負極506の外観図を示す。正極503は正極集電体501を有し、正極活物質層502は正極集電体501の表面に形成されている。また、正極503は正極集電体501が一部露出する領域(以下、タブ領域という)を有する。負極506は負極集電体504を有し、負極活物質層505は負極集電体504の表面に形成されている。また、負極506は負極集電体504が一部露出する領域、すなわちタブ領域を有する。正極及び負極が有するタブ領域の面積や形状は、図15Aに示す例に限られない。
【0286】
[ラミネート型二次電池の作製方法]
ここで、図13に外観図を示すラミネート型二次電池の作製方法の一例について、図15B図15Cを用いて説明する。
【0287】
まず、負極506、セパレータ507及び正極503を積層する。図15Bに積層された負極506、セパレータ507及び正極503を示す。ここでは負極を5組、正極を4組使用する例を示す。次に、正極503のタブ領域同士の接合と、最表面の正極のタブ領域への正極リード電極510の接合を行う。接合には、例えば超音波溶接等を用いればよい。同様に、負極506のタブ領域同士の接合と、最表面の負極のタブ領域への負極リード電極511の接合を行う。
【0288】
次に外装体509上に、負極506、セパレータ507及び正極503を配置する。
【0289】
次に、図15Cに示すように、外装体509を破線で示した部分で折り曲げる。その後、外装体509の外周部を接合する。接合には例えば熱圧着等を用いればよい。この時、後に電解液508を入れることができるように、外装体509の一部(または一辺)に接合されない領域(以下、導入口という)を設ける。
【0290】
次に、外装体509に設けられた導入口から、電解液508(図示しない。)を外装体509の内側へ導入する。電解液508の導入は、減圧雰囲気下、或いは不活性雰囲気下で行うことが好ましい。そして最後に、導入口を接合する。このようにして、ラミネート型の二次電池500を作製することができる。
【0291】
正極503に、先の実施の形態で説明した正極活物質を用いることで、高容量でサイクル特性に優れた二次電池500とすることができる。
【0292】
[曲げることのできる二次電池]
次に、曲げることのできる二次電池の例について図16および図17を参照して説明する。
【0293】
図16Aに、曲げることのできる二次電池250の上面概略図を示す。図16B1図16B2図16Cにはそれぞれ、図16A中の切断線C1-C2、切断線C3-C4、切断線A1-A2における断面概略図である。二次電池250は、外装体251と、外装体251の内部に収容された電極積層体210と、を有する。電極積層体210は、少なくとも正極211aおよび負極211bが積層された構造を有する。正極211aと電気的に接続されたリード212a、および負極211bと電気的に接続されたリード212bは、外装体251の外側に延在している。また外装体251で囲まれた領域には、正極211aおよび負極211bに加えて電解液(図示しない)が封入されている。
【0294】
二次電池250が有する正極211aおよび負極211bについて、図17を用いて説明する。図17Aは、正極211a、負極211bおよびセパレータ214の積層順を説明する斜視図である。図17Bは正極211aおよび負極211bに加えて、リード212aおよびリード212bを示す斜視図である。
【0295】
図17Aに示すように、二次電池250は、複数の短冊状の正極211a、複数の短冊状の負極211bおよび複数のセパレータ214を有する。正極211aおよび負極211bはそれぞれ突出したタブ部分と、タブ以外の部分を有する。正極211aの一方の面のタブ以外の部分に正極活物質層が形成され、負極211bの一方の面のタブ以外の部分に負極活物質層が形成される。
【0296】
正極211aの正極活物質層の形成されていない面同士、および負極211bの負極活物質の形成されていない面同士が接するように、正極211aおよび負極211bは積層される。
【0297】
また、正極211aの正極活物質が形成された面と、負極211bの負極活物質が形成された面の間にはセパレータ214が設けられる。図17では見やすくするためセパレータ214を点線で示す。
【0298】
また図17Bに示すように、複数の正極211aとリード212aは、接合部215aにおいて電気的に接続される。また複数の負極211bとリード212bは、接合部215bにおいて電気的に接続される。
【0299】
次に、外装体251について図16B1図16B2図16C図16Dを用いて説明する。
【0300】
外装体251は、フィルム状の形状を有し、正極211aおよび負極211bを挟むように2つに折り曲げられている。外装体251は、折り曲げ部261と、一対のシール部262と、シール部263と、を有する。一対のシール部262は、正極211aおよび負極211bを挟んで設けられ、サイドシールとも呼ぶことができる。また、シール部263は、リード212a及びリード212bと重なる部分を有し、トップシールとも呼ぶことができる。
【0301】
外装体251は、正極211aおよび負極211bと重なる部分に、稜線271と谷線272が交互に並んだ波形状を有することが好ましい。また、外装体251のシール部262及びシール部263は、平坦であることが好ましい。
【0302】
図16B1は、稜線271と重なる部分で切断した断面であり、図16B2は、谷線272と重なる部分で切断した断面である。図16B1図16B2は共に、二次電池250及び正極211aおよび負極211bの幅方向の断面に対応する。
【0303】
ここで、正極211aおよび負極211bの幅方向の端部、すなわち正極211aおよび負極211bの端部と、シール部262との間の距離を距離Laとする。二次電池250に曲げるなどの変形を加えたとき、後述するように正極211aおよび負極211bが長さ方向に互いにずれるように変形する。その際、距離Laが短すぎると、外装体251と正極211aおよび負極211bとが強く擦れ、外装体251が破損してしまう場合がある。特に外装体251の金属フィルムが露出すると、当該金属フィルムが電解液により腐食されてしまう恐れがある。したがって、距離Laを出来るだけ長く設定することが好ましい。一方で、距離Laを大きくしすぎると、二次電池250の体積が増大してしまう。
【0304】
また、積層された正極211aおよび負極211bの合計の厚さが厚いほど、正極211aおよび負極211bと、シール部262との間の距離Laを大きくすることが好ましい。
【0305】
より具体的には、積層された正極211aおよび負極211bおよび図示しないがセパレータ214の合計の厚さをtとしたとき、距離Laは、厚さtの0.8倍以上3.0倍以下、好ましくは0.9倍以上2.5倍以下、より好ましくは1.0倍以上2.0倍以下であることが好ましい。距離Laをこの範囲とすることで、コンパクトで、且つ曲げに対する信頼性の高い電池を実現できる。
【0306】
また、一対のシール部262の間の距離を距離Lbとしたとき、距離Lbを正極211aおよび負極211bの幅(ここでは、負極211bの幅Wb)よりも十分大きくすることが好ましい。これにより、二次電池250に繰り返し曲げるなどの変形を加えたときに、正極211aおよび負極211bと外装体251とが接触しても、正極211aおよび負極211bの一部が幅方向にずれることができるため、正極211aおよび負極211bと外装体251とが擦れてしまうことを効果的に防ぐことができる。
【0307】
例えば、一対のシール部262の間の距離Lbと、負極211bの幅Wbとの差が、正極211aおよび負極211bの厚さtの1.6倍以上6.0倍以下、好ましくは1.8倍以上5.0倍以下、より好ましくは、2.0倍以上4.0倍以下を満たすことが好ましい。
【0308】
また、図16Cはリード212aを含む断面であり、二次電池250、正極211aおよび負極211bの長さ方向の断面に対応する。図16Cに示すように、折り曲げ部261において、正極211aおよび負極211bの長さ方向の端部と、外装体251との間に空間273を有することが好ましい。
