(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】ハイドロゲルマスク組成物、これを利用して製造されたハイドロゲルマスク及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/92 20060101AFI20240410BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20240410BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20240410BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20240410BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240410BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20240410BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20240410BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20240410BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20240410BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20240410BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20240410BHJP
A61K 8/9794 20170101ALI20240410BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
A61K8/92
A61K8/02
A61K8/06
A61K8/31
A61K8/37
A61K8/39
A61K8/55
A61K8/73
A61K8/81
A61K8/891
A61K8/9789
A61K8/9794
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2021521967
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(86)【国際出願番号】 KR2019016743
(87)【国際公開番号】W WO2020111875
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-07-27
(31)【優先権主張番号】10-2018-0152244
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0156611
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】アモーレパシフィック コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【住所又は居所原語表記】100, Hangang-daero, Yongsan-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】イム,ジェミン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ジヘ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミョンウ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ウンジ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ジュア
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ヤンギュ
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0012261(KR,A)
【文献】特開2008-050305(JP,A)
【文献】特開2009-108005(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0085284(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1902272(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイル
、バター
、水及び乳化剤を含むナノサイズの乳化エマルジョン;及びゲル化剤;を含
み、
前記バターは、シアバター、ココアバター、ライスバター、アーモンドバター、杏(あんず)バター、クプアスバター、ピスタチオバター、オリーブバター、ババスバター、ホホババター、コクムバター、カカオバター、マンゴーバター、大豆バター、グレープシードバター及びマカダミアシードバターからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、ハイドロゲルマスク組成物。
【請求項2】
前記ナノ乳化エマルジョンの粒子の大きさは20~500nmであることを特徴とする、請求項1に記載のハイドロゲルマスク組成物。
【請求項3】
前記乳化剤は、ジステアリン酸ポリグリセリル-3メチルグルコース、水添レシチン及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項
1に記載のハイドロゲルマスク組成物。
【請求項4】
前記ゲル化剤は、ガラクトマンナン、グルコマンナン、グアーガム、ローカストビーンガム
、アガー、アルギン、カラギーナン、キサンタンガム及びゲランガムからなる群から選択される動植物抽出系水溶性天然高分子;及び
プルロニック(登録商標)、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、
及びポリエーテル
からなる群から選択される水溶性合成高分子;の中のいずれか1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のハイドロゲルマスク組成物。
【請求項5】
前記オイルは、水添C6-14オレフィンポリマー
、シリコーンオイル、エステル型オイル及び天然
由来オイルからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のハイドロゲルマスク組成物。
【請求項6】
前記ナノ乳化エマルジョンは、保湿剤及び皮膚コンディショニング剤のいずれか一つ以上をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のハイドロゲルマスク組成物。
【請求項7】
請求項1のハイドロゲルマスク組成物を用いて製造されたものであって、
網状構造を持つシート剤形のハイドロゲル;及び
前記ハイドロゲルの内部に担持されたナノサイズの乳化エマルジョンを含み、
皮膚へ貼り付けた後、前記ナノ乳化エマルジョンがハイドロゲルの内部から皮膚へ放出されることを特徴とするハイドロゲルマスク。
【請求項8】
(a)油相成分を溶解させて油相部を製造する段階;
(b)水相成分を溶解させた後、乳化剤を添加して水相部を製造する段階;
(c)前記製造された油相部と水相部を混合する段階;
(d)前記油相部と水相部の混合物を乳化させてナノ乳化エマルジョンを製造する段階;
(e)前記製造されたナノ乳化エマルジョンを加熱させた後、ゲル化剤及び溶剤を投入してナノ乳化エマルジョンが担持されたハイドロゲル溶液を製造する段階;及び
(f)前記製造されたナノ乳化エマルジョン担持ハイドロゲル溶液を冷却する段階;を含
み、
前記油相成分はオイル及びバターを含み、
前記バターは、シアバター、ココアバター、ライスバター、アーモンドバター、杏(あんず)バター、クプアスバター、ピスタチオバター、オリーブバター、ババスバター、ホホババター、コクムバター、カカオバター、マンゴーバター、大豆バター、グレープシードバター及びマカダミアシードバターからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、ハイドロゲルマスクの製造方法。
【請求項9】
前記(d)段階の乳化は、超高圧乳化方式によって行われることを特徴とする、請求項
8に記載のハイドロゲルマスクの製造方法。
【請求項10】
前記エステル型オイルは、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、トリエチルヘキサノイン、エチルヘキサン酸セチルからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項
5に記載のハイドロゲルマスク組成物。
【請求項11】
前記天然由来オイルは、スクワラン、ミネラルオイルのうちの1種以上であることを特徴とする、請求項
