(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】Vadadustat中間体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 213/81 20060101AFI20240410BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240410BHJP
【FI】
C07D213/81
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021515853
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2020009453
(87)【国際公開番号】W WO2020217733
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-02-06
(31)【優先権主張番号】P 2019086759
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】町田 康士
(72)【発明者】
【氏名】安河内 宏昭
(72)【発明者】
【氏名】西山 章
【審査官】薄井 慎矢
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105837502(CN,A)
【文献】特表2013-526539(JP,A)
【文献】特表2009-541486(JP,A)
【文献】特表2014-522409(JP,A)
【文献】国際公開第2021/117767(WO,A1)
【文献】Tetrahedron Letters,2009年,Vol.50,pp.6126-6129
【文献】Tetrahedron,2007年,Vol. 63,pp. 10372-10378
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1);
【化1】
(式(1)中、Xは、塩素原子、ヒドロキシ基、又はOP
1を表す。P
1は、酸素保護基を表す。)で表される化合物と、
下記式(2);
【化2】
(式(2)中、R
1は、ヒドロキシ基、OR
2、又はNR
3R
4を表す。R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6~20のアリール基、又は置換基を有してもよい炭素数7~20のアラルキル基を表す。またR
3とR
4が一緒になって環を形成してもよい。)で表されるグリシン、グリシン誘導体又はそれらの塩とを、
フロー式リアクター中、一酸化炭素存在下で反応させる、
下記式(3);
【化3】
(式(3)中、R
1、及びXは前記に同じ。)で表される第1のVadadustat中間体の製造方法。
【請求項2】
前記式(1)で表される化合物と、前記式(2)で表されるグリシン、グリシン誘導体又はそれらの塩との反応を、金属触媒存在下で実施することを特徴とする、請求項1に記載の第1のVadadustat中間体の製造方法。
【請求項3】
前記金属触媒が、Pdを含む触媒である請求項2に記載の第1のVadadustat中間体の製造方法。
【請求項4】
前記フロー式リアクター中で行う反応を、60℃以上で実施することを特徴とする、請求項
1~3のいずれかに記載の第1のVadadustat中間体の製造方法。
【請求項5】
前記フロー式リアクター中で行う反応を、ゲージ圧0.1MPa以上の加圧条件下で実施することを特徴とする、請求項
1~4のいずれかに記載の第1のVadadustat中間体の製造方法。
【請求項6】
前記フロー式リアクター中で行う反応において、前記金属触媒の使用量が、前記式(1)で表される化合物1モルに対して、0.05モル以下であることを特徴とする、請求項
2又は3に記載の第1のVadadustat中間体の製造方法。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれかに記載の製造方法によって前記式(3)で表される第1のVadadustat中間体を製造し、得られた該第1のVadadustat中間体を含む反応液を、後処理することなく続けて3-クロロフェニルボロン酸と反応させる、
下記式(4);
【化4】
(式(4)中、R
1、Xは前記に同じ。)で表される第2のVadadustat中間体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Vadadustat中間体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
Vadadustatは、慢性腎臓病に伴う貧血(腎性貧血)の経口治療薬であり、既存の注射剤(赤血球造血刺激因子製剤)では効果が出にくい患者への適用が期待される次世代経口治療薬である(特許文献1、2)。しかし、特許文献1、2に開示されるVadadustatの製造方法では、多段階の反応工程を要し(5~7ステップ)操作が煩雑で、総収率が9~56%と低いものであった。
【0003】
特許文献3に開示される下記工程を経たVadadustatの製造方法では、反応出発物質を3,5-ジクロロ-2-ピリジンカルボン酸とグリシンメチルエステル塩酸塩にすることにより、反応工程数が4ステップに削減され、総収率も57~63%に向上することが示されている。
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2009-541486号公報
【文献】特表2014-522409号公報
【文献】中国特許出願公開第105837502号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献3に開示されるVadadustatの製造方法は、N-(3,5-ジクロロピリジン-2-カルボニル)グリシンメチルエステル(3z)を合成する第1工程において、N,N’-カルボニルジイミダゾール等の縮合剤を用いて、3,5-ジクロロ-2-ピリジンカルボン酸(6)とグリシンメチルエステル塩酸塩(2z)とを縮合反応させており、原子変換効率が低く、クリーンな反応ではなかった。また、第2工程の反応に進む前に第1工程の反応液から、N-(3,5-ジクロロピリジン-2-カルボニル)グリシンメチルエステル(3z)を抽出、及び濃縮するといった後処理が必要であった。
【0006】
本発明は、原子変換効率が高くクリーンな反応で、Vadadustat中間体を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し得た本発明は、以下の通りである。
[1] 下記式(1);
【化2】
(式(1)中、Xは、塩素原子、ヒドロキシ基、又はOP
1を表す。P
1は、酸素保護基を表す。)で表される化合物と、
下記式(2);
【化3】
(式(2)中、R
1は、ヒドロキシ基、OR
2、又はNR
3R
4を表す。R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6~20のアリール基、又は置換基を有してもよい炭素数7~20のアラルキル基を表す。またR
3とR
4が一緒になって環を形成してもよい。)で表されるグリシン、グリシン誘導体又はそれらの塩とを、一酸化炭素存在下で反応させる、
下記式(3);
【化4】
(式(3)中、R
1、及びXは前記に同じ。)で表される第1のVadadustat中間体の製造方法。
[2] 前記式(1)で表される化合物と、前記式(2)で表されるグリシン、グリシン誘導体又はそれらの塩との反応を、金属触媒存在下で実施することを特徴とする、[1]に記載の第1のVadadustat中間体の製造方法。
[3] 前記金属触媒が、Pdを含む触媒である[2]に記載の第1のVadadustat中間体の製造方法。
[4] 前記式(1)で表される化合物と、前記式(2)で表されるグリシン、グリシン誘導体又はそれらの塩との反応を、フロー式リアクター中で実施することを特徴とする、[1]~[3]のいずれかに記載の第1のVadadustat中間体の製造方法。
