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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】無血清培地におけるベクター産生
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/867 20060101AFI20240410BHJP
   C12N 7/02 20060101ALI20240410BHJP
   A61K 48/00 20060101ALN20240410BHJP
   A61K 35/76 20150101ALN20240410BHJP
   A61P 7/00 20060101ALN20240410BHJP
【FI】
C12N15/867 Z
C12N7/02 ZNA
A61K48/00
A61K35/76
A61P7/00
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2021533393
(86)(22)【出願日】2019-08-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 US2019047800
(87)【国際公開番号】W WO2020041647
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-08-19
(31)【優先権主張番号】62/722,784
(32)【優先日】2018-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512010890
【氏名又は名称】シーエスエル ベーリング ジーン セラピー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】チー-リン・リー
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・エス・バートレット
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-516557(JP,A)
【文献】特表2017-505626(JP,A)
【文献】特表2015-529466(JP,A)
【文献】特表2018-510615(JP,A)
【文献】Wielgosz, M. W. et al.,"Generation of a lentiviral vector producer cell clone for human Wiskott-Aldrich syndrome gene therapy",Mol. Ther. Methods Clin. Dev.,2015年,Vol. 2; 14063,pp. 1-12
【文献】Narukawa, M. et al.,"Efficient Selection of Genetically Engineered HIV Resistant Cells by Short Hairpin RNA Mediated HPRT and CCR5 Knockdown",Mol. Ther.,2013年,Vol. 21 (Suppl. 1),pp. S204-S205
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00-7/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定な産生細胞株の細胞からベクター上清を回収する方法であって:安定な産生細胞株の細胞から血清含有培地中でレンチウイルスベクター産生を誘導すること;およびレンチウイルスベクターの最初の回収に続いて4~56時間ごとに、1つまたはそれ以上の脂質を含む無血清培地中で、誘導された安定な産生細胞株の細胞からレンチウイルスベクターを反復回収することを含む、前記方法。
【請求項2】
反復回収の各個別の回収の間、0.5×106TU/mL~4×106TU/mLの範囲に及ぶウイルス力価の産生を提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ウイルス力価は、反復回収の各個別の回収の間、0.5×106TU/mL~2×106TU/mLの範囲に及ぶ、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ウイルス力価は、反復回収の各個別の回収の間、0.5×106TU/mL~1.5×106TU/mLの範囲に及ぶ、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
レンチウイルスベクターは少なくとも5回回収される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
レンチウイルスベクターは少なくとも10回回収される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
レンチウイルスベクターは少なくとも20回回収される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
反復回収は10日~90日の間の範囲に及ぶ期間にわたって行われる、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
反復回収は20日~70日の間の範囲に及ぶ期間にわたって行われる、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
安定な産生細胞株の細胞は血清含有培地中で継代され;細胞は無血清培地中で培養される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
安定な産生細胞株の細胞は血清含有培地中で継代され;細胞は血清含有培地中で培養される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
レンチウイルスベクターの最初の回収は誘導後少なくとも40時間で行われる、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
レンチウイルスベクターは48時間ごとに反復回収される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
無血清培地は1つまたはそれ以上の添加物を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
レンチウイルスベクターは治療的遺伝子をコードする核酸配列を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
治療的遺伝子は、鎌状赤血球症を治すか、または鎌状赤血球症の1つの症状を少なくとも軽減する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
治療的遺伝子は、ガンマ-グロビン遺伝子、C1エステラーゼインヒビタータンパク質、ブルトンチロシンキナーゼおよびウィスコット・アルドリッチ症候群タンパク質からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
レンチウイルスベクターはHPRTまたはCCR5をノックダウンするためのRNA干渉薬剤をコードする核酸配列を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
レンチウイルスベクターは(i)HPRTをノックダウンするためのRNA干渉薬剤をコードする第1の核酸配列、および(ii)治療的遺伝子をコードする第2の核酸配列を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
反復回収は、さらなる生成された安定な産生細胞株の細胞を導入することなく、誘導された生成された安定な産生細胞株の細胞に新鮮な無血清培地を加えることを含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
安定な産生細胞株の細胞は、GPR、GPRG、GPRT、GPRGTもしくはGPRT-Gパッケージング細胞株、またはその誘導体の1つに由来する、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
安定な産生細胞株の細胞は、(a)1つまたはそれ以上の遺伝子を組換えプラスミドにクローニングすることによって、ベクターを合成すること;(b)(i)合成されたベクターから切除された発現カセットおよび(ii)抗生物質抵抗性カセットプラスミドから得られた発現カセットからコンカテマーアレイを形成すること;(c)GPR、GPRG、GPRT、GPRGTおよびGPRT-Gからなる群から選択されるパッキング細胞株の細胞に形成されたコンカテマーアレイをトランスフェクトすること;ならびに(d)安定な産生細胞株の細胞を単離すること、によって生成される、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
組換えプラスミドは、パッケージングシグナルをコードするヌクレオチド配列;セントラルポリプリントラクトをコードするヌクレオチド配列;Rev応答エレメントをコードするヌクレオチド配列;および自己不活性化ロングターミナルリピートをコードするヌクレオチド配列を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
合成されたベクターは、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(「HPRT」)をノックダウンするためのshRNAをコードする核酸配列を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
合成されたベクターは、治療的遺伝子をコードする核酸配列を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
治療的遺伝子は、ガンマ-グロビン遺伝子、C1エステラーゼインヒビタータンパク質、ブルトンチロシンキナーゼおよびウィスコット・アルドリッチ症候群タンパク質からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年8月24日に出願された米国特許仮出願第62/722,784号の出願日の恩恵を主張し、その開示は、参照によってその全体を本明細書に組み入れる。
【0002】
本開示は、一般に、生物的製造法およびウイルス力価を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
インビトロ培養条件下で増殖する細胞株および初代細胞は、(i)対数期における細胞複製を、および(i)細胞がもはや分裂しなくなったら、すなわち、細胞が定常期にある場合に細胞維持を支持することができる特別な増殖および維持培地を必要とする。一般に使用される細胞培養培地は、ビタミン、アミノ酸、必須微量元素および糖を含有する豊塩溶液(rich salt solution)を含む。細胞の増殖および維持を支持するのに必要とされる成長ホルモン、酵素および生物学的に活性なタンパク質は、動物の血液由来の血清製品の形態で、補充物として培地に通常加えられる。動物の血液由来の血清製品の例は、ウシ胎仔血清、ニワトリ血清、ウマ血清およびブタ血清である。これらの血清は、赤血球および白血球が除去された、分画された血液に由来する。
【0004】
動物血清は、細胞の増殖に必要とされる因子を含むだけでなく、培養容器の細胞支持面に接着するために、接着細胞として自然に成長する細胞に必要とされる因子も含む。したがって、接着細胞にとって、それらが増殖し、単層を形成することを可能にするのに十分な血清が培地に加えられることが重要である。
【0005】
残念ながら、ウシ/ウシ胎仔血清、ならびに他の動物由来の血清は、ウイルスまたはプリオンタンパク質などの外来性病原体を含む可能性がある。これらの病原体が、細胞培養で産生されるワクチンまたは任意の他の医薬製品で治療されるまたはワクチン接種される動物/ヒトに伝染する可能性があるという、潜在的な危険性がある。これは、細胞培養産物が免疫無防備状態のヒトに投与される場合、特に関連する。細胞培養における動物血清の使用に関連する起こり得る危険性を考慮して、動物産物を使用しない製造方法が非常に望ましいことが明らかになってきている。
【0006】
臨床試験を支持する規模での自己不活性化ベクター(「SIN-ベクター」)の産生は、本分野内の重要な課題である。ガンマ-レトロウイルスベクターは一過的トランスフェクションまたは安定な産生細胞株の生成のいずれかによって産生することができるが、レンチウイルスは、複数の細胞傷害性アクセサリー遺伝子の発現を必要とし、これは、産生細胞の生成をより複雑にする(非特許文献1。その開示は、その内容全体を参照によって本明細書に組み入れる)。代わりに、一過的トランスフェクションがレンチウイルスの試験的産生の現在の技術であり、これは、安全性、費用、および再現性の観点から、非常に大規模な適用にとって実際的でない。実際に、この技術は費用がかかり、標準化すること、およびスケールアップすることが難しく、かつバッチ間の変動性および逆転写酵素の低いフィデリティーに悩まされる(非特許文献2。その開示は、その内容全体を参照によって本明細書に組み入れる)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Greeneら、Transduction of Human CD34+ Repopulating Cells with a Self-Inactivating Lentiviral Vector for SCID-Xl Produced at Clinical Scale by a Stable Cell Line、HGTM、23、297~308(2012年10月)
【文献】Stornaiuoloら、RD2-MolPack-Chim3,a Packaging Cell Line for Stable Production of Lentiviral Vectors for Anti-HIV Gene Therapy、HGTM、24:228~240(2013年8月)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
毎日の回収(例えば、24時間ごとに回収する)を利用する産生プロトコールは、小規模で様々な試験ベクターを産生するために利用することができるが、毎日の回収および培地交換は非経済であることが多い。毎日の回収の代わりとして、本出願人は、「2日間の回収」プロトコールを開発し、ウイルスベクターは、ウイルスベクターの最初の回収に続いて約40時間~約56時間ごとに無血清培地中で反復回収される。本出願人は、無血清培地を使用するそのような「2日間の回収」プロトコールは、より伝統的な毎日の回収とほぼ同じ量のウイルスベクターの生成を可能にし、同時に、より少ない培養培地しか必要としないという利点も提供することを予想外に発見した。無血清培地と比較して血清含有培地に関連する高い費用を考えれば、開示される「2日間の回収」手順とともに無血清培地を使用することが大規模な生物的製造に特に重要であると考えられる。さらに、無血清培地を使用する場合、回収されたウイルスベクターで治療される対象への、血清含有培地中に潜在的に存在する病原体の伝染の危険性は、最小化されるか、または排除される。これらの利点は、大規模な生物的製造の費用を減らし、安全性を高めるという、業界において未だ対処されていない要求を満たし、同時に高い量のウイルスベクター力価を得ることができる生物的製造方法を提供する。
【0009】
本開示の第1の態様には、以下を含む、ベクター上清を回収する方法がある:安定な産生細胞株の細胞を生成すること;生成された安定な産生細胞株の細胞からウイルスベクター産生を誘導すること;およびウイルスベクターの最初の回収に続いて約40~約56時間ごとに、無血清培地中で、誘導された生成された安定な産生細胞株の細胞からウイルスベクターを反復回収すること。いくつかの実施形態では、反復回収は、さらなる生成された安定な産生細胞株の細胞を導入することなく、誘導された生成された安定な産生細胞株の細胞に新鮮な無血清培地を加えることを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、回収に使用される無血清培地は各反復回収後に交換される。いくつかの実施形態では、各個別の回収の間、さらなる無血清培地は生成された安定な産生細胞株の細胞に導入されない。いくつかの実施形態では、無血清培地は1つまたはそれ以上の増殖因子を含む。いくつかの実施形態では、無血清培地は1つまたはそれ以上の脂質を含む。いくつかの実施形態では、無血清培地は増殖因子と脂質の両方を含む。いくつかの実施形態では、脂質はコレステロール、リン脂質および脂肪酸を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターの最初の回収は誘導後(すなわち、ウイルスベクター産生を誘導した後)約40時間~約56時間の間に行われる。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターの最初の回収は誘導後48時間未満に行われる。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターの反復回収は、約44~約52時間ごとに行われる。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターの反復回収は、約46~約50時間ごとに行われる。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターの反復回収は、約48時間ごとに行われる。
【0012】
いくつかの実施形態では、方法は、反復回収の各個別の回収の間、約0.5×10TU/mL~約4×10TU/mLの間の範囲に及ぶウイルス力価の産生を提供する。いくつかの実施形態では、ウイルス力価は、反復回収の各個別の回収の間、約0.5×10TU/mL~約2×10TU/mLの間の範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、ウイルス力価は、反復回収の各個別の回収の間、約0.5×10TU/mL~約1.5×10TU/mLの範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターの反復回収は少なくとも2回行われる。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターの反復回収は少なくとも3回行われる。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターの反復回収は少なくとも4回行われる。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターの反復回収は少なくとも5回行われる。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターの反復回収は少なくとも10回行われる。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターの反復回収は少なくとも20回行われる。いくつかの実施形態では、反復回収は、約10日~約90日の間の範囲に及ぶ期間にわたって行われる。いくつかの実施形態では、反復回収は、約20日~約70日の間の範囲に及ぶ期間にわたって行われる。
【0013】
いくつかの実施形態では、安定な産生細胞株の細胞はパッケージング細胞株の細胞に由来する。いくつかの実施形態では、パッケージング細胞株の細胞は、CHO細胞、BHK細胞、MDCK細胞、C3H10T1/2細胞、FLY細胞、Psi-2細胞、BOSC23細胞、PA317細胞、WEHI細胞、COS細胞、BSC1細胞、BSC40細胞、BMT10細胞、VERO細胞、W138細胞、MRC5細胞、A549細胞、HT1080細胞、293細胞、293T細胞、B-50細胞、3T3細胞、NIH3T3細胞、HepG2細胞、Saos-2細胞、Huh7細胞、HeLa細胞、W163細胞、211細胞および211A細胞からなる群から選択される細胞に由来する。いくつかの実施形態では、パッケージング細胞株の細胞は、GPR、GPRG、GPRT、GPRGTおよびGPRT-G細胞株の細胞からなる群から選択される。
【0014】
いくつかの実施形態では、安定な産生細胞株の細胞は、(a)1つまたはそれ以上の遺伝子を組換えプラスミドにクローニングすることによって、ベクターを合成すること;(b)(i)合成されたベクターから切除された発現カセットおよび(ii)抗生物質抵抗性カセットプラスミドから得られた発現カセットからコンカテマーアレイを形成すること;(c)形成されたコンカテマーアレイをGPR、GPRG、GPRT、GPRGTまたはGPRT-Gパッケージング細胞株の細胞にトランスフェクトすること;ならびに(d)安定な産生細胞株の細胞を単離することによって生成される。いくつかの実施形態では、合成されたベクターはレンチウイルスベクター、例えば、自己不活性化レンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、抗生物質抵抗性カセットプラスミドはブレオマイシン抗生物質抵抗性カセットである。いくつかの実施形態では、合成されたベクターから切除された発現カセットとブレオマイシン抗生物質抵抗性カセットから得られた発現カセットのモル比は、約50:1~約1:50の間の範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、モル比は約25:1~約1:25の間の範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、モル比は約15:1~約1:15の間の範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、モル比は約10:1~約1:10の範囲に及ぶ。
【0015】
いくつかの実施形態では、組換えプラスミドは、配列番号1のものに対して少なくとも約90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、組換えプラスミドは、配列番号1のものに対して少なくとも約95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、組換えプラスミドは、配列番号1のものに対して少なくとも約99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、組換えプラスミドは、配列番号2のものに対して少なくとも約90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、組換えプラスミドは、配列番号2のものに対して少なくとも約95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、組換えプラスミドは、配列番号2のものに対して少なくとも約99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、組換えプラスミドは、BstBI、MluI、NotIおよび/またはClaI制限エンドヌクレアーゼ部位を有するマルチクローニングサイトを含む。いくつかの実施形態では、マルチクローニングサイトをコードするヌクレオチド配列は、配列番号7のものに対して少なくとも約90%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、マルチクローニングサイトをコードするヌクレオチド配列は、配列番号7のものに対して少なくとも約95%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、組換えプラスミドは、パッケージングシグナルをコードするヌクレオチド配列;セントラルポリプリントラクトをコードするヌクレオチド配列;Rev応答エレメントをコードするヌクレオチド配列;および自己不活性化ロングターミナルリピートをコードするヌクレオチド配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、ベクターカセットに少なくとも2つのさらなる制限エンドヌクレアーゼ部位が隣接しており、少なくとも2つのさらなる制限エンドヌクレアーゼ部位はsfiIおよびBsu36Iから独立に選択される。
【0016】