5に記載のハイドロゲルマスク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年11月30日付韓国特許出願第10-2018-0152244号及び2019年11月29日付韓国特許出願第10-2019-0156611号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、美容製品として使われるハイドロゲルマスクに係り、より詳しくは、ナノスケールの粒子を含む乳化エマルジョンを適用することによって、従来と違って網状構造を持つハイドロゲルから乳化粒子が放出されて皮膚に油分(オイル/バター)保湿膜を形成することができ、これを通じて皮膚の保湿保持力、栄養感及び皮膚弾力を向上させることができる、ハイドロゲルマスク組成物、これを利用して製造されたハイドロゲルマスク及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
化粧品用マスクパックは、不織布素材のベースシートに、化粧水を添加するか、機能性があると知られている様々な成分を加えて製造されるものであって、皮膚の緊張の緩和、皮膚の保湿、弾力の増進、小じわの緩和、皮膚表面の老廃物及び汚染物の吸着除去、古い角質の除去、余分の皮脂の除去、滑らかさ増進、心理的安定効果及び栄養分供給などの効能を与える。これは、きれいで健康な皮膚を保とうとする人間の欲望に符合するため、マスクパックの市場は漸進的に大きくなっていており、環境汚染による皮膚損傷へのおそれが台頭するに伴い、その市場規模は最近さらに急速に成長している。
【0004】
しかし、不織布素材のベースシートを化粧水などの添加剤に浸して持続的に化粧水吸収を誘導した剤形の場合は、使用後10~15分経過すれば水分が全て蒸発し、化粧水に含まれた美容成分を効果的に皮膚に浸透させられなかったり、シートが顔から外れやすかったりするなどの問題点がある。また、化粧水が垂れ落ちることを防ぐためにグリセリンなどの粘度増進保湿剤の量を相当に添加しなければならないが、これは保湿効果を与えるものの、過剰量で使用する際、返って皮膚から水分を奪って皮膚の呼吸を阻み、また、皮膚を粗くして毛穴が大きくなるという短所を持っている。
【0005】
そこで、前記のような不織布を素材にしたベースシートの短所を解消するために、水分保持力が向上しているハイドロゲル(Hydrogel)を利用したマスクパックが最近人気を得ている。ハイドロゲルは、精製水を分散媒体とする3次元の親水性高分子網状構造を持つ物質であって、多量の水分を含みながらも天然組職のような柔軟性を示すため、医薬、美容及び環境産業など様々な分野で活発に研究開発されている。特に、ハイドロゲルは、人体の細胞基質と類似する構造を示し、不活性でありながら弾性に優れ、酸素及び栄養分透過率が良好であって優れた生体適合性を示すので、医薬及び美容産業でさらに関心を持っている。その中で、美容分野の場合、ハイドロゲルの弾性、皮膚密着性、水分保持力(水分感)、クーリング感及び柔らかい肌触りなどを利用して、使用成分の種類及び含量を調節することによる、種々の、保湿及び栄養供給または角質除去の効果を強化させることができるハイドロゲルマスクが持続的に開発されている。
【0006】
このような既存のハイドロゲルマスクは、天然由来のゲル化剤と多糖類及び様々な美容組成物を混合した後、加温及び冷却する方式で製造されるなど、上記のような長所によって、その使用頻度が徐々に増加する傾向にある。しかし、既存のハイドロゲルマスクは、しっとりした使用感の保湿感に劣り、保湿保持力がよくないため、使用後にエッセンス及びクリームを塗り足さなければならないという煩わしさがある。このような短所を補うために、オイルを含む乳化剤形のハイドロゲルが開発されたが、マイクロスケールのオイル成分がハイドロゲルの内部から放出されるというのでないために、皮膚への伝達が難しく、また、保湿力を向上させることに限界がある。よって、このような使用後の保湿保持力の問題を補って、皮膚の健康を向上させることができる新規なハイドロゲルマスクの研究開発が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、ナノスケールの粒子を含む乳化エマルジョンを適用することで、従来と違って、網状構造を持つハイドロゲルから乳化粒子が放出されて皮膚に油分(オイル/バター)保湿膜を形成することができ、これを通じて皮膚の保湿保持力、栄養感及び皮膚弾力を向上させることができる、ハイドロゲルマスク組成物、これを利用して製造されたハイドロゲルマスク、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、オイル及びバターのいずれか一つ以上、水及び乳化剤を含むナノサイズの乳化エマルジョン;及びゲル化剤;を含むハイドロゲルマスク組成物を提供する。
【0009】
