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特許7470113医薬組成物の自動製造用の小型デバイス及び関連方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】医薬組成物の自動製造用の小型デバイス及び関連方法
(51)【国際特許分類】
   B01F 35/88 20220101AFI20240410BHJP
   B01F 35/71 20220101ALI20240410BHJP
   B01F 35/60 20220101ALI20240410BHJP
   B01J 4/02 20060101ALI20240410BHJP
   A61J 3/00 20060101ALI20240410BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
B01F35/88
B01F35/71
B01F35/60
B01J4/02 B
B01J4/02 C
A61J3/00 310C
A61K9/08
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021523054
(86)(22)【出願日】2019-10-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2019079311
(87)【国際公開番号】W WO2020084159
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-10-24
(31)【優先権主張番号】1859870
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511039061
【氏名又は名称】フェリング ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】ルーンバック,ローベルト
(72)【発明者】
【氏名】ソーニエ,ジョスラン
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0257974(US,A1)
【文献】特開2014-117294(JP,A)
【文献】特開昭64-051131(JP,A)
【文献】特開平09-033538(JP,A)
【文献】特開平09-021687(JP,A)
【文献】特開2010-022579(JP,A)
【文献】特表2008-525125(JP,A)
【文献】実開昭62-056135(JP,U)
【文献】特開昭56-064901(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0150379(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 35/88
B01F 35/71
B01F 35/60
B01J 4/02
A61J 3/00
A61K 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬組成物を製造するためのデバイス(100)であって、
- 第1の制御された雰囲気用の筐体(103)(以下、第1筐体という)と、前記第1筐体(103)内にある、
- 混合ユニット(10、60)と、
を含み、
前記混合ユニットは、
- 支持部(12、62)と、
- 前記支持部上に受け入れられた混合容器(16)と、
- 複数の貯蔵部(18、20)であって、前記貯蔵部のそれぞれは、薬剤の前記組成物中に使用されるある量の出発製品を収容することができる、複数の貯蔵部(18、20)と、
- ある量の出発物質を前記混合容器に分与するように設計されている少なくとも1つの分与デバイス(22、44、64、66)であって、前記分与デバイスは、貯蔵部と組み立てられている又は組み立てられるように設計されている、分与デバイス(22、44、64、66)と、
- 前記混合容器及び/又は前記混合容器の内容物を撹拌することができる撹拌デバイス(24、68)と、
を含む、混合アセンブリ(102)を含み、
前記製造デバイスは、前記少なくとも1つの分与デバイスと前記撹拌デバイスとを制御するための電子モジュール(28、74)を更に含
前記混合容器(16)の前記内容物を少なくとも1つの包装容器内に包装することが可能な包装アセンブリ(106)を更に含み、前記包装アセンブリ(106)は、包装ユニット(140)が含まれる制御された雰囲気を有する第2筐体(138)を含み、
前記第2筐体(138)が、前記第1筐体(103)内に位置する
前記デバイス(100)。
【請求項2】
前記混合アセンブリ(202)の前記第1筐体(103)は第1チャンバ(107)を画定し、前記第1チャンバ(107)内で、前記第1筐体は、ISOエアクラス7の制御された雰囲気を維持するように設定されている、請求項1に記載の製造デバイス。
【請求項3】
前記混合ユニット(10)は、前記支持部に対して移動可能な機械的なアーム(14)を更に含み、前記機械的なアームの端部はカップリング部材(36、38)を含み、前記機械的なアームは、前記複数の貯蔵部(18、20)のうちの少なくとも1つを前記混合容器(16)に対して移動させるように設計されている、請求項1又は2に記載の製造デバイス。
【請求項4】
前記混合ユニット(60)は、前記混合容器を移動させるためのデバイス(68)を含み、前記混合容器を前記少なくとも1つの分与デバイス(44、64、66)に対する分与位置に配置することができる、請求項1又は2に記載の製造デバイス。
【請求項5】
前記複数の貯蔵部は、少なくとも1つの固体貯蔵部(18)及び/又は少なくとも1つの液体貯蔵部(20)を含み、
前記混合ユニットは、前記少なくとも1つの固体貯蔵部(18)と組み立てられた又は組み立てられるように設計された少なくとも1つの固体分与デバイス(44)であって、前記固体分与デバイスは、ある量の粉末状固体組成物を前記混合容器(16)に分与するように設計されている、固体分与デバイス(44);及び/又は前記少なくとも1つの液体貯蔵部(20)と組み立てられた又は組み立てることが可能な少なくとも1つの液体分与デバイス(22、66)であって、前記液体分与デバイスは、ある量の液体組成物を前記混合容器に分与することができる、液体分与デバイス(22、66)を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造デバイス。