[5] 前記フロー式リアクター中で行う反応を、60℃以上で実施することを特徴とする、[4]に記載の第1のVadadustat中間体の製造方法。
[6] 前記フロー式リアクター中で行う反応を、ゲージ圧0.1MPa以上の加圧条件下で実施することを特徴とする、[4]又は[5]に記載の第1のVadadustat中間体の製造方法。
[7] 前記フロー式リアクター中で行う反応において、前記金属触媒の使用量が、前記式(1)で表される化合物1モルに対して、0.05モル以下であることを特徴とする、[4]~[6]のいずれかに記載の第1のVadadustat中間体の製造方法。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の製造方法によって前記式(3)で表される第1のVadadustat中間体を製造し、得られた第1のVadadustat中間体を含む反応液を、後処理することなく続けて3-クロロフェニルボロン酸と反応させる、
下記式(4);
【化5】
(式(4)中、R
1、Xは前記に同じ。)で表される第2のVadadustat中間体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、Vadadustat中間体の製造を、原子変換効率が高くクリーンな反応で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明で用いるフロー式リアクターの構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、式(1)で表される化合物(以下、化合物(1)と称することがある。)と、式(2)で表されるグリシン、グリシン誘導体又はそれらの塩(以下、化合物(2)と称することがある。)とを、一酸化炭素存在下で反応させ、式(3)で表される第1のVadadustat中間体(以下、Vadadustat中間体(3)と称することがある。)を合成することに特徴を有する。該特徴を有することにより、原子変換効率が高いクリーンな反応でVadadustat中間体(3)を得ることが出来る。また、前記Vadadustat中間体(3)を含む反応液を、抽出等の後処理(精製等)をしないままに、続けて3-クロロフェニルボロン酸と反応させても、効率よく式(4)で表される第2のVadadustat中間体(以下、Vadadustat中間体(4)と称することがある。)を得ることができる。
【0011】
<化合物(1)>
Vadadustat中間体(3)を製造する出発物質の1つは、下記式(1)で表される化合物である。
【0012】
【化6】
(式(1)中、Xは、塩素原子、ヒドロキシ基、又はOP
1を表す。P
1は、酸素保護基を表す。)
【0013】
前記P1で表される酸素保護基(ヒドロキシ保護基とも称される)としては、特に限定されず、酸素原子の保護基として通常使用され得る全て基が挙げられ、例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス第4版(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS 4th Ed.)、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(JOHN WILLY & SONS)出版(2007年)に記載されている保護基から選択することができる。具合的には、炭素数1~6のアルキル基、炭素数7~12のアラルキル基、炭素数2~12のアルコキシアルキル基、炭素数1~6のアシル基、炭素数1~6のアルコキシカルボニル基、炭素数1~6のアルキルスルホニル基、炭素数6~12のアリールスルホニル基、シリル基、テトラヒドロフラニル基、又はテトラヒドロピラニル基等が挙げられる。
【0014】
化合物(1)としては、式(1)のXがヒドロキシ基、又はOP1である化合物が好ましい。式(1)のXがヒドロキシ基、又はOP1である化合物を用いて製造する場合は、反応工程の1つ(上記式のStep3)が減り、Vadadustatの製造効率が向上する。入手の容易性の観点から、式(1)のXが塩素原子である化合物が特に好ましい。
【0015】
<化合物(2)>
Vadadustat中間体(3)を製造する出発物質の1つは、下記式(2)で表されるグリシン、グリシン誘導体又はそれらの塩である。
【0016】
【化7】
(式(2)中、R
1は、ヒドロキシ基、OR
2、又はNR
3R
4を表す。R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6~20のアリール基、又は置換基を有してもよい炭素数7~20のアラルキル基を表す。またR
3とR
4が一緒になって環を形成してもよい。)
【0017】
R2、R3、R4で表される炭素数1~20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、又はtert-ブチル基等が挙げられる。
【0018】
R2、R3、R4で表される炭素数6~20のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、又はビフェニル基等が挙げられる。
【0019】
R2、R3、R4で表される炭素数7~20のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、又はフェニルプロピル基等が挙げられる。
【0020】
R2、R3、R4で表されるアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子等のハロゲン原子が挙げられ、R2、R3、R4で表されるアリール基、及びアラルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、及び塩素原子が挙げられる。R2、R3、R4で表されるアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、置換基を有さない方が好ましい。
【0021】
R3とR4が一緒になって環を形成した場合のNR3R4としては、ピロリジン環、又はピペリジン環等の含窒素環が挙げられ、炭素数2~10の含窒素環が好ましい。
【0022】
R2としては、炭素数1~15のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~5のアルキル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0023】
R3、R4としては、炭素数1~15のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましい。
【0024】
R1としては、ヒドロキシ基、又はOR2であることが好ましく、OR2であることがより好ましい。
【0025】
化合物(2)の塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩等の無機酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、無機酸塩が好ましい。
【0026】
一酸化炭素存在下での化合物(1)と、化合物(2)とからVadadustat中間体(3)を製造する反応(以下、「Vadadustat中間体(3)の合成反応」という場合がある)における、化合物(2)の使用量は、化合物(1)1モルに対して、例えば、0.7モル以上であることが好ましく、より好ましくは0.9モル以上、さらに好ましくは1.0モル以上である。上限については特に制限はないが、例えば、4.0モル以下であることが好ましく、より好ましくは3.0モル以下、さらに好ましくは2.0モル以下である。尚、化合物(1)1モルに対する化合物(2)の物質量を、以下、「当量(eq)」ということがある。
【0027】
<一酸化炭素>