【0309】
図16Dに、二次電池250を曲げたときの断面概略図を示している。図16Dは、図16A中の切断線B1-B2における断面に相当する。
【0310】
二次電池250を曲げると、曲げの外側に位置する外装体251の一部は伸び、内側に位置する他の一部は縮むように変形する。より具体的には、外装体251の外側に位置する部分は、波の振幅が小さく、且つ波の周期が大きくなるように変形する。一方、外装体251の内側に位置する部分は、波の振幅が大きく、且つ波の周期が小さくなるように変形する。このように、外装体251が変形することにより、曲げに伴って外装体251にかかる応力が緩和されるため、外装体251を構成する材料自体が伸縮する必要がない。その結果、外装体251は破損することなく、小さな力で二次電池250を曲げることができる。
【0311】
また、図16Dに示すように、二次電池250を曲げると、正極211aおよび負極211bとがそれぞれ相対的にずれる。このとき、複数の積層された正極211aおよび負極211bは、シール部263側の一端が固定部材217で固定されているため、折り曲げ部261に近いほどずれ量が大きくなるように、それぞれずれる。これにより、正極211aおよび負極211bにかかる応力が緩和され、正極211aおよび負極211b自体が伸縮する必要がない。その結果、正極211aおよび負極211bが破損することなく二次電池250を曲げることができる。
【0312】
また、正極211aおよび負極211bと外装体251との間に空間273を有していることにより、曲げた時内側に位置する正極211aおよび負極211bが、外装体251に接触することなく、相対的にずれることができる。
【0313】
図16および図17で例示した二次電池250は、繰り返し曲げ伸ばしを行っても、外装体の破損、正極211aおよび負極211bの破損などが生じにくく、電池特性も劣化しにくい電池である。二次電池250が有する正極211aに、先の実施の形態で説明した正極活物質を用いることで、さらにサイクル特性に優れた電池とすることができる。
【0314】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様である二次電池を電子機器に実装する例について説明する。
【0315】
まず実施の形態3の一部で説明した、曲げることのできる二次電池を電子機器に実装する例を図18A乃至図18Gに示す。曲げることのできる二次電池を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
【0316】
また、フレキシブルな形状を備える二次電池を、家屋やビルの内壁または外壁や、自動車の内装または外装の曲面に沿って組み込むことも可能である。
【0317】
図18Aは、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、二次電池7407を有している。上記の二次電池7407に本発明の一態様の二次電池を用いることで、軽量で長寿命な携帯電話機を提供できる。
【0318】
図18Bは、携帯電話機7400を湾曲させた状態を示している。携帯電話機7400を外部の力により変形させて全体を湾曲させると、その内部に設けられている二次電池7407も湾曲される。また、その時、曲げられた二次電池7407の状態を図18Cに示す。二次電池7407は薄型の蓄電池である。二次電池7407は曲げられた状態で固定されている。なお、二次電池7407は集電体と電気的に接続されたリード電極を有している。例えば、集電体は銅箔であり、一部ガリウムと合金化させて、集電体と接する活物質層との密着性を向上し、二次電池7407が曲げられた状態での信頼性が高い構成となっている。
【0319】
図18Dは、バングル型の表示装置の一例を示している。携帯表示装置7100は、筐体7101、表示部7102、操作ボタン7103、及び二次電池7104を備える。また、図18Eに曲げられた二次電池7104の状態を示す。二次電池7104は曲げられた状態で使用者の腕への装着時に、筐体が変形して二次電池7104の一部または全部の曲率が変化する。なお、曲線の任意の点における曲がり具合を相当する円の半径の値で表したものを曲率半径と呼び、曲率半径の逆数を曲率と呼ぶ。具体的には、曲率半径が40mm以上150mm以下の範囲内で筐体または二次電池7104の主表面の一部または全部が変化する。二次電池7104の主表面における曲率半径が40mm以上150mm以下の範囲であれば、高い信頼性を維持できる。上記の二次電池7104に本発明の一態様の二次電池を用いることで、軽量で長寿命な携帯表示装置を提供できる。
【0320】
図18Fは、腕時計型の携帯情報端末の一例を示している。携帯情報端末7200は、筐体7201、表示部7202、バンド7203、バックル7204、操作ボタン7205、入出力端子7206などを備える。
【0321】
携帯情報端末7200は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。
【0322】
表示部7202はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、表示部7202はタッチセンサを備え、指やスタイラスなどで画面に触れることで操作することができる。例えば、表示部7202に表示されたアイコン7207に触れることで、アプリケーションを起動することができる。
【0323】
操作ボタン7205は、時刻設定のほか、電源のオン、オフ動作、無線通信のオン、オフ動作、マナーモードの実行及び解除、省電力モードの実行及び解除など、様々な機能を持たせることができる。例えば、携帯情報端末7200に組み込まれたオペレーティングシステムにより、操作ボタン7205の機能を自由に設定することもできる。
【0324】
また、携帯情報端末7200は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。
【0325】
また、携帯情報端末7200は入出力端子7206を備え、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子7206を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子7206を介さずに無線給電により行ってもよい。
【0326】
携帯情報端末7200の表示部7202には、本発明の一態様の二次電池を有している。本発明の一態様の二次電池を用いることで、軽量で長寿命な携帯情報端末を提供できる。例えば、図18Eに示した二次電池7104を、筐体7201の内部に湾曲した状態で、またはバンド7203の内部に湾曲可能な状態で組み込むことができる。
【0327】
携帯情報端末7200はセンサを有することが好ましい。センサとして例えば、指紋センサ、脈拍センサ、体温センサ等の人体センサや、タッチセンサ、加圧センサ、加速度センサ、等が搭載されることが好ましい。
【0328】
図18Gは、腕章型の表示装置の一例を示している。表示装置7300は、表示部7304を有し、本発明の一態様の二次電池を有している。また、表示装置7300は、表示部7304にタッチセンサを備えることもでき、また、携帯情報端末として機能させることもできる。
【0329】
表示部7304はその表示面が湾曲しており、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、表示装置7300は、通信規格された近距離無線通信などにより、表示状況を変更することができる。
【0330】
また、表示装置7300は入出力端子を備え、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子を介さずに無線給電により行ってもよい。
【0331】
表示装置7300が有する二次電池として本発明の一態様の二次電池を用いることで、軽量で長寿命な表示装置を提供できる。
【0332】