【請求項6】
前記撹拌デバイス(24、68)は、前記混合容器(16)を受け入れて前記混合容器を回転させるように設計された遠心デバイス;磁気撹拌デバイス;及び機械的な撹拌デバイスの中から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造デバイス。
【請求項7】
前記混合ユニットは、前記混合容器(16)を受けるように設計された秤量デバイス(23)を更に含み、前記秤量デバイスは、前記電子制御モジュール(28、74)に電子的に接続されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造デバイス。
【請求項8】
前記混合ユニットは、前記混合容器(16)の前記内容物を解析することができる少なくとも1つの解析デバイス(25、26、70、72)を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造デバイス。
【請求項9】
処理ユニット(104)を更に含み、前記処理ユニットは、前記混合容器(16)の前記内容物を処理することができ、フィルタ(124)を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の製造デバイス。
【請求項10】
前記第2筐体(138)は第2チャンバ(142)を画定し、前記第2チャンバ(142)内で、前記第2筐体は、ISO5又は同様の制御された雰囲気を維持することができる、請求項に記載の製造デバイス。
【請求項11】
前記第1チャンバ(107)の体積は、1m未満である、請求項2~10のいずれか一項に記載の製造デバイス。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の製造デバイス(100)による薬剤の製造方法であって、以下の工程、即ち、
- 第1貯蔵部(18、20)内に収容されているある量の出発物質を前記混合容器(16)に分与する工程と、
- 前記分与する工程を少なくとも1つの第2貯蔵部(18、20)に対して繰り返す工程と、その後、
- 前記混合容器(16)の前記内容物を撹拌する工程と、
を含む、製造方法。
【請求項13】
- 前記秤量デバイス(23)上に前記混合容器を受ける工程と、
- 貯蔵部(18、20)を前記混合容器(16)の上方に移動させることによって又は前記混合容器を前記貯蔵部若しくは少なくとも1つの分与デバイス(44、66)の下方に移動させることによって、その後、前記少なくとも1つの分与デバイス(22、44、81)を作動させ、第1貯蔵部内に収容されている出発物質の所定の質量を重力によって前記混合容器内に堆積させることによって、前記分与工程を実施する工程と、
- 前記所定の質量の前記堆積を前記秤量デバイスによって制御する工程と、
を含む、請求項7に記載の製造デバイスによる請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
- 前記撹拌工程後、前記少なくとも1つの解析デバイス(25)によって前記混合容器の前記内容物を解析する工程と、
- 前記解析の結果が期待した結果と異なる場合、ある量の出発物質を前記混合容器に添加する工程と、
を含む、請求項8に記載の製造デバイスによる請求項12又は13に記載の製造方法。
【請求項15】
- 液体組成物の形態の少なくとも1種の出発物質を前記混合容器(16)内に堆積させる工程と、
- 前記撹拌工程後、前記混合容器の前記内容物を濾過する工程と、
を含む、請求項9に記載の製造デバイスによる請求項1214のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記撹拌工程後、前記混合容器の前記内容物を少なくとも1つの包装容器内に包装する工程を含む、請求項10に記載の製造デバイス(100)による請求項1215のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬組成物を製造するためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
医薬組成物の製造は他の製品の製造とは異なる。実際、医薬組成物の製造は、社会にとってのその重要性及び公衆衛生に及ぼす可能性のあるリスクを考慮して、特別な規制の対象となっている。例えば、ほとんどの国では、医薬組成物が市販され得る前に、販売承認(MA:marketing authorization)を取得する必要がある。医薬組成物は、米国のFDA(Food and Drug Administration:食品医薬品局)又は欧州連合の欧州医薬品庁(フランスのANSM(Agence Nationale de Securite du Medicament et des Produits de Sante:フランス医薬品・保健製品安全庁)などの国家機関と連携する)などの政府機関が管理している。医薬組成物の製造は、特定の要件を満たさなければならない。特に、医薬組成物の製造は、製造業者がその生産プロセスにおいて満たさなければならない最低限の要件を記述したいわゆるGMP(Good Manufacturing Practice:医薬品の製造管理及び品質管理の基準)に準拠していなければならない。欧州医薬品庁は、EU-GMP(欧州連合のGMP)と呼ばれる要件を確認し、FDAは、米国連邦規則第21章に分類されるCGMP(current GMP:現行医薬品適正製造基準)と呼ばれる要件を確認し、世界保健機関(World Health Organization:WHO)もまた、他の約100か国によって施行されているGMP(「WHO GMP」)を定義する。以下において、GMPの準拠への言及は、以下、即ち、WHO GMP、欧州のEU-GMP、米国のCGMP、オーストラリアのGMP、カナダのGMP、及び日本のGMPのうちの少なくとも1つに準拠していることを指す。本発明の意味の範囲内の医薬組成物の製造は、GMPに準拠していなければならない。
【0003】
米国特許出願公開第2018/0080952(A1)号明細書は、実験室溶液用の自動ディスペンサを開示している。これは医療分野で使用できるものの、医薬組成物の製造用に意図されていない(手術器具洗浄溶液は医療分野内にあるが医薬組成物ではない)。米国特許出願公開第2011/0168293(A1)号明細書は、容器の充填方法を開示している。
