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  • 特許-リノール酸を含有する組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】リノール酸を含有する組成物
(51)【国際特許分類】
   A23K 20/158 20160101AFI20240410BHJP
   A23K 50/40 20160101ALI20240410BHJP
   A23K 10/30 20160101ALI20240410BHJP
   A23K 20/20 20160101ALI20240410BHJP
【FI】
A23K20/158
A23K50/40
A23K10/30
A23K20/20
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2021512428
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 US2019050398
(87)【国際公開番号】W WO2020055856
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】18306184.5
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390037914
【氏名又は名称】マース インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】MARS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ワトソン,アドリアン
(72)【発明者】
【氏名】アラウェイ,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】トーマス,ガエル
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-507401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/00 - 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
健康なペット動物の皮膚の質を維持又は改善する方法であって、
前記方法は、前記健康なペット動物に、7g/Mcal~9g/Mcalの量のリノール酸を含む食餌又は食品(但し、ビオチンおよび他のビタミンBを含む場合を除く)を給餌するステップを含む、方法。
【請求項2】
リノール酸は8g/Mcalの量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記食餌又は食品は、ベニバナ油、ヒマワリ油、ダイズ油、ゴマ油、キャノーラ油、肉、及びこれらのうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、リノール酸の1つ以上の源を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記食餌又は食品は、40mg/Mcal~60mg/Mcalの量の亜鉛を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記食餌又は食品は、50mg/Mcalの量の亜鉛を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記食餌又は食品は:硫化亜鉛;酸化亜鉛;キレート化亜鉛、オロト酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、酢酸亜鉛といった有機亜鉛錯体;及びこれらのうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、亜鉛の1つ以上の源を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
経上皮水分喪失(TEWL)が、前記健康なペット動物において減少する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記健康なペット動物は健康なイヌである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
皮膚の障害または疾患に罹患しているペット動物のTEWLを減少させる方法であって、前記方法は、前記ペット動物に、7g/Mcal~9g/Mcalの量のリノール酸を含む食餌又は食品(但し、ビオチンおよび他のビタミンBを含む場合を除く)を給餌するステップを含む、方法。
【請求項10】
前記皮膚の障害又は疾患は、皮膚炎、乾癬、アトピー性皮膚炎、皮膚型の食物アレルギー、掻痒性疾患、細菌性毛嚢炎、及びせつ腫症からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
リノール酸は8g/Mcalの量で存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記食餌又は食品は、ベニバナ油、ヒマワリ油、ダイズ油、ゴマ油、キャノーラ油、肉、及びこれらのうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、リノール酸の1つ以上の源を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記食餌又は食品は、40mg/Mcal~60mg/Mcalの量の亜鉛を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記食餌又は食品は、50mg/Mcalの量の亜鉛を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記食餌又は食品は:硫化亜鉛;酸化亜鉛;キレート化亜鉛、オロト酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、酢酸亜鉛といった有機亜鉛錯体;及びこれらのうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、亜鉛の1つ以上の源を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記ペット動物はイヌである、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
健康なペット動物の皮膚の質を維持又は改善する方法において使用するための、7g/Mcal~9g/Mcalの量のリノール酸を含む食餌又は食品(但し、ビオチンおよび他のビタミンBを含む場合を除く)。
【請求項18】
リノール酸は8g/Mcalの量で存在する、請求項17に記載の食餌又は食品。
【請求項19】