また、先の実施の形態で示したサイクル特性のよい二次電池を電子機器に実装する例を図18H図19および図20を用いて説明する。
【0333】
日用電子機器に二次電池として本発明の一態様の二次電池を用いることで、軽量で長寿命な製品を提供できる。例えば、日用電子機器として、電動歯ブラシ、電気シェーバー、電動美容機器などが挙げられ、それらの製品の二次電池としては、使用者の持ちやすさを考え、形状をスティック状とし、小型、軽量、且つ、大容量の二次電池が望まれている。
【0334】
図18Hはタバコ収容喫煙装置(電子タバコ)とも呼ばれる装置の斜視図である。図18Hにおいて電子タバコ7500は、加熱素子を含むアトマイザ7501と、アトマイザに電力を供給する二次電池7504と、液体供給ボトルやセンサなどを含むカートリッジ7502で構成されている。安全性を高めるため、二次電池7504の過充電や過放電を防ぐ保護回路を二次電池7504に電気的に接続してもよい。図18Hに示した二次電池7504は、充電機器と接続できるように外部端子を有している。二次電池7504は持った場合に先端部分となるため、トータルの長さが短く、且つ、重量が軽いことが望ましい。本発明の一態様の二次電池は高容量、良好なサイクル特性を有するため、長期間に渡って長時間の使用ができる小型であり、且つ、軽量の電子タバコ7500を提供できる。
【0335】
次に、図19Aおよび図19Bに、2つ折り可能なタブレット型端末の一例を示す。図19Aおよび図19Bに示すタブレット型端末9600は、筐体9630a、筐体9630b、筐体9630aと筐体9630bを接続する可動部9640、表示部9631aと表示部9631bを有する表示部9631、スイッチ9625、スイッチ9626およびスイッチ9627、留め具9629、操作スイッチ9628、を有する。表示部9631には、可撓性を有するパネルを用いることで、より広い表示部を有するタブレット端末とすることができる。図19Aは、タブレット型端末9600を開いた状態を示し、図19Bは、タブレット型端末9600を閉じた状態を示している。
【0336】
また、タブレット型端末9600は、筐体9630aおよび筐体9630bの内部に蓄電体9635を有する。蓄電体9635は、可動部9640を通り、筐体9630aと筐体9630bに渡って設けられている。
【0337】
表示部9631は、全て又は一部の領域をタッチパネルの領域とすることができ、また当該領域に表示されたアイコンを含む画像、文字、入力フォームなどに触れることでデータ入力をすることができる。例えば、筐体9630a側の表示部9631aの全面にキーボードボタンを表示させて、筐体9630b側の表示部9631bに文字、画像などの情報を表示させて用いてもよい。
【0338】
また、筐体9630b側の表示部9631bにキーボードを表示させて、筐体9630a側の表示部9631aに文字、画像などの情報を表示させて用いてもよい。また、表示部9631にタッチパネルのキーボード表示切り替えボタンを表示するようにして、当該ボタンに指やスタイラスなどで触れることで表示部9631にキーボードを表示するようにしてもよい。
【0339】
また、筐体9630a側の表示部9631aのタッチパネルの領域と筐体9630b側の表示部9631bのタッチパネルの領域に対して同時にタッチ入力することもできる。
【0340】
また、スイッチ9625乃至スイッチ9627には、タブレット型端末9600を操作するためのインターフェースだけでなく、様々な機能の切り替えを行うことができるインターフェースとしてもよい。例えば、スイッチ9625乃至スイッチ9627の少なくとも一は、タブレット型端末9600の電源のオン・オフを切り替えるスイッチとして機能してもよい。また、例えば、スイッチ9625乃至スイッチ9627の少なくとも一は、縦表示又は横表示などの表示の向きを切り替える機能、又は白黒表示やカラー表示の切り替える機能を有してもよい。また、例えば、スイッチ9625乃至スイッチ9627の少なくとも一は、表示部9631の輝度を調整する機能を有してもよい。また、表示部9631の輝度は、タブレット型端末9600に内蔵している光センサで検出される使用時の外光の光量に応じて最適なものとすることができる。なお、タブレット型端末は光センサだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置を内蔵させてもよい。
【0341】
また、図19Aでは筐体9630a側の表示部9631aと筐体9630b側の表示部9631bの表示面積とがほぼ同じ例を示しているが、表示部9631a及び表示部9631bのそれぞれの表示面積は特に限定されず、一方のサイズと他方のサイズが異なっていてもよく、表示の品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネルとしてもよい。
【0342】
図19Bは、タブレット型端末9600を2つ折りに閉じた状態であり、タブレット型端末9600は、筐体9630、太陽電池9633、DCDCコンバータ9636を含む充放電制御回路9634を有する。また、蓄電体9635として、本発明の一態様に係る蓄電体を用いる。
【0343】
なお、上述の通り、タブレット型端末9600は2つ折りが可能であるため、未使用時に筐体9630aおよび筐体9630bを重ね合せるように折りたたむことができる。折りたたむことにより、表示部9631を保護できるため、タブレット型端末9600の耐久性を高めることができる。また、本発明の一態様の二次電池を用いた蓄電体9635は高容量、良好なサイクル特性を有するため、長期間に渡って長時間の使用ができるタブレット型端末9600を提供できる。
【0344】
また、この他にも図19Aおよび図19Bに示したタブレット型端末9600は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作又は編集するタッチ入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。
【0345】
タブレット型端末9600の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル、表示部、又は映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は、筐体9630の片面又は両面に設けることができ、蓄電体9635の充電を効率的に行う構成とすることができる。なお蓄電体9635としては、リチウムイオン電池を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
【0346】
また、図19Bに示す充放電制御回路9634の構成、および動作について図19Cにブロック図を示し説明する。図19Cには、太陽電池9633、蓄電体9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1、SW2およびSW3、表示部9631について示しており、蓄電体9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3が、図19Bに示す充放電制御回路9634に対応する箇所となる。
【0347】
まず外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する。太陽電池で発電した電力は、蓄電体9635を充電するための電圧となるようDCDCコンバータ9636で昇圧又は降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽電池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ9637で表示部9631に必要な電圧に昇圧又は降圧をすることとなる。また、表示部9631での表示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにして蓄電体9635の充電を行う構成とすればよい。
【0348】