いくつかの実施形態では、合成されたベクターは、(本明細書に挙げたそうした遺伝子のうちのいずれかを含めた)治療的遺伝子をコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、治療的遺伝子は、鎌状赤血球症を治すか、または鎌状赤血球症の1つの症状を少なくとも軽減する。いくつかの実施形態では、治療的遺伝子はガンマ-グロビン遺伝子である。いくつかの実施形態では、治療的遺伝子はウィスコット・アルドリッチ症候群タンパク質である。いくつかの実施形態では、治療的遺伝子はC1エステラーゼインヒビタータンパク質である。いくつかの実施形態では、治療的遺伝子はブルトンチロシンキナーゼである。いくつかの実施形態では、合成されたベクターは、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(「HPRT」)をノックダウンするための核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、合成されたベクターは、(i)HPRTをノックダウンするための第1の核酸配列、および(ii)(本明細書に挙げたまたは上で列挙した治療的遺伝子のうちのいずれかを含めた)治療的遺伝子をコードする第2の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、合成されたベクターは、(i)HPRTをノックダウンするための第1の核酸配列、および(ii)ガンマ-グロビン遺伝子をコードする第2の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、合成されたベクターは、(i)HPRTをノックダウンするための第1の核酸配列、および(ii)ウィスコット・アルドリッチ症候群タンパク質をコードする第2の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、合成されたベクターは、CCR5をノックダウンするための核酸配列を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクター産生の誘導は血清含有培地中で行われる。いくつかの実施形態では、方法は、さらなる血清含有培地での誘導に続いて約18時間~約28時間の間に血清含有培地を交換することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、さらなる血清含有培地での誘導に続いて約24時間で血清含有培地を交換することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、無血清培地での誘導に続いて約18時間~約28時間の間に血清含有培地を交換することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、無血清培地での誘導に続いて約24時間で血清含有培地を交換することを含む。いくつかの実施形態では、無血清培地は、脂質および/または増殖因子を含むことができる。
【0018】
本開示の第2の態様には、安定な産生細胞株の細胞からウイルスベクターを産生する方法であって、(a)1つまたはそれ以上の核酸配列を組換えプラスミドに挿入することによって、ベクターを合成すること;(b)合成されたベクターから切除された発現カセットから、および抗生物質抵抗性カセットプラスミドから得られたDNA断片からコンカテマーアレイを形成すること;(c)GPR、GPRG、GPRT、GPRGT、GPRT-Gパッキング細胞株またはそれらの誘導体のうちの1つに形成されたコンカテマーアレイをトランスフェクトして、安定な産生細胞株の細胞を提供すること;(d)安定な産生細胞株の細胞からウイルスベクター産生を誘導すること;ならびに(e)ウイルスベクターの最初の回収に続いて約40時間~約56時間ごとに無血清培地中でウイルスベクターを反復回収することを含む方法がある。いくつかの実施形態では、最初の回収は、誘導後約40時間~約56時間の間に行われる。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、約44時間~約52時間ごとに反復回収される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは約48時間ごとに反復回収される。いくつかの実施形態では、無血清培地は1つまたはそれ以上の増殖因子を含む。いくつかの実施形態では、無血清培地は、1つまたはそれ以上の脂質を含む。いくつかの実施形態では、無血清培地は、増殖因子と脂質の両方、例えば、1つもしくはそれ以上の増殖因子および/または1つもしくはそれ以上の脂質を含む混合物を含む。いくつかの実施形態では、反復回収は、さらなる生成された安定な産生細胞株の細胞を導入することなく、誘導された生成された安定な産生細胞株の細胞に新鮮な無血清培地を加えることを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、安定な産生細胞株はGPRGパッケージング細胞株に基づく。いくつかの実施形態では、安定な産生細胞株はGPRTパッケージング細胞株に基づく。いくつかの実施形態では、安定な産生細胞株はGPRパッケージング細胞株に基づく。いくつかの実施形態では、合成されたベクターからのDNA断片と抗生物質抵抗性カセットからのDNA断片の比は、約25:1~約1:25の範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、抗生物質抵抗性カセットプラスミドはブレオマイシン抗生物質抵抗性カセットである。
【0020】
いくつかの実施形態では、組換えプラスミドは、配列番号1のものに対して少なくとも約90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、組換えプラスミドは、配列番号1のものに対して少なくとも約95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、組換えプラスミドは、配列番号2のものに対して少なくとも約90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、組換えプラスミドは、配列番号2のものに対して少なくとも約95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクター産生の誘導は血清含有培地中で行われる。いくつかの実施形態では、方法は、さらなる血清含有培地での誘導に続いて約24時間で血清含有培地を交換することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、無血清培地での誘導に続いて約24時間で血清含有培地を交換することをさらに含む。いくつかの実施形態では、無血清培地は、脂質および/または増殖因子を含むことができる。いくつかの実施形態では、脂質はコレステロール、リン脂質および脂肪酸を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、組換えプラスミド中に挿入される1つまたはそれ以上の核酸配列は治療的遺伝子である。適切な治療的遺伝子の例は本明細書に挙げられる。いくつかの実施形態では、組換えプラスミド中に挿入される1つまたはそれ以上の核酸配列はガンマ-グロビン遺伝子である。いくつかの実施形態では、組換えプラスミド中に挿入される1つまたはそれ以上の核酸配列は、HPRTをノックダウンするためのRNA干渉薬剤(「RNAi薬剤」)を含む。いくつかの実施形態では、RNAi薬剤は、shRNA、マイクロRNA、またはそれらのハイブリッドである。いくつかの実施形態では、組換えプラスミド中に挿入される1つまたはそれ以上の核酸配列は、CCR5をノックダウンするためのRNAiを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、方法は、反復回収の各個別の回収の間、約0.5×10TU/mL~約4×10TU/mLの範囲に及ぶウイルス力価の産生を提供する。いくつかの実施形態では、ウイルス力価は、反復回収の各個別の回収の間、約0.5×10TU/mL~約2×10TU/mLの範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、ウイルス力価は、反復回収の各個別の回収の間、約0.5×10TU/mL~約1.5×10TU/mLの範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは少なくとも5回回収される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは少なくとも10回回収される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは少なくとも20回回収される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは少なくとも20回回収される。いくつかの実施形態では、反復回収は、約10日~約90日の間の範囲に及ぶ期間にわたって行われる。いくつかの実施形態では、反復回収は、約20日~約70日の間の範囲に及ぶ期間にわたって行われる。
【0024】
本開示の第3の態様には、以下を含む、安定な産生細胞株の細胞からベクター上清を回収する方法がある:安定な産生細胞株の細胞からウイルスベクター産生を誘導すること;および無血清培地中で、ウイルスベクターの最初の回収に続いて約40~約56時間の間ごとに、誘導された安定な産生細胞株の細胞からウイルスベクターを反復回収すること。いくつかの実施形態では、反復回収は、さらなる生成された安定な産生細胞株の細胞を導入することなく、誘導された生成された安定な産生細胞株の細胞に新鮮な無血清培地を加えることを含む。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、誘導後約40時間で最初に回収される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、ウイルスベクターの最初の回収に続いて約48時間ごとに反復回収される。いくつかの実施形態では、方法は、反復回収の各個別の回収の間、約0.5×10TU/mL~約4×10TU/mLの範囲に及ぶウイルス力価の産生を提供する。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは少なくとも5回回収される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは少なくとも10回回収される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは少なくとも20回回収される。いくつかの実施形態では、反復回収は、約10日~約90日の間の範囲に及ぶ期間にわたって行われる。いくつかの実施形態では、反復回収は、約20日~約70日の間の範囲に及ぶ期間にわたって行われる。
【0025】
いくつかの実施形態では、無血清培地は1つまたはそれ以上の添加物を含む。いくつかの実施形態では、添加物は1つまたはそれ以上の増殖因子を含む。いくつかの実施形態では、添加物は1つまたはそれ以上の脂質を含む。いくつかの実施形態では、脂質はコレステロール、リン脂質および脂肪酸を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、安定な産生細胞株の細胞は血清含有培地中で継代され;細胞は無血清培地中で培養される。いくつかの実施形態では、安定な産生細胞株の細胞は血清含有培地中で継代され;細胞は血清含有培地中で培養される。
【0027】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは治療的遺伝子をコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、治療的遺伝子は、鎌状赤血球症を治すか、または鎌状赤血球症の1つの症状を少なくとも軽減する。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターはガンマ-グロビン遺伝子をコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターはHPRTをノックダウンするための核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、(i)HPRTをノックダウンするための第1の核酸配列、および(ii)治療的遺伝子をコードする第2の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターはCCR5をノックダウンするための核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターはCRISPR/Cas成分をコードする核酸配列を含む。
【0028】
本開示の第4の態様には、HPPRTをノックダウンするためのRNAiをコードする第1の核酸配列を含むウイルスベクターを含む組成物があり、ウイルスベクターは:生成された安定な産生細胞株の細胞からウイルスベクター産生を誘導すること;およびウイルスベクターの最初の回収に続いて約40~約56時間ごとに、誘導された生成された安定な産生細胞株の細胞からウイルスベクターを反復回収することによって産生される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターの反復回収は、さらなる生成された安定な産生細胞株の細胞を導入することなく、誘導された生成された安定な産生細胞株の細胞に新鮮な培地を加えることを含む。いくつかの実施形態では、反復回収は無血清培地中で行われる。
【0029】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは第2の核酸配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、第2の核酸配列は、本明細書に挙げたもののうちのいずれかを含めた治療的遺伝子をコードする。いくつかの実施形態では、治療的遺伝子はガンマグロビン遺伝子である。いくつかの実施形態では、治療的遺伝子はウィスコット・アルドリッチ症候群タンパク質である。いくつかの実施形態では、治療的遺伝子はC1エステラーゼインヒビタータンパク質である。いくつかの実施形態では、治療的遺伝子はブルトンチロシンキナーゼである。いくつかの実施形態では、第2の核酸はヌクレアーゼをコードする。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼは、ホーミングエンドヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、II型のクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピートおよびmegaTALヌクレアーゼからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2の核酸配列はCRISPR/Cas成分をコードする。いくつかの実施形態では、CRISPR/Cas成分はCas9タンパク質およびCas12タンパク質からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターはレトロウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。
【0030】
本開示の第5の態様には、宿主細胞の形質導入における、本開示の第4の態様のウイルスベクターを含む組成物の使用がある。適切な宿主細胞としては、限定されないが、ヒト細胞、マウスの細胞、非ヒト霊長類細胞(例えば、アカゲザル細胞)、ヒト前駆細胞または幹細胞、293細胞、HeLa細胞、D17細胞、MDCK細胞、BHK細胞およびCf2Th細胞が挙げられる。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、造血細胞、例えば、造血前駆細胞/幹細胞(例えば、CD34陽性造血前駆細胞/幹細胞(HPSC))、単球、マクロファージ、末梢血単核球、CD4+Tリンパ球、CD8+Tリンパ球または樹状細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、形質導入後に、実質的にHPRT欠乏性にされ、例えば、HPRT発現が50%低減している。
【0031】
本開示の第6の態様には、以下を含む、ウイルス力価を反復回収する方法がある:(a)安定な産生細胞株の細胞が血清含有培地中で継代される継代段階、(b)安定な産生細胞株の細胞が第1の無血清培地中で処理される培養段階、および(c)安定な産生細胞株の細胞が第2の無血清培地中で処理される産生段階。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、誘導された安定な産生細胞株の細胞から反復回収され、反復回収は無血清培地中で行われる。いくつかの実施形態では、反復回収は、ウイルスベクターの最初の回収に続いて約40時間~約56時間ごとに行われる。いくつかの実施形態では、反復回収は、さらなる安定な産生細胞株の細胞を導入すること無しに、誘導された安定な産生細胞株の細胞に新鮮な無血清培地を加えることを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、第1の無血清培地は1つまたはそれ以上の添加物を含む。いくつかの実施形態では、第2の無血清培地は1つまたはそれ以上の添加物を含む。いくつかの実施形態では、第1および第2の無血清培地は同じである。いくつかの実施形態では、第1および第2の無血清培地は異なり、例えば、それぞれ異なる添加物成分を含む。例えば、第1の無血清培地は1つのタイプの増殖因子を含むことができるが、第2の無血清培地は異なるタイプの増殖因子を含むことができる。同様に、第1の無血清培地は1つまたはそれ以上の増殖因子を含むことができるが、第2の無血清培地は1つまたはそれ以上の脂質を含む。いくつかの実施形態では、任意の無血清培地中の添加物の量は、培地の体積基準で、約0.05%から約10%の範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、方法は、反復回収の各個別の回収の間、約0.5×10TU/mL~約4×10TU/mLの間の範囲に及ぶ量のウイルス力価の回収を提供する。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは少なくとも5回回収される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは少なくとも10回回収される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは少なくとも20回回収される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは少なくとも20回回収される。いくつかの実施形態では、反復回収は、約10日~約90日の間の範囲に及ぶ期間にわたって行われる。いくつかの実施形態では、反復回収は、約20日~約70日の間の範囲に及ぶ期間にわたって行われる。
【0033】
いくつかの実施形態では、安定な産生細胞株の細胞は、(a)1つまたはそれ以上の遺伝子を組換えプラスミドにクローニングすることによって、ベクターを合成すること;(b)(i)合成されたベクターから切除された発現カセットおよび(ii)抗生物質抵抗性カセットプラスミドから得られた発現カセットからコンカテマーアレイを形成すること;(c)GPR、GPRG、GPRT、GPRGTまたはGPRT-Gパッケージング細胞株のうちの1つに形成されたコンカテマーアレイをトランスフェクトすること、ならびに(d)安定な産生細胞株を単離することによって生成される。
【0034】
いくつかの実施形態では、合成されたベクターは、治療的遺伝子をコードする核酸配列を含む。適切な治療的遺伝子の例は本明細書に挙げられる。いくつかの実施形態では、治療的遺伝子は、鎌状赤血球症を治すか、または鎌状赤血球症の1つの症状を少なくとも軽減する。いくつかの実施形態では、合成されたベクターは、ガンマ-グロビン遺伝子をコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、合成されたベクターは、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(「HPRT」)をノックダウンするための核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、合成されたベクターは、(i)HPRTをノックダウンするための第1の核酸配列、および(ii)治療的遺伝子をコードする第2の核酸配列(例えば、ガンマ-グロビン遺伝子)を含む。いくつかの実施形態では、合成されたベクターは、CCR5をノックダウンするための核酸配列を含む。
【0035】
本開示の第7の態様には、以下を含む、ベクター上清を回収する方法がある:GPR、GPRG、GPRT、GPRGTもしくはGPRT-Gパッキング細胞株またはそれらの誘導体のうちの1つに由来する安定な産生細胞株の細胞を生成すること;生成された安定な産生細胞株の細胞からウイルスベクター産生を誘導すること;およびさらなる生成された安定な産生細胞株の細胞を導入することなく、誘導された生成された安定な産生細胞株の細胞に新鮮な無血清培地を加えることを含む、ウイルスベクターの最初の回収に続いて約40~約56時間ごとに、無血清培地中で、誘導された生成された安定な産生細胞株の細胞からウイルスベクターを反復回収すること。いくつかの実施形態では、無血清培地は1つまたはそれ以上の増殖因子を含む。いくつかの実施形態では、無血清培地は、1つまたはそれ以上の脂質を含む。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターの最初の回収は誘導後約40時間~約56時間の間に行われる。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターの最初の回収は誘導後48時間未満に行われる。いくつかの実施形態では、反復回収は少なくとも2回行われる。いくつかの実施形態では、反復回収は約44~約52時間ごとに行われる。いくつかの実施形態では、反復回収は約48時間ごとに行われる。
【0036】
いくつかの実施形態では、無血清培地は各反復回収後に交換される。いくつかの実施形態では、方法は、反復回収の各個別の回収の間、約0.5×10TU/mL~約4×10TU/mLの範囲に及ぶウイルス力価の産生を提供する。いくつかの実施形態では、ウイルス力価は、反復回収の各個別の回収の間、約0.5×10TU/mL~約2×10TU/mLの範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは少なくとも5回回収される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは少なくとも10回回収される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは少なくとも20回回収される。いくつかの実施形態では、反復回収は約10日~約90日の間の範囲に及ぶ期間にわたって行われる。いくつかの実施形態では、反復回収は約20日~約70日の間の範囲に及ぶ期間にわたって行われる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】確立された手順によるHEK293T/17細胞での一過的トランスフェクション、またはGPRGベースの安定な産生細胞株の使用のいずれかによって、同じレンチウイルスベクターを反復して産生したことを図示する図である。ベクター含有培地(VCM)を超遠心分離法によって100×濃縮し、レンチウイルスの(LV)力価を遺伝子形質導入アッセイによって決定した。
図2】安定な産生細胞株を生成する方法、および生成された安定な産生細胞株から産生されたレンチウイルスベクターを回収するための方法を図示するフローチャートである。
図3】連続的な継代の3か月の期間にわたって、2つの異なる細胞株MWCBについて産生細胞株の安定性の評価を図示する図である。一定の間隔で、テトラサイクリン(TET)除去によってレンチウイルスベクターを誘導し、遺伝子形質導入アッセイによって、レンチウイルスベクター力価についてVCMを評価した。両方の細胞株は安定であり、3か月の期間(約90日)にわたって、および約25継代を超えて、1×10TU/mLを超えてレンチウイルスベクターを産生することができた。
図4】TETの除去による誘導に続くレンチウイルスベクター産生のキネティクスを図示する図である。遺伝子形質導入アッセイによって、VCM中のベクター力価を評価した。すべての場合で、GPRGベースの安定な産生細胞株は、誘導に続いて少なくとも約5日間、約1×10TU/mLを上回るレベル(未濃縮)でレンチウイルスベクター産生を維持することができた。
図5図5Aおよび図5Bは、安定細胞株からのレンチウイルスベクター産生のキネティクスを図示する図である。(図5A)ベクター産生の間、毎日(■)または2日ごと(□)培地を新鮮な培地と交換した。(図5B)回収した培地中のレンチウイルスベクターの総量を293T細胞で力価測定した。示されるデータは、平均値±SD(N=2)である。TU、形質導入単位。