【0004】
工業的に製造される医薬組成物は、一般に、数日間かかる方法に従い、大量に調製される。無菌環境内及び/又は制御された雰囲気下における調製条件は、多くの場合、制限的である。
【0005】
しかしながら、工業用バッチの自動小規模製造のみならず、特に、各患者に対する用量のカスタマイズを可能にする個別化医薬品の生産に関する研究が現在進められている。
【0006】
したがって、医薬品分野の衛生/安全性及び品質の条件(特にGMP)を尊重しつつ、医薬組成物を短期間内で少量生産する手段を有すると有利である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、そのような(好ましくは、固体出発物質の存在を排除しない液体医薬組成物の)生産手段を提供することを目的とする。このために、本発明の目的は、前述のタイプの自動製造デバイスであって、混合ユニットを含み、混合ユニットは、支持部と;支持部上に受け入れられた少なくとも1つの混合容器と;複数の貯蔵部であって、そのそれぞれは、薬剤の組成物中に使用されるある量の出発製品を収容するように設計されている、複数の貯蔵部と;ある量の出発物質を混合容器に分与することが可能な少なくとも1つの分与デバイスであって、分与デバイスは、貯蔵部と組み立てられている又は組み立てることが可能である、分与デバイスと;混合容器及び/又は混合容器の内容物を撹拌することが可能な撹拌デバイスと、を含む、前述のタイプの自動製造デバイスである。製造デバイスは、少なくとも1つの分与デバイスを制御するための電子モジュールを更に含む。
【0008】
本発明の他の有利な態様によれば、製造デバイスは、別個に又は任意の技術的に実現可能な組み合わせで組み込まれる以下の特徴、即ち、
- 混合ユニットは、支持部に対して移動可能な機械的なアームを更に含み、機械的なアームの一端はカップリング部材を含み、機械的なアームは、複数の貯蔵部のうちの少なくとも1つを混合容器に対して又は少なくとも1つの撹拌デバイスに対して移動させることができる、
- 混合ユニットは、混合容器を移動させるためのデバイスを含み、容器を少なくとも1つの分与デバイスに対する分与位置に配置するように設計されている、
- 複数の貯蔵部は、少なくとも1つの固体貯蔵部及び/又は少なくとも1つの液体貯蔵部を含み、混合ユニットは、少なくとも1つの固体貯蔵部と組み立てられた又は組み立てることが可能な少なくとも1つの固体分配デバイスであって、固体分配デバイスは、ある量の粉末状固体組成物を混合容器に分与することができる、固体分配デバイス;及び/又は少なくとも1つの液体貯蔵部と組み立てられた又は組み立てることが可能な少なくとも1つの液体分与デバイスであって、液体分与デバイスは、ある量の液体組成物を混合容器に分与することができる、液体分与デバイスを更に含む、
- 撹拌デバイスは、混合容器を受け入れて容器を回転させることができる遠心デバイス、磁気撹拌デバイス、及び機械的な撹拌デバイスの中から選択される、
- 混合ユニットは、混合容器を受けるように設計された秤量デバイスを更に含み、秤量デバイスは、電子制御モジュールに電子的に接続されている、
- 混合ユニットは、混合容器の内容物を解析することが可能な少なくとも1つの解析デバイスを更に含む、
- 製造デバイスは、製造方法の全工程の操作を制御する電子制御モジュールを含む、
- 製造デバイスは、処理ユニットを更に含み、処理ユニットは、混合容器の内容物を処理するように設計されており、好ましくはフィルタを含む、
- 製造デバイスは、混合容器の内容物を少なくとも1つの包装容器内に包装するように設計されている包装アセンブリを更に含む、
のうちの1つ以上を含む。
【0009】
本発明は、更に、上記の製造デバイスによる薬剤の製造方法であって、以下の工程、即ち、第1貯蔵部内に収容されているある量の出発製品を混合容器に分与する工程と、前の工程を少なくとも第2貯蔵部に対して繰り返す工程と、その後、混合容器の内容物を撹拌する工程と、その後、考えられる、混合容器の内容物の解析の工程と、を含む、製造方法に関する。
【0010】
本発明の他の有利な態様によれば、製造方法は、別個に又は任意の技術的に実現可能な組み合わせで組み込まれる以下の特徴、即ち、
- 混合容器は秤量デバイス上に配置され、分与工程は、貯蔵部を混合容器の上方に移動させることによって又は混合容器を貯蔵部若しくは少なくとも1つの分与デバイスの下方に移動させることによって、その後、少なくとも1つの分与デバイスを作動させ、第1貯蔵部内に収容されている出発物質の所定量を重力によって混合容器内に堆積させることによって、実施され、出発物質の所定量は所定の質量を有し、所定の質量の堆積は秤量デバイスによって制御される、
- 混合容器は、撹拌デバイス上に配置され、その後、撹拌デバイスの作動によって、混合容器の内容物が、撹拌の終了時に完全に均質化及び/又は可溶化されるまで、所定の時間にわたって混合される、
- 撹拌工程後、混合容器の内容物は少なくとも1つの解析デバイスによって解析され、解析の結果が期待した結果と異なる場合、ある量の出発物質が混合容器に添加され、期待する仕様に従う解析結果が得られるまで撹拌工程及び解析工程が再度実行される、
- 混合容器の容量を超える量の溶液を生産する必要がある場合、混合容器の内容物は別のより高容量の混合容器に移されてもよい、
- 混合容器内に堆積される少なくとも1種の出発物質は液体組成物であり、最終撹拌工程後、解析の結果が期待した結果に従うものである場合、混合容器の内容物は濾過の準備ができている、
- 撹拌工程後、混合容器の内容物は、少なくとも1つの包装容器内に包装される、
のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0011】
混合内容物はまた、可能であれば、解析又は濾過デバイスに直接移されてもよい。
【0012】
本発明は、単なる非限定的な例として記載される以下の説明を読み、図面を参照することでより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】混合ユニット及び包装ユニットを含む、本発明の一実施形態による製造デバイスの概略図を示す。
図2】本発明の第1実施形態による図1のデバイスの混合ユニットの概略図を示す。
図3】本発明の一実施形態による図2の混合ユニットの貯蔵部の概略断面図を示す。
図4】本発明の第2実施形態による混合ユニットの概略断面図を、同じ断面平面の両側から示す。