一酸化炭素は、気体として導入される。溶媒を用いた反応の場合、気液二相系の反応になる。一酸化炭素は、単独で反応系に導入してもよく、不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス等)と共に混合ガスにして反応系に導入してもよい。後述するフロー式リアクターによる反応を行う場合には、反応系に導入するガス(供給気体ともいう)の一酸化炭素濃度が高いほど好ましく、特に一酸化炭素単独が好ましい。高濃度の一酸化炭素を導入することで、必要量の一酸化炭素を供給することができる。供給気体の一酸化炭素の分圧(P1)は、全圧(P2)100%に対して、例えば、50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上であり、最も好ましくは100%である。
【0028】
気体として反応系へ供給される一酸化炭素は、ボンベに封入された一酸化炭素(具体的には、純度99%以上、ゲージ圧20MPa以下程度の一酸化炭素)であってもよく、インラインで発生する一酸化炭素であってもよい。インラインで一酸化炭素を発生させる方法としては、特に限定されず、例えば、Reaction Chemistry & Engineering,2016,vol.1,pp280-287に開示される(COCl)2とNaOHとを反応させる方法や、ORGANIC LETTERS,2013,Vol.15,No.11,pp2794-2797に開示されるHCOOHとH2SO4とを反応させる方法等が挙げられる。
【0029】
<金属触媒>
Vadadustat中間体(3)の合成反応は、更に反応を加速させるために金属触媒存在下で実施されることが好ましい。
【0030】
金属触媒としては、Ru、Rh、Pt、Pd、又はIr等を含む金属触媒が挙げられ、好ましくはPdを含む触媒(Pd触媒等)である。
【0031】
Pd触媒としては、例えば、Pd(PPh3)4(Tetrakis(triphenylphosphine)palladium(0))、Pd(dba)2(Bis(dibenzylideneacetone)palladium(0))、Pd2(dba)3(Tris(dibenzylideneacetone)dipalladium(0))、Pd2(dba)3・CHCl3、Pd(t-Bu3P)2(Bis(tri-tert-butylphosphine)palladium(0))、Pd(acac)2(Bis(acetylacetonato)palladium(II))、[Pd(allyl)Cl]2(Allylpalladium(II) chloride dimer)、Pd(MeCN)2Cl2(Dichlorobis(acetonitrile)palladium(II))、Pd(TFA)2(Palladium(II) Trifluoroacetate)、Pd(OAc)2(Palladium(II) Acetate)、Pd(PCy3)2Cl2(Dichlorobis(tricyclohexylphosphine)palladium(II))、Pd(PPh3)2Cl2、Pd[P(o-tol)3]2Cl2(Bis[tris(2-methylphenyl)phosphine]palladium)、Pd(amphos)Cl2(Bis[di-tert-butyl(4-dimethylaminophenyl)phosphine]dichloropalladium(II))、Pd(dppf)Cl2([1,1’-Bis(diphenylphosphino)ferrocene]dichloropalladium(II))、Pd(dppf)Cl2・CH2Cl2、Pd(dtbpf)Cl2([1,1’-Bis(di-tert-butylphosphino)ferrocene]dichloropalladium(II))、Pd(MeCN)4(BF4)2(Tetrakis(acetonitrile)palladium(II) tetrafluoroborate)、PdBr2、PdCl2、cataCXium(登録商標) C、Pd-PEPPSI-IPr、Pd-PEPPSI-SIPr、Pd-PEPPSI-IPent、Pd/C等が挙げられ、好ましくは、Pd(PPh3)4、Pd(dba)2、Pd2(dba)3、Pd2(dba)3・CHCl3、Pd(amphos)Cl2、Pd(dppf)Cl2、Pd(dppf)Cl2・CH2Cl2、Pd(dtbpf)Cl2、Pd-PEPPSI-IPrであり、より好ましくは、Pd2(dba)3・CHCl3、Pd(amphos)Cl2、Pd(dtbpf)Cl2である。Pd触媒は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0032】
Vadadustat中間体(3)の合成反応における、金属触媒の使用量は、化合物(1)1モルに対して、例えば、0.0005モル以上、好ましくは0.005モル以上であり、より好ましくは0.01モル以上である。上限については、例えば、0.5モル以下、好ましくは0.3モル以下であり、より好ましくは0.1モル以下であり、さらに好ましくは0.05モル以下である。尚、化合物(1)1モルに対する金属触媒の物質量を、以下、「当量(eq)」ということがある。後述するように、Vadadustat中間体(3)の合成反応は、バッチ式リアクターで行ってもよく、フロー式リアクターで行ってもよい。前記金属触媒の使用量は、バッチ式リアクターで行う場合とフロー式リアクターで行う場合のどちらにも適用される。フロー式リアクターで行う場合の前記金属触媒の使用量は、化合物(1)1モルに対して、0.05モル以下であることが特に好ましい。
【0033】
<配位子>
Vadadustat中間体(3)の合成反応では、前記金属触媒とともに必要に応じて配位子を加えてもよい。
【0034】
配位子としては、例えば、PMe3(trimethylphosphine)、P(t-Bu)3(Tri-tert-butylphosphine)、TTBP・HBF4(Tri-tert-butylphosphine tetrafluoroborate)、P(n-Oct)3(Trioctylphosphine)、P(Cy)3(Tricyclohexylphosphine)、P(Cy)3・HBF4、P(o-tol)3(Tris(2-methylphenyl)phosphine)、Me2PPh(Dimethylphenylphosphine)、TFP(Tri(2-furyl)phosphine)、Diphenyl-2-pyridylphosphine、Tris(hydroxymethyl)phosphine、KPPh2、Ph2PLi、P(i-Pr)2Cl、P(t-Bu)2Cl、Cy2PCl、P(OMe)3、P(OEt)3、P(OPh)3、2-Chloro-4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaphospholane、TOPO(Tri-n-octylphosphine oxide)、HPOPh2、Ph2POCl、TPPO(triphenylphosphine oxide)、PhPOCl2、Di-tert-butyl N、N-diisopropylphosphoramidite、Bis(diisopropylamino)chlorophosphine、HMPT(Tris(dimethylamino)phosphine)、P(NEt2)3、Triphos(1,1,1-Tris(diphenylphosphinomethyl)ethane)、PhPCl2、Et2PCl、BippyPhos(5-(Di-tert-butylphosphino)-1’,3’,5’-triphenyl-1’H-(1,4’)bipyrazole)、QPhos(1,2,3,4,5-Pentaphenyl-1’-(di-tert-butylphosphino)ferrocene)、PTA(1,3,5-Triaza-7-phosphaadamantane)、Bis(p-sulfonatophenyl)phenylphosphine dihydrate dipotassium