図6図6Aは、ドキシサイクリン(Dox)を含まない培地中でGPRGおよび293T細胞を誘導したことを図示する図である。誘導された細胞を、抗VSVG抗体によって染色してVSVG発現を検出し、フローサイトメトリーによって測定した。図6Bは、GPRGパッケージング細胞株が長期培養後でさえレンチウイルスベクターを産生する能力を図示する図である。
図7図7Aおよび図7Bは、異なる培養条件におけるレンチウイルス産生を図示する図である。(A)血清含有培地で培養した/産生した。(B、左)血清含有培地で培養した/無血清培地で産生した;(B、右)無血清培地で培養した/産生した。D10:500mL DMEM/GlutaMAX(商標)(ThermoFisherから入手可能);50mL FBS(10%w/v);5mLペニシリン/ストレプトマイシン;SFM:無血清培地。
図8】新鮮な培地(ベクターなし)またはLVsh5/C46ベクターのいずれかとともにインキュベートした293TまたはTF-1a細胞のFACS解析を示す図である。
図9】感染細胞におけるレンチウイルスベクターコピー数の定量化を図示する図である。C46のqPCRを使用して、2用量(MOI=1または0.3)での形質導入後に宿主ゲノムあたりのベクターコピー数を決定した。
図10】g宿主-CCR5細胞にLVsh5/C46ベクターを形質導入したことを図示する図である。FACSによって、CCR5発現レベルの低下が測定された。
図11】pUC57-TL20の模式図を示す図である。
図12】本開示のいくつかの実施形態によるHIV-1ベースのレンチウイルストランスファーベクターを図示する図である。この特定のトランスファーベクターは、HIV-1融合インヒビター(C46)と組み合わせて、HIV-1共受容体CCR5のダウンレギュレーションのための低分子ヘアピン型RNA(shRNA)をコードする。
図13】血清有りおよび無しの本明細書に開示される方法の使用からのレンチウイルスの誘導を図示する図である。無血清培地で培養した細胞は、10%PBSで培養したものとほぼ同じ量のウイルスを産生した。本明細書で開示される方法を無血清培養環境に適合させることができることが考えられる。
図14】DNA断片を生成する方法を図示するフローチャートである。
図15】コンカテマーアレイを合成する方法を図示するフローチャートである。
図16】コンカテマーアレイをパッケージング細胞株に導入する方法を図示するフローチャートである。
図17】トランスフェクトされたクローンを選択する方法を図示するフローチャートである。
図18】単一コロニーの単離を行う方法を図示するフローチャートである。
図19】ウイルス産生を評価する方法を図示するフローチャートである。
図20-1】図20A図20Bおよび図20Cは、一般に、TL20-Cal1-wpreおよびTL20-Unc-GFPベクターを合成するための産生細胞を説明する図である。図20Aは、新鮮な培地(左:ベクターなし)または最も強力な産生クローンから回収されたTL20-Cal1-WPRE(右)のいずれかとともにインキュベートした293T細胞のフローサイトメトリー解析を図示する。図20Bは、新鮮な培地(ダークグレーのバー:ベクターなし)または最も強力な産生クローンから回収されたTL20-UbcGFP(ライトグレーのバー)のいずれかとともにインキュベートした293T細胞のフローサイトメトリー解析を図示する。図20Cは、TL20-Cal1-WPRE(左)またはTL20-UbcGFP(右)ベクターを作製するための独立の産生クローンからの上清の測定されたベクター力価の分布を図示する。ベクターを293T細胞で力価測定し、フローサイトメトリーによって解析した。ポリクローナル産生細胞を使用して調製したベクターについて達成された最高の力価(単一クローン選択の前)を破線で示す。凡例:Ubc:ユビキチンCプロモーター;GFP:高感度緑色蛍光タンパク質。
図20-2】図20-1の続き。
図21A】産生細胞株が無血清培地中でウイルスを生成することができることを図示する図である。図21Aは、キネティック研究の間のGFPウイルスの感染力価を図示する(誘導後7日目まで連続的に回収する)。
図21B】産生細胞株が無血清培地中でウイルスを生成することができることを図示する図である。図21Bは、LVsh5/C46ベクターの形質導入効率を図示する(誘導後3日目に回収する)。
【発明を実施するための形態】
【0038】
配列表
本明細書で提供される核酸配列およびアミノ酸配列は、37C.F.R.1.822に定義されるように、ヌクレオチド塩基に対する標準的な文字省略形、およびアミノ酸に対する3文字コードを使用して示される。配列表は、2016年5月9日に作成された5KBの「2016-05-09_Cal-0013WO_ST25.txt」という名前のASCIIテキストファイルとして提出され、これを、参照によって本明細書に組み入れる。
【0039】
定義
本明細書で使用する場合、単数形の用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈において別段示さない限り、複数の指示物を含む。同様に、単語「または」は、文脈において別段示さない限り、「および」を含むことが意図される。
【0040】
用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」などは、互換的に使用され、同じ意味を有する。同様に、「含む(comprises)」、「含む(includes)」、「有する(has)」などは互換的に使用され、同じ意味を有する。特に、これらの用語のそれぞれは、「含む(comprising)」の一般的な米国特許法の定義と一致して定義され、したがって、「少なくとも以下の」を意味するオープン用語として解釈され、さらなる構成、制限、態様などを除外するものではないとも解釈される。したがって、例えば、「成分a、bおよびcを有するデバイス」は、少なくとも成分a、bおよびcを含むデバイスを意味する。同様に、フレーズ:「工程a、bおよびcを伴う(involving)方法」は、方法が少なくとも工程a、bおよびcを含むことを意味する。さらに、工程および方法は特定の順序で本明細書で概要が述べられる可能性があるが、工程および方法の順序付けは変動し得ることを当業者は認識するであろう。
【0041】
本明細書および特許請求の範囲において使用する場合、「または」は、上記で定義された通り、「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト中の項目を分ける場合、「または」または「および/または」は、包括的であると解釈されるべきであり、すなわち、要素の数またはリストの少なくとも1つを含むだけでなく、1つより多くも含み、場合により、さらなる列挙されていない項目を含むと解釈されるべきである。「の1つのみ」もしくは「の正確に1つ」のようにそれとは反対に明示される用語のみ、または特許請求の範囲において使用される場合、「からなる」は、要素の数またはリストの正確に1つの要素を含むことを指す。一般に、本明細書で使用する場合、用語「または」は、排他性の用語、例えば、「いずれか」、「の1つ」、「の1つのみ」または「の正確に1つ」が先行する場合、排他的な代替物(すなわち「一方または他方であるが、両方ではない」)を示すと解釈されるべきである。特許請求の範囲において使用される場合、「から本質的になる」は、特許法の分野で使用されるその通常の意味を有するべきである。
【0042】
本明細書および特許請求の範囲において使用する場合、1つまたはそれ以上の要素のリストに関連するフレーズ「少なくとも1つ」は、要素のリスト中の要素のいずれか1つまたは複数から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、要素のリスト内に具体的に列挙されるありとあらゆる要素の少なくとも1つを必ずしも含むとは限らず、要素のリスト中の要素の任意の組み合わせを除外しないことを理解されるべきである。この定義は、フレーズ「少なくとも1つの」が言及する要素のリスト内に具体的に特定される要素以外に、具体的に特定されるそうした要素に関連しているか、または関連していないかに関係なく、要素が場合により存在し得ることも許可する。したがって、非限定例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または同等に、「AもしくはBの少なくとも1つ」、または同等に、「Aおよび/もしくはBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、Bは存在せず、1つより多いAを場合により含めた、少なくとも1つのA(B以外の要素を場合により含む);別の実施形態では、Aは存在せず、1つより多いBを場合により含めた、少なくとも1つのB(A以外の要素を場合により含む);さらに別の実施形態では、1つより多いAを場合により含めた、少なくとも1つのA、および場合により1つより多いBを含めた、少なくとも1つのB(他の要素を場合により含む);などを指すことができる。
【0043】
本明細書で使用する場合、用語「クローニング」は、核酸分子をプラスミド中にライゲーションし、宿主の増殖中の複製に適した宿主細胞にこれを移行させる方法を指す。
【0044】
本明細書で使用する場合、用語「断片」はポリペプチドを指し、そのポリペプチドに特有のまたは特徴的である、所与のポリペプチドの任意の別々の部分と定義される。本明細書で使用する場合、本用語は、完全長ポリペプチドの活性の少なくとも一部を保持する、所与のポリペプチドの任意の別々の部分も指す。
【0045】
本明細書で使用する場合、用語「遺伝子」は、任意のヌクレオチド配列、DNAまたはRNAを指し、少なくともそのある部分は、細胞プロセスのある態様で機能する別々の最終産物、典型的には、限定されないがポリペプチドをコードする。本用語は、ポリペプチドまたは他の別々の最終産物をコードするコード配列を指すことを意味するだけでなく、基底レベルの発現をモジュレートする、コード配列の前または後の領域、および個々のコーディングセグメント(「エクソン」)間の介在配列(「イントロン」)を包含することもできる。いくつかの実施形態では、遺伝子は、調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化配列、終結配列、コザック配列、TATAボックスなど)および/または改変配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、遺伝子は、タンパク質をコードするのではなく、むしろ機能的RNA分子、例えば、tRNA、RNAi誘導剤などをコードする核酸への言及を含むことができる。
【0046】
本明細書で使用する場合、用語「HIV」は、HIV-1だけでなく、HIV-1の様々な系統(例えば、BaL系統またはSF162系統)ならびにHIV-1の様々なサブタイプ(例えば、サブタイプA、B、C、D、F、G、H、JおよびK)も含む。
【0047】
本明細書で使用する場合、用語「同一性」は、高分子分子間の、例えば、核酸分子(例えば、DNA分子および/もしくはRNA分子)間の、ならびに/またはポリペプチド分子間の全体的な関連性を指す。2つの核酸配列の同一性パーセントの計算は、例えば、最適な比較目的のために2つの配列を整列させることによって行うことができる(例えば、最適な整列化のために、第1および第2の核酸配列の一方または両方にギャップを導入することができ、比較目的で、同一でない配列を無視することができる)。ある特定の実施形態では、比較目的のために整列させる配列の長さは、参照配列の少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または実質的に100%の長さである。対応するヌクレオチド位置のヌクレオチドを次いで比較する。第1の配列の位置が第2の配列の対応する位置と同じヌクレオチドで占められている場合、分子はその位置で同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適な整列化のために導入される必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮した、配列が共に有する同一の位置の数の関数である。
【0048】
本明細書で使用する場合、用語「レンチウイルス」は、分裂細胞および非分裂細胞に感染することができるレトロウイルスの属を指す。レンチウイルスのいくつかの例としては、ヒト後天性免疫不全症候群(AIDS)の病原体である、HIV(ヒト免疫不全ウイルス:HIVタイプ1およびHIVタイプ2を含める);ヒツジにおいて脳炎(ビスナ)または肺炎(マエディ)を引き起こす、ビスナ・マエディ、ヤギにおいて免疫不全、関節炎および脳症を引き起こす、ヤギ関節炎脳炎ウイルス;ウマにおいて自己免疫性溶血性貧血および脳症を引き起こす、ウマ伝染性貧血ウイルス;ネコにおいて免疫不全を引き起こす、ネコ免疫不全ウイルス(FIV);ウシにおいてリンパ節腫脹、リンパ球増加症、およびおそらく中枢神経系感染症を引き起こす、ウシ免疫不全ウイルス(BIV);ならびに人間に近い霊長類において免疫不全および脳症を引き起こす、サル免疫不全ウイルス(SIV)が挙げられる。
【0049】
本明細書で使用する場合、用語「レンチウイルスベクター」は、レンチウイルスに由来し、形質導入を介して遺伝物質を細胞中に移行させるために使用される核酸の任意の形態を示すために使用される。本用語は、レンチウイルスベクター核酸、例えば、DNAおよびRNA、これらの核酸のカプセル化形態およびウイルスベクター核酸がパッケージングされたウイルス粒子を包含する。
【0050】
本明細書で使用する場合、用語「マルチクローニングサイト」または「MCS」は、クローニングベクタープラスミド中に核酸断片をクローニングする目的で制限部位を含むヌクレオチド配列を指す。ポリリンカーまたはポリクローニング部位とも称されるMCSは、クローニング部位のクラスターであり、多くの制限酵素がその部位内で機能することができる。いくつかの実施形態のクローニング部位は、制限酵素がプラスミドを直鎖化または切断するように機能する既知の配列である。
【0051】
本明細書で使用する場合、用語「産生細胞」は、レンチウイルスベクター粒子の産生に必要なすべての要素を含む細胞を指す。
【0052】
本明細書で使用する場合、用語「パッケージング細胞」は、組換えウイルスベクター、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルストランスファーベクタープラスミド中で欠けている、感染性組換えウイルスの産生に必要な要素を含む細胞を指す。典型的には、そのようなパッケージング細胞は、ウイルスの構造タンパク質(例えば、gag、polおよびenv)を発現することができる1つまたはそれ以上の発現カセットを含むが、パッケージングシグナルを含まない。パッケージング細胞株の細胞は典型的には哺乳動物細胞株であり、これは、RNAをパッケージングし、複製能があるヘルパーウイルスを産生する能力を欠くウイルス粒子を産生するのに必要なコード配列を含む。パッケージング機能が(例えば、トランスで)細胞株内に提供されると、パッケージング細胞株は組換えレトロウイルス(または、レンチウイルス)を産生し、それによって、「産生細胞株」になる。
【0053】
本明細書で使用する場合、用語「制限エンドヌクレアーゼ」または「制限酵素」は、同種の核酸分子の配列(例えば、DNA)に結合し、配列内の正確な位置でそれを切断する触媒分子のクラスの1つのメンバーまたは複数のメンバーを指す。
【0054】
本明細書で使用する場合、用語「レトロウイルス」は、宿主細胞ゲノム中に組み込まれるcDNAコピーにレトロウイルスの逆転写酵素によって逆転写されるRNAゲノムを有するウイルスを指す。レトロウイルスベクターおよびレトロウイルスベクターを作製する方法は当技術分野で既知である。手短に言えば、レトロウイルスベクターを構築するために、目的の遺伝子をコードする核酸をある特定のウイルス配列に置き換えてウイルスゲノム中に挿入して、複製欠損のウイルスを産生する。ビリオンを産生するために、gag、polおよびenv遺伝子を含むが、LTRおよびパッケージング成分がないパッケージング細胞株を構築する(Mannら、Cell、33巻:153~159、1983)。レトロウイルスのLTRおよびパッケージング配列とともにcDNAを含む組換えプラスミドがこの細胞株中に導入されると、パッケージング配列によって、組換えプラスミドのRNA転写産物がウイルス粒子中にパッケージングされることが可能になり、次いで、これが培養培地中に分泌される。次いで、組換えレトロウイルスを含む培地を収集し、場合により濃縮し、遺伝子導入に使用する。いくつかの実施形態では、用語「レトロウイルス」は、任意の既知のレトロウイルス(例えば、タイプcレトロウイルス、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳癌ウイルス(MuMTV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、ネコ白血病ウイルス(FLV)およびラウス肉腫ウイルス(RSV))を指す。本発明の「レトロウイルス」は、ヒトT細胞白血病ウイルス、HTLV-1およびHTLV-2、ならびにレトロウイルスのレンチウイルスファミリー、例えば、ヒト免疫不全ウイルス、HIV-1、HIV-2、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ免疫不全ウイルス(EIV)、ならびにレトロウイルスの他のクラスも含む。
【0055】
本明細書で使用する場合、「RNA干渉薬剤」または「RNAi薬剤」は、阻害性核酸またはサイレンシング核酸である。本明細書で使用する場合、「サイレンシング核酸」は、特異的な配列と相互作用して、遺伝子発現を阻害することができる任意のポリヌクレオチドを指す。サイレンシング核酸の例としては、RNA二本鎖(例えば、siRNA、shRNA)、ロックド核酸(「LNA」)、アンチセンスRNA、siRNAもしくはshRNAのセンスおよび/もしくはアンチセンス配列をコードするDNAポリヌクレオチド、DNAザイムまたはリボザイムが挙げられる。遺伝子発現の阻害は、必ずしも特定の挙げられた配列からの遺伝子発現である必要はなく、例えば、その特定の配列によって制御される配列からの遺伝子発現であり得ることを当業者は認識するであろう。
【0056】
本明細書で使用する場合、用語「播種」は、細胞またはベクターの培養産生のために細胞培養をバイオリアクターまたは別の容器に加える方法を指す。
【0057】
本明細書で使用する場合、フレーズ「無血清培地(serum-free media)」または「無血清培地(serum-free medium)」は、血清を含まない培地、すなわち、動物またはヒト起源の血清を含まない細胞培養培地を指す。いくつかの実施形態では、無血清培地はタンパク質を含まず、加水分解産物または未知の組成の成分も含まない。適切な細胞培養培地は当業者に既知である。これらの培地は、場合により、塩、ビタミン、バッファー、エネルギー源、アミノ酸および他の物質を含むことができる。細胞の無血清培養に適した培地の例は、培地199(Morgan、MortonおよびParker;Proc.Soc.Exp.Biol.Med.1950、73、1;特に10 Life Technologiesから入手可能)である。
【0058】
本明細書で使用する場合、用語「shRNA」は、アンチセンス領域、ループ部分およびセンス領域を含むRNA分子であって、センス領域がアンチセンス領域と塩基対合して、二本鎖のステムを形成する相補的ヌクレオチドを有するRNA分子を指す。転写後に続く。
【0059】
本明細書で使用する場合、用語「治療的遺伝子」は、疾患を治療または防止する目的で対象に投与することができる遺伝子を指す。「治療的遺伝子」の定義内には、「生物学的に機能上同等な」治療的遺伝子が包含される。当業者によって理解されるように、用語「治療的遺伝子」は、ゲノム配列、cDNA配列、およびタンパク質、ポリペプチド、ドメイン、融合タンパク質を発現する、または発現するように適合させることができる、より小さな操作された遺伝子セグメント、および治療的遺伝子にコードされる完全長ポリペプチドの治療的機能のいくつかまたはすべてを維持する変異体を含む。したがって、治療的遺伝子のアミノ酸と同一であるまたは機能的に同等であるアミノ酸の約70%の配列相同性~約99%の配列相同性、および例えば、約70%~約80%、より好ましくは約85%および約90%;またはさらにより好ましくは約95%~約99%の間などの、その中で導き出せる任意の範囲または量の配列相同性を有する配列は、ポリペプチドの生物活性が維持されることを条件として、生物学的に機能上同等な配列である。
【0060】
本明細書で使用する場合、用語「形質導入する」または「形質導入」は、トランスフェクションによってではなく、感染による、ウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターを使用する遺伝子の送達を指す。例えば、レトロウイルスベクター(細胞中への核酸の導入ためのベクターとして使用される改変レトロウイルス)によって運ばれる抗HPRT遺伝子は、感染およびプロウイルス組込みを介して細胞中に形質導入することができる。したがって、「形質導入される遺伝子」は、レンチウイルスまたはベクター感染およびプロウイルス組込みを介して細胞中に導入された遺伝子である。ウイルスベクター(例えば、「形質導入ベクター」)は、「標的細胞」または宿主細胞中に遺伝子を形質導入する。
【0061】
本明細書で使用する場合、用語「ベクター」は、別の核酸分子の細胞中への侵入、例えば、移行、輸送などを媒介することができる核酸分子を指す。移行した核酸は、一般に、ベクター核酸分子に連結、例えば挿入される。ベクターは、自律複製を指示する配列を含むことができ、または宿主細胞のDNA中への組込みを可能にするのに十分である配列を含むことができる。当業者に明らかであるように、ウイルスベクターは、移行した核酸の侵入を媒介する核酸に加えて、様々なウイルス成分を含むことができる。限定されないが、直鎖状ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性化合物に関連するポリヌクレオチド、プラスミドおよびウイルスベクターを含めて、多数のベクターが当技術分野で既知である。ウイルスベクターの例としては、限定されないが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター(レンチウイルスベクターを含める)などが挙げられる。
【0062】
本明細書で使用する場合、用語「ベクターコピー数」または「VCN」は、細胞のゲノム中のベクターまたはその一部のコピーの数を指す。平均VCNは、細胞の集団から、または個々の細胞コロニーから決定することができる。VCNを決定するための例示的方法としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびフローサイトメトリーが挙げられる。
【0063】
本明細書で使用する場合、本明細書で互換的に使用される用語「ウイルス力価」または「力価」は、感染個体からの体液(例えば、血液、血清、血漿、唾液、尿)の試料中の感染性ウイルス粒子の数を指す。
【0064】
レンチウイルスゲノムは、一般に、5’ロングターミナルリピート(LTR)、gag遺伝子、pol遺伝子、env遺伝子、アクセサリー遺伝子(nef、vif、vpr、vpu)および3’LTRで構成されている。ウイルスのLTRは、U3、RおよびU5と呼ばれる3つの領域に分けられる。U3領域は、エンハンサーおよびプロモーター要素を含む。U5領域はポリアデニル化シグナルを含む。R(反復)領域はU3領域とU5領域を分離し、R領域の転写される配列は、ウイルスRNAの5’末端と3’末端の両方に出現する。例えば「RNA Viruses:A Practical Approach」(Alan J.Cann編、Oxford University Press、(2000));O NarayanおよびClements(1989)J.Gen.Virology,Vol.70:1617~1639;Fieldsら(1990)Fundamental Virology Raven Press.;Miyoshi H、Blamer U、Takahashi M、Gage F H、Verma I M.(1998)J Virol.、72巻(10):8150 7、ならびに米国特許第6,013,516号を参照されたい。
【0065】