前記食餌又は食品は、ベニバナ油、ヒマワリ油、ダイズ油、ゴマ油、キャノーラ油、肉、及びこれらのうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、リノール酸の1つ以上の源を含む、請求項17又は18に記載の食餌又は食品。
【請求項20】
前記食餌又は食品は、40mg/Mcal~60mg/Mcalの量の亜鉛を更に含む、請求項17~19のいずれか1項に記載の食餌又は食品。
【請求項21】
前記食餌又は食品は、50mg/Mcalの量の亜鉛を含む、請求項20に記載の食餌又は食品。
【請求項22】
前記食餌又は食品は:硫化亜鉛;酸化亜鉛;キレート化亜鉛、オロト酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、酢酸亜鉛といった有機亜鉛錯体;及びこれらのうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、亜鉛の1つ以上の源を含む、請求項17~21のいずれか1項に記載の食餌又は食品。
【請求項23】
TEWLが、前記ペット動物において減少する、請求項17~22のいずれか1項に記載の食餌又は食品。
【請求項24】
前記健康なペット動物は健康なイヌである、請求項17~23のいずれか1項に記載の食餌又は食品。
【請求項25】
皮膚の障害又は疾患に罹患しているペット動物のTEWLを減少させる方法において使用するための、7g/Mcal~9g/Mcalの量のリノール酸を含む食餌又は食品(但し、ビオチンおよび他のビタミンBを含む場合を除く)。
【請求項26】
前記皮膚の障害又は疾患は、皮膚炎、乾癬、アトピー性皮膚炎、皮膚型の食物アレルギー、掻痒性疾患、細菌性毛嚢炎、及びせつ腫症からなる群から選択される、請求項25に記載の食餌又は食品。
【請求項27】
リノール酸は8g/Mcalの量で存在する、請求項25又は26に記載の食餌又は食品。
【請求項28】
前記食餌又は食品は、ベニバナ油、ヒマワリ油、ダイズ油、ゴマ油、キャノーラ油、肉、及びこれらのうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、リノール酸の1つ以上の源を含む、請求項25~27のいずれか1項に記載の食餌又は食品。
【請求項29】
前記食餌又は食品は、40mg/Mcal~60mg/Mcalの量の亜鉛を更に含む、請求項25~28のいずれか1項に記載の食餌又は食品。
【請求項30】
前記食餌又は食品は、50mg/Mcalの量の亜鉛を含む、請求項29に記載の食餌又は食品。
【請求項31】
前記食餌又は食品は:硫化亜鉛;酸化亜鉛;キレート化亜鉛、オロト酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、酢酸亜鉛といった有機亜鉛錯体;及びこれらのうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、亜鉛の1つ以上の源を含む、請求項25~30のいずれか1項に記載の食餌又は食品。
【請求項32】
前記ペット動物はイヌである、請求項25~31のいずれか1項に記載の食餌又は食品。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2018年9月10日出願の欧州特許出願第18306184.5号に対する優先権の利益を主張するものであり、上記特許出願の内容はその全体が参照により本出願に援用される。
【技術分野】
【0002】
本開示は、健康なペット動物の皮膚の質を改善するため、又は皮膚若しくは皮膚の障害を引き起こす疾患に罹患しているペット動物を治療するための、リノール酸を含む組成物の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
皮膚に関連する問題は、イヌ及びネコが最も一般的に経験する問題の1つであり、これは大きな不安を引き起こし、解決にかなりの時間及び労力が費やされる。そのため、ペットの皮膚を最適な状態に保つことが、ペットオーナーが到達すべき目標とみなされ得る。ペットの皮膚及び被毛の状態は重要な視覚的インパクトを提供するため、既に健康な皮膚及び被毛状態を有する動物に目に見える向上を施すことに、かなりの関心が寄せられている。イヌの皮膚を含むペットの皮膚は人間に比べて薄いため、皮膚の不調を起こしやすい。従って皮膚の状態の向上はペットにとって良いことである。というのは、皮膚は脱水及び環境温度変化に対する保護に役立つためである。
【0004】
皮膚及び被毛の健康、従ってペットの被毛の視覚的外観は、栄養不足の時期の間に損なわれる場合がある。
【0005】
当該技術分野では、動物ペットの健康な被毛及び皮膚の維持に、食餌要因が主要な役割を果たしていることが知られている。ペットフード中の栄養素のレベルは、健康な動物のための完全でバランスの取れた食物の提供に関して、十分に文書化されている。例えば食餌中の亜鉛は、被毛及び皮膚の健康な成長に関与する重要な元素であると考えられている。亜鉛の存在は、急速に分裂する表皮において特に重要である(非特許文献1)。リノール酸もまた、皮膚及び被毛の状態にとって重要である。特にイヌはこの脂肪酸を合成できないため、食餌ソースが重要となる。脂肪酸は、細胞膜の流動性、及び皮膚の水透過性水分バリアの維持にとって重要である(非特許文献2)。ビタミンBを含む他の様々な栄養素も、皮膚の状態に対してある役割を果たす(非特許文献3)。
【0006】
皮膚及び被毛の状態の改善は、ある量のリノール酸と、従来のペットフードに見られる量を超える量の亜鉛とを含む食餌を提供することによって得られることが示されている。特に特許文献1は、ペットの皮膚の状態を改善するための食品を開示しており、上記食品は亜鉛とリノール酸との組み合わせを含む。この先行技術文献は、対照と、(i)1.8g/400kcal又は6g/kcalのリノール酸及び(ii)12.5mg/400kcal又は40mg/400kcalの亜鉛を含む試験用食餌とをそれぞれ与えたイヌの、皮膚及び被毛の状態の試験を開示している。対照食餌に比べて、試験用食餌では、被毛の光沢の大幅な向上及び皮膚落屑の改善が観察された。試験用食餌を用いると、イヌの皮膚の上皮水分喪失の低減も判定された。上皮水分喪失の低減は、亜鉛のみを補充した、従って補充分のリノール酸を含まない食餌の場合にも観察された。皮膚及び被毛の状態の特性の優れた強化は、比較的少量の亜鉛を含む食餌、即ち6g/kcalのリノール酸及び25mg/400kcalの亜鉛を含む食餌の場合にも得られた。
【0007】
当該技術分野において、健康なペット動物の皮膚の状態の維持又は改善を可能にする、イヌの食餌を含むペットの食餌に対して、需要が存在し続けている。
【0008】
上述のように、大半の家庭のペットにおいて、健康な皮膚及び被毛は、全身の健康状態が良好な動物を示す。
【0009】
しかしながら、ペット動物は場合によっては皮膚障害に罹患する場合がある。従って、特にペット動物が皮膚の障害に罹患しているときに、ペット動物の皮膚及び体毛の状態を改善することも、当該技術分野における継続的な目標である。
【0010】