なお太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段による蓄電体9635の充電を行う構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を送受信して充電する無接点電力伝送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う構成としてもよい。
【0349】
図20に、他の電子機器の例を示す。図20において、表示装置8000は、本発明の一態様に係る二次電池8004を用いた電子機器の一例である。具体的に、表示装置8000は、TV放送受信用の表示装置に相当し、筐体8001、表示部8002、スピーカ部8003、二次電池8004等を有する。本発明の一態様に係る二次電池8004は、筐体8001の内部に設けられている。表示装置8000は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、二次電池8004に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る二次電池8004を無停電電源として用いることで、表示装置8000の利用が可能となる。
【0350】
表示部8002には、液晶表示装置、有機EL素子などの発光素子を各画素に備えた発光装置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)などの、半導体表示装置を用いることができる。
【0351】
なお、表示装置には、TV放送受信用の他、パーソナルコンピュータ用、広告表示用など、全ての情報表示用表示装置が含まれる。
【0352】
図20において、据え付け型の照明装置8100は、本発明の一態様に係る二次電池8103を用いた電子機器の一例である。具体的に、照明装置8100は、筐体8101、光源8102、二次電池8103等を有する。図20では、二次電池8103が、筐体8101及び光源8102が据え付けられた天井8104の内部に設けられている場合を例示しているが、二次電池8103は、筐体8101の内部に設けられていても良い。照明装置8100は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、二次電池8103に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る二次電池8103を無停電電源として用いることで、照明装置8100の利用が可能となる。
【0353】
なお、図20では天井8104に設けられた据え付け型の照明装置8100を例示しているが、本発明の一態様に係る二次電池は、天井8104以外、例えば側壁8105、床8106、窓8107等に設けられた据え付け型の照明装置に用いることもできるし、卓上型の照明装置などに用いることもできる。
【0354】
また、光源8102には、電力を利用して人工的に光を得る人工光源を用いることができる。具体的には、白熱電球、蛍光灯などの放電ランプ、LEDや有機EL素子などの発光素子が、上記人工光源の一例として挙げられる。
【0355】
図20において、室内機8200及び室外機8204を有するエアコンディショナーは、本発明の一態様に係る二次電池8203を用いた電子機器の一例である。具体的に、室内機8200は、筐体8201、送風口8202、二次電池8203等を有する。図20では、二次電池8203が、室内機8200に設けられている場合を例示しているが、二次電池8203は室外機8204に設けられていても良い。或いは、室内機8200と室外機8204の両方に、二次電池8203が設けられていても良い。エアコンディショナーは、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、二次電池8203に蓄積された電力を用いることもできる。特に、室内機8200と室外機8204の両方に二次電池8203が設けられている場合、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る二次電池8203を無停電電源として用いることで、エアコンディショナーの利用が可能となる。
【0356】
なお、図20では、室内機と室外機で構成されるセパレート型のエアコンディショナーを例示しているが、室内機の機能と室外機の機能とを1つの筐体に有する一体型のエアコンディショナーに、本発明の一態様に係る二次電池を用いることもできる。
【0357】
図20において、電気冷凍冷蔵庫8300は、本発明の一態様に係る二次電池8304を用いた電子機器の一例である。具体的に、電気冷凍冷蔵庫8300は、筐体8301、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303、二次電池8304等を有する。図20では、二次電池8304が、筐体8301の内部に設けられている。電気冷凍冷蔵庫8300は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、二次電池8304に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る二次電池8304を無停電電源として用いることで、電気冷凍冷蔵庫8300の利用が可能となる。
【0358】
なお、上述した電子機器のうち、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器などの電子機器は、短時間で高い電力を必要とする。よって、商用電源では賄いきれない電力を補助するための補助電源として、本発明の一態様に係る二次電池を用いることで、電子機器の使用時に商用電源のブレーカーが落ちるのを防ぐことができる。
【0359】
また、電子機器が使用されない時間帯、特に、商用電源の供給元が供給可能な総電力量のうち、実際に使用される電力量の割合(電力使用率と呼ぶ)が低い時間帯において、二次電池に電力を蓄えておくことで、上記時間帯以外において電力使用率が高まるのを抑えることができる。例えば、電気冷凍冷蔵庫8300の場合、気温が低く、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303の開閉が行われない夜間において、二次電池8304に電力を蓄える。そして、気温が高くなり、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303の開閉が行われる昼間において、二次電池8304を補助電源として用いることで、昼間の電力使用率を低く抑えることができる。
【0360】
本発明の一態様により、二次電池のサイクル特性が良好となり、信頼性を向上させることができる。また、本発明の一態様によれば、高容量の二次電池とすることができ、よって、二次電池の特性を向上することができ、よって、二次電池自体を小型軽量化することができる。そのため本発明の一態様である二次電池を、本実施の形態で説明した電子機器に搭載することで、より長寿命で、より軽量な電子機器とすることができる。本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0361】
(実施の形態6)
本実施の形態では、車両に本発明の一態様である二次電池を搭載する例を示す。
【0362】
二次電池を車両に搭載すると、ハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)、又はプラグインハイブリッド車(PHV)等の次世代クリーンエネルギー自動車を実現できる。
【0363】
図21において、本発明の一態様である二次電池を用いた車両を例示する。図21Aに示す自動車8400は、走行のための動力源として電気モーターを用いる電気自動車である。または、走行のための動力源として電気モーターとエンジンを適宜選択して用いることが可能なハイブリッド自動車である。本発明の一態様を用いることで、航続距離の長い車両を実現することができる。また、自動車8400は二次電池を有する。二次電池は、車内の床部分に対して、図6Cおよび図6Dに示した二次電池のモジュールを並べて使用すればよい。また、図9に示す二次電池を複数組み合わせた電池パックを車内の床部分に対して設置してもよい。二次電池は電気モーター8406を駆動するだけでなく、ヘッドライト8401やルームライト(図示せず)などの発光装置に電力を供給することができる。