造血前駆細胞/幹細胞(HPSC)に感染させるために使用されてきたいくつかのものを含めて、レンチウイルスベクターは当技術分野で既知である。そのようなベクターは、例えば、参照によって本明細書に組み入れる以下の刊行物に見出すことができる:Evansら、Hum Gene Ther.、10巻:1479~1489、1999;Caseら、Proc Natl Acad Sci USA、96巻:2988~2993、1999;Uchidaら、Proc Natl Acad Sci USA、95巻:11939~11944、1998;Miyoshiら、Science、283巻:682~686、1999;およびSuttonら、J.Virol.、72巻:5781~5788、1998。一実施形態では、発現ベクターは改変レンチウイルスであり、それにより、分裂細胞および非分裂細胞の両方に感染させることができる。さらに、改変レンチウイルスゲノムは、好ましくは、ウイルス複製に必要とされるレンチウイルスタンパク質に対する遺伝子を欠き、したがって、望まれない複製、例えば、標的細胞における複製を防止する。改変ゲノムの複製に必要とされるタンパク質は、好ましくは、組換えレトロウイルス(または、特にレンチウイルス)の産生の間に、パッケージング細胞株においてトランスで提供される。一実施形態では、パッケージング細胞株は293T細胞株である。レンチウイルスベクターは、好ましくは、レンチウイルスの5’および3’ロングターミナルリピート(LTR)からの配列を含む。一実施形態では、ウイルスコンストラクトは、レンチウイルスの5’LTRからのRおよびU5配列ならびにレンチウイルス由来の不活性化または自己不活性化3’LTRを含む。LTR配列は、任意の種または系統からのものを含めた任意のレンチウイルスからのLTR配列でもよい。例えば、LTRは、HIV、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)またはウシ免疫不全ウイルス(BIV)からのLTR配列でもよい。好ましくは、LTR配列はHIV LTR配列である。
【0066】
安定な産生細胞株の細胞を生成する方法
レンチウイルスベクター(LV)は、分裂細胞および非分裂細胞の両方を安定して形質導入するためのそれらの効率および能力が理由で、遺伝子導入のための重要なツールである。その結果、研究者は、多種多様の臨床応用において遺伝子送達ビヒクルとして、それを使用している。それにもかかわらず、現行適正製造基準(cGMP)方法を使用する大規模な臨床的産生は、レンチウイルスベクターを使用するより多くの臨床試験が規制当局の承認を受ける場合に考慮されなければならない一連の課題を伴う。cGMP適合方法を設計する際に考慮すべき重要な事項の1つは、規制上の考慮すべき事項を、複数のcGMP産生のために一貫性があるレンチウイルスを産生することができる製造方法に統合する必要があることである。臨床的に使用されているレンチウイルスベクターの大多数は、一過的トランスフェクションによって産生されている。しかし、一過的トランスフェクションベースの産生は、しばしば労働集約的であり、変動しやすい。このような理由で、いくつかの安定なパッケージング細胞株システムが最近開発された。レトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターの生物的製造のためのこれらの細胞株の使用は、拡張性と一貫性の両方の理由で特に魅力的であるが、そのような株の開発は時間がかかり、これらの株のcGMP使用ための規制経路はしっかりと確立されていない。
【0067】
前述のことを考慮して、本開示は、自己不活性化レンチウイルスベクター(SIN-LV)を含めたレトロウイルスベクターの臨床的産生のための方法を記載する。新規なレンチウイルストランスファーベクタープラスミドをパッケージング細胞株(例えば、GPR、GPRG、GPRT、GPRGTもしくはGPRT-Gまたはこれらに由来する誘導体もしくは類似体パッケージング細胞株)と共に使用して、自己不活性化レンチウイルスベクター(例えば、LVgGsh7;ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)の発現をノックダウンするように設計された成分を含むベクター;HPRT発現をノックダウンするように設計された第1の成分、および治療的遺伝子、例えばガンマ-グロビン遺伝子の発現のための第2の成分も含むベクター)を含めたレトロウイルスベクターの産生を可能にするために、安定な産生細胞株の細胞を生成することができると考えられる。本明細書に記載のある特定の実施形態および例は、HIV-1融合インヒビター(すなわち、C46)と組み合わせて、HIV-1共受容体CCR5のダウンレギュレーションのための低分子ヘアピン型RNA(shRNA)をコードする自己不活性化レンチウイルスベクターであるLVsh5/C46の産生に言及するが、本明細書に記載の方法は、任意の所望の、または依頼人が提供した遺伝子または配列を含む、任意のSIN-LV(例えば、ガンマ-グロビン遺伝子をコードする核酸配列、例えば、その開示を参照によってその全体を本明細書に組み入れる米国特許出願公開第2017/0145077号に開示されているそうした核酸配列を発現するように設計されたSIN-LIV;またはウィスコット・アルドリッチ症候群タンパク質をコードする核酸配列を発現するように設計されたSIN-LIV)を産生することができる安定な産生細胞株の細胞の生成に適していることを当業者は認識するであろう。
【0068】
本出願人は、一過的トランスフェクションによって産生されたSIN-LVと比較して、本明細書中に開示される方法は、(i)同様の質および量のSIN-LVを生成することができること;(ii)より良い効力を有し得るSIN-LVを産生すること;および(ii)一過的トランスフェクションで見られるプレップ間の変動性を大きく低下させると同時に、収量を維持する方法を可能にすることを示した。
【0069】
pUC57-TL20c
いくつかの実施形態では、本開示は、新規な多用途のマルチクローニングサイト(MCS)を含む、ヒト免疫不全ウイルスタイプ1(HIV-1)ベースの第3世代の自己不活性化(SIN)レンチウイルストランスファーベクタープラスミド(以降、「pUC57-TL20」と称される)を提供する(図11を参照されたい)。
【0070】
いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、内部プロモーターをそれ自体は含まない(したがって、これは「プロモーターレス」である)ベクター骨格(「TL20c」)を含むプラスミドを移行させる。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは1つのプロモーター、例えばテトラサイクリン抑制性プロモーターをベクター骨格の上流に含むプラスミドを移行させる(図12を参照されたい)。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、ベクター骨格のプロモーターレス設計は、使用者が決定したプロモーターからの目的の遺伝子の送達およびその後の発現を可能にするレンチウイルストランスファーベクタープラスミドの生成を可能にすると考えられる。
【0071】
図11は、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドの構成要素を図示する遺伝子地図を記載する。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは約6500ヌクレオチド~約6750ヌクレオチドを含む。他の実施形態では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは6600ヌクレオチド~約6700ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、レンチウイルストランスファーベクタープラスミドのベクター骨格は約3850ヌクレオチド~約3950ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、レンチウイルストランスファーベクタープラスミドのベクター骨格は約3901ヌクレオチドを含む。
【0072】
図11に示すように、プラスミドは、5’隣接HIV LTR、パッケージングシグナルまたはψ+、セントラルポリプリントラクト(cPPT)、Rev応答エレメント(RRE)、マルチクローニングサイト(MCS)および3’隣接HIV LTRを含む。LTR領域は、U3およびU5領域ならびにR領域をさらに含む。
【0073】
本開示のある特定の実施形態によれば、トランスファープラスミドは自己不活性化(SIN)LTRを含む。当該技術分野において既知であるように、レトロウイルスの生活環の間、3’LTRのU3領域が複製されて、逆転写およびウイルスのDNA合成の過程で、5’LTRの対応する領域を形成する。SIN LTRの作出は、3’LTRのU3領域を(好ましくは、その一部の欠失、例えばTATA配列の除去によって)不活性化することによって、達成される。この変化は逆転写後に5’LTRに移行されるので、プロウイルスのLTRの転写単位が排除され、これは、複製能があるウイルスによる動員を防止すると考えられている。さらなる安全性の増強は、5’LTRのU3領域を異種プロモーターに置き換えて、ウイルス粒子の産生の間にウイルスゲノムの転写を駆動することによってもたらされる。
【0074】
いくつかの実施形態では、パッケージングシグナルは、野生型HIV(例えば、HIV01 HXB2_LAI_IIIB)の約361塩基対のGag配列および約448塩基対のPol配列を含む。いくつかの実施形態では、cPPTは野生型HIVの約85塩基対のVif配列を含む。いくつかの実施形態では、HIVポリプリントラクト(pPu)は野生型HIVの約106塩基対のNef配列を含む。いくつかの実施形態では、RREは、野生型HIVの約26塩基対のRev配列、約25塩基対のtat配列および約769塩基対のEnv配列を含む。いくつかの実施形態では、トランスファープラスミドは、クロマチンインスレーターおよび/またはベータ-グロブリンのポリアデニル化シグナルを含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、パッキングシグナルをコードするヌクレオチド配列は、配列番号3の配列、または配列番号3のものに少なくとも85%の同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、パッキングシグナルをコードするヌクレオチド配列は、配列番号3の配列、または配列番号3のものに少なくとも90%の同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、パッキングシグナルをコードするヌクレオチド配列は、配列番号3の配列、または配列番号3のものに少なくとも95%の同一性を有する配列を含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、セントラルポリプリントラクト(cPPT)をコードするヌクレオチド配列は、配列番号4の配列、または配列番号4のものに少なくとも85%の同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、セントラルポリプリントラクト(cPPT)をコードするヌクレオチド配列は、配列番号4の配列、または配列番号4のものに少なくとも90%の同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、セントラルポリプリントラクト(cPPT)をコードするヌクレオチド配列は、配列番号4の配列、または配列番号4のものに少なくとも95%の同一性を有する配列を含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、Rev応答エレメントをコードするヌクレオチド配列は、配列番号5の配列、または配列番号5のものに少なくとも85%の同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、Rev応答エレメントをコードするヌクレオチド配列は、配列番号5の配列、または配列番号5のものに少なくとも90%の同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、Rev応答エレメントをコードするヌクレオチド配列は、配列番号5の配列、または配列番号5のものに少なくとも95%の同一性を有する配列を含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、自己不活性化ロングターミナルリピートをコードするヌクレオチド配列は、配列番号6の配列、または配列番号6のものに少なくとも85%の同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、自己不活性化ロングターミナルリピートをコードするヌクレオチド配列は、配列番号6の配列、または配列番号6のものに少なくとも90%の同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、自己不活性化ロングターミナルリピートをコードするヌクレオチド配列は、配列番号6の配列、または配列番号6のものに少なくとも95%の同一性を有する配列を含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、プラスミドは、配列番号10のものに対して少なくとも85%の同一性を有する、ドキシサイクリン抑制性プロモーターをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、プラスミドは、配列番号10のものに対して少なくとも90%の同一性を有する、ドキシサイクリン抑制性プロモーターをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、プラスミドは、配列番号10のものに対して少なくとも95%の同一性を有する、ドキシサイクリン抑制性プロモーターをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、プラスミドは、配列番号11のものに対して少なくとも85%の同一性を有する、HIV LTR R5領域をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、プラスミドは、配列番号11のものに対して少なくとも90%の同一性を有する、HIV LTR R5領域をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、プラスミドは、配列番号11のものに対して少なくとも95%の同一性を有する、HIV LTR R5領域をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、プラスミドは、配列番号12のものに対して少なくとも85%の同一性を有する、HIV LTR U5領域をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、プラスミドは、配列番号12のものに対して少なくとも90%の同一性を有する、HIV LTR U5領域をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、プラスミドは、配列番号12のものに対して少なくとも95%の同一性を有する、HIV LTR U5領域をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、プラスミドは、配列番号13のものに対して少なくとも85%の同一性を有する、クロマチンインスレーターをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、プラスミドは、配列番号13のものに対して少なくとも90%の同一性を有する、クロマチンインスレーターをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、プラスミドは、配列番号13のものに対して少なくとも95%の同一性を有する、クロマチンインスレーターをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、プラスミドは、配列番号14のものに対して少なくとも85%の同一性を有する、ベータ-グロビンのポリアデニル化シグナルをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、プラスミドは、配列番号14のものに対して少なくとも90%の同一性を有する、ベータ-グロビンのポリアデニル化シグナルをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、プラスミドは、配列番号14のものに対して少なくとも95%の同一性を有する、ベータ-グロビンのポリアデニル化シグナルをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、プラスミドは、配列番号15のものに対して少なくとも85%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、プラスミドは、配列番号15のものに対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、プラスミドは、配列番号15のものに対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0085】
本開示は、様々な異なる制限酵素のためのMCSを組み込んでいるレンチウイルストランスファーベクタープラスミドを提供する。本開示のある特定の実施形態によれば、MCSは、約20~40ヌクレオチドを有する配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるプラスミドのMCSは少なくとも2個の制限酵素切断部位を含む。他の実施形態では、本明細書に開示されるプラスミドのMCSは少なくとも3個の制限酵素切断部位を含む。他の実施形態では、本明細書に開示されるプラスミドのMCSは少なくとも4個の制限酵素切断部位を含む。さらに他の実施形態では、本明細書に開示されるプラスミドのMCSは約2個~約10個の制限部位を含む。さらに別の実施形態では、本明細書に開示されるプラスミドのMCSは約3個~約8個の制限部位を含む。いくつかの実施形態では、MCS内の制限部位は、BstBI、MluI、NotI、ClaI、ApaI、XhoI、XbaI、HpaI、NheI、PacI、NsiI、SphI、Sma/Xma、AccI、BamHIおよびSphIまたはこれらの任意の誘導体または類似体から選択される。
【0086】
いくつかの実施形態では、レンチウイルストランスファーベクタープラスミドのMCS領域は、所望の導入遺伝子カセットの容易なサブクローニングを行いやすくすると考えられている4つのユニークな制限酵素切断部位を保有する。いくつかの実施形態では、マルチクローニングサイトは、BstBI、MluI、NotIおよびClaI制限エンドヌクレアーゼ部位を含む。いくつかの実施形態では、マルチクローニングサイトをコードするヌクレオチド配列は、配列番号7の配列、または配列番号7のものに対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む。それらの制限部位は任意の順序で配置することができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、トランスファープラスミドはベクター骨格に隣接する1つまたはそれ以上のさらなる制限酵素切断部位を含む(図11を参照されたい)。いくつかの実施形態では、トランスファープラスミドはベクター骨格に隣接する2つのさらなる制限酵素切断部位を含む。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、さらなる隣接する制限酵素切断部位は、方向性の(「ヘッドトゥーテールの」)コンカテマーアレイの生成を可能にするものであると考えられる。いくつかの実施形態では、制限酵素切断部位はSfilおよびBsu36Iから選択される。いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上の遺伝子を含むレンチウイルスベクターはプラスミドに由来する。
【0088】
いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、配列番号1の配列のものに対して少なくとも80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、配列番号1の配列のものに対して少なくとも85%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。さらに他の実施形態では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、配列番号1の配列のものに対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。さらなる実施形態では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、配列番号1の配列のものに対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。さらなる実施形態では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、配列番号1の配列のものに対して少なくとも96%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。さらに別の実施形態では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、配列番号1の配列のものに対して少なくとも97%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。さらに別の実施形態では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、配列番号1の配列のものに対して少なくとも98%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。さらに別の実施形態では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、配列番号1の配列のものに対して少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは配列番号1の配列を含む。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、配列番号1に記載される配列と100ヌクレオチド以下異なる配列を有する。
【0089】
いくつかの実施形態では、レンチウイルストランスファーベクタープラスミドは、配列番号2のものに対して少なくとも80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、配列番号2のものに対して少なくとも85%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。さらに他の実施形態では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、配列番号2のものに対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。さらなる実施形態では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、配列番号2のものに対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。さらなる実施形態では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、配列番号2のものに対して少なくとも96%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。さらに別の実施形態では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、配列番号2のものに対して少なくとも97%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。さらに別の実施形態では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは配列番号2のものに対して、少なくとも98%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。さらに別の実施形態では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、配列番号2のものに対して少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは配列番号2の配列を含む。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、配列番号2に記載される配列と100ヌクレオチド以下異なる配列を有する。
【0090】