例として、イヌの皮膚の疾患は、ペットに獣医の診療を受けさせる1つの最も一般的な理由である。このような疾患に罹患する動物の割合は、このような診療の作業負荷の15%を占めることが示唆されている。この統計に寄与する主要な状態は、ノミアレルギー性皮膚炎、アトピー性(アレルギー性)皮膚炎、膿皮症(細菌感染症)、脂漏症、並びに皮癬(毛包虫性及び疥癬虫性)である。これらの皮膚の疾患の大半では、皮膚のバリア特性が大幅に損なわれ、特に経上皮水分喪失の変化につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第6,331,567号明細書
【非特許文献】
【0012】
【文献】Watson, 1998, J Nutr, Vol. 128(12 Suppl): 27835‐27895
【文献】Campbell, 1990, Vet Clin North Am Anim Pract., Vol. 29(6): 1373‐1383
【文献】Watson et al., 2006, Exp Dermatol, Vol. 15(1): 74‐81
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、別個の態様において、当該技術分野では、皮膚の障害又は疾患に罹患したペット動物の治療を可能にするペット用組成物に対しても、需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示は、ペットの皮膚の質を維持又は改善するための、約7g/Mcal~約9g/Mcalの量のリノール酸を含む食餌又は食品の使用に関する。いくつかの実施形態では、上記食餌又は食品は、7g/Mcal~9g/Mcalの量のリノール酸を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、リノール酸は、約8g/Mcalの量、例えば8g/Mcalの量で存在する。
【0016】
いくつかの実施形態では、上記食餌又は食品は、例えばベニバナ油、ヒマワリ油、ダイズ油、ゴマ油、キャノーラ油、肉、及びこれらのうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されるリノール酸の1つ以上の源を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、上記食餌又は食品は更に、約40mg/Mcal~約60mg/Mcal、例えば40mg/Mcal~60mg/Mcalの量の亜鉛を含む。特定の実施形態では、上記食餌又は食品は更に、約50mg/Mcalの量、例えば50mg/Mcalの量の亜鉛を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、上記食餌又は食品は、例えば:硫化亜鉛;酸化亜鉛;キレート化亜鉛、オロト酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、酢酸亜鉛といった有機亜鉛錯体;及びこれらのうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される亜鉛の1つ以上の源を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、上記ペットはイヌである。
【0020】
本開示はまた、ペット動物、特にイヌの皮膚の質を維持又は改善するための方法に関し、上記方法は、本開示に記載の食餌又は食品を上記ペット動物に給餌するステップを含む。
【0021】
本開示はまた、ペット動物の皮膚の質を維持又は改善するための、約7g/Mcal~約9g/Mcalの量のリノール酸を含む食餌又は食品に関する。いくつかの実施形態では、上記食餌又は食品は、7g/Mcal~9g/Mcalの量のリノール酸を含む。いくつかの実施形態では、上記食餌又は食品は、約8g/Mcalの量、例えば8g/Mcalの量のリノール酸を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、上記食餌又は食品は更に、約40mg/Mcal~約60mg/Mcal、例えば40mg/Mcal~60mg/Mcalの量の亜鉛を含む。特定の実施形態では、上記食餌又は食品は更に、約50mg/Mcalの量、例えば50mg/Mcalの量の亜鉛を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、上記食餌又は食品は、イヌ用の食餌又は食品である。
【0024】
本開示はまた、皮膚の障害又は疾患に罹患しているペット動物を治療する方法で使用するための約7g/Mcal~約9g/Mcalの量のリノール酸を含む食餌又は食品に関する。いくつかの実施形態では、上記食餌又は食品は、皮膚の障害又は疾患に罹患しているペット動物で使用するための7g/Mcal~9g/Mcalの量のリノール酸を含む。
本開示はまた、皮膚の障害又は疾患に罹患しているイヌを治療するための医療用食餌又は食品を調製するための、約7g/Mcal~約9g/Mcal、例えば7g/Mcal~9g/Mcalの量のリノール酸の使用に関する。
【0025】
本開示はまた、健康なペット動物の皮膚の質を維持又は改善する方法に関し、上記方法は、上記健康なペット動物に、約7g/Mcal~約9g/Mcal、例えば7g/Mcal~9g/Mcalの量のリノール酸を含む食餌又は食品を給餌するステップを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、リノール酸は、約8g/Mcalの量、例えば8g/Mcalの量で存在する。いくつかの実施形態では、上記食餌又は食品は、ベニバナ油、ヒマワリ油、ダイズ油、ゴマ油、キャノーラ油、肉、及びこれらのうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されるリノール酸の1つ以上の源を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、上記食餌又は食品は更に、約40mg/Mcal~約60mg/Mcal、例えば40mg/Mcal~60mg/Mcalの量の亜鉛を含む。いくつかの実施形態では、上記食餌又は食品は更に、約50mg/Mcalの量、例えば50mg/Mcalの量の亜鉛を含む。いくつかの実施形態では、上記食餌又は食品は:硫化亜鉛;酸化亜鉛;キレート化亜鉛、オロト酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、酢酸亜鉛といった有機亜鉛錯体;及びこれらのうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される亜鉛の1つ以上の源を含む。
【0028】
特定の実施形態では、経上皮水分喪失(trans‐epidermal water loss:TEWL)が、上記健康なペット動物において減少する。特定の実施形態では、上記健康なペット動物は健康なイヌである。