また、本発明は、網状構造を持つシートの剤形のハイドロゲル;及び前記ハイドロゲルの内部に担持されたナノサイズの乳化エマルジョンを含み、皮膚への貼り付けの後、前記ナノ乳化エマルジョンがハイドロゲルの内部から皮膚に放出されることを特徴とするハイドロゲルマスクを提供する。
【0010】
また、本発明は、(a)油相成分を溶解させて油相部を製造する段階;(b)水相成分を溶解させた後に乳化剤を添加して水相部を製造する段階;(c)前記製造された油相部と水相部とを混合する段階;(d)前記の油相部と水相部との混合物を乳化させてナノ乳化エマルジョンを製造する段階;(e)前記製造されたナノ乳化エマルジョンを加熱させた後、ゲル化剤及び溶剤を投入して、ナノ乳化エマルジョンが担持されたハイドロゲル溶液を製造する段階;及び(f)前記製造されたナノ乳化エマルジョン担持ハイドロゲル溶液を冷却する段階;を含むハイドロゲルマスクの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるハイドロゲルマスク組成物、これを利用して製造されたハイドロゲルマスク及びその製造方法によれば、ナノスケールの粒子を含む乳化エマルジョンを適用することによって、従来と違って網状構造を持つハイドロゲルから乳化粒子が放出されて、皮膚に油分(オイル/バター)保湿膜を形成することができ、これを通じて皮膚の保湿保持力、栄養感及び皮膚弾力を向上させることができるという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】通常のハイドロゲルマスクにおける、ハイドロゲルとマイクロ乳化粒子が絡まった構造(A)、及び、本発明の一実施例によるハイドロゲルマスクにおける、ハイドロゲルとナノ乳化粒子が絡まった構造(B)を、それぞれ示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施例及び比較例によるハイドロゲルマスクにおいて、ハイドロゲルから離水された離水液内の乳化粒子の含有可否を確認するためのグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0014】
本発明によるハイドロゲルマスク組成物は、オイル及びバターのいずれか一つ以上、水及び、乳化剤を含むナノサイズの乳化エマルジョン;及びゲル化剤を含む。
【0015】
前記オイルは、ハイドロゲルマスクを人体の皮膚に貼り付けた後で保湿保持力などを与え、また、栄養分を供給するために使われる油相成分であって、当業界にて同一の目的で使われる通常のオイルを、特に制限せずに使うことができる。具体的に、このようなオイルとしては、水添C6-14オレフィンポリマー、スクワラン、ミネラルオイル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、トリエチルヘキサノイン、エチルヘキサン酸セチル、シリコーンオイル、エステル型オイル及び天然由来オイルからなる群から選択される1種以上を例示することができる。
【0016】
前記バターもまた前記オイルと同様に保湿保持力などを与えて栄養分を供給するために使われる油相成分であって、当業界にて同一の目的で使われる通常のバターを、特に制限せずに使うことができる。このようなバターとしては、シアバター(shea butter)、ココアバター、ライスバター、アーモンドバター、杏(あんず)バター、クプアスバター、ピスタチオバター、オリーブバター、ババスバター、ホホババター、コクムバター、カカオバター、マンゴーバター、大豆バター、グレープシードバター及びマカダミアシードバターからなる群から選択される1種以上を例示することができる。前記水もまた、精製水など、当業界にて水相成分として使用する通常のものでありうるなど、特に制限はない。
【0017】
前記乳化剤は、水中油型(O/W、oil in water)の乳化エマルジョン(emulsion)を形成するために使われるものであって、陰イオン界面活性剤以外に、水中油型(O/W)乳化エマルジョンを形成させることができるものであれば、特に制限せずに適用されうる。ここで、前記陰イオン界面活性剤としては、ジステアリン酸ポリグリセリル-3メチルグルコース、水添レシチン、及びこれらの混合物などを例示することができる。
【0018】