いくつかの実施形態では、レンチウイルストランスファーベクタープラスミドは、当業者に既知の方法に従って合成される。例えば、当業者に既知の従来の制限消化およびライゲーション技法を使用して、プラスミドを合成することができる。例えば、当業者に既知の標準的な消化およびライゲーション手順(例えば、その開示を参照によってその全体を本明細書に組み入れる、Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor、N.Y.を参照されたい)を使用して、TL20cベクター骨格を含むドナープラスミドをpU57Cレシピエントプラスミド(例えば、Genescriptから市販されているものなど)にサブクローニングすることができる。
【0091】
本開示は、レンチウイルスベクター、例えば、HPRTをノックダウンするように設計された成分を含むレンチウイルスベクターであるLVgGsh7、またはHPRTをノックダウンするように設計された第1の成分および治療的遺伝子、例えばガンマグロビン遺伝子をコードする第2の成分を含むレンチウイルスベクター(例えば、その開示を参照によってその全体を本明細書に組み入れるWO/2019/018383に開示されているベクターおよび核酸配列を参照されたい)を含めて、レトロウイルスベクターを産生する方法も含む。いくつかの実施形態では、方法は、遺伝子(本明細書に開示される遺伝子のうちのいずれかを含める)のcDNAを合成し、組換えプラスミド、例えばpUC57-TL20cの制限部位に合成したcDNAをクローニングすることを含む。当業者に既知の技法を使用して、任意の治療的遺伝子を適切なクローニング部位に挿入することができる。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)によって遺伝子を増幅し、次いでこれを、所望のプロモーターまたは遺伝子発現制御要素(適切なプロモーターの例は、その開示を参照によってその全体を本明細書に組み入れるWO/2019/018383内に開示されている)を含む組換えプラスミドにクローニングすることができる。
【0092】
いくつかの実施形態では、および単に例として、方法は、細胞中へのHIV融合またはHIV複製を防止することができるタンパク質を発現する遺伝子のcDNAを合成し;次いで、本明細書で開示されるプラスミドの制限部位に合成したcDNAをクローニングすることを含む。
【0093】
安定な産生細胞株の細胞の生成およびそれから産生されたレンチウイルスベクターの反復回収
本開示のいくつかの実施形態には、安定な産生細胞株の細胞を形成し、生成された安定な産生細胞株の細胞から産生されたレトロウイルスベクター(レンチウイルスベクターを含める)を回収する方法がある。いくつかの実施形態では、生成された産生細胞株の細胞から産生されたレンチウイルスベクターは反復回収され、例えば、約40~約56時間ごとに反復回収される。図2を参照すると、安定な産生細胞株の産生の第1工程は、第1および第2のプラスミドからDNA断片を生成すること(10)を含み、プラスミドのうちの1つは抗生物質抵抗性カセットプラスミドである。例えば、DNA断片は、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドおよび抗生物質抵抗性カセットプラスミドから生成することができる。DNA断片の生成(10)に続いて、次いで、DNAを使用してコンカテマーアレイを形成する(20)。
【0094】
その後に、トランスフェクションなどによってコンカテマーアレイを、次いで、パッキング細胞株(例えば、GPR、GPRG、GPRT、GPRG、GPRT-Gまたはそれらの誘導体のパッケージング細胞株)に導入する(30)。アレイの導入(30)およびその後のトランスフェクションに続いて、クローンを選択し(40)、単離して(50)、安定な産生細胞株を生成する(60)。次いで、レンチウイルスベクターを含むベクター上清を回収する、例えば、無血清培地中で約40~約56時間ごとに反復回収することができる。
【0095】
コンカテマーアレイの形成および精製
本明細書で互換的に使用される「コンカテマー」または「コンカテマーアレイ」は、直接的または間接的に直列に連結された同じDNA配列の複数のコピーを含む、長い連続的なDNA分子を指す。いくつかの実施形態では、コンカテマーアレイは、パッケージング細胞株の細胞のトランスフェクションで生成され、使用される。いくつかの実施形態では、コンカテマーアレイは、連結されたベクターゲノム発現カセットの大きなアレイであり、その中に抗生物質抵抗性カセットが散在している。
【0096】
図14を参照すると、コンカテマーアレイを形成するために、レンチウイルストランスファーベクタープラスミドからのDNA断片(工程100)および抗生物質抵抗性カセットプラスミド(工程110)が生成される。いくつかの実施形態では、DNA断片は、当業者に既知のプロトコールに従ってプラスミドのそれぞれを消化すること、次いで、消化された断片をライゲーションすることによって、調製することができる。いくつかの実施形態では、電気泳動およびアガロースゲルを利用して、所望のDNA断片を獲得する(工程120)。いくつかの実施形態では、NanoDrop分光光度計を使用してDNA断片の濃度を決定することができる(工程130)。DNAの断片をライゲーションするために様々なストラテジーが利用可能であり、その選択はDNA断片の末端の性質に依存し、その選択は当業者が容易に行うことができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、レンチウイルストランスファーベクタープラスミドはpUC57-TL20cに基づく。いくつかの実施形態では、抗生物質抵抗性カセットプラスミドはPGKプロモーターによって駆動される。いくつかの実施形態では、抗生物質抵抗性カセットプラスミドは、レンチウイルストランスファーベクタープラスミドにおけるレンチウイルスカセットとのコンカテマー化ための隣接部位を含む。いくつかの実施形態では、抗生物質抵抗性カセットプラスミドはPGK-ble(ブレオマイシン抵抗性)である。いくつかの実施形態では、PGK-bleプラスミドは、配列番号9の配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、PGK-bleプラスミドは、配列番号9の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、PGK-bleプラスミドは、配列番号9のヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、コンカテマーアレイは、レンチウイルストランスファーベクタープラスミドおよびPGK-bleプラスミドに由来する生成されたDNA断片のインビトロライゲーションを介して形成される。
【0098】
図15は、コンカテマーアレイの形成で使用される一般的な工程の概要を述べる。工程200では、生成されたDNA断片を混合し、ライゲーション反応の断片の量を最大にして、所望の比を維持する(工程210)。いくつかの実施形態では、レンチウイルストランスファーベクタープラスミドDNAの量対抗生物質抵抗性カセットプラスミドDNAの量の比は約100:1~約1:100の範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、レンチウイルストランスファーベクタープラスミドDNAの量対抗生物質抵抗性カセットプラスミドDNAの量の比は約75:1~約1:75の範囲に及ぶ。他の実施形態では、レンチウイルストランスファーベクタープラスミドDNAの量対抗生物質抵抗性カセットプラスミドDNAの量の比は約50:1~約1:50の範囲に及ぶ。さらに他の実施形態では、レンチウイルストランスファーベクタープラスミドDNAの量対抗生物質抵抗性カセットプラスミドDNAの量の比は約25:1~約1:25の範囲に及ぶ。さらなる実施形態では、レンチウイルストランスファーベクタープラスミドDNAの量対抗生物質抵抗性カセットプラスミドDNAの量の比は約10:1~約1:10の範囲に及ぶ。
【0099】
いくつかの実施形態では、コンカテマー反応混合物を室温で、例えば、約20℃~約25℃の間の範囲に及ぶ温度で一晩インキュベートする(工程220)。その後に、各試料のDNA断片の濃度を、次いで、NanoDrop分光光度計(ThermoFisher Scientificから入手可能)を使用して測定することができる(工程230)。
【0100】
いくつかの実施形態では、方向性のコンカテマーアレイが、パッキング細胞株のトランスフェクションで形成され、使用される。いくつかの実施形態では、方向性アレイの形成は、レンチウイルスベクター骨格に隣接する、レンチウイルストランスファーベクタープラスミド内の1つまたはそれ以上の制限酵素部位を利用することによって、達成される。いくつかの実施形態では、制限消化はTL20cベクターカセットに隣接する制限酵素部位を利用し、ヘッドトゥーテールのライゲーションにのみ使用することができるヌクレオチド非パリンドロームオーバーハングの形成を可能にする。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法による方向性ライゲーションは、主にヘッドトゥーテールのDNA生成物を含むコンカテマーアレイの生成を可能にする。
【0101】
いくつかの実施形態では、コンカテマーアレイは、本明細書の実施例3に記載される方法に従って形成される。当然ながら、実施例3で提供する手順は、異なる比の第1のプラスミド対第2のプラスミドを有するコンカテマーアレイの形成に、およびLVsh5/C46以外のトランスファープラスミド、例えば、ガンマ-グロビン遺伝子または目的の任意の他の遺伝子を発現するように設計されたトランスファープラスミドに適合し得ることを当業者は認識するであろう。
【0102】
いくつかの実施形態では、コンカテマーアレイは、パッキング細胞株中へのトランスフェクションより前に、フェノール抽出およびエタノール沈殿によって精製される。この従来の技法は安価かつ有効であるが、しかし、この手順は時間がかかり、再現性のある収量をもたらさない可能性がある。この特定の方法を使用する場合、最終的な試料にフェノール/クロロホルムを持ち越す危険性があることも考えられる。さらに、この方法は、さらなる有害な化学物質を含み、かつ、有害廃棄物ガイドラインに従って慎重に処分されなければならない有毒な廃棄物を生成する可能性があると考えられる。
【0103】
あるいは、他の実施形態では、ライゲーション後に新しく合成されたコンカテマーアレイを精製するために、シリカベースの方法が使用される。この方法は、高品質のトランスフェクショングレードのコンカテマーアレイを単離するための、単純で、信頼でき、迅速な、簡便な方法を提供すると考えられる。いくつかの実施形態では、コンカテマーアレイは、Qiagenから入手可能なDNeasy Miniスピンカラムを使用して、例えば、実施例6に記載される手順を使用して、精製される。
【0104】
トランスフェクション/単一クローンの単離
コンカテマーアレイの精製後、次いで、アレイはパッケージング細胞株の細胞をトランスフェクトするために使用される。本明細書で使用する場合、用語「形質転換」および「トランスフェクション」は、外来核酸(例えば、DNAまたはRNA)を細胞に導入するための当技術分野で認識される様々な技法を指すことが意図される。本明細書で提供される例から明らかなように、レンチウイルス粒子の産生に許容的な宿主細胞に生成されたコンカテマーアレイをトランスフェクトすると、細胞は産生細胞、すなわち、感染性レンチウイルス粒子を産生する細胞になる。
【0105】
一般に、形成されたコンカテマーアレイまたは形成された方向性コンカテマーアレイは、従来のトランスフェクション技法を介して細胞中に導入することができる。例えば、図16を参照すると、いくつかの実施形態では、トランスフェクションの約20~約24時間前に細胞を回収し、播種し(工程300)、次いで、合成されたコンカテマーアレイ(工程310)をこれにトランスフェクトする(工程320)。パッキング細胞株の細胞にトランスフェクトする手順は本明細書の実施例4で提供される。
【0106】
形成されたコンカテマーまたは方向性コンカテマーアレイでのトランスフェクションに適した1つのパッケージング細胞株はGPRパッケージング細胞株である。GPR株は、gagpolおよびrevを含めた必要なウイルス成分を有する293T/17細胞に由来するHIV-1ベースのパッケージング細胞株である(その開示を参照によってその全体を本明細書に組み入れる、Thromら、Efficient construction of producer cell lines for a SIN lentiviral vector for SCID-X1 gene therapy by concatemeric array transfection.Blood 113:5104~5110を参照されたい)。
【0107】
形成されたコンカテマーまたは方向性コンカテマーアレイでのトランスフェクションに適した別のパッケージング細胞株はGPRGパッケージング細胞株である。いくつかの実施形態では、GPRGパッキング細胞株はgagpol、revおよびVSV-Gを含む。
【0108】
形成されたコンカテマーまたは方向性コンカテマーアレイでのトランスフェクションに適したさらに別のパッケージング細胞株は、GPRTパッケージング細胞株(gagpol、revおよびtat)である。GPRGおよびGPRTパッケージング細胞株およびこれらを形成する方法もThromらによって開示され、その開示を、再度参照によってその全体を本明細書に組み入れる。他の適切なパッケージング細胞株(例えば、GPRT-G)は、Wielgosz et al.「Generation of a lentiviral vector producer cell clone for human Wiskott-Aldrich syndrome gene therapy」、Molecular Therapy-Methods & Clinical Development 2、Article number:14063(2015)によって記載され、その開示を参照によってその全体を本明細書に組み入れる。
【0109】
本明細書中に開示される方法を用いる使用に適した他のパッケージング細胞株も利用することができることを当業者は認識するであろう。いくつかの実施形態では、他のパッケージング細胞株は、GPR、GPRG、GPRTまたはGPRT-Gパッケージング細胞株のうちのいずれかに由来し得る。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、GPRT-G細胞株はCD34+細胞において形質導入効率がより高いと考えられている(Wielgoszを参照されたい)。本明細書で使用する場合、用語「に由来する」は、個々の細胞からクローン的に派生し、いくつかの選り抜きの特質、例えば、所与の力価で活性タンパク質を産生する能力、または特定の密度まで増殖する能力を有する細胞の集団を指す。
【0110】
いくつかの実施形態では、パッケージング細胞株の細胞は293T細胞である。293T細胞(または、HEK293T)は、SV40ラージT抗原の変異体バージョンを発現する、HEK 293細胞株に由来するヒト細胞株の細胞である。さらに他の適切なパッケージング細胞株の細胞は、米国特許公開第2009/0187997号、PCT公開第WO/2012/170431号および米国特許第8,034,620号に記載されており、これらの開示を参照によってその全体を本明細書に記載する。PCT公開第WO/2012/170431号は、CHO細胞、BHK細胞、MDCK細胞、C3H10T1/2細胞、FLY i、Psi-2細胞、BOSC23細胞、PA317細胞、WEHI細胞、COS細胞、BSC1細胞、BSC40細胞、BMT10細胞、VERO細胞、W138細胞、MRC5細胞、A549細胞、HT1080細胞、293細胞、293T細胞、B-50細胞、3T3細胞、NIH3T3細胞、HepG2細胞、Saos-2細胞、Huh7細胞、HeLa細胞、W163細胞、211細胞および211A細胞から調製することができるパッケージング細胞を記載する。
【0111】
図17は、トランスフェクトされた細胞を選択する一般的な方法を図示する。いくつかの実施形態では、トランスフェクションから約72時間後に、GPRG細胞を選択培地(ゼオシンおよびドキシサイクリン)で培養する(工程400)。次いで、細胞巣(cell foci)が確認されるまで約3~約4日ごとに選択培地(ゼオシンおよびドキシサイクリン)を細胞に供給する(工程410)。その後に、細胞株を拡大させ、評価する(工程420)。
【0112】
いくつかの実施形態では、トランスフェクションに続いて、良好な製造潜在能力を有する単一細胞クローンを特定するために、単一巣の選択/スクリーニング方法が利用される。この方法によれば、いくつかの実施形態では、選択される細胞を150×25mmのディッシュにまばらに播種し、約2~約3週間拡大させ、認識可能なコロニーを形成させる。次いで、単クローン性増殖のために、個々のコロニーを別のより小さな培養容器に移すことができる。この方法は費用対効果が大きく、頻繁に採用される技法であると考えられるが;単一巣選択技法の本質的な限界のために、良好な産生細胞株の高確率の単クローン性を達成することは困難である可能性がある。
【0113】
図18は単一コロニーの単離を図示する。工程500では、フローサイトメトリーを利用して、単一細胞ソーティングを調製する。次いで、細胞を条件培養培地にプレーティングし(工程510)、拡大させる(工程520)。
【0114】
他の実施形態では、高力価レンチウイルスベクターの安定な産生細胞株を生成するために、蛍光活性化セルソーター(FACS)を使用して単一クローンを単離する(例えば、図8を参照されたい)。細胞付着および生存率を高め、コロニー形成を促進するために、ソーティング方法の間に、条件培地、例えば、ゼオシン(50μg/mL)およびドキシサイクリン(1ng/mL)を加えることもできる。条件増殖培地の使用およびFACSシステムのハイスループット能力は、多数のクローンのスクリーニングを可能にすると考えられ、それにより、高力価レンチウイルスベクター産生クローンの発見の確率を高めると考えられる。
【0115】
いくつかの実施形態では、良好な増殖速度およびウイルス産生能力を有するクローンが、約20継代にわたって安定性について試験される。
【0116】
ウイルスベクターを生成するための産生細胞株の誘導および「2日間の回収」
クローンの選択および選択されたクローンの拡大に続いて、選択されたクローンは、ウイルスベクター、例えば、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターを産生するように誘導される。いくつかの実施形態では、誘導は当業者に既知の手順に従って行うことができる。
【0117】
図19は誘導および評価の方法を図示する。工程600では、ウイルスベクターを誘導し、次いで、細胞、例えば293T細胞のスピノキュレーションを行って、形質導入効率を決定する(工程610)。いくつかの実施形態では、上位3クローンをスクリーニングし(工程620)、拡大させる(工程630)。いくつかの実施形態では、次いで、クローンを(例えば液体窒素下で)保存する(工程640)。いくつかの実施形態では、次いで、保存細胞バンクを本明細書に記載のようにウイルス性上清の反復回収で利用することができる。
【0118】
毎日の回収(例えば、約24時間ごとの回収)を利用する産生プロトコールは小規模で様々な試験ベクターを産生するために利用することができるが、生物的製造を大規模に行う場合は、毎日の回収および培地交換は非経済である。この費用は、無血清培地よりも高価な血清含有培地を使用する場合に増幅される。毎日の回収の代わりとして、本明細書に記載のように、「2日間の回収」プロトコールを発明した。本出願人は、「2日間の回収」は、より伝統的な毎日の回収とほぼ同じ量のウイルスベクターの生成を可能にし、同時に、より少ない培養培地しか必要としないという利点も提供することを予想外に発見した。毎日の回収からのベクター力価収量と「2日間の回収」プロトコールによるベクター力価収量の比較を図5Aおよび5Bに図示する。いくつかの実施形態では、「2日間の回収」手順は、従来の毎日の回収方法と比較して、少なくとも約30%少ない培養培地を利用する。他の実施形態では、「2日間の回収」手順は、従来の毎日の回収方法と比較して、少なくとも約35%少ない培養培地を利用する。他の実施形態では、「2日間の回収」手順は、従来の毎日の回収方法と比較して、少なくとも約40%少ない培養培地を利用する。他の実施形態では、「2日間の回収」手順は、従来の毎日の回収方法と比較して、少なくとも約45%少ない培養培地を利用する。さらに他の実施形態では、従来の毎日の回収方法と比較して、「2日間の回収」手順は、少なくとも約50%少ない培養培地を利用する。さらに他の実施形態では、「2日間の回収」手順は、従来の毎日の回収方法と比較して、少なくとも約55%少ない培養培地を利用する。
【0119】
本出願人は、血清含有培地の使用と比較して、(培養および/または産生段階のいずれかまたは両方において)無血清培地中で反復回収する場合に、ウイルスベクター力価が低減する可能性があるが、特に、無血清培地の使用が、おそらく血清含有培地中に存在する病原体からの汚染の危険性を軽減または防止することを考慮する場合、ウイルスベクター力価の低減は有意ではないと考えられる(図21Aおよび21Bを参照されたい)ことをさらに示した。さらに、本出願人は、血清含有培地から無血清培地への切り換えが行われる場合、「2日間の回収」プロトコールがウイルス力価の低減を軽減することを示した。実際に、本出願人は、細胞が、無血清培地における毎日の回収と比較して無血清培地における「2日間の回収」をより良く許容することを発見した。最後に、無血清培地を使用して生物的製造作業を行うことに関連する費用は、血清含有培地を使用して生物的製造作業を行う場合よりも、比較上はるかに少なく、それにより、無血清培地へ切り替える場合のウイルスベクター力価の任意の喪失は、認識される費用節約を考慮すれば、管理可能である(本明細書において、表AおよびBを比較する)。
【0120】
上記のように、本開示の方法は、ウイルスベクターの最初の回収に続いて約2日ごとにウイルスベクターが反復回収される「2日間の回収」プロトコールを利用する。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターの最初の回収は誘導後(すなわち、ウイルスベクター産生を誘導した後)約24時間~約56時間の間に行われる。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターの最初の回収は誘導後(すなわち、ウイルスベクター産生を誘導した後)約30時間~約56時間の間に行われる。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターの最初の回収は誘導後(すなわち、ウイルスベクター産生を誘導した後)約40時間~約56時間の間に行われる。他の実施形態では、ウイルスベクターの最初の回収は誘導後約42時間~約54時間の間に行われる。さらに他の実施形態では、ウイルスベクターの最初の回収は誘導後約44時間~約52時間の間に行われる。さらなる実施形態では、ウイルスベクターの最初の回収は誘導後約46時間~約50時間の間に行われる。さらなる実施形態では、ウイルスベクターの最初の回収は誘導後約47時間~約49時間の間に行われる。さらに別の実施形態では、ウイルスベクターの最初の回収は誘導後約48時間目で行われる。いくつかの実施形態では、最初の回収は、誘導後少なくとも30時間目で行われる。いくつかの実施形態では、最初の回収は、誘導後少なくとも35時間目で行われる。いくつかの実施形態では、最初の回収は、誘導後少なくとも40時間目で行われる。いくつかの実施形態では、最初の回収は、誘導後少なくとも45時間目で行われる。
【0121】
いくつかの実施形態では、本明細書中に開示される「2日間の回収」プロトコールによる反復回収は、ウイルスベクターの最初の回収に続いて約40時間~約56時間ごとにウイルスベクターを反復回収することを含む。他の実施形態では、最初の回収は、安定な産生細胞株の細胞の誘導後約40~約56時間の間に行われ、次いで、その後約42~約55時間ごとに回収が反復される。さらに他の実施形態では、最初の回収は、安定な産生細胞株の細胞の誘導後約40~約56時間の間に行われ、次いで、その後約44~約52時間ごとに回収が反復される。さらなる実施形態では、最初の回収は、安定な産生細胞株の細胞の誘導後約40~約56時間の間に行われ、次いで、その後約46~約50時間ごとに回収が反復される。さらに別の実施形態では、最初の回収は、安定な産生細胞株の細胞の誘導後約40~約56時間の間に行われ、次いで、その後約48時間ごとに回収が反復される。本出願人は、誘導に続いて約48時間でウイルスベクターを回収することができること、および誘導後約72時間で最大量のウイルス力価を得ることができることを発見した。本出願人は、反復ウイルス回収プロトコールはウイルスベクターの最終的な収量を増大させることもできることも発見した。