【0029】
本開示は更に、治療を必要とするペット動物の皮膚の障害又は疾患を治療する方法を説明しており、上記方法は、上記ペット動物に、約7g/Mcal~約9g/Mcal、例えば7g/Mcal~9g/Mcalの量のリノール酸を含む食餌又は食品を給餌するステップを含む。いくつかの実施形態では、上記皮膚の障害又は疾患は、皮膚炎、乾癬、アトピー性皮膚炎、皮膚型の食物アレルギー、掻痒性疾患、細菌性毛嚢炎、及びせつ腫症からなる群から選択される。
【0030】
いくつかの実施形態では、リノール酸は約8g/Mcalの量、例えば8g/Mcalの量で存在する。いくつかの実施形態では、上記食餌又は食品は、ベニバナ油、ヒマワリ油、ダイズ油、ゴマ油、キャノーラ油、肉、及びこれらのうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されるリノール酸の1つ以上の源を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、上記食餌又は食品は更に、約40mg/Mcal~約60mg/Mcal、例えば40mg/Mcal~60mg/Mcalの量の亜鉛を含む。特定の実施形態では、上記食餌又は食品は更に、約50mg/Mcalの量、例えば50mg/Mcalの量の亜鉛を含む。いくつかの実施形態では、上記食餌又は食品は:硫化亜鉛;酸化亜鉛;キレート化亜鉛、オロト酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、酢酸亜鉛といった有機亜鉛錯体;及びこれらのうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される亜鉛の1つ以上の源を含む。
【0032】
特定の実施形態では、TEWLが上記ペット動物において減少する。特定の実施形態では、上記ペット動物はイヌである。
【0033】
以上は、以下の「発明を実施するための形態」をよりよく理解できるように、本出願の特徴及び技術的利点を概説したものである。本出願の更なる特徴及び利点は以下で説明され、これらは本出願の特許請求の範囲の主題を形成する。当業者には、本出願の目的を実行するために構造を修正する又は他の構造を設計するための基礎として、本開示の概念及び具体的実施形態を容易に利用できることを理解されたい。また当業者には、このような同等の構成が、添付の特許請求の範囲に記載されている本出願の精神及び範囲から逸脱しないことを理解されたい。動作の機構及び方法の両方に関する、本出願の特徴と考えられる新規の特徴は、更なる目的及び利点と共に、以下の説明からよりよく理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】異なるタイプの食物を給餌されたイヌの経上皮水分喪失(TEWL)の測定結果。縦軸:g/hr/mを単位として表されたTEWL。横軸:(A)食餌Aを給餌されたイヌ;(B)食餌Bを給餌されたイヌ;(C)食餌Cを給餌されたイヌ;(D)食餌Dを給餌されたイヌ。各パネルA、B、C、及びDに関する、週を単位として表された、イヌへの指定された食餌の給餌を開始した後の時点。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明者らは、健康なペット動物、特に健康なイヌの皮膚の健康状態の最適な改善を、健康なペット動物に、特定の範囲の量のリノール酸を含む食餌又は食品を提供することによって、得ることができることを示した。より正確には、本発明者らは、健康なペット動物の皮膚の質の改善、即ち経上皮水分喪失(TEWL)の減少が、上記健康なペット動物、特に健康なイヌに、特定の範囲の量のリノール酸を提供することによって得られることを発見した。
【0036】
ちなみに、皮膚の質の改善は、特定の状況において、体毛への有益な効果、例えば体毛の光沢、滑らかさ、及び柔らかさにつながる可能性がある。
【0037】
当該技術分野で広く知られているように、経上皮水分喪失(TEWL)は、上皮層を通って身体の内側から外側へと移動する水の体積として定義される(例えばdu Plessis J, Stefaniak A, Eloff F, John S, Agner T, Chou TC, Nixon R, Steiner M, Franken A, Kudla I, Holness L. International guidelines for the in vivo assessment of skin properties in non‐clinical settings: Part 2. Transepidermal water loss and skin hydration. Skin Res Technol. 2013 Aug;19(3):265‐78を参照)。
【0038】
本開示は、7g/Mcal~9g/Mcalの量のリノール酸を含む食餌又は食品、特に健康なペット動物用の食餌又は食品に関する。本開示はまた、特に健康なペット動物の皮膚の質を維持又は改善するための、健康なペット動物の皮膚の質を維持又は改善するために7g/Mcal~9g/Mcalの量のリノール酸を含む食餌又は食品の使用に関する。
【0039】
本明細書中で使用される場合、用語「食餌(diet)」又は「食品(foodstuff)」は、成長、修復、及び生命に必要なプロセスを維持するため、並びにエネルギを供給するために、生物の体内で使用される、タンパク質、炭水化物、及び/又は脂質を含有する材料を指す。食物は、補助物質又は添加物、例えばミネラル、ビタミン、及び調味料を含有してもよい(Merriam‐Webster’s Collegiate Dictionary, 10th Edition, 1993を参照)。ある好ましい実施形態では、本開示による食餌又は食品は、完全でバランスの取れた栄養要件をペット動物に提供する、栄養面で完全な食餌又は食品からなる。よって本明細書に記載の食餌又は食品は、完全ペット動物用食物、例えば完全イヌ用食物であり、これは、ペット動物、例えばイヌに唯一の食糧として給餌でき、(水を除く)追加の食物なしで生命を維持できる、栄養的に適切な飼料である。
【0040】
食餌又は食品は、担体、希釈剤、又は賦形剤を含有してよい。使用目的に応じて、担体、希釈剤、又は賦形剤は、動物に対する使用、特にイヌ及びネコ等のペット動物に対する使用に好適となるように選択してよい。
【0041】
本明細書中で使用される場合、「ペット動物(pet animal)」はペット哺乳類からなる。ペット哺乳類は、イヌ、ネコ、ウサギ、ハムスター、モルモット、ラット、及びマウスを包含する。本明細書における好ましいペット動物はイヌ及びネコである。
【0042】
本明細書中で使用される場合、「皮膚の質を維持する(sustaining skin quality)」は、皮膚の質を経時的に略安定したレベルに保つこと、例えば経上皮水分喪失レベルを経時的に略安定したレベルに保つことを意味する。
【0043】