salt、amphos等の単座ホスフィン配位子;Xantphos(4,5-Bis(diphenylphosphino)-9,9-dimethylxanthene)、DPEPhos(Bis[2-(diphenylphosphino)phenyl]ether)、(±)-BINAP((±)-2,2’-Bis(diphenylphosphino)-1,1’-binaphthyl)、dppbenz(1,2-Bis(diphenylphosphino)benzene)、dppf(1,1’-Bis(diphenylphosphino)ferrocene)、dmpe(1,2-Bis(dimethylphosphino)ethane)、dppm(Bis(diphenylphosphino)methane)、dppe(1,2-Bis(diphenylphosphino)ethane)、dppp(1,3-Bis(diphenylphosphino)propane)、dppb(1,4-Bis(diphenylphosphino)butane)、1、2-Bis(dichlorophosphino)ethane、dcpe(Bis(dicyclohexylphosphino)ethane)、dtbpf(Bis[(di-tert-butylphosphino)cyclopentadienyl]iron)等の二座ホスフィン配位子;Cyclohexyl JohnPhos((2-Biphenylyl)dicyclohexylphosphine)、DavePhos(2-Dicyclohexylphosphino-2’-(N,N-dimethylamino)biphenyl)、XPhos(2-Dicyclohexylphosphino-2’,4’,6’-triisopropylbiphenyl)、SPhos(Dicyclohexyl[2’,6’-dimethoxy-(1,1’-biphenyl)-2-yl]phosphine)、MePhos(2-Dicyclohexylphosphino-2’-methylbiphenyl)、RuPhos(2-Dicyclohexylphosphino-2’,6’-diisopropoxybiphenyl)、BrettPhos(2-Dicyclohexylphosphino-3,6-dimethoxy-2’,4’,6’-triisopropyl-1,1’-biphenyl)、sSPhos(Sodium 2’-dicyclohexylphosphino-2,6-dimethoxy-1,1’-biphenyl-3-sulfonate hydrate)、PhDavePhos、tBuXPhos、JohnPhos(2-(Di-tert-butylphosphino)biphenyl)、Tetramethyl di-tBuXPhos(2-Di-tert-butylphosphino-3,4,5,6-tetramethyl-2’,4’,6’-tri-i-propyl)-1,1’-biphenyl)、tBuMePhos、tBuBrettPhos、tBuDavePhos、JackiePhos(2-{Bis[3,5-Bis(trifluoromethyl)phenyl]phosphino}-3,6-dimethoxy-2’,4’,6’-triisopropyl-1,1’-biphenyl)等のBuchwald配位子;cataCXium A、cataCXium ABn、cataCXium AHI、cataCXium PtB、cataCXium PlntB、cataCXium PCy、cataCXium POMetB等のcataCXium(登録商標)配位子;Me-DalPhos、Mor-DalPhos等のDalPhos配位子等が挙げられ、好ましくは、amphos、dppf、dppb、dtbpf、tBuXPhos、cataCXium A等が挙げられる。amphos、dtbpf等の、3級炭素を有する炭素数4~8のアルキル基2つと、アミノ基又は炭素数1~20の炭化水素基が置換していてもよい単環芳香族環1つがリン原子に結合している配位子(A)、又は該配位子(A)の2つがFeでフェロセン化した配位子(B)がより好ましい。配位子は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0035】
Vadadustat中間体(3)の合成反応における、配位子の使用量は、化合物(1)1モルに対して、例えば、0.002モル以上、好ましくは0.02モル以上であり、より好ましくは0.04モル以上である。上限については、例えば、2.0モル以下、好ましくは1.2モル以下であり、より好ましくは0.4モル以下である。尚、化合物(1)1モルに対する配位子の物質量を、以下、「当量(eq)」ということがある。
【0036】
<溶媒>
Vadadustat中間体(3)の合成反応では、必要に応じて反応溶媒を共存させて行ってもよい。
【0037】
溶媒としては、反応に影響を与えない限りにおいては特に制限はなく、具体的には例えば、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、メチルtert-ブチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、イソブチロニトリル等のニトリル系溶媒;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチル-ε-カプロラクタム、ヘキサメチルホスホルアミド等のアミド系溶媒;ジメチルプロピレンウレア等のウレア系溶媒;ヘキサメチルホスホン酸トリアミド等のホスホン酸トリアミド系溶媒等を用いることができる。尚、これらの溶媒は、単独で用いても2種以上併用してもよく、2種以上併用する場合は、その混合比率に特に制限はない。
【0038】
本発明では、反応性向上の観点から、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒が好ましく、1,2-ジメトキシエタン、酢酸イソプロピル、トルエン、アセトン、メチルイソブチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドがより好ましく、メチルイソブチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドがさらに好ましい。
【0039】
Vadadustat中間体(3)の合成反応における、溶媒の使用量は、化合物(1)1質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、例えば、80質量部以下、好ましくは60質量部以下、より好ましくは40質量部以下である。
【0040】
<塩基>
Vadadustat中間体(3)の合成反応では、更に反応を加速させるために塩基を添加してもよい。
【0041】
塩基としては、含窒素有機化合物が好ましく、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリドデシルアミン、ドデシルジメチルアミン、ヘキシルジブチルアミン、ジイソプロピルブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、N-メチルピロリジン、キヌクリジン、N-メチルモルホリン、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン、ピリジン、2-ピコリン、3-ピコリン、2,6-ルチジン、コリジン、4-ジメチルアミノピリジン、キノリン、N-メチルイミダゾール等の第3級アミンが挙げられる。尚、塩基は、単独で用いても2種以上併用しても良く、2種以上併用する場合は、その混合比率に制限はない。
【0042】
塩基としては、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン、N-メチルモルホリン等の非芳香族性第3級アミンがより好ましく、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等のトリアルキルアミン(特に炭素数1~8のアルキル基を3つ有するアミン)がさらに好ましい。
【0043】
Vadadustat中間体(3)の合成反応における、塩基の使用量は、化合物(1)1モルに対して、例えば、0.5モル以上であることが好ましく、より好ましくは1.0モル以上、さらに好ましくは1.3モル以上、よりさらに好ましくは1.5モル以上である。上限については特に制限はないが、例えば、5.0モル以下であることが好ましく、より好ましくは4.5モル以下、さらに好ましくは4.0モル以下である。尚、化合物(1)1モルに対する塩基の物質量を、以下、「当量(eq)」ということがある。