【0122】
いくつかの実施形態では、最初の回収は、安定な産生細胞株の細胞の誘導後約40~約56時間の間に行われ、次いで、その後少なくとも約40時間ごとに回収が反復される。いくつかの実施形態では、最初の回収は、安定な産生細胞株の細胞の誘導後約40~約56時間の間に行われ、次いで、その後少なくとも約42時間ごとに回収が反復される。いくつかの実施形態では、最初の回収は、安定な産生細胞株の細胞の誘導後約44~約56時間の間に行われ、次いで、その後少なくとも約40時間ごとに回収が反復される。いくつかの実施形態では、最初の回収は、安定な産生細胞株の細胞の誘導後約46~約56時間の間に行われ、次いで、その後少なくとも約40時間ごとに回収が反復される。
【0123】
いくつかの実施形態では、回収に使用される無血清培地は各反復回収後に交換される。いくつかの実施形態では、各個別の回収の間、さらなる無血清培地は生成された安定な産生細胞株の細胞に導入されない。いくつかの実施形態では、反復回収は、さらなる安定な産生細胞株の細胞を導入すること無しに、安定な産生細胞株の細胞に新鮮な培地を加えることを含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、本開示による方法(無血清培地における「2日間の回収」)は、反復回収の各個別の回収の間、約0.5×10TU/mL~約5×10TU/mLの範囲の生存可能なウイルス力価を回収することを可能にする。他の実施形態では、本開示による方法(無血清培地における「2日間の回収」)は、反復回収の各個別の回収の間、約0.5×10TU/mL~約4×10TU/mLの範囲の生存可能なウイルス力価を回収することを可能にする。さらに他の実施形態では、本開示による方法(無血清培地における「2日間の回収」)は、反復回収の各個別の回収の間、約0.5×10TU/mL~約3.5×10TU/mLの範囲の生存可能なウイルス力価を回収することを可能にする。さらなる実施形態では、本開示による方法(無血清培地における「2日間の回収」)は、反復回収の各個別の回収の間、約0.5×10TU/mL~約3×10TU/mLの範囲の生存可能なウイルス力価を回収することを可能にする。さらに別の実施形態では、本開示による方法(無血清培地における「2日間の回収」)は、反復回収の各個別の回収の間、約0.5×10TU/mL~約2.5×10TU/mLの範囲の生存可能なウイルス力価を回収することを可能にする。さらに他の実施形態では、本開示による方法(無血清培地における「2日間の回収」)は、反復回収の各個別の回収の間、約0.5×10TU/mL~約2×10TU/mLの範囲の生存可能なウイルス力価を回収することを可能にする。さらに他の実施形態では、本開示による方法(無血清培地における「2日間の回収」)は、反復回収の各個別の回収の間、約0.5×10TU/mL~約1.7×10TU/mLの範囲の生存可能なウイルス力価を回収することを可能にする。さらに別の実施形態では、本開示による方法(無血清培地における「2日間の回収」)は、反復回収の各個別の回収の間、約0.5×10TU/mL~約1.6×10TU/mLの範囲の生存可能なウイルス力価を回収することを可能にする。さらに他の実施形態では、本開示による方法(無血清培地における「2日間の回収」)は、反復回収の各個別の回収の間、約0.5×10TU/mL~約1.4×10TU/mLの範囲の生存可能なウイルス力価を回収することを可能にする。さらに他の実施形態では、本開示による方法(無血清培地における「2日間の回収」)は、反復回収の各個別の回収の間、約0.5×10TU/mL~約1.3×10TU/mLの範囲の生存可能なウイルス力価を回収することを可能にする。さらに別の実施形態では、本開示による方法(無血清培地における「2日間の回収」)は、反復回収の各個別の回収の間、約0.5×10TU/mL~約1.2×10TU/mLの範囲の生存可能なウイルス力価を回収することを可能にする。さらに別の実施形態では、本開示による方法(無血清培地における「2日間の回収」)は、反復回収の各個別の回収の間、約0.5×10TU/mL~約1.1×10TU/mLの範囲の生存可能なウイルス力価を回収することを可能にする。さらに別の実施形態では、本開示による方法(無血清培地における「2日間の回収」)は、反復回収の各個別の回収の間、約0.5×10TU/mL~約1×10TU/mLの範囲の生存可能なウイルス力価を回収することを可能にする。
【0125】
いくつかの実施形態では、本開示による方法(無血清培地における「2日間の回収」)は、反復回収の各個別の回収の間、少なくとも約0.5×10TU/mLの生存可能なウイルス力価を回収することを可能にする。いくつかの実施形態では、本開示による方法(無血清培地における「2日間の回収」)は、反復回収の各個別の回収の間、少なくとも約1×10TU/mLの生存可能なウイルス力価を回収することを可能にする。いくつかの実施形態では、本開示による方法(無血清培地における「2日間の回収」)は、反復回収の各個別の回収の間、少なくとも約1.5×10TU/mLの生存可能なウイルス力価を回収することを可能にする。いくつかの実施形態では、本開示による方法(無血清培地における「2日間の回収」)は、反復回収の各個別の回収の間、少なくとも約2×10TU/mLの生存可能なウイルス力価を回収することを可能にする。いくつかの実施形態では、本開示による方法(無血清培地における「2日間の回収」)は、反復回収の各個別の回収の間、少なくとも約2.5×10TU/mLの生存可能なウイルス力価を回収することを可能にする。いくつかの実施形態では、本開示による方法(無血清培地における「2日間の回収」)は、反復回収の各個別の回収の間、少なくとも約3×10TU/mLの生存可能なウイルス力価を回収することを可能にする。いくつかの実施形態では、本開示による方法(無血清培地における「2日間の回収」)は、反復回収の各個別の回収の間、少なくとも約3.5×10TU/mLの生存可能なウイルス力価を回収することを可能にする。いくつかの実施形態では、本開示による方法(無血清培地における「2日間の回収」)は、反復回収の各個別の回収の間、少なくとも約4×10TU/mLの生存可能なウイルス力価を回収することを可能にする。いくつかの実施形態では、本開示による方法(無血清培地における「2日間の回収」)は、反復回収の各個別の回収の間、少なくとも約4.5×10TU/mLの生存可能なウイルス力価を回収することを可能にする。いくつかの実施形態では、本開示による方法(無血清培地における「2日間の回収」)は、反復回収の各個別の回収の間、少なくとも約5×10TU/mLの生存可能なウイルス力価を回収することを可能にする。
【0126】
いくつかの実施形態では、産生段階は約5日~約90日間続く。いくつかの実施形態では、産生段階は約5日~約80日間続く。いくつかの実施形態では、約5日~約70日間産生段階は続く。いくつかの実施形態では、産生段階は約5日~約60日間続く。いくつかの実施形態では、産生段階は約5日~約50日間続く。いくつかの実施形態では、産生段階は約5日~約40日間続く。いくつかの実施形態では、産生段階は約5日~約30日間続く。いくつかの実施形態では、産生段階は約5日~約20日間続く。いくつかの実施形態では、産生段階は約10日~約90日間続く。いくつかの実施形態では、産生段階は約10日~約60日間続く。いくつかの実施形態では、産生段階は約10日~約45日間続く。いくつかの実施形態では、産生段階は、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45、少なくとも約50、少なくとも約55、少なくとも約60、少なくとも約65、少なくとも約70、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85または少なくとも約90日間続く。いくつかの実施形態では、産生段階は、約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85または約90日続く。
【0127】
いくつかの実施形態では、回収は少なくとも2回行われる。他の実施形態では、回収は少なくとも3回行われる。他の実施形態では、回収は少なくとも4回行われる。他の実施形態では、反復回収は少なくとも5回行われる。他の実施形態では、回収は少なくとも6回行われる。他の実施形態では、回収は少なくとも7回行われる。他の実施形態では、回収は少なくとも8回行われる。他の実施形態では、回収は少なくとも9回行われる。他の実施形態では、回収は少なくとも10回行われる。いくつかの実施形態では、回収は11回行われる。他の実施形態では、回収は少なくとも12回行われる。他の実施形態では、回収は少なくとも13回行われる。他の実施形態では、回収は少なくとも14回行われる。他の実施形態では、回収は少なくとも15回行われる。他の実施形態では、回収は少なくとも16回行われる。他の実施形態では、回収は少なくとも17回行われる。他の実施形態では、回収は少なくとも18回行われる。他の実施形態では、回収は少なくとも19回行われる。他の実施形態では、回収は少なくとも20回行われる。他の実施形態では、回収は少なくとも25回行われる。
【0128】
本出願人は、無血清培地中で約2日ごとにウイルスベクターを反復回収することは、血清含有培地中を除いて同じ回収プロトコールを使用した場合に回収されたウイルスベクター力価の量と比較して、実質的に同じ量のウイルスベクター力価を回収することを可能にすることも発見した(例えば、表AおよびBを参照されたい;図21Aおよび21Bも参照されたい)。いくつかの実施形態では、(「2日間の回収」スケジュールに従って)無血清培地中で産生された感染性粒子の量は、(「2日間の回収」スケジュールに従って)血清含有培地中で産生された感染性粒子の全量の少なくとも約65%以内である。いくつかの実施形態では、(「2日間の回収」スケジュールを使用して)無血清培地中で産生された感染性粒子の量は、(「2日間の回収」スケジュールを使用して)血清含有培地中で産生された感染性粒子の全量の少なくとも約70%以内である。いくつかの実施形態では、(「2日間の回収」スケジュールを使用して)無血清培地中で産生された感染性粒子の量は、(「2日間の回収」スケジュールを使用して)血清含有培地中で産生された感染性粒子の全量の少なくとも約75%以内である。いくつかの実施形態では、(「2日間の回収」スケジュールを使用して)無血清培地中で産生された感染性粒子の量は、(「2日間の回収」スケジュールを使用して)血清含有培地中で産生された感染性粒子の全量の少なくとも約80%以内である。いくつかの実施形態では、(「2日間の回収」スケジュールを使用して)無血清培地中で産生された感染性粒子の量は、(「2日間の回収」スケジュールを使用して)血清含有培地中で産生された感染性粒子の全量の少なくとも約85%以内である。いくつかの実施形態では、(「2日間の回収」スケジュールを使用して)無血清培地中で産生された感染性粒子の量は、(「2日間の回収」スケジュールを使用して)血清含有培地中で産生された感染性粒子の全量の少なくとも約90%以内である。いくつかの実施形態では、(「2日間の回収」スケジュールを使用して)無血清培地中で産生された感染性粒子の量は、(「2日間の回収」スケジュールを使用して)血清含有培地中で産生された感染性粒子の全量の少なくとも約95%以内である。
【0129】
いくつかの実施形態では、各反復回収工程の終了の後に、回収されたウイルスベクターを濾過によって精製することができる。いくつかの実施形態では、回収されたベクターは、ウイルス力価、細胞ゲノムあたりのウイルスのコピーおよび/またはp24濃度の1つまたはそれ以上を決定することによって特性評価される。
【0130】
血清含有培地を使用する反復回収の例
第1の例示的方法
第1の例示的方法では、各工程で、すなわち、培養段階で、産生段階で、および細胞の継代の間で、血清を含む培地が利用される。いくつかの実施形態では、血清を含む培地はD10血清含有培地である。いくつかの実施形態では、D10血清含有培地は、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)および熱不活性化ウシ胎仔血清(10%)(すなわち、使用前に既に熱不活性化されたウシ胎仔血清)を含む。
【0131】
一実施形態には、本開示による2日間の回収を使用してウイルスベクターを生成する第1の方法があり、第1の方法は以下の工程を含む:
(1)産生株の培養ディッシュの古い培養培地を可能な限り完全に除去し、1×PBSで細胞を洗浄する。
【0132】
(2)TrypLE(商標)Express Enzyme(1×)を培養ディッシュに加える(ThermoFisher Scientificから入手可能)。
【0133】
(3)約37℃で約2分間インキュベーターに入れる。
【0134】
(4)D10培地(いかなる薬物も含まない)を加えることにより細胞を洗い流し、上下にピペッティングすることにより細胞クラスターを単一細胞に分離する(D10培地:高グルコース、GlutaMAX(商標)補充物および10%(w/v)FBSおよび1%(w/v)ペニシリン/ストレプトマイシンを有するダルベッコ改変イーグル培地)。
【0135】
(5)約1200rpm(または、125×g)で約5分間約4℃で細胞を遠心分離する。
【0136】
(6)培地を吸引し、形成されたペレットを新鮮なD10培地(薬物なし)中に穏やかに懸濁させる。
【0137】
(7)培養ディッシュ中に約95%コンフルエントで細胞を播種する(大まかに、4×10細胞/60mm培養ディッシュにおいてプレーティングすることによる。ベクター誘導)。
【0138】
(8)次いで、約24時間後(誘導後1日目)に、新鮮な予熱したD10培地を播種した細胞に補充することができる。
【0139】
(9)最初の培地交換から約48時間後(誘導後3日目)に初めてウイルスベクターを回収する。
【0140】
(10)新鮮な予熱した培地を培養ディッシュに加える。
【0141】
(11)2回目の培地交換から約48時間後(誘導後5日目)に2回目のウイルスベクター回収を行う。
【0142】
(12)新鮮な予熱した培地を培養ディッシュに加える。
【0143】
(13)3回目の培地交換から約48時間(誘導後7日目)に3回目のウイルスベクター回収を行う。
【0144】
第2の例示的方法
第2の例示的方法では、各工程で、すなわち、細胞の継代の間で、培養段階で、および産生段階で、血清含有培地が利用される。いくつかの実施形態では、血清含有培地はD10である。
【0145】
(1)産生株の培養ディッシュの培地を可能な限り完全に除去し、1×PBSで細胞を洗浄する。
【0146】
(2)100mmの培養ディッシュに対して3mLを使用して、洗浄した細胞単層上に1×TrypLE Expressを穏やかにピペットで移す。
【0147】
(3)フラスコを回転させて、TrypLE Expressで単層を覆う。
【0148】
(4)フラスコをインキュベーターに戻し、約2分間放置する。
【0149】
(5)フラスコの側面を穏やかにたたいて、いかなる残存付着細胞も遊離させた。
【0150】
(6)新鮮なD10培地約2mL(抗生物質無し)中に細胞を再懸濁させ、15mLコニカル遠心チューブに移す。
【0151】
(7)約1200rpm(または、125×g)で約5分間細胞を遠心分離する。
【0152】
(8)培地を吸引し、新鮮なD10培養培地(抗生物質なし)約5mLにペレットを穏やかに懸濁させる。
【0153】
(9)TC10(商標)自動細胞カウンターによって細胞数を決定する。
【0154】
(10)培養ディッシュにおいて約95%コンフルエントを越える細胞を播種する(約4×10個の生細胞を60mm培養ディッシュにプレーティングすることによる)。
【0155】
(11)新鮮な温めたD10培地を播種した細胞に毎日(約24時間ごとに)補充した。
【0156】
本出願人は、ウイルスベクターは誘導後約48時間で細胞から回収することができること、および最高のウイルス力価は誘導後72時間で得ることができることを発見した。本出願人は、ウイルスベクターは誘導後約2日~約4日まで回収することができることを再度予想外に発見した。
【0157】
いくつかの実施形態では、回収されたベクターは濾過によって精製される。いくつかの実施形態では、回収されたベクターは、ウイルス力価、細胞ゲノムあたりのウイルスのコピーおよびp24濃度を決定することによって特性評価される。
【0158】
無血清培地を使用する反復回収の例
本開示は、無血清培地を使用して2日間の回収を行う方法も提供する。以下に記載の第3のおよび第4の実施形態で詳しく述べるように、培養段階または産生段階の少なくとも1つで無血清培地を利用することができる。
【0159】
本出願人は、「2日間の回収」手順と無血清培地の使用を組み合わせることによって、最小限の力価の低減しかない、ウイルスベクターを反復回収する費用対効果が大きい方法を発見した。「2日間の回収」プロトコールとともに無血清培地を使用することは、血清含有培地の費用がかなり高い可能性がある大規模な生物的製造に特に重要であることが考えられる。したがって、いくつかの実施形態では、回収は無血清培地中で少なくとも部分的に行われる。例えば、培養段階または産生段階の少なくとも1つが無血清培地を利用する。別の例として、培養段階と産生段階の両方が無血清培地を利用する。
【0160】
【表1】
【0161】
【表2】
【0162】
第3の例示的方法
第3の例示的方法では、無血清培地がいくつかの工程で(例えば、培養と産生の両方の段階で)使用され、一方で、血清含有培地が他の工程で(例えば、細胞の継代の間)使用される。いくつかの実施形態では、血清含有培地はD10血清含有培地であり;無血清培地はUltraCULTURE(商標)培地(Lonzaから入手可能)である。いくつかの実施形態では、無血清培地は、1つまたはそれ以上の増殖因子および/または脂質、例えば、「脂質混合物補充物」(Sigma L5145から入手可能)を場合により含むことができる。UltraCULTURE(商標)培地とSigma L5145培地の両方は、ベクター産生の間細胞を安定化した。表AおよびB(上記)ならびに図21Aおよび21Bに比較データを提供する。
【0163】
したがって、本開示は、2日間の回収を使用してウイルスベクターを生成する第3の方法を提供し、第3の方法は以下の工程を含む:
(1)ウイルスベクター産生で使用する前に、(例えば、凍結から回復させるために)解凍後少なくとも4回細胞を継代する。
【0164】
(2)所望の量まで細胞を培養する(一日おきに細胞を継代する)。
【0165】
(3)産生株の培養ディッシュの培地を可能な限り完全に除去し、1×PBSで細胞を洗浄する。
【0166】
(4)洗浄した細胞単層上に1×TrypLE Expressを穏やかにピペットで移す。
【0167】
(5)フラスコを回転させて、TrypLE Expressで単層を覆う。
【0168】
(6)フラスコをインキュベーターに戻し、約2分間放置する。
【0169】
(7)フラスコの側面を穏やかにたたいて、いかなる残存付着細胞も遊離させる。
【0170】
(8)新鮮なD10培地(抗生物質なし)中に細胞を再懸濁し、コニカル遠心チューブに移す。
【0171】
(9)約1200rpmで約5分間細胞を遠心分離する。
【0172】
(10)培地を吸引し、新鮮なD10培養培地(抗生物質なし)中にペレットを穏やかに懸濁させる。
【0173】
(11)TC10(商標)自動細胞カウンターを使用して細胞数を決定する。
【0174】
(12)培養ディッシュにおいて>95%コンフルエントの細胞をUltraCULTURE(商標)無血清培地(抗生物質なし)中に直接播種する。
【0175】
(13)誘導後約24時間で、古い培養培地を新鮮な予熱したUltraCULTURE(商標)無血清培地と交換する。
【0176】
(14)誘導後約72時間で、誘導された細胞からウイルスベクターを回収した。
【0177】
第4の例示的方法
第4の例示的方法では、無血清培地が産生段階で使用され;一方で、血清含有培地が培養段階および細胞の継代の間の両方で使用される。いくつかの実施形態では、血清を含む培地はD10血清含有培地であり;無血清培地はUltraCULTURE(商標)培地(Lonzaから入手可能)(場合により添加増殖因子、例えば、EX-CYTE(登録商標)を含む)である。EX-CYTE(登録商標)補充物は、様々な哺乳動物細胞において細胞増殖およびタンパク質産生を増強することが証明されている代謝因子のバランスの取れたプロファイルを提供する、コレステロール、リポタンパク質および脂肪酸の水溶性濃縮物である。いくつかの実施形態では、約1%のv/vのEX-CYTEを培養培地に加えた。産生段階で無血清培地を使用する場合、細胞は、適合手順を介して進行する必要がなかったことが考えられる。これに対して、無血清培地を培養段階で使用した場合、細胞は、無血清培地の使用へ適合するのにいくらかの時間を必要としたことが考えられる。
【0178】
別の実施形態には、本開示に従って2日間の回収手順を使用してウイルスベクターを生成する第4の方法があり、第4の方法は以下の工程を含む:
(1)ウイルスベクター産生で使用する前に、解凍後少なくとも約4回細胞を継代する。
【0179】
(2)(対数期増殖を維持するために)ベクター誘導の少なくとも2日前に細胞を毎日継代する。
【0180】
(3)産生株の培養ディッシュの培地を可能な限り完全に除去し、1×PBSで細胞を洗浄する。
【0181】
(4)洗浄した細胞単層上に1×TrypLE Expressを穏やかにピペットで移す。
【0182】
(5)フラスコを回転させて、TrypLE Expressで単層を覆う。
【0183】
(6)フラスコをインキュベーターに戻し、約2分間放置する。
【0184】
(7)フラスコの側面を穏やかにたたいて、いかなる残存付着細胞も遊離させた。
【0185】
(8)新鮮なD10培地(抗生物質なし)中に細胞を再懸濁し、コニカル遠心チューブに移す。
【0186】
(9)約1200rpm(または、125×g)で約5分間細胞を遠心分離する。
【0187】
(10)培地を吸引し、新鮮なD10培養培地(抗生物質なし)中にペレットを穏やかに懸濁させる。
【0188】
(11)TC10(商標)自動細胞カウンターによって細胞数を決定する。
【0189】
(12)培養ディッシュにおいて>95%コンフルエントの細胞を新鮮なD10培養培地(抗生物質なし)中に播種する。
【0190】
(13)誘導後約24時間で、D10培養培地を新鮮な予熱したUltraCULTURE(商標)無血清培地と交換する。
【0191】
(14)誘導後約72、約120および約168時間で、誘導された細胞からウイルスベクターを回収した。
【実施例1】
【0192】
一過的トランスフェクションで産生された自己不活性化レンチウイルスベクターと開示される安定細胞株方法によって産生されたベクターの詳細な比較
本明細書に記載の方法を使用して、HIV-1融合インヒビター、C46と組み合わせて、HIV-1共受容体CCR5のダウンレギュレーションのための低分子ヘアピン型RNA(shRNA)をコードする自己不活性化レンチウイルスベクター(SIN-LV)である、LVsh5/C46の産生のための安定細胞株を生成した。一過的トランスフェクションによって産生されたこのレンチウイルスベクターは、現在、HIV感染個体における臨床試験で評価されている。ここでは、LVsh5/C46および他のSIN-LVの臨床的製造へのこのシステムの適用を支持するために、一過的トランスフェクションによって産生されたLVsh5/C46と本明細書に記載の方法を使用して産生されたLVsh5/C46の比較解析を行った。
【0193】
本明細書に記載の方法を他の自己不活性化レンチウイルスベクターの産生に拡張することができることを当業者は認識するであろう。例えば、SIN-LVは、(i)HPRT遺伝子を標的にする、RNAiをコードする第1の核酸配列、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはエクソンスキッピング剤;および(ii)第2の治療的遺伝子をコードする核酸配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、第2の治療的遺伝子をコードする核酸は、鎌状赤血球症またはβ-サラセミアを遺伝的に治すことができるもの;またはそれらの症状(重度鎌状赤血球症の症状を含める)を低減することができるものである。他の実施形態では、治療的遺伝子をコードする核酸は、免疫不全、遺伝性疾患、血液疾患(例えば、血友病、ヘモグロビン障害)、神経学的疾患および/またはリソソーム蓄積症遺伝的に治すことができるもの;またはそれらの症状を低減することができるものである。いくつかの実施形態では、治療的遺伝子はガンマグロビン遺伝子である。いくつかの実施形態では、ガンマグロビン遺伝子をコードする第2の核酸配列はアルファ-グロビン鎖に競合的利点を与え、四量体HbF対HbSの形成を歪める点変異を含むハイブリッドガンマグロビン遺伝子である。
【0194】