【0364】
また、二次電池は、自動車8400が有するスピードメーター、タコメーターなどの表示装置に電力を供給することができる。また、二次電池は、自動車8400が有するナビゲーションシステムなどの半導体装置に電力を供給することができる。
【0365】
図21Bに示す自動車8500は、自動車8500が有する二次電池にプラグイン方式や非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができる。図21Bに、地上設置型の充電装置8021から自動車8500に搭載された二次電池8024に、ケーブル8022を介して充電を行っている状態を示す。充電に際しては、充電方法やコネクターの規格等はCHAdeMO(登録商標)やコンボ等の所定の方式で適宜行えばよい。充電装置8021は、商用施設に設けられた充電ステーションでもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、プラグイン技術によって、外部からの電力供給により自動車8500に搭載された二次電池8024を充電することができる。充電は、ACDCコンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流電力に変換して行うことができる。
【0366】
また、図示しないが、受電装置を車両に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路や外壁に送電装置を組み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電の方式を利用して、車両どうしで電力の送受信を行ってもよい。さらに、車両の外装部に太陽電池を設け、停車時や走行時に二次電池の充電を行ってもよい。このような非接触での電力の供給には、電磁誘導方式や磁界共鳴方式を用いることができる。
【0367】
また、図21Cは、本発明の一態様の二次電池を用いた二輪車の一例である。図21Cに示すスクータ8600は、二次電池8602、サイドミラー8601、方向指示灯8603を備える。二次電池8602は、方向指示灯8603に電気を供給することができる。
【0368】
また、図21Cに示すスクータ8600は、座席下収納8604に、二次電池8602を収納することができる。二次電池8602は、座席下収納8604が小型であっても、座席下収納8604に収納することができる。二次電池8602は、取り外し可能となっており、充電時には二次電池8602を屋内に持って運び、充電し、走行する前に収納すればよい。
【0369】
本発明の一態様によれば、二次電池のサイクル特性が良好となり、二次電池の容量を大きくすることができる。よって、二次電池自体を小型軽量化することができる。二次電池自体を小型軽量化できれば、車両の軽量化に寄与するため、航続距離を向上させることができる。また、車両に搭載した二次電池を車両以外の電力供給源として用いることもできる。この場合、例えば電力需要のピーク時に商用電源を用いることを回避することができる。電力需要のピーク時に商用電源を用いることを回避できれば、省エネルギー、および二酸化炭素の排出の削減に寄与することができる。また、サイクル特性が良好であれば二次電池を長期に渡って使用できるため、コバルトをはじめとする希少金属の使用量を減らすことができる。
【0370】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0371】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様の正極活物質を有する二次電池を搭載することのできるウェアラブルデバイスの一例を示す。
【0372】
図22Aは、ウェアラブルデバイスの例を示している。ウェアラブルデバイスは、電源として二次電池を用いる。また、使用者が生活使用または屋外使用において水による耐水性を高めるため、接続するコネクタ部分が露出している有線による充電だけでなく、無線充電も行えるウェアラブルデバイスが望まれている。
【0373】
例えば、図22Aに示すような眼鏡型デバイス400に搭載することができる。眼鏡型デバイス400は、フレーム400aと、表示部400bを有する。湾曲を有するフレーム400aのテンプル部に二次電池を搭載することで、軽量であり、且つ、重量バランスがよく継続使用時間の長い眼鏡型デバイス400とすることができる。
【0374】
また、ヘッドセット型デバイス401に搭載することができる。ヘッドセット型デバイス401は、少なくともマイク部401aと、フレキシブルパイプ401bと、イヤフォン部401cを有する。フレキシブルパイプ401b内やイヤフォン部401c内に二次電池を設けることができる。
【0375】
また、身体に直接取り付け可能なデバイス402に搭載することができる。デバイス402の薄型の筐体402aの中に、二次電池402bを設けることができる。
【0376】
また、衣服に取り付け可能なデバイス403に搭載することができる。デバイス403の薄型の筐体403aの中に、二次電池403bを設けることができる。
【0377】
また、ベルト型デバイス406に搭載することができる。ベルト型デバイス406は、ベルト部406aおよびワイヤレス給電受電部406bを有し、ベルト部406aの内部に、二次電池を搭載することができる。
【0378】
また、腕時計型デバイス405に搭載することができる。腕時計型デバイス405は表示部405aおよびベルト部405bを有し、表示部405aまたはベルト部405bに、二次電池を設けることができる。
【0379】
表示部405aには、時刻だけでなく、メールや電話の着信等、様々な情報を表示することができる。
【0380】
また、腕時計型デバイス405は、腕に直接巻きつけるタイプのウェアラブルデバイスであるため、使用者の脈拍、血圧等を測定するセンサを搭載してもよい。使用者の運動量および健康に関するデータを蓄積し、健康維持に役立てることができる。
【0381】
図22Aに示した腕時計型デバイス405について、以下に詳細な説明を行う。
【0382】
図22Bに腕から取り外した腕時計型デバイス405の斜視図を示す。
【0383】
また、側面図を図22Cに示す。図22Cには、内部に二次電池913を内蔵している様子を示している。二次電池913は表示部405aと重なる位置に設けられており、小型、且つ、軽量である。
【0384】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例1】
【0385】
本実施例では、先の実施の形態に述べたDSCによる検査を用いて、正極活物質の作製に用いる物質の検査を行った。
【0386】
図1Aに示す方法を用いて、物質91および物質92の混合物であるSample 1を作製し、検査を行った。物質91としてフッ化リチウム、物質92としてフッ化マグネシウムをそれぞれ用いた。フッ化マグネシウムが有するマグネシウムに対し、フッ化リチウムが有するリチウムのモル比が0.33倍となるようにした。検査方法としてDSCを用いた。
【0387】
次に、図1Cに示す方法を用いて、物質91乃至物質94の検査を行った。物質91としてフッ化リチウム、物質92としてフッ化マグネシウム、物質93として水酸化ニッケル、物質94として水酸化アルミニウムをそれぞれ用いた。物質91、物質92、物質93および物質94の混合物をSample 2とする。Sample 2において、フッ化マグネシウムが有するマグネシウムに対し、フッ化リチウムが有するリチウムのモル比が0.33倍、水酸化ニッケルが有するニッケルが0.5倍、水酸化アルミニウムが有するアルミニウムが0.5倍となるようにした。検査方法としてDSCを用いた。
【0388】