【0044】
<Vadadustat中間体(3)の製造>
前記化合物(1)と、前記化合物(2)とを、一酸化炭素、及び必要に応じて金属触媒、配位子、溶媒、塩基の存在下で反応させることにより、Vadadustat中間体(3)を合成する反応を行う。該反応は、バッチ式リアクターで行ってもよく、フロー式リアクターで行ってもよい。
【0045】
尚、フロー式リアクターとは、複数の液体又は気体を接触、混合させる混合部と、混合部の下流に接続されるリアクター部(滞留ライン)からなる微小な流通式反応器を意味する。試剤を含む液体はポンプ等の液体供給装置を用いて、気体はマスフローコントローラー等の流量制御装置を用いて、それぞれ混合部へ送液又は送気され、リアクター部を経て、排出部から連続的に生成物が排出される。
【0046】
図1は、本発明で使用可能なフロー式リアクターの構成の一例を示す概略図である。この一例の様に、Vadadustat中間体(3)の合成反応に用いるフロー式リアクターは、2以上の原料供給部(
図1の例では、一酸化炭素供給部1aと、化合物(1)及び化合物(2)等の原料溶液供給部1b)を有し、これら原料供給部からの原料を混合する第1の混合部(
図1の例では、混合部2)と、該第1の混合部で調製された混合物を流通するリアクター部(
図1の例では、管状リアクター部3)とを備えており、リアクター部を該混合物が流通される間に反応が進行する。尚、混合部とリアクター部の境界は明確でなくてもよく、連続的に変化していてもよい。混合部及びリアクター部の流路は、微細流路、管等の線状流路であってもよく、回転軸を中心に回転するディスク(回転ディスクともいう)面上等の面状流路等であってもよく、連続槽型の流路であってもよい。混合部及びリアクター部が面状流路であるフロー式リアクターの具体例としては、Flowid社製のSpinPro R10又はR300等が挙げられ、混合部及びリアクター部が連続槽型の流路であるフロー式リアクターの具体例としては、AMテクノロジー社製の撹拌セルリアクター(ACR)、撹拌チューブリアクター(ATR)又は回転チューブリアクター(RTR)等が挙げられる。また、必要に応じて、原料溶液供給部1bの上流側に第2の混合部を設け、別々に送液された化合物(1)と化合物(2)とをこの第2の混合部で混合してから第1の混合部に送液してもよい。
【0047】
前記フロー式リアクターは、原料供給部、混合部およびリアクター部の少なくとも1以上の温度を調整できる温度調節装置(温度調節室、温度調節バス、ジャケット容器、熱媒体流路等。
図1の例では、温度調節バス;温度調節装置7)を備えていてもよい。
【0048】
(a)線状流路リアクター部を有するフロー式リアクター
線状流路リアクター部を有するフロー式リアクターの原料供給部は、好ましくは管状であり、前記管の内径は、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上であり、好ましくは50mm以下、より好ましくは20mm以下、さらに好ましくは10mm以下である。
【0049】
前記線状流路リアクター部を有するフロー式リアクターの混合部は好ましくは管状であり、前記管の内径は、好ましくは0.01mm以上、50mm以下である。
【0050】
前記線状流路リアクター部を有するフロー式リアクターの混合部には、原料供給部からの原料を充分に撹拌するために、公知の混合器が備えられており、前記混合器としては、例えば、T字型ミキサー、Y字型ミキサー、V字型ミキサー、スタティックミキサー、ヘリックス型ミキサー等が挙げられる。
図1の例では、T字型ミキサーが使用されている。
【0051】
前記線状流路リアクター部を有するフロー式リアクターのリアクター部の流路断面は、円形、多角形、及び歪円形(例えば、凸型または凹型)のいずれであってもよく、より好ましくは円形または多角形である。またリアクター部は、直管構造であってもよく、多数回曲げ返された構造であってもよく、様々な形状をとり得る。
図1の例では、螺旋状構造の管状リアクターが使用されている。
【0052】
前記線状流路リアクター部を有するフロー式リアクターのリアクター部の長さは、反応時間(滞留時間)に応じて適宜設定すればよいが、例えば、1cm以上であり、好ましくは10cm以上であり、より好ましくは50cm以上、特に好ましくは1m以上、最も好ましくは3m以上である。リアクター部の長さの上限としては特に制限されないが、例えば、500m以下であり、好ましくは300m以下であり、より好ましくは200m以下、さらに好ましくは100m以下、特に好ましくは50m以下である。
【0053】
前記線状流路リアクター部を有するフロー式リアクターのリアクター部の流路の相当直径は、好ましくは50mm以下、より好ましくは20mm以下、さらに好ましくは15mm以下であり、圧力損失を鑑みれば、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上である。尚、本発明において「流路の相当直径」とは、流路の断面と等価とみなした円管に相当する直径のことを指す。すなわち、流路の相当直径Deは、下記式(i)で表される。
De=4Af/Wp …(i)
(式(i)中、Af:流路断面積、Wp:濡れ縁長さ(断面にある壁面の長さ)である。)
【0054】
線状流路リアクター部が螺旋状になっているとき、螺旋の進行軸の長さ(H)と、進行軸と直交する平面に投影した螺旋の面積(以下、単に投影面積という場合がある)(S)とから求まる螺旋の見掛け体積(S×H)は、例えば、温度調節装置(温度調節室、温度調節バス、ジャケット容器、熱媒体流路等。
図1の例では、温度調節バス;温度調節装置7)のサイズ(内容積等)に対して0.5%以上、好ましくは2%以上、より好ましくは10%以上であり、例えば、90%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは60%以下である。
【0055】
(b)面状流路リアクター部を有するフロー式リアクター
面状流路リアクター部(以下、面状リアクター部ともいう。)を有するフロー式リアクターの原料供給部は、好ましくは管状であり、前記管の内径は、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.1mm以上であり、好ましくは50mm以下である。
【0056】
前記面状リアクター部を有するフロー式リアクターの混合部は好ましくは面状であり、前記混合部の流路幅は、好ましくは0.01mm以上、50mm以下である。尚、面状リアクター部を有するフロー式リアクターでの混合部とは、原料供給部の末端とリアクター部入口の間に位置する、原料を混合する部分を指し、面状流路の上流部分が混合部を兼ねる。
【0057】
前記面状リアクター部を有するフロー式リアクターの混合部では、回転ディスクが高速回転することにより、原料混合物が充分に撹拌され、リアクター部に反応液として供給される。また、面状リアクター部を有するフロー式リアクターでのリアクター部は、面状流路の下流部分を兼ねる。
【0058】
前記面状リアクター部の相当長さは、反応時間(滞留時間)に応じて適宜設定すればよいが、例えば、1cm以上であり、好ましくは10cm以上である。リアクター部の長さの上限は特に制限されず、例えば、500m以下であり、好ましくは300m以下であり、より好ましくは100m以下である。尚、本発明において「面状リアクター部の相当長さ」とは、リアクター部流路において反応液が流通する距離に相当する長さのことを指す。
【0059】
前記面状リアクター部の反応流路幅は、好ましくは0.01mm以上、50mm以下である。
【0060】
前記面状リアクター部を有するフロー式リアクターが有する回転ディスクの枚数は、例えば、100枚以下であり、好ましくは50枚以下であり、より好ましくは10枚以下であり、例えば、1枚以上であり、好ましくは3枚以上である。
【0061】
前記回転ディスクの厚さは、例えば、0.01cm以上であり、好ましくは0.05cm以上であり、より好ましくは0.1cm以上であり、例えば、10cm以下であり、好ましくは5cm以下であり、より好ましくは1cm以下である。