図5】本発明の第2実施形態による混合ユニットの概略断面図を、同じ断面平面の両側から示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の一実施形態による、医薬組成物を製造するためのデバイス100を示す。
【0015】
製造デバイス100は、特に、混合アセンブリ102、処理デバイス104、及び包装アセンブリ106を含む。製造デバイス100は、電子制御モジュール28を更に含む。
【0016】
混合アセンブリ102は、第1の制御された雰囲気用の筐体103及び混合ユニット10を含む。混合ユニット10は、図2に単独で示される。
【0017】
この第1筐体は、特に、(上流プロセスにおけるより高比率の微生物又は粒子のせいで)雰囲気中に存在していた可能性があり、混合ユニットの内容物を汚染していた可能性のある微生物又は粒子による汚染に対する保護を向上させるので、GMPの準拠を容易にするという点で有用である。従来の製薬工場では、GMPに準拠する生産を保証するために、工場を形成する建物の全室を、制御された雰囲気下に置く必要がある場合がある。これは、不動産に対する多大な制約を意味する。これとは対照的に、本発明は、混合セットを含む製造デバイスの使用を提案する。これは不動産的な性質のものではない。完全に対照的に、本発明は、「備品」のようなものである。なぜなら、本発明は、建物(薬局、病院等)内に置くことができ、必要であれば移動させることができる機器(ガラスキャビネットの形態をとることができる)だからである。制御されるのはこの「備品」の内部の雰囲気であり、この「備品」が取り付けられる建物は従来の建物(その内部雰囲気の保護は特にない)であり得る。
【0018】
混合ユニット10は、特に、支持部12と、支持部に対して移動可能な機械的なアーム14と、混合容器16と、複数の貯蔵部18、20と、出発製品を分与するための少なくとも1つのデバイス22と、秤量デバイス23と、撹拌デバイス24と、少なくとも1つの解析デバイス25、26とを含む。
【0019】
支持部12は、例えば、台座30と、直立部32と、直立部の間の特定の高さに配置されたレール34とを含む。レール34は、台座30に沿って主水平方向に延びる。
【0020】
機械的なアーム14は、レール34と組み立てられており、レールに沿って摺動する機械的手段を備える。機械的手段、例えば車輪は、電子モジュール28によって好ましくは制御される。
【0021】
機械的なアーム14は、1つ以上のカップリング部材36、38を含む。第1カップリング部材36は、例えば、機械的なクランプ部材である。後に詳述するように、第2カップリング部材38は、貯蔵部18と相互作用するように設計されている。
【0022】
混合容器16は、例えば、上部開口部39を含むビーカー型容器である。好ましくは、混合容器16は、1L未満、より好ましくは、10mL~500mLの容量を有する。
【0023】
貯蔵部18、20は、機械的なアーム14により支持部12に対して移動可能である。各貯蔵部18、20は、薬剤の組成物中に使用されるある量の出発製品を収容することができる。
【0024】
複数の貯蔵部18、20は、少なくとも1つの固体貯蔵部18及び/又は少なくとも1つの液体貯蔵部20を含む。好ましくは、複数の貯蔵部18、20は、少なくとも1つの液体貯蔵部20を含む。示される実施形態では、複数の貯蔵部18、20は、複数の固体貯蔵部18及び複数の液体貯蔵部20を含む。
【0025】
各固体貯蔵部18は、固体粉末状組成物の形態のある量の出発物質を収容することが可能である。貯蔵部18内に収容される出発物質は、例えば、薬剤の製造に使用される医薬品有効成分又は賦形剤である。
【0026】
示される実施形態では、混合ユニット10の各固体貯蔵部18は、図3に断面図で示される貯蔵部18と実質的に同一であるとみなされる。
【0027】
貯蔵部18は、バイアル40と、撹拌棒42と、分与機構44とを含む。バイアル40は、例えば、好ましくはUSPクラスVI(このため、米国の規則によれば生体適合性)の金属又はプラスチック材料等で作られており、固体粉末状組成物を受け入れることができる密閉内部空間46を画定する。
【0028】
分与機構44は、バイアル40と一体化されており、内部空間46の底壁を好ましくは形成している。分与機構44は、内部空間46の底部に開口部50を形成することができ、開口部50は、その大きさが(その開放又は閉鎖の程度に応じて)可逆的に制御されてもよい。
【0029】
有利な実施形態によれば、この開口部50は、構造がカメラのアイリス絞りの構造に似ている。したがって、この開口部は、一連の金属薄板(例えば、5~9つの薄板)を用いて形成することができ、薄板の縁部は、例えば正多角形を画定する。可能な実施形態によれば、開口部の開放又は閉鎖は、アイリス絞りのリング上に配置されたピンにより行われ、これにより、アイリス絞りの開放又は閉鎖を、アイリス絞りの縁部に配置された制御要素によって機械的に可能にする。したがって、好ましい実施形態では、分与機構44は、完全開放と最大閉鎖との間の連続調節を可能にするアイリス絞りを含む。絞りの開放/閉鎖は、電子モジュール28によって好ましくは制御される。
【0030】
撹拌棒42の第1端部は、内部空間46内に受け入れられている。撹拌棒の第2端部48は、バイアル40、好ましくはバイアルの上部分の外に出ている。
【0031】
機械的なアーム14の第2カップリング部材38は、固体貯蔵部18と相互作用するように設計されており、特に、撹拌棒42を移動させることが可能なモータを含む。
【0032】
各液体貯蔵部20は、好ましくはUSPクラスVI材料等で作られた、例えば、ステンレス鋼製の又は使い捨てプラスチック袋の形態のケーシング52を含む。各液体貯蔵部20は、分与デバイス22との組み立て用の手段を更に含む。液体貯蔵部20は、特に、水又は賦形剤若しくは有効成分の溶液を収容することが意図されている。
【0033】
好ましくは、各貯蔵部18、20は、識別子、例えば、QRコード型の視覚識別子を含み、機械的なアーム14は、識別子を認識するように設計されたリーダを含む。
【0034】