本明細書中で使用される場合、「皮膚の質を改善する(improving skin quality)」は、皮膚の質の測定可能な改善を達成すること、例えば経上皮水分喪失の測定可能な減少を達成することを意味する。用語「皮膚の質(skin quality)」は、皮膚の水分補給、皮膚のきめ、皮膚の弾力性、皮膚の完全性、皮膚のバリア等の皮膚の特性を指すことができる。当業者は、皮膚の質の改善を測定する公知の方法(例えば実施例2記載の方法)を選択する。例として、皮膚の状態又は皮膚の質の改善は、本明細書中の実施例において示されているように、経上皮水分喪失(TEWL)の減少を測定することによって評価できる。
【0044】
試験用食餌又は食品の皮膚の質の改善を評価するために、複数の健康な動物コホートに、別個の食餌又は食品を給餌し(ここで各食餌又は食品は所与の量のリノール酸を含む)、続いて皮膚の質(例えばTEWL)を:(i)所与の食品の給餌前の開始時点において;及び(ii)上記所与の食品の給餌期間中の連続した複数の時間間隔において、測定した。実験結果は、約7g/Mcal~約9g/Mcal、例えば7g/Mcal~9g/Mcalの量のリノール酸を含む食品を用いると、皮膚の質の有意な改善(例えばTEWLの有意な減少)が得られることを示している。更に、試験された個々の食品を互いに比較することによって、皮膚の質の優位な改善が測定された最も有効な食品は、約7g/Mcal~約9g/Mcal、例えば7g/Mcal~9g/Mcalの量のリノール酸を含む食品であることが分かった。
【0045】
本明細書中で使用される場合、食餌又は食品に含まれる所与の物質に関する表現「x g/Mcal」は、該物質が、該食餌又は食品が含有する1Mcalにつき、xグラムの量で含まれていることを意味する。
【0046】
本発明者らの結果は、10g/Mcal以上のリノール酸を含む食餌又は食品が、皮膚の質の測定可能な改善を全く提供せず、特に経上皮水分喪失(TEWL)の有意な減少を全く提供しないことも示している。これらの後者の発見は、特許文献1で開示されているような従来技術が、少なくとも4g/400kcal(即ち少なくとも10g/Mcal)のリノール酸、例えば7g/400kcal(即ち17.5g/Mcal)のリノール酸を含む食餌又は食品によって皮膚の状態が改善されたことを教示しているため、なおさら驚くべきことである。
【0047】
またここでは、6g/Mcal以下のリノール酸を含む食餌又は食品が、皮膚の質の有意な改善を全く提供せず、特に経上皮水分喪失(TEWL)の有意な減少を全く提供しないことも分かった。
【0048】
いくつかの実施形態では、食餌又は食品は約8g/Mcalのリノール酸を含む。いくつかの実施形態では、食餌又は食品は8g/Mcalのリノール酸を含む。
【0049】
本明細書に記載の食餌又は食品では、リノール酸は、該食餌又は食品に含まれる複数の物質中に様々な量で存在してよい。しかしながら好ましい実施形態では、食餌又は食品は、その中にリノール酸がかなり大量に存在する1つ以上の物質を含む。従っていくつかの実施形態では、本明細書に記載の食餌又は食品は、リノール酸の源である、即ちリノール酸含有物質である、1つ以上の物質を含む。
【0050】
好ましいリノール酸源、即ちリノール酸含有物質は、植物油であるが、動物油脂も使用してよい。好ましいリノール酸源、即ちリノール酸含有物質としては、ベニバナ油、ヒマワリ油、ダイズ油、ゴマ油、キャノーラ油、他の植物若しくは動物の油脂、肉、又はこれらのうちの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0051】
最も好ましくは、本明細書に記載の食餌又は食品に含まれるリノール酸源、即ちリノール酸含有物質は、ベニバナ油、ヒマワリ油、ダイズ油、及びこれらのうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される。
【0052】
いくつかの好ましい実施形態では、食餌又は食品は更に亜鉛を含む。
【0053】
本明細書に記載の食餌又は食品では、亜鉛は、該食餌又は食品に含まれる複数の物質中に様々な量で存在してよい。しかしながら好ましい実施形態では、食餌又は食品は更に、その中に亜鉛が例えば亜鉛塩又は亜鉛錯体の形態で大量に存在する1つ以上の物質を含む。
【0054】
実施例に示されているように、本明細書で開示される食餌又は食品は、指定された量のリノール酸と、更にある量の亜鉛とを含む。亜鉛は、約40mg/Mcal~約60mg/Mcal、例えば40mg/Mcal~60mg/Mcalの量で存在できる。いくつかの実施形態では、亜鉛は約50mg/Mcalの量、例えば50mg/Mcalの量で存在する。指定された量のリノール酸と、更にある量の亜鉛とを、例えば本明細書で開示される量で含む、本明細書で開示される食餌又は食品は、皮膚の質の測定可能な改善、例えばTEWLの有意な減少を提供できる。
【0055】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される食餌又は食品は、リノール酸及び亜鉛の両方を、従来のペット動物用の食餌又は食品、特にイヌ又はネコ用の食餌又は食品、特にイヌ用の食餌又は食品に含まれる量より多い量で含む。よっていくつかの実施形態では、本明細書に記載の食餌又は食品は:(i)約7g/Mcal~約9g/Mcalの量のリノール酸;及び(ii)約50mg/Mcalの量の亜鉛を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の食餌又は食品は:(i)7g/Mcal~9g/Mcalの量のリノール酸;及び(ii)約50mg/Mcalの量の亜鉛を含む。
【0056】
本明細書中で使用される場合、「約50mg/Mcal」という亜鉛の量は、45mg/Mcal~55mg/Mcalの亜鉛の量を包含し、これは48mg/Mcal~52mg/Mcalを含む。いくつかの実施形態では、亜鉛は50mg/Mcalの量で存在する。
【0057】
いくつかの実施形態では、食餌又は食品は:(i)約7g/Mcal~約9g/Mcalの量のリノール酸;及び(ii)40mg/Mcal~60mg/Mcal、例えば45mg/Mcal~55mg/Mcal、例えば50mg/Mcalの量の亜鉛を含む。いくつかの実施形態では、食餌又は食品は:(i)7g/Mcal~9g/Mcalの量のリノール酸;及び(ii)40mg/Mcal~60mg/Mcal、例えば45mg/Mcal~55mg/Mcal、例えば50mg/Mcalの量の亜鉛を含む。
【0058】
いくつかの好ましい実施形態では、亜鉛源、即ち亜鉛含有物質は:硫化亜鉛;酸化亜鉛;キレート化亜鉛、オロト酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、酢酸亜鉛等の有機亜鉛錯体;及びこれらのうちの2つ以上の組み合わせを包含する。いくつかの好ましい実施形態では、亜鉛源、即ち亜鉛含有物質は、硫化亜鉛、酸化亜鉛、有機亜鉛錯体、及びこれらのうちの2つ以上の組み合わせを含む群から選択される