【0062】
前記回転ディスクの回転速度は、化合物(1)、化合物(2)、及び必要に応じて用いる金属触媒、配位子、溶媒、塩基の種類や、反応温度に応じて適宜設定すればよいが、例えば、250rpm以上であり、好ましくは500rpm以上であり、より好ましくは1000rpm以上であり、例えば、32000rpm以下であり、好ましくは16000rpm以下であり、より好ましくは8000rpm以下である。
【0063】
Vadadustat中間体(3)を合成する反応をバッチ式リアクターで行う場合、反応容器内の気相部を一酸化炭素(又はその混合ガス)で置換してもよく、反応容器内の液相部に一酸化炭素(又はその混合ガス)をバブリングしてもよい。バッチ式リアクターで一酸化炭素を導入する場合、気相部は加圧(ゲージ圧:0MPa超)してもよく、常圧(ゲージ圧:0MPa)でもよい。気相部を加圧する場合、気相部のゲージ圧は、例えば、0.1MPa以上、好ましくは0.2MPa以上、より好ましくは0.3MPa以上とすることができる。前記ゲージ圧の上限は装置の耐圧性に応じて適宜設定でき、例えば、3MPa以下、好ましくは2MPa以下、より好ましくは1MPa以下である。
一方、Vadadustat中間体(3)を合成する反応をフロー式リアクターで行う場合、マスフローコントローラー等を用いて流量を制御しながら一酸化炭素又はその混合ガス(好ましくは一酸化炭素の単独ガス)を供給すればよい。Vadadustat中間体(3)を合成する反応をフロー式リアクターで行えば、バッチ式リアクターで行う場合のように過剰量の一酸化炭素を必要とせず、化学当量程度の一酸化炭素のみで反応を行えるため好ましい。
【0064】
Vadadustat中間体(3)の合成をフロー式リアクターで行う場合の一酸化炭素の使用量は、化合物(1)1モルに対して、例えば、0.5モル以上であることが好ましく、より好ましくは0.8モル以上、さらに好ましくは1.0モル以上であり、例えば、4.0モル以下であることが好ましく、より好ましくは3.5モル以下、さらに好ましくは3.0モル以下である。尚、化合物(1)1モルに対する一酸化炭素の物質量を、以下、「当量(eq)」ということがある。
【0065】
Vadadustat中間体(3)の合成反応をバッチ式リアクターで行う場合、反応温度は、特に限定されないが、例えば、0℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上であり、例えば、400℃以下、好ましくは300℃以下、より好ましくは200℃以下である。
【0066】
Vadadustat中間体(3)の合成反応をバッチ式リアクターで行う場合、反応時間は、化合物(1)、化合物(2)、及び必要に応じて用いる金属触媒、配位子、溶媒、塩基の種類や、反応温度に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.5時間以上、好ましくは1時間以上、より好ましくは1.5時間以上であり、例えば、48時間以下、好ましくは24時間以下、より好ましくは12時間以下である。
【0067】
Vadadustat中間体(3)の合成反応をフロー式リアクターで行う場合、反応温度は、特に限定されないが、例えば、0℃以上、好ましくは30℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは80℃以上の高温条件であり、例えば、400℃以下、好ましくは300℃以下、より好ましくは200℃以下である。Vadadustat中間体(3)の合成反応をフロー式リアクターで行う場合は、高温条件下で反応を実施する方が、反応変換率が高くなる傾向がある。
【0068】
Vadadustat中間体(3)の合成反応をフロー式リアクターで行う場合、反応時間は、化合物(1)、化合物(2)、及び必要に応じて用いる金属触媒、配位子、溶媒、塩基の種類や、反応温度に応じて適宜設定すればよいが、例えば、1分間以上、好ましくは10分間以上、より好ましくは30分間以上であり、例えば、8時間以下、好ましくは4時間以下、より好ましくは2時間以下である。
【0069】
Vadadustat中間体(3)の合成反応をフロー式リアクターで行う場合、該反応は加圧条件下で行うことが好ましい。該反応を加圧条件下で行うことにより、反応変換率をさらに高めることができる。反応圧力(ゲージ圧)は、例えば、0.05MPa以上であることが好ましく、0.1MPa以上であることがより好ましく、0.3MPa以上であることがさらに好ましく、例えば、20MPa以下であることが好ましく、10MPa以下であることがより好ましく、1MPa以下であることがさらに好ましい。尚、反応系における圧力調節は、リアクター部の下流に接続される背圧弁等(
図1の例では、背圧弁6)によって行うことができる。
【0070】
Vadadustat中間体(3)の合成反応をフロー式リアクターで行う場合、供給する一酸化炭素(又はその混合ガス)の圧力(ゲージ圧)は、例えば、0.05MPa以上であることが好ましく、0.1MPa以上であることがより好ましく、0.3MPa以上であることがさらに好ましく、例えば、40MPa以下であることが好ましく、20MPa以下であることがより好ましく、10MPa以下であることがさらに好ましい。
【0071】
Vadadustat中間体(3)の合成反応をフロー式リアクターで行う場合、リアクター内で形成される気液混合流は、例えば、バブル流、スラグ流、フロス流、アニュラーミスト流(環状噴霧流)、アニュラー流(環状流)、ミスト流(噴霧流)等であり、スラグ流であることが好ましい。
【0072】
Vadadustat中間体(3)の合成反応をフロー式リアクターで行う場合、一酸化炭素、化合物(1)、及び化合物(2)が原料供給部を流通する流速や、原料混合物がリアクター部を流通する流速は、化合物(1)、化合物(2)、及び必要に応じて用いる金属触媒、配位子、溶媒、塩基の種類、反応温度やリアクター部における滞留時間に応じて適宜設定すればよい。
【0073】
Vadadustat中間体(3)の合成反応は、バッチ式リアクターで行うよりもフロー式リアクターで行う方が、安全性及び反応時間短縮の観点から好ましい。
【0074】
<Vadadustat中間体(3)>
化合物(1)と、化合物(2)とを、一酸化炭素存在下で反応させることにより、下記式(3)で表される第1のVadadustat中間体を製造することができる。
【0075】
【化8】
(式(3)中、R
1、及びXは前記に同じ。)
【0076】
Vadadustat中間体(3)中のR1、及びXの具体例、及び好ましい範囲は前記と同じである。
【0077】
尚、得られたVadadustat中間体(3)は、必要に応じて単離や精製をしてもよく、そのためには、常套分離方法、例えば、抽出、濃縮、晶析、カラムクロマトグラフィー等を適宜組み合わせてよい。ただし、製造プロセスの簡略化の観点からは、Vadadustat中間体(3)は単離や精製といった後処理をせずに、Vadadustat中間体(3)を含む反応液をそのまま次工程の反応に用いることが好ましい。
【0078】
<Vadadustat中間体(4)の製造>
前記Vadadustat中間体(3)を含む反応液を、必要に応じて単離や精製をした後で(好ましくは後処理をすることなく)、続けて3-クロロフェニルボロン酸と反応させることにより、下記Vadadustat中間体(4)を合成できる。該反応は、バッチ式リアクターで行ってもよく、フロー式リアクターで行ってもよい。Vadadustat中間体(3)を含む反応溶液を後処理することなく使用する場合、3-クロロフェニルボロン酸を入れおいた反応容器(
図1の例の容器8等)にVadadustat中間体(3)を含む反応液を添加してもよいし、Vadadustat中間体(3)を含む反応液を入れた反応容器に3-クロロフェニルボロン酸を添加してもよい。
【0079】
【0080】