分与デバイス22は、例えば、特に、スロットル弁又は「ピンチ弁」型の分与弁である。「ピンチ弁」型デバイスは、液体をフレキシブルチューブ(例えば、合成ポリマー製)内に流し、このチューブを外側から(例えば機械的にスロットリングデバイスによって、又はこのフレキシブルチューブをその外面から圧迫する圧縮空気を注入することによって)挟んで、流れを制御することにより構成される。こうしたデバイスは、(オールオアナッシングシステム(all-or-nothing system)とは対照的に)特に比例ピンチ弁型デバイスのときに可能となる高い精度が理由で有利である。こうしたデバイスは、スロットルデバイスと液体とを分離するという点でも有利である(液体はフレキシブルチューブの内部表面とだけ接触し、それゆえ、汚染のリスクが低下するので、GMPの準拠を容易にする)。このデバイスは、完全密閉の閉鎖を可能にすることからも有利である。第1の変形実施形態によれば、分与デバイス22は、支持部12に対して変位されてもよい。第2の変形実施形態によれば、分与デバイス22は、混合容器16の上方に位置する。
【0035】
精密秤量デバイス型の秤量デバイス23は、混合容器16を受ける又は受けることができる。好ましくは、秤量デバイス23は、電子モジュール28に接続された電子秤量デバイスである。
【0036】
撹拌デバイス24は、混合容器16の内容物を撹拌することができる。撹拌デバイス24は、混合容器16を受ける又は受けることができる。例えば、混合容器16と組み立てられた撹拌デバイス24は、秤量デバイス23上に配置されている。
【0037】
示される実施形態では、撹拌デバイス24は遠心機である。或いは、撹拌デバイスは、例えば、超音波浴、撹拌ブレードタイプの機械的な撹拌、又は磁気撹拌のものであってもよい。任意選択的に、撹拌デバイス24は、混合容器16を冷却又は加熱するための要素を備えてもよい。
【0038】
電子モジュール28に接続された少なくとも1つの解析デバイス25、26は、混合容器16の内容物を制御することを意図したものである。示される実施形態では、混合ユニット10は、解析デバイス、例えば、pH計25と、接触を伴う又は伴わない、特にUV又はラマン型の分光計26とを含む。このデバイスは、特に、混合容器16の内容物に関する細かい解析を可能にし、いわゆるHPLC(High Performance Liquid Chromatography:高速液体クロマトグラフィ)法(多くの場合、8時間~24時間かかる)などの先行技術の手法とは対照的に、この測定をほぼ即時に操作するという点で有利である。従来技術によるとほぼ1日かかるのに対して、医薬組成物を、典型的には、約2時間で生産することができる。本発明はまた、従来の生産において後の製造段階(厳密解析)の開始前に行われる保管及び休止(解析結果の待ち状態)の期間を回避する。
【0039】
例として、従来の工業生産においては、一般に、製造プロセス全体に約3か月を要する。
・バルク製品製造(即ち、包装されておらず、ラベル、リーフレット、又は段ボールを伴わない製品):原則的に1日。しかし、生産スロット(production slot)がなくなっている場合には2、3週間かかる可能性がある。
・確認(品質保証及び品質管理)後、バルク製品のリリース:4~6週間、
・医薬組成物の製造業者へのバルク製品の出荷:2日、
・医薬組成物の製造業者によるバルク製品の(包装場所での)保管:約1か月(在庫を最小限にするように努力がなされてはいるが、一般に、少なくとも1つ1か月分の在庫を有する必要があり、これらの在庫は、FIFO(first in first out:先入れ先出し)原理に従って消費される。即ち、物品は、その後に在庫に入れられた物品より前に在庫から出される)、
・二次包装:2日、
・確認(品質保証及び品質管理)後、包装済み医薬組成物のリリース:約1週間、
・配送センターへの包装済み医薬組成物の出荷:1日、
・配送センターによる最終製品の保管:約1か月(通常、1か月分の在庫を必要とし、この保管(同じくFIFO)もまた、製造プロセスに不可欠な部分である)、
・確認(品質保証)後、包装済み医薬組成物のリリース:約2週間。
【0040】
これとは対照的に、本発明による生産では、製造プロセス全体に要するのは最大で約3週間である(医薬品の小バッチ製造が加速し、後続の包装及び品質段階も加速する)。
・少量の医薬品のオンデマンド生産:最大で1日、
・非常に低容量且つ低コストの包装ユニット(第2筐体内に含まれる)を(例えば、第1筐体内に含めることにより)製造デバイスに取り付ける(又は更には製造デバイスに含める)ことができるので、医薬組成物の包装場所への医薬品の出荷は必要ない(しかし、オプションとして可能である)。
・本発明による包装ユニットによる二次包装:約2時間しかかからないが、念のために1日を考慮する、
・確認(従来の品質保証及び品質管理)後、包装済み製品のリリース:約2週間(この時間を大幅に短縮する技術は可能であり、自動測定を含む)。
【0041】
好ましくは、pH計は、支持部12に取り付けられた電子リーダと、混合容器16の内側に取り付けられたステッカーなどの使い捨てセンサ29とを含む。センサ29は、リーダに接続されている。
【0042】
混合アセンブリ102の第1筐体103は、第1チャンバ107を画定し、第1チャンバ107内で、第1筐体は、以下に記載するように、例えば、ISOエアクラス7(ファーマクラス(pharma class)Cに相当)の制御された雰囲気を維持することができる。このエアクラス(ISO7)は、ISO14644標準規格に定義されている。これは、空気1mあたり最大でも、5μm(又はこれ以上)の粒子2,930個、1μm(又はこれ以上)の粒子83,200個、及び0.5μm(又はこれ以上)の粒子352,000個の濃度に相当する。より低効率の変形形態によれば、ISOクラス8が許容可能である。汚染のより少ない雰囲気を確保するために、より効率的なクラス(ISO6)は技術的に可能である。しかし、関連コストが高くなり、多くの場合、得られる利益の観点から妥当ではない。固体貯蔵部(存在する場合)の運動、混合容器の運動、移送針(transfer needle)の運動、並びにこれらの振動は、通常、ISOクラス5で定義される限界を超える量の粒子を発生させるので、ISOクラス5(これより更に効率的なもの)は事実上達成が不可能である。更に、ISOクラス5の環境(ファーマクラスAに相当)を確立するのに必要な空気の流れは、マイクロドージング操作(例えば、アイリス絞りを使用した)及びマイクロ秤量操作の精度が(気流により)不十分になるような換気を引き起こす。
【0043】