本開示によると、リノール酸及び亜鉛は、これらの物質が本明細書に記載の食餌又は食品中で組み合わされる場合、いずれの濃度で、即ち:(i)約7g/Mcal~約9g/Mcal、例えば7g/Mcal~9g/Mcal、又は8g/Mcalの、リノール酸のいずれの濃度と;(ii)約50mg/Mcalの亜鉛の濃度、例えば約40mg/Mcal~約58mg/Mcalの亜鉛のいずれの濃度、例えば約45mg/Mcal~約55mg/Mcalの亜鉛のいずれの濃度、例えば約48mg/Mcal~約52mg/Mcalの亜鉛のいずれの濃度、例えば40mg/Mcal~58mg/Mcalの亜鉛のいずれの濃度、例えば45mg/Mcal~55mg/Mcalの亜鉛のいずれの濃度、例えば48mg/Mcal~52mg/Mcalの亜鉛のいずれの濃度とで使用できる。このような濃度は、約8g/Mcalのリノール酸及び約50mg/Mcalの亜鉛を包含する。またこのような濃度は、8g/Mcalのリノール酸及び50mg/Mcalの亜鉛を包含する。
【0059】
亜鉛及びリノール酸は食物中に偏在しているため、通常、上記食餌又は食品の成分中に存在するそれぞれの濃度を決定してから、それぞれの合計濃度を本開示による必要なレベルとするために十分な量を追加することが必要となる。例として、必要量のリノール酸又はリノール酸含有物質を、既にリノール酸を含むものの上記必要量未満の量でしか含まない、従来のペット用食餌又は食品に添加してよい。更に例として、必要量の1つ以上の亜鉛含有物質を、既に亜鉛を含むものの上記必要量未満の量でしか含まない、従来のペット用食餌又は食品に添加してよい。
【0060】
食物組成物中のリノール酸の含有量を測定するために、当業者は公知の技法のうちのいずれを参照してよい。一例として、ドライタイプ又はウェットタイプの食餌に関して、気相クロマトグラフィによる、規格NF EN ISO 5508/5509に基づく方法を使用できる。
【0061】
食物組成物中の亜鉛の含有量を測定するために、当業者は公知の技法のうちのいずれを参照してよい。一例として、原子吸光分析による、又は(ウェットタイプの食餌に関して)ICPによる、規格NF EN ISO 6869に基づく方法を使用できる。
【0062】
本開示中で既に明記したように、本明細書に記載の食餌又は食品は、最も好ましくは、(例えばNational Research Council, 1985, Nutritional Requirements for Dogs, National Academy Press, Washington D.C.、又はAssociation of American Feed Control Officials, Official Publication 1996(これらは参照により本出願に援用される)に記載されているような)完全でバランスの取れた食物からなる。即ち、好ましくは、本明細書中で指定されている亜鉛及びリノール酸の濃度レベルを、高品質の市販の食物と併用する。本明細書中で使用される場合、「高品質の市販の食物(high‐quality commercial food)」は、例えば上述のNational Research Councilのイヌに関する勧告に記載されているように、80%以上のタンパク質の消化率を生み出すように製造された食餌を指す。同様の高い栄養基準は、他の動物及びヒトに対して使用される。
【0063】
本明細書に記載の食餌又は食品は、ウェットタイプ又はドライタイプの組成物(食物)である、非ヒト動物用の食餌又は食品からなる。ウェットタイプの食物は通常、缶入りの状態で販売される、水分含有率が70%~90%の食物を指す。ドライタイプの食物は通常、同様の組成であるものの水分が5%~15%であり、従って小さなビスケット様のキブルとして提供される、食物を指す。
【0064】
好ましい実施形態では、本明細書に記載の食餌又は食品は、イヌ用の食餌又は食品からなる。
【0065】
上記食餌又は食品は、例えばWaltham Book of Dog and Cat Nutrition, Ed. ATB Edney, Chapter by A. Rainbird, “A Balanced Diet” in pages 57 to 74, Pergamon Press Oxford(その開示は参照により本出願に本出願に援用される)に記載されているもののような、当該技術分野で公知のいずれの方法に従って作製できる。食餌/食品に添加するべき亜鉛及びリノール酸の濃度は、該食餌/食品のエネルギ含有量、及び動物が消費できるいずれの更なる栄養素に基づいて計算される。
【0066】
本記載は、本明細書中で特定されている食餌又は食品の調製方法を含む。本明細書に記載の食品を製造するためのプロセスは、当該技術分野で公知のいずれの方法に従って行うことができる。
【0067】
上記食餌又は食品は、成分を1つに混合し、混練して、調理可能な均質な生地又は肉エマルジョンを作製することによって製造できる。これは液体にも当てはまり、液体の場合、パッケージ内において、調理ステップ前に成分が混合されて均質化されている。ドライタイプのペット用食物の実施形態を生成するプロセスは通常、ベーキング及び/又は押出成形によって実施される。生地は典型的には、加圧された蒸気又は水を用いて成分を調理する、エキスパンダー及び/又は押出成形機と呼ばれる機械に供給される。押出成形機内にある間、生地は極度の高圧及び高温下にある。次に(特定のサイズ及び形状の孔を有する)ダイを通るように生地を押し込み、続いてナイフを用いて切り取る。膨化した生地片を、ドライヤーに通し、食物の安定性を消費時まで保証する所定の目標まで水分を落とすことによって、キブルにする。次にキブルに脂質、油、ミネラル、ビタミン、天然抽出物カクテル、パラタントを噴霧でき、また任意にパッケージ内に密封できる。
【0068】
組成物は、白色粉末又は固体形態を含む、粉末又は軟粒として提供してよい。粉末は、動物の主要な食物への添加に有用である。他の形態としては、固体ペレット、顆粒、タブレット、又は液体が挙げられる。
【0069】
本明細書中の食餌又は食品は、好ましくはパッケージ化される。これにより消費者はパッケージから食物製品中の成分を識別して、問題となっている特定のペットに対してこの食物製品が好適であることを確認できる。パッケージは、金属、プラスチック、紙、又はボール紙であってよい。
【0070】