Vadadustat中間体(4)の合成における3-クロロフェニルボロン酸の使用量は、Vadadustat中間体(3)の合成における化合物(1)1モルに対して、例えば、0.5モル以上であることが好ましく、より好ましくは0.8モル以上であり、例えば、5.0モル以下であることが好ましく、より好ましくは3.0モル以下である。尚、化合物(1)1モルに対する3-クロロフェニルボロン酸の物質量を、以下、「当量(eq)」ということがある。
【0081】
Vadadustat中間体(4)の合成反応には、金属触媒、配位子、溶媒、塩基、及び相間移動触媒からなる群より選択される1つ以上を共存させてもよい。
【0082】
Vadadustat中間体(4)の合成反応に用いる、金属触媒、配位子、及び溶媒としては、Vadadustat中間体(3)の合成反応に用いてもよい金属触媒、配位子、及び溶媒と同じものが例示され、それぞれの好ましい範囲も同じである。
【0083】
Vadadustat中間体(4)の合成反応に用いる金属触媒としては、Vadadustat中間体(3)の合成反応で用いた金属触媒と同一の金属触媒を用いることが好ましい。同一の触媒を使用することで、製造プロセスを簡略化でき、また反応で生じる不純物の種類も減らすことができる。
【0084】
Vadadustat中間体(4)の合成反応に用いる金属触媒は、Vadadustat中間体(3)を後処理しない場合には該Vadadustat中間体(3)の合成反応で用いた金属触媒を引き続き使用してもよく、Vadadustat中間体(4)の合成反応時に必要に応じて金属触媒をさらに添加してもよい。製造プロセスの簡略化の観点から、Vadadustat中間体(4)の合成反応に用いる金属触媒は、Vadadustat中間体(3)の合成反応で用いた金属触媒を引き続き使用し、Vadadustat中間体(4)の合成反応時には金属触媒を加えなくてもよい。一方、Vadadustat中間体(4)の合成反応時にさらに金属触媒を添加する場合、その添加量(化合物(1)に対する当量(eq))は、Vadadustat中間体(3)の合成における化合物(1)1モルに対して、例えば、0.0005モル以上、好ましくは0.005モル以上であり、より好ましくは0.01モル以上である。上限については、例えば、0.3モル以下、好ましくは0.2モル以下であり、より好ましくは0.1モル以下である。
【0085】
Vadadustat中間体(4)の合成反応に用いる配位子としては、Vadadustat中間体(3)の合成反応で用いた配位子と同一の配位子を用いることが好ましい。
【0086】
Vadadustat中間体(4)の合成反応に用いる配位子は、Vadadustat中間体(3)を後処理しない場合には該Vadadustat中間体(3)の合成反応で用いた配位子を引き続き使用してもよく、Vadadustat中間体(4)の合成反応時に必要に応じて配位子をさらに添加してもよい。製造プロセスの簡略化の観点から、Vadadustat中間体(4)の合成反応に用いる配位子は、Vadadustat中間体(3)の合成反応で用いた配位子を引き続き使用し、Vadadustat中間体(4)の合成反応時には配位子を加えなくてもよい。一方、Vadadustat中間体(4)の合成反応時にさらに配位子を添加する場合、その添加量(化合物(1)に対する当量(eq))は、Vadadustat中間体(3)の合成における化合物(1)1モルに対して、例えば、0.002モル以上、好ましくは0.02モル以上であり、より好ましくは0.04モル以上である。上限については、例えば、1.2モル以下、好ましくは0.8モル以下であり、より好ましくは0.4モル以下である。
【0087】
Vadadustat中間体(4)の合成反応に用いる溶媒としては、Vadadustat中間体(3)の合成反応で例示した溶媒と同様の範囲から選択でき、Vadadustat中間体(3)の合成反応で用いた溶媒と同一の溶媒を用いることが好ましい。同一の溶媒を用いることで、溶媒の再利用が容易になる。Vadadustat中間体(3)を後処理しない場合にはVadadustat中間体(3)の合成反応で用いた溶媒をVadadustat中間体(4)の合成反応に用いる溶媒として引き続き使用してもよく、Vadadustat中間体(4)の合成反応時に必要に応じて溶媒をさらに使用してもよい。Vadadustat中間体(4)の合成反応時に溶媒をさらに使用せず、Vadadustat中間体(3)の合成反応で用いた溶媒を引き続き使用すれば、製造プロセスを簡略化できる。
【0088】
Vadadustat中間体(4)の合成反応に用いる塩基は、無機塩基であっても、有機塩基であってもよい。無機塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化タリウム等の金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、フッ化カリウム、フッ化セシウム等のフッ化アルカリ金属塩、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のリン酸アルカリ金属塩、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド等が挙げられ、塩基性の強さの観点から、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩が好ましい。有機塩基としては、含窒素有機化合物が好ましく、例えば、メチルアミン、エチルアミン等の第1級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン等の第2級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の第3級アミン等が挙げられ、第3級アミンが好ましい。
【0089】
Vadadustat中間体(4)の合成における塩基の使用量は、Vadadustat中間体(3)の合成における化合物(1)1モルに対して、例えば、0.5モル以上であることが好ましく、より好ましくは0.8モル以上、さらに好ましくは1.0モル以上であり、例えば、5.0モル以下であることが好ましく、より好ましくは4.0モル以下、さらに好ましくは3.0モル以下である。尚、化合物(1)1モルに対する塩基の物質量を、以下、「当量(eq)」ということがある。
【0090】
Vadadustat中間体(4)の合成反応に用いる相間移動触媒としては、テトラブチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムブロミド等の第4級アンモニウム塩、トリブチル(シアノメチル)ホスホニウムクロリド、トリブチルドデシルホスホニウムブロミド等のホスホニウム塩、12-クラウン-4、15-クラウン-5等のクラウンエーテルが挙げられ、第4級アンモニウム塩が好ましく、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムブロミドがより好ましい。
【0091】
Vadadustat中間体(4)の合成における相間移動触媒の使用量は、Vadadustat中間体(3)の合成における化合物(1)1モルに対して、例えば、0.01モル以上であることが好ましく、より好ましくは0.1モル以上であり、例えば、5モル以下であることが好ましく、より好ましくは1モル以下である。尚、化合物(1)1モルに対する相間移動触媒の物質量を、以下、「当量(eq)」ということがある。
【0092】
<Vadadustatの製造>
Vadadustat中間体(4)からVadadustatを製造する方法としては、中国特許出願公開第105837502号明細書に開示される方法をそのまま又は適宜変更して用いればよく、例えば、概略を以下の式で表すことができる。Vadadustat中間体(4)がX=塩素原子である式(4a)の化合物である場合、アルカリ金属(M)のアルコキシド(以下の式中、R10OMで表す。例えば、ナトリウムメトキシド等)で処理し、さらに酸(例えば、臭化水素等)で処理することによってVadadustatを製造できる。Vadadustat中間体(4)がX=ヒドロキシ基、又はOP1である式(4b)の化合物(ただし、式(4c)の化合物となる場合を除く)である場合、酸(例えば、臭化水素等)で処理することによってVadadustatを製造できる。Vadadustat中間体(4)がX=ヒドロキシ基、R1=ヒドロキシ基である式(4c)の化合物である場合、当該中間体(4c)がVadadustatに該当する。