以上の成分を含む乳化エマルジョンは、超高圧乳化方式によってナノ粒子化されたものであって、前記ナノ乳化エマルジョンの粒子サイズは、(または、前記乳化エマルジョンに含まれたオイルのナノ粒子サイズは、)20ないし500nm、好ましくは50ないし300nm、より好ましくは100ないし150nmでありうる。前記のように乳化エマルジョンの粒子がナノサイズを持つならば、従来と違って、ゲル化された後の網状構造を持つハイドロゲルの内部から外部への(すなわち、皮膚方向への)、乳化エマルジョン放出が容易になるので、皮膚に油分の膜を形成することができるのであり、これに伴い、ハイドロゲルマスクの短所だった低い保湿保持力、栄養感及び皮膚弾力などを改善または向上することができるだけでなく、ハイドロゲルマスクを使った後に、保湿の維持のために伴って行っていたクリーム及びエッセンスを上塗りする段階が不要になって、便宜性も向上するという長所を持つようになる。
【0019】
前記ゲル化剤は、前記マスク組成物をゲル化させるために使われるものであって、マスクシートの主な構成要素であるハイドロゲルを形成させる成分である。前記ゲル化剤は、動植物抽出系の水溶性天然高分子、及び水溶性合成高分子のいずれか一つ以上を含むものでありうる。前記動植物抽出系の水溶性天然高分子としては、ガラクトマンナン(galactomannan、多糖類)、グルコマンナン(glucomannan、多糖類)、グアーガム(guar gum)、ローカストビーンガム(locust bean gum、多糖類)、プルロニック(登録商標)(pluronic)、アガー(agar;寒天)、アルギン(algin)、カラギーナン(carrageenan、多糖類)、キサンタンガム(xanthan gum)及びゲランガム(gellan gum)を例示することができるのであり、前記水溶性合成高分子としては、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル及びセルロース誘導体を例示することができる。
【0020】
前記ハイドロゲルマスク組成物の全体の重量に対して、前記オイル及びバターのいずれか一つ以上の含量は1ないし20重量%、好ましくは2ないし10重量%でありうるのであり、前記乳化剤の含量は0.5ないし5重量%、好ましくは1ないし3重量%でありうるのであり、前記ゲル化剤の含量は0.5ないし5重量%、好ましくは1ないし3重量%でありうるのであり、前記水の含量は、前記オイル、乳化剤及びゲル化剤を除いた残りでありうる。
【0021】
一方、前記ナノ乳化エマルジョンは、必要に応じて保湿剤(または、溶剤)及び皮膚コンディショニング剤のいずれか一つ以上をさらに含むことができる。前記保湿剤としては、グリセリン、PPG、PEG及びブチレングリコールといったポリオールなど、当業界で一般に用いられる化合物を例示することができ、前記皮膚コンディショニング剤としては当業界で一般に用いられるものでありうる。
【0022】
次に、今まで説明したハイドロゲルマスク組成物を利用して製造されたハイドロゲルマスクについて説明する。前記ハイドロゲルマスクは、網状構造を持つシートの剤形のハイドロゲル、及び前記ハイドロゲルの内部に担持されたナノサイズの乳化エマルジョンを含み、皮膚へ貼り付けた後、前記ナノ乳化エマルジョンがハイドロゲルの内部から皮膚へ放出されることを特徴とする。
【0023】
前記ハイドロゲルは、水分を多量に含むことができることから、クーリング感、保湿力及び密着力などに優れ、顔などの皮膚に貼り付けられて皮膚の緊張の緩和、皮膚の保湿、弾力の増進、小じわの緩和、皮膚表面の老廃物及び汚染物の吸着の除去、古い角質の除去、余分の皮脂の除去、滑らかさの増進、心理的安定効果及び栄養分供給などの効能を与えるマスクシートの主な構成要素である。前記ハイドロゲルは、前述したゲル化剤によって形成されるのであり、ゲル化剤に対する説明は前述した内容でもって代替する。一方、前記ハイドロゲルは、必要に応じて天然抽出物及び機能性(しわ改善、美白など)化粧品成分など、化粧品に一般的に使われる成分をいずれか一つ以上さらに含むことができる。
【0024】
前記ハイドロゲルの厚さは、0.1ないし5mm、好ましくは0.5ないし5mm、より好ましくは1ないし4mmであって、前記ハイドロゲルの厚さが0.1mm未満の場合、前記ナノ乳化エマルジョンの担持が容易ではないのであり得るのであり、5mmを超過する場合は、マスクシートを皮膚に貼り付けることが容易ではなかったり、貼り付けても短時間内に皮膚から離脱する恐れがある。一方、前記ナノ乳化エマルジョンまで含んだ場合の厚さも前記の厚さと類似でもよいが、ナノ乳化エマルジョンの種類及び性状などによって可変されるなど、前記ハイドロゲルマスクの厚さには特に制限がない。
【0025】
前記ナノ乳化エマルジョンは、マスクを使用した後で2次的に保湿を維持して皮膚に栄養分を供給するためのものであって、前記ハイドロゲルの内部に一部分にて含まれるか、内部の全面にわたって均一に分散させた形態でありうるなど、その分布形態には特に制限がなく、使用者が感じる審美感を考慮して、なるべく審美性が考慮された形態が好ましい。その他、前記ナノ乳化エマルジョンについてのハイドロゲルの面積当たりの分布重量にも制限がない。