レンチウイルスベクター(LV)は、4プラスミドシステム(1つはトランスファーベクター、2つはパッケージングベクター、1つはエンベロープベクター)を使用して、293T細胞におけるリン酸カルシウムトランスフェクションによって産生した。ウイルス含有培地(VCM)をトランスフェクション後48時間で回収し、20%ショ糖クッションを介する超遠心分離法によって濃縮した。
【0195】
細胞株生成のために、ドキシサイクリン(Dox)を含まない培地中で産生細胞株の細胞を誘導し、約72時間でVCMを回収し、超遠心分離法によって同様に濃縮した。表1および図8および9を参照すると、粒子力価に基づいて、ならびに293TおよびTF-1a T細胞株に対する遺伝子形質導入効力についての3つの独立のアッセイを使用して、各方法によって産生されたレンチウイルスベクターが比較された。これらは、細胞表面のC46発現およびCCR5発現のshRNA媒介性ノックダウンのためのFACSアッセイ、ならびに宿主細胞ゲノムあたりのベクターコピー数(VCN)のためのqPCRアッセイを含んでいた。すべてのアッセイについて、ベクター希釈の範囲にわたって力価を決定して、直線関係を定義した。qPCRアッセイは、形質導入された細胞から抽出されたゲノムDNAを利用し、C46導入遺伝子および内在性β-グロビン遺伝子の配列を検出する。したがって、C46のVCNを細胞ゲノムに対して正規化することができる。
【0196】
【表3】
【0197】
一過的トランスフェクション方法と比較して、より高濃度のp24が、産生細胞株によって生成されたVCM中に観察された。しかし、2つの異なるシステムを使用して産生されたLVsh5/C46の収量および効力は同様であった。等量のVCMを使用して、FACSによって、ベクターをC46力価について最初に評価した。C46力価を正規化し、qPCRアッセイを使用して、またはCCR5の機能的ノックダウンを介して遺伝子形質導入についてベクター調製物を評価した場合に、一過的トランスフェクションによって産生されたベクターは中程度に力価が増大したが、安定な産生細胞株によって産生されたベクターは、より大きな効力を示した(表2を参照されたい)。CCR5発現のダウンレギュレーションおよびゲノムのC46導入遺伝子(VCN)は、本明細書に開示される方法で産生されたLVsh5/C46で処理した標的細胞において、一過的トランスフェクションによって産生されたベクターで処理したものよりもそれぞれ有意に高かった(表3および図10を参照されたい)。
【0198】
【表4】
【0199】
【表5】
【0200】
3つの独立のアッセイに基づくと、本明細書に記載の方法は、一過的トランスフェクション方法と比較して同様の質および量のSIN-LVを生成することができる、安定なレンチウイルスベクター産生システムを提供することが示された。より高いCCR5ダウンレギュレーション効能および形質導入された細胞におけるC46のVCN(C46力価に正規化)によって、産生細胞によって産生されたLVsh5/C46は、従来の4プラスミドの一過的トランスフェクション方法を使用して生成されたベクターのものよりも良い効力を有することが示された。冗長な一過的トランスフェクション工程を除去することによって、いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、ヒトで使用するための臨床グレードの材料の製造についてのcGMP条件にこの産生システムを容易に適合させることができることが考えられる。
【実施例2】
【0201】
HIV遺伝子療法のためのレンチウイルスベクターの生物的産生のためのGPRGベースの産生細胞株の開発および特性評価
GPRG細胞株システムは、自己不活性化レンチウイルスベクター(SIN-LV)の臨床的産生のために以前に確立された。ここでは、LVsh5/C46の産生のための、GPRGに基づく産生細胞株を開発した(LVsh5/C46はHIV感染個体の治療ためにクリニックで現在評価されているSIN-LVである)。このベクターは、2つのウイルス侵入インヒビター;HIV共受容体CCR5に対する低分子ヘアピン型RNAであるsh5、およびウイルス融合インヒビターであるC46をコードする。さらに、LVsh5/C46の生物的産生のためのGPRGシステムの規制当局への提出書類(regulatory filling)および臨床応用に必要とされる、GPRGパッケージング細胞株、GRPG-ベースのLVsh5/C46産生細胞株およびテトラサイクリン誘導後のLVsh5/C46産生の安定性を本実験によって決定した。
【0202】
ドキシサイクリン(Dox)およびピューロマイシン(Puro)を含むD10培地でGPRG細胞を培養した。LVsh5/C46産生細胞を生成するために、トランスファープラスミドTL20-LVsh5/C46およびゼオシン抵抗性プラスミドをコンカテマーアレイとしてGPRG細胞にトランスフェクトした。個々のクローンをLVsh5/C46ベクターを産生する能力について評価し、Dox、Puroおよびゼオシンを含むD10培地中で維持した。レンチウイルス(LV)産生についての親GPRG細胞株の安定性を評価するために、3か月の期間にわたって10継代ごとに(50+の全継代)、トランスファーベクターをGPRG細胞にトランスフェクトした(図3Aおよび3Bを参照されたい)。ウイルス含有培地(VCM)をトランスフェクション後48時間で回収し、相補的遺伝子形質導入アッセイによってベクター力価を評価した。安定な産生細胞クローンからのLV産生の安定性を評価するために、Doxを含まないD10培地中で細胞を誘導した。誘導後72時間でVCMを回収し、ベクター希釈の範囲にわたって力価を同様に評価した。長期継代後の誘導後のVSV-Gの発現安定性を解析するために、Doxの使用中止によってGPRG細胞を誘導し、次いで、ビオチンコンジュゲート抗VSV-G抗体を使用して染色し、続いて、ストレプトアビジン-フィコエリトリンで二次染色を行った。
【0203】
GPRG細胞は、VSV-Gの厳密なテトラサイクリン調節性発現を示した。このパッケージング細胞株は、LVトランスファーベクターでのトランスフェクション後に最大で10LV形質導入単位(TU)/mLをもたらすことができ、連続的な培養において50継代より多くにわたって高レベルのLV産生を維持した(図6Aおよび6Bを参照されたい)。コンカテマーアレイトランスフェクションを利用することによって、LVsh5C46の産生のための、GPRGに基づく産生細胞株の効率的な構築が示された。この細胞株は、10TU/mLを上回る力価を一貫してもたらした。力価のさらなる増大は、二次産生細胞株の再クローニングおよび選択によって達成することができる。力価は誘導後2~5日でピークに達した。確立された安定な産生細胞株は、25継代を超える連続的な培養の間、10TU/mLを超える力価でのLVsh5/C46産生を維持することが示された。
【0204】
GPRG細胞株は、Doxの除去の際に細胞表面でVSV-Gを効率的に発現した。これらの細胞株は、トランスファーベクタープラスミドのトランスフェクション後に高いLV力価をもたらすことができることも考えられる。さらに、この細胞株は、SIN-LVに対する高力価産生細胞株の誘導を可能にした。産生細胞株は、長期培養の間、安定なベクター産生を示し、この細胞株について無血清および懸濁培養システムにベクター産生を適合させる能力の評価を探究した(図7Aおよび7Bを参照されたい)。
【実施例3】
【0205】
コンカテマーアレイの生成プロトコール
工程1
脱イオン水490mLを50×TAE10mL((Tris-アセテート-EDTA)バッファー)と混合することによって、1×TAEランニングバッファー500mLを調製する。
【0206】
アガロース1gおよび1×TAEバッファー100mL(50×TAE 2mLにオートクレーブした水98mLを加える)をビーカーに加え、固体粒子または泡がなくなるまで(約2.5分)、この混合物を電子レンジで加熱することによって、1%アガロースゲルを作製する。
【0207】
混合物を3分間冷却させる。
【0208】
GelRed(商標)10μLをアガロースゲル混合物に加え、撹拌する(Biotiumから入手可能)。
【0209】
ゲルキャスターおよびゲルコームを組み立てる。混合物をゲルモールドに注ぎ、これを30分間過冷却させる(容量:大コームに対して60μL)。
【0210】
ゲルが冷却したら、ゲルが完全に沈むまでボックスを1×TAEバッファーで満たす。
【0211】
DNAを線状にするために、室温で消化反応混合物を調製する。
【0212】
ベクタープラスミド25μgを制限酵素SfiIで消化する。別の反応では、抵抗性カセットプラスミドPGK-bleをPflMIで消化する(10μgは十分過ぎるほどである)。
【0213】
【表6】
【0214】
穏やかに混合し、加熱して37℃で15分間インキュベートする。
【0215】
GeneRuler 1kb plus DNAラダー混合物10μL(DNAラダー2μL+ヌクレアーゼフリー水8μL)および試料混合物50μLを利用可能なスロットに加える。
【0216】
電気泳動装置の電源を入れ、電圧150Vで1時間流す。
【0217】
ゲルを「UVP PhotoDoc-It」イメージングシステムに移し、結果の画像を得る。
【0218】
Eye-Fiウェブサイトからゲルの写真をダウンロードする。
【0219】
NanoDrop 2000分光光度計を使用して、各試料のDNA濃度を決定する。
【0220】
工程2
アガロースゲルからDNAバンドを切り出す。
【0221】
1容量のゲルに3容量のバッファーQGを加える(一般に、QG 500μLを加える)。
【0222】
ゲルスライスが完全に溶解した後、50℃で10分間インキュベートする。
【0223】
QIAquickカラムに試料をアプライし、これを17,900rpmで1分間遠心分離する(Qiagenから入手可能)。
【0224】
フロースルーを捨て、QIAquickカラムを同じ収集チューブに戻す。
【0225】
バッファーQG 0.5mLをQIAquickカラムに加え、1分間遠心分離する。
【0226】
バッファーPE 0.75mLをQIAquickカラムに加え、1分間遠心分離する。
【0227】
フロースルーを捨て、QIAquickカラムを17,900rpmでさらに1分間遠心分離する。
【0228】
QIAquickカラムを清潔な1.5mL微量遠心チューブに入れる。
【0229】
DNAを溶出するために、QIAquickメンブレンの中央にバッファーEB 35μLを加え、カラムを17,900rpmで1分間遠心分離する(バッファーEBは10mM Tris-cl、pH8.5である)。
【0230】
NanoDrop 2000分光光度計を使用してDNA断片の濃度を測定する(ブランク測定のために、EBバッファーを使用する)。
【0231】
工程3
氷上で、1.7mL Eppendorf微量遠心チューブ中にライゲーション反応をセットアップする。
【0232】
予め作成されたスプレッドシート(Concatemeric Ligations.xlsx)を使用して、ベクター対PGK-bleの約25:1のモル比を作るように混合する必要がある各断片の量を計算する。
【0233】
ライゲーション反応の断片の量を最大にし、所望のモル比を維持する。
【0234】
T4 DNAリガーゼバッファーは、解凍し、室温で再懸濁するべきである(T4 DNAリガーゼバッファーは以下の成分を含む:50mM Tris-HCl、10mM MgCl2、1mM ATP、10mM DTT、pH7.5)。
【0235】
ライゲーション反応物をピペットで移す。上記の例では、10×ライゲーションバッファー10μL(NEB Quick Ligationキット)およびリガーゼ酵素0.5μL(New England BioLabsから入手可能)を加えることによって、DNA混合物90μLを利用した。
【0236】
室温で以下のものを含む以下の反応混合物を調製する:
【0237】
【表7】
【0238】
上下にピペッティングすることによって、穏やかに混合する。
【0239】
室温で一晩インキュベートする。
【0240】
工程4
GPRG細胞へのトランスフェクションより前に、シリカベースのメンブレン(DNeasy Blood & Tissueキット)によって、コンカテマーアレイを回収し、精製した。
【0241】
2mL収集チューブ中に入れたDNeasy Miniスピンカラムにコンカテマーアレイ混合物をピペットで移す。
【0242】
8000×gで1分間遠心分離する。フロースルーおよび収集チューブを捨てる。
【0243】
DNeasy Miniスピンカラムを(提供された)新しい2mL収集チューブ(Qiagenから入手可能)に入れる。
【0244】
バッファーAW1 500μLを加え、8000×gで1分間遠心分離する。
【0245】
フロースルーおよび収集チューブを捨てる。
【0246】
DNeasy Miniスピンカラムを(提供された)新しい2mL収集チューブに入れる。
【0247】
バッファーAW2 500μLを加え、20,000×gで3分間遠心分離して、DNeasyメンブレンを乾燥させる。
【0248】
フロースルーおよび収集チューブを捨てる。
【0249】
清潔な1.7mL Eppendorf微量遠心チューブにDNeasy Miniスピンカラムを入れる。
【0250】
バッファーAE 200μLをDNeasyメンブレン上に直接加える。
【0251】
室温で4分間インキュベートする。
【0252】
8000×gで1分間遠心分離して、DNA混合物を溶出する。
【0253】
溶出を1回反復する。
【0254】
NanoDrop Lite分光光度計によってコンカテマーDNA濃度を測定する。
【実施例4】
【0255】
コンカテマーアレイを使用して産生細胞株を生成するためのプロトコール
ウイルスベクター産生で使用する前に、解凍後少なくとも4回細胞を継代する。
【0256】
ベクター誘導の前に、トリパンブルー方法を使用して、細胞が健常であること、および95%より多くが生存可能であることを確実にする(トリパンブルーは、生存可能な細胞をカウントするために、色素排除手順で一般に使用される。この方法は、生(生存可能な)細胞はある特定の色素を取り込まないが、死(生存不可能な)細胞は色素を取り込むという原理に基づく。染色は、細胞形態の可視化を容易にする)。
【0257】
所望の量のGPRG細胞を培養する。
【0258】
細胞を播種する前に、少なくとも2回の毎日の継代で細胞を継代培養する。
【0259】
初日に、GPRG細胞株の培養ディッシュの培地を除去し、1×PBSで細胞を洗浄する。
【0260】
T75フラスコについて3mlまたはT25フラスコについて1mLを使用して、洗浄した細胞単層上に1×TrypLE Expressを穏やかにピペットで移す。
【0261】
フラスコを回転させて、TrypLE Expressで単層を覆う。
【0262】
フラスコをインキュベーターに戻し、2分間放置する。
【0263】
フラスコの側面を穏やかにたたいて、いかなる残存付着細胞も遊離させた。
【0264】
新鮮なD10培地2mLに細胞を再懸濁させ、15mLコニカル遠心チューブに移す。
【0265】
1200rpmで5分間細胞を遠心分離する。
【0266】
培地を吸引し、ドキシサイクリン(1ng/mL)を含む新鮮なD10培養培地5mLにペレットを穏やかに懸濁させる。
【0267】
TC10(商標)自動細胞カウンターによって細胞数を決定する。
【0268】
トランスフェクションの20~24時間前に、培養ディッシュにおいて、80%コンフルエントで細胞を播種する(ドキシサイクリンを含む60mm培養ディッシュに3.2×10生細胞をプレーティングすることによる)。
【0269】
コンカテマーアレイ形成物を調製する(例えば、実施例3を参照されたい)。
【0270】
2日目に、トランスフェクションより前に、CalPhos(商標)哺乳類トランスフェクションキットを室温にする(ClonTechから入手可能)。
【0271】
コンカテマーDNAを精製し、濃度を測定する(コンカテマーアレイは本明細書に記載の方法に従って精製することができる)。
【0272】
トランスフェクションプラスミドDNAを調製する(4mL、60mm培養ディッシュ)。
【0273】
各トランスフェクションについて、溶液Aおよび溶液Bを別々の15mLコニカル遠心チューブに調製する。
【0274】
ピペットを使用して溶液B(2×HBS)を泡立たせ、溶液A(DNA混合物)を一滴ずつ加える。
【0275】
トランスフェクション溶液を室温で15分間インキュベートする。
【0276】
トランスフェクション溶液を培養ディッシュに穏やかに加える。
【0277】
プレートを穏やかに前後に動かして、トランスフェクション溶液を均等に分布させる。
【0278】
COインキュベーター中でプレートを37℃で4時間インキュベートする。
【0279】
60mm培養ディッシュあたり新鮮なD10培地5mLを37℃のCOインキュベーター中で温める。
【0280】
4時間後、予熱したD10 1mLで洗浄し、予熱した新鮮なD10培地4mLと交換する。
【0281】
5%CO、37℃のインキュベーターでインキュベートする。
【0282】
コンカテマーのトランスフェクションから48時間後に、トランスフェクトされたGPRG細胞を回収する(細胞の継代培養を行う)。
【0283】
ゼオシン(50μg/mL)およびドキシサイクリン(1ng/mL)を含む新鮮なD10培地を有するT150フラスコまたは30mLの150mm培養ディッシュに細胞を再プレーティングする。
【0284】
細胞巣が確認されるまで(通常、1~2週以内に観察される)、ドキシサイクリン(1ng/mL)を含む選択培地(ゼオシン、50μg/mL)を3~4日ごとに細胞に供給する。
【実施例5】
【0285】
GPRGパッケージング細胞株を生成するために使用される細胞株および配列の説明
HEK-293T/17はHEK-293Tのサブクローンである。これらの細胞はSV-40T抗原を安定して発現し、特にその高いトランスフェクト能力のために特定のクローンを選択した。HEK-293T/17に基づくマスター細胞バンクを生成した(HEK-293T/17MCB)。
【0286】
SFG-IC-HIVgp-Ppac2は、ピューロマイシン抵抗性を有する、CMVプロモーターの制御化でコドン最適化HIV gagpolを発現するガンマレトロウイルスベクターである。このベクターを作製するために使用されたプラスミド(pSFG-IC-HIVgp-Ppac2)は以下の成分を使用して構築された:
(1)pSFG tcLuc ECT3は、レトロウイルスベクター骨格プラスミド(SFG)の誘導体であり、テトラサイクリン調節性プロモーターシステムを使用して調節された遺伝子発現に適合されている(Lindemann,D.、Patriquin,E.、Feng,S.、& Mulligan,R.C.Versatile retrovirus vector systems for regulated gene expression in vitro and in vivo.Mol.Med.3、466~476(1997));
(2)CMVエンハンサー/プロモーター駆動性コドン最適化HIV NL4-3 gagpol遺伝子;
(3)pMSCVpacに由来するPGKプロモーター駆動性ピューロマイシン抵抗性遺伝子(Hawley,R.G.、Lieu,F.H.、Fong,A.Z.、& Hawley,T.S.Versatile retroviral vectors for potential use in gene therapy.Gene Ther.1、136~138(1994))。
【0287】
SFG-IC-HIVgp-Ppac2レトロウイルスベクターによるHEK-293T/17 MCBの感染は、GP細胞株を生成した。
【0288】
SFG-tc-revcoは、テトラサイクリン応答性プロモーターの制御化でコドン最適化HIV revを発現するガンマレトロウイルスベクターである。このベクター(pSFG-tc-revco)を生成するために使用されたプラスミドは、以下の成分を使用して構築された:
(1)上記のNL4-3系統配列に基づくHIV rev 遺伝子、および
(2)pSFG tcLuc ECT3(上記)。
【0289】
SFG-tTAは、レトロウイルスLTRの制御化でキメラの転写トランス活性化因子を発現するガンマレトロウイルスベクターである(Lindemann,D.、Patriquin,E.、Feng,S.およびMulligan,R.C.Versatile retrovirus vector systems for regulated gene expression in vitro and in vivo.Mol.Med.3、466~476(1997))。これは、SFGレトロウイルスベクターに基づき、プラスミドpUHD15-1からのTetプロモーター要素を組み込む(Gossen MおよびBujard,H.(1992)PNAS 89 12:5547~5551)。
【0290】
SFG-tc-revcoおよびSFG-tTAによるGP細胞株の感染はGPR細胞株を生成した。
【0291】
SFG-tc-VSVGは、テトラサイクリン調節性プロモーターの制御化でVSV糖タンパク質Gを発現するガンマレトロウイルスベクターである。このベクター(pSFG-tc-VSVG)を作製するために使用したプラスミドは、他のベクターと同じpSFGtcLucECT3骨格、およびVSVGエンベロープタンパク質の供給源としてのプラスミドpMD.Gを使用して生成された(Ory,D.S.、Neugeboren,B.A.およびMulligan,R.C. A stable human-derived packaging cell line for production of high titer retrovirus/vesicular stomatitis virus G pseudotypes.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.93、11400~11406(1996)、ならびにRose,J.K. & Gallione,C.(1981)J.Virol.39、519~528を参照されたい)。
【0292】
SFG-tc-VSVGによるGPR細胞株の感染はGPRG細胞株を生成した。
【0293】
GPRS細胞株を生成するためのRetro-SVGmuによるGPR細胞株の感染は、Lee,Chi-Linら「Construction of Stable Producer Cells to Make High-Titer Lentiviral Vectors for Dendritic Cell-Based Vaccination.」Biotechnology and Bioengineering 109.6(2012):1551~1560.PMC.Web.14 2016年4月によって記載されている。
【実施例6】
【0294】
コンカテマーアレイの精製
GPRG細胞へのトランスフェクションより前に、シリカベースのメンブレン(DNeasy Blood & Tissueキット)によって、コンカテマーを回収し、精製した。
【0295】
2mL収集チューブ中に入れたDNeasy Miniスピンカラムにコンカテマーアレイ混合物をピペットで移す。
【0296】
6000×gで1分間遠心分離する。フロースルーおよび収集チューブを捨てる。
【0297】
DNeasy Miniスピンカラムを(提供された)新しい2mL収集チューブに入れる。
【0298】
バッファーAW1 500μLを加え、6000×gで1分間遠心分離する。
【0299】
フロースルーおよび収集チューブを捨てる。
【0300】
DNeasy Miniスピンカラムを(提供された)新しい2mL収集チューブに入れる。
【0301】
バッファーAW2 500μLを加え、20,000×gで3分間遠心分離して、DNeasyメンブレンを乾燥させる。
【0302】
フロースルーおよび収集チューブを捨てる。
【0303】
清潔な1.7mL Eppendorf微量遠心チューブにDNeasy Miniスピンカラムを入れる。
【0304】
バッファーAE 200μLをDNeasyメンブレン上に直接加える。
【0305】
室温で4分間インキュベートする。
【0306】
6000×gで1分間遠心分離して、DNA混合物を溶出する。
【0307】
溶出を1回反復する(新しい溶出バッファーを加える)。
【0308】
NanoDrop Lite分光光度計によってコンカテマーDNA濃度を測定する。
【実施例7】
【0309】
TL20-UbcGFP & Cal1-WPRE産生細胞株
以下の表4は、本明細書に記載の方法に従って合成された2つの安定な産生細胞株の細胞を要約する。TL20-Cal1-wpreおよびTL20-Unc-GFPベクターに関するデータを図20A、20Bおよび20Cにさらに図示する。
【0310】
【表8】
【0311】
他の治療的遺伝子