上記食餌又は食品の形態の組成物は、ペットがその食餌として消費するいずれの製品を包含できる。従って本開示は、標準的な食物製品、並びにペット用食物スナック(例えばスナックバー、ビスケット、及び甘味製品)を包含する。本明細書中の食餌又は食品は好ましくは、調理済み製品である。これには:肉又は動物由来材料、例えば牛、鶏、七面鳥、豚、アヒル、カンガルー、ラム、又は魚由来の材料;血漿;骨髄;羽毛由来の材料(例えば家禽の羽毛加水分解物等の羽毛加水分解物)等を組み込むことができる。あるいは製品は、タンパク質源を提供するために、肉を含まない(好ましくはダイズ、トウモロコシグルテン、又はダイズ加水分解物といった肉代用品を含む)ものとすることができる。製品は、植物性タンパク質(小麦グルテン、エンドウマメタンパク質)、又はダイズタンパク質濃縮物若しくは加水分解物、牛乳タンパク質、グルテン等といった、追加のタンパク質源を含有してよい。製品はまた、1つ以上の穀物(例えば小麦、トウモロコシ、米、オート麦、大麦等)、若しくはジャガイモ等の他の源に由来する炭水化物といった、デンプン源を含有してもよく、又はデンプンを含まなくてもよい。製品は、チコリ、サトウキビパルプ等といった繊維、及び/又はインスリン、フラクトオリゴ糖、プロバイオティクス等の構成成分も含んでよく、最も好ましくは、食餌又は食品の複数の成分の組み合わせは、例えばNational Research Council, 1985, Nutritional Requirements for dogs, National Academy Press, Washington DC、又はAssociation of America Feed Control Officials, Official Publication 1996に記載されているような、問題となっている特定の動物に推奨される全てのビタミン及びミネラルを提供する(完全でバランスの取れた食物)。
【0071】
本明細書中の他の箇所で既に明記されているように、本開示の食餌又は食品は、例えばイヌ等のペット動物において、特に経上皮水分喪失(TEWL)を減少させることによって、皮膚の質を改善する。
【0072】
よっていくつかの好ましい実施形態では、上記食餌又は食品は、健康なイヌへの給餌に適合されている。
【0073】
いくつかの好ましい実施形態では、上記食餌又は食品は、健康なイヌの皮膚の質を維持又は改善するために使用される。
【0074】
本明細書中で使用される場合、用語「健康なペット動物(healthy pet animal)」は、いかなる皮膚の障害又は疾患にも罹患していないペット動物を指す。例えば、健康なペット動物は健康なイヌであってよい。本明細書中で使用される場合、「健康なイヌ(healthy dog)」は、いかなる皮膚の障害又は疾患にも罹患していないイヌからなる。皮膚の障害又は疾患は、皮膚炎、乾癬、アトピー性皮膚炎、皮膚型の食物アレルギー、掻痒性疾患、細菌性毛嚢炎、及びせつ腫症を包含する。皮膚炎は、アレルギー性皮膚炎(例えばノミ咬傷性アレルギー性皮膚炎、又は皮膚の有害な食物反応)、アトピー性皮膚炎(例えば環境性アトピー)、膿皮症(細菌感染症)、皮癬(毛包虫性及び疥癬虫性)、並びに免疫性又は自己免疫性皮膚炎を包含する。
【0075】
本開示はまた、健康なペット動物の皮膚の質を維持又は改善するための方法に関し、上記方法は、上記健康なペット動物に、本明細書に記載の食餌又は食品を給餌するステップ いくつかの実施形態では、上記方法は、上記健康なペット動物に、約7g/Mcal~約9g/Mcalの量のリノール酸を含む食餌又は食品を給餌するステップを含む。いくつかの実施形態では、上記方法は、上記健康なペット動物に、7g/Mcal~9g/Mcalの量のリノール酸を含む食餌又は食品を給餌するステップを含む。いくつかの実施形態では、上記食餌又は食品は、約8g/Mcal、例えば8g/Mcalの量のリノール酸を含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、上記食餌又は食品は更に、約50mg/Mcalの量、例えば約40mg/Mcal~約60mg/Mcal、例えば約45mg/Mcal~約55mg/Mcal、例えば40mg/Mcal~60mg/Mcal、例えば45mg/Mcal~55mg/Mcal、例えば50mg/Mcalの量の亜鉛を含む。
【0077】
この給餌方法の好ましい実施形態では、健康なペット動物、例えば健康なペットであるイヌに、本明細書に記載の食餌又は食品を、1日1回給餌する。他の実施形態では、健康なペット動物、例えば健康なペットであるイヌに、本明細書に記載の食餌又は食品を、2日毎、3日毎、又は4日毎に給餌する。
【0078】
本開示はまた、ペット動物の皮膚の質を維持又は改善するために、約7g/Mcal~約9g/Mcal、例えば7g/Mcal~9g/Mcalの量、例えば約8g/Mcalの量のリノール酸を含む、食餌又は食品に関する。いくつかの実施形態では、上記食餌又は食品は、8g/Mcalの量のリノール酸を含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、上記食餌又は食品は、ペット動物の皮膚の質を維持又は改善するために:(i)約7g/Mcal~約9g/Mcalの量のリノール酸;及び(ii)約40mg/Mcal~約60mg/Mcalの量の亜鉛を含む。いくつかの実施形態では、上記食餌又は食品は、ペット動物の皮膚の質を維持又は改善するために:(i)7g/Mcal~9g/Mcalの量のリノール酸;及び(ii)40mg/Mcal~60mg/Mcalの量の亜鉛を含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、上記食餌又は食品は更に、約50mg/Mcalの量の亜鉛を含む。いくつかの実施形態では、上記食餌又は食品は更に、50mg/Mcalの量の亜鉛を含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、上記食餌又は食品は、イヌ用の食餌又は食品である。
【0082】
実施例に含まれる実験結果は、本明細書に記載の食餌又は食品が皮膚の質を改善することを示しており、また皮膚の質の改善が、健康なペット動物、例えば健康なイヌの体毛の光沢、滑らかさ、及び柔らかさといった、体毛に対する有益な影響につながることが特定されている。
【0083】
また本発明者らは、本明細書に記載の食餌又は食品が提供する皮膚の質の改善が、皮膚の障害又は疾患に罹患しているペット動物にも有益となり得ると判断した。実際、皮膚の障害又は疾患は、皮膚のバリアを変化させ、例えば経上皮水分喪失の変化をもたらし、これは、健康でないペット動物に上記食餌又は食品を給餌することによって改善できる。
【0084】
よって本開示の第2の態様によると、本明細書に記載の食餌又は食品は、皮膚の障害又は疾患に罹患しているペット動物を治療するための治療目的で使用できる。
【0085】
上記第2の態様によると、本開示は、皮膚の障害又は疾患に罹患しているペット動物の治療に使用するための、約7g/Mcal~約9g/Mcal、例えば7g/Mcal~9g/Mcalの量のリノール酸を含む食品に関する。
【0086】
いくつかの実施形態では、本開示は、皮膚の障害又は疾患に罹患しているペット動物を治療する方法に関し、上記方法は、上記ペット動物に、約7g/Mcal~約9g/Mcal、例えば7g/Mcal~9g/Mcalの量のリノール酸を含む食餌又は食品を給餌するステップを含む。
【0087】
この第2の態様によると、本開示は更に、皮膚又は皮膚の障害を引き起こす疾患に罹患したイヌを治療するための医療用食餌又は食品の調製のための、約7g/Mcal~約9g/Mcal、例えば7g/Mcal~9g/Mcalの量のリノール酸の使用に関する。