Sample 1およびSample 2のDSCによる温度(Temprature)-熱流(Heat Flow)曲線を図23Aに示す。Sample 1の結果より、730℃近傍において、吸熱反応を示唆するピークが観測され、フッ化リチウムとフッ化マグネシウムの共融反応が生じていると考えられる。一方、Sample 2では730℃近傍には吸熱反応を示唆するピークが顕著には観測されない。よって、物質93または物質94のいずれかが吸熱反応を阻害しやすい可能性がある。
【0389】
また、図23BにはSample 1のDSCの温度(Temprature)-熱流(Heat Flow)曲線の微分波形を、図23Cには、Sample 2のDSCの温度-熱流曲線の微分波形を、それぞれ示す。Sample 1では、温度-熱流曲線でピークが観測された730℃近傍に、極大点と極小点が観測された。一方、Sample 2では、ピークが顕著には観測されない、あるいは極めて弱かった。
【0390】
次に、Sample 1と水酸化ニッケルの混合物をSample 3とし、Sample 1と水酸化アルミニウムの混合物をSample 4とした。それぞれのSampleについてDSCを行った。Sample 3において、ニッケル水酸化物が有するニッケルのモル比が、フッ化マグネシウムが有するマグネシウムのモル比の0.5倍となるようにした。Sample 4において、アルミニウム水酸化物が有するアルミニウムのモル比が、フッ化マグネシウムが有するマグネシウムのモル比の0.5倍となるようにした。Sample 3のDSCの微分波形を図24Aに、Sample 4のDSCの微分波形を図24Bに、それぞれ示す。Sample 3と比較して、Sample 4では、730℃近傍の、吸熱を示唆するピークが小さくなることがわかる。またSample 4では500℃近傍に発熱反応を示唆するピークが観測され、結晶化、あるいはマグネシウム等との反応により化合物が生成される、等の反応が生じている可能性がある。フッ化リチウムとフッ化マグネシウムの吸熱反応の阻害要因は水酸化アルミニウムである可能性が考えられる。
【0391】
正極活物質の作製方法として、図2Aに比べて、図2Bまたは図2Cの方法を用いる場合に、さらに品質の高い正極活物質を得られることが示唆された。
【0392】
次に、物質91および物質92の混合物(Sample 1)にさらに、金属酸化物95としてコバルト酸リチウムを加えて混合し、Sample 5を作製した。図25は、Sample 5のDSCの微分波形を示す。コバルト酸リチウムを加えることにより、DSCで観測される730℃近傍の、吸熱を示唆するピークが100℃程度、プラス側にシフトすることがわかった。
【実施例2】
【0393】
本実施例では、先の実施の形態に述べた作製方法を用いて正極活物質を作製し、作製した正極活物質を用いた正極の特性を評価するため、二次電池の作製を行った。
【0394】
Cell 1、Cell 2およびCell 3の3つの二次電池を作製した。
【0395】
Cell 1に用いる正極活物質は、図2Bに示す方法を用いた正極活物質を作製した。より具体的には図3に示す方法を用いた。物質91としてフッ化リチウム、物質92としてフッ化マグネシウムをそれぞれ用いた。物質91と物質92のモル比は、Sample 1を参照した。混合物904の粉末の重量は30gであった。
【0396】
Cell 2およびCell 3に用いる正極活物質は、図2Aに示す方法を用いた正極活物質を作製した。物質91としてフッ化リチウム、物質92としてフッ化マグネシウム、物質93として水酸化ニッケル、物質94として水酸化アルミニウムをそれぞれ用いた。物質91と物質92のモル比は、Sample 1を参照し、水酸化ニッケルが有するニッケルのモル比が、フッ化マグネシウムが有するマグネシウムのモル比の0.5倍となるようにし、水酸化アルミニウムが有するアルミニウムのモル比が、フッ化マグネシウムが有するマグネシウムのモル比の0.5倍となるようにした。物質91乃至物質94の粉末の重量の和は、Cell 2は30g、Cell 3は2.4gであった。
【0397】
Cell 1、Cell 2およびCell 3として、CR2032タイプ(直径20mm高さ3.2mm)のコイン型の二次電池を作製した。
【0398】
正極には、上記で作製した正極活物質と、アセチレンブラック(AB)と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を、正極活物質:AB:PVDF=95:3:2(重量比)で混合したスラリーを集電体に塗工したものを用いた。
【0399】
対極にはリチウム金属を用いた。
【0400】
電解液が有する電解質には、1mol/Lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を用い、電解液には、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)がEC:DEC=3:7(体積比)、ビニレンカーボネート(VC)が2wt%で混合されたものを用いた。
【0401】
セパレータには厚さ25μmのポリプロピレンを用いた。
【0402】
正極缶及び負極缶には、ステンレス(SUS)で形成されているものを用いた。
【0403】
[サイクル特性]
作製した二次電池を用いて、45℃において、充電をCCCV(0.5C、4.6V、終止電流0.05C)、放電をCC(0.5C、2.5V)で繰り返し充放電を行い、サイクル特性を評価した。
【0404】
それぞれの二次電池のサイクル特性の結果を図26に示す。フッ化リチウムとフッ化マグネシウムの共融反応を阻害しやすいことが示唆された水酸化アルミニウムについて、図3の作製方法、すなわち2回目のアニールを行う混合物の作製の際に水酸化アルミニウムを加えた作製方法により作製した正極活物質を有するCell 1では、1回目のアニールにおいて水酸化アルミニウムを加えた作製方法に比べて、サイクル特性がより優れることが示された。また、1回目のアニールにおいて水酸化アルミニウムを加えた場合にも、アニールを行う際の粉末の重量が少なければ、優れた特性が得られることが示された。
【実施例3】
【0405】
本実施例では、先の実施の形態に述べたXRDによる検査を用いて、正極活物質の作製に用いる物質の検査を行った。
【0406】
先の実施例で作製したSample 2、Sample 3およびSample 4にそれぞれ酸素雰囲気下で850℃の熱処理を加えた後、XRDによる評価を行った。XRDのスペクトルを図27図28図29および図30に示す。図27乃至図30の縦軸にはスペクトルの強度(INTENSITY)を示し、横軸には2θを示す。図27乃至図30のそれぞれのグラフは、横軸に示す2θの範囲が異なる。
【0407】
XRD測定として、Bruker社製D8ADVANCEを用いた。XRD測定条件として、X線の出力を40kV、40mAとし、走査角度を15°から90°の範囲とし、測定間隔を0.01°とし、走査速度を0.5sec/stepとし、サンプルを15rpmで回転させながら測定した。
【0408】
得られたXRDパターンは、DIFFRAC.EVA(Bruker社製XRDデータ解析ソフト)を用いて、バックグラウンド除去とKα2除去を行った。
【0409】
得られたSample 2のXRDの結果に基づき、主なピークのピーク位置(peak position)、半値幅(half width)およびピーク強度(peak intensity)を表1に示す。ここでピーク位置は、ピークの最大値とした。また、表1には示さないが、37.03°の位置に、37程度の強度が観測された。
【0410】
【表1】
【0411】
Sample 2においては、2θが19.08°、31.44°、59.60°等、スピネル型構造のMgAl(2-x)Ni(xは0以上2以下)に対応する可能性があるピークが観測された。またこれらのピークは、40.43°のピークに比べてそれぞれ0.05倍、0.04倍および0.06倍のピーク強度であった。
【0412】