【0026】
本発明は、乳化エマルジョンの粒子の大きさがマイクロスケールであった既存のものとは違って、超高圧乳化方式を通じてナノスケールで適用したことに特徴がある。
図1は、通常のハイドロゲルマスクにて、ハイドロゲルとマイクロ乳化粒子が絡まった構造(A)、及び本発明の一実施例によるハイドロゲルマスクにて、ハイドロゲルとナノ乳化粒子が絡まった構造(B)を、それぞれ示す模式図である。
【0027】
つまり、既存のマイクロ乳化粒子を適用したハイドロゲルマスクの場合、
図1のAに図示されたように、乳化粒子がマイクロスケールで分布してハイドロゲルの網状構造を抜け出ることが不可能である。これに対し、本発明のナノ乳化粒子を適用したハイドロゲルマスクの場合は、
図1のBに図示されたように、乳化粒子がナノスケールで分布し、離水作用時にハイドロゲルの網状構造から外部へ放出されうる。
【0028】
一方、前記ハイドロゲルマスクが折り曲げられたり破れるなどの損傷を減少させ、マスクの皮膚接触面を保護し、また、ナノ乳化エマルジョンの汚染及び消滅を防ぐために、前記ハイドロゲルマスクの一面はモールドトレイ(mold tray)に受け入れられてもよく、他の一面には離形フィルムが貼り付けられてもよい。この場合、使用者が製品を使用する際には、前記モールドトレイと離形フィルムとを剥離して取り除いた後で使わなければならない。よって、前記モールドトレイには前記ハイドロゲルマスクが安定的に取り付けられるように、マスクの大きさ及び形状にて陰刻(凹部)が形成されることが好ましい。
【0029】
このようなモールドトレイ及び離形フィルムの材質としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリエステル(PS)、アルミニウム、ナイロン、ポリプロピレン(PP)、配向(延伸)ポリプロピレン(Oriented Poly Propylene;OPP)、キャスト(無延伸)ポリプロピレン(Cast Poly Propylene;CPP)、高密度ポリエチレン(High Density Polyethylene;HDPE)、低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene;LDPE)、線形低密度ポリエチレン(Linear Low Density Polyethylene;LLDPE)及びこれらの混合物を例示することができる。その他、前記モールドトレイ及び離形フィルムは、審美感付与及び製品の透明性確保のために透明なものであってもよい。
【0030】
次に、本発明によるハイドロゲルマスクの製造方法について説明する。前記ハイドロゲルマスクの製造方法は、(a)油相成分を溶解させて油相部を製造する段階、(b)水相成分を溶解させた後、乳化剤を添加して水相部を製造する段階、(c)前記製造された油相部と水相部を混合する段階、(d)前記油相部と水相部の混合物を乳化させてナノ乳化エマルジョンを製造する段階、(e)前記製造されたナノ乳化エマルジョンを加熱させた後、ゲル化剤及び溶剤を投入して、ナノ乳化エマルジョンが担持されたハイドロゲル溶液を製造する段階、及び(f)前記製造されたナノ乳化エマルジョン担持ハイドロゲル溶液を冷却する段階を含む。
【0031】
本発明は、オイル/バター成分が含まれた水中油型エマルジョンをナノ粒子化するための一つの手段として超高圧乳化方式を適用することが好ましく(すなわち、前記d段階の乳化工程に超高圧乳化方式を適用することが好ましい)、これを通じてオイル/バター成分による粘度は維持されながらも流れ性は向上され、ナノ乳化エマルジョンがマスクシート上に均一に充填されうる。
【0032】
ただし、本発明の乳化工程が超高圧乳化方式に限定されるものではなく、前記超高圧乳化方式以外に、例えば、転相温度乳化法、反転乳化法、D相乳化法、MPG(Micro Porous Glass;ミクロ・ポーラス・ガラス)乳化法、液晶乳化法、ナノ乳化法、多重乳化(多重エマルション;multiple emulsion)法、ピッカリング乳化(Pickering emulsions)法などといった、ナノ粒子化のための様々な乳化方式が利用されうることは勿論である。
【0033】
その他、前記(a)及び(b)段階において、油相成分と水相成分との溶解は、加熱など、油相及び水相の成分を溶解させることができる手段によって行われうる。また、前記(d)段階の乳化工程が行われる以前や以後には脱気及び冷却の工程のいずれか一つ以上の工程が行われてもよい。