図1に見られるように、第1チャンバ107は、前述の混合ユニット10を受け入れることを意図したものである。好ましくは、混合ユニット10及び第1筐体103は、第1チャンバ107の体積が1m未満、より好ましくは、0.1m~0.3mであるように設計されている。したがって、第1チャンバは、医薬組成物生産工場内の部屋よりも大幅に小さい。これにより、医薬組成物の小バッチ、例えば、1~100個のバイアルのオンデマンド製造が可能になる。この製造は、テーラーメードにすることができ、例えば、医薬組成物を服用する予定の患者のプロフィール(年齢、性別、病歴、他の現在の治療等)に従って個別化することができる。更に、間近の消費のために少量だけを生産することで、防腐剤の量の削減(したがって、生産コストの削減及び防腐剤に関連する健康リスクの低減の両方)を可能にする。実際、医薬組成物の組成物中には不安定な製品が用いられることが多く、保管寿命を増加させるにはより多くの防腐剤を添加することが必要である。本発明によって、大幅に長い物流チャネルを意図した大量生産の保管期間ほど長い保管期間を確保する必要はない。
【0044】
一実施形態によれば、第1筐体103は、少なくとも1つの開口部108を含み、以下に記載されるように、少なくとも1つの開口部108に対して封止手段が設けられている。混合ユニット102は針120を更に含み、針120は、第1チャンバ107内に配置され、チューブによって開口部108に直接的又は間接的に接続されている。
【0045】
混合ユニット102、特に、混合ユニット10の操作方法については後述する。
【0046】
図4及び図5は、本発明の第2実施形態による混合ユニット60を示す。
【0047】
混合ユニット60は、特に、支持部62と、混合容器16と、複数の貯蔵部18、20と、出発製品を分与するための第1デバイス64及び第2デバイス66と、秤量デバイス23と、変位及び撹拌デバイス68と、少なくとも1つの解析デバイス70、72と、電子制御モジュール74とを含む。
【0048】
混合容器16、貯蔵部18、20、及び秤量デバイス23は、図2の混合ユニット10に関して上述したものに類似する。
【0049】
支持部62は、ユニット60の他の要素を受け入れるケーシングの形態を有する。好ましくは、ケーシング62は、以下に記載するように、例えばISOエアクラス7の制御された雰囲気を有する密閉隔室76を画定することができる。
【0050】
秤量デバイス23上に配置された変位及び撹拌デバイス68は、特に、混合容器16の内容物を撹拌することが可能である。
【0051】
特に、図4及び図5の実施形態では、撹拌デバイス68は、垂直に配置されることになっている回転軸線78を含む遠心機である。或いは、撹拌デバイスは、別の種類の機械的な撹拌デバイスであってもよい、又は混合容器16と共に変位デバイス上に配置された磁気撹拌デバイスであってもよい。
【0052】
好ましくは、撹拌デバイス68は、混合容器16を受け入れるように設計されたハウジング80を含む。ハウジング80は、回転軸線78に対して離心している。したがって、後述するように、変位及び撹拌デバイス68は、混合容器16を水平円形路内で移動させることができる。
【0053】
好ましくは、ハウジング80は、回転軸線に垂直な水平表面に対して混合容器を傾けることができるように、ヒンジで取り付けられている。より好ましくは、この傾きは、45°以下の角度に制限されている。
【0054】
図4及び図5に示される実施形態では、複数の貯蔵部18、20は、いくつかの固体貯蔵部18及びいくつかの液体貯蔵部20を含む。
【0055】
固体貯蔵部18は第1分配デバイス64に取り付けられている。第1分配デバイス64は、それ自体がケーシング62の内壁に取り付けられている。特に、固体貯蔵部18は、貯蔵部の開口部50が、混合容器16の円形路内に垂直に位置する円弧を形成するように配置されている。
【0056】
第1分配デバイス64は複数のモータを含み、モータのそれぞれは、固体貯蔵部18のうちの1つの撹拌棒42に接続されている。
【0057】
第2分与デバイス66は、混合ユニット10に関して上述した弁22に類似する分与弁81を含む。分与弁は、混合容器16の円形路の上方に位置する。
【0058】
液体貯蔵部20は、分与弁81の上方でケーシング62の内壁に取り付けられている。
【0059】
第2分配デバイス66は、分与管82を更に含み、各管は、液体貯蔵部20の1つを分与弁81に接続している。分与弁81は、対応する液体貯蔵部20の内容物の流れを制御するために、各管82の一端に多少強い圧力をかけることができる。
【0060】
示される実施形態では、混合ユニット60は、pH計70などの解析デバイスを含み、pH計は、プローブ84と、混合容器16の内部に取り付けられた使い捨てセンサ29とを含む。プローブ84は、混合容器16の円形路に対して垂直に配置されている。pH計70は、ケーシング62に対する垂直変位用のデバイス86に接続されており、このデバイスは、混合容器16の内容物とそれ自体が接触しているセンサ29内にプローブ84を浸すことを可能にする。
【0061】
混合ユニット60は、接触を伴う又は伴わない、例えば、UV又はラマン型の分光計72を更に含む。分光計は、混合容器16の円形軌道に対して垂直に配置されている。
【0062】
電子制御モジュール74は、混合容器16の上部開口部39を、貯蔵部18のそれぞれの下、分与弁81の下、pH計70の下、又は分光計72の下で移動させるために、特に、変位及び撹拌デバイス68の速度及び動作並びにハウジング80の位置を制御することができる。電子制御モジュール74はまた、混合物を撹拌する時にハウジング80及び混合容器を水平面に対して傾けることができる。
【0063】
本発明の変形形態によれば、上述の混合ユニット60は、図1のデバイス100に類似する製造デバイスにおいて混合アセンブリ102を代替する。この目的で、上述のように、ケーシング62は開口部108を含み、混合ユニット60は針120を含む。
【0064】
このような変形形態によれば、混合ユニット60の電子制御モジュール74は、任意選択的に、製造デバイスの電子制御モジュール28と統合されていてもよい。
【0065】
以下、混合ユニット60の操作方法についてより明確に記載する。
【0066】
製造デバイス100の処理ユニット104は、例えば、使い捨ての、ガンマ線照射された、濾過ダクト110、緩衝剤充填パウチ112、及び充填ダクト114を含む。示される実施形態では、処理ユニット104は、緩衝剤充填パウチ112を更に含む。