【0093】
【0094】
本願は、2019年4月26日に出願された日本国特許出願第2019-086759号に基づく優先権の利益を主張するものである。2019年4月26日に出願された日本国特許出願第2019-086759号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例】
【0095】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0096】
以下の実施例1~24に記載している各化合物の変換率及び収率を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法による分析結果に基づいて算出した。HPLC条件は以下の通りである。
カラム:COSMOSIL 5C18-AR-II(4.6mmI.D.×250mm)(ナカライテスク株式会社製)
移動相A:0.1%リン酸水溶液
移動相B:アセトニトリル
流速:1.0mL/分
検出波長:UV220nm
カラム温度:30℃
グラジエント条件:
時間(分) A液(%) B液(%)
0 95 5
25.0 5 95
28.0 5 95
28.1 95 5
35.0 95 5
保持時間:2-ブロモ-3,5-ジクロロピリジン;24.5分、N-(3,5-ジクロロピリジン-2-カルボニル)グリシンメチルエステル;16.7分、N-(3,5-ジクロロピリジン-2-カルボニル)グリシンtert-ブチルエステル;18.4分、N-[5-(3-クロロフェニル)-3-クロロピリジン-2-カルボニル]グリシンメチルエステル;21.9分、N-[5-(3-クロロフェニル)-3-クロロピリジン-2-カルボニル]グリシン;19.4分
また、必要に応じて、反応チューブの出口をReact IR15(メトラー・トレド株式会社製)に繋ぎ、リアルタイムで反応変換率を確認した。
特徴的なピーク:2-ブロモ-3,5-ジクロロピリジン;833cm-1、N-(3,5-ジクロロピリジン-2-カルボニル)グリシンメチルエステル;862cm-1
【0097】
(実施例1)
Vadadustat中間体(3x)の製造(バッチ反応)
【0098】
【化11】
反応容器に、2-ブロモ-3,5-ジクロロピリジン(1x)0.50g(2.2mmol)、グリシンエステル塩酸塩(2x)(R
2x=メチル基(Me))0.42g(3.3mmol、1.5eq)、ジメチルアセトアミド2.50g((1x)の5倍質量)、1、8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン0.87g(5.7mmol、2.6eq)を順に加えた後、減圧脱気、窒素置換を3回実施した。次に、Pd
2(dba)
3・CHCl
30.11g(0.11mmol、0.05eq)、dtbpf0.21g(0.44mmol、0.20eq)を加えた後、減圧脱気、窒素置換を3回実施した。続いて、減圧脱気、一酸化炭素置換を3回実施した後、80℃、常圧下(0MPaG)で5時間反応させて、Vadadustat中間体(3x)を製造した。取得した反応液を分析したところ、変換率は99.4%であった。
変換率=化合物(3x)の生成量(mol)/(化合物(3x)の生成量(mol)+化合物(1x)の残存量(mol))×100(%)
【0099】
(実施例2~18)
Vadadustat中間体(3x)の製造(バッチ反応)
表1及び表2に示す通り、グリシンエステル塩酸塩(2x)の種類(R2x)及び当量、溶媒の種類及び使用量、塩基の種類及び当量、金属触媒の種類及び当量、配位子の種類、反応温度、反応時間を変更した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0100】
(実施例19)
Vadadustat中間体(3x)の製造(フロー反応)
原料溶液保管容器に、2-ブロモ-3,5-ジクロロピリジン(1x)0.50g(2.2mmol)、グリシンエステル塩酸塩(2x)(R2x=メチル基(Me))0.42g(3.3mmol、1.5eq)、ジメチルアセトアミド16.7g((1x)の33倍質量)、トリブチルアミン1.06g(5.7mmol、2.6eq)を順に加えた後、減圧脱気、窒素置換を3回実施した。次に、Pd2(dba)3・CHCl30.11g(0.11mmol、0.05eq)、dtbpf0.21g(0.44mmol、0.20eq)を加えた後、減圧脱気、窒素置換を3回実施することにより、原料溶液を調製した。
プランジャポンプ(FLOM社製)を用いて上記で調製した原料溶液を0.4mL/分で送液し、マスフローコントローラー(株式会社中村超硬社製)を用いて一酸化炭素を2.0mL/分(2.0eq)で送気し、原料溶液及び一酸化炭素をT字型ミキサー(EYELA社製、内径2mm)内で混合することにより、スラグ流を形成させた。続いてライン(ステンレス、内径2.17mm、長さ9m)中で0.8時間滞留させて、Vadadustat中間体(3x)を製造した後、出口ラインから反応液を全量回収した。尚、温調装置(ThalesNano社製)を用いて滞留ラインを120℃に加熱し、背圧弁(Equilibar社製)を用いて反応圧力(ゲージ圧)を0.6MPaに調節した。取得した反応液を分析したところ、変換率は99%、収率は84%であった。
変換率=化合物(3x)の生成量(mol)/(化合物(3x)の生成量(mol)+化合物(1x)の残存量(mol))×100(%)
【0101】
(実施例20~23)
Vadadustat中間体(3x)の製造(フロー反応)
表1及び表2に示す通り、金属触媒の当量、配位子の当量、原料溶液送液速度、一酸化炭素送気速度、T字型ミキサーの内径、反応温度、反応圧力を変更した以外は、実施例19と同様に実施した。尚、実施例23では、Swagelok社製のT字型ミキサーを使用した。
【0102】
【0103】
【0104】
(実施例24)
Vadadustat中間体(4x)の製造(Vadadustat中間体(3x)の後処理なし)
【0105】
【化12】
反応容器に、2-ブロモ-3,5-ジクロロピリジン(1x)0.50g(2.2mmol)、グリシンエステル塩酸塩(2x)(R
2x=メチル基(Me))0.42g(3.3mmol、1.5eq)、ジメチルアセトアミド2.50g((1x)の5倍質量)、トリブチルアミン1.06g(5.7mmol、2.6eq)を順に加えた後、減圧脱気、窒素置換を3回実施した。次に、Pd
2(dba)
3・CHCl
30.11g(0.11mmol、0.05eq)、dtbpf0.21g(0.44mmol、0.20eq)を加えた後、減圧脱気、窒素置換を3回実施した。続いて、減圧脱気、一酸化炭素置換を3回実施した後、80℃、常圧下(0MPaG)で2時間反応させてVadadustat中間体(3x)を製造した。取得した反応液を分析したところ、変換率は100%であった。
変換率=化合物(3x)の生成量(mol)/(化合物(3x)の生成量(mol)+化合物(1x)の残存量(mol))×100(%)
上記で取得したVadadustat中間体(3x)を含む反応液に、3-クロロフェニルボロン酸0.38g(2.4mmol、1.1eq)、炭酸カリウム0.41g(3.0mmol、1.4eq)、Pd
2(dba)
3・CHCl
30.11g(0.11mmol、0.05eq)、dtbpf0.21g(0.44mmol、0.20eq)を加え、減圧脱気、窒素置換を3回実施した後、100℃で24時間反応させて第2のVadadustat中間体(4x)を製造した。取得した反応液を分析したところ、変換率は86.3%であった。
変換率=化合物(4x)の生成量(mol)/(化合物(4x)の生成量(mol)+化合物(3x)の残存量(mol))×100(%)
【符号の説明】
【0106】
1a 一酸化炭素供給部
1b 原料溶液供給部
2 混合部
3 管状リアクター部
4 マスフローコントローラー
5 定量ポンプ
6 背圧弁
7 温度調節装置
8 バッチ式反応器