【0034】
一方、前記ハイドロゲルマスクの製造方法は、マスクの商品化のために、最終的に製造されたハイドロゲルマスクを容器に包装する段階をさらに含むことができるのであり、包装容器や包装方法については、当業界で知られている通常のマスクシートのそれを準用する。その他、ハイドロゲルマスクに関する基本的な説明は、当業界で一般に用いられているものによることができるので、本発明では省略する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を理解しやすくするために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変更及び修正が可能であることは当業者にとって自明なことであり、このような変更及び修正が添付の特許請求範囲に属することも当然である。
【0036】
[実施例1]ナノエマルジョンを含むハイドロゲルマスクの製造
先ず、水添C6-14オレフィンポリマー及びスクワランからなるオイルを約75℃に加温して溶解させることで油相部を製造した。次いで、精製水とグリセリン(保湿剤)を約75℃に加温して溶解させた後、ここに乳化剤としてジステアリン酸ポリグリセリル-3メチルグルコースを投入して、約10分余り水和させて水相部を製造した。次いで、前記それぞれ製造された油相部と水相部を3分間ホモミキシングした後、その混合物を脱気及び冷却し、冷却された混合物を、M-110EH-30 Microfluidizer(登録商標) Processor(Microfluidics社)でもって、3サイクル(Cycle)以上の間、1,000バール(bar)(100MPa)の圧力を加えて乳化させることによってナノ乳化エマルジョンを製造した。次に、前記製造されたナノ乳化エマルジョンを約75~85℃に加温した後、ここにゲル化剤としてのカラギーナンとローカストビーンガム、そして溶剤のブチレングリコールを投入して、ナノ乳化エマルジョンが担持されたハイドロゲル溶液を製造したのであり、前記製造されたナノ乳化エマルジョン担持ハイドロゲル溶液を冷却して、下記表1の組成を持つハイドロゲルマスクを製造した。
【0037】
【0038】
[実施例2]ナノエマルジョンを含むハイドロゲルマスクの製造
前記表1の組成のように、オイルの中でスクワランをジメチコンに変更し、乳化剤を水添レシチンに変更し、キレート剤のエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム(EDTA)を追加したことを除いては、前記実施例1と同様に行ってハイドロゲルマスクを製造した。
【0039】
[実施例3]ナノエマルジョンを含むハイドロゲルマスクの製造
前記表1の組成のように、スクワラン(オイル)の代わりにシアバターを添加したことを除いては、前記実施例1と同様に行ってハイドロゲルマスクを製造した。
【0040】
[比較例1]ハイドロゲルマスクの製造
通常の乳化ハイドロゲルマスクの製造方法によるものであって、先ず、精製水とグリセリン(保湿剤)を約75~85℃に加温して溶解させた後、ここにゲル化剤としてカラギーナンとローカストビーンガム、そして溶剤のブチレングリコールを投入して完全に溶解させた。続いて、ここに水添C6-14オレフィンポリマー及びスクワランからなるオイルを添加して3分間ホモミキシングした後、冷却させてハイドロゲルマスクを製造した。
【0041】
[試験例1]
ハイドロゲルマスクの離水液内におけるエマルジョン乳化粒子の含有の有無(如何)の評価
前記実施例1ないし3及び比較例1で製造された各ハイドロゲルマスクにおいて、ハイドロゲルから離水された離水液内における乳化粒子の含有の有無(如何)を評価した。
図2は、本発明の一実施例及び比較例によるハイドロゲルマスクにおいて、ハイドロゲルから離水された離水液内の乳化粒子の含有可否を確認するためのグラフである。前記実施例1ないし3及び比較例1の各ハイドロゲルマスクにおいて、ハイドロゲルから離水された離水液内における乳化粒子の含有の有無(如何)を確認した結果、
図2に図示されたように、ナノ乳化エマルジョンを適用した実施例1ないし3のうち、実施例1及び2は離水液内の乳化粒子の直径が平均133nmの粒度分布を示し、実施例3は離水液内の乳化粒子の直径が平均68nmの粒度分布を示した。一方、前記比較例1の場合は、ナノスケールの粒子が全く観察されなかった。これによって、本発明のようなハイドロゲルマスクの組成及び製造方法によると、乳化エマルジョンの粒子がナノスケールで形成され、網状構造のハイドロゲルから放出されうるのであり、窮極的には皮膚に油分(オイル/バター)の保湿膜を形成して皮膚の健康を向上させることができる。