図27乃至図30、および表1の結果より、フッ化マグネシウムのマグネシウムと、水酸化アルミニウムのアルミニウムが反応し、生成物が生じた可能性がある。またこの生成物が生じたことにより、フッ化リチウムとフッ化マグネシウムの共融反応が弱まった可能性がある。
【0413】
次に、実施例2に示すCell 2に用いた正極活物質のXRD測定を行った。XRDのスペクトルを図43A図43B図44Aおよび図44Bに示す。図43A図43B図44Aおよび図44Bの縦軸にはスペクトルの強度(INTENSITY)を示し、横軸には2θを示す。図43A図43B図44Aおよび図44Bのそれぞれのグラフは、横軸に示す2θの範囲が異なる。
【0414】
XRD測定として、Bruker社製D8ADVANCEを用いた。XRD測定条件として、X線の出力を40kV、40mAとし、走査角度を15°から90°の範囲とし、測定間隔を0.01°とし、走査速度を5sec/stepとし、サンプルを15rpmで回転させながら測定した。
【0415】
得られたXRDパターンは、DIFFRAC.EVA(Bruker社製XRDデータ解析ソフト)を用いて、バックグラウンド除去とKα2除去を行った。
【0416】
得られたXRDの結果に基づき、主なピークのピーク位置(peak position)、半値幅(half width)およびピーク強度(peak intensity)を表2に示す。ここでピーク位置は、ピークの最大値とした。
【0417】
【表2】
【0418】
上記Sample 2のXRDで示唆されたスピネル型構造に起因することが示唆されるピークは、明確には観測されなかった。なお、実施の形態1に述べた通り、金属酸化物95に起因するピークが強く、スピネル型構造に起因することが示唆されるピークが観測されづらい場合がある。
【実施例4】
【0419】
本実施例では、図2Bに示す方法、より具体的には図3に示す方法を用いた正極活物質を作製し、その初回充放電特性、高電圧サイクル特性、高温サイクル特性、連続充電特性を評価した。
【0420】
図3に示す方法を用い、コバルト酸リチウムが有するコバルトの原子数を1としたとき、ニッケルのモル濃度が0.005、アルミニウムのモル濃度が0.005、マグネシウムのモル濃度が0.01となるように作製した正極活物質を、Sample 6とした。フッ化マグネシウムとフッ化リチウムの混合比は、LiF:MgF=1:3(モル比)とした。1回目のアニール(図3S34)は900℃で20時間、2回目のアニール(図3S56)は850℃で10時間、いずれも酸素雰囲気(酸素ガス流量10L/分)で行った。
【0421】
コバルト酸リチウムにフッ化マグネシウムとフッ化リチウムを添加し、1回アニールした正極活物質を、Sample 7とした。コバルト酸リチウムが有するコバルトの原子数を1としたとき、マグネシウムのモル濃度が0.005となるようにした。フッ化マグネシウムとフッ化リチウムの混合比は、LiF:MgF=1:3(モル比)とした。アニールは900℃で20時間、酸素雰囲気(アニール前に加熱炉内を酸素ガスでパージ)で行った。
【0422】
他の元素添加とアニールを行わないコバルト酸リチウムを、Sample 8(比較例)とした。
【0423】
Sample 6乃至Sample 8の正極活物質を用いて、コインセルを作製した。
正極活物質と導電助剤とバインダの混合比、電解質、電解液、セパレータ、正極缶および負極缶は実施例2と同様とした。
【0424】
<充電電圧4.60V、4.62V、4.64V、4.66Vにおける初回充放電特性とサイクル特性>
作製したコインセルを用いて、充電電圧を4.60V、4.62V、4.64Vおよび4.66Vとしてサイクル特性を評価した。具体的には25℃および45℃において、充電をCCCV(100mA/g、各種電圧、終止電流10mA/g)、放電をCC(100mA/g、終止電圧2.5V)で繰り返し充放電を行った。
【0425】
図31Aに25℃、充電電圧4.60Vにおけるサイクル特性を示す。図31Bに45℃、充電電圧4.60Vにおけるサイクル特性を示す。図32Aに25℃、充電電圧4.62Vにおけるサイクル特性を示す。図32Bに45℃、充電電圧4.62Vにおけるサイクル特性を示す。図33Aに25℃、充電電圧4.64Vにおけるサイクル特性を示す。図33Bに45℃、充電電圧4.64Vにおけるサイクル特性を示す。図34Aに25℃、充電電圧4.66Vにおけるサイクル特性を示す。図34Bに45℃、充電電圧4.66Vにおけるサイクル特性を示す。
【0426】
表3に、25℃または45℃、各充電電圧における初回充電容量および初回放電容量を示す。活物質重量当たりの容量とし、単位はmAh/gである。
【0427】
【表3】
【0428】
図31乃至図34から明らかなように、他の元素の添加とアニールを行わないSample 8と比較して、Sample 6およびSample 7は非常に良好なサイクル特性を示した。25℃、充電電圧4.6Vにおいては、Sample 6とSample 7の間に大きな差はみられないが、温度および電圧が高くなるとSample 6のサイクル特性の方がより良好となる傾向があった。
【0429】
表3から、Sample 8では初回充放電による不可逆容量が大きいことが明らかとなった。温度および電圧が高くなるにつれ不可逆容量は大きくなる傾向になった。それに対して、Sample 6およびSample 7は不可逆容量の少ない良好な特性を示した。
【0430】
<25℃、45℃、50℃、55℃および60℃におけるサイクル特性>
次に、Sample 6乃至Sample 8の正極活物質を用いて作製したコインセルを用いて、25℃、45℃、50℃、55℃および60℃におけるサイクル特性を評価した。具体的には各温度において、充電をCCCV(100mA/g、4.6V、終止電流10mA/g)、放電をCC(100mA/g、終止電圧2.5V)で繰り返し充放電を行った。
【0431】
図35AにSample 6の各温度のサイクル特性を示す。図35Bに50℃、充電電圧4.60Vにおける初回充放電曲線と50回目の充放電曲線を示す。図36AにSample 7の各温度のサイクル特性を示す。図36Bに50℃、充電電圧4.60Vにおける初回充放電曲線と50回目の充放電曲線を示す。図37AにSample 8の各温度のサイクル特性を示す。図37Bに50℃、充電電圧4.60Vにおける初回充放電曲線と50回目の充放電曲線を示す。
【0432】
図35乃至図37から明らかなように、いずれの温度においても、Sample 8と比較してSamle 6およびSample 7は良好なサイクル特性を示した。特に、ニッケルおよびアルミニウムを有するSample 6は、25℃、45℃および50℃におけるサイクル特性が極めて良好であった。また図35Bの放電曲線に示すように、充電電圧4.60V、50℃においても放電電圧が高く保たれていた。
【0433】
Sample 6は、充電電圧4.6V、45℃では、初回放電容量は220.0mA/g、50サイクル目の放電容量は204.0mA/gであり、放電容量の低下率は8%以下と良好であった。充電電圧4.6V、50℃では、初回放電容量は223.1mA/g、50サイクル目の放電容量は191.9mA/gであり、放電容量の低下率は14%以下と良好であった。ここで低下率は、1サイクル目の放電容量を100%とし、所望のサイクルにおける容量の、1サイクル目の放電容量からの減少分を表した数字である。
【0434】
<連続充電試験>
次に、Sample 6乃至Sample 8の正極活物質を用いて作製したコインセルを用いて連続充電試験を行った。連続充電試験とは、二次電池を一定の電圧で長時間連続充電し、電池の安定性および安全性を評価する試験である。
【0435】
最初に1サイクル充放電してから連続充電を行った。最初の充放電は、充電はCCCV(38mA/g、4.5V、終止電流4mA/g)、放電はCC(38mA/g、終止電圧3.0V)、25℃で行った。連続充電はCCCV(96mA/g、4.60V、4.62V、4.64Vまたは4.66V)、60℃で行った。試験の測定は250時間までとした。
【0436】