【0088】
更にこの第2の態様によると、本開示はまた、皮膚の障害又は疾患に罹患しているペット動物を治療する方法に関し、上記方法は、上記ペット動物に、約7g/Mcal~約9g/Mcal、例えば7g/Mcal~9g/Mcalの量のリノール酸を含む食餌又は食品を給餌するステップを含む。
【0089】
この第2の態様によると、皮膚の障害又は疾患は好ましくは、皮膚炎、乾癬、アトピー性皮膚炎、皮膚型の食物アレルギー、掻痒性疾患、細菌性毛嚢炎、及びせつ腫症を含む群から選択される。皮膚炎は、アレルギー性皮膚炎(例えばノミ咬傷性アレルギー性皮膚炎、又は皮膚の有害な食物反応)、アトピー性皮膚炎(例えば環境性アトピー)、膿皮症(細菌感染症)、皮癬(毛包虫性及び疥癬虫性)、並びに免疫性又は自己免疫性皮膚炎を包含する。
【0090】
本開示の第2の態様の好ましい実施形態では、皮膚の障害又は疾患に罹患しているペット動物に対して治療目的で使用される食物又は食餌は、健康なペット動物の皮膚の質の改善のために使用される場合に本開示中の他の箇所に記載されている食餌又は食品のいずれの実施形態であってよい。換言すれば、非治療目的の、本明細書中の他の箇所に記載されている食餌又は食品の様々な実施形態は、皮膚の障害又は疾患に罹患しているペット動物に対して治療目的で使用される食餌又は食品の可能な実施形態として明示的に組み込まれる。
【0091】
以下の実施例によって本発明を更に説明するが、本発明は以下の実施例にいかなる点でも限定されない。
【実施例
【0092】
実施例1:リノール酸及び亜鉛の特定の組み合わせは、ペットの皮膚の特性を改善する
実施例の目的
目的は、異なる複数の濃度の亜鉛及びリノール酸を含有する食餌の、黒色のラブラドールの皮膚の特性に対する影響を調査することであった。上記食餌は、NRC(National Research Council nutrients requirements of cats and dogs)、FEDIAF(Federation Europeenne des industries des aliments pour animaux familiers)、及びAAFCO(Association of American Feed Control Officials)が推奨する通常の最小量より多いものの、皮膚及び被毛を改善することが過去に示されているレベル未満の、亜鉛及びリノール酸を含有する。
【0093】
A.材料及び方法
研究中、4つの食餌を給餌した。推奨される最小レベルの亜鉛(21mg/1000kcal)及びリノール酸(3.8g/1000kcal)を含むベースライン食餌を、試験開始前12週にわたって、34頭の黒色のラブラドール全てに給餌した。次にイヌを4つのグループにランダム化した(各グループに8頭のイヌ)。1つのグループはベースライン食餌(食餌A)を継続し、他の3つのグループは、以下の表1に示されている亜鉛及びリノール酸濃度を有する食餌B、C、及びDに移された。
【0094】
【表1】
【0095】
各食餌のいくつかの他の構成成分についても、以下の表2に記載する。
【0096】
【表2】
【0097】
皮膚の特性を評価するために、イヌに指定された食餌/食品それぞれを給餌し始めてから0、6、及び12週の時点で経上皮水分喪失(TEWL)を測定した。
【0098】
TEWLの測定は、給餌前期間の終了時、並びにこれに続く4、8、及び12週の異なる給餌期間の後に行われた。各時点において各イヌに対して5回の別個の測定を行った。一定の環境条件を有する静かな無風の室内でイヌを評価した。測定は、Tewameter Triple TM 330 T(3つのプローブがTEWLを同時に測定する)を取り付けたCutometer MPA580を用いて実施し、これを腰椎の一方の側部まで1~2インチ(2.54~5.08cm)の位置に配置し、最初にプローブと皮膚との良好な接触を確実にするために被毛を分けた。動物の腰部領域は、3つのプローブの配向のための良好な表面を提供した。
【0099】
研究の開始前に、読み取りの安定性を改善するために、イヌを、1回につき1分間にわたって静止したままとなるように調整した。TEWLは、全てのイヌに関して各時点において2回測定され、各測定に関して、3つのプローブを用いて最大90秒間にわたって毎秒記録された。プローブの製造元の文献に基づくと、90秒間にわたる予想プロファイルはプラトーに向かう上昇であり、このプラトーを、該測定のTEWL値とした。分析のために、読み取りの最初の30秒間を除去し、残りの(最大)60秒間を反復として使用した。統計的観点から、TEWLを、週、食餌、及び週と食事との相互作用という固定効果に対して、イヌにネストされた週にネストされた反復にネストされたプローブのランダム効果を用いて、モデル化した。他のモデルに関して説明されているものと同一のコントラストを適用した。
【0100】
B.結果
0、6、及び12週における各食餌に関する推定TEWLを、98.75%信頼区間(CI)と共に以下に示す。結果は以下の表3に示されている。
【0101】
【表3】
【0102】
第0週からの変化についての食餌による差異、及び各食餌についての週による差異を、以下の表4及び図1に示す。
【0103】
【表4】
【0104】
結果は、動物に食餌Cを給餌した場合に、経上皮水分喪失(TEWL)が極めて大きく減少することを示している。試験した他の食餌のいずれも、特に食餌B(6mg/Mcalのリノール酸及び50mg/MCalの亜鉛)並びにD(10mg/MCalのリノール酸及び50mg/MCalの亜鉛)のいずれも、経上皮水分喪失(TEWL)の有意な変化を誘発していない。
【0105】
本開示の主題及びその利点について詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更、置換、及び改変を実施できることを理解されたい。更に、本出願の範囲は、本明細書に記載されているプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、又はステップの特定の実施形態に限定されることは意図されていない。当業者が本開示の主題の開示から容易に理解するように、本明細書に記載の対応する実施形態と実質的に同一の機能を実行する、又は実質的に同一の結果を達成する、既存の又は将来開発されることになるプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、及びステップを、本開示の主題に従って利用してよい。従って添付の特許請求の範囲は、このようなプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、又はステップをその範囲に含むことが意図されている。
【0106】
特許、特許出願公開、製品説明書、及びプロトコルは全体が引用されており、その開示は、あらゆる目的のために、参照によりその全体が本出願に援用される。
図1