【0067】
濾過ダクト110は、特に、第1フレキシブルチューブ116及び第2フレキシブルチューブ117によって形成されている。第1チューブ116の第1端部は、混合アセンブリ102又は混合ユニット60の針120に接続されている。図1に示される実施形態では、第1チューブ116は開口部108を通過し、第1シール118が第1チューブ116と開口部108の壁との間に配置されている。
【0068】
濾過ダクト110は、第1ポンプ122、例えば、蠕動ポンプと、フィルタ124と、可能であれば解析デバイス126とを更に含む。
【0069】
第1ポンプ122及び解析デバイス126は、第1筐体103の外に、第1チューブ116の経路内に配置されている。第1チューブの第2端部は、フィルタ124に接続されている。任意選択的に、フィルタ124は滅菌フィルタであってもよい。第2チューブ117は、フィルタ124を緩衝剤充填パウチ112に接続している。
【0070】
解析デバイス126は、例えば、製品(例えば、有効成分の内容)の最終制御のためのUV又はラマン分光計である。示される実施形態では、第1ポンプ122及び解析デバイス126は、前述の製造デバイス100の電子モジュール28に接続されている。或いは、第1ポンプ122及び/又は解析デバイス126は、別の電子モジュールに接続されていてもよい。
【0071】
好ましくは使い捨ての緩衝剤充填パウチ112は、例えば、緩衝溶液を収容している。緩衝剤充填パウチ112は、好ましくは、5L未満、より好ましくは、100mL~500mLの容量を有する。
【0072】
充填ダクト114は、特に、第3フレキシブルチューブ130によって形成されており、第3フレキシブルチューブ130の第1端部は、希釈パウチに接続されている。充填ダクト114は、第3チューブ130の経路内に配置された第2ポンプ132を更に含む。
【0073】
図示しない変形形態によれば、処理ユニットは緩衝剤充填パウチ112を有しておらず、第2チューブ117と第3チューブ130は互いに直接接続されている。別の変形形態では、第2チューブ117と第3チューブ130は、単一チューブを形成している(第2チューブ117と第3チューブ130は単一チューブの2つの部品である)。
【0074】
包装アセンブリ106は、包装ユニット140と、好ましくは、制御された雰囲気を有する第2筐体138とを含む。
【0075】
第1筐体のように、この第2筐体は、特に、雰囲気中にあった可能性があり、混合ユニットの内容物を汚染していた可能性のある微生物又は粒子による汚染に対する保護を向上させるという点で有用である。制御されるのはこの第2筐体を構成する備品の内部の雰囲気であり、この備品が取り付けられる建物は、従来の建物(その内部雰囲気の保護は特にない)であることができる。可能な実装形態によれば、この第2筐体は、第1筐体内に位置する。低生産量において、第2筐体は、コストを最小限にすると共に、より高い柔軟性を可能にしながらも、GMP準拠を容易にする。
【0076】
第2筐体138は、第2チャンバ142を画定し、第2チャンバ142内で、第2筐体は、制御されたISO5(又は同様の)雰囲気を維持することができる。このエアクラス(ISO5)は、ISO14644標準規格に定義されている。これは、空気1mあたり最大でも、0.1μm(又はこれ以上)の粒子100,000個、0.2μm(又はこれ以上)の粒子23,700個、0.3μm(又はこれ以上)の粒子10,200個、0.5μm(又はこれ以上)の粒子3,520個、1μm(又はこれ以上)の粒子832個、及び5μm(又はこれ以上)の粒子29個の濃度に相当する。したがって、これは高い要件であり、振動を受ける多くの要素を含む第1筐体に関しては達成が難しいが、包装に関する高い要件も伴う第2筐体に関してはより容易である。
【0077】
包装ユニット140は、混合容器の内容物を少なくとも1つの包装容器内に包装するのに特に適している。このような包装ユニットは、先行技術から周知である。
【0078】
ここで、製造デバイス100の使用方法について記載する。
【0079】
最初に、混合ユニット10を第1筐体103内に配置し、混合アセンブリ102を形成する。例えば事前滅菌済みであり得る針120を、開口部108を介して第1チューブ116に接続する。有利には、第1筐体103は、第1筐体の内部に通じているフレキシブルグローブで密閉された少なくとも1つの開口部(開口部の大きさは、人の手の大きさに近い)を有し、(自身が選んだグローブに自身の手を挿入することによって、又は少なくとも、片手をグローブに挿入することによって(第1筐体内に位置する各グローブの表は清浄なままである))汚染を導入することなくオペレータが第1チャンバ内で操作することを可能にする。その後、チャンバ107は、例えば、蒸気、オゾン、又は過酸化水素によって殺菌及び/又は滅菌される。殺菌及び滅菌は両方とも、GMPの準拠を容易にする。
【0080】
並行して、包装ユニット140を第2筐体138内に配置し、包装アセンブリ106を形成する。
【0081】
処理ユニット104は、好ましくは、事前滅菌された状態で取り付けられる。例えば、第2チューブ117などの使い捨て要素、想定されるフィルタ124、想定される緩衝剤充填パウチ112、第3チューブ130、及びポンプ132は事前滅菌されてもよい。
【0082】
第1チャンバ107が殺菌及び/又は滅菌され、第2チャンバ142が、任意選択的に滅菌されたら、処理ユニット104の第1チューブ116と第2チューブ117と第3チューブ130との接続を実行し、図1に示すような製造デバイス100を完成させる。
【0083】
その後、製造デバイス100、特に、混合ユニット10の操作方法が、電子モジュール28内に記録されたプログラムによって実施される。デバイスが図4及び図5の混合ユニット60を含む製造方法による本発明の変形形態によれば、混合ユニット60の類似の操作方法は、電子モジュール74内に記録されたプログラムによって実施される。
【0084】
混合ユニット10又は混合ユニット60の各貯蔵部18、20に関して、プログラムは、所与の医薬組成物の生産に必要な量を記憶する。混合ユニット10又は混合ユニット60の操作方法によれば、貯蔵部18及び/又は貯蔵部20のそれぞれに収容されている有効成分の必要量が混合容器16内に分与され、その後、混合容器は撹拌される。
【0085】
好ましくは、液体形態の出発物質の分与が最初に実施される。
【0086】