図38A乃至図38Cは電圧4.60Vの結果であり、横軸には充電時間(Charging time)、縦軸には電圧(Voltage)または電流(Current)を示す。図38AにSample 6、図38BにSample 7、図38CにSample 8の連続充電試験の結果を示す。
【0437】
図39A乃至図39Cは電圧4.62Vの結果であり、横軸には充電時間(Charging time)、縦軸には電圧(Voltage)または電流(Current)を示す。同様に、図39AにSample 6、図39BにSample 7、図39CにSample 8の連続充電試験の結果を示す。
【0438】
図40A乃至図40Cは電圧4.64Vの結果であり、横軸には充電時間(Charging time)、縦軸には電圧(Voltage)または電流(Current)を示す。同様に、図40AにSample 6、図40BにSample 7、図40CにSample 8の連続充電試験の結果を示す。
【0439】
図41A乃至図41Cは電圧4.66Vの結果であり、横軸には充電時間(Charging time)、縦軸には電圧(Voltage)または電流(Current)を示す。同様に、図41AにSample 6、図41BにSample 7、図41CにSample 8の連続充電試験の結果を示す。
【0440】
図38乃至図41に示すように、比較例であるSample 8は、4.6Vでは比較的安定した連続充電特性を示したのに対して、4.62V以上では200時間以内にショートによるものとみられる電流上昇が観察された。
【0441】
一方、Sample 6は、電圧が高くなるに従い安定した連続充電特性を示し、60℃という高温かつ4.62V以上の高電圧の条件でも、安全性が極めて高いことが明らかとなった。
【0442】
次に図38乃至図41から、二次電池の耐久時間を求めた。耐久時間について図42を用いて説明する。図42の横軸には充電時間(Charging time)、縦軸には電圧(Voltage)または電流(Current)を示す。
【0443】
耐久時間Tは、短絡時間TからCC充電完了時間Tを減じたものとした。短絡時間Tは、CV充電開始後安定して低い電流を保っている期間の近似直線L1と、ショートによるものとみられる電流上昇が起こっている期間の近似直線L2と、の交点Pの時間とした。
【0444】
Sample 6乃至Sample 8の耐久時間を表4に示す。単位は時間である。
【0445】
【表4】
【0446】
表4に示すように、Sample 6はすべての条件で耐久時間は200時間を超えていた。特に充電電圧4.62V、4.64Vおよび4.66Vにおいて耐久時間は250時間を超えており、高温かつ高電圧でも安全性が極めて高いことが示された。
【符号の説明】
【0447】
SW1:スイッチ、SW2:スイッチ、SW3:スイッチ、78i:電流、81:混合物、91:物質、92:物質、93:物質、94:物質、95:金属酸化物、100:正極活物質、210:電極積層体、211a:正極、211b:負極、212a:リード、212b:リード、214:セパレータ、215a:接合部、215b:接合部、217:固定部材、250:二次電池、251:外装体、261:折り曲げ部、262:シール部、263:シール部、271:稜線、272:谷線、273:空間、300:二次電池、301:正極缶、302:負極缶、303:ガスケット、304:正極、305:正極集電体、306:正極活物質層、307:負極、308:負極集電体、309:負極活物質層、310:セパレータ、400:眼鏡型デバイス、400a:フレーム、400b:表示部、401:ヘッドセット型デバイス、401a:マイク部、401b:フレキシブルパイプ、401c:イヤフォン部、402:デバイス、402a:筐体、402b:二次電池、403:デバイス、403a:筐体、403b:二次電池、405:腕時計型デバイス、405a:表示部、405b:ベルト部、406:ベルト型デバイス、406a:ベルト部、406b:ワイヤレス給電受電部、500:二次電池、501:正極集電体、502:正極活物質層、503:正極、504:負極集電体、505:負極活物質層、506:負極、507:セパレータ、508:電解液、509:外装体、510:正極リード電極、511:負極リード電極、600:二次電池、601:正極キャップ、602:電池缶、603:正極端子、604:正極、605:セパレータ、606:負極、607:負極端子、608:絶縁板、609:絶縁板、611:PTC素子、612:安全弁機構、613:導電板、614:導電板、615:モジュール、616:導線、617:温度制御装置、900:回路基板、902:混合物、903:混合物、904:混合物、905:混合物、906:混合物、907:混合物、908:混合物、909:混合物、910:ラベル、911:端子、912:回路、913:二次電池、914:アンテナ、915:アンテナ、916:層、917:層、918:アンテナ、920:表示装置、921:センサ、922:端子、930:筐体、930a:筐体、930b:筐体、931:負極、932:正極、933:セパレータ、950:捲回体、951:端子、952:端子、980:二次電池、981:フィルム、982:フィルム、993:捲回体、994:負極、995:正極、996:セパレータ、997:リード電極、998:リード電極、7100:携帯表示装置、7101:筐体、7102:表示部、7103:操作ボタン、7104:二次電池、7200:携帯情報端末、7201:筐体、7202:表示部、7203:バンド、7204:バックル、7205:操作ボタン、7206:入出力端子、7207:アイコン、7300:表示装置、7304:表示部、7400:携帯電話機、7401:筐体、7402:表示部、7403:操作ボタン、7404:外部接続ポート、7405:スピーカ、7406:マイク、7407:二次電池、7500:電子タバコ、7501:アトマイザ、7502:カートリッジ、7504:二次電池、8000:表示装置、8001:筐体、8002:表示部、8003:スピーカ部、8004:二次電池、8021:充電装置、8022:ケーブル、8024:二次電池、8100:照明装置、8101:筐体、8102:光源、8103:二次電池、8104:天井、8105:側壁、8106:床、8107:窓、8200:室内機、8201:筐体、8202:送風口、8203:二次電池、8204:室外機、8300:電気冷凍冷蔵庫、8301:筐体、8302:冷蔵室用扉、8303:冷凍室用扉、8304:二次電池、8400:自動車、8401:ヘッドライト、8406:電気モーター、8500:自動車、8600:スクータ、8601:サイドミラー、8602:二次電池、8603:方向指示灯、8604:座席下収納、9600:タブレット型端末、9625:スイッチ、9626:スイッチ、9627:スイッチ、9628:操作スイッチ、9629:留め具、9630:筐体、9630a:筐体、9630b:筐体、9631:表示部、9631a:表示部、9631b:表示部、9633:太陽電池、9634:充放電制御回路、9635:蓄電体、9636:DCDCコンバータ、9637:コンバータ、9640:可動部
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図16A
図16B1
図16B2
図16C
図16D
図17A
図17B
図18A
図18B
図18C
図18D
図18E
図18F
図18G
図18H
図19A
図19B
図19C
図20
図21A
図21B
図21C
図22A
図22B
図22C
図23A
図23B
図23C
図24A
図24B
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31A
図31B
図32A
図32B
図33A
図33B
図34A
図34B
図35A
図35B
図36A
図36B
図37A
図37B
図38A
図38B
図38C
図39A
図39B
図39C
図40A
図40B
図40C
図41A
図41B
図41C
図42
図43A
図43B
図44A
図44B