いくつかの実施形態では、合成されたベクターは、以下に挙げる治療的遺伝子のうちのいずれかを含むことができる。例えば、以下に挙げる遺伝子のうちのいずれかをコードする核酸を本明細書に記載の組換えプラスミドに挿入することができる。いくつかの実施形態では、治療的遺伝子は単一遺伝子の障害を治す。いくつかの実施形態では、治療的遺伝子は、免疫不全、遺伝性疾患、血液疾患(例えば、血友病、ヘモグロビン障害)、リソソーム蓄積症、神経学的疾患、血管新生障害またはがんを治療するために使用される。
【0312】
いくつかの実施形態では、治療的遺伝子は、アデノシンデアミナーゼ酵素をコードする遺伝子、アルファ-1-抗トリプシンをコードする遺伝子、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子をコードする遺伝子、ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ酵素をコードする遺伝子、凝固因子(例えば、ヒト第IX因子)をコードする遺伝子、リポタンパク質リパーゼ遺伝子をコードする遺伝子、ドーパミン合成に必要とされる酵素をコードする1つまたはそれ以上の遺伝子、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)をコードする遺伝子、インターロイキン-2受容体サブユニットガンマ(IL-2RG)をコードする遺伝子、Gp91phoxをコードする遺伝子、ウィスコット・アルドリッチ症候群タンパク質をコードする遺伝子、グロビンタンパク質をコードする遺伝子、変異グロビンタンパク質(例えば、抗鎌状赤血球化特性を有するもの)をコードする遺伝子、変異ベータ-グロビンをコードする遺伝子、ガンマ-グロビンをコードする遺伝子、抗CD19抗体をコードする遺伝子などである。他の実施形態では、治療的遺伝子は、グロビン遺伝子、スフィンゴミエリナーゼ遺伝子、アルファ-L-イズロニダーゼ遺伝子、ハンチンチン遺伝子、ニューロフィブロミン1遺伝子、MLH1遺伝子、MSH2遺伝子、MSH6遺伝子、PMS2遺伝子、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子遺伝子、ヘキソサミニダーゼA遺伝子、ジストロフィン遺伝子、FMRl遺伝子、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ遺伝子および低密度リポタンパク質遺伝子からなる群から選択される。
【0313】
治療的遺伝子のクラスの例としては、限定されないが、腫瘍抑制遺伝子、アポトーシスを誘導または防止する遺伝子、酵素をコードする遺伝子、抗体をコードする遺伝子、ホルモンをコードする遺伝子、受容体をコードする遺伝子、およびサイトカイン、ケモカインまたは血管新生因子をコードする遺伝子が挙げられる。治療的遺伝子の特定例としては、限定されないが、Rb、CFTR、pl6、p21、p27、p57、p73、C-CAM、APC、CTS-I、zacl、scFV、ras、DCC、NF-I、NF-2、WT-I、MEN-I、MEN-II、BRCAl、VHL、MMACl、FCC、MCC、BRCA2、IL-I、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-IO、IL-11、IL-12、IL-15Rα、IL-15、IL-21、GM-CSF、G-CSF、チミジンキナーゼ、mda7、FUSl、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、ADP、p53、ABLI、BLCl、BLC6、CBFAl、CBL、CSFIR、ERBA、ERBB、EBRB2、ETSl、ETS2、ETV6、FGR、FOX、FYN、HCR、HRAS、JUN、KRAS、LCK、LYN、MDM2、MLL、MYB、MYC、MYCLl、MYCN、NRAS、PIMl、PML、RET、SRC、TALI、TCL3、YES、MADH4、RBl、TP53、WTl、TNF、BDNF、CNTF、NGF、IGF、GMF、aFGF、bFGF、NT3、NT5、ApoAI、ApoATV、ApoE、RaplA、シトシンデアミナーゼ、Fab、ScFv、BRCA2、zacl、ATM、HIC-I、DPC-4、FHIT、PTEN、INGl、NOEYl、NOEY2、OVCAl、MADR2、53BP2、IRF-I、zacl、DBCCR-I、rks-3、COX-I、TFPI、PGS、Dp、E2F、ras、myc、neu、raf、erb、fins、trk、ret、gsp、hst、abl、ElA、p300、VEGF、FGF、トロンボスポンジン、BAI-I、GDAIF、MCC、41BBL、CD80、CD86またはOX40が挙げられる。
【0314】
治療的遺伝子の他の例は腫瘍抑制遺伝子であり、限定されないが、FUSl、遺伝子26(CACNA2D2)、PL6、LUCA-I(HYALl)、LUCA-2(HYAL2)、123F2(RASSFl)、101F6、遺伝子21(NPRL2)、SEM A3、NFl、NF2、およびp53が挙げられる。
【0315】
治療的遺伝子のさらに他の例は酵素をコードする遺伝子であり、限定されないが、ACPデサチュラーゼ、ACPヒドロキシラーゼ、ADP-グルコースピロホリラーゼ、PDE8A(campホスホジエステラーゼ)、ATPase、アルコールデヒドロゲナーゼ、アミラーゼ、アミログルコシダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、シクロオキシゲナーゼ、デカルボキシラーゼ、デキストリナーゼ、エステラーゼ、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、ヒアルロンシンテターゼ、ガラクトシダーゼ、グルカナーゼ、グルコース酸化酵素、GTPアーゼ、ヘリカーゼ、ヘミセルラーゼ、ヒアルロニダーゼ、インテグラーゼ、インベルターゼ、イソメラーゼ、キナーゼ、ラクターゼ、リパーゼ、リポキシゲナーゼ、リアーゼ、リゾチーム、ペクチンエステラーゼ、ペルオキシダーゼ、ホスファターゼ、ホスホリパーゼ、ホスホリラーゼ、ポリガラクツロナーゼ、プロテイナーゼ、ペプチダーゼ、プルラナーゼ、リコンビナーゼ、逆転写酵素、トポイソメラーゼまたはキシラナーゼが挙げられる。治療的遺伝子のさらなる例としては、カルバモイルシンテターゼI、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギノコハク酸シンテターゼ、アルギノコハク酸リアーゼ、アルギナーゼ、フマリルアセト酢酸ヒドラーゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、アルファ-1アンチトリプシン、グルコース-6-ホスファターゼ、低密度リポタンパク質受容体、ポルフォビリノーゲンデアミナーゼ、第VIII因子、第IX因子、シスタチオニンベータシンテターゼ、分枝鎖ケト酸デカルボキシラーゼ、アルブミン、イソバレリル-CoAデヒドロゲナーゼ、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、メチルマロニルCoAムターゼ、グルタリルCoAデヒドロゲナーゼ、インスリン、ベータグルコシダーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、肝臓ホスホリラーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ、グリシンデカルボキシラーゼ、H-タンパク質、T-タンパク質、メンケス病銅輸送ATPase、ウィルソン病銅輸送ATPase、シトシンデアミナーゼ、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、グルコセレブロシダーゼ、スフィンゴミエリナーゼ、アルファ-L-イズロニダーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、HSVチミジンキナーゼまたはヒトチミジンキナーゼをコードする遺伝子が挙げられる。
【0316】
治療的遺伝子のさらなる例としては、ホルモンをコードする遺伝子が挙げられ、限定されないが、成長ホルモン、プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、絨毛性ゴナドトロピン、甲状腺刺激ホルモン、レプチン、副腎皮質刺激ホルモン、アンギオテンシンI、アンギオテンシンII、アルファ-エンドルフィン、ベータ-メラニン細胞刺激ホルモン、コレシストキニン、エンドセリンI、ガラニン、胃抑制ペプチド、グルカゴン、インスリン、リポトロピン、ニューロフィジン、ソマトスタチン、カルシトニン、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、ベータ-カルシトニン遺伝子関連ペプチド、悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症因子、副甲状腺ホルモン関連タンパク質、副甲状腺ホルモン関連タンパク質、グルカゴン様ペプチド、パンクレアスタチン、膵臓ペプチド、ペプチドYY、PHM、セクレチン、血管作用性小腸ペプチド、オキシトシン、バソプレシン、バソトシン、エンケファリンアミド、メトルフィンアミド(metorphinamide)、アルファメラニン細胞刺激ホルモン、心房性ナトリウム利尿因子、アミリン、アミロイドP成分、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出因子、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経ペプチドY、サブスタンスK、サブスタンスPまたは甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンが挙げられる。
【0317】
さらに他の治療的遺伝子は、以下に記載のそうした遺伝子を含む発現に組み込むことができる。
【0318】
アデノシンデアミナーゼ-重症複合免疫不全(ADA-SCID)欠乏症は、免疫系を破壊する有毒な代謝物の蓄積をもたらし、「バブル・ボーイ」疾患と称されることが多い、重症複合免疫不全(ADA-SCID)を引き起こす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の発現ベクターの第2の核酸は、ヒトADA cDNA配列をコードする。
【0319】
重症複合免疫不全(SCID-X1)疾患はSCIDの最も一般的な形態であり、世界的に報告されたSCID症例の40~50%を占める。IL2RG遺伝子の変異は、リンパ球の発生および機能できわめて重要な役割を果たす、インターロイキン(IL)-2、4、7、9、15および21受容体複合体を含めた多くのサイトカイン受容体に共通のサブユニットである、共通ガンマ鎖(γc)の不完全な発現に対するリード役である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の発現ベクターの第2の核酸は、ヒトγc cDNA配列をコードする。
【0320】
慢性肉芽腫症(CGD)は、食細胞由来のNADPHオキシダーゼのサブユニット(gp91phox、p22phox、p47phox、p40phoxまたはp67phox)の欠損によって引き起こされる。gp91phoxサブユニットをコードするCYBB遺伝子の変異は、患者のおよそ70%を占めるX連鎖型のCGDに関与する。X連鎖CGDは好中球、好酸球、単球およびマクロファージによるスーパーオキシドアニオンおよび他の活性酸素中間体の生成が損なわれるために、重度の命に関わる細菌および真菌感染を特徴とする。疾患の別の態様は、主に、炎症誘発性サイトカインの生成の増大、炎症細胞のアポトーシスの遅延、および活性化された好中球による抗炎症性メディエーターの不十分な分泌によって引き起こされる、腸または肺などの器官に影響を及ぼす無菌の慢性肉芽腫性炎である。転帰不良は、侵襲性真菌感染、肝膿瘍および慢性肉芽腫性炎の病歴に関連する。利用可能な治療ストラテジーとしては、抗生物質長期予防法(antibiotic long-life prophylaxis)、IFN-γ投与およびHCTが挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の発現ベクターの第2の核酸は、ヒトサブユニットcDNA配列をコードする。
【0321】
異染性白質ジストロフィー(MLD)MLDは、酵素欠損ならびに中枢神経系および末梢神経系の神経細胞およびグリア細胞中の未分解基質セレブロシド3-サルフェート(サルファタイド)の蓄積をもたらす、アリールスルファターゼA(ARSA)遺伝子の変異によって引き起こされるまれな常染色体劣性リソソーム蓄積症である。サルファタイドのこの蓄積は、進行性の脱髄および神経変性につながる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の発現ベクターの第2の核酸は、ヒトARSA cDNA配列をコードする。
【0322】
ムコ多糖症I型(MPS-I)またはハーラー症候群は、アルファ-L-イズロニダーゼ酵素(IDUA)の欠損によって引き起こされるリソソーム性蓄積症である。この疾患は、器官の腫大および損傷、尿中への異常な量のGAGの排出、ならびに特に結合組織に影響を及ぼすGAG代謝回転の混乱を伴う、グリコサミノグリカン(GAG)の不適切な蓄積を特徴とする。臨床症状としては、骨格異常、肝脾腫、精神遅滞、ならびに循環器および呼吸器の機能障害が挙げられる。IDUA欠損症は幅広い表現型提示をもたらす可能性があり、MPS I Hurler(MPS IH)は、このスペクトル内で最も重度の疾患変異型に相当し、複数の器官および中枢神経系に関係する慢性、進行性および身体障害性の疾患経過を特徴とする。この疾患は、治療されない場合幼児期において致死的であり、死亡は、心臓呼吸性不全のために、生後10年以内に通常起こる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の発現ベクターの第2の核酸は、アルファ-イズロニダーゼ(IDUA)のヒトcDNAをコードする。
【0323】
ゴーシェ病はリソソーム蓄積症の最も一般的なものである。これは、スフィンゴ糖脂質の分解に必要とされるグルコセレブロシダーゼ(GBA)酵素の欠損によって引き起こされる常染色体劣性のリソソーム蓄積症である。臨床症状としては、肝脾腫、血小板減少、骨疾患および出血素因が挙げられ、頻繁に血液学者に紹介される。遺伝子療法は、酵素補充療法の患者および適切な骨髄ドナーを欠く患者に対する治療的代替法に相当する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の発現ベクターの第2の核酸は、GBA遺伝子のヒトcDNAをコードする。
【0324】
リソソーム蓄積症(LSD)は、リソソームの機能障害を特徴とするまれな遺伝性代謝障害である。LSDはおよそ70の遺伝的に異なる疾患を包含し、1:5000出生数の集合的発生率を有する。例としては、ファブリー病(アルファ-ガラクトシダーゼA欠損)、ポンペ病(α-グルコシダーゼ[GAA]欠損)、ハンター症候群(イズロネート-2-スルファターゼ[I2S]欠損)、サンフィリポ症候群(グリコサミノグリカンヘパラン硫酸の分解に必要とされる酵素のうちの1つの欠損)およびクラッベ病(ガラクトセレブロシダーゼ欠損)が挙げられる。同様に、遺伝性代謝障害は、代謝障害の1つの原因であり、欠損した遺伝子が酵素欠損を引き起こす場合に生じる。本開示の発現ベクターは、上記で特定された状態のいずれかの治療での使用に適する遺伝子をコードする第2の核酸配列を組み込むために適合させることができると考えられる。
【0325】
ピルビン酸キナーゼ欠損(PKD)は、不定の総体症状の溶血性貧血につながり、新生児期の間致死的であり得る、PKLR遺伝子の変異によって引き起こされる一遺伝子性代謝疾患である。PKD劣性遺伝形質および同種骨髄移植によるその治癒的治療は、遺伝子療法アプローチを開発するための理想的なシナリオを提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の発現ベクターの第2の核酸はヒトPKLR cDNAをコードする。
【0326】
副腎白質ジストロフィー(ALD)は、副腎白質ジストロフィータンパク質(ALDP)の欠損およびその後の極長鎖脂肪酸(VLCFA)の蓄積をもたらすABCD1遺伝子の変異によって引き起こされる、まれなX連鎖代謝障害である。VLCFA蓄積は、血漿およびすべての組織型で生じるが、副腎皮質ならびに脳および脊髄の白質に主として影響を及ぼし、様々な臨床転帰につながる。ALDの最も重度の形態、すなわち、大脳ALD(CALD)として知られる炎症性の大脳表現型は、思考および筋肉制御に関与する脳の神経細胞の保護鞘であるミエリンの進行性の破壊を伴う。CALDの症状は、通常、早期幼児期で生じ、治療されない場合急速に進行し、大抵の患者において、神経機能の重度の喪失および最終的な死亡につながる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の発現ベクターの第2の核酸は、ヒト副腎白質ジストロフィータンパク質(ALDP)をコードする。
【0327】
ファンコニ貧血(FA)は遺伝性の骨髄不全症候群である。少なくとも16個のDNA修復遺伝子のうちの1の欠損は、形成不全ならびに悪性病変、特にAMLおよびMDSの危険性の増大につながる。さらに、腺腫、腺癌および扁平上皮癌の危険性が高まる。大抵の患者はまた、身長が低く、様々な形態学的異常があり、発達障害を発生する。支持的な治療としては、血液製剤の定期的な輸液およびFA患者の随伴性内分泌疾患の理由から成長ホルモン補充(growth hormone substitution)が挙げられる。ドナー適合状況でのHSCTは唯一の治癒的選択肢あり、したがって、遺伝子療法の魅力的な選択肢である。影響を受ける遺伝子における異種性にもかかわらず、患者の60%より多くがFANCA遺伝子に変異を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の発現ベクターの第2の核酸は、ヒトFANCA cDNAをコードする。
【0328】
いくつかの実施形態では、合成されたベクターは、C1エステラーゼインヒビタータンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。C1エステラーゼインヒビタータンパク質は、米国特許第10,214,731号および米国特許公開第2018/0334493号に記載されており、これらの開示を、参照によってその全体を本明細書に組み入れる。
【0329】
いくつかの実施形態では、合成されたベクターは、X連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)を治療するためのブルトンチロシンキナーゼ(BTK)をコードするヌクレオチド配列を含む。BTKは、ヒトにおいてBTK遺伝子にコードされる酵素である。BTKは、B細胞の発生で重要な役割を果たすキナーゼである。例えば、BTKは、B細胞の成熟および高親和性IgE受容体を介する肥満細胞の活性化で重要な役割を果たす。BTK遺伝子の変異は、原発性免疫不全疾患のX連鎖無ガンマグロブリン血症(ブルトン型無ガンマグロブリン血症)に関与する。XLAの患者は骨髄中に正常なプレB細胞集団を有するが、これらの細胞は成熟せず、循環に入らない。いくつかの実施形態では、合成されたベクターは、BTK発現を回復させるヌクレオチド配列を含む。適切なベクターはPCT公開第WO/2018/195297号に記載されており、その開示を参照によってその全体を本明細書に組み入れる。
【0330】
いくつかの実施形態では、合成されたベクターは、原発性免疫不全を治すための遺伝子または成分をコードする1つまたはそれ以上のヌクレオチド配列を含む(その開示を参照によってその全体を本明細書に組み入れる、Farinelli G.ら(2014)Lentiviral vectors for the treatment of primary immunodeficiencies.J Inherit Metab Dis.37:525~33を参照されたい。)。
【0331】
いくつかの実施形態では、合成されたベクターは、ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、合成されたベクターは、開示をそれぞれ参照によってその全体を本明細書に組み入れる、PCT公開第WO/2018/034523号、第WO/2017/156484号、第WO/2017/106528号および第WO/2015/089046号または米国特許公開第US/2019/0169597号に記載されているものを含めた、ホーミングエンドヌクレアーゼ(例えば、l-Scel、l-Ceul、Fl-Pspl、Fl-Sce、l-SceTV、I-Csml、l-Panl、l-Scell、l-Ppol、l-Scelll、l-Crel、l-Tevlおよびl-Tevll)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、II型のクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)関連(Cas)ヌクレアーゼ、またはmegaTALヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含むことができる。
【0332】
いくつかの実施形態では、合成されたベクターは、少なくともエンドヌクレアーゼ活性を示すことができる酵素をコードするヌクレオチド配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、合成されたベクターは、CRISPR/Cas成分、例えば、Casタンパク質またはCRISPR関連タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、Casタンパク質としては、Cas9タンパク質、Cas9オルソログにコードされるCas9様タンパク質、Cas9様合成タンパク質、Cpf1タンパク質、Cpf1オルソログにコードされるタンパク質、Cpf1様合成タンパク質、C2c1タンパク質、C2c2タンパク質、C2c3タンパク質、Cas12タンパク質(例えば、Cas12a、Cas12b、Cas12c、Cas12d、Cas12eなど)ならびにこれらの変異型および改変型が挙げられる。いくつかの実施形態では、Cas9タンパク質としては、例えば、原核生物供給源、例えば、細菌および古細菌を含めた様々な生物学的供給源のうちのいずれかからのCas9ポリペプチドが挙げられる。細菌のCas9としては、放線菌門(例えば、アクチノミセス・ネスルンディ)のCas9、アクウィフェクス門のCas9、バクテロイデス門のCas9、クラミジアのCas9、緑色非硫黄細菌門のCas9、シアノバクテリアのCas9、エルシミクロビウム門のCas9、フィブロバクター門のCas9、ファーミキューテス門のCas9(例えば、化膿性連鎖球菌のCas9、ストレプトコッカス・サーモフィルスのCas9、リステリア・イノキュアのCas9、ストレプトコッカス・アガラクチアのCas9、ストレプトコッカス・ミュータンスのCas9、およびエンテロコッカス・フェシウムのCas9)、フソバクテリウム門のCas9、プロテオバクテリア(例えば、髄膜炎菌、カンピロバクター・ジェジュニおよびラリ)のCas9、スピロヘータ(例えば、トレポネーマ・デンティコラ)のCas9などが挙げられる。古細菌のCas9としては、ユリアーキオータ門のCas9(例えば、メタノコッカス・マリパルディスのCas9)などが挙げられる。
【0333】
いくつかの実施形態では、合成されたベクターは、哺乳類βグロビン遺伝子(HBB)、ガンマグロビン遺伝子(HBG1)、B細胞リンパ腫/白血病11A(BCL11A)遺伝子、クルッペル様因子1(KLF1)遺伝子、CXCR4遺伝子、PPP1R12C(AAVS1)遺伝子、アルブミン遺伝子およびロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)遺伝子をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0334】
本明細書で言及するすべての刊行物は、参照によってその全体を本明細書に組み入れる。広く記載されている本開示の趣旨または範囲を逸脱することなく、特定の実施形態に示すように、本開示に対して多数の変形および/または修正を行うことができることが当業者に理解されよう。したがって、本実施形態は、すべての点で例示的であり、限定的でないと見なされるべきである。
【0335】
特定の実施形態に関連して本明細書の開示を記載してきたが、これらの実施形態は、本開示の原理および適用の単に例示であることを理解されたい。したがって、例示的実施形態に対して多数の修正を行うことができること、および添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の趣旨および範囲を逸脱することなく、他の構成を考案することができることを理解されたい。
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