混合ユニット10の場合、第1カップリング部材36が第1の液体貯蔵部20を取り、機械的なアーム14は第1貯蔵部と分与弁22とを組み立てる。電子モジュール28によって作動される弁22は、液体が混合容器16内に重力で流れることを可能にする。
【0087】
混合ユニット60の場合、電子モジュール74は、混合容器16を分与弁81の下に配置するために、変位及び撹拌デバイス68を作動させる。弁は、第1の液体貯蔵部20に接続された分与チューブ82にかかる圧力を解放し、液体が混合容器16内に重力で流れることを可能にする。
【0088】
各混合ユニット10、60に関して、容器内に受け入れられる液体の質量は、秤量デバイス23によって制御される。分与弁22、81は、秤量デバイス23によって測定される液体の質量が目標値の所定の比率に達するまで最大流量を好ましくは可能にし、この値及び比率は、電子モジュール28、74に記憶される。この比率は、例えば、およそ95%又は97%である。その後、流量を、目標値が達成されるまで次第に減少させる。
【0089】
上記分与工程は、所望の医薬組成物の製造に必要な各液体貯蔵部に対して繰り返される。
【0090】
その後、固体形態の出発物質の分与が行われる。
【0091】
混合ユニット10の場合、機械的なアーム14が支持部12に対して移動し、アームの第2カップリング部材38は、第1の固体貯蔵部18と、特に、撹拌棒42の第2端部48(図2及び図3)において組み立てられる。その後、アーム14は、第1貯蔵部18を混合容器16の上部開口部39の上方に移動させる。第2カップリング部材38のモータは、撹拌棒42の運動を開始する。分与機構44は部分的に開放し、このように形成された開口部50を通って粉末が重力で流れることを可能にする。
【0092】
混合ユニット60の場合、電子モジュール74は、混合容器16を第1の固体貯蔵部18の下に配置するために、変位及び撹拌デバイス68を作動させる。貯蔵部18と関連付けられた第1分与デバイス64のモータは、撹拌棒42の運動を開始する。分与機構44は部分的に開放し、こうして形成された粉末が開口部50を通って重力で流れることを可能にする。
【0093】
各混合ユニット10、60に関して、容器16内に受け入れられる粉末の質量は、秤量デバイス23によって制御される。開口部50の大きさは、流れの最中にプログラムによって制御される。例えば、開口部50は、秤量デバイス23によって測定される粉末の質量が目標値の所与の比率、例えば、この値の95%又は97%に達するまで最大の大きさを有する。その後、開口部50を、目標値が達成されるまで次第に縮小させる。
【0094】
上記分与工程は、所望の医薬組成物の製造に必要な各固体貯蔵部18に対して繰り返される。
【0095】
各混合ユニット10、60に関して、その後、混合容器16の内容物を混合するために、撹拌デバイス24、68をある時間(例えば、数分)にわたって動作させる。その後、少なくとも1つの解析デバイスを電子モジュール28、74の制御下で作動させる。測定値がプログラムによって決定された値と異なる場合、値は、液体貯蔵部20のうちの1つに収容されている溶液又は固体貯蔵部18のうちの1つに収容されている固体を添加することにより調整される。
【0096】
例えば、混合容器16の内容物のpHは、pH計25、70を使用して制御されてもよい、及び/又は内容物の濃度が分光計26、72によって測定される。
【0097】
任意選択的に、混合容器の容量を超える量の溶液を生産する必要がある場合、混合容器の内容物は、別のより高容量の混合容器に移される。別のより高容量の混合容器は、例えば、異なる液体添加ステーション並びに他の撹拌デバイス及び解析デバイスを備える。
【0098】
本発明の第1実施形態によれば、その後、処理ユニット104及び包装ユニット106の操作方法が、電子モジュール28内に記録されたプログラムによって実施される。
【0099】
第1工程において、最初に、針120が、例えば、機械的なアーム14によって又は垂直運動によって、混合容器16内に導入される。その後、第1ポンプ122が作動され、その後、混合容器16内に収容されている溶液が濾過ダクト110に吸引される。溶液の品質を制御するために、溶液は、デバイス126によって好ましくは解析される。その後、溶液は、フィルタ124を通して任意選択的に濾過される。その後、溶液は、緩衝剤充填パウチ112に到達する。
【0100】
第2工程において、第2ポンプ132が作動され、希釈パウチ112の内容物が充填ダクト114内に、包装ユニット140まで吸引される。既知の手法において、包装ユニット140は、少なくとも1つの包装容器内の溶液を調整する。
【0101】
本発明の第2実施形態によれば、処理ユニット104は緩衝剤充填パウチ112を含まず、処理ユニット104及び包装アセンブリ106の操作方法は、以下のように実施される。
【0102】
最初に、針120が混合容器16内に導入される。その後、第1ポンプ122が作動され、したがって、混合容器16内に収容されている溶液が濾過ダクト110に吸引される。溶液は、デバイス126によって好ましくは解析され、その後、フィルタ124(例えば、滅菌フィルタ)によって任意選択的に濾過され、その後、溶液は、包装ユニット140に移される。既知の手法において、及び包装ユニット140は、少なくとも1つの包装容器内の溶液を調整する。
【0103】
上記の方法は、無菌環境内で行われ、第1筐体103及び第2筐体138内で実行される工程は、制御された雰囲気下で実施される。このような方法は、所与の医薬組成物を有する、例えば個別化され得る特定数の用量を迅速に調製し、自動的に包装することを可能にする。
【0104】
滅菌工程は、それでもなお任意であり、生成される組成物次第である。
【0105】
2つの調製サイクル間に貯蔵部18、20及びそれらの内容物並びに使い捨て器具を交換又は変更することが容易であり、広範な医薬組成物の調製が可能になる。
【0106】
上述の製造デバイス100が実装されると、1人又は数人の患者用に設計された医薬組成物の用量を2時間未満で生産し、リリースすることを可能にする。デバイス100は、低コストで生産することができるので、患者の地域でのアクセスを可能にするために、多数の病院又は薬局に備えることができる。
【0107】
医薬組成物は少量生産されるため、短い保管寿命を有する組成物に対して制限的な保管条件を設定する必要はない。
図1
図2
図3